説明

回転機用コア部材及び回転機

【課題】分割コアを用いる三次元回転機の効率を向上する。
【解決手段】ステータコア21は、ラジアル方向の一方側面(側面24b又は側面24c)とアキシャル方向の一方側面(側面24a又は側面24d)とに磁石対向面を有するティース部23と、巻線が巻回される棒状のヨーク部22とをそれぞれ有し、環状に配置された複数の分割コア30を備え、分割コア30は軟磁性金属圧粉材によって構成され、各分割コア30のヨーク部22の端部22aは、隣接する分割コア30のティース部23に設けられた凹部26と嵌合し、ヨーク部22は、端部22aのうち、上記アキシャル方向の一方側面若しくは上記ラジアル方向の一方側面又はその両方に面する部分の少なくとも一部がR面取りされてなる形状の柱状体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転機用コア部材及び回転機に関し、特にラジアル方向及びアキシャル方向の両方に磁石対向面を有する三次元回転機用コア部材及びこのコア部材を用いる回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機は一般に、ステータコアとロータを備えている。ステータコアは珪素鋼板の積層体(積層鋼板)であり、コイルが巻回される。一方、ロータには永久磁石が配置される。ロータの永久磁石とステータコアとは、微小な間隙(ギャップ)をもって対向配置される。
【0003】
回転機を発電機として用いる場合には、外力によってロータを回転させる。すると、永久磁石とステータコアの位置関係が変動するため、コイルの鎖交磁束が変動し、電圧が発生する。一方、回転機を電動機として用いる場合には、コイルに交流電流を流す。すると、ステータコア内部の磁界が変動し、この変動磁界と永久磁石との相互作用により、ロータに回転トルクが発生する。
【0004】
特許文献1には電動機の例が開示されている。特許文献1に開示される電動機は、ステータコアとロータのギャップがラジアル方向に設けられる所謂ラジアル型の電動機であり、ステータコアの内周側と外周側の両方に永久磁石が配置されている。このようにステータコアのラジアル方向両側に永久磁石を配置することで、片側のみに永久磁石を配置する場合に比べて利用可能な磁束の量が増え、電動機の効率がよくなっている。
【0005】
また、特許文献1に開示される電動機では、ステータコアが複数の分割コアによって構成されている。各分割コアは鉤状の係止部と溝部とを有しており、溝部に係止部を圧入嵌合させることで分割コアを環状に連結し、一体のステータコアを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−271782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ステータコアのラジアル方向だけでなくアキシャル方向(ロータの回転軸方向)にも永久磁石を配置すれば、利用可能な磁束の量が増え、回転機の出力密度と効率の向上が実現される。以下、このような回転機を三次元回転機と称する。
【0008】
三次元回転機でも、巻線作業を簡素化する観点から、特許文献1に開示される電動機と同様に分割コアを用いることが望まれる場合がある。しかしながら、分割コアを用いると、分割コアの連結部分に大きな磁気抵抗が発生することから、分割コアを用いない場合に比べて効率が悪くなり、三次元化したことによる効率向上効果が損なわれる。
【0009】
したがって、本発明の目的のひとつは、分割コアを用いる三次元回転機の効率を向上できるコア部材及びこのコア部材を用いる回転機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明による回転機用コア部材は、ラジアル方向の一方側面とアキシャル方向の一方側面とに磁石対向面を有するティース部と、巻線が巻回される棒状のヨーク部とをそれぞれ有し、環状に配置された複数の分割コアを備え、前記分割コアは軟磁性金属圧粉材によって構成され、前記各分割コアの前記ヨーク部の端部は、隣接する前記分割コアの前記ティース部に設けられた凹部と嵌合し、前記ヨーク部は、前記端部のうち、前記アキシャル方向の前記一方側面に面する部分の少なくとも一部若しくは前記ラジアル方向の前記一方側面に面する部分の少なくとも一部又はその両方がR面取りされてなる形状の柱状体であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、アキシャル方向の一方側面若しくはラジアル方向の一方側面又はその両方を通じて分割コア内に出入りする磁束に関して分割コアの連結部分の磁気抵抗を低減できるので、分割コアを用いる三次元回転機の効率を向上できる。
【0012】
また、上記各回転機用コア部材において、前記各分割コアの前記ティース部は、前記ラジアル方向の他方側面又は前記アキシャル方向の他方側面の少なくとも一方にも磁石対向面を有し、前記ヨーク部を構成する柱状体は、前記端部のうち、前記ラジアル方向の他方側面又は前記アキシャル方向の他方側面の前記少なくとも一方に面する部分の少なくとも一部もR面取りされてなる形状を有することとしてもよい。これによれば、ラジアル方向の他方側面を通じて分割コア内に出入りする磁束に関しても分割コアの連結部分の磁気抵抗を低減できる。
【0013】
また、上記回転機用コア部材において、前記ヨーク部を構成する柱状体は、少なくとも前記端部に辺を有しないこととしてもよく、さらに前記端部は曲面のみによって構成されることとしてもよい。
【0014】
また、上記回転機用コア部材において、前記端部は半球面形状であることとしてもよいし、前記ヨーク部を構成する柱状体は、半球面形状の前記端部を有する円柱体であることとしてもよい。
【0015】
また、本発明による回転機は、上記各回転機用コア部材のいずれかと、前記各分割コアの各磁石対向面に対向する永久磁石を有する磁石支持部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分割コアを用いる三次元回転機の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態による回転機を軸方向で切断した断面図の模式図(概略図)である。(a)のステータコア部分は図3のA−A'線断面に対応し、(b)のステータコア部分は図3のB−B'線断面に対応している。
【図2】図1に示した回転機から、磁石、ステータコア、及びコイルのみを抜き出して記載した斜視図である。
【図3】図1に示した回転機から、ステータコアのみを抜き出して記載した斜視図である。
【図4】(a)(b)ともに、本発明の実施の形態による回転機のステータコアの分割コアを拡大して示した図である。
【図5】図3のC−C'線断面の模式図である。
【図6】本発明の前提となる分割コアの斜視透過図である。
【図7】本発明の実施の形態による回転機における磁束の流れを説明するための模式図である。
【図8】(a)〜(c)はいずれも、図6に示した本発明の前提となる分割コアの連結状態を示す図である。
【図9】(a)は、図8(a)のD線に沿った本発明の前提となる分割コアの断面図である。(b)(d)(f)は、図8(b)のE線に沿った本発明の前提となる分割コアの断面図である。(c)(e)は、図8(c)のF線に沿った本発明の前提となる分割コアの断面図である。
【図10】(a)〜(f)は、図9(a)〜(f)にそれぞれ対応する本発明の実施の形態による分割コアの断面図である。
【図11】(a)〜(f)はいずれも、本発明の実施の形態の変形例によるヨーク部を示す斜視図である。
【図12】(a)及び(b)は、ステータコアの上面、下面、及び外周面を磁石対向面とした三次元回転機の断面図の例を示す図である。
【図13】(a)及び(b)は、ヨーク部の形状のバリエーションを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1(a)(b)は、本実施の形態による三次元回転機1を軸方向で切断した断面図の模式図(概略図)である。図2は、三次元回転機1から磁石13a〜13c、ステータコア21、及びコイル25のみを抜き出して記載した斜視図である。また、図3は三次元回転機1からステータコア21のみを抜き出して記載した斜視図である。なお、図1(a)(b)に示した断面図内のステータコア21部分は、それぞれ図3のA−A'線断面、図3のB−B'線断面に対応している。
【0020】
図1に示すように、三次元回転機1は、同図に示したX軸を中心に回転自在に構成されたシャフト10及びロータ11(磁石支持部材)と、ベース20に固定されて回転しないステータコア21(コア部材)とを備えている。この三次元回転機1は、プリンタやファン、車載用モータ、洗濯機等、種々の用途で用いられるものである。
【0021】
ベース20は中央に円筒形部分20aを有しており、シャフト10は、この円筒形部分20aの内部に挿入されている。シャフト10は、円筒形部分20aの内壁に嵌められた2つのベアリング40によって支持されており、このベアリング40の内周に沿い、X軸を回転軸として回転する。
【0022】
ロータ11はX軸に垂直な主面を有する円盤状部分11aを含む部材であり、鉄などの磁性体で作られている。円盤状部分11aの中央部はシャフト10と嵌合しており、これにより、ロータ11はシャフト10とともに回転する。
【0023】
円盤状部分11aの下部には2つの円筒形部分11b,11cが設けられている。各円筒形部分11b,11cの中心はいずれもX軸に一致している。円筒形部分11bの内径はベース20の円筒形部分20aの外径より大きくなっており、円筒形部分20aは円筒形部分11bの内側に挿入される。また、円筒形部分11cの内径は円筒形部分11bの外径よりも大きくなっており、円筒形部分11bと円筒形部分11cの間に作られる環状(ドーナツ状)の空間にはステータコア21が挿入される。
【0024】
上記環状の空間の内面12a,12b,12cはそれぞれ、ステータコア21の上面24a、内周面24b、外周面24c(後述)に対向する対向面となる。内面12aには所定個数(図2では10個)の磁石13aが設置される。同様に、内面12b及び内面12cにはそれぞれ、同数(図2では10個)の磁石13b及び磁石13cが設置される。
【0025】
磁石13aは、図2に示すような扇型の永久磁石であり、S極をステータコア21側に向けた永久磁石13a(S)と、N極をステータコア21側に向けた永久磁石13a(N)とを含んでいる。永久磁石13a(S)と永久磁石13a(N)とは、円周方向に交互に配置される。なお、図2では、永久磁石13a(S)の表面に「N」、永久磁石13a(N)の表面に「S」が記載されているが、これは各永久磁石13aの内面12a側の面に現れる磁極を示している。以下に説明する磁石13b,13cでも同様である。
【0026】
磁石13bは、図2に示すように、円筒の一部を切り取った形状の永久磁石であり、S極をステータコア21側に向けた永久磁石13b(S)と、N極をステータコア21側に向けた永久磁石13b(N)とを含んでいる。永久磁石13b(S)及び永久磁石13b(N)は、それぞれ永久磁石13a(S)及び永久磁石13a(N)と対応する位置に、円周方向に交互に配置される。
【0027】
磁石13cも、図2に示すように、円筒の一部を切り取った形状の永久磁石であり、S極をステータコア21側に向けた永久磁石13c(S)と、N極をステータコア21側に向けた永久磁石13c(N)とを含んでいる。永久磁石13c(S)及び永久磁石13c(N)は、それぞれ永久磁石13a(S)及び永久磁石13a(N)と対応する位置に、円周方向に交互に配置される。
【0028】
ステータコア21は環状の部材であり、図2及び図3に示すように、円周方向に沿って環状に配置された複数の分割コア30が連結された構造を有している。各分割コア30は、粉体粒子の表面が所定の絶縁膜により電気絶縁被覆された軟磁性金属圧粉材を所定の圧力下で成型することにより形成される。このように軟磁性金属圧粉材で構成されているため、分割コア30には磁束の通過方向の制限がない。
【0029】
図4(a)は、図2に示したステータコア21から、2つの分割コア30を抜き出して記載した斜視図である。ただし、同図では分割コア30を連結する前の状態を示している。また、図4(b)は、1つの分割コア30を拡大して示した拡大斜視図である。また、図5は、図3のC−C'線断面の模式図である。ただし、図5でも分割コア30の2つ分のみを示している。
【0030】
図4(a)及び図4(b)に示すように、各分割コア30はそれぞれ、ヨーク部22とティース部23とを有している。
【0031】
ティース部23は、図3などに示すように、上向きに突出した上側突起部23aと、内向きに突出した内側突起部23bと、外向きに突出した外側突起部23cと、下向きに突出した下側突起部23dとを含んで構成される。このうちの下側突起部23dは、図1に示すようにベース20に固定されている。
【0032】
上側突起部23aの上面24a(アキシャル方向の一方側面)、内側突起部23bの内周面24b(ラジアル方向の一方側面)、外側突起部23cの外周面24c(ラジアル方向の他方側面)はそれぞれ、磁石13a、磁石13b、磁石13cと対向する磁石対向面となっている。これらの各面は対向する磁石に沿う形状を有しており、これにより、各面と各磁石の間には一定幅の間隙が設けられる。
【0033】
内側突起部23bは、図3に示すように、隣接するヨーク部22方向に張り出した鍔部23bfを有している。同様に、外側突起部23cも、隣接するヨーク部22方向に張り出した鍔部23cfを有している。これらの鍔部23bf,23cfは内周面24b及び外周面24cの面積を拡大するために設けられているもので、これによりステータコア21内部に取り込まれる磁束の量が増加する。
【0034】
ティース部23の円周方向の一方側面24eには、図4(a)に示すように、隣接する分割コア30のヨーク部22と嵌合する凹部26が設けられている。凹部26は、側面24eに設けられた半球形の穴である。
【0035】
一方、ヨーク部22は、図4(b)に示すように、ティース部23の円周方向の他方側面24fから突き出した柱状体の部材であり、絶縁性のボビン27を介してコイル25が巻回される。ヨーク部22の端部22aは、図5に示すように、隣接する分割コア30のティース部23に設けられた凹部26に嵌合する。なお、端部22aと凹部26とは対応する形状を有しており、嵌合させることにより、隙間なく密着する。嵌合させる際には、分割コア30が分離しないように接着剤を用いることが好適である。具体的な接着剤としては、比較的接着強度の強い2液のエポキシ樹脂などを用いることが好ましい。また、磁性を有する接着剤を用いることも好ましい。
【0036】
以下、ヨーク部22及びその端部22aの形状について、詳しく説明する。以下の説明では、初めに本発明のベースとなる分割コアの構造について説明し、その後、この分割コアと比較しながら、ヨーク部22及びその端部22aの形状を説明する。
【0037】
図6は、本発明のベースとなる分割コア130の斜視透過図である。同図では、隣接する一方の分割コア130のヨーク部122と、他方の分割コア130のティース部123のみを示している。
【0038】
図6に示すように、分割コア130においても、ティース部123には磁石対向面124a〜124cが設けられる。これら磁石対向面124a〜124cは、図1(b)において分割コア30に代えて分割コア130を用いたとした場合に、磁石13a〜13bとそれぞれ対向する面である。また、円周方向の一方側面124eには、隣接する分割コア130のヨーク部122と嵌合する凹部126が設けられる。
【0039】
ヨーク部122は四角柱形の柱状体部材であり、図示していないが、ティース部123の円周方向の他方側面124fから突き出している。四角柱形であることから、ヨーク部122は、図6に示すような辺(エッジ)E1〜E8を有している。
【0040】
さて、以上のようなヨーク部122と比較しながら、ヨーク部22及びその端部22aの形状について説明する。ヨーク部22は、図4に示すように円柱形の柱状体(長手方向に垂直な断面が円形である柱状体)であり、その端部22aは半球面形状となっている。この形状は、ヨーク部122において、辺E1〜E8をR面取りすることにより得られる形状である。つまり、ヨーク部22は、ヨーク部122の辺E1〜E8がR面取りされてなる形状の柱状体となっている。
【0041】
なお、図4に示したヨーク部22及びその端部22aの形状は辺E1〜E8を完全にR面取りしてなる形状としているが、一部のみをR面取りしてなる形状としてもよい。この点については、後ほど磁束の流れについての説明を行った後、再度詳しく説明する。
【0042】
次に、三次元回転機1における磁束の流れについて説明する。
【0043】
図7は、三次元回転機1における磁束の流れを説明するための模式図である。同図においては、矢印付きの破線により磁束の流れを示している。
【0044】
破線Aで示すように、ある磁石13a(N)のN極から出る磁束は、対向する上面24aからステータコア21内部に入り、上側突起部23a、ヨーク部22、隣接する上側突起部23a、及びその上面24aを順に通過して、隣接する磁石13a(S)のS極に戻る。
【0045】
同様に、破線Bで示すように、ある磁石13b(N)のN極から出る磁束は、対向する内周面24bからステータコア21内部に入り、内側突起部23b、ヨーク部22、隣接する内側突起部23b、及びその内周面24bを順に通過して、隣接する磁石13b(S)のS極に戻る。
【0046】
また、破線Cで示すように、ある磁石13c(N)のN極から出る磁束は、対向する外周面24cからステータコア21内部に入り、外側突起部23c、ヨーク部22、隣接する外側突起部23c、及びその外周面24cを順に通過して、隣接する磁石13c(S)のS極に戻る。
【0047】
このように、三次元回転機1では、3方向に磁束の流れが確保され、いずれの磁束もヨーク部22を通過する。このため、例えばステータコアの両側のみに永久磁石を配置した場合に比べ、利用可能な磁束の量は多くなっている。
【0048】
分割コア30の連結部分(ティース部23とヨーク部22の連結部分)の磁気抵抗について説明する。以下の説明では、初めに上記した分割コア130の連結部分の磁気抵抗について説明し、その後、分割コア130と比較しながら、分割コア30の連結部分の磁気抵抗について説明する。
【0049】
図8(a)〜図8(c)はいずれも、図6に示した分割コア130の連結状態を示す図である。図9(a)は、図8(a)のD線に沿った分割コア130の断面図である。また、図9(b)、図9(d)、及び図9(f)の各図は、図8(b)のE線に沿った分割コア130の断面図である。また、図9(c)及び図9(e)の各図は、図8(c)のF線に沿った分割コア130の断面図である。図9(a)〜図9(f)の各図に示した破線の矢印は、磁束の流れを示している。
【0050】
図9(a)及び図9(b)には、ティース部123の上面124a(アキシャル方向の一方側面)を通じて分割コア130内に出入りする磁束の流れを示している。つまり、この磁束は、図1(b)において分割コア30に代えて分割コア130を用いたとした場合に、ティース部123と磁石13aとの間を流れる磁束である。これらの図に示すように、上面124aを通じてティース部123を通過する磁束は、ヨーク部122の辺E1,E2,E3を避けて、ヨーク部122とティース部123の間を出入りする。このように磁束がヨーク部122の各辺を避けるのは、磁束が集中し、飽和するためである。
【0051】
図9(c)及び図9(d)には、ティース部123の内周面124b(ラジアル方向の一方側面)を通じて分割コア130内に出入りする磁束の流れを示している。つまり、この磁束は、図1(b)において分割コア30に代えて分割コア130を用いたとした場合に、ティース部123と磁石13bとの間を流れる磁束である。これらの図に示すように、内周面124bを通じてティース部123を通過する磁束は、上記同様、ヨーク部122の辺E2,E4,E5を避けて、ヨーク部122とティース部123の間を出入りする。
【0052】
図9(e)及び図9(f)には、ティース部123の外周面124c(ラジアル方向の他方側面)を通じて分割コア130内に出入りする磁束の流れを示している。つまり、この磁束は、図1(b)において分割コア30に代えて分割コア130を用いたとした場合に、ティース部123と磁石13cとの間を流れる磁束である。これらの図に示すように、外周面124cを通じてティース部123を通過する磁束は、上記同様、ヨーク部122の辺E3,E6,E7を避けて、ヨーク部122とティース部123の間を出入りする。
【0053】
以上のように、ティース部123の各面を通じて分割コア130内に出入りする磁束は、ヨーク部122の辺を避けて(迂回して)、ヨーク部122とティース部123の間を出入りする。このような磁束の迂回が原因となり、分割コア130の連結部分は、ティース部123の各面を通じて分割コア130内に出入りする磁束に関し、比較的大きな磁気抵抗を有している。
【0054】
次に、図10(a)〜図10(f)は、図9(a)〜図9(f)にそれぞれ対応する分割コア30の断面図である。これらの図においても、破線の矢印は磁束の流れを示している。
【0055】
上述したように、分割コア30のヨーク部22は、ヨーク部122の辺E1〜E8がR面取りされてなる形状の柱状体である。そのため、図10(a)〜図10(f)に示すように、端部22aには磁束が集中する辺がない。したがって、ティース部23の各面を通じて分割コア30内に出入りする磁束に関する分割コア30の連結部分の磁気抵抗は、分割コア130のそれに比べて小さくなっている。
【0056】
以上説明したように、三次元回転機1によれば、ティース部23の上面24a、内周面24b、外周面24cを通じて分割コア30内に出入りする磁束に関し、分割コア30の連結部分の磁気抵抗を低減できるので、分割コアを用いる三次元回転機の効率を向上できる。
【0057】
ここで、三次元回転機1においては、必ずしもすべての方向の磁束に関して磁気抵抗を低減しなくとも、一部の方向の磁束に関してのみ磁気抵抗を低減することで十分な効率を得られる場合がある。また、ティース部23とヨーク部22の連結部分で生ずる磁気抵抗を減ずるためには、ヨーク部22の各部分のうち、少なくともティース部23内部に挿入される部分である端部22aについて、磁束の流れを妨げる辺を有しないことが必要である。また、連結部分の磁気抵抗を低減するためには、必ずしもヨーク部22の端部22aを半球面形状にしなければならないわけではなく、少なくとも辺を有しない形状とすればよい。
【0058】
以上に鑑み、ヨーク部22の形状には各種のバリエーションが考えられる。以下、ヨーク部22の形状のバリエーションを具体的に挙げて説明する。図11(a)〜図11(f)はいずれも、ヨーク部22のバリエーションを示す斜視図である。なお、これらの図に示すヨーク部22の側面50a,50b,50cはそれぞれ、磁石13aとの対向面(アキシャル方向の一方側面)、内周面(ラジアル方向の一方側面)、外周面(ラジアル方向の他方側面)を示している。
【0059】
図11(a)は、ヨーク部22を、端部22aのうち、側面50aに属する部分のみがR面取りされてなる形状の柱状体とした例である。この例では、アキシャル方向の磁束に関して、磁気抵抗を低減する効果が得られる。
【0060】
図11(b)は、ヨーク部22を、端部22aのうち、側面50aに属する部分の一部分のみがR面取りされてなる形状の柱状体とした例である。この例でも、アキシャル方向の磁束に関して磁気抵抗を低減する効果が得られる。
【0061】
図11(c)は、ヨーク部22を、側面50a全体(ティース部23との接続部分を除く。)がR面取りされてなる形状の柱状体とした例である。この例でも、アキシャル方向の磁束に関して、磁気抵抗を低減する効果が得られる。
【0062】
図11(d)は、ヨーク部22を、端部22aのうち、側面50a,50bに属する部分のみがR面取りされてなる形状の柱状体とした例である。この例では、アキシャル方向の磁束の他、ラジアル方向の磁束のうちティース部23の内周面24b(図1(b))を通じて分割コア30に出入りする磁束に関して、磁気抵抗を低減する効果が得られる。
【0063】
図11(e)は、ヨーク部22を、端部22aのすべての部分がR面取りされてなる形状の柱状体とした例である。この例では、アキシャル方向及びラジアル方向の磁束すべてに関して、磁気抵抗を低減する効果が得られる。
【0064】
図11(f)は、ヨーク部22を、ティース部23との接続部分を除くすべての部分がR面取りされてなる形状の柱状体とした例である。この例でも、アキシャル方向及びラジアル方向の磁束すべてに関して、磁気抵抗を低減する効果が得られる。
【0065】
最後に、三次元回転機1の動作について説明しておく。
【0066】
各コイル25に方向を適宜切り替えながら電流を流した場合、ステータコア21に回転磁界が生じ、その回転磁界に追従するようにしてロータ11及びシャフト10が回転する。これにより、三次元回転機1は電動機(モータ)として機能する。
【0067】
一方、シャフト10を外力によって回転させると、電磁誘導作用によって各コイル25に電圧が発生する。これにより、三次元回転機1は発電機(ジェネレータ)としても機能する。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0069】
例えば、上記実施の形態では、コア部材(ステータコア21)がベース20に固定され、磁石支持部材(ロータ11)がX軸を回転軸として回転する構成を採用したが、磁石支持部材がコア部材に対して相対的に回転できればよいので、この関係を逆にしてもよい。つまり、磁石支持部材がベース20に固定され、コア部材がX軸を回転軸として回転する構成を採用してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、ステータコアの上面、内周面、外周面を磁石対向面としたが、本発明はこのような形態に限られるものではない。具体的には、ステータコアの上面、下面のいずれか少なくとも一方及び内周面、外周面のいずれか少なくとも一方を磁石対向面とすればよい。この場合、ヨーク部22の形状は、端部22aのうち、凹部26と嵌合しているときに各磁石対向面に面する部分のみがR面取りされてなる形状の柱状体であるとしてもよい。
【0071】
図12(a)及び図12(b)は、ステータコアの上面、下面、及び外周面を磁石対向面とした三次元回転機の断面図の例を示す図である。同図に示す三次元回転機60でも、ステータコア61が環状の部材であり、図2及び図3に示すように、円周方向に沿って環状に配置された複数の分割コア70が連結された構造を有している点は三次元回転機1と同様である。各分割コア70はそれぞれヨーク部62とティース部63とを有しており、その形状は図4(a)及び図4(b)に示したものと同様である。ただし、三次元回転機60では、ティース部63の上面64a(アキシャル方向の一方側面)、外周面64c(ラジアル方向の他方側面)、下面64d(アキシャル方向の他方側面)がそれぞれ、磁石83a、磁石83c、磁石83dと対向する磁石対向面となっている。
【0072】
図13(a)及び図13(b)は、ヨーク部62の形状のバリエーションを示す斜視図である。なお、これらの図に示すヨーク部62の側面90a,90c,90dはそれぞれ、磁石83aとの対向面(アキシャル方向の一方側面)、磁石83cとの対向面(ラジアル方向の他方側面)、磁石83dとの対向面(アキシャル方向の他方側面)を示している。
【0073】
図13(a)は、ヨーク部22を、端部62aのうち、側面90a,90c,90dに属する部分のみがR面取りされてなる形状の柱状体とした例である。この例では、ティース部63の側面64a,64dを通じて分割コア70に出入りするアキシャル方向の磁束と、ティース部63の側面64cを通じて分割コア70に出入りするラジアル方向の磁束とに関して、磁気抵抗を低減する効果が得られる。
【0074】
図11(b)は、ヨーク部22を、側面90a,90c,90dの各全体(ティース部63との接続部分を除く。)がR面取りされてなる形状の柱状体とした例である。この例でも、ティース部63の側面64a,64dを通じて分割コア70に出入りするアキシャル方向の磁束と、ティース部63の側面64cを通じて分割コア70に出入りするラジアル方向の磁束とに関して、磁気抵抗を低減する効果が得られる。
【符号の説明】
【0075】
1 三次元回転機
10 シャフト
11 ロータ
11a ロータの円盤状部分
11b,11c ロータの円筒形部分
12a,12b,12c ロータのステータコア対向面
13a〜13c 磁石
20 ベース
20a ベースの円筒形部分
21 ステータコア
22 ヨーク部
22a 端部
23 ティース部
23a 上側突起部
23b 内側突起部
23c 外側突起部
23d 下側突起部
23bf,23cf 鍔部
24a 上側突起部の上面
24b 内側突起部の内周面
24c 外側突起部の外周面
24e 円周方向の一方側面
24f 円周方向の他方側面
25 コイル
26 凹部
30 分割コア
40 ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアル方向の一方側面とアキシャル方向の一方側面とに磁石対向面を有するティース部と、巻線が巻回される棒状のヨーク部とをそれぞれ有し、環状に配置された複数の分割コアを備え、
前記分割コアは軟磁性金属圧粉材によって構成され、
前記各分割コアの前記ヨーク部の端部は、隣接する前記分割コアの前記ティース部に設けられた凹部と嵌合し、
前記ヨーク部は、前記端部のうち、前記アキシャル方向の前記一方側面に面する部分の少なくとも一部若しくは前記ラジアル方向の前記一方側面に面する部分の少なくとも一部又はその両方がR面取りされてなる形状の柱状体であることを特徴とする回転機用コア部材。
【請求項2】
前記各分割コアの前記ティース部は、前記ラジアル方向の他方側面又は前記アキシャル方向の他方側面の少なくとも一方にも磁石対向面を有し、
前記ヨーク部を構成する柱状体は、前記端部のうち、前記ラジアル方向の他方側面又は前記アキシャル方向の他方側面の前記少なくとも一方に面する部分の少なくとも一部もR面取りされてなる形状を有することを特徴とする請求項1に記載の回転機用コア部材。
【請求項3】
前記ヨーク部を構成する柱状体は、少なくとも前記端部に辺を有しないことを特徴とする請求項2に記載の回転機用コア部材。
【請求項4】
前記端部は曲面のみによって構成されることを特徴とする請求項3に記載の回転機用コア部材。
【請求項5】
前記端部は半球面形状であることを特徴とする請求項2に記載の回転機用コア部材。
【請求項6】
前記ヨーク部を構成する柱状体は、半球面形状の前記端部を有する円柱体であることを特徴とする請求項2に記載の回転機用コア部材。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載された回転機用コア部材と、
前記各分割コアの各磁石対向面に対向する永久磁石を有する磁石支持部材とを備えることを特徴とする回転機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−226937(P2010−226937A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74634(P2009−74634)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】