説明

含フッ素化合物及びその製造方法、含フッ素重合体、有機薄膜、並びに、有機薄膜素子

【課題】 電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規化合物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(I)で表される含フッ素化合物。



[式(I)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、s1及びt1は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素化合物及びその製造方法、含フッ素重合体、有機薄膜、並びに、有機薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電子輸送性又はホール輸送性を有する有機材料を含む薄膜は、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ、有機エレクトロルミネッセンス素子等の有機薄膜素子への応用が期待されているが、有機p型半導体(ホール輸送性を示す)に比べ、有機n型半導体(電子輸送性を示す)が得難いことから、有機n型半導体の開発が種々検討されている。
【0003】
フルオロアルキル基を導入したπ共役化合物は電子受容性が増加するため、有機n型半導体等の電子輸送性材料への展開が見込まれる化合物である。この観点から、近年、チオフェン環、特にオリゴチオフェンにフルオロアルキル基を導入した化合物の研究が盛んに行われている(特許文献1〜4参照)。
【0004】
一方、分子構造の平面性を向上させるため、ビチオフェンを架橋した構造を有するオリゴチオフェンやポリチオフェンの開発が種々検討されている(非特許文献1、2及び特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/186266号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/183068号明細書
【特許文献3】国際公開第2003/010778号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第1279689号明細書
【特許文献5】特開2004−339516号公報
【非特許文献1】Paolo Coppo etal., J. Mat. Commun. 2002, 12(9), 2597.
【非特許文献2】Paolo Coppo etal., Chem. Commun. 2003, 2548.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような公知の材料では、有機n型半導体としての性能が十分であるとは言い難く、電子輸送性がさらに向上した有機n型半導体が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規化合物及び新規重合体を提供することにある。本発明の目的はまた、この新規化合物及び/又は新規重合体を含有する有機薄膜、並びにこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、下記一般式(I)で表される含フッ素化合物を提供する。
【化1】



[式(I)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、s1及びt1は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【0009】
本発明はまた、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する含フッ素重合体を提供する。
【化2】



[式(III)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、s2及びt2は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【0010】
このような骨格を備えた含フッ素化合物及び含フッ素重合体は、フルオロアルキルで架橋した環構造を有することから環同士のπ共役平面性が良好であるとともに、フッ素原子の導入により十分に低いLUMOを示すことができ、電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能である。また、これらの含フッ素化合物及び含フッ素重合体は、化学的に安定で、溶剤への溶解性が優れているため、これらを用いて薄膜を形成することで、性能の優れた有機薄膜素子が製造可能となる。
【0011】
本発明はまた、上記本発明の含フッ素化合物の製造方法であって、下記一般式(VII)で表される化合物を、ハロニウムイオン発生剤の存在下でフッ化物イオン源と反応させる工程を含む、含フッ素化合物の製造方法を提供する。
【化3】



[式(VII)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、X及びYは、各々独立にアルキルチオ基を示すか、或いは、X及びYのアルキルチオ基のアルキル部分が連結してなるアルキレンジチオ基、又は、X及びYが一体となって、結合する炭素原子とともに形成するチオカルボニル基を示し、s1及びt1は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【0012】
かかる含フッ素化合物の製造方法によれば、上述した本発明の含フッ素化合物を効率的に且つ確実に製造することができる。
【0013】
本発明は更に、上記本発明の含フッ素化合物及び/又は含フッ素重合体を含む有機薄膜、並びに、当該有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供する。
【0014】
かかる有機薄膜及び有機薄膜素子は、上述のように十分に低いLUMOを示す本発明の含フッ素化合物及び/又は含フッ素重合体を用いて形成されているため、優れた性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規の含フッ素化合物及び新規の含フッ素重合体を提供することができる。また、本発明によれば、この含フッ素化合物及び/又は含フッ素重合体を含有する有機薄膜、並びに、この有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0017】
本発明の含フッ素化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有するものである。
【化4】



[式(I)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、s1及びt1は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【0018】
ここで、上記一般式(I)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、1又は複数の任意の置換基で置換されていてもよい。また、s1及びt1は各々独立に0以上の整数を示すが、それらの上限値は、Ar及びArで表される炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基から置換可能な水素原子の数−2で表される数である。また、Ar及びArは同一でも異なっていてもよいが、製造上の容易さからは、Ar及びArは同一であることが好ましい。
【0019】
また、上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【化5】



[式(II)中、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、Z及びZは各々独立に、下記式(i)〜(viii)で表される基のいずれかを示し、u1及びv1は各々独立に、0〜2の整数を示す。但し、u1が2の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、v1が2の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。また、R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の置換基を示す。更に、下記式(viii)で表される基は左右反転していてもよい。]
【0020】
【化6】



【0021】
また、本発明の含フッ素重合体は、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有するものである。
【化7】



[式(III)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、s2及びt2は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【0022】
すなわち、本発明の含フッ素重合体は、上記一般式(III)で表される繰り返し単位を1以上、好ましくは2以上有しており、他の繰り返し単位を有するものであっても良い。重合体中、複数存在するRは同一であっても異なっていてもよい。なお、製造上の容易さからは、複数存在するRは同一であることが好ましい。
【0023】
上記一般式(III)中、Ar、Arは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を表し、1又は複数の任意の置換基で置換されていてもよい。また、s2及びt2は各々独立に0以上の整数を示すが、それらの上限値は、Ar及びArで表される炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基から置換可能な水素原子の数−3で表される数である。また、Ar及びArは同一でも異なっていてもよいが、製造上の容易さからは、Ar及びArは同一であることが好ましい。
【0024】
また、上記一般式(III)で表される繰り返し単位は、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化8】



[式(IV)中、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、Z及びZは各々独立に、下記式(i)〜(viii)で表される基のいずれかを示し、u2及びv2は各々独立に、0又は1を示す。但し、R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の置換基を示す。また、下記式(viii)で表される基は左右反転していてもよい。]
【0025】
【化9】



【0026】
本発明の重合体は、一分子中に、上記一般式(III)又は上記一般式(IV)で表される繰り返し単位のうち、いずれか一つの繰り返し単位を有していても、異なる複数の繰り返し単位を有していてもよい。なお、製造上の容易さを考慮すると、いずれか一つの繰り返し単位を有することが好ましい。
【0027】
本発明の重合体は、上記一般式(III)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、下記一般式(V)で表される繰り返し単位の少なくとも1つとを有することが好ましい。また、本発明の重合体は、上記一般式(IV)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、下記一般式(V)で表される繰り返し単位の少なくとも一つとを有することがより好ましく、上記一般式(IV)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位の少なくとも一つとを有することが更に好ましい。このような構成にすることにより、溶解性、機械的、熱的又は電子的特性を変化させ得る範囲が広くなる。なお、下記一般式(V)中、Arは、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基(これらの基は置換基で置換されていてもよい)を示す。本発明の重合体において、上記一般式(III)で表される繰り返し単位(好ましくは上記一般式(IV)で表される繰り返し単位)と、下記一般式(V)で表される繰り返し単位(好ましくは下記一般式(VI)で表される繰り返し単位)との比率は、好ましくは、前者100モルに対して後者10〜1000モルであり、より好ましくは、前者100モルに対して後者25〜400モルであり、さらに好ましくは、前者100モルに対して後者50〜200モルである。
【0028】
【化10】



【0029】
この場合において、Arは、下記一般式(VI)で表される基であると好適である。下記一般式(VI)中、Zは、上記一般式(IV)中のZ又はZと同一又は異なり、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかである。下記一般式(VI)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。また、下記式(i)〜(ix)中、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の置換基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。更に、下記式(viii)で表される基は左右反転していてもよい。
【0030】
【化11】



【0031】
【化12】



【0032】
上記一般式(I)及び(III)において、Ar及びArで表される炭素数10以上の芳香族炭化水素基とは、炭素数10以上の縮合環から少なくとも2個の水素原子を除いた残りの原子団をいい、通常、炭素数10〜60、好ましくは10〜20である。縮合環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フルオレンが挙げられる。なお、芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0033】
また、上記一般式(I)及び(III)において、Ar及びArで表される炭素数4以上の複素環基とは、複素環化合物から少なくとも2個の水素原子を除いた残りの原子団をいい、炭素数は、通常4〜60、好ましくは4〜20である。なお、複素環基上に置換基を有していてもよく、複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0034】
また、上記一般式(V)において、Arで表される2価の芳香族炭化水素基とは、ベンゼン環又は縮合環から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、通常、炭素数6〜60、好ましくは6〜20である。縮合環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フルオレンが挙げられる。これらの中でもベンゼン環又はフルオレンから水素原子2個を除いた残りの原子団が最も好ましい。なお、芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、2価の芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0035】
また、上記一般式(V)において、Arで表される2価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は、通常4〜60、好ましくは4〜20である。なお、複素環基上に置換基を有していてもよく、複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0036】
ここで、複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ケイ素、セレン、テルル等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0037】
上記一般式(II)及び(IV)中のZ及びZは、各々独立に、上記式(i)〜(viii)で表される基のいずれかを示すが、上記式(i)、(ii)、(iii)又は(viii)で表される基のいずれかであることが好ましく、上記式(i)、(ii)又は(iii)で表される基のいずれかであることがより好ましく、上記式(i)で表される基であることが特に好ましい。上記一般式(VI)中のZは、上記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示すが、上記式(i)、(ii)、(iii)、(viii)又は(ix)で表される基のいずれかであることが好ましく、上記式(i)、(ii)又は(iii)で表される基のいずれかであることがより好ましく、上記式(i)で表される基であることが特に好ましい。チオフェン環、フラン環及びピロール環、特にチオフェン環は、特徴的な電気的性質を示し、2個のチオフェン環をフルオロアルキルで架橋することにより、従来にない新たな電気的特性の発現も期待できる。
【0038】
上記式(iii)、(viii)及び(ix)、並びに、上記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(VI)中、R及びR〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は任意の1価の置換基であり、R及びRはそれぞれ独立に、任意の1価の置換基である。なお、RとRとの間、及び、RとRとの間に環を形成していても良い。また、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子(但し、R及びRは除く)、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状の低分子鎖、1価の環状基(この環状基は、単環でも縮合環でも、炭素環でも複素環でも、飽和でも不飽和でもよく、置換基を有していてもいなくてもよい)、電子供与基又は電子吸引基であることが好ましい。
【0039】
また、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子(但し、R及びRは除く)、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状の低分子鎖、環構成原子数が3〜60である1価の環状基(この環状基は、単環でも縮合環でも、炭素環でも複素環でも、飽和でも不飽和でもよく、置換基を有していてもいなくてもよい)、飽和若しくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されても良い)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されても良い)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましい。
【0040】
なお、本発明の「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0041】
また、アルキル基には特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基等が挙げられ、アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基等)についても同様である。
【0042】
不飽和炭化水素基には特に制限がなく、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基及び2−ブテニル基等が挙げられる。
【0043】
また、アルカノイル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基及びイソバレリル基等が挙げられ、アルカノイル基をその構造中に含む基(アルカニイルオキシ基、アルカニルアミノ基等)についても同様である。なお、炭素数1のアルカノイル基とはホルミル基を指すものとし、アルカノイル基をその構造中に含む基についても同様とする。
【0044】
また、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子(但し、R及びRは除く)、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい飽和若しくは不飽和の直鎖状若しくは分岐炭化水素基、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数2〜18の直鎖若しくは分岐不飽和炭化水素基、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルコキシル基、炭素数2〜18の直鎖若しくは分岐アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルキル基である)、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲン原子で置換された炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルコキシスルホニル基(そのアルキル基は1個以上のハロゲン原子で置換されてもよい)、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルキルスルホニル基(そのアルキル基は1個以上のハロゲン原子で置換されても良い)、スルファモイル基、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルキルカルバモイル基、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルカノイル基、又は炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルコキシカルボニル基であることがさらに好ましい。
【0045】
また、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子(但し、R及びRは除く)、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい飽和若しくは不飽和の直鎖状若しくは分岐炭化水素鎖、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシル基、炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲン原子で置換された炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシスルホニル基(そのアルキル基は1個以上のハロゲン原子で置換されてもよい)、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキルスルホニル基(そのアルキル基は1個以上のハロゲン原子で置換されてもよい)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルカノイル基、又は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシカルボニル基であることが特に好ましい。
【0046】
また、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子(但し、R及びRは除く)、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖状炭化水素基、下記式(1)〜(67)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する1価の環状基(この環状基は、1個又は複数の置換基でさらに置換されていてもよく、それらの置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、飽和もしくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基である)であることが極めて好ましい。
【0047】
【化13】




【0048】
【化14】



【0049】
【化15】



【0050】
また、R〜Rはそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシル基、炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲン原子で置換された炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシスルホニル基(そのアルキル基は1個以上のハロゲン原子で置換されても良い)、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキルスルホニル基(そのアルキル基は1個以上のハロゲン原子で置換されても良い)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルカノイル基、又は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシカルボニル基であることが特に好ましい。
【0051】
上記一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)中、Rはハロゲン原子であることが特に好ましく、フッ素原子であることが最も好ましく、これにより、有機n型半導体として有機薄膜素子の薄膜材料に好適なものとなる。特に、チオフェン構造等を含む化合物及びこれを含む重合体は、フッ素原子導入によるLUMOレベルの低下だけでなく、有機溶剤に対する溶解度の向上、チオフェン環の架橋によるπ共役平面性の保持等の観点から、有機半導体としての性能向上及び製造コスト低下への寄与が期待できる。本発明の有機薄膜素子は、上記フルオロアルキルで架橋した環構造を有する本発明の化合物又はこれを含む重合体を含有することにより、高い性能を得ることができる。
【0052】
また、本発明の含フッ素化合物は、上記一般式(I)又は(II)中のR及びRとして重合活性基を有していることも好ましく、それにより重合体の前駆体として用いることが可能となる。なお、上記一般式(I)又は(II)中、Rが複数存在する場合、複数のRのうちの1つが重合活性基であることが好ましく、Rが複数存在する場合、複数のRのうちの1つが重合活性基であることが好ましい。すなわち、本発明の含フッ素化合物は、重合体の前駆体として用いる場合、分子内に2つの重合活性基を有していることが好ましい。重合活性基としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基、ホウ酸エステル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸基、ホルミル基、又はビニル基が例示され、これらの中でもハロゲン原子、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル基が好ましい。
【0053】
また、本発明の化合物を有機薄膜として用いる場合、末端基に重合活性基がそのまま残っていると、素子にしたときの特性や耐久性が低下する可能性があるので、安定な基で保護するようにしてもよい。
【0054】
上記一般式(I)又は(II)中のR及びRとしては、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、複素環基、電子供与基又は電子吸引基が特に好ましく、電子輸送性を高めるという観点からは、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基又は電子吸引基が最も好ましい。
【0055】
次に、本発明の含フッ素重合体について説明する。本発明の含フッ素重合体は、上述したように、上記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位を含んでいれば特に制限はないが、上記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいても良い。また、上記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位に加えて、上記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位を含んでいても良く、上記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいても良い。
【0056】
本発明の含フッ素重合体は、上記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位と、上記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位とが隣り合う構造を有することが好ましい。上記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位と、上記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位とが隣り合う場合、隣接する芳香環又は複素環同士の二面角を小さくすることができ、分子内の平面性が向上しやすく、分子内でのπ共役が広くなり、また、LUMOレベルも低くなることから、電子輸送性が向上する。ここで、二面角とは、上記一般式(III)又は(IV)で表される芳香環又は複素環を含む平面と、その隣に結合した芳香環又は複素環を含む平面とのなす角度のうち、0度以上90度以下の角度で定義される。上記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位と、上記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位とが隣り合う場合、二面角は通常0〜45度、典型的には0〜40度、より典型的には0〜30度である。
【0057】
図9は、上記一般式(IV)で表される繰り返し単位の環と、上記一般式(VI)で表される繰り返し単位の環とがなす二面角を表す図である。二面角は図9において、C−C−Cで形成される面と、C−C−Cで形成される面とがなす角を意味する。分子内の平面性を高めるという観点からは、上記一般式(IV)で表される構造に含まれるZ又はZを含んだ環構造(例えば、Z又はZが上記式(i)で表される基の場合にはチオフェン環)の数と、上記一般式(VI)で表されるZを含んだ環構造の数の和が3以上であり、それらの環が連続して連結していることが好ましく、Z、Z又はZを含んだ環構造の数の和が4以上であり、それらの環が連続して連結していることがより好ましい。
【0058】
また、本発明の含フッ素重合体は、電子輸送性を高めるという観点から、下記一般式(VIII)、(IX)又は(X)で表されるものが好ましい。
【0059】
【化16】



【0060】
【化17】



【0061】
【化18】



【0062】
ここで、上記一般式(VIII)〜(X)中、Z、Z、Z、R、R、R、R及びRは、上記一般式(I)〜(IV)及び(VI)中のZ、Z、Z、R、R、R、R及びRと同義である。また、Z、Z、Z、R、R、R、R及びRは、複数存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、mは2〜500の整数を示し、3〜20の整数であることが好ましい。nは1〜500の整数を示し、2〜20であることが好ましい。pは1〜500の整数を示し、1〜10であることが好ましい。これらの中で、Z、Z及びZがすべて硫黄原子であり、かつRがフッ素原子であるものが特に好ましい。
【0063】
また、本発明の重合体の末端基として重合活性基を有している場合、それらは他の重合体の前駆体として用いることもできる。その場合、本発明の重合体は分子内に2つの重合活性基を有していることが好ましい。重合活性基としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基、ホウ酸エステル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸基、ホルミル基、又はビニル基が例示され、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル基が好ましい。
【0064】
また、本発明の重合体を有機薄膜として用いる場合、末端基に重合活性基がそのまま残っていると、素子にしたときの特性や耐久性が低下する可能性があるので、安定な基で保護するようにしてもよい。
【0065】
末端基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、複素環基、電子供与基又は電子吸引基が挙げられ、電子輸送性を高めるという観点からフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基又は電子吸引基が好ましい。また、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものも好ましく、例えば、炭素−炭素結合を介してアリール基又は複素環基と結合している構造が例示される。
【0066】
本発明の含フッ素重合体として、特に好ましいものとしては、例えば、下記一般式(68)〜(72)で表されるものが挙げられる。
【0067】
【化19】



【0068】
【化20】



【0069】
【化21】



【0070】
【化22】



【0071】
【化23】



【0072】
ここで、上記一般式(68)〜(72)中、R11及びR12は末端基を示し、同一でも異なっていても良く、先に例示した末端基が挙げられ、フルオロアルキル基であることが好ましい。また、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を示し、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。重合体中にR13、R14、R15及びR16が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。なお、製造上の容易さからは、複数存在するR13、R14、R15及びR16は同一であることが好ましい。また、R、R、u2及びv2は、上記一般式(I)及び(IV)中のR、R、u2及びv2と同義である。
【0073】
更に、q及びrは、重合体を用いた有機薄膜の形成方法に応じて適宜選ぶことができる。真空蒸着法等の気相成長法を用いて有機薄膜を形成する場合、重合体はオリゴマーであることが好ましく、qは2〜10の整数であることが好ましく、3〜10の整数であることがより好ましく、3〜5の整数であることが更に好ましく、rは1〜10の整数であることが好ましく、2〜10の整数であることがより好ましく、2〜5の整数であることが更に好ましい。一方、重合体を有機溶剤に溶解した溶液を塗布する方法を用いて有機薄膜を形成する場合、q及びrは3〜500の整数であることが好ましく、6〜300の整数であることがより好ましく、20〜200の整数であることが更に好ましい。また、塗布法で成膜したときの膜の均一性の観点から、重合体のポリスチレン換算の数平均分子量は、1×10〜1×10であることが好ましく、1×10〜1×10であることがより好ましい。
【0074】
本発明の含フッ素化合物又はそれから誘導される含フッ素重合体の製造方法は特に限定されず、どのような方法により製造してもよいが、以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。
【0075】
上記一般式(I)で表される本発明の含フッ素化合物は、前駆体として下記一般式(VII)で表される化合物又は下記一般式(VIIa)で表される化合物を用い、この前駆体をフッ素化剤と反応させるフッ素化工程を含む製造方法により製造することが可能である。すなわち、上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(VIIa)で表される化合物を前駆体として用い、例えば、アルコールをフッ素化させるOrganic Reactions vol.35, p.315 (1988) Chap.3 "FluorinationwithDAST"に記載された方法と同様にして、上記前駆体をフッ素化剤と反応させる工程を含む製造方法により製造することが可能である。この反応工程の一例として、下記反応式(a)に示した化合物(73)から化合物(74)への変換工程が挙げられる。
【0076】
【化24】



[式(VIIa)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、Vは水酸基又は1価の置換基を示し、s1及びt1は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【0077】
【化25】



【0078】
また、上記一般式(I)で表される本発明の化合物のうち、Rがフッ素原子である化合物は、下記一般式(VII)で表される化合物を前駆体として用い、この前駆体を、ハロニウムイオン発生剤の存在下、フッ化物イオン源と反応させる工程を含む製造方法により製造することが好ましい。この反応工程の一例として、下記反応式(b)に示した化合物(75)から化合物(76)への変換工程が挙げられる。
【0079】
【化26】



[式(VII)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、X及びYは、各々独立にアルキルチオ基を示すか、或いは、X及びYのアルキルチオ基のアルキル部分が連結してなるアルキレンジチオ基、又は、X及びYが一体となって、結合する炭素原子とともに形成するチオカルボニル基を示し、s1及びt1は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【0080】
【化27】



【0081】
上記一般式(VII)で表される化合物を前駆体として用いた上記反応工程における反応条件は特に限定されず、例えば、アルキルスルファニル基(アルキルチオ基)等からフルオロ基への公知の変換反応における条件(例えば、特開平6−135869号公報等参照)を参考にして適宜選択してもよい。以下、具体的に説明する。
【0082】
まず、上記フッ化物イオン源としては、例えば、フッ化水素、フッ化水素とアミンとの錯体、フッ化水素とピリジンとの錯体、二水素三フッ化四級アンモニウム、又は二水素三フッ化四級ホスホニウムが好ましく、これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。最適なフッ化物イオン源としては、例えば、(フッ化水素)/ピリジン錯体が挙げられる。
【0083】
なお、上記アミンとしては、例えば、ピリジン等の含窒素環式化合物、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアルキルアミン等が挙げられる。また、二水素三フッ化四級アンモニウム及び二水素三フッ化四級ホスホニウムは特に限定されず、公知の化合物を適宜用いることができる。二水素三フッ化四級アンモニウムとしては、例えば下記一般式(XI)で表される化合物が挙げられ、二水素三フッ化四級ホスホニウムとしては、例えば下記一般式(XII)で表される化合物が挙げられる。
20212223 ・・・(XI)
24252627 ・・・(XII)
【0084】
上記一般式(XI)及び(XII)中、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ベンジル基等の炭化水素基を示す。上記一般式(XI)で表される二水素三フッ化四級アンモニウムとしては、例えば、二水素三フッ化テトラメチルアンモニウム、二水素三フッ化テトラエチルアンモニウム、二水素三フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、二水素三フッ化ベンジルトリメチルアンモニウム、二水素三フッ化ベンジルトリエチルアンモニウム、二水素三フッ化セチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。これらは、例えば、50%フッ酸、フッ化カリウム及びフッ化四級アンモニウムから容易に合成できる(例えば、Bull. Soc. Chim. Fr., 910 (1986)等参照)。また、上記一般式(XII)で表される二水素三フッ化四級ホスホニウムとしては、例えば、二水素三フッ化テトラメチルホスホニウム、二水素三フッ化テトラエチルホスホニウム、二水素三フッ化テトラブチルホスホニウム、二水素三フッ化ベンジルトリメチルホスホニウム、二水素三フッ化ベンジルトリエチルホスホニウム、二水素三フッ化セチルトリメチルホスホニウム等が挙げられる。
【0085】
上記反応工程における上記フッ化物イオン源の使用量は、特に限定されないが、例えば、フッ化物イオン換算で3当量〜大過剰量の範囲であり、反応効率及びコストの観点から、例えば3〜5当量が好ましい。
【0086】
また、上記反応工程における上記ハロニウムイオン発生剤としては、特に限定されず、公知のものを適宜用いることができ、例えば、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(DBH)、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−ブロモアセトアミド(NBA)、2,4,4,6−テトラブロモ−2,5−シクロヘキサジエノン、N−ヨードコハク酸イミド(NIS)等が挙げられる。上記ハロニウムイオン発生剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、ハロニウムイオン換算で3当量〜大過剰量の範囲であり、反応効率及びコストの観点から、例えば3〜5当量が好ましい。
【0087】
また、上記反応工程において、必要に応じて溶媒を適宜用いてもよい。上記溶媒は特に限定されないが、なるべく目的の反応を阻害しないものであることが好ましく、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトニトリル等のニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化溶媒等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし2種類以上併用してもよい。最適な溶媒としては、例えばジクロロメタンが挙げられる。
【0088】
また、上記反応工程における反応温度及び反応時間は特に限定されず、前駆体の種類を考慮して適宜選択することができる。なお、上記反応温度は、例えば、−100℃〜100℃の範囲である。
【0089】
上記本発明の製造方法により、従来は不可能であった、フルオロアルキルで架橋した環状化合物、特にジフルオロアルキルで架橋したビチオフェン構造を含む化合物を、簡便に且つ高収率で製造できるようになった。また、本発明の製造工程におけるフッ素化反応では、安価で取り扱いが容易なフッ素化試薬を用いてフッ素化を行うこともできる。
【0090】
本発明の含フッ素化合物を有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるため、製造した化合物を蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で純化処理することが好ましい。
【0091】
以上、本発明の含フッ素化合物の製造方法について説明したが、本発明の製造方法における反応条件、反応試薬等は、上記の例示以外にも適宜選択可能である。また、上記一般式(I)で表される本発明の含フッ素化合物は、上述の通り、本発明の製造方法により製造することが好ましいが、これに限定されず、どのような方法により製造してもよい。
【0092】
次に、本発明の含フッ素重合体の製造方法について説明する。本発明の含フッ素重合体は、例えば、下記一般式(XIII)〜(XVI)で表される化合物を原料として、これらを反応させることにより製造することができる。
【0093】
【化28】



【0094】
【化29】



【0095】
【化30】



【0096】
【化31】



【0097】
上記一般式(XIII)〜(XVI)中、Ar、Ar、Ar、Z、Z、Z、R、R、R、R、R、s2、t2、u2及びv2は、上記一般式(I)〜(VI)中のAr、Ar、Ar、Z、Z、Z、R、R、R、R、R、s2、t2、u2及びv2と同義である。また、W及びWはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基、ホウ酸エステル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸基、ホルミル基、又はビニル基を示す。
【0098】
上記一般式(XIII)〜(XVI)で表される化合物の合成上の反応のしやすさの観点から、W及びWはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル基又はホウ酸基であることが好ましい。
【0099】
また、本発明の重合体の製造に用いる反応方法としては、例えば、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法等が例示される。また、重合体は、重合性官能基による反応以外によって形成されていてもよい。例えば、一般式(I)において、s1、t1が0である縮合環化合物同士を、FeClを用いた酸化重合反応や電気化学的な酸化による重合反応等によって繰り返し重合させる方法も例示される。
【0100】
これらのうち、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、及びNi(0)触媒により重合する方法が、構造制御がしやすいので好ましい。さらに、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法が、原料の入手しやすさと反応操作の簡便さから好ましい。
【0101】
モノマー(上記一般式(XIII)〜(XVI)で表される化合物)は、必要に応じ、有機溶媒に溶解し、例えばアルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で、反応させることができる。
【0102】
有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために、十分に脱酸素処理を施したものを用い、不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、同様に、脱水処理を行うことが好ましい(但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない)。
【0103】
本発明の重合体を製造する際、上記一般式(XIII)〜(XVI)で表される化合物を反応させるために、適宜アルカリや適当な触媒を添加することができる。これらは用いる反応に応じて選択すればよい。また、上記アルカリ又は触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものを使用することが好ましい。
【0104】
本発明の重合体を有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるため、反応前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに重合することが好ましく、また合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0105】
反応に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が例示され、単一溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いてもよい。
【0106】
反応後は、例えば水でクエンチした後に有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する等の通常の後処理で生成物を得ることができる。生成物の単離後及び精製は、クロマトグラフィーによる分取や再結晶等の方法により行うことができる。
【0107】
次に、本発明の有機薄膜について説明する。本発明の有機薄膜は、上記本発明の含フッ素化合物及び/又は含フッ素重合体を含有することを特徴とする。
【0108】
本発明の有機薄膜の膜厚としては、通常1nm〜100μm程度であり、好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましいのは20nm〜200nmである。
【0109】
有機薄膜は、上記化合物及び上記重合体のうちの1種類を単独で含むものであってもよく、上記化合物及び上記重合体のうちの2種類以上を含むものであってもよい。また、有機薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるため、上記化合物又は上記重合体以外に、電子輸送性又はホール輸送性を有する低分子化合物又は重合体を混合して用いることもできる。
【0110】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン若しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリフェニレンビニレン若しくはその誘導体、又はポリチエニレンビニレン若しくはその誘導体等が例示される。また、電子輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体等が例示される。
【0111】
また、本発明の有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては公知のものが使用でき、アゾ化合物及びその誘導体、ジアゾ化合物及びその誘導体、無金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、ペリレン化合物及びその誘導体、多環キノン系化合物及びその誘導体、スクアリリウム化合物及びその誘導体、アズレニウム化合物及びその誘導体、チアピリリウム化合物及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体等が例示される。
【0112】
さらに、本発明の有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要な材料を含んでいてもよい。例えば、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、安定性を増すための安定化剤、UV光を吸収するためのUV吸収剤等が例示される。
【0113】
また、本発明の有機薄膜は、機械的特性を高めるため、上記化合物又は上記重合体以外の高分子化合物材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0114】
このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0115】
本発明の有機薄膜の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、上記化合物及び/又は上記重合体、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダー等を含む溶液を用いて成膜する方法が例示される。また、本発明の化合物及び/又はこれを含むオリゴマーを用いる場合は、真空蒸着法により薄膜に形成することもできる。
【0116】
上記溶液を用いて成膜する際に使用する溶媒としては、上記化合物及び/又は上記重合体、並びに必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダー等を溶解させるものであれば特に制限されない。かかる溶媒として具体的には、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が例示される。上記化合物又は上記重合体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1質量%以上溶解させることができる。
【0117】
上記溶液を用いた成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法が好ましい。
【0118】
本発明の有機薄膜を製造する工程には、上記化合物及び/又は上記重合体を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程により上記化合物及び/又は上記重合体を配向させた有機薄膜は、主鎖分子又は側鎖分子が一方向に並ぶので、電子移動度又はホール移動度が向上する。
【0119】
上記化合物及び/又は上記重合体を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。中でもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が配向手法として簡便かつ有用で利用しやすく、これらの中でも、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0120】
本発明の有機薄膜は、電子輸送性又はホール輸送性を有することから、電極から注入された電子又はホール、あるいは光吸収により発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等、種々の有機薄膜素子に用いることができる。本発明の有機薄膜をこれらの有機薄膜素子に用いる場合は、配向処理により配向させて用いることが電子輸送性又はホール輸送性がより向上するため好ましい。
【0121】
次に、本発明の有機薄膜の有機薄膜トランジスタへの応用について説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の化合物及び/又は上記重合体を含有する有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造であればよく、電界効果型、静電誘導型等の有機薄膜トランジスタが例示される。
【0122】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の化合物及び/又は上記重合体を含む有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、本発明の化合物及び/又は上記重合体を含む有機薄膜層(活性層)に接して設けられており、さらに有機薄膜層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0123】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の化合物及び/又は上記重合体を含有する有機薄膜層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、該ゲート電極が有機薄膜層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機薄膜層中に設けられたゲート電極が、本発明の化合物及び/又は上記重合体を含有する有機薄膜層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が例示される。
【0124】
図1は第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0125】
図2は第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0126】
図3は第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うように絶縁層3上に形成された活性層2と、を備えるものである。
【0127】
図4は第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆ように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0128】
図12は第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図12に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0129】
図13は第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図13に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0130】
図14は第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図14に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一でも異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0131】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本発明の化合物及び/又は上記重合体を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2及び/又は活性層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0132】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開2004−006476号公報記載の方法により製造することができる。
【0133】
基板1の材質としては有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければ特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0134】
活性層2を形成する際に、有機溶媒可溶性の化合物を用いることが製造上非常に有利であり好ましいことから、上記で説明した本発明の有機薄膜の製造方法を用いて、活性層2となる有機薄膜を形成することができる。
【0135】
活性層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料で有れば特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えばSiOx,SiNx、Ta、ポリイミ
ド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス等が挙げられる。低電圧化の観点から、誘電率の高い材料の方が好ましい。
【0136】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2との界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物等が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV、Oプラズマで処理をしておくことも可能である。
【0137】
有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により、有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成するときの影響を低減することができる。
【0138】
保護膜を形成する方法としては、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。保護膜を形成する際には、有機薄膜トランジスタと大気との遮断を効果的に行うために、有機薄膜トランジスタの作製後、保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)行うことが好ましい。
【0139】
次に、本発明の有機薄膜の太陽電池への応用について説明する。図5は、実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。図5に示す太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の化合物及び/又は本発明の重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0140】
本実施形態に係る太陽電池においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極は、仕事関数の差が大きくなるように構成されることが好ましい。活性層2(有機薄膜)中には、光感度を高めるために、キャリア発生剤、増感剤等を添加することができる。また、基板1の材質としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0141】
次に、本発明の有機薄膜の光センサへの応用を説明する。図6は、第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。図6に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の化合物及び/又は本発明の重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0142】
図7は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。図7に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された本発明の化合物及び/又は本発明の重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0143】
図8は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。図8に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の化合物及び/又は本発明の重合体を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0144】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。活性層2(有機薄膜)中には、光感度を高めるために、キャリア発生剤、増感剤等を添加することができる。また、基板1の材質としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0146】
(測定条件等)
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名JMN−270(H測定時270MHz)、又は同社製の商品名JMNLA−600(19F測定時600MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。また、質量分析(MS)は、株式会社島津製作所製のGCMS−QP5050A(商品名)を用い、電子イオン化(EI)法、直接試料導入(DI)法により測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silicagel 60N(40〜50μm)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社、又はダイキン化成品株式会社より購入した。また、サイクリックボルタンメトリーは、BAS社製の装置を使用し、作用電極としてBAS社製Pt電極、対電極としてPt線、参照電極としてAg線を用いて測定した。この測定時の掃引速度は100mV/sec、走査電位領域は−2.8V〜1.6Vであった。還元電位及び酸化電位の測定は、化合物1×10−3mol/L、及び、支持電解質としてのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート(TBAPF6)0.1mol/Lをモノフルオロベンゼン溶媒に完全に溶解したものを用いて行った。また、X線構造解析(XRD)は、Rigaku RAXIS−RAPID imaging plate diffractometerを用いて行った。
【0147】
[参考合成例1]
<化合物(78)の合成>
出発原料である4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン−4−オン(化合物(77))は、Brzezinski, J. Z.; Reynolds, J. R. Synthesis 2002, 8, 1053-1056.の記載を参照して合成した。この化合物(77)を用い、Ong,B.S. Tetrahedron Lett. 1980, 21, 4225-4228.の記載を参照して、下記化合物(78)を合成した。すなわち、下記反応式(c)に従い、化合物(77)を出発原料として、これをジチオケタール化することにより、化合物(78)を合成した。
【0148】
【化32】



【0149】
[実施例1]
<化合物Aの合成>
加熱乾燥した二つ口フラスコにN−ブロモスクシンイミド(489mg、2.75mmol)を入れて窒素置換した後、ジクロロメタン(4mL)を加えた。この溶液を−78℃に冷却し、フッ化水素−ピリジン(フッ化水素含有量60〜70%、シグマアルドリッチジャパン社より購入)(1mL)を滴下した。−78℃で30分撹拌した後、上記化合物(78)105mg(0.39mmol)のジクロロメタン溶液(4mL)を滴下した。−78℃で3時間撹拌した後、氷浴で0℃まで昇温し、さらに1時間撹拌した。得られた反応液を0℃のヘキサンで希釈した後、ベーシックアルミナカラムを通した。次いで、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane)で精製を行い、目的物である黄色固体の化合物A(83mg、収率57%)を得た。得られた化合物Aの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.6 (hexane :diethylether = 3 : 1) : 1HNMR (270 MHz, CDCl3) : δ 7.10(s, 2H) : GC-MS (EI): m/z = 372 (M+).
【0150】
【化33】



【0151】
[実施例2]
<化合物Bの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物A(446mg、1.20mmol)、テトラヒドロフラン(2.5mL)を入れた。次いで、窒素置換し、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(1.6M、0.81mL、1.3mmol)を加えて反応させた。1時間後、室温まで昇温させた。次に、水を加え、酢酸エチルで有機相を抽出した後、その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane)で精製を行い、目的物である緑色液体の化合物B(246mg、収率70%)を得た。得られた化合物Bの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.6 (hexane) : GC-MS(EI) : m/z = 294 (M+).
【0152】
【化34】



【0153】
[実施例3]
<化合物Cの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物A(351mg、0.94mmol)、テトラヒドロフラン(10mL)を入れた。これを氷浴で0℃に冷却し、水素化リチウムアルミニウム(219mg、5.77mmol)を加えた後、室温で反応させた。4時間後、水(220mg)、2規定の水酸化ナトリウム水溶液(220mg)、及び、水(660mg)をこの順に加えた。得られた混合物を室温で撹拌した後、セライトろ過し、減圧濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane)で精製することにより、目的物である白色固体の化合物C(191mg、収率95%)を得た。得られた化合物Cの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた化合物Cについて、サイクリックボルタンメトリー(CV)法で測定した酸化電位は0.99V、還元電位は−2.42Vであった。更に、得られた化合物Cの吸収スペクトルのピーク波長は359nmであった。
TLC Rf = 0.4 (hexane) : 1HNMR (270 MHz, CDCl3) : δ 7.16 (d, 2H, J = 5.0 Hz), 7.08(d, 2H, J =5.0 Hz) : GC-MS (EI) : m/z = 214 (M+).
【0154】
【化35】



【0155】
[実施例4]
<化合物Dの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物C(40mg、0.19mmol)、テトラヒドロフラン(2.0mL)を入れた。次いで、窒素置換し、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(1.6M、0.13mL、0.21mmol)を加えて反応させた。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズ(100mg、0.307mmol)を加え、室温まで昇温させた。12時間後、水を加え、ジクロロメタンで有機相を抽出した。この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧濃縮した。その後、アルミナカラム(hexane)で精製を行い、目的物である淡黄色液体の化合物D(70mg、収率75%)を得た。得られた化合物Dの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.6 (hexane) : GC-MS(DI) : m/z = 504 (M+).
【0156】
【化36】



【0157】
[実施例5]
<化合物Eの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物A(125mg、0.336mmol)、2−トリブチルスタニルチオフェン(423mg、1.13mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(51mg、0.0441mmol)、及び、トルエン(3mL)を入れた後、窒素置換し、120℃で反応させた。15時間後、放冷し、セライト濾過した後、減圧濃縮した。その後、アルミナカラム(hexane)で精製を行い、目的物である赤橙色固体の化合物E(71mg、収率56%)を得た。得られた化合物Eの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた化合物Eについて、CV法で測定した酸化電位は0.57V、還元電位は−2.03Vであった。更に、得られた化合物Eの吸収スペクトルのピーク波長は433nmであった。
TLC Rf = 0.2 (hexane) : 1HNMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.02 (dd, 2H, J = 5.0, 3.6 Hz), 7.16 (s, 2H),7.18 (t, 2H, J = 3.6, 1.0 Hz),7.25 (t, 2H, J = 5.0, 1.0 Hz) : GC
-MS (EI): m/z = 378 (M+).
【0158】
【化37】



【0159】
[実施例6]
<化合物Fの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物A(130mg、0.349mmol)、2−トリブチルスタニル−5−パーフルオロヘキシルチオフェン(672mg、0.972mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(40mg、0.0346mmol)、及び、トルエン(3mL)を入れた後、窒素置換し、13時間還流させた。次いで、セライト濾過後、減圧濃縮した。その後、アルミナカラム(hexane)で精製を行い、目的物である橙色固体の化合物F(131mg、収率38%)を得た。得られた化合物Fの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた化合物Fについて、CV法で測定した酸化電位は0.88V、還元電位は−1.95Vであった。更に、得られた化合物Fの吸収スペクトルのピーク波長は433nmであった。
TLC Rf = 0.5 (hexane) : 1HNMR (270 MHz,acetone-d6): δ 7.66 (s, 2H), 7.65 (d, 2H, J = 4.3 Hz),7.54 (d, 2H,J = 4.3 Hz) : MS (MALDI-TOF, 1,8,9-trihydroxyanthracene matrix) m/z= 1018.5 (M+,Calcd 1014.6).
【0160】
【化38】



【0161】
<X線構造解析>
得られた化合物FについてX線構造解析を行い、隣り合うチオフェン環同士の二面角を測定したところ、中央のビチオフェン部分のチオフェン環同士のなす二面角は約6度、中央のビチオフェン部分のチオフェン環と両端のチオフェン環とのなす二面角は約8度と、ほぼ平面であった(図10参照)。また、結晶中で、化合物Fは均一なスタック構造をとっていることが確認された(図11参照)。
【0162】
[実施例7]
<重合体Gの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物B(26mg、0.089mmol)、化合物C(70mg、0.14mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(25mg、0.022mmol)、及び、トルエン(1.8mL)を入れた後、窒素置換し、120℃で反応させた。14時間後、放冷し、セライト濾過した後、減圧濃縮した。その後、アルミナカラム(hexane)で精製し、目的物である黄橙色固体の重合体G(15mg、収率40%)を得た。得られた重合体Gの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた重合体Gについて、CV法で測定した酸化電位は0.66V、還元電位は−2.08Vであった。更に、得られた重合体Gの吸収スペクトルのピーク波長は435nmであった。
TLC Rf = 0.4 (hexane : CH2Cl2= 4 :1) : 1H NMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.22 (d, 2H, J = 4.9Hz), 7.15(s, 2H), 7.11 (d, 2H, J = 4.9 Hz) : GC-MS (DI): m/z = 426 (M+).
【0163】
【化39】



【0164】
[実施例8]
<重合体Hの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物A(172mg、0.462mmol)、化合物D(516mg、1.03mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(73mg、0.063mmol)、及び、トルエン(10mL)を入れた後、窒素置換し、120℃で反応させた。10時間後、放冷し、析出した固体を濾取した後、その固体をアセトン、ヘキサン、及びメタノールで洗浄した。その後、昇華精製し、目的物である茶色固体の重合体H(95mg、42%)を得た。得られた重合体Hの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた重合体Hの吸収スペクトルのピーク波長は488nmであった。
GC-MS (DI): m/z = 638 (M+).
【0165】
【化40】



【0166】
[実施例9]
<重合体Jの合成>
窒素置換した50mlシュレンク型フラスコに、2,7−ビス(トリメチルスタニル)−9,9−ジオクチルフルオレン(0.13mmol)、化合物A(0.11mmol)、及び、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.97μmol)を入れ、DMF(ジメチルホルムアミド)を3ml加えて150℃まで昇温し、24時間撹拌した。続いて、THF(テトラヒドロフラン)を2ml加え、さらに48時間撹拌した。次いで、室温まで冷却した後、メタノールと水とを質量比1:1で混合した混合液50mlで再沈殿させることにより、目的物である茶色固体の重合体J(50mg、77%)を得た。得られた重合体Jのポリスチレン換算の数平均分子量は4.4×10であった。また、得られた重合体Jの化学式は以下の通りである。得られた重合体Jは、薄膜状にした際の吸収スペクトルのピーク波長が364nmであった。
【0167】
【化41】



【0168】
[比較例1]
<化合物Kの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物(77)(96mg、0.499mmol)、ヒドラジン一水和物(268mg、5.35mmol)、水酸化カリウム(294mg、5.249mmol)、エチレングリコール(5mL)を入れた後、室温から190℃まで徐々に加熱した後、190℃で13時間還流させた。次いで室温まで冷却した後、水を加え、エーテルで有機相を抽出した。この有機相を水及び飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:ethyl acetate=10:1)で精製することにより、目的物である白色固体の化合物K(59mg、収率66%)を得た。得られた化合物Kの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた化合物Kについて、CV法で測定した酸化電位は0.68V、還元電位は−2.88Vであった。更に、得られた化合物Kの吸収スペクトルのピーク波長は310nmであった。
TLC Rf = 0.7 (hexane : CH2Cl2= 2 :1) : 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ 7.17 (d, 2H, J = 4.8Hz), 7.09 (d, 2H, J = 4.8 Hz), 3.54 (s, 2H) : GC-MS (EI) : m/z = 178 (M+).
【0169】
【化42】



【0170】
[実施例10]
<有機薄膜素子1の作製及びトランジスタ特性の評価>
ゲート電極となる高濃度にドープされたn−型シリコン基板の表面上に、熱酸化により絶縁層となるシリコン酸化膜を300nm形成した基板を用意した。この基板を、Aldrich社製のHexamethyldisilazane(HMDS)に50℃で7時間浸漬し、シリコン酸化膜表面を処理した。次に、この表面処理した基板上に、真空蒸着法により、基板温度90℃、堆積速度2.0Å/secの条件で、化合物Fの有機薄膜を15nmの膜厚で堆積させた。この有機薄膜の上に、シャドウマスクを通してAuを30nmの厚さで蒸着し、チャネル幅5.5mm、チャネル長100μmのソース電極及びドレイン電極を形成して、有機薄膜素子1を作製した。得られた有機薄膜素子1について、真空中でゲート電圧V、ソース−ドレイン間電圧VSDを変化させてトランジスタ特性を測定したところ、良好なId−Vg特性が得られ、Vg=100V、Vd=100Vにおいてドレイン電流Id=7.3×10−6Aの電流が流れた。また、このときの移動度は1.8×10−2cm/Vsであり、電流がオンするしきい値電圧はVth=64Vであった。このことから、化合物Fを用いた有機薄膜素子1は、n型有機トランジスタとして有効に機能することが確認された。
【0171】
[実施例11]
<有機薄膜素子2の作製及び有機薄膜トランジスタ特性の評価>
重合体Jを0.008g秤量し、ジクロロベンゼンを加えて2gとし、塗布液を調製する。上記実施例10と同様にして、表面処理した電極付き基板上に、上記の重合体Jの塗布液をスピンコート法により塗布する。これにより、基板上に重合体Jを含む有機薄膜を膜厚700nmで形成し、有機薄膜素子2を作製する。得られる有機薄膜素子2は、真空中でゲート電圧V、ソース−ドレイン間電圧VSDを変化させてトランジスタ特性を測定することにより良好なIsd−Vg特性が得られ、n型有機トランジスタとして有効に機能する。
【0172】
[参考合成例2]
<化合物(80)の合成>
出発原料である2,2−ジ−(3−チエニル)−1,3−ジオキソラン(化合物(79))は、Lucas, P.; El Mehdi, N.; Ho, H. A.; Belanger, D.; Breau, L.Synthesis2000, 9, 1253-1258.の記載を参照して合成した。この化合物(79)を用い、Zotti, G.; Zecchin, S.; Schiavon, G.; Vercelli, B. Chem. Mater.2004,16, 3667-3676.の記載を参照して、下記化合物(80)を合成した。すなわち、下記反応式(d)に従い、化合物(79)を出発原料として、これをモノブロモ化することにより、化合物(80)を合成した。
【0173】
【化43】



【0174】
<化合物Lの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物(80)(600mg、1.90mmol)、銅粉末(777mg、12.2mmol)、ヨウ化パーフルオロヘキサン(1.11g、2.48mmol)、及び、ジメチルスルホキシド(20mL)を入れた後、窒素置換し、115℃で反応させた。12時間後、放冷し、水を加えてセライト濾過した。その後、酢酸エチルで有機相を抽出し、この有機相を水で洗い、減圧濃縮した。次いで、減圧濃縮した有機相をテトラヒドロフラン(15mL)に溶かし、12規定の塩酸(4mL)を加えて室温で反応させた。10時間後、水を加えて酢酸エチルで有機相を抽出し、この有機相を水で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane)で精製を行い、目的物である赤色固体の化合物L(264mg、収率37%)を得た。得られた化合物Lの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.1 (hexane) : 1HNMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.33 (s, 1H), 7.21 (d, 1H, J = 4.9 Hz), 7.07(d, 1H, J = 4.9 Hz) : GC-MS(EI): m/z = 510 (M+).
【0175】
【化44】



【0176】
<化合物Mの合成>
ナスフラスコに化合物L(131mg、0.256mmol)、三フッ化ホウ素−酢酸錯体(140mg、0.745mmol)、1,2−エタンジチオール(66mg、0.701mmol)、及び、クロロホルム(4mL)を入れ、室温で反応させた。9時間後、水を加えてジクロロメタンで有機相を抽出した。この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:CHCl=5:1)で精製を行い、目的物である淡黄色固体の化合物M(143mg、収率96%)を得た。得られた化合物Mの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.2(hexane):1HNMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.40 (s, 1H), 7.29 (d, 1H, J = 4.9 Hz), 7.10 (d,1H, J = 4.9 Hz):GC-MS (DI) :m/z = 586 (M+).
【0177】
【化45】



【0178】
[実施例12]
<化合物Nの合成>
加熱乾燥した二つ口フラスコにN−ブロモスクシンイミド(793mg、4.46mmol)を入れて窒素置換した後、ジクロロメタン(10mL)を加えた。この反応溶液を−78℃に冷却し、フッ化水素−ピリジン(フッ化水素含有量60〜70%、シグマアルドリッチジャパン社より購入)(2.4mL)を滴下した。−78℃で30分撹拌した後、化合物M(579mg、0.987mmol)のジクロロメタン溶液(10mL)を滴下した。−78℃で5時間撹拌した後、氷浴で0℃まで昇温し、さらに1時間撹拌した。得られた反応液を0℃のヘキサンで希釈した後、ベーシックアルミナカラムを通した。次いで、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane)で精製を行い、目的物である黄色固体の化合物N(223mg、収率37%)を得た。得られた化合物Nの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.8 (hexane):1HNMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.41 (s, 1H), 7.16 (s, 1H) : GC-MS (EI): m/z =611 (M+).
【0179】
【化46】



【0180】
[実施例13]
<化合物Oの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物B(129mg、0.448mmol)、銅粉末(152mg、2.39mmol)、ヨウ化パーフルオロヘキサン(490mg、1.10mmol)、及び、DMSO(3mL)を入れた後、窒素置換し、125℃で反応させた。11時間後、放冷し、水を加えてセライト濾過した後、酢酸エチルで有機相を抽出し、この有機相を水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮した。減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane)で精製を行い、目的物である黄色固体の化合物O(168mg、収率61%)を得た。得られた化合物Oの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.5 (hexane) : 1HNMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.42 (s, 1H), 7.32 (d, 1H, J = 5.0 Hz), 7.14(d, 1H, J = 5.0 Hz) : GC-MS(EI): m/z = 532 (M+).
【0181】
【化47】



【0182】
[実施例14]
<化合物Pの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物O(182mg、0.342mmol)、テトラヒドロフラン(4mL)を入れた。次いで、窒素置換し、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(1.6M、0.44mL、0.70mmol)を加えて反応させた。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズ(222mg、0.68mmol)を加え、室温まで昇温させた。30分後、水を加え、酢酸エチルで有機相を抽出した。この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧濃縮した。その後、アルミナカラム(hexane)で精製を行い、目的物である黄褐色固体の化合物P(204mg、収率34%)を得た。得られた化合物Pの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.9 (hexane) :1HNMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.39 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 1.58 (m), 1.36(m), 1.15 (m), 0.91 (m) : GC-MS(DI) : m/z = 821 (M+).
【0183】
【化48】



【0184】
[実施例15]
<化合物Qの合成>
ナスフラスコに化合物O(117mg、0.220mmol)、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(138mg、0.321mmol)、ヨウ素(56mg、0.221mmol)、及び、四塩化炭素(4mL)を入れ、室温で反応させた。12時間後、1規定のチオ硫酸ナトリウム水溶液(10mL)を加え、ジクロロメタンで有機相を抽出した。この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane)で精製を行い、目的物である淡黄色固体の化合物Q(34mg、収率24%)を得た。得られた化合物Qの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.6(hexane):1HNMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.41 (s, 1H), 7.32 (s, 1H):GC-MS (DI) : m/z =658 (M+).
【0185】
【化49】



【0186】
[実施例16]
<化合物Rの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物A(279mg、0.75mmol)、テトラヒドロフラン(8.0mL)を入れた。次いで、窒素置換し、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(1.6M、0.6mL、0.96mmol)を加えて反応させた。2時間後、−78℃で塩化トリブチルスズ(271mg、0.83mmol)を加え、室温まで昇温させた。1時間後、水を加え、ジクロロメタンで有機相を抽出した。この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧濃縮した。その後、アルミナカラム(hexane)で精製を行い、目的物である黄褐色液体の化合物R(204mg、収率34%)を得た。得られた化合物Rの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC Rf = 0.8 (hexane) :1HNMR(270 MHz, CDCl3):δ 7.06 (s, 2H), 1.56 (m), 1.34 (m), 1.13 (m),0.90 (m) : GC-MS (DI) : m/z = 792(M+).
【0187】
【化50】



【0188】
[実施例17]
<重合体Sの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物P(69mg、0.084mmol)、化合物Q(30mg、0.046mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5mg、0.006mmol)、及び、トルエン(4mL)を入れた後、窒素置換し、36時間還流させた。次いで、セライト濾過した後、減圧濃縮した。その後、アルミナカラム(hexane)で精製を行い、目的物である赤橙色固体の重合体S(44mg、収率91%)を得た。得られた重合体Sの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた重合体Sについて、CV法で測定した酸化電位は0.98V、還元電位は−1.80Vであった。更に、得られた重合体Sの吸収スペクトルのピーク波長は443nmであった。
TLC Rf = 0.3 (hexane) : 1HNMR(270 MHz, THF-d8):δ 7.58 (s, 2H), 7.35 (s, 2H) : MS (MALDI-TOF,1,8,9-trihydroxyanthracenematrix) m/z = 1066.24 (M+, Calcd 1062.56).
【0189】
【化51】



【0190】
[実施例18]
<重合体Tの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物R(140mg、0.177mmol)、化合物N(252mg、0.412mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(46mg、0.040mmol)、及び、トルエン(10mL)を入れた後、窒素置換し、120℃で反応させた。16時間後、放冷し、析出した固体を濾取した後、その固体をアセトン、ヘキサン、及びメタノールで洗浄した。その後、昇華精製し、目的物である茶色固体の重合体T(95mg、収率42%)を得た。得られた重合体Tの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた重合体Tの吸収スペクトルのピーク波長は491nmであった。
MS (MALDI-TOF, 1,8,9-trihydroxyanthracenematrix) m/z = 1283.24 (M+,Calcd 1274.8).
【0191】
【化52】



【0192】
[実施例19]
<化合物Uの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物A(38mg、0.10mmol)、5−パーフルオロヘキシル−5’−トリブチルスタニルビチオフェン(275mg、0.356mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(12mg、0.010mmol)、及び、トルエン(3.5mL)を入れた後、窒素置換し、120℃で反応させた。33時間後、放冷し、析出した固体を濾取した後、その固体をアセトン、ヘキサン、及びメタノールで洗浄した。その後、HPLC(THF)で精製し、目的物である茶色固体の化合物U(14mg、収率7%)を得た。得られた化合物Uの分析結果及び化学式は以下の通りである。また、得られた化合物Uについて、CV法で測定した酸化電位は0.56V、還元電位は−1.91Vであった。更に、得られた化合物Uの吸収スペクトルのピーク波長は475nmであった。
MS (MALDI-TOF, 1,8,9-trihydroxyanthracenematrix) m/z = 1181.95 (M+,Calcd 1178.82).
【0193】
【化53】



【0194】
[実施例20]
<有機薄膜素子3の作製及びトランジスタ特性の評価>
上記実施例10と同様にして、表面処理した電極付き基板上に、真空蒸着法により、基板温度90℃、堆積速度2.0Å/secの条件で、化合物Sの有機薄膜を15nmの膜厚で堆積させた。この有機薄膜の上に、シャドウマスクを通してAuを30nmの厚さで蒸着し、チャネル幅5.5mm、チャネル長100μmのソース電極及びドレイン電極を形成して、有機薄膜素子3を作製した。得られた有機薄膜素子3について、真空中でゲート電圧V、ソース−ドレイン間電圧VSDを変化させてトランジスタ特性を測定したところ、良好なId−Vg特性が得られ、Vg=80V、Vd=100Vにおいてドレイン電流Id=5.0×10−4Aの電流が流れた。また、このときの移動度は1.44×10−3cm/Vsであり、電流がオンするしきい値電圧はVth=53Vであった。このことから、化合物Sを用いた有機薄膜素子3は、n型有機トランジスタとして有効に機能することが確認された。
【0195】
実施例3、5〜7、17、19及び比較例1で得られた化合物及び重合体について、CV法により測定された酸化電位及び還元電位を表1にまとめて示す。
【0196】
【表1】



【0197】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の含フッ素化合物及び含フッ素重合体は、還元電位の絶対値が十分に低いことが確認された。また、チオフェン環の数が多いほど吸収スペクトルのピーク波長が長波長側にシフトしていることから、分子内の平面性が良くなり且つ分子内のπ共役が広がることが確認された。これらのことから、本発明の含フッ素化合物及び含フッ素重合体は、電子輸送性が良好であり、有機n型半導体として非常に有用であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
【図6】第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図7】第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図8】第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図9】一般式(IV)で表される繰り返し単位の環と、一般式(VI)で表される繰り返し単位の環とがなす二面角を表す図である。
【図10】化合物Fの分子構造を模式的に示す図である。
【図11】結晶中での化合物Fの構造を模式的に示すb軸投影図である。
【図12】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図13】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図14】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【符号の説明】
【0199】
1…基板、2…活性層、2a…活性層、3…絶縁膜、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る太陽電池、300…第1実施形態に係る光センサ、310…第2実施形態に係る光センサ、320…第3実施形態に係る光センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される含フッ素化合物。
【化1】



[式(I)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、s1及びt1は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物である、請求項1記載の含フッ素化合物。
【化2】



[式(II)中、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、Z及びZは各々独立に、下記式(i)〜(viii)で表される基のいずれかを示し、u1及びv1は各々独立に、0〜2の整数を示す。但し、u1が2の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、v1が2の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。また、R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の置換基を示す。更に、下記式(viii)で表される基は左右反転していてもよい。]
【化3】



【請求項3】
前記Z及び前記Zは、前記式(i)で表される基である、請求項2記載の含フッ素化合物。
【請求項4】
前記Rは、フッ素原子である、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
【請求項5】
下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する含フッ素重合体。
【化4】



[式(III)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、s2及びt2は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t2が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項6】
前記一般式(III)で表される繰り返し単位は、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位である、請求項5記載の含フッ素重合体。
【化5】



[式(IV)中、Rは、水素原子又は1価の置換基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、Z及びZは各々独立に、下記式(i)〜(viii)で表される基のいずれかを示し、u2及びv2は各々独立に、0又は1を示す。但し、R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の置換基を示す。また、下記式(viii)で表される基は左右反転していてもよい。]
【化6】



【請求項7】
前記Z及び前記Zは、前記式(i)で表される基である、請求項6記載の含フッ素重合体。
【請求項8】
前記一般式(III)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、下記一般式(V)で表される繰り返し単位の少なくとも1つとを有する、請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の含フッ素重合体。
【化7】



[式(V)中、Arは、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。]
【請求項9】
前記Arは、下記一般式(VI)で表される基である、請求項8記載の含フッ素重合体。
【化8】



[式(VI)中、R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の置換基を示し、Zは、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示す。但し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。また、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の置換基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。更に、下記式(viii)で表される基は左右反転していてもよい。]
【化9】



【請求項10】
前記Zは、前記式(i)で表される基である、請求項9記載の含フッ素重合体。
【請求項11】
前記Rは、フッ素原子である、請求項5〜10のうちのいずれか一項に記載の含フッ素重合体。
【請求項12】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の含フッ素化合物の製造方法であって、
下記一般式(VII)で表される化合物を、ハロニウムイオン発生剤の存在下でフッ化物イオン源と反応させる工程を含む、含フッ素化合物の製造方法。
【化10】



[式(VII)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数10以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、R及びRは各々独立に、1価の置換基を示し、X及びYは、各々独立にアルキルチオ基を示すか、或いは、X及びYのアルキルチオ基のアルキル部分が連結してなるアルキレンジチオ基、又は、X及びYが一体となって、結合する炭素原子とともに形成するチオカルボニル基を示し、s1及びt1は各々独立に、0以上の整数を示す。但し、s1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、t1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項13】
前記フッ化物イオン源は、フッ化水素、フッ化水素とアミンとの錯体、フッ化水素とピリジンとの錯体、二水素三フッ化四級アンモニウム、及び、二水素三フッ化四級ホスホニウムからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項12記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項14】
前記ハロニウムイオン発生剤は、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−ブロモコハク酸イミド、N−ブロモアセトアミド、2,4,4,6−テトラブロモ−2,5−シクロヘキサジエノン、及び、N−ヨードコハク酸イミドからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項12又は13記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の含フッ素化合物、及び/又は、請求項5〜11のうちのいずれか一項に記載の含フッ素重合体を含む、有機薄膜。
【請求項16】
真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法又はフレキソ印刷法により形成される、請求項15記載の有機薄膜。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の有機薄膜を備える、有機薄膜素子。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の有機薄膜を備える、有機薄膜トランジスタ。
【請求項19】
請求項15又は16に記載の有機薄膜を備える、有機太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−110957(P2008−110957A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42517(P2007−42517)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】