説明

受信回路

【課題】精度の高い終端回路を備える受信回路を提供する。
【解決手段】受信回路1aは、差動信号SDを受信する回路であって、差動信号SDの正相信号SPを受ける第1の端子2及び逆相信号SNを受ける第2の端子3と、第1の端子2と第2の端子3との間に直列に接続された抵抗11a及び11bと、一方の電流端子が第1の端子2に接続され、他方の電流端子が電源電位線Vccに接続されたトランジスタ12aと、一方の電流端子が第2の端子3に接続され、他方の電流端子が電源電位線Vccに接続されたトランジスタ12bと、接地電位線GNDと抵抗11a及び11bの相互接続点Aとの間に接続された定電流源13と、トランジスタ12a及び12bの各制御端子に、相互接続点Aの電位Vmonが所定電位に近づくような制御電圧Vgを提供する制御電圧生成部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の通信速度の高速化に伴い、通信回路における終端抵抗にもより高い精度が要求されている。通信回路に適用される終端抵抗の例としては、特許文献1に開示されたものがある。図5は、特許文献1に示された終端回路の構成を示す回路図である。この終端回路100は、信号ライン101を終端するための回路であり、終端抵抗部102と、参照抵抗部103とを備えている。終端抵抗部102は、信号ライン101と接地電位線との間に直列に接続された固定抵抗102a、及び可変抵抗としてのFET102bによって構成されている。また、参照抵抗部103は、電源電位線VDDと接地電位線との間に直列に接続された固定抵抗103a、及び可変抵抗としてのFET103bによって構成されており、参照抵抗部103と接地電位線との間には定電流源104が接続されている。そして、参照抵抗部103と定電流源104との間の電位がオペアンプ105へ入力され、参照電圧VREFとの差がFET102b及び103bのゲートへ入力される。この終端回路100においては、オペアンプ105を含む帰還回路の作用により、参照抵抗部103の抵抗値が所定値に近づくようFET103bのゲート電圧が制御され、このゲート電圧と同じ電圧がFET102bのゲートへ入力されることにより、終端抵抗部102の抵抗値が上記所定値に近づく。
【0003】
なお、上記回路と同様の構成を有する終端回路が、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0145443号明細書
【特許文献2】特表平9−509806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図5に示す終端回路100の構成では、次の理由により終端抵抗の精度が抑えられてしまう。すなわち、終端回路100においては、オペアンプ105を含む帰還回路に終端抵抗部102が含まれていない。従って、製造誤差等によって固定抵抗102a及び103aの抵抗値またはFET102b及び103bの抵抗値が互いに一致しないことにより、或いは信号ライン101の電圧変動により、終端抵抗部102の抵抗値の精度が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、精度の高い終端回路を備える受信回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明による受信回路は、差動信号を受信する受信回路であって、差動信号の正相信号を受ける第1の端子及び逆相信号を受ける第2の端子と、第1の端子と第2の端子との間に直列に接続された第1及び第2の抵抗と、一方の電流端子が第1の端子に接続され、他方の電流端子が第1の定電位線に接続された第1のトランジスタと、一方の電流端子が第2の端子に接続され、他方の電流端子が第1の定電位線に接続された第2のトランジスタと、第1の定電位線とは電位が異なる第2の定電位線と第1及び第2の抵抗の相互接続点との間に接続された定電流源と、第1及び第2のトランジスタの各制御端子に、相互接続点の電位が所定電位に近づくような制御電圧を提供する制御電圧生成部とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記受信回路では、第1のトランジスタが一方の信号ライン(第1の端子)の終端抵抗として機能しており、第2のトランジスタが他方の信号ライン(第2の端子)の終端抵抗として機能しており、第1及び第2の抵抗が信号ライン間の終端抵抗となっている。この受信回路においては、第1のトランジスタ及び第1の抵抗からなる直列抵抗成分と、第2のトランジスタ及び第2の抵抗からなる直列抵抗成分とが、第1の定電位線と相互接続点との間で並列に接続されている。従って、この並列抵抗回路に定電流源による電流が流れる際の電圧降下に相当する電位が、相互接続点の電位となる。すなわち、相互接続点の電位は、第1及び第2のトランジスタの電流端子間の抵抗値を含む終端抵抗値を反映した値となる。上記受信回路では、この相互接続点の電位が所定電位に近づくように制御電圧生成部が第1及び第2のトランジスタへ制御電圧を提供するので、第1及び第2のトランジスタそれぞれの電流端子間の抵抗値を含む終端抵抗値が或る所定値に精度良く制御される。このように、上記受信回路によれば、トランジスタや抵抗素子の誤差、或いは信号ラインの電圧変動に関わらず、精度が高い終端回路を実現することができる。
【0008】
また、受信回路は、第1及び第2のトランジスタのそれぞれに直列接続された第3及び第4の抵抗を更に備えることを特徴としてもよい。これにより、一方の信号ライン(第1の端子)の終端抵抗が第1のトランジスタ及び第3の抵抗によって構成され、他方の信号ライン(第2の端子)の終端抵抗が第2のトランジスタ及び第4の抵抗によって構成されるので、終端抵抗値の可変幅を更に狭くして終端抵抗値をより高精度に制御できる。
【0009】
また、受信回路は、第1の定電位線が正の電源電位線であり、第2の定電位線が接地電位線であることを特徴としてもよい。或いは、第1の定電位線が接地電位線であり、第2の定電位線が正の電源電位線であることを特徴としてもよい。この何れかの構成によって、上記受信回路を好適に実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、精度の高い終端回路を備える受信回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明による受信回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る受信回路の第1実施形態の構成を示す回路図である。同図に示す受信回路1aは、差動信号SDを受信する回路であって、差動信号SDのうち正相信号SPを外部から受信する第1の端子2と、差動信号SDのうち逆相信号SNを外部から受信する第2の端子3と、正相信号SP及び逆相信号SNを増幅して受信信号Sinを生成する増幅器4と、端子2及び増幅器4を互いに結ぶ信号ライン5、並びに端子3及び増幅器4を互いに結ぶ信号ライン6を終端するための終端回路7とを備える。なお、本実施形態の受信回路1aは、一つのICチップ内に集積されることが好ましい。
【0013】
終端回路7は、第1の抵抗11a、第2の抵抗11b、第3の抵抗11c、及び第4の抵抗11dと、トランジスタ12a及び12bと、定電流源13と、制御電圧生成部14とを有する。抵抗11a〜11dは、例えばICチップ内に形成されたシート抵抗によって構成されている。
【0014】
抵抗11a及び11bは、第1の端子2と第2の端子3との間(本実施形態では、信号ライン5と信号ライン6との間)に直列に接続されており、第1の端子2と第2の端子3との間の終端抵抗として機能する。抵抗11a及び11bの抵抗値は、互いに同じ値となっている。従って、抵抗11a及び11bの相互接続点Aにおける電位Vmonは、第1の端子2及び第2の端子3の中間の電位となる。なお、第1の端子2及び第2の端子3へ入力されるのが差動信号SD(正相信号SP、逆相信号SN)なので、相互接続点Aの電位Vmonは差動信号SDの状態には殆ど影響されない。
【0015】
トランジスタ12aは、本実施形態における第1のトランジスタであり、第1の端子2と第1の定電位線(正の電源電位線Vcc)との間の可変終端抵抗素子として設けられている。具体的には、トランジスタ12aの一方の電流端子(ドレイン)は信号ライン5に接続されており、他方の電流端子(ソース)は電源電位線Vccに接続されている。本実施形態では抵抗11cがトランジスタ12aに対し直列に接続されており、トランジスタ12aの一方の電流端子(ドレイン)は抵抗11cを介して信号ライン5に接続されている。従って、第1の端子2は、トランジスタ12a及び抵抗11cによって終端される。
【0016】
トランジスタ12bは、本実施形態における第2のトランジスタであり、第2の端子3と第1の定電位線(正の電源電位線Vcc)との間の可変終端抵抗素子として設けられている。具体的には、トランジスタ12bの一方の電流端子(ドレイン)は信号ライン6に接続されている。また、トランジスタ12bの他方の電流端子(ソース)は電源電位線Vccに接続されており、トランジスタ12aの他方の電流端子(ソース)と共通電位となっている。本実施形態では、抵抗11cと等しい抵抗値を有する抵抗11dがトランジスタ12bに対し直列に接続されており、トランジスタ12bの一方の電流端子(ドレイン)は抵抗11dを介して信号ライン6に接続されている。従って、第2の端子3は、トランジスタ12b及び抵抗11dによって終端される。
【0017】
トランジスタ12a及び12bは、そのゲート長やゲート幅といった寸法が互いに等しくなるようにICチップ内に形成されている。また、図1にはトランジスタ12a,12bとしてnチャネルMOS型FETを図示しているが、他のタイプのFETやバイポーラトランジスタを代わりに用いてもよい。また、抵抗11c及び11dは、トランジスタ12a及び12bの他方の電流端子(ソース)側に接続されてもよい。
【0018】
定電流源13は、電源電位線Vccとは電位が異なる第2の定電位線(本実施形態では接地電位線GND)と抵抗11a及び11bの相互接続点Aとの間に接続されており、接地電位線GNDと相互接続点Aとの間に所定の大きさの定電流I1を流す。本実施形態の終端回路7においては、トランジスタ12a、抵抗11a及び11cからなる直列抵抗成分と、トランジスタ12b、抵抗11b及び11dからなる直列抵抗成分とが、電源電位線Vccと相互接続点Aとの間で並列に接続されており、これらの直列抵抗成分の抵抗値は実質的に等しく設定されている。従って、トランジスタ12a、抵抗11a及び11cを流れる電流I2の大きさ、並びにトランジスタ12b、抵抗11b及び11dを流れる電流I3の大きさは、それぞれ定電流I1の1/2となる。なお、定電流I1の大きさは、受信回路1aの温度や電源電圧Vccの大きさに依らず一定であることが好ましい。
【0019】
制御電圧生成部14は、トランジスタ12a及び12bの各制御端子(ゲート)に制御電圧Vgを提供する。制御電圧生成部14は、抵抗11a及び11bの相互接続点Aの電位Vmonを入力し、この電位Vmonが所定電位に近づくように制御電圧Vgを生成する。本実施形態の制御電圧生成部14は、差動増幅器15を含む。差動増幅器15の非反転入力端は相互接続点Aに接続されており、反転入力端は参照電圧Vrefを発生する定電圧源16に接続されている。差動増幅器15は、相互接続点Aの電位Vmonと参照電圧Vrefとの電位差を増幅し、制御電圧Vgとしてトランジスタ12a及び12bへ出力する。トランジスタ12a及び12bのドレイン−ソース間抵抗は、この制御電圧Vgが高くなると減少し、低くなると増加する。
【0020】
以上の構成を備える受信回路1aの作用及び効果について説明する。いま、第1の端子2と第2の端子3との間を終端する抵抗11a及び11bの抵抗値をそれぞれRab/2とし、トランジスタ12a及び抵抗11cからなる直列抵抗値をRacとし、トランジスタ12b及び抵抗11dからなる直列抵抗値をRbc(=Rac)とする。この場合、相互接続点Aと電源電位線Vccとの間の抵抗値Rxは、
【数1】


と表される。
【0021】
端子2,3へ入力される信号が差動信号であれば相互接続点Aは仮想接地点となるので、相互接続点Aの電位Vmonに対する受信信号の影響は殆ど無い。従って、トランジスタ12a及び抵抗11a,11cを流れる電流I2、並びにトランジスタ12b及び抵抗11b,11dを流れる電流I3による電圧降下によって相互接続点Aの電位Vmonが定まる。換言すれば、相互接続点Aの電位Vmonは、トランジスタ12a,12bの電流端子間(ソース−ドレイン間)の抵抗値を反映した値となる。終端回路7においては、この電位Vmonと参照電圧Vrefとの差を差動増幅器15により増幅し、差動増幅器15の出力を制御電圧Vgとしてトランジスタ12a,12bの制御端子(ゲート)に帰還させることによって、抵抗値Rac,Rbcの自動制御を実現している。
【0022】
参照電圧Vrefは、電源電位線Vccの電位から目標電圧Vtgtを差し引いた電圧を供給する。目標電圧Vtgtは、抵抗値Rx及び定電流I1の積とほぼ同値になるよう設定される。
【0023】
ここで、終端回路7による終端抵抗値Rdiffは、Δ−Y変換公式から
【数2】


と表される。抵抗値のプロセス変動率(製造誤差)をa(例えば0.7≦a≦1.3、変動無しのとき1.0)とおき、抵抗値Rac及びRdiffにプロセス変動を加味した値をそれぞれRac及びRdiffとすると、(2)式は、
【数3】


となる。本実施形態の終端回路7においては、差動増幅器15による帰還制御によって、抵抗値Rxがプロセス変動に依らず一定となるように制御される。従って、Racは、
【数4】


と表される。(4)式を(3)式に代入すると、
【数5】


となる。なお、(5)式からわかるように、或る抵抗値Rdiffを実現するための抵抗値Rab及びRxの組み合わせは複数存在する。従って、例えば差動伝送における一般的な特性インピーダンスである100Ωに抵抗値Rdiffを設定する場合においても、抵抗値Rab及びRxの任意の組み合わせによってその抵抗値を実現できる。
【0024】
図2は、プロセス変動を加味した差動入力抵抗値(終端抵抗値)Rdiffと、プロセス変動率aとの関係((5)式参照)を示している。図2において、グラフG1はRab=200[Ω]、Rx=100[Ω]としたものであり、グラフG2はRab=204[Ω]、Rx=102[Ω]としたものであり、グラフG3はRab=150[Ω]、Rx=112.5[Ω]としたものである。なお、グラフG4は、比較のため、集積回路のシート抵抗のみで終端抵抗を構成した場合を示している。
【0025】
グラフG1〜G3を参照すると、グラフG4と比較してプロセス変動による終端抵抗値の変動幅が効果的に狭められていることがわかる。すなわち、グラフG1の場合、0.7≦a≦1.3のプロセス変動に対して終端抵抗値の変動幅が設計値(100Ω)の10%以下であり、プロセス変動による終端抵抗値の変動が極めて効果的に抑えられている。また、グラフG2の場合、0.7≦a≦1.3のプロセス変動に対して終端抵抗値の変動範囲が102Ωを頂点として変化しており、プロセス変動がゼロの場合に終端抵抗値が誤差を含んでしまうが、終端抵抗値の変動幅に関してはグラフG1と同様に小さく抑えられている。また、グラフG3の場合、グラフG1及びG2の場合と比較してその効果は小さいが、従来型(グラフG4)と比較して終端抵抗値の変動幅を小さく抑えることができる。
【0026】
また、図3は、受信回路1aにおけるリターンロス[dB]とプロセス変動率aとの関係を示している。図3において、グラフG5〜G8は、それぞれ図2のグラフG1〜G4に対応している。なお、リターンロスLOSS[dB]は、次の(6)式によって算出される。(6)式において、Z0は特性インピーダンスであり、Ziは実際の終端抵抗値(図2における縦軸の値)である。
【数6】


図3に示すように、グラフG6の場合(すなわちRab=204[Ω]、Rx=102[Ω])では、0.8≦a≦1.2のプロセス変動に対してほぼ−40dB以下のリターンロスを確保できることがわかる。また、グラフG5(Rab=200[Ω]、Rx=100[Ω])の場合、及びグラフG7の場合(Rab=150[Ω]、Rx=112.5[Ω])においても、従来型(グラフG8)と比較してリターンロスが少なくとも0.7≦a≦1.3の範囲で低下していることがわかる。
【0027】
本実施形態の受信回路1aの作用効果を端的に述べると、以下のとおりである。受信回路1aにおいては、相互接続点Aの電位Vmonが、トランジスタ12aの電流端子間(ソース−ドレイン間)抵抗、及び抵抗11a,11cからなる直列抵抗値と、トランジスタ12bの電流端子間抵抗、及び抵抗11b,11dからなる直列抵抗値とを反映した値となる。受信回路1aでは、この電位Vmonが所定電位に近づくように制御電圧生成部14(差動増幅器15)がトランジスタ12a,12bへ制御電圧Vgを提供するので、トランジスタ12a,12bの電流端子間の抵抗値が制御され、上記した直列抵抗値が或る所定値に精度良く制御される。このように、本実施形態の受信回路1aによれば、図5に示した回路とは異なり終端抵抗部分が帰還回路に含まれるので、トランジスタや抵抗素子の誤差、或いは信号ラインの電圧変動に関わらず、精度が高い終端回路7を実現することができる。
【0028】
また、本実施形態のように、終端回路7は、トランジスタ12a,12bのそれぞれに直列接続された抵抗11c,11dを備えることが好ましい。これにより、第1の端子2の終端抵抗がトランジスタ12a及び抵抗11cによって構成され、第2の端子3の終端抵抗がトランジスタ12b及び抵抗11dによって構成されるので、終端抵抗値の可変幅を更に狭くして終端抵抗値をより高精度に制御できる。
【0029】
なお、終端回路7の高周波特性に関しては、トランジスタ12a,12bの寸法に依存する。Rxを100Ω、Rabを200Ωに設定した場合、Rac及びRbcはそれぞれ100Ωとなるが、プロセス変動に対するトランジスタ12a,12bの抵抗値の制御範囲を考慮してRac,Rbcの1/2の抵抗値をトランジスタ12a,12bに割り当てた場合、トランジスタ12a,12bに要求される電流端子間抵抗は50Ωとなる。これに対し、図5に示した終端回路100は片相終端回路なので、同様の終端条件(差動で100Ω、片相で50Ω)を実現しようとした場合、同様に50Ωの1/2の抵抗値をトランジスタに割り当てると、トランジスタに要求される電流端子間抵抗は25Ωとなり、更に小さくなってしまう。
【0030】
ここで、例えばMOS型FETの深い三極管領域における電流端子間抵抗値Rmosは、
【数7】


と表される。(7)式において、μは電子の移動度、COXはゲート絶縁層の容量、Wはゲート幅、Lはゲート長、Vgsはゲート−ソース間電圧、VthはMOS型FETのしきい値電圧である。(7)式より、電流端子間抵抗値を小さくする為には、W/Lを大きくする必要がある(プロセス条件は同一)。しかしながら、W/Lを大きくすると各端子における寄生容量が大きくなってしまい、高周波特性を劣化させることとなる。このことから、本実施形態の終端回路7は、図5に示した従来の終端回路100と比較して高周波特性に優れており、受信回路1aに特に好適であることがわかる。
【0031】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明に係る受信回路の第2実施形態の構成を示す回路図である。同図に示す受信回路1bは、第1の端子2及び第2の端子3、増幅器4、及び終端回路8を備える。なお、これらのうち、終端回路8を除く他の構成については上記第1実施形態と同様なので詳細な説明を省略する。
【0032】
終端回路8は、第1実施形態と同様に構成された第1の抵抗11a及び第2の抵抗11bを有する。また、終端回路8は、第1実施形態とは異なる構成の第3の抵抗11e及び第4の抵抗11f、トランジスタ12c及び12d、定電流源17、並びに制御電圧生成部18を有する。
【0033】
トランジスタ12cは、本実施形態における第1のトランジスタであり、第1の端子2と第1の定電位線(本実施形態では接地電位線GNDが第1の定電位線となっている)との間の可変終端抵抗素子として設けられている。具体的には、トランジスタ12cの一方の電流端子(ソース)は信号ライン5に接続されており、他方の電流端子(ドレイン)は接地電位線GNDに接続されている。本実施形態では抵抗11eがトランジスタ12cに対し直列に接続されており、トランジスタ12cの他方の電流端子(ドレイン)は抵抗11eを介して接地電位線GNDに接続されている。従って、第1の端子2は、トランジスタ12c及び抵抗11eによって終端される。
【0034】
トランジスタ12dは、本実施形態における第2のトランジスタであり、第2の端子3と第1の定電位線(接地電位線GND)との間の可変終端抵抗素子として設けられている。具体的には、トランジスタ12dの一方の電流端子(ソース)は信号ライン6に接続されており、他方の電流端子(ドレイン)は接地電位線GNDに接続されている。本実施形態では、抵抗11eと等しい抵抗値を有する抵抗11fがトランジスタ12dに対し直列に接続されており、トランジスタ12dの他方の電流端子(ドレイン)は抵抗11fを介して接地電位線GNDに接続されている。従って、第2の端子3は、トランジスタ12d及び抵抗11fによって終端される。
【0035】
なお、トランジスタ12c及び12dは、そのゲート長やゲート幅といった寸法が互いに等しくなるようにICチップ内に形成されている。また、図4にはトランジスタ12c,12dとしてnチャネルMOS型FETを図示しているが、他のタイプのFETやバイポーラトランジスタを代わりに用いてもよい。また、抵抗11e及び11dは、トランジスタ12c及び12dの一方の電流端子(ソース)側に接続されてもよい。
【0036】
定電流源17は、接地電位線GNDとは電位が異なる第2の定電位線(本実施形態では正の電源電位線Vcc)と相互接続点Aとの間に接続されており、電源電位線Vccと相互接続点Aとの間に所定の大きさの定電流I4を流す。本実施形態の終端回路8においては、トランジスタ12c、抵抗11a及び11eからなる直列抵抗成分と、トランジスタ12d、抵抗11b及び11fからなる直列抵抗成分とが、相互接続点Aと接地電位線GNDとの間で並列に接続されており、これらの直列抵抗成分の抵抗値は実質的に等しく設定されている。従って、トランジスタ12c、抵抗11a及び11eを流れる電流I5の大きさ、並びにトランジスタ12d、抵抗11b及び11fを流れる電流I6の大きさは、それぞれ定電流I4の1/2となる。なお、定電流I4の大きさは、受信回路1bの温度や電源電圧Vccの大きさに依らず一定であることが好ましい。
【0037】
制御電圧生成部18は、トランジスタ12c及び12dの各制御端子(ゲート)に制御電圧Vgを提供する。制御電圧生成部18は、相互接続点Aの電位Vmonを入力し、この電位Vmonが所定電位に近づくように制御電圧Vgを生成する。本実施形態の制御電圧生成部18は、差動増幅器19を含む。差動増幅器19の非反転入力端は相互接続点Aに接続されており、反転入力端は参照電圧Vrefを発生する定電圧源20に接続されている。差動増幅器19は、相互接続点Aの電位Vmonと参照電圧Vrefとの電位差を増幅し、制御電圧Vgとしてトランジスタ12c及び12dへ出力する。トランジスタ12c及び12dのドレイン−ソース間抵抗は、この制御電圧Vgが高くなると減少し、低くなると増加する。
【0038】
本実施形態の受信回路1bの作用効果について説明する。受信回路1bにおいては、トランジスタ12c及び抵抗11eが第1の端子2の終端抵抗として機能しており、トランジスタ12d及び抵抗11fが第2の端子3の終端抵抗として機能している。この受信回路1bにおいては、トランジスタ12c、抵抗11a及び11eからなる直列抵抗成分と、トランジスタ12d、抵抗11b及び11fからなる直列抵抗成分とが、第1の定電位線(接地電位線GND)と相互接続点Aとの間で並列に接続されている。従って、この並列抵抗回路に定電流I4が流れる際の電圧降下に相当する電位が、相互接続点Aの電位Vmonとなる。
【0039】
すなわち、相互接続点Aの電位Vmonは、トランジスタ12cの電流端子間(ソース−ドレイン間)抵抗、及び抵抗11a,11eからなる直列抵抗値と、トランジスタ12dの電流端子間抵抗、及び抵抗11b,11fからなる直列抵抗値とを反映した値となる。受信回路1bでは、この電位Vmonが所定電位に近づくように制御電圧生成部18(差動増幅器19)がトランジスタ12c,12dへ制御電圧Vgを提供するので、トランジスタ12c,12dの電流端子間の抵抗値が制御され、上記した直列抵抗値が或る所定値に精度良く制御される。このように、本実施形態の受信回路1bによれば、終端抵抗部分が帰還回路に含まれるので、トランジスタや抵抗素子の誤差、或いは信号ラインの電圧変動に関わらず、精度が高い終端回路8を実現することができる。
【0040】
本発明による受信回路は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては第1及び第2の定電位線をそれぞれ電源電位線及び接地電位線(またはその逆)としているが、互いに電位が異なる定電位線であれば、これらに限られるものではない。また、上記実施形態において、第1及び第2のトランジスタ、第1〜第4の抵抗等は一つのICチップ内に形成されると説明したが、本発明において、これらは個別の部品として存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明に係る受信回路の第1実施形態の構成を示す回路図である。
【図2】図2は、プロセス変動を加味した差動入力抵抗値(終端抵抗値)と、プロセス変動率との関係を示している。
【図3】図3は、受信回路におけるリターンロスとプロセス変動率との関係を示している。
【図4】図4は、本発明に係る受信回路の第2実施形態の構成を示す回路図である。
【図5】図5は、特許文献1に示された終端回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0042】
1a,1b…受信回路、2…第1の端子、3…第2の端子、4…増幅器、5,6…信号ライン、7,8…終端回路、11a〜11f…抵抗、12a〜12d…トランジスタ、13,17…定電流源、14,18…制御電圧生成部、15,19…差動増幅器、16,20…定電圧源、A…相互接続点、SD…差動信号、SN…逆相信号、SP…正相信号、Vg…制御電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動信号を受信する受信回路であって、
前記差動信号の正相信号を受ける第1の端子及び逆相信号を受ける第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に直列に接続された第1及び第2の抵抗と、
一方の電流端子が前記第1の端子に接続され、他方の電流端子が第1の定電位線に接続された第1のトランジスタと、
一方の電流端子が前記第2の端子に接続され、他方の電流端子が前記第1の定電位線に接続された第2のトランジスタと、
前記第1の定電位線とは電位が異なる第2の定電位線と前記第1及び第2の抵抗の相互接続点との間に接続された定電流源と、
前記第1及び第2のトランジスタの各制御端子に、前記相互接続点の電位が所定電位に近づくような制御電圧を提供する制御電圧生成部と
を備えることを特徴とする、受信回路。
【請求項2】
前記第1及び第2のトランジスタのそれぞれに直列接続された第3及び第4の抵抗を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の受信回路。
【請求項3】
前記第1の定電位線が正の電源電位線であり、前記第2の定電位線が接地電位線であることを特徴とする、請求項1または2に記載の受信回路。
【請求項4】
前記第1の定電位線が接地電位線であり、前記第2の定電位線が正の電源電位線であることを特徴とする、請求項1または2に記載の受信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−227857(P2008−227857A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62404(P2007−62404)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】