説明

回転電機

【課題】回転電機におけるシャフトの軸線に沿った方向への体格を小型化すること。
【解決手段】各界磁コイル43,48,76,77のうち、第3界磁コイル76及び第4界磁コイル77を形成する第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aが、各電機子コイル用ボビン51の径方向外側に位置する第1フランジ53にシャフト15の軸線L周りに掛装されながら巻回されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、永久磁石をロータに配設した永久磁石同期モータは、電気自動車やハイブリッド自動車などの様々な分野で駆動源として利用されている。このような永久磁石同期モータにおいて、強め界磁制御を行うことによって大きなトルクを得る一方で、弱め界磁制御を行うことによってステータとロータとの間に生じる磁束量を低減して、最大回転数を向上させることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の回転電動機は、ロータと、界磁ヨーク(界磁極)と、界磁コイルとを備えている。そして、界磁コイルに電流を供給することで、ロータ、ステータ及び界磁ヨークにより環状の磁路が形成される。そして、界磁コイルに供給される電流量を調整して、ロータを通過する磁束量を調整することで、強め界磁制御及び弱め界磁制御を可能とし、大きなトルクを得られるとともに最大回転数を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−43099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、界磁コイルは界磁コイル用ボビンに巻装されている。このため、回転電動機においては、界磁コイル用ボビンを配置するためのスペースが必要となる分、回転電動機におけるシャフトの軸線に沿った方向への体格が大型化してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、回転電機におけるシャフトの軸線に沿った方向への体格を小型化することができる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シャフトに回転可能に支持されるとともに磁気的な凸極部を有するロータと、前記ロータの凸極部の径方向外側に配置され、前記シャフトに向かって突出する複数のステータティースを有するステータコアと、前記ステータティースが挿入される電機子コイル用ボビンと、前記電機子コイル用ボビンの外周に集中巻きされる電機子コイルと、界磁コイルの通電に伴い少なくとも前記ロータと前記ステータコアと共に界磁磁路を形成する磁路形成部材と、を備えた回転電機であって、前記電機子コイル用ボビンは、前記電機子コイルが巻回される筒状のコイル巻回部と、前記電機子コイルにおける前記ステータコアの径方向への移動を規制する一対のフランジとから構成され、各ステータティースに設けられた前記電機子コイル用ボビンの径方向外側に位置するフランジに、前記界磁コイルが前記シャフトの軸線周りに掛装されながら巻回されていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、各電機子コイル用ボビンの径方向外側に位置するフランジに界磁コイルがシャフトの軸線周りに掛装されながら巻回されているため、回転電機において、電機子コイル用ボビンの径方向外側に存在するデッドスペースを有効利用しながら界磁コイルを配置することができ、界磁コイル用ボビンを極力減らすことができる。その結果、回転電機において、界磁コイル用ボビンを配置するためのスペースを極力減らすことができ、回転電機におけるシャフトの軸線に沿った方向への体格を小型化することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記電機子コイル用ボビンにおける前記界磁コイルが巻回されたフランジには、前記界磁コイルが係合する係合凹部が形成されていることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、界磁コイルがフランジに巻き付けられる際に、界磁コイルが係合凹部に係合されるため、この界磁コイルと係合凹部との係合により、界磁コイルがフランジに対して位置決めされる。よって、フランジに対する界磁コイルの整列巻きが容易に行える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記電機子コイル用ボビンにおける前記界磁コイルが巻回されたフランジには、径方向外側に突出し、前記シャフトの軸方向において離間する一対の規制用突起が設けられていることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、一対の規制用突起により、界磁コイルがフランジから外方へ脱落してしまうことを規制することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、回転電機におけるシャフトの軸線に沿った方向への体格を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態におけるモータの側断面図。
【図2】モータの縦断面図。
【図3】モータの一部を拡大して示す側断面図。
【図4】(a)は電機子コイル用ボビンを一端開口部側から見た斜視図、(b)は電機子コイル用ボビンを他端開口部側から見た斜視図。
【図5】別の実施形態における界磁極を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を回転電機としてのモータ(回転電動機)に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、モータ10のハウジング11は、円筒状のコアバック12と、コアバック12の一端(図1の左端)に連結された有底円筒状の第1ハウジング13と、コアバック12の他端(図1の右端)に連結された有底円筒状の第2ハウジング14とからなる。第1ハウジング13及び第2ハウジング14は非磁性材料からなる。コアバック12は磁性体であるとともに、本実施形態では粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から形成されている。第1ハウジング13の底壁には貫通孔13aが形成されている。ハウジング11内には、主電動機部Mが収容されている。
【0016】
コアバック12内には主電動機部Mの一部を構成するシャフト15が収容されている。シャフト15は、軟磁性材料(例えば鉄やケイ素鋼等)から形成されるとともに略円柱状をなしている。シャフト15は、第1ハウジング13及び第2ハウジング14にベアリング16,17を介して回転可能に支持されている。シャフト15の一端(図1の左端)は貫通孔13aを介してハウジング11外へ突出している。
【0017】
コアバック12の内周面には主電動機部Mの一部を構成するステータ20(固定子)が固定されている。ステータ20は、コアバック12の内周面に固定された円環状のステータコア21と、電機子コイル22とから構成されている。コアバック12は、ステータコア21の外周面を全周に亘って覆うとともに、ステータコア21の外周面とコアバック12の内周面とは密着されている。このため、ステータコア21とコアバック12とは磁気的に接続されている。ステータコア21は、複数枚の鋼板をシャフト15の軸線Lに沿った方向に積層して構成されている。
【0018】
図2に示すように、ステータコア21には、シャフト15に向けて突出する複数のステータティース21aがステータコア21の周方向に等間隔おきで設けられている。各ステータティース21aの先端面はいずれも同一周面上に位置している。各ステータティース21aには、絶縁性樹脂材料よりなる電機子コイル用ボビン51が装着されている。そして、電機子コイル22は、導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる電機子コイル用導線22aが電機子コイル用ボビン51に集中巻きにて複数回巻回されて形成されている。なお、電機子コイル22は、U相、V相及びW相のいずれかとされており、それぞれ位相の異なる電流が供給されることにより、回転磁界を発生させるようになっている。
【0019】
図1に示すように、ステータ20の内側には主電動機部Mの一部を構成するロータ30(回転子)が設けられている。ロータ30は、シャフト15に止着されたロータコア31を有している。ロータコア31は、シャフト15の軸線L周りでシャフト15と一体的に回転可能になっている。シャフト15の外周面とロータコア31の内周面とは密着されている。このため、シャフト15とロータコア31とは磁気的に接続されている。ロータコア31は、軟磁性材料からなる複数枚の鋼板を軸線Lに沿った方向に積層して構成されている。よって、ロータコア31内において、磁束が軸線Lに沿った方向よりも軸線Lに直交するロータコア31の径方向及び周方向へ流れ易くなっている。
【0020】
また、ロータコア31における軸線Lに沿った方向の長さは、ステータコア21における軸線Lに沿った方向の長さと同じになっている。よって、軸線Lに沿った方向における電機子コイル22のコイルエンドは、ロータコア31の両端よりも外側に突出している。
【0021】
図2に示すように、ロータコア31は、径方向外側へ向けて突出する凸極部としての複数のロータティース31aが、ロータコア31の周方向に等間隔おきで設けられている。各ロータティース31aの先端面はいずれも同一周面上に位置している。各ロータティース31aの先端面とステータティース21aの先端面との間には僅かな隙間が形成されている。そして、ロータティース31aとステータティース21aとはこの隙間を介して磁気的に接続されている。
【0022】
したがって、本実施形態では、シャフト15、ステータ20及びロータ30により主電動機部Mが構成されている。
図1に示すように、コアバック12の一端開口部には、界磁磁束を発生させるための第1界磁極41が配設されている。第1界磁極41は、円環状の第1界磁コア42と界磁コイルとしての第1界磁コイル43とから構成されている。第1界磁コア42は、磁性材料からなる複数枚の鋼板を軸線Lに沿った方向に積層して構成されている。第1界磁コア42における第1ハウジング13とは反対側の端面42aには第1界磁コイル用ボビン44が固着されている。そして、第1界磁コイル43は、導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる第1界磁コイル用導線43aが第1界磁コイル用ボビン44に複数回巻回されて形成されている。
【0023】
第1界磁コア42は、第1界磁コア42の外周部42bがコアバック12の一端開口部に凹設された凹部12aに嵌合され、コアバック12に固定されている。第1界磁コア42がコアバック12に固定された状態において、第1界磁コア42の外周部42bはコアバック12に対して密着されている。このため、第1界磁コア42とコアバック12とは磁気的に接続されている。また、第1界磁コア42の内側にはシャフト15が挿通されており、第1界磁コア42の内周面とシャフト15の外周面との間には僅かな隙間が形成されている。そして、第1界磁コア42とシャフト15とはこの隙間を介して磁気的に接続されている。
【0024】
コアバック12の他端開口部には、界磁磁束を発生させるための第2界磁極46が配設されている。第2界磁極46は、円環状の第2界磁コア47と界磁コイルとしての第2界磁コイル48とから構成されている。第2界磁コア47は、磁性材料からなる複数枚の鋼板を軸線Lに沿った方向に積層して構成されている。第2界磁コア47における第2ハウジング14とは反対側の端面47aには第2界磁コイル用ボビン49が固着されている。そして、第2界磁コイル48は、導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる第2界磁コイル用導線48aが第2界磁コイル用ボビン49に複数回巻回されて形成されている。
【0025】
第2界磁コア47は、第2界磁コア47の外周部47bがコアバック12の他端開口部に凹設された凹部12bに嵌合され、コアバック12に固定されている。第2界磁コア47がコアバック12に固定された状態において、第2界磁コア47の外周部47bはコアバック12に対して密着されている。このため、第2界磁コア47とコアバック12とは磁気的に接続されている。また、第2界磁コア47の内側にはシャフト15が挿通されており、第2界磁コア47の内周面とシャフト15の外周面との間には僅かな隙間が形成されている。そして、第2界磁コア47とシャフト15とはこの隙間を介して磁気的に接続されている。
【0026】
次に、電機子コイル用ボビン51について詳しく説明する。
図4(a)及び(b)に示すように、電機子コイル用ボビン51は、電機子コイル用導線22aが巻回される四角筒状のコイル巻回部52と、コイル巻回部52の一端開口部52aの開口縁全周から外方に向けて延びる四角環状の第1フランジ53と、他端開口部52bの開口縁全周から外方に向けて延びる四角環状の第2フランジ54とを有している。すなわち、第1フランジ53及び第2フランジ54は、コイル巻回部52の外周面にコイル巻回部52の軸方向において離間して形成される一対のフランジである。
【0027】
電機子コイル22は、コイル巻回部52の外周面における第1フランジ53と第2フランジ54とで挟まれた領域に電機子コイル用導線22aが集中巻きにて巻回されることで形成されている。そして、第1フランジ53及び第2フランジ54によって、電機子コイル22におけるコイル巻回部52の軸方向(電機子コイル22におけるステータコア21の径方向)への移動が規制されている。
【0028】
コイル巻回部52の内側にはステータティース21aがコイル巻回部52の一端開口部52a側から挿入可能になっている。コイル巻回部52におけるコイル巻回部52の軸方向に沿った方向の長さは、ステータティース21aの突出方向の長さよりも短くなっており、ステータティース21aがコイル巻回部52の内側に挿入されることで、電機子コイル用ボビン51がステータティース21aに装着される。
【0029】
電機子コイル用ボビン51が各ステータティース21aに装着された状態において、第1フランジ53と第2フランジ54とはシャフト15の軸線Lに沿って互いに平行に延びるように設けられている。第1フランジ53は、第2フランジ54よりも径方向外側に位置している。第1フランジ53のシャフト15の軸線Lに沿った長さは、第2フランジ54のシャフト15の軸線Lに沿った長さよりも長くなっている。
【0030】
第1フランジ53における径方向外側の一端面53aであって、第1フランジ53におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向の一端寄りには、径方向外側に突出し、シャフト15の軸線Lに沿った方向において離間する一対の規制用突起としての第1規制用突起61及び第2規制用突起62が設けられている。
【0031】
第1規制用突起61における第2規制用突起62とは反対側の面61aは、第1フランジ53におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向に延びる第1フランジ53の第1側縁部53c及び第2側縁部53dの一端部同士を繋ぐ第3側縁部53eに連なるように設けられている。また、図3に示すように、第2規制用突起62における第1規制用突起61とは反対側の面62aは、コイル巻回部52の一端開口部52aに連なるように設けられている。
【0032】
図4(a)に示すように、第1フランジ53の一端面53aにおける第1規制用突起61と第2規制用突起62とに挟まれた領域には、係合凹部としての複数の第1係合凹部71がシャフト15の軸線Lに沿った方向に連なるように形成されている。各第1係合凹部71は、第1フランジ53の第1側縁部53cと第2側縁部53dとを繋ぐように直線状に延びるように形成されている。また、各第1係合凹部71は、第1フランジ53の一端面53aから第1フランジ53におけるコイル巻回部52側の他端面53b側に向けて弧状に湾曲するように凹んでいる。
【0033】
シャフト15の軸線Lに沿った方向において、各第1係合凹部71のうちの最も一端に位置する第1係合凹部71は、第1規制用突起61における第2規制用突起62と対向する面61bに連続するように設けられている。また、シャフト15の軸線Lに沿った方向において、各第1係合凹部71のうちの最も他端に位置する第1係合凹部71は、第2規制用突起62における第1規制用突起61と対向する面62bに連続するように設けられている。
【0034】
第1フランジ53の一端面53aであって、第1フランジ53におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向の他端寄りには、径方向外側に突出し、シャフト15の軸線Lに沿った方向において離間する一対の規制用突起としての第3規制用突起66及び第4規制用突起67が設けられている。
【0035】
第3規制用突起66における第4規制用突起67とは反対側の面66aは、第1フランジ53の第1側縁部53c及び第2側縁部53dの他端部同士を繋ぐ第4側縁部53fに連なるように設けられている。また、第4規制用突起67における第3規制用突起66とは反対側の面67aは、コイル巻回部52の一端開口部52aに連なるように設けられている。
【0036】
第1フランジ53の一端面53aにおける第3規制用突起66と第4規制用突起67とに挟まれた領域には、係合凹部としての複数の第2係合凹部72がシャフト15の軸線Lに沿った方向に連なるように形成されている。各第2係合凹部72は、第1フランジ53の第1側縁部53cと第2側縁部53dとを繋ぐように直線状に延びるように形成されている。また、各第2係合凹部72は、第1フランジ53の一端面53aから第1フランジ53におけるコイル巻回部52側の他端面53b側に向けて弧状に湾曲するように凹んでいる。
【0037】
シャフト15の軸線Lに沿った方向において、各第2係合凹部72のうちの最も他端に位置する第2係合凹部72は、第3規制用突起66における第4規制用突起67と対向する面66bに連続するように設けられている。また、シャフト15の軸線Lに沿った方向において、各第2係合凹部72のうちの最も一端に位置する第2係合凹部72は、第4規制用突起67における第3規制用突起66と対向する面67bに連続するように設けられている。
【0038】
図2に示すように、各電機子コイル用ボビン51は、シャフト15の軸線L周りに略同心円上に配置されている。そして、各電機子コイル用ボビン51の各第1係合凹部71及び各第2係合凹部72には、導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aが、各第1係合凹部71及び各第2係合凹部72に係合されるようにシャフト15の軸線L周りに掛装されながら巻回されている。
【0039】
図3に示すように、第3界磁コイル用導線76aは、各第1係合凹部71に対して巻回されるとともに、続けて、第1係合凹部71に巻回された第3界磁コイル用導線76a同士の間に形成される各凹部761aを通過するように複数回巻回されている。よって、第1規制用突起61と第2規制用突起62との間に第3界磁コイル76が形成されている。すなわち、第3界磁コイル76は、電機子コイル22よりも径方向外側に配置されている。
【0040】
また、第4界磁コイル用導線77aは、各第2係合凹部72に対して巻回されるとともに、続けて、第2係合凹部72に巻回された第4界磁コイル用導線77a同士の間に形成される各凹部771aを通過するように複数回巻回されている。よって、第3規制用突起66と第4規制用突起67との間に第4界磁コイル77が形成されている。すなわち、第4界磁コイル77は、電機子コイル22よりも径方向外側に配置されている。
【0041】
次に、本実施形態のモータ10の作用について、各界磁コイル43,48,76,77に電流が供給された際に形成される磁路(界磁磁束の流れ)を中心に説明する。尚、ハウジング11の外周面には、各界磁コイル43,48,76,77に電流を供給するための端子台T(図1において二点鎖線で示す)が設けられており、各界磁コイル用導線43a,48a,76a,77aの始端(図示せず)はハウジング11外部へ引き出されて端子台Tに電気的に接続されている。
【0042】
図1に示すように、各界磁コイル43,76に電流が供給されることにより第1界磁コア42に発生された界磁磁束は、矢印Y1に示すようにシャフト15に向かって流れる。そして、界磁磁束は、磁気的空隙(ギャップ)を通してシャフト15に流れる。さらに、界磁磁束は、矢印Y2に示すようにシャフト15内を軸線Lの方向に流れ、矢印Y3に示すようにシャフト15の軸線Lに直交する方向へ流れてロータコア31(ロータティース31a)を外径側に流れてステータコア21(ステータティース21a)を通過する。さらに、界磁磁束は、矢印Y4に示すようにコアバック12を第1界磁極41へ向かって誘導される。
【0043】
このようにして、第1界磁コア42、シャフト15、ロータ30、ステータ20(ステータコア21)及びコアバック12による界磁磁路が形成される。よって、本実施形態では、コアバック12、シャフト15及び第1界磁コア42は、ロータ30及びステータ20(ステータコア21)と共に界磁磁路を形成する磁路形成部材として機能する。
【0044】
同様に、各界磁コイル48,77に電流が供給されることにより第2界磁コア47に発生された界磁磁束は、矢印Y11に示すようにシャフト15に向かって流れる。そして、界磁磁束は、磁気的空隙(ギャップ)を通してシャフト15に流れる。さらに、界磁磁束は、矢印Y12に示すようにシャフト15内を軸線Lの方向に流れ、矢印Y13に示すようにシャフト15の軸線Lに直交する方向へ流れてロータコア31(ロータティース31a)を外径側に流れてステータコア21(ステータティース21a)を通過する。さらに、界磁磁束は、矢印Y14に示すようにコアバック12を第2界磁極46へ向かって誘導される。
【0045】
このようにして、第2界磁コア47、シャフト15、ロータ30、ステータ20(ステータコア21)及びコアバック12による界磁磁路が形成される。よって、本実施形態では、コアバック12、シャフト15及び第2界磁コア47は、ロータ30及びステータ20と共に界磁磁路を形成する磁路形成部材として機能する。
【0046】
このように、本実施形態のモータ10では、環状(ループ状)の磁路(界磁磁束の流れ)が形成され、ロータ30のロータティース31aは、界磁磁束によってN極の極性を持つことになり、ロータティース31a(界磁磁束)が、永久磁石同期モータにおけるロータに配設された永久磁石と同様の働きを持つことになる。
【0047】
また、本実施形態のモータ10では、各界磁コイル43,48,76,77に流す電流量を増加させることで界磁磁束を増加させ、より大きなトルクを得ることができる。その一方で、本実施形態のモータ10では、高速回転時において各界磁コイル43,48,76,77に流す電流量を減少させることで界磁磁束を減少させ、最大回転数を向上させることができる。すなわち、本実施形態のモータ10では、強め界磁制御のみによって最大トルク及び最大回転数を向上させることができる。したがって、本実施形態のモータ10では、ロータ30に永久磁石を配設した場合に必要な弱め界磁制御が不要となり、その構成を簡略化できる。
【0048】
また、第1界磁コア42及び第2界磁コア47に界磁磁束を発生させるために必要な各界磁コイル43,48,76,77のうち、第3界磁コイル76及び第4界磁コイル77が各電機子コイル用ボビン51の第1フランジ53に巻装されている。このため、第1界磁コア42及び第2界磁コア47に十分な界磁磁束を発生させるために必要である第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aを第1界磁コイル用ボビン44及び第2界磁コイル用ボビン49に巻回させる必要が無い。その結果、第1界磁コイル用ボビン44及び第2界磁コイル用ボビン49におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向の体格が抑えられ、モータ10におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向への体格が抑えられている。
【0049】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)各界磁コイル43,48,76,77のうち、第3界磁コイル76及び第4界磁コイル77を形成する第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aが、各電機子コイル用ボビン51の径方向外側に位置する第1フランジ53にシャフト15の軸線L周りに掛装されながら巻回されている。よって、ハウジング11内における電機子コイル用ボビン51の径方向外側に存在するデッドスペースを有効利用しながら各界磁コイル76,77を配置することができ、界磁コイル用ボビンを極力減らすことができる。その結果、ハウジング11内において、界磁コイル用ボビンを配置するためのスペースを極力減らすことができ、モータ10におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向への体格を小型化することができる。
【0050】
(2)第1フランジ53には、第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aが係合する第1係合凹部71及び第2係合凹部72が形成されている。よって、第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aが第1フランジ53に巻き付けられる際に、第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aが第1係合凹部71及び第2係合凹部72に係合される。このため、この第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aと第1係合凹部71及び第2係合凹部72との係合により、第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aが第1フランジ53に対して位置決めされる。よって、第1フランジ53に対する第3界磁コイル用導線76a及び第4界磁コイル用導線77aの整列巻きが容易に行える。
【0051】
(3)第1フランジ53におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向の一端寄りには、径方向外側に突出し、シャフト15の軸線Lに沿った方向において離間する第1規制用突起61及び第2規制用突起62が設けられている。また、第1フランジ53におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向の他端寄りには、径方向外側に突出し、シャフト15の軸線Lに沿った方向において離間する第3規制用突起66及び第4規制用突起67が設けられている。よって、第1規制用突起61及び第2規制用突起62により、第3界磁コイル用導線76aが第1フランジ53から外方へ脱落してしまうことを規制することができ、第3規制用突起66及び第4規制用突起67により、第4界磁コイル用導線77aが第1フランジ53から外方へ脱落してしまうことを規制することができる。
【0052】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、第1界磁極41及び第2界磁極46を図5に示す界磁極90の構成にしてもよい。図5に示すように、界磁極90は、磁性体よりなる界磁コア91と界磁コイル92とを備えている。界磁コア91は、円環状に形成されシャフト15を挿通するための固定部91aと、この固定部91aから軸線Lに直交し、且つ軸線Lから外側へ向けて放射状に延びる複数本の腕部91bとを備えている。各腕部91bは等間隔に配置されている。各腕部91bにおいてシャフト15(固定部91a)側には、それぞれ導線が巻回されて界磁コイル92が形成されている。これによれば、界磁コイル用ボビンを削除することができ、モータ10におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向への体格をさらに小型化することができる。
【0053】
○ 実施形態において、第1界磁コイル43及び第2界磁コイル48を削除してもよい。この場合、第3界磁コイル76及び第4界磁コイル77により、第1界磁コア42及び第2界磁コア47に十分な界磁磁束を発生させることができる必要がある。これによれば、界磁コイル用ボビンを削除することができ、モータ10におけるシャフト15の軸線Lに沿った方向への体格をさらに小型化することができる。
【0054】
○ 実施形態において、ロータコア31は、鋼板(電磁鋼板)を複数枚積層して構成が、これに限らず、ロータコア31をSMCや鉄塊などの磁性体で構成してもよい。同様に、各界磁コア42,47もSMCや鉄塊などの磁性体で構成してもよい。
【0055】
○ 実施形態において、各規制用突起61,62,66,67のいずれか、又は全てを削除してもよい。これにより、ボビンの成形を容易にすることができる。
○ 実施形態において、各係合凹部71,72を削除してもよい。
【0056】
○ 実施形態において、各電機子コイル用ボビン51は内径側と外径側とで別体としてもよい。これにより、ボビンの成形を容易にすることができる。
○ 実施形態において、ステータ20のステータティース21aの数は適宜変更してもよい。また、ロータ30のロータティース31aの数は適宜変更してもよい。
【0057】
○ 実施形態において、第1界磁極41のみ、あるいは、第2界磁極46のみ設けてもよい。すなわち、軸線L方向の片側のみに界磁極を設けてもよい。
○ 実施形態において、シャフト15を介して界磁磁路を形成したが、これに限らず、シャフト15を介さずに界磁磁路を形成してもよい。シャフト15に、シャフト15よりも磁気抵抗の小さい磁性体を設けて界磁磁路としてもよい。磁性体としては例えばSMCなどでもよい。
【0058】
○ 実施形態において、凸極部としてのロータティース31aは形状的に凸形状であったが、この構成に限らず、磁気的に凸極性があればよい。例えば、ロータティースの先端のみが隣接するロータティースと連結されていたり、ロータティース間の凹部が非磁性体で埋められたりして、全体としてロータが円筒状でもよい。
【0059】
○ 実施形態において、コアバック12はSMCで形成されていたが、これに限らず、鉄塊などの磁性体であってもよい。
○ 実施形態では回転電機としてモータ10に具体化したが、これに限ることなく発電機として用いてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…回転電機としてのモータ、12…磁路形成部材として機能するコアバック、15…シャフト、21…ステータコア、21a…ステータティース、22…電機子コイル、30…ロータ、31a…凸極部としてのロータティース、42…磁路形成部材として機能する第1界磁コア、43…界磁コイルとしての第1界磁コイル、47…磁路形成部材として機能する第2界磁コア、48…界磁コイルとしての第2界磁コイル、51…電機子コイル用ボビン、52…コイル巻回部、53…一対のフランジの一方である第1フランジ、54…一対のフランジの他方である第2フランジ、61…一対の規制用突起のうちの一方である第1規制用突起、62…一対の規制用突起のうちの他方である第2規制用突起、66…一対の規制用突起のうちの一方である第3規制用突起、67…一対の規制用突起のうちの他方である第4規制用突起、71…係合凹部としての第1係合凹部、72…係合凹部としての第2係合凹部、76…界磁コイルとしての第3界磁コイル、77…界磁コイルとしての第4界磁コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに回転可能に支持されるとともに磁気的な凸極部を有するロータと、
前記ロータの凸極部の径方向外側に配置され、前記シャフトに向かって突出する複数のステータティースを有するステータコアと、
前記ステータティースが挿入される電機子コイル用ボビンと、
前記電機子コイル用ボビンの外周に集中巻きされる電機子コイルと、
界磁コイルの通電に伴い少なくとも前記ロータと前記ステータコアと共に界磁磁路を形成する磁路形成部材と、を備えた回転電機であって、
前記電機子コイル用ボビンは、前記電機子コイルが巻回される筒状のコイル巻回部と、前記電機子コイルにおける前記ステータコアの径方向への移動を規制する一対のフランジとから構成され、
各ステータティースに設けられた前記電機子コイル用ボビンの径方向外側に位置するフランジに、前記界磁コイルが前記シャフトの軸線周りに掛装されながら巻回されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記電機子コイル用ボビンにおける前記界磁コイルが巻回されたフランジには、前記界磁コイルが係合する係合凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記電機子コイル用ボビンにおける前記界磁コイルが巻回されたフランジには、径方向外側に突出し、前記シャフトの軸方向において離間する一対の規制用突起が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−182944(P2012−182944A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45313(P2011−45313)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】