説明

回路構成体及びその製造方法

【課題】回路構成体において、簡素かつ薄型の構造で半導体スイッチング素子を含む電力回路及びその制御回路を構築し、かつ、放熱性を高める。また、その回路構成体を効率良く製造する。
【解決手段】プリント回路基板20の一方の面に半導体スイッチング素子30が介在する電力回路を構成する導体パターンが形成され、他方の面に前記半導体スイッチング素子30を制御する制御回路を構成する導体パターンが形成され、かつ、基板20の貫通孔を用いて両導体パターンに半導体スイッチング素子30が実装された回路構成体。この回路構成体は、前記プリント回路基板20の一方の面に補強板10を積層しておき、この補強板10と反対の側から半導体スイッチング素子30を実装する方法により効率良く製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力回路を構成するバスバーと、その電力回路中に設けられる半導体スイッチング素子の駆動を制御するプリント回路基板とを併有する回路構成体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、共通の車載電源から各電子ユニットに電力を分配する手段として、複数枚のバスバー基板を積層することにより構成された配電用回路を備え、同回路にヒューズやリレースイッチが組み込まれた電気接続箱が一般に知られている。
【0003】
さらに近年は、かかる電気接続箱の小型化や高速スイッチング制御を実現すべく、前記リレーに代えてFET等の半導体スイッチング素子を入力端子と出力端子との間に介在させたものが開発されるに至っている。
【0004】
例えば下記特許文献1には、電流回路を形成するバスバー基板と、その電流回路中に組み込まれる半導体スイッチング素子としてのFETと、このFETの作動を制御するプリント回路基板とを備えた電気接続箱が開示されている。この電気接続箱では、前記バスバー基板とプリント回路基板とが互いに離間した状態で上下2段に配置されてその間にFETが位置しており、このFETのドレイン端子及びソース用端子が前記バスバー基板に接続される一方、当該FETのゲート用端子が前記プリント回路基板に接続されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−35375号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に示される電気接続箱では、バスバー基板とプリント回路基板の少なくとも2枚の基板が必要であり、しかも、これらの基板を相互離間させて立体的に配置し、両基板の間にFETを配置するだけのスペースを確保しなければならない。従って、当該FETの導入によって従来のリレー式の電気接続箱よりは小型化できるものの、全体構成が複雑で十分な小型化はできず、特に高さ寸法の削減が大きな課題となっている。
【0007】
また、前記電気接続箱では、バスバー基板とプリント回路基板の間にFETが配置されているため、FETの発する熱が両基板間にこもり易く、その放熱のために複雑な構造をとる必要がある。
【0008】
さらに、前記電気接続箱では、FETのドレイン端子及びソース用端子を下側のバスバー基板に接続する一方、ゲート用端子は上側のプリント回路基板に接続しなければならないため、電気接続箱全体の組み上げ作業が複雑で自動化が難しく、その改善も望まれる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、簡素かつ薄型の構造でFET等の半導体スイッチング素子を含む電力回路を構築でき、かつ、当該半導体スイッチング素子の放熱性に優れる回路構成体を提供し、さらには、その回路構成体を効率良く製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、入力された電力を半導体スイッチング素子を通じて出力する電力回路と、前記半導体スイッチング素子の駆動を制御する制御回路とを併有する回路構成体であって、一方の面に前記電力回路を構成する導体パターンが配され、他方の面に前記制御回路を構成する導体パターンが配されたプリント回路基板を備え、このプリント回路基板の基板本体には前記半導体スイッチング素子を実装するための貫通孔が形成され、当該半導体スイッチング素子が前記プリント回路基板の一方の導体パターンに表側から実装されるとともに他方の導体パターンに前記貫通孔を通じて裏側から実装されているものである。
【0011】
この構成では、プリント回路基板の一方の面に電力回路を構成する導体パターンが、他方の面に前記電力回路に含まれる半導体スイッチング素子の制御回路を構成する導体パターンが、それぞれ設けられているので、共通のプリント回路基板で電力回路の構築と同回路に含まれる半導体スイッチング素子の制御との双方を同時に実現できる。従って、回路構成体全体の高さ寸法(厚み寸法)が非常に小さく、従来のようにバスバー基板とプリント回路基板とが離間して配置され、かつ、両基板に半導体スイッチング素子が接続されている電気接続箱に比べ、全体構成は大幅に薄型化及び簡素化され、また放熱性も良くなる。
【0012】
しかも、前記プリント回路基板に設けられた貫通孔を通じて裏側の導体パターンにも半導体スイッチング素子が実装可能なので、電力回路と制御回路の双方に半導体スイッチング素子を片側から同時実装することが可能となっている。
【0013】
この回路構成体において、前記プリント回路基板は一般に薄くて剛性の低いものであるので、前記プリント回路基板の導体パターンのうち裏側から半導体スイッチング素子が実装されている導体パターンの上に重ねて補強板が積層されているのが、より好ましい。
【0014】
このような補強板の積層により、回路構成体全体の剛性が高まり、その取扱いが容易になる。特に、補強板と反対の側から半導体スイッチング素子を実装する場合に、基板の十分な支持剛性を得ることができる。
【0015】
ここで、前記補強板としては例えばアルミニウム板やアルミニウム合金板が好適であり、その適用によって放熱性をさらに高めることができる。しかも、前記補強板が絶縁層を介して前記プリント回路基板の一方の導体パターンに重ねられているようにすることにより、導体パターン同士の絶縁性も保つことができる。
【0016】
本発明では、前記半導体スイッチング素子の具体的構成を問わないが、その本体の裏面に通電端子を有するものの場合、前記プリント回路基板の基板本体に前記半導体スイッチング素子の本体が挿入可能な大きさの貫通孔が設けられ、この貫通孔を通じて前記半導体スイッチング素子の本体裏面の通電端子が前記電力回路を構成する導体パターン上に実装される構成とすることにより、当該半導体スイッチング素子のプリント回路基板への安定した実装が可能になる。
【0017】
この場合、前記プリント回路基板の面のうち前記電力回路を構成する導体パターンが設けられている面に絶縁層を介してアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる補強板が固定されている構成とすることにより、前記半導体スイッチング素子の発する熱を前記補強板を通じて有効に放散することができる。
【0018】
さらに、前記補強板が絶縁層を介して放熱部材に固定されている構成とすれば、放熱性はさらに向上する。
【0019】
本発明では、前記電力回路または制御回路を外部回路と接続するための端子が前記プリント回路基板の適当な導体パターンに接続されているのが、より好ましい。この構成によれば、前記端子を通じて前記電力回路や制御回路と外部回路とを容易に接続することができる。
【0020】
この場合、前記プリント回路基板を収納するケースを備えるとともに、このケースに前記端子を囲んで当該端子とともにコネクタを構成するハウジングが形成されている構成とすれば、前記ケースによってプリント回路基板の保護ができると同時に、当該ケースに形成されたハウジングと前記端子とによって構成されたコネクタを用いて前記電力回路及び制御回路と外部回路との接続作業をより容易にすることができる。
【0021】
前記端子としては、例えば、前記プリント回路基板をその板厚方向に貫通した状態で当該プリント回路基板に固定されており、かつ、当該板厚方向に前記ケースを貫通してそのハウジング内に突出しているものが、好適である。この構成によれば、プリント回路基板に端子を立てるだけの簡素な構造で当該プリント回路基板と外部回路とを接続するコネクタを構築できる。
【0022】
また、前記ケースを前記プリント回路基板と平行な方向に分割されたものとし、その分割ケース同士の間に前記プリント回路基板を挟み込んだ状態で両分割ケースが連結される構成とすれば、当該ケースによるプリント回路基板の保持強度をさらに高めることができる。
【0023】
さらに、前記プリント回路基板を冷却するための放熱部材を備える場合には、その放熱部材と前記ケースとの間に前記プリント回路基板が挟み込まれている構成とすることにより、当該プリント回路基板の安定した保持と放熱とを同時に実現することができる。
【0024】
また本発明は、入力部に入力された電力を半導体スイッチング素子を通じて出力部に出力する電力回路と、前記半導体スイッチング素子の駆動を制御する制御回路とを併有する回路構成体を製造する方法であって、一方の面に前記電力回路を構成する導体パターンが配され、他方の面に前記制御回路を構成する導体パターンが配され、かつ、基板本体に前記半導体スイッチング素子を実装するための貫通孔が形成されたプリント回路基板を製造する基板製造工程と、このプリント回路基板の一方の面に絶縁層を介して補強板を固定する補強板固定工程と、前記半導体スイッチング素子を前記補強板と反対の側から前記プリント回路基板の一方の導体パターンに直接実装するとともに他方の導体パターンに前記貫通孔を通じて実装する実装工程とを含むものである。
【0025】
この製造方法によれば、予めプリント回路基板に設けておいた貫通孔を利用して、適当な半導体スイッチング素子を当該プリント回路基板の片側から表裏両面の導体パターンに実装することができ、これにより簡単な工程で薄型の回路構成体を容易に製造することができる。従って、従来のように互いに離間して配置されるバスバー基板とプリント回路基板とに半導体スイッチング素子の端子を個別に接続するものに比べ、作業効率は飛躍的に簡略化される。
【0026】
その場合、前記実装工程の前に予め、前記半導体スイッチング素子のうち前記プリント回路基板の表側の導体パターンに実装される端子と前記貫通孔を通じて実装される端子との間に前記プリント回路基板の厚みと略同等の段差を与えておくようにすれば、当該プリント回路基板の厚みにかかわらず、半導体スイッチング素子の各端子に無理な変形を生じさせずにそのまま当該各端子をプリント回路基板とバスバーの双方に各々実装できる。よって、実装後における各端子の応力が大幅に低減される。
【0027】
前記工程に加え、前記基板製造工程後、前記電力回路または制御回路を外部回路と接続するための端子を前記プリント回路基板に貫通させた状態で当該プリント回路基板の適当な導体パターンに接続する端子接続工程を行うことにより、外部回路と接続可能な回路構成体を効率良く製造することができる。
【0028】
さらに、前記端子接続工程後、その端子の周囲に絶縁材からなるハウジングを設けてコネクタを形成するコネクタ形成工程も行うようにすれば、前記外部回路との接続が容易な回路構成体を得ることができる。
【0029】
また、前記補強板固定工程ではアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる補強板をプリント回路基板に固定しておき、前記実装工程後に前記補強板に絶縁層を介して放熱部材を連結する放熱部材連結工程を行うことにより、当該アルミニウム製またはアルミニウム合金製補強板と放熱部材の併用によってさらに放熱性に優れた回路構成体を得ることが可能になる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、車両等に搭載される共通の電源から供給される電力を複数の電気的負荷に分配する配電回路を構成する回路構成体の製造方法を示すが、本発明にかかる回路構成体の用途はこれに限らず、電力回路における通電のオンオフ切換を半導体スイッチング素子によって行う場合に広く適用が可能である。
【0031】
図1及び図2は、この実施の形態にかかる回路構成体の全体構成を示したものである。この回路構成体は、単一のプリント回路基板20と、複数の半導体スイッチング素子(図例ではFET30)と、複数本の端子ピン40と、絶縁ケース50と、放熱部材60とを備えている。
【0032】
前記プリント回路基板20は、この実施の形態では図3に示すような配電回路を構成している。この配電回路は、電力回路部PCと、制御回路部CCとを有している。
【0033】
電力回路部PCは、共通の入力端子42から入力された電源を前記各FET30を通じて複数の出力端子44に分配出力するもので、各FET30のドレインが共通の入力端子42に接続され、各FET30のソースが当該FET30に対応する出力端子44に接続されるように構成されている。
【0034】
制御回路部CCは、信号入力端子46から入力された電気信号に基づき、各FET30のオンオフ制御や信号出力端子48からの警告信号の出力等を行うものであり、この制御回路部CCには前記各FET30のゲートが接続されている。
【0035】
なお、以上示した入力端子42、出力端子44、信号入力端子46、及び信号出力端子48は、前記端子ピン40によって構成される。
【0036】
次に、この回路構成体の製造方法及びこれにより得られる具体的構造を、各工程の順に従って説明する。
【0037】
1)基板製造工程
まず、前記プリント回路基板20の製造を行う。
【0038】
図2及び図4に示すように、プリント回路基板20の基板本体22はエポキシ樹脂等の絶縁材料によって板状(より好ましくは薄いシート状)に形成する。この基板本体22の一方の面(図例では上面)には、前記図3に示した制御回路部CCを構成するための制御回路用導体パターン24(図2,図4)を印刷し、他方の面(図例では下面)には、前記電力回路部PCを構成する電力回路用導体パターン26を印刷する。さらに、基板本体22の適所には、前記電力回路用導体パターン26に対してその裏側から前記FET30を実装するために詳細後述の貫通孔22a,22bを形成しておく。
【0039】
2)補強板固定工程
前記プリント回路基板20の下面に、その電力回路用導体パターン26に重ねるようにして、絶縁接着シート(絶縁層)12を介して補強板10を積層する。この補強板10は、プリント回路基板20の剛性を高めるためのもので、金属板や硬質プラスチック板などを用いることができるが、当該補強板10にアルミニウム板やアルミニウム合金板を用いれば回路構成体の放熱性をさらに高めることが可能である。また、前記硬質プラスチック板等の絶縁板を用いるならば、前記絶縁接着シート12等の絶縁層は必ずしも要しない。
【0040】
この補強板10は、電力回路用導体パターン26側でなく制御回路用導体パターン24側に重ねて設けることも可能である。ただし、電力回路用導体パターン26には比較的大きな電流が流れ、また、FET30の熱も伝わり易いので、当該導体パターン26側に補強板10を重ねることによって放熱効率はより高まることとなる。
【0041】
3)実装工程(図4)
前記プリント回路基板20の基板本体22に設けた貫通孔22a,22bを利用して、当該プリント回路基板20の双方の導体パターン24,26に対して前記補強板10と反対の側(図例では上側)からFET30を実装する。
【0042】
この実施の形態で用いられるFET30は、図4に示すような略直方体状の本体32を有し、その裏面に図略の薄板状ドレイン用端子が設けられるとともに、当該本体32の側面からソース用端子34及びゲート用端子36が突出して下方に延出されている。
【0043】
そこで、前記基板製造工程では、プリント回路基板20の基板本体22に、前記本体32が挿通可能な矩形状の貫通孔22aと、この矩形状部分22aから所定方向に延びて前記ソース用端子34が挿通可能な形状をもつ貫通孔22bとを形成しておくようにする。そして、この実装工程においては、前記貫通孔22aを通じてFET本体32の裏面におけるドレイン端子を基板下面側の電力回路用導体パターン26にその裏側から実装し、前記貫通孔22bを通じてソース用端子34を同じく電力回路用導体パターン26に実装すると同時に、ゲート用端子36は基板上面側の制御回路用導体パターン24に対して表側から実装する。
【0044】
すなわち、この実装工程では、各FET30を全て上側から導体パターン24,26の双方に同時実装することが可能であり、従来のようにFET30をバスバー基板とプリント回路基板との間の位置で両基板にそれぞれ配線材を介して別個に接続する方法に比べ、組立作業効率は格段に向上する。
【0045】
特に、前記補強板固定工程を予め行っておくことにより、はんだ付け作業の際にプリント回路基板20の支持剛性を十分に確保することができ、作業効率及び実装精度がさらに向上する。
【0046】
なお、この実装工程を行うに当たっては、予め、図4に示すようにソース用端子34とゲート用端子36との間にプリント回路基板20の厚みと略同等の段差tを与えておくことが、より好ましい。このようにすれば、当該プリント回路基板20の厚みにかかわらず、両端子34,36に無理な変形を生じさせずにそのまま当該各端子34,36を出力端子用バスバー12とプリント回路基板20とに各々実装でき、実装後における各端子の応力が大幅に低減される。
【0047】
4)端子接続工程(図5)
前記プリント回路基板20には、前記貫通孔22a,22bのようなFET実装用の貫通孔に加え、前記図3に示した各端子42,44,46,48を構成する端子ピン40が挿通可能な端子接続用貫通孔20aを設けておくとともに、前記絶縁接着シート12及び補強板10にも前記貫通孔20aより一回り大きい貫通孔10aを設けておく。そして、前記貫通孔20a,10aに対して補強板10と反対の側(図5(a)(b)では上側)から端子ピン40の端部を挿通し、かつ、その挿通側端部に対して貫通孔10aからはんだ41を供給することにより、当該端子ピン40を電力回路用導体パターン26に直接(または制御回路用導体パターン24にスルーホールで)接続する。
【0048】
これにより、プリント回路基板20から外部接続端子が上向きに突出した状態となり、各端子に対して外部配線材を一方向(上側)から接続することが可能になり、その接続作業が簡素化される。
【0049】
5)ケース装着工程(コネクタ形成工程)
前記プリント回路基板20に対し、さらに上側から合成樹脂等の絶縁材料からなるケース50(図1及び図2)を被せ、図1に示すビス14等でねじ止めする。このケース50は、下側に開口して前記プリント回路基板20全体を上側から覆う形状を有し、その中央には前記FET30を上方に開放する開口部が設けられ、この開口部の周縁から上向きに防水壁52が立設されている。すなわち、この防水壁52は前記FET30を含む領域を囲んでいる。また、ケース50の前後両端部からは、左右に並ぶ複数枚のフィンカバー58が下向きに突出している(図1)。
【0050】
このケース50の左右両縁部(防水壁52の左右両外側の部分)には、上下に開口する筒状のハウジング54がケース50と一体に形成されている。ハウジング54は、複数箇所に形成され、前記入力端子42を構成する端子ピン40、前記出力端子44を構成する端子ピン40、前記信号入力端子46及び信号出力端子48を構成する端子ピン40を個別に囲み、これらの端子ピン40とともにコネクタを構成する。
【0051】
このようにして形成したコネクタと、例えば車両に配索されるワイヤハーネスの端末に設けられたコネクタとを結合することにより、当該端子と外部回路とを簡単に接続することが可能となる。
【0052】
なお、本発明では必ずしもコネクタハウジングがケース50と一体に形成されていなくてもよく、両者を別部材として成形した後に組み上げるようにしてもよい。
【0053】
6)放熱部材接続工程
前記補強板10の下面に図1及び図2に示すような放熱部材60を接着して両者を合体させる。
【0054】
放熱部材60は、全体がアルミニウム系金属等の熱伝導性に優れた材料で形成されたもので、図例のように断面形状が一定のものについては例えば押し出し成形品を用いることが可能である。この放熱部材60の上面が平坦な接着面64となっており、この接着面64に図2に示す絶縁層66を介して前記補強板10が接着される。この放熱部材60の下面からは左右に並ぶ複数枚のフィン62が下向きに突出し、各フィン62の位置は前記ケース50におけるフィンカバー58の位置と対応している。従って、この放熱部材60を前記ケース50に装着することによって各フィン62の長手方向両端が前記フィンカバー58で覆われるようになっている。
【0055】
この放熱部材60と補強板10との接着及び絶縁層66の形成は、例えば次のような手順で行うのが好ましい。
【0056】
▲1▼ 放熱部材60の上面64にエポキシ系樹脂からなる絶縁性の接着剤を塗布して乾燥させることにより薄膜の絶縁層を形成する。
【0057】
▲2▼ 前記絶縁層の上に重ねて、この絶縁層を構成する材料と同じ接着剤、またはそれよりも軟らかくて熱伝導性の高い接着剤(例えばシリコーン系接着剤のようなグリース状のもの)を塗布し、もしくは補強板10側に同様の接着剤を塗布し、この接着剤によって前記絶縁層と補強板10とを接着する。
【0058】
ここで、▲1▼の絶縁層を省略しても▲2▼の接着剤によって絶縁層66の形成は可能であるが、▲1▼及び▲2▼の工程を経ることにより、補強板10と放熱部材60との間の絶縁確実性が増す。特に、放熱部材60をボディアースに接続して電位をゼロにする場合には、当該放熱部材60と電力回路との電位差が大きくなるので、絶縁層66には確実な絶縁性を付与しておくことがより好ましい。また、▲1▼の絶縁層は例えば放熱部材60の接着面64上に絶縁シートを貼着することにより形成することも可能である。
【0059】
なお、電力回路用導体パターン中に接地されるべきものが含まれる場合には、この導体パターンを前記放熱部材60を通じてアースに接続するようにしてもよい。
【0060】
また、図2に示すようにケース50にプリント回路基板20の周縁部が当たる段部55を形成しておき、この段部55と放熱部材60との間にプリント回路基板20を挟み込むようにして当該放熱部材60をケース50に連結、固定するようにすれば、プリント回路基板20をより安定した状態で保持することが可能になる。
【0061】
あるいは、図6に示すようにケース50をプリント回路基板20と平行な方向(図では左右方向)に分割し、その分割ケース50A,50Bによりプリント回路基板20を両側から挟み込むようにして当該分割ケース50A,50B同士を連結するようにしても、プリント回路基板20の保持力を高めることができる。
【0062】
同図に示す例では、前記端子ピン40に代えてケース50A,50B側に端子70が一体にモールドされている。各端子70は、ケース側ハウジング54の底壁を上下に貫通する接続部72と、この接続部72の上端からハウジング開口側に突出する外部側端子部74と、前記接続部76の下端から側方に突出する基板側端子部76とを一体に有し、この基板側端子部76がプリント回路基板20上の適当な導体パターンに接続されるようになっている。
【0063】
また、分割ケース50Bから分割ケース50Aに向かって連結アーム58bが延びており、この連結アーム58bの端部に設けられた貫通孔59と分割ケース50Aの外側面に形成された突起58aとが係合されることにより、両分割ケース50A,50Bの連結状態がロックされるようになっている。
【0064】
7)ポッティング工程
前記防水壁52の内側に放熱用の適当なポッティング剤を注入する。その後、防水壁52の上端に図1及び図2に示す蓋70を被せ、溶接等で固定することにより、防水壁52の内側を封止する。これにより、回路構成体の防水効果がさらに高められることとなる。
【0065】
以上のようにして製造された回路構成体によれば、電力回路部PCの入力端子42に電源を、出力端子44に電気的負荷をそれぞれ接続することにより、前記電源から適当な電気的負荷に電力を分配する回路が構築されるとともに、当該回路の途中に設けられるFET30の動作が制御回路部CCによって制御されることにより、前記配電回路の通電のオンオフ制御が実行されることになる。
【0066】
なお、本発明にかかる回路構成体は以上の方法により製造されたものに限られず、少なくとも、プリント回路基板20の一方の面に電力回路用導体パターン26が、他方の面に制御回路用導体パターン24が形成され、両導体パターン24,26に各半導体スイッチング素子が実装される構成を有することにより、全体構成の簡素化及び薄型化という効果を享受することができる。
【0067】
また、本発明において使用される半導体スイッチング素子は前記FETに限らず、バスバーにより形成される電力回路側に接続される通電端子とプリント回路基板20側に接続される制御端子とを含むものであれば広く適用が可能である。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、プリント回路基板の一方の面に半導体スイッチング素子が介在する電力回路を、他方の面に前記半導体スイッチング素子を制御する制御回路を形成し、当該プリント回路基板に設けた貫通孔を用いて両回路に半導体スイッチング素子を同時実装するようにしたものであるので、簡素かつ薄型の構造で半導体スイッチング素子を含む電力回路及びその制御回路の双方を構築でき、かつ、従来のようにバスバー基板と制御回路基板との間に半導体スイッチング素子が閉じ込められるものに比べてより放熱性に優れた回路構成体を提供することができる効果がある。
【0069】
さらに、この回路構成体を製造するにあたり、前記プリント回路基板を製造し、その片面に補強板を固定した後、その補強板と反対の側から半導体スイッチング素子を実装する方法によって、前記回路構成体の製造効率を飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる回路構成体の分解斜視図である。
【図2】前記回路構成体の断面正面図である。
【図3】前記回路構成体により構成される配電回路を示す図である。
【図4】前記回路構成体におけるFETの実装状態を示す拡大断面斜視図である。
【図5】(a)(b)は前記回路構成体の端子接続工程を示す断面図である。
【図6】(a)は前記回路構成体のケースとして分割ケースを用いたものを示す平面図、(b)はその正面図である。
【符号の説明】
10 補強板
12 絶縁接着シート(絶縁層)
20 プリント回路基板
20a 基板接続用の貫通孔
22 基板本体
22a,22b FET実装用の貫通孔
24 制御回路用導体パターン
26 電力回路用導体パターン
30 FET(半導体スイッチング素子)
32 FET本体
34 ソース用端子(通電端子)
36 ゲート用端子(制御端子)
40 端子ピン
42 入力端子
44 出力端子
46 信号入力端子
48 信号出力端子
50 ケース
50A,50B 分割ケース
54 ケースに形成されたハウジング
60 放熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電力を半導体スイッチング素子を通じて出力する電力回路と、前記半導体スイッチング素子の駆動を制御する制御回路とを併有する回路構成体であって、一方の面に前記電力回路を構成する導体パターンが配され、他方の面に前記制御回路を構成する導体パターンが配されたプリント回路基板を備え、このプリント回路基板の基板本体には前記半導体スイッチング素子を実装するための貫通孔が形成され、当該半導体スイッチング素子が前記プリント回路基板の一方の導体パターンに表側から実装されるとともに他方の導体パターンに前記貫通孔を通じて裏側から実装されていることを特徴とする回路構成体。
【請求項2】
請求項1記載の回路構成体において、前記プリント回路基板の導体パターンのうち裏側から半導体スイッチング素子が実装されている導体パターンの上に重ねて補強板が積層されていることを特徴とする回路構成体。
【請求項3】
請求項2記載の回路構成体において、前記補強板はアルミニウム板またはアルミニウム合金板からなり、当該補強板が絶縁層を介して前記プリント回路基板の一方の導体パターンに重ねられていることを特徴とする回路構成体。
【請求項4】
請求項1記載の回路構成体において、前記半導体スイッチング素子は、その本体の裏面に通電端子を有し、前記プリント回路基板の基板本体には前記半導体スイッチング素子の本体が挿入可能な大きさの貫通孔が設けられ、この貫通孔を通じて前記半導体スイッチング素子の本体裏面の通電端子が前記電力回路を構成する導体パターン上に実装されていることを特徴とする回路構成体。
【請求項5】
請求項4記載の回路構成体において、前記プリント回路基板の面のうち前記電力回路を構成する導体パターンが設けられている面に絶縁層を介してアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる補強板が固定されていることを特徴とする回路構成体。
【請求項6】
請求項2または5記載の回路構成体において、前記補強板が絶縁層を介して放熱部材に固定されていることを特徴とする回路構成体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の回路構成体において、前記電力回路または制御回路を外部回路と接続するための端子が前記当該プリント回路基板の適当な導体パターンに接続されていることを特徴とする回路構成体。
【請求項8】
請求項7記載の回路構成体において、前記プリント回路基板を収納するケースを備えるとともに、このケースに前記端子を囲んで当該端子とともにコネクタを構成するハウジングが形成されていることを特徴とする回路構成体。
【請求項9】
請求項8記載の回路構成体において、前記端子は前記プリント回路基板をその板厚方向に貫通した状態で当該プリント回路基板に固定されており、かつ、当該板厚方向に前記ケースを貫通してそのハウジング内に突出していることを特徴とする回路構成体。
【請求項10】
請求項8記載の回路構成体において、前記ケースは前記プリント回路基板と平行な方向に分割されており、その分割ケース同士の間に前記プリント回路基板が挟み込まれた状態で両分割ケースが連結されることを特徴とする回路構成体。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の回路構成体において、前記プリント回路基板を冷却するための放熱部材を備え、この放熱部材と前記ケースとの間に前記プリント回路基板が挟み込まれていることを特徴とする回路構成体。
【請求項12】
入力部に入力された電力を半導体スイッチング素子を通じて出力部に出力する電力回路と、前記半導体スイッチング素子の駆動を制御する制御回路とを併有する回路構成体を製造する方法であって、一方の面に前記電力回路を構成する導体パターンが配され、他方の面に前記制御回路を構成する導体パターンが配され、かつ、基板本体に前記半導体スイッチング素子を実装するための貫通孔が形成されたプリント回路基板を製造する基板製造工程と、このプリント回路基板の一方の面に絶縁層を介して補強板を固定する補強板固定工程と、前記半導体スイッチング素子を前記補強板と反対の側から前記プリント回路基板の一方の導体パターンに直接実装するとともに他方の導体パターンに前記貫通孔を通じて実装する実装工程とを含むことを特徴とする回路構成体の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の回路構成体の製造方法において、前記実装工程の前に予め、前記半導体スイッチング素子のうち前記プリント回路基板の表側の導体パターンに実装される端子と前記貫通孔を通じて実装される端子との間に前記プリント回路基板の厚みと略同等の段差を与えておくことを特徴とする回路構成体の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13記載の回路構成体の製造方法において、前記基板製造工程後、前記電力回路または制御回路を外部回路と接続するための端子を前記プリント回路基板に貫通させた状態で当該プリント回路基板の適当な導体パターンに接続する端子接続工程を含むことを特徴とする回路構成体の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の回路構成体の製造方法において、前記端子接続工程後、その端子の周囲に絶縁材からなるハウジングを設けてコネクタを形成するコネクタ形成工程を含むことを特徴とする回路構成体の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれかに記載の回路構成体の製造方法において、前記補強板固定工程ではアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる補強板をプリント回路基板に固定しておき、前記実装工程後に前記補強板に絶縁層を介して放熱部材を連結する放熱部材連結工程を行うことを特徴とする回路構成体の製造方法。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate


【公開番号】特開2004−221256(P2004−221256A)
【公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−5950(P2003−5950)
【出願日】平成15年1月14日(2003.1.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】