説明

回路接続用接着剤、回路接続用接着シート及び半導体装置の製造方法

【課題】半導体素子を配線回路基板にフリップチップ実装する場合であっても、半導体素子の薄厚化を図ることができるとともに、配線回路基板及び半導体素子間を良好に埋め込むことができ、耐HAST性に優れた半導体装置を作製可能な回路接続用接着剤、回路接続用接着シート及び半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の回路接続用接着剤は、相対向する回路基板を接続するための回路接続用接着剤であって、アクリルゴム、熱硬化性成分及び硬化促進剤を含有し、アクリルゴム中のアクリロニトリルの共重合割合が15質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続用接着剤、回路接続用接着シート及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高機能化、軽薄短小化に伴う要求として、半導体素子をフェイスダウン構造で配線回路基板に搭載するフリップチップ実装が行われている。
【0003】
フリップチップ実装においては、半導体素子を保護するために半導体素子と配線回路基板の間隙に樹脂封止がなされる。一般のフリップチップ実装では、半導体ウェハ上にパターンを作製し、バンプを形成した後、半導体ウェハの裏面を所定の厚さまで研削するバックグラインドを経て、個々の半導体素子に切断する。そして、得られた半導体素子を配線回路基板に搭載するときに樹脂封止が行われている。このように、半導体装置の製造工程は煩雑になっている。
【0004】
そこで、工程の簡略化に適した方法としてバックグラインド時に半導体ウエハを保持する機能とアンダーフィル機能とを兼ね備えた、バックグラインドテープと接着剤層とが積層されてなる半導体用フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−239138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスの軽薄短小化が更に進行しており、半導体素子に設けられるバンプのサイズも極小化し、配線間も更に狭くなってきている。このような半導体素子の場合、接続信頼性(以下、「耐HAST(HAST:Highly Accelerated Storage Test)性」という。)が低下しやすい傾向にある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体素子を配線回路基板にフリップチップ実装する場合であっても、半導体素子の薄厚化を図ることができるとともに、配線回路基板及び半導体素子間を良好に埋め込むことができ、耐HAST性に優れた半導体装置を作製可能な回路接続用接着剤、回路接続用接着シート及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、ダイボンディングフィルムに用いられているアクリルゴム等の分子量の高いポリマーは、高温圧着による発泡が起き難く使用しやすいが、フリップチップ用途で配線間が狭くなるにつれて、耐HAST性が低下することを、本発明者らは見出した。その理由を本発明者らは以下のとおりに考えている。すなわち、アクリルゴム中の共重合成分としてアクリロニトリルを含む場合、ニトリル基が塩化物イオン等の不純物イオンと錯体を形成しやすく、形成された錯体により他のイオンの移動度が大きくなる傾向がある。そのため、金属配線等の腐食が進みやすくなり、耐HAST性が低下してしまうと考えている。そこで、本発明者らは、低電流(1mA程度)を流しながら130℃85%RHの恒温槽にて連続して抵抗値を観察する耐HAST性試験を行い、アクリロニトリルの共重合割合が耐HAST性に影響することを発見した。
【0009】
そこで、本発明は、相対向する回路基板を接続するための回路接続用接着剤であって、アクリルゴム、熱硬化性成分及び硬化促進剤を含有し、アクリルゴム中のアクリロニトリルの共重合割合が15質量%以下である回路接続用接着剤を提供する。
【0010】
耐HAST性をより一層向上する観点から、アクリロニトリルの共重合割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0011】
一方、接着力及び流動性を確保する観点から、アクリロニトリルの共重合割合が1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。
【0012】
また、本発明の回路接続用接着剤は、無機フィラー及び/又は有機フィラーを更に含有することができる。
【0013】
さらに、本発明の回路接続用接着剤は、フラックス活性を有する物質を更に含有することで、各種被着体に対する接続性及び接着力を向上することができる。
【0014】
本発明はまた、支持基材と、上記本発明の回路接続用接着剤からなる接着剤層とを備える回路接続用接着シートを提供する。
【0015】
上記回路接続用接着シートは、支持基材と、該支持基材上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層上に設けられた接着剤層とを備えることが好ましい。
【0016】
本発明は更に、バンプと該バンプ上に設けられたはんだボールとからなる突起電極を有する半導体ウェハの突起電極が形成されている面上に、本発明の回路接続用接着シートを、接着剤層が上記突起電極を埋めるように貼り付ける工程と、接着シートが貼り付けられた半導体ウェハの突起電極が形成されている側とは反対側の面を研磨して半導体ウェハを薄厚化する工程と、薄厚化した半導体ウェハ及び接着剤層を切断して接着剤付き半導体素子を得る工程と、配線回路基板上に接着剤付き半導体素子を熱圧着して、配線回路基板と半導体素子とがはんだボールを介して電気的に接続され、配線回路基板と半導体素子との間が接着剤により封止された構造を有する半導体装置を得る工程と、を備える、半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体素子を配線回路基板にフリップチップ実装する場合であっても、半導体素子の薄厚化を図ることができるとともに、配線回路基板及び半導体素子間を良好に埋め込むことができ、耐HAST性に優れた半導体装置を作製可能な回路接続用接着剤、回路接続用接着シート及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】回路接続用接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】(a)は、本発明で用いられる半導体ウエハの一実施形態を示す模式断面図であり、(b)は、本発明に係る半導体装置の製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図5】本発明に係る半導体装置の製造方法によって得られる半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。また、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る回路接続用接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される回路接続用接着シート10は、第一の基材1、粘着剤層2、接着剤層(回路接続用接着剤)3及び第2の基材4がこの順に積層された構造を有するものである。
【0021】
まず、接着剤層2を構成する各成分について説明する。
【0022】
(回路接続用接着剤)
本発明の回路接続用接着剤は、(A)アクリルゴム、(B)熱硬化性成分及び(C)硬化促進剤を含有し、アクリルゴム中のアクリロニトリルの共重合割合が15質量%以下である。
【0023】
<(A)成分:アクリルゴム>
(A)アクリルゴムは、通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合成分とする共重合体である。該共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じて分子内に二重結合を有する他の化合物とを共重合することにより得ることができる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記必要に応じて共重合される、分子内に二重結合(エチレン性不飽和基)を有する他の化合物としては、例えば、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシルプロピル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸N−ビニルピロリドン、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
アクリルゴムの重合方法としては、特に制限はなく、例えば、懸濁重合法等を用いることができる。具体的には、PVA等の分散剤、及び、アゾビスイソブチロニトリル、ラウリルパーオキサイド等の重合開始剤を水媒体中に分散させた液体に、上記した共重合成分を滴下し、重合させる。また、溶液重合等の各種重合法も必要に応じて可能である。
【0027】
これらアクリルゴムは、接着性向上の観点から、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、カルボキシル基、水酸基、エピスルフィド基等の官能基を有することが好ましい。これらの官能基は、例えば、該官能基と二重結合とを分子内に有する化合物を共重合成分とすることにより、アクリルゴムに導入することができる。特にグリシジル基は、アクリルゴムの架橋性を向上させる点からも好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等の分子内にグリシジル基と二重結合を有する化合物を共重合成分として使用することによりアクリルゴムに導入することができる。
【0028】
また、アクリルゴムは、上記官能基の含有量を適宜変更することにより架橋密度を調整することができる。アクリルゴムが複数の共重合成分の共重合体である場合は、官能基と二重結合とを分子内に有する化合物の共重合割合は、0.5〜6.0質量%程度であることが好ましい。
【0029】
アクリルゴムにグリシジル基を導入する場合、(メタ)アクリル酸グリシジルの共重合割合は0.5〜6.0質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましく、0.8〜5.0質量%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸グリシジルの共重合割合が上記範囲にあると、グリシジル基の緩やかな架橋が起こりやすく、接着力を確保しつつゲル化を抑制することが容易となる傾向がある。また、エポキシ樹脂と非相溶になりやすく、応力緩和性に優れる傾向がある。
【0030】
上述の官能基は、単独でアクリルゴムに導入することもできるし、2種類以上を組み合わせて導入することもできる。2種類以上を組み合わせる場合の混合比率は、例えば、アクリルゴムのガラス転移温度を考慮して決定することが好ましい。具体的には、アクリルゴムのガラス転移温度が−10℃以上となるように、混合比率を設定することが好ましい。アクリルゴムのガラス転移温度が−10℃以上であると、接着剤にアクリルゴムを含有させた際にBステージ状態での接着剤層のタック性が適当であり、取り扱い性が優れる傾向がある。
【0031】
アクリルゴムの共重合成分としてアクリロニトリルを使用する場合、その共重合割合は少ない方が耐HAST性の観点から好ましく、その共重合割合は15質量%以下であり、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがよりに好ましい。
【0032】
一方、アクリロニトリルをアクリルゴムの共重合成分として使用しない場合(共重合割合0質量%)、接着力及び流動性が低下する傾向があるために、パッケージの形態に応じて、アクリロニトリルを共重合することが好ましい。そのため、アクリロニトリルの共重合割合の下限としては1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。
【0033】
アクリルゴムの重量平均分子量(Mw)は、10万以上であることが好ましく、30万〜300万であることがより好ましく、40万〜250万であることが更に好ましく、50万〜200万であることが特に好ましい。アクリルゴムの重量平均分子量がこの範囲にあると、シート状とした接着剤層の強度、可とう性及びタック性のバランスを良好に保つことができるとともに接着剤層のフロー性も良好となるため、配線の回路充填性(埋込性)を確保しやすい傾向がある。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、表1に示す条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0034】
【表1】

【0035】
なお、アクリルゴム中のアクリロニトリルの共重合割合は、通常、重合時の共重合成分の仕込み比から得ることができるが、既に接着剤に配合されているような場合には分析により同定する。接着剤にアクリルゴム中のアクリロニトリル以外にN原子を含む成分を含まない場合、又は少量の場合には接着剤をCHN元素分析を行うことによりアクリロニトリルの量を測定することが可能である。また、接着剤からアクリルゴムを単離し、熱分解GCMSを行うことによりアクリルゴムの共重合成分を分析することが可能である。また、接着剤をGPC測定することによりアクリルゴムの接着剤中の配合割合が測定可能である。
【0036】
アクリロニトリルの共重合割合を変更したアクリルゴムは、例えば、ナガセケムテックス(株)から商業的に入手可能である。
【0037】
<(B)成分:熱硬化性成分>
熱硬化性成分は、熱により架橋反応を起こし得る反応性化合物から構成される成分である。(B)熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、シアノアクリレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂及びシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。耐熱性及び接着性を向上する観点から、(B)成分として、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂ハンドブック(新保正樹編、日刊工業新聞社)等に記載されるエポキシ樹脂を広く使用することができる。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を使用することができる。また、三官能以上の多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等も使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製商品名エピコート807、815、825、827、828、834、1001、1004、1007、1009、ダウケミカル社製商品名DER−330、301、361、東都化成(株)製商品名YD8125、YDF8170等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製商品名エピコート152、154、日本化薬(株)製商品名EPPN−201、ダウケミカル社製商品名DEN−438等が挙げられる。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬(株)製商品名EOCN−102S、103S、104S、1012、1025、1027、東都化成(株)製商品名YDCN701、702、703、704等が挙げられる。多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製商品名E1032−H60、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製商品名アラルダイト0163、ナガセケムテックス(株)製商品名デナコールEX−611、614、614B、622、512、521、421、411、321等が挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製商品名エピコート604、東都化成(株)製商品名YH−434、三菱ガス化学(株)製商品名TETRAD−X、TETRAD−C、住友化学(株)製商品名ELM−120等が挙げられる。複素環含有エポキシ樹脂としては、例えば、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製商品名アラルダイトPT810等、UCC社製商品名ERL4234、4299、4221、4206等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
接着剤層3の接着力をより向上する観点から、(B)成分として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は多官能エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
上記エポキシ樹脂を使用する場合、熱硬化性成分は、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、従来用いられている公知の硬化剤を使用することができる。硬化剤として、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でも、熱硬化性成分としてエポキシ樹脂と一緒に配合することで高温高圧下において耐衝撃性、耐熱性の向上を図れる観点から、フェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂が挙げられる。これらの中でも、硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するフェノール系化合物、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
フェノール系化合物として、具体的には、DIC(株)製、商品名フェノライトLF4871、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170等が挙げられる。
【0043】
フェノール系化合物の含有量は、吸湿時の耐電食性を付与する観点から、(B)成分として配合されるエポキシ樹脂のエポキシ基に対するフェノール系エ化合物のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。フェノール系化合物の含有量がこの範囲内にあると、エポキシ樹脂の硬化(橋かけ)を十分なレベルまで進行させることができ、硬化物のガラス転移温度を十分高めることがより確実にできる傾向がある。これにより、接着剤の硬化膜の耐湿性及び高温での接続信頼性を十分確保でき、その結果、吸湿時の耐電食性がより確実に向上する傾向がある。
【0044】
回路接続用接着剤における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して30〜500質量部であることが好ましく、50〜450質量部であることが好ましく、70〜400質量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量が上記の範囲内にあると、シート状に形成した接着剤層の弾性率及び接続時の流動性を十分に確保でき、高温での取り扱い性が向上する。
【0045】
<(C)成分:硬化促進剤>
(C)成分としては、(B)成分の硬化を促進する化合物であれば特に制限されず、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、保存安定性、硬化物の物性、硬化速度等の観点から、イミダゾール類を用いることが好ましい。
【0046】
回路接続用接着剤における(C)成分の含有量は、(A)及び(B)成分の合計量100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましく、0.6〜8質量部であることが更に好ましい。(C)成分の含有量が上記の範囲内にあると、保存安定性が良好になり、硬化物の物性、硬化速度が被着体である基板の違いによっても調整可能になる傾向がある。
【0047】
<(D)成分:無機フィラー>
本実施形態の回路接続用接着剤には、上記成分の他に(D)成分として、無機フィラーを添加することもできる。(D)無機フィラーは、形成される接着剤層の取扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整、チキソトロピック性付与、弾性率の向上等を目的として添加される。
【0048】
(D)無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、コージェライト等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
無機フィラーの形状は特に制限されない。無機フィラーの平均粒径は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることがより好ましい。無機フィラーの平均粒径が0.01μm未満又は10μmを超えると、流動性が著しく低下したり、表面粗さが大きくなるため接着層の接着性が低下する可能性がある。無機フィラーの平均粒径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製、商品名「SALD−2200」)により測定することができる。
【0050】
(D)成分の含有割合は、接着剤層の流動性を確保する点から、(A)成分の100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、50〜150質量部であることがより好ましい。(D)成分の含有量が1質量部未満であると、添加効果が十分に得られ難い傾向があり、200質量部を超えると、接着剤層の貯蔵弾性率の上昇、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題が発生しやすくなる傾向がある。なお、D)成分を添加する場合、フリップチップボンディング時のチップと基板との位置合わせや、ダイシング時の位置合わせの際に、接着剤層の透過性を維持できる程度に、無機フィラーを配合することが好ましい。
【0051】
<(E)成分:有機フィラー>
本実施形態の回路接続用接着剤には、ボイド抑制効果や応力緩和を目的として、(E)有機フィラーを更に添加することもできる。(E)有機フィラーとしては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂等を成分として含む共重合体からなる微粒子が挙げられる。有機フィラーとしては、重量平均分子量が100万以上のもの、三次元架橋構造を有するもの等が挙げられる。このような有機フィラーは回路接続用接着剤への分散性が高い。また、このような有機フィラーを含む回路接続用接着剤は、接着性と硬化後の応力緩和性に一層優れる。
【0052】
分子量が100万以上の有機微粒子、三次元架橋構造を有する有機微粒子は、いずれも溶媒への溶解性が低いことが好ましい。溶媒への溶解性が低いこれらの有機微粒子は、上述の効果を一層顕著に得ることができる。また、上述の効果を一層顕著に得る観点からは、分子量が100万以上の有機微粒子及び三次元架橋構造を有する有機微粒子は、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル共重合体又はこれらの複合体からなる有機微粒子であることが好ましい。また、特開2008−150573公報に記載されるようなポリアミック酸粒子、ポリイミド粒子等の有機微粒子も使用することができる。
【0053】
なお、ここで「三次元架橋構造を有する」とは、ポリマー鎖が三次元網目構造を有していることを示し、このような構造を有する有機フィラーは、例えば、反応点を複数有するポリマーを当該反応点と結合しうる官能基を二つ以上有する架橋剤で処理することで得られる。分子量が100万以上の有機フィラー及び三次元架橋構造を有する有機フィラーは、溶解性が低いことにより有機フィラーの粒子形状を維持したままで回路接続用接着剤に配合することができるため、硬化膜中に有機フィラーが島状に分散し、強度が向上する傾向がある。また、上述の効果を一層顕著に得る観点からは、分子量が100万以上の有機フィラー及び三次元架橋構造を有する有機フィラーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−シリコーン共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル共重合体又はこれらの複合体からなる有機フィラーであることが好ましい。
【0054】
また、有機フィラーとして、コアシェル型の構造を有し、コア層とシェル層で組成が異なる有機フィラーを用いることもできる。コアシェル型の有機フィラーとして、具体的には、シリコーン−アクリルゴムをコアとしてアクリル樹脂をグラフトした粒子、アクリル共重合体をコアとしてアクリル樹脂をグラフトとした粒子等が挙げられる。
【0055】
有機フィラーの平均粒径は、0.1〜2μmであることが好ましく、0.2〜1.5μmであることがより好ましい。有機フィラーの平均粒径が0.1μm未満では回路接続用接着剤の溶融粘度が増加し、回路接続時にはんだが用いられる場合に、そのはんだ濡れ性を妨げる傾向があり、2μmを超えると溶融粘度の低減効果が少なくなり、回路接続時にボイド抑制効果が得られ難い傾向がある。有機フィラーの平均粒径は、Zetasizer Nano−S(Malvern Instruments Ltd.製、商品名)を用いて測定される平均粒子直径(Z−average値)を用いることができる。また、上記測定装置で正確な測定ができない大きさの粒径を有する微粒子場合については、島津レーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製、商品名「SALD−2200」)により測定することができる。
【0056】
(E)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が1質量部未満であると、添加効果が十分に得られ難い傾向があり、100質量部を超えると、接着性の低下、粘度上昇によるフィルムの凹凸が大きくなり、ボイド残存による電気特性の低下等の問題が発生しやすくなる傾向がある。
【0057】
<(F)成分:フラックス活性を有する物質>
本実施形態の回路接続用接着剤には、(F)成分としてフラックス活性を有する物質を添加することができる。回路接続用接着剤に(F)フラックス活性を有する物質を添加することで、銅と銅、銅とハンダ、ハンダとハンダの接合等の際に酸化膜を除去し、強固な接続状態を作ることができる。(F)成分としては、接着時のアウトガスの低減、硬化膜の弾性率及び線膨張係数のバランスから好適な材料を選定することができ、具体的には、アジピン酸、ジフェノール酸、セバシン酸等を用いることができる。
【0058】
本実施形態の回路接続用接着剤には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することができる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等のカップリング剤が挙げられ、これらの中でもシラン系カップリング剤が好ましい。
【0059】
上記シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、具体的には、日本ユニカー(株)製商品名A−189、A−1160等の市販品を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
回路接続用接着剤における上記カップリング剤の含有量は、添加効果、耐熱性及びコストの面から、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。
【0061】
また、本実施形態の回路接続用接着剤には、本発明の効果を阻害しない程度であれば導電粒子を添加して、異方導電性接着フィルム(ACF)とすることができるが、導電粒子を添加せずに、非導電性接着フィルム(NCF)とすることが好ましい。
【0062】
(回路接続用接着シート)
本発明の回路接続用接着シートは、支持基材と、上記回路接続用接着剤からなる接着剤層とを備え、支持基材と、該支持基材上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層上に設けられた接着剤層とを備える構成を有することが好ましい。
【0063】
本実施形態の回路接続用接着シート10は、例えば、下記のようにして作製することができる。まず、回路接続用接着剤を構成する各成分を溶剤に溶解又は分散してワニスとし、このワニスを第二の基材4上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって接着剤層3を形成することができる。
【0064】
基材4としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとして、例えば、帝人デュポンフィルム(株)製の「A−31」等のポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。基材4の厚みは、10〜100μmであることが好ましく、30〜75μmであることがより好ましく、35〜50μmであることが特に好ましい。この厚みが10μm未満ではワニスを塗布する際に、基材4が破れ易くなる傾向があり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0065】
上記ワニスを基材4上に塗布する方法としては、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等、一般に周知の方法が挙げられる。
【0066】
用いる溶剤は、特に限定されないが、接着剤層形成時の溶剤の揮発性を考慮して選択することが好ましい。接着剤層形成時に接着剤層の硬化が進み難い点では、具体的には、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶媒を使用することが好ましい。また、塗工性を向上させる目的では、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の比較例高沸点の溶媒を使用することが好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
加熱により溶剤を除去するときの温度条件は、70〜150℃程度が好ましい。
【0068】
フリップチップボンディング時の埋込性をより一層向上する観点から、接着剤層3の5%重量減少温度は、180℃以上であることが好ましく、200〜350℃であることがより好ましい。
【0069】
接着剤層3の厚みは、特に制限されないが、2〜200μmが好ましく、5〜150μmがより好ましく、5〜100μmが更により好ましく、10〜50μmが特に好ましい。。接着剤層3の厚みが2μmより薄いと、応力緩和効果が乏しくなる傾向があり、200μmより厚いと経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応える難くなる。
【0070】
次いで、第一の基材1上に、粘着剤層2を形成する。
【0071】
基材1としては、放射線透過性を有するものであれば公知のものを使用することができる。基材1としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。また、基材1は、上記の材料から選ばれる2種以上が混合されたもの、又は、上記のフィルムが複層化されたものでもよい。
【0072】
基材1の厚みは、特に制限されないが、5〜250μmが好ましく、50〜225μmがより好ましく、80〜200μmが更に好ましい。基材1の厚みが5μmより薄いと、半導体ウエハの研削(バックグラインド)時に支持基材が切れる可能性があり、250μmより厚いと経済的でなくなる。
【0073】
基材1は、光透過性が高いことが好ましく、具体的には、500〜800nmの波長域における最小光透過率が10%以上であることが好ましい。
【0074】
第一の基材1上に設けられる粘着剤層2としては、室温で粘着力があり、接着剤層3に対して密着力を有するものが好ましい。粘着剤層2を構成する粘着剤としては、アクリル系樹脂、各種合成ゴム、天然ゴム、ポリイミド樹脂等を使用できる。アクリル系樹脂としては、例えば、重量平均分子量が10万〜80万のアクリル共重合体が好適に用いられる。粘着剤層2のガラス転移温度(Tg)は、−50〜50℃であることが好ましく、−40〜30℃であることがより好ましい。
【0075】
アクリル系樹脂としては、例えば、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート及びメチルメタクリレートを用い、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート及びアクリル酸を用いた溶液重合法により合成されるアクリル共重合体を使用することができる。
【0076】
粘着剤層2の厚みは、1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。粘着剤層2の厚みが1μm以下であると、第一の基材1上への塗工が難しくなく、10μmより厚いとバックグラインド性が劣る可能性がある。
【0077】
第一の基材1上に設けられた粘着剤2を接着剤層3と貼り合わせることで、本実施形態の回路接続用接着シート10として使用することができる。貼り合わせる際の温度は、通常、20〜60℃程度である。
【0078】
上述した回路接続用接着剤は、相対向しハンダ接合される回路電極を有する回路部材と半導体素子との間又は半導体素子同士の間に介在させ、回路部材と半導体素子又は半導体素子同士を接着するために用いることができる。この場合、回路部材と半導体素子又は半導体素子同士を熱圧着することにより、ボイド発生を抑制しつつ接着することができる。これにより、接続信頼性に優れた接続体を得ることができる。
【0079】
(半導体装置の製造方法)
次に、上記回路部材接続用接着シートを用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0080】
本発明の半導体装置の製造方法は、バンプと該バンプ上に設けられたはんだボールとからなる突起電極を有する半導体ウェハの突起電極が形成されている面上に、本発明の回路接続用接着シートを、接着剤層が上記突起電極を埋めるように貼り付ける工程と、接着シートが貼り付けられた半導体ウェハの突起電極が形成されている側とは反対側の面を研磨して半導体ウェハを薄厚化する工程と、薄厚化した半導体ウェハ及び接着剤層を切断して接着剤付き半導体素子を得る工程と、配線回路基板上に接着剤付き半導体素子を熱圧着して、配線回路基板と半導体素子とがはんだボールを介して電気的に接続され、配線回路基板と半導体素子との間が接着剤により封止された構造を有する半導体装置を得る工程とを備える。
【0081】
図2の(a)は、本発明で用いられる半導体ウエハの一実施形態を示す模式断面図であり、図2の(b)は、本発明に係る半導体装置の製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【0082】
本実施形態で用いられる半導体ウエハは、半導体ウエハ20の一方面上に、バンプ22と、バンプ22上に設けられたはんだボール24とからなる突起電極を備える。
【0083】
半導体ウエハ20としては、表面が酸化膜処理された6インチウエハや8インチウエハが挙げられる。バンプ22としては、特に限定されないが、銅、銀、金などで構成されるものが挙げられる。はんだボール24としては、鉛含有のはんだや鉛フリーはんだ等の従来公知のはんだ材料から構成されるものが挙げられる。
【0084】
薄厚化する前の半導体ウエハ20の厚みは、250〜800μmの範囲とすることができる。通常、切り出された半導体ウエハは、6〜12インチのサイズでは625〜775μmの厚みを有する。
【0085】
バンプ22の高さは、半導体小型化の観点から、5〜50μmが好ましい。はんだボール24の高さは、半導体小型化の観点から、2〜30μmが好ましい。
【0086】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、回路接続用接着シート10から第二の基材4を剥離して、上記の半導体ウエハ20の突起電極が形成されている面上に、接着剤層3、粘着剤層2、第一の基材1をこの順に配置し、はんだボール24の先端が接着剤層2を貫通するように半導体ウエハ20とプラスチックシート1とに圧力を加える(図2の(b)を参照)。なお、はんだボールの先端が接着剤層を貫通することが最も望ましいが、数ミクロン程度の接着剤層がはんだボールの先端に残っていても、配線回路基板と半導体素子とがはんだボールを介して電気的に接続されるときの接続性に影響が無い程度であれば、なんら問題ない。
【0087】
ラミネートの条件としては、ラミネート温度:50℃〜100℃、線圧:0.5〜3.0kgf/cm、送り速度:0.2〜2.0m/分が好ましい。
【0088】
次に、図3に示すように、半導体ウエハ20の突起電極が形成されている側とは反対側の面を研磨して半導体ウエハ20を薄厚化する工程(バックグラインド工程)が行われる。
【0089】
研磨は、バックグラインダーを用いて行うことができる。また、この工程では、半導体ウエハ20を厚さ10〜150μmにまで薄厚化することが好ましい。薄厚化された半導体ウエハ20の厚さが10μm未満であると、半導体ウエハの破損が生じやすく、他方、150μmを超えると、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる。
【0090】
その後、図4の(a)に示すように、薄厚化された半導体ウエハ20の研磨面側をダイシングシート6に貼り付け、ダイシング装置を用いて、半導体ウエハ20及び接着剤層3を切断し、個片化された半導体素子20aと切断された接着剤層3aとからなる接着剤付き半導体素子を得る(図4の(b))。第一の基材1及び粘着剤層2は、ダイシング前に接着剤層3から剥離される。
【0091】
こうして得られる接着剤付き半導体素子は、回路接続用接着シート10を用いて作製されることにより、突起電極付近が接着剤によって十分埋め込まれ、且つ、はんだボールの先端が接着剤から十分露出するものにすることができる。
【0092】
ダイシング工程の終了後、ピックアップ装置を用いて接着剤付き半導体素子をピックアップし、これを配線回路基板上に熱圧着する。熱圧着の条件としては、温度:150℃〜280℃、圧力:0.1MPa〜2.0MPa、時間:1秒〜30秒が好ましい。
【0093】
このようにして、図5に示される、配線回路基板7の電極26と半導体素子20aのバンプ22とがはんだボール24を介して電気的に接続され、配線回路基板7と半導体素子20aとの間が接着剤3bにより封止された構造を有する半導体装置100が得られる。
【0094】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、はんだボールの先端を接着剤層から十分に露出させて、より確実な接続を行う観点から、接着剤層3の厚みが、バンプ22及びはんだボール24の合計高さよりも小さく、且つ、接着剤層3、粘着剤層2及び第一の基材1の合計厚みが、上記合計高さよりも大きいことが好ましい。
【0095】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0096】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0097】
(アクリルゴムの準備)
表2に示す組成を有するナガセケムテックス(株)製のアクリルゴム1〜8を準備した。
【0098】
【表2】

【0099】
<回路接続用接着剤の調製>
(実施例1)
(A)成分としてアクリルゴム1(AN含有量=0%)100質量部、(B)成分として多官能エポキシ樹脂である「1032−H60」(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名)160質量部及びフェノール系エポキシ樹脂硬化剤である「LA−3018」(DIC(株)製、商品名)10質量部、(C)成分としてイミダゾール類である「2PZ−CN」(四国化成工業(株)製、商品名)3質量部、(F)成分としてアジピン酸18質量部を混合し、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒(質量比50/50)を加え溶解して接着剤組成物のワニスを得た。得られたワニス100質量部に対して、(D)成分として大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μmのコージェライト粒子(2MgO・2Al・5SiO、比重2.4、線膨張係数1.5×10−6/℃、屈折率1.57)を100質量部、(E)成分として有機フィラー「EXL−2655」(ロームアンドハースジャパン(株)製、商品名、コアシェルタイプ有機フィラー)を15質量部加え、撹拌し分散した。
【0100】
<回路接続用接着シートの作製>
得られた分散物を、第二の基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「A−31」、厚さ:38μm)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させた。こうして、第二の基材上に厚み30μmの接着剤層が形成されてた接着シートを得た。
【0101】
また、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートを用い、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレートとアクリル酸を用いた溶液重合法によりアクリル共重合体を合成した。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量は40万、ガラス転移点は−38℃であった。このアクリル共重合体100質量部に対し、多官能イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コローネートHL」)10質量部を配合して粘着剤組成物溶液を調製した。
【0102】
得られた粘着剤組成物溶液を、第一の基材である軟質ポリオレフィンフィルム(ロンシール社製、商品名「POF−120A」、厚さ:100μm)の上に乾燥時の粘着剤層の厚みが8μmになるよう塗布し乾燥した。更に、シリコーン系離型剤で表面処理した二軸延伸ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「A3170」、厚さ:25μm)を粘着剤層面にラミネートした。この粘着剤層付き積層体を室温で1週間放置し十分にエージングを行った。
【0103】
その後、二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離し、粘着剤層面と上記接着シートの接着剤層とを、60℃にて貼り合わせ、第一の基材/粘着剤層/接着剤層/第二の基材からなる回路接続用接着シートを得た。
【0104】
(実施例2)
回路接続用接着剤の調製におけるアクリルゴム1を、アクリルゴム2(AN含有量=6%)に変更した以外は実施例1と同様の作業を行い、回路接続用接着シートを得た。
【0105】
(実施例3)
回路接続用接着剤の調製におけるアクリルゴム1を、アクリルゴム3(AN含有量=10%)に変更した以外は実施例1と同様の作業を行い、回路接続用接着シートを得た。
【0106】
(実施例4)
回路接続用接着剤の調製におけるアクリルゴム1を、アクリルゴム4(AN含有量=13%)に変更した以外は実施例1と同様の作業を行い、回路接続用接着シートを得た。
【0107】
(比較例1)
回路接続用接着剤の調製におけるアクリルゴム1を、アクリルゴム5(AN含有量=30%)に変更した以外は実施例1と同様の作業を行い、回路接続用接着シートを得た。
【0108】
(比較例2)
回路接続用接着剤の調製におけるアクリルゴム1を、アクリルゴム6(AN含有量=30%)に変更した以外は実施例1と同様の作業を行い、回路接続用接着シートを得た。
【0109】
(比較例3)
回路接続用接着剤の調製におけるアクリルゴム1を、アクリルゴム7(AN含有量=30%)に変更した以外は実施例1と同様の作業を行い、回路接続用接着シートを得た。
【0110】
(比較例4)
回路接続用接着剤の調製におけるアクリルゴム1を、アクリルゴム8(AN含有量=21%)に変更した以外は実施例1と同様の作業を行い、回路接続用接着シートを得た。
【0111】
[回路接続用接着剤の評価]
上記で得られた回路接続用接着シートについて、下記の試験手順にしたがって、ウエハ裏面研削性、埋込性、接続性及び耐HAST性を評価した。結果を表3に示す。
【0112】
<ウエハ裏面研削性>
支持台上に載せたシリコンウエハ(6インチ径、厚さ625μm)の回路電極が設けられている面に、回路接続用接着シートの第二の基材を除き接着剤層をシリコンウエハ側にしてラミネート条件(温度80℃、線圧0.5〜2kgf/cm、送り速度0.5〜5m/分)で加圧することにより積層し積層体を作製した。
【0113】
次いで、上記積層体をバックグラインダーに配置し、厚みが280μmとなるまでシリコンウエハの裏面を研削(バックグラインド)した。研削したウエハを目視及び顕微鏡観察で視察し、下記の基準に基づいてウエハ裏面研削性を評価した。
A:ウエハの破損及びマイクロクラックの発生がない。
B:ウエハの破損及びマイクロクラックの発生がある。
【0114】
<埋込性>
銅ピラー先端に鉛フリーはんだ層(Sn−3.5Ag:融点221℃)を有する構造のバンプが形成された半導体チップとして、日立超LSIシステムズ製、商品名「JTEG PHASE11_80」、サイズ7.3mm×7.3mm、バンプピッチ80μm、バンプ数328、厚み0.55mm、)を準備し、基板として、プリフラックス処理によって防錆皮膜を形成した銅配線パターンを表面に有するガラスエポキシ基板を準備した。
【0115】
続いて、上記で得られた回路接続用接着シートを9mm×9mmに切り出し、第二の基材を除いた後、接着剤層を基板上の半導体チップが搭載される領域に80℃/0.5MPa/5秒の条件で貼り付けた後、粘着剤層及び第一の基材を剥離した。接着剤層が貼り付けられた基板を、フリップチップボンダーFCB3(パナソニックファクトリーソリューションズ製、商品名)にて、荷重25N、温度100℃にて5秒間圧着を行い、半導体チップを基板上に仮固定した。次いで、第一工程として、接続部の温度が固形フラックス剤の融点以上でかつ鉛フリーはんだの融点より低い180℃となるようにフリップチップボンダーのヘッド温度をあらかじめ210℃に設定し(ステージ温度:40℃)、荷重25N、10秒間圧着を行った。次に、第二工程として、接続部の温度が鉛フリーはんだの融点より高い250℃となるようにフリップチップボンダーのヘッド温度をあらかじめ290℃に設定し、荷重25N、10秒間圧着を行った。なお、接続部の温度は、K型熱電対を半導体チップと基板の間に挟んだものを別途作製して測定した。こうして得られた半導体装置について、ボイド状況を超音波顕微鏡で視察し、下記の基準に基づいて埋込性を評価した。
A:ボイドがほとんどなく、ボイドが埋込面積の10%未満である。
B:ボイドが多く存在し、ボイドが埋込面積の10%以上である。
【0116】
<接続性>
上記埋込性評価の銅とハンダとの接合部の断面観察、及び、328バンプのデイジーチェーン接続による導通の確認により接続性を確認した。断面観察結果、きれいなハンダ濡れ性が確認され、どのサンプルも接続性に問題が無いことを確認した。
【0117】
<耐HAST性(絶縁信頼性試験)>
電食試験用基板(エスパネックス上の銅箔をエッチングして、くし形パターン(金めっき無、ライン30μm、スペース40μm)を形成した。5mm×12mmに切断した接着シートから第二の基材フィルムを剥離し、接着剤層を上記パターン上に圧着機を用いて、100℃、圧力2kgf、貼付時間10秒の条件で貼付した。これを175℃で5時間硬化したものをサンプルとした。サンプルを加速寿命試験装置(HIRAYAMA製、PL−422R8、条件:130℃/85%/100時間)に設置し、絶縁抵抗を測定した。
A:100時間を通して、絶縁抵抗が10Ωを超えていた。
B:100時間を通して、絶縁抵抗が10Ω未満であった。
【0118】
【表3】

【符号の説明】
【0119】
1…第一の基材、2…粘着剤層、3…接着剤層、4…第二の基材、6…ダイシングテープ、7…配線回路基板、10…回路接続用接着シート、20…半導体ウェハ、20a…半導体素子、22…バンプ、24…はんだボール、26…電極、100…半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する回路基板を接続するための回路接続用接着剤であって、
アクリルゴム、熱硬化性成分及び硬化促進剤を含有し、
前記アクリルゴム中のアクリロニトリルの共重合割合が15質量%以下である、回路接続用接着剤。
【請求項2】
前記アクリロニトリルの共重合割合が10質量%以下である、請求項1記載の回路接続用接着剤。
【請求項3】
前記アクリロニトリルの共重合割合が5質量%以下である、請求項1記載の回路接続用接着剤。
【請求項4】
前記アクリロニトリルの共重合割合が1質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤。
【請求項5】
前記アクリロニトリルの共重合割合が2質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤。
【請求項6】
前記アクリロニトリルの共重合割合が3質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤。
【請求項7】
無機フィラーを更に含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤。
【請求項8】
有機フィラーを更に含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤。
【請求項9】
フラックス活性を有する物質を更に含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤。
【請求項10】
支持基材と、請求項1〜9のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤からなる接着剤層と、を備える回路接続用接着シート。
【請求項11】
前記支持基材と、該支持基材上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層上に設けられた前記接着剤層と、を備える請求項10記載の回路接続用接着シート。
【請求項12】
バンプと該バンプ上に設けられたはんだボールとからなる突起電極を有する半導体ウェハの前記突起電極が形成されている面上に、請求項11記載の回路接続用接着シートを、前記接着剤層が前記突起電極を埋めるように貼り付ける工程と、
前記接着シートが貼り付けられた前記半導体ウェハの前記突起電極が形成されている側とは反対側の面を研磨して前記半導体ウェハを薄厚化する工程と、
前記薄厚化した半導体ウェハ及び前記接着剤層を切断して接着剤付き半導体素子を得る工程と、
配線回路基板上に前記接着剤付き半導体素子を熱圧着して、前記配線回路基板と前記半導体素子とが前記はんだボールを介して電気的に接続され、前記配線回路基板と前記半導体素子との間が接着剤により封止された構造を有する半導体装置を得る工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−184288(P2012−184288A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46558(P2011−46558)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】