圧電ミラーデバイスとこれを用いた光学機器および圧電ミラーデバイスの製造方法
【課題】ミラー部の変位量が大きい圧電ミラーデバイスと、このような圧電ミラーデバイスを簡便に製造するための製造方法およびこのような圧電ミラーデバイスを使用した光学機器を提供する。
【解決手段】圧電ミラーデバイス11は、中央に開口部13を有するフレーム部12と、開口部13に位置するミラー部14と、ミラー部14をフレーム部12に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部15と、下部電極17と圧電素子18と上部電極19との積層体である一対の駆動部16と、を備えたものとし、ミラー支持部15はヤング率が160GPa以下の材料からなり、フレーム部12は駆動部16が位置する部位の一部に切欠き部13aを有し、この切欠き部13aは開口部13に接するものとする。
【解決手段】圧電ミラーデバイス11は、中央に開口部13を有するフレーム部12と、開口部13に位置するミラー部14と、ミラー部14をフレーム部12に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部15と、下部電極17と圧電素子18と上部電極19との積層体である一対の駆動部16と、を備えたものとし、ミラー支持部15はヤング率が160GPa以下の材料からなり、フレーム部12は駆動部16が位置する部位の一部に切欠き部13aを有し、この切欠き部13aは開口部13に接するものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーデバイスに係り、特にミラー部の駆動に圧電素子を利用する圧電ミラーデバイスと、この圧電ミラーデバイスを用いた光学機器と、圧電ミラーデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラーデバイスは、ミラー面を駆動して、その回動角によって光の反射経路を変更するものであり、従来から、例えば、レーザを用いたプリンタ、複写機、ディスプレイ、プロジェクタ等の光学機器に使用されている。ミラーデバイスのミラー面の駆動には、静電気力を利用する静電駆動型、圧電素子を利用する圧電駆動型、電磁力を利用する電磁駆動型がある(特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開2001−13443号公報
【特許文献2】特開2002−311376号公報
【特許文献3】特開2003−15064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のミラーデバイスのうち、圧電駆動型である圧電ミラーデバイスは、他の駆動型に比べて駆動力が大きいという利点があり、例えば、MEMS((Micro Electro Mechanical System)技術を用いて作製され、SOI基板をエッチングすることによりミラー部と、このミラー部を回動可能に支持するミラー支持部が形成されていた。
しかしながら、従来の圧電ミラーデバイスは、ミラー支持部が高剛性のシリコン層(Si)(ヤング率=166GPa)からなっているので、ミラー部の変位量が小さいという問題があった。また、ミラー支持部等を製造するために、エッチングストッパーとなる酸化シリコン層を有するSOI基板を使用する必要があり、このSOI基板のコストが高いため製造コストの低減に限界があった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、ミラー部の変位量が大きい圧電ミラーデバイスと、このような圧電ミラーデバイスを簡便に製造するための製造方法、および、このような圧電ミラーデバイスを使用した光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的を達成するために、本発明の圧電ミラーデバイスは、中央に開口部を有するフレーム部と、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体であり前記フレーム部に配設されている一対の駆動部と、前記開口部に位置するミラー部と、前記駆動部の駆動に応じて前記ミラー部を前記フレーム部に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部と、を備え、前記ミラー支持部はヤング率が160GPa以下の材料からなり、前記フレーム部は前記駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有し、該切欠き部、薄肉部は前記開口部に接しているような構成とした。
【0005】
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部は前記駆動部を構成する下部電極と一体に形成されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部の端部は前記駆動部を構成する下部電極に係止されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部の端部は前記フレーム部の薄肉部に係止されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部は前記駆動部を構成する上部電極と一体に形成されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー部と前記ミラー支持部とが一体に形成されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー部は前記ミラー支持部と異なる材質からなるミラー面を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部は前記ミラー部を介して反対方向で、かつ、同軸上に位置するように配設されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部の軸心は前記ミラー部の中心から外れているような構成とした。
【0006】
本発明の他の態様として、前記フレーム部を内側フレーム部とし、前記ミラー支持部をX軸ミラー支持部とし、前記駆動部をX軸駆動部とし、さらに、開口部を介して前記内側フレーム部を包囲するように位置する外側フレーム部と、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体であり前記外側フレーム部に配設されている一対のY軸駆動部と、該Y軸駆動部の駆動に応じて前記内側フレーム部を前記外側フレーム部に対して回動可能に支持する一対のY軸ミラー支持部と、を備え、前記Y軸ミラー支持部はヤング率が160GPa以下の材料からなり、前記外側フレーム部はY軸駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有し、該切欠き部、薄肉部は前記開口部に接し、前記X軸と前記Y軸は直交するものであり、前記ミラー部は二軸で回動変位可能であるような構成とした。
本発明の光学機器は、光源と、投影スクリーンと、前記光源からの出射光を前記投影スクリーンへ導く光学系と、を備え、前記光学系は上述のいずれかの圧電ミラーデバイスを有するような構成とした。
【0007】
本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極間に位置するミラー部と、該ミラー部と前記下部電極とを連結する一対のミラー支持部を、ヤング率が160GPa以下で、かつ、融点が後工程で形成する圧電素子の融点より高い導電性材料で作製する工程と、前記下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【0008】
また、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、前記駆動部間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記駆動部方向に延設された一対のミラー支持部とを、該ミラー支持部の端部が前記駆動部を構成する下部電極に係止されるように、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【0009】
また、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記下部電極方向に延設された一対のミラー支持部を、ヤング率が160GPa以下で、かつ、融点が後工程で形成する圧電素子の融点より高い導電性材料で作製する工程と、前記下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、前記開口部に接するとともに前記ミラー支持部の端部を係止するように薄肉部を形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【0010】
また、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、前記駆動部間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記駆動部方向に延設された一対のミラー支持部とを、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、前記開口部に接するとともに前記ミラー支持部の端部を係止するように薄肉部を形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【0011】
また、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子を形成する工程と、前記圧電素子の表面が露出するようにレジスト層を形成して平坦化した後、前記圧電素子上に位置する上部電極と、前記圧電素子間に位置するミラー部と、該ミラー部と前記上部電極とを連結する一対のミラー支持部とを、ヤング率が160GPa以下の導電材料で形成して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製し、その後、前記レジストを除去する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明の圧電ミラーデバイスは、ミラー支持部がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部のうち、駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大きいものとなり、例えば、プリンタ、複写機、プロジェクタ等のレーザ光走査装置における走査範囲を拡大することができる。
また、本発明の製造方法は、シリコンウエハを使用するものであり、酸化シリコン層を有するSOIウエハを使用する必要がないので、製造コストの低減が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[圧電ミラーデバイス]
(1) 図1は、本発明の圧電ミラーデバイスの一実施形態を示す平面図であり、図2は図1に示される圧電ミラーデバイスのI−I線における矢視断面図である。図1および図2において、本発明の圧電ミラーデバイス11は、中央に開口部13を有するフレーム部12と、開口部13に位置するミラー部14と、ミラー部14をフレーム部12に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部15と、下部電極17と圧電素子18と上部電極19との積層体でありフレーム部12に配設されている一対の駆動部16と、を備えている。そして、本発明では、ミラー支持部15はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなる。また、フレーム部12は駆動部16が位置する部位の一部に切欠き部13aを有しており、この切欠き部13aは開口部13に接している。ミラー支持部15のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部15の剛性が高くなり、駆動部16によるミラー部14の変位量が小さくなり好ましくない。
尚、上記の下部電極17は、配線17aを介して端子17bに接続されており、また、上部電極19は、配線19aを介して端子19bに接続されている。
圧電ミラーデバイス11を構成するフレーム部材12は、シリコンからなり、厚みは、例えば、300μm〜1mm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0014】
フレーム12に形成されている開口部13は、一対のミラー支持部15によって支持されたミラー部14が位置し、駆動部16によってミラー部14がフレーム部12に対して回動されるための空間である。このような開口部13の形状は、図示例では長方形であるが、ミラー部14の回動に支障を来たさない形状、寸法であれば特に制限はない。
また、フレーム部12が有する切欠き部13aは、図3に示すように、開口部13に接するようにして形成されている。この切欠き部13aの形状、寸法は、駆動部16の変形によるミラー支持部15とミラー部14の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での切欠き部13aは、幅方向(図1、図3に矢印aで示す方向)では、駆動部16と略同じであり、長さ方向(図1、図3に矢印bで示す方向)では、駆動部16を支持するための支持部位12′をフレーム部12に残すような形状となっている。この場合、支持部位12′の面積は、駆動部16を構成する圧電素子18の厚み方向への投影面積の50%以下、好ましくは10〜30%の範囲となるように設定することができる。
【0015】
圧電ミラーデバイス11では、ミラー部14、ミラー支持部15および下部電極17は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料により一体に形成されている。ミラー部14の形状、面積は適宜設定することができる。また、ミラー支持部15は、ミラー部14を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設されている。このようなミラー部14とミラー支持部15は、上記の開口部13に浮いた状態で位置するので、構造的耐性をもたせるために、厚みTは500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、ミラー支持部15の幅Wは、構造的耐性とミラー部14の回動を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
【0016】
ヤング率が160GPa以下の導電性材料としては、例えば、Al(70.3GPa)、Au(78.0GPa)、Ag(82.7GPa)、Cu(130GPa)、Zn(108.0GPa)、Ti(115.7GPa)等を挙げることができ、これらを単独で、あるいは積層構造となるように組み合わせて使用することができる。また、ヤング率が160GPaを超える導電性材料、例えば、Pt(168GPa)、Ni(199GPa)、鉄鋼(201.0GPa)、Fe(211.4GPa)等の導電性材料であっても、上記のようなヤング率が160GPa以下の導電性材料と組み合わせて構成された積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。ここで、本発明では、各導電材料毎のヤング率と厚みの積の総和を、各導電材料の厚みの総和で除すことによって、積層構造体におけるヤング率とする。以下の本発明の説明においても同様である。例えば、ヤング率がE1、厚みがT1である導電材料1と、ヤング率がE2、厚みがT2である導電材料2とからなる積層構造体におけるヤング率Eは、下記の式で算出することができる。
E=[(E1×T1)+(E2×T2)]/(T1+T2)
尚、ミラー支持部15の軸心は、図示例では、ミラー部14の中心と一致しているが、ミラー支持部15の軸心とミラー部14の中心とを外して、ミラー部の回動性を更に向上させてもよい。
また、ミラー部14、ミラー支持部15および下部電極17に使用する導電性材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部14は光反射率の高い材料、例えば、Al、Ag、Rh、Au、Cu、Ni等からなる反射層を備えるものであってもよい。
【0017】
駆動部16を構成する圧電素子18は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸鉛(PTO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)等の従来公知の圧電材料からなるものであってよい。また、圧電素子18の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
駆動部16を構成する上部電極19は、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用することができ、また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この上部電極19の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
【0018】
図4は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図5は図4に示される圧電ミラーデバイスのII−II線における矢視断面図である。図4および図5において、本発明の圧電ミラーデバイス11′は、フレーム部12のうち、駆動部16の位置する部位の一部に、上記の切欠き部13aの代わりに薄肉部12aを有している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス11と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示し、説明は省略する。
フレーム12が有する薄肉部12aは、図6に示すように、開口部13に接するようにして形成されている。この薄肉部12aの形状、寸法は、駆動部16の変形によるミラー支持部15とミラー部14の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での薄肉部12aは、駆動部16の略下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部12aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0019】
このような圧電ミラーデバイス11、11′は、例えば、端子17b(下部電極17)側をGND電位とし、端子19bを介して所望の交流電圧を上部電極19に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部14を変位させることができる。そして、ミラー支持部15がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部12が、駆動部16の位置する部位の一部に切欠き部13a、あるいは薄肉部12aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
【0020】
(2) 図7は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図8は図7に示される圧電ミラーデバイスのIII−III線における矢視断面図である。図7および図8において、本発明の圧電ミラーデバイス21は、中央に開口部23を有するフレーム部22と、開口部23に位置するミラー部24と、ミラー部24をフレーム部22に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部25と、下部電極27と圧電素子28と上部電極29との積層体でありフレーム部22に配設されている一対の駆動部26と、を備えている。上記のミラー支持部25はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなり、また、フレーム部22は駆動部26が位置する部位の一部に切欠き部23aを有しており、この切欠き部23aは開口部23に接している。ミラー支持部25のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部25の剛性が高くなり、駆動部26によるミラー部24の変位量が小さくなり好ましくない。
【0021】
尚、上記の下部電極27は、配線27aを介して端子27bに接続されており、また、上部電極29は、配線29aを介して端子29bに接続されている。
圧電ミラーデバイス21を構成するフレーム部材22は、上述の実施形態のフレーム部12と同様であり、開口部23と切欠き部23aは、上述の開口部13と切欠き部13aと同様に設定することができる。
圧電ミラーデバイス21では、ミラー部24およびミラー支持部25は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料により一体に形成されている。ミラー部24の形状、面積は適宜設定することができる。また、ミラー支持部25は、ミラー部24を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設され、各ミラー支持部25の端部は、駆動部26を構成する下部電極27に係止されている。このようなミラー部24とミラー支持部25は、上記の開口部23に浮いた状態で位置するので、構造的耐性をもたせるために、厚みTは500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、ミラー支持部25の幅Wは、構造的耐性とミラー部24の回動を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
【0022】
ヤング率が160GPa以下の材料としては、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、また、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド等の絶縁性材料も使用することができる。これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。
尚、ミラー支持部25の軸心は、図示例では、ミラー部24の中心と一致しているが、ミラー支持部25の軸心とミラー部24の中心とを外して、ミラー部の回動性を更に向上させてもよい。
また、ミラー部24およびミラー支持部25に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部24は光反射率の高い材料からなる反射層を備えるものであってもよい。このような反射層には、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0023】
駆動部26を構成する下部電極27は、圧電素子28や上部電極29よりも開口部23側に突出したものとなっており、この突出部位にミラー支持部25の端部が係止されている。このような下部電極27は、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用することができ、また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この下部電極27の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
駆動部26を構成する圧電素子28、上部電極29は、上述の実施形態の駆動部16を構成する圧電素子18、上部電極19と同様とすることができる。
【0024】
図9は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図10は図9に示される圧電ミラーデバイスのIV−IV線における矢視断面図である。図9および図10において、本発明の圧電ミラーデバイス21′は、フレーム部22が駆動部26の位置する部位の一部に、切欠き部23aの代わりに薄肉部22aを有しており、この薄肉部22aは開口部23に接している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス21と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示し、説明は省略する。
フレーム22が有する薄肉部22aの形状、寸法は、駆動部26の変形によるミラー支持部25とミラー部24の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での薄肉部22aは、駆動部26の略下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部22aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0025】
このような圧電ミラーデバイス21、21′は、例えば、端子27b(下部電極27)側をGND電位とし、端子29bを介して所望の交流電圧を上部電極29に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部24を変位させることができる。そして、ミラー支持部25がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部22が、駆動部26の位置する部位の一部に切欠き部23a、あるいは薄肉部22aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
【0026】
(3) 図11は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図12は図11に示される圧電ミラーデバイスのV−V線における矢視断面図である。図11および図12において、本発明の圧電ミラーデバイス31は、中央に開口部33を有するフレーム部32と、開口部33に位置するミラー部34と、ミラー部34をフレーム部32に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部35と、下部電極37と圧電素子38と上部電極39との積層体でありフレーム部32に配設されている一対の駆動部36と、を備えている。上記のミラー支持部35はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなり、また、フレーム部32は駆動部36が位置する部位の一部に薄肉部32aを有しており、この薄肉部32aは開口部33に接している。ミラー支持部35のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部35の剛性が高くなり、駆動部36によるミラー部34の変位量が小さくなり好ましくない。
【0027】
尚、上記の下部電極37は、配線37aを介して端子37bに接続されており、また、上部電極39は、配線39aを介して端子39bに接続されている。
圧電ミラーデバイス31を構成するフレーム部材32は、シリコンからなり、厚みは、例えば、300μm〜1mm程度の範囲で適宜設定することができる。
フレーム32に形成されている開口部33は、一対のミラー支持部35によって支持されたミラー部34が位置し、駆動部36によってミラー部34がフレーム部32に対して回動されるための空間である。このような開口部33の形状は、図示例では長方形であるが、ミラー部34の回動に支障を来たさない形状、寸法であれば特に制限はない。
【0028】
また、フレーム部32が有する薄肉部32aの形状、寸法は、駆動部36の変形によるミラー支持部35とミラー部34の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での薄肉部32aは、駆動部36の略下方に位置し、かつ、駆動部36よりも開口部33側に突出したものとなっており、この突出部位にミラー支持部25の端部が係止されている。このような薄肉部32aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
圧電ミラーデバイス31では、ミラー部34およびミラー支持部35は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料により一体に形成されている。ミラー部34の形状、面積は適宜設定することができる。また、ミラー支持部35は、ミラー部34を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設され、各ミラー支持部35の端部は、フレーム部32の薄肉部32aに係止されている。このようなミラー部34とミラー支持部35は、上記の開口部33に浮いた状態で位置するので、構造的耐性をもたせるために、厚みTは500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、ミラー支持部35の幅Wは、構造的耐性とミラー部34の回動を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
【0029】
ヤング率が160GPa以下の材料としては、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、また、上述の実施形態で挙げた絶縁性材料も使用することができる。これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。
尚、ミラー支持部35の軸心は、図示例では、ミラー部34の中心と一致しているが、ミラー支持部35の軸心とミラー部34の中心とを外して、ミラー部の回動性を更に向上させてもよい。
また、ミラー部34およびミラー支持部35に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部34は光反射率の高い材料からなる反射層を備えるものであってもよい。このような反射層には、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0030】
駆動部36を構成する下部電極37、圧電素子38、上部電極39は、上述の駆動部26を構成する下部電極27、圧電素子28、上部電極29と同様の材料を使用することができる。
このような圧電ミラーデバイス31は、例えば、端子37b(下部電極37)側をGND電位とし、端子39bを介して所望の交流電圧を上部電極39に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部34を変位させることができる。そして、ミラー支持部35がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部32が、駆動部36の位置する部位の一部に薄肉部32aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
【0031】
(4) 図13は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図14は図13に示される圧電ミラーデバイスのVI−VI線における矢視断面図である。図13および図14において、本発明の圧電ミラーデバイス41は、中央に開口部43を有するフレーム部42と、開口部43に位置するミラー部44と、このミラー部44をフレーム部42に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部45と、下部電極47と圧電素子48と上部電極49との積層体でありフレーム部42に配設されている一対の駆動部46と、を備えている。上記のミラー支持部45はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料からなり、また、フレーム部42は駆動部46が位置する部位の一部に切欠き部43aを有しており、この切欠き部43aは開口部43に接している。ミラー支持部45のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部45の剛性が高くなり、駆動部46によるミラー部44の変位量が小さくなり好ましくない。
尚、上記の下部電極47は、配線47aを介して端子47bに接続されており、また、上部電極49は、配線49aを介して端子49bに接続されている。
【0032】
圧電ミラーデバイス41を構成するフレーム部材42は、上述の実施形態のフレーム部12と同様であり、開口部43と切欠き部43aは、上述の開口部13と切欠き部13aと同様に設定することができる。
圧電ミラーデバイス41では、ミラー部44、ミラー支持部45および上部電極49は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料により一体に形成されている。ミラー部44の形状、面積は適宜設定することができ、また、ミラー支持部45は、ミラー部44を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設されている。このようなミラー部44とミラー支持部45は、開口部43上に浮いた状態で位置するので、構造的耐性をもたせるために、厚みTは500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、ミラー支持部45の幅Wは、構造的耐性とミラー部44の回動を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
【0033】
ヤング率が160GPa以下の導電性材料としては、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。
尚、ミラー支持部45の軸心は、図示例では、ミラー部44の中心と一致しているが、ミラー支持部45の軸心とミラー部44の中心とを外して、ミラー部の回動性を更に向上させてもよい。
また、ミラー部44、ミラー支持部45および上部電極49に使用する導電性材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部44は光反射率の高い材料からなる反射層を備えるものであってもよい。このような反射層には、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0034】
駆動部46を構成する下部電極47、圧電素子48は、上述の実施形態における駆動部16を構成する下部電極17、圧電素子18と同様の材料を使用することができる。
図15は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図16は図15に示される圧電ミラーデバイスのVII−VII線における矢視断面図である。図15および図16において、本発明の圧電ミラーデバイス41′は、フレーム部42が駆動部46の位置する部位の一部に、切欠き部43aの代わりに薄肉部42aを有しており、この薄肉部42aは開口部43に接している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス41と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示し、説明は省略する。
フレーム42が有する薄肉部42aの形状、寸法は、駆動部46の変形によるミラー支持部45とミラー部44の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での薄肉部42aは、駆動部46の略下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部42aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0035】
このような圧電ミラーデバイス41、41′は、例えば、端子47b(下部電極47)側をGND電位とし、端子49bを介して所望の交流電圧を上部電極49に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部44を変位させることができる。そして、ミラー支持部45がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部42の駆動部46が位置する部位の一部に切欠き部43a、あるいは薄肉部42aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
【0036】
(5) 図17は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図18(A)は図17に示される圧電ミラーデバイスのVIII−VIII線における矢視断面図であり、図18(B)は図17に示される圧電ミラーデバイスのIX−IX線における矢視断面図である。図17および図18において、本発明の圧電ミラーデバイス51は、中央に開口部53を有するフレーム部52と、開口部53に位置するミラー部54と、ミラー部54をフレーム部52に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部55と、下部電極57と圧電素子58と上部電極59との積層体でありフレーム部52に配設されている一対の駆動部56と、を備えている。そして、ミラー支持部55はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなる。また、フレーム部52は駆動部56が位置する部位の一部に切欠き部53aを有しており、この切欠き部53aは開口部53に接している。ミラー支持部55のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部55の剛性が高くなり、駆動部56によるミラー部54の変位量が小さくなり好ましくない。
尚、上記の下部電極57は、配線57aを介して端子57bに接続されており、また、上部電極59は、配線59aを介して端子59bに接続されている。
【0037】
このような圧電ミラーデバイス51は、フレーム部52が有する切欠き部53aの形状、駆動部56の形状が異なる他は、上述の圧電ミラーデバイス11と同様である。すなわち、圧電ミラーデバイス51では、コ字形状の一対の駆動部56が開口部53を囲むように配設されており、切欠き部53aもコ字形状(図17に鎖線で囲んで示している)となっている。
【0038】
また、図19は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図20(A)は図19に示される圧電ミラーデバイスのX−X線における矢視断面図であり、図20(B)は図19に示される圧電ミラーデバイスのXI−XI線における矢視断面図である。図19および図20において、本発明の圧電ミラーデバイス51′は、フレーム部52が、駆動部56の位置する部位の一部に、切欠き部53aの代わりに薄肉部52aを有しており、この薄肉部52aが開口部53に接している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス51と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示している。
フレーム52が有する薄肉部52aは、図19に斜線を付して示すように、駆動部56の略下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部52aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0039】
このような圧電ミラーデバイス51、51′は、例えば、端子57b(下部電極57)側をGND電位とし、端子59bを介して所望の交流電圧を上部電極59に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部54を変位させることができる。そして、ミラー支持部55がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部52は駆動部56の位置する部位の一部に切欠き部53a、あるいは薄肉部52aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
尚、上述の圧電ミラーデバイス21、21′、31、41、41′においても、駆動部の形状をコ字形状とし、フレーム部の切欠き部あるいは薄肉部の形状もコ字形状としてもよく、また、駆動部やフレーム部の切欠き部あるいは薄肉部をその他の形状としてもよいことは勿論である。
【0040】
(6) 図21は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図22は図21に示される圧電ミラーデバイスのXII−XII線における矢視断面図である。図21および図22において、本発明の圧電ミラーデバイス61は、中央に開口部63を有するフレーム部62と、開口部63に位置するミラー部64と、ミラー部64をフレーム部62に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部65と、下部電極67と圧電素子68と上部電極69との積層体でありフレーム部62に配設されている一対の駆動部66と、を備えている。そして、ミラー支持部65はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなる。また、フレーム部62は駆動部66が位置する部位の一部に切欠き部63aを有し、この切欠き部63aは開口部63に接している。ミラー支持部65のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部65の剛性が高くなり、駆動部66によるミラー部64の変位量が小さくなり好ましくない。
尚、上記の下部電極67は、配線67aを介して端子67bに接続されており、また、上部電極69は、配線69aを介して端子69bに接続されている。
【0041】
このような圧電ミラーデバイス61は、フレーム部62が有する切欠き部63aの形状、駆動部66の形状が異なる他は、上述の圧電ミラーデバイス11と同様である。すなわち、圧電ミラーデバイス61では、一対の駆動部66が開口部63に突出するように配設されており、駆動部66の駆動によるミラー部64の変位がより効率的なものとなっている。
また、図23は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図24は図23に示される圧電ミラーデバイスのXIII−XIII線における矢視断面図である。図23および図24において、本発明の圧電ミラーデバイス61′は、フレーム部62が、駆動部66の位置する部位の一部に、切欠き部63aの代わりに薄肉部62aを有しており、この薄肉部62aが開口部63に接している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス61と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示している。
フレーム62が有する薄肉部62aは、駆動部66の下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部62aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0042】
このような圧電ミラーデバイス61、61′は、例えば、端子67b(下部電極67)側をGND電位とし、端子69bを介して所望の交流電圧を上部電極69に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部64を変位させることができる。そして、ミラー支持部65がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部62は駆動部66の位置する部位の一部に切欠き部63a、あるいは薄肉部62aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
尚、上述の圧電ミラーデバイス21、21′、31、41、41′においても、駆動部を開口部に突出させるように、フレーム部の切欠き部あるいは薄肉部を形成することができる。
【0043】
(7) 図25は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図26(A)は図25に示される圧電ミラーデバイスのXIV−XIV線における矢視断面図、図26(B)は同じくXV−XV線における矢視断面図、図26(C)は同じくXVI−XVI線における矢視断面図である。図25および図26において、本発明の圧電ミラーデバイス71は、二軸タイプの圧電ミラーデバイスであり、中央に円形の内側開口部73Aを有する環状の内側フレーム部72Aと、この内側フレーム部72Aの外側に環状の外側開口部73Bを介して位置する外側フレーム部72Bとからなるフレーム部72と、内側開口部73Aに位置するミラー部74と、ミラー部74を内側フレーム部72Aに対して回動可能に支持する一対のX軸ミラー支持部75と、下部電極77と圧電素子78と上部電極79との積層体であり内側開口部73A内に位置する一対のX軸駆動部76と、を備えている。上記のX軸ミラー支持部75はX軸駆動部76を構成する下部電極77と一体で形成されており、半環状の一対のX軸駆動部76はX軸ミラー支持部75を挟んで対向するように構成されている。また、外側開口部73Bには、内側フレーム部72Aを外側フレーム部72Bに対して回動可能に支持する一対のY軸ミラー支持部85が掛け渡されて配設されているとともに、この外側開口部73Bには、下部電極87と圧電素子88と上部電極89との積層体である一対のY軸駆動部86が位置している。上記のY軸ミラー支持部85はY軸駆動部86を構成する下部電極87と一体で形成されており、半環状の一対のY軸駆動部86はY軸ミラー支持部85を挟んで対向するように構成されている。そして、半環状の一対のX軸駆動部76から、X軸駆動部76aがY軸ミラー支持部85と同軸方向に内側フレーム部72Aまで延設されており、また、半環状の一対のY軸駆動部86から、Y軸駆動部86aがX軸ミラー支持部75と同軸方向に外側フレーム部72Bまで延設されている。尚、図示例では、X軸ミラー支持部75の軸方向とY軸ミラー支持部85の軸方向は90°の角度をなすように設定されている。
【0044】
そして、本発明では、X軸ミラー支持部75、および、Y軸ミラー支持部85はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料からなる。X軸ミラー支持部75、および、Y軸ミラー支持部85のヤング率が160GPaを超えると、各ミラー支持部の剛性が高くなり、X軸駆動部76、Y軸駆動部86によるミラー部74の変位量が小さくなり好ましくない。
ここで、上述の圧電ミラーデバイス71を、図27乃至図29を参照して更に詳細に説明する。図27は図25に示される圧電ミラーデバイス71から上部電極79,89、圧電素子78,88を除去し、下部電極77,87とX軸ミラー支持部75、Y軸ミラー支持部85を露出させた図であり、ミラー部74、X軸ミラー支持部75、下部電極77,87、Y軸ミラー支持部85には斜線を付して示している。また、図28は図25に示される圧電ミラーデバイス71から上部電極79,89を除去し、圧電素子78,88を露出させた図であり、圧電素子78,88には斜線を付して示している。さらに、図29(A)は図25に示される圧電ミラーデバイス71の上部電極79,89に斜線を付して示した図であり、図29(B)は図29(A)の鎖線で囲まれた部位の拡大部分断面図である。
【0045】
図27に示されるように、環状の下部電極77は内側開口部73A内に位置し、環状の下部電極87は外側開口部73B内に位置している。また、下部電極77の内側にミラー部74が位置し、このミラー部74を下部電極87に連結するように、一対のX軸ミラー支持部75がミラー部74を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設されている。そして、このX軸ミラー支持部75は環状の下部電極77の外側まで延設され、その端部は内側フレーム部72Aに係止されている。また、環状の下部電極87からは、Y軸ミラー支持部85が内外反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設され、その端部は内側フレーム部72Aと外側フレーム部72Bに係止されている。さらに、このY軸ミラー支持部85と同軸となるように、環状の下部電極77から下部電極77aが内側フレーム部72Aまで延設されている。一方、X軸ミラー支持部75と同軸に、環状の下部電極87から下部電極87aが外側フレーム部72Bまで延設されている。このように、下部電極77,77a、下部電極87,87a、ミラー部74、X軸ミラー支持部75およびY軸ミラー支持部85は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料によって一体的に形成されている。
【0046】
ヤング率が160GPa以下の導電性材料としては、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。尚、使用する導電性材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部74は光反射率の高い材料からなる反射層を備えるものであってもよい。このような反射層には、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0047】
上記のX軸ミラー支持部75はミラー部74を支持し、Y軸ミラー支持部85は内側フレーム部72Aを支持するので、構造的耐性が必要であり、X軸ミラー支持部75の厚みT1(図26(A)参照)は500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲、Y軸ミラー支持部85の厚みT2(図26(C)参照)は500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、X軸ミラー支持部75の幅W1、Y軸ミラー支持部85の幅W2(図27参照)は、ミラー部74や内側フレーム部72Aの回動性、および、構造的耐性とを考慮して適宜設定することができる。
尚、上記のように下部電極87と導通状態にある一対のY軸ミラー支持部85は、それぞれ配線90aを介して端子90bに接続されている。
【0048】
また、図28に示されるように、半環状の一対の圧電素子78は、X軸ミラー支持部75を挟んで対向するように下部電極77上に配設されている。また、この圧電素子78から下部電極77aを被覆するように圧電素子78aが形成されている。一方、半環状の一対の圧電素子88は、Y軸ミラー支持部85を挟んで対向するように下部電極87上に配設されている。また、この圧電素子88から下部電極87aを被覆するように圧電素子88aが形成されている。このような圧電素子78,88は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸鉛(PTO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)等の従来公知の圧電材料からなるものであってよい。また、圧電素子78,88の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
【0049】
さらに、図29(A)に示されるように、上記の圧電素子78,78a,88,88aを被覆するように上部電極79,79a,89,89aが配設されている。また、圧電素子78aを被覆する上部電極79aは、図29(B)に示されるように、内側フレーム部72Aに係止されているY軸ミラー支持部85の一部を被覆する位置まで延設されている。これにより、Y軸ミラー支持部85(下部電極77)と上部電極79とが導通された状態となる。このような上部電極79,79a,89,89aは、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用することができ、また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この上部電極の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
尚、上部電極89aは、それぞれ配線91aを介して端子91bに接続されている。
【0050】
このような二軸タイプの圧電ミラーデバイス71は、例えば、下部電極77をGND電位とし、端子90bからY軸ミラー支持部85、上部電極79aを介して上部電極79に所望の交流電圧を印加することにより、X軸駆動部76を所望の共振周波数で駆動させてミラー部74を変位させることができる。また、下部電極87をGND電位とし、端子91bから上部電極89aを介して所望の交流電圧を上部電極89に印加することにより、Y軸駆動部86を所望の共振周波数で駆動させて内側フレーム部72Aを変位させることができる。そして、X軸ミラー支持部75およびY軸ミラー支持部85がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、X軸駆動部76とY軸駆動部76が開口部(切欠き部)73A,73Bに位置するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
上述の圧電ミラーデバイスの実施形態は例示であり、本発明の圧電ミラーデバイスはこれらに限定されるものではない。
【0051】
[圧電ミラーデバイスの製造方法]
次に、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法について説明する。
(1) 図30および図31は上述の図1乃至図6に示す圧電ミラーデバイス11、11′を例として本発明の製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極17と、この下部電極17間に位置するミラー部14と、このミラー部14と下部電極17とを連結する一対のミラー支持部15を、ヤング率が160GPa以下の導電性材料で作製する(図30(A)、図31(A))。ヤング率が160GPa以下の導電性材料は、例えば、Al(70.3GPa)、Au(78.0GPa)、Ag(82.7GPa)、Cu(130GPa)、Zn(108.0GPa)、Ti(115.7GPa)等を挙げることができ、後工程の圧電素子18形成の焼成時に、ミラー部14、ミラー支持部15、下部電極17が溶融しないように、上記の導電性材料の中から、形成する圧電素子18の融点より高い導電性材料を使用することができる。上記の導電性材料は単独で、あるいは積層構造となるように組み合わせて使用することができる。また、ヤング率が160GPaを超える導電性材料、例えば、Pt(168GPa)、Ni(199GPa)、鉄鋼(201.0GPa)、Fe(211.4GPa)等の導電性材料であっても、上記のようなヤング率が160GPa以下の導電性材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。
【0052】
ミラー部14、ミラー支持部15、下部電極17は、例えば、シリコンウエハ1上に所望のレジストパターンを形成し、このレジストパターンを被覆するように上述の導電性材料を使用してスパッタリング法等により電極膜を形成し、その後、レジストパターンを除去すると同時に不要な電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一体で形成することができる。また、シリコンウエハ1上に上述の導電性材料を使用してスパッタリング法等により電極膜を形成し、この上に所望のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして電極膜をエッチングした後、不要なレジストパターンを除去することにより、ミラー部14、ミラー支持部15、下部電極17を一体で形成することもできる。さらに、上述の導電性材料を含有した感光性の導電性ペーストをスクリーン印刷によってシリコンウエハ1上に印刷し、所望のマスクを介して導電性ペースト膜を露光、現像し、その後、焼成することにより、ミラー部14、ミラー支持部15、下部電極17を一体で形成してもよい。
尚、この工程では、配線17a、端子17b(図1、図4参照)も同時に形成することができる。
【0053】
次に、下部電極17上に圧電素子18を形成し(図30(B)、図31(B))、さらに、圧電素子18上に上部電極19を形成して、下部電極17と圧電素子18と上部電極19との積層体である一対の駆動部16を形成する(図30(C)、図31(C))。
圧電素子18は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸鉛(PTO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)等の従来公知の圧電材料を用いて、マスクを介したスパッタリング法等により所望のパターンで成膜し、その後、焼成することにより形成できる。形成する圧電素子18の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
【0054】
また、上部電極19は、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用し形成することができる。また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この上部電極19の形成は、上述の下部電極17の形成と同様の方法で行うことができ、形成する上部電極の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。この工程では、配線19a、端子19b(図1、図4参照)も同時に形成することができる。
尚、ミラー部14、ミラー支持部15および下部電極17に使用する導電性材料の光反射率が不十分な場合、圧電素子18の形成(焼成工程)が完了した後に、ミラー部14に光反射率の高い材料、例えば、Al、Ag、Rh、Au、Cu、Ni等からなる反射層を形成してもよい。
【0055】
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去し開口部13を形成して、フレーム部12形成する。この際、駆動部16が位置する部位の一部に、切欠き部13aを開口部13に接するように形成する。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイス11が作製される(図30(D))。また、切欠き部13aを形成する代わりに、駆動部16が位置する部位の一部に、薄肉部12aを開口部13に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス11′が作製される(図30(E))。
シリコンウエハ1への開口部13と切欠き部13aの形成は、例えば、シリコンウエハ1の他方の面(ミラー部14、ミラー支持部15および駆動16が形成されていない面)に開口部13と切欠き部13aに対応した開口を有するレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いたエッチングにより行うことができる。この場合、下部電極17が存在する部位では、この下部電極17がエッチングストッパーとして作用することにより切欠き部13aが形成され、他の部位では、貫通穴がシリコンウエハ1に形成されて開口部13が形成される。
【0056】
また、シリコンウエハ1への開口部13と薄肉部12aの形成は、例えば、シリコンウエハ1の他方の面(ミラー部14、ミラー支持部15および駆動16が形成されていない面)に、まず、開口部13を形成するためのレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてDRIE法を用いたエッチングにより薄肉部12aの厚みに相当する深さまでエッチングする。その後、上記のレジストパターンを除去し、開口部13と薄肉部12aに対応した開口を有するレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてDRIE法を用いたエッチングにより貫通穴が形成されるまでエッチングして、開口部13と薄肉部12aを形成することができる。
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス11をダイシングすることにより、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイス11が得られ、多面付けの圧電ミラーデバイス11′をダイシングすることにより、図4乃至図6に示されるような圧電ミラーデバイス11′が得られる。
尚、図17乃至図20に示されるような圧電ミラーデバイス51、51′、および、図21乃至図24に示されるような圧電ミラーデバイス61、61′は、上述の本発明の製造方法により形成することができる。
【0057】
また、図25乃至図29に示されるような圧電ミラーデバイス71も、上述の本発明の製造方法により形成することができる。この場合、シリコンウエハ1上に、図27から図29に示される順に、まず、ミラー部74、X軸ミラー支持部75、下部電極77,87、Y軸ミラー支持部85を形成し、次いで、圧電素子78、78を形成し、さらに、上部電極79、89を形成し、その後、シリコンウエハ1をエッチングして内側開口部73A、外側開口部73Bを形成し、ダイシングすることにより圧電ミラーデバイス71が得られる。
【0058】
(2) 図32および図33は上述の図7乃至図10に示す圧電ミラーデバイス21、21′を例として本発明の製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極27と、この下部電極27上に圧電素子28と上部電極29をこの順に積層して、下部電極27と圧電素子28と上部電極29との積層体である一対の駆動部26を作製する(図32(A)、図33(A))。この一対の駆動部26を構成する下部電極27は、後工程でのミラー支持部25の係止を可能とするために、互いに他方の駆動部26方向に突出したものとする。
下部電極27は、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用し形成することができる。また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この下部電極27の形成は、上述の実施形態での下部電極17の形成と同様の方法で行うことができ、形成する下部電極27の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
【0059】
また、圧電素子28の形成は、上述の実施形態での圧電素子18の形成と同様の方法で行うことができ、形成する圧電素子28の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
さらに、上部電極29の形成は、上述の実施形態での上部電極19の形成と同様の方法で行うことができ、形成する上部電極29の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
尚、この工程では、配線27a、端子27bおよび配線29a、端子29b(図7、図9参照)も同時に形成することができる。
【0060】
次に、一対の駆動部26間に位置するようにミラー部24と、このミラー部24と下部電極27とを連結する一対のミラー支持部25を、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する(図32(B)、図33(B))。ヤング率が160GPa以下の材料は、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、また、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド等の絶縁性材料も使用することができる。これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。尚、前工程において、圧電素子28が形成されているので、使用するヤング率が160GPa以下の材料は、その融点を特に考慮する必要がない。
ミラー部24およびミラー支持部25の形成は、上述の実施形態におけるミラー部14、ミラー支持部15の形成方法と同様の方法で行うことができる。但し、ミラー支持部25の端部は、駆動部26を構成する下部電極27の突出部に係止するように形成する。
尚、ミラー部24、ミラー支持部25に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部24に光反射率の高い材料からなる反射層を形成してもよい。このような反射層の形成は、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0061】
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去し開口部23を形成して、フレーム部22形成する。このとき、駆動部26が位置する部位の一部に、切欠き部23aを開口部23に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス21が作製される(図32(C))。また、駆動部26が位置する部位の一部に、薄肉部22aを開口部23に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス21′が作製される(図32(D))。
シリコンウエハ1への開口部23と切欠き部23aの形成、および、シリコンウエハ1への開口部23と薄肉部22aの形成は、上述の実施形態における開口部13と切欠き部13aの形成、あるいは、開口部13と薄肉部12aの形成と同様の方法で行うことができる。
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス21をダイシングすることにより、図7および図8に示されるような圧電ミラーデバイス21が得られ、多面付けの圧電ミラーデバイス21′をダイシングすることにより、図9および図10に示されるような圧電ミラーデバイス21′が得られる。
【0062】
(3) 図34および図35は上述の図11および図12に示す圧電ミラーデバイス31を例として本発明の製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極37と、この下部電極37間に位置するミラー部34と、このミラー部34を支持するための一対のミラー支持部35を、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する(図34(A)、図35(A))。この下部電極37とミラー部34とミラー支持部35の形成は、上述の実施形態の下部電極17とミラー部14とミラー支持部15の形成と同様に行うことができる。但し、ミラー支持部35の端部は、後工程で形成する薄肉部32aに係止可能な位置となるように形成する。また、使用するヤング率が160GPa以下の材料は、後工程の圧電素子38形成の焼成時に、ミラー部34、ミラー支持部35、下部電極37が溶融しないように、その融点が後工程で形成する圧電素子38の融点よりも高い材料を使用する。
【0063】
尚、この工程では、配線37a、端子37b(図11参照)も同時に形成することができる。また、ミラー部34、ミラー支持部35に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部34に光反射率の高い材料からなる反射層を形成してもよい。このような反射層の形成は、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
次に、下部電極37上に圧電素子38と上部電極39を形成して、下部電極37と圧電素子38と上部電極39との積層体である一対の駆動部36を形成する(図34(B)、図35(B))。圧電素子38と上部電極39の形成は、上述の実施形態の圧電素子18と上部電極19の形成と同様の方法で行うことができる。
尚、この工程では、配線39a、端子39b(図11参照)も同時に形成することができる。
【0064】
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去して開口部33を形成しフレーム部32形成するとともに、駆動部36が位置する部位の一部に、薄肉部32aを開口部33に接するように形成する。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイス31が作製される(図34(C))。
シリコンウエハ1への開口部33と薄肉部32aの形成は、上述の実施形態における開口部13と薄肉部12aの形成と同様の方法で行うことができる。
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス31をダイシングすることにより、図11および図12に示されるような圧電ミラーデバイス31が得られる。
【0065】
また、図36は上述の図11および図12に示す圧電ミラーデバイス31を例として本発明の製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極37と、この下部電極37上に圧電素子38と上部電極39をこの順に積層して、下部電極37と圧電素子38と上部電極39との積層体である一対の駆動部36を作製する(図36(A))。この駆動部36の形成は、上述の実施形態の駆動部26の形成と同様に行うことができる。
尚、この工程では、配線37a、端子37bおよび配線39a、端子39b(図11参照)も同時に形成することができる。
【0066】
次に、一対の駆動部36間に位置するようにミラー部34と、このミラー部34を支持するための一対のミラー支持部35を、ヤング率が160GPa以下の材料で一体的に作成する(図36(B))。ヤング率が160GPa以下の材料は、上述の実施形態で挙げた材料を使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。尚、前工程において、圧電素子38が形成されているので、使用するヤング率が160GPa以下の材料は、その融点を特に考慮する必要がない。
ミラー部34およびミラー支持部35の形成は、上述の実施形態におけるミラー部34、ミラー支持部35の形成方法と同様の方法で行うことができる。但し、ミラー支持部35の端部は、後工程で形成する薄肉部32aに係止可能な位置となるように形成する。
尚、ミラー部34、ミラー支持部35に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部34に光反射率の高い材料からなる反射層を形成してもよい。このような反射層の形成は、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0067】
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去して開口部33を形成しフレーム部32形成するとともに、駆動部36が位置する部位の一部に、薄肉部32aを開口部33に接するように形成する。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイス31が作製される(図36(C))。
シリコンウエハ1への開口部33と薄肉部32aの形成は、上述の実施形態における開口部13と薄肉部12aの形成と同様の方法で行うことができる。
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス31をダイシングすることにより、図11および図12に示されるような圧電ミラーデバイス31が得られる。
【0068】
(4) 図37および図38は上述の図13乃至図16に示す圧電ミラーデバイス41、41′を例として本発明の製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極47と、この下部電極47上に圧電素子48を形成する(図37(A)、図38(A))。この下部電極47と圧電素子48の形成は、上述の実施形態の下部電極27と圧電素子28の形成と同様の方法で行うことができる。
尚、この工程では、配線47a、端子47b(図13、図15参照)も同時に形成することができる。
次に、上述のように形成した圧電素子48の上面が露出するようにレジスト層3を形成して平坦面を形成する(図37(B)、図38(B))。
【0069】
次いで、露出している圧電素子48上に位置する上部電極49と、上部電極49間に位置するミラー部44と、このミラー部44と上部電極49とを連結する一対のミラー支持部45を、ヤング率が160GPa以下の導電性材料で一体的に作成し、その後、不要となったレジスト層3を除去する(図37(C)、図38(C))。これにより、下部電極47と圧電素子48と上部電極49との積層体である一対の駆動部46が形成されるとともに、駆動部46間にミラー部44とミラー支持部45が架設される。ヤング率が160GPa以下の導電性材料は、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができる。これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。尚、前工程において、圧電素子48が形成されているので、使用するヤング率が160GPa以下の導電性材料は、その融点を特に考慮する必要がない。
【0070】
ミラー部44、ミラー支持部45および上部電極49の一体的形成は、上述の実施形態におけるミラー部14、ミラー支持部15および下部電極17の形成方法と同様の方法で行うことができる。
尚、この工程では、配線49a、端子49b(図13、図15参照)も同時に形成することができる。
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去し開口部43を形成して、フレーム部42形成する。このとき、駆動部46が位置する部位の一部に、切欠き部43aを開口部43に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス41が作製される(図37(D))。また、駆動部46が位置する部位の一部に、薄肉部42aを開口部43に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス41′が作製される(図37(E))。
シリコンウエハ1への開口部43と切欠き部43aの形成、および、シリコンウエハ1への開口部43と薄肉部42aの形成は、上述の実施形態における開口部13と切欠き部13aの形成、あるいは、開口部13と薄肉部12aの形成と同様の方法で行うことができる。
【0071】
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス41をダイシングすることにより、図13および図14に示されるような圧電ミラーデバイス41が得られ、多面付けの圧電ミラーデバイス41′をダイシングすることにより、図15および図16に示されるような圧電ミラーデバイス41′が得られる。
上述のような本発明の製造方法は、シリコンウエハを使用するものであり、酸化シリコン層を有するSOIウエハを使用する必要がないので、製造コストの低減が可能である。
尚、上述の圧電ミラーデバイスの製造方法は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0072】
[光学機器]
次に、本発明の光学機器について説明する。
図39は、本発明の光学機器の一実施形態として、ディスプレイ、プロジェクタ等の画像表示装置としての光学機器を説明するための構成図である。図39において、本発明の光学機器101は、レーザ光源102と、投影スクリーン103と、レーザ光源102からの出射光を投影スクリーン103へ導く光学系105と、を備えている。この光学機器101の光学系105は、集光用レンズ群106、圧電ミラーデバイス107、投影用レンズ群108を有しており、圧電ミラーデバイス107は本発明の圧電ミラーデバイスである。使用する本発明の圧電ミラーデバイスとしては、例えば、2軸タイプの圧電ミラーデバイスを挙げることができ、この場合、集光用レンズ群106からの入射光を投影用レンズ群108へ反射する際に、X/Y(水平/垂直)方向に走査することができる。そして、このように走査されたレーザ光によって、投影用レンズ群108を通して投影スクリーン103上に画像を表示することができる。
尚、上述の光学機器は例示であり、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
厚み625μmのシリコンウエハを準備し、一辺が5.5mmである正方形で多面付けに区画した。このシリコンウエハの一方の面に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、多面付けでレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み30nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して電極膜を形成した。この電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は79.1となる。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の下部電極と、この下部電極間に位置するミラー部と、このミラー部と下部電極とを連結する一対のミラー支持部を一体で形成した。形成したミラー支持部の幅は10μmであった。また、この工程では、下部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0074】
次に、一対の下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、マスクを介したスパッタリング法により薄膜を形成し、その後、焼成(600℃、120分間)することにより圧電素子(厚み10μm)を形成した。
次いで、このように圧電素子を形成したシリコンウエハ上に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、上部電極形成用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりCr薄膜(厚み50nm)とAu薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の上部電極を、上記の圧電素子上に形成した。また、この工程では、上部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0075】
これにより、下部電極、圧電素子、上部電極の積層体からなる駆動部を形成した。
次に、シリコンウエハの他方の面に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、開口部と切欠き部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いたエッチングを行った。これにより、下部電極が存在する部位では、この下部電極がエッチングストッパーとして作用することにより切欠き部が形成され、他の部位では、貫通穴がシリコンウエハに形成されて開口部が形成された。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイスを作製した。
次に、上記の多面付け圧電ミラーデバイスをダイシングして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0076】
[実施例2]
厚み625μmのシリコンウエハを準備し、一辺が5.5mmである正方形で多面付けに区画した。このシリコンウエハの一方の面に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、多面付けで下部電極用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりTi薄膜(厚み50nm)とPt薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の下部電極を形成した。また、この工程では、下部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0077】
次に、一対の下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、マスクを介したスパッタリング法により薄膜を形成し、その後、焼成(600℃、120分間)することにより圧電素子(厚み10μm)を形成した。尚、この圧電素子は、上記の下部電極を、対向する他方の下部電極方向に1000μm露出させるように、下部電極面よりも小さい面積で形成した。
次いで、このように圧電素子を形成したシリコンウエハ上に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、上部電極形成用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりCr薄膜(厚み50nm)とAu薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の上部電極を、上記の圧電素子上に形成した。また、この工程では、上部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
これにより、下部電極、圧電素子、上部電極の積層体からなる駆動部を形成した。
【0078】
次に、一対の駆動部を形成したシリコンウエハに感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、ミラー部とミラー支持部を形成するためのレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み30nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して薄膜を形成した。この薄膜(積層構造体)のヤング率の計算値は79.1となる。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の薄膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の駆動部間に位置するミラー部と、このミラー部と下部電極とを連結する一対のミラー支持部を一体で形成した。形成したミラー支持部の幅は10μmであった。
【0079】
次に、シリコンウエハの他方の面に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、まず、開口部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて、深さ605μmまでエッチングを行った。次いで、上記のレジストパターンを除去し、再度、感光性レジストをスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、開口部と薄肉部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて、開口部が形成されるまでエッチングを行った。これにより、下部電極が存在する部位には、厚みが20μmの薄肉部が形成された。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイスを作製した。
次に、上記の多面付け圧電ミラーデバイスをダイシングして、図9および図10に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0080】
[実施例3]
厚み625μmのシリコンウエハを準備し、一辺が5.5mmである正方形で多面付けに区画した。このシリコンウエハの一方の面に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、多面付けでレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み30nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して電極膜を形成した。この電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は79.1となる。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の下部電極と、この下部電極間に位置するミラー部と、このミラー部に連結した一対のミラー支持部を形成した。形成したミラー支持部の幅は10μmであり、ミラー支持部の端部と下部電極との間には500μmの距離を設けた。また、この工程では、下部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0081】
次に、一対の下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、マスクを介したスパッタリング法により薄膜を形成し、その後、焼成(600℃、120分間)することにより圧電素子(厚み10μm)を形成した。
次いで、このように圧電素子を形成したシリコンウエハ上に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、上部電極形成用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりCr薄膜(厚み50nm)とAu薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の上部電極を、上記の圧電素子上に形成した。また、この工程では、上部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
これにより、下部電極、圧電素子、上部電極の積層体からなる駆動部を形成した。
【0082】
次に、シリコンウエハの他方の面に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、まず、開口部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて、深さ605μmまでエッチングを行った。次いで、上記のレジストパターンを除去し、再度、感光性レジストをスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、開口部と薄肉部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて、開口部が形成されるまでエッチングを行った。これにより、下部電極が存在する部位と、ミラー支持部の端部からミラー部方向に1000μmまで達する領域に、厚みが20μmの薄肉部が形成され、この薄肉部にミラー支持部の端部が係止された状態で、ミラー支持部とミラー部が開口部に架設された。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイスを作製した。
次に、上記の多面付け圧電ミラーデバイスをダイシングして、図11および図12に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0083】
[実施例4]
厚み625μmのシリコンウエハを準備し、一辺が5.5mmである正方形で多面付けに区画した。このシリコンウエハの一方の面に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、多面付けで下部電極用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりTi薄膜(厚み50nm)とPt薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の下部電極を形成した。また、この工程では、下部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
次に、一対の下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、マスクを介したスパッタリング法により成膜し、その後、焼成(600℃、120分間)することにより圧電素子(厚み10μm)を形成した。
【0084】
次いで、このように下部電極、圧電素子を形成したシリコンウエハ上にポジ型の感光性レジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZ5218)をスピンコート法で塗布し、圧電素子間を除く領域を露光し、その後、現像して、圧電素子の表面が露出し、かつ、圧電素子とその間の部位が平坦となるようにした。次に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、レジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み50nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み5μm(5000nm))とを積層して電極膜を形成した。この電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は78.4となる。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記の全てのレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、圧電素子上に位置する一対の上部電極と、この上部電極間に位置するミラー部と、このミラー部と上部電極とを連結する一対のミラー支持部を一体で形成した。これにより、下部電極、圧電素子、上部電極の積層体からなる駆動部が形成され、ミラー支持部の幅は10μmであった。尚、この工程では、上部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0085】
次に、シリコンウエハの他方の面に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、開口部と切欠き部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いたエッチングを行った。これにより、下部電極が存在する部位では、この下部電極がエッチングストッパーとして作用することにより切欠き部が形成され、他の部位では、貫通穴がシリコンウエハに形成されて開口部が形成された。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイスを作製した。
次に、上記の多面付け圧電ミラーデバイスをダイシングして、図13および図14に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0086】
[実施例5]
スパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み200nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して電極膜を形成した他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。この場合の電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は84.2となる。
【0087】
[実施例6]
スパッタリング法によりヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))を成膜して電極膜とした他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0088】
[実施例7]
スパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み400nm)と、ヤング率が168GPaであるPt薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して電極膜を形成した他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。この場合の電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は152.9となる。
【0089】
[実施例8]
スパッタリング法によりヤング率が130GPaであるCu薄膜(厚み2μm(2000nm))を成膜して電極膜とした他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0090】
[実施例9]
スパッタリング法によりヤング率が82.7GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))を成膜して電極膜とした他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0091】
[比較例]
ミラー部とミラー支持部を、ヤング率が166.0GPaであるSiを用いて形成した他は、実施例2と同様にして、圧電ミラーデバイスを得た。
【0092】
[評 価]
実施例1〜9、および、比較例の各圧電ミラーデバイスにおいて、下部電極をGND電位とし、上部電極に下記の条件で交流電圧(±25V、50Hz)を印加したときのミラー部の振れ角度を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0093】
【表1】
表1に示されるように、実施例1〜9の各圧電ミラーデバイスのミラー部振れ角度は、比較例の圧電ミラーデバイスのミラー部の振れ角度に比べて格段に大きいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
ミラー部の駆動に圧電素子を利用する圧電ミラーデバイスの製造等において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の圧電ミラーデバイスの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示される圧電ミラーデバイスのI−I線における矢視断面図である。
【図3】図1に示される圧電ミラーデバイスのフレーム部を説明するための図である。
【図4】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図5】図4に示される圧電ミラーデバイスのII−II線における矢視断面図である。
【図6】図4に示される圧電ミラーデバイスのフレーム部を説明するための図である。
【図7】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図8】図7に示される圧電ミラーデバイスのIII−III線における矢視断面図である。
【図9】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図10】図9に示される圧電ミラーデバイスのIV−IV線における矢視断面図である。
【図11】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図12】図11に示される圧電ミラーデバイスのV−V線における矢視断面図である。
【図13】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図14】図13に示される圧電ミラーデバイスのVI−VI線における矢視断面図である。
【図15】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図16】図15に示される圧電ミラーデバイスのVII−VII線における矢視断面図である。
【図17】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図18】図17に示される圧電ミラーデバイスの断面図であり、(A)はVIII−VIII線における矢視断面図、(B)はIX−IX線における矢視断面図である。
【図19】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図20】図19に示される圧電ミラーデバイスの断面図であり、(A)はX−X線における矢視断面図、(B)はXI−XI線における矢視断面図である。
【図21】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図でありる。
【図22】図21に示される圧電ミラーデバイスのXII−XII線における矢視断面図である。
【図23】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図でありる。
【図24】図23に示される圧電ミラーデバイスのXIII−XIII線における矢視断面図である。
【図25】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図26】図25に示される圧電ミラーデバイスの断面図であり、(A)はXIV−XIV線における矢視断面図、(B)はXV−XV線における矢視断面図、(C)はXVI−XVI線における矢視断面図である。
【図27】図25に示される圧電ミラーデバイスの下部電極を説明するための図である。
【図28】図25に示される圧電ミラーデバイスの圧電素子を説明するための図である。
【図29】図25に示される圧電ミラーデバイスの上部電極を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は(A)の鎖線で囲まれた部位の拡大断面図である。
【図30】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図31】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図32】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図33】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図34】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図35】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図36】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図37】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図38】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図39】本発明の光学機器の一実施形態を説明するための構成図である。
【符号の説明】
【0096】
1…シリコンウエハ
11,11′,21,21′,31,31′,41,41′,51,51′,61,61′,71…圧電ミラーデバイス
12,22,32,42,52,62,72…フレーム部
12a,22a,32a,42a,52a,62a…薄肉部
13,23,33,43,53,63,73A,73B…開口部
13a,23a,43a,53a,63a…切欠き部
14,24,34,44,54,64,74…ミラー部
15,25,35,45,55,65,75,85…ミラー支持部
16,26,36,46,56,66,76,86…駆動部
17,27,37,47,57,67,77,87…下部電極
18,28,38,48,58,68,78,88…圧電素子
19,29,39,49,59,69,79,89…上部電極
101…光学機器
102…光源
103…投影スクリーン
105…光学系
107…圧電ミラーデバイス
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーデバイスに係り、特にミラー部の駆動に圧電素子を利用する圧電ミラーデバイスと、この圧電ミラーデバイスを用いた光学機器と、圧電ミラーデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラーデバイスは、ミラー面を駆動して、その回動角によって光の反射経路を変更するものであり、従来から、例えば、レーザを用いたプリンタ、複写機、ディスプレイ、プロジェクタ等の光学機器に使用されている。ミラーデバイスのミラー面の駆動には、静電気力を利用する静電駆動型、圧電素子を利用する圧電駆動型、電磁力を利用する電磁駆動型がある(特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開2001−13443号公報
【特許文献2】特開2002−311376号公報
【特許文献3】特開2003−15064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のミラーデバイスのうち、圧電駆動型である圧電ミラーデバイスは、他の駆動型に比べて駆動力が大きいという利点があり、例えば、MEMS((Micro Electro Mechanical System)技術を用いて作製され、SOI基板をエッチングすることによりミラー部と、このミラー部を回動可能に支持するミラー支持部が形成されていた。
しかしながら、従来の圧電ミラーデバイスは、ミラー支持部が高剛性のシリコン層(Si)(ヤング率=166GPa)からなっているので、ミラー部の変位量が小さいという問題があった。また、ミラー支持部等を製造するために、エッチングストッパーとなる酸化シリコン層を有するSOI基板を使用する必要があり、このSOI基板のコストが高いため製造コストの低減に限界があった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、ミラー部の変位量が大きい圧電ミラーデバイスと、このような圧電ミラーデバイスを簡便に製造するための製造方法、および、このような圧電ミラーデバイスを使用した光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的を達成するために、本発明の圧電ミラーデバイスは、中央に開口部を有するフレーム部と、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体であり前記フレーム部に配設されている一対の駆動部と、前記開口部に位置するミラー部と、前記駆動部の駆動に応じて前記ミラー部を前記フレーム部に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部と、を備え、前記ミラー支持部はヤング率が160GPa以下の材料からなり、前記フレーム部は前記駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有し、該切欠き部、薄肉部は前記開口部に接しているような構成とした。
【0005】
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部は前記駆動部を構成する下部電極と一体に形成されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部の端部は前記駆動部を構成する下部電極に係止されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部の端部は前記フレーム部の薄肉部に係止されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部は前記駆動部を構成する上部電極と一体に形成されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー部と前記ミラー支持部とが一体に形成されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー部は前記ミラー支持部と異なる材質からなるミラー面を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部は前記ミラー部を介して反対方向で、かつ、同軸上に位置するように配設されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ミラー支持部の軸心は前記ミラー部の中心から外れているような構成とした。
【0006】
本発明の他の態様として、前記フレーム部を内側フレーム部とし、前記ミラー支持部をX軸ミラー支持部とし、前記駆動部をX軸駆動部とし、さらに、開口部を介して前記内側フレーム部を包囲するように位置する外側フレーム部と、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体であり前記外側フレーム部に配設されている一対のY軸駆動部と、該Y軸駆動部の駆動に応じて前記内側フレーム部を前記外側フレーム部に対して回動可能に支持する一対のY軸ミラー支持部と、を備え、前記Y軸ミラー支持部はヤング率が160GPa以下の材料からなり、前記外側フレーム部はY軸駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有し、該切欠き部、薄肉部は前記開口部に接し、前記X軸と前記Y軸は直交するものであり、前記ミラー部は二軸で回動変位可能であるような構成とした。
本発明の光学機器は、光源と、投影スクリーンと、前記光源からの出射光を前記投影スクリーンへ導く光学系と、を備え、前記光学系は上述のいずれかの圧電ミラーデバイスを有するような構成とした。
【0007】
本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極間に位置するミラー部と、該ミラー部と前記下部電極とを連結する一対のミラー支持部を、ヤング率が160GPa以下で、かつ、融点が後工程で形成する圧電素子の融点より高い導電性材料で作製する工程と、前記下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【0008】
また、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、前記駆動部間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記駆動部方向に延設された一対のミラー支持部とを、該ミラー支持部の端部が前記駆動部を構成する下部電極に係止されるように、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【0009】
また、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記下部電極方向に延設された一対のミラー支持部を、ヤング率が160GPa以下で、かつ、融点が後工程で形成する圧電素子の融点より高い導電性材料で作製する工程と、前記下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、前記開口部に接するとともに前記ミラー支持部の端部を係止するように薄肉部を形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【0010】
また、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、前記駆動部間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記駆動部方向に延設された一対のミラー支持部とを、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、前記開口部に接するとともに前記ミラー支持部の端部を係止するように薄肉部を形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【0011】
また、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法は、シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子を形成する工程と、前記圧電素子の表面が露出するようにレジスト層を形成して平坦化した後、前記圧電素子上に位置する上部電極と、前記圧電素子間に位置するミラー部と、該ミラー部と前記上部電極とを連結する一対のミラー支持部とを、ヤング率が160GPa以下の導電材料で形成して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製し、その後、前記レジストを除去する工程と、前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有するような構成とした。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明の圧電ミラーデバイスは、ミラー支持部がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部のうち、駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大きいものとなり、例えば、プリンタ、複写機、プロジェクタ等のレーザ光走査装置における走査範囲を拡大することができる。
また、本発明の製造方法は、シリコンウエハを使用するものであり、酸化シリコン層を有するSOIウエハを使用する必要がないので、製造コストの低減が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[圧電ミラーデバイス]
(1) 図1は、本発明の圧電ミラーデバイスの一実施形態を示す平面図であり、図2は図1に示される圧電ミラーデバイスのI−I線における矢視断面図である。図1および図2において、本発明の圧電ミラーデバイス11は、中央に開口部13を有するフレーム部12と、開口部13に位置するミラー部14と、ミラー部14をフレーム部12に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部15と、下部電極17と圧電素子18と上部電極19との積層体でありフレーム部12に配設されている一対の駆動部16と、を備えている。そして、本発明では、ミラー支持部15はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなる。また、フレーム部12は駆動部16が位置する部位の一部に切欠き部13aを有しており、この切欠き部13aは開口部13に接している。ミラー支持部15のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部15の剛性が高くなり、駆動部16によるミラー部14の変位量が小さくなり好ましくない。
尚、上記の下部電極17は、配線17aを介して端子17bに接続されており、また、上部電極19は、配線19aを介して端子19bに接続されている。
圧電ミラーデバイス11を構成するフレーム部材12は、シリコンからなり、厚みは、例えば、300μm〜1mm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0014】
フレーム12に形成されている開口部13は、一対のミラー支持部15によって支持されたミラー部14が位置し、駆動部16によってミラー部14がフレーム部12に対して回動されるための空間である。このような開口部13の形状は、図示例では長方形であるが、ミラー部14の回動に支障を来たさない形状、寸法であれば特に制限はない。
また、フレーム部12が有する切欠き部13aは、図3に示すように、開口部13に接するようにして形成されている。この切欠き部13aの形状、寸法は、駆動部16の変形によるミラー支持部15とミラー部14の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での切欠き部13aは、幅方向(図1、図3に矢印aで示す方向)では、駆動部16と略同じであり、長さ方向(図1、図3に矢印bで示す方向)では、駆動部16を支持するための支持部位12′をフレーム部12に残すような形状となっている。この場合、支持部位12′の面積は、駆動部16を構成する圧電素子18の厚み方向への投影面積の50%以下、好ましくは10〜30%の範囲となるように設定することができる。
【0015】
圧電ミラーデバイス11では、ミラー部14、ミラー支持部15および下部電極17は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料により一体に形成されている。ミラー部14の形状、面積は適宜設定することができる。また、ミラー支持部15は、ミラー部14を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設されている。このようなミラー部14とミラー支持部15は、上記の開口部13に浮いた状態で位置するので、構造的耐性をもたせるために、厚みTは500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、ミラー支持部15の幅Wは、構造的耐性とミラー部14の回動を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
【0016】
ヤング率が160GPa以下の導電性材料としては、例えば、Al(70.3GPa)、Au(78.0GPa)、Ag(82.7GPa)、Cu(130GPa)、Zn(108.0GPa)、Ti(115.7GPa)等を挙げることができ、これらを単独で、あるいは積層構造となるように組み合わせて使用することができる。また、ヤング率が160GPaを超える導電性材料、例えば、Pt(168GPa)、Ni(199GPa)、鉄鋼(201.0GPa)、Fe(211.4GPa)等の導電性材料であっても、上記のようなヤング率が160GPa以下の導電性材料と組み合わせて構成された積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。ここで、本発明では、各導電材料毎のヤング率と厚みの積の総和を、各導電材料の厚みの総和で除すことによって、積層構造体におけるヤング率とする。以下の本発明の説明においても同様である。例えば、ヤング率がE1、厚みがT1である導電材料1と、ヤング率がE2、厚みがT2である導電材料2とからなる積層構造体におけるヤング率Eは、下記の式で算出することができる。
E=[(E1×T1)+(E2×T2)]/(T1+T2)
尚、ミラー支持部15の軸心は、図示例では、ミラー部14の中心と一致しているが、ミラー支持部15の軸心とミラー部14の中心とを外して、ミラー部の回動性を更に向上させてもよい。
また、ミラー部14、ミラー支持部15および下部電極17に使用する導電性材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部14は光反射率の高い材料、例えば、Al、Ag、Rh、Au、Cu、Ni等からなる反射層を備えるものであってもよい。
【0017】
駆動部16を構成する圧電素子18は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸鉛(PTO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)等の従来公知の圧電材料からなるものであってよい。また、圧電素子18の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
駆動部16を構成する上部電極19は、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用することができ、また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この上部電極19の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
【0018】
図4は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図5は図4に示される圧電ミラーデバイスのII−II線における矢視断面図である。図4および図5において、本発明の圧電ミラーデバイス11′は、フレーム部12のうち、駆動部16の位置する部位の一部に、上記の切欠き部13aの代わりに薄肉部12aを有している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス11と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示し、説明は省略する。
フレーム12が有する薄肉部12aは、図6に示すように、開口部13に接するようにして形成されている。この薄肉部12aの形状、寸法は、駆動部16の変形によるミラー支持部15とミラー部14の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での薄肉部12aは、駆動部16の略下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部12aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0019】
このような圧電ミラーデバイス11、11′は、例えば、端子17b(下部電極17)側をGND電位とし、端子19bを介して所望の交流電圧を上部電極19に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部14を変位させることができる。そして、ミラー支持部15がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部12が、駆動部16の位置する部位の一部に切欠き部13a、あるいは薄肉部12aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
【0020】
(2) 図7は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図8は図7に示される圧電ミラーデバイスのIII−III線における矢視断面図である。図7および図8において、本発明の圧電ミラーデバイス21は、中央に開口部23を有するフレーム部22と、開口部23に位置するミラー部24と、ミラー部24をフレーム部22に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部25と、下部電極27と圧電素子28と上部電極29との積層体でありフレーム部22に配設されている一対の駆動部26と、を備えている。上記のミラー支持部25はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなり、また、フレーム部22は駆動部26が位置する部位の一部に切欠き部23aを有しており、この切欠き部23aは開口部23に接している。ミラー支持部25のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部25の剛性が高くなり、駆動部26によるミラー部24の変位量が小さくなり好ましくない。
【0021】
尚、上記の下部電極27は、配線27aを介して端子27bに接続されており、また、上部電極29は、配線29aを介して端子29bに接続されている。
圧電ミラーデバイス21を構成するフレーム部材22は、上述の実施形態のフレーム部12と同様であり、開口部23と切欠き部23aは、上述の開口部13と切欠き部13aと同様に設定することができる。
圧電ミラーデバイス21では、ミラー部24およびミラー支持部25は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料により一体に形成されている。ミラー部24の形状、面積は適宜設定することができる。また、ミラー支持部25は、ミラー部24を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設され、各ミラー支持部25の端部は、駆動部26を構成する下部電極27に係止されている。このようなミラー部24とミラー支持部25は、上記の開口部23に浮いた状態で位置するので、構造的耐性をもたせるために、厚みTは500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、ミラー支持部25の幅Wは、構造的耐性とミラー部24の回動を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
【0022】
ヤング率が160GPa以下の材料としては、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、また、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド等の絶縁性材料も使用することができる。これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。
尚、ミラー支持部25の軸心は、図示例では、ミラー部24の中心と一致しているが、ミラー支持部25の軸心とミラー部24の中心とを外して、ミラー部の回動性を更に向上させてもよい。
また、ミラー部24およびミラー支持部25に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部24は光反射率の高い材料からなる反射層を備えるものであってもよい。このような反射層には、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0023】
駆動部26を構成する下部電極27は、圧電素子28や上部電極29よりも開口部23側に突出したものとなっており、この突出部位にミラー支持部25の端部が係止されている。このような下部電極27は、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用することができ、また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この下部電極27の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
駆動部26を構成する圧電素子28、上部電極29は、上述の実施形態の駆動部16を構成する圧電素子18、上部電極19と同様とすることができる。
【0024】
図9は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図10は図9に示される圧電ミラーデバイスのIV−IV線における矢視断面図である。図9および図10において、本発明の圧電ミラーデバイス21′は、フレーム部22が駆動部26の位置する部位の一部に、切欠き部23aの代わりに薄肉部22aを有しており、この薄肉部22aは開口部23に接している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス21と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示し、説明は省略する。
フレーム22が有する薄肉部22aの形状、寸法は、駆動部26の変形によるミラー支持部25とミラー部24の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での薄肉部22aは、駆動部26の略下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部22aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0025】
このような圧電ミラーデバイス21、21′は、例えば、端子27b(下部電極27)側をGND電位とし、端子29bを介して所望の交流電圧を上部電極29に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部24を変位させることができる。そして、ミラー支持部25がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部22が、駆動部26の位置する部位の一部に切欠き部23a、あるいは薄肉部22aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
【0026】
(3) 図11は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図12は図11に示される圧電ミラーデバイスのV−V線における矢視断面図である。図11および図12において、本発明の圧電ミラーデバイス31は、中央に開口部33を有するフレーム部32と、開口部33に位置するミラー部34と、ミラー部34をフレーム部32に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部35と、下部電極37と圧電素子38と上部電極39との積層体でありフレーム部32に配設されている一対の駆動部36と、を備えている。上記のミラー支持部35はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなり、また、フレーム部32は駆動部36が位置する部位の一部に薄肉部32aを有しており、この薄肉部32aは開口部33に接している。ミラー支持部35のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部35の剛性が高くなり、駆動部36によるミラー部34の変位量が小さくなり好ましくない。
【0027】
尚、上記の下部電極37は、配線37aを介して端子37bに接続されており、また、上部電極39は、配線39aを介して端子39bに接続されている。
圧電ミラーデバイス31を構成するフレーム部材32は、シリコンからなり、厚みは、例えば、300μm〜1mm程度の範囲で適宜設定することができる。
フレーム32に形成されている開口部33は、一対のミラー支持部35によって支持されたミラー部34が位置し、駆動部36によってミラー部34がフレーム部32に対して回動されるための空間である。このような開口部33の形状は、図示例では長方形であるが、ミラー部34の回動に支障を来たさない形状、寸法であれば特に制限はない。
【0028】
また、フレーム部32が有する薄肉部32aの形状、寸法は、駆動部36の変形によるミラー支持部35とミラー部34の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での薄肉部32aは、駆動部36の略下方に位置し、かつ、駆動部36よりも開口部33側に突出したものとなっており、この突出部位にミラー支持部25の端部が係止されている。このような薄肉部32aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
圧電ミラーデバイス31では、ミラー部34およびミラー支持部35は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料により一体に形成されている。ミラー部34の形状、面積は適宜設定することができる。また、ミラー支持部35は、ミラー部34を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設され、各ミラー支持部35の端部は、フレーム部32の薄肉部32aに係止されている。このようなミラー部34とミラー支持部35は、上記の開口部33に浮いた状態で位置するので、構造的耐性をもたせるために、厚みTは500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、ミラー支持部35の幅Wは、構造的耐性とミラー部34の回動を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
【0029】
ヤング率が160GPa以下の材料としては、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、また、上述の実施形態で挙げた絶縁性材料も使用することができる。これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。
尚、ミラー支持部35の軸心は、図示例では、ミラー部34の中心と一致しているが、ミラー支持部35の軸心とミラー部34の中心とを外して、ミラー部の回動性を更に向上させてもよい。
また、ミラー部34およびミラー支持部35に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部34は光反射率の高い材料からなる反射層を備えるものであってもよい。このような反射層には、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0030】
駆動部36を構成する下部電極37、圧電素子38、上部電極39は、上述の駆動部26を構成する下部電極27、圧電素子28、上部電極29と同様の材料を使用することができる。
このような圧電ミラーデバイス31は、例えば、端子37b(下部電極37)側をGND電位とし、端子39bを介して所望の交流電圧を上部電極39に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部34を変位させることができる。そして、ミラー支持部35がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部32が、駆動部36の位置する部位の一部に薄肉部32aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
【0031】
(4) 図13は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図14は図13に示される圧電ミラーデバイスのVI−VI線における矢視断面図である。図13および図14において、本発明の圧電ミラーデバイス41は、中央に開口部43を有するフレーム部42と、開口部43に位置するミラー部44と、このミラー部44をフレーム部42に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部45と、下部電極47と圧電素子48と上部電極49との積層体でありフレーム部42に配設されている一対の駆動部46と、を備えている。上記のミラー支持部45はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料からなり、また、フレーム部42は駆動部46が位置する部位の一部に切欠き部43aを有しており、この切欠き部43aは開口部43に接している。ミラー支持部45のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部45の剛性が高くなり、駆動部46によるミラー部44の変位量が小さくなり好ましくない。
尚、上記の下部電極47は、配線47aを介して端子47bに接続されており、また、上部電極49は、配線49aを介して端子49bに接続されている。
【0032】
圧電ミラーデバイス41を構成するフレーム部材42は、上述の実施形態のフレーム部12と同様であり、開口部43と切欠き部43aは、上述の開口部13と切欠き部13aと同様に設定することができる。
圧電ミラーデバイス41では、ミラー部44、ミラー支持部45および上部電極49は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料により一体に形成されている。ミラー部44の形状、面積は適宜設定することができ、また、ミラー支持部45は、ミラー部44を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設されている。このようなミラー部44とミラー支持部45は、開口部43上に浮いた状態で位置するので、構造的耐性をもたせるために、厚みTは500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、ミラー支持部45の幅Wは、構造的耐性とミラー部44の回動を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
【0033】
ヤング率が160GPa以下の導電性材料としては、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。
尚、ミラー支持部45の軸心は、図示例では、ミラー部44の中心と一致しているが、ミラー支持部45の軸心とミラー部44の中心とを外して、ミラー部の回動性を更に向上させてもよい。
また、ミラー部44、ミラー支持部45および上部電極49に使用する導電性材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部44は光反射率の高い材料からなる反射層を備えるものであってもよい。このような反射層には、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0034】
駆動部46を構成する下部電極47、圧電素子48は、上述の実施形態における駆動部16を構成する下部電極17、圧電素子18と同様の材料を使用することができる。
図15は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図16は図15に示される圧電ミラーデバイスのVII−VII線における矢視断面図である。図15および図16において、本発明の圧電ミラーデバイス41′は、フレーム部42が駆動部46の位置する部位の一部に、切欠き部43aの代わりに薄肉部42aを有しており、この薄肉部42aは開口部43に接している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス41と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示し、説明は省略する。
フレーム42が有する薄肉部42aの形状、寸法は、駆動部46の変形によるミラー支持部45とミラー部44の変位を阻害しないものであれば、特に制限はない。図示例での薄肉部42aは、駆動部46の略下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部42aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0035】
このような圧電ミラーデバイス41、41′は、例えば、端子47b(下部電極47)側をGND電位とし、端子49bを介して所望の交流電圧を上部電極49に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部44を変位させることができる。そして、ミラー支持部45がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部42の駆動部46が位置する部位の一部に切欠き部43a、あるいは薄肉部42aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
【0036】
(5) 図17は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図18(A)は図17に示される圧電ミラーデバイスのVIII−VIII線における矢視断面図であり、図18(B)は図17に示される圧電ミラーデバイスのIX−IX線における矢視断面図である。図17および図18において、本発明の圧電ミラーデバイス51は、中央に開口部53を有するフレーム部52と、開口部53に位置するミラー部54と、ミラー部54をフレーム部52に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部55と、下部電極57と圧電素子58と上部電極59との積層体でありフレーム部52に配設されている一対の駆動部56と、を備えている。そして、ミラー支持部55はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなる。また、フレーム部52は駆動部56が位置する部位の一部に切欠き部53aを有しており、この切欠き部53aは開口部53に接している。ミラー支持部55のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部55の剛性が高くなり、駆動部56によるミラー部54の変位量が小さくなり好ましくない。
尚、上記の下部電極57は、配線57aを介して端子57bに接続されており、また、上部電極59は、配線59aを介して端子59bに接続されている。
【0037】
このような圧電ミラーデバイス51は、フレーム部52が有する切欠き部53aの形状、駆動部56の形状が異なる他は、上述の圧電ミラーデバイス11と同様である。すなわち、圧電ミラーデバイス51では、コ字形状の一対の駆動部56が開口部53を囲むように配設されており、切欠き部53aもコ字形状(図17に鎖線で囲んで示している)となっている。
【0038】
また、図19は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図20(A)は図19に示される圧電ミラーデバイスのX−X線における矢視断面図であり、図20(B)は図19に示される圧電ミラーデバイスのXI−XI線における矢視断面図である。図19および図20において、本発明の圧電ミラーデバイス51′は、フレーム部52が、駆動部56の位置する部位の一部に、切欠き部53aの代わりに薄肉部52aを有しており、この薄肉部52aが開口部53に接している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス51と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示している。
フレーム52が有する薄肉部52aは、図19に斜線を付して示すように、駆動部56の略下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部52aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0039】
このような圧電ミラーデバイス51、51′は、例えば、端子57b(下部電極57)側をGND電位とし、端子59bを介して所望の交流電圧を上部電極59に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部54を変位させることができる。そして、ミラー支持部55がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部52は駆動部56の位置する部位の一部に切欠き部53a、あるいは薄肉部52aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
尚、上述の圧電ミラーデバイス21、21′、31、41、41′においても、駆動部の形状をコ字形状とし、フレーム部の切欠き部あるいは薄肉部の形状もコ字形状としてもよく、また、駆動部やフレーム部の切欠き部あるいは薄肉部をその他の形状としてもよいことは勿論である。
【0040】
(6) 図21は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図22は図21に示される圧電ミラーデバイスのXII−XII線における矢視断面図である。図21および図22において、本発明の圧電ミラーデバイス61は、中央に開口部63を有するフレーム部62と、開口部63に位置するミラー部64と、ミラー部64をフレーム部62に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部65と、下部電極67と圧電素子68と上部電極69との積層体でありフレーム部62に配設されている一対の駆動部66と、を備えている。そして、ミラー支持部65はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である材料からなる。また、フレーム部62は駆動部66が位置する部位の一部に切欠き部63aを有し、この切欠き部63aは開口部63に接している。ミラー支持部65のヤング率が160GPaを超えると、ミラー支持部65の剛性が高くなり、駆動部66によるミラー部64の変位量が小さくなり好ましくない。
尚、上記の下部電極67は、配線67aを介して端子67bに接続されており、また、上部電極69は、配線69aを介して端子69bに接続されている。
【0041】
このような圧電ミラーデバイス61は、フレーム部62が有する切欠き部63aの形状、駆動部66の形状が異なる他は、上述の圧電ミラーデバイス11と同様である。すなわち、圧電ミラーデバイス61では、一対の駆動部66が開口部63に突出するように配設されており、駆動部66の駆動によるミラー部64の変位がより効率的なものとなっている。
また、図23は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図24は図23に示される圧電ミラーデバイスのXIII−XIII線における矢視断面図である。図23および図24において、本発明の圧電ミラーデバイス61′は、フレーム部62が、駆動部66の位置する部位の一部に、切欠き部63aの代わりに薄肉部62aを有しており、この薄肉部62aが開口部63に接している点を除いて、上述の圧電ミラーデバイス61と同様である。したがって、同じ部材には同じ部材番号を付して示している。
フレーム62が有する薄肉部62aは、駆動部66の下方全域に位置するような形状となっている。また、薄肉部62aの厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは1〜30μmの範囲で適宜設定することができる。
【0042】
このような圧電ミラーデバイス61、61′は、例えば、端子67b(下部電極67)側をGND電位とし、端子69bを介して所望の交流電圧を上部電極69に印加することにより、所望の共振周波数でミラー部64を変位させることができる。そして、ミラー支持部65がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、フレーム部62は駆動部66の位置する部位の一部に切欠き部63a、あるいは薄肉部62aを有するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
尚、上述の圧電ミラーデバイス21、21′、31、41、41′においても、駆動部を開口部に突出させるように、フレーム部の切欠き部あるいは薄肉部を形成することができる。
【0043】
(7) 図25は、本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図であり、図26(A)は図25に示される圧電ミラーデバイスのXIV−XIV線における矢視断面図、図26(B)は同じくXV−XV線における矢視断面図、図26(C)は同じくXVI−XVI線における矢視断面図である。図25および図26において、本発明の圧電ミラーデバイス71は、二軸タイプの圧電ミラーデバイスであり、中央に円形の内側開口部73Aを有する環状の内側フレーム部72Aと、この内側フレーム部72Aの外側に環状の外側開口部73Bを介して位置する外側フレーム部72Bとからなるフレーム部72と、内側開口部73Aに位置するミラー部74と、ミラー部74を内側フレーム部72Aに対して回動可能に支持する一対のX軸ミラー支持部75と、下部電極77と圧電素子78と上部電極79との積層体であり内側開口部73A内に位置する一対のX軸駆動部76と、を備えている。上記のX軸ミラー支持部75はX軸駆動部76を構成する下部電極77と一体で形成されており、半環状の一対のX軸駆動部76はX軸ミラー支持部75を挟んで対向するように構成されている。また、外側開口部73Bには、内側フレーム部72Aを外側フレーム部72Bに対して回動可能に支持する一対のY軸ミラー支持部85が掛け渡されて配設されているとともに、この外側開口部73Bには、下部電極87と圧電素子88と上部電極89との積層体である一対のY軸駆動部86が位置している。上記のY軸ミラー支持部85はY軸駆動部86を構成する下部電極87と一体で形成されており、半環状の一対のY軸駆動部86はY軸ミラー支持部85を挟んで対向するように構成されている。そして、半環状の一対のX軸駆動部76から、X軸駆動部76aがY軸ミラー支持部85と同軸方向に内側フレーム部72Aまで延設されており、また、半環状の一対のY軸駆動部86から、Y軸駆動部86aがX軸ミラー支持部75と同軸方向に外側フレーム部72Bまで延設されている。尚、図示例では、X軸ミラー支持部75の軸方向とY軸ミラー支持部85の軸方向は90°の角度をなすように設定されている。
【0044】
そして、本発明では、X軸ミラー支持部75、および、Y軸ミラー支持部85はヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料からなる。X軸ミラー支持部75、および、Y軸ミラー支持部85のヤング率が160GPaを超えると、各ミラー支持部の剛性が高くなり、X軸駆動部76、Y軸駆動部86によるミラー部74の変位量が小さくなり好ましくない。
ここで、上述の圧電ミラーデバイス71を、図27乃至図29を参照して更に詳細に説明する。図27は図25に示される圧電ミラーデバイス71から上部電極79,89、圧電素子78,88を除去し、下部電極77,87とX軸ミラー支持部75、Y軸ミラー支持部85を露出させた図であり、ミラー部74、X軸ミラー支持部75、下部電極77,87、Y軸ミラー支持部85には斜線を付して示している。また、図28は図25に示される圧電ミラーデバイス71から上部電極79,89を除去し、圧電素子78,88を露出させた図であり、圧電素子78,88には斜線を付して示している。さらに、図29(A)は図25に示される圧電ミラーデバイス71の上部電極79,89に斜線を付して示した図であり、図29(B)は図29(A)の鎖線で囲まれた部位の拡大部分断面図である。
【0045】
図27に示されるように、環状の下部電極77は内側開口部73A内に位置し、環状の下部電極87は外側開口部73B内に位置している。また、下部電極77の内側にミラー部74が位置し、このミラー部74を下部電極87に連結するように、一対のX軸ミラー支持部75がミラー部74を介して反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設されている。そして、このX軸ミラー支持部75は環状の下部電極77の外側まで延設され、その端部は内側フレーム部72Aに係止されている。また、環状の下部電極87からは、Y軸ミラー支持部85が内外反対方向、かつ、同軸上に位置するように配設され、その端部は内側フレーム部72Aと外側フレーム部72Bに係止されている。さらに、このY軸ミラー支持部85と同軸となるように、環状の下部電極77から下部電極77aが内側フレーム部72Aまで延設されている。一方、X軸ミラー支持部75と同軸に、環状の下部電極87から下部電極87aが外側フレーム部72Bまで延設されている。このように、下部電極77,77a、下部電極87,87a、ミラー部74、X軸ミラー支持部75およびY軸ミラー支持部85は、ヤング率が160GPa以下、好ましくは30〜150GPa、より好ましくは60〜130GPaの範囲である導電性材料によって一体的に形成されている。
【0046】
ヤング率が160GPa以下の導電性材料としては、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。尚、使用する導電性材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部74は光反射率の高い材料からなる反射層を備えるものであってもよい。このような反射層には、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0047】
上記のX軸ミラー支持部75はミラー部74を支持し、Y軸ミラー支持部85は内側フレーム部72Aを支持するので、構造的耐性が必要であり、X軸ミラー支持部75の厚みT1(図26(A)参照)は500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲、Y軸ミラー支持部85の厚みT2(図26(C)参照)は500nm以上、好ましくは1〜100μmの範囲で設定することができる。また、X軸ミラー支持部75の幅W1、Y軸ミラー支持部85の幅W2(図27参照)は、ミラー部74や内側フレーム部72Aの回動性、および、構造的耐性とを考慮して適宜設定することができる。
尚、上記のように下部電極87と導通状態にある一対のY軸ミラー支持部85は、それぞれ配線90aを介して端子90bに接続されている。
【0048】
また、図28に示されるように、半環状の一対の圧電素子78は、X軸ミラー支持部75を挟んで対向するように下部電極77上に配設されている。また、この圧電素子78から下部電極77aを被覆するように圧電素子78aが形成されている。一方、半環状の一対の圧電素子88は、Y軸ミラー支持部85を挟んで対向するように下部電極87上に配設されている。また、この圧電素子88から下部電極87aを被覆するように圧電素子88aが形成されている。このような圧電素子78,88は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸鉛(PTO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)等の従来公知の圧電材料からなるものであってよい。また、圧電素子78,88の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
【0049】
さらに、図29(A)に示されるように、上記の圧電素子78,78a,88,88aを被覆するように上部電極79,79a,89,89aが配設されている。また、圧電素子78aを被覆する上部電極79aは、図29(B)に示されるように、内側フレーム部72Aに係止されているY軸ミラー支持部85の一部を被覆する位置まで延設されている。これにより、Y軸ミラー支持部85(下部電極77)と上部電極79とが導通された状態となる。このような上部電極79,79a,89,89aは、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用することができ、また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この上部電極の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
尚、上部電極89aは、それぞれ配線91aを介して端子91bに接続されている。
【0050】
このような二軸タイプの圧電ミラーデバイス71は、例えば、下部電極77をGND電位とし、端子90bからY軸ミラー支持部85、上部電極79aを介して上部電極79に所望の交流電圧を印加することにより、X軸駆動部76を所望の共振周波数で駆動させてミラー部74を変位させることができる。また、下部電極87をGND電位とし、端子91bから上部電極89aを介して所望の交流電圧を上部電極89に印加することにより、Y軸駆動部86を所望の共振周波数で駆動させて内側フレーム部72Aを変位させることができる。そして、X軸ミラー支持部75およびY軸ミラー支持部85がヤング率160GPa以下の材料からなり、かつ、X軸駆動部76とY軸駆動部76が開口部(切欠き部)73A,73Bに位置するので、従来の圧電ミラーデバイスに比べて、圧電素子によるミラー部の変位量が大幅に大きいものとなる。
上述の圧電ミラーデバイスの実施形態は例示であり、本発明の圧電ミラーデバイスはこれらに限定されるものではない。
【0051】
[圧電ミラーデバイスの製造方法]
次に、本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法について説明する。
(1) 図30および図31は上述の図1乃至図6に示す圧電ミラーデバイス11、11′を例として本発明の製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極17と、この下部電極17間に位置するミラー部14と、このミラー部14と下部電極17とを連結する一対のミラー支持部15を、ヤング率が160GPa以下の導電性材料で作製する(図30(A)、図31(A))。ヤング率が160GPa以下の導電性材料は、例えば、Al(70.3GPa)、Au(78.0GPa)、Ag(82.7GPa)、Cu(130GPa)、Zn(108.0GPa)、Ti(115.7GPa)等を挙げることができ、後工程の圧電素子18形成の焼成時に、ミラー部14、ミラー支持部15、下部電極17が溶融しないように、上記の導電性材料の中から、形成する圧電素子18の融点より高い導電性材料を使用することができる。上記の導電性材料は単独で、あるいは積層構造となるように組み合わせて使用することができる。また、ヤング率が160GPaを超える導電性材料、例えば、Pt(168GPa)、Ni(199GPa)、鉄鋼(201.0GPa)、Fe(211.4GPa)等の導電性材料であっても、上記のようなヤング率が160GPa以下の導電性材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。
【0052】
ミラー部14、ミラー支持部15、下部電極17は、例えば、シリコンウエハ1上に所望のレジストパターンを形成し、このレジストパターンを被覆するように上述の導電性材料を使用してスパッタリング法等により電極膜を形成し、その後、レジストパターンを除去すると同時に不要な電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一体で形成することができる。また、シリコンウエハ1上に上述の導電性材料を使用してスパッタリング法等により電極膜を形成し、この上に所望のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして電極膜をエッチングした後、不要なレジストパターンを除去することにより、ミラー部14、ミラー支持部15、下部電極17を一体で形成することもできる。さらに、上述の導電性材料を含有した感光性の導電性ペーストをスクリーン印刷によってシリコンウエハ1上に印刷し、所望のマスクを介して導電性ペースト膜を露光、現像し、その後、焼成することにより、ミラー部14、ミラー支持部15、下部電極17を一体で形成してもよい。
尚、この工程では、配線17a、端子17b(図1、図4参照)も同時に形成することができる。
【0053】
次に、下部電極17上に圧電素子18を形成し(図30(B)、図31(B))、さらに、圧電素子18上に上部電極19を形成して、下部電極17と圧電素子18と上部電極19との積層体である一対の駆動部16を形成する(図30(C)、図31(C))。
圧電素子18は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸鉛(PTO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)等の従来公知の圧電材料を用いて、マスクを介したスパッタリング法等により所望のパターンで成膜し、その後、焼成することにより形成できる。形成する圧電素子18の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
【0054】
また、上部電極19は、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用し形成することができる。また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この上部電極19の形成は、上述の下部電極17の形成と同様の方法で行うことができ、形成する上部電極の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。この工程では、配線19a、端子19b(図1、図4参照)も同時に形成することができる。
尚、ミラー部14、ミラー支持部15および下部電極17に使用する導電性材料の光反射率が不十分な場合、圧電素子18の形成(焼成工程)が完了した後に、ミラー部14に光反射率の高い材料、例えば、Al、Ag、Rh、Au、Cu、Ni等からなる反射層を形成してもよい。
【0055】
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去し開口部13を形成して、フレーム部12形成する。この際、駆動部16が位置する部位の一部に、切欠き部13aを開口部13に接するように形成する。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイス11が作製される(図30(D))。また、切欠き部13aを形成する代わりに、駆動部16が位置する部位の一部に、薄肉部12aを開口部13に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス11′が作製される(図30(E))。
シリコンウエハ1への開口部13と切欠き部13aの形成は、例えば、シリコンウエハ1の他方の面(ミラー部14、ミラー支持部15および駆動16が形成されていない面)に開口部13と切欠き部13aに対応した開口を有するレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いたエッチングにより行うことができる。この場合、下部電極17が存在する部位では、この下部電極17がエッチングストッパーとして作用することにより切欠き部13aが形成され、他の部位では、貫通穴がシリコンウエハ1に形成されて開口部13が形成される。
【0056】
また、シリコンウエハ1への開口部13と薄肉部12aの形成は、例えば、シリコンウエハ1の他方の面(ミラー部14、ミラー支持部15および駆動16が形成されていない面)に、まず、開口部13を形成するためのレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてDRIE法を用いたエッチングにより薄肉部12aの厚みに相当する深さまでエッチングする。その後、上記のレジストパターンを除去し、開口部13と薄肉部12aに対応した開口を有するレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてDRIE法を用いたエッチングにより貫通穴が形成されるまでエッチングして、開口部13と薄肉部12aを形成することができる。
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス11をダイシングすることにより、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイス11が得られ、多面付けの圧電ミラーデバイス11′をダイシングすることにより、図4乃至図6に示されるような圧電ミラーデバイス11′が得られる。
尚、図17乃至図20に示されるような圧電ミラーデバイス51、51′、および、図21乃至図24に示されるような圧電ミラーデバイス61、61′は、上述の本発明の製造方法により形成することができる。
【0057】
また、図25乃至図29に示されるような圧電ミラーデバイス71も、上述の本発明の製造方法により形成することができる。この場合、シリコンウエハ1上に、図27から図29に示される順に、まず、ミラー部74、X軸ミラー支持部75、下部電極77,87、Y軸ミラー支持部85を形成し、次いで、圧電素子78、78を形成し、さらに、上部電極79、89を形成し、その後、シリコンウエハ1をエッチングして内側開口部73A、外側開口部73Bを形成し、ダイシングすることにより圧電ミラーデバイス71が得られる。
【0058】
(2) 図32および図33は上述の図7乃至図10に示す圧電ミラーデバイス21、21′を例として本発明の製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極27と、この下部電極27上に圧電素子28と上部電極29をこの順に積層して、下部電極27と圧電素子28と上部電極29との積層体である一対の駆動部26を作製する(図32(A)、図33(A))。この一対の駆動部26を構成する下部電極27は、後工程でのミラー支持部25の係止を可能とするために、互いに他方の駆動部26方向に突出したものとする。
下部電極27は、Pt、Au、Ag、Pd、Cu、Sn等を単独で、あるいは組み合わせて使用し形成することができる。また、Cr、Ti、Mo、Ta等の下地金属層上に上記の金属からなる表面層を形成した積層構造であってもよい。この下部電極27の形成は、上述の実施形態での下部電極17の形成と同様の方法で行うことができ、形成する下部電極27の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
【0059】
また、圧電素子28の形成は、上述の実施形態での圧電素子18の形成と同様の方法で行うことができ、形成する圧電素子28の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
さらに、上部電極29の形成は、上述の実施形態での上部電極19の形成と同様の方法で行うことができ、形成する上部電極29の厚みは、例えば、300nm〜5μmの範囲で適宜設定することができる。
尚、この工程では、配線27a、端子27bおよび配線29a、端子29b(図7、図9参照)も同時に形成することができる。
【0060】
次に、一対の駆動部26間に位置するようにミラー部24と、このミラー部24と下部電極27とを連結する一対のミラー支持部25を、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する(図32(B)、図33(B))。ヤング率が160GPa以下の材料は、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができ、また、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド等の絶縁性材料も使用することができる。これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。尚、前工程において、圧電素子28が形成されているので、使用するヤング率が160GPa以下の材料は、その融点を特に考慮する必要がない。
ミラー部24およびミラー支持部25の形成は、上述の実施形態におけるミラー部14、ミラー支持部15の形成方法と同様の方法で行うことができる。但し、ミラー支持部25の端部は、駆動部26を構成する下部電極27の突出部に係止するように形成する。
尚、ミラー部24、ミラー支持部25に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部24に光反射率の高い材料からなる反射層を形成してもよい。このような反射層の形成は、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0061】
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去し開口部23を形成して、フレーム部22形成する。このとき、駆動部26が位置する部位の一部に、切欠き部23aを開口部23に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス21が作製される(図32(C))。また、駆動部26が位置する部位の一部に、薄肉部22aを開口部23に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス21′が作製される(図32(D))。
シリコンウエハ1への開口部23と切欠き部23aの形成、および、シリコンウエハ1への開口部23と薄肉部22aの形成は、上述の実施形態における開口部13と切欠き部13aの形成、あるいは、開口部13と薄肉部12aの形成と同様の方法で行うことができる。
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス21をダイシングすることにより、図7および図8に示されるような圧電ミラーデバイス21が得られ、多面付けの圧電ミラーデバイス21′をダイシングすることにより、図9および図10に示されるような圧電ミラーデバイス21′が得られる。
【0062】
(3) 図34および図35は上述の図11および図12に示す圧電ミラーデバイス31を例として本発明の製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極37と、この下部電極37間に位置するミラー部34と、このミラー部34を支持するための一対のミラー支持部35を、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する(図34(A)、図35(A))。この下部電極37とミラー部34とミラー支持部35の形成は、上述の実施形態の下部電極17とミラー部14とミラー支持部15の形成と同様に行うことができる。但し、ミラー支持部35の端部は、後工程で形成する薄肉部32aに係止可能な位置となるように形成する。また、使用するヤング率が160GPa以下の材料は、後工程の圧電素子38形成の焼成時に、ミラー部34、ミラー支持部35、下部電極37が溶融しないように、その融点が後工程で形成する圧電素子38の融点よりも高い材料を使用する。
【0063】
尚、この工程では、配線37a、端子37b(図11参照)も同時に形成することができる。また、ミラー部34、ミラー支持部35に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部34に光反射率の高い材料からなる反射層を形成してもよい。このような反射層の形成は、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
次に、下部電極37上に圧電素子38と上部電極39を形成して、下部電極37と圧電素子38と上部電極39との積層体である一対の駆動部36を形成する(図34(B)、図35(B))。圧電素子38と上部電極39の形成は、上述の実施形態の圧電素子18と上部電極19の形成と同様の方法で行うことができる。
尚、この工程では、配線39a、端子39b(図11参照)も同時に形成することができる。
【0064】
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去して開口部33を形成しフレーム部32形成するとともに、駆動部36が位置する部位の一部に、薄肉部32aを開口部33に接するように形成する。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイス31が作製される(図34(C))。
シリコンウエハ1への開口部33と薄肉部32aの形成は、上述の実施形態における開口部13と薄肉部12aの形成と同様の方法で行うことができる。
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス31をダイシングすることにより、図11および図12に示されるような圧電ミラーデバイス31が得られる。
【0065】
また、図36は上述の図11および図12に示す圧電ミラーデバイス31を例として本発明の製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極37と、この下部電極37上に圧電素子38と上部電極39をこの順に積層して、下部電極37と圧電素子38と上部電極39との積層体である一対の駆動部36を作製する(図36(A))。この駆動部36の形成は、上述の実施形態の駆動部26の形成と同様に行うことができる。
尚、この工程では、配線37a、端子37bおよび配線39a、端子39b(図11参照)も同時に形成することができる。
【0066】
次に、一対の駆動部36間に位置するようにミラー部34と、このミラー部34を支持するための一対のミラー支持部35を、ヤング率が160GPa以下の材料で一体的に作成する(図36(B))。ヤング率が160GPa以下の材料は、上述の実施形態で挙げた材料を使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。尚、前工程において、圧電素子38が形成されているので、使用するヤング率が160GPa以下の材料は、その融点を特に考慮する必要がない。
ミラー部34およびミラー支持部35の形成は、上述の実施形態におけるミラー部34、ミラー支持部35の形成方法と同様の方法で行うことができる。但し、ミラー支持部35の端部は、後工程で形成する薄肉部32aに係止可能な位置となるように形成する。
尚、ミラー部34、ミラー支持部35に使用する材料の光反射率が不十分な場合、ミラー部34に光反射率の高い材料からなる反射層を形成してもよい。このような反射層の形成は、上述の実施形態で挙げた材料と同様のものを使用することができる。
【0067】
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去して開口部33を形成しフレーム部32形成するとともに、駆動部36が位置する部位の一部に、薄肉部32aを開口部33に接するように形成する。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイス31が作製される(図36(C))。
シリコンウエハ1への開口部33と薄肉部32aの形成は、上述の実施形態における開口部13と薄肉部12aの形成と同様の方法で行うことができる。
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス31をダイシングすることにより、図11および図12に示されるような圧電ミラーデバイス31が得られる。
【0068】
(4) 図37および図38は上述の図13乃至図16に示す圧電ミラーデバイス41、41′を例として本発明の製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
まず、シリコンウエハ1を多面付け(図では各面付け部を1Aで示す)に区画し、このシリコンウエハ1の一方の面において各面付け毎に一対の下部電極47と、この下部電極47上に圧電素子48を形成する(図37(A)、図38(A))。この下部電極47と圧電素子48の形成は、上述の実施形態の下部電極27と圧電素子28の形成と同様の方法で行うことができる。
尚、この工程では、配線47a、端子47b(図13、図15参照)も同時に形成することができる。
次に、上述のように形成した圧電素子48の上面が露出するようにレジスト層3を形成して平坦面を形成する(図37(B)、図38(B))。
【0069】
次いで、露出している圧電素子48上に位置する上部電極49と、上部電極49間に位置するミラー部44と、このミラー部44と上部電極49とを連結する一対のミラー支持部45を、ヤング率が160GPa以下の導電性材料で一体的に作成し、その後、不要となったレジスト層3を除去する(図37(C)、図38(C))。これにより、下部電極47と圧電素子48と上部電極49との積層体である一対の駆動部46が形成されるとともに、駆動部46間にミラー部44とミラー支持部45が架設される。ヤング率が160GPa以下の導電性材料は、上述の実施形態で挙げた導電性材料を使用することができる。これらの材料は単独で使用してもよく、また、積層構造となるように組み合わせて使用することができる。さらに、ヤング率が160GPaを超える材料であっても、ヤング率が160GPa以下の材料と組み合わせた積層構造体のヤング率が160GPa以下となる場合には、使用可能である。尚、前工程において、圧電素子48が形成されているので、使用するヤング率が160GPa以下の導電性材料は、その融点を特に考慮する必要がない。
【0070】
ミラー部44、ミラー支持部45および上部電極49の一体的形成は、上述の実施形態におけるミラー部14、ミラー支持部15および下部電極17の形成方法と同様の方法で行うことができる。
尚、この工程では、配線49a、端子49b(図13、図15参照)も同時に形成することができる。
次に、シリコンウエハ1の他方の面から、各面付け毎にシリコンウエハ1の所望部位を除去し開口部43を形成して、フレーム部42形成する。このとき、駆動部46が位置する部位の一部に、切欠き部43aを開口部43に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス41が作製される(図37(D))。また、駆動部46が位置する部位の一部に、薄肉部42aを開口部43に接するように形成することにより、多面付けで圧電ミラーデバイス41′が作製される(図37(E))。
シリコンウエハ1への開口部43と切欠き部43aの形成、および、シリコンウエハ1への開口部43と薄肉部42aの形成は、上述の実施形態における開口部13と切欠き部13aの形成、あるいは、開口部13と薄肉部12aの形成と同様の方法で行うことができる。
【0071】
次に、多面付けの圧電ミラーデバイス41をダイシングすることにより、図13および図14に示されるような圧電ミラーデバイス41が得られ、多面付けの圧電ミラーデバイス41′をダイシングすることにより、図15および図16に示されるような圧電ミラーデバイス41′が得られる。
上述のような本発明の製造方法は、シリコンウエハを使用するものであり、酸化シリコン層を有するSOIウエハを使用する必要がないので、製造コストの低減が可能である。
尚、上述の圧電ミラーデバイスの製造方法は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0072】
[光学機器]
次に、本発明の光学機器について説明する。
図39は、本発明の光学機器の一実施形態として、ディスプレイ、プロジェクタ等の画像表示装置としての光学機器を説明するための構成図である。図39において、本発明の光学機器101は、レーザ光源102と、投影スクリーン103と、レーザ光源102からの出射光を投影スクリーン103へ導く光学系105と、を備えている。この光学機器101の光学系105は、集光用レンズ群106、圧電ミラーデバイス107、投影用レンズ群108を有しており、圧電ミラーデバイス107は本発明の圧電ミラーデバイスである。使用する本発明の圧電ミラーデバイスとしては、例えば、2軸タイプの圧電ミラーデバイスを挙げることができ、この場合、集光用レンズ群106からの入射光を投影用レンズ群108へ反射する際に、X/Y(水平/垂直)方向に走査することができる。そして、このように走査されたレーザ光によって、投影用レンズ群108を通して投影スクリーン103上に画像を表示することができる。
尚、上述の光学機器は例示であり、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
厚み625μmのシリコンウエハを準備し、一辺が5.5mmである正方形で多面付けに区画した。このシリコンウエハの一方の面に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、多面付けでレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み30nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して電極膜を形成した。この電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は79.1となる。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の下部電極と、この下部電極間に位置するミラー部と、このミラー部と下部電極とを連結する一対のミラー支持部を一体で形成した。形成したミラー支持部の幅は10μmであった。また、この工程では、下部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0074】
次に、一対の下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、マスクを介したスパッタリング法により薄膜を形成し、その後、焼成(600℃、120分間)することにより圧電素子(厚み10μm)を形成した。
次いで、このように圧電素子を形成したシリコンウエハ上に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、上部電極形成用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりCr薄膜(厚み50nm)とAu薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の上部電極を、上記の圧電素子上に形成した。また、この工程では、上部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0075】
これにより、下部電極、圧電素子、上部電極の積層体からなる駆動部を形成した。
次に、シリコンウエハの他方の面に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、開口部と切欠き部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いたエッチングを行った。これにより、下部電極が存在する部位では、この下部電極がエッチングストッパーとして作用することにより切欠き部が形成され、他の部位では、貫通穴がシリコンウエハに形成されて開口部が形成された。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイスを作製した。
次に、上記の多面付け圧電ミラーデバイスをダイシングして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0076】
[実施例2]
厚み625μmのシリコンウエハを準備し、一辺が5.5mmである正方形で多面付けに区画した。このシリコンウエハの一方の面に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、多面付けで下部電極用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりTi薄膜(厚み50nm)とPt薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の下部電極を形成した。また、この工程では、下部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0077】
次に、一対の下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、マスクを介したスパッタリング法により薄膜を形成し、その後、焼成(600℃、120分間)することにより圧電素子(厚み10μm)を形成した。尚、この圧電素子は、上記の下部電極を、対向する他方の下部電極方向に1000μm露出させるように、下部電極面よりも小さい面積で形成した。
次いで、このように圧電素子を形成したシリコンウエハ上に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、上部電極形成用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりCr薄膜(厚み50nm)とAu薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の上部電極を、上記の圧電素子上に形成した。また、この工程では、上部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
これにより、下部電極、圧電素子、上部電極の積層体からなる駆動部を形成した。
【0078】
次に、一対の駆動部を形成したシリコンウエハに感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、ミラー部とミラー支持部を形成するためのレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み30nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して薄膜を形成した。この薄膜(積層構造体)のヤング率の計算値は79.1となる。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の薄膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の駆動部間に位置するミラー部と、このミラー部と下部電極とを連結する一対のミラー支持部を一体で形成した。形成したミラー支持部の幅は10μmであった。
【0079】
次に、シリコンウエハの他方の面に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、まず、開口部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて、深さ605μmまでエッチングを行った。次いで、上記のレジストパターンを除去し、再度、感光性レジストをスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、開口部と薄肉部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて、開口部が形成されるまでエッチングを行った。これにより、下部電極が存在する部位には、厚みが20μmの薄肉部が形成された。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイスを作製した。
次に、上記の多面付け圧電ミラーデバイスをダイシングして、図9および図10に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0080】
[実施例3]
厚み625μmのシリコンウエハを準備し、一辺が5.5mmである正方形で多面付けに区画した。このシリコンウエハの一方の面に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、多面付けでレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み30nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して電極膜を形成した。この電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は79.1となる。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の下部電極と、この下部電極間に位置するミラー部と、このミラー部に連結した一対のミラー支持部を形成した。形成したミラー支持部の幅は10μmであり、ミラー支持部の端部と下部電極との間には500μmの距離を設けた。また、この工程では、下部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0081】
次に、一対の下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、マスクを介したスパッタリング法により薄膜を形成し、その後、焼成(600℃、120分間)することにより圧電素子(厚み10μm)を形成した。
次いで、このように圧電素子を形成したシリコンウエハ上に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、上部電極形成用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりCr薄膜(厚み50nm)とAu薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の上部電極を、上記の圧電素子上に形成した。また、この工程では、上部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
これにより、下部電極、圧電素子、上部電極の積層体からなる駆動部を形成した。
【0082】
次に、シリコンウエハの他方の面に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、まず、開口部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて、深さ605μmまでエッチングを行った。次いで、上記のレジストパターンを除去し、再度、感光性レジストをスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、開口部と薄肉部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて、開口部が形成されるまでエッチングを行った。これにより、下部電極が存在する部位と、ミラー支持部の端部からミラー部方向に1000μmまで達する領域に、厚みが20μmの薄肉部が形成され、この薄肉部にミラー支持部の端部が係止された状態で、ミラー支持部とミラー部が開口部に架設された。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイスを作製した。
次に、上記の多面付け圧電ミラーデバイスをダイシングして、図11および図12に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0083】
[実施例4]
厚み625μmのシリコンウエハを準備し、一辺が5.5mmである正方形で多面付けに区画した。このシリコンウエハの一方の面に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、多面付けで下部電極用のレジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりTi薄膜(厚み50nm)とPt薄膜(厚み300nm)とを積層して電極膜を形成した。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記のレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、一対の下部電極を形成した。また、この工程では、下部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
次に、一対の下部電極上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて、マスクを介したスパッタリング法により成膜し、その後、焼成(600℃、120分間)することにより圧電素子(厚み10μm)を形成した。
【0084】
次いで、このように下部電極、圧電素子を形成したシリコンウエハ上にポジ型の感光性レジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZ5218)をスピンコート法で塗布し、圧電素子間を除く領域を露光し、その後、現像して、圧電素子の表面が露出し、かつ、圧電素子とその間の部位が平坦となるようにした。次に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、レジストパターンを形成した。このレジストパターンを被覆するようにスパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み50nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み5μm(5000nm))とを積層して電極膜を形成した。この電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は78.4となる。次いで、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 AZリムーバーを用い、超音波をかけることで上記の全てのレジストパターンを除去すると同時に、レジストパターン上の電極膜を除去(リフトオフ)することにより、圧電素子上に位置する一対の上部電極と、この上部電極間に位置するミラー部と、このミラー部と上部電極とを連結する一対のミラー支持部を一体で形成した。これにより、下部電極、圧電素子、上部電極の積層体からなる駆動部が形成され、ミラー支持部の幅は10μmであった。尚、この工程では、上部電極に接続する配線と端子も同時に形成した。
【0085】
次に、シリコンウエハの他方の面に、感光性レジスト(東京応化工業(株)製 LA900)をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光し、その後、現像して、開口部と切欠き部を形成するためのレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いたエッチングを行った。これにより、下部電極が存在する部位では、この下部電極がエッチングストッパーとして作用することにより切欠き部が形成され、他の部位では、貫通穴がシリコンウエハに形成されて開口部が形成された。これにより、多面付けで圧電ミラーデバイスを作製した。
次に、上記の多面付け圧電ミラーデバイスをダイシングして、図13および図14に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0086】
[実施例5]
スパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み200nm)と、ヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して電極膜を形成した他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。この場合の電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は84.2となる。
【0087】
[実施例6]
スパッタリング法によりヤング率が78.0GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))を成膜して電極膜とした他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0088】
[実施例7]
スパッタリング法によりヤング率が115.7GPaであるTi薄膜(厚み400nm)と、ヤング率が168GPaであるPt薄膜(厚み1μm(1000nm))とを積層して電極膜を形成した他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。この場合の電極膜(積層構造体)のヤング率の計算値は152.9となる。
【0089】
[実施例8]
スパッタリング法によりヤング率が130GPaであるCu薄膜(厚み2μm(2000nm))を成膜して電極膜とした他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0090】
[実施例9]
スパッタリング法によりヤング率が82.7GPaであるAu薄膜(厚み1μm(1000nm))を成膜して電極膜とした他は、実施例1と同様にして、図1乃至図3に示されるような圧電ミラーデバイスを得た。
【0091】
[比較例]
ミラー部とミラー支持部を、ヤング率が166.0GPaであるSiを用いて形成した他は、実施例2と同様にして、圧電ミラーデバイスを得た。
【0092】
[評 価]
実施例1〜9、および、比較例の各圧電ミラーデバイスにおいて、下部電極をGND電位とし、上部電極に下記の条件で交流電圧(±25V、50Hz)を印加したときのミラー部の振れ角度を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0093】
【表1】
表1に示されるように、実施例1〜9の各圧電ミラーデバイスのミラー部振れ角度は、比較例の圧電ミラーデバイスのミラー部の振れ角度に比べて格段に大きいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
ミラー部の駆動に圧電素子を利用する圧電ミラーデバイスの製造等において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の圧電ミラーデバイスの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示される圧電ミラーデバイスのI−I線における矢視断面図である。
【図3】図1に示される圧電ミラーデバイスのフレーム部を説明するための図である。
【図4】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図5】図4に示される圧電ミラーデバイスのII−II線における矢視断面図である。
【図6】図4に示される圧電ミラーデバイスのフレーム部を説明するための図である。
【図7】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図8】図7に示される圧電ミラーデバイスのIII−III線における矢視断面図である。
【図9】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図10】図9に示される圧電ミラーデバイスのIV−IV線における矢視断面図である。
【図11】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図12】図11に示される圧電ミラーデバイスのV−V線における矢視断面図である。
【図13】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図14】図13に示される圧電ミラーデバイスのVI−VI線における矢視断面図である。
【図15】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図16】図15に示される圧電ミラーデバイスのVII−VII線における矢視断面図である。
【図17】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図18】図17に示される圧電ミラーデバイスの断面図であり、(A)はVIII−VIII線における矢視断面図、(B)はIX−IX線における矢視断面図である。
【図19】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図20】図19に示される圧電ミラーデバイスの断面図であり、(A)はX−X線における矢視断面図、(B)はXI−XI線における矢視断面図である。
【図21】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図でありる。
【図22】図21に示される圧電ミラーデバイスのXII−XII線における矢視断面図である。
【図23】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図でありる。
【図24】図23に示される圧電ミラーデバイスのXIII−XIII線における矢視断面図である。
【図25】本発明の圧電ミラーデバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図26】図25に示される圧電ミラーデバイスの断面図であり、(A)はXIV−XIV線における矢視断面図、(B)はXV−XV線における矢視断面図、(C)はXVI−XVI線における矢視断面図である。
【図27】図25に示される圧電ミラーデバイスの下部電極を説明するための図である。
【図28】図25に示される圧電ミラーデバイスの圧電素子を説明するための図である。
【図29】図25に示される圧電ミラーデバイスの上部電極を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は(A)の鎖線で囲まれた部位の拡大断面図である。
【図30】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図31】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図32】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図33】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図34】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図35】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図36】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図37】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図38】本発明の圧電ミラーデバイスの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図39】本発明の光学機器の一実施形態を説明するための構成図である。
【符号の説明】
【0096】
1…シリコンウエハ
11,11′,21,21′,31,31′,41,41′,51,51′,61,61′,71…圧電ミラーデバイス
12,22,32,42,52,62,72…フレーム部
12a,22a,32a,42a,52a,62a…薄肉部
13,23,33,43,53,63,73A,73B…開口部
13a,23a,43a,53a,63a…切欠き部
14,24,34,44,54,64,74…ミラー部
15,25,35,45,55,65,75,85…ミラー支持部
16,26,36,46,56,66,76,86…駆動部
17,27,37,47,57,67,77,87…下部電極
18,28,38,48,58,68,78,88…圧電素子
19,29,39,49,59,69,79,89…上部電極
101…光学機器
102…光源
103…投影スクリーン
105…光学系
107…圧電ミラーデバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口部を有するフレーム部と、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体であり前記フレーム部に配設されている一対の駆動部と、前記開口部に位置するミラー部と、前記駆動部の駆動に応じて前記ミラー部を前記フレーム部に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部と、を備え、前記ミラー支持部はヤング率が160GPa以下の材料からなり、前記フレーム部は前記駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有し、該切欠き部、薄肉部は前記開口部に接していることを特徴とする圧電ミラーデバイス。
【請求項2】
前記ミラー支持部は前記駆動部を構成する下部電極と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項3】
前記ミラー支持部の端部は前記駆動部を構成する下部電極に係止されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項4】
前記ミラー支持部の端部は前記フレーム部の薄肉部に係止されていることを特徴とする請求項1の記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項5】
前記ミラー支持部は前記駆動部を構成する上部電極と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項6】
前記ミラー部と前記ミラー支持部とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項7】
前記ミラー部は前記ミラー支持部と異なる材質からなるミラー面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項8】
前記ミラー支持部は前記ミラー部を介して反対方向で、かつ、同軸上に位置するように配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項9】
前記ミラー支持部の軸心は前記ミラー部の中心から外れていることを特徴とする請求項8に記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項10】
前記フレーム部を内側フレーム部とし、前記ミラー支持部をX軸ミラー支持部とし、前記駆動部をX軸駆動部とし、さらに、開口部を介して前記内側フレーム部を包囲するように位置する外側フレーム部と、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体であり前記外側フレーム部に配設されている一対のY軸駆動部と、該Y軸駆動部の駆動に応じて前記内側フレーム部を前記外側フレーム部に対して回動可能に支持する一対のY軸ミラー支持部と、を備え、前記Y軸ミラー支持部はヤング率が160GPa以下の材料からなり、前記外側フレーム部はY軸駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有し、該切欠き部、薄肉部は前記開口部に接し、前記X軸と前記Y軸は直交するものであり、前記ミラー部は二軸で回動変位可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項11】
光源と、投影スクリーンと、前記光源からの出射光を前記投影スクリーンへ導く光学系と、を備え、前記光学系は請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の圧電ミラーデバイスを有することを特徴とする光学機器。
【請求項12】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極間に位置するミラー部と、該ミラー部と前記下部電極とを連結する一対のミラー支持部を、ヤング率が160GPa以下で、かつ、融点が後工程で形成する圧電素子の融点より高い導電性材料で作製する工程と、
前記下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項13】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、
前記駆動部間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記駆動部方向に延設された一対のミラー支持部とを、該ミラー支持部の端部が前記駆動部を構成する下部電極に係止されるように、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項14】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記下部電極方向に延設された一対のミラー支持部を、ヤング率が160GPa以下で、かつ、融点が後工程で形成する圧電素子の融点より高い導電性材料で作製する工程と、
前記下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、前記開口部に接するとともに前記ミラー支持部の端部を係止するように薄肉部を形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項15】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、
前記駆動部間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記駆動部方向に延設された一対のミラー支持部とを、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、前記開口部に接するとともに前記ミラー支持部の端部を係止するように薄肉部を形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項16】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子を形成する工程と、
前記圧電素子の表面が露出するようにレジスト層を形成して平坦化した後、前記圧電素子上に位置する上部電極と、前記圧電素子間に位置するミラー部と、該ミラー部と前記上部電極とを連結する一対のミラー支持部とを、ヤング率が160GPa以下の導電材料で形成して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製し、その後、前記レジストを除去する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項1】
中央に開口部を有するフレーム部と、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体であり前記フレーム部に配設されている一対の駆動部と、前記開口部に位置するミラー部と、前記駆動部の駆動に応じて前記ミラー部を前記フレーム部に対して回動可能に支持する一対のミラー支持部と、を備え、前記ミラー支持部はヤング率が160GPa以下の材料からなり、前記フレーム部は前記駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有し、該切欠き部、薄肉部は前記開口部に接していることを特徴とする圧電ミラーデバイス。
【請求項2】
前記ミラー支持部は前記駆動部を構成する下部電極と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項3】
前記ミラー支持部の端部は前記駆動部を構成する下部電極に係止されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項4】
前記ミラー支持部の端部は前記フレーム部の薄肉部に係止されていることを特徴とする請求項1の記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項5】
前記ミラー支持部は前記駆動部を構成する上部電極と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項6】
前記ミラー部と前記ミラー支持部とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項7】
前記ミラー部は前記ミラー支持部と異なる材質からなるミラー面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項8】
前記ミラー支持部は前記ミラー部を介して反対方向で、かつ、同軸上に位置するように配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項9】
前記ミラー支持部の軸心は前記ミラー部の中心から外れていることを特徴とする請求項8に記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項10】
前記フレーム部を内側フレーム部とし、前記ミラー支持部をX軸ミラー支持部とし、前記駆動部をX軸駆動部とし、さらに、開口部を介して前記内側フレーム部を包囲するように位置する外側フレーム部と、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体であり前記外側フレーム部に配設されている一対のY軸駆動部と、該Y軸駆動部の駆動に応じて前記内側フレーム部を前記外側フレーム部に対して回動可能に支持する一対のY軸ミラー支持部と、を備え、前記Y軸ミラー支持部はヤング率が160GPa以下の材料からなり、前記外側フレーム部はY軸駆動部が位置する部位の一部に切欠き部あるいは薄肉部を有し、該切欠き部、薄肉部は前記開口部に接し、前記X軸と前記Y軸は直交するものであり、前記ミラー部は二軸で回動変位可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の圧電ミラーデバイス。
【請求項11】
光源と、投影スクリーンと、前記光源からの出射光を前記投影スクリーンへ導く光学系と、を備え、前記光学系は請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の圧電ミラーデバイスを有することを特徴とする光学機器。
【請求項12】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極間に位置するミラー部と、該ミラー部と前記下部電極とを連結する一対のミラー支持部を、ヤング率が160GPa以下で、かつ、融点が後工程で形成する圧電素子の融点より高い導電性材料で作製する工程と、
前記下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項13】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、
前記駆動部間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記駆動部方向に延設された一対のミラー支持部とを、該ミラー支持部の端部が前記駆動部を構成する下部電極に係止されるように、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項14】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記下部電極方向に延設された一対のミラー支持部を、ヤング率が160GPa以下で、かつ、融点が後工程で形成する圧電素子の融点より高い導電性材料で作製する工程と、
前記下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、前記開口部に接するとともに前記ミラー支持部の端部を係止するように薄肉部を形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項15】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子と上部電極をこの順に積層して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製する工程と、
前記駆動部間に位置するミラー部と、該ミラー部から前記駆動部方向に延設された一対のミラー支持部とを、ヤング率が160GPa以下の材料で作製する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、前記開口部に接するとともに前記ミラー支持部の端部を係止するように薄肉部を形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【請求項16】
シリコンウエハを多面付けに区画し、該シリコンウエハの一方の面において各面付け毎に一対の下部電極と、該下部電極上に圧電素子を形成する工程と、
前記圧電素子の表面が露出するようにレジスト層を形成して平坦化した後、前記圧電素子上に位置する上部電極と、前記圧電素子間に位置するミラー部と、該ミラー部と前記上部電極とを連結する一対のミラー支持部とを、ヤング率が160GPa以下の導電材料で形成して、下部電極と圧電素子と上部電極との積層体である一対の駆動部を作製し、その後、前記レジストを除去する工程と、
前記シリコンウエハの他方の面から各面付け毎にシリコンウエハを所望のパターンで除去し開口部を形成してフレーム部を作製し、前記開口部に前記ミラー部が前記ミラー支持部によって回動可能に支持されるものとし、かつ、前記フレーム部の前記駆動部が位置する部位の一部に、切欠き部あるいは薄肉部を前記開口部に接するように形成して、多面付けの圧電ミラーデバイスとする工程と、
多面付けの圧電ミラーデバイスをダイシングして個片化する工程と、を有することを特徴とする圧電ミラーデバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2009−15300(P2009−15300A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105650(P2008−105650)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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