説明

型内塗装品形成金型

【課題】 裏面形成金型と塗膜形成金型との型締めの際に潰されるシール材が裏面形成金型と塗膜形成金型との間のわずかな隙間を埋めて塗料が漏れるのを防ぎ、型内塗装品外周のバリ発生防止ができる。
【解決手段】 型内塗装品形成金型が、裏面形成金型および/または塗膜形成金型のパーティング面にシール材が配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内で成形した成形品の表面と金型キャビティ面との間に熱硬化性塗料を注入後に硬化させて、成形品表面に熱硬化性塗料を密着一体化させる型内塗装品形成金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の型内塗装品形成金型として、表面形成金型101と塗膜形成金型102と裏面形成金型103を用い、以下の方法により型内塗装品110を形成する技術が特許文献1に開示されている。
(1)表面形成金型101と裏面形成金型103によって成形キャビティ104を形成したところに、成形樹脂を充填させることによって成形品108の射出成形を行い(図6(a)参照)、
(2)裏面形成金型103が成形品108を保持する状態で裏面形成金型103に対向する金型を表面形成金型101から塗膜形成金型102に切り替え、成形品108の表面に間隙による塗装キャビティ105を形成し(図6(b)参照)、
(3)塗装キャビティ105に液状熱硬化型組成物からなる加飾用の熱硬化性塗料を注入して、成形品108の表面に熱硬化性塗料層109を成形して型内塗装品110を形成する(図6(c)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3988660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、通常の射出樹脂成形における溶融樹脂とは異なり、加飾用の熱硬化性塗料の粘度は数十cpsと非常に低い。そのため、金型加工時の誤差や金型使用中の型キズとして生じる塗膜形成金型102と裏面形成金型103との間のパーティング面のわずかな隙間でさえ、塗料が浸透して硬化することにより型内塗装品110の外周にバリが発生する問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題が発生しないようにするための型内塗装品形成金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するため、以下のような特徴を備える。
【0007】
本発明の型内塗装品形成金型は、表面形成金型と塗膜形成金型と裏面形成金型とを備え、
裏面形成金型と表面形成金型で形成される成形キャビティで成形品を形成可能であり、
成形品を保持する裏面形成金型と塗膜形成金型で形成される塗装キャビティで成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成可能であり、
裏面形成金型のパーティング面にシール材が配置されたことを特徴とする。
【0008】
また、上記の発明において、シール材が少なくとも裏面形成金型の塗装キャビティ形成部と隣接する位置に配置されてもよい。
【0009】
また、上記の発明において、シール材が成形キャビティに面しなくてもよい。
【0010】
また、上記の発明において、シール材が裏面形成金型の成形キャビティ形成部と隣接する位置に配置されてもよい。
【0011】
本発明の型内塗装品形成金型は、表面形成金型と塗膜形成金型と裏面形成金型とを備え、
裏面形成金型と表面形成金型で形成される成形キャビティで成形品を形成可能であり、
成形品を保持する裏面形成金型と塗膜形成金型で形成される塗装キャビティで成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成可能であり、
塗膜形成金型のパーティング面にシール材が配置されたことを特徴とする。
【0012】
また、上記の発明において、シール材が塗膜形成金型の塗装キャビティ形成部と隣接する位置に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の型内塗装品形成金型は、裏面形成金型および/または塗膜形成金型のパーティング面にシール材が配置されたものである。したがって、裏面形成金型と塗膜形成金型との型締めの際に潰されるシール材が裏面形成金型と塗膜形成金型との間のわずかな隙間を埋めて塗料が漏れるのを防ぎ、型内塗装品外周のバリ発生防止ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の型内塗装品形成金型により型内塗装品を形成する工程を示す断面図である。
【図2】本発明の型内塗装品形成金型のシール材の適用箇所を拡大した部分断面図である。
【図3】本発明の型内塗装品形成金型のシール材の適用箇所を拡大した部分断面図である。
【図4】本発明の型内塗装品形成金型のシール材の適用箇所を拡大した部分断面図である。
【図5】本発明の型内塗装品形成金型に用いる塗料注入機の概略図である。
【図6】従来の型内塗装品形成金型により型内塗装品を形成する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0016】
本発明の型内塗装品形成金型は、表面形成金型1と塗膜形成金型2と裏面形成金型3とを備え、裏面形成金型3および/または塗膜形成金型2のパーティング面にシール材31、32が配置されたものである。
【0017】
裏面形成金型3は成形品22の裏面形状を形成するために用いられる。表面形成金型1は成形品22の表面形状を形成するために用いられる。型内塗装品23を形成するには、まず、裏面形成金型3と表面形成金型1で形成される成形キャビティ12に成形樹脂を充填させることによって成形品22を形成する(図1(a)参照)。
【0018】
塗膜形成金型2は、表面形成金型1よりも外形形状を大きくし、成形品22と接しない部分が形成できるように設計する。この接しない部分が塗装キャビティ13に該当する。成形品22の形成後、裏面形成金型3が成形品22を保持する状態で裏面形成金型3に対向する金型を表面形成金型1から塗膜形成金型2に切り替え、成形品22の表面に間隙による塗装キャビティ13を形成する(図1(b)参照)。
【0019】
そして、塗装キャビティ13に液状熱硬化型組成物からなる加飾用の熱硬化性塗料を後述する塗料注入機41より注入して、成形品22の表面に熱硬化性塗料層21を成形して型内塗装品23を形成する(図1(c)参照)。ここで、裏面形成金型3のパーティング面、より詳しくは少なくとも裏面形成金型の塗装キャビティ形成部と隣接する位置にシール材31が形成されている。裏面形成金型3と塗膜形成金型2との型締めの際に潰されるシール材31が裏面形成金型3と塗膜形成金型2との間のわずかな隙間を埋めて塗料が漏れるのを防ぎ、型内塗装品23外周のバリ発生防止ができる。
【0020】
シール材31、32は型締めの際に潰されて変形して隙間をシールするものであるため、金型に用いられる型材よりも低ヤング率であることが肝要である。そのような材料として、フッ素化合物、シリコン化合物、錫、亜鉛、鉛などを用いればよい。
【0021】
シール材31、32を裏面形成金型3および/または塗膜形成金型2のパーティング面に配置するには、シール材31、32を金型にコーティングしてもよいし、一旦別部材として形成してから金型に装着するようにしてもよいが、連続成形による金型開閉の繰り返しによってシール材31、32が金型から脱落しないように配置するのが肝要である。
【0022】
また、シール材31、32は熱硬化性塗料との離型性が良くなければならない。塗料と固着してしまった場合、型開き時もしくは型内塗装品23の取り出し時にシール材31、32が金型から脱落したり、あるいは、型内塗装品23がシール材31、32側に引っ張られて変形してしまう恐れがある。
【0023】
ここで、裏面形成金型3に形成されるシール材31が少なくとも裏面形成金型3の塗装キャビティ形成部と隣接するパーティング面に配置される態様について詳しく説明する(図2参照)。
【0024】
図2は、シール材31の適用箇所A(図1(b)参照)を拡大した部分断面図である。シール材31は、成形キャビティ12に面するようにして成形品22の外形を形成するように延長して配置してもよいが(図2(a)参照)、柔らかいシール材では高圧で射出される成形樹脂に潰されて変形し、その結果、成形品22の形状不良が起こる恐れがある。そのため、シール材31が成形キャビティ12に面しないようにすると、成形品22の外形を形成しないので成形品22の形状不良が起こらず、また、低粘度ゆえに低圧で注入される熱硬化性塗料ではシール材31は変形しないので、熱硬化性塗料層21の形状不良は起こらず好適である(図2(b)参照)。
【0025】
次に、塗膜形成金型2に形成されるシール材32が塗膜形成金型2の塗装キャビティ形成部と隣接するパーティング面に配置される態様について詳しく説明する(図3参照)。
【0026】
図3は、シール材32の適用箇所A(図1(b)参照)を拡大した部分断面図である。シール材32は、塗膜形成金型2にのみ配置してもよいが(図3(a)参照)、裏面形成金型3に形成されるシール材31と併用して配置すると塗料モレ防止効果をより高められることが期待できる(図3(b)参照)。
【0027】
次に、裏面形成金型3に形成されるシール材31が裏面形成金型3の成形キャビティ形成部と隣接するパーティング面に配置される態様について詳しく説明する(図4参照)。
【0028】
図4は、シール材31の適用箇所A(図1(b)参照)を拡大した部分断面図である。この態様は上記の態様と異なり、成形キャビティ12が裏面形成金型3にも彫られた結果、裏面形成金型3において成形キャビティ形成部とパーティング面が隣接する。成形品22の最外形位置は塗膜形成金型2の塗装キャビティ形成部と同一面としてもよいが(図4(a)参照)、成形品22の最外形位置を塗膜形成金型2の塗装キャビティ形成部より外側に設定して成形品22の外側で塗料モレが起こらないようにしてもよい(図4(b)参照)。
【0029】
以下、型内塗装品23の形成に用いられる型内塗装品形成金型以外の材料や装置を説明する。
【0030】
熱硬化性塗料の材質としては、例えば、有機過酸化物を硬化反応の開始剤とする、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等のオリゴマーもしくはその樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂20〜70重量%と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、スチレン等の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー80〜30重量%からなるビヒクル成分を主成分とし、ラジカル捕捉剤、各種着色顔料、アルミニウム顔料、パール顔料、離型剤及び光安定剤等からなるものを使用できる。
【0031】
塗料注入機41は、塗料タンク43の上部に圧力をかけ、1ショット分の熱硬化性塗料の正確な量が塗料タンク43から計量・射出・バルブの構造を兼ね備えた塗料注入ユニット42に送られる構造になっている(図5参照)。
【0032】
塗料注入ユニット42の位置設定としては、塗膜形成金型2内部に設けてもよい。また、塗膜形成金型2に設けられる熱硬化性塗料の注入口を裏面形成金型3との合わせ面に設け、塗料注入ユニット42と樹脂注入機の樹脂射出ユニットとを垂直にさせてもよい。この場合、成形品22を保持する裏面形成金型3と塗膜形成金型2とが型閉じして、成形品22を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティ13が成形品22と塗膜形成金型2との間に形成された段階で、塗料注入ユニット42が前進して塗膜形成金型2に直接タッチし、熱硬化性塗料が塗膜形成金型2に設けられる塗料ゲートを通して塗装キャビティ13に注入される仕組みになっている。
【0033】
成形樹脂は、通常の熱可塑性の射出成形樹脂やエンジニアリングプラスチックのほか、熱硬化性の成形樹脂材料など特に限定はされないが、成形しやすく熱硬化性塗料との密着が良いものが好ましい。具体的には、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂(ABS系樹脂)、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などがあげられる。
【0034】
成形樹脂は樹脂注入機によって、成形キャビティ12内に充填する。樹脂注入機としては射出成形機を用いることができる。
【0035】
本発明の型内塗装品形成金型は、裏面形成金型3を複数備えるようにして、可動盤または可動盤についている回転盤が回転する二色成形用の射出成形機に配置できる(図示せず)。射出成形機内での金型配置として、表面形成金型1と塗膜形成金型2とを固定盤に固定し、裏面形成金型3が射出成形機の可動盤または可動盤についている回転盤に固定すればよい。また、裏面形成金型3を固定盤に固定し、表面形成金型1と塗膜形成金型2とを射出成形機の可動盤または可動盤についている回転盤に固定してもよい。このように設置すると、ある裏面形成金型3と表面形成金型1によって成形品22を形成する間、別の成形品22を保持する裏面形成金型3と塗膜形成金型2によって熱硬化性塗料層21を形成する、すなわち成形品22の形成と同時に型内塗装品23の製造ができ、好適である。
【実施例1】
【0036】
表面と裏面のそれぞれがキャビティを持つ表面形成金型1と塗膜形成金型2と2つの裏面形成金型3とを備える型内塗装品形成金型を用いて型内塗装品23を製造した。塗膜形成金型2として塗料注入ユニット42を内蔵して塗料注入口を備えるものを使用した。裏面形成金型3としてパーティング面にシール材31が裏面形成金型3の塗装キャビティ形成部と隣接し成形キャビティ12に面しない位置に配置されたものを使用した。型内塗装品23の製造には可動盤についている回転盤が回転する二色成形用の射出成形機を使用した。
【0037】
表面形成金型1に対向する裏面形成金型3を表面形成金型1に対して型閉じして形成した成形キャビティ12に加熱溶融したソリッド色の耐熱ABS樹脂を充填、冷却固化させて成形品22を形成した(図1(a)参照)。次いで射出成形機の回転盤を回転させ、裏面形成金型3が成形品22を保持する状態で裏面形成金型3に対向する金型を表面形成金型1から塗膜形成金型2に切り替え、裏面形成金型3と塗膜形成金型2とを型閉じして、成形品22を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティ13を形成した(図1(b)参照)。塗装キャビティ13内に熱硬化性塗料(大日本塗料株式会社製プラグラス8000)を注入して熱硬化性塗料層21を形成することによって型内塗装品23を形成した(図1(c)参照)。
【0038】
裏面形成金型3と塗膜形成金型2との型締めの際にはシール材31が潰され、裏面形成金型3と塗膜形成金型2との間のわずかな隙間を埋めて塗料が漏れるのを防いだので、型内塗装品23外周に熱硬化性塗料層21によるバリは発生しなかった。また、成形品22および熱硬化性塗料層21の形状不良は起こらなかった。
【実施例2】
【0039】
シール材32が塗膜形成金型2に形成され、塗膜形成金型2の塗装キャビティ形成部と隣接するパーティング面に配置された型内塗装品形成金型を使用した以外は実施例1と同様にして型内塗装品23を形成した(図3(a)参照)。
【0040】
この実施例でも、裏面形成金型3と塗膜形成金型2との型締めの際にシール材32が潰され、裏面形成金型3と塗膜形成金型2との間のわずかな隙間を埋めて塗料が漏れるのを防いだので、型内塗装品23外周に熱硬化性塗料層21によるバリは発生しなかった。
【符号の説明】
【0041】
1 表面形成金型
2 塗膜形成金型
3 裏面形成金型
12 成形キャビティ
13 塗装キャビティ
21 熱硬化性塗料層
22 成形品
23 型内塗装品
31 シール材
32 シール材
41 塗料注入機
42 塗料注入ユニット
43 塗料タンク
101 表面形成金型
102 塗膜形成金型
103 裏面形成金型
104 成形キャビティ
105 塗装キャビティ
108 成形品
109 熱硬化性塗料層
110 型内塗装品
A シール材の適用箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面形成金型と塗膜形成金型と裏面形成金型とを備え、
裏面形成金型と表面形成金型で形成される成形キャビティで成形品を形成可能であり、
成形品を保持する裏面形成金型と塗膜形成金型で形成される塗装キャビティで成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成可能であり、
裏面形成金型のパーティング面にシール材が配置されたことを特徴とする型内塗装品形成金型。
【請求項2】
シール材が少なくとも裏面形成金型の塗装キャビティ形成部と隣接する位置に配置された請求項1に記載の型内塗装品形成金型。
【請求項3】
シール材が成形キャビティに面しない請求項2に記載の型内塗装品形成金型。
【請求項4】
シール材が裏面形成金型の成形キャビティ形成部と隣接する位置に配置された請求項1に記載の型内塗装品形成金型。
【請求項5】
表面形成金型と塗膜形成金型と裏面形成金型とを備え、
裏面形成金型と表面形成金型で形成される成形キャビティで成形品を形成可能であり、
成形品を保持する裏面形成金型と塗膜形成金型で形成される塗装キャビティで成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成可能であり、
塗膜形成金型のパーティング面にシール材が配置されたことを特徴とする型内塗装品形成金型。
【請求項6】
シール材が塗膜形成金型の塗装キャビティ形成部と隣接する位置に配置された請求項5に記載の型内塗装品形成金型。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−214745(P2010−214745A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63733(P2009−63733)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】