説明

吸引によってインサートが所定位置に保持されるプラスチック部品の成型プロセス、成型装置、および使用

本発明は、特に窓(4)の周囲上にビーディング(3)を成型するための、またはプラスチック窓を成型するためのプロセスにして、前記ビーディング(3)の、または前記プラスチック窓の構成プラスチックがそれぞれ、トリムなどの少なくとも1つのインサート(2)が事前に配置されている成型空洞(5)内に導入される成型プロセスであって、前記プラスチックが導入されている間、前記成型空洞の内面上に生じる複数の微細穴(10)を通じての吸引によって前記インサート(2)が前記成型空洞(5)内の所定位置に保持されることを特徴とする、成型プロセス、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓の製造のための部品の成型の分野に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、成型による窓上のビーディングの製造、または(たとえばポリカーボネート製の)プラスチック窓の製造に関する。
【0003】
より具体的には、これは、特に窓の周囲上にビーディングを成型するため、またはプラスチック窓を成型するためのプロセスに関し、前記ビーディングのまたは前記プラスチック窓の構成プラスチックはそれぞれ、トリムなどの1つのインサートが事前に配置されている成型空洞内に導入される。
【背景技術】
【0004】
国際公開第2007/018042号の先行技術は、型が閉鎖されている間および成型中にインサートを保持するために、電磁石を使用して金属インサートを固定するためのシステムを開示している。
【0005】
このシステムは、電磁石を制御するための電源を必要とするので、製造および使用するのが難しい。
【0006】
欧州特許出願公開第2030754号明細書より、先行技術はまた、当該文献の図6において参照番号28で参照される、単一の吸引穴を使用してインサートを保持するためのシステムも、開示している。
【0007】
この穴は単一穴なので、成型空洞内に向かって開放しているその末端の断面は必然的に大きく、したがってこの穴は大きい穴である。
【0008】
国際公開第2008/126505号より、先行技術はまた、いくつかの穴を使用して金属インサートを固定するためのシステムも開示している。しかしながら、穴のサイズは指示されていない。
【0009】
ここで、ビーディングまたは窓の構成プラスチックは、1つまたはいくつかの穴が大きいときにこれ(ら)を通じて侵入してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/018042号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2030754号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/126505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
たとえ成型空洞がインサートを正確に受けるように設計されており、プラスチックの射出中にインサートが所定位置に正しく保持されるように穴が正確に位置決めされていても、数十万個または数百万個の部品の生産運転において、少なくとも1つのインサートが吸引領域に欠陥を有する、または少なくとも1つのインサートが射出中に移動する、もしくは少なくとも一度でも射出が開始される前に作業者が成型空洞内にインサートを配置するのを忘れるという、可能性が小さくない。
【0012】
このようなことが起きると、少なくとも1つの大きな吸引穴がある一方で、射出プラスチックは大きい穴に侵入し、部分的または完全にこれを閉塞するだろう。穴を洗浄するために、生産は長期間停止されなければならず、したがってこれは非常にコストがかかる。
【0013】
本発明の1つの目的は、ビーディングまたは窓の成型中にインサートを保持するためのシステムを提供することによって先行技術の欠点を緩和することにあり、このシステムは単純で、製造および使用が容易である。
【0014】
本発明の別の目的は、大型インサートにとってもやはり単純で実行しやすいままで、インサートの材料が何であれ(金属、金属合金、プラスチック)、信頼できる保持システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため本発明は、その最も広い文脈において、請求項1に記載されるように、特に窓の周囲上にビーディングを成型するための、またはプラスチック窓を成型するための、プロセスに関する。このプロセスによれば、前記ビーディングの、または前記プラスチック窓の構成プラスチックはそれぞれ、トリムなど、少なくとも1つのインサートが事前に配置されている成型空洞内に導入され、前記プラスチックが導入される間、前記インサートは、前記成型空洞の内面に生じる複数の微細穴を通じての吸引によって、前記成型空洞内の所定位置に保持される。
【0016】
本発明の文脈において、当業者は、「微細穴」という表現が、インサートが吸引領域に欠陥を有するかまたは射出中に移動する場合、さらには成型空洞からのインサートの不存在の場合に、プラスチックが穴の1つに、さらにはいくつかの穴に侵入するのを防止する穴を意味することを理解するだろう。
【0017】
本発明者らは、微細な吸引穴の使用が特に有利であることを見出した。たとえこれが成型空洞の設計を複雑化しても、この設計は吸引穴が閉塞されるいかなる危険性をも排除するので、このわずかな困難は、型が使用されるときに非常に大きく補償される。
【0018】
このため、本発明により、たとえインサートが吸引領域内に欠陥を有するとしても、インサートが射出中に移動するとしても、インサートが成型空洞から不在になるとしても、そしてその場合には射出されたプラスチックが穴に向かって移動し、射出成型後の窓が不適合になるが、穴が微細なので射出プラスチックは穴に侵入することができず、したがって生産は停止する必要がない。
【0019】
穴が微細かどうかを確認するための単純な試験は、インサートを使用せずに成型空洞内にプラスチックを射出することである:射出プラスチックが穴のいずれにも侵入しなければ、これらは微細穴である。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記穴は、成型空洞の内面上で、0.2から1mmの間、または0.01から0.5mmの間の幅を有する(ここでの幅は、穴の最小寸法である)。この実施形態において、前記穴は好ましくは、成型空洞の内面上で、5から30mmの間の長さを有する。
【0021】
穴は、成型空洞の内面上で、1から50mm、または2から30mm、または5から30mm、または5から10mmの間の、2つの直交する方向で端から端までの距離だけ分離していてもよい。
【0022】
成型空洞の内面上の穴は、好ましくは1つの方向の端から端までの距離で5から30mm、または5から10mmだけ、および第一の方向に直交する別の方向の端から端までの距離で1から10mm、または2から5mm、または2.5から4.5mmだけ、分離していてもよい。好ましくは、穴は非円形断面を有する。好ましくは、これらは横方向に、言い換えると穴の長さに直交する方向に、長尺である。このため、これらはインサートの長さに沿って長尺であり、すなわちインサートの最長寸法に沿って長尺である。
【0023】
さらに、これらの穴は、好ましくは2から30mm、または5から20mmの深さを有する。この深さは、穴が製造される成型空洞の底部の表面から計測される。
【0024】
穴の上流で引かれる真空は、およそ50から100kPa、またはおよそ70から95kPaであってもよい。
【0025】
好ましくは、前記ビーディングまたは前記プラスチック窓のそれぞれの構成プラスチックの射出の開始前に吸引が開始し、前記ビーディングまたは前記プラスチック窓のそれぞれの構成プラスチックの射出の終了後に吸引が停止する。
【0026】
最も具体的な実施形態によれば、窓が型から取り外される前に、吸引が逆転する。
【0027】
成型空洞の内面上の穴の総面積が、インサートの隣接領域の2から45%、好ましくは5から25%の間となるように、穴を製造することが可能である。
【0028】
具体的な一実施形態において、前記成型空洞の内面上に生じる複数の微細穴を通じての吸引によって、前記プラスチックの導入中に、可撓性シートが前記型内の所定位置に、さらに保持される。
【0029】
本発明はまた、本発明による成型プロセスを実行するための成型装置にも関し、装置は、その内部表面上に生じる複数の微細穴を含む成型空洞を有する。
【0030】
好ましくは、この装置は、成型空洞の手前に真空チャンバを含み、前記穴は前記真空チャンバ内に通じている。
【0031】
好ましくは、前記穴は中空穴であり、これらはフィルタまたは多孔質材料によって、部分的にも塞がれていない。
【0032】
好ましくは、前記穴は、シールを用いることなく、成型空洞の表面の材料に直接製造される。
【0033】
この装置の一実施形態において、少なくとも1つの穴、および好ましくはすべての穴は、少なくとも1つの層板の縁上の材料を除去することによって製造される。
【0034】
したがって成型空洞の底部は、少なくとも1つの層板、および好ましくはいくつかの層板を含む。このためこの層板の上面は、成型空洞の内面の一部、および特にインサートを受ける凹部の底部の一部を、形成する。
【0035】
本発明はまた、本発明によるプロセスを実行するための複数の穴の使用、および本発明による成型プロセスの実現のための型を製造するプロセスに関し、ここで穴は、少なくとも1つの層板の縁上の材料を除去することによって製造される。
【0036】
「少なくとも1つの層板の縁上の材料を除去する」という表現は、本発明の文脈において、互いに対向する2つの別の面に生じる穴を形成するように、層板の構成材料が層板の側面から除去されることを意味すると理解されるべきである。この穴は円周上ではないが、これが形成される側面上において、スロットに類似している。
【0037】
本発明を実現するために、スロットは、支柱によって、または材料が除去される側面に対向して位置する別の層板の側面によって閉鎖されており、それによって円周穴を形成するようになっている。
【0038】
有利なことに、本発明によるシステムは、前記インサートの構成材料が何であれ、製造および使用が容易な単純な要素によって、成型中にインサートが所定位置に確実に保持されることを可能にする。本発明は、インサートの材料の選択に制限を設けず、このため完全にまたは部分的にアルミニウムなどの金属、またはステンレス鋼などの合金、またはプラスチックでできているインサートとともに使用されることが可能である。
【0039】
やはり有利なことに、本発明は、先に吸引に役立った穴を通じて、成型作業後に、インサートから吹き出すことによって、インサートを組み込むアセンブリを離型しやすくする。
【0040】
やはり有利なことに、吸引力は、または吸引/吹き出し力は、微細穴を通じて成型空洞の内面にわたって引かれる。このため、成型空洞の表面上には可動要素が存在しない。したがって、このインサート保持領域にはシールが存在しないので、型を洗浄しやすい。
【0041】
再び有利なことに、本発明による保持システムは、磁気保持システムとは異なり、残留効果がないため、簡単に使用できる。本発明による保持システムは、それ自体で十分であり、たとえば磁石を使用するシステムなど、微細穴吸引システム以外のシステムは、インサートを所定位置に保持するために必要とされない。
【0042】
本発明は、以下の添付図面と組み合わせて、後述の非限定例示的実施形態の詳細な説明を読むことで、より良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ビーディングが成型されている間にビーディングに取り付けられるトリムを有する車両窓であって、トリムおよびビーディングが窓の底部において断面で示されている、車両窓の斜視図である。
【図2】インサートが所定位置に保持されていない、本発明を実行するための成型空洞の断面図である。
【図3】図2の成型空洞の内面の上面図である。
【図4】図3のAAにおける部分断面図である。
【図5】本発明の特定の実施形態を実行するための、図2の成型空洞の断面図である。
【図6】本発明の特定の下位実施形態を実行するための、図5の成型空洞の断面図である。
【図7】本発明によるプラスチック窓を成型するための成型空洞の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
これらの図中において、これらをよりわかりやすくするように、様々な要素は寸法通りに描かれておらず、背景要素は通常は示されていない。
【0045】
本発明は、ビーディング3の一部分、具体的には窓4の、特に車両窓の周囲に固定されたビーディングの一部分に、トリムなどのインサート2を装備するための、中間固定装置1に関する。
【0046】
図1は、自動車の固定窓4を示し、その周囲に可撓性ポリマー材料でできているビーディング3が製作されている。
【0047】
ビーディング3の構成ポリマー材料は、熱可塑性物質(PVC、TPEなど)、ポリウレタンまたはEPDMタイプの合成ゴム、あるいはその画の適切な材料であってもよい。
【0048】
ビーディング3は、1つの成型要素が窓の内面を受け、1つの成型要素が窓の外面を受ける、2つの成型要素の間で、成型装置内でビーディング3を成型するステップを含むので、「カプセル化」製造プロセスと呼ばれるものを実行することによって製造され、これら2つの成型要素は、成型ステップの間は互いに閉鎖されている。
【0049】
図1において、ビーディング3は窓4の全周囲に沿って続いているが、しかしこのビーディングは、窓の周囲の一部分上にのみ、または窓のいずれかの部分にわたって、位置してもよい。ビーディングは、配置を理解しやすくするように、図1の窓の底前部から取り外されている。
【0050】
窓の美的概観を改善するために、車両の外側から見えるビーディング3の一部がインサート2によって覆われるが、これはここではトリムからなり、ここでは窓の底部にのみ配置されるが、しかしこれは窓4の全周囲にわたって、および/または窓の任意の部分にわたって、配置されることも可能であろう。
【0051】
インサートは事前に製作される。ビーディング3が形成される射出型内に導入される前に、これは製造され、これが剛性であれば場合により成形される。インサートは、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼、特にステンレス鋼、プラスチック、および特に、たとえばシリカ系無機充填材またはガラス繊維などの充填材で補強されたプラスチックで作られてもよい。これはまた、いくつかの部分に、場合により少なくとも2つの部分に異なる材料を使用して、生産されてもよい。
【0052】
インサートはまた、たとえば表面着色または全着色されたプラスチックシートなど、可撓性材料で作られた装飾シートであってもよい。
【0053】
以下に詳述される特定の一実施形態において、インサートは、剛性支持体および可撓性シートの、2つの要素からなる。
【0054】
窓4は、一枚グレージングパネル、すなわち単一シートの材料からなってもよく、あるいはこれは複合ガラスパネル、すなわち積層ガラスパネルの場合には少なくとも1層の接着材料が挿入され、または複層グレージング(2枚グレージングまたは3枚グレージングなど)パネルの場合には少なくとも1つの中間スペースが間に挿入されている、数枚の材料シートからなってもよい。シートは無機材料、具体的にはガラス、または有機材料、具体的にはプラスチックで作られてもよい。
【0055】
車両窓の場合、ガラスパネルは通常、その周囲上で少なくとも部分的に、装飾ストリップ(ここでは図示せず)を有する。この装飾ストリップは通常、ガラスパネルの内面に、または複合ガラスパネルの場合には中間面に塗布されたエナメルから生じるが、しかしこれはまた、使用される材料のシート、特に有機材料のシートの部分的および/または周囲着色から生じてもよい。
【0056】
成型によってビーディング3を製造するために、窓4は1つの型部、ここでは下型部50(図2に示すとおり)に位置決めされ、そして上型部50’が下型部の上に閉鎖されて、これら2つの型部の間の閉鎖空間に成型空洞5を形成するようになっている。
【0057】
この成型空洞5の外周は、一方では下型部50の内面51によって、他方では上型部50’の内面51’によって、定義される。窓4の縁は、窓4の周囲上にビーディング3を成型するように、成型空洞内に貫通する。
【0058】
成型品3の構成プラスチックは、少なくとも1つの射出オリフィス6を通じて成型空洞内に射出される。
【0059】
型が閉鎖されてビーディング3の構成プラスチックが射出され始める前に、トリムなどのインサート2が下型部50内に、より具体的にはインサートの形状と類似だが凹凸逆の形状を有する凹部52内に、導入される。
【0060】
上型部50’は好ましくは、その内面51’上に、インサート2を一時的に所定位置に保持するための少なくとも1つのピン7を含む。このため、上型部50’が下型部50の上に閉鎖されると、ピン7は一時的にインサート2を凹部52内の所定位置に保持する。
【0061】
本発明によれば、前記成型空洞の内面上に生じる、図2から図4に見られる複数の微細穴10を通じて、より正確には下型部50の内面51上に生じる複数の微細穴10を通じての吸引によって、ビーディング3のプラスチックが射出されている間、インサート2が前記成型空洞5内の所定位置に保持される。
【0062】
吸引は、内面51上に、非円形断面、すなわち平行六面体の、およびより正確には長方形の断面を有する、複数の穴10を通じて引かれる。長方形の長辺方向は成型空洞内のインサートの位置の長さに沿って配向されており、長方形の短辺方向は、成型空洞内のインサートの位置の長さに沿って配向されている。
【0063】
単純な矢印は、吸引真空の向きを示し、しかしながら、射出成型の後に離型を容易にするように、吹き出し用の穴10を使用することも可能である(吹き出しは、逆方向の矢印によって示される)。
【0064】
穴10はこのため、一方では内面51上の1つの末端(およびより正確には凹部52の底部53に)、そして他方では真空チャンバ12内で別の末端の両方に、現れる。
【0065】
一旦型が閉鎖されてからインサート2を所定位置に保持するために、吸引装置によって吸引チャンバ12内に吸引が発生し、測定/制御システム13によって真空が測定および制御される。
【0066】
チャンバの高さh12は所望の真空に依存し、その幅および長さはインサートの寸法に依存する。
【0067】
まず、吸引は成型空洞5内に存在する空気の一部を引き出し、その後インサート2は、底部53に対して押すように急速に吸い込まれる。
【0068】
したがって、この位置において(図示せず)、底部53に向かって配向されているインサートのこの面は、事実上、穴10を閉鎖する。
【0069】
一旦インサート2が底部53に対して押しつけられると、そこで射出オリフィス6を通じての材料の射出が開始されてもよい。
【0070】
インサートによる穴10の閉塞は、射出オリフィス6を通じて成型空洞5内に射出されたプラスチックが穴10に侵入するのを防止する。したがって、吸引チャンバ12内に侵入するプラスチックはない。
【0071】
一旦射出が完了してしまうと、型を開放し、吸引とは逆の方向に吹き出して吸引を逆転させることによって窓を離型することを、より容易にすることが可能となる。
【0072】
吸引力が、または場合により吹き出し力さえも、ビーディングの構成材料が穴に侵入することなく成型空洞の内部表面にわたって正確に動作できるようにするために、これらは微細穴であることが重要である。
【0073】
しかしながら、特定の型製造プロセスを用いると、穴10の形成において所望の精度を実現することが難しいと分かるかもしれない。
【0074】
図2から図4に示される実施形態において、穴10は、長方形の断面のものであり、層板11の縁上の材料を除去することによって製造される。
【0075】
各除去は、水平断面においてU字型を有しており、その上面23からその下面24まで延在するように、各層板の側面21、22のうちの1つまたは両方において実行される。図4に示される層板11は、層板のセットにおいて最も右端の層板であるので、その右側の側面22では除去されていない。層板の両側面上の材料を除去することで、穴の配列を変化させることを可能にし、このため層板の数を減少させながら、穴を分布させやすくする。
【0076】
これらの層板はその後、その上面23が底部53を形成するために、隣り合わせで配置される。
【0077】
各層板11は、およそ3から5mmの幅l、およびおよそ15から30mmの高さhを有する。
【0078】
穴は、1から50mmの間、または2から30mmの間の2つの直交する方向における端から端までの距離だけ、成型空洞の内面上で分離されてもよい。
【0079】
層板の長さに沿った穴10の間の距離d’はおよそ5から10mmであり、層板の幅に沿った穴10の間の距離d’’はおよそ2.5から4.5mmである。
【0080】
材料の除去によって成型空洞の内面54の凹部の底部53に設けられた穴10の幅lは、たとえばドリルによって製造される穴の直径よりもはるかに小さくてもよい。
【0081】
下表は、ビーディング3(またはプラスチック窓)の構成材料に応じた穴の推奨幅寸法lを示す:
【表1】

【0082】
すると、穴10は、真空チャンバ12の方向でより大きくてもよく、残りの層板の高さよりもおよそ1mm大きい幅lを有してもよい。
【0083】
このため、幅lは高さhよりもおよそ0.5から10mm、または0.5から5mm、または1から5mmだけ大きく製造されてもよい。
【0084】
穴10の長さLは、およそ5から30mmである。
【0085】
ここで、装置の製造を容易にするために、穴を有する上面の反対側に位置する層板の下面は、真空チャンバ12の屋根を構成する。
【0086】
図2は、第二の実施形態に関して、型が完全に閉鎖され、本発明による吸引保持システムが起動される瞬間を示す。この図2において、吸引保持システムがまだ起動していないことを明確に示すように、トリムは凹部52の底部53から特定の距離を空けて示されている。実際には、重力の影響のため、トリムは凹部52の底部53に置かれている。
【0087】
本発明によれば、穴10の製造以外に、インサートを受ける成型空洞の内面領域に特別な条件は存在しない。したがって、本発明を実現するためには、インサートを受ける成型空洞の内面領域には、シールまたはその他の封止要素は存在しない。
【0088】
本発明によれば、吸引は、射出オリフィスを通じて射出される材料が、インサート2と成型空洞の底部53との間で滑らないようになっている。このため、トリムは成型後にその視認可能な面に、すなわち成型作業中に底部53に向けられるその面に、プラスチックを有していない。
【0089】
図5に示される、特定の一実施形態において、インサートは2つの要素からなる:上述のトリムに類似の剛性支持体、および剛性支持体と底部53との間で成型空洞内に導入される可撓性シート9である。
【0090】
本発明の実行中に、少なくとも成型空洞内に射出される材料が剛性支持体および可撓性シートの両方を所定位置に保持するまで、剛性支持体は可撓性シートに対してピン7によって所定位置に保持され(または窓4上の締め付けによって所定位置に保持され)、可撓性シートは吸引によって底部53に対して所定位置に保持される。最終製品の剛性支持体と可撓性シートとの間には、ビーディングの材料は存在せず、剛性支持体および可撓性シート9の各々は、本発明の意義の範囲内で、インサートの役割を果たす。
【0091】
図6に示される、先の実施形態の下位実施形態において、少なくとも成型空洞内に射出される材料が剛性支持体および可撓性シートの両方を所定位置に保持するまで、剛性支持体8は窓4上で予備カプセル化され(すなわち剛性支持体8は別の型においてカプセル化によって事前に製造され)、可撓性シート9は吸引によって底部53に対して所定位置に保持される。この構成において、最終製品の剛性支持体8と可撓性シート9との間には、ビーディングの材料が存在し、本発明の意義の範囲内でインサートの役割を果たす、可撓性シート9である。
【0092】
プラスチック窓の構成材料が、トリムなどの少なくとも1つのインサートが事前に配置されている成型空洞内に導入される、前記プラスチック窓を成型するための本発明を実行することも、可能である。
【0093】
この場合、インサートはその後、前記窓の表面上に直接オーバーモールドされる。
【0094】
このため図7は、プラスチック窓の構成プラスチックが、一方では下型部50の内面51によって、他方では上型部50’の内面51’によって定義される成型空洞5内に導入される、前記プラスチック窓を成型するための本発明によるプロセスを示す。プラスチック窓の構成プラスチックは、少なくとも1つの射出オリフィス6を通じて成型空洞内に射出される。型が閉鎖されてプラスチック窓の構成プラスチックが射出され始める前に、トリム(またはここでは可撓性シート9)などのインサート2が下型部50内に、より正確には窓で所望されるようにインサートの形状と類似だが凹凸逆の形状を有する凹部52内に、導入される。
【0095】
上述のように、上型部50’は好ましくは、その内面51’上に、インサート2を一時的に所定位置に保持するための少なくとも1つのピン7を含む。このため、上型部50’が下型部50の上に閉鎖されると、ピン7は一時的にインサート2を凹部52内の所定位置に保持する。
【0096】
本発明によれば、上述のように、インサート2は、前記成型空洞の内部表面上に生じる複数の微細穴10を通じて、より正確には下型部50の内面51上に生じる複数の微細穴10を通じての吸引によって、プラスチック窓のプラスチックの射出中に、前記成型空洞5内の所定位置に保持される。
【0097】
本発明は、例示によって先のように説明される。当業者が、請求項によって定義される特許の範囲をそれによって逸脱することなく、本発明の様々な実施形態を作り出すことが可能であることは、理解されるべきである。
【0098】
特に、本明細書に示される成型は、可動型部が固定型部に対して垂直に移動する縦型成型動作であるが、しかし本発明は、水平成型またはその他いずれかの配向の成型のために実施されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に窓(4)の周囲上にビーディング(3)を成型するための、またはプラスチック窓を成型するためのプロセスにして、前記ビーディング(3)の、または前記プラスチック窓の構成プラスチックがそれぞれ、トリムなどの少なくとも1つのインサート(2)が事前に配置されている成型空洞(5)内に導入される成型プロセスであって、前記プラスチックが導入されている間、前記成型空洞の内面上に生じる複数の微細穴(10)を通じての吸引によって前記インサート(2)が前記成型空洞(5)内の所定位置に保持されることを特徴とする、成型プロセス。
【請求項2】
前記穴(10)が、成型空洞の内面上で、0.2から1mmの間、または0.01から0.5mmの間の幅を有することを特徴とする、請求項1に記載の成型プロセス。
【請求項3】
前記穴(10)が、成型空洞の内面上で、1から50mmの間、または2から30mmの間の、2つの直交する方向で端から端までの距離だけ分離していることを特徴とする、請求項1また2に記載の成型プロセス。
【請求項4】
前記穴(10)が、2から30mmの間、または5から20mmの間の深さを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の成型プロセス。
【請求項5】
穴(10)の上流で引かれる真空が、およそ50から100kPa、またはおよそ70から95kPaであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の成型プロセス。
【請求項6】
前記ビーディング(3)または前記プラスチック窓のそれぞれの構成プラスチックの射出の開始前に吸引が開始し、前記ビーディング(3)または前記プラスチック窓のそれぞれの構成プラスチックの射出の終了後に吸引が停止することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の成型プロセス。
【請求項7】
窓(4)が型から取り外される前に吸引が逆転することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の成型プロセス。
【請求項8】
成型空洞の内面上の穴(10)の総面積が、インサートの隣接領域の2から45%の間、好ましくは5から25%の間であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の成型プロセス。
【請求項9】
前記プラスチックの導入中に、前記成型空洞の内面上に生じる複数の微細穴(10)を通じての吸引によって、可撓性シート(9)が前記成型空洞(5)内の所定位置にさらに保持されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の成型プロセス。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の成型プロセスを実行するための成型装置であって、その内面上に生じる複数の微細穴(10)を含む成型空洞(5)を含むことを特徴とする、成型装置。
【請求項11】
成型空洞(5)の手前に真空チャンバ(12)を含み、前記穴(10)が前記真空チャンバ(12)内に通じていることを特徴とする、請求項10に記載の成型装置。
【請求項12】
前記穴(10)が中空穴であることを特徴とする、請求項10または11に記載の成型装置。
【請求項13】
前記穴(10)が、成型空洞の表面の材料に直接製造されることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の成型装置。
【請求項14】
少なくとも1つの穴(10)、好ましくはすべての穴が、少なくとも1つの層板(11)の縁上の材料を除去することによって製造されることを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の成型装置。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の成型プロセスを実行するための型を製造するプロセスにおいて、穴(10)が少なくとも1つの層板(11)の縁上の材料を除去することによって製造され、この(またはこれらの)層板の上面が、成型空洞(5)の内面の一部を、特にインサート(2)を受ける凹部(53)の底部の一部を形成する、型製造プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−521912(P2012−521912A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502743(P2012−502743)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050571
【国際公開番号】WO2010/112746
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】