説明

受光装置

【課題】外部の湿度を吸収しにくく、受光率の経時劣化の少ない受光装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの受光素子が設けられた基板と、基板の受光素子の設けられた面の上部に透明カバー6とを備え、基板と透明カバー6の間に、少なくとも基板の受光素子領域の周囲を囲む領域に密閉部材5を設ける。密閉部材5を、環状オレフィン樹脂を含む材料により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子が設けられた基板、密閉部材、及び透明カバーを備える受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受光装置において、受光素子部は入ってくる光を正確に捕捉する必要があることから、湿気など外部大気から隔離させる必要がある。ここで、受光素子部の上部には一般的にはガラス板等の透明カバーが設けられており、受光素子部は以下に述べる方法によって外部大気から隔離される。
【0003】
受光素子を外部から保護する方法としては、受光素子領域を樹脂で埋め込むことによって外部からの湿気等を遮断する方法の他、受光素子領域の上部は樹脂で埋め込むことなく中空構造にしておき、受光素子領域の周囲を樹脂で囲むことによって外部からの湿気等を遮断する方法が知られている(特許文献1、2)。ここで、上記樹脂としてはエポキシ樹脂などが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−31939号公報
【特許文献2】特開2002−329852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エポキシ樹脂を用いて受光素子を外部から隔絶した構造の受光素子では、エポキシ樹脂が吸湿し受光素子部分に水分が侵入することがあった。これにより、受光素子表面に曇りが生じ受光率の経時劣化が生じることがあった。
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、外部の水分を吸収しにくく受光率の経時劣化の少ない受光装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
基板と、
前記基板の一方の面に設けられた受光素子と、
前記基板の前記面の上部に設けられた透明カバーと、
前記基板と前記透明カバーとの間において、少なくとも前記受光素子の周囲部分に設けられ、前記受光素子を外部に対して密閉する密閉部材と、
を備え、
前記密閉部材が環状オレフィン樹脂を含む受光装置、が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の受光素子は、吸湿性の低い環状オレフィン樹脂を含む密閉部材を用いているので、受光素子部分に水分が侵入することを効果的に抑制することができる。これにより、受光率の経時劣化の少ない受光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0009】
【図1】受光素子と透明カバー部材の間を密閉部材で埋め込まれた受光装置の断面図である。
【図2】接着剤を使用しない中空構造を持つ受光装置の断面図である。
【図3】接着剤を使用した中空構造を持つ受光装置の断面図である。
【図4】接着剤を使用した中空構造を持つウェハーレベルCSP構造の受光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の受光装置を、形態の異なるCMOSイメージセンサに適用した例を挙げて説明する。なお、本発明の受光装置はこれらに限定されず、CMOSイメージセンサ以外にもCCDなど種々の実施形態を含むものである。CMOSイメージセンサは支持体上に形成されており、受光素子を含んでいる。支持体1は他のイメージセンサを構成する複数の集積回路を含むシリコンウェハーである。
【0011】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る受光素子の概略構造を示す図である。この受光素子は、基板1と、基板1の一方の面に設けられた受光素子2と、その面の上部に設けられた透明カバー6とを備え、基板1と透明カバー6との間隙を充填するように設けられ、受光素子2を外部に対して密閉する密閉部材5とを備える。密閉部材5は環状オレフィン樹脂を含む材料により構成されている。
支持体1上の受光素子2は光電領域4及びマイクロレンズ3で構成される画素センサの二次元配列であり、これは標準的な構成を持つものであっても良い。該画素センサのサイズ、及び数量により、そのイメージセンサが実現し得る画像解像度が決まるものであり、その配列は、通常1行あるいは1列当たりに数百又は数千個の画素センサを含んでいる。
【0012】
光電領域4上にマイクロレンズ3の配列が形成される。マイクロレンズ3は個々の光電領域4に対応して配列されている。これらのマイクロレンズ3は例えば屈折率1.3〜2.0の透明樹脂(フォトレジストを含む)からなる層をフォトリソグラフ法等によって所定の形状に区画した後、熱処理によって各区画の透明樹脂を溶融させ、表面張力によって角部を丸めた後に冷却すること等により円筒形のレンズを形成することができる。これらのマイクロレンズ3は通常約2〜6μm幅であり、高さは約1〜2μmである。これらの受光素子は密閉部材5と接触して埋め込まれるように密閉部材5により周囲を覆われている。密閉部材5の上には透明カバー6が設けられている。光はこの透明カバー6上から密閉部材5を経て受光素子に到達する。
密閉部材5が環状オレフィン樹脂を含むことにより、外部湿気を吸収しにくい、受光率の劣化が少ない、製造安定性に優れるなどの効果を得ることができる。環状オレフィン樹脂は密閉部材5の全体に均一に存在してもよいし、密閉部材5の一部に局在する状態であってもよい。環状オレフィン樹脂が密閉部材5の主成分として用いられていることが好ましい。
【0013】
次に、上記受光装置の製造方法を説明する。受光領域の各々に対応してマイクロレンズ3が配置された受光素子が形成され、マイクロレンズ領域以外の領域に表面電極が形成された半導体基板上に作製したエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂と架橋剤を含む樹脂組成物をスピンコーターを用いて塗布、乾燥させることにより塗膜を得る。更にこの塗膜上に透明カバーを乗せ、全体を50℃から250℃に加熱させて接合させる。このようにして図1のような受光装置が得られる。
【0014】
従来は上記密閉部材5としてエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂の代わりにエポキシ樹脂が使用されることがあったが、受光素子がエポキシ樹脂と直接接触して埋め込まれるように保護される場合には、受光素子とエポキシ樹脂との屈折率差が小さいことから、集光機能を失ってしまうという課題があった。また、長時間使用した場合に受光素子上のエポキシ樹脂が光などにより劣化し、受光素子の受光率が低下するという課題があった。
本発明では、エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂を密閉部材として用いることにより、こうした樹脂劣化を大幅に抑制することが可能となり、また受光素子と上記樹脂との屈折率差も適度に確保できることから集光能力を維持し続けることが可能となる。
【0015】
(第二の実施形態)
図2は、本実施形態に係る受光素子の概略構造を示す図である。この受光素子は、基板1と、基板1の一方の面に設けられた受光素子2と、その面の上部に設けられた透明カバー6とを備える。基板1と透明カバー6との間には、環状オレフィン樹脂を含む材料により構成される密閉部材5が設けられている。密閉部材5は、受光素子2から離隔した位置において受光素子2を取り囲むように設けられ、基板1と透明カバー6とを接合するとともに、その内側に中空部分を形成している。密閉部材5は環状オレフィン樹脂を含む材料により構成されている。
密閉部材5は透明カバー6と受光素子2の間の中空構造を形成するためのスペーサー(ダム)として機能している。密閉部材5と透明カバー6は図3に示すように接着剤7を介して接合されていてもよい。密閉部材5はエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂で構成され、より好ましくはエポキシ基を有する感光性環状オレフィン樹脂で構成される。感光性を付与することで、作業性が向上し、かつ高位置精度、サイズ高さの均一性に優れるという利点を有する。また、密閉部材5がエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂を含むことにより、外部湿気を吸収しにくくなるため、透明カバー6が曇りにくいなどの効果を得ることができる。
【0016】
次に、上記受光装置の製造方法を説明する。
マイクロレンズ3が設けられた半導体基板上にエポキシ基を有する感光性環状オレフィン樹脂組成物をスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて加熱、乾燥し、塗膜を得る。この塗膜にダムを形成する部分に露光を行い、その後ホットプレートにて50℃〜180℃にて数分間架橋反応を促進させるため加熱する。次に現像液に30秒程度浸漬することによって未露光部を溶解除去する。
更にこの塗膜上に透明カバーを乗せ、全体を50℃から250℃に加熱させて接合させる。または、この塗膜を50℃から250℃に加熱したあと、この塗膜上に接着剤を塗布し、透明カバーを乗せ、接合させる。その結果、受光素子領域を囲むようにダムが成形され、マイクロレンズ3上に残渣のない受光装置が作製される。
【0017】
(第三の実施形態)
図3および図4は、本実施形態に係る受光素子の概略構造を示す図である。図4は本発明の中空構造を持つ図3に示す受光装置の一つであるウェハーレベルCSP(Chip Size Package)構造のCMOSイメージセンサの断面図を示したものである。
【0018】
本実施形態に係る受光装置は、密閉部材5が受光素子2を囲むように配置され、基板1と透明カバー6とを接合するとともに、その内側に中空部分を形成している。密閉部材5の上部は平らな形状になっており、必要に応じてその上面には接着剤7を介して透明カバーが設けられる。密閉部材5はマイクロレンズ3より高く、透明カバー6が密閉部材5の上面に設けられた場合、マイクロレンズ3と透明カバー6の間にはエアギャップが形成される。この密閉部材5は約5〜40μmの高さと100〜1000μmの幅を持つ。しかしながら、密閉部材5の形状は画素センサのサイズやマイクロレンズ3の高さなどの各種要因に応じて大幅に異なっても良い。
【0019】
密閉部材5を形成後、透明カバー6を加熱により貼りあわせる。この際、必要に応じて接着剤7を用いることもできる。熱硬化型接着剤7は密閉部材5の上面に塗布される。密閉部材5に接着剤7をスクリーン印刷などにより選択的に塗布し、透明カバー6を密閉部材5の上に載せ、熱処理によって接着剤7を硬化する。本発明の形態では、所定の高さの密閉部材5を設けて支持体1であるウエハー10と透明カバー6とを貼り合わせることでウエハー10と透明カバー6との間隔を一定にすることができ位置あわせも容易である。この接着工程は真空中又は窒素などの不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
【0020】
密閉部材5の上面に透明カバー6を接着後、例えばシェルケース方式CSPで使用される電気リードの形成方法を用いて配線を形成し、受光素子単位に切断し、個々の受光装置に分離すると、図4に示すCSPで構成された受光装置を得ることができる。図4に示す受光装置は透明カバー6として、ガラス基板を用いている。このCSPは電極パッド11に接合されたリード線13がチップ裏面へと伸びており、裏面において配線を形成することが可能であるため、半導体チップをワイヤボンディングにより接合するパッケージに比べ、配線スペースを大幅に削減することができる。また、この方法を用いれば、半導体素子の形成からパッケージ化までの全製造工程をウェハー状態で行うことができるため、従来の受光装置に比べて、製造コストが大幅に低減される。
【0021】
さらに、受光装置を製造する際に透明カバーを貼り合わせてから、素子単位に分割するためダイシング時に受光素子表面は汚染されず信頼性を確保することができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明した。以下に本発明の密閉部材に用いられる環状オレフィン樹脂について説明する。
【0023】
本発明で使用する環状オレフィンモノマーとしては、一般的には、シクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体が挙げられる。これらのモノマーに官能基が結合した置換体も用いることができる。
【0024】
本発明で使用する環状オレフィン樹脂としては、上記環状オレフィンモノマーの重合体が挙げられる。なお重合方法はランダム重合、ブロック重合など公知の方法が用いられる。具体例としては、ノルボルネン型モノマ−の(共)重合体、ノルボルネン型モノマ−とα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマ−との共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがある。このうち、ノルボルネンモノマーを付加(共)重合することによって得られたポリマーが好ましいが、本発明はなんらこれに限定されるものではない。本発明の密閉部材にノルボルネン樹脂を使用した場合には、受光装置の製造時において、パターニングがより高精度に実現できるなど、製造安定性が優れるという利点を有する。
【0025】
環状オレフィン樹脂の付加重合体としては、(1)ノルボルネン型モノマ−を付加(共)重合させて得られるノルボルネン型モノマ−の付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマ−とエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマ−と非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマ−との付加共重合体が挙げられる。これらの樹脂は公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0026】
環状オレフィン樹脂の開環重合体としては、(4)ノルボルネン型モノマ−の開環(共)重合体、及び必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマ−とエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、及び必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマ−と非共役ジエン、又は他のモノマ−との開環共重合体、及び必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂が挙げられる。これらの樹脂は公知のすべての重合方法で得ることができる。
上記のうち、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合させて得られる付加(共)重合体が好ましいが、本発明はなんらこれに限定されるものではない。
【0027】
本発明で使用する環状オレフィン樹脂は、反応性の官能基を含むことが好ましい。反応性官能基の具体例としては、グリシジルエーテル基などのエポキシ基や、オキセタン基、カルボキシル基、水酸基、不飽和結合、アミノ基などである。この中でもエポキシ基が特に好ましい。
【0028】
本発明で使用するエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂は、一般的には分子内にエポキシ基を含むモノマーを直接重合することによって得ることができるが、重合後に変性反応によって側鎖にエポキシ基を導入する方法によっても同様の重合体を得ることができる。変性反応としては、上記重合体にエポキシ基含有不飽和モノマ−をグラフト反応させる、上記重合体の反応性官能基部位にエポキシ基を有する化合物を反応させる、分子内に炭素−炭素二重結合を有する上記重合体に過酸やハイドロパ−オキサイドなどのエポキシ化剤を用いて直接エポキシ化させる等の公知の方法がある。
【0029】
環状オレフィン樹脂の付加重合体は、金属触媒による配位重合、又はラジカル重合によって得られる。このうち、配位重合においては、モノマーを、遷移金属触媒存在下、溶液中で重合することによってポリマーが得られる(NiCOLE R. GROVE et al. Journal of Polymer Science:part B,Polymer Physics, Vol.37, 3003−3010(1999))。
【0030】
配位重合に用いる金属触媒として代表的なニッケルと白金触媒は、PCT WO 9733198とPCT WO 00/20472に述べられている。配位重合用金属触媒の例としては、(トルエン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、(メシレン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、(ベンゼン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(テトラヒドロ)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(エチルアセテート)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(ジオキサン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケルなどの公知の金属触媒が挙げられる。
【0031】
ラジカル重合技術については、Encyclopedia of Polymer Science, John Wiley & Sons, 13, 708(1988)に述べられている。
一般的にはラジカル重合はラジカル開始剤の存在下、温度を50℃〜150℃に上げ、モノマーを溶液中で反応させる。ラジカル開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル、アゾビスイソカプトロニトリル、アゾビスイソレロニトリル、t−ブチル過酸化水素などである。
【0032】
環状オレフィン樹脂の開環重合体は、公知の開環重合法により、チタンやタングステン化合物を触媒として、少なくとも一種以上のノルボルネン型モノマ−を開環(共)重合して開環(共)重合体を製造し、次いで必要に応じて通常の水素添加方法により前記開環(共)重合体中の炭素−炭素二重結合を水素添加して熱可塑性飽和ノルボルネン樹脂を製造することによって得られる。
【0033】
上述重合系の適当な重合溶媒としては炭化水素や芳香族溶媒が含まれる。炭化水素溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、やシクロヘキサンなどであるがこれに限定されない。芳香族溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンやメシチレンなどであるがこれに限定されない。ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、エステル、ラクトン、ケトン、アミドも使用できる。これら溶剤を単独や混合しても重合溶媒として使用できる。
【0034】
本発明の環状オレフィン樹脂の分子量は、開始剤とモノマーの比を変えたり、重合時間を変えたりすることにより制御することができる。上記の配位重合用が用いられる場合、米国特許No.6,136,499に開示されるように、分子量を連鎖移動触媒を使用することにより制御することができる。この発明においては、エチレン、プロピレン、1−ヘキサン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、などα―オレフィンが分子量制御するのに適当である。
【0035】
本発明において重量平均分子量は10,000〜500,000、好ましくは80,000〜200,000さらに好ましくは100,000〜125,000である。重量平均分子量は標準ポリノルボルネンを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。(ASTMDS3536−91準拠)
【0036】
本発明で用いられるエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂を製造するために使用する環状オレフィンモノマーとしては、一般式(7)で表されるノルボルネン型モノマーが好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等が、アルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル、ブチニル、シクロヘキシル基等が、アルキニル基の具体例としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル基等が、アリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル基等が、アラルキル基の具体例としてはベンジル、フェネチル基等がそれぞれ挙げられるが、本発明は何らこれらに限定されない。
【0037】
エステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基ついては、これらの基を有している官能基であれば特に構造は限定されない。エポキシ基を含有する官能基の好ましい具体例としては、グリシジルエーテル基を有する官能基が挙げられるが、エポキシ基を有する官能基であれば特に構造は限定されない。
【0038】
【化1】

[式(7)中、XはO、CH、(CHのいずれかであり、nは0〜5までの整数である。R〜Rは、それぞれ、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、エステル基を含有する一価の官能基、ケトン基を含有する一価の官能基、エーテル基を含有する一価の官能基およびエポキシ基を含有する一価の官能基から選択されるいずれかの基である。R〜Rは、同一のものであっても異なっていてもよい。式(7)においては、全繰り返し単位のR〜Rのうち少なくとも一つ以上はエポキシ基を含有する官能基である。]
【0039】
本発明で用いられる環状オレフィン樹脂を製造するために使用する環状オレフィンモノマーとしては、例えば、アルキル基を有するものとして、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ペンチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−ヘプチル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−ノニル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネンなど、アルケニル基を有するものとしては、5−アリル−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネンなど、アルキニル基を有するものとしては、5−エチニル−2−ノルボルネンなど、アルコキシシリル基を有するものとしては、ジメチルビス((5−ノルボルネン−2−イル)メトキシ))シランなど、シリル基を有するものとしては、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジメチルビス((2−(5−ノルボルネン−2−イル)エチル)トリシロキサンなど、アリール基を有するものとしては、5−フェニルー2−ノルボルネン、5−ナフチル−2−ノルボルネン、5−ペンタフルオロフェニル−2−ノルボルネンなど、アラルキル基を有するものとしては、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネン、5−ペンタフルオロフェニルメタン−2−ノルボルネン、5−(2−ペンタフルオロフェニルエチル)−2−ノルボルネン、5−(3−ペンタフルオロフェニルプロピル)−2−ノルボルネンなど、アルコキシシリル基を有するものとしては、5−トリメトキシシリル−2−ノルボルネン、5−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(2−トリエトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(3−トリメトキシプロピル)−2−ノルボルネン、5−(4−トリメトキシブチル)−2−ノルボルネン、5ートリメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンなど、ヒドロキシル基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するものとしては、5−ノルボルネン−2−メタノール、及びこのアルキルエーテル、酢酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、プロピオン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、酪酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、吉草酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプロン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ラウリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ステアリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、オレイン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、リノレン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸i−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリメチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリエチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸イソボニルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシエチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸メチルエステル、ケイ皮酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチルエチルカルボネート、5−ノルボルネン−2−メチルn−ブチルカルボネート、5−ノルボルネン−2−メチルt−ブチルカルボネート、5−メトキシ−2−ノルボルネン、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−エチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n―プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−デシルエステルなど、エポキシ基を有するものとしては、5−[(2,3−エポキシプロポキシ)メチル]−2−ノルボルネンなど、またテトラシクロ環から成るものとして、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−n−プロピルカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−i−プロピルカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(2−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(1−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−シクロヘキシロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(4'−t−ブチルシクロヘキシロキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−テトラヒドロフラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−テトラヒドロピラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−i−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(2−メチルポロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(1−メチルポロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−シクロヘキシロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(4'−t−ブチルシクロヘキシロキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−テトラヒドロフラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−テトラヒドロピラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−アセトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(メトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(エトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(n−プロポキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(i−プロポキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(n−ブトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(t−ブトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(シクロへキシロキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(フェノキシロキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(テトラヒドロフラニロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジ(テトラヒドロピラニロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン−8−カルボン酸、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン−8−カルボン酸、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.01,6]ドデック−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,12]ドデック−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,101,6]ドデック−3−エンなどが挙げられる。
【0040】
本発明で用いられるエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂は一般的に式(8)で表されるように、ノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体であることが好ましい。
【0041】
【化2】

[式(8)中、XはO、CH、(CHのいずれかであり、nは0〜5までの整数、mは10〜10,000までの整数である。R〜Rは、それぞれ、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、エステル基を含有する一価の官能基、ケトン基を含有する一価の官能基、エーテル基を含有する一価の官能基およびエポキシ基を含有する一価の官能基から選択されるいずれかの基である。R〜Rは、同一のものであっても異なっていてもよい。式(8)においては、全繰り返し単位のR〜Rのうち少なくとも一つ以上はエポキシ基を含有する官能基である。]
【0042】
本発明で用いられるエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂として、式(9)、(10)で表される重合体が硬化後のフィルム特性の点から好ましい。式(10)のように、アラルキル基を有するノルボルネンモノマーをポリマーに導入することで、ネガ型現像液の溶媒として用いられているシクロペンタノンやヘプタノンなどの極性溶媒への溶解性が向上するため作業性に優れるという利点を有する。
【0043】
【化3】

[式(9)中、m、nは1以上の整数である。R〜Rは、それぞれ、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、エステル基を含有する一価の官能基、ケトン基を含有する一価の官能基、エーテル基を含有する一価の官能基およびエポキシ基を含有する一価の官能基から選択されるいずれかの基である。R〜Rは、同一のものであっても異なっていてもよい。]
【0044】
【化4】

[式(10)中、l、m、nは1以上の整数、pは0〜5の整数である。R〜R10は、それぞれ、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、エステル基を含有する一価の官能基、ケトン基を含有する一価の官能基、エーテル基を含有する一価の官能基およびエポキシ基を含有する一価の官能基から選択されるいずれかの基である。R〜R10は、同一のものであっても異なっていてもよい。]
【0045】
本発明で用いられるエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂として、式(11)で表される重合体が硬化後のフィルム特性の点から更に好ましい。デシル基を有するモノマーを導入することにより低弾性な膜が得られ、また、フェニルエチル基を有するモノマーを導入することにより低吸水性、耐薬品性、極性溶媒溶解性に優れる膜が得られる。
【0046】
【化5】

[式(11)中、l、m、nは1以上の整数である。]
【0047】
共重合体中のエポキシ基を有するモノマーの含有率としては、露光により架橋し、現像液に耐えうる架橋密度が得られることで決めることができる。エポキシ基を有するモノマー含有率がポリマー中に5〜95モル%、好ましくは、20〜80モル%、さらに好ましくは30〜70モル%の割合で使用する。こうして得られるポリマーは低吸水性(<0.3wt%)、低誘電率(<2.6)、低誘電損失(0.001)、ガラス転移点(170〜400℃)などの優れた物理特性を示す。
【0048】
本発明でエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂を架橋させるために用いられる架橋剤は、一般に架橋剤として知られているものであり、例えば加熱によりその能力を発揮する硬化剤や光反応性物質などを用いることができる。
【0049】
加熱によって、エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂を架橋反応させうる硬化剤は、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ビスアジド、酸無水物、ジカルボン酸、多価フェノ−ル、ポリアミドなどが挙げられる。このような硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミン;ジアミノシクロヘキサン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5,2,1,02,6〕デカン;1,3−(ジアミノメチル)シクロヘキサン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ポリアミン;4,4′−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフォン、メタフェニレンジアミン等の芳香族ポリアミン類;4,4′−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサンノン、4,4′−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4′−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4′−アジドベンザル)−4−メチル−シクロヘキサノン、4,4′−ジアジドジフェニルスルホン、4,4′−ジアジドジフェニルメタン、2,2′−ジアジドスチルベンなどのビスアジド;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ナジック酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性環状オレフィン樹脂等の酸無水物類;フマル酸、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ハイミック酸等のジカルボン酸類;フェノ−ルノボラック樹脂、クレゾ−ルノボラック樹脂等の多価フェノ−ル類;ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−612、ナイロン−12、ナイロン−46、メトキシメチル化ポリアミド、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド等のポリアミド類;等が挙げられる。これらは、一種でも二種以上の混合物として使用しても良い。
【0050】
光反応性物質としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤は、公知のあらゆる化合物を用いることができる。光酸発生剤はエポキシ基の架橋を行うとともに、その後の硬化により基板との密着性を向上する。好ましい光酸発生剤としてはオニウム塩、ハロゲン化合物、硫酸塩やその混合物である。例えばオニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、リン酸塩、アルソニウム塩、オキソニウム塩などである。前記のオニウム塩とカウンターアニオンを作ることができる化合物である限り、カウンターアニオンの制限はない。カウンターアニオンの例としては、ホウ酸、アルソニウム酸、リン酸、アンチモニック酸、硫酸塩、カルボン酸とその塩化物であるがこれに限定されない。オニウム塩の光酸発生剤としては、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロアルセネート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロフォスフェート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロスルフェート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアルセネート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロフォスフェート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムトリフルオロスルフォネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアルセネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフォネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムトリフルオロスルフォネート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムテトラフルオロボレート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムテトラフルオロボレート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロアルセネート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロスルフォネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルフォニウムテトラフルオロボレート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムトリフルオロスルフォネート、トリフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフォネート、トリフェニルヨードニウムトリフルオロスルフォネート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムトリフルオロスルフォネート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムトリフルオロスルフォネートを単独で使用しても混合して使用しても良い。
【0051】
フッ素以外のハロゲンを含有している光酸発生剤の例としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)トリアジン、2−アリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、α,β,α−トリブロモメチルフェニルスルフォン、α、α―2,3,5,6−ヘキサクロロキシレン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロキシレン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタンとそれらの混合物である。
【0052】
スルフォネート系の光酸発生剤としては、2−ニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート、2−ニトロベンジルメチルスフォネート、2−ニトロベンジルアセテート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルフォネート、1,2,3−トリス(メタンスルフォニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(エタンスルフォニルロキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(プロパンスルフォニルオキシ)ベンゼンなどであるがこれに限定されない。
【0053】
好ましくは、光酸発生剤としては4,4'−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムトリフレート、4,4',4"−トリス(t−ブチルフェニル)スルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルフォニウムジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4'−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(t−ブチルフェニル)スルフォニムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとそれらの混合物である。
本発明における光酸発生剤の配合割合としては、ポリマー100重量部に対して0.1から100重量部であり、より好ましくは0.1から10重量部である。
【0054】
本発明の架橋剤は、受光装置の組み立てプロセスに応じて適宜選択することができる。組み立てプロセスが露光、現像工程を含む場合には光反応性物質を架橋剤として用いる必要がある。一方、組み立てプロセスが露光、現像工程を含まない場合には、硬化剤と光反応性物質のどちらを用いてもよい。
【0055】
本発明の環状オレフィン樹脂組成物には、必要により感光特性を高めるために増感剤を用いることが可能である。増感剤は光酸発生剤を活性化することが可能な波長の範囲を広げることが可能で、ポリマーの架橋反応に直接影響を与えない範囲で加えることができる。最適な増感剤としては、使用された光源近くにに最大吸光係数を持ち、吸収したエネルギーを効率的に光酸発生剤に渡すことができる化合物である。光酸発生剤の増感剤としては、アントラセン、ピレン、パリレン等の多環芳香族化合物がある。例えば2−イソプロピル−9H―チオキサンテン−9−エン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサンテン、フェノチアジンとそれらの混合物である。本発明における光酸発生剤の配合割合としては、ポリマー100重量部に対して0.1から10重量部であり、より好ましくは0.2から5重量部である。光源がg線(436nm)とi線(365nm)などの長波長の場合、増感剤は光酸発生剤を活性化するのに有効である。
【0056】
少量の酸捕捉剤を添加することにより解像度を向上することが可能である。光化学反応の間に酸捕捉剤は未露光部へ拡散する酸を吸収する。酸捕捉剤としてはピリジン、ルチジン、フェノチアジン、トリ−n−プロピルアミンとトリエチルアミンなどの第二、第三アミンであるがこれに限定されない。酸捕捉剤の配合割合としては、ポリマー100重量部に対して0.10から0.05重量部である。
【0057】
本発明における、エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂と光酸発生剤を含む樹脂組成物には、必要によりレベリング剤、酸化防止剤,難燃剤,可塑剤、シランカップリング剤等の添加剤を添加することができる。
【0058】
本発明においてはこれらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、非反応性の溶剤と反応性の溶剤があり、非反応性溶剤は、ポリマーや添加物のキャリアとして働き、塗布や硬化の過程で除去される。反応性溶剤は樹脂組成物に添加された硬化剤と相溶性がある反応基を含んでいる。非反応性の溶剤としては炭化水素や芳香族である。例を挙げると、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンやデカヒドロナフタレンなどのアルカンやシクロアルカンの炭化水素溶剤であるがこれに限定されない。芳香族溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレンやメシチレンなどである。ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、アセテート、エステル、ラクトン、ケトンやアミドも有用である。反応性の溶剤としてはシクロヘキセンオキサイドやα−ピネンオキサイドなどのシクロエーテル化合物、[メチレンビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシランなどの芳香族シクロエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどの脂環式ビニルエーテル化合物、ビス(4−ビニルフェニル)メタンなどの芳香族化合物を単独でも混合して用いてもよい。好ましくはメシチレンやデカヒドロナフタレンであり、これらはシリコン、シリコンオキサイド、シリコンナイトライド、シリコンオキシナイトライド、などの基板に樹脂を塗布するのに最適である。
【0059】
本発明に用いる樹脂組成物の樹脂固形分は約5〜60重量%である。さらに好ましくは、約30〜55重量%であり、さらに好ましくは、約35〜45重量%である。溶液粘度は10〜25,000cPであるが、好ましくは100〜3,000cPである。
【0060】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ基を有する環状ノルボルネン樹脂と光酸発生剤、及び必要に応じて溶剤、増感剤、酸捕捉剤、レベリング剤、酸化防止剤,難燃剤,可塑剤、シランカップリング剤等を単純に混合することによって得られる。
次に本発明の半導体装置の作成方法について述べる。まず環状オレフィン樹脂組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウェハー、セラミック、アルミ基板等に塗布する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。次に、90〜140℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜700nmの波長のものが好ましい。
【0061】
化学線の照射後に続きベークを行う。この工程はエポキシ架橋の反応速度を増加させる。ベーク条件としては50〜200℃である。好ましくは80〜150℃で、さらに好ましくは90〜130℃である。
【0062】
次に未照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る。現像液としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンやシクロヘキサンなどのアルカンやシクロアルカンなどの炭化水素、トルエン、メシチレン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒である。またリモネン、ジペンテン、ピネン、メンタンなどのテルペン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどのケトン類を用いることができ、それらに界面活性剤を適当量添加した有機溶剤を好適に使用することができる。
【0063】
現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンスする。リンス液としては、アルコールを使用する。次に50〜200℃で加熱処理を行い、現像液やリンス液を除去し、さらにエポキシ基の硬化が完了し耐熱性に富む最終パターンを得る。
【0064】
また、本発明で用いられる接着剤は、シリカフィラーと常温で液状のエポキシ樹脂及び硬化剤で構成されることが好ましく、該成分中にシリカフィラー(A)を1〜10重量%含み、またシリカフィラーは平均粒径が2〜500nmの超微粒子シリカ粉末であることが好ましい。本発明に用いるエポキシ樹脂は常温で液状のものに限定してあるが、常温で液状のものでないとシリカフィラーとの混練において溶剤を必要とする。溶剤は気泡発生の原因となり、硬化物の接着強度、熱伝導率を低下させてしまうため好ましくない。
【0065】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック類とエピクロルヒドリンとの反応で得られるポリグリシジルエーテル等の常温で液状のもの、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイトのような脂環式エポキシがあり、これらのうちの1種類あるいは複数種と併用可能であるが特に限定されるものではない。更にはn−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテルのような通常のエポキシ樹脂も用いることが可能である。
【0066】
また本発明に用いる硬化剤としてはビスフェノールFとジシアンジアミド、アジピン酸ヒドラジド等の潜在型アミン化合物の併用が好ましく、ビスフェノールFは接着剤中に2〜30重量%含まれることが好ましい。2重量%より少ないと配合量が少なすぎて接着強度が不足し、30重量%より多いとエポキシ基に対してフェノール性水酸基が過剰になるため硬化物中に未反応のフェノール性水酸基が残るため好ましくない。
【0067】
本発明に用いるシリカフィラーは平均粒径が2〜500nmの超微粒子シリカ粉末からなり、接着剤中に1〜10重量%を含有することが好ましい。接着剤中の全シリカフィラー量が1重量%より多いとペーストのたれなどの塗布性の問題が解消され、10重量%より少ないとスクリーン印刷用のマスクの目詰まりが起こる等の作業性低下が改善される。また、本発明に用いる接着剤には、必要に応じて硬化促進剤、可撓性付与剤、顔料、染料、消泡剤等の添加剤を用いることもできる。本発明の製造方法は例えば各成分を予備混合し、三本ロールを用いて混練しペーストを得て真空下脱泡することなどがある。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(環状オレフィン樹脂組成物の作製)
5−デシル−2−ノルボルネン(以下、「デシルノルボルネン」と称す)/5−[(2,3−エポキシプロポキシ)メチル]−2−ノルボルネン(以下、「グリシジルメチルエーテルノルボルネン」と称す)=70/30コポリマーの共重合体(A−1)の例を挙げる。
すべてのガラス機器は60℃で0.1Torr下で18時間乾燥した。その後ガラス機器はグローボックスに移され、グローボックスに備え付けられた。エチルアセテート(917g)、シクロヘキサン(917g)、デシルノルボルネン(192g、0.82mol)とグリシジルメチルエーテルノルボルネン(62g、0.35mol)が反応フラスコに加えられた。反応フラスコはグローボックスから取り出し、乾燥窒素ガスを導入した。反応中間体は30分間溶液中に窒素ガスを通して脱気した。グローボックス中でニッケル触媒すなわちビストルエンビスパーフルオロフェニルニッケル9.36g(19.5mmol)がトルエン15mlに溶解して、25mlのシリンジに入れ、グローボックスから取り出し、反応フラスコに加えられた。20℃にて5時間攪拌して反応を終了した。次に過酢酸溶液(975mmol)を加え18時間攪拌した。攪拌を止めると水層と溶媒層に分離した。水層を分離した後、1lの蒸留水を加え、20分間攪拌した。水層が分離するので取り除いた。1lの蒸留水で3回洗浄を行った。その後ポリマーをメタノールに投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥した。乾燥後243g(収率96%)のポリマーを回収した。得られたポリマーの分子量はGPCによりMw=115,366 Mn=47,000、Mw/Mn=2.45であった。ポリマー組成はH−NMRからデシルノルボルネンが70モル%、エポキシノルボルネンが30モル%であった。
【0069】
上記で合成した樹脂228gをデカヒドロナフタレン342gに溶解した後、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)(0.2757g、2.71x10−4mol)1−クロロ−4−プロポロキシ−9H−チオキサントン(0.826g、2.71x10−4mol)、フェノチアジン(0.054g、2.71x10−4)、3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(0.1378g、2.60x10−4)、を加えて溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過し環状オレフィン樹脂組成物を得た。
【0070】
(接着剤の作製)
平均粒径が約12nmの超微粒子シリカ粉末(3.0g)及びビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルエーテル(エポキシ当量180、常温で液状)(91.0g)とビスフェノールF(5.0g)、ジシアンジアミド(1.0g)を配合し、三本ロールで混練して絶縁樹脂ペーストを得た。この絶縁樹脂ペーストを真空チャンバーにて2mmHg、30分間脱泡し接着剤を得た。
【0071】
(受光装置の作製)
受光領域の各々に対応してマイクロレンズが配置された受光素子が形成され、マイクロレンズ領域以外の領域に表面電極が形成された半導体基板上に作製した上記の環状オレフィン樹脂組成物をスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて110℃で5分乾燥し、膜厚約40μmの塗膜を得た。この塗膜にブロードバンドステッパー露光機(ウルトラテック(株)製)によりレチクルを通して1500mJ/cmでダムを形成する部分の露光を行った。その後ホットプレートにて90℃で4分、露光部の架橋反応を促進させるため加熱した。
【0072】
次にリモネンに30秒浸漬することによって未露光部を溶解除去した後、イソプロピルアルコールで20秒間リンスした。その結果、受光素子から離隔した位置において受光素子を囲むようにダムが成形され、マイクロレンズ上に残渣のないことが確認できた。また、残しパターンにおいて、パターン剥がれは全く観察されず、現像時の密着性が優れていることが確認できた。その後160℃、60分で硬化し、架橋反応を完結させた。この硬化膜の吸水率は0.2%であった。
次に形成されたダムの上に上記の接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、ガラス基板をダムの上に乗せ、100℃、60分で硬化し、ダムとガラス基板を接着した。
次に、シェルケース方式CSPで使用される電気リードの形成方法を用いて配線を形成し、受光素子単位に切断して、受光装置を得た。得られた受光装置は、受光装置としての動作に支障のないことが確認された。
【0073】
(実施例2)
実施例1のデシルノルボルネン(192g、0.82mol)とグリシジルメチルエーテルノルボルネン(62g、0.35mol)の代わりに、デシルノルボルネン(129g、0.55mol)とグリシジルメチルエーテルノルボルネン(177g、0.30mol)、フェネチルノルボルネン(29.7g、0.15mol)を用いた以外は、実施例1と同様にしてデシルノルボルネン/グリシジルメチルエーテルノルボルネン/フェネチルノルボルネン=55/30/15のターポリマー(A−2)を得た。重合、再沈殿を行い、乾燥後309g(収率92%)のポリマーを回収した。得られたポリマーの分子量はGPCによりMw=68000、Mn=30000、Mw/Mn=2.3であった。ポリマー組成はH−NMRからデシルノルボルネンが54モル%、エポキシノルボルネンが31モル%、フェネチルノルボルネンが15モル%であった。
実施例1と同様の工程を行い、受光装置を得た。得られた受光装置は、受光装置としての動作に支障のないことが確認された。
(実施例3)
実施例と同様の合成、調合を行い、環状オレフィン樹脂組成物を得た。
(受光装置の作製)
受光領域の各々に対応してマイクロレンズが配置された受光素子が形成され、マイクロレンズ領域以外の領域に表面電極が形成された半導体基板上に作製した上記の環状オレフィン樹脂組成物をスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて110℃で5分乾燥し、膜厚約40μmの塗膜を得た。この塗膜にブロードバンドステッパー露光機(ウルトラテック(株)製)によりレチクルを通して1500mJ/cmでダムを形成する部分の露光を行った。その後ホットプレートにて90℃で4分、露光部の架橋反応を促進させるため加熱した。
【0074】
次にリモネンに30秒浸漬することによって未露光部を溶解除去した後、イソプロピルアルコールで20秒間リンスした。その結果、受光素子から離隔した位置において受光素子を囲むようにダムが成形され、マイクロレンズ上に残渣のないことが確認できた。また、残しパターンにおいて、パターン剥がれは全く観察されず、現像時の密着性が優れていることが確認できた。次に形成されたダムの上にガラス基板を乗せ、80kPaの圧力をかけながら160℃、30分で硬化し、半導体基板とガラス基板を接着した。この硬化膜の吸水率は0.2%であった。次に、シェルケース方式CSPで使用される電気リードの形成方法を用いて配線を形成し、受光素子単位に切断して、受光装置を得た。得られた受光装置は、受光装置としての動作に支障のないことが確認された。
(実施例4)
実施例と同様の合成、調合を行い、環状オレフィン樹脂組成物を得た。
(受光装置の作製)
受光領域の各々に対応してマイクロレンズが配置された受光素子が形成され、マイクロレンズ領域以外の領域に表面電極が形成された半導体基板上に作製した上記の環状オレフィン樹脂組成物をスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて110℃で5分乾燥し、膜厚約10μmの塗膜を得た。
次に塗膜の上にガラス基板を乗せ、80kPaの圧力をかけながら160℃、30分で硬化し、半導体基板とガラス基板を接着した。この硬化膜の吸水率は0.2%であった。
次に、シェルケース方式CSPで使用される電気リードの形成方法を用いて配線を形成し、受光素子単位に切断して、受光装置を得た。得られた受光装置は、受光装置としての動作に支障のないことが確認された。
【0075】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記に限られず種々の態様も含むものである。例えば、本発明は次の態様も含む。
[1]少なくとも1つの受光素子を含む半導体基板と、該半導体基板上に設けられた受光素子を囲むダムと、該ダム上に設けられた接着剤層と、該接着剤層の上に設けられた透明なカバーから構成される受光装置においてダムがエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂と光酸発生剤とを含む樹脂組成物よりなることを特徴とする受光装置。
[2]環状オレフィン樹脂がポリノルボルネン樹脂である[1]記載の受光装置。
[3]エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂が式(1)で示される繰り返し単位を含むものである[1]又は[2]記載の受光装置。
【0076】
【化6】

[式(1)中、XはO、CH、(CHのいずれかであり、nは0〜5までの整数である。R〜Rはそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基、エポキシ基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R〜Rは単量体の繰り返しの中で異なっていてもよいが、全繰り返し単位のR〜Rのうち、少なくとも一つ以上はエポキシ基を有する官能基である。]
[4]エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂が式(2)及び式(3)で示される繰り返し単位を含むものである[1]〜[3]のいずれかに記載の受光装置。
【0077】
【化7】


[式(2)(3)中、R〜Rはそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R〜Rは単量体の繰り返しの中で異なっていてもよい。]
[5]エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂が式(4)、(5)及び(6)で示される繰り返し単位を含むものである[1]〜[4]のいずれかに記載の受光装置。
【0078】
【化8】


[式(4)(5)(6)中、nは0〜5の整数である。R〜R10はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R〜R10は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよい。]
[6][1]記載の半導体基板はシリコンであり、該受光素子はマイクロレンズが配置されたCMOSイメージ装置を含むものである[1]〜[5]のいずれかに記載の受光装置。
[7]該ダムの高さがマイクロレンズの高さより高いことものである[1]〜[6]のいずれかに記載の受光装置。
[8]前記接着剤層を構成する接着剤が、シリカフィラー(A)、常温で液状のエポキシ樹脂(B)及び硬化剤(C)で構成されるものである[1]〜[7]のいずれかに記載の受光装置。
[9]前記接着剤中にシリカフィラー(A)が1〜10重量%含まれるものである[8]記載の受光装置。
[10]前記接着剤中のシリカフィラー(A)の平均粒径が2〜500nmである[8]または[9]記載の受光装置。
【符号の説明】
【0079】
1 支持体
2 受光素子
3 マイクロレンズ
4 光電領域
5 密閉部材
6 透明カバー
7 接着剤
9 ガラス基板
10 ウェハー
11 電極パッド
12 接着剤
13 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面に設けられた受光素子と、
前記基板の前記面の上部に設けられた透明カバーと、
前記基板と前記透明カバーとの間において、少なくとも前記受光素子の周囲部分に設けられ、前記受光素子を外部に対して密閉する密閉部材と、
を備え、
前記密閉部材が環状オレフィン樹脂を含む、受光装置。
【請求項2】
前記密閉部材が、前記受光素子から離隔した位置において前記受光素子を取り囲むように設けられている、請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記密閉部材が、前記基板と前記透明カバーとの間隙を充填するように設けられている、請求項1に記載の受光装置。
【請求項4】
前記密閉部材がエポキシ基を有する環状オレフィン樹脂の架橋物である請求項1に記載の受光装置。
【請求項5】
前記環状オレフィン樹脂がノルボルネン樹脂である請求項1に記載の受光装置。
【請求項6】
前記エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂が、式(1)で示される繰り返し単位を含むものである請求項4に記載の受光装置。
【化6】

[式(1)中、XはO、CH、(CHのいずれかであり、nは0〜5までの整数である。R〜Rは、それぞれ、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、エステル基を含有する一価の官能基、ケトン基を含有する一価の官能基、エーテル基を含有する一価の官能基およびエポキシ基を含有する一価の官能基から選択されるいずれかの基である。R〜Rは、同一のものであっても異なっていてもよい。式(1)における全繰り返し単位のR〜Rのうち少なくとも一つ以上はエポキシ基を含有する官能基である。]
【請求項7】
前記エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂が、式(2)及び式(3)で示される繰り返し単位をそれぞれ含むものである請求項4に記載の受光装置。
【化7】

[式(2)および(3)において、R〜Rは、それぞれ、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、エステル基を含有する一価の官能基、ケトン基を含有する一価の官能基、エーテル基を含有する一価の官能基およびエポキシ基を含有する一価の官能基から選択されるいずれかの基である。R〜Rは、同一のものであっても異なっていてもよい。]
【請求項8】
前記エポキシ基を有する環状オレフィン樹脂が、式(4)、(5)及び(6)で示される繰り返し単位を含むものである請求項4に記載の受光装置。
【化8】

[式(4)、(5)及び(6)中、nは0〜5の整数である。R〜R10は、それぞれ、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、エステル基を含有する一価の官能基、ケトン基を含有する一価の官能基、エーテル基を含有する一価の官能基およびエポキシ基を含有する一価の官能基から選択されるいずれかの基である。R〜R10は、同一のものであっても異なっていてもよい。]
【請求項9】
前記密閉部材の厚みが、前記受光素子の基板からの突起高さよりも厚いものである請求項1に記載の受光装置。
【請求項10】
前記密閉部材と前記透明カバーとが、接着剤層を介して接合されている請求項1に記載の受光装置。
【請求項11】
前記接着剤層が、シリカフィラー、常温で液状のエポキシ樹脂、及び硬化剤を含む接着剤を硬化させたものである請求項10に記載の受光装置。
【請求項12】
前記接着剤は、前記シリカフィラーを1重量%以上10重量%以下含むものである請求項11に記載の受光装置。
【請求項13】
前記シリカフィラーの平均粒径が2〜500nmである請求項11に記載の受光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−199294(P2011−199294A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87095(P2011−87095)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2006−540897(P2006−540897)の分割
【原出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】