説明

固体撮像素子および撮影装置

【課題】製造が容易で、且つ焦点検出用の画素を撮像画素としても兼用可能な固体撮像素子、およびこれを用いた撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影装置2のCCD11は、素子構造が対称な第一画素38a、第二画素38bと、各画素38a、38b同士を分離する素子分離層48に独立した電圧印加を可能とするLCS端子37とを有する。瞳分割位相差検出方式による焦点検出を行う場合は、各画素38a、38bの受光部30が左右対称に変形するようLCS端子37に所定電圧よりも正負いずれかの側にシフトした電圧(素子分離層48がp型半導体の場合は所定電圧よりも負側にシフトした電圧、n型半導体の場合は所定電圧よりも正側にシフトした電圧)が印加される。画像データを生成する場合は、各画素38a、38bの受光部30に変形が生じず各画素38a、38bの受光特性が等しくなるようLCS端子37に所定電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視差を有する複数の像を同時に取得可能な固体撮像素子、およびこれを用いた撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話等の撮影装置には、焦点検出に瞳分割位相差検出方式を採用したものがある。瞳分割位相差検出方式は、例えば左右の視差画像データを元にした焦点検出方法である。
【0003】
瞳分割位相差検出方式を採用した撮影装置には、固体撮像素子の画素の一部に、撮像画素とは別に焦点検出用の画素(視差検出用画素)を設けたものが知られている(特許文献1、2参照)。撮像画素は、全方位からの被写体光を均等に受光するため、被写体光が入射する開口部に合わせて被写体光の受光部を配置している。対して焦点検出用の画素は、ある特定の角度で斜入射する被写体光の受光感度を高めるため、開口部に対して受光部を片側にずらして配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−162845号公報
【特許文献2】特開2009−105682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像画素とは別に焦点検出用の画素を設けた特許文献1、2に記載の発明では、焦点検出用の画素は、撮像画素と構造が異なり、焦点検出用の画素と撮像画素を作り分ける工程以降の工程の均一性(この場合は光学層の形状均一性)が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
また、焦点検出用の画素は、特定の入射角の光のみを検出するものであり、受光量が撮像画素と比べて小さいため、画像データを生成する際には、焦点検出用の画素の画素値を、撮像画素の画素値と同じく画像データの一部としてそのまま用いることはできない。このため、画像データを生成するには、焦点検出用の画素の画素値を撮像画素の画素値のレベルに合わせるようゲイン補正を行ったり、焦点検出用の画素の画素値を用いずに、その周辺の撮像画素の画素値で補間処理を行うことが必要であり、画像処理が煩雑化するという問題もあった。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造が容易で、且つ視差検出用画素を撮像画素としても兼用可能な固体撮像素子、およびこれを用いた撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の固体撮像素子は、入射光に応じた信号電荷を生成して蓄積する受光部と、読み出しチャネル以外の受光部の周囲を取り囲むように形成された素子分離層とを有し、素子分離層が左右対称に配置された第一画素および第二画素が二次元状に配列された受光領域と、素子分離層の素子分離領域を実効的に拡大させ、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層に独立した電圧印加を可能とする外部端子と、を備えることを特徴とする。
【0009】
画像データを生成する場合は、第一画素および第二画素の受光部に変形が生じず、第一画素および第二画素の受光特性が等しくなるよう、素子分離層の外部端子に所定電圧が印加され、瞳分割位相差検出方式による焦点検出を行う場合は、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層がp型半導体の場合は所定電圧よりも負側にシフトした電圧、素子分離層がn型半導体の場合は所定電圧よりも正側にシフトした電圧が素子分離層の外部端子に印加される。また、グランド電圧を「所定電圧」に変更し、「導電型とは反対の極性の電圧」の表現をやめ、外部端子に印加する電圧をより明確にしました)。
【0010】
素子分離層は複数のグループに分けられており、第一画素および第二画素の受光部の変形の仕方がグループで異なるよう、異なる値の電圧を素子分離層の外部端子に印加し得るよう構成されていることが好ましい。
【0011】
第一画素と第二画素の行が交互に配列されていることが好ましい。
【0012】
本発明の撮影装置は、入射光に応じた信号電荷を生成して蓄積する受光部と、読み出しチャネル以外の受光部の周囲を取り囲むように形成された素子分離層とを有し、素子分離層が左右対称に配置された第一画素および第二画素が二次元状に配列された受光領域、並びに素子分離層の素子分離領域を実効的に拡大させ、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層に独立した電圧印加を可能とする外部端子を有する固体撮像素子と、前記外部端子の電圧制御をする制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
前記制御手段は、画像データを生成する場合は、第一画素および第二画素の受光部に変形が生じず、第一画素および第二画素の受光特性が等しくなるよう、素子分離層の外部端子に所定電圧を印加し、瞳分割位相差検出方式による焦点検出を行う場合は、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層がp型半導体の場合は所定電圧よりも負側にシフトした電圧、素子分離層がn型半導体の場合は所定電圧よりも正側にシフトした電圧を素子分離層の外部端子に印加する。
【0014】
第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形した状態で第一画素および第二画素から得られた画像データを元に、3D表示用の左目用画像と右目用画像を生成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、固体撮像素子を素子分離層が左右対称に配置された第一画素および第二画素を有する構成とし、素子分離層の素子分離領域を実効的に拡大させ、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層の外部端子に電圧を印加するので、製造が容易で、且つ視差検出用画素を撮像画素としても兼用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】撮影装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】CCDの概略構成を示す平面図である。
【図3】図2のa−a’線に沿うCCDの断面図である。
【図4】(A)はLCS端子を所定電圧とした場合、(B)はLCS端子に所定電圧よりも負側にシフトしたバイアス電圧を印加した場合の受光部の状態変化を示す説明図である。
【図5】3D表示技術に応用した場合の色フィルタの配置例を示す図である。
【図6】素子分離層を分割して2つのグループに分け、各グループに異なる値のバイアス電圧を印加した場合の受光部の状態変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、撮影装置2は、CPU10によって各部が統括的に制御され、CCD型固体撮像素子(以下、CCDと略す)11から得た撮像信号を画像データに変換して記録するデジタルスチルカメラである。CPU10には、シャッタボタン、メニューボタン、選択キーなどを含む操作部12から各種操作信号が入力され、CPU10は操作信号に応じて撮影装置2の各部の動作制御を行う。
【0018】
CCD11の受光領域34(図2参照)側には撮像レンズ13が設けられている。撮像レンズ13を透過した被写体光はCCD11の受光領域34に結像される。CCD11は、CCDドライバ14からの各種駆動パルス(垂直/水平走査パルス、電子シャッタパルス、読み出しパルス、リセットパルス等)に応じて駆動され、受光領域34に結像された像に応じた撮像信号を出力する。
【0019】
撮像レンズ13には、レンズ駆動部15が接続されている。撮像レンズ13は、主レンズ、フォーカスレンズ、ズームレンズを含む。レンズ駆動部15は、CPU10の制御の下、フォーカスレンズ、ズームレンズを光軸方向に移動させる。これにより焦点調整やズーミングが行われる。CPU10は、操作部12のシャッタボタンの半押しに応じて焦点調整や露光調整といった撮影準備処理を行う。
【0020】
CDS(相関二重サンプリング)/AGC(オートゲインコントロール)回路16は、CCD11から出力された撮像信号からリセットノイズを除去するとともに、ゲイン調整を行う。A/D変換器17は、CDS/AGC回路16から入力された撮像信号をデジタル化し、DSP(デジタル信号処理回路)18に出力する。CCDドライバ14、CDS/AGC回路16、およびA/D変換器17は、TG(タイミングジェネレータ)19から供給されるパルスにより、各々同期して動作する。
【0021】
DSP18は、A/D変換器17から出力された撮像信号に対して、色補間、YC変換、ガンマ補正、輪郭補正、ホワイトバランス補正などの所定の画像処理を施し、画像データを生成する。DSP18によって生成された画像データは、LCD(液晶ディスプレイ)21に表示されるか、またはシャッタボタンの全押しに応じてメモリカード20に記録される。
【0022】
CCD11の構成を示す図2において、CCD11は、受光部30、垂直転送路31、水平転送路32、出力アンプ33等の構成を有する。
【0023】
受光部30は、X方向(行方向)およびY方向(列方向)に沿って二次元状にCCD11の受光領域34に複数配置されている。受光部30は、pn接合型のフォトダイオードであり、入射光を光電変換し、入射光量に応じた信号電荷(電子)を生成して蓄積する。
【0024】
各受光部30の光入射側には、赤色フィルタ(R)、緑色フィルタ(G)、青色フィルタ(B)のいずれかが設けられており、受光部30は、R、G、B各色フィルタに対応する色成分の光を受光する。色フィルタは、GとRが交互にX方向に配列された奇数行35aと、BとGが交互にX方向に配列された偶数行35bとがY方向に交互に配列されてなる、いわゆるベイヤー配列となっている。
【0025】
奇数行35aの各受光部30は左側、偶数行35bの各受光部30は右側の垂直転送路31にそれぞれ読み出しチャネル36を介して接続されている。垂直転送路31には、読み出しチャネル36を介して受光部30から信号電荷が読み出され、垂直転送路31は読み出された信号電荷をY方向に垂直転送する。
【0026】
垂直転送路31は、その上に形成された複数の転送電極に位相が異なる四種の垂直走査パルスφV1、φV2、φV3、φV4が印加されることにより駆動される。垂直走査パルスには、受光部30の信号電荷を垂直転送路31に読み出し転送するための読み出しパルスが重畳される。読み出しパルスが印加されると、読み出しチャネル36は、受光部30に蓄積された信号電荷が垂直転送路31に漏れ出さないように遮蔽する閉状態から、受光部30の信号電荷を垂直転送路31に移動させる開状態となる。
【0027】
水平転送路32は、垂直転送路31の各出力端に共通に接続され、垂直転送路31から出力された信号電荷をX方向に水平転送する。水平転送路32は、その上に形成された転送電極に位相が異なる二種の水平走査パルスφH1、φH2が印加されることにより駆動される。出力アンプ33はFD(フローティングディフュージョン)アンプからなり、水平転送路32から信号電荷を順次に受け取り、電荷電圧変換により信号電荷を電圧信号に変換して出力する。
【0028】
CCD11には、上述の垂直走査パルスや水平走査パルスの他に、リセットゲートパルスφRGや電子シャッタパルスφSUBが供給される。リセットゲートパルスφRGは、出力アンプ33に入力される。出力アンプ33は、リセットゲートパルスφRGに応じて、電荷電圧変換が終了した信号電荷をリセットドレイン(図示せず)に排出する。電子シャッタパルスφSUBは、シリコン基板45のNsub(図3参照)に印加される。受光部30の基板側には、縦型オーバーフロードレイン構造の電子シャッタ機構が形成されている。電子シャッタ機構は、電子シャッタパルスφSUBに応じて、受光部30内の露光開始前の不要電荷をNsubに排出する。
【0029】
また、CCD11には、素子分離層48(図3も参照)に独立したバイアス電圧を印加するためのLCS端子37が接続されている。なお、符号38a、38bは、1つの画素単位を示しており、第一画素38aおよび第二画素38bはそれぞれ、受光部30、読み出しチャネル36、および垂直転送路31の一部を含む。第一画素38aは奇数行35aに属し、第二画素38bは偶数行35bに属している。
【0030】
図2のa−a’に沿うCCD11の断面構造を図3に示す。左側は奇数行35aに属する第一画素38a、右側は偶数行35bに属する第二画素38bのそれぞれの断面である。
【0031】
図3において、n型シリコン基板45の表層には、p型ウェル層46が形成されている。p型ウェル層46内には、n型層からなる受光部30が形成されている。受光部30の上には、暗電流を防止するためのp型のホール蓄積層47が形成されている。受光部30の一方の側方には、p型ウェル層46の表層部からなる読み出しチャネル36を介して、n型層からなる垂直転送路31が形成されている。受光部30の他方の側方には、p型層からなる素子分離層48を介して、読み出しチャネル36側の垂直転送路31と隣接する垂直転送路31が形成されている。素子分離層48は、読み出しチャネル36以外の受光部30の周囲を取り囲むように形成されており(図2および図4参照)、該受光部30を、隣接する他の受光部30や垂直転送路31から電気的に分離している。
【0032】
偶数行35aに属する第一画素38aは、読み出しチャネル36が受光部30の左側に形成されており、奇数行35bに属する第二画素38bは、読み出しチャネル36が受光部30の右側に形成されている。つまり、読み出しチャネル36は、第一画素38aと第二画素38bとで左右対称に配置されている。素子分離層48も同様に、第一画素38aと第二画素38bとで左右対称に配置されている。
【0033】
シリコン基板45の表面には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化シリコンを順に積層したONO膜からなるゲート絶縁膜49が形成され、ゲート絶縁膜49上には、垂直転送路31、読み出しチャネル36、および素子分離層48の略直上を覆うように、ポリシリコンからなる転送電極50が形成されている。転送電極50の表面には、ONO膜からなる層間絶縁膜51が形成されている。層間絶縁膜51上には、転送電極50の上方および側方を覆うとともに受光部30の直上位置に開口部52を有するタングステンからなる遮光膜53が形成されている。遮光膜53上には、BPSG等の透明材料からなる保護層54が形成されている。さらに、保護層54の上には、図示を省略しているが、平坦化層、色フィルタ、マイクロレンズ等が順に形成されている。
【0034】
受光部30と素子分離層48の接合部分は、受光部30がn型層、素子分離層48がp型層からなるため、pn接合となっている。このため、図4(B)にも示すように、LCS端子37に所定電圧よりも負側にシフトしたバイアス電圧が印加されると、pn接合の逆バイアスが増大し、受光部30と素子分離層48の接合部分の空乏層幅が拡大する。この空乏層幅の拡大領域を、網掛けおよび符号60で示す。拡大領域60は、光電変換および電荷蓄積機能を備えないため、LCS端子37への上記バイアス電圧の印加により、素子分離層48が実効的に拡大したことになる。なお、詳しくは後述するが、所定電圧とは、通常撮影時にLCS端子37に印加される電圧であり、例えばグランド電圧である。
【0035】
素子分離層48は受光部30に隣接しているため、拡大領域60が生じると、拡大領域60により受光部30が部分的に侵食され、受光部30の有効面積が実効的に減少する(図4(B)参照)。各行35a、35bに属する第一画素38a、第二画素38bは左右対称な構造を有しているので、この受光部30の有効面積の減少の仕方も左右対称になる。第一画素38aは、右側の有効面積が主に減少する。第二画素38bは、逆に左側の有効面積が主に減少する。従って、LCS端子37に負側にシフトしたバイアス電圧が印加されたときには、第一画素38aは、左側から斜入射する左斜入射光Lbよりも右側から斜入射する右斜入射光Laに対して感度が高くなり、第二画素38bは、逆に右側から斜入射する右斜入射光Laよりも左側から斜入射する左斜入射光Lbに対して感度が高くなる。
【0036】
また、LCS端子37を所定電圧とした場合には、拡大領域60が生じないため、第一画素38aと第二画素38bは、それぞれ右斜入射光Laと左斜入射光Lbを均等に受光する(図4(A)参照)。つまり、LCS端子37を所定電圧とした場合、第一画素38aと第二画素38bの受光特性が等しくなる。なお、LCS端子37に内部プルダウン回路を設け、LCS端子37をオープンとした場合にLCS端子37が内部プルダウン回路により所定電圧となるようにしてもよい。なお、所定電圧は、第一、第二画素38a、38bが、右側から斜入射する右斜入射光Laおよび左側から斜入射する左斜入射光Lbに対して同一の感度となる値であり、例えばグランド電圧である。
【0037】
第一画素38aと第二画素38bは、LCS端子37の電圧制御により、視差検出用画素、または通常の撮像画素として使用することが可能である。視差検出用画素として使用する場合には、CPU10は、第一画素38aと第二画素38bの右斜入射光Laと左斜入射Lbに対する感度の相違を利用して、瞳分割位相差検出方式の焦点検出を行う。瞳分割位相差検出方式は、撮像レンズ13を通過した被写体光を射出瞳位置で分割して一対の像を形成し、該一対の像がデフォーカス量により相対移動することを利用した焦点検出方法である。
【0038】
CPU10は、シャッタボタンの半押しに伴う撮影準備処理時に、CCDドライバ14を介してLCS端子37に所定電圧よりも負側にシフトしたバイアス電圧を印加させる。これにより、受光部30と素子分離層48の接合部分の空乏層幅が拡大して拡大領域60が生じ、CCD11の第一画素38aと第二画素38bは、右斜入射光Laと左斜入射Lbに対する感度が異なる状態となり、視差検出用画素(焦点検出用画素)として機能する。CPU10は、第一画素38aと第二画素38bのそれぞれから得られた画像データを解析して、第一画素38aと第二画素38bの各々のデータから上記一対の像を形成してデフォーカス量を算出する。そして、デフォーカス量に基づいてフォーカスレンズの移動量を算出し、レンズ駆動部15を駆動してフォーカスレンズを合焦位置に移動させる。
【0039】
なお、デフォーカス量の算出に用いる画素は、受光領域34に含まれる全画素でもよいし、一部(例えば中央部)の画素でもよい。あるいは、操作部12を介してユーザにより指定された領域、もしくは周知の顔検出にて検出された人物の顔の領域の画素を用いてデフォーカス量を算出してもよい。
【0040】
CPU10は、シャッタボタンの全押しに応じて、LCS端子37に所定電圧を印加させる。これにより拡大領域60は消失し、第一画素38aと第二画素38bは、受光特性が等しい図4(A)の状態に戻され、撮像画素として機能する。そして、この状態で撮像して得られた撮像信号を元に、メモリカード21に記録する画像データが生成される。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、LCS端子37の電圧制御により、第一画素38aと第二画素38bを視差検出用画素または撮像画素として使用することが可能である。第一画素38aと第二画素38bは、左右対称で同一の構造であるため、従来のように撮像画素とは異なる構造の焦点検出用の画素を作り込む必要がなく、全画素を同一の構造で作製することができる。この製造工程は一般的なCCDのそれと変わりがないため、従来の撮像画素とは別に焦点検出用の画素を作り込む方法と比べて光学層の形状均一性が悪化してしまう懸念がない。
【0042】
また、従来の撮像画素とは別に焦点検出用の画素を作り込む方法では、焦点検出用の画素の画素値にゲイン補正を施すか、焦点検出用の画素の画素値を周りの撮像画素の画素値で補間する必要があったが、第一画素38aと第二画素38bを撮像画素としても使用することができるため、ゲイン補正や補間を行う必要がない。このため、画像処理の簡略化や迅速化に寄与することができる。
【0043】
デフォーカス量の算出に一部の画素を用いる場合、その部分の色フィルタを取り払って、焦点検出専用の画素としてもよい。この場合は従来同様、色フィルタがない画素の画素値を周りの画素で補間する。
【0044】
上記実施形態では、第一画素38aと第二画素38bのデータを用いて瞳分割位相差検出方式の焦点検出を行っているが、第一画素38aと第二画素38bのデータをそれぞれ右目用画像と左目用画像として用い、周知の3D表示技術に応用することも可能である。但し、この場合は右目用画像と左目用画像とで色の偏りをなくすため、色フィルタの配置を図5のようにする。すなわち、GとRが交互にX方向に配列された行65aと、BとGが交互にX方向に配列された行65bとを、Y方向に2行ずつ交互に配列する。第一画素38aと第二画素38bの構造および配列は上記実施形態と同様とし、色フィルタの配置のみを変更する。そして、奇数行35aの第一画素38aのデータから右目用画像、偶数行35bの第二画素38bから左目用画像を生成する。こうすれば、右目用画像および左目用画像として視差のみが異なるカラー画像が得られる。
【0045】
また、上記実施形態では、第一画素38aと第二画素38bをそれぞれ共通の素子分離層48で素子分離し、素子分離層48に対して1つのLCS端子37を設けているため、一度の撮像で得られる画像は、第一画素38aと第二画素38bによる一組の視差画像であるが、さらに素子分離層48を複数のグループに分割し、分割された各素子分離層のグループにそれぞれ独立に電圧を印加するように複数のLCS端子を設けることで、一度の撮像により、二組以上の視差画像(多視化画像)が得られるように構成してもよい。
【0046】
例えば図6に示すように、X方向に並ぶ画素の列を奇数列と偶数列の2グループに分け、素子分離層を奇数列の素子分離層70aと偶数列の素子分離層70bとに分割して、各素子分離層70a、70bに所定電圧よりも負側にシフトした異なるバイアス電圧を印加可能に二つのLCS端子71a、71bを設ける。そして、例えばLCS端子71aに印加する電圧を、LCS端子71bに印加する電圧よりもさらに負側にシフトし、奇数列と偶数列とで拡大領域60の拡がりが異なるようにしてもよい。互いに感度の異なる複数の画素を容易に作り出すことができ、各画素のデータを用いて多視化表示を実現することができる。
【0047】
上記実施形態では、信号電荷が電子であるため、受光部がn型層、素子分離層がp型層であるが、信号電荷を正孔とし、受光部と素子分離層を逆の導電型としてもよい。この場合は素子分離層がn型となるため、外部端子に所定電圧(例えばグランド電圧)よりも正側にシフトしたバイアス電圧を印加することで、第一画素38aと第二画素38bが視差検出用画素として機能する。また、本発明は、CCDに限らず、CMOS型の固体撮像素子に適用することも可能である。
【0048】
上記実施形態では、素子分離層を不純物層として形成しているが、本発明はこれに限定されない。素子分離層としてLOCOS(Local Oxidation of Silicon)やSTI(Shallow Trench Isolation)を用いる場合にも適用することができる。LOCOSやSTIは、酸化膜の下方や側方にチャンネルストッパが付随して設けられるため、このチャネルストッパにLCS端子を接続すればよい。
【0049】
上記実施形態では、第一画素38aと第二画素38bとを行方向(Y方向)に交互に配列しているが、これに代えて、第一画素38aと第二画素38bとを列方向(X方向)に交互に配列してもよい。
【0050】
なお、受光部の平面形状を略八角形とし、受光部を1列毎に半ピッチずらして配列したハニカム配列を有する固体撮像素子についても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
2 撮影装置
10 CPU
11 CCD型固体撮像素子(CCD)
14 CCDドライバ
19 タイミングジェネレータ(TG)
30 受光部
34 受光領域
37、71a、71b LCS端子
38a、38b 第一画素、第二画素
48、70a、70b 素子分離層
60 拡大領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に応じた信号電荷を生成して蓄積する受光部と、読み出しチャネル以外の受光部の周囲を取り囲むように形成された素子分離層とを有し、素子分離層が左右対称に配置された第一画素および第二画素が二次元状に配列された受光領域と、
素子分離層の素子分離領域を実効的に拡大させ、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層に独立した電圧印加を可能とする外部端子と、を備えることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
画像データを生成する場合は、第一画素および第二画素の受光部に変形が生じず、第一画素および第二画素の受光特性が等しくなるよう、素子分離層の外部端子に所定電圧が印加され、瞳分割位相差検出方式による焦点検出を行う場合は、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層がp型半導体の場合は所定電圧よりも負側にシフトした電圧、素子分離層がn型半導体の場合は所定電圧よりも正側にシフトした電圧が素子分離層の外部端子に印加されることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
素子分離層は複数のグループに分けられており、第一画素および第二画素の受光部の変形の仕方がグループで異なるよう、異なる値の電圧を素子分離層の外部端子に印加し得るよう構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
第一画素と第二画素の行が交互に配列されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の固体撮像素子。
【請求項5】
入射光に応じた信号電荷を生成して蓄積する受光部と、読み出しチャネル以外の受光部の周囲を取り囲むように形成された素子分離層とを有し、素子分離層が左右対称に配置された第一画素および第二画素が二次元状に配列された受光領域、並びに素子分離層の素子分離領域を実効的に拡大させ、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層に独立した電圧印加を可能とする外部端子を有する固体撮像素子と、
前記外部端子の電圧制御をする制御手段と、を備えることを特徴とする撮影装置。
【請求項6】
前記制御手段は、画像データを生成する場合は、第一画素および第二画素の受光部に変形が生じず、第一画素および第二画素の受光特性が等しくなるよう、素子分離層の外部端子に所定電圧を印加し、瞳分割位相差検出方式による焦点検出を行う場合は、第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形するよう、素子分離層がp型半導体の場合は所定電圧よりも負側にシフトした電圧、素子分離層がn型半導体の場合は所定電圧よりも正側にシフトした電圧を素子分離層の外部端子に印加することを特徴とする請求項5に記載の撮影装置。
【請求項7】
第一画素および第二画素の受光部が左右対称に変形した状態で第一画素および第二画素から得られた画像データを元に、3D表示用の左目用画像と右目用画像を生成することを特徴とする請求項5または6に記載の撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−4264(P2012−4264A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136788(P2010−136788)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】