説明

圧縮機及び圧縮機の制御装置及び制御方法並びに空調機及びその制御方法

【課題】効率を低減させることなく、ピストンを駆動する周波数を可変にし、以って圧縮機の能力を可変にすることが目的とされる。
【解決手段】圧縮機2aは、ピストン21、シリンダ22、モータ23及び制動部24を備える。ピストン21は、シリンダ22で気体を吸入、圧縮可能に、シリンダ22内で可動である。モータ23は、固定部231,232及び可動部233を有する。可動部233には、駆動する力が生じる。制動部24は、固定部241,242及び可動部243を有する。可動部243には、制動する力が生じる。可動部233,243及びピストン21は相互に連動するので、ピストン21は、可動部233,243に生じる力によってそれぞれ駆動、制動される。換言すれば、ピストン21は、モータ23からエネルギーが供給され、発電機24によってエネルギーが回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮機及び圧縮機の制御装置及び制御方法並びに空調機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機には、ロータリー圧縮機やスクロール圧縮機等の回転型圧縮機や、レシプロ圧縮機などがある。回転型圧縮機は、回転子を備え、これを回転させてシリンダ内の気体を圧縮する。回転子の回転数を可変にすることで、圧縮能力を可変にできる。レシプロ圧縮機は、ピストンを備え、これを往復運動させてシリンダ内の気体を圧縮する。
【0003】
レシプロ圧縮機であるリニア圧縮機では、バネ等の弾性を有する機構がピストンに設けられ、リニアモータによってピストンに駆動力が与えられる。当該機構の弾性定数は通常固定値であり、これを設けたピストンは、当該機構の弾性定数や、圧縮される気体の弾性、ピストンの質量から求まる唯一の共振周波数を持つ。従って、リニアモータの駆動力によってピストンが共振周波数で往復運動することが、圧縮機の効率を良くするという点から望まれる。
【0004】
一方、リニア圧縮機では、圧縮能力を可変にすることも望まれる。例えば、回転型圧縮機と同様にピストンの振動周波数を可変にすることで圧縮能力を可変にできる。しかし、振動周波数が共振周波数と異なるほどに、圧縮機の効率が低下する。
【0005】
よって、リニア圧縮機のような弾性を有する機構を備えたレシプロ圧縮機では、振動周波数に共振周波数を採用することで圧縮機の効率の低下を抑え、ピストンが振動するときの振幅を可変にすることで圧縮能力を可変にしていた。
【0006】
なお、本発明に関連する技術を以下に示す。特許文献1〜4では、圧縮機の効率を向上する技術や、ピストンがシリンダに衝突することを防止する技術が開示されている。また、特許文献5,6では、ピストンの振動周波数を共振周波数に一致させて、圧縮機の効率を向上させる技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−251762号公報
【特許文献2】特開2002−161863号公報
【特許文献3】特開2002−317761号公報
【特許文献4】特開2003−13864号公報
【特許文献5】特開平9−112438号公報
【特許文献6】特開2000−253639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ピストンの振動の中心を固定した状態でピストンの振幅を可変にすると、振幅が小さい場合に圧縮能力が著しく低下する。そこで、ピストンの振動の中心を圧縮方向側に移動することで、圧縮能力の低下を回避していた。このような技術は、例えば特許文献2に開示されている。
【0009】
ところが、ピストンの振動の中心を移動させる場合には、弾性を有する機構に対して力を働かせるためのエネルギーが必要とされる。よって、圧縮機の効率が低下する可能性があった。また、このような制御は複雑であって、コストが増大する可能性もあった。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、効率を低下させることなく、ピストンを駆動する周波数を可変にし、以って圧縮機の能力を可変にすることが目的とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の請求項1にかかる圧縮機は、シリンダ(22)と、前記シリンダで気体を吸入、圧縮可能に可動なピストン(21)と、前記ピストンにエネルギーを供給するモータ(23)と、前記ピストンからエネルギーを電気として回収する制動部(24)とを備える。
【0012】
この発明の請求項2にかかる圧縮機の制御装置は、請求項1記載の圧縮機(2a)において、前記ピストン(21)の運動を制御する装置(1a)であって、前記モータ(23)及び前記制動部(24)の各々を制御する制御部(11a)を有し、前記制御部には、前記ピストンが移動する限界の位置として死点(L1,L2)が与えられ、前記制御部は、前記ピストンの位置(L(t))と前記速度(v(t))とを検出し、これらに基づいて前記ピストンの前記速度がゼロになる予測位置(L0)を求め、前記モータによる前記エネルギーの供給量及び前記制動部による前記エネルギーの回収量の少なくとも一方を調節して、前記予測位置を前記死点に一致させる。
【0013】
この発明の請求項3にかかる圧縮機の制御装置は、請求項2記載の圧縮機の制御装置であって、前記制御部(11a)は、前記予測位置(L0)が前記死点(L1,L2)と一致する場合には、前記予測位置を求めた時点(t1)での前記供給量及び前記回収量を維持し、前記予測位置が前記死点を越える場合には、前記供給量を前記時点よりも減少させること及び前記回収量を前記時点よりも増加させることの少なくとも一方を行い、前記予測位置が前記死点に至らない場合には、前記供給量を前記時点よりも増加させること及び前記回収量を前記時点よりも減少させることの少なくとも一方を行う。
【0014】
この発明の請求項4にかかる圧縮機の制御装置は、請求項2または請求項3記載の圧縮機の制御装置であって、インバータ(12)を更に有し、前記制御部(11a)は、交流電圧指令値(S1)を前記インバータに与え、前記インバータは、前記交流電圧指令値に基づいて所望の交流電圧を前記モータ(23)に供給する。
【0015】
この発明の請求項5にかかる圧縮機の制御装置は、請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置であって、前記位置(L(t))を検出する位置センサ(13)を更に有し、前記制御部(11a)は、前記位置(L(t1))を検出してから、所定の時間(Δt)経過後に前記ピストン(21)の新たな位置(L(t1+Δt))をさらに検出し、前記新たな位置と前記位置との差を前記所定の時間で除した平均速度(va(t1))を、前記速度(v(t1))として求める。
【0016】
この発明の請求項6にかかる圧縮機の制御装置は、請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置であって、前記制動部は発電機(24)であり、前記制御部(11a)は、前記発電機で誘起される交流電圧(Vi(t))に基づいて、前記位置(L(t))及び前記速度(v(t))を求める。
【0017】
この発明の請求項7にかかる圧縮機の制御装置は、請求項2乃至請求項6のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置であって、蓄電部(14)を更に有し、前記制動部は発電機(24)であり、前記蓄電部は、前記発電機で回収される前記エネルギーを電気として蓄電する。
【0018】
この発明の請求項8にかかる圧縮機の制御装置は、請求項7記載の圧縮機の制御装置であって、前記蓄電部(14)は、コンバータ(141)と、コンデンサ(C)とを有し、前記コンバータは、前記ピストン(21)の前記エネルギーを回収する際に前記制動部(24)で誘起された交流電圧(Vi(t))を所望の直流電圧に変換し、前記直流電圧によって前記コンデンサを充電する。
【0019】
この発明の請求項9にかかる圧縮機の制御装置は、請求項2乃至請求項8のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置であって、前記シリンダ(22)から前記気体を吐出する時の前記ピストン(21)の速度(v(t))は、前記気体を吸入する時の前記ピストンの速度(v(t))と異なる。
【0020】
この発明の請求項10にかかる空調機は、請求項1記載の圧縮機(2a)と、請求項2乃至請求項9のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置(1a)とを有する。
【0021】
この発明の請求項11にかかる圧縮機は、シリンダ(22)と、前記シリンダで気体を吸入、圧縮可能に可動なピストン(21)と、前記ピストンの駆動および制動を切り換えて行うモータ(23)とを備える。
【0022】
この発明の請求項12にかかる圧縮機の制御装置は、請求項11記載の圧縮機(2c)において、前記ピストン(21)の運動を制御する装置(1c)であって、前記モータ(23)が前記ピストンに対して行う仕事を調節する制御部(11c)を有し、前記制御部には、前記ピストンが移動する限界の位置として死点(L1,L2)が与えられ、前記制御部は、前記ピストンの位置(L(t))と速度(v(t))とを検出し、これらに基づいて前記ピストンの速度がゼロになる予測位置(L0)を求め、前記仕事を調節して、前記予測位置を前記死点に一致させる。
【0023】
この発明の請求項13にかかる圧縮機の制御装置は、請求項12記載の圧縮機の制御装置であって、前記制御部(11c)は、前記予測位置(L0)が前記死点(L1,L2)と一致する場合には、前記予測位置を求めた時点(t1)での前記仕事を維持し、前記予測位置が前記死点を越える場合には、前記仕事を前記時点よりも減少させ、前記予測位置が前記死点に至らない場合には、前記仕事を前記時点よりも増加させる。
【0024】
この発明の請求項14にかかる圧縮機の制御装置は、請求項12または請求項13記載の圧縮機の制御装置であって、インバータ(151)を更に有し、前記制御部(11c)は、交流電圧指令値(S1)を前記インバータに与え、前記インバータは、前記交流電圧指令値に基づいて所望の交流電圧を前記モータ(23)に供給する。
【0025】
この発明の請求項15にかかる圧縮機の制御装置は、請求項12乃至請求項14のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置であって、前記位置(L(t))を検出する位置センサ(13)を更に有し、前記制御部(11c)は、前記位置(L(t1))を検出してから、所定の時間(Δt)経過後に前記ピストン(21)の新たな位置(L(t1+Δt))をさらに検出し、前記新たな位置と前記位置との差を前記所定の時間で除して平均速度(va(t1))を、前記速度(v(t1))として求める。
【0026】
この発明の請求項16にかかる圧縮機の制御装置は、請求項12乃至請求項15のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置であって、前記モータ(23)に対して電気を供給する第1期間(T1)と、前記モータに対して前記電気を供給しない第2期間(T2)とを設定し、前記制御部(11c)は、前記第1期間で、前記モータに前記ピストン(21)へエネルギーを供給させ、前記第2期間で、前記モータに前記ピストンからエネルギーを回収させる。
【0027】
この発明の請求項17にかかる圧縮機の制御装置は、請求項16記載の圧縮機の制御装置であって、蓄電部(15)を更に有し、前記第2期間(T2)で回収されるエネルギーを電気として蓄電する。
【0028】
この発明の請求項18にかかる圧縮機の制御装置は、請求項17記載の圧縮機の制御装置であって、前記蓄電部(15)は、コンバータ(151)と、コンデンサ(C)とを有し、前記コンバータは、前記ピストン(21)の前記エネルギーを回収する際に前記モータ(23)で誘起された交流電圧(Vi(t))を所望の直流電圧に変換し、前記直流電圧によって前記コンデンサを充電する。
【0029】
この発明の請求項19にかかる圧縮機の制御装置は、請求項16乃至請求項18のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置であって、前記制御部(11a)は、前記第2期間(T2)では、前記モータ(23)で誘起される交流電圧(Vi(t))に基づいて前記位置(L(t))及び前記速度(v(t))を求める。
【0030】
この発明の請求項20にかかる圧縮機の制御装置は、請求項12乃至請求項19のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置であって、前記シリンダ(22)から前記気体を吐出する時の前記ピストン(21)の速度(v(t))は、前記気体を吸入する時の前記ピストンの速度(v(t))と異なる。
【0031】
この発明の請求項21にかかる空調機は、請求項11記載の圧縮機(2c)と、請求項12乃至請求項20のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置(1c)とを有する。
【0032】
この発明の請求項22にかかる圧縮機の制御方法は、請求項1記載の圧縮機(2a)において、前記ピストン(21)の運動を制御する方法であって、(a)前記ピストンが移動する限界の位置として死点(L1,L2)を設け、(b)前記ピストンの位置(L(t))と前記速度(v(t))を検出し、これらに基づいて前記ピストンの前記速度がゼロになる予測位置(L0)を求め、(c)前記モータによる前記エネルギーの供給量及び前記制動部による前記エネルギーの回収量の少なくとも一方を調節して、前記予測位置を前記死点に一致させる。
【0033】
この発明の請求項23にかかる圧縮機の制御方法は、請求項22記載の圧縮機の制御方法であって、前記ステップ(c)では、前記予測位置(L0)が前記死点(L1,L2)と一致する場合には、前記予測位置を求めた時点(t1)での前記供給量及び前記回収量を維持し、前記予測位置が前記死点を越える場合には、前記供給量を前記時点よりも減少させること及び前記回収量を前記時点よりも増加させることの少なくとも一方を行い、前記予測位置が前記死点に至らない場合には、前記供給量を前記時点よりも増加させること及び前記回収量を前記時点よりも減少させることの少なくとも一方を行う。
【0034】
この発明の請求項24にかかる圧縮機の制御方法は、請求項22または請求項23記載の圧縮機の制御方法であって、前記ステップ(c)では、交流電圧指令値(S1)に基づいて所望の交流電圧を前記モータ(23)に供給する。
【0035】
この発明の請求項25にかかる圧縮機の制御方法は、請求項24記載の圧縮機の制御方法であって、前記制動部は発電機(24)であり、前記ピストン(21)の前記エネルギーを回収する際に前記発電機で誘起された交流電圧(Vi(t))を所望の直流電圧に変換し、前記ステップ(c)では、前記所望の交流電圧は、前記交流電圧指令値(S1)に基づいて前記所望の直流電圧を変換して得られる。
【0036】
この発明の請求項26にかかる圧縮機の制御方法は、請求項22乃至請求項25のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法であって、前記ステップ(b)では、前記位置(L(t1))を検出してから、所定の時間(Δt)経過後に前記ピストン(21)の新たな位置(L(t1+Δt))をさらに検出し、前記新たな位置と前記位置との差を前記所定の時間で除した平均速度を(va(t1))、前記速度(v(t1))として求める。
【0037】
この発明の請求項27にかかる圧縮機の制御方法は、請求項22乃至請求項25のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法であって、前記制動部は発電機(24)であって、前記ステップ(b)では、前記発電機で誘起される交流電圧(Vi(t))に基づいて、前記位置(L(t))及び前記速度(v(t))を求める。
【0038】
この発明の請求項28にかかる圧縮機の制御方法は、請求項11記載の圧縮機(2c)において、前記ピストン(21)の運動を制御する方法であって、(a)前記ピストンが移動する限界の位置として死点(L1,L2)を設け、(b)前記ピストンの位置(L(t))と速度(v(t))とを検出し、これらに基づいて前記ピストンの速度がゼロになる予測位置(L0)を求め、(c)前記モータ(23)が前記ピストンに対して行う仕事を調節して、前記予測位置を前記死点に一致させる。
【0039】
この発明の請求項29にかかる圧縮機の制御方法は、請求項28記載の圧縮機の制御方法であって、前記ステップ(c)では、前記予測位置(L0)が前記死点(L1,L2)と一致する場合には、前記予測位置(t1)を求めた時点での前記仕事を維持し、前記予測位置が前記死点を越える場合には、前記仕事を前記時点よりも減少させ、前記予測位置が前記死点に至らない場合には、前記仕事を前記時点よりも増加させる。
【0040】
この発明の請求項30にかかる圧縮機の制御方法は、請求項28または請求項29記載の圧縮機の制御方法であって、前記ステップ(b)では、前記位置(L(t1))を検出してから、所定の時間(Δt)経過後に前記ピストン(21)の新たな位置(L(t1+Δt))をさらに検出し、前記新たな位置と前記位置との差を前記所定の時間で除して平均速度(va(t1))を、前記速度(v(t1))として求める。
【0041】
この発明の請求項31にかかる圧縮機の制御方法は、請求項28乃至請求項30のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法であって、前記モータ(23)に対して電気を供給する第1期間(T1)と、前記モータに対して前記電気を供給しない第2期間(T2)とを設定し、前記ステップ(c)では、前記第1期間で、前記モータによって前記ピストン(21)へエネルギーを供給し、前記第2期間で、前記モータによって前記ピストンからエネルギーを回収する。
【0042】
この発明の請求項32にかかる圧縮機の制御方法は、請求項28乃至請求項31のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法であって、前記ステップ(c)では、交流電圧指令値(S1)に基づいて所望の交流電圧を前記モータ(23)に供給する。
【0043】
この発明の請求項33にかかる圧縮機の制御方法は、請求項32記載の圧縮機の制御方法であって、前記ピストン(21)の前記エネルギーを回収する際に前記モータ(23)で誘起された交流電圧(Vi(t))を所望の直流電圧に変換し、前記ステップ(c)では、前記所望の交流電圧は、前記交流電圧指令値(S1)に基づいて前記所望の直流電圧を変換して得られる。
【0044】
この発明の請求項34にかかる圧縮機の制御方法は、請求項31乃至請求項33のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法であって、前記ステップ(b)では、前記第2期間(T2)においては、前記モータ(23)で誘起される交流電圧(Vi(t))に基づいて前記位置(L(t))及び前記速度(v(t))を求める。
【0045】
この発明の請求項35にかかる圧縮機の制御方法は、請求項22乃至請求項34のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法であって、前記シリンダ(22)から前記気体を吐出する時の前記ピストン(21)の速度(v(t))は、前記気体を吸入する時の前記ピストンの速度(v(t))と異なる。
【0046】
この発明の請求項36にかかる空調機の制御方法は、請求項22乃至請求項35のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法を用いて、自身が備える前記圧縮機を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
この発明の請求項1にかかる圧縮機によれば、ピストンが、モータによって駆動され、制動部によって制動される。このため、弾性定数を持った機構を設けた圧縮機のように共振現象を用いることがない。よって、効率を低下させることなくピストンを駆動する周波数を可変にし、以って圧縮機の能力を可変にできる。
【0048】
この発明の請求項2にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項22にかかる圧縮機の制御方法によれば、ピストンが有するエネルギーを調節することで、ピストンを精度良く死点に導く。従って、ピストンがシリンダに衝突すること、もしくはピストンがシリンダから抜け落ちることが回避される。
【0049】
この発明の請求項3にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項23にかかる圧縮機の制御方法によれば、予測位置が死点に一致する。
【0050】
この発明の請求項4にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項24にかかる圧縮機の制御方法によれば、モータに所望の交流電圧を供給することで、ピストンに所望のエネルギーが供給される。
【0051】
この発明の請求項5または請求項6にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項26または請求項27にかかる圧縮機の制御方法によれば、ピストンの位置と速度とが検出されるので、請求項2乃至請求項4のいずれか一つにかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項22乃至請求項25のいずれか一つにかかる圧縮機の制御方法に適用できる。
【0052】
この発明の請求項7にかかる圧縮機の制御装置によれば、制動部で回収されたエネルギーは、蓄電部を介して、例えばモータからのエネルギー供給に再利用される。よって、効率良く圧縮機が制御される。
【0053】
この発明の請求項8にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項25にかかる圧縮機の制御方法によれば、コンデンサに充電された電気を例えばインバータに供給することで、モータを駆動できる。すなわち、制動部で回収されたエネルギーが、例えばモータからのエネルギー供給に再利用される。よって、効率良く圧縮機が制御される。
【0054】
この発明の請求項9または請求項20にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項35にかかる圧縮機の制御方法によれば、吐出時のピストンの速度を吸入時より遅くすることで、気体が吐出される際のエネルギー損失が低減され、以ってより効率良く圧縮機が制御される。しかも、請求項2乃至請求項8及び請求項12乃至請求項19のいずれか一つにかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項22乃至請求項34のいずれか一つにかかる圧縮機の制御方法で、気体の吸入時のピストンの速度を制御することで、ピストンの駆動する周波数を所望の値にできる。
【0055】
あるいは、吸入時のピストンの速度を吐出時より遅くすることで、気体が吸入される際のエネルギー損失が低減され、以ってより効率良く圧縮機が制御される。しかも、請求項2乃至請求項8及び請求項12乃至請求項19のいずれか一つにかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項22乃至請求項34のいずれか一つにかかる圧縮機の制御方法で、気体の吐出時のピストンの速度を制御することで、ピストンの駆動する周波数を所望の値にできる。
【0056】
この発明の請求項10または請求項21にかかる空調機もしくは請求項36にかかる空調機の制御方法によれば、圧縮機の能力を可変にでき、以って空調機の能力も可変にできる。
【0057】
この発明の請求項11にかかる圧縮機によれば、ピストンが、モータによって駆動及び制動される。このため、弾性定数を持った機構を設けた圧縮機のように共振現象を用いることがない。よって、効率を低下させることなくピストンを駆動する周波数を可変にし、以って圧縮機の能力を可変にできる。
【0058】
この発明の請求項12にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項28にかかる圧縮機の制御方法によれば、ピストンに対して行う仕事を調節することで、ピストンを精度良く死点に導く。従って、ピストンがシリンダに衝突すること、もしくはピストンがシリンダから抜け落ちることが回避される。
【0059】
この発明の請求項13にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項29にかかる圧縮機の制御方法によれば、予測位置が死点に一致する。
【0060】
この発明の請求項14にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項32にかかる圧縮機の制御方法によれば、モータに所望の交流電圧を供給することで、ピストンに対して所望の仕事ができる。
【0061】
この発明の請求項15にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項30にかかる圧縮機の制御方法によれば、ピストンの位置と速度とが検出されるので、請求項12乃至請求項14のいずれか一つにかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項28または請求項29にかかる圧縮機の制御方法に適用できる。
【0062】
この発明の請求項16にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項31にかかる圧縮機の制御方法によれば、エネルギーの供給及び回収により、ピストンに対して行う仕事が調節される。
【0063】
この発明の請求項17にかかる圧縮機の制御装置によれば、モータで回収されたエネルギーは、蓄電部を介して、例えばモータからのエネルギー供給に再利用される。よって、効率良く圧縮機が制御される。
【0064】
この発明の請求項18にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項33にかかる圧縮機の制御方法によれば、コンデンサに充電された電気を例えばインバータに供給することで、モータを駆動できる。すなわち、回収されたエネルギーが再利用され、以って効率良く圧縮機が制御される。
【0065】
この発明の請求項19にかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項34にかかる圧縮機の制御方法によれば、ピストンの位置と速度とが検出されるので、請求項16乃至請求項18のいずれか一つにかかる圧縮機の制御装置もしくは請求項31乃至請求項33のいずれか一つにかかる圧縮機の制御方法に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
第1の実施の形態.
図1は、本実施の形態にかかる圧縮機2a及びその制御装置1aを概念的に示す。圧縮機2aは、ピストン21、シリンダ22、モータ23及び制動部24を備える。制御装置1aについては、第2の実施の形態で説明する。
【0067】
シリンダ22のシリンダヘッド221には、バルブ271,272が設けられ、配管261,262が接続される。バルブ271は、配管261から気体を吸入し、配管261への気体の排出を妨げる。バルブ272は、配管262に気体を排出し、配管261からの気体の吸入を妨げる。
【0068】
ピストン21は、シリンダ22で気体を吸入、圧縮可能に、シリンダ22内で可動である。具体的には、ピストン21は、シリンダヘッド221とは反対方向に移動することで、バルブ271を開いてシリンダ22内に気体を吸入する。このとき、バルブ272は閉じてシリンダ22内への気体の流入が妨げられる。
【0069】
また、ピストン21は、シリンダヘッド221に向かって移動することで、シリンダ22内の気体を圧縮する。このとき、バルブ271,272は閉じて、圧縮能力の低下を妨げる。そして、シリンダ22内の気体の圧力が所定値に至ると、バルブ272が開いて、圧縮された気体がシリンダ22から排出される。このとき、バルブ271は閉じて配管261への気体の流出を妨げる。
【0070】
モータ23は、固定部231,232及び可動部233を有し、例えばリニアモータである。可動部233は、固定部231,232の間でピストン21の移動方向へ可動である。そして、モータ23に交流電圧を印加することで、可動部233には、駆動する力が生じる。
【0071】
制動部24は、例えば発電機である。図1では制動部24が発電機である場合が示されている。発電機24は、固定部241,242及び可動部243を有し、その構成はモータ23と同様である。ただし、その機能はモータ23と異なる。すなわち、可動部243が、固定部241,242の間に生じる磁場内を往復移動することで、可動部243の速度に基づいて可動部243には交流電圧Vi(t)が誘起される。このとき、可動部243の運動エネルギーが、電気エネルギーとして発電機24に回収される。よって、可動部243には制動する力が生じる。
【0072】
可動部233,243及びピストン21は、軸25によって一体化され、相互に連動する。従って、ピストン21は、可動部233に生じる力によって駆動され、可動部243に生じる力によって制動される。換言すれば、ピストン21は、モータ23からエネルギーが供給され、発電機24によってエネルギーが回収される。
【0073】
上述した圧縮機2aによれば、ピストン21が、モータ23によって駆動され、制動部24によって制動される。このため、弾性定数を持った機構を設けた圧縮機のように共振現象を用いることがない。よって、効率を低下させることなくピストン21を駆動する周波数を可変にし、以って圧縮機2aの能力を可変にできる。
【0074】
第2の実施の形態.
図1で示される制御装置1aは、第1の実施の形態で説明した圧縮機2aを制御する装置、とりわけピストン21の運動を制御する装置であって、制御部11a、インバータ12、位置センサ13、蓄電部14、整流用ダイオード16及び電源17を備える。
【0075】
図2は、ピストン21の、時間tにおける位置L(t)及び死点L1,L2を概念的に示す断面図である。ピストン21の位置L(t)は、例えばピストン21の端面であってシリンダヘッド221側の位置とされ、図2ではこの場合が示されている。死点L1,L2は、ピストン21が移動する限界の位置として設定される。具体的には、死点L1は、ピストン21の圧縮時の限界の位置であって、シリンダヘッド221やバルブ271,272に衝突しない位置で設定される。また、死点L2は、ピストン21の吸入時の限界の位置であって、ピストン21がシリンダ22から抜け落ちない位置で設定される。以下においては、死点L1を上死点、死点L2を下死点と呼ぶこともある。
【0076】
制御部11aには、ピストン21の位置L(t)及び死点L1,L2が与えられる。ピストン21の位置L(t)は、ある時間tにおいて位置センサ13で検出される。そして、制御部11aは、時間t1において検出された位置L(t1)と、所定の時間Δt経過後に新たに検出された位置L(t1+Δt)とから、(L(t1+Δt)−L(t1))/Δtによって平均速度va(t1)を、ピストン21の速度v(t1)として求める。
【0077】
制御部11aは、位置L(t1)、速度v(t1)及び死点L1,L2に基づいて、以下のようにピストン21の運動を制御する。
【0078】
まず、位置L(t1)及び速度v(t1)に基づいて、前記ピストン21の速度がゼロになる予測位置L0を求める。予測位置L0は、例えば式(1)で求められる。式(1)は、圧縮時のピストン21の予測位置L0を表す式である。式(1)の第1項は、ピストン21の運動エネルギーのすべてが、ピストンに対して行う仕事に用いられた場合のピストンの移動距離である。ここで、符号mはピストンの質量、符号Aはシリンダの断面積、符号Hpは圧縮時の吐出圧力をそれぞれ表す。符号mについては、ピストン21が軸25を介して可動部233,243と一体になっている場合には、各々の質量の和を表す。
【0079】
【数1】

【0080】
吐出圧力Hpは、ピストン21が下死点L2から移動するとともに単調に増加し、所定の位置から上死点L1に至るまでの間では一定になる。このため、式(1)によれば、下死点L2から所定の位置までの期間では、予測位置L0が過大に見積もられる。よって、当該期間では、式(1)で得られる予測位置L0に例えば補正係数を乗じて、これを予測位置L0として用いてよい。
【0081】
吸入時のピストン21の予測位置L0を求める場合には、式(1)において、吐出圧力Hpに代えて吸入圧力が採用され、かつ式(1)の第1項には負号が付される。
【0082】
予測位置L0を求めた後、モータ23及び発電機24の各々を制御することで、予測位置L0を、圧縮時には死点L1に、吸入時には死点L2にそれぞれ一致させる。すなわち、モータ23によるピストン21へのエネルギーの供給量及び発電機24によるピストン21からのエネルギーの回収量の少なくとも一方を調節して、予測位置L0を死点L1,L2に一致させる。
【0083】
具体的には、次のようにして予測位置L0を死点L1,L2に一致させる。予測位置L0と死点L1,L2とを比較して、予測位置L0が死点L1,L2と一致する場合には、予測位置L0を求めた時点t1でのエネルギーの供給量及び回収量を維持する。
【0084】
予測位置L0が死点L1,L2を越える場合には、エネルギーの供給量を時点t1よりも減少させること及びエネルギーの回収量を時点t1よりも増加させることの少なくとも一方を行う。ここで、予測位置L0が死点L1,L2を越えるとは、予測位置L0が死点L1に対してシリンダヘッド221側にあること、あるいは予測位置L0が死点L2に対してシリンダヘッド221の反対側にあることをいう。
【0085】
予測位置L0が死点L1,L2に至らない場合には、エネルギーの供給量を時点t1よりも増加させること及びエネルギーの回収量を時点t1よりも減少させることの少なくとも一方を行う。ここで、予測位置L0が死点L1,L2に至らないとは、予測位置L0が死点L1に対して死点L2側にあること、あるいは予測位置L0が死点L2に対して死点L1側にあることをいう。
【0086】
図3及び図4は、上述した制御方法をフローチャートで示した図である。図3は圧縮時の制御方法を、図4は吸入時の制御方法をそれぞれ示す。図3では吸入動作終了時から圧縮が始まる場合が、図4では圧縮動作終了時から吸入が始まる場合が、それぞれ示されている。圧縮機2aの動作の開始時においては、死点L1,L2以外の位置から圧縮、吸入が始まることもある。
【0087】
まず、圧縮を開始するためにステップ101では、ピストン21にエネルギーを供給して、ピストン21を駆動させる。例えば、式(2)で表される力Fがピストン21に生じるように、ピストン21にエネルギーが供給される。ここで、符号mはピストンの質量、符号fはピストンの駆動する周波数、符号Stは片ストロークすなわち死点L1,L2の間の距離をそれぞれ表す。符号mについては、ピストン21が軸25を介して可動部233,243と一体になっている場合には、各々の質量の和を表す。
【0088】
【数2】

【0089】
下死点L2から上死点L1に向かって力Fが常にピストン21に作用した場合には、下死点L2から半周期(1/(2・f))で上死点L1に至る。
【0090】
ステップ102では、位置センサなどによってピストン21の位置L(t)が検出される。
【0091】
ステップ103では、検出された位置L(t)が上死点L1と一致すると判断された場合には、圧縮するための制御を終了する。一方、検出された位置L(t)が上死点と一致しないと判断された場合は、ステップ104でピストン21の速度v(t)を求める。上述したように平均速度va(t)が、速度v(t)として求められる。例えば、上述した式(1)が用いられる。
【0092】
ステップ105では、ピストンの位置L(t)及び速度v(t)に基づいて、ピストン21の速度がゼロになる予測位置L0が求められる。
【0093】
ステップ106では、予測位置L0が上死点L1と一致すると判断された場合には、予測位置L0を求めた時点tでのエネルギーの供給量及び回収量を維持する。予測位置L0が上死点L1と一致しないと判断された場合には、さらにステップ107で判断される。
【0094】
ステップ107では、予測位置L0が上死点L1を越えると判断された場合には、エネルギーの供給量を時点tよりも減少させること及びエネルギーの回収量を時点tよりも増加させることの少なくとも一方を行う。予測位置L0が上死点L1を越えない、すなわち上死点L1に至らないと判断された場合には、エネルギーの供給量を時点tよりも増加させること及びエネルギーの回収量を時点tよりも減少させることの少なくとも一方を行う。
【0095】
その後、ステップ103でピストン21の位置L(t)と上死点L1とが一致するまで、ステップ102〜ステップ107の動作が繰り返される。
【0096】
吸入する場合にはおいても、図4で示されるように、圧縮と同様の制御を行う。ただし、上死点L1に代えて下死点L2が用いられる。
【0097】
図1に戻って、インバータ12は、制御部11aがモータ23を制御してピストン21にエネルギーを供給する際に用いられる。インバータ12には、制御部11aから交流電圧指令値S1が与えられる。インバータ12は、交流電圧指令値S1に基づいて直流電圧Vdcを所望の交流電圧へ変換し、これをモータ23に供給する。直流電圧Vdcは、電源17で生じる交流電圧Vacを整流用ダイオード16で変換して得られる。
【0098】
インバータ12によれば、モータ23に所望の交流電圧を供給することができ、以ってピストン21に所望のエネルギーが供給できる。
【0099】
蓄電部14は、コンバータ141及びコンデンサCを有する。コンバータ141は、制御部11aが発電機24を制御してピストン21からエネルギーを回収する際に用いられる。コンバータ141は、制御部11aによって制御され、ピストン21からエネルギーを回収する際に発電機24で誘起された交流電圧Vi(t)を、所望の直流電圧に変換する。そして、コンデンサCは、変換された所望の直流電圧によって充電される。
【0100】
この内容は、蓄電部14が、発電機24で回収されるエネルギーを電気として蓄電すると把握することができる。
【0101】
コンデンサCに充電された電気は、例えばインバータ12に供給して、モータ23の駆動に用いることができる。すなわち、発電機24で回収されたエネルギーが、蓄電部14を介して、例えばモータ23からピストン21へのエネルギー供給に再利用される。よって、効率良く圧縮機が制御される。
【0102】
上述した圧縮機2aの制御技術によれば、ピストン21のエネルギーを調節して、ピストン21を精度良く死点L1,L2に導く。従って、ピストン21がシリンダ22に衝突すること、もしくはピストン21がシリンダ22から抜け落ちることが回避される。
【0103】
本実施の形態では、位置センサ13を設けずに、例えば発電機24で誘起される交流電圧Vi(t)に基づいて、ピストン21の位置L(t)及び速度v(t)を求めてもよい。例えば、以下で示す式(4)及び式(5)が用いられる。
【0104】
交流電圧Vi(t)は、ピストンの速度v(t)を用いて、式(3)で表される。ここで、符号Bは、発電機24の固定部241,242の間に生じる磁場を示す。また、符号lは、交流電圧の誘起に寄与するコイルの長さを示す。
【0105】
【数3】

【0106】
式(3)を速度v(t)について解くことで式(4)が得られる。すなわち、ピストン21の速度v(t)が、誘起された交流電圧Vi(t)に基づいて求められる。
【0107】
【数4】

【0108】
さらに、ピストンの位置L(t)は、式(5)の第1式のように速度v(t)の時間積分で表される。式(4)を式(5)の第1式に代入することで、第2式が得られる。
【0109】
【数5】

【0110】
式(5)の第2式によれば、ピストン21の位置L(t)が、誘起された交流電圧Vi(t)に基づいて求められる。
【0111】
式(4)及び式(5)第2式の各々で現れる係数B・lを式(3)の関係から予め求め、これを制御部11aが記憶しておいてもよい。
【0112】
第1の実施の形態で説明した圧縮機2aと、本実施の形態で説明した制御装置1aとを、例えば空調機に備えてもよい。この空調機によれば、圧縮機2aの能力を可変にでき、以って空調機の能力も可変にできる。
【0113】
第3の実施の形態.
図5は、本実施の形態にかかる圧縮機2cの制御装置1cを概念的に示す。圧縮機2cは、ピストン21、シリンダ22及びモータ23を備える。制御装置1cについては後述する。
【0114】
ピストン21、シリンダ22及びモータ23は、第1の実施の形態で説明したものと同様であるので、それらの説明を省略する。本実施の形態では、制動部である発電機24が設けられていないので、モータ23の可動部233とピストン21とが、軸25によって一体化され、相互に連動する。
【0115】
本実施の形態では、モータ23は、ピストン21を制動する場合にも用いられる。すなわち、モータ23は、ピストン21に対して仕事を調節して、ピストン21の駆動および制動を切り換えて行う。つまり、モータ23は、ピストン21を駆動する場合にはモータとして機能し、ピストン21を制動する場合には主に発電機として機能する。モータ23が発電機として機能する場合の、その動作は、第1の実施の形態で説明した発電機24と同様である。
【0116】
このような圧縮機2cによれば、ピストン21が、モータ23によって駆動及び制動される。このため、弾性定数を持った機構を設けた圧縮機のように共振現象を用いることがない。よって、効率を低下させることなくピストン21を駆動する周波数を可変にし、以って圧縮機2cの能力を可変にできる。
【0117】
制御装置1cは、制御部11c、インバータ151、位置センサ13、蓄電部15、整流用ダイオード16及び電源17を備える。
【0118】
制御部11cには、ピストン21の位置L(t)と、第1の実施の形態と同様にして設定される死点L1,L2とが与えられる。ピストン21の位置L(t)は、ある時間tにおいて位置センサ13で検出される。そして、制御部11cは、時間t1において検出された位置L(t1)と、所定の時間Δt経過後に新たに検出された位置L(t1+Δt)とから、(L(t1+Δt)−L(t1))/Δtによって平均速度va(t1)を、ピストン21の速度v(t1)として求める。
【0119】
制御部11cは、位置L(t1)、速度v(t1)及び死点L1,L2に基づいて、以下のようにピストン21の運動を制御する。
【0120】
まず、位置L(t1)及び速度v(t1)に基づいて、前記ピストン21の速度がゼロになる予測位置L0を求める。予測位置L0は、例えば上述した式(1)で求められる。ただし、吸入時のピストン21の予測位置L0を求める場合には、式(1)において、吐出圧力Hpに代えて吸入圧力が採用される。
【0121】
予測位置L0を求めた後、ピストンに対して行う仕事を調節して、予測位置L0を、圧縮時には死点L1に、吸入時には死点L2にそれぞれ一致させる。仕事の調節は、モータ23を制御してなされる。
【0122】
具体的には、次のようにして予測位置L0を死点L1,L2に一致させる。予測位置L0と死点L1,L2とを比較して、予測位置L0が死点L1,L2と一致する場合には、予測位置L0を求めた時点t1でのピストン21に対して行っている仕事を維持する。
【0123】
予測位置L0が死点L1,L2を越える場合には、ピストン21に対して行っている仕事を時点t1よりも減少させる。すなわち、モータ23の移動の方向に生じている力を減少させるか、または逆方向に力を生じさせて負の仕事をする。ここで、予測位置L0が死点L1,L2を越えるとは、第2の実施の形態で説明したと同様の意味で用いられる。
【0124】
予測位置L0が死点L1,L2に至らない場合には、ピストン21に対して行っている仕事を時点t1よりも増加させる。ここで、予測位置L0が死点L1,L2に至らないとは、第2の実施の形態で説明したと同様の意味で用いられる。
【0125】
図6及び図7は、上述した制御方法をフローチャートで示した図である。図6は圧縮時の制御方法を、図7は吸入時の制御方法をそれぞれ示す。図6では吸入動作終了時から圧縮が始まる場合が、図7では圧縮動作終了時から吸入が始まる場合が、それぞれ示されている。圧縮機2cの動作の開始時においては、ピストン21は例えば死点L1,L2以外の位置から圧縮、吸入が始まることもある。
【0126】
まず、圧縮を開始するためにステップ201では、ピストン21に対して仕事をして、ピストン21を駆動させる。例えば、上述した式(2)で表される力Fがピストン21に生じるように、ピストン21に対して仕事がされる。
【0127】
ステップ202では、位置センサなどによってピストン21の位置L(t)が検出される。
【0128】
ステップ203では、検出された位置L(t)が上死点L1と一致すると判断された場合には、圧縮するための制御を終了する。一方、検出された位置L(t)が上死点と一致しないと判断された場合は、ステップ204でピストン21の速度v(t)を求める。上述したように平均速度va(t)が、速度v(t)として求められる。
【0129】
ステップ205では、ピストンの位置L(t)及び速度v(t)に基づいて、ピストン21の速度がゼロになる予測位置L0が求められる。例えば、上述した式(1)が用いられる。
【0130】
ステップ206では、予測位置L0が上死点L1と一致すると判断された場合には、予測位置L0を求めた時点tでのピストン21に対して行っている仕事を維持する。予測位置L0が上死点L1と一致しないと判断された場合には、さらにステップ207で判断される。
【0131】
ステップ207では、予測位置L0が上死点L1を越えると判断された場合には、ピストン21に対して行っている仕事を時点t1よりも減少させる。予測位置L0が上死点L1を越えない、すなわち至らないと判断された場合には、ピストン21に対して行っている仕事を時点t1よりも増加させる。
【0132】
その後、ステップ203でピストン21の位置L(t)と上死点L1とが一致するまで、ステップ202〜ステップ207の動作が繰り返される。
【0133】
吸入する場合にはおいても、図7で示されるように、圧縮と同様の制御を行う。ただし、上死点L1に代えて下死点L2が用いられる。
【0134】
ピストン21に対して行う仕事の調節は、例えば次のように行う。まず、期間T1,T2を設定する。そして、各々の期間T1,T2で、制御部11cがモータ23に対して異なる制御をする。例えば、制御部11cは、期間T1では、モータ23に対して電気を供給することで、ピストン21にエネルギーを供給する。また、期間T2では、モータ23に対して電気を供給しないで、モータ23を発電機として機能させて、ピストン21からエネルギーを回収する。
【0135】
期間T1には、例えば上記したステップ207で予測位置が死点L1,L2に至らないと判断されてから、次の判断がなされるまでの時間間隔が採用できる。また、期間T2には、例えば上記したステップ207で予測位置が死点L1,L2を越えると判断されてから、次の判断がなされるまでの時間間隔が採用できる。
【0136】
図5に戻って、インバータ151は、制御部11cがモータ23を制御してピストン21に仕事をする際、主にピストン21にエネルギーを供給する際に用いられる。インバータ151には、制御部11aから交流電圧指令値S1が与えられる。インバータ151は、交流電圧指令値S1に基づいて直流電圧Vdcを所望の交流電圧を変換し、これをモータ23に供給する。直流電圧Vdcは、電源17で生じる交流電圧Vacを整流用ダイオード16で変換して得られる。
【0137】
インバータ151によれば、モータ23に所望の交流電圧を供給することができ、以ってピストン21に所望の仕事ができる。
【0138】
インバータ151は、後述するように、蓄電部15でコンバータとして用いられることもある。すなわち、インバータ151の出力側から交流電圧を入力し、これを所望の直流電圧に変換してインバータ151の入力側から出力する。
【0139】
蓄電部15は、コンバータとして機能するインバータ151(以下、「コンバータ151」という)及びコンデンサCを有する。コンバータ151は、制御部11cがモータ23を制御してピストン21に仕事をする際、主にピストン21からエネルギーを回収する際に用いられ、例えば上記した期間T2で用いられる。コンバータ151は、制御部11cによって制御され、ピストン21からエネルギーを回収する際にモータ23で誘起された交流電圧Vi(t)を、所望の直流電圧に変換する。そして、コンデンサCは、変換された所望の直流電圧によって充電される。
【0140】
コンバータ151は、例えばインバータ151とは別途設けてもよい。
【0141】
上述の内容は、蓄電部15が、モータ23で回収されるエネルギーを電気として蓄電すると把握することができる。
【0142】
コンデンサCに充電された電気は、例えばインバータ151に供給して、モータ23の駆動に用いることができる。すなわち、モータ23から回収されたエネルギーが再利用され、以って効率良く圧縮機が制御される。
【0143】
上述した圧縮機2cの制御技術によれば、ピストン21に対して行う仕事を調節することで、ピストン21を精度良く死点L1,L2に導く。従って、ピストン21がシリンダ22に衝突すること、もしくはピストン21がシリンダ22から抜け落ちることが回避される。
【0144】
本実施の形態では、位置センサ13を設けずに、例えば上記した期間T2においてモータ23で誘起される交流電圧Vi(t)に基づいて、第1の実施の形態で説明したと同様にして、ピストン21の位置L(t)及び速度v(t)を求めてもよい。
【0145】
上述した第2及び第3の実施の形態のいずれにおいも、圧縮時であって、シリンダ22から気体を吐出する時のピストン21の速度v(t)を、吸入時のピストン21の速度v(t)と異ならせてもよい。
【0146】
例えば、吐出時のピストン21の速度v(t)を吸入時より遅くすることで、気体が吐出される際のエネルギー損失が低減され、以ってより効率良く圧縮機2a,2cが制御される。しかも、気体の吸入時のピストン21の速度v(t)を制御装置11a,11cで制御することで、吐出時のピストン21の速度v(t)が遅くても、ピストン21の駆動する周波数を所望の値にできる。
【0147】
あるいは、吸入時のピストン21の速度v(t)を吐出時より遅くすることで、気体が吸入される際のエネルギー損失が低減され、以ってより効率良く圧縮機2a,2cが制御される。しかも、気体の吐出時のピストン21の速度v(t)を制御装置11a,11cで制御することで、吸入時のピストン21の速度v(t)が遅くても、ピストン21の駆動する周波数を所望の値にできる。
【0148】
本実施の形態で説明した圧縮機2cと、これを制御する制御装置1cとを、例えば空調機に備えてもよい。この空調機によれば、圧縮機2cの能力を可変にでき、以って空調機の能力も可変にできる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】第1の実施の形態で説明される、圧縮機及びその制御装置を概念的に示す図である。
【図2】第2の実施の形態で説明される、ピストンの位置及び死点を概念的に示す断面図である。
【図3】圧縮時の圧縮機の制御方法を概念的に示すフローチャート図である。
【図4】吸入時の圧縮機の制御方法を概念的に示すフローチャート図である。
【図5】第3の実施の形態で説明される、圧縮機の制御装置を概念的に示す図である。
【図6】圧縮時の圧縮機の制御方法を概念的に示すフローチャート図である。
【図7】吸入時の圧縮機の制御方法を概念的に示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0150】
1a,1c 制御装置
2a,2c 圧縮機
11a,11c 制御部
12,151 インバータ
13 位置センサ
14,15 蓄電部
21 ピストン
22 シリンダ
23 モータ
24 発電機(制動部)
141,151 コンバータ
C コンデンサ
v(t),v(t1) 速度
L1,L2 死点
L(t),L(t1),L(t1+Δt) 位置
L0 予測位置
t1 時間(時点)
S1 交流電圧指令値
Δt 所定の時間
va(t1) 平均速度
Vi(t) 交流電圧
T1,T2 期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(22)と、
前記シリンダで気体を吸入、圧縮可能に可動なピストン(21)と、
前記ピストンにエネルギーを供給するモータ(23)と、
前記ピストンからエネルギーを電気として回収する制動部(24)と
を備える、圧縮機。
【請求項2】
請求項1記載の圧縮機(2a)において、前記ピストン(21)の運動を制御する装置(1a)であって、
前記モータ(23)及び前記制動部(24)の各々を制御する制御部(11a)
を有し、
前記制御部には、前記ピストンが移動する限界の位置として死点(L1,L2)が与えられ、
前記制御部は、
前記ピストンの位置(L(t))と前記速度(v(t))とを検出し、これらに基づいて前記ピストンの前記速度がゼロになる予測位置(L0)を求め、
前記モータによる前記エネルギーの供給量及び前記制動部による前記エネルギーの回収量の少なくとも一方を調節して、前記予測位置を前記死点に一致させる、圧縮機の制御装置。
【請求項3】
前記制御部(11a)は、
前記予測位置(L0)が前記死点(L1,L2)と一致する場合には、前記予測位置を求めた時点(t1)での前記供給量及び前記回収量を維持し、
前記予測位置が前記死点を越える場合には、前記供給量を前記時点よりも減少させること及び前記回収量を前記時点よりも増加させることの少なくとも一方を行い、
前記予測位置が前記死点に至らない場合には、前記供給量を前記時点よりも増加させること及び前記回収量を前記時点よりも減少させることの少なくとも一方を行う、請求項2記載の圧縮機の制御装置。
【請求項4】
インバータ(12)を
更に有し、
前記制御部(11a)は、交流電圧指令値(S1)を前記インバータに与え、
前記インバータは、前記交流電圧指令値に基づいて所望の交流電圧を前記モータ(23)に供給する、請求項2または請求項3記載の圧縮機の制御装置。
【請求項5】
前記位置(L(t))を検出する位置センサ(13)
を更に有し、
前記制御部(11a)は、
前記位置(L(t1))を検出してから、所定の時間(Δt)経過後に前記ピストン(21)の新たな位置(L(t1+Δt))をさらに検出し、
前記新たな位置と前記位置との差を前記所定の時間で除した平均速度(va(t1))を、前記速度(v(t1))として求める、請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置。
【請求項6】
前記制動部は発電機(24)であり、
前記制御部(11a)は、前記発電機で誘起される交流電圧(Vi(t))に基づいて、前記位置(L(t))及び前記速度(v(t))を求める、請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置。
【請求項7】
蓄電部(14)を
更に有し、
前記制動部は発電機(24)であり、
前記蓄電部は、前記発電機で回収される前記エネルギーを電気として蓄電する、請求項2乃至請求項6のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置。
【請求項8】
前記蓄電部(14)は、
コンバータ(141)と、
コンデンサ(C)と
を有し、
前記コンバータは、前記ピストン(21)の前記エネルギーを回収する際に前記制動部(24)で誘起された交流電圧(Vi(t))を所望の直流電圧に変換し、
前記直流電圧によって前記コンデンサを充電する、請求項7記載の圧縮機の制御装置。
【請求項9】
前記シリンダ(22)から前記気体を吐出する時の前記ピストン(21)の速度(v(t))は、前記気体を吸入する時の前記ピストンの速度(v(t))と異なる、請求項2乃至請求項8のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置。
【請求項10】
請求項1記載の圧縮機(2a)と、
請求項2乃至請求項9のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置(1a)と
を有する、空調機。
【請求項11】
シリンダ(22)と、
前記シリンダで気体を吸入、圧縮可能に可動なピストン(21)と、
前記ピストンの駆動および制動を切り換えて行うモータ(23)と
を備える、圧縮機。
【請求項12】
請求項11記載の圧縮機(2c)において、前記ピストン(21)の運動を制御する装置(1c)であって、
前記モータ(23)が前記ピストンに対して行う仕事を調節する制御部(11c)
を有し、
前記制御部には、前記ピストンが移動する限界の位置として死点(L1,L2)が与えられ、
前記制御部は、
前記ピストンの位置(L(t))と速度(v(t))とを検出し、これらに基づいて前記ピストンの速度がゼロになる予測位置(L0)を求め、
前記仕事を調節して、前記予測位置を前記死点に一致させる、圧縮機の制御装置。
【請求項13】
前記制御部(11c)は、
前記予測位置(L0)が前記死点(L1,L2)と一致する場合には、前記予測位置を求めた時点(t1)での前記仕事を維持し、
前記予測位置が前記死点を越える場合には、前記仕事を前記時点よりも減少させ、
前記予測位置が前記死点に至らない場合には、前記仕事を前記時点よりも増加させる、請求項12記載の圧縮機の制御装置。
【請求項14】
インバータ(151)を
更に有し、
前記制御部(11c)は、交流電圧指令値(S1)を前記インバータに与え、
前記インバータは、前記交流電圧指令値に基づいて所望の交流電圧を前記モータ(23)に供給する、請求項12または請求項13記載の圧縮機の制御装置。
【請求項15】
前記位置(L(t))を検出する位置センサ(13)
を更に有し、
前記制御部(11c)は、
前記位置(L(t1))を検出してから、所定の時間(Δt)経過後に前記ピストン(21)の新たな位置(L(t1+Δt))をさらに検出し、
前記新たな位置と前記位置との差を前記所定の時間で除して平均速度(va(t1))を、前記速度(v(t1))として求める、請求項12乃至請求項14のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置。
【請求項16】
前記モータ(23)に対して電気を供給する第1期間(T1)と、
前記モータに対して前記電気を供給しない第2期間(T2)と
を設定し、
前記制御部(11c)は、
前記第1期間で、前記モータに前記ピストン(21)へエネルギーを供給させ、
前記第2期間で、前記モータに前記ピストンからエネルギーを回収させる、請求項12乃至請求項15のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置。
【請求項17】
蓄電部(15)を
更に有し、
前記第2期間(T2)で回収されるエネルギーを電気として蓄電する、請求項16記載の圧縮機の制御装置。
【請求項18】
前記蓄電部(15)は、
コンバータ(151)と、
コンデンサ(C)と
を有し、
前記コンバータは、前記ピストン(21)の前記エネルギーを回収する際に前記モータ(23)で誘起された交流電圧(Vi(t))を所望の直流電圧に変換し、
前記直流電圧によって前記コンデンサを充電する、請求項17記載の圧縮機の制御装置。
【請求項19】
前記制御部(11a)は、
前記第2期間(T2)では、前記モータ(23)で誘起される交流電圧(Vi(t))に基づいて前記位置(L(t))及び前記速度(v(t))を求める、請求項16乃至請求項18のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置。
【請求項20】
前記シリンダ(22)から前記気体を吐出する時の前記ピストン(21)の速度(v(t))は、前記気体を吸入する時の前記ピストンの速度(v(t))と異なる、請求項12乃至請求項19のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置。
【請求項21】
請求項11記載の圧縮機(2c)と、
請求項12乃至請求項20のいずれか一つに記載の圧縮機の制御装置(1c)と
を有する、空調機。
【請求項22】
請求項1記載の圧縮機(2a)において、前記ピストン(21)の運動を制御する方法であって、
(a)前記ピストンが移動する限界の位置として死点(L1,L2)を設け、
(b)前記ピストンの位置(L(t))と前記速度(v(t))を検出し、これらに基づいて前記ピストンの前記速度がゼロになる予測位置(L0)を求め、
(c)前記モータによる前記エネルギーの供給量及び前記制動部による前記エネルギーの回収量の少なくとも一方を調節して、前記予測位置を前記死点に一致させる、圧縮機の制御方法。
【請求項23】
前記ステップ(c)では、
前記予測位置(L0)が前記死点(L1,L2)と一致する場合には、前記予測位置を求めた時点(t1)での前記供給量及び前記回収量を維持し、
前記予測位置が前記死点を越える場合には、前記供給量を前記時点よりも減少させること及び前記回収量を前記時点よりも増加させることの少なくとも一方を行い、
前記予測位置が前記死点に至らない場合には、前記供給量を前記時点よりも増加させること及び前記回収量を前記時点よりも減少させることの少なくとも一方を行う、請求項22記載の圧縮機の制御方法。
【請求項24】
前記ステップ(c)では、
交流電圧指令値(S1)に基づいて所望の交流電圧を前記モータ(23)に供給する、請求項22または請求項23記載の圧縮機の制御方法。
【請求項25】
前記制動部は発電機(24)であって、
前記ピストン(21)の前記エネルギーを回収する際に前記発電機で誘起された交流電圧(Vi(t))を所望の直流電圧に変換し、
前記ステップ(c)では、
前記所望の交流電圧は、前記交流電圧指令値(S1)に基づいて前記所望の直流電圧を変換して得られる、請求項24記載の圧縮機の制御方法。
【請求項26】
前記ステップ(b)では、
前記位置(L(t1))を検出してから、所定の時間(Δt)経過後に前記ピストン(21)の新たな位置(L(t1+Δt))をさらに検出し、
前記新たな位置と前記位置との差を前記所定の時間で除した平均速度を(va(t1))、前記速度(v(t1))として求める、請求項22乃至請求項25のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法。
【請求項27】
前記制動部は発電機(24)であって、
前記ステップ(b)では、
前記発電機で誘起される交流電圧(Vi(t))に基づいて、前記位置(L(t))及び前記速度(v(t))を求める、請求項22乃至請求項25のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法。
【請求項28】
請求項11記載の圧縮機(2c)において、前記ピストン(21)の運動を制御する方法であって、
(a)前記ピストンが移動する限界の位置として死点(L1,L2)を設け、
(b)前記ピストンの位置(L(t))と速度(v(t))とを検出し、これらに基づいて前記ピストンの速度がゼロになる予測位置(L0)を求め、
(c)前記モータ(23)が前記ピストンに対して行う仕事を調節して、前記予測位置を前記死点に一致させる、圧縮機の制御方法。
【請求項29】
前記ステップ(c)では、
前記予測位置(L0)が前記死点(L1,L2)と一致する場合には、前記予測位置(t1)を求めた時点での前記仕事を維持し、
前記予測位置が前記死点を越える場合には、前記仕事を前記時点よりも減少させ、
前記予測位置が前記死点に至らない場合には、前記仕事を前記時点よりも増加させる、請求項28記載の圧縮機の制御方法。
【請求項30】
前記ステップ(b)では、
前記位置(L(t1))を検出してから、所定の時間(Δt)経過後に前記ピストン(21)の新たな位置(L(t1+Δt))をさらに検出し、
前記新たな位置と前記位置との差を前記所定の時間で除して平均速度(va(t1))を、前記速度(v(t1))として求める、請求項28または請求項29記載の圧縮機の制御方法。
【請求項31】
前記モータ(23)に対して電気を供給する第1期間(T1)と、
前記モータに対して前記電気を供給しない第2期間(T2)と
を設定し、
前記ステップ(c)では、
前記第1期間で、前記モータによって前記ピストン(21)へエネルギーを供給し、
前記第2期間で、前記モータによって前記ピストンからエネルギーを回収する、請求項28乃至請求項30のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法。
【請求項32】
前記ステップ(c)では、
交流電圧指令値(S1)に基づいて所望の交流電圧を前記モータ(23)に供給する、請求項28乃至請求項31のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法。
【請求項33】
前記ピストン(21)の前記エネルギーを回収する際に前記モータ(23)で誘起された交流電圧(Vi(t))を所望の直流電圧に変換し、
前記ステップ(c)では、
前記所望の交流電圧は、前記交流電圧指令値(S1)に基づいて前記所望の直流電圧を変換して得られる、請求項32記載の圧縮機の制御方法。
【請求項34】
前記ステップ(b)では、
前記第2期間(T2)においては、前記モータ(23)で誘起される交流電圧(Vi(t))に基づいて前記位置(L(t))及び前記速度(v(t))を求める、請求項31乃至請求項33のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法。
【請求項35】
前記シリンダ(22)から前記気体を吐出する時の前記ピストン(21)の速度(v(t))は、前記気体を吸入する時の前記ピストンの速度(v(t))と異なる、請求項22乃至請求項34のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法。
【請求項36】
請求項22乃至請求項35のいずれか一つに記載の圧縮機の制御方法を用いて、自身が備える前記圧縮機を制御することを特徴とする、空調機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−46219(P2006−46219A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229751(P2004−229751)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】