説明

回路接続材料及び接続体

【課題】ガラス基板を有するパネルとFPCを接続する場合において、FPCを有機溶剤により洗浄しなくとも良好な接着力が得られ、しかも良好な外観を有する接続体を得ることが可能な回路接続材料を提供すること。
【解決手段】2官能以上のエポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、20℃において液状の単官能エポキシ樹脂と、水酸基を有する熱可塑性樹脂と、を含有する接着剤組成物を含む、回路電極を有する回路部材同士を接続するために用いられる回路接続材料7。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路電極を有する回路部材同士を接続するために用いられる回路接続材料、及びこれを用いた接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子用の接着剤(回路接続材料)としては、接着性に優れ、かつ高い信頼性を示すエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ガラス基板上に形成される金属回路の酸化被膜に起因して、電気的接続の不良が発生することがある。これを防止する方法として、有機高分子核体を金属で被覆した導電粒子を適用する方法がある(特許文献2)。ただし、この方法は接続体の機械的な強度を向上させるものではない。
【0004】
ところで、特許文献3に示されるように、フレキシブル配線板(以下、「FPC」という。)を製造する際に、離型シートからの転写物(離型剤など)によりFPCの表面が汚染されることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】特開平10−116640号公報
【特許文献3】特開2005−330406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エポキシ樹脂を用いた回路接続材料は接着性に優れるものの、接続部材の表面が汚染されている場合、十分な接着力が得られないことがある。FPCの表面を有機溶剤で洗浄することにより、汚染の問題をある程度解消することは一応可能である。
【0007】
しかしながら、有機溶剤による洗浄は製造工程の煩雑化及びコストアップを招くことから、有機溶剤による洗浄を省略することが求められていた。
【0008】
係る問題に鑑みて、本発明者らが検討したところ、2官能のエポキシ樹脂の液状成分の比率を増加させることにより、汚染されたFPCであっても、接着力が向上し得ることを見出した。ところがこの場合、ガラス基板を有するパネルとFPCを接続したときに、パネルと回路接続材料との界面に、硬化収縮による剥離気泡が生じ、接続体の外観が損なわれることが明らかとなった。
【0009】
そこで、本発明は、ガラス基板を有するパネルとFPCを接続する場合において、FPCを有機溶剤により洗浄しなくとも良好な接着力が得られ、しかも良好な外観を有する接続体を得ることが可能な回路接続材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討の結果、単官能エポキシ樹脂を用いることにより、硬化収縮が緩和されて剥離気泡が抑制されることを見出した。さらに、単官能エポキシ樹脂の融点によって接着性が変化することが明らかとなり、係る知見に基づいて、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、2官能以上のエポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、20℃において液状の単官能エポキシ樹脂と、水酸基を有する熱可塑性樹脂と、を含有する接着剤組成物を含む、回路電極を有する回路部材同士を接続するために用いられる回路接続材料に関する。
【0012】
上記本発明に係る回路接続材料によれば、ガラス基板を有するパネルとFPCを接続する場合において、FPCを有機溶剤により洗浄しなくとも良好な接着力が得られ、しかも良好な外観を有する接続体を得ることが可能である。
【0013】
本発明に係る回路接続材料は、導電性粒子を更に含むことが好ましい。これにより、同一回路部材の回路電極同士の絶縁状態を維持しつつ、回路部材同士をより安定して電気的に接続できる。
【0014】
別の側面において、本発明は回路部材同士が接続された接続体に関する。本発明に係る接続体は、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、第一の回路部材と第二の回路部材との間に介在しこれらを接続する回路接続部材と、を備える。回路接続部材は、上記本発明に係る回路接続材料によって形成されている。
【0015】
本発明に係る接続体は、良好な外観を有し、接続信頼性の点でも優れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガラス基板を有するパネルとFPCを接続する場合において、FPCを有機溶剤により洗浄しなくとも良好な接着力が得られ、しかも良好な外観を有する接続体を得ることが可能な回路接続材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】フィルム状の回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
【図2】回路部材の接続体の一実施形態を示す断面図である。
【図3】回路部材の接続体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、回路接続材料及びこれを備える接着シートの一実施形態を示す断面図である。図1に示す接着シート1は、支持基材8と、支持基材8上に設けられたフィルム状の回路接続材料7とを備える。
【0020】
回路接続材料7は、絶縁性の接着剤組成物3と、接着剤組成物3内に分散した導電性粒子5とを含む。接着剤組成物3は、2官能以上のエポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、20℃において液状の単官能エポキシ樹脂とを含有する。
【0021】
2官能以上のエポキシ樹脂は、2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物である。例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールA、F又はD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂が代表的である。その他、グリシジルエステル、脂環式、複素環式等のエポキシ樹脂がある。これらは単独又は2種以上混合して用いることが可能である。これらエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品であることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0022】
上記エポキシ樹脂の中でも、分子量の異なるグレードが広く入手可能で、接着性や反応性等を任意に設定できることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。中でもビスフェノールF型エポキシ樹脂は、粘度が低いことからフェノキシ樹脂との組み合わせで流動性を広範囲に設定できることや、液状であり粘着性も得やすいことから特に好ましい。また、1分子内に3個以上のオキシラン基を有するいわゆる多官能エポキシ樹脂を用いて、硬化後の架橋密度を高めて耐熱性の向上を図ることもできる。溶剤による接続部の補修を容易にするために、多官能性エポキシ樹脂の割合は、接着剤組成物3の全体量を基準として30質量%以下であることが好ましい。
【0023】
潜在性硬化剤は、例えば、イミダゾール系、有機酸ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド及びこれらの変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。長期の保存安定性と速硬化性の両方を満足するために、これらの硬化剤を核とし、ポリウレタン、ポリスチレン等の高分子物質、又はNiやCu等の金属薄膜を殻として被覆したマイクロカプセル型硬化剤も好ましい。上記硬化剤をモレキュラーシーブ法等により、エポキシ樹脂との接触機会を減少した形態のものも好ましい。
【0024】
マイクロカプセル型硬化剤を使用する場合の留意すべき点は、その粒径を回路接続材料7の厚みよりも小さくすることである。これにより保存時のカプセル破壊が防止される。また、溶剤を用いた方法により回路接続材料を製造する場合、殻材が浸食され難い溶剤を採用することが好ましい。マイクロカプセル型硬化剤の量は、接着剤組成物3の全体量100重量部に対して、好ましくは15重量部から25重量部である。この量が15重量部未満では、反応性が低下する傾向があり、25重量部以上では、保存安定性が低下する傾向がある。
【0025】
カチオン重合によりエポキシ樹脂を硬化させる潜在性硬化剤を用いることも好ましい。係る潜在性硬化剤は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩及び芳香族スルホニウム塩のような感光性オニウム塩から選択される。これら感光性オニウム塩は、エネルギー線照射により活性化してエポキシ樹脂を硬化させる。潜在性硬化剤は、脂肪族スルホニウム塩であってもよい。脂肪族スルホニウム塩は、一般に、熱によって活性化されてエポキシ樹脂を硬化させる。熱により活性化されるスルホニウム塩は、活性化温度が60℃以上でかつ硬化反応の60%が終了する温度が160℃以下であり、低温での反応性に優れながら、ポットライフが長く好適に用いられる。特に、下記式(I)で示されるスルホニウム塩が好適に用いられる。
【0026】
【化1】

【0027】
式(I)中、Rは水素原子又は電子吸引性の基を示し、R及びRはそれぞれ独立に電子供与性の基を示し、Yは、非求核性陰イオンを示す。
【0028】
カチオン重合の開始剤として推定されるベンジルカチオンを効率的に発生させるために、Rは、水素原子、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、トリアルキルアンモニウム基又はフルオロメチル基であることが好ましい。R2及びR3は、アミノ基、水酸基、アルキル基(メチル基等)、又はアルキルカルボニルオキシ基(アセトキシ基等)であることが好ましい。Y-は、例えば、ヘキサフルオロアルセネート(AsF-)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)又はテトラフルオロボレート(BF)である。式(I)のスルホニウム塩の具体例としては、p−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩がある。
【0029】
スルホニウム塩等の潜在性硬化剤は、接着剤組成物3の全体量100重量部に対して0.05〜10重量部であることが好ましく、1.5〜5重量部であることがより好ましい。潜在性硬化剤の配合量が多いと、電食の原因となりやすく、また、硬化反応が過剰に進行する傾向がある。
【0030】
20℃において液状の単官能エポキシ樹脂は、一般に、30℃未満の融点を有する。係る単官能エポキシ樹脂は、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグルシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−クレジルグリシジルエーテル、C11〜15の高級アルコール混合物のグリシジルエーテル及びジブロモフェニルグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
2官能以上のエポキシ樹脂及び上記単官能エポキシ樹脂の合計量は、接着剤組成物3の全体量100重量部に対して、38重量部以上45重量部未満が好ましい。この量が38部未満では、汚染されたFPCに対する接着力向上の効果が小さくなる傾向があり、45重量部以上では、回路接続材料を幅2mm以下、長さ100m以上の巻物に加工した場合、樹脂の染み出しによりブロッキングが発生しやすくなる傾向がある。単官能エポキシ樹脂と2官能以上のエポキシ樹脂との比率(質量比)は1対10〜1対5が好ましい。単官能エポキシ樹脂の比率が1対10より少ないと、硬化収縮抑制の効果が小さくなる傾向があり、1対5より多いと架橋密度の低下により接続信頼性が低下する傾向がある。
【0032】
回路接続材料(接着剤組成物3)は、水酸基を有する熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。水酸基を有する熱可塑性樹脂は、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選ばれる。これら熱可塑性樹脂を用いることにより、硬化時の優れた応力緩和性、及び水酸基による接着性の向上が得られる。
【0033】
各熱可塑性樹脂はラジカル重合性の官能基で変性されていてもよい。これにより耐熱性が向上する。この場合、水酸基を有する熱可塑性樹脂はラジカル重合性物質でもある。
【0034】
水酸基を有する熱可塑性樹脂の分子量は10000以上が好ましい。また、水酸基を有する熱可塑性樹脂の分子量は1000000未満であることが好ましい。分子量が1000000以上になると他の成分との混合性が低下する傾向にある。
【0035】
水酸基を有する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上であることが好ましい。
【0036】
水酸基を有する熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂は、カルボキシル基含有エラストマー又はエポキシ基含有エラストマーによって変性されていてもよい。
【0037】
回路接続材料(接着剤組成物3)は、アクリル樹脂を更に含有することが好ましい。これにより回路接続材料の支持基材との密着性が向上して、回路接続材料の支持基材からの脱落が抑制される。
【0038】
上記アクリル樹脂は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを重合させて得られる重合体又は共重合体である。アクリル樹脂は、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートをモノマー単位として含むことが好ましい。アクリル樹脂を用いることにより、優れた応力緩和が得られる。
【0039】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、接着剤組成物の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。
【0040】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて求められる値を意味する。GPCは、例えば以下の条件に従って測定される。
GPC条件
使用機器:日立L−6000型((株)日立製作所)
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)(日立化成工業(株)製商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/min.
検出器:L−3300RI
【0041】
回路接続材料7が導電性粒子5を含んでいることにより、安定して回路接続することが可能となる。導電性粒子5が含まれていなくとも、回路電極同士の直接接触により回路部材を接続することが可能である。
【0042】
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属の粒子、及びカーボン粒子等が挙げられる。ポットライフを十分に長くするため、導電性粒子は、Au、Ag、白金属の金属を含むことが好ましく、Auを含むことがより好ましい。
【0043】
導電性粒子は、Ni等の遷移金属、非導電性のガラス、セラミック又はプラスチックから形成された核としての粒子と、該粒子の表面を被覆するAu等の貴金属からなる被覆層とを有していることが好ましい。このような貴金属の被覆層を有する導電性粒子は、回路接続材料を加熱及び加圧したときに変形することにより回路電極との接触面積が増加して、信頼性がより向上する。貴金属の被覆層の厚みは、良好な接続抵抗を得るためには、100オングストローム以上であることが好ましい。更に、核がNi等の遷移金属の粒子である場合には、被覆層の厚みは300オングストローム以上であることがより好ましい。
【0044】
導電性粒子の最表面の金属層がNiの場合、径が50オングストローム以上Ni突起を有することが好ましい。Ni突起があることで、IZOのような平滑性の高い導体回路に対しても、樹脂を排除し、接触を得やすい。また、不導体で覆われた金属回路に対しても、不導体を排除し、内側の金属と直接接触しやすい。その結果、信頼性が向上する。
【0045】
導電性粒子の量は、接着剤組成物100体積部に対して、0.1〜30体積部であることが好ましい。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには、0.1〜10体積部とするのがより好ましい。
【0046】
回路接続材料7は、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することもできる。カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基又はエポキシ基を有する化合物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0047】
支持基材8としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が用いられる。支持基材8の回路接続材料7と密着する面は離型処理が施されていてもよい。支持基材8の回路接続材料7と密着する面は、1000〜2000N/25mmの剥離力を有していることが好ましい。剥離力が係る範囲内にあることにより、接着剤組成物3がカチオン重合系のエポキシ樹脂組成物である場合であっても、適度な転写性を維持しながら、回路接続材料の脱落がより確実に防止される。剥離力の測定方法に関しては後述の実施例において詳細に説明される。
【0048】
図2は、回路部材の接続体の一実施形態を示す断面図である。図2に示す接続体101は、第一の基板11及びこれの主面上に接着剤層12を介して形成された第一の回路電極13を有する第一の回路部材10と、第二の基板21及びこれの主面上に形成された第二の回路電極23を有する第二の回路部材20と、第一の回路部材20と第二の回路部材との間に介在しこれらを接続する回路接続部材1aとを備える。回路接続部材1aは、上述の回路接続材料が硬化した硬化物からなる。接続体101においては、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対峙するとともに導電性粒子5を介して電気的に接続されている。
【0049】
第一の基板11は、例えば、ポリエステルテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムである。すなわち、第一の回路部材10はフレキシブル配線板(FPC)である。
【0050】
回路電極13は、電極として機能し得る程度の導電性を有する材料(好ましくは金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種)で形成されている。複数の回路電極13が、接着剤層12を介して第一の基板11の主面上に接着されている。接着剤層12は、回路部材において通常用いられる接着剤等で形成される。
【0051】
第二の基板21はガラス基板であり、第二の基板21の主面上には、複数の第二の回路電極23が形成されている。
【0052】
接続体101は、例えば、第一の回路部材10と、上記のフィルム状の回路接続材料7と、第二の回路部材20とを、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対峙するようにこの順に積層した積層体を加熱及び加圧することにより、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが電気的に接続されるように第一の回路部材10と第二の回路部材20とを接続する方法によって、得られる。積層体を加熱及び加圧するとともに、または過熱及び加圧するのに代えて、光照射してもよい。加熱及び加圧は、加熱加圧ヘッドを用いて行うことができる。
【0053】
この方法においては、まず、支持基材8に形成されているフィルム状の回路接続材料7を第二の回路部材20上に貼り合わせた状態で加熱及び加圧して回路接続材料1を仮圧着し、支持基材8を剥離してから、第一の回路部材10を、回路電極を位置合わせしながら載せて、積層体を準備することができる。
【0054】
上記積層体を加熱及び加圧する条件は、回路接続材料中の接着剤組成物の硬化性等に応じて、回路接続材料が硬化して十分な接着強度が得られるように、適宜調整される。回路部材は、接続時の加熱による揮発成分による接続への影響を抑制するために、回路接続材料による接続工程の前に予め加熱処理することが好ましい。
【0055】
図3は、回路部材の接続体の他の実施形態を示す断面図である。図3に接続体102は、第一の回路部材10において、第一の基板11の主面上に第一の回路電極13が直接形成されている他は、回路部材の接続構造101と同様のものである。
【0056】
本実施形態に係る回路接続材料によって接続される回路部材としては、半導体チップ、抵抗体チップ及びコンデンサチップのようなチップ部品、プリント基板等の基板がある。回路部材には回路電極(接続端子)が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられている。
【0057】
より良好な電気的接続を得るためには、回路電極(接続端子)の少なくとも一方の表面が、金、銀、錫及び白金族から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されることが好ましい。回路電極は、銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせた多層構成を有していてもよい。回路電極は、銅箔及び銅箔上に形成された金又は錫からなる表面層から構成されていてもよい。
【0058】
回路部材の基板は、半導体チップ類のシリコーン、ガリウム・ヒ素等、ガラス、セラミックス、ガラス・エポキシ複合体、プラスチック等の絶縁基板であり得る。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例1
フィルム形成成分であるビスフェノールA型フェノキシ樹脂(PKHC、平均分子量45000、インケム・コーポレーション製)を、トルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤に溶解して、40質量%の溶液を調製した。この溶液25質量部(不揮発分:10質量部)と、アクリル樹脂(ブチルアクリレート40質量部−エチルアクリレート30質量部―アクリロニトリル30質量部―グリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、質量平均分子量約85万)をトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤に溶解して得られた10質量%のアクリル樹脂溶液300質量部(不揮発分:30質量部)と、単官能エポキシ樹脂である2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(エポキシ当量187、常温(20℃)で液体、ナガセケムテックス社製EX−121)5質量部と、イミダゾール系マイクロカプセル混合型エポキシ樹脂(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂49質量%−ナフタレン型エポキシ樹脂17質量%−マイクロカプセル型硬化剤34質量%、旭化成ケミカルズ(株)製HXA−3042HP)55質量部と、導電性粒子3質量部と、シランカップリング剤であるγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、SH6040、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を2質量部と、を配合し、これらを均一に混合して、塗布液を得た。導電性粒子としては、平均粒径4μmのポリスチレン球状粒子の表面に0.1μmのNi層とAu層をこの順に形成させたものを用いた。得られた塗布液を、離型処理されたPETフィルムにアプリケータを用いて塗布し、塗布された塗布液を70℃、10分の熱風乾燥により乾燥させて、厚み20μmの接着剤層を回路接続材料として形成させた。
【0061】
実施例2
2−エチルヘキシルグリシジルエーテルの量を3質量部に変え、イミダゾール系マイクロカプセル混合型エポキシ樹脂の量を57質量部に変えたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0062】
実施例3
2−エチルヘキシルグリシジルエーテルの量を7質量部に変え、イミダゾール系マイクロカプセル混合型エポキシ樹脂の量を53質量部に変えたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0063】
実施例4
単官能エポキシ樹脂として2−エチルヘキシルグリシジルエーテルに代えてフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量151、常温で液体、ナガセケムテックス社製EX−141)5質量部を用いたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0064】
実施例5
単官能エポキシ樹脂として2−エチルヘキシルグリシジルエーテルに代えてo−フェニルフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量240、常温で液体、ナガセケムテックス社製EX−142)5重量部を用いたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0065】
実施例6
単官能エポキシ樹脂として2−エチルヘキシルグリシジルエーテルに代えてp−t-ブチルフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量225、常温で液体、ナガセケムテックス社製EX−146)5質量部を用いたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0066】
比較例1
単官能エポキシ樹脂を用いず、イミダゾール系マイクロカプセル混合型エポキシ樹脂の量を60重量部に変えたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0067】
比較例2
単官能エポキシ樹脂を用いず、アクリル樹脂溶液の量を350重量部(不揮発分:35重量部)に変えたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0068】
比較例3
単官能エポキシ樹脂を用いず、アクリル樹脂溶液の量を400重量部(不揮発分:40質量部)に変え、イミダゾール系マイクロカプセル混合型エポキシ樹脂の量を50重量部に変えたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0069】
比較例4
単官能エポキシ樹脂として2−エチルヘキシルグリシジルエーテルに代えてラウリルアルコール(EO)15グリシジルエーテル(エポキシ当量971、融点40℃、ナガセケムテックス社製EX−171)5質量部を用いたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0070】
比較例5
単官能エポキシ樹脂として2−エチルヘキシルグリシジルエーテルに代えてステアリルグリシジルエーテル(融点36℃)5質量部を用いたことの他は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0071】
実施例1〜6及び比較例1〜5の回路接続材料の組成を質量部(不揮発分換算)で表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
回路接続(FPC)
厚み25μmのポリイミドフィルム上に、厚さ20μmの接着剤層を介して、ライン幅75μm、ピッチ150μm、厚み18μmの銅回路を形成し、銅回路上にニッケル5μm、金めっき0.1μmを施したフレキシブル配線板(FPC)と、厚み0.7mmのガラス基板の全面に酸化インジウム(ITO)の薄膜を形成させた基板とを準備した。次いでこれらを190℃、3MPa、7秒、幅2.0mmの条件で接続した。この際、ITO薄膜に、PETフィルム上の回路接続材料を予め貼り付け、80℃、1MPa、2秒間加熱及び加圧して仮圧着し、その後、PETフィルムを剥離して基板をFPCと接続して、接続体を得た。
【0074】
表面汚染の検出
飛行時間2次イオン分析装置を用いて、表面から離型材由来のピークが検出されたFPCを汚染されたFPCと判断した。例えば、FPC表面がシリコーンによって汚染されている場合、ジメチルシロキサン由来の73や147のフラグメントピークが検出される。離型材由来のピークが検出されないFPCを汚染の無いFPCと判断した。
【0075】
ガラス界面の剥離気泡の観察
上記接続体をガラス基板側から観察し、照明を落射のみにしたときに、緩衝縞による虹色、または白色に観察される部分を剥離気泡と判断した。以下の基準に基づいて剥離気泡の発生状態を評価した。
A:剥離気泡無し
B:軽微の剥離気泡有り
C:多数の剥離気泡発生
【0076】
接着力の測定
上記接続体の接着力を、90°剥離、剥離速度50mm/minの条件で測定した。接着力が7N/cm以上であるとき、そのサンプルが良好なレベルにあると判断した。
接続抵抗の測定(接続信頼性)
【0077】
接続抵抗の測定(接続信頼性)
上記接続体における、COF−TEGの隣接回路間の抵抗値を、マルチメーターを用いて測定した。測定は、初期と、85℃/85%RHの高温高湿槽中で500時間処理した後に行った。150点の測定値を測定し、それらからx+3σ(x:平均値、σ:標準偏差)を求め、これをサンプルの接続抵抗とした。この値が、初期で2Ω以下、かつ、初期抵抗に対する高温高湿試験後の上昇倍率が2倍以内であるとき、そのサンプルは良好なレベルにあると判断した。
【0078】
【表2】

【0079】
実施例1〜6は、汚染のあるFPCにおいても7N/cmを超える接着力を示した。これらはいずれも、液状の単官能エポキシ樹脂を用いたことから、適度な流動性を有しており、FPCの表面汚染物を排除もしくは取り込み、良好な接着力が発現した、と考えられる。一方、比較例2〜5は、汚染のあるFPCに対して7N/cm未満の低い接着力であった。これらは、用いた単官能エポキシ樹脂の融点が30℃を超えていることから、流動性が不足して、FPCの表面汚染の影響を排除できなかったためと考えられる。汚染の無いFPCに対しては、実施例、比較例を問わず、7N/cmを超える接着力が得られた。
【0080】
比較例1は、汚染のあるFPCにおける接着力は良好であったものの、剥離気泡が多く発生した。比較例2でも軽微な剥離気泡が発生した。
【0081】
実施例1〜6および比較例3〜5では、界面の剥離気泡は発生しなかった。実施例1〜6および比較例4〜5では、単官能エポキシ樹脂の効果により、剥離気泡を抑制できたと考えられる。
【0082】
接続抵抗測定の評価において、すべての実施例と比較例は、良好な初期抵抗と信頼性処理後の抵抗を示した。
【0083】
以上の実験結果から、本発明によれば、表面に汚染のあるFPCを接続する場合であっても良好な接着力が得られるとともに、ガラス基板を有するパネルの界面における剥離気泡の発生が十分に抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0084】
1…接着シート、1a…回路接続部材、5…導電性粒子、7…回路接続材料、8…支持基材、10…第一の回路部材、11…第一の基板、12…接着剤層、13…第一の回路電極、20…第二の回路部材、21…第二の基板、23…第二の回路電極、101…接続体、102…接続体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2官能以上のエポキシ樹脂と、
潜在性硬化剤と、
20℃において液状の単官能エポキシ樹脂と、
水酸基を有する熱可塑性樹脂と、
を含有する接着剤組成物を含む、
回路電極を有する回路部材同士を接続するために用いられる回路接続材料。
【請求項2】
導電性粒子を更に含む、請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項3】
第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に介在しこれらを接続する回路接続部材と、を備え、
前記回路接続部材が請求項1又は2に記載の回路接続材料によって形成されている、
接続体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−114037(P2011−114037A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266642(P2009−266642)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】