説明

固体状態の気泡熱可塑性樹脂製品をブロー成形する方法

気泡熱可塑性樹脂製品を製造するためのプロセスが開示される。本プロセスは、熱可塑性材料から製造した固体パリソンをある期間の間、高圧において、飽和ガスによって処理して、ガス飽和パリソンを供給するステップと、そのガス飽和パリソンを加熱して、気泡パリソンを作成するステップと、その気泡パリソンを金型の中に設置するステップと、その気泡パリソンに成形ガスを吹き込んで、その気泡パリソンをその金型の形状に膨らませて、造形された気泡製品を供給するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/971,844号(2007年9月12日出願)の利益を主張し、この出願はその全体が本明細書に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形は、熱可塑性樹脂から中空製品を製造するために用いられる製造プロセスである。中空製品をブロー成形する様々な方法が公知である。典型的に、ブロー成形プロセスは、熱可塑性材料を溶融し、その熱可塑性材料のパリソンを形成することから始まる。その後、そのパリソンを金型内に挟み込み、そのパリソンに挿入されたノズルを使用することによってパリソンに空気またはガス状媒体をポンピングする。そのガスの圧力が、熱可塑性材料を外側に押して、その金型の形状に適合させる。熱可塑性材料が冷却して硬化すると、金型を開いて製品を取り出す。
【0003】
「フォーム」または「発泡熱可塑性樹脂」製品と一般に呼ばれる気泡熱可塑性樹脂製品を製造するための様々な方法が公知である。気泡熱可塑性樹脂製品を製造するための方法としては、例えば、熱可塑性材料をそれらの通常の加工温度において発泡させるガスを放出する発泡剤の使用、抽出または溶解によって除去することができる液体もしくは固体または両方を含有する熱可塑性材料の使用、ならびに液体もしくは固体または両方を含有する熱可塑性フィルムを延伸して界面ボイドを生じさせ、その後、抽出または溶解する技術が挙げられる。しかし、発泡中空製品の既存の製造プロセスには、その発泡パリソンが十分な壁強度を有しないという一つの共通の問題がある。さらに、抽出または溶解に依存するそれらの方法は、溶解した液体または固体の除去を可能にする気孔の相互接続する網状組織の形成を必要とする。
【0004】
気泡熱可塑性樹脂製品を成形するとき、均一な気泡の大きさを生じさせることが重要である。成形品の耐久性と強度の両方が、気泡の大きさおよび均一性に依存する。気泡製品のブロー成形の際に気泡の大きさおよび均一性を制御する通常の手法としては、発泡剤、押出の圧力および温度、ならびに押出機の混合部への投入量の変更が挙げられる。様々な努力にもかかわらず、均一な分布の気孔または気泡を含有する気泡熱可塑性樹脂製品を製造するプロセスが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記で明らかにされた要求を満たすこと、およびさらなる関連した利点を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固体熱可塑性材料から気泡製品を製造するためのプロセスを提供する。
【0007】
一つの実施形態において、本プロセスは、以下の
(a)熱可塑性材料から作成した固体パリソンをある期間の間、高圧で、飽和ガスによって処理して、ガス飽和パリソンを供給するステップと
(b)そのガス飽和パリソンを加熱して、気泡パリソンを準備するステップと
(c)その気泡パリソンを金型の中に設置するステップと
(d)その気泡パリソンに成形ガスを吹き込んで、その気泡パリソンをその金型の形状に膨張させて、造形された気泡製品を供給するステップと
を含む。
【0008】
前記熱可塑性材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ(乳酸)、アクリロニトリルブタジエンスチレン、またはポリスチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
前記飽和ガスとしては、二酸化炭素、窒素、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。一つの実施形態において、前記飽和ガスは、二酸化炭素から本質的に成る。もう一つの実施形態において、前記飽和ガスは、窒素から本質的に成る。
【0010】
前記固体パリソンは、約3MPaから約7.5MPaまでの範囲の高圧において、飽和ガスによって処理されることができる。一つの実施形態において、前記高圧は、約4MPaである。もう一つの実施形態において、前記高圧は、約5MPaである。飽和ガスによる固体パリソンの処理は、飽和ガスを充填した圧力容器内で行うことができる。この処理は、完全飽和まで行われ、続いて脱着のためのステップが行われる場合もあり、あるいは、この処理は、部分飽和まで行われ、続いて脱着のためのステップが行われる場合もある。
【0011】
複数の固体パリソンを同時に高圧の飽和ガスで飽和させて、複数のガス飽和パリソンを生じさせることができる。一つの実施形態では、多数の固体パリソンは、一つをもう一つの内部に入れ子にされる。もう一つの実施形態では、多数の固体パリソンは、一つをもう一つの内部に部分的に入れ子にされる。さらにもう一つの実施形態において、それぞれのパリソンは、一つのパリソンをもう1つのパリソンの内部に入れ子にすることができるように、頂部におけるより底部におけるほうが小さい形状を有する。多数の固体パリソンは、一つをもう一つの内部に入れ子にされるとき、それらのパリソンは、飽和ガスがすべてのパリソンの全表面に接触できるようにする手段を含む場合がある。そのような手段としては、接触を防止するためのパリソン上のタブまたはリブを挙げることができる。
【0012】
前記固体パリソンは、本体部分および首部分を含み得る。一つの実施形態において、前記首部分は、ねじ山をさらに含む。
【0013】
そのガス処理したパリソンを約110℃の温度で加熱することができる。一つの実施形態では、前記ガス飽和パリソンの本体部分のみを加熱して、気泡質の本体部分および固体の首部分を有する気泡パリソンを生じさせる。
【0014】
一つの実施形態では、飽和ガスで処理して完全飽和を達成した後、加熱前に、パリソンからその飽和ガスの一部を部分的に脱着させる。
【0015】
様々な不活性ガスが、成形ガスとして有用であり得る。一つの実施形態において、前記形成ガスは、窒素、アルゴン、キセノン、クリプトン、ヘリウムおよび二酸化炭素から成る群より選択される。もう一つの実施形態において、前記成形ガスは圧縮空気である。
【0016】
本プロセスは、様々な大きさを有する気泡を含む気泡熱可塑性樹脂製品を生じさせる。一つの実施形態において、前記気泡は、約5μmから約200μmまでの範囲の大きさを有する。もう一つの実施形態において、前記気泡は、約50μmから約150μmまでの範囲の大きさを有する。なお、さらなる実施形態において、前記気泡は、約50μmから約100μmまでの範囲の大きさを有する。
【0017】
一つの実施形態において、本プロセスは、ステップ(a)の前に、中空マンドレル・ブロー・チューブの周囲の加熱されたプリフォーム金型に溶融熱可塑性材料を注入して固体パリソンを生じさせるステップをさらに含む場合がある。
【0018】
一つの実施形態において、ステップ(d)は、気泡パリソンに成形ガスを吹き込みながら、プランジャでその気泡パリソンを機械的に延伸することをさらに含む場合がある。
【0019】
本明細書に開示する気泡製品およびそれらの製造プロセスは、例えば、ボトル、ジャーおよび他の容器などの製品として使用することができる。
【0020】
下記の「詳細な説明」でさらに説明する概念のうちの選択されたものを簡素化された形で紹介するために、本概要を提供する。本概要は、本特許請求の範囲に記載する主題の重要な特徴を確認するためのものではなく、本特許請求の範囲に記載する主題の範囲の決定に補助として用いるためのものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の上述の態様および付随する利点の多くは、次の添付図面とともに後続の詳細な説明を参照することによってさらに良く理解されるようになるにつれて、より容易にそれらの真価を認められるようになるであろう。
【図1】図1は、従来の射出ブロー成形プロセスおよび延伸ブロー成形プロセスの流れ図を示す。
【図2】図2は、ブロー成形プロセスの一つの実施形態の流れ図を示す。
【図3】図3は、固体熱可塑性樹脂パリソンからブロー成形気泡熱可塑性樹脂製品を製造するためのシステムの概略図を示す。
【図4】図4は、複数の入れ子にされた固体パリソンの概略図である。
【図5】図5は、固体気泡パリソンの壁の断面の概略図である。
【図6】図6は、固体ブロー成形気泡熱可塑性樹脂の壁の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、固体熱可塑性材料からブロー成形気泡製品を製造するためのプロセスに関する。従来のブロー成形および延伸ブロー成形のプロセスに改良を加えて、固体熱可塑性材料からブロー成形造形気泡製品を製造するプロセスを開示する。
【0023】
図1に示すような従来のブロー成形プロセスは、ボトルおよびジャーなどの中空固体熱可塑性樹脂製品の製造に用いることができる。先ず、溶融熱可塑性材料100を中空マンドレル・ブロー・チューブの周りの加熱されたプリフォーム金型105に注入して、予備成形されたパリソン110を提供する。プリフォーム金型がパリソンの外形を形成する。パリソンの内部形状を形成するそのマンドレルの周囲にパリソンを挟み込む。このパリソンは、完全に形成されたボトル/ジャー首部分と、本体部分を形成することとなる付随する熱可塑性材料の肉厚チューブとを通常は含む。次に、そのパリソンをブロー成形用のより大きなブロー成形用金型115の中に入れる。このブロー成形ステップのための装置は、プリフォーム−マンドレル組立体であり得、その中でパリソンを例えば圧縮空気で膨張させて完成品形状を得る。最後に、冷却期間120の後、ブロー金型が開き、その組立体から完成造形された固体の非気泡熱可塑性樹脂製品125を取り出す。材料に依存して、パリソン製造ステップとブロー成形ステップとの間において、そのパリソンを冷却ステップに付す場合がある。これは、その材料が、溶融状態からブロー成形プロセスに直接進むための強度を有しない場合があるからである。そのようなパリソンは、放置して冷却し、その後、再び加熱し、ブロー成形する。
【0024】
延伸ブロー成形は、一種のブロー成形であって、パリソンを金型の中で機械的に伸長させ、その後、吹き込みプロセスにおいて放射状に膨張させる。図1をなお参照して、この延伸ブロー成形プロセスでは、溶融熱可塑性材料100が、ホット・ランナー・ブロックを経由して加熱されたプリフォーム金型105に流れて、予備成形パリソン110の所望の形状を作成し、マンドレルがその内径を作り、プリフォーム金型がその外側形状を作る。その後、冷却した後に、これらの予備成形パリソンを包装することができる延伸ブロー成形プロセスでは、典型的には赤外線ヒーターを使用して、予備成形パリソンをそのガラス転移温度よりも上に加熱する。その後、このプロセス118の一部としてプランジャによって延伸しながら、高圧空気を使用してブロー成形用金型の中でそのパリソンを完成した造形非気泡製品へとブロー成形する。ポリエチレンテレフタレートなどの一部の熱可塑性材料の延伸は、結果としてその材料の歪み硬化を生じさせる。
【0025】
前記ブロー成形および延伸ブロー成形プロセスの改変により、固体熱可塑性材料から気泡ブロー成形品を製造するためのプロセスを開示する。本明細書に開示するプロセスは、ブロー成形と延伸ブロー成形の両方に適用することができる。本開示プロセスは、以下の
(a)熱可塑性材料から作成した固体パリソンをある期間の間、高圧で、飽和ガスで処理して、ガス飽和パリソンを供給するステップと、
(b)そのガス飽和パリソンを加熱して、気泡パリソンを準備するステップと
(c)気泡パリソンを金型の中に設置するステップと
(d)その気泡パリソンに成形ガスを吹き込んで、その気泡パリソンをその金型の形状に膨張させて、造形された気泡製品を供給するステップと
を含む。
【0026】
本開示プロセスは、パリソンを加熱およびブロー成形する前に飽和ガスによって、固体(非溶融)で非気泡質のパリソンを処理することにより、従来のブロー成形および延伸ブロー成形プロセスを改変する。例えば、この固体で非気泡質のパリソンは、従来の手法で製造することができるが、その後、放置して凝固させ、飽和ガスで処理することができる。従来の射出ブロー成形プロセスは、溶融した、固体でない、射出成形パリソンを製造し、それを、その後、ブロー成形する。本開示プロセスは、結果として、ブロー成形気泡製品を生じさせる。
【0027】
図2を参照して、プラスチック産業において周知のプロセスを用いて熱可塑性材料から製造して、固体で非気泡質の予備成形パリソン200が得られる。この予備成形パリソン200は、図1、ブロック100、105および110に関して上に記載した説明に従って製造することができる。前記熱可塑性材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ(乳酸)、アクリロニトリルブタジンスチレンおよびポリスチレンをはじめとする(しかし、これらに限定されない)任意の単一の熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーの混合物であり得る。
【0028】
このプロセスは、ブロック200からブロック210に入る。ブロック210では、その固体で非気泡質のパリソンを高圧で、飽和ガスによって処理する。高圧での固体パリソンの処理は、その熱可塑性材料に飽和ガスを吸収させ、その結果、ガス飽和パリソンをもたらす。この処理は、完全飽和まで行われ、続いて脱着のためのステップが行われることができ、または、この処理は、部分飽和まで行われ、続いて脱着のためのステップが行われることができる。脱着は、このプロセスに付随して起こる場合もあり、またはこのプロセスにおける意図的ステップである場合もある。脱着が付随して起こる場合には、その脱着期間は、加熱装置からそのパリソンを取り出してからブロー成形用金型までの時間である。脱着によって気泡構造を作るには不十分である、より低いガス濃度が結果として生じてしまい、それを用いて固体表面が作られることがある。前記飽和ガスは、二酸化炭素、窒素、またはそれらの任意の組み合わせをはじめとする(しかし、これらに限定されない)、不活性ガスであり得る。一つの実施形態において、前記高圧飽和ガスは、二酸化炭素を含む。一つの実施形態において、前記高圧飽和ガスは、窒素を含む。前記高圧は、約3MPaから約7.5MPaまでであり得る。一つの実施形態において、前記高圧は、約4MPaである。もう一つの実施形態において、前記高圧は、約5MPaである。
【0029】
ブロック210における固体パリソンの処理は、飽和ガスを充填した圧力容器内で行うことができる。その圧力容器を密封すると、前記材料は、高圧飽和ガスに暴露される。その後、その高圧ガスは、経時的に熱可塑性ポリマーの中に拡散し始め、その熱可塑性ポリマーの自由分子間体積を満たすこととなる。そのガスは、平衡に達するまでその熱可塑性ポリマーを飽和し続ける。従って、パリソンを飽和ガスで処理する時間長さに依存して、そのパリソンをその飽和ガスで完全に飽和させることができる。あるいは、そのパリソンをその飽和ガスで部分的に飽和させることもできる。パリソンの壁の大きさおよび厚さならびに飽和ガスの圧力に依存して、高圧飽和ガスでのパリソンの処理時間は、約2時間から約60日まで様々であり得る。一つの実施形態において、その処理は、約15日間から約25日間までの期間、続く。もう一つの実施形態において、その処理は、約21日間続く。完全飽和のための時間量は、事前に決めることができる。例えば、ブロー成形するポリマーパリソンを使用して、様々な温度および圧力条件で試験を行い、様々な時間間隔でサンプルを取ることができる。そのサンプルを圧力容器から取り出し、重量を測定することができる。そのサンプルの重量が経時的に増加しなくなったとき、そのサンプルは、所与の温度および圧力に対して完全飽和状態に達している。この時間を記録し、温度条件と圧力条件との任意の所与の組み合わせについて、完全飽和状態の達成に関する様々な表を作ることができる。
【0030】
ブロック210において処理している間、複数の固体パリソンを同時に高圧で処理して、複数のガス処理パリソンを提供することができる。それらのパリソンの一つをもう一つの内部に入れ子にすることができ、または、一つをもう一つの内部に部分的に入れ子にすることができる。それぞれのパリソンが、一つのパリソンをもう一つのパリソンの内部に入れ子にすることができるように、頂部におけるより底部におけるほうが小さい形状を有することができる。さらに、飽和ガスがそれぞれのパリソンの全表面に接触できるように、パリソンを互いの内部に入れ子にするように造形して、パリソン間の多孔質膜を不要にすることができる。
【0031】
この方法は、ブロック210から、代替的にブロック215の脱着に進むことができる。ガス処理されたパリソンはより低い圧力の環境に移されるので、そのガス処理されたパリソンの熱可塑性材料は熱力学的に不安定になり、このことは、その熱可塑性材料がその周囲環境とはもはや平衡状態にないこと、およびその熱可塑性材料がその飽和ガスに対して過飽和状態になることを意味する。そのガス処理パリソンは、その表面から周囲環境へとガスを脱着し始める。一つの実施形態では、前記飽和ガスでの処理後、加熱前に、そのパリソンからガスを一部脱着させる。一部の状況では、このガスの一部の脱着が、パリソンの一定領域、例えば表面における気泡構造の生成を回避するために役立つ。脱着は、高圧飽和ガスを圧力容器から抜いたとき、またはガス処理されたパリソンを周囲の大気圧に取り出したときに発生し得る。
【0032】
ステップ215を省略してブロック210から、あるいはブロック215から、この方法はブロック220の加熱に進む。ブロック220では、そのガス処理固体パリソンを加熱して、気泡パリソンを製造する。そのパリソン(単数または複数)は、赤外加熱および空気衝突オーブンをはじめとする(しかし、これらに限定されない)任意の加熱方法および装置で加熱することができる。ブロック220におけるガス処理パリソンの加熱は、その熱可塑性材料の融解温度より低い温度で行うことができる。この加熱は、気泡質で固体のパリソンが生成する。この気泡パリソンは、パリソン壁内に形成される有核バブルを伴う均一な壁圧を有することができる。この加熱温度は、熱可塑性材料のタイプに依存する。例えば、ポリエチレンテレフタレートから製造されたパリソンについての加熱温度は、約50℃から約175℃までであり得、ポリ塩化ビニルから製造されたパリソンについての加熱温度は、約50℃から約150℃までであり得、ポリ(乳酸)から製造されたパリソンについての加熱温度は、約40℃から約125℃までであり得、アクリロニトリルブタジエンスチレンから製造されたパリソンについての加熱温度は、約50℃から約125℃までであり得、ポリスチレンから製造されたパリソンについての加熱温度は、50℃から150℃までであり得、ポリカーボネートから製造されたパリソンについての加熱温度は、約50℃から約150℃までであり得、ポリプロピレンから製造されたパリソンについての加熱温度は、約100℃から約200℃までであり得、およびポリエチレンから製造されたパリソンについての加熱温度は、約75℃から約150℃までであり得る。一つの実施形態において、ポリエチレンテレフタレートから製造されたパリソンについての加熱温度は、約110℃である。
【0033】
この方法は、ブロック220からブロック225に進む。ブロック225では、その気泡パリソンをブロー成形する。ブロー成形は、その気泡パリソンを金型の中に入れ、そのパリソンの融点または軟化点より高い温度にさらに加熱し、その後、そのパリソンを成形ガスでその金型の形状に膨らませて、完成した熱可塑性樹脂気泡製品を生成するステップである。あるいは、ブロー成形ステップ225は、上記で論じたプランジャによるなど、そのパリソンの機械的延伸218を含む場合がある。いずれの不活性ガスも成形ガスとして有用であり得ることは、当業者には理解されるであろう。一つの実施形態において、前記成形ガスは、圧縮空気である。加えて、気泡パリソンを膨らませるために有用な他のガスとしては、窒素、アルゴン、キセノン、クリプトン、ヘリウム、二酸化炭素またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。金型に熱を加えることによって、ブロック225においてそのパリソン(単数または複数)を加熱してもよい。
【0034】
ブロー成形ステップ225の間に行われるパリソン加熱は、そのパリソンの熱可塑性材料における有核バブルのさらなる形成、すなわち発泡を生じさせ得る。このブロー成形プロセスの間、発泡が継続し、その結果、冷却期間のブロック230の後、完成製品として気泡熱可塑性樹脂製品240が得られる。
【0035】
図6の概略図を参照して、一つの実施形態において、前記気泡熱可塑性樹脂製品は、約5μmから約200μmまでの大きさを有する気泡を含む。もう一つの実施形態において、前記気泡熱可塑性樹脂製品は、約5μmから約150μmまでの大きさを有する気泡を含む。もう一つの実施形態において、前記気泡熱可塑性樹脂製品は、約50μmから約100μmまでの大きさを有する気泡を含む。さらなる実施形態において、前記気泡熱可塑性樹脂製品は、約50μmから約150μmまでの大きさを有する気泡を含む。
【0036】
図2に関して説明したプロセスは、ブロー成形のブロック220の後に、その造形気泡製品の融点または軟化点より低い温度へのその気泡製品の冷却であるブロック230をさらに含む場合がある。
【0037】
図3を参照して、ブロー成形装置の概略図を説明する。この図では、熱可塑性材料から製造した固体パリソン300をある期間、高圧の飽和ガスCOを有する圧力容器310の中に置く。その後、固体パリソン300をその圧力容器310から取り出し、加熱装置320の中に入れる。この加熱装置は、油浴であり得るが、他の加熱装置を使用してもよい。そのパリソンは、加熱されると発泡して、均一な壁厚を有する気泡質で固体のパリソン330を生成する。示した実施形態において、固体パリソン300は、首部分305および本体部分307を有する。この首部分は、ねじ山を含んでもよく、例えば、ボトルまたはジャーを製造するために用いることができる。その加熱ステップの間、本体部分307のみを加熱して、気泡質の本体部分307および固体の首部分305を有する気泡質パリソン330を生じさせる。ガス処理パリソンを加熱するときに、そのパリソンの本体部分のみを加熱すると、気泡質の本体部分および固体の首部分を有する気泡パリソンを生じさせる。
【0038】
その後、その気泡パリソン330を金型340に挟み込む。その金型340を、その気泡パリソン330の軟化点より上の温度にさらに加熱することができる。注入口365を有する鍔部355をそのパリソン330の首部分に取り付ける。中空プランジャ360は、その鍔部の中にあり、その内側をスライドするので、注入口365を通って吹き込まれた成形ガスは、直接パリソンにまたはそのプランジャ360を通って、その中空パリソンに進み、そしてパリソンの口部を通って、またはそのプランジャ360を通って、パリソン330の内部に配送される。その成形ガス350が、その気泡パリソン330をその金型370の形状に膨らませる。この成形ガスは、圧縮空気であり得る。金型340を介して加熱すると、さらなる有核バブルが、そのブロー成形プロセスの間にそのパリソンの熱可塑性材料の中に形成され、造形された気泡製品380を生じさせることができる。ブロー成形後、この気泡製品380はその造形気泡製品の軟化点より下の温度に冷却され、その後、金型330から取り出される。
【0039】
図4を参照して、複数のパリソンを保持する圧力容器400の概略図を説明する。複数のカップ形パリソン402および404が、ガス充填圧力容器400の中で処理される。それらのパリソンは、パリソン404がパリソン402の内部に入れ子になるように、互いの内部に入れ子になっている。各パリソンの外壁上には4つのタブ406がある。これらのタブは、パリソン404をパリソン402の内部に安定して入れ子にしつつ、パリソン404の外面とパリソン402の内面の間に距離を維持することに役立つ。その結果、飽和ガスは、パリソン404およびパリソン402の両方の全表面と接触することができる。
【0040】
従来のブロー成形プロセスと比較して、本開示プロセスは、幾つかの利点を提供する。第一に、気泡熱可塑性樹脂製品を形成することにより、本プロセスは、固体プラスチックの代わりに気泡プラスチックを使用することによって材料の節約をもたらす。第二に、その気泡熱可塑性樹脂製品、例えば、ボトルおよびジャーは卓越した断熱性を有し、これは、そのボトルまたはジャーの内容物の温度を一定に保つ点で有用である。例えば、本開示プロセスによって製造される気泡熱可塑性樹脂ボトルおよびジャーは、熱い飲料を熱く、冷たい飲料を冷たく保つ、優れた特性を有する。一つの実施形態において、本開示プロセスは、コーヒーボトルまたはジャー用の気泡熱可塑性樹脂インサートを製造するために用いることができる。第三に、本開示プロセスは、軽微な変更によって従来の射出または延伸ブロー成形設備を利用することができ、そのため、気泡熱可塑性樹脂製品を製造するための単純で効率的なプロセスを提供することができる。第四に、熱可塑性材料内に捕捉された飽和ガスが可塑剤としての役割を果たし、その結果、ブロー成形プロセスの間、より低い温度を利用することができ、そして、熱可塑性樹脂の全体的な延伸を助長する。最後に、ブロー成形プロセスが完了すると、完成した熱可塑性樹脂製品の気泡構造の気泡内部に捕捉された二酸化炭素などの飽和ガスが、そのブロー成形品の急冷において役立つ。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)パリソンを、21日間、圧力容器の中で4MPaのCOガスで飽和させた。そのパリソンをその圧力容器から取り出し、周囲の温度および圧力において5分間、放置してガスを脱着させ、110℃の加熱された油浴の中で120秒間加熱した。そのパリソンは、油浴の中で均一な壁厚に発泡して、気泡パリソンを生じさせた。大きな気泡が視認された。パリソンは、その発泡プロセスの間、その形状を維持し、垂直軸からの視認できるゆがみは無かった。その後、圧縮空気ラインからの60psiの空気流を用いて、その気泡パリソンを気泡製品にブロー成形した。その圧縮空気がその発泡パリソンを中空製品に十分に延伸して、十分に形成された固体状態の気泡ポリエチレンテレフタレートボトルを作成した。
【0042】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート(PET)パリソンを、21日間、圧力容器の中において4MPaのCOガスで飽和させた。そのパリソンをその圧力容器から取り出し、周囲の温度および圧力において5分間、放置してガスを脱着させ、110℃の加熱された油浴の中において90秒間加熱した。そのパリソンは、油浴の中で均一な壁厚に発泡して、気泡パリソンを生じさせた。大きな気泡が視認された。パリソンは、その発泡プロセスの間、その形状を維持し、垂直軸からの視認できるゆがみは無かった。その後、圧縮空気ラインからの30psiの空気流を用いてその気泡パリソンを気泡製品にブロー成形した。この圧縮空気は、その気泡パリソンを中空製品に十分には延伸しなかった。
【0043】
実施例2において、圧縮空気圧は、その温度での気泡パリソン強度の強さを克服するのに十分ではなく、それ故、ブロー成形用金型の形状に延伸させることができなかった。
【0044】
実例となる実施形態を例示し、説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。
【0045】
排他的な特性もしくは権利を主張する本発明の実施形態は、特許請求の範囲のとおりに規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料から気泡製品を製造するためのプロセスであって、
(a)熱可塑性材料から作成される固体パリソンをある期間の間、高圧で、飽和ガスによって処理して、ガス飽和パリソンを供給することと、
(b)該ガス飽和パリソンを加熱して、気泡パリソンを準備することと、
(c)該気泡パリソンを金型の中に設置することと、
(d)該気泡パリソンの中に成形ガスを吹き込んで、該気泡パリソンを該金型の形状に膨らませることによって、造形された気泡製品を供給することと
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記飽和ガスが、二酸化炭素、窒素、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記熱可塑性材料が、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ(乳酸)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、またはポリスチレンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記高圧は、約3MPaから約7.5MPaまでである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(b)は、前記ガス飽和パリソンを約110℃の温度に加熱することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記成形ガスは、空中窒素、アルゴン、キセノン、クリプトン、ヘリウムおよび二酸化炭素から成る群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(a)は、複数の固体パリソンを前記飽和ガスによって同時に飽和させて、複数のガス飽和パリソンを供給することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記複数の固体パリソンは、一つをもう一つの内部に入れ子にされる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記複数の固体パリソンは、一つをもう一つの内部に部分的に入れ子にされる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
各パリソンは、一つのパリソンをもう一つのパリソンの内部に入れ子にすることができるように、頂部におけるより底部におけるほうがより小さい形状を有する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記複数の固体パリソンは、前記飽和ガスをすべてのパリソンの全体表面に接触させながら、一つをもう一つの内部に入れ子にされる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項12】
前記固体パリソンは、本体部分および首部分を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記首部分は、ねじ山をさらに含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップ(b)は、前記ガス飽和パリソンの前記本体部分を加熱して、気泡質の本体部分および固体の首部分を有する気泡パリソンを供給することを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップ(a)の後であってステップ(b)の前に、前記飽和ガスを部分的に脱着させることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記パリソンは、処理中に前記飽和ガスによって完全に飽和される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記パリソンは、処理中に前記飽和ガスによって部分的に飽和される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記気泡製品は、約5μmから約200μmまでの大きさを有する気泡を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記気泡パリソンを、前記金型内にある間、加熱することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記気泡パリソンを、ステップ(d)の間、加熱して気泡をさらに作ることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップ(a)の前に、溶融熱可塑性材料をパリソン金型の中に注入し、その後、冷却して固体パリソンを供給するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
ステップ(d)は、前記気泡パリソンの中に前記成形ガスを吹き込みながら、プランジャによって該気泡パリソンを延伸することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
ステップ(d)の後に、前記造形された気泡製品を該造形された気泡製品の融点または軟化点より下の温度まで冷却することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−538872(P2010−538872A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525036(P2010−525036)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/076242
【国際公開番号】WO2009/036328
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】