説明

地図データ作成方法、地図データ作成装置、及び記憶媒体

【課題】オーバーラップ領域のない地図データであっても、経路探索に最適な範囲で地図データを読み込むことができるようにし、経路品質の向上及び地図データの単純化を両立する。
【解決手段】計算部11は地図データベース10に格納されている各基本区画の地図データに拡張領域情報を付加し地図データベース12へ出力する。まず処理対象の基本区画から延出している拡張対象道路を特定する(S100)。拡張対象道路を含む基本区画及び処理対象の基本区画を包含する拡張領域を特定する(S101)。拡張領域を基本区画と同じ大きさで分割した各分割領域に連番号を設定する(S102)。拡張対象道路を含む分割領域の番号を特定する(S103)。処理対象の基本区画の地図データに、拡張領域の大きさ及び位置を特定する情報と、拡張対象道路を含む分割領域の番号を特定する情報からなる拡張領域情報を付加し、これを出力する(S104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索用の地図データの作成方法、作成装置、及び、その作成された地図データを記憶する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の基本ブロックに分割された地図において、中心となる1つの基本ブロックと周辺の他の基本ブロックと重複するオーバーラップ領域を含む地図ユニットの集合として記録された経路探索用の地図データが開示されている。
【0003】
このように構成された地図データを経路探索に用いることで、経路探索に最適な範囲条件を満たすように地図データを読み込むことができるようになり、不自然な遠回り経路が選出されるのを防止しながらも地図読込処理の回数を低減し、探索時間を短縮できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−248474
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、個々の基本ブロックごとに他の基本ブロックと重複するオーバーラップ領域を含むようにして地図データに冗長性を持たせることにより、基本ブロックごとに地図データが重複する分だけデータサイズが余分に大きくなるという問題がある。
【0006】
また、地図データの一部分のみを更新する、いわゆる差分更新を実施しようとしたとき、基本ブロックごとにオーバーラップ領域が存在するため、差分更新をする手順が複雑になり、更新が難しいという問題もある。
【0007】
これらの問題は、基本ブロックごとにオーバーラップ領域を持つ構成を採用したことに起因するものであり、これを回避するには、基本ブロックごとにオーバーラップ領域を持たない地図データを用いることになる。その場合、経路探索をする際にどの範囲まで地図データを読み込むのかがナビゲーション装置側のアプリケーションに委ねられることになり、必ずしも経路探索に最適な範囲条件を満たすように地図データを読み込むことができるとは限らない。そのため、オーバーラップ領域を持つ地図データによって経路探索を行った場合と比べて、経路品質が劣る場合がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされており、区画ごとにオーバーラップ領域を持たない地図データであっても、ナビゲーション装置側で経路探索に最適な範囲で地図データを読み込むことができるようにし、経路品質の向上及び地図データの単純化の両立を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の地図データ作成方法は、複数の矩形の基本区画に分割された道路地図データとして用意された元データを用いて経路探索用の道路地図データを作成するための方法であり、下記の手順を備えることを特徴とする。
【0010】
処理対象の基本区画から延出している拡張対象道路を特定するステップ。特定した拡張対象道路が含まれている全ての基本区画及び処理対象の基本区画を包含する矩形の拡張領域を特定するステップ。特定した拡張領域をそこに含まれる標準の基本区画と同じ大きさで分割した各分割領域に対して、一定の規則に従って連番号を設定するステップ。拡張領域内の分割領域のうち、拡張対象道路が含まれる分割領域に設定された番号を特定するステップ。処理対象の基本区画に対応する道路地図データに、拡張領域の大きさ及び位置を特定するための情報と、拡張対象道路が含まれている分割領域の番号を特定するための情報とを付加し、これを処理結果として出力するステップ。
【0011】
このような地図データ作成方法によれば、経路探索対象となる基本区画から拡張して読み込むべき周辺地図の範囲を定義する情報を、個々の基本区画ごとの道路地図データに付加することができる。なお、拡張領域を特定するための基準となる拡張対象道路としては、経路探索時における一回の地図読み込み処理によって取得する道路地図データが経路探索に最適な範囲となるような条件を満たすものを選定すればよく、その条件は地図作成者側の意図により様々なものを採用し得る。その具体例として、処理対象の基本区画から延出して特定の幹線道路へ接続する道路や、階層化された道路地図データにおいて各階層の地図上にある上位階層移行点まで到達する道路等が挙げられる。
【0012】
このように、道路地図データの基本区画ごとに従来のオーバーラップ領域を持たせる代わりに、経路探索対象の基本区画から拡張して読み込むべき周辺地図の範囲を定義する情報を付加することで、ナビゲーション装置側で経路探索に最適な範囲で道路地図データを読み込むことができるようなる。また、拡張して読み込むべき周辺地図の範囲を定義する情報は、拡張領域の大きさや位置、読み込み対象となる分割領域の番号といった単純なデータのみで構成されており、道路地図データを重複して記録する従来のオーバーラップ領域よりも格段にデータ量が小さくて済む。さらに、オーバーラップ領域を持たないことにより、道路地図データの差分更新も容易になる。よって、本発明によれば、経路品質の向上及びデータの単純化を両立した道路地図データを作成できる。
【0013】
つぎに、上記目的を達成するためになされた請求項2に記載の地図データ作成装置は、複数の矩形の基本区画に分割された道路地図データとして用意された元データを用いて経路探索用の道路地図データを作成するための装置であり、拡張対象道路特定手段と、拡張領域特定手段と、番号設定手段と、拡張対象区画特定手段と、出力手段とを備える。
【0014】
拡張対象道路特定手段は、処理対象の基本区画から延出している拡張対象道路を特定する。拡張領域特定手段は、拡張対象道路特定手段によって特定した拡張対象道路が含まれている全ての基本区画及び処理対象の基本区画を包含する矩形の拡張領域を特定する。番号設定手段は、拡張領域特定手段によって特定した拡張領域をそこに含まれる標準の基本区画と同じ大きさで分割した各分割領域に対して、一定の規則に従って連番号を設定する。拡張対象区画特定手段は、拡張領域内の分割領域のうち、拡張対象道路が含まれる分割領域に設定された番号を特定する。出力手段は、処理対象の基本区画に対応する道路地図データに、拡張領域の大きさ及び位置を特定するための情報と、拡張対象区画特定手段によって特定された拡張対象道路が含まれている分割領域の番号を特定するための情報とを付加し、これを処理結果として出力する。
【0015】
このように構成された地図データ作成装置によれば、請求項1に記載の地図データ作成方法に関して記述した効果と同様の効果を得られる。
つぎに、請求項3に記載の記憶媒体は、請求項1に記載の地図データ作成方法によって作成された道路地図データを記憶するものであり、その道路地図データは下記のような特徴を有する。
【0016】
道路地図データは、複数の矩形の基本区画に分割されている。そして、個々の基本区画に対応する道路地図データには、その基本区画から延出している特定の拡張対象道路を含む全ての基本区画及び当該基本区画を包含する矩形の拡張領域の大きさ及び位置を特定するための情報と、その拡張領域をそこに含まれる標準の基本区画と同じ大きさで分割し、各分割領域に一定の規則に従って連番号を割り当てたときに、拡張対象道路が含まれている分割領域に該当する番号を特定するための情報とが付加されている。
【0017】
このように構成された道路地図データを記憶する記憶媒体をナビゲーション装置に適用し、その道路地図データを経路探索に利用することで、請求項1に記載の道路地図データ作成方法に関して記述した効果と同様の効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】地図データ作成装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】地図データ作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】地図データ作成処理のイメージを示す説明図である。
【図4】地図データ作成処理のイメージを示す説明図である。
【図5】ナビゲーション装置2の概略構成を示すブロック図である。
【図6】地図データの読み込み事例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[地図データ作成装置1の構成の説明]
実施形態の地図データ作成装置1は、図1に示すように、経路案内用の地図の元データを格納する地図データベース10と、地図データ作成処理を実行する計算部11と、計算部11により出力された地図データを格納するための地図データベース12とを備える。
【0020】
地図データベース10は、例えばハードディスクドライブ等の大容量記憶装置によって構成され、本実施形態の地図データ作成装置1による処理対象として用意された地図データ(元データ)を記憶している。
【0021】
ここで、地図データベース10に記憶されている地図データ(元データ)について説明する。地図データ作成装置1による処理対象となる経路探索用の地図データは、交差点等の特定地点に対応するノードに関するノードデータや、ノード間を接続する道路区間の最小単位であるリンクに関するリンクデータ等の構成要素からなる。この地図データは、収録エリア全域にわたって方眼状に分割されており、複数の矩形の基本区画の集合で構成されている。上述のノードデータやリンクデータは基本区画ごとの地図データフレームにまとめて記録されている。また、地図データは収録エリアの広さが異なる複数の階層別に複数用意されていてもよい。例えば、収録エリアの狭い下層の地図データにはより詳細な道路のデータが含まれ、収録エリアの広い上層の地図データには主要な幹線道路のみ含まれるといった具合である。
【0022】
計算部11は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のコンピュータ装置であり、本発明における拡張対象道路特定手段、拡張領域特定手段、番号設定手段、拡張対象区画特定手段、及び出力手段に相当する。この計算部11は、地図データベース10に格納されている地図データ(元データ)から個々の基本区画ごとに拡張領域情報を算出し、その算出した拡張領域情報を対応する基本区画の地図データフレームに付加する「地図データ作成処理」を実行する。この地図データ作成処理の詳細な内容については後述する。なお、ここでいう拡張領域情報とは、1つの基本区画を経路探索の対象としたときに、その経路探索対象の基本区画から拡張して読み込むべき周辺地図の範囲を定義する情報である。
【0023】
地図データベース12は、例えばハードディスクドライブ等の大容量記憶装置によって構成され、計算部11が実行する地図データ作成処理の処理結果として出力された地図データ(出力データ)を記憶するためのものである。地図データベース12に記憶されている地図データにおける個々の基本区画の地図データフレームには、地図データ作成処理において算出された拡張領域情報が付加されている。この地図データベース12に記憶されている地図データはナビゲーション装置へ供給され、経路探索に用いられる。
【0024】
[地図データ作成処理の説明]
つぎに、地図データ作成装置の計算部11が実行する地図データ作成処理の手順について、図2のフローチャート及び図3,4の説明図に基づいて説明する。この地図データ作成処理は、地図データベース10に記憶されている地図データの個々の基本区画を処理対象にして実行される処理である。
【0025】
図2のフローチャートに示すように、地図データ作成装置の計算部11は、まず、処理対象の基本区画から他の基本区画のエリアへ延出している道路のうち、特定の条件を満たす拡張対象道路を特定する(S100)。ここで、拡張対象道路として選定する条件としては、例えば、処理対象の基本区画外の特定の幹線道路(例えば、国道や高速道路等)へ接続する道路や、階層化された地図データにおいて地図上にある上位階層移行点まで到達する道路等が挙げられる。
【0026】
つぎに、S100で特定した拡張対象道路を含む全ての基本区画と、処理対象の基本区画とを包含する矩形の拡張領域を特定する(S101)。なお、拡張領域の境界線は基本区画の境界線上に合わせるように設定する。そして、この設定した拡張領域を地図データにおける標準の基本区画の大きさで方眼状に均等分割し、その分割した個々の分割領域に一定の規則に従って連番号を設定する(S102)。ここでは、拡張領域の分割方法の一例として、処理対象の基本区画と同じ大きさで拡張領域を均等分割してもよい。また、連番号の設定方法は、ある基準位置(例えば、拡張領域の左下端)にある分割領域から順に1から始まる連番を設定してもよいし、縦横方向の行列番号を設定してもよい。ただし、当該地図データの供給先であるナビゲーション装置で適用される連番の設定方法と同じであることが必要である。
【0027】
図3は、上記S101〜S102の処理内容の一例をイメージ化したものである。ここでは、図3(a)に示すような基本区画の集合で構成された地図のうち、黒塗りの基本区画を地図データ作成処理の処理対象として選択した場合を想定する。
【0028】
まず、S100で処理対象の基本区画から延出する拡張対象道路を特定し、S101で拡張対象道路を含む全ての基本区画と、処理対象の基本区画とを包含する矩形の拡張領域を特定すると、図3(b)に示すような状態になる。この図においては、ハッチングのかかっている基本区画が拡張対象道路を含む基本区画に相当する。
【0029】
そして、S102では、S101で設定した拡張領域を標準の基本区画の大きさで方眼状に均等分割し、左下端の分割領域から順に1から連番号を設定する。その結果、図3(c)に示すように、拡張領域に7×4マスで1〜28番までの分割領域が設定される。
【0030】
図2のフローチャート説明に戻る。S102で各分割領域に番号を設定した後、これらの分割領域のうち、拡張対象道路を含む基本区画に対応する分割領域を特定し、その分割領域に割り当てられた番号を記憶する(S103)。そして、処理対象の基本区画の地図データフレームに、拡張領域に関する所定の情報(拡張領域情報)のレコードを付加し、この地図データ一式を処理結果として出力する(S104)。ここで出力されたデータは地図データベース12へ格納される。なお、拡張領域情報には、拡張領域の大きさ(分割領域の数)、拡張領域の基準位置、及び、拡張対象道路を含む分割領域の番号等を示す情報が含まれる。
【0031】
図4は、上記S103〜S104の処理内容の一例をイメージ化したものである。ここでは、図4(a)に示すような拡張領域及び分割領域を設定した場合を想定する。この図4(a)では、図3に記載の凡例を適用する。
【0032】
図4(a)に示すように設定された拡張領域に基づき、処理対象の基本区画(18番の拡張領域に相当)の地図データフレームには、ノードデータ及びリンクデータ等からなる地図データに続けて拡張領域情報が付加され、図4(b)に示す状態になる。この図4(b)に示すように、地図データに付加される拡張領域情報には、拡張領域の大きさを示すレコード、拡張領域の基準位置を示すレコード、領域情報数を示すレコード、及び、領域情報のレコードが含まれている。
【0033】
拡張領域の大きさを示すレコードには、分割領域の数が「横×縦」の形式で記録される。拡張領域の基準位置を示すレコードには、処理対象の基本区画(すなわち、当該拡張領域情報が付加される基本区画)に該当の分割領域の番号が記録される。この番号で示される分割領域を基準位置とすることで地図上における拡張領域の位置を特定できる。領域情報数を示すレコードには、拡張対象道路を含む分割領域の番号を記録するレコード(領域情報のレコード)がいくつ存在するかが記録される。領域情報のレコードには、拡張対象道路を含む分割領域の番号が記録される。なお、拡張対象道路を含む分割領域の番号が連続する場合は、連続する番号を1つのレコードに記録する。
【0034】
[ナビゲーション装置2の構成の説明]
つぎに、地図データ作成装置1によって作成された地図データを用いて経路探索を行うナビゲーション装置2の概略構成について説明する。
【0035】
ナビゲーション装置2は、車両に搭載されるナビゲーションシステムであり、図5に示すとおり、車両の現在地を検出するための位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作部22と、地図データやプログラム等を記憶する大容量記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)24と、各種情報を記憶する外部メモリ25と、地図表示画面等の各種表示を行うための表示装置26と、各種ガイド音声を出力するための音声出力装置27と、制御部29とを備える。
【0036】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの送信信号を受信し、車両の位置座標や高度を検出するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の角速度に応じた検出信号を出力するジャイロスコープ21bと、車両の速度に応じた検出信号を出力する車速センサ21cとを備えている。そして、これらの各センサ21a〜21cは、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら車両の現在地を検出するように構成されている。
【0037】
操作部22は、表示装置26の表示面上に一体に設置されるタッチパネルや表示装置26の周囲に設けられるメカニカルなキースイッチ等で構成されている。HDD24は、制御部29からの制御に基づいてハードディスクからのデータの読み出し、及びハードディスクへのデータの書き込みを行う外部記憶装置である。HDD24が記憶しているデータは、経路探索用の地図データや、地図画像の表示に必要な描画データ、いわゆるマップマッチング用のデータ、経路案内用のデータ、ナビゲーション装置2の作動のためのプログラム、意匠画像データ等を含む各種データである。経路探索用の地図データは、本実施形態の地図データ作成装置1によって作成されたものであり、交差点等の特定地点に対応するノードに関するノードデータや、ノード間を接続する道路区間の最小単位であるリンクに関するリンクデータ等の構成要素が基本区画ごとの地図データフレームにまとめて記録されている。また、個々の基本区画の地図データフレームには、それぞれ拡張領域情報(図4(b)参照)が付加されている。
【0038】
外部メモリ25は、各種データを記憶するためものである。この外部メモリ25には、電位的又は磁気的に記憶内容を書き換え可能で、かつ、電源を切っても記憶内容を保持できる記憶装置(例えば、不揮発性半導体メモリ等)を用いる。表示装置26は、液晶ディスプレイ等の表示面を有するカラー表示装置であり、制御部29からの映像信号の入力に応じて各種画像を表示可能である。この表示装置26は、地図画像の表示や、出発地から目的地までの誘導経路、車両の現在地を示すマーク、その他の案内情報等の表示に用いられる。音声出力装置27は、各種情報を音声にてユーザに報知できるように構成されている。これによって、表示装置26による表示と音声出力装置27による音声出力との両方でユーザに対して方向案内等の各種経路案内をすることができる。
【0039】
制御部29は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、上述した各部構成を制御する。この制御部29は、ROMやHDD24、外部メモリ25等から読み込んだプログラムやデータに基づいて種々の処理を実行する。例えば、経路案内処理では、ユーザが操作部22を操作して目的地を設定すると、制御部29は車両の現在地を出発地とし、出発地から目的地までの最適経路をHDD24から読み込んだ経路探索用の地図データを用いて探索する。
【0040】
その際、まず、経路探索の対象となる基本区画の地図データをHDD24から読み込み、その地図データに含まれる拡張領域情報に基づいて経路探索対象の基本区画から拡張して読み込むべき周辺地図の範囲を特定し、その範囲に該当の基本区画の地図データも併せて読み込む。そして、経路探索の対象となる基本区画の地図データと、その基本区画から拡張して読み込んだ他の基本区画の地図データとを併せて経路探索に用いる。
【0041】
経路探索により得られた最適経路を誘導経路として、その誘導経路を地図画像上に重ね合わせて表示装置26に表示させる。そして、制御部29は自車両の移動に伴って所定のタイミングで案内情報を表示又は音声で出力し、自車両が目的地までの誘導経路に沿って走行できるように案内する。
【0042】
[地図データ読み込み事例の説明]
つぎに、ナビゲーション装置2の制御部29が、拡張領域情報に基づいて経路探索の対象の基本区画から拡張して読み込むべき周辺地図の範囲を特定する手順について、図6に基づいて説明する。
【0043】
制御部29は、経路探索の対象として読み込んだ地図データに含まれる拡張領域情報(図4(b)参照)を参照し、各レコードに記録されている内容に従って拡張領域を対応する地図エリア上に展開する。このとき、拡張領域に含まれる各分割領域の大きさは、その地図における標準の基本区画の大きさと同じにする。また、各分割領域の番号は、当該地図データの供給元である地図データ作成装置1で適用される連番の設定方法と同じ方法で設定する。図6に示す事例では、拡張領域の左下端にある分割領域から順に1から始まる連番を設定している。また、拡張領域情報における拡張領域の基準位置のレコードで示される番号の分割区画を、地図エリア上における経路探索対象の基本区画の位置に合わせる。
【0044】
拡張領域情報に基づいて拡張領域を展開した後、拡張領域情報における領域情報のレコードで指定される分割領域(すなわち、拡張対象道路を含む分割領域)に該当の基本区画の地図データを読み込む。このとき、図6のケース1で示すように、指令番号の分割領域と地図の基本区画とが一致している場合、その一致する基本区画の地図データを読み込む。
【0045】
一方、地図上において基本区画の大きさが均一でない場合、例えば、同一地図上に標準の基本区画よりも大きい又は小さい基本区画が含まれている場合、拡張領域内の各分割領域と地図の基本区画とが完全には一致しないことがある。そこで、図6のケース2で示すように、指定番号の分割領域よりも地図データの基本区画の方が小さい場合、指定番号の分割領域内に含まれる全ての基本区画の地図データを読み込む。あるいは、図6のケース3で示すように、指定番号の分割領域よりも地図データの基本区画の方が大きい場合、指定番号の分割領域を範囲内に含む基本区画の地図データを読み込む。
【0046】
[効果]
上記実施形態の地図データ作成装置1によれば、下記のような効果を奏する。
経路探索対象の基本区画から拡張して読み込むべき周辺地図の範囲を定義する拡張領域情報を、個々の基本区画ごとの地図データフレームに付加することができる。このように、地図データの基本区画ごとに従来のオーバーラップ領域を持たせる代わりに、拡張領域情報を付加することで、ナビゲーション装置2側で経路探索に最適な範囲で地図データを読み込むことができるようなる。また、拡張領域情報は、拡張領域の大きさや位置、読み込み対象となる分割領域の番号といった単純なデータのみで構成されており、地図データを重複して記録する従来のオーバーラップ領域よりも格段にデータ量が小さくて済む。さらに、オーバーラップ領域を持たないことにより、地図データの差分更新も容易になる。よって、上記実施形態の地図データ作成装置1によれば、経路品質の向上及びデータの単純化を両立した道路地図データを作成できる。
【符号の説明】
【0047】
1…地図データ作成装置、10…地図データベース(元データ)、11…計算部、12…地図データベース(出力データ)、2…ナビゲーション装置、21…位置検出器、22…操作部、24…ハードディスクドライブ(HDD)、25…外部メモリ、26…表示装置、27…音声出力装置、29…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の矩形の基本区画に分割された道路地図データとして用意された元データを用いて経路探索用の道路地図データを作成する道路地図データ作成方法であって、
処理対象の基本区画から延出している拡張対象道路を特定するステップと、
前記特定した拡張対象道路が含まれている全ての基本区画及び前記処理対象の基本区画を包含する矩形の拡張領域を特定するステップと、
前記特定した拡張領域をそこに含まれる標準の基本区画と同じ大きさで分割した各分割領域に対して、一定の規則に従って連番号を設定するステップと、
前記拡張領域内の分割領域のうち、前記拡張対象道路が含まれる分割領域に設定された番号を特定するステップと、
前記処理対象の基本区画に対応する道路地図データに、前記拡張領域の大きさ及び位置を特定するための情報と、前記拡張対象道路が含まれている分割領域の番号を特定するための情報とを付加し、これを処理結果として出力するステップとを備えること
を特徴とする地図データ作成方法。
【請求項2】
複数の矩形の基本区画に分割された道路地図データとして用意された元データを用いて経路探索用の道路地図データを作成する道路地図データ作成装置であって、
処理対象の基本区画から延出している拡張対象道路を特定する拡張対象道路特定手段と、
前記拡張対象道路特定手段によって特定した拡張対象道路が含まれている全ての基本区画及び前記処理対象の基本区画を包含する矩形の拡張領域を特定する拡張領域特定手段と、
前記拡張領域特定手段によって特定した拡張領域をそこに含まれる標準の基本区画と同じ大きさで分割した各分割領域に対して、一定の規則に従って連番号を設定する番号設定手段と、
前記拡張領域内の分割領域のうち、前記拡張対象道路が含まれる分割領域に設定された番号を特定する拡張対象区画特定手段と、
前記処理対象の基本区画に対応する道路地図データに、前記拡張領域の大きさ及び位置を特定するための情報と、前記拡張対象区画特定手段によって特定された拡張対象道路が含まれている分割領域の番号を特定するための情報とを付加し、これを処理結果として出力する出力手段とを備えること
を特徴とする地図データ作成装置。
【請求項3】
経路探索用の道路地図データを記憶する記憶媒体であって、
この記憶媒体に記憶されている道路地図データは、複数の矩形の基本区画に分割されており、
個々の基本区画に対応する道路地図データには、その基本区画から延出している特定の拡張対象道路を含む全ての基本区画及び当該基本区画を包含する矩形の拡張領域の大きさ及び位置を特定するための情報と、前記拡張領域をそこに含まれる標準の基本区画と同じ大きさで分割し、各分割領域に一定の規則に従って連番号を割り当てたときに、前記拡張対象道路が含まれている分割領域に該当する番号を特定するための情報とが付加されていること
を特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−250053(P2010−250053A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98950(P2009−98950)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】