説明

固体撮像素子およびその駆動方法

【課題】裏面を入射光の受光面とした裏面照射型の固体撮像素子において、残像、クロストーク等の発生を防止すること。
【解決手段】半導体基板10内において裏面から表面に向かう順に、P型の受光表面層12と、光電変換された信号電荷を蓄積するN型のフォトダイオード11と、P型の電位障壁層14と、フォトダイオード11から転送される信号電荷を蓄積するN型の電荷蓄積層13を設ける。フォトダイオード11から電荷蓄積層13に信号電荷を転送するとき以外には、裏面バイアス発生回路7により受光表面層12に0Vの電圧が印加され、信号電荷の転送時には、負のパルス信号が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやデジタルスチルカメラ用の固体撮像素子として、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子が広く用いられている。これらの固体撮像素子は、2次元状に配列された単位セルを有するが、撮像された画像の高解像度化または固体撮像素子の小型化のため、一般に単位セルサイズが縮小される傾向にある。固体撮像素子の単位セルは、光電変換素子であるフォトダイオードと、フォトダイオードに蓄積された信号電荷を読み出すための信号読み出し回路等から構成される。
【0003】
従来、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ用の固体撮像素子は、フォトダイオードと信号読み出し回路等のデバイスを半導体基板の一面に形成し、このデバイス形成面を受光面とした、いわゆる表面照射型固体撮像素子が主流であった。
しかしながら、近年、単位セルの縮小に伴い、単位セルサイズに対するフォトダイオードの開口面積(開口率)が低下する弊害を回避するため、デバイス形成面とは反対側の面を受光面とした、いわゆる裏面照射型の固体撮像素子が実用化され始めている。
【0004】
図12は、従来の裏面照射型の固体撮像素子における単位セルの構造を示す断面図である(特許文献1の図1)。
同図に示すように、半導体基板101の第1面(同図上側の面)上に配線層が設けられ、半導体基板101内の第1面に近い側に画素毎に信号読み出し回路となる転送MOSトランジスタ110と信号電荷伝達路111が設けられており、第1面とは反対側の第2面(同図下側)を受光面として、半導体基板101内の第2面に近い側にフォトダイオードN層102とフォトダイオードP層103が設けられている。隣接する画素間は、P型の分離領域104によって仕切られている。
【0005】
この特許文献1では、フォトダイオードN層102に蓄積された信号電荷を読み出す際に、転送MOSトランジスタ110の制御電極112に正の電圧を印加して、転送MOSトランジスタ110をON状態にすることにより、転送MOSトランジスタ110のソースに相当するフォトダイオードN層102から、ドレインに相当する拡散浮遊領域113に信号電荷を転送するようになっている。
【0006】
また、特許文献2には、裏面照射型の固体撮像素子において、受光面から入射した光電子を、受光面とは反対面側に設けられた光電変換領域に誘導するため、受光面側に配置した電極に電圧を印加することによって、半導体基板の深さ方向の電場を発生させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−150521号公報
【特許文献2】特開2003−338615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の固体撮像素子の構成では、いわゆる残像やランダムノイズ、クロストークが発生するという問題がある。
すなわち、光電変換された信号電荷のより多くをフォトダイオードN層102に蓄積させるには、フォトダイオードN層102の電位井戸をより深くすれば良く、電位井戸を深くするには、フォトダイオードN層102のN型の不純物濃度を濃くすれば良い。
【0009】
しかしながら、不純物濃度を濃くすることで電位井戸を深くして、フォトダイオードN層102の電位を同じN型の信号電荷伝達路111と同程度の電位またはこれ以上に上げてしまうと、フォトダイオードN層102に蓄積された信号電荷が信号電荷伝達路111に導かれ難くなる。また、信号電荷伝達路111の幅がフォトダイオードN層102に対して極端に狭く、信号電荷が信号電荷伝達路111に入り難い構成になっている。
【0010】
そのため、転送MOSトランジスタ110をONにしても、そのON期間にフォトダイオードN層102に蓄積された信号電荷の全てを、信号電荷伝達路111を通過させて拡散浮遊領域113まで転送させることができず、ある程度の量の信号電荷がフォトダイオードN層102に残ってしまい、これが残像やランダムノイズを発生させることになる。
このような信号電荷が残ることを防止するために、フォトダイオードN層102のN型の不純物濃度をできるだけ、例えば真性半導体と同程度にまで下げて、フォトダイオードN層102の電位を下げる構成をとることもできる。
【0011】
しかしながら、このようにすればフォトダイオードN層102の電位井戸が浅くなり、事実上フォトダイオードN層102に信号電荷を蓄積する機能を有しなくなる。結果として、光電変換された信号電荷のうち電位井戸から溢れるものが生じ、その溢れた信号電荷とフォトダイオードN層102近傍で発生した信号電荷とが隣接する画素に拡散することが生じ易くなり、これがクロストークを発生させることになる。
【0012】
一方、特許文献2に開示されている固体撮像素子では、受光面側に配置した電極に負の直流バイアス電圧を印加するため、固体撮像素子の動作期間中は常時、反対側の面のP型ウエルから受光面側に配置した電極に電流が流れることになる。これにより消費電力が増加してこれに伴う温度上昇によるランダムノイズが増加するという問題がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、残像やランダムノイズおよびクロストークなどを防止することができる固体撮像素子およびこれの駆動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る固体撮像素子は、半導体基板の一方の主面である裏面を受光面とした単位セルが複数、行列状に配列されてなる裏面照射型の固体撮像素子であって、前記各単位セルは、前記半導体基板内において厚み方向に前記裏面に最も近い位置に設けられた第1導電型の受光表面層と、前記半導体基板内において前記受光表面層よりも前記半導体基板の他方の主面である表面に近い側に設けられ、前記受光表面層に入射された光を光電変換して得られた信号電荷を蓄積する、第1導電型とは逆極性の第2導電型の光電変換領域と、前記半導体基板内において前記光電変換領域よりも前記表面に近い側に設けられ、前記光電変換領域から転送された信号電荷を蓄積する第2導電型の電荷蓄積層と、前記半導体基板内において前記光電変換領域と前記電荷蓄積層との間に介在する第1導電型の電位障壁層と、前記光電変換領域に蓄積される信号電荷を前記電位障壁層の電位障壁により前記電荷蓄積層に転送させないための第1電圧と、前記信号電荷を前記電位障壁層を介して前記電荷蓄積層に転送するための第2電圧を選択的に前記受光表面層に印加する電極と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このようにすれば、光電変換された信号電荷を光電変換領域に蓄積する期間に第1電圧を電極に印加して、電位障壁層に電位障壁を形成して光電変換領域に形成される電位井戸に信号電荷を蓄積しつつ、光電変換領域から信号電荷を電荷蓄積層に転送する期間になると、転送のための第2電圧を電極に印加することにより転送を行わせることができる。
これにより、光電変換領域の電位井戸をある程度深くしても蓄積された信号電荷を全て転送することができ、拡散により生じるクロストークや残像、ランダムノイズの発生を防止することができる。
【0015】
また、前記電極に前記電圧を供給するバイアス回路を備え、前記バイアス回路は、前記第1電圧として、前記光電変換領域に信号電荷を蓄積する蓄積期間に、前記電位障壁層に電位障壁が形成される電圧を供給し、前記第2電圧として、前記信号電荷の転送期間には、前記第1導電型がP型、前記第2導電型がN型の場合に前記光電変換領域から前記電荷蓄積層に向かって電位が単調増加する電圧を供給し、前記第1導電型がN型、前記第2導電型がP型の場合に前記光電変換領域から前記電荷蓄積層に向かって電位が単調減少する電圧を供給するとしても良い。
【0016】
また、前記転送期間は、垂直ブランキング期間中の所定の期間であり、前記蓄積期間は、前記所定の期間を除く期間であり、水平走査期間と水平ブランキング期間を含む垂直走査期間の少なくとも一部を含む期間であるとしても良い。
このような構成において、全単位セルについて転送期間を所定の期間に設定すると共に蓄積期間を同一期間に設定することにより、いわゆるグローバルシャッターを実現することができる。
【0017】
さらに、前記転送期間は、水平ブランキング期間中の所定の期間であり、前記蓄積期間は、前記所定の期間を除く期間であり、少なくとも水平走査期間を含む期間であるとしても良い。
このようにすれば、各単位セルが、水平ブランキング期間毎にその水平ブランキング期間中の所定の期間になると光電変換領域に蓄積された信号電荷を電荷蓄積層に転送して電荷蓄積層に信号電荷を蓄積しつつ、蓄積された信号電荷を出力する選択行になると、それまでに電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を出力することができると共に、その蓄積期間を選択行になってから次の選択行までの期間とすることにより、蓄積期間が一行毎に一水平走査周期ずつずれる、いわゆるローリングシャッターを実現することができる。
【0018】
ここで、前記転送期間の少なくとも一部が前記電荷蓄積層から信号電荷を出力する期間に重なり、前記転送期間と前記出力する期間が略同時に終了するとしても良い。
このようにすれば、光電変換領域に蓄積された信号電荷の電荷蓄積層への転送と、電荷蓄積層に蓄積された信号電荷の出力とを同時に並行して行うことができる。
また、前記半導体基板内において前記電荷蓄積層よりも前記表面に近い側に第1導電型の蓄積表面層が設けられているとしても良い。
【0019】
このようにすれば、電荷蓄積層における前記表面側の面の電位を安定しつつ界面準位による暗電流の発生を抑制することができる。
さらに、前記電極は、前記半導体基板の裏面上に設けられ、当該受光表面層と電気的に接続された透明電極であるとしても良い。
このようにすれば、半導体基板の裏面に面方向に均一に電圧を印加することができる。
【0020】
また、前記第1電圧が接地電位であるとしても良い。
このようにすれば、信号電荷の転送時以外のときにおける消費電力の低減を図ることができる。
また、本発明に係る固体撮像素子の駆動方法は、半導体基板の一方の主面である裏面を受光面とした単位セルが複数、行列状に配列されてなる裏面照射型の固体撮像素子の駆動方法であって、前記各単位セルは、前記半導体基板内において厚み方向に前記裏面に最も近い位置に設けられた第1導電型の受光表面層と、前記半導体基板内において前記受光表面層よりも前記半導体基板の他方の主面である表面に近い側に設けられ、前記受光表面層に入射された光を光電変換して得られた信号電荷を蓄積する、第1導電型とは逆極性の第2導電型の光電変換領域と、前記半導体基板内において前記光電変換領域よりも前記表面に近い側に設けられ、前記光電変換領域から転送された信号電荷を蓄積する第2導電型の電荷蓄積層と、前記半導体基板内において前記光電変換領域と前記電荷蓄積層との間に介在する第1導電型の電位障壁層と、を備え、当該駆動方法は、前記光電変換領域に信号電荷を蓄積する蓄積期間に、前記光電変換領域に蓄積される信号電荷を前記電位障壁層の電位障壁により前記電荷蓄積層に転送させないための第1電圧を前記受光表面層に印加する第1ステップと、前記信号電荷の転送期間に、前記信号電荷を前記電位障壁層を介して前記電荷蓄積層に転送するための第2電圧として、前記第1導電型がP型、前記第2導電型がN型の場合には前記光電変換領域から前記電荷蓄積層に向かって電位が単調増加する電圧を、前記第1導電型がN型、前記第2導電型がP型の場合には前記光電変換領域から前記電荷蓄積層に向かって電位が単調減少する電圧を前記受光表面層に印加する第2ステップと、を含むステップを実行することを特徴とする。
【0021】
このようにすれば、光電変換された信号電荷を光電変換領域に蓄積する期間に第1電圧を印加して、電位障壁層に電位障壁を形成して光電変換領域に形成される電位井戸に信号電荷を蓄積しつつ、光電変換領域から信号電荷を電荷蓄積層に転送する期間になると、転送のための第2電圧を印加することにより転送を行わせることができる。
これにより、光電変換領域の電位井戸をある程度深くしても蓄積された信号電荷を全て転送することができ、拡散により生じるクロストークや残像、ランダムノイズの発生を防止することができる。
【0022】
また、前記転送期間は、垂直ブランキング期間中の所定の期間であり、前記蓄積期間は、前記所定の期間を除く期間であり、水平走査期間と水平ブランキング期間を含む垂直走査期間の少なくとも一部を含む期間であるとしても良い。
このような構成において、全単位セルについて転送期間を所定の期間に設定すると共に蓄積期間を同一期間に設定することにより、いわゆるグローバルシャッターを実現することができる。
【0023】
さらに、前記転送期間は、水平ブランキング期間中の所定の期間であり、前記蓄積期間は、前記所定の期間を除く期間であり、少なくとも水平走査期間を含む期間であるとしても良い。
このようにすれば、各単位セルが、水平ブランキング期間毎にその水平ブランキング期間中の所定の期間になると光電変換領域に蓄積された信号電荷を電荷蓄積層に転送して電荷蓄積層に信号電荷を蓄積しつつ、蓄積された信号電荷を出力する選択行になると、それまでに電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を出力することができると共に、その蓄積期間を選択行になってから次の選択行までの期間とすることにより、蓄積期間が一行毎に一水平走査周期ずつずれる、いわゆるローリングシャッターを実現することができる。
【0024】
ここで、前記転送期間の少なくとも一部が前記電荷蓄積層から信号電荷を出力する期間に重なり、前記転送期間と前記出力する期間が略同時に終了するとしても良い。
このようにすれば、光電変換領域に蓄積された信号電荷の電荷蓄積層への転送と、電荷蓄積層に蓄積された信号電荷の出力とを同時に並行して行うことができる。
さらに、前記第1電圧が接地電位であるとしても良い。
【0025】
このようにすれば、信号電荷の転送時以外のときにおける消費電力の低減を図ることができる。
本発明に係る固体撮像素子の駆動方法は、半導体基板内において厚み方向に当該半導体基板の一方の主面である裏面に最も近い位置に設けられた第1導電型の受光表面層に入射された光を光電変換し、光電変換された信号電荷を当該半導体基板内において前記受光表面層よりも当該半導体基板の他方の主面である表面に近い側に設けられた、第1導電型とは逆極性の第2導電型の蓄積領域に蓄積し、蓄積された信号電荷を信号読み出し期間に当該半導体基板内で前記受光表面層よりも前記表面に近い側に設けられた読み出し回路により前記蓄積領域から読み出す単位セルが複数、行列状に配列されてなる裏面照射型の固体撮像素子の駆動方法であって、信号電荷の蓄積期間に、信号電荷の蓄積のための第1電圧として接地電位を前記受光表面層に印加し、前記蓄積期間を除く期間であり、水平ブランキング期間中における所定の期間に、前記第1導電型がP型、前記第2導電型がN型の場合には前記第1電圧よりも電位が低い第2電圧を前記受光表面層に印加し、前記第1導電型がN型、前記第2導電型がP型の場合には前記第1電圧よりも電位が高い第2電圧を前記受光表面層に印加することを特徴とする。
【0026】
このようにすれば、信号電荷の蓄積期間を含めて常に半導体基板に信号電荷の転送のための電圧を印加し続ける従来の構成に比べて消費電力を抑制して、高消費電力に伴う温度上昇によるランダムノイズの発生を防止することができる。
また、前記蓄積期間は、少なくとも水平走査期間を含む期間であるとしても良い。
さらに、前記所定の期間の少なくとも一部が前記信号読み出し期間に重なり、前記所定の期間と前記信号読み出し期間が略同時に終了するとしても良い。
【0027】
このようにすれば、蓄積領域に蓄積された信号電荷を信号読み出し回路に送るための電界を形成しつつ、同時に信号電荷の読み出しを実行することができ、蓄積された信号電荷の残留の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1に係る固体撮像素子の全体構成を示す図である。
【図2】固体撮像素子の単位セルの要部断面図である。
【図3】単位セルの等価回路図である。
【図4】固体撮像素子の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【図5】固体撮像素子の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【図6】固体撮像素子の電位分布図である。
【図7】実施の形態2に係る固体撮像素子の単位セルの要部断面図である。
【図8】実施の形態3に係る固体撮像素子の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【図9】実施の形態3に係る固体撮像素子の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【図10】実施の形態4に係る固体撮像素子の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【図11】実施の形態4に係る固体撮像素子の電位分布図である。
【図12】従来の固体撮像素子の単位セルの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
<実施の形態1>
図1は、本実施形態に係る固体撮像素子の一例を示す全体構成図である。
同図に示すように、固体撮像素子は、撮像領域1と、垂直走査回路2と、水平走査回路3と、列読み出し回路4と、出力回路5と、タイミングジェネレータ6と、裏面バイアス発生回路7などを有する。
【0030】
撮像領域1は、CMOSセンサからなる複数の画素(単位セル)8が行方向(同図左右方向)と列方向(同図上下方向)に複数、行列状に配列されてなる画素アレイであり、単位セル毎に入射光を光電変換して画素信号を生成する。
垂直走査回路2は、水平信号線L1〜Lnを制御して、各行を順次選択し、選択した行の各単位セル8の画素信号を読み出す。読み出された各単位セル8の画素信号は、垂直信号線VL1〜VLnを介して列読み出し回路4に送られる。この読み出しは、水平ブランキング期間に行われる。
【0031】
列読み出し回路4は、水平走査回路3の制御に基づき、選択行の各単位セル8から送られて来る画素信号を画素単位で順次、出力回路5に出力する。この信号出力は、水平走査期間に行なわれる。
出力回路5は、列読み出し回路3から送られて来る画素信号を後段に出力する。
裏面バイアス発生回路7は、裏面バイアスパルスφBBを各画素8に出力する。この裏面バイアスパルスφBBの内容については、後述する。
【0032】
タイミングジェネレータ6は、垂直走査回路2、水平走査回路3、列読み出し回路4、裏面バイアス発生回路7を駆動させるための信号を各回路に供給する。なお、タイミングジェネレータ6および裏面バイアス発生回路7のどちらかもしくは両方は、撮像領域と同一の半導体基板に設けられていてもよいし、別の半導体基板に設けられていてもよい。
図2は、1つの単位セル8の要部断面図である。
【0033】
同図に示すように、単位セル8は、半導体基板10の一方の面である上面を第1面(表(おもて)面)、他方の面である下面を第2面(裏面)として、第1面上に配線層26と支持基板28がこの順に配されると共に、第2面が入射光を受光する受光面となる裏面照射型のものである。なお、同図の構成は、他の単位セル8について同じである。
半導体基板10内において、厚み方向に第2面に最も近い位置には、入射光を受光するP型の受光表面層12が設けられており、P型の受光表面層12よりも第1面に近い側には、N型の光電変換領域11が設けられている。
【0034】
P型の受光表面層12は、N型の光電変換領域11における第2面側の面の電位を固定すると共に、第2面の半導体界面近傍をホールで充満させて、界面準位による暗電流の発生を抑制する。受光表面層12は、半導体基板10の第2面を含む内部領域に設けられ、半導体基板10の第2面を形成する構成になっている。
N型の光電変換領域11は、受光された入射光を光電変換すると共に光電変換された信号電荷を蓄積するフォトダイオードとして機能する。以下、光電変換領域11をフォトダイオード11という。
【0035】
半導体基板10内において厚み方向にフォトダイオード11よりも第1面に近い側には、フォトダイオード11から転送される信号電荷を蓄積するN型の電荷蓄積層13が設けられている。
半導体基板10内においてN型のフォトダイオード11とN型の電荷蓄積層13との間には、フォトダイオード11から電荷蓄積層13への信号電荷を転送するとき以外の期間に信号電荷に対する電位障壁を形成するP型の電位障壁層14が設けられている。
【0036】
また、半導体基板10内において電位障壁層14よりも第1面に近い側には、N型の電荷蓄積層13をソース、N型の浮遊拡散層15をドレイン、トランスファゲート16をゲートとしたMOS型の読み出しトランジスタM41(図3)が設けられている。
読み出しトランジスタM41は、電荷蓄積層13に蓄積された信号電荷を読み出して、これを画素信号として、画素アンプとしての増幅トランジスタM43(図3)、選択トランジスタM44(図3)を介して垂直信号線VLにより列読み出し回路4に送る。
【0037】
読み出しトランジスタM41や画素アンプは、半導体基板10内において厚み方向に電位障壁層14よりも第1面に近い側に設けられたP型ウエル18内に設けられている。
N型の電荷蓄積層13における第1面側の面上には、P型の蓄積表面層17が設けられており、P型の蓄積表面層17は、隣接する他の単位セルとの境界の機能を有するP型の第1の分離領域19に接している。P型の分離領域19は、接地されている。
【0038】
P型の蓄積表面層17は、半導体基板10の第1面を含む内部領域に設けられ、半導体基板10の第1面の一部を形成する構成になっている。
P型の蓄積表面層17も、P型の受光表面層12と同様に、N型の電荷蓄積層13における第1面側の面の電位を固定すると共に、第1面の半導体界面近傍をホールで充満させ、界面準位による暗電流の発生を抑制する。
【0039】
また、N型のフォトダイオード11を第2面側から平面視したとき、半導体基板10内にはフォトダイオード11における第2面側に位置する部分の周囲を取り囲むようにP型の第2の分離領域20が設けられている。このP型の第2の分離領域20は、隣接する他の単位セルのフォトダイオード11との間を区画分離する機能を有する。
さらに、半導体基板10内においてフォトダイオード11の周囲を取り囲む領域には、第1面に近いP型ウエル18と第2面に近い第2の分離領域20とをつなぐように第3の分離領域21が設けられている。第3の分離領域21も隣接する他の単位セルとの境界の機能を有している。また、信号電荷がP型ウエル18内に形成される読み出し回路に混入しないように、P型ウエル18の深部にはP型高濃度層22が設けられている。
【0040】
P型の受光表面層12は、半導体基板10内の単位セル(画素)間への光を遮光するための金属遮光膜23を介して裏面バイアス発生回路7に接続される。金属遮光膜23は、裏面バイアス発生回路7と電気的にP型の受光表面層12を接続するための電極としての機能を有する。なお、電極として機能する部材が存在すれば良いので、金属遮光膜23に限られることはなく、他の部材が用いられるとしても良い。
【0041】
後述するように、受光表面層12には信号電荷の転送時に裏面バイアス発生回路7により負のバイアス電圧が印加されるようになっている。その際、接地される第1の分離領域19から第3の分離領域21を経由して受光表面層12に電流が流れるが、この電流を少なくして一層の低消費電力化を行うためには、第3の分離領域21におけるP型の不純物濃度を受光表面層12や第2の分離領域20の不純物濃度より低くすることが望ましい。
【0042】
さらに、受光表面層12の上には、カラーフィルタ層24、マイクロレンズ25が設けられ、配線層26内には配線27が設けられ、配線層26上には支持基板28が張り合わされている。
なお、後述する(図4、図5を用いて説明している)駆動方法では、特に垂直走査を連続して行う動画撮像の場合において、入射光の受光時にフォトダイオード11を透過し、電荷蓄積層13近傍で光電変換され、電荷蓄積層13に蓄積された電荷は、フォトダイオード11に蓄積された信号電荷より早いタイミングで読み出され、偽信号となる可能性がある。また、垂直走査を一回のみ行う静止画撮像の場合においては、フォトダイオード11に蓄積された信号電荷を読み出す前に電荷蓄積層13に蓄積された電荷を排出することにより、上記偽信号は防止できるが、この場合電荷蓄積層13に蓄積された電荷は信号電荷として利用されないことになる。
【0043】
従って、上記偽信号の発生を防止し、かつ入射光のフォトン数に対して発生した信号電荷の電子数の比で定義される量子効率を高くし、感度を高くするためには、フォトダイオード11の層厚はある程度厚い方が好ましい。可視光を受光するための固体撮像素子として、フォトダイオード11の層厚は、2ないし10マイクロメートルであることが好ましい。
【0044】
図3は、単位セル8の等価回路を示す図である。
同図において、N型のフォトダイオード11、P型の受光表面層12、N型の電荷蓄積層13、N型の浮遊拡散層15、P型の蓄積表面層17およびトランスファゲート16に対応するノードには、同一の番号を付している。
同図に示すように、P型の受光表面層12とN型のフォトダイオード11、およびP型の蓄積表面層17とN型の電荷蓄積層13とは、それぞれPNダイオードD41およびD42を構成し、P型の受光表面層12と蓄積表面層17との間をつなぐ第3の分離領域21、P型ウエル18、第1の分離領域19および第2の分離領域20は、等価抵抗R41およびR42で示されている。
【0045】
N型のフォトダイオード11、P型の電位障壁層14およびN型の電荷蓄積層13は、NPN型のバイポーラトランジスタQ41で示される。後述するように、バイポーラトランジスタQ41のベースに相当するP型の電位障壁層14は、固体撮像素子の動作状態において、信号電荷が通過するとき以外には空乏化により信号電荷に対する電位障壁として機能する。バイポーラトランジスタQ41のベース抵抗をR43で示す。
【0046】
さらに、単位セル8は、トランスファパルスΦTGが印加されるトランスファゲート16をゲートとしたMOS型の読み出しトランジスタM41、N型の浮遊拡散層15の電位をリセットするためのリセットパルスΦRSが印加されるMOS型のリセットトランジスタM42、浮遊拡散層15がゲートに接続された増幅トランジスタM43、および行選択パルスΦSELが印加される選択トランジスタM44を信号読み出し回路として備える。
【0047】
トランスファパルスΦTG、リセットパルスΦRS、行選択パルスΦSELは、垂直走査回路2から水平信号線Lを介して単位セル8に供給される。
リセットトランジスタM42のドレインと増幅トランジスタM43のドレインは、共に電源VDDに接続され、増幅トランジスタM43のソースは、選択トランジスタM44のドレインに接続され、選択トランジスタM44のソースは、垂直信号線VLを介して列読み出し回路4に接続される。
【0048】
図4と図5は、固体撮像素子の駆動方法の一例を示すタイミングチャートであり、図4は、垂直ブランキング期間における駆動方法を、図5は、水平ブランキング期間における駆動方法を示す図である。
図4は、垂直ブランキング期間において、P型の受光表面層12に印加される裏面バイアスパルスΦBB、および裏面バイアスパルスΦBBの印加に伴うフォトダイオード11の電位(フォトダイオード電位)と電荷蓄積層13の電位(電荷蓄積層電位)のそれぞれの変動を示している。
【0049】
裏面バイアスパルスΦBBは、垂直走査期間(時刻T1以前および時刻T4以降)、垂直ブランキング期間内の時刻T2以前および時刻T3以降の期間ではハイレベル(VBB−high)、垂直ブランキング期間内の時刻T2からT3までの期間では、ローレベル(VBB−low)の電圧値をとる。なお、後述のように裏面バイアスパルスΦBBのハイレベルとは0ボルト(接地電位)であり、ローレベルとは、負の電圧である。
【0050】
この時刻T2からT3までの期間が、信号電荷をフォトダイオード11から電荷蓄積層13に転送する第1の電荷転送期間に相当する。すなわち、裏面バイアスパルスΦBBがローレベルのときに信号電荷のフォトダイオード11から電荷蓄積層13への転送が実行される。この転送の仕組みについては後述する。
なお、垂直走査を連続して行う動画撮像の場合は、受光された入射光を光電変換すると共に光電変換された信号電荷をフォトダイオード11に蓄積するフォトダイオード蓄積期間が上記の時刻T2からT3までの期間以外の期間、すなわち任意の垂直ブランキング期間中の時刻T3から、次回の垂直ブランキング期間中の時刻T2までの期間に含まれる。
【0051】
特に、露光期間もしくは蓄積期間を別途制御するための手段を用いない場合には、上記フォトダイオード蓄積期間は、任意の垂直ブランキング期間中の時刻T3から、次の垂直ブランキング期間中の時刻T2までの期間に相当する。一方、垂直走査を一回のみ行う静止画撮像の場合は、フォトダイオード蓄積期間は、時刻T2からT3までの期間以前の期間に設定される。この意味で、フォトダイオード蓄積期間は、垂直ブランキング期間中の第1の電荷転送期間を除いて、各行における水平走査期間と水平ブランキング期間を含む垂直走査期間の少なくとも1部を含む期間とすることができる。但し、転送期間中にも入射光を受光する場合には、転送期間に光電変換された信号電荷は、同じ転送期間にフォトダイオード11から電荷蓄積層13に転送されることになり、転送期間も光電変換に寄与する期間となる。
【0052】
図5は、水平ブランキング期間において、読み出しが選択された行の各単位セル(各画素)に印加される行選択パルスΦSEL、リセットパルスΦRS、トランスファパルスΦTG、裏面バイアスパルスΦBB、および電荷蓄積層13の電位(電荷蓄積層電位)と、浮遊拡散層15の電位(浮遊拡散層電位)のそれぞれの変動を示している。
同図に示すように、行選択パルスΦSELがハイレベルとなる時刻T5からT10までの期間において、時刻T6からT7の期間にリセットパルスΦRSがハイレベルとなり、これにより浮遊拡散層電位が基準電位にリセットされる。そして、時刻T8からT9の期間にトランスファパルスΦTGがハイレベルとなる。これにより、電荷蓄積層13に蓄積された信号電荷が浮遊拡散層15に転送(出力)され、増幅トランジスタM43、選択トランジスタM44を介して、列読み出し回路4に送られる。
【0053】
この時刻T8からT9までの期間が信号電荷を電荷蓄積層13から浮遊拡散層15に転送(出力)する第2の電荷転送期間に相当する。なお、水平ブランキング期間を通して、裏面バイアスパルスΦBBは、ハイレベルに維持される。
図4および図5に示すように、裏面バイアスパルスΦBBは、全ての単位セルについて、垂直ブランキング期間内の特定の期間にのみ同じタイミングでローレベルになり、水平ブランキング期間を通してハイレベルになっている。また、図示していないが裏面バイアスパルスΦBBは、水平走査期間を通してもハイレベルになっている。
【0054】
このような電位レベルをとる固体撮像素子の構成において、1つの単位セル8における信号電荷の転送の様子をまず図6を用いて説明し、次に図4と図5に示す電位レベルの具体的な内容を説明する。
図6は、図2中のA−A’線、およびC−C’線に沿った電位分布を示す図である。
同図は、横軸が第1面側の蓄積表面層17〜第2面側の受光表面層12までの各領域の位置を示しており、縦軸が電位(下向きが正)を示しており、裏面バイアスパルスΦBBのハイレベルVBB−highが0V、ローレベルVBB−lowが負の電圧値である場合の電位分布の例を示している。図6(a)は、図4中の時刻t1における電位分布を、図6(b)は、時刻t2における電位分布を、図6(c)は、時刻t3における電位分布をそれぞれ示している。
【0055】
図6(a)に示すように、時刻t1(フォトダイオード蓄積期間の一時点)に、P型の受光表面層12には裏面バイアスパルスΦBBのハイレベルの信号、ここでは0V(第1のバイアス電圧)が印加されており、P型の受光表面層12の電位は、P型の第1の分離領域19を介して接地されているP型の蓄積表面層17の接地電位と等しくなっている。図中実線(A−A’線に沿った電位分布)で示すようにフォトダイオード11には、受光された入射光が光電変換されたことにより得られた信号電荷を蓄積するための電位井戸(グラフの谷の部分)が形成され、この電位井戸に蓄積された信号電荷が電荷蓄積層13に流出しないように、電位障壁層14に電位障壁(グラフの山の部分)が形成される。この意味で第1のバイアス電圧は、信号電荷を電位障壁により電荷蓄積層13に転送させないための第1電圧ということができる。
【0056】
この電位障壁は、N型のフォトダイオード11、P型の電位障壁層14、N型の電荷蓄積層13が順次、半導体基板10の第2面から第1面に向かう方向に沿って並ぶように設けられ、P型の電位障壁層14がN型のフォトダイオード11とN型の電荷蓄積層13との間に挟まれて空乏化されることにより形成される。
また、図中破線(C−C’線に沿った電位分布)で示すように、隣接する単位セル(画素)との素子分離領域においては、半導体基板10内において第1面に近いP型ウエル18と第2面に近い第2の分離領域20をつなぐように設けられた第3の分離領域21では、電位井戸に蓄積した信号電荷が隣接する単位セルの電位井戸に流出しないように約0Vの電位障壁が形成される。この図6(a)に示す電位分布の状態は、フォトダイオード蓄積期間に維持され続ける。
【0057】
半導体基板10内に第2面から厚み方向に第1面に亘って、隣り合うもの同士の極性が異なるように受光表面層12〜蓄積表面層17を設ける構成をとっているので、電位分布のグラフがN型のフォトダイオード11のところで、両側に位置するP型の受光表面層12と電位障壁層14の山型の部分に対して谷の部分(電位井戸)ができる。フォトダイオード11と電荷蓄積層13の間の電位障壁(山の部分)は、フォトダイオード蓄積期間に存在し続けるので、半導体基板10内において光電変換された信号電荷は、フォトダイオード11内に存在するものはもちろんのこと、フォトダイオード11の近傍に存在するものも含めて、フォトダイオード11に形成された電位井戸のところに集まり易くなる。
【0058】
図6(b)に示すように、時刻t2(第1の電荷転送期間中の一時点)には、裏面バイアスパルスΦBBのローレベル、すなわちフォトダイオード11から電荷蓄積層13に向かって電位が単調増加するような負の電圧値(第2のバイアス電圧)が印加される。
これにより電位障壁層14の電位障壁がなくなって、フォトダイオード11から電荷蓄積層13に信号電荷を転送するための電界が形成され、時刻t2までのフォトダイオード蓄積期間においてフォトダイオード11に蓄積された信号電荷が電荷蓄積層13に転送される。フォトダイオード11から電荷蓄積層13に向かって電位が単調増加しているため、フォトダイオード11に蓄積されていた信号電荷を完全転送することができ、フォトダイオード11に一部が残ることによる残像やランダムノイズなどの発生が防止される。この意味で、第2のバイアス電圧は、信号電荷を電位障壁層14を介して電荷蓄積層13に転送するための第2電圧ということができる。フォトダイオード11から電荷蓄積層13への信号電荷の転送は、全単位セルについて同時に実行される。
【0059】
第1の電荷転送期間では受光表面層12には、半導体基板10の第1面に設けられた第1の分離領域19に印加される電圧よりも低い第2のバイアス電圧が印加される。このため、第1の分離領域19から受光表面層12に向かって、主に隣接するフォトダイオード間を区画分離するP型の分離領域21等を経由して電流が流れるが、第2のバイアス電圧が印加される期間は、垂直ブランキング期間内の所定の期間に限られており、消費電力を抑制しつつ、消費電力の増加に伴う温度上昇に起因するランダムノイズなどの増加を防止できる。このことは、後述する他の実施の形態において同様である。
【0060】
図6(c)に示すように、時刻t3(第1の電荷転送期間の終了後の時刻)では、信号電荷のフォトダイオード11から電荷蓄積層13への転送が完了している。フォトダイオード蓄積期間の開始時期の設定によって、時刻t3では既に次の蓄積期間に入っている場合もあるし、これ以降に開始される場合もあり得る。また、露光期間の設定等によって、時刻t3では既に次の信号電荷の蓄積が開始されている場合もあるし、これ以降に開始される場合もあり得る。
【0061】
上述の信号電荷の転送に伴う、垂直ブランキング期間中のフォトダイオード11および電荷蓄積層13の電位変動の様子を具体的に図4を用いて説明する。
図4において、フォトダイオード電位は、時刻T2において、裏面バイアスパルスΦBBのローレベルへの電位変化による受光表面層12の電位変化に伴い、受光表面層12との容量結合により、ΔVPD1だけ電位が負方向にシフトし、その直後からフォトダイオード11に蓄積されている信号電荷がフォトダイオード11から流出するために、信号電荷の流出分(ΔVPD2)だけ電位が上昇する。
【0062】
そして、時刻T3では、裏面バイアスパルスΦBBのローからハイレベルへの電位変化による受光表面層12の電位変化に伴い、受光表面層12との容量結合により、ΔVPD1だけ電位が正方向にシフトする。結果として、フォトダイオード電位は、転送前後でΔVPD2だけ上昇する。
一方、電荷蓄積層電位は、時刻T2において、受光表面層12の電位変化に伴い、受光表面層12との容量結合により、ΔVST1だけ電位が負方向にシフトし、その直後からフォトダイオード11から電位障壁層14を介して送られてくる信号電荷が流入するために、その信号電荷の流入分(ΔVST2)だけ電位が降下する。そして、時刻T3では、受光表面層12の電位変化に伴い、受光表面層12との容量結合により、ΔVST1だけ電位が正方向にシフトする。結果として、電荷蓄積層電位は、転送前後でΔVST2だけ下降する。
【0063】
次に、上述の信号電荷の転送に伴う、水平ブランキング期間中における電荷蓄積層13および浮遊拡散層15の電位変動について、図5を用いて説明する。ここで、図5に示す電位変動は、撮像領域のうち、行選択パルスΦSELがハイレベルとなる選択行に対応する画素におけるものである。
電荷蓄積層電位は、時刻T8において、トランスファパルスΦTGがハイレベルとなることにより、信号電荷が電荷蓄積層13から浮遊拡散層15に向けて転送(読み出し)が行われるために、その信号電荷の転送分(ΔVST2)だけ電位が上昇する。
【0064】
一方、浮遊拡散層電位は、時刻T6において、リセットパルスΦRSがハイレベルとなることにより、それまで浮遊拡散層15に蓄積していた信号電荷が浮遊拡散層15から排出されるため、信号電荷排出分(ΔVFD1)だけ電位が上昇する。そして、時刻T8ではトランスファパルスΦTGがハイレベルとなることにより、信号電荷が電荷蓄積層13から転送されて浮遊拡散層15に入るために、その信号電荷の転送分(ΔVFD2)だけ電位が降下する。
【0065】
図5において、浮遊拡散層15から前の信号電荷が排出され、次の信号電荷が電荷蓄積層13から転送されるまでの期間内に基準電位出力期間を設定し、信号電荷の転送が完了した期間内に信号出力期間を設定している。基準電位出力期間と信号出力期間との浮遊拡散層15の電位差ΔVFD2に相当する信号電荷を、増幅トランジスタM43などの画素アンプを介して順次読み出すことにより、列読み出し回路4に出力することができる。
【0066】
図4および図5に示した駆動方法により、1画面分の画像信号に寄与するすべてのフォトダイオード11の信号電荷が、フォトダイオード11から電荷蓄積層13に第1の電荷転送期間に同一タイミングで転送される。これにより、光電変換された信号電荷をフォトダイオード11に蓄積するフォトダイオード蓄積期間が1画面分の画像信号に寄与するすべてのフォトダイオード11で同一の期間となり、いわゆるグローバルシャッターを実現することができる。
【0067】
このように半導体基板10内に第2面から厚み方向に第1面に向かって、P型、N型、P型、N型、P型の各層(受光表面層12、フォトダイオード11、電位障壁層14、電荷蓄積層13、蓄積表面層17)を順に設けることにより、信号電荷の転送以外のときには、電位分布グラフが第2面から第1面に亘って山、谷、山、谷、山の部分が形成されるグラフになり、フォトダイオード11に形成される谷の部分(電位井戸)に、光電変換された信号電荷が集まり易くなる。電位井戸に導く電界強度をより強くすることができ、フォトダイオード11の電位井戸をある程度深くしても信号電荷を全て転送することが可能になり、拡散により生じるクロストーク不良を防止することができる。
【0068】
そして、信号電荷の転送時には、第2面側から第1面側に亘って電位が単調増加するような電圧をかけて、信号電荷を転送するための電界を形成させるので、フォトダイオード11のところに形成された電位井戸に蓄積されていた信号電荷を電位障壁層14を介して電荷蓄積層13に転送させることができる。これにより、従来のようにフォトダイオードと信号電荷転送路が同極性でありフォトダイオードから信号電荷伝達路に向けて信号電荷を送るための電界を形成できないためにフォトダイオードに転送電荷の一部が残るといったことが生じなくなり、残像やランダムノイズの発生を防止することができる。
【0069】
また、第1の電荷転送期間に電圧を印加して信号電荷を転送するための電界を形成させるので、従来の構成において蓄積された信号電荷を信号電荷伝達路に導く電界を形成するために、半導体基板を例えば真性に近いものにすることにより電位井戸が浅くなってしまいクロストークが生じるといったことも防止される。
さらに、光電変換された信号電荷を転送以外のときにはフォトダイオード11のところに形成された電位井戸に集めておき、転送時にだけ転送のための電圧を印加することによりフォトダイオード11に蓄積された信号電荷を出力できるので、従来のように転送のための電圧を常時、印加し続けなくても良くなり、低消費電力を実現しつつ、温度上昇に伴うランダムノイズなどの発生を防止することもできる。なお、上記では第1のバイアス電圧とこれよりも低い第2のバイアス電圧とが選択的に電極(金属遮光膜23)から受光表面層12に印加される構成をとると共に、第1のバイアス電圧を0Vとして転送時以外のときにおける電力消費をより抑制できる構成例を説明したが、電圧値がこれに限られることはなく、上述の効果を得られる範囲で適した値を設定することができる。
【0070】
<実施の形態2>
上記実施の形態では、信号電荷の転送用の電圧を受光表面層12に供給するための電極として金属遮光膜23を用いる例を説明したが、本実施の形態では、透明電極を設けるとしており、この点が実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0071】
図7は、実施の形態2に係る固体撮像素子の撮像領域を構成する単位セルの要部断面図である。
同図に示すように、半導体基板10内および第1面側の構造は、実施の形態1と同じである。実施の形態1との違いは、受光表面層12上に、電子注入防止層31および透明電極32が設けられている点にある。
【0072】
透明電極32は、裏面バイアス発生回路7に接続されており、裏面バイアス発生回路7からのバイアス電圧は、透明電極32と電子注入防止層31を介して受光表面層12に印加される。電子注入防止層31を設けることにより、裏面バイアス発生回路7により裏面バイアスパルスΦBBが印加されたときに、半導体基板10内に透明電極32からの電子の注入を防止することができる。
【0073】
そして、金属遮光膜23に代えて透明電極32を設けることにより、単位セル8の受光面の全面が遮光されない開口領域となり、すなわち開口率100%となり、感度がさらに向上すると共に、受光表面層12全体に均一にバイアス電圧を印加することができる。
例えば、受光表面層12の面方向に電極の近傍位置と離れた位置とで印加電圧の値に差が生じる構成では、受光表面層12がP型の場合、電極から離れた位置で受光表面層12の電位が高くなり、半導体界面近傍をホールで充満させることができず、暗電流が増加するおそれがあるが、本実施の形態のように面方向に均一に電圧を印加する構成をとることにより、受光表面層12の電位が高くなるところを生じさせないようにして、確実に暗電流の発生を抑制することが可能になる。
【0074】
また、同様に受光表面層12がP型の場合、受光表面層12の面方向に電極の近傍位置と離れた位置とで印加電圧の値に差が生じる構成では、信号電荷転送期間に、電極から離れた位置で受光表面層12の電位がローレベルVBB−lowより高くなり、フォトダイオード11から電荷蓄積層13に向かう電界が弱くなるために転送が劣化するおそれがあるが、本実施の形態のように面方向に均一に電圧を印加する構成をとることにより、受光表面層12の電位を均一にローレベルVBB−lowにすることができ、転送劣化を防止することが可能になる。
【0075】
<実施の形態3>
上記実施の形態では、垂直ブランキング期間内における一定期間にのみフォトダイオード11に蓄積された信号電荷を電荷蓄積層13に転送させるとしたが、これに代えて、本実施の形態では、水平ブランキング期間毎に、その期間内に転送させるとしており、この点が異なっている。
【0076】
概略すると、各単位セル8が、その単位セルの属する行が選択されるまでの間、水平ブランキング期間毎にフォトダイオード11に蓄積された信号電荷を電荷蓄積層13に転送して電荷蓄積層13に蓄積していく。水平ブランキング期間において行が選択されると、その選択行に属する各単位セル8において、それまでの間に電荷蓄積層13に蓄積されてきた信号電荷を浮遊拡散層15から増幅トランジスタM43、選択トランジスタM44を介して垂直信号線VLに出力するものである。
【0077】
図8と図9は、本実施形態に係る固体撮像素子の駆動方法を示すタイミングチャートであり、図8は、選択されていない行(非選択行)に属する単位セル8におけるものであり、図9は、選択された行(選択行)に属する単位セル8におけるものである。
図8に示すように、非選択行については水平ブランキング期間内において、行選択パルスΦSEL、リセットパルスΦRS、トランスファパルスΦTGがローレベルのままになっているが、裏面バイアスパルスΦBBは、時刻T31からT32までの期間だけローレベルに変化している。
【0078】
この裏面バイアスパルスΦBBがローレベルとなる期間(第1の電荷転送期間)に、上述の図6に基づいて説明したメカニズムにより、フォトダイオード11に蓄積されている信号電荷がフォトダイオード11から電荷蓄積層13に転送される。上記実施の形態と同様に、負の裏面バイアスパルスΦBB(ローレベルの信号)は、撮像領域を構成するすべての単位セル(画素)8に共通して同時に印加される。
【0079】
このため、選択行、非選択行に関わらず、一水平走査期間に蓄積されたすべてのフォトダイオード11の信号電荷が、各水平ブランキング期間毎に電荷蓄積層13に転送されることになる。この信号電荷の転送に伴い、フォトダイオード電位は、信号電荷の流出分(ΔVPD2)だけ電位が上昇し、電荷蓄積層電位は、信号電荷の流入分(ΔVST2)だけ電位が降下する。なお、裏面バイアスパルスΦBBの変化時である時刻T31および時刻T32において、フォトダイオード電位および電荷蓄積層電位がΔVPD1またはΔVST1だけシフトする現象は、図4を用いて上述した通りである。
【0080】
水平ブランキング期間毎に非選択行において、図8に示す信号電荷の転送が繰り返し実行される。
一方、選択行では、図9に示すように水平ブランキング期間内の行選択パルスΦSELがハイレベルとなる時刻T11からT18までの期間において、時刻T12からT13の期間にリセットパルスΦRSがハイレベルとなり、時刻T16からT17の期間にトランスファパルスΦTGがハイレベルとなる。また、リセットパルスΦRSのハイレベル期間後、かつトランスファパルスΦTGのハイレベル期間前の、時刻T14からT15の期間に裏面バイアスパルスΦBBがローレベルとなる。
【0081】
これにより、現にフォトダイオード11に蓄積されている信号電荷がフォトダイオード11から電荷蓄積層13に転送される。なお、同図では、フォトダイオード電位をΔVPD2´として、図8のものと区別しているが、これはフォトダイオード11に光電変換により蓄積される信号電荷が水平ブランキング期間毎に電荷蓄積層13に転送されるため、フォトダイオード11に蓄積される信号電荷が水平ブランキング期間毎に同じものとはいえないからである。ΔVST2についても同様である。
【0082】
そして、時刻T16になると、トランスファパルスΦTGの印加により、現に電荷蓄積層13に蓄積されている信号電荷が浮遊拡散層15にすべて転送され、トランスファパルスΦTGの印加後、電荷蓄積層13の信号電荷は空となる。これに伴い、電荷蓄積層電位は、ΔVST3だけ上昇し、浮遊拡散層電位は、ΔVFD3だけ下降する。
垂直走査を連続して行う動画撮像の場合は、電荷蓄積層13は、選択行となったタイミングのトランスファパルスΦTGの印加後から、次のタイミングで選択行となり、再びトランスファパルスΦTGが印加されるまでの期間にわたり、各水平ブランキング期間毎に少しずつ信号電荷を蓄積する。
【0083】
光電変換された信号電荷をフォトダイオード11に蓄積するフォトダイオード蓄積期間は、選択行となった水平ブランキング期間中の、負の裏面バイアスパルスΦBBの印加終了時刻T15から、次のタイミングで選択行となった水平ブランキング期間中の、負の裏面バイアスパルスΦBBの印加終了時刻T14までとなる。この意味で、フォトダイオード蓄積期間は、第1の電荷転送期間を除く期間であり、少なくとも水平走査期間を含む期間とすることができる。
【0084】
すなわち、フォトダイオード蓄積期間は、一行毎に一水平走査周期ずつずれる、いわゆるローリングシャッターとなる。
このように水平ブランキング期間毎に非選択行のときにはフォトダイオード11に蓄積された信号電荷を転送して電荷蓄積層13に蓄積していき、選択行となったときに電荷蓄積層13にそれまでの間に蓄積されていた信号電荷を出力する構成をとることもでき、これにより、ローリングシャッターを実現することができる。
【0085】
<実施の形態4>
上記実施の形態3では、選択行において負の裏面バイアスパルスΦBBと正のトランスファパルスΦTGとが重ならないようにタイミングをずらす構成であったが、本実施の形態では、負の裏面バイアスパルスΦBBと正のトランスファパルスΦTGの印加時期が重なる、具体的には最初に負の裏面バイアスパルスΦBBが印加され、続いて正のトランスファパルスΦTGの印加が開始され、その後、両者の印加が同時に終了する構成になっており、この点が異なっている。
【0086】
図10は、実施の形態4に係る固体撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。同図では、選択行と非選択行の両方を併せて示している。
非選択行においては、同図には示していないが、上記実施の形態3の非選択行と同様に、水平ブランキング期間に行選択パルスΦSEL、リセットパルスΦRS、トランスファパルスΦTGが印加されず、裏面バイアスパルスΦBBだけが印加される。フォトダイオード電位と電荷蓄積層電位(非選択行)における電位の変化は、図8と同じである。
【0087】
一方、選択行では、図10に示すように水平ブランキング期間内に行選択パルスΦSEL、リセットパルスΦRS、トランスファパルスΦTG、裏面バイアスパルスΦBBが印加される。この際、トランスファパルスΦTGがハイレベルである期間が、裏面バイアスパルスΦBBがローレベルである期間に重なるようになっている。
すなわち、時刻T22に裏面バイアスパルスΦBBが立ち下がり、次に時刻T23にトランスファパルスΦTGが立ち上がり、それから時刻T24になると同時に裏面バイアスパルスΦBBが立ち上がると共にトランスファパルスΦTGが立ち下がる。
【0088】
このように、選択行になったときに裏面バイアスパルスΦBBの印加を先に開始し、その直後にトランスファパルスΦTGの印加を開始する構成をとることにより、単位セル8においてフォトダイオード11に蓄積されている信号電荷を電荷蓄積層13に転送しつつ、電荷蓄積層13から信号電荷を浮遊拡散層15、画素アンプを介して単位セルの外に出力するという動作を一度に実行することができる。この動作を図11を用いて説明する。
【0089】
図11は、図2中のA−A’線、およびC−C’線に沿った電位分布を示す図であり、図11(a)、(b)および(c)は、それぞれ図10中の時刻t4、時刻t5および時刻t6における電位分布図である。裏面バイアスパルスΦBBのハイレベル(VBB−high)が0V、ローレベル(VBB−low)が負の電圧値である場合の例である。
図11(a)に示すように、時刻t4(光電変換により発生した信号電荷を蓄積する期間の一時点)では、P型の受光表面層12には裏面バイアスパルスΦBBのハイレベル(0V)が印加されており、P型の受光表面層12の電位は、P型の第1の分離領域19を介して接地されているP型の蓄積表面層17の電位と等しい。図中実線で示すように、フォトダイオード11および電荷蓄積層13には、信号電荷を蓄積するための電位井戸が形成されており、信号電荷は、フォトダイオード11と電荷蓄積層13の両方に蓄積されている様子が示されている。
【0090】
本実施の形態の単位セルは、図2に示す単位セル8の構成と基本的に同じであるが、受光時に、光電変換により発生した信号電荷がフォトダイオード11と電荷蓄積層13の両方に蓄積可能なように、半導体基板10の各層の厚みや濃度などが工夫されている。
このようにフォトダイオード11と電荷蓄積層13の両方に分けて信号電荷を蓄積できるようにすれば、信号電荷の最大蓄積電荷量がフォトダイオード11の最大蓄積電荷量と電荷蓄積層13の最大蓄積電荷量との和となるので、フォトダイオード11と電荷蓄積層13それぞれについては最大蓄積電荷量をそれほど大きくとる必要がなくなる。
【0091】
このため、一旦フォトダイオード11に信号電荷を蓄積し、蓄積された全ての信号電荷を転送して電荷蓄積層13に蓄積する構造に比べて、フォトダイオード11と電荷蓄積層13のN型不純物濃度を低くし、それぞれの領域について電位井戸の深さおよび最大蓄積電荷量を少なく設計できるというメリットがある。
なお、C−C’線に沿った素子分離領域においては、P型ウエル18と第2の分離領域20をつなぐように設けられた第3の分離領域21が図中波線で示す電位分布となり、電位井戸に蓄積した信号電荷が隣接画素の電位井戸に流出しない約0Vの電位障壁を形成している。
【0092】
このように信号電荷の蓄積期間においては、フォトダイオード11および電荷蓄積層13の双方に電位井戸が形成され、各層を囲む隣接画素間の素子分離領域に約0Vの電位障壁が形成され、フォトダイオード11と電荷蓄積層13の近傍で発生した信号電荷を電位井戸に導く電界強度を強くでき、拡散により生じるクロストーク不良を防止できる。
図11(b)に示すように、時刻t5(裏面バイアスパルスΦBBがローレベルかつトランスファパルスΦTGがハイレベルである重複期間の一時点)では、フォトダイオード11から電荷蓄積層13に向かって電位が単調増加する状態となっていると共に、トランスファパルスΦTGがハイレベルになっており、図示していないが電荷蓄積層13から浮遊拡散層15に向かって電荷を転送する電界が形成された状態になっている。
【0093】
すなわち、信号電荷をフォトダイオード11から電荷蓄積層13を介して浮遊拡散層15に向けて転送させるための電位勾配が形成されるようになっており、これにより当該期間中にフォトダイオード11と電荷蓄積層13の両方に蓄積されていた信号電荷が同時に浮遊拡散層215に向けて勢い転送される。この転送方法によっても、上記実施の形態と同様に信号電荷を完全転送できるので、ランダムノイズ等の発生を防止できる。
【0094】
図11(c)に示すように、時刻t6では、上述の電荷転送期間の終了後の時刻であるので、信号電荷の浮遊拡散層15への転送が完了し、フォトダイオード11および電荷蓄積層13の電位井戸は共に空(信号電荷が蓄積されていない状態)になり、次の信号電荷の蓄積期間が開始される。
図10に戻って、裏面バイアスパルスΦBBの立ち上がりがフォトダイオード11における信号電荷の蓄積期間の終了時刻を規定し、また、トランスファパルスΦTGの立ち下がりが電荷蓄積層13における信号電荷の蓄積期間の終了時刻を規定しており、両時刻を共に同じ時刻T24に設定することにより、信号電荷の蓄積期間がフォトダイオード11および電荷蓄積層13で完全に同期するようになっている。
【0095】
このように本実施の形態では、選択行になったときに水平ブランキング期間内において裏面バイアスパルスΦBBのローレベルの期間とトランスファパルスΦTGのハイレベルの期間とがほとんど重複する構成をとることにより、フォトダイオード11と電荷蓄積層13の両方について、N型不純物濃度を低くして電位井戸の深さおよび最大蓄積電荷量が少なくなるように設計を行いつつ、フォトダイオード11と電荷蓄積層13の両方に蓄積されていた信号電荷をそれぞれの領域に残すことなく浮遊拡散層15に転送することができランダムノイズ等の発生を防止することが可能になる。
【0096】
また、N型不純物濃度を低くして電位井戸の深さを浅くすることにより、フォトダイオード11から電荷蓄積層13に向かって電位が単調増加するために必要な受光表面層12に印加する負の印加電圧の絶対値を小さくすることができる。
また、半導体基板10の膜厚を薄くすることにより入射光がフォトダイオード11を透過し、電荷蓄積層13近傍で吸収されるようになっても、その近傍で光電変換された電荷も電荷蓄積層13の電位井戸に蓄積されるようになり、信号電荷として利用することができる。従って、一旦フォトダイオード11に単独で信号電荷を蓄積する構造と比較して、半導体基板10の膜厚をより薄くできる。さらに、一旦フォトダイオード11に単独で信号電荷を蓄積する構造と比較して、フォトダイオード11と電荷蓄積層13の電位井戸が浅いので、裏面バイアスパルスΦBBを振幅のより小さな電圧を印加するだけで信号電荷を転送することが可能になり、省電力化を図ることもできるという効果を奏する。
【0097】
なお、裏面バイアスパルスΦBBのローレベルの期間とトランスファパルスΦTGのハイレベルの期間とが重複する期間は、上記に限られない。ただし、フォトダイオード11と電荷蓄積層13で蓄積される信号電荷の発生する期間(露光期間)を、フォトダイオード11と電荷蓄積層13で同じにするために、裏面バイアスパルスΦBBの立ち上がりは、トランスファパルスΦTGの立ち下がりと同じかもしくは遅い必要がある。もし、裏面バイアスパルスΦBBの立ち上がりが、トランスファパルスΦTGの立ち下がりより早い場合には、電荷蓄積層13における信号電荷の一部が先行して出力され、信号電荷の蓄積期間がフォトダイオード11および電荷蓄積層13で一致しなくなる。
【0098】
本実施の形態では、単位セル8の構成を図2のものを用いるとしたが、これに限られない。実施の形態2のものにも適用できる。
さらに、本実施の形態に係る図10に示す駆動方法をとる場合、フォトダイオード11と電荷蓄積層13との間に電位障壁を形成しなくても適用することができ、P型の電位障壁層14に代えて、例えば低濃度P型層、I型層、N型層のものを用いる構成をとることもできる。電位障壁を形成しない構成では、フォトダイオードと電荷蓄積層の双方が蓄積領域を形成、またはこれらを一体の蓄積領域とした構成とすることができる。上記の駆動方法を用いれば蓄積領域に蓄積された信号電荷を信号読み出し回路に送るための電界を形成しつつ同時に蓄積領域から信号電荷を読み出すことを実行して、蓄積された信号電荷の一部が残るといったことを防止して信号電荷の読み出しを効率良く行うことができる。
【0099】
また、画素間を区画分離する第2の分離領域20、第3の分離領域21がない構造であっても当該駆動方法を適用できる。フォトダイオード11と電荷蓄積層13の両方に電荷を蓄積できるため、電荷蓄積層13の周辺の電荷も信号電荷に用いることができ、クロストークが発生し難くなるからである。
なお、上記各実施の形態では、本発明に係る固体撮像素子をC−MOSイメージセンサに適用する場合の構成例を説明したが、これに限られず、例えばCCDイメージセンサなどにも適用することができる。
【0100】
また、固体撮像素子に限られず、当該固体撮像素子における駆動方法であるとしてもよい。さらに、半導体基板10に設けられる、第1導電型である受光表面層12と電位障壁層14をP型、第1導電型とは逆極性の第2導電型であるフォトダイオード11と電荷蓄積層13をN型とした構成例を説明したが、これに限られない。
例えば、N型とP型を入れ替えた構成、具体的には第1導電型をN型、第2導電型をP型とした構成にも適用できる。この場合、バイアス電圧の極性も上記とは逆の極性になり、例えばフォトダイオード11から電荷蓄積層13への信号電荷の転送期間には、フォトダイオード11から電荷蓄積層13に向かって電位が単調減少する電位分布が形成されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、低ノイズ、低消費電力などが望まれるビデオカメラやデジタルスチルカメラなどに用いられる固体撮像素子に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
7 裏面バイアス発生回路
8 単位セル
10 半導体基板
11 フォトダイオード
12 受光表面層
13 電荷蓄積層
14 電位障壁層
15 浮遊拡散層
16 トランスファゲート
17 蓄積表面層
19 第1の分離領域
20 第2の分離領域
21 第3の分離領域
26 配線層
31 電子注入防止層
32 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一方の主面である裏面を受光面とした単位セルが複数、行列状に配列されてなる裏面照射型の固体撮像素子であって、
前記各単位セルは、
前記半導体基板内において厚み方向に前記裏面に最も近い位置に設けられた第1導電型の受光表面層と、
前記半導体基板内において前記受光表面層よりも前記半導体基板の他方の主面である表面に近い側に設けられ、前記受光表面層に入射された光を光電変換して得られた信号電荷を蓄積する、第1導電型とは逆極性の第2導電型の光電変換領域と、
前記半導体基板内において前記光電変換領域よりも前記表面に近い側に設けられ、前記光電変換領域から転送された信号電荷を蓄積する第2導電型の電荷蓄積層と、
前記半導体基板内において前記光電変換領域と前記電荷蓄積層との間に介在する第1導電型の電位障壁層と、
前記光電変換領域に蓄積される信号電荷を前記電位障壁層の電位障壁により前記電荷蓄積層に転送させないための第1電圧と、前記信号電荷を前記電位障壁層を介して前記電荷蓄積層に転送するための第2電圧を選択的に前記受光表面層に印加する電極と、
を備えることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記電極に前記電圧を供給するバイアス回路を備え、
前記バイアス回路は、
前記第1電圧として、
前記光電変換領域に信号電荷を蓄積する蓄積期間に、前記電位障壁層に電位障壁が形成される電圧を供給し、
前記第2電圧として、
前記信号電荷の転送期間には、前記第1導電型がP型、前記第2導電型がN型の場合に前記光電変換領域から前記電荷蓄積層に向かって電位が単調増加する電圧を供給し、前記第1導電型がN型、前記第2導電型がP型の場合に前記光電変換領域から前記電荷蓄積層に向かって電位が単調減少する電圧を供給することを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記転送期間は、
垂直ブランキング期間中の所定の期間であり、
前記蓄積期間は、
前記所定の期間を除く期間であり、水平走査期間と水平ブランキング期間を含む垂直走査期間の少なくとも一部を含む期間であることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記転送期間は、
水平ブランキング期間中の所定の期間であり、
前記蓄積期間は、
前記所定の期間を除く期間であり、少なくとも水平走査期間を含む期間であることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記転送期間の少なくとも一部が前記電荷蓄積層から信号電荷を出力する期間に重なり、前記転送期間と前記出力する期間が略同時に終了することを特徴とする請求項4に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記半導体基板内において前記電荷蓄積層よりも前記表面に近い側に第1導電型の蓄積表面層が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記電極は、
前記半導体基板の裏面上に設けられ、当該受光表面層と電気的に接続された透明電極であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記第1電圧が接地電位であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
半導体基板の一方の主面である裏面を受光面とした単位セルが複数、行列状に配列されてなる裏面照射型の固体撮像素子の駆動方法であって、
前記各単位セルは、
前記半導体基板内において厚み方向に前記裏面に最も近い位置に設けられた第1導電型の受光表面層と、
前記半導体基板内において前記受光表面層よりも前記半導体基板の他方の主面である表面に近い側に設けられ、前記受光表面層に入射された光を光電変換して得られた信号電荷を蓄積する、第1導電型とは逆極性の第2導電型の光電変換領域と、
前記半導体基板内において前記光電変換領域よりも前記表面に近い側に設けられ、前記光電変換領域から転送された信号電荷を蓄積する第2導電型の電荷蓄積層と、
前記半導体基板内において前記光電変換領域と前記電荷蓄積層との間に介在する第1導電型の電位障壁層と、を備え、
当該駆動方法は、
前記光電変換領域に信号電荷を蓄積する蓄積期間に、前記光電変換領域に蓄積される信号電荷を前記電位障壁層の電位障壁により前記電荷蓄積層に転送させないための第1電圧を前記受光表面層に印加する第1ステップと、
前記信号電荷の転送期間に、前記信号電荷を前記電位障壁層を介して前記電荷蓄積層に転送するための第2電圧として、前記第1導電型がP型、前記第2導電型がN型の場合には前記光電変換領域から前記電荷蓄積層に向かって電位が単調増加する電圧を、前記第1導電型がN型、前記第2導電型がP型の場合には前記光電変換領域から前記電荷蓄積層に向かって電位が単調減少する電圧を前記受光表面層に印加する第2ステップと、
を含むステップを実行することを特徴とする固体撮像素子の駆動方法。
【請求項10】
前記転送期間は、
垂直ブランキング期間中の所定の期間であり、
前記蓄積期間は、
前記所定の期間を除く期間であり、水平走査期間と水平ブランキング期間を含む垂直走査期間の少なくとも一部を含む期間であることを特徴とする請求項9に記載の固体撮像素子の駆動方法。
【請求項11】
前記転送期間は、
水平ブランキング期間中の所定の期間であり、
前記蓄積期間は、
前記所定の期間を除く期間であり、少なくとも水平走査期間を含む期間であることを特徴とする請求項9に記載の固体撮像素子の駆動方法。
【請求項12】
前記転送期間の少なくとも一部が前記電荷蓄積層から信号電荷を出力する期間に重なり、前記転送期間と前記出力する期間が略同時に終了することを特徴とする請求項11に記載の固体撮像素子の駆動方法。
【請求項13】
前記第1電圧が接地電位であることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の固体撮像素子の駆動方法。
【請求項14】
半導体基板内において厚み方向に当該半導体基板の一方の主面である裏面に最も近い位置に設けられた第1導電型の受光表面層に入射された光を光電変換し、光電変換された信号電荷を当該半導体基板内において前記受光表面層よりも当該半導体基板の他方の主面である表面に近い側に設けられた、第1導電型とは逆極性の第2導電型の蓄積領域に蓄積し、蓄積された信号電荷を信号読み出し期間に当該半導体基板内で前記受光表面層よりも前記表面に近い側に設けられた読み出し回路により前記蓄積領域から読み出す単位セルが複数、行列状に配列されてなる裏面照射型の固体撮像素子の駆動方法であって、
信号電荷の蓄積期間に、
信号電荷の蓄積のための第1電圧として接地電位を前記受光表面層に印加し、
前記蓄積期間を除く期間であり、水平ブランキング期間中における所定の期間に、
前記第1導電型がP型、前記第2導電型がN型の場合には前記第1電圧よりも電位が低い第2電圧を前記受光表面層に印加し、
前記第1導電型がN型、前記第2導電型がP型の場合には前記第1電圧よりも電位が高い第2電圧を前記受光表面層に印加することを特徴とする固体撮像素子の駆動方法。
【請求項15】
前記蓄積期間は、
少なくとも水平走査期間を含む期間であることを特徴とする請求項14に記載の固体撮像素子の駆動方法。
【請求項16】
前記所定の期間の少なくとも一部が前記信号読み出し期間に重なり、前記所定の期間と前記信号読み出し期間が略同時に終了することを特徴とする請求項14または15に記載の固体撮像素子の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−40536(P2011−40536A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185860(P2009−185860)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】