説明

図形検証方法及び装置

【課題】電子デバイスを製造する際に、設計段階において、素子を構成する全層に共通する相対的な基準値(第1の値)を用いて極めて効率良く迅速にホットスポットを抽出することを可能とし、信頼性の高い電子デバイスを実現する。
【解決手段】グルーピング部2で分類されたデザイン図形に対して露光シミュレーションを行い、各デザイン図形のシミュレーション図形を作成し、作成されたシミュレーション図形のスペース及び幅を測定し、各デザイン図形について、シミュレーション図形の測定されたスペース及び幅に基づいてヒストグラムを作成し、ヒストグラムに基づいてホットスポットを判定して、デザイン図形のホットスポット周辺のレイアウトを修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、磁気素子等の各種電子デバイスの製造における素子パターンの形成に用いられる図形検証方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子デバイス、例えば半導体素子を製造する際には、素子パターンが所望の形成状態とならない危険部位であるホットスポットを、半導体素子の設計段階で指摘する技術が採用されている。
具体的には、素子パターンを形成するためのデザイン図形の露光(光強度)シミュレーションを行って素子パターンの形成状態を予測する。シミュレーション結果に基づいて、半導体素子を構成する層(レイヤー)毎に、シミュレーション図形間のスペース又はシミュレーション図形の幅を、デザイン図形と比較して一定の範囲内にあるか否かを経験的な絶対値で評価し、ホットスポットを抽出する。そして、抽出されたホットスポットに基づいて、デザイン図形のレイアウトを修正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−57948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の手法では、上記のように、ホットスポットの評価に経験的な絶対値を用いる。そのため的確な絶対値の決定は困難であり、ホットスポットを正確に抽出することは難しい。また、近年のLSIのレイアウトに必要なファイルのサイズは数10GBに達しており、ホットスポットを解消するためのレイアウトの修正には長時間を必要とする。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電子デバイスを製造する際に、設計段階において、素子を構成する全層に共通する相対的な基準値(第1の値)を用いて極めて効率良く迅速にホットスポットを抽出することを可能とし、信頼性の高い電子デバイスを実現することができる図形検証方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図形検証方法の一態様は、複数のデザイン図形のシミュレーションを行って複数のシミュレーション図形を作成する工程と、前記各デザイン図形について共通に規定された第1の値を、前記各シミュレーション図形で第2の値として測定する工程と、測定された前記第2の値のヒストグラムを作成する工程と、前記ヒストグラムにおいて所定範囲を逸脱する前記第2の値の対応する前記各デザイン図形の部位を危険部位と判定する工程とを含む。
【0007】
図形検証装置の一態様は、複数のデザイン図形のシミュレーションを行って複数のシミュレーション図形を作成するシミュレーション部と、前記各デザイン図形について共通に規定された第1の値を、前記各シミュレーション図形で第2の値として測定する測定部と、測定された前記第2の値のヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、前記ヒストグラムにおいて所定範囲を逸脱する前記第2の値の対応する前記各デザイン図形の部位を危険部位と判定する危険部位判定部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
上記した各態様によれば、電子デバイスを製造する際に、設計段階において、素子を構成する全層に共通する相対的な基準値(第1の値)を用いて極めて効率良く迅速にホットスポットを抽出することを可能とし、信頼性の高い電子デバイスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態による図形検証装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による図形検証方法をステップ順に示すフロー図である。
【図3】図2のステップS1を詳述するフロー図である。
【図4】図2のステップS1を説明するための模式図である。
【図5】図2のステップS2を詳述するフロー図である。
【図6】図2のステップS2を説明するための模式図である。
【図7】図2のステップS2を詳述するフロー図である。
【図8】図2のステップS2を説明するための模式図である。
【図9】図2のステップS3、及びスペースに関するステップS4を詳述するフロー図である。
【図10】小グループA,B,Cのシミュレーション図形の一例を示す模式図である。
【図11】図2のスペースに関するステップS5を説明するための模式図である。
【図12】図2のスペースに関するステップS6を詳述するフロー図である。
【図13】図2のスペースに関するステップS6を説明するための模式図である。
【図14】図2のスペースに関するステップS6を説明するための模式図である。
【図15】図2の幅に関するステップS4を詳述するフロー図である。
【図16】小グループA,B,Cのシミュレーション図形の一例を示す模式図である。
【図17】図2の幅に関するステップS5を説明するための模式図である。
【図18】図2の幅に関するステップS6を説明するための模式図である。
【図19】図2の幅に関するステップS6を説明するための模式図である。
【図20】図2の幅に関するステップS6を説明するための模式図である。
【図21】図2のスペース及び幅に関するステップS6を説明するための模式図である。
【図22】図2のスペース及び幅に関するステップS6を説明するための模式図である。
【図23】図2のステップS7を詳述するフロー図である。
【図24】図2のステップS7を説明するための模式図である。
【図25】本実施形態におけるデザイン図形のレイアウト修正におけるデータの流れを、一般的なレイアウト修正におけるデータの流れと共に示す模式図である。
【図26】一般的なコンピュータの内部構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態による図形検証方法は、主に以下の第1〜第3の段階で構成されており、更に第4の段階が付加される。
【0011】
(1)第1の段階(デザイン図形のグルーピング)
LSIの各層は、それぞれ独立した異なる製造プロセスで製造される。これに対して、設計原図における設計パターンであるデザイン図形と、当該デザイン図形を露光シミュレーションしたシミュレーション図形との相違の程度を調べる点においては、製造プロセスには依存しない。本実施形態では、このことを利用して、LSIの全層のデザイン図形に共通の基準、具体的にはデザイン図形の配置及び形状で分類する。
【0012】
対向するシミュレーション図形間のスペース(シミュレーション図形と、当該シミュレーション図形と対向する他のシミュレーション図形との離間距離)を検証するために、LSIの全層に存するデザイン図形を対向する他のデザイン図形との離間距離が等しいものごとに大グループに分類する。
更に、当該デザイン図形の、他のデザイン図形と対向する部分の辺の長さが等しいものごとに小グループに分類して、そのシンボリックリンクを記憶部(コンピュータメモリ)に格納する。
【0013】
シミュレーション図形の幅を検証するために、LSIの全層に存するデザイン図形を、対向する他のデザイン図形との離間距離が等しいものごとに大グループに分類する。
更に、他のデザイン図形の、当該デザイン図形と対向する部分の辺の長さが等しいものごとに小グループに分類して、そのシンボリックリンクをコンピュータメモリに格納する。
【0014】
(2)第2の段階(ヒストグラムの作成)
デザイン図形に対して露光シミュレーションを行い、各デザイン図形のシミュレーション図形を作成する。各大グループにおいて、小グループごとにシミュレーション図形のスペース及び幅を測定する。当該測定値に基づいてヒストグラムを作成する。
【0015】
(3)第3の段階(ホットスポットの判定)
危険部位(ホットスポット)を検出するための相対値である所定範囲、例えば標準偏差を逸脱する測定値の箇所を、ホットスポットとして認定する。例えば、ホットスポットを中心とする3μm四方の領域に含まれるデザイン図形をLSIレイアウトデータベースから抽出し、修正領域対象としてコンピュータメモリに格納する。
【0016】
(4)第4の段階(デザイン図形の修正)
修正対象領域を順次に取り出し、デザイン図形のホットスポット周辺のレイアウトを修正する。
修正対象領域はキャッシュメモリに収まるサイズであるため、レイアウト修正作業はすべてキャッシュメモリ上で高速に行うことができる。
【0017】
以下、図面を参照して本実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態による図形検証装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態による図形検証方法をステップ順に示すフロー図である。
【0018】
この図形検証装置は、リソグラフィーにより形成されるデバイスパターンをデータ上で検証するものである。
図1に示すように、1は、予め規定された良否基準に従って各デザイン図形の良否を判定し、良否基準に違反するデザイン図形を選別する図形選別部である。2は、図形選別部で選別されたデザイン図形を、予め規定された第1の値、ここでは当該デザイン図形の配置及び形状で分類するグルーピング部である。3は、デザイン図形に対して露光シミュレーションを行い、各デザイン図形のシミュレーション図形を作成するシミュレーション部である。4は、シミュレーション図形のスペース及び幅を測定する測定部である。5は、シミュレーション図形の測定されたスペース及び幅に基づいてデザイン図形のヒストグラムを作成するヒストグラム作成部である。6は、ホットスポットを検出するための相対値である所定範囲、例えば標準偏差を逸脱する測定値の箇所を、ホットスポットとして認定するホットスポット判定部である。7は、デザイン図形のホットスポット周辺のレイアウトを修正する図形修正部である。8は、各デザイン図形のデータが格納される記憶部である。
【0019】
図形選別部1、グルーピング部2、シミュレーション部3、測定部4、ヒストグラム作成部5、ホットスポット判定部6、及び図形修正部7は、例えばコンピュータのCPU等で機能する。以下で示す図22及び図25では、このCPUをCPU10とする。
【0020】
記憶部8は、ハードディスク11、メインメモリ12、及びキャッシュメモリ13を備えて構成される。
ハードディスク11は、LSIの全層のデザイン図形がLSIレイアウトデータベースとして格納されており、グルーピング部2で分類されたデザイン図形のシンボリックリンク、シミュレーション部3で作成されたシミュレーション図形のデータ(測定部4で測定されたスペース及び幅の値を含む)等が格納される。
メインメモリ12は、ハードディスク11のLSIレイアウトデータベースから抽出された、ホットスポットを中心とする例えば3μm四方の領域に含まれるデザイン図形が修正領域対象として格納される。
キャッシュメモリ13は、修正領域対象ごとのデザイン図形のデータが格納される。キャッシュメモリ13上において、図形修正部7によるデザイン図形のレイアウト修正作業が修正領域対象ごとに行われる。
【0021】
以下、上記のように構成されたパターン検証装置を用いた検証方法について、図2を用いて説明する。
先ず、図形選別部1は、予め規定された良否基準に従って各デザイン図形の良否を判定し、良否基準に違反するデザイン図形を選別する(ステップS1)。
続いて、グルーピング部2は、図形選別部で選別されたデザイン図形を、その配置及び形状で分類する(ステップS2)。
続いて、シミュレーション部3は、グルーピング部2で分類されたデザイン図形に対して露光シミュレーションを行い、各デザイン図形のシミュレーション図形を作成する(ステップS3)。
続いて、測定部4は、作成されたシミュレーション図形のスペース及び幅を測定する(ステップS4)。
続いて、ヒストグラム作成部5は、シミュレーション図形の測定されたスペース及び幅に基づいて、デザイン図形のヒストグラムを作成する(ステップS5)。
続いて、ホットスポット判定部6は、ホットスポットを検出するための相対値である標準偏差を逸脱する測定値の箇所を、ホットスポットとして認定する(ステップS6)。
続いて、図形修正部7は、デザイン図形のホットスポット周辺のレイアウトを修正する(ステップS7)。
【0022】
ステップS1について詳述する。ステップS1は、図3に示すように、ステップS11〜S15から構成される。
先ず、マスクパターンを形成するためのデザイン図形のLSIレイアウトファイルを記憶部11のハードディスク11に用意する(ステップS11)。
続いて、LSIの各層(素子分離、不純物拡散領域、ゲート等、コンタクト部、配線等)に対応した、デザイン図形のレイアウト設計者向けの最小スペース及び最小幅ルール(図4(a)を参照)を記述したルールファイルをハードディスク11に用意する(ステップS12)。
【0023】
続いて、図形選別部1は、レイアウト設計向けの最小スペース及び最小幅ルールをルールファイルから読み込む(ステップS13)。
続いて、図形選別部1は、レイアウト設計向けの最小スペース及び最小幅ルールを、例えば5%厳しくした内部ルール(内部スペースルール及び内部幅ルール:図4(a)を参照)を計算して作成する(ステップS14)。
【0024】
続いて、図形選別部1は、上記の内部ルールに違反したデザイン図形をハードディスク11のLSIレイアウトファイルから抽出する(ステップS15)。
デザイン図形A,B,C,D,Eを図4(b)に示す。デザイン図形A,B,Cは内部スペースルールに違反する。デザイン図形Dは内部幅ルールに違反する。デザイン図形Eは何れの内部ルールにも違反しない。この場合、図形選別部1は、デザイン図形A,B,C,Dを選別してLSIレイアウトファイルから抽出する。
図形選別部1による選別により、LSIレイアウトファイルから抽出するデザイン図形をホットスポットが検出される可能性が高い箇所を含むもものに限定される。これにより、後に続くステップ、即ち検証の計算処理の負荷が軽減される。
【0025】
ステップS2について詳述する。ステップS2は、図5及び図7に示すように、ステップS21〜S24から構成される。
先ず、グルーピング部2は、対向配置されたデザイン図形とのスペースsが同じであるデザイン図形を集めて分類し、その組み合わせのシンボリックリンクをハードディスク11に格納する(ステップS21)。分類された各グループを大グループとする(図6を参照)。
続いて、グルーピング部2は、ハードディスク11に格納されたデザイン図形を、対向配置されたデザイン図形に対向する自身の対向辺の長さxで小グループA,B,Cに分類して、ハードディスク11に再度格納する(ステップS22)。
【0026】
小グループA,B,Cの分類の一例を図6に示す。
小グループAでは、着目するデザイン図形a1、デザイン図形a1と対抗配置されたデザイン図形A1、デザイン図形a1のデザイン図形A1との対向辺の長さxとして、x<s/2を満たす。
小グループBでは、着目するデザイン図形b1、デザイン図形b1と対抗配置されたデザイン図形B1、デザイン図形b1のデザイン図形B1との対向辺の長さxとして、s/2≦x≦2sを満たす。
小グループCでは、着目するデザイン図形c1、デザイン図形c1と対抗配置されたデザイン図形C1、デザイン図形c1のデザイン図形C1との対向辺の長さxとして、2s<xを満たす。
【0027】
続いて、グルーピング部2は、対向配置されたデザイン図形とのスペースsが同じであるデザイン図形を集めて分類し、その組み合わせのシンボリックリンクをハードディスク11に格納する(ステップS23)。分類された各グループを大グループとする(図8を参照)。
続いて、グルーピング部2は、ハードディスク11に格納されたデザイン図形を、対向配置されたデザイン図形の対向辺の長さxで小グループA,B,Cに分類して、ハードディスク11に再度格納する(ステップS24)。
【0028】
小グループA,B,Cの分類の一例を図8に示す。
小グループAでは、着目するデザイン図形a1、デザイン図形a1と対抗配置されたデザイン図形A1、デザイン図形A1のデザイン図形a1との対向辺の長さxとして、x<s/2を満たす。
小グループBでは、着目するデザイン図形b1、デザイン図形b1と対抗配置されたデザイン図形B1、デザイン図形B1のデザイン図形b1との対向辺xの長さとして、s/2≦x≦2sを満たす。
小グループCでは、着目するデザイン図形c1、デザイン図形c1と対抗配置されたデザイン図形C1、デザイン図形C1のデザイン図形c1との対向辺の長さxとして、2s<xを満たす。
【0029】
本実施形態では、LSIを構成する各層別に検証を行わず、全層一律で、デザイン図形のサイズ別に小グループに分類する。これにより、デザイン図形のサイズに大きく依存するシミュレーション図形の性質に適した検証を行うことができる。従来の技術では、LSIを構成する各層別に検証するため、各層におけるホットスポットを検出する。このため、検出されなかった箇所が、他層の基準ではホットスポットであることもあり、ホットスポットの検出が不十分となる。本実施形態では、後述するように、デザイン図形の属する層に依存しないホットスポットの検出及びレイアウト修正が可能となる。
【0030】
ステップS3、及びスペースに関するステップS4について、図9を用いて詳述する。
ステップS3では、シミュレーション部3は、LSIの各層(素子分離、不純物拡散領域、ゲート等、コンタクト部、配線等)ごとに露光シミュレーションにより各デザイン図形のシミュレーション図形を作成する。
【0031】
スペースに関するステップS4では、測定部4は、着目するシミュレーション図形の対向配置されたシミュレーション図形とのスペースSnを測定する。
図10に、小グループA,B,Cのシミュレーション図形の一例を示す。
小グループAでは、図6のデザイン図形a1のシミュレーション図形a2、デザイン図形A1のシミュレーション図形A2、シミュレーション図形a2,A2間のスペースS0とする。
小グループBでは、図6のデザイン図形b1のシミュレーション図形b2、デザイン図形B1のシミュレーション図形B2、シミュレーション図形b2,B2間のスペースS1とする。
小グループCでは、図6のデザイン図形c1のシミュレーション図形c2、デザイン図形C1のシミュレーション図形C2、シミュレーション図形c2,C2間のスペースS2とする。
【0032】
デザイン図形とシミュレーション図形とにおけるスペースの変動は、S0>S1>S2である。デザイン図形は、その対向辺xが小さいほど、対向配置されたデザイン図形の影響を受け易く、シミュレーション後のシミュレーション図形におけるスペースのバラツキが大きい。
【0033】
スペースに関するステップS5について、図11を用いて詳述する。
スペースに関するステップS5では、ヒストグラム作成部5は、図10の小グループA,B,Cごとに、シミュレーション図形同士のスペースについて、ヒストグラムを作成する(図11(b)を参照)。デザイン図形同士のスペースsを分布の中心として、横軸をシミュレーション後のスペースSn、縦軸をスペースSnの頻度とする。着目するデザイン図形の対向辺の長さxが小さいほど、分布(シミュレーション後のバラツキ)が大きくなる。
【0034】
スペースに関するステップS6について詳述する。スペースに関するステップS6は、図12に示すように、ステップS61〜S63から構成される。
先ず、ハードディスク11に格納されたルールファイルから、ホットスポットを認定する基準とする標準偏差を読み込む(ステップS61)。
続いて、図13に示すように、ホットスポット判定部6は、作成されたヒストグラムにおいてシミュレーション図形同士のスペースSnがホットスポットとして認定する基準とする標準偏差(例えば2σ)を超える値となった箇所を、ホットスポットとして認定する(ステップS62)。図13では、図11(b)のヒストグラムのうち、小グループAに対応するもののみを示す。
【0035】
続いて、ホットスポット判定部6は、ホットスポットを中心とする正方形の領域である修正対象領域に重なるデザイン図形を抽出し、メインメモリ12へ格納する(ステップS63)。ここでは、図14に示すように、修正対象領域R1〜R3、スペースのホットスポットをスペースHSとする。修正対象領域R1では、デザイン図形101,102間のスペースHSを中心としてデザイン図形を抽出する。修正対象領域R2では、デザイン図形103,104間のスペースHSを中心としてデザイン図形を抽出する。修正対象領域R3では、デザイン図形105,106間のスペースHSを中心としてデザイン図形を抽出する。修正対象領域R1〜R3のサイズは、光学的影響範囲を1μmと考え、例えば3μm四方とする。
【0036】
幅に関するステップS4について、図15を用いて詳述する。
幅に関するステップS4では、測定部4は、着目するシミュレーション図形の幅Wnを測定する。
図16に、小グループA,B,Cのシミュレーション図形の一例を示す。
小グループAでは、図8のデザイン図形a1のシミュレーション図形a2、デザイン図形A1のシミュレーション図形A2、シミュレーション図形a2の幅W0とする。
小グループBでは、図8のデザイン図形b1のシミュレーション図形b2、デザイン図形B1のシミュレーション図形B2、シミュレーション図形b2の幅W0とする。
小グループCでは、図8のデザイン図形c1のシミュレーション図形c2、デザイン図形C1のシミュレーション図形C2、シミュレーション図形c2の幅W2とする。
【0037】
デザイン図形とシミュレーション図形とにおけるスペースの変動は、W2>W1>W0である。デザイン図形は、対抗配置されたデザイン図形の対向辺の長さxが大きいほど、対向配置されたデザイン図形の影響を受け易く、シミュレーション後のシミュレーション図形におけるスペースのバラツキが大きい。
【0038】
幅に関するステップS5について、図17を用いて詳述する。
幅に関するステップS5では、ヒストグラム作成部5は、図16の小グループA,B,Cごとに、シミュレーション図形同士のスペースについて、ヒストグラムを作成する(図17(b)を参照)。着目するデザイン図形の幅wを分布の中心として、横軸をシミュレーション後の幅Wn、縦軸をWnの頻度とする。着目するデザイン図形の対向辺の長さxが大きいほど、分布(シミュレーション後のバラツキ)が大きくなる。
【0039】
幅に関するステップS6について詳述する。幅に関するステップS6は、図18に示すように、ステップS64〜S66から構成される。
先ず、ハードディスク11に格納されたルールファイルから、ホットスポットを認定する基準とする標準偏差を読み込む(ステップS64)。
続いて、図19に示すように、ホットスポット判定部6は、作成されたヒストグラムにおいて着目するシミュレーション図形の幅Wnがホットスポットとして認定する基準とする標準偏差(例えば2σ)を超える値となった箇所を、ホットスポットとして認定する(ステップS65)。図19では、図17(b)のヒストグラムのうち、小グループCに対応するもののみを示す。
【0040】
続いて、ホットスポット判定部6は、ホットスポットを中心とする正方形の領域である修正対象領域に重なるデザイン図形を抽出し、メインメモリ12へ格納する(ステップS66)。ここでは、図20に示すように、修正対象領域R4〜R6、幅のホットスポットを幅HSとする。修正対象領域R4では、デザイン図形107の幅HSを中心としてデザイン図形を抽出する。修正対象領域R5では、デザイン図形108の幅HSを中心としてデザイン図形を抽出する。修正対象領域R6では、デザイン図形109の幅HSを中心としてデザイン図形を抽出する。修正対象領域R4〜R6のサイズは、光学的影響範囲を1μmと考え、例えば3μm四方とする。
【0041】
デザインルールのチェックと異なり、シミュレーション図形の検証は基準値の設定がレイアウトに依存するため難しい。本実施形態では基準値を決めることなく、相対的にクリティカルな箇所をホットスポットとして抽出することができる。
また、層単位に検証の基準を決める必要がなく、層に拠らずデザイン図形の形状別に相対的な基準を変えてホットスポットを抽出することができる。
【0042】
ステップS6では、ステップS66に続いて、図21のステップ67を実行する。
ステップS67では、ステップS63及びS66で図14及び図20のように抽出したデザイン図形の修正対象領域において、重なりを持つ修正対象領域を合成する。これにより、新たに互いに独立した、ホットスポット(スペースHS又は幅HS)を中心とする修正対象領域を作成する。
【0043】
図22(a)に、ステップS67によって作成された修正対象領域内のシミュレーション図形111−2のホットスポット(スペースHS及び幅HS)とその周辺のレイアウトの例を示す。ステップS67で抽出された修正対象領域内のレイアウトは、後述するレイアウトの修正処理段階において、CPU10(の図形修正部7)に読み込まれる。
【0044】
本実施形態では、ステップS63,S66のように、3μm四方の修正対象領域について、更にステップS67のように独立した修正対象領域内に含まれるレイアウトの修正を行う。この修正対象領域のデータはキャッシュメモリ13に容易に収まるため、レイアウトの修正作業は全てキャッシュメモリ13上で行うことが可能であり、高速処理ができる。
【0045】
修正対象領域のデータがキャッシュメモリ13に容易に収まることについて説明する。
図22(b)に示すように、ステップS67で作成した3μm四方の修正対象領域に含まれるデザイン図形の座標データの最大量を計算してみる。デザイン図形の座標は、x,y座標それぞれ4バイト、計8バイト(64ビット)で表される。図22(b)の修正対象領域は、8バイト×4頂点=32バイトで表される。3μm四方の修正対象領域が50nmおきの座標で埋め尽くされたと仮定した場合に必要なメモリ容量は、以下のようになる。
8バイト×(3000/50)×(3000/50)=28,800(=0.0288メガバイト)
このメモリ容量は、一般的なコンピュータのキャッシュメモリサイである12MBに比べ十分小さく、キャッシュメモリに容易に収まる。
【0046】
ステップS7について詳述する。ステップS7は、図23に示すように、ステップS71〜S73から構成される。
先ず、図24(b)に示すように、図形修正部7は、図24(a)のシミュレーション図形111−2,112−2の対応するデザイン図形111−1,112−1のレイアウトの外枠(太線)を固定する(ステップS71)。
続いて、図24(c)に示すように、図形修正部7は、一組のホットスポットに挟まれた辺(太線)を固定する(ステップS72)。ここでは、幅HSであるホットスポットAとスペースHSであるホットスポットBとに挟まれた辺(太線)、及びホットスポットBと幅HSであるホットスポットCとに挟まれた辺(太線)を例示する。以後、固定された辺に囲まれたホットスポットA,Bは無視する。
続いて、図24(d)に示すように、図形修正部7は、残った(ホットスポットA,B以外の)ホットスポットから遠ざける方向に、固定されていない辺を例えば1〜2グリッド移動させる(ステップS73)。
【0047】
従来の技術では、良い結果が得られるまでデザイン図形のレイアウト修正を繰り返す必要があるため、作業には長時間を要する。本実施形態では、全てのホットスポットを対象とせず、一度だけデザイン図形の辺を移動するのみでレイアウト修正が完了するので、作業は短時間で済む。また、従来の技術では、修正後のデザイン図形の面積が拡大するという問題があるが、本実施形態では修正後のレイアウト面積が拡大することはない。
【0048】
図25に、本実施形態におけるデザイン図形のレイアウト修正におけるデータの流れを、一般的なレイアウト修正におけるデータの流れと共に示す。
一般的に、デザイン図形のレイアウトデータは数GBと巨大である。そのため、レイアウト修正作業の間、頻繁にディスクアクセスとキャッシュミス(メインメモリアクセス+キャッシュ再ロード)が発生する。この結果、CPUに待ちが発生し、処理が長時間化する要因となる。本発明では、CPU10が、ステップS67で作成したメインメモリ12上の修正対象領域のレイアウトデータにアクセスし、コンピュータシステムがキャッシュメモリ13上にこのデータをロードする。この場合、データがキャッシュメモリ13に収まるサイズであるため、レイアウト修正作業は全てキャッシュメモリ13上で行われ、高速処理が可能となる。
【0049】
なお、本実施形態の技術は、その対象は半導体装置以外にも磁気装置等の各種電子デバイスに適用できる。また、フォトリソグラフィーを行う際のフォトマスクを形成する場合のみならず、例えば電子線露光装置を用いて設計データであるデザイン図形をレジストに直接的に電子線露光する場合にも適用可能である。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、半導体装置を製造する際に、設計段階において、半導体素子を構成する全層に共通な相対的な基準値を用いて極めて効率良く迅速にホットスポットを抽出することを可能とし、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0051】
上述した本実施形態による図形検証装置の各構成要素(図1の図形選別部1、グルーピング部2、シミュレーション部3、測定部4、ヒストグラム作成部5、ホットスポット判定部6、及び図形修正部7等)の機能は、例えばコンピュータのRAMやROM等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。
同様に、図形検証方法の各ステップ(図2のステップS1〜S7等)は、例えばコンピュータのRAMやROM等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本実施形態に含まれる。
【0052】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワークシステムにおける通信媒体を用いることができる。ここで、コンピュータネットワークとは、LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等であり、通信媒体とは、光ファイバ等の有線回線や無線回線等である。
【0053】
また、本実施形態に含まれるプログラムとしては、供給されたプログラムをコンピュータが実行することにより上述の実施形態の機能が実現されるようなもののみではない。例えば、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合にも、かかるプログラムは本実施形態に含まれる。また、供給されたプログラムの処理の全て或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて上述の実施形態の機能が実現される場合にも、かかるプログラムは本実施形態に含まれる。
【0054】
例えば、図26は、一般的なコンピュータの内部構成を示す模式図である。この図26において、1200はCPU1201を備えたパーソナルコンピュータ(PC)である。PC1200は、ROM1202またはハードディスク(HD)1211に記憶された、又はフレキシブルディスクドライブ(FD)1212より供給されるデバイス制御ソフトウェアを実行する。このPC1200は、システムバス1204に接続される各デバイスを総括的に制御する。
【0055】
PC1200のCPU1201、ROM1202またはハードディスク(HD)1211に記憶されたプログラムにより、本実施形態の図2におけるステップS1〜S7の手順等が実現される。
【0056】
1203はRAMであり、CPU1201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。1205はキーボードコントローラ(KBC)であり、キーボード(KB)1209や不図示のデバイス等からの指示入力を制御する。
【0057】
1206はCRTコントローラ(CRTC)であり、CRTディスプレイ(CRT)1210の表示を制御する。1207はディスクコントローラ(DKC)である。DKC1207は、ブートプログラム、複数のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイルそしてネットワーク管理プログラム等を記憶するハードディスク(HD)1211、及びフレキシブルディスク(FD)1212とのアクセスを制御する。ここで、ブートプログラムとは、起動プログラム:パソコンのハードやソフトの実行(動作)を開始するプログラムである。
【0058】
1208はネットワーク・インターフェースカード(NIC)で、LAN1220を介して、ネットワークプリンタ、他のネットワーク機器、或いは他のPCと双方向のデータのやり取りを行う。
【0059】
以下、諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0060】
(付記1)複数のデザイン図形のシミュレーションを行って複数のシミュレーション図形を作成する工程と、
前記各デザイン図形について共通に規定された第1の値を、前記各シミュレーション図形で第2の値として測定する工程と、
測定された前記第2の値のヒストグラムを作成する工程と、
前記ヒストグラムにおいて所定範囲を逸脱する前記第2の値の対応する前記各デザイン図形の部位を危険部位と判定する工程と
を含むことを特徴とする図形検証方法。
【0061】
(付記2)前記危険部位と判定された前記第2の値の対応する前記デザイン図形を修正する工程を更に含むことを特徴とする付記1に記載の図形検証方法。
【0062】
(付記3)前記デザイン図形を修正する工程は、
前記デザイン図形の外枠に位置する辺を固定する工程と、
一組の前記危険部位に挟まれた前記デザイン図形の辺を固定する工程と、
前記デザイン図形の他の辺を、前記危険部位から遠ざける方向に移動させる工程と
を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の図形検証方法。
【0063】
(付記4)前記デザイン図形を修正する工程は、キャッシュメモリ上で実行されることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の図形検証方法。
【0064】
(付記5)前記シミュレーションに先立って、予め規定された良否基準に従って前記各デザイン図形の良否を判定し、前記良否基準に違反する前記デザイン図形を選別する工程を更に含み、
選別された前記デザイン図形のみについて前記シミュレーションを行うことを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の図形検証方法。
【0065】
(付記6)複数のデザイン図形のシミュレーションを行って複数のシミュレーション図形を作成するシミュレーション部と、
前記各デザイン図形について共通に規定された第1の値を、前記各シミュレーション図形で第2の値として測定する測定部と、
測定された前記第2の値のヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、
前記ヒストグラムにおいて所定範囲を逸脱する前記第2の値の対応する前記各デザイン図形の部位を危険部位と判定する危険部位判定部と
を含むことを特徴とする図形検証装置。
【0066】
(付記7)キャッシュメモリを更に含み、
前記図形修正部は、前記キャッシュメモリ上で前記デザイン図形の修正を実行することを特徴とする付記6に記載の図形検証装置。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本件によれば、電子デバイスを製造する際に、設計段階において、素子を構成する全層に共通する相対的な基準値(第1の値)を用いて極めて効率良く迅速にホットスポットを抽出することを可能とし、信頼性の高い電子デバイスを実現することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 図形選別部
2 グルーピング部
3 シミュレーション部
4 測定部
5 ヒストグラム作成部
6 ホットスポット判定部
7 図形修正部
8 記憶部
10 CPU
11 ハードディスク
12 メインメモリ
13 キャッシュメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデザイン図形のシミュレーションを行って複数のシミュレーション図形を作成する工程と、
前記各デザイン図形について共通に規定された第1の値を、前記各シミュレーション図形で第2の値として測定する工程と、
測定された前記第2の値のヒストグラムを作成する工程と、
前記ヒストグラムにおいて所定範囲を逸脱する前記第2の値の対応する前記各デザイン図形の部位を危険部位と判定する工程と
を含むことを特徴とする図形検証方法。
【請求項2】
前記危険部位と判定された前記第2の値の対応する前記デザイン図形を修正する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の図形検証方法。
【請求項3】
前記デザイン図形を修正する工程は、
前記デザイン図形の外枠に位置する辺を固定する工程と、
一組の前記危険部位に挟まれた前記デザイン図形の辺を固定する工程と、
前記デザイン図形の他の辺を、前記危険部位から遠ざける方向に移動させる工程と
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の図形検証方法。
【請求項4】
前記シミュレーションに先立って、予め規定された良否基準に従って前記各デザイン図形の良否を判定し、前記良否基準に違反する前記デザイン図形を選別する工程を更に含み、
選別された前記デザイン図形のみについて前記シミュレーションを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の図形検証方法。
【請求項5】
複数のデザイン図形のシミュレーションを行って複数のシミュレーション図形を作成するシミュレーション部と、
前記各デザイン図形について共通に規定された第1の値を、前記各シミュレーション図形で第2の値として測定する測定部と、
測定された前記第2の値のヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、
前記ヒストグラムにおいて所定範囲を逸脱する前記第2の値の対応する前記各デザイン図形の部位を危険部位と判定する危険部位判定部と
を含むことを特徴とする図形検証装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2010−257393(P2010−257393A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109521(P2009−109521)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】