説明

含フッ素ポリマー液状組成物、オルガノゾル製造方法、膜及び燃料電池

含フッ素ポリマーと製膜補助剤とからなる含フッ素ポリマー液状組成物であって、上記含フッ素ポリマーは、下記一般式(I)


で表される酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位からなるものであり、上記製膜補助剤は、水と相溶性があり沸点が100℃を超え、300℃以下である有機液体であり、上記フッ素ポリマー液状組成物は、上記含フッ素ポリマーからなる含フッ素ポリマー微粒子と、上記製膜補助剤とからなる含フッ素ポリマー分散体組成物であり、上記含フッ素ポリマー微粒子は、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子25質量%以上含むものであることを特徴とする含フッ素ポリマー液状組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、含フッ素ポリマー液状組成物に関する。
【背景技術】
塩を形成していてもよいスルホン酸基やカルボキシル基(以下、「酸・酸塩型基」ということがある。)を有するフルオロポリマーは、食塩電解、水電解等のイオン交換膜の材料として用途が確立されており、近年、各種センサー保護膜、ガス脱湿用素子膜、特に固体高分子型燃料電池用のプロトン伝導膜や膜・電極接合体〔MEA〕等の材料としても注目されている。
酸・酸塩型基を有するフルオロポリマーは、これらの用途ではキャスト製膜や、多孔性支持体に含浸させること等によって膜状に成形して用いることが考えられており、薄くて緻密な膜や大面積の膜を得ることが望まれている。
スルホン酸基の酸・酸塩型基を有するフルオロポリマーの膜状成形体を得る方法としては、−SOFを有するフルオロポリマーの水性分散体を凝析、乾燥することにより得られるフルオロポリマーのパウダーや、更にこのパウダーから得られるペレット等から膜状成形体を形成し、膜状成形体のまま加水分解することにより−SOFをスルホン酸基やその塩に変換する方法がある。
この方法は、しかしながら、キャスト製膜や多孔性支持体への含浸を行うことができないので薄膜を得ることができず、緻密な薄膜を得ることも困難であるという問題があった。
この問題を解決する方法として、−SOFを有するフルオロポリマーの水性分散体からフルオロポリマーを有機溶媒に転層してオルガノゾルを得、このオルガノゾルを用いて膜状成形体を形成し、膜状成形体のまま加水分解することにより−SOFをスルホン酸基やその塩に変換する方法がある(例えば、特開昭57−115424号公報及び特開昭57−115425号公報参照。)。
この方法は、しかしながら、オルガノゾルの造膜性が悪いという問題があり、造膜補助剤についての記載もない。
スルホン酸の酸塩型基を有し高度にフッ素化したイオン交換ポリマーからなる粒子を含み、かつ粒子の約25質量%は粒度が2〜30nmであるディスパージョンが知られている(例えば、特表2001−504872号公報参照。)。しかしながら、この文献に記載されているディスパージョンは、高粘度になる傾向があり、キャスト製膜時における生産性が悪いという問題があった。
スルホン酸基の酸塩型基を有するフルオロポリマーの膜状成形体を得る方法としては、この酸塩型基を有する含フッ素モノマーを重合することにより得られたフルオロポリマーの溶液又は水性分散体を限外濾過し、次いで造膜補助剤としてポリエチレングリコール等の親カチオン性物質を添加してキャスト製膜する方法がある(例えば、特開2001−226425号公報参照。)。
この方法は、製膜後に膜状成形体から親カチオン性物質を除去する必要がある場合、親カチオン性物質が高分子量体であるので、その熱分解温度まで加熱する必要があるという不都合があった。
発明の要約
本発明の目的は、上記現状に鑑み、造膜性に優れ、スルホン酸基及び/又はカルボキシル基の酸・酸塩型基を有する含フッ素ポリマーの膜を得ることができる含フッ素ポリマー液状組成物を提供することにある。
本発明は、含フッ素ポリマーと製膜補助剤とからなる含フッ素ポリマー液状組成物であって、上記含フッ素ポリマーは、下記一般式(I)

(式中、Yは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表し、n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。mは、1〜5の整数を表し、m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SO又は−COOZを表す。Xは、−OH、−ONR、−NR又は−OM1/Lを表し、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アルキル基若しくはスルホニル含有基を表す。Zは、水素原子、NR10又はM1/Lを表し、R、R、R及びR10は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。M及びMは、L価の金属を表し、上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。)で表される酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位からなるものであり、上記製膜補助剤は、水と相溶性があり沸点が100℃を超え、300℃以下である有機液体であり、上記含フッ素ポリマー液状組成物は、上記含フッ素ポリマーからなる含フッ素ポリマー微粒子と、上記製膜補助剤とからなる含フッ素ポリマー分散体組成物であり、上記含フッ素ポリマー微粒子は、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子25質量%以上含むものであることを特徴とする含フッ素ポリマー液状組成物である。
本発明は、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体から上記含フッ素ポリマー液状組成物を得るためのオルガノゾル製造方法であって、上記含フッ素ポリマー水性分散体と製膜補助剤とを配合したのち水分蒸発を行うことよりなることを特徴とするオルガノゾル製造方法である。
本発明は、上記含フッ素ポリマー液状組成物を用いてキャスト製膜を行うことにより得られたものであることを特徴とする膜である。
本発明は、上記含フッ素ポリマー液状組成物を多孔性支持体に含浸させたのち、液状媒体を除去することにより得られたものであることを特徴とする膜である。
本発明は、含フッ素ポリマーと活性物質とからなる活性物質固定体であって、上記含フッ素ポリマー液状組成物と、上記活性物質とからなる液状組成物を基材に塗装することにより得られたものであることを特徴とする活性物質固定体である。
本発明は、上記活性物質固定体を有することを特徴とする電解質膜である。
本発明は、上記電解質膜からなることを特徴とする膜・電極接合体である。
本発明は、上記膜、上記活性物質固定体、上記電解質膜、及び/又は、上記膜・電極接合体からなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池である。
【図面の簡単な説明】
図1の(a)は、実施例1(4)で得られた乳化重合体分散液の塗布膜を原子間力顕微鏡で撮影した写真であり、(b)は、実施例1(4)で得られた含フッ素ポリマー水性分散体の塗布膜を原子間力顕微鏡で撮影した写真であり、(c)は、実施例1(4)で得られた含フッ素ポリマー分散体組成物の塗布膜を原子間力顕微鏡で撮影した写真である。
発明の詳細な開示
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマーと製膜補助剤とからなるものである。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、基材上に塗布し、常温下及び/又は加熱下で乾燥したのち、必要に応じて水中に浸漬することにより膜を得るキャスト製膜や、多孔性支持体に含浸させて膜を作製することに好適なものである。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、通常、液状の組成物であり、含フッ素ポリマーからなる含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒、有機系媒体等からなる分散媒に分散している含フッ素ポリマー分散体組成物である。本明細書において、上記「含フッ素ポリマー液状組成物」は、上記液状の組成物のみならず、一部分がゲルとなっているものをも含む概念である。
上記含フッ素ポリマーは、上記一般式(I)で表される酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位からなるものである。上記「酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位」は、上記含フッ素ポリマーの分子構造の一部分であって、後述のフルオロビニルエーテル誘導体や酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体等に由来する部分である。上記「酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位」は、酸型基を有する酸型フルオロビニルエーテル単位、又は、酸塩型基を有する酸塩型フルオロビニルエーテル単位である。本明細書において、上記「酸型基」とは、スルホン酸基、上記一般式(I)におけるAのうち−SOのXが−NRである基、及び、カルボキシル基を意味し、上記「酸塩型基」とは、塩を形成しているスルホン酸基及び塩を形成しているカルボキシル基を意味する。上記酸塩型基は、含フッ素ポリマー液状組成物の液性等により電離したものであってもよい。
上記酸型基は、スルホン酸基であることが好ましく、上記酸塩型基は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を形成しているスルホン酸基であることが好ましい。
上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位は、1種又は2種以上のモノマーに由来するものであってもよい。
上記含フッ素ポリマーは、その一分子中に酸型フルオロビニルエーテル単位と酸塩型フルオロビニルエーテル単位とが併存するものであってもよい。
上記含フッ素ポリマーとしては、酸型フルオロビニルエーテル単位からなる含フッ素ポリマーと、酸塩型フルオロビニルエーテル単位からなる含フッ素ポリマーとを併用してもよく、併用する場合、後述の含フッ素ポリマー微粒子は、その一粒子中に酸型フルオロビニルエーテル単位からなる含フッ素ポリマーと、酸塩型フルオロビニルエーテル単位からなる含フッ素ポリマーとが併存するものであってもよい。
上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位は、上記一般式(I)におけるnが、0〜3の整数を表すものである。上記nは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。上記一般式(I)におけるmは、1〜5の整数を表す。上記mは、2であることが好ましい。
上記一般式(I)におけるYは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表し、n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。上記一般式(I)におけるYは、ハロゲン原子を表し、m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。上記Yのハロゲン原子としては特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の何れであってもよいが、好ましくは、フッ素原子、塩素原子である。上記パーフルオロアルキル基としては特に限定されず、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。上記Yのハロゲン原子としては、上記Yのハロゲン原子と同じものが挙げられる。上記一般式(I)において、上記Yは、トリフルオロメチル基であることが好ましく、上記Yは、フッ素原子であることが好ましい。
上記一般式(I)における上記Aは、−SO又は−COOZを表す。Xは、−OH、−ONR、−NR又は−OM1/Lを表し、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。上記炭素数1〜4のアルキル基としては特に限定されず、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の何れであってもよい。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アルキル基若しくはスルホニル含有基を表す。上記R及びRのアルカリ金属としては特に限定されず、例えば、Li、Na、K、Cs等が挙げられる。上記R及びRのアルキル基としては特に限定されず、例えば、炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。上記R及びRのアルキル基は、ハロゲン原子により置換されていてもよい。上記スルホニル含有基は、スルホニル基を有する含フッ素アルキル基であり、例えば、末端に置換基を有していてもよい含フッ素アルキルスルホニル基等が挙げられ、上記含フッ素アルキルスルホニル基としては、例えば、−SOQ(Rは、含フッ素アルキレン基を表し、Qは、有機基を表す。)等が挙げられる。上記有機基としては、例えば、−SOFが挙げられ、上記一般式(I)のAにおける−SOは、上記Xが−NRである場合、−SO(NRSOSONRSO−(kは、1以上の整数を示す。)のように無限につながっていてもよい。
は、水素原子、NR10又はM1/Lを表し、R、R、R及びR10は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、R及びR10における上記炭素数1〜4のアルキル基としては、特に限定されず、上記R、R、R及びRにおける炭素数1〜4のアルキル基と同じものが挙げられる。M及びMは、L価の金属を表し、上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。上記L価の金属としては特に限定されず、例えば、周期表の1族として、Li、Na、K、Cs等が挙げられ、周期表の2族として、Mg、Ca等が挙げられ、周期表の4族として、Al等が挙げられ、周期表の8族として、Fe等が挙げられ、周期表の11族として、Cu、Ag等が挙げられ、周期表の12族として、Zn等が挙げられ、周期表の13族として、Zr等が挙げられる。上記Aは、−SOであることが好ましい。
上記含フッ素ポリマーにおいて、上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位としては、上記一般式(I)におけるYがトリフルオロメチル基であり、Yがフッ素原子であり、nが0又は1であり、mが2であるものが好ましく、上記一般式(I)におけるYがトリフルオロメチル基であり、Yがフッ素原子であり、nが0であり、mが2であるものがより好ましい。
上記含フッ素ポリマーは、上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位と、エチレン性モノマーに由来するエチレン性モノマー単位とからなる2元以上の共重合体であるものが好ましい。
上記エチレン性モノマーは、フッ素原子により水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいビニル基を有するものである。本明細書において、上記「エチレン性モノマー」は、後述のフルオロビニルエーテル誘導体や酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体を含まないものである。
上記エチレン性モノマーとしては、例えば、下記一般式

(式中、Rは、フッ素原子、塩素原子、−R又は−ORを表し、Rは、炭素数1〜9のエーテル酸素を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表されるハロエチレン性モノマー、下記一般式

(式中、Yは、水素原子又はフッ素原子を表し、Yは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、−R又は−ORを表す。Rfは、炭素数1〜9のエーテル酸素を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表される水素含有フルオロエチレン性モノマー等が挙げられる。
上記エチレン性モノマーとしては、また、上記ハロエチレン性モノマー及び水素含有フルオロエチレン性モノマー以外のその他の共重合可能なモノマーであってもよい。上記その他の共重合可能なモノマーとしては、上記含フッ素ポリマーに種々の機能を付与し得るものであれば特に限定されず、例えば、重合速度の制御、ポリマー組成の制御、弾性率等の機械的物性の制御、架橋サイトの導入等の目的に応じて共重合可能なモノマーのなかから適宜選択され、パーフルオロジビニルエーテル等の不飽和結合を2つ以上有するモノマー、シアノ基を含有するモノマー等が挙げられる。上記その他の共重合可能なモノマーに由来する上記エチレン性モノマー単位は、含フッ素ポリマーがその基本的な性能を損なわない範囲で有するものであることが好ましい。
上記エチレン性モノマー単位は、1種又は2種以上のエチレン性モノマーに由来するものであってもよい。
上記エチレン性モノマーは、CF=CF、CH=CF、CF=CFCl、CF=CFH、CH=CFH、CF=CFCF、及び、CF=CF−O−R(式中、Rは、炭素数1〜9のフルオロアルキル基又は炭素数1〜9のフルオロポリエーテル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。上記フルオロビニルエーテルは、Rが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
上記エチレン性モノマーは、なかでも、パーハロエチレン性モノマー、特にパーフルオロエチレン性モノマーが好ましく、CF=CFがより好ましい。
上記含フッ素ポリマーは、上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位の含有率が、10〜20モル%であることが好ましい。10モル%未満であると、得られる含フッ素ポリマー液状組成物から形成される膜のプロトン運搬等の性能が低下する場合があり、20モル%を超えると、膜の機械的強度が不充分になる場合がある。上記「酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位の含有率」とは、含フッ素ポリマー分子における全モノマー単位が由来するモノマーのモル数に占める、上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位が由来するモノマーのモル数の割合である。上記「全モノマー単位」は、上記含フッ素ポリマーの分子構造上、モノマーに由来する部分の全てである。上記「全モノマー単位が由来するモノマー」は、従って、上記含フッ素ポリマーをなすこととなったモノマー全量である。上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位の含有率は、赤外吸収スペクトル分析[IR]、又は、300℃における溶融NMRを用いて得られる値である。
上記含フッ素ポリマーは、含フッ素ポリマー液状組成物の1〜60質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、含フッ素ポリマー液状組成物から膜を作製する場合、一回の塗布で得られる膜厚が小さく、目的の膜厚を得るまでに複数回塗布する必要がある場合がある。60質量%を超えると、含フッ素ポリマー液状組成物がゲル化しやすく、均一な膜を得ることが困難な場合がある。より好ましい下限は、5質量%であり、より好ましい上限は、15質量%である。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上記含フッ素ポリマーからなるとともに、製膜補助剤からなるものである。
上記製膜補助剤は、水と相溶性があるものである。上記「水と相溶性」なる用語における「水」は、本発明の分野において通常「水」と認識されるものであってよく、例えば、水溶性有機溶剤等との混合物中における「水」、イオン交換水等であってもよいが、純水が好ましい。上記製膜補助剤は、水と混合した際、あらゆる混合割合で完全に水と相溶するものであってもよいし、少なくとも一部が水と相溶するものであってもよい。
本明細書において、上記「水と相溶性がある」とは、水に対して1質量%以上の溶解度を有することを意味する。
上記製膜補助剤は、沸点が100℃を超え、300℃以下であるものである。100℃以下であると、通常、沸点が水と同じか水より低いので、含フッ素ポリマーからなる後述の含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体に製膜補助剤を配合したのち水分蒸発を行う後述のオルガノゾル製造方法により本発明の含フッ素ポリマー液状組成物を得る場合、上記製膜補助剤を残存させつつ水系分散媒を除去することができない。300℃を超えると、得られる液状組成物を用いて形成される膜から製膜補助剤を除去する必要がある場合、製膜補助剤の除去が困難である。上記製膜補助剤の沸点の好ましい下限は、150℃であり、好ましい上限は、250℃である。
上記製膜補助剤は、有機液体である。本明細書において、上記「有機液体」とは、有機化合物であって、20℃程度の常温において液体であるものを意味する。上記有機液体としては、水と相溶性があり、沸点が100℃を超え、300℃以下であるものであれば特に限定されないが、含フッ素ポリマー微粒子の表面を膨潤又は一部溶解する機能を有するものが好ましく、このような機能を有する上記有機液体としては、例えば、リン酸エステル、環状アミド又は環状アミド誘導体、イミダゾリジノン又はイミダゾリジノン誘導体、エチレンオキシドオリゴマーのモノヒドロキシエーテル、ジメチルスルホキシド〔DMSO〕、ジメチルホルムアミド〔DMF〕、1,4−ジオキサン、トリオキサン、イソホロン、シクロヘキサノン、スルホラン;グリセリンジメチルエーテル等の分子内に水酸基を1個又は2個含むグリセリン誘導体等を例示することができる。
上記リン酸エステルとしては特に限定されず、例えば、リン酸と炭素数1〜5のアルコールとのリン酸トリエステル等が挙げられ、上記リン酸トリエステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。
上記環状アミド又は環状アミド誘導体としては特に限定されず、例えば、水素原子が炭素数1〜5のアルキル基に置換されていてもよいピロリドンが挙げられ、このようなピロリドンとしては、2−メチルピロリドン等が挙げられる。
上記イミダゾリジノン又はイミダゾリジノン誘導体としては特に限定されず、例えば、水素原子が炭素数1〜5のアルキル基に置換されていてもよいイミダゾリジノンが挙げられ、このようなイミダゾリジノンとしては、3,4−ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
上記エチレンオキシドオリゴマーのモノヒドロキシエーテルとしては特に限定されないが、エチレンオキシド2〜10個の付加体と、炭素数1〜10のアルキル基1個とがエーテル結合してなる分子が好ましい。上記エチレンオキシドの付加数は、上記エチレンオキシドオリゴマーのモノヒドロキシエーテル分子の集合体としての平均値である。
上記エチレンオキシドオリゴマーのモノヒドロキシエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールのモノアルキルエーテルが挙げられ、このようなものとしては、ジエチレングリコールのモノメチルエーテル、トリエチレングリコールのモノメチルエーテル等が挙げられる。
本明細書において、上記「製膜補助剤」は、水と相溶性があり沸点が上記範囲内である有機液体のうち、後述の「低級アルコール」を含まない概念である。上記製膜補助剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記有機液体としては、リン酸エステル、環状アミド又は環状アミド誘導体、エチレンオキシドオリゴマーのモノヒドロキシエーテルが好ましく、リン酸エステルがより好ましく、リン酸トリエステルが更に好ましく、リン酸トリエチルが特に好ましい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマーと、製膜補助剤とともに、低級アルコールからなるものが好ましい。
上記低級アルコールは、含フッ素ポリマー液状組成物の表面張力の調整に用いることができる。
本明細書において、上記低級アルコールは、炭素数が5以下のモノアルコールである。上記炭素数が5以下のモノアルコールとしては特に限定されず、例えば、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のフッ素原子により置換されていてもよいアルカノールが挙げられる。上記アルカノールは、炭素数1〜3のものが好ましい。このようなアルカノールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラフルオロプロパノール等が挙げられ、上記テトラフルオロプロパノールとしては、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールが挙げられる。
上記低級アルコールは、1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマーからなる含フッ素ポリマー微粒子と、製膜補助剤とからなる含フッ素ポリマー分散体組成物である。本明細書において、上記「含フッ素ポリマー分散体組成物」は、上記含フッ素ポリマー微粒子が分散質として水系分散媒、有機系媒体等からなる分散媒に分散している分散体であれば、含フッ素ポリマー微粒子の一部分が溶解しているものをも含む概念である。本発明の含フッ素ポリマー液状組成物が更に上述の低級アルコールを含むものである場合、上記含フッ素ポリマー分散体組成物は、上記低級アルコールを上記分散媒に有する。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上記含フッ素ポリマー分散体組成物であり、かつ、上述した製膜補助剤を含むものであるので、製膜時に製膜補助剤が含フッ素ポリマー微粒子表面に吸着して膨潤又は一部溶解させることにより含フッ素ポリマー微粒子同士をなじませ互いに溶着しやすくするものと考えられる。
製膜補助剤と含フッ素ポリマー微粒子との相互作用は、製膜前の液状では目視による観察はできないが、得られた膜について後述の原子間力顕微鏡〔AFM〕写真を撮ると、図1(c)に示すようにポリマー粒子の膨潤とポリマー粒子間の溶着とが認められるので、液の状態においても含フッ素ポリマー微粒子が膨潤しているものと考えられる。また、上記含フッ素ポリマー液状組成物は温度上昇時に粘度変動幅が大きいので、製膜補助剤が含フッ素ポリマー微粒子に何らかの作用をしているものと考えられる。
従来、含フッ素ポリマー分散体ではなく溶液の場合、製膜補助剤は製膜時の乾燥遅延剤として機能するにすぎず、表面乾燥遅延による応力緩和によりクラック発生を軽減する傾向にあるものの、ポリマー粒子同士が溶着していないので、得られる膜表面の耐クラック性は不充分であり、強度等の物性に劣る問題があった。
上記含フッ素ポリマー微粒子は、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含むものである。
本明細書において、上記「含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含む」とは、含フッ素ポリマー微粒子の25質量%以上が含フッ素ポリマー球形微粒子であることを意味する。
上記含フッ素ポリマー微粒子の粒子形状は、アスペクト比を目安にすることができる。
本明細書において、上記「実質的に球形である」とは、アスペクト比が3以下であることを意味する。通常、アスペクト比が1に近づくほど球形に近くなる。上記含フッ素ポリマー微粒子のアスペクト比は、3以下であることが好ましい。より好ましい上限は、2であり、更に好ましい上限は、1.5である。
一般に、ポリマー微粒子の粒子形状に異方性があると、上記ポリマー微粒子の分散体は高粘度になりやすく、ポリマー微粒子の分散体が高粘度であると、分散体中のポリマー微粒子の濃度を高くすることが困難になることから好ましくない。
上記含フッ素ポリマー微粒子が、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含むものであると、上記含フッ素ポリマー分散体組成物の粘度を、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子を含まない場合に比べて低くすることが可能であり、上記含フッ素ポリマー分散体組成物の固形分濃度を高くすることができ、キャスト製膜等の方法によって製膜する場合、高い生産性を実現することが可能である。その一方、球形粒子は粒子間の相互作用が弱いのでキャスト製膜等の製膜時にクラックが入り易い傾向があるが、本発明は、上述の製膜補助剤を使用することによりクラック防止を可能にしたものである。
上記含フッ素ポリマー微粒子は、含フッ素ポリマー球形微粒子を50質量%以上含むものであることが好ましい。
含フッ素ポリマー球形微粒子を上記範囲内の含有率で有する含フッ素ポリマー分散体組成物は、乳化重合により得たディスパージョンから調製することにより容易に得ることができる。乳化重合により得たディスパージョンから含フッ素ポリマー球形微粒子が90質量%以上のものも得ることができる。上記含フッ素ポリマー分散体組成物は、含フッ素ポリマー球形微粒子を比較的高い含有率で有する組成物に、含フッ素ポリマー微粒子のうち実質的に球形ではない微粒子を配合して、目的に応じた性能を発揮するよう調整することも可能である。
上記含フッ素ポリマー球形微粒子の質量割合は、走査型又は透過型の電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等で得られた含フッ素ポリマー微粒子の画像中に含まれる含フッ素球形微粒子の割合から含フッ素ポリマー球形微粒子の質量を換算し得られる値である。
上記含フッ素ポリマー微粒子は、平均粒子径が10nm以上であるものが好ましい。10nm未満であると、上記含フッ素ポリマー分散体組成物を後述の固体高分子型燃料電池の電極材料として使用する場合において、活性点を被覆してしまい良好な電池特性が得られない場合がある。
上記平均粒子径は、上記範囲内であれば、上記含フッ素ポリマー分散体組成物の安定性や後述する含フッ素ポリマー前駆体の作りやすさという点から、上限を例えば300nmとすることができるが、300nmを超えるものであっても電池特性に大きく影響を与えるものではない。
上記含フッ素ポリマー微粒子は、平均粒子径が10〜300nmであるものがより好ましい。平均粒子径の更に好ましい下限は、30nmであり、更に好ましい上限は、160nmである。
上述のアスペクト比と平均粒子径とは、走査型又は透過型の電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等で上記含フッ素ポリマー微粒子を観測し、得られた画像上の20個以上の微粒子について測定した長軸及び短軸の長さの比(長軸/短軸)を上記アスペクト比、長軸及び短軸の長さの平均値を後述の平均粒子径としてそれぞれ得ることができる。
上記含フッ素ポリマー分散体組成物は、含フッ素ポリマー微粒子のうち、平均粒子径が10nm以上である含フッ素球形微粒子を25質量%以上含むものであることが好ましい。
上記含フッ素ポリマー分散体組成物は、含フッ素ポリマー微粒子のうち、平均粒子径が10〜300nmである含フッ素球形微粒子を25質量%以上含むものであることがより好ましい。
上記含フッ素ポリマー分散体組成物は、含フッ素ポリマー微粒子のうち、平均粒子径が30〜160nmである含フッ素球形微粒子を25質量%以上含むものであることが更に好ましい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体に製膜補助剤を配合して得られた分散体であることが好ましい。上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」は、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体に製膜補助剤を配合して得られるものであるので、上記含フッ素ポリマー水性分散体における水系分散媒と、上記含フッ素ポリマー水性分散体に配合した製膜補助剤とがそのまま、上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」における分散媒となる。上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」は、上述のように製膜補助剤が水と相溶性があるものであるので、通常、上記水系分散媒と上記製膜補助剤とが一様な液体となっているものである。上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」は、このような分散媒に上記含フッ素ポリマー微粒子が分散しているものである。
上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」において、製膜補助剤は、上記製膜補助剤と水系分散媒との合計質量の10〜99質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、得られる含フッ素ポリマー液状組成物の造膜性が不充分となるおそれがある。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物が更に低級アルコールを含むものである場合、上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」は、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体に製膜補助剤と低級アルコールとを配合して得られたものであることが好ましく、上記水系分散媒と製膜補助剤と低級アルコールとが、通常、一様な液体となって上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」における分散媒となっているものである。
本明細書において、上記「含フッ素ポリマー水性分散体」とは、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している分散体であって、製膜補助剤を配合する前のものを意味する。上記含フッ素ポリマー水性分散体は、上記含フッ素ポリマー微粒子の濃度が2〜60質量%であることが好ましい。より好ましい上限は、30質量%である。
上記含フッ素ポリマー水性分散体における水系分散媒、及び、上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」における水系分散媒は、水からなるものであれば、水とともに水溶性有機溶剤からなるものであってもよい。
上記含フッ素ポリマー分散体組成物は、また、含フッ素ポリマー微粒子が有機系媒体に分散しているオルガノゾルであることが好ましい。本明細書において、上記「オルガノゾル」は、含フッ素ポリマー微粒子と有機系媒体とからなるゾルであって、上記含フッ素ポリマー微粒子が上記有機系媒体に分散しているものである。上記オルガノゾルは、上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」から水系分散媒を除去することにより得られたものであることが好ましい。
上記有機系媒体は、上記「製膜補助剤を配合して得られた分散体」から水系分散媒を除去することにより得られたオルガノゾルにおいて、製膜補助剤からなるものである。上記オルガノゾルにおいて、上記有機系媒体は、更に、水を含むものか又は水を含まないものであり、上記水は、上記有機系媒体の10質量%以下であることが好ましい。より好ましい上限は5質量%である。上記有機系媒体は、得られるオルガノゾルから形成される膜の均一性が優れる点で、水を含まないものであることが好ましい。本発明の含フッ素ポリマー液状組成物が更に低級アルコールを含むものである場合、上記有機系媒体は、製膜補助剤と低級アルコールとからなるものである。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、液状組成物に通常用いられる安定剤等の添加剤を有するものであってもよい。本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒からなる分散媒に分散している含フッ素ポリマー分散体組成物である場合、更に、水系の分散体に通常用いられる界面活性剤を有するものであってもよい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物としては、造膜性に優れていることから、水の含有量が有機系媒体の10質量%以下である上述のオルガノゾルが好ましい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、公知の方法等を用いて調製することができる。
上記製膜補助剤は、含フッ素ポリマー1質量部に対して0.1〜100質量部を配合するものであることが好ましい。0.1質量部未満であると、得られる含フッ素ポリマー液状組成物を用いて膜を形成する場合、造膜性が不充分であるおそれがある。100質量部を超えると、配合量に見合った効果が得られにくく、経済的に好ましくない。より好ましい下限は、0.5質量部であり、より好ましい上限は、20質量部である。
上記製膜補助剤の配合量は、上記含フッ素ポリマーが有する酸型基・酸塩型基の割合や製膜条件によって、適宜選択することができる。
上記含フッ素ポリマーが、酸型基・酸塩型基を比較的多く含む含フッ素ポリマーである場合、上記製膜補助剤の配合量は、比較的少量であっても得られる含フッ素ポリマー液状組成物が良好な造膜性を有し、環境に対する負荷を低減するためにも少量であることが好ましく、含フッ素ポリマー1質量部に対して0.1〜1質量部であることが好ましい。本明細書において、上記「酸型基・酸塩型基を比較的多く含む含フッ素ポリマー」とは、酸型基・酸塩型基1個当たりの分子量が900未満である含フッ素ポリマーを意味する。
上記含フッ素ポリマーが、酸型基・酸塩型基が比較的少ない含フッ素ポリマーである場合、製膜補助剤の配合量は、得られる含フッ素ポリマー液状組成物を用いて均一な膜を得るために比較的多量である必要があり、含フッ素ポリマー1質量部に対して3〜20質量部であることが好ましい。本明細書において、上記「酸型基・酸塩型基が比較的少ない含フッ素ポリマー」とは、酸型基・酸塩型基1個当たりの分子量が900以上である含フッ素ポリマーを意味する。
上記製膜補助剤の配合量は、また、工業上の生産性の点で、比較的少量であることが好ましく、含フッ素ポリマー1質量部に対して0.1〜1質量部であることが好ましい。
上記製膜補助剤の配合量は、また、得られる膜の造膜性、均一性等の物性の点で、比較的多量であることが好ましく、含フッ素ポリマー1質量部に対して3〜20質量部であることが好ましい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、製膜補助剤を配合することによりゲル化する場合があるが、水等の水性媒体を用いて希釈することにより再びゾル化することができる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物が更に低級アルコールを含むものである場合、上記低級アルコールは、含フッ素ポリマー1質量部に対し0.5〜5質量部を配合するものであることが好ましい。本発明の含フッ素ポリマー液状組成物を用いて膜を形成する場合、上記低級アルコールを上記範囲の量で配合すると含フッ素ポリマー液状組成物の表面張力を下げることができ、均一な膜を形成することができる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物が更に低級アルコールを含むものである場合、製膜補助剤と低級アルコールとを配合する順序は特に制限されるものではなく、製膜補助剤を配合した後、低級アルコールを配合してもよいし、低級アルコールを配合した後、製膜補助剤を配合してもよい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー微粒子が有機系媒体に分散しているオルガノゾルである場合、下記のオルガノゾル製造方法により得られるものであることが好ましい。
すなわち、本発明のオルガノゾル製造方法は、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体から含フッ素ポリマー微粒子が有機系媒体に分散している含フッ素ポリマー分散体組成物を得るための方法であって、上記含フッ素ポリマー水性分散体と製膜補助剤とを配合したのち水分蒸発を行うことよりなるものである。
本明細書において、上記「水分蒸発」とは、含フッ素ポリマー水性分散体に製膜補助剤を配合して得られた分散体の水系分散媒における水を蒸発させることを意味する。上記水分蒸発は、エバポレーターを用いて行うことができ、上記エバポレーターとしては特に限定されず、例えば、ロータリーエバポレーター等が挙げられる。上記水分蒸発は、室温で行うことも可能であるが、上記含フッ素ポリマー水性分散体と製膜補助剤とからなる組成物を50〜300℃に加熱して行うことが好ましく、必要に応じて減圧下で行ってもよい。上記温度に加熱することにより、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒と製膜補助剤とからなる分散媒に分散している上述の「製膜補助剤を配合して得られた分散体」から、製膜補助剤を残存させつつ製膜補助剤より沸点が低い水を除去することができる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上述の含フッ素ポリマーに、製膜補助剤を配合することにより得られるものであるが、上記含フッ素ポリマーが下記の方法から得られたものであることが好ましい。
すなわち、上記含フッ素ポリマーは、下記一般式(II)

(式中、Yは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表し、n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。mは、1〜5の整数を表し、m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SO又は−COZを表す。Xは、ハロゲン原子を表す。Zは、炭素数1〜4のアルコキシル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテル誘導体を乳化重合して得られた乳化重合体分散液に加水分解処理を行うことより得られたものであることが好ましい。
上記Xにおけるハロゲン原子としては特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の何れであってもよいが、好ましくは、フッ素原子、塩素原子である。
上記Zの炭素数1〜4のアルコキシル基としては、特に限定されないが、n−アルコキシル基であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。上記−SOとしては−SOFであることが好ましく、上記−COZとしては、−COOCHであることが好ましい。上記一般式(II)におけるAは、−SOであることが好ましい。
上記一般式(II)におけるY、Y、n及びmは、上記一般式(I)におけるY、Y、n及びmと同じである。上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位の上記一般式(I)におけるY、Y、n及びmは、上記フルオロビニルエーテル誘導体の上記一般式(II)におけるY、Y、n及びmに由来するものである。
上記フルオロビニルエーテル誘導体を乳化重合して得られた乳化重合体分散液は、含フッ素ポリマー前駆体からなる含フッ素ポリマー前駆体微粒子を含むものである。本明細書において、上記「含フッ素ポリマー前駆体」とは、後述の加水分解処理を経ることにより上記含フッ素ポリマーになる重合体を意味する。
上記含フッ素ポリマー前駆体は、上記フルオロビニルエーテル誘導体に由来するフルオロビニルエーテル誘導体単位からなるものであり、−SO及び/又は−COZを有するものである。上記含フッ素ポリマー前駆体は、1種又は2種以上のフルオロビニルエーテル誘導体を乳化重合することにより得られるものであってよい。
上記乳化重合は、通常、水系反応媒体中で行うものである。本明細書において、上記「水系反応媒体」とは、その中で乳化重合を行わせる媒体であって、水からなるものを意味する。上記水系反応媒体は、水からなるものであれば、水とともに水溶性有機溶剤からなるものであってもよいが、水溶性有機溶剤は有しないものであることが好ましい。上記水系反応媒体は、界面活性剤、安定剤、後述の既存乳化剤等の水系の分散体に通常用いられる添加剤や乳化作用剤等を含むものであってもよい。上記水系反応媒体は、乳化重合を行う反応系に存在する上記フルオロビニルエーテル誘導体等のモノマーや、乳化重合により生成するポリマーを含まないものである。上記水系反応媒体は、上記乳化重合の後、乳化重合体分散液における分散媒(水系媒体)となり、そのまま後述の加水分解処理における水系媒体として用いることができる。
上記乳化重合において、乳化させる方法としては、従来の乳化重合に通常用いられているパーフルオロオクタン酸アンモニウム[C15COONH]等の乳化剤(以下、「既存乳化剤」という。)を用いて乳化させる方法であってもよいし、乳化作用を持つものであって、上記既存乳化剤とは異なるもの(以下、「乳化作用剤」という。)を既存乳化剤の代わりに用い、ポリマーに結合することによりポリマーに乳化作用を与えて乳化させる方法であってもよいし、既存乳化剤と乳化作用剤との両方を用いて乳化させる方法であってもよい。上記乳化作用剤としては、塩を形成しているスルホン酸基を有する化合物等が挙げられる。上記乳化重合に用いる上記既存乳化剤及び/又は乳化作用剤は、一般に、水系反応媒体の0.01〜10質量%使用する。
上記乳化作用剤としては、例えば、下記一般式(III)

(式中、Y、Y、n及びmは、上記と同じである。Aは、−SO又は−COOZを表す。Xは、NR、M又はM1/2を表し、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Mは、アルカリ金属を表し、Mは、アルカリ土類金属を表す。Zは、NR10、M又はM1/2を表し、R、R、R及びR10は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Mは、アルカリ金属を表し、Mは、アルカリ土類金属を表す。)で表される酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。本明細書において、上記「酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体」は、上述の酸塩型基を有するものである。上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体が有する酸塩型基は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を形成しているスルホン酸基であることが好ましい。
上記R、R、R及びRにおける炭素数1〜4のアルキル基としては、特に限定されず、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の何れであってもよい。上記Mのアルカリ金属としては特に限定されず、例えば、Li、Na、K、Cs等が挙げられる。上記Mのアルカリ土類金属としては特に限定されず、例えば、Mg、Ca等が挙げられる。
上記R、R、R及びR10における上記炭素数1〜4のアルキル基としては、特に限定されず、上記R、R、R及びRにおける炭素数1〜4のアルキル基と同じものが挙げられる。上記Mのアルカリ金属としては特に限定されず、例えば、上記Mのアルカリ金属と同じもの等が挙げられる。上記Mのアルカリ土類金属としては特に限定されず、例えば、上記のMのアルカリ土類金属と同じもの等が挙げられる。
上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体は、上記一般式(III)におけるAが−SOであるものが好ましい。
上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体及び上述のフルオロビニルエーテル誘導体は、フッ素原子により水素原子の全部が置換されていてもよいビニル基を有し得る点で上述のエチレン性モノマーと共通するが、乳化重合して加水分解処理を行うことにより含フッ素ポリマー中の上記酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位になる点で、上記エチレン性モノマー単位になる上記エチレン性モノマーとは異なるものである。
上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体を用いた場合、水系反応媒体は既存乳化剤を有さなくても乳化することができるので、乳化重合後に従来のように既存乳化剤を除去する必要がない。上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体は、乳化重合において乳化作用を有するとともに、エチレン性化合物であるので重合反応におけるモノマーとして付加させて、含フッ素ポリマー前駆体の分子構造上の少なくとも一部分となるように重合させることができる。上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体を重合して得られるポリマー鎖もまた、乳化作用を有することができる。
上記乳化重合は、重合反応後に乳化剤を除去する必要がなく、また、乳化作用を有するものをモノマーとして用いることができて効率的である点で、既存乳化剤を用いずに乳化作用剤を用いることが好ましい。上記乳化重合は、重合条件によっては、得られる含フッ素ポリマー前駆体の粒子数が低下して粒子径が大きくなり、後述の低分子物質除去処理を限外濾過により行う場合、限外濾過膜に負荷がかかる場合があり、また、成膜の際に膜が不均一になる場合があるので、これらの不具合を回避しやすい点で、既存乳化剤を用いることが好ましい。
上記乳化重合は既存乳化剤を用いることが好ましい。
上記乳化重合は、上記乳化作用剤を用いることができること以外は、通常の方法に従うことができる。
上記乳化重合は、得られる乳化重合体分散液中の含フッ素ポリマー前駆体微粒子の粒子数を多くするために、上述の、水系反応媒体の0.01〜10質量%より多い量の上記既存乳化剤及び/又は乳化作用剤を用いて重合して得られたディスパージョンを希釈し、引き続き重合を継続する、いわゆる「シード重合」であってもよい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記含フッ素ポリマー前駆体微粒子からなる乳化重合体分散液が、上記一般式(II)で表されるフルオロビニルエーテル誘導体と、上記一般式(III)で表される酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体とを共存させて乳化重合することにより得られるものであってもよい。この含フッ素ポリマー前駆体微粒子は、フルオロビニルエーテル誘導体に由来する上記−SO及び/又は−COZが疎水性であり、酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体に由来する上記−SO及び/又は−COOZが親水性であるので、乳化重合体分散液の水系媒体において、上記フルオロビニルエーテル誘導体からなるポリマー鎖をコアとし、上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体からなるポリマー鎖をシェルとするコア/シェル構造をとることができる。
上記含フッ素ポリマー前駆体微粒子からなる乳化重合体分散液は、また、上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体を重合することにより得られた酸塩型フルオロビニルエーテル単位からなるポリマーと、上記フルオロビニルエーテル誘導体とを共存させて乳化重合することにより得られるものであってもよい。この方法により得られる上記含フッ素ポリマー前駆体微粒子は、シード重合体からなるものである。
含フッ素ポリマー前駆体からなる微粒子は、上記コア/シェル構造や上記シード重合体からなるものである場合、上述した酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体と、酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体からなるポリマー鎖とが乳化作用を有するので、重合時に従来の乳化重合に通常用いられている乳化剤を添加しなくてもよく、後工程で上記乳化剤を除去する必要がなくなる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記含フッ素ポリマーが上記乳化重合体分散液に加水分解処理を行うことにより得られるものが好ましい。上記加水分解処理は、上記乳化重合体分散液にアルカリを添加することにより行うことができる。
上記加水分解処理で用いるアルカリとしては特に限定されず、通常、加水分解に用いるアルカリであればよく、例えばアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられ、このような水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
上記加水分解処理は、上記含フッ素ポリマー前駆体が有する−SO及び/又は−COZを酸塩型基とするので、上記含フッ素ポリマー前駆体を酸塩型フルオロビニルエーテル単位からなる含フッ素ポリマー(以下、「酸塩型含フッ素ポリマー」ということがある。)とすることができる。
含フッ素ポリマー前駆体が−SO(Xは、上記と同じ、すなわち、ハロゲン原子を表す。)を有するものである場合、通常、酸を添加すると凝析しやすく不安定であるが、上記加水分解処理は、アルカリを添加するものであるので、急激にアルカリを添加するのでなければ上記含フッ素ポリマー前駆体が凝析することなく安定に水系媒体中に分散した状態を保つことができ、−SOを定量的にスルホン酸塩型基に変換することができる。
上記加水分解処理は、上記乳化重合体分散液を、酸塩型含フッ素ポリマーが水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体とすることができる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記含フッ素ポリマーが上記乳化重合体分散液に上述の加水分解処理を行ったのち、更に、必要に応じて、酸を用いて処理する酸処理を行うことにより得られるものであってもよい。
上記酸処理で用いる酸としては特に限定されず、通常、アルカリの中和に用いる酸であればよく、例えば鉱酸等が挙げられ、鉱酸としては、例えば塩酸、硫酸等が挙げられる。
上記酸処理は、上記酸塩型含フッ素ポリマーが有する酸塩型基を酸型基とするので、上記酸塩型含フッ素ポリマーを、酸型フルオロビニルエーテル単位からなる含フッ素ポリマー(以下、「酸型含フッ素ポリマー」ということがある。)とすることができる。
上記加水分解処理における加水分解反応の終点、及び、上記酸処理における中和反応の終点は、アルカリ及び酸の消費がなくなり、pHが安定することにより検知することができる。
上記加水分解処理における反応温度、及び、酸処理における反応温度としては特に限定されず、室温であってもよいが、反応速度の点から、30〜100℃の温度で行うことが好ましい。上記加水分解処理を行う際の含フッ素ポリマー前駆体の濃度や上記酸処理を行う際の酸塩型含フッ素ポリマーの濃度は、特に限定されないが、水系媒体の5〜15質量%であると、水系媒体と含フッ素ポリマー前駆体とからなる乳化重合体分散液の粘度、又は、水系分散媒と酸塩型含フッ素ポリマーとからなる含フッ素ポリマー水性分散体の粘度が好ましい範囲であり、また、含フッ素ポリマー前駆体からなる粒子又は酸塩型含フッ素ポリマーからなる粒子が均一に分布するので、加水分解処理や酸処理を円滑に進行することができる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記含フッ素ポリマーが、上記乳化重合体分散液に加水分解処理を行ったのち、必要に応じて酸処理を行い、更に、低分子物質を除去する処理(以下、低分子物質除去処理ということがある。)を行うことにより得られるものであることが好ましい。上記低分子物質は、上記乳化重合で残存するモノマー、重合開始剤残基、不要な低分子量の重合体、又は、含フッ素ポリマー前駆体を加水分解処理することにより生じたものであり、乳化重合に用いた乳化剤残基等が存在する場合、これらも除去することができる。
上記低分子物質除去処理としては特に限定されず、例えば、遠心分離法、電気泳導法、限外濾過法等が挙げられるが、限外濾過法を用いるものであることが好ましい。上記限外濾過法は、限外濾過膜を有する限外濾過装置を用いて低分子物質を除去する方法であれば特に限定されず、例えば遠心式限外濾過法、循環式限外濾過法等が挙げられる。上記限外濾過膜を有する限外濾過装置としては、市販のものを好適に使用することができ、研究用としては、例えばCentriprep(商品名、アミコン社製)、ミリタン(商品名、ミリポア社製)、ペリコン(商品名、ミリポア社製)等が挙げられる。上記限外濾過工程により、得られた含フッ素ポリマーの濃縮も行うことができる。
上記低分子物質除去処理は、上記加水分解処理の後に行ってもよいし、上記加水分解処理ののち更に酸処理を行う場合、上記酸処理の後に行ってもよい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記加水分解処理及び酸処理が水系の分散体において行うことができる。この場合、上記加水分解処理は、水系媒体中で行われることが好ましく、上記酸処理は、水系分散媒中で行われることが好ましい。上記水系媒体は、水からなるものであれば、水とともに水溶性の有機溶剤からなるものであってもよい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、含フッ素ポリマーが乳化重合により得るものである場合、上記乳化重合及び加水分解処理、更に、必要に応じて行う酸処理を全て水系の分散体において行うことができる。
上記加水分解処理における水系媒体は、上記加水分解処理の後、含フッ素ポリマー水性分散体の水系分散媒とすることができ、上記酸処理における水系分散媒は、上記酸処理の後、そのまま含フッ素ポリマー水性分散体の水系分散媒とすることができる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記水系媒体が上記乳化重合体分散液中の分散媒、及び、上記加水分解処理が行われる水系の分散体中の分散媒であり、上記水系分散媒が上記加水分解処理を経て得られる含フッ素ポリマー水性分散体中の分散媒、上記酸処理が行われる水系の分散体中の分散媒、及び、上記加水分解処理及び酸処理を経て得られる含フッ素ポリマー水性分散体中の分散媒であり、上記水系反応媒体が上記乳化重合が行われる水系の分散体中の分散媒である点で、上記水系媒体、上記水系分散媒及び上記水系反応分散媒が概念上異なるものである。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記含フッ素ポリマーが、上記フルオロビニルエーテル誘導体を実質的に用いず、上記酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体を乳化重合することにより得られたものであってもよい。本明細書において、上記「実質的に用いず」とは、例えば、この含フッ素ポリマーの場合、含フッ素ポリマーを構成するモノマー単位が由来するモノマーの全モル数のうち、上記フルオロビニルエーテル誘導体に由来する酸塩型フルオロビニルエーテル単位の含有率が5モル%未満であることを意味する。
この方法により得られる含フッ素ポリマーは、上述のように、酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体及び酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体からなるポリマー鎖が乳化作用を有するので、重合時に従来の乳化重合に通常用いられている乳化剤を添加しなくてもよく、後工程で上記乳化剤を除去する必要がなくなる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記含フッ素ポリマーが、1,4−ジヨードパーフルオロブタン等のヨウ素化合物の存在下で上記フルオロビニルエーテル誘導体の共重合を行ってブロックポリマーからなる重合体分散液を得、得られた重合体分散液に上述の加水分解処理を行うことにより得られたものであってもよい。
フルオロビニルエーテル誘導体を実質的に用いず、酸塩型フルオロビニルエーテル誘導体を乳化重合する方法により得られる含フッ素ポリマー、及び、ヨウ素化合物の存在下で共重合を行う方法により得られる含フッ素ポリマーは、酸塩型含フッ素ポリマーからなるものであり、そのまま含フッ素ポリマー分散体組成物の調製に用いてもよいし、更に、必要に応じて上述の酸処理を行い、酸型含フッ素ポリマーからなる含フッ素ポリマーとしてから含フッ素ポリマー液状組成物の調製に用いてもよい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記含フッ素ポリマーが、−SOFを有する含フッ素ポリマー前駆体から形成された膜状成形体を、膜状成形体のまま加水分解することにより−SOFをスルホン酸基やその塩に変換し、得られた膜状成形体をアルコール類からなる混合溶媒中に溶解する方法により得られるものであってもよいし、得られた膜状成形体を水中で220〜300℃の温度下で攪拌して分散する方法により得られるものであってもよい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、その調製において、上記含フッ素ポリマーが、上記一般式(I)におけるAが−SOであり、上記XがNRであるものである場合、下記一般式(IV)

(式中、Y、Y、n、m、R及びRは、上記と同じである。)で表される酸型フルオロビニルエーテル誘導体を重合して得られるものであってもよい。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物に含まれる含フッ素ポリマーとしては、上述の一般式(II)で表されるフルオロビニルエーテル誘導体を乳化重合して得られた乳化重合体分散液に加水分解処理を行うことより得られたものであることが好ましい。上記含フッ素ポリマーは、この乳化重合と加水分解処理とを行う方法により得られるものである場合、通常、微粒子として得られ、含フッ素ポリマー微粒子と、製膜補助剤とからなる上述の含フッ素ポリマー分散体組成物の調整に好適に用いられる。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、製膜補助剤として水と相溶性があり沸点が100℃を超え、300℃以下である有機液体が配合されてなるものであるので、造膜性に優れたものである。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上述の製膜補助剤が配合されてなるものであるので、含フッ素ポリマー微粒子からなる上述の含フッ素ポリマー液状組成物であっても、含フッ素ポリマー微粒子が膨潤し、含フッ素ポリマー微粒子同士の一部が融着していることにより、造膜性に優れたものである。上記含フッ素ポリマー液状組成物は、上述のように含フッ素ポリマー微粒子同士の一部が融着していることにより、含フッ素ポリマー微粒子の平均粒子径が10〜300nmと大きい場合であっても造膜性に優れたものである。
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上記製膜補助剤が上述の沸点を有するものであるので、膜を形成する過程においても含フッ素ポリマー液状組成物中に残存して造膜性を向上させ、また、得られる膜から上記製膜補助剤を除去する必要がある場合、加熱することにより容易に行うことができるものである。
本発明の含フッ素ポリマー分散体組成物は、上述の構成からなるものであるので、繊維や膜の形成に好適に用いることができる。本明細書において、上記「膜」は、いわゆる薄膜を含む膜であり、フィルム、シート等をも含む概念である。上記膜は、例えばキャスト製膜、含浸、コーティング等により得られる膜であってよく、成膜時に用いる基材、多孔性支持体等は含まない。
本発明の膜は、上述の含フッ素ポリマー分散体組成物を用いてキャスト製膜を行うことにより得られたものである。上記「キャスト製膜」は、通常、上記含フッ素ポリマー液状組成物を基材の表面に塗布して常温下及び/又は加熱下で乾燥し、必要に応じて水中に浸漬し、基材の表面から剥離することにより薄膜を得ることをいう。本明細書において、「常温下」は、30℃の温度であり、「加熱下」は、50〜80℃の温度である。上記乾燥は、加熱下で行う場合、30〜60分間行うことが好ましい。
上記キャスト製膜に用いる基材としては特に限定されず、例えば、ガラス、ステンレス等が挙げられる。上記塗布の方法としては特に限定されず、例えば、含浸塗布、吹きつけ塗布等が挙げられる。
上記キャスト製膜により得られた膜は、更に、150〜300℃で20〜40分間加熱することにより、上記膜から製膜補助剤を完全に除去することができる。
本発明の膜は、また、上記含フッ素ポリマー液状組成物を多孔性支持体に含浸させたのち、液状媒体を除去することにより得られたものである。本明細書において、上記「液状媒体」とは、20℃程度の常温において液体であり、含フッ素ポリマーを溶解し得る溶媒、及び/又は、含フッ素ポリマーを分散し得る分散媒を意味する。本明細書において、含フッ素ポリマーを溶解し得る溶媒及び上記含フッ素ポリマーを分散し得る分散媒としては、例えば、上述の水系分散媒、製膜補助剤、低級アルコール及び有機系媒体が挙げられる。
上記多孔性支持体は、多孔構造を有するものであれば特に限定されず、有機又は無機の材料の何れでもよく、例えば、グラスウール、セラミック、アルミナ、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]製多孔フィルム、カーボン、不織布、各種ポリマーからなるもの等が挙げられる。上記液状媒体の除去は、例えば、50〜80℃に加熱することにより行ってもよいし、上記含フッ素ポリマーのガラス転移点以上に加熱することにより行ってもよいし、含フッ素ポリマーの融点以上に加熱することにより行ってもよい。上記含フッ素ポリマーのガラス転移点以上の温度とは、通常、150〜350℃の温度であり、上記含フッ素ポリマーの融点以上の温度とは、通常、200〜350℃の温度である。
上述のキャスト製膜により得られた膜の膜厚、及び、上記含フッ素ポリマー液状組成物を多孔性支持体に含浸させて得られた膜の膜厚は、10〜40μmであることが好ましい。10μm未満であると、膜の機械的強度が不充分であり、40μmを超えると、例えば後述する固体高分子電解質型燃料電池に用いる場合、燃料電池としての性能が低下することがある。
本発明の活性物質固定体は、含フッ素ポリマーと活性物質とからなるものであって、上記含フッ素ポリマー液状組成物と、上記活性物質とからなる液状組成物を基材に塗装することにより得られたものである。上記液状組成物を基材に塗装することにより、上記含フッ素ポリマー及び活性物質が基材上に固定される。
上記活性物質としては上記活性物質固定体において活性を有し得るものであれば特に限定されず、本発明の活性物質固定体の目的に応じて適宜選択されるが、例えば触媒を好適に用いることができる場合がある。上記触媒としては、特に限定されず、通常電極触媒として使用されるものであればよく、例えば白金、ルテニウム等を含有する金属が挙げられる。
上記液状組成物を塗装する基材としては特に限定されず、例えば上述した多孔性支持体、樹脂成形体、金属板等が挙げられ、燃料電池等に用いられる電解質膜、多孔性カーボン電極等が好ましい。上記電解質膜としては、フルオロポリマーからなるものが好ましく、上記含フッ素ポリマーからなるものであってもよい。
上記「液状組成物を基材に塗装する」ことは、上記液状組成物を上記基材に塗布し、必要に応じて乾燥し、通常、更に含フッ素ポリマーの融点以上の温度で加熱することよりなる。上記加熱の条件は含フッ素ポリマーと活性物質とを基材上に固定することができるものであれば特に限定されないが、例えば、200〜350℃で2〜30分間加熱することが好ましい。
本発明の電解質膜は、上記活性物質固定体を有するものである。上記電解質膜は、活性物質固定体の性質を妨げない範囲であれば、上記活性物質固定体以外のその他の物質を含むものであってよい。
本発明の膜・電極接合体〔MEA:membrance electrode assembly〕は、上記電解質膜からなるものである。上記膜・電極接合体は、電解質膜の性質を妨げない範囲であれば、上記電解質膜以外のその他の物質を含むものであってよい。
本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、上記膜、上記活性物質固定体、上記電解質膜、及び/又は、上記膜・電極接合体からなるものである。本発明の固体高分子電解質型燃料電池としては、例えば、上記膜からなるもの、上記活性物質固定体からなるもの、上記電解質膜からなるもの、上記膜・電極接合体からなるもの、上記膜及び活性物質固定体からなるもの等が挙げられる。
上記固体高分子電解質型燃料電池は、更に、固体高分子電解質型燃料電池を構成するガス等の構成成分を含むものであってよい。
上述した含フッ素ポリマー液状組成物、キャスト製膜を行うことにより得られた膜、含フッ素ポリマー液状組成物を多孔性支持体に含浸させて得られた膜、活性物質固定体、電解質膜、膜・電極接合体又は固体高分子電解質型燃料電池は、何れも、塩を形成していてもよいスルホン酸基やカルボキシル基を有する含フッ素ポリマーを用いてなるものであるが、塩を形成していてもよいスルホン酸基を有する含フッ素ポリマーを用いてなるものであることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
(1)CF=CFとCF=CFOCFCFSOFとを乳化重合して得られたEW値(1モルのイオンを交換し得るイオン交換能を有するポリマーの重量〔g〕)が710であるコポリマーを含む乳化重合体分散液200mlを、純水を用いて3倍に希釈し、撹拌しながら80℃でpHを9〜12に保持するように10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、−SOFの加水分解を行った。2時間後、反応が80%程度進行した時点で水酸化ナトリウムの消費速度が初期と比べて低下したので、予想される消費当量まで水酸化ナトリウム水溶液を添加した後、80℃のオーブンに放置した。ほぼ中性となったことを確認した後、更に、予想される消費当量の20%に相当する量の水酸化ナトリウム水溶液を追加して、同じオーブン中に放置した。14時間後、水酸化ナトリウムの消費が起こっておらずpHが安定していることを確認した後、塩酸で過剰量の水酸化ナトリウムを中和し、限外濾過器(商品名:ペリコンユニット、ミリポア社製、分画分子量10000)を用いて濾液の電導度が0.01S(ジーメンス)以下になるまで精製及び濃縮を行い、含フッ素ポリマー微粒子の濃度が26質量%の含フッ素ポリマー水性分散体150mlを得た。
この含フッ素ポリマー水性分散体は、非常に安定で1ヶ月間放置しても目視による含フッ素ポリマー微粒子の沈降が認められなかった。
(2)(1)で得られた含フッ素ポリマー水性分散体1mlを撹拌しながら、リン酸トリエチル1.2mlとイソプロパノール0.5mlとを配合した。(1)で得られた乳化重合体分散液よりやや白濁し、粘稠な含フッ素ポリマー分散体組成物を得た。得られた含フッ素ポリマー分散体組成物の一部を採取し、乾燥重量法により含フッ素ポリマーの濃度を測定したところ、10質量%であった。
(3)(2)で得られた含フッ素ポリマー分散体組成物をガラス板上に塗布し、80℃のオーブン中に30分間放置し、透明な膜を形成した。ガラス板ごと純水中に浸漬すると容易に膜が剥離し、厚さ10μmの薄膜が得られた。
(4)上記(1)及び(2)において、得られた乳化重合体分散液、含フッ素ポリマー水性分散体並びに含フッ素ポリマー分散体組成物をそれぞれシリコンウェハー上に塗布し、室温(20℃)で乾燥することにより形成された塗布膜を原子間力顕微鏡〔AFM:Atomic force microscope〕を用いて観察した。AFMを用いて撮影した、乳化重合体分散液の塗布膜の写真を図1(a)に、含フッ素ポリマー水性分散体の塗布膜の写真を図1(b)に、含フッ素ポリマー分散体組成物の塗布膜の写真を図1(c)に示す。
図1の(a)と(b)に示されるように、ポリマー粒子は、加水分解の前後で粒子の大きさや形状にほとんど変化がなく、粒子同士があまり接していないが、リン酸トリエチルを配合した含フッ素ポリマー分散体組成物では、ポリマー粒子が膨潤したり融着変形したりして、粒子同士が接している面積が大きいことがわかる。
【実施例2】
実施例1(2)で得られた含フッ素ポリマー分散体組成物にポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕多孔膜(ダイキン工業製)を含浸し、80℃のオーブン中に30分間放置し、厚さ15μmの透明な膜を得た。
【実施例3】
実施例1(1)で得られた含フッ素ポリマー水性分散体5mlを、純水を用いて2倍に希釈し、これを攪拌しながら、リン酸トリエチル10mlを配合した。40℃に加熱しながらロータリーエバポレーターで水分蒸発を行うことにより、リン酸トリエチルを分散媒とするオルガノゾルが得られた。
得られたオルガノゾルを用いて実施例1(3)と同様の方法により薄膜を形成してガラス板から剥離することにより、厚さ10μmの薄膜が得られた。
比較例1
実施例1(1)で得られた含フッ素ポリマー水性分散体のみを用いて、実施例1(3)と同様の方法により膜を形成した。
得られた透明な膜は、クラックが入っており、連続した膜とならず、また、純水に浸漬すると再分散した。
比較例2
リン酸トリエチルの代わりにエタノールを用いる以外は実施例1と同様にして組成物を得、得られた組成物を用いて膜を形成した。
得られた膜は、クラックが入っており、純水に浸漬すると再分散した。
リン酸トリエチルを含む実施例1〜3の含フッ素ポリマー液状組成物は、何れも膜を得ることができるものであったが、リン酸トリエチルを配合していない比較例1〜2の組成物は、実施例1〜3と同様の連続した膜を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上述の構成を有するので、造膜性に優れ、スルホン酸基及び/又はカルボキシル基の酸・酸塩型基を有する含フッ素ポリマーの膜を得ることができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素ポリマーと製膜補助剤とからなる含フッ素ポリマー液状組成物であって、
前記含フッ素ポリマーは、下記一般式(I)

(式中、Yは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表し、n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。mは、1〜5の整数を表し、m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SO又は−COOZを表す。Xは、−OH、−ONR、−NR又は−OM1/Lを表し、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アルキル基若しくはスルホニル含有基を表す。Zは、水素原子、NR10又はM1/Lを表し、R、R、R及びR10は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。M及びMは、L価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。)で表される酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位からなるものであり、
前記製膜補助剤は、水と相溶性があり沸点が100℃を超え、300℃以下である有機液体であり、
前記含フッ素ポリマー液状組成物は、前記含フッ素ポリマーからなる含フッ素ポリマー微粒子と、前記製膜補助剤とからなる含フッ素ポリマー分散体組成物であり、
前記含フッ素ポリマー微粒子は、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子25質量%以上含むものである
ことを特徴とする含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項2】
製膜補助剤は、含フッ素ポリマー1質量部に対して0.1〜100質量部を配合するものである請求の範囲第1項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項3】
製膜補助剤は、リン酸エステルである請求の範囲第1又は2項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項4】
製膜補助剤は、環状アミド又は環状アミド誘導体である請求の範囲第1又は2項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項5】
製膜補助剤は、エチレンオキシドオリゴマーのモノヒドロキシエーテルである請求の範囲第1又は2項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項6】
含フッ素ポリマーは、酸・酸塩型フルオロビニルエーテル単位と、エチレン性モノマーに由来するエチレン性モノマー単位とからなる2元以上の共重合体である請求の範囲第1、2、3、4又は5項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項7】
エチレン性モノマーは、テトラフルオロエチレンである請求の範囲第6項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項8】
は、トリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子であり、nは、0又は1であり、mは、2である請求の範囲第1、2、3、4、5、6又は7項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項9】
nは、0である請求の範囲第8項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項10】
含フッ素ポリマーは、含フッ素ポリマー液状組成物の1〜60質量%である請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8又は9項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項11】
含フッ素ポリマーは、下記一般式(II)

(式中、Yは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表し、n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。mは、1〜5の整数を表し、m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SO又は−COZを表す。Xは、ハロゲン原子を表す。Zは、炭素数1〜4のアルコキシル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテル誘導体を乳化重合して得られた乳化重合体分散液に加水分解処理を行うことより得られたものである請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項12】
含フッ素ポリマー微粒子は、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子50質量%以上含むものである請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項13】
含フッ素ポリマー球形微粒子は、平均粒子径が10nm以上である請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項14】
含フッ素ポリマー分散体組成物は、含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体に製膜補助剤を配合して得られた分散体である請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項15】
製膜補助剤は、前記製膜補助剤と水系分散媒との合計質量の10〜99質量%である請求の範囲第14項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項16】
含フッ素ポリマーと、製膜補助剤と、更に、低級アルコールとからなるものである請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項17】
低級アルコールは、含フッ素ポリマー1質量部に対し0.5〜5質量部を配合するものである請求の範囲第16項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項18】
含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー微粒子が有機系媒体に分散しているオルガノゾルであり、
前記有機系媒体は、製膜補助剤からなるものであり、
前記有機系媒体は、更に、水を含むものか又は水を含まないものであり、
前記水は、前記有機系媒体の10質量%以下である請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項19】
有機系媒体は、更に、低級アルコールからなるものである請求の範囲第18項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項20】
低級アルコールは、含フッ素ポリマー1質量部に対し0.5〜5質量部を配合するものである請求の範囲第19項記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項21】
含フッ素ポリマー微粒子が水系分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散体から請求の範囲第18、19又は20項記載の含フッ素ポリマー液状組成物を得るためのオルガノゾル製造方法であって、
前記含フッ素ポリマー水性分散体と製膜補助剤とを配合したのち水分蒸発を行うことよりなる
ことを特徴とするオルガノゾル製造方法。
【請求項22】
請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20項記載の含フッ素ポリマー液状組成物を用いてキャスト製膜を行うことにより得られたものである
ことを特徴とする膜。
【請求項23】
請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20項記載の含フッ素ポリマー液状組成物を多孔性支持体に含浸させたのち、液状媒体を除去することにより得られたものである
ことを特徴とする膜。
【請求項24】
含フッ素ポリマーと活性物質とからなる活性物質固定体であって、
請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20項記載の含フッ素ポリマー液状組成物と、前記活性物質とからなる液状組成物を基材に塗装することにより得られたものである
ことを特徴とする活性物質固定体。
【請求項25】
請求の範囲第24項記載の活性物質固定体を有する
ことを特徴とする電解質膜。
【請求項26】
請求の範囲第25項記載の電解質膜からなる
ことを特徴とする膜・電極接合体。
【請求項27】
請求の範囲第22若しくは23項記載の膜、請求の範囲第24項記載の活性物質固定体、請求の範囲第25項記載の電解質膜、及び/又は、請求の範囲第26項記載の膜・電極接合体からなる
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。

【国際公開番号】WO2004/078842
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503052(P2005−503052)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002609
【国際出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】