説明

圧電振動片、圧電振動片の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計

【課題】抵抗値R1を増加させることなく、ショート不良を改善することができる圧電振動片の製造方法を提供すること。
【解決手段】圧電材料からなるウエハを利用して、圧電振動片を製造する方法であって、圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして一対の電極を形成する電極形成工程(S4)が、圧電板の表面に電極膜を成膜する電極膜形成工程(S4a)と、電極膜上にフォトレジスト膜を成膜するフォトレジスト膜形成工程(S4b)と、フォトレジストパターン用に第一開口部が配されたマスクによりフォトレジスト膜に対して露光を行う第一露光工程と(S4c)、第一開口部の一部と重なる位置に第二開口部が配された補正マスクによりさらにフォトレジスト膜に対して露光を行う第二露光工程(S4d)と、を備え、一対の電極の隙間に対応する第二開口部の開口幅は、その隙間に対応する第一開口部の開口幅以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶やタンタル酸リチウム等の圧電材料からなる圧電振動片の製造方法、これにより製造される圧電振動片、これを有する圧電振動子、及び、圧電振動子を有する発振器、電子機器、並びに電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その1つとして、音叉型の圧電振動片を有するものが知られている。この圧電振動片は、平行に配された一対の振動腕部を、互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる振動片である。
【0003】
ところで、近年、携帯電話機等に代表されるように、圧電振動子を内蔵する各種の電子機器の小型化が進んでいる。そのため、圧電振動子を構成する圧電振動片に関しても、より一層の小型化が求められている。そこで、圧電振動片に関しては、振動腕部の長さ或いは基部の長さを短くして、全長をより短くすることが期待されている。
【0004】
しかしながら、基部の長さを短くすることで圧電振動片の全長を短くした場合には、マウント性能が低下するうえ、振動腕部の振動が不安定になり易く、基部を通じて振動漏れ(振動エネルギーの漏洩)が発生し易かった。そのため、CI値(Crystal Impedance)が上昇してしまう恐れがあった。
【0005】
そこで、圧電振動片の全長を短くして小型化を図るためには、基部側ではなく、振動腕部の長さを短くすることが有効である。ところが、振動腕部の長さが短くなると、R1値(直列共振抵抗値)が高くなり、振動特性が悪化する傾向があった。特に、このR1値は、実効抵抗値Reと比例関係にあるため、数値が高くなってしまうと、圧電振動片を低電力で作動させることが困難になってしまう。
【0006】
そこで、R1値を低減させるために、振動腕部の両主面(表裏面)に、振動腕部の長手方向に沿ってそれぞれ溝部を形成することが知られている(特許文献1参照)。
この圧電振動片は、溝部によって一対の振動腕部がそれぞれ断面H型になるように形成されており、一対の励振電極が極力対向するようになっている。そのため、溝部が形成されていない場合と比較して、より効率良く電界が作用し易く、振動損失を低くすることができる。従って、振動特性を改善することができ、R1値を低く抑えることが可能とされている。
このように、R1値の上昇を抑えながら圧電振動片の小型化を図るには、振動腕部に溝部を形成したうえで、該振動腕部の長さを短くすることが有効な手段とされている。
【0007】
このような励振電極は、例えばAu、Cr等からなり、一定の間隔で離間して配置される。そして、この配置は、フォトレジストを使用したフォトリソ技術により形成される。このフォトリソ技術による製造工程は、一対の振動腕部の表面に金属膜をスパッタ等で配置し、その上にフォトレジスト膜を配置し、マスクを介してフォトレジストパターンを露光により形成する。そして、このフォトレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより、一対の励振電極が形成される。
【0008】
ここで、フォトレジスト膜用のレジストは、紫外光に感光感度を持つ流動性を有する樹脂等からなるため、一対の腕部の表面に均一に塗布することは困難である。そのため、図27(a)に示すように、フォトレジスト膜201が局所的に厚い(A部)場合、図27(b)に示すように、露光の際に底面202まで露光されずに、図27(c)に示すように、現像後にフォトレジスト膜201が残ってしまう(B部)。そして、このままエッチング処理を行った場合、一対の励振電極が連結された状態で形成され、電極ショートを起こしてしまう、という問題がある。
【0009】
そこで、表面を均一にするために、露光の際、露光時間を長くして厚み部分を十分に除去させる方法も知られている。また、形成されたフォトレジストパターンに対してレーザを照射してパターンの少なくとも一部の形状を調整する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−120556号公報
【特許文献2】特開2003−133875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の(露光時間を長くする)製造方法では、図28に示すように、フォトレジスト膜201の厚さが正常範囲で成膜された領域(C部)では、本来の除去幅L1に対してこれよりも幅広な除去幅L2で除去されてしまう。すなわち、除去量が過剰となってしまい、パターン寸法が所望の値に比べて細くなってしまい、R1の増加等の特性値に影響を与えてしまうという問題がある。また、上記特許文献2に記載の製造方法では、現像工程後に不均一部の一つ一つにレーザを照射するので、コスト高となるとともに時間もかかってしまうといった問題がある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、抵抗値R1を増加させることなく、電極のショート不良を改善することができる圧電振動片の製造方法、これにより製造される圧電振動片、これを有する圧電振動子、及び、圧電振動子を有する発振器、電子機器、並びに電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、圧電材料からなるウエハを利用して、圧電振動片を製造する方法であって、前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、圧電板の外形形状を形成する外形形成工程と、前記圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして一対の電極を形成する電極形成工程と、を備え、該電極形成工程が、前記圧電板の表面に電極膜を成膜する電極膜形成工程と、前記電極膜上にフォトレジスト膜を成膜するフォトレジスト膜形成工程と、フォトレジストパターン用に第一開口部が配されたマスクにより前記フォトレジスト膜に対して露光を行う第一露光工程と、前記第一開口部の一部と重なる位置に第二開口部が配された補正マスクによりさらに前記フォトレジスト膜に対して露光を行う第二露光工程と、を備え、前記一対の電極の隙間に対応する前記第二開口部の開口幅は、前記隙間に対応する前記第一開口部の開口幅以下であることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、フォトレジスト膜形成工程にて成膜されるフォトレジスト膜の厚さが不均一となり、第一露光工程にてフォトレジスト膜を十分に除去しきれない箇所があっても、第二開口部の開口幅が、第一開口部の開口幅以下なので、残すべきフォトレジスト膜の表面積を削減することなく、第二露光工程によって除去すべきフォトレジスト膜を十分に除去することができる。したがって、一対の電極のショート不良を防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、前記外形形成工程の際、平行配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部を一体的に固定する基部と、前記一対の振動腕部の主面上に、該振動腕部の基端部から先端部に向かって縦長に形成された溝部と、を有する圧電板の外形形状が形成され、前記一対の電極が、前記溝部内に形成された主面電極部と、前記振動腕部の側面上に形成された側面電極部と、を有し、前記一対の電極の隙間は、前記主面電極部と前記側面電極部との隙間であることを特徴とする。
【0016】
一般に、圧電振動片における振動腕部の側面と溝部との間隔は、R1値を低く抑えるために、極めて狭く形成される。そのため、溝部内に形成される主面電極部と、振動腕部の側面上に形成される側面電極部との隙間は、極めて狭くなる。
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、主面電極部と側面電極部との隙間に対応する領域に第二開口部が配されているので、第二露光工程によって前記隙間のフォトレジスト膜を確実に除去することができる。したがって、当該隙間における主面電極部と側面電極部とのショート不良を防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、前記第二開口部の前記開口幅が、前記第一開口部の前記開口幅の0.6倍以上0.7倍以下であることを特徴とする。
この発明に係る圧電振動片の製造方法においては、各電極間のショート不良防止用に、より好適な隙間を確保することができる。
【0018】
一方、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、前記外形形成工程の際、平行配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部を一体的に固定する基部と、を有する圧電板の外形形状が形成され、前記一対の振動腕部の叉部に相当する領域では、前記第一開口部の前記開口幅と前記第二開口部の前記開口幅とが略同一であることを特徴とする。
【0019】
叉部の近傍では、電極膜の除去量が過剰となっても、R1の増加等の特性値に影響しない。そこで、第一開口部の開口幅と第二開口部の開口幅とを略同一にして、前記隙間のフォトレジストを除去することで、電極間のショート不良をより確実に防止することができる。
【0020】
そして、この圧電振動片の製造方法によって製造される圧電振動片であれば、電極間の短絡を好適に抑えることができる。
【0021】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を有することを特徴とする。
【0022】
この発明に係る圧電振動子においては、電極間の短絡の可能性が低く、安定した作動の信頼性が確保された圧電振動片を備えているので、信頼性の向上した高品質な圧電振動子とすることができる。
【0023】
本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0024】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、同様に信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、抵抗値R1を増加させることなく、ショート不良を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る圧電振動片の一実施形態を示す上面図である。
【図2】図1に示す圧電振動片の拡大図であって、振動腕部の基端部を中心に拡大した図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動片の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動片を製造する際のフローチャートである。
【図5】図1に示す圧電振動片を製造する際の一工程を示す図であって、ウエハの両面にエッチング保護膜を形成した状態を示す図である。
【図6】図5に示す状態から、エッチング保護膜を圧電振動片の圧電板の外形形状にパターニングした状態を示す図である。
【図7】図6に示す断面矢視B−B図である。
【図8】図7に示す状態から、エッチング保護膜をマスクとしてウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図9】図8に示す状態から、エッチング保護膜をさらにパターニングした状態を示す図である。
【図10】図9に示す状態から、再度パターニングされたエッチング保護膜をマスクとしてウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態から、電極膜を形成した状態を示す図である。
【図12】図11に示す状態から電極膜上にフォトレジスト膜を塗布した後、第一露光工程で使用するマスクを示す平面図である。
【図13】第一露光工程終了後、さらに第二露光工程で使用する補正マスクを示す平面図である。
【図14】図11に示す状態から、電極膜上にフォトレジスト膜を形成し、該フォトレジスト膜をパターニングした状態を示す図である。
【図15】図14に示す状態から、パターニングしたフォトレジスト膜をマスクとして、電極膜をエッチング加工した状態を示す図である。
【図16】本発明に係る電極形成工程の状態を示す図である。
【図17】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す外観図である。
【図18】図17に示す圧電振動子の内部構造図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図19】図18に示すC−C線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図20】図19に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図21】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図22】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図23】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図24】ATカット圧電振動片を示す外観斜視図である。
【図25】図24に示す圧電振動片を製造する際に、第一露光工程で使用するマスクを示す平面図である。
【図26】図25に示すマスクを使用後、第二露光工程で使用する補正マスクを示す平面図である。
【図27】従来の圧電振動片の製造方法における電極形成工程の状態を示す図である。
【図28】図27に示す状態を改善するために従来行われた圧電振動片の製造方法における電極形成工程の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(圧電振動片)
以下、本発明に係る圧電振動片の一実施形態を、図1から図16を参照して説明する。
本実施形態の圧電振動片1は、例えば、表面実装型のガラスパッケージタイプの圧電振動子や、シリンダーパッケージタイプの圧電振動子等に組み込まれるものであって、図1及び図2に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の圧電板2を備えている。
なお、図1は、圧電振動片1の表面側の平面図である。図2は、図1に示す振動腕部3、4の基端部を中心に拡大した図である。
【0028】
圧電板2は、平行に配置された一対の振動腕部3、4と、該一対の振動腕部3、4の基端部側を一体的に固定する基部5と、を備えている。また、これら一対の振動腕部3、4の主面(表裏面)上には、振動腕部3、4の基端部から先端部に向かって、一定幅で縦長の溝部6が形成されている。この溝部6は、振動腕部3、4の基端部側から中間部を越える範囲に亘って形成されている。これにより、一対の振動腕部3、4は、それぞれ図3及び図4に示すように断面H型となっている。
なお、図3は、図2に示すA−A線に沿った断面図である。
【0029】
このように形成された圧電板2の外表面上には、図1及び図2に示すように、一対の励振電極10、11及び一対のマウント電極12、13が、叉部15を挟んで形成されている。このうち、一対の励振電極10、11は、電圧が印加されときに一対の振動腕部3、4を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、主に一対の振動腕部3、4の外表面にそれぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。
具体的には、図3に示すように、一方の励振電極10が、主に一方の振動腕部3の溝部6内と他方の振動腕部4の側面上とに形成され、他方の励振電極11が、主に一方の振動腕部3の側面上と他方の振動腕部4の溝部6内とに形成されている。
【0030】
ここで、この励振電極10、11についてより詳細に説明する。
本実施形態の励振電極10、11は、図1から図3に示すように、それぞれ主面電極部20と、側面電極部21と、接続電極部22と、で構成されている。
【0031】
主面電極部20は、溝部6内と、該溝部6を囲む振動腕部3、4の主面上とに形成された電極である。側面電極部21は、振動腕部3、4の側面上と、該側面に連続する振動腕部3、4の主面上に形成された電極である。この際、振動腕部3、4の内方(叉部15側)の側面に形成された側面電極部21と、振動腕部3、4の外方に向いた側面に形成された側面電極部21とは、図1に示すように、溝部6よりも先端部側に形成された接続電極部22を介して導通するようになっている。
【0032】
主面電極部20と側面電極部21とは、図3に示すように、一定の間隔である短絡防止用の隙間W0を設けて相互に離して配置されている。この隙間W0は、例えば15μmという極めて狭い間隔となっている。このように隙間W0が正確に形成されていることにより、主面電極部20と側面電極部21との短絡等が防止されることになる。一方、叉部15の近傍では、一方の振動腕部3の内側面に形成された側面電極部21と、他方の振動腕部4の内側面に形成された側面電極部21とが、叉部15の幅に相当する隙間U0を設けて相互に離して配置されている。
【0033】
接続電極部22は、図2及び図3に示すように、側面電極部21に接続されるように一方の振動腕部3の主面上に形成されると共に、表面側で、基部5の主面上を経由して他方の振動腕部4側に引き回された後、該振動腕部4側の主面電極部20に接続されるように形成された電極である。
この接続電極部22によって、表面側で、一方の振動腕部3側の主面電極部20と他方の振動腕部4側の側面電極部21とが接続されていると共に、裏面側で、一方の振動腕部3側の側面電極部21と他方の振動腕部4側の主面電極部20とが接続されている。
なお、図1、図2は、圧電振動片1の表面側を図示しているが、裏面側の電極パターンは表面側の電極パターンに対して左右対称とされている。
【0034】
一対のマウント電極12、13は、図2に示すように、基部5の主面及び側面を含む外表面上に形成されており、引き出し電極16を介して一対の励振電極10、11にそれぞれ電気的に接続されている。よって、一対の励振電極10、11は、このマウント電極12、13を介して電圧が印加されるようになっている。
【0035】
なお、上述した励振電極10、11、マウント電極12、13及び引き出し電極16は、例えば、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。但し、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロム(NiCr)の積層膜の表面にさらに金の薄膜を積層しても構わないし、クロム、ニッケル、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の単層膜でも構わない。
また、一対の振動腕部3、4の先端部には、図1に示すように、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜17(粗調膜17a及び微調膜17bからなる)が形成されている。この重り金属膜17を利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部3、4の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
【0036】
このように構成された圧電振動片1を作動させる場合には、一対の励振電極10、11間に所定の駆動電圧を印加して電流を流すことで、一対の振動腕部3、4を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この振動を、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0037】
(圧電振動片の製造方法)
次に、上述した圧電振動片1を、圧電材料からなるウエハを利用して製造する方法について、図4に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
まずポリッシングが終了し、所定の厚みに高精度に仕上げられたウエハSを準備する(S1)。次いで、このウエハSをフォトリソ技術によってエッチングして、該ウエハSに複数の圧電板2の外形形状を形成する外形形成工程を行う(S2)。この工程について、具体的に説明する。
【0038】
まず、図5に示すように、ウエハSの両面にエッチング保護膜30をそれぞれ成膜する(S2a)。このエッチング保護膜30としては、例えば、クロム(Cr)を数μm成膜する。次いで、エッチング保護膜30上に図示しないフォトレジスト膜を、フォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、一対の振動腕部3、4と、基部5とで構成される圧電板2の周囲を囲むようにパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜30を選択的に除去する。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。
【0039】
これにより、図6及び図7に示すように、エッチング保護膜30を圧電板2の外形形状、即ち、一対の振動腕部3、4及び基部5の外形形状に沿ってパターニングすることができる(S2b)。この際、複数の圧電板2の数だけパターニングを行う。なお、図7から図10は、図6に示すB−B線に沿った断面を示す図である。
【0040】
次いで、パターニングされたエッチング保護膜30をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する(S2c)。これにより、図8に示すように、エッチング保護膜30でマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電板2の外形形状を形作ることができる。この時点で、外形形成工程(S2)が終了する。
【0041】
続いて、一対の振動腕部3、4の主面上に溝部6を形成する溝部形成工程を行う(S3)。具体的には、上述した外形形成時と同様に、エッチング保護膜30上にフォトレジスト膜を成膜する。そして、フォトリソグラフィ技術によって、溝部6の領域を空けるようにフォトレジスト膜をパターニングする。そして、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、エッチング保護膜30を選択的に除去する。その後、フォトレジスト膜を除去することで、図9に示すように、既にパターニングされたエッチング保護膜30を、溝部6の領域を空けた状態でさらにパターニングすることができる。
【0042】
次いで、この再度パターニングされたエッチング保護膜30をマスクとして、ウエハSをエッチング加工した後、マスクとしていたエッチング保護膜30を除去する。これにより、図10に示すように、一対の振動腕部3、4の両主面上に溝部6をそれぞれ形成することができる。
なお、複数の圧電板2は、後に行う切断工程を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。
【0043】
(電極形成工程)
次いで、図示しないマスクを通した露光を行うことで、複数の圧電板2の外表面上に電極膜をパターニングして、励振電極10、11、引き出し電極16、マウント電極12、13をそれぞれ形成する電極形成工程を行う(S4)。この工程について、詳細に説明する。
【0044】
電極形成工程では、まず、図11に示すように、溝部6が形成された圧電板2の外表面に電極膜31を、蒸着やスパッタリング等により成膜する(S4a)。なお、図11、図14、及び図15は、一方の振動腕部3のみを示している。
【0045】
次に、電極膜31上に図示しないフォトレジスト膜を成膜するフォトレジスト膜形成工程を行う(S4b)。このフォトレジストは紫外光に感光感度を持つ樹脂をベースとした化合物であり、本実施形態ではポジ型のフォトレジストを採用している。フォトレジストは流動性を有するため、スプレーコート等によって塗布される。
【0046】
続いて、図12に示すように、第一開口部32が形成されたマスク33により、図示しないフォトレジスト膜に対して紫外光を露光する第一露光工程を行う(S4c)。この際、電極膜31を残しておきたい部分が、図示しないフォトレジスト膜によって被膜されるようにパターニングされる。マスク33には、フォトレジスト膜を残したい部分に遮光部が形成され、フォトレジスト膜を除去すべき部分に第一開口部32が形成されている。ここで、第一開口部32は、主面電極部20と側面電極部21との隙間W0に対応する部分が、開口幅W1に形成されている。また第一開口部32は、圧電振動片1の叉部15に対応する部分Pに形成されている。ここでは、一方の振動腕部3の内側面に形成される側面電極部21と、他方の振動腕部4の内側面に形成される側面電極部21との隙間U0に対応する部分が、開口幅U1に形成されている。
【0047】
図16(a)は第一露光工程前の状態であり、図16(b)は第一露光工程後の状態である。フォトレジスト膜36が所定の厚さに形成されている部分(C部)では、第一露光工程により厚さ方向全体が露光される。ところが、フォトレジスト膜36が局所的に厚い部分(A部)では、第一露光工程により厚さ方向全体が露光されずに、フォトレジスト膜36が残ってしまう。
【0048】
(第二露光工程)
そこで、図13に示すように、第二開口部34が配された補正マスク35により、さらにフォトレジスト膜に対して紫外光を露光する第二露光工程を行う(S4d)。補正マスク35の第二開口部34は、マスク33の第一開口部32の一部と重なる位置に形成されている。まず第二開口部34は、主面電極部20と側面電極部21との隙間W0に対応する部分に形成されている。この部分における第二開口部34の開口幅W2は、第一開口部32の開口幅W1以下に形成されている。開口幅W2は、開口幅W1の0.6倍以上0.7倍以下に形成することが望ましい。なお第二露光工程での露光条件は、第一露光工程と同じである。
【0049】
図16(c)は第二露光工程後の状態であり、図16(d)は後述する現像工程後の状態である。フォトレジスト膜36が局所的に厚い部分でも、第二露光工程により通算露光時間が延びることで、厚さ方向全体が露光される。したがって、主面電極部20と側面電極部21との隙間W0に対応する部分のフォトレジスト膜を確実に除去することができる。その結果、後述するメタルエッチング工程を経て、主面電極部20と側面電極部21との隙間W0を確保することができる。
【0050】
一般に、圧電振動片1における振動腕部3,4の側面と溝部6との間隔は、R1値を低く抑えるため、極めて狭く形成される。そのため、溝部6内に形成された主面電極部20と、振動腕部3,4の側面上に形成された側面電極部21との隙間W0は、極めて狭くなる。これに対して、本実施形態の圧電振動片の製造方法によれば、当該隙間W0における主面電極部20と側面電極部21とのショート不良を確実に防止することができる。
【0051】
しかも、補正マスク35の第二開口部34の開口幅W2は、マスク33の第一開口部32の開口幅W1以下に形成されているので、第二露光工程により通算露光時間が延びても、露光範囲が隙間W0を超えることはない。したがって、主面電極部20および側面電極部21となる領域にフォトレジスト膜を残すことができる。その結果、後述するメタルエッチング工程を経て、主面電極部20および側面電極部21を所定形状に形成することができるので、R1値を低く抑えることができる。
【0052】
図13に戻り、第二開口部34は、圧電振動片1の叉部15に対応する部分P´に形成されている。すなわち、一方の振動腕部3の内側面の側面電極部21と、他方の振動腕部4の内側面の側面電極部21との、隙間U0に対応する部分に形成されている。この部分における第二開口部34の開口幅U2は、第一開口部32の開口幅U1と略同一に形成されている。この補正マスク35を使用して第二露光工程を行うことで、通算露光時間が延びるので、叉部15のフォトレジスト膜の全部が露光される。したがって、叉部15のフォトレジスト膜を確実に除去することができる。その結果、後述するメタルエッチング工程を経て、一方の振動腕部3の内側面の側面電極部21と、他方の振動腕部4の内側面の側面電極部21との、隙間U0を確保することができる。
【0053】
なお叉部15の近傍では、電極膜の除去量が過剰となっても、R1の増加等の特性値に影響しない。そこで、第二開口部34の開口幅U2を第一開口部32の開口幅U1と略同一にして、叉部15のフォトレジスト膜を除去することで、電極間のショート不良をより確実に防止することができる。
【0054】
露光後、現像液により不要部分を除去して加熱工程等を経て図示しないフォトレジスト膜を固化させる(S4e)。そして、メタルエッチング(S4f)により、図14に示すように、電極形成部分に対応する形状のフォトレジスト膜36によるフォトレジストパターンを形成する。こうして、フォトレジスト膜36を除去することによって(S4g)、図15に示すように励振電極10、11、引き出し電極16、マウント電極12、13を形成して電極形成工程(S4)を終了する。
【0055】
最後に、ウエハSと圧電板2とを連結していた図示しない連結部を切断して、複数の圧電板2をウエハSから切り離して小片化する切断工程を行う(S5)。これにより、1枚のウエハSから、音叉型の圧電振動片1を一度に複数製造することができる。この時点で、圧電振動片1の製造工程が終了し、図1に示す圧電振動片1を得る。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る圧電振動片の製造方法においては、フォトレジスト膜形成工程にて成膜されるフォトレジスト膜の厚さが不均一となり、第一露光工程にてフォトレジスト膜を十分に除去しきれない箇所があっても、第二開口部34の開口幅が、第一開口部32の開口幅以下なので、残すべきフォトレジスト膜の表面積を削減することなく、第二露光工程によって除去すべきフォトレジスト膜を十分に除去することができる。したがって、一対の電極のショート不良を防止することができる。
【0057】
(ATカット圧電振動片の製造方法)
本実施形態に係る圧電振動片の製造方法を、ATカット圧電振動片(以下「AT振動片」という。)に適用することもできる。
図24に示すAT振動片142は、長方形状の圧電板149を備えている。圧電板149の中央部には、矩形状の励振電極140が形成されている。圧電板149の一辺の両端部には、一対の実装電極141が形成されている。励振電極140および一対の実装電極141は、圧電板149の両面に形成されている。両面の実装電極141は、圧電板149の側面に形成された側面電極144によって相互に接続されている。一対の側面電極144は、隙間T0を置いて配置されている。そして、圧電板149の表面の励振電極141は一方の実装電極141に接続され、圧電板149の裏面の励振電極141は他方の実装電極141に接続されている。
【0058】
第一露光工程は、図25に示すマスク143を使用して行う。マスク143には、第一開口部146が形成されている。第一開口部146は、一対の側面電極144の隙間T0に対応する部分が、開口幅T1に形成されている。第一露光工程では、この開口幅T1を通して、圧電板149の側面に配置されたフォトレジスト膜を露光するので、隙間T0に配置されたフォトレジスト膜の一部が露光されずに残ってしまう可能性がある。この場合には、一対の側面電極144の隙間T0が連結されてショート不良が発生することになる。
【0059】
そこで、図26に示す補正マスク145を使用して第二露光工程を行う。補正マスク145には、第二開口部147が形成されている。第二開口部147は、一対の側面電極144の隙間T0に対応する部分に形成されている。この部分における第二開口部147の開口幅T2は、第一開口部146の開口幅T1と略同一に形成されている。なお、隙間T0以外の圧電板149の側面にもフォトレジスト膜が残る可能性があるため、隙間T0以外の側面に対応する部分にも第二開口部147が形成されている。
【0060】
この補正マスク145を使用して第二露光工程を行うことで、通算露光時間が延びるので、一対の側面電極144の隙間T0に配置されたフォトレジスト膜の全部が露光される。したがって、隙間T0のフォトレジスト膜を確実に除去することができる。その結果、一対の側面電極144の隙間T0を確保することができる。なお一対の側面電極144の隙間T0では、電極膜の除去量が過剰となっても、R1の増加等の特性値に影響しない。そこで、第二開口部147の開口幅T2を第一開口部146の開口幅T1と略同一にして、隙間T0のフォトレジスト膜を除去することで、一対の側面電極144のショート不良をより確実に防止することができる。
【0061】
(ガラスパッケージタイプの圧電振動子)
次に、本発明に係る圧電振動子の一実施形態を、図17から図20を参照して説明する。なお、本実施形態では、圧電振動子の一例として、表面実装型のガラスパッケージタイプの圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子40は、図17から図20に示すように、ベース基板41とリッド基板42とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に上述した音叉型の圧電振動片1が収納された圧電振動子40である。
【0062】
なお、図17は、圧電振動子40の外観斜視図である。図18は、図17に示す圧電振動子40の内部構造図であって、リッド基板42を取り外した状態の上面図である。図19は、図18に示すD−D線に沿った圧電振動子40の断面図である。図20は、圧電振動子40の分解斜視図である。なお、図20では、圧電振動片1から各電極の図示を省略している。
【0063】
圧電振動片1は、金等のバンプBを利用して、ベース基板41の上面にバンプ接合によってマウントされている。より具体的には、ベース基板41の上面にパターニングされた後述する引き回し電極48、49上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極12、13がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片1は、ベース基板41の上面から浮いた状態で支持されると共に、マウント電極12、13と引き回し電極48、49とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0064】
リッド基板42は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図17、図19及び図20に示すように、板状に形成されている。そして、ベース基板41が接合される接合面側には、圧電振動片1が収まる矩形状の凹部42aが形成されている。この凹部42aは、両基板41、42が重ね合わされたときに、圧電振動片1を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部42aである。そして、リッド基板42は、この凹部42aをベース基板41側に対向させた状態で該ベース基板41に対して陽極接合されている。
【0065】
ベース基板41は、リッド基板42と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図17から図20に示すように、リッド基板42に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
このベース基板41には、該ベース基板41を貫通する一対のスルーホール43、44が形成されている。この際、一対のスルーホール43、44は、キャビティC内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、マウントされた圧電振動片1の基部5側に一方のスルーホール43が位置し、振動腕部3、4の先端部側に他方のスルーホール44が位置するように形成されている。
また、本実施形態では、ベース基板41を真っ直ぐに貫通したスルーホール43、44を例に挙げて説明するが、この場合に限られず、例えばベース基板41の下面に向かって漸次径が縮径するテーパー状に形成しても構わない。いずれにしても、ベース基板41を貫通していれば良い。
【0066】
そして、これら一対のスルーホール43、44には、該スルーホール43、44を埋めるように形成された一対の貫通電極45、46が形成されている。この貫通電極45、46は、スルーホール43、44を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持していると共に、後述する外部電極50、51と引き回し電極48、49とを導通させる役割を担っている。
ベース基板41の上面側(リッド基板42が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜47と、一対の引き回し電極48、49とがパターニングされている。このうち接合膜47は、リッド基板42に形成された凹部42aの周囲を囲むようにベース基板41の周縁に沿って形成されている。
【0067】
また、一対の引き回し電極48、49は、一対の貫通電極45、46のうち、一方の貫通電極45と圧電振動片1の一方のマウント電極12とを電気的に接続すると共に、他方の貫通電極46と圧電振動片1の他方のマウント電極13とを電気的に接続するようにパターニングされている。
より詳しく説明すると、図18から図20に示すように、一方の引き回し電極48は、圧電振動片1の基部5の真下に位置するように一方の貫通電極45の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極49は、一方の引き回し電極48に隣接した位置から、振動腕部4に沿って該振動腕部4の先端部側に引き回しされた後、他方の貫通電極46の真上に位置するように形成されている。
【0068】
そして、これら一対の引き回し電極48、49上にバンプBが形成されており、該バンプBを利用して圧電振動片1がマウントされている。これにより、圧電振動片1の一方のマウント電極12が、一方の引き回し電極48を介して一方の貫通電極45に導通し、他方のマウント電極13が、他方の引き回し電極49を介して他方の貫通電極46に導通するようになっている。
【0069】
また、ベース基板41の下面には、図17、図19及び図20に示すように、一対の貫通電極45、46に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極50、51が形成されている。これにより、一対の外部電極50、51は、一対の貫通電極45、46及び一対の引き回し電極48、49を介して圧電振動片1の一対の励振電極10、11に電気的に接続されている。
【0070】
このように構成された圧電振動子40を作動させる場合には、一対の外部電極50、51間に、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片1の励振電極10、11に電流を流すことができ、一対の振動腕部3、4を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0071】
本実施形態の圧電振動子40によれば、電極間の短絡の可能性が低く、安定した作動の信頼性が確保された圧電振動片1を備えているので、信頼性が向上した高品質な圧電振動子とすることができる。
また、この圧電振動子40は、圧電振動片1をキャビティC内に密閉した表面実装型のガラスパッケージタイプであるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片1を振動させることができ、高品質化を図ることができる。加えて、表面実装型であるので、実装を容易に行うことができると共に、実装後の安定性に優れている。
【0072】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図21を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図21に示すように、上述した圧電振動子40を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。なお、圧電振動子60を内蔵しても構わない。
【0073】
この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子40の圧電振動片1が実装されている。
これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子40は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0074】
このように構成された発振器100において、圧電振動子40に電圧を印加すると、該圧電振動子40内の圧電振動片1が振動する。この振動は、圧電振動片1が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子40が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0075】
本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子40を備えているので、発振器100自体の信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。また、これに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0076】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図22を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子40を有する携帯情報機器110を例にして説明する。なお、圧電振動子60を内蔵しても構わない。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0077】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。
この携帯情報機器110は、図22に示すように、圧電振動子40と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0078】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム64全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0079】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子40とを備えている。圧電振動子40に電圧を印加すると圧電振動片1が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0080】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0081】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0082】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0083】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0084】
本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子40を備えているので、携帯情報機器自体の信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。また、これに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0085】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計130の一実施形態について、図23を参照して説明する。本実施形態の電波時計130は、図23に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子40を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。なお、圧電振動子60を内蔵しても構わない。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0086】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子40を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子40は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0087】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0088】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子40を必要とする。
【0089】
本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子40を備えているので、電波時計自体の信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。また、これに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0090】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、音叉型の圧電振動片1およびATカット圧電振動片を例にして説明したが、本発明に係る圧電振動片の製造方法を使用して他の圧電振動片を製造することもできる。
【符号の説明】
【0091】
T0,U0,W0…隙間
T1,U1,W1…開口幅
T2,U2,W2…開口幅
S2…外形形成工程
S4…電極形成工程
S4a…電極膜形成工程
S4b…フォトレジスト膜形成工程
S4c…第一露光工程
S4d…第二露光工程
1、142…圧電振動片
2…圧電板
3、4…振動腕部
5…基部
6…溝部
15…叉部
20…主面電極部
21…側面電極部
22…接続電極部
32…第一開口部
33、143…マスク
34…第二開口部
35、145…補正マスク
36…フォトレジスト膜
40…圧電振動子
100…発振器
110…携帯情報機器(電子機器)
130…電波時計
140…励振電極(電極)
141…実装電極(電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料からなるウエハを利用して、圧電振動片を製造する方法であって、
前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、圧電板の外形形状を形成する外形形成工程と、
前記圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして一対の電極を形成する電極形成工程と、
を備え、
該電極形成工程が、前記圧電板の表面に電極膜を成膜する電極膜形成工程と、
前記電極膜上にフォトレジスト膜を成膜するフォトレジスト膜形成工程と、
フォトレジストパターン用に第一開口部が配されたマスクにより前記フォトレジスト膜に対して露光を行う第一露光工程と、
前記第一開口部の一部と重なる位置に第二開口部が配された補正マスクによりさらに前記フォトレジスト膜に対して露光を行う第二露光工程と、を備え、
前記一対の電極の隙間に対応する前記第二開口部の開口幅は、前記隙間に対応する前記第一開口部の開口幅以下である、
ことを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項2】
前記外形形成工程の際、平行配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部を一体的に固定する基部と、前記一対の振動腕部の主面上に、該振動腕部の基端部から先端部に向かって縦長に形成された溝部と、を有する圧電板の外形形状が形成され、
前記一対の電極が、前記溝部内に形成された主面電極部と、前記振動腕部の側面上に形成された側面電極部と、を有し、
前記一対の電極の隙間は、前記主面電極部と前記側面電極部との隙間であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項3】
前記第二開口部の前記開口幅が、前記第一開口部の前記開口幅の0.6倍以上0.7倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項4】
前記外形形成工程の際、平行配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部を一体的に固定する基部と、を有する圧電板の外形形状が形成され、
前記一対の振動腕部の叉部に相当する領域では、前記第一開口部の前記開口幅と前記第二開口部の開口幅とが略同一であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の圧電振動片の製造方法によって製造されることを特徴とする圧電振動片。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動片を有することを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項6に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項6に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−175673(P2012−175673A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38832(P2011−38832)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】