説明

回転速度検出装置付き車輪用軸受装置

【課題】 回転速度検出装置のセンサを高精度に位置決めおよび固定し、さらにセンサを保護すると共にセンサとセンサホルダとの気密性を確保することができる回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】 エンコーダ20と、エンコーダ20に対向して外方部材1の端部に嵌合状態に取付けられたセンサホルダ22と、センサホルダ22のうちエンコーダ20に対向する面に設けた孔haに嵌合固定され、エンコーダ20と隙間を介し対向してエンコーダ20を検出するセンサ21と、センサ21よりもインボード側に位置する密封装置24とを設け、センサ21が、ホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングによりセンサホルダ22に一体モールドされ、センサホルダ22およびセンサ21を挟む両面の樹脂が、センサホルダ22に設けた孔haを介して繋がっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自動車のアンチロックブレーキシステムにおける相対回転する軸受部の回転速度検出装置が内蔵された車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経済成長の著しいブラジル、ロシア、インド、中国(略称:BRICs)諸国向けの自動車部品の輸出が拡大している。そのような自動車部品のうち自動車用軸受に用いられる磁気エンコーダは、磁性ゴムを用いた場合が多い。BRICsでは、まだ未舗装の悪路で自動車が運転される場合も多く、この自動車に使用される磁性ゴム製磁気エンコーダには、より耐摩耗性が要求される。このため、ゴム製磁気エンコーダの表面に非磁性材料からなる保護カバーを設ける摩耗防止策等が考案されている。
【0003】
しかし、この場合、前記保護カバーのためにゴム製磁気エンコーダの表面と、これに対向して配置される磁気センサとのギャップが大きくなるため、より磁束密度の大きな磁気エンコーダが必要になった。そこで、磁気エンコーダと回転速度検出装置とを軸受内部に内蔵した車輪用軸受装置が考案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−300289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転速度検出装置を軸受内部に内蔵した場合、回転速度検出装置のセンサは、軸受の潤滑剤であるグリースに接触する可能性がある。このため、センサをモールドして樹脂等で覆い保護する必要がある。また、センサの信号を出力するケーブルは、円環状のセンサホルダに設けた孔から軸受外部に取り出しているため、軸受外部からの水、粉塵等の浸入を防止する必要がある。
この課題を解決するため、センサと、円環状のセンサホルダとを一体でモールドすることで、ケーブルを取り出す孔をシールして気密性を確保することが考えられる。
【0006】
センサは、磁気エンコーダとのギャップを確保するために、高精度に位置決めする必要がある。このためには、モールド時に金型内に予めセンサを固定して位置決めする必要がある。しかし、金型内にセンサを高精度に位置決めすることは容易ではなく、高コスト化の要因となる。
この課題を解決するために、センサは、円環状のセンサホルダに設けた孔に嵌合することで、センサを固定および高精度に位置決めすることが考えられる。センサを予め嵌合して固定した状態とすることで、モールド時に金型内のセンサ位置の管理が容易になり、成形コストの低減が可能となる。
【0007】
回転速度検出装置のセンサを一体モールドして周りを樹脂等で覆い保護すると共に、孔をシールして気密性を確保する方法としては、センサを周知の熱硬化性のポッティング材で覆う方法がある。しかし、ポッティングでは熱硬化するための工数が余計にかかる。また、他の方法としては、射出成形によりセンサを樹脂で覆う方法がある。射出成形は比較的高温・高圧の環境下で行うため、樹脂成形のための型も、その温度・圧力に耐えるための強度を必要とする。これらは製造コスト上昇の要因となる。さらに、射出成形を行う際の圧力にセンサ自体が耐えられなかったり、成形を行う際の温度が、センサの動作保証温度の範囲を超えると、センサの性能に影響を及ぼすこともある。また、射出成形した樹脂と、センサおよびセンサホルダとの接着性が十分でなく、気密性の確保が困難なことがある。
【0008】
この発明の目的は、回転速度検出装置のセンサを高精度に位置決めおよび固定し、さらにセンサを保護すると共にセンサとセンサホルダとの気密性を確保することができる回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、内周に複列の転走面が形成され固定側部材となる外方部材と、前記各転走面に対向する転走面が外周に形成され回転側部材となる内方部材と、これら対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置において、前記内方部材のインボード側端の付近の外周に嵌合状態に取付けられ円周方向に沿って磁気特性が変化する環状のエンコーダと、このエンコーダに対向して前記外方部材の端部に嵌合状態に取付けられた円環状のセンサホルダと、このセンサホルダのうち前記エンコーダに対向する面に設けた孔に嵌合固定され、前記エンコーダと隙間を介し対向して前記エンコーダを磁気的に検出するセンサと、前記センサよりもインボード側に位置して前記センサホルダと前記内方部材との間を密封する密封装置とを設け、前記センサが、ホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされ、このセンサホルダおよび前記センサを挟む両面の樹脂が、前記センサホルダに設けた孔を介して繋がっていることを特徴とする。
【0010】
前記ホットメルトモールディングは、従来の成形法に比較して、環境負荷が低く加工性、接着性に優れた樹脂を用いて成形を行うものである。ホットメルトモールディングに用いる樹脂材料は、ポッティングに比べて低温かつ低圧で注入を行い、注入時間が短く硬化速度も速い。このため、例えば、安価なアルミニウム製等の簡易な金型でモールディングが可能で、金型の製作コストを従来品に比べて低く抑えることが可能となる。また、製造設備も一般的な射出成形に比べて耐熱・耐圧共に低いもので済むため、製造設備に要するコストも低く抑えることが可能となる。さらに、低温・低圧の環境で成形を行うため、成形を行う際のセンサに対する圧力を緩和し得ると共に、この成形時の温度を例えばセンサの動作保証温度以下にすることができる。それ故、センサが損傷する可能性も低くなり、歩留まりも向上する。また、ホットメルト型の樹脂は、接着性が良好なため、センサとセンサホルダとの気密性を良好に確保することができる。したがって、センサホルダの孔等をより確実にシールすることができ、軸受外部からの水、粉塵等の浸入を防止することが可能となる。
【0011】
前記センサが、センサホルダの孔に嵌合固定され、このセンサホルダに一体モールドされるものであるため、モールド時に金型内のセンサ位置の管理が容易になり、成形コストの低減が可能となる。さらに、センサホルダおよび前記センサを挟む両面の樹脂が、前記センサホルダに設けた孔を介して繋がっているため、センサを覆う樹脂がより強固に接着して従来技術のものより気密性の向上を図ることができる。また、センサホルダと内方部材との間を密封する密封装置を設けたため、軸受外部からの異物等によりエンコーダが摩耗するのを防止することができ、これにより正確な回転検出を行える。
【0012】
前記センサホルダの孔には、前記センサを嵌合固定する複数の突起部と、隣接する突起部間に形成される開口部とが設けられ、前記開口部に前記ホットメルト型の樹脂が充填されているものであっても良い。このようにセンサホルダの孔の突起部に、センサを嵌合固定することで、モールド時に金型内のセンサ位置の管理が容易になる。前記複数の突起部の先端部分を弾性変形させて、センサを金型内の定められたセンサ位置に容易に且つ正確に嵌合固定することができるため、製造工数の低減を図ることができる。さらに開口部にホットメルト型の樹脂が充填されているため、モールド部が繋がり、接着性が良好なホットメルト型の樹脂と相俟って気密性が向上する。
【0013】
前記エンコーダは、被検出面が前記センサのインボード側に配置されて軸方向を向くアキシアル型のエンコーダであり、前記センサは、前記エンコーダに対し軸方向隙間を介して対向するものであっても良い。
前記エンコーダが軸方向に対し円錐状の斜面を備え、前記円環状のセンサホルダが、エンコーダ軸方向に対し前記円錐状の斜面に対向し、且つ、前記センサホルダに一体モールドされたセンサが前記エンコーダのインボード側に配置するように、外方部材の端部に取り付けられたものであっても良い。この場合、エンコーダを軸受軸方向に沿った平面で切断した見た断面を三角形状にすることができ、構造を強化することができる。さらに、エンコーダの被検出面を円錐状の斜面とすることで、センサホルダと同じ軸方向位置にエンコーダが配置される。そのため、エンコーダの軸方向長さ分だけ、車輪用軸受装置全体の軸方向長さを短くでき、装置のコンパクト化が可能となる。
【0014】
前記センサが、ポリアミド系のホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされているものであっても良い。
前記センサが、ポリエステル系のホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされているものであっても良い。
前記センサが、ポリウレタン系のホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされているものであっても良い。
【0015】
前記エンコーダが、周方向に交互に磁極が並ぶ多極磁石が形成された磁気エンコーダであって、前記多極磁石は、磁性粉と熱可塑性樹脂とを含み、この磁性粉を含有する熱可塑性樹脂の溶融粘度が30Pa・s以上1500Pa・s以下であっても良い。
磁性粉を含有する熱可塑性樹脂の溶融粘度が30Pa・sよりも小さいと、成形時においてバリが多量に発生し、適切に成形することが困難になる。また、熱可塑性樹脂の溶融粘度が1500Pa・sよりも大きいと、熱可塑性樹脂に磁性粉を混練することが困難となる。とくに、磁性粉の割合を高くした場合に、混練不良が顕著となる。そこで、磁性粉を含有する熱可塑性樹脂の溶融粘度を、30Pa・s以上で、1500Pa・s以下とすることにより、生産性の良好な磁気エンコーダを得ることができる。この磁気エンコーダの生産性向上は、回転検出装置付き車輪用軸受装置の生産性向上にもつながる。
【0016】
前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリフェニレンスルフィドからなる群から選択される1以上の化合物を含むものであっても良い。
これらの熱可塑性樹脂は、軸受に潤滑剤として使用されるグリースに高温浸漬された時でも非常に膨潤量が小さい(10%以下)ので、吸水性に乏しく、低温下での結露、塩水や泥水、雨水など、水分が多い環境下においても劣化に強く、車輪用軸受装置に組み込まれる磁気エンコーダの材料として特に有効である。
【0017】
前記磁性粉がフェライト系磁性粉であっても良い。フェライト系磁性粉は酸化しにくいため、磁気エンコーダの防食性を向上させることができる。
前記磁性粉が異方性フェライト系磁性粉であっても良い。
【0018】
前記磁気エンコーダは、被検出部となる磁石が射出成形により成形されたものであっても良い。
前記磁気エンコーダのプラスチック磁石は、射出成形において磁場成形したものであっても良い。このようにプラスチック磁石を、磁場成形することにより、より磁束密度の大きなプラスチック磁気エンコーダを得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、内周に複列の転走面が形成され固定側部材となる外方部材と、前記各転走面に対向する転走面が外周に形成され回転側部材となる内方部材と、これら対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置において、前記内方部材のインボード側端の付近の外周に嵌合状態に取付けられ円周方向に沿って磁気特性が変化する環状のエンコーダと、このエンコーダに対向して前記外方部材の端部に嵌合状態に取付けられた円環状のセンサホルダと、このセンサホルダのうち前記エンコーダに対向する面に設けた孔に嵌合固定され、前記エンコーダと隙間を介し対向して前記エンコーダを磁気的に検出するセンサと、前記センサよりもインボード側に位置して前記センサホルダと前記内方部材との間を密封する密封装置とを設け、前記センサが、ホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされ、このセンサホルダおよび前記センサを挟む両面の樹脂が、前記センサホルダに設けた孔を介して繋がっている。このため、回転速度検出装置のセンサを高精度に位置決めおよび固定し、さらにセンサを保護すると共にセンサとセンサホルダとの気密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の断面図である。
【図2】同車輪用軸受装置の要部の拡大断面図である。
【図3】同車輪用軸受装置のエンコーダの正面図である。
【図4】同車輪用軸受装置のセンサホルダの孔にセンサを嵌合する状態を説明する要部の断面図である。
【図5】同車輪用軸受装置のセンサホルダの要部の拡大正面図である。
【図6】同車輪用軸受装置のセンサをホットメルトモールディングによりセンサホルダに一体モールドする方法を説明する図であり、(A)はホットメルト樹脂をキャビティに注入する段階を示す図、(B)はセンサをセンサ埋め込み突部の孔に嵌合固定する段階を示す図、(C)は前記孔の開口縁部を閉鎖する段階を示す図である。
【図7】(A)は、この発明の他の実施形態に係る車輪用軸受装置の要部の拡大断面図、(B)は図7(A)のセンサ付近の拡大断面図である。
【図8】(A)は、この発明のさらに他の実施形態に係る車輪用軸受装置の要部の拡大断面図、(B)は図8(A)のセンサ付近の拡大断面図である。
【図9】(A)はこの発明のさらに他の実施形態に係る車輪用軸受装置のセンサホルダの側面図、(B)は同センサホルダの孔を拡大して示す図、(C)は同センサホルダの孔にセンサを嵌合させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この実施形態の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、例えば、第3世代型に分類される複列のアンギュラ玉軸受型であり、内輪回転タイプでかつ駆動輪支持用のものである。ただし、この形態に限定されるものではない。この明細書において、車輪用軸受装置を車両に取付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。先ず、車輪用軸受装置について説明し、次に、回転速度検出装置について説明する。以下の説明は、回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の製造方法についての説明をも含む。
【0022】
車輪用軸受装置は、図1に示すように、外方部材1と、内方部材2と、複列の転動体3とを有する。外方部材1の内周に複列の転走面4が形成され、内方部材2の外周には、これら外方部材1の各転走面4に対向する転走面5が形成されている。これら外方部材1および内方部材2の転走面4,5間に、複列の転動体3が介在している。転動体3はボールからなり、各列毎に保持器6で保持されている。上記転走面4,5は断面円弧状であり、各転走面4,5は接触角が背面合わせとなるように形成されている。外方部材1と内方部材2との間の軸受空間のアウトボード側端は密封装置7によって密封されている。
【0023】
外方部材1は、固定側部材であって、車体の懸架装置8におけるナックル9に取付ける車体取付用のフランジ1aを外周に有し、全体が一体の部品とされている。フランジ1aには、周方向の複数箇所に車体取付用のボルト孔1aaが設けられ、インボード側からナックル9のボルト挿通孔9aに挿通したナックルボルト10を、前記フランジ1aのボルト孔1aaに螺合することにより、フランジ1aがナックル9にボルト止めされる。
【0024】
内方部材2は、回転側部材であって、ハブ輪11と、内輪12とを有する。ハブ輪11は、車輪取付用のハブフランジ11aを有する。前記内輪12は、ハブ輪11の軸部11bのインボード側端の外周に嵌合して設けられる。これらハブ輪11および内輪12に、前記各列の転走面5が形成されている。ハブ輪11のインボード側端の外周には段差を持って小径となる内輪嵌合面13が設けられ、この内輪嵌合面13に内輪12が嵌合している。ハブ輪11の中心には貫通孔14が設けられている。この貫通孔14に、等速ジョイント15の外輪16のステム部16aを挿通し、ステム部16aの基端周辺の段面と先端に螺合するナット17との間で内方部材2を挟み込むことで、車輪用軸受装置と等速ジョイント15とを連結している。
【0025】
ハブフランジ11aには、周方向複数箇所にハブボルト18の圧入孔11aaが設けられている。ハブ輪11のハブフランジ11aの根元部付近には、ブレーキロータとホイール(図示せず)を案内する円筒状のパイロット部19がアウトボード側に突出している。このパイロット部19の案内により、前記ハブフランジ11aにブレーキロータとホイールとを重ね、ハブボルト18で固定する。
【0026】
図2は、図1におけるA部の拡大断面図である。内方部材2の外周面のインボード側端には、エンコーダ20が嵌合して取付けられる。外方部材1のインボード側端には、エンコーダ20の磁束を磁気的に検出するセンサ21を埋め込んだ円環状のセンサホルダ22が取付けられる。これらエンコーダ20とセンサ21とで、エンコーダ20と一体の内方部材2の回転、つまり車輪の回転を検出する回転速度検出装置23が構成される。
【0027】
エンコーダ20は、被検出面が軸方向を向くアキシアル型の磁気エンコーダであって、円筒部20aおよび立板部20bからなる断面L字状で円環状の多極磁石の単体とされる。前記円筒部20aは、内方部材2の外周面(ここでは内輪12の外周面)に圧入して固定される。前記立板部20bは、円筒部20aの軸方向における軸受外側の端部から外径側に立ち上がる。この立板部20bの外向きの基端近傍には、環状の密封装置嵌合突部20baが設けられ、この密封装置嵌合突部20baの内周面が、密封装置24の第1のシール板25の端部外周面に嵌合する。また密封装置嵌合突部20baの外周面は、軸受内側に向かうに従って外径側に傾斜する。このような密封装置嵌合突部20baを設けたことでエンコーダ20全体の剛性を高め、これにより、エンコーダ20の表面と、これに対向して配置されるセンサ21とのギャップを正確に維持することが可能となる。
【0028】
前記多極磁石は、図3に示すように、円周方向に交互に磁極N,Sが並ぶように多極に磁化された環状の部材であり、磁性粉と、バインダとしての熱可塑性樹脂とを含む射出成形品とされる。前記磁極N,Sは、ピッチ円直径PCDにおいて、定められたピッチPとなるように形成されている。
前記熱可塑性樹脂の溶融粘度は30Pa・s以上1500Pa・s以下である。磁気エンコーダに含まれる熱可塑性樹脂の溶融粘度が30Pa・sよりも小さいと、射出成形時においてバリが多量に発生し、適切に成形することが困難となる。また、熱可塑性樹脂の溶融粘度が1500Pa・sよりも大きいと、熱可塑性樹脂に磁性粉を混練することが困難となる。特に、磁性粉の割合を高くした場合に、混練不良が顕著となる。したがって、熱可塑性樹脂の溶融粘度を上記の範囲とすることにより、生産性の良好な磁気エンコーダを得ることができる。また、回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の生産性向上にもつながる。
【0029】
磁気エンコーダに含まれる熱可塑性樹脂としては、軸受に潤滑剤として使用されるグリースに高温浸漬されたときでも非常に膨張量の小さい(10%以下)ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド11、ポニフェニレンスルフィドからなる群から選択される1以上の化合物を含むものとするのが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、吸水性が乏しいため、低温下での結露など水分が多い環境下においても劣化に強く、車輪用軸受装置に組み込まれるエンコーダ20の材料として特に有効である。
【0030】
多極磁石の材料である磁性粉としては、バリウム系やストロンチウム系のフェライト粉が用いられる。フェライト系磁性粉の場合、等方性のフェライト系磁性粉であっても異方性のフェライト系磁性粉であっても良い。このようなフェライト系磁性粉は酸化しにくいため、エンコーダ20の防食性を向上させることができる。また、フェライト系磁性粉のみでは磁力が不足する場合、サマリウム鉄系磁性粉やネオジウム鉄系磁性粉等の希土類系磁性粉を、フェライト系磁性粉に混合して使用しても良い。
【0031】
図2、図4、図5に示すように、前述のように外方部材1にはセンサホルダ22が取付けられる。このセンサホルダ22には、センサ21を位置決めし嵌合固定する孔haが形成される。センサ21は、この孔haに嵌合固定されてセンサホルダ22に埋め込まれる。このセンサホルダ22に埋め込まれたセンサ21が、エンコーダ20の立板部20bよりも軸受内側位置で、且つ、この立板部20bと定められた隙間を介して軸方向に対向する。換言すれば、エンコーダ20の立板部20bの被検出面が、センサ21のインボード側に配置され、センサ21は、同立板部20bの被検出面に対し軸方向隙間を介して対向する。
センサ21は、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子(Magneto Resistive素子;略称 MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子と、この磁気検出素子の出力波形を整える波形整形回路が組み込まれた集積回路(Integrated Circuit;略称 IC)とを有する。
円環状のセンサホルダ22は、環状の芯金26と、センサ保持体27とを有する。芯金26は、外方部材1の外周面に圧入して取付けられる外径円筒部26aと、この外径円筒部26aのインボード側端から内径側に延びる鍔部26bと、この鍔部26bの内径側端から軸方向インボード側に延びる内径円筒部26cとを有する。この芯金26は、例えば耐食性を有するステンレス鋼板等をプレス加工等して形成される。
【0032】
芯金26における内径円筒部26cの周方向複数箇所には、穿孔28が形成され、この内径円筒部26cから鍔部26bにわたる部位に、樹脂製のセンサ保持体27が一体モールド成形されている。芯金26の外径円筒部26aを外方部材1の外周面に圧入し、鍔部26bを外方部材1のインボード側端面に密着させた状態で、センサホルダ22が外方部材1のインボード側端に固定される。
【0033】
センサ21は、ホットメルト型の樹脂(「ホットメルト樹脂」と称す)を用いたホットメルトモールディングにより円環状のセンサホルダ22に一体モールドされている。
前記「ホットメルトモールディング」は、比較的低温で溶融させた無溶剤熱可塑性のホットメルト樹脂を、例えばギヤポンプや空気圧ポンプ等を用いて金型に注入する樹脂モールド成形である。
【0034】
センサ保持体27において、内径円筒部26cの周方向複数箇所の穿孔28から、径方向内方に定められた距離突出するセンサ埋め込み突部27aが設けられる。このセンサ埋め込み突部27aに、センサ21がホットメルトモールディングにより一体モールドされ、センサホルダ22および、センサ21を挟む両面(この例では軸方向両面)の樹脂が、センサホルダ22に設けた孔haを介して繋がっている。この孔haを介して繋がっている樹脂の部分を、「モールディング樹脂部J1」と称す。
【0035】
前記孔haは、センサ21の形状(つまり幅方向寸法、径方向寸法、および厚み)に合わせて、図5に示すように、例えば正面視略矩形孔状に形成されている。この例では、孔haには、センサ21を矩形孔の四隅に位置決めしたうえで、ホットメルト型の樹脂を充填するための複数の開口部h1が設けられている。この孔haは、例えば、センサ保持体27の円周方向複数箇所に設けられる。これら複数の孔haは、センサ保持体27における軸中心から半径方向に等しい距離に形成される。各孔haの底部にセンサ21が載置支持された状態で、前記複数の開口部h1および孔haの開口縁部h2が、前記モールディング樹脂部J1で閉鎖される。これにより、センサホルダ22および、センサ21を挟む両面のモールディング樹脂部J1が孔haを介して繋がる。
【0036】
ホットメルト樹脂の溶融温度としては、概ね120℃以上250℃以下、好ましくは160℃以上230℃以下程度である。ホットメルト樹脂の金型への注入圧力としては、0.2MPa以上9.8MPa以下(2kg/cm以上100kg/cm以下)、好ましくは3.43MPa(35kg/cm)以下である。また、樹脂の溶融粘度は、金型の隅々にまで溶融樹脂を行き渡らせるために、概ね1000mPa・s以上150000mPa・s(210℃)程度の樹脂を使用することが好ましい。
【0037】
ホットメルト樹脂としては、上記溶融温度および注入圧力で注入できるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系等からなる群から選択される1以上の化合物を含む樹脂を用いることができる。また、溶剤を使用しない一つの化合物、換言すれば、無溶剤一液型の熱可塑性樹脂を用いることができる。
ポリアミド系の樹脂の具体例としては、仏 TRL社のポリアミドホットメルト樹脂や、ヘンケルジャパン株式会社の「マクロメルト(商標)」等が例示される。ポリエステル系の樹脂の具体例としては、東洋紡績株式会社の「共重合ポリエステル バイロン(商標)」や、東亜合成株式会社の「アロンメルトPES(商品名)」等が例示される。ポリウレタン系の樹脂の具体的としては、ヘンケルジャパン株式会社の「マクロメルト(商標)」等が例示される。ポリオレフィン系の樹脂の具体例としては、東亜合成株式会社の「アロンメルトM D(商品名)」等が例示される。
【0038】
前記センサ21を、ホットメルトモールディングによりセンサホルダ22に一体モールドする方法等について説明する。
図6(A)に示すように、上型29と下型30とを有する金型31内に芯金26をセットして型締め後、前述の溶融させたホットメルト樹脂を、所定の注入圧力で金型31内のキャビティ32に注入する。キャビティ32は、センサ保持体27の軸中心L1回りの環状溝に形成される。キャビティ32は、センサ保持体27の大部分を成す断面矩形状の環状溝部分32aと、センサ埋め込み突部27aを成す断面矩形状の環状溝部分32bとを有する。
【0039】
溶融させたホットメルト樹脂をキャビティ32に注入するとき、センサ保持体27のセンサ埋め込み突部27aに、センサ21を位置決めし保持する前記孔haが形成される。
注入したホットメルト樹脂が硬化した後、図6(B)に示すように、上型、下型30を型開きし、センサ埋め込み突部27aの孔haにセンサ21を嵌合して固定する。この場合、孔haの底部にセンサ21の底面が載置支持された状態で、センサの四隅角部が孔haの四隅に嵌込まれる。その後、図6(C)に示すように、上型29Aおよび下型30を再び型締めし、前記孔haの複数の開口部h1および開口縁部h2を、ホットメルト樹脂で閉鎖する。これにより、図2に示すようにセンサ21がセンサホルダ22に埋め込まれる。
【0040】
図2に示すように、センサホルダ22の内周と内方部材2の外周との間の空間は、エンコーダ20よりも軸受外側位置に設置される密封装置24によって密封される。この密封装置24は、内方部材2の外周面およびセンサホルダ22の内周面にそれぞれ装着された環状の第1および第2のシール板25,34を有する。
第1のシール板25は、内方部材2の外周面に圧入して取付けられる円筒部25aと、この円筒部25aのインボード側端から外径側に延びる立板部25bとでなる断面L字状に形成されている。この第1のシール板25は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板、または防錆処理された冷間圧延鋼板等をプレス加工して形成される。
【0041】
第2のシール板34は、センサホルダ22の内周面におけるインボード側に圧入して取付けられる円筒部34aと、この円筒部34aのアウトボード側端から内径側に延びる立板部34bとでなる断面逆L字状に形成される。この第2のシール板34は、その立板部34bが第1のシール板25の立板部25bよりもアウトボード側に位置して、同立板部25bと軸方向に対面するように配置される。第2のシール板34には、サイドリップ35a、グリースリップ35b、および中間リップ35cを有するシール部材35が加硫接着されている。このシール部材35はゴム等の弾性部材からなる。前記サイドリップ35aは第1のシール板25の立板部25bに摺接し、グリースリップ35bおよび中間リップ35cは第1のシール板25の円筒部25aに摺接する。第1のシール板25の立板部25bの先端は、第2のシール板34の円筒部34aと僅かな径方向隙間を介して対向し、ラビリンスシールを構成する。この密封装置24により、外方部材1と内方部材2の間の軸受空間におけるインボード側端が密封される。
【0042】
上記構成の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置によると、車輪の回転に伴って内方部材2と一体のエンコーダ20が回転する。このとき、多極磁石と所定隙間を介して軸方向に対峙するセンサ21が、エンコーダ20の磁極N,Sの磁力の変化を読み取る。これにより、エンコーダ20とセンサ21とを有する回転速度検出装置23は、車輪の回転を検出できる。
【0043】
前記ホットメルトモールディングは、従来の成形法に比較して、環境負荷が低く加工性、接着性に優れた樹脂を用いて成形を行うものである。ホットメルトモールディングに用いる樹脂材料は、ポッティングに比べて低温かつ低圧で注入を行い、注入時間が短く硬化速度も速い。このため、例えば、安価なアルミニウム製等の簡易な金型でモールディングが可能で、金型の製作コストを従来品に比べて低く抑えることが可能となる。また、製造設備も一般的な射出成形に比べて耐熱・耐圧共に低いもので済むため、製造設備に要するコストも低く抑えることが可能となる。さらに、低温・低圧の環境で成形を行うため、成形を行う際のセンサに対する圧力を緩和し得ると共に、この成形時の温度を例えばセンサの動作保証温度以下にすることができる。それ故、センサが損傷する可能性も低くなり、歩留まりも向上する。また、ホットメルト型の樹脂は、接着性が良好なため、センサ21とセンサホルダ22との気密性を良好に確保することができる。したがって、センサホルダ22の孔ha等をより確実にシールすることができ、軸受外部からの水、粉塵等の浸入を防止することが可能となる。
【0044】
前記センサ21が、センサホルダ22の孔haに嵌合固定され、このセンサホルダ22に一体モールドされるものであるため、モールド時に金型内のセンサ位置の管理が容易になり、成形コストの低減が可能となる。さらに、センサホルダ22および前記センサ21を挟む両面のモールディング樹脂部J1が、前記センサホルダ22に設けた孔haを介して繋がっているため、センサ21を覆う樹脂がより強固に接着して従来技術のものより気密性の向上を図ることができる。また、センサホルダ22と内方部材2との間を密封する密封装置24を設けたため、軸受外部からの異物等によりエンコーダ20が摩耗するのを防止することができ、これにより正確な回転検出を行える。
【0045】
本発明の他の実施形態として、図7に示すように、回転速度検出装置23Aのうち、エンコーダ20Aは、内方部材2の外周面に圧入して固定される内周面20Aa、および軸受内側が大径となる軸方向に対し円錐状の斜面20Abを有する円環状の多極磁石の単体とされる。前記斜面20Abが被検出面となる。また、センサ保持体27Aのセンサ埋め込み突部27Aaは、先端面と軸受内側面との間の角部が、エンコーダ20Aの斜面20Abに平行な円錐状の斜面36とされている。
【0046】
センサ埋め込み突部27Aaのうち、エンコーダ20Aの斜面20Abに対向する斜面36に設けた孔haに、センサ21を嵌合して固定する。その後、前述したように、孔haの開口部h1(図5)および孔haの開口縁部h2を、ホットメルト樹脂で閉鎖する。これにより、センサホルダ22および、センサ21を挟む両面のモールディング樹脂部J1が孔haを介して繋がる。また、センサ21がセンサホルダ22に埋め込まれる。
【0047】
これらエンコーダ20Aの斜面20Abとセンサ埋め込み突部27Aaの斜面36、および密封装置24により外部からの異物の侵入を防止し、エンコーダ20Aが摩耗するのをより確実に防止できる。エンコーダ20Aの被検出面を円錐状の斜面20Abとしたので、このエンコーダ20Aを軸受軸方向に沿った平面で切断して見た断面を三角形状にすることができ、構造を強化することができる。また、センサホルダ22と同じ軸方向位置に、センサ埋め込み突部27Aaが配置されるため、エンコーダ20Aの軸方向長さ分だけ、車輪用軸受装置全体の軸方向長さを短くでき、装置のコンパクト化が可能となる。
【0048】
センサ21が、センサホルダ22の孔haに嵌合固定され、このセンサホルダ22に一体モールドされるものであるため、モールド時に金型内のセンサ位置の管理が容易になり、成形コストの低減が可能となる。さらに、センサホルダ22およびセンサ21を挟む両面の樹脂が、センサホルダ22に設けた孔haを介して繋がっているため、センサ21を覆う樹脂がより強固に接着して従来技術のものより気密性の向上を図ることができる。また、センサホルダ22と内方部材2との間を密封する密封装置24を設けたため、軸受外部からの異物等によりエンコーダ20Aが摩耗するのを防止することができ、これにより正確な回転検出を行える。
【0049】
図8の例は、センサホルダ22の芯金26に、センサ21を嵌合固定する孔haが形成されている。この芯金26の孔haにセンサ21を嵌合固定した状態でホットメルトモールディングにより、センサ21がセンサホルダ22に一体モールドされている。この場合、センサホルダ22およびセンサ21に臨む面側のモールディング樹脂部J1が、孔haの開口部h1に充填されたモールディング樹脂部J1と繋がるため、従来技術のものより気密性の向上を図れる。その他、センサ21をセンサ保持体に嵌合固定する場合に比べて工程が簡略化すると共に、金型構造が簡単化する。したがって、図2,図7のものより製造コストの低減を図ることができる。
【0050】
図9の例においては、センサホルダ22の孔haを同図に示すような突起部37と開口部38とを有するいわゆる花形形状としている。すなわち、センサホルダ22の孔haに、センサ21を嵌合固定する複数(この例では4つ)の突起部37と、隣接する突起部37,37間に形成される開口部38とが設けられ、前記開口部38にホットメルト型の樹脂が充填されている。このようにセンサホルダ22の孔haの突起部37に、センサ21を嵌合固定することで、モールド時に金型内のセンサ位置の管理が容易になる。前記複数の突起部37の先端部分を弾性変形させて、センサ21を金型内の定められたセンサ位置に容易に且つ正確に嵌合固定することができるため、製造工数の低減を図ることができる。さらに開口部38にホットメルト型の樹脂が充填されているため、モールド部が繋がり、接着性が良好なホットメルト型の樹脂と相俟って気密性が向上する。
【0051】
前記各実施形態において、エンコーダは、被検出部となる多極磁石をプラスチック磁石としても良い。このプラスチック磁石が射出成形により成形されたものであっても良い。前記プラスチック磁石は、射出成形において磁場成形したものであっても良い。この場合、例えば、金型内に磁界を発生させ、射出成形の冷却過程において着磁を行うため、二次加工としての着磁工程を低減し得る。よって製造コストを低減することができる。
このようにプラスチック磁石を、磁場成形することにより、より磁束密度の大きなプラスチック磁気エンコーダを得ることができる。このようなプラスチック磁気エンコーダを用いた場合であっても、特に、図7の構造、つまり密封装置24および円錐状の斜面36,斜面20Abを採用することにより、軸受外部からの異物等の侵入防止を図り、これによりプラスチック磁気エンコーダが摩耗するのをより確実に防止できる。図2の構造、つまり密封装置24およびラビリンス状のエンコーダ20、センサ埋め込み突部27aを採用した場合にも、同様に異物等の侵入防止を図り得る。
【0052】
この発明の車輪用軸受装置は、複列の円錐ころ軸受型のものや、従動輪支持用のものにも適用可能である。その他、内輪12のハブ輪11に対する軸方向の固定は、前記等速ジョイントによらずに、軸部11bの一部を加締めることにより結合させても良い。また、車輪用軸受装置は、内方部材が、複列の内輪と、この内輪を軸部の外周に嵌合させるハブとを有するいわゆる第2世代型のものであっても良い。車輪用軸受装置は、内方部材が、ハブ輪と、等速ジョイントの一方の継手部材である継手外輪とで構成され、これらハブ輪および継手外輪に各列の転走面が形成されるいわゆる第4世代型のものを適用しても良い。
エンコーダを、この被検出面が径方向を向くラジアル型のエンコーダとし、センサは、前記エンコーダに対し径方向隙間を介して対向するものとしても良い。
センサ保持体27に貫通状の前記孔haを設け、この孔ha内にセンサ21を位置決めする段部を設け、孔haの前記段部にセンサ21を位置決めした状態で、孔ha内に充填するモールディング樹脂部J1で前記センサ21を挟むように一体モールドしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1…外方部材
2…内方部材
3…転動体
4,5…転走面
20,20A…エンコーダ
21…センサ
22…センサホルダ
37…突起部
38…開口部
ha…孔
20Ab…斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の転走面が形成され固定側部材となる外方部材と、前記各転走面に対向する転走面が外周に形成され回転側部材となる内方部材と、これら対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置において、
前記内方部材のインボード側端の付近の外周に嵌合状態に取付けられ円周方向に沿って磁気特性が変化する環状のエンコーダと、
このエンコーダに対向して前記外方部材の端部に嵌合状態に取付けられた円環状のセンサホルダと、
このセンサホルダのうち前記エンコーダに対向する面に設けた孔に嵌合固定され、前記エンコーダと隙間を介し対向して前記エンコーダを磁気的に検出するセンサと、
前記センサよりもインボード側に位置して前記センサホルダと前記内方部材との間を密封する密封装置とを設け、
前記センサが、ホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされ、このセンサホルダおよび前記センサを挟む両面の樹脂が、前記センサホルダに設けた孔を介して繋がっていることを特徴とする回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項2】
請求項1において、前記センサホルダの孔には、前記センサを嵌合固定する複数の突起部と、隣接する突起部間に形成される開口部とが設けられ、前記開口部に前記ホットメルト型の樹脂が充填されている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記エンコーダは、被検出面が前記センサのインボード側に配置されて軸方向を向くアキシアル型のエンコーダであり、前記センサは、前記エンコーダに対し軸方向隙間を介して対向する回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記エンコーダが軸方向に対し円錐状の斜面を備え、前記円環状のセンサホルダが、エンコーダ軸方向に対し前記円錐状の斜面に対向し、且つ、前記センサホルダに一体モールドされたセンサが前記エンコーダのインボード側に配置するように、外方部材の端部に取り付けられた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記センサが、ポリアミド系のホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記センサが、ポリエステル系のホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記センサが、ポリウレタン系のホットメルト型の樹脂を用いたホットメルトモールディングにより前記円環状のセンサホルダに一体モールドされている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記エンコーダが、周方向に交互に磁極が並ぶ多極磁石が形成された磁気エンコーダであって、前記多極磁石は、磁性粉と熱可塑性樹脂とを含み、この磁性粉を含有する熱可塑性樹脂の溶融粘度が30Pa・s以上1500Pa・s以下である回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項9】
請求項8において、前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリフェニレンスルフィドからなる群から選択される1以上の化合物を含む回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、前記磁性粉がフェライト系磁性粉である回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項11】
請求項10において、前記磁性粉が異方性フェライト系磁性粉である回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項12】
請求項8ないし請求項11のいずれか1項において、前記磁気エンコーダは、被検出部となる磁石が射出成形により成形されたものである回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項13】
請求項12において、前記磁気エンコーダの磁石は、射出成形において磁場成形したものである回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−174796(P2011−174796A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38682(P2010−38682)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】