説明

固体撮像装置

【課題】 パッケージの成形精度に依存することなく、固体撮像素子と光学素子との離間距離の寸法精度を高めることができる固体撮像装置を提供すること。
【解決手段】 開口部21を有する多層配線基板2と、導電性膜32で被覆され、多層配線基板2の開口部21内に露出した基準電位電極に導電性膜32を面接触した状態で多層配線基板2に固定されるスペーサ3と、スペーサ3の導電性膜32に面接触した状態でスペーサ3に固定され、開口部21内に配置される固体撮像素子4と、スペーサ3を介して固体撮像素子4と対向する位置に固定され、光を開口部内に透過する光学素子5と、を備える固体撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に係り、特に裏面照射型の固体撮像素子を備えた固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の固体撮像装置は、セラミックスや樹脂のパッケージの中央に開口部を設け、この開口部内に固体撮像素子を配置し、この固体撮像素子から所定の間隔を設けてレンズ等の光学素子を配置している。(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2001−197375号公報
【特許文献2】特開2002−231913号公報
【特許文献3】特開2004−328386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、固体撮像装置は、固体撮像素子と光学素子との離間距離を厳密に制御する必要がある。従来の固体撮像装置においては、固体撮像素子や光学素子をパッケージに載置しており、固体撮像素子とレンズとの離間距離はパッケージの成形精度等に依存している。例えば、上記特許文献1に記載された発明においては、パッケージの開口部内に段差を設けた複数の平面部を有する載置部を形成して、この載置部に固体撮像素子とレンズとをそれぞれ載置しており、固体撮像素子とレンズとの離間距離の精度は、パッケージの開口部内に形成する載置部の成形精度等に依存することになる。
【0004】
パッケージには樹脂製のものやセラミックス製のものがあるが、樹脂製のパッケージは成型金型の精度がそれほど高くないので、パッケージ(載置部)の成形精度にも限界がある。また、樹脂製のパッケージは熱膨張係数が大きいので、固体撮像装置の動作中においては、固体撮像素子からの熱により膨張又は収縮し離間距離が変動する。一方、セラミックス製のパッケージは、焼結過程で収縮することから成形精度がばらつきやすい。この場合、固体撮像素子や光学素子を載置する部分を加工することも考えられるが、比較的複雑な形状であり加工が困難である。
【0005】
そこで、本発明では、パッケージの成形精度等に依存することなく、固体撮像素子と光学素子との離間距離の寸法精度を高めることができる固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る固体撮像装置は、開口部を有する多層配線基板と、導電性膜で被覆され、多層配線基板の開口部内に露出した基準電位電極に導電性膜を面接触した状態で多層配線基板に固定されるスペーサと、スペーサの導電性膜に面接触した状態でスペーサに固定され、開口部内に配置される固体撮像素子と、スペーサを介して固体撮像素子と対向する位置に固定され、光を開口部内に透過する光学素子と、を備える。
【0007】
本発明によれば、スペーサの一端面に固体撮像素子が固定され、他端面に光学素子が固定されているので、固体撮像素子と光学素子との離間距離はスペーサの厚みにより定まることになる。スペーサは、機械的加工が容易であるから厚みの寸法精度を高めることが可能である。従って、パッケージの成形精度に左右されることなく、固体撮像素子と光学素子との離間距離の精度を高めることができる。
【0008】
また、スペーサは、導電性膜で被覆されているので高い導電性と高い熱伝導性とを有する。そして、スペーサの導電性膜と多層配線基板の開口部内に露出した基準電位電極とが面接触した状態で接合されていると共に、スペーサの導電性膜と固体撮像素子とが面接触した状態で接合されているので、接触部分においても高い熱伝導性と導電性とを有する。従って、固体撮像素子の基準電位が安定化すると共に、固体撮像素子の放熱性が向上し固体撮像素子の電気的特性が安定化する。
【0009】
また、本発明に係る固体撮像装置は、光学素子の受光面と、固体撮像素子の光学素子に対向する面とに位置決め用マークを有することが好ましい。
【0010】
この好ましい固体撮像装置によれば、光学素子と固体撮像素子とに位置決め用マークを設けているので、装置の組み立て時において光学素子と固体撮像素子との位置関係の調整が容易となる。従って、固体撮像素子と光学素子とを高い精度で多層配線基板に配置することができる。
【0011】
また、本発明に係る固体撮像装置は、スペーサが、窒化アルミからなる素体を有することが好ましい。
【0012】
この好ましい固体撮像装置によれば、スペーサを構成する素体が、熱伝導率が高く、熱膨張係数が小さい窒化アルミからなるので、スペーサは高い熱伝導率と小さい熱膨張係数とを有することになる。従って、固体撮像素子の放熱性が向上し、固体撮像素子の電気的特性が安定すると共に、固体撮像素子と光学素子との離間距離の変動が極めて小さくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パッケージの成形精度に依存することなく、固体撮像素子と光学素子との離間距離の精度を高めることができる固体撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の知見は、例示のみのために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0015】
(第1の実施形態) 図1〜図3を参照して、第1の実施形態である固体撮像装置について説明する。図1は本実施形態に係る固体撮像装置の平面図を示す。図2は図1に示す本実施形態に係る固体撮像装置のII−IIに沿った断面の分解図を示す。図3は図1に示す本実施形態に係る固体撮像装置のII−IIに沿った端面図を示す。
【0016】
固体撮像装置1は矩形板状の多層配線基板2(パッケージ)を有し、多層配線基板2の中央部には基板の表面(受光面)から裏面(受光面と反対側の面)にわたって開口すると共に、その長手方向に延びた開口部21が形成されている。また、多層配線基板2の開口部21には基板の表面に沿って開口部内に突出するように載置部22が設けられている。この載置部22には、スペーサ3を介して裏面側が受光面となるようにCCDチップ4(固体撮像素子)が固定されている。また、レンズ5(光学素子)は、CCDチップ4の裏面側に対向するように、スペーサ3に固定されている。更に、多層配線基板2の裏面側には開口部を覆うためのカバー部材20が固定されている。以下各構成要素について説明する。
【0017】
多層配線基板2は、それぞれに大きさの異なる矩形状の開口部分を有する複数のセラミックス層を上方に向かって開口部分の大きさが小さくなるように上方に順次重ね合わされて形成されている。そして、各セラミックス層に形成された開口部分が重なって、基板の表面側から裏面側に向かって段階的に広がった開口部21を形成し、基板の表面側には載置部22が、この載置部22よりも裏面側には段部24が設けられている。また、セラミックス層間には所定形状の内部配線が形成されている。
【0018】
開口部内21に設けられた載置部22は、基板の裏面側に向いた載置面221を有し、この載置面221には、電極パッド231(基準電位電極)が形成されている。この電極パッド231は、多層配線基板2の内部に形成され基準電位として接地電位(0V)となる接地配線23と電気的に接続されている。なお、本実施形態においては基準電位を接地電位としているが、基準電位としてはこれに限らず、例えば、+又は−の5V、8V程度となるように所定の電圧を印加した電位としてもよい。
【0019】
また、段部24は3段からなり、それぞれの段の平面部には、CCDチップ4の電極(クロック電極、出力電極、シールド電極)を外部に取り出すためのボンディングパッド(図示せず)が形成されている。ボンディングパッドは多層配線基板2の内部配線(図示せず)を介して外部に導出されており、この内部配線が外部に導出される部分には外部接続用の電極ピン6がろう付け等により固着されている。CCDチップ4の電極とボンディングパッドとはボンディングワイヤ7を介して結線されている。
【0020】
スペーサ3は、多層配線基板2の表面側の開口部21の内周よりも大きい外周の矩形状の外形であると共に、開口部21の内周よりも小さい内周の矩形状の開口部分を有するセラミックス素体31を導電性膜32で被覆した構成となっている。また、スペーサ3は、一端面の外周縁部が全周にわたって多層配線基板2の載置面221に沿って固定されている。その際、導電性接着剤を用いて載置面221に形成された電極パッド231とスペーサ3の導電性膜32(一端面に形成された部分)とが面接触した状態で固定されている。なお、スペーサ3の一端面の内周縁部が全周にわたって載置部から開口部内に突出した状態となり、後述するレンズ5を載置する面を形成する。
【0021】
スペーサ3のセラミックス素体は、熱伝導率が高く、熱膨張係数が小さい材料を用いることが好ましい。本実施形態においてはセラミックス素体の材料として窒化アルミを用いている。また、スペーサ3の厚みは、CCDチップ4とレンズ5との離間距離となるために、セラミックス素体31は所定の厚みとなるように高精度に加工されている。
【0022】
セラミックス素体31の表面を覆う導電性膜は、高い導電性を有するAu、Cu、Al等の金属材料を用いることが好ましい。Alは酸化皮膜が形成し易く導電性が低下するので、Au、Cuの何れかが特に好ましい。本実施形態においては、Auを用いて形成されている。導電性膜の形成方法は、セラミックス素体31表面に均一の厚みで導電性膜を被覆することができるめっき法やスパッタ等の薄膜形成方法を用いる。
【0023】
CCDチップ4は、裏面照射型のCCDチップであり、表面側に入射した光を電荷に変換する光感応部41(例えば130μm×18μmの画素が1次元に4098個配列)を有し、光感応部41に対応する領域を含む裏面側の領域(内側領域)には、厚さ10〜30μm程度に薄く削られた薄型部分42が形成されている。なお、薄型部分42は受光する領域であり、この領域はスペーサ3の開口部分よりも小さく形成されている。
【0024】
このCCDチップ4は、多層配線基板2に固定されたスペーサ3の他端面(載置面221に固定されているスペーサ3の端面と反対側の端面)に、CCDチップ4の裏面側が受光面となるように固定されている。その際、導電性接着剤を用いてスペーサ3の導電性膜とCCDチップ4の薄型部分42以外の裏面側の領域(外側領域)とは面接触するように固定されている。これにより、CCDチップ4の裏面はスペーサ3の導電性膜及び多層配線基板2の電極パッド(基準電位電極)を介して多層配線基板2の接地配線と電気的に接続されている。
【0025】
なお、裏面照射型のCCDチップ4において、薄型部分42を有する構造は、まず、シリコン基板にシリコン窒化膜を堆積し、ホトリソグラフィ工程により所望の形状にパターニングし、それをマスクとしてシリコン基板をKOHからなるエッチング液で、シリコン窒化膜に覆われた基板周辺部を厚く残したままエッチングすることにより形成される。
【0026】
レンズ5はCCDチップ4に光を入射させるものであり、CCDチップ4の光感応部41に形成された画素のピッチに対応するピッチのマイクロレンズが形成されている。また、レンズ5は、多層配線基板2の表面側の開口部21の内周よりも小さな外周の矩形状の外形であり、開口部21の内部であって、CCDチップ4の裏面と対向配置されるようにスペーサ3の一端面の内周縁部(載置部から開口部に突出している一端面の領域)に接着剤により固定されている。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、スペーサ3の一端にCCDチップ4が固定され、他端にレンズ5が固定されているので、CCDチップ4とレンズ5との離間距離はスペーサ3の厚みにより定まることになる。また、スペーサ3は、機械的加工が容易であるから厚みの寸法精度を高めることが可能である。従って、多層配線基板2の成形精度に左右されることなく、CCDチップ4とレンズ5との離間距離の精度を高めることができる。
【0028】
また、スペーサ3は、導電性膜32で被覆されているので高い導電性と高い熱伝導性とを有する。そして、スペーサ3の導電性膜32と多層配線基板2の開口部21内に露出した電極パッド231(基準電位電極)とが面接触した状態で接合されていると共に、スペーサ3の導電性膜32とCCDチップ4とが面接触した状態で接合されているので、接触部分においても高い熱伝導性と導電性とを有する。従って、CCDチップ4の基準電位(本実施形態では接地電位)が安定化すると共に、CCDチップ4の放熱性が向上しCCDチップ4の電気的特性が安定化する。
【0029】
また、スペーサ3を構成する素体が、熱伝導率が高く、熱膨張係数が小さい窒化アルミからなるので、スペーサ3は高い熱伝導率と小さい熱膨張係数とを有することになる。従って、CCDチップ4の放熱性が向上し、CCDチップ4の電気的特性が安定すると共に、CCDチップ4とレンズ5との離間距離の変動が極めて小さくなる。
【0030】
(第2の実施形態) 次に図4を参照して、第2の実施形態について説明する。図4は本実施形態に係る固体撮像装置の平面図を示す。本実施形態の固体撮像装置10は、第1の実施形態に、更にCCDチップ4の薄型部分42以外の裏面側の領域及びレンズ5の受光面の非撮像領域に、それぞれの平面方向(多層配線基板の厚み方向と交わる平面方向)の位置あわせのための位置決め用マーク71、82が設けられている。CCDチップ4に形成する位置決め用マークは、裏面に薄型部分42を形成する際に、位置決め用マークを形成する場所においてもホトリソグラフィ工程によりパターニングして、エッチングすることにより形成することができる。
【0031】
CCDチップ4とレンズ5との位置決めは、CCDチップ4の位置決め用マーク71の位置とレンズ5の位置決め用マーク82の位置とを観察し、それぞれのマークが一致するようにCCDチップ4とレンズ5との位置を調整することにより行うことができる。
【0032】
以上のように本実施形態によれば、CCDチップ4とレンズ5とにそれぞれ位置決め用マーク71、82を設けているので、装置の組み立て時においてCCDチップ4とレンズ5との位置関係の調整が容易となる。従って、CCDチップ4とレンズ5とを高い精度で多層配線基板2に配置することができる。
【0033】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、CCDチップのクロック電極から引き出されたボンディングワイヤと、CCDチップの出力電極から引き出されたボンディングワイヤとの間にCCDチップのシールド電極から引き出されたボンディングワイヤを配置することが好ましい。クロック信号と出力信号とのクロストークを抑えることができるからである。また、同様の理由により、更に内部配線から外部接続端子まで、ワイヤボンディングと同様にクロック配線と出力配線との間にシールドが挟まれるように配置することが好ましい。
【0034】
また、本実施形態の固体撮像装置に、更にガス供給通路及びガス排出通路からなるガス流通手段を備えてもよい。接着剤等の樹脂材料等が分解されたガスが、CCDチップ、ガラス及びスペーサから形成される空間に放出された場合でも、ガス流通手段を通じて多層配線基板外に排出されるので、接着剤から放出されたガスがレンズの光出射面又はCCDチップの受光面に付着し、凝集するのが抑制されて、入射光の透過率の低下が抑制される。この結果、CCDチップの受光感度の低下を抑制することができる。
【0035】
また、多層配線基板に形成された開口部の受光面側の開口端部に複数の切り欠き部を形成しても良い。ピンセット等のレンズ載置用(位置調整用)の道具を挿入することができるので、レンズをスペーサに載置又は位置調整する際の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施形態に係る固体撮像装置の平面図である。
【図2】図1に示す第1の実施形態に係る固体撮像装置のII−IIに沿った断面の分解図である。
【図3】図1に示す第1の実施形態に係る固体撮像装置のII−IIに沿った端面図である。
【図4】第2の本実施形態に係る固体撮像装置の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1、10…固体撮像装置、2…多層配線基板、3…スペーサ、4…CCDチップ(固体撮像素子)、5…レンズ(光学素子)、6…外部接続用の電極ピン、7…ボンディングワイヤ、71、82…位置決め用マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する多層配線基板と、
導電性膜で被覆され、前記多層配線基板の前記開口部内に露出した基準電位電極に前記導電性膜を面接触した状態で前記多層配線基板に固定されるスペーサと、
前記スペーサの前記導電性膜に面接触した状態で前記スペーサに固定され、前記開口部内に配置される固体撮像素子と、
前記スペーサを介して前記固体撮像素子と対向する位置に固定され、光を前記開口部内に透過する光学素子と、
を備える固体撮像装置。
【請求項2】
前記光学素子の受光面と、前記固体撮像素子の前記光学素子に対向する面とに位置決め用マークを有する請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記スペーサは、窒化アルミからなる素体を有する請求項1又は2何れかに記載の固体撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−98367(P2008−98367A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277900(P2006−277900)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】