説明

回路基板

【課題】 基板本体に半田付けされた導電プレート上に電気抵抗溶接により金属片を溶接した際、半田ボールの発生を減らせる、或いは無くすことができる回路基板を提供する。
【解決手段】 回路基板1は、基板本体2と、基板本体2を他の電気部品に接続するための接続タブ3とを有する。基板本体2の上面には、基板本体2上に搭載された各電子部品を導通させる配線パターン4が形成されている。配線パターン4の端部にはランド部5が形成されている。ランド部5には、導電プレート6が半田付けされている。この導電プレート6上に接続タブ3が溶接されている。そして、接続タブ3を溶接する際に溶接棒(電極)が接触したエリアAに対応する、基板本体2上のエリア内に、スルーホール7(図中の点線部)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板本体に形成されたランド部に導電プレートが半田付けされ、この導電プレート上に金属片が溶接された構造の回路基板に関する。例えば、携帯端末装置の電池パックに内蔵されている回路基板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機をはじめとする携帯端末装置は、その駆動源として電池パックを搭載している。電池パックは、樹脂製の容器に、電池本体と、この電池本体と接続される保護回路基板とが内蔵されているのが一般的である。
【0003】
図5は、この保護回路基板の端部の斜視図を示す。
【0004】
この図に示すように、保護回路基板100は、電池本体からの過放電や電池本体への過充電を防止するための保護回路を構成する種々の電子部品(図示せず)を搭載した基板本体101と、基板本体101を電池本体に接続するための金属製の接続タブ102(端子板とも呼ばれる。)とを有する。基板本体101の表面には、各電子部品を導通させる配線パターン103が形成されており、配線パターン103に形成されたランド部104に導電プレート105が半田付けされ、この導電プレート105上に、電池本体に接続するための接続タブ102が溶接されている(特許文献1参照)。
【0005】
このように、基板本体に形成されたランド部に導電プレートが半田付けされ、この導電プレート上に金属片が溶接された構造の回路基板が従来より知られている。
【特許文献1】特開2004−304019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような回路基板において、接続タブ102を溶接する場合には、電気抵抗溶接が行なわれている。具体的には、図6に示すように、半田付けされた導電プレート105上に接続タブ102の端部を重ね、接続タブ102の上面を2つの棒状の電極106A,106B(溶接棒とも呼ばれる。)によって押圧して、電極間に大電流を流す。そして、電流が流れることによって各電極106A,106Bが接触する部分の下側の金属にジュール熱が発生し、この接触部分の下側の金属が溶融し、溶接される。
【0007】
この溶接の際、発生した熱は導電プレート105の半田付け部分へと伝わる。この熱は半田の融点よりも高いため、溶接の熱により半田が溶かされ、膨張し、半田が飛び散る。この結果、図7に示すように、導電プレート105の周辺に半田ボール107が出来る。
【0008】
この半田ボールが生じた場合は、半田付け部分の品質や接続状態が悪化していることがある。また、半田ボールが出来ている回路基板を電子機器内に組み込んだ際に、万一、半田ボールが自由に移動できるようになると短絡(電気ショート)が生じることもある。このような不具合は電子機器自体の品質低下を招きかねない。したがって、半田ボールの発生の抑制が必要となる。
【0009】
上述したように、半田ボールは、溶接時に溶接棒(電極)と接触している部分の下側に発生した熱が導電プレート下部の半田付け部分へと伝わり、半田が再溶解して発生している。
【0010】
このため、半田ボール発生の抑制策としては、特許文献1に示されるように、導電プレート下部の半田付け部分であって溶接棒(電極)の接触位置に対応する部分に半田が無い様にする方法が考えられている。
【0011】
しかし、導電プレートを半田付けするためのランド部が十分な大きさで無い限り、溶接時に溶接棒の下方に半田が無いように、半田付け時の半田の広がりを確実に抑える事は困難であり、特に小型の基板にはこの方法をとることは出来ない。
【0012】
そこで本発明は、上述した従来例の問題点に鑑み、接続タブを導電プレートに溶接する時に、導電プレートを半田付けしている基板上の半田が過度に加熱されることを防止することにより、小型の基板であっても、半田ボールを減らす、あるいは、無くすことができる回路基板の構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の回路基板は、基板本体上に導電プレートが半田付けされ、この導電プレート上に金属片が、電気抵抗溶接により、2つの電極で金属片上面を押圧しつつ溶接されたものである。そして、電気抵抗溶接時の各電極が接触する金属片上のエリアAにそれぞれ対応する、基板本体上のエリアB内にそれぞれ、基板本体を貫通する穴が配置されている。このエリアBにおける穴は1つでも良いし、複数でも構わない。
【0014】
上記の導電プレートは、基板本体上に形成されたランド部に半田付けされており、このランド部は、基板本体上のエリアBを避けて形成されていることが好ましい。
【0015】
このような回路基板では、電気抵抗溶接時の棒状電極の下に当たる位置に、貫通穴を設けているので、溶接時に電極の接触部分から導電プレート下部へと伝わった熱が貫通穴によって放熱される。このため、半田付け部分が過度に加熱されずに済み、半田ボールの発生を減らす、あるいは無くすことができる。
【0016】
また、基板本体に設ける貫通穴は、基板本体の他の穴加工時に合わせて形成できるため、製造時間の増加が無くコストの上昇を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、基板本体に形成されたランド部に導電プレートが半田付けされ、この導電プレート上に金属片が電気抵抗溶接される構造の回路基板において、金属片の電気抵抗溶接時に半田ボールの発生を減らす、或いは無くす事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態による回路基板の上面図を示している。
【0020】
この図に示すように、回路基板1は、種々の電子部品(図示せず)を搭載した基板本体2と、基板本体2を他の電気部品に接続するための金属片(例えばニッケル、アルミニウム、銅など)である接続タブ3とを有する。基板本体2はたとえばガラスエポキシ樹脂から長板状に形成されている。基板本体2の上面には、各電子部品を導通させる配線パターン4が形成されている。
【0021】
配線パターン4の端部にはランド部5が形成されている。ランド部5には、ニッケル、アルミニウム、銅などの導電プレート6が半田付けされている。そして、この導電プレート6上に接続タブ3が溶接されている。
【0022】
接続タブ3を溶接する場合は、図6に示した電気抵抗溶接と同様に、導電プレート6上に配置された接続タブ3の上面を2つの電極(溶接棒)によって押圧しつつ、電極間に電流を流す方法をとっている。
【0023】
図1において、符号Aは、接続タブ3を溶接する際に溶接棒(電極)が接触したエリアを示している。本発明では、基板本体2の、エリアAに対応するエリア内に、スルーホール7(図1中の点線部)が配置されている。
【0024】
さらに、基板本体2の構造について詳述する。図2(a)は基板本体2の上面図を、図2(b)は図2(a)のX−X線断面の拡大図を示している。
【0025】
図2において、基板本体2の表面に配線パターン4が形成され、さらに、この配線パターン4を覆うようにレジスト8がコーティングされている。配線パターン4の端部には、導電プレート6(図1参照)を半田付けするためのランド部5が配置されている。このランド部5は、レジスト8を除去して配線パターン4の金属面を露出させることで形成されている。
【0026】
そして、基板本体2の、図1で示した接続タブ上の溶接棒(電極)が接触するエリアに対応するエリアB(図2中の二点鎖線)内に、スルーホール7が配置されている。このスルーホール7は、基板本体1の製作時に別のスルーホールと共に加工でき、基板本体2の上下面を貫通している。本実施形態では、エリアB内に配置されるスルーホール7の数は2個としている。
【0027】
ランド部5は、半田付けによる接続強度を確保するのに十分な面積であり、溶接棒(電極)の接触部に対応するエリアBに半田が広がらないように、このエリアBを十分に避けて配置されている。また、本実施形態では、導電プレート6(図1参照)を配線パターン4上に半田付けする際にセルフアライメント効果が期待できるよう、導電プレート6の両端部に対応してランド部5が配置されている。
【0028】
図3は本実施形態の回路基板を組み立てる様子を示し、図4は電気抵抗溶接時の様子を示している。
【0029】
図3に示すように、基板本体2上に形成されたランド部5に半田9を塗布し、導電プレート6を半田付けする。このとき、接続タブ3上の電極(溶接棒)10A,10Bの接触位置の下側に当たる基板本体2の表面には、レジスト8がコーティングされているので、半田9は存在しない。
【0030】
そして、導電プレート6の上面に接続タブ3の端部を重ね置き、接続タブ3の上面を2本の電極(溶接棒)10A,10Bによって押圧しながら、電気抵抗溶接を行なう(図4参照)。このとき、接続タブ3上に接触させる電極(溶接棒)10A,10Bの位置は、基板本体2に設けられた2箇所のスルーホールエリア(図2に示すエリアB)に対応する位置にある。
【0031】
電気抵抗溶接の際、電極10A,10Bの下部は温度が上昇するが、導電プレート6の下部へ伝わった熱はスルーホール7によって放熱される。このため、導電プレート6を半田付けしているランド部5上の半田9が過度に加熱されることなく、半田ボールの発生が無くなる。また、導電プレート6を半田付けした時に万一ランド部5上の半田9が広がって導電プレート6の下面に存在していても、電極(溶接棒)10A,10Bの接触位置に対応する部分の半田への溶接時の熱はスルーホール7によって放熱されるため、半田は再溶解せず、半田ボールの発生は抑制できる。
【0032】
以上説明した本実施形態では、図2に示されるようにエリアB内に配置されるスルーホール7の数は2個としているが、本発明はこの数に限定されず、一個でも、あるいは三個以上であってもよい。さらに、スルーホール7の穴形状は丸以外でもよい。
【0033】
また、スルーホール7の加工方法は、ドリルでも、打ち抜きでも、その他、機械的加工手段、あるいは、エッチング等の化学的手段によるものでも同様の効果を得られる。
【0034】
また、スルーホール7は、溶接電極の接触エリアとほぼ同等のエリア内に配置されていても良いし、実際に溶接した際に生じるナゲットの径内に位置されていても良い。スルーホール7は、前記エリアやナゲット径内に完全に入らなくとも、若干外れていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態による回路基板を示す上面図である。
【図2】(a)は図1に示した回路基板における基板本体の上面図、(b)は(a)のX−X線断面の拡大図である。
【図3】本実施形態の回路基板を組み立てる様子を縦断面で示した図である。
【図4】本実施形態の回路基板を組み立てる際の電気抵抗溶接時の様子を示す斜視図である。
【図5】従来の回路基板の端部を示す斜視図である。
【図6】従来の回路基板を構成している接続タブの電気抵抗溶接時の様子を接続タブ端面側からみた図である。
【図7】従来の回路基板において接続タブを溶接した際に発生する半田ボールを示す上面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 回路基板
2 基板本体
3 接続タブ
4 配線パターン
5 ランド部
6 導電プレート
7 スルーホール
8 レジスト
9 半田
10A,10B 電極(溶接棒)
A 接続タブ上の、溶接棒の接触エリア
B 基板本体上の、溶接棒接触エリアに対応するエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体上に導電プレートが半田付けされ、該導電プレート上に金属片が、電気抵抗溶接により、2つの電極で金属片上面を押圧しつつ溶接された回路基板において、
電気抵抗溶接時の各電極が接触する前記金属片上のエリアAにそれぞれ対応する、前記基板本体上のエリアB内にそれぞれ、前記基板本体を貫通する穴が配置されていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記各エリアBにおいて前記穴が複数配置されている、請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記導電プレートは、前記基板本体上に形成されたランド部に半田付けされており、該ランド部が、前記基板本体上の前記エリアBを避けて形成されている、請求項1又は2に記載の回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−88031(P2007−88031A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271990(P2005−271990)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】