説明

型締装置

【課題】不均等な型締力を与えても、型締装置の構成部材に生ずる機械的損傷を最小限に抑えることのできる型締装置を提供する。
【解決手段】ベースフレーム11と、固定ダイプレート12と、移動ダイプレート13と、移動ダイプレート13を固定ダイプレート12に対して進退させる移動ダイプレート移動手段と、固定ダイプレート12内に形成される油圧型締シリンダ18と、一端に形成されたラム16が油圧型締シリンダ18に配置され、他端が移動ダイプレート13に対して固定される複数のタイバー17と、を備え、油圧型締シリンダ18への作動油の供給を調整することにより、タイバー17を介して固定金型14と可動金型15との型締めをする型締装置10であって、型締動作の過程で、型締装置10の所定部位に生ずる応力を検知し、検知された応力が、所定の基準応力を超える場合には、型締動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、ダイカストマシンなどに適用される型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に射出成形機に用いられる従来の型締装置を示す。図7において、型締装置101は、ベースフレーム102上に固設されると共に固定金型103が取り付けられた固定ダイプレート105と、油圧シリンダ113の作動によってレール107上を図中左右方向に移動すると共に可動金型109が取り付けられた移動ダイプレート111と、固定ダイプレート105と移動ダイプレート111とを連結する複数のタイバー115とを備えている。固定ダイプレート105には、各タイバー115と同軸に型締め用の油圧シリンダ117が設けられており、各タイバー115の一端は油圧シリンダ117のラム119に接続されている。
【0003】
型締装置101は、まず、型開閉用の油圧シリンダ113の作動により移動ダイプレート111を図中の二点鎖線の位置まで移動させて可動金型109を固定金型103に当接させる。次いで、各タイバー115の雄ねじ部121と移動ダイプレート111に設けられた半割りナット123を係合させて、移動ダイプレート111をタイバー115に固定する。そして、油圧シリンダ117内の作動油の圧力を高めて、固定金型103と可動金型109とを締め付ける。このようにして型締めを行った後に、射出ユニット125から金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形品を成形する。
【0004】
型締装置101において、成形品の重心が型締装置、特に固定金型103と可動金型109の中心と一致している場合には、各油圧シリンダ117により発生される型締力を均等にする。ところが、成形品の重心が型締装置の中心に対して偏心している場合には、固定金型103と可動金型109とで形成されるキャビティ内に作用する成形材料の圧力によって発生する金型を開こうとする力(固定金型103と可動金型109を離そうとする力)が、型締装置の中心に対して偏った位置に働くことになる。したがって、成形品の重心が型締装置の中心に対して偏心している場合に均等な型締力を与えると、成形品の重心が偏っている側の固定金型103と可動金型109との合わせ面に隙間が生じて、バリが発生しやすくなる。
【0005】
この問題に対して、特許文献1は、少なくとも二つの異なった圧力に調整された作動圧油を油圧シリンダ117に選択的に供給して、不均等な型締力を付与することを提案している。例えば、成形品の重心が型締装置の中心よりも下方に偏心している場合、下側の油圧シリンダ117から付与される型締力を、上側の油圧シリンダ117から与える型締力よりも大きくする。
【0006】
【特許文献1】特開2008−30075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
均等な型締力が与えられる型締装置101は、油圧シリンダ117に高圧の作動油を送って固定金型103と可動金型109とを締め付けると、図8に示すように、各タイバー115に大きな引張荷重Tがかかり、また固定ダイプレート105と移動ダイプレート111とは力Fによって一点鎖線で示すようにおわん状に湾曲する。
成形品の重心と型締装置の中心との関係に応じて、不均等な型締力を与えることは、バリの発生を抑制して、成形品の高品質化に有効であるが、上述したように、下側の型締力が上側の型締力よりも大きい場合は、固定ダイプレート105と移動ダイプレート111とは逆ハの字型に湾曲し、上側のたわみ量が大きくなる。その結果、ベースフレーム102、ベースフレーム102に固定ダイプレート105を固定するボルト(図示せず)、タイバー115、油圧シリンダ117の各部材に付加される外力が従来よりも増大し、型締装置101を継続して使用していると、機械的損傷を招く可能性がある。各部材の剛性を高くすれば機械的損傷を回避できるが、型締装置101全体が大型化してしまう。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、不均等な型締力を与えても、型締装置の構成部材に生ずる機械的損傷を最小限に抑えることのできる型締装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本願の第1発明による型締装置は、ベースフレームと、ベースフレームに固設され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、固定ダイプレートに対して進退可能にベースフレームに配設され、可動金型を保持する移動ダイプレートと、移動ダイプレートを固定ダイプレートに対して進退移動させるダイプレート移動手段と、固定ダイプレート又は移動ダイプレートのいずれか一方に設けられる型締シリンダと、一端に形成されたラムが型締シリンダに配置され、他端が固定ダイプレート又は移動ダイプレートのいずれか一方に対して固定されるタイバーと、を備え、型締シリンダへの作動流体の供給を調整することにより、タイバーを介して固定金型と可動金型とを所定の力で型締めをする型締装置であって、型締動作の過程で、型締装置の所定部位に生ずる応力を検知し、検知された応力が所定の基準応力を超える場合には、型締動作を停止させることを特徴とする。第1発明による型締装置は、検知された応力が所定の基準応力を超える場合には、型締動作を停止させるので、型締装置の構成部材に過大な応力が生ずることがない。
【0009】
上記型締装置において、型締装置の応力を検知する所定部位は、ダイプレートの湾曲の影響を直接受ける固定ダイプレートの固設部位もしくは移動ダイプレートの固設部位に設けることが好ましい。前記所定部位をスペース上の不都合などにより固定ダイプレートの固設部位もしくは移動ダイプレートの固設部位に設けることが出来ない場合は、ベースフレーム、移動ダイプレート移動手段、及びタイバーのいずれかに設けてもよい。
【0010】
本願の第2発明による型締装置は、タイバーが、第1タイバーと、第1タイバーに対し、ダイプレートの中心線対象に位置する第2タイバーとからなる場合に、第1タイバーによる型締力と第2タイバーによる型締力との差が、所定値を超える場合には、型締動作を行わないようにする。その一形態として、第1タイバーと第2タイバーをダイプレートの中心線として水平線または垂直線のいずれか一方の中心線により上下または左右に区別する。更に別の一形態として、第1タイバーによる型締力と第2タイバーによる型締力とを設定する型締力設定手段を備え、型締力設定手段は、第1タイバーによる型締力と第2タイバーによる型締力との差が、所定値を超える場合には、当該型締力を設定出来ない処理を行うようにする。
【0011】
以上は、型締めのための制御を格別なものにすることにより、型締装置の構成部材に生ずる機械的損傷を抑制するものであるが、本発明は構造的な工夫を凝らすことによって、型締装置の構成部材に生ずる機械的損傷を抑制することもできる。本願の第3の発明によるこの型締装置は、ベースフレームと、ベースフレームに固設され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、固定ダイプレートの固定金型が取り付けられる面と対向する面に接する第1押圧体と、固定ダイプレートに対して進退可能にベースフレームに配設され、可動金型を保持する移動ダイプレートと、移動ダイプレートの可動金型が取り付けられる面と対向する面に接する第2押圧体と、第1押圧体又は第2押圧のいずれか一方に設けられる型締シリンダと、一端に形成されたラムが型締シリンダに配置され、他端が第1押圧体又は第2押圧体に対して固定される複数のタイバーと、を備え、タイバーによる型締力が、第1押圧体から固定ダイプレートに、また、第2押圧体から移動ダイプレートに伝達されて固定金型と可動金型とが所定の力で型締可能であり、且つ第1押圧体と第2押圧体の少なくとも一方がベースフレームに固設されていないことを特徴とする。
【0012】
この型締装置は、タイバーによる型締力を、固定ダイプレート、移動ダイプレートに直接伝えるのではなく、固定ダイプレートに接触する第1押圧体、移動ダイプレートに接触する第2押圧体に直接伝える構造とした。よって、第1押圧体、第2押圧体には、逆ハの字型の湾曲が生じるが、移動ダイプレートおよび固定ダイプレートには、このような湾曲は生じない。そして、第1押圧体、第2押圧体は、固定ダイプレートおよび移動ダイプレート以外の型締装置構成部材に対して固設しない構造としたため、湾曲したとしても、型締装置の構成部材に第1押圧体、第2押圧体の湾曲による応力が及ばないので、機械的損傷を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不均等な型締力を与えても、型締装置の構成部材に生ずる機械的損傷を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る型締装置10を示す部分断面図である。
図1において、ベースフレーム11の一端側上面には固定金型14が保持される固定ダイプレート12が固設されている。
ベースフレーム11の他端側上面には固定ダイプレート12に対向して可動金型15を保持する移動ダイプレート13が進退移動可能に配設される。ベースフレーム11上には、ガイドレール26が敷設されており、このガイドレール26にガイドされたリニアベアリング27が、台28を介して移動ダイプレート13を支持している。
固定ダイプレート12にはストロークが小さくかつ断面積の大きな4基の油圧型締シリンダ18が、その四隅に設けられている。油圧型締シリンダ18の中を摺動するラム16はその一側面にそれぞれタイバー17が直結され、このタイバー17は対向する移動ダイプレート13が型締めのため近づいてきたとき、移動ダイプレート13に開けられた4個の挿通孔を貫通する。
油圧型締シリンダ18には、油圧機構35が接続されている。油圧機構35は、コントローラ31の指示に基づいて、油圧型締シリンダ18の型締側室18a、型開側室18bへ作動油を供給する。
【0015】
移動ダイプレート13の移動方向に平行に設置され、固定ダイプレート12に保持された軸受箱20と移動ダイプレート13に保持された軸受箱21とによって回転可能に、軸方向を拘束して支えられ、サーボモータ22により動力伝達ギア23、24を介して駆動されるボールねじ軸25により移動ダイプレート13の移動手段が構成される。ボールねじ軸25は、図示しない制御装置によりサーボモータ22を介して、回転数、回転速度が制御される。
各タイバー17の先端部は、それぞれ等ピッチの複数のリング溝部(又は雄ねじ)が形成されている。移動ダイプレート13の反金型側面(これを背面という)には、各タイバー17のリング溝部と噛合するリング状内側溝(雌ねじ)を備える割ナット29が設けられている。
【0016】
型締装置10は、型締装置10の動作を司るコントローラ31を備えている。
コントローラ31には、それぞれひずみゲージからなる第1センサ32、第2センサ33、第3センサ34が接続されている。第1センサ32は、移動ダイプレート13に固定された軸受け箱20に取り付けられている。第2センサ33は、ベースフレーム11に取り付けられている。また、第3センサ34は、固定ダイプレート12をベースフレーム11に固定するボルトBに取り付けられている。第1センサ32、第2センサ33、第3センサ34は、各々、型締装置10が型締動作を行っている間、軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBに生じているひずみを測定し、得られたひずみデータをコントローラ31に送る。
【0017】
コントローラ31は、第1〜第3センサ32〜34から送られてくるひずみデータに基づいて、軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBに生じている応力を算出する。このひずみデータは、後述する型締動作の開始から終了の間に送られてくる。コントローラ31は、算出された応力と基準応力とを比較する。なお、基準応力は、軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBの各々について設定されている。基準応力としては、その値を超えると軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBに機械的な損傷が生じるおそれのある値が設定される。この例では、軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBの各々について、σ1S、σ2S、σ3Sが設定される。第1〜第3センサ32〜34から送られるひずみデータに基づく応力をσ、σ、σとすると、コントローラ31は、第1センサ32についてσ1Sとσとを比較し、第2センサ33についてσ2Sとσとを比較し、第3センサ33についてσ3Sとσとを比較する。コントローラ31は、σ1S<σ、σ2S<σ及びσ3S<σの何れかが比較の結果として得られると、以後の型締動作を停止させる。具体的にはコントローラ31から、油圧機構35に対して動作を停止するように指示する。
【0018】
以上の型締装置10は、図1の固定金型14、可動金型15が開いた状態、即ち、実線で示すように、移動ダイプレート13が充分に固定ダイプレート12から離れた状態から、2点鎖線で示すように固定金型14と可動金型15が閉となるまで、移動ダイプレート13はサーボモータ22で駆動されるボールねじ軸25の回転によって移動する。移動ダイプレート13はこの過程でゆっくり加速し、一定速度で移動した後、減速して固定金型14が可動金型15に接触する寸前に停止するようになっている。
【0019】
この移動ダイプレート13の停止位置で割りナット29が作動して割りナット29の内側リング溝がタイバー17の先端部のリング溝と係合してタイバー17と割りナット29とが結合する。タイバー17と割りナット29とが結合された後、第1〜第3センサ32〜34により軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBに生ずるひずみを測定し、コントローラ31はひずみの測定値に基づき、軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBに発生する応力σ、σ、σを求める。
【0020】
次に、タイバー17と割りナット29とが結合された後、油圧機構35を動作させて油圧型締シリンダ18の型締側室18aを昇圧して圧縮型締めを行う。例えば、成形品の重心が型締装置10の中心よりも低い位置にある場合、前述したように、上側のタイバー17による型締力よりも下側のタイバー17による型締力を大きくする。この間も、第1〜第3センサ32〜34によるひずみの測定、軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBに発生する応力σ、σ、σの算出を継続して行い、かつコントローラ31は、σ1Sとσ、σ2Sとσ、σ3Sとσを比較する。
このようにして型締めを行った後に、射出シリンダ30から固定金型14と可動金型15とで形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形品を成形する。
【0021】
図2は、型締装置10が応力を算出しながら型締動作を行う手順を示すフローチャートである。
タイバー17と割りナット29とが結合された後、図2に示すように、第1センサ32が軸受け箱20に生じたひずみを計測する(S101)。得られたひずみデータεは、コントローラ31に送られる。コントローラ31は、ひずみデータεに基づいて軸受け箱20に生じた応力σを算出し、第1センサ32(軸受け箱20)に対する基準応力σ1Sと比較する(S103)。比較の結果がσ1S<σであれば、コントローラ31は、油圧機構35に対して動作を停止するように指示する。これにより型締動作は停止する(S115)。
【0022】
比較の結果がσ1S<σでなければ、コントローラ31は、第2センサ33により計測されたベースフレーム11に生じたひずみデータεを取得する(S105)。コントローラ31は、ひずみデータεに基づいてベースフレーム11に生じた応力σを算出し、第2センサ33(ベースフレーム11)に対する基準応力σ2Sと比較する(S107)。比較の結果がσ2S<σであれば、コントローラ31は、油圧機構35に対して動作を停止するように指示する。これにより型締動作は停止する(S115)。
【0023】
比較の結果がσ2S<σでなければ、コントローラ31は、第3センサ34により計測されたボルトBに生じたひずみデータεを取得する(S109)。コントローラ31は、ひずみデータεに基づいてボルトBに生じた応力σを算出し、第3センサ34(ボルトB)に対する基準応力σ3Sと比較する(S111)。比較の結果がσ3S<σであれば、コントローラ31は、油圧機構35に対して動作を停止するように指示する。これにより型締動作は停止する(S115)。
【0024】
比較の結果がσ3S<σでなければ、別途、型締動作を停止する指示がある場合を除いて(S113)、第1センサ32によるひずみ計測からの一連の手順S101〜S111が、型締の完了まで実行される。
【0025】
第1実施形態による型締装置10は、第1センサ32〜第3センサ34により計測されたひずみデータε〜εに基づいて、軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBに発生している応力σ〜σを求める。そして、応力σ〜σと基準応力σ1S〜σ3Sと比較し、応力σ〜σの何れかが基準応力σ1S〜σ3Sを超えている場合には、当該部材に機械的損傷が生じる恐れがあるものとみなして、それ以後の型締動作を停止する。したがって、型締装置10によれば、不均等な型締力を与えることにより型締装置10を構成する部材に過大な負荷がかかるのを未然に防止できる。
【0026】
第1実施形態による型締装置10は、第1センサ32〜第3センサ34を、各々軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBに設けたが、本発明はこれに限定されない。軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトBのいずれか一つにひずみゲージを設けてもよいし、軸受け箱20、ベースフレーム11及びボルトB以外の型締装置10の構成部材、例えばタイバー17にひずみゲージを設けてもよい。
【0027】
また、第1実施形態による型締装置10は、射出成形が開始される前の型締動作の過程で発生する応力と基準応力との比較を行っているが、射出成形が開始された後に発生する応力と基準応力との比較を継続して行って、発生する応力が基準応力を超えたならば、機械的損傷が生じる恐れがあるものとみなして、それ以後の射出成形を停止することもできる。
【0028】
<第2実施形態>
図3〜図5に基づき、第2実施形態を説明する。
図3は、第2実施形態に係る型締装置50を示す部分断面図である。なお、型締装置50は、基本的な構成は第1実施形態に係る型締装置10と同様であり、同一の構成部分には、図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0029】
型締装置50は、コントローラ52(型締力設定手段)の指示に基づいて、油圧型締シリンダ18の型締側室18a、型開側室18bへ作動油を供給する油圧機構35を備えている。
コントローラ52には、図4に示すように、型締力を設定する操作パネル53が設けられている。
操作パネル53には、入力キー54が設けられている。作業者は、入力キー54を操作することにより、例えばタイバーを上下で区別する場合、上側のタイバー17による型締力(上型締力)及び下側のタイバー17による型締力(下型締力)を順次入力する。型締力は、与えられる最大の型締力を100(%)としたときの指数で入力される。なお、上下で区分する以外に、左右で区分する場合をも本発明は包含する。つまり本発明は、ダイプレートの中心線対象に位置する第1タイバーと第2タイバーについて適用される。
操作パネル53には、入力された型締力を表示する上型締力表示部55と下型締力表示部56とが設けられている(図4(a))。図4(b)の例では、作業者が上型締力を30%、下型締力を100%と入力した例を示している。
【0030】
コントローラ52は、入力された上型締力と下型締力との差を算出し、例えばその差が60%を超える場合には、入力された上型締力と下型締力とを解除し、上型締力と下型締力との設定値の入力を却下する、もしくは入力エラーとしてエラー表示をして当該設定値を型締制御に適用しない等の型締力値の設定を出来ないような処理を行う。上型締力と下型締力との設定が型締制御に適用されないと、コントローラ52は、油圧型締シリンダ18の型締側室18a、型開側室18bへ作動油の供給を行わないので、型締装置50は動作しない。
【0031】
図5は、型締装置50への型締力の入力から動作するまでの手順を示すフローチャートである。
図5に示すように、型締装置50のコントローラ52は、上型締力Fの入力を問い合わせる(S201)。この問い合わせは、上型締力表示部55に上型締力Fの入力を促すメッセージを表示したり、音声で上型締力Fの入力を促すメッセージを出力することにより行うことができる。この問い合わせに対して作業者が上型締力Fを入力キー54により入力すると、コントローラ52は、上型締力Fを受け付ける(S203)。
次に、型締装置50のコントローラ52は、下型締力Fの入力を問い合わせる(S205)。この問い合わせに対して作業者が下型締力Fを入力キー54により入力すると、コントローラ52は、下型締力Fの入力を受け付ける(S207)。
【0032】
コントローラ52は、上型締力F及び下型締力Fを受け付けると、上型締力Fと下型締力Fとの差異(|F−F|)を算出し、その差異が所定値(F)を超えるか否かを判断する(S209)。所定値は、前述したように例えば60%である。
差異が所定値(F)を超える場合には、型締力値の設定を出来ないような処理として、コントローラ52は、一旦受け付けた上型締力F及び下型締力Fを解除し、入力前の上型締力F及び下型締力Fの設定値に戻す(S211)。そうすると、コントローラ52は、上型締力Fの入力を問い合わせ(S201)以降の手順を繰り返す。
差異が所定値(F)以下の場合には、コントローラ52は、受け付けた上型締力F及び下型締力Fを設定し、かつ設定された上型締力F及び下型締力Fとなるように、油圧型締シリンダ18の型締側室18a、型開側室18bへ作動油が供給されるように油圧機構35を制御する(S213)。
【0033】
第2実施形態による型締装置50は、上型締力Fと下型締力Fとの差異(|F−F|)を算出し、その差異が所定値(F)を超える場合には、一旦受け付けた上型締力F及び下型締力Fを解除し、入力前の上型締力F及び下型締力Fの設定値に戻す。したがって、型締装置50によれば、不均等な型締力を与えることにより型締装置10を構成する部材に過大な負荷がかかるのを未然に防止できる。
【0034】
第2実施形態による型締装置50は、一旦受け付けた上型締力F及び下型締力Fを解除し、入力前の上型締力F及び下型締力Fの設定値に戻すこととしたが、型締動作が行われないのであれば、上型締力F及び下型締力Fを解除することは必須ではない。例えば、上型締力F又は下型締力Fの一方のみを解除し、解除した方を再度問合せるようにしてもよい。
【0035】
第2実施形態による型締装置50は、単に上型締力Fと下型締力Fとの差異(|F−F|)のみを監視したが、更にFまたはFの型締力の小さいほうの設定値に下限値を設けても良い。使用する油圧機器によっては、バラツキが大きくなって油圧の安定制御が出来ない低油圧領域がある。このため、当該低油圧領域の値を型締力の設定値として適用すると、油圧制御時の油圧バラツキによりFとFの差異(|F−F|)が、前記所定値を超えてしまう虞がある。これを防止する為に、FまたはFの型締力の小さいほうに下限値を設けて、型締力の設定値がバラツキの大きな低油圧領域の値に設定できないようにすることが有効である。
【0036】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態に係る型締装置60について図6を参照して説明する。
型締装置60は、ベースフレーム61の一端側上面に固定金型64を保持する固定ダイプレート62が固設されている。固定ダイプレート62は、固定金型64が取り付けられる取付部621と、ボルトBによりベースフレーム61に固設される固設部622とからなる。本例の場合、固定ダイプレート62の重心近傍と、第1押圧体63の重心近傍で、ボルトBにより固設することにより、固定ダイプレート62と後述する第1押圧体63とが安定して配設されるよう配慮されている。固定ダイプレート62は、取付部621と固設部622とがL字状に一体に形成されており、取付部621と固設部622との交差部分にはリブ624を設けて剛性を高めている。取付部621には、後述するタイバー69が貫通する貫通孔623が形成されている。貫通孔623は、タイバー69の外径よりも十分に大きな内径を有している。
【0037】
型締装置60は、固定ダイプレート62の固定金型64が取り付けられる面と対向する面(以下、背面)に接する第1押圧体63を備えている。第1押圧体63は、シリンダ形成部631と、シリンダ形成部631から固定ダイプレート62に向けて突出する押圧部632とから構成される。シリンダ形成部631の下端には、摺動板633が取り付けられ、この摺動板633を介して第1押圧体63は、固定ダイプレート62の固設部622に載置されている。したがって、第1押圧体63は、固定ダイプレート62の取付部621に対して、進退移動が可能である。固設部622は、その後端が第1押圧体63の背面よりも後側まで延設されているので、第1押圧体63は、安定して固設部622に載置される。
【0038】
シリンダ形成部631には、ストロークが小さくかつ断面積の大きな4基の型締シリンダ70が、その四隅に設けられている。型締シリンダ70の中を摺動するラム74はその一側面にそれぞれタイバー69が直結されている。型締シリンダ70には、図示しない油圧機構が接続されており、タイバー69による型締力を調整できるようになっている。
押圧部632は、固定ダイプレート62の背面に接し、タイバー69による型締力に応じて、固定ダイプレート62の取付部621を移動ダイプレート65に向けて押圧する。
なお、図6には、油圧シリンダ、ボールネジ機構といった移動ダイプレートの移動機構の記載が省略されている。
【0039】
ベースフレーム61の他端側上面には固定ダイプレート62に対向して可動金型67を保持する移動ダイプレート65が配設される。移動ダイプレート65は、可動金型67が取り付けられる取付部651と、ベースフレーム61に摺動可能に載置される摺動部652とからなる。移動ダイプレート65は、取付部651と摺動部652とがL字状に一体に形成されており、取付部651と摺動部652との交差部分にはリブ654を設けて剛性を高めている。取付部651には、タイバー69が貫通する貫通孔653が形成されている。貫通孔653は、タイバー69の外径よりも十分に大きな内径を有している。
ベースフレーム61上には、ガイドレール71が敷設されており、このガイドレール71にガイドされたリニアベアリング72が、摺動部652を介して移動ダイプレート65を支持している。
【0040】
型締装置60は、移動ダイプレート65の可動金型67が取り付けられる面と対向する面(以下、背面)に接する第2押圧体66を備えている。第2押圧体66は、タイバー固定部661と、タイバー固定部661から移動ダイプレート65に向けて突出する押圧部662とから構成される。タイバー固定部661の下端には、摺動板663が取り付けられ、この摺動板663を介して第2押圧体66は、移動ダイプレート65の摺動部652に載置されている。したがって、第2押圧体66は、移動ダイプレート65の取付部651に対して、進退移動可能である。
タイバー固定部661には、タイバー69が貫通する貫通孔664が、その四隅に設けられている。各タイバー69の先端部は、それぞれ等ピッチの複数のリング溝部が形成されており、タイバー固定部661の背面には、各タイバー69のリング溝部と噛合する割ナット73が設けられている。各タイバー69のリング溝部と割ナット73とが噛合うことにより、タイバー69はタイバー固定部661に固定される。
押圧部662は、移動ダイプレート65の取付部651の背面に接し、タイバー69による型締力に応じて取付部651を押圧する。
【0041】
以上の型締装置60は、タイバー69と割りナット73とが結合された後、図示しない油圧機構を動作させて型締シリンダ70の型締側室を昇圧して圧縮型締めを行う。そうすると、固定ダイプレート62の取付部621は第1押圧体63の押圧部632から押圧され、移動ダイプレート65の取付部651は第2押圧体66の押圧部662から押圧され、固定金型64と可動金型67との間に所望する型締力が生じる。
【0042】
第1押圧体63及び第2押圧体66は、タイバー69による型締力を曲げモーメントとして直接受けるので、第1押圧体63は主にシリンダ形成部631が湾曲し、第2押圧体66は主にタイバー固定部661が湾曲する。第1押圧体63は、摺動板633を介して固定ダイプレート62の固設部622に載置されているから、第1押圧体63(シリンダ形成部631)に湾曲が生じても、この湾曲に基づく応力は、他の部分に影響を与えない。第2押圧体についても同様である。
【0043】
一方で、固定ダイプレート62の取付部621は第1押圧体63の押圧部632から押圧されるが、この押圧は曲げ撓み量の小さい中央部の面接触によるものであるから、取付部621には第1押圧体63の曲げ変形は伝搬しないとみなせる。同様に、移動ダイプレート65の取付部651は第2押圧体66の押圧部662から押圧されるが、この押圧は曲げ撓み量の小さい中央部の面接触によるものであるから、取付部651には第2押圧体66の曲げ変形は伝搬しないとみなせる。その結果、固定ダイプレート62、移動ダイプレート65には、湾曲が生じない。したがって、型締装置60は、不均等型締を行なったとしても、型締装置60の構成部材、例えばベースフレーム61、ボルトB、さらに図示は省略したが、油圧シリンダ、ボールネジ機構といった型開閉機構に、過大な応力が生ずるのを避けることができる。
【0044】
第3実施形態に係る型締装置60は、第1押圧体63は固定ダイプレート62の固設部622に載置され、第2押圧体66は移動ダイプレート65の摺動部652に載置されたが、金型重量が各ダイプレートの剛性に対し十分軽い場合は、第1押圧体63と第2押圧体66は、直接、ベースフレーム61に摺動板(633、663)を介してそれぞれ載置する構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態に係る型締装置の構成を示す部分断面図である。
【図2】第1実施形態に係る型締装置が応力を算出しながら型締動作を行う手順を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係る型締装置の構成を示す部分断面図である。
【図4】第2実施形態に係る型締装置における型締力の入力パネルを示す図である。
【図5】第2実施形態に係る型締装置に型締力を入力してから動作するまでの手順を示すフローチャートである。
【図6】第3実施形態に係る型締装置の構成を示す部分断面図である。
【図7】射出成形機に用いられる従来の型締装置を示す部分断面図である。
【図8】従来の型締装置の固定ダイプレート及び移動ダイプレートに生ずる湾曲を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
10,50,60…型締装置
11,61…ベースフレーム
12,62…固定ダイプレート、13,65…移動ダイプレート、14,64…固定金型、15,67…可動金型
16,74…ラム、17,69…タイバー
18,70…型締シリンダ、18a…型締側室、18b…型開側室
20,21…軸受箱、22…サーボモータ、23,24…動力伝達ギア、25…ボールねじ軸、29,73…割ナット
31,52…コントローラ
32〜34…センサ
35…油圧機構
53…操作パネル、54…入力キー、55…上型締力表示部、56…下型締力表示部
621…取付部、622…固設部、623…貫通孔
651…取付部、652…摺動部、653…貫通孔
63…第1押圧体、631…シリンダ形成部、632…押圧部、633…摺動板
66…第2押圧体、661…タイバー固定部、662…押圧部、663…摺動板、664…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、
前記ベースフレームに固設され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、
前記固定ダイプレートに対して進退可能に前記ベースフレームに配設され、可動金型を保持する移動ダイプレートと、
前記移動ダイプレートを前記固定ダイプレートに対して進退移動させるダイプレート移動手段と、
前記固定ダイプレート又は移動ダイプレートのいずれか一方に設けられる型締シリンダと、
一端に形成されたラムが前記型締シリンダに配置され、他端が前記固定ダイプレート又は移動ダイプレートのいずれか一方に対して固定される複数のタイバーと、を備え、
前記型締シリンダへの作動流体の供給を調整することにより、前記タイバーを介して前記固定金型と前記可動金型とを所定の力で型締めをする型締装置であって、
型締動作の過程で、前記型締装置の所定部位に生ずる応力を検知し、検知された前記応力が、所定の基準応力を超える場合には、前記型締動作を停止させることを特徴とする型締装置。
【請求項2】
前記型締装置の所定部位は、
前記ベースフレーム、前記移動ダイプレート移動手段、前記移動ダイプレートもしくは前記固定ダイプレートを前記ベースフレームに固設するボルト及び前記タイバーのいずれかに設けられることを特徴とする請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
ベースフレームと、
前記ベースフレームに固設され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、
前記固定ダイプレートに対して進退可能に前記ベースフレームに配設され、可動金型を保持する移動ダイプレートと、
前記移動ダイプレートを前記固定ダイプレートに対して進退移動させるダイプレート移動手段と、
前記固定ダイプレート又は移動ダイプレートのいずれか一方に設けられる型締シリンダと、
一端に形成されたラムが前記型締シリンダに配置され、他端が前記固定ダイプレート又は移動ダイプレートのいずれか一方に対して固定される複数のタイバーと、を備え、
前記型締シリンダへの作動流体の供給を調整することにより、前記タイバーを介して前記固定金型と前記可動金型とを所定の力で型締めする型締装置であって、
前記タイバーは、第1タイバーと、前記第1タイバーに対し、ダイプレートの中心線対象に位置する第2タイバーとからなり、
前記第1タイバーによる型締力と前記第2タイバーによる型締力との差が、所定値を超える場合には、型締動作が行われないことを特徴とする型締装置。
【請求項4】
前記中心線が水平線または垂直線のいずれか一方であることを特徴とする請求項3に記載の型締装置。
【請求項5】
前記型締装置は、第1タイバーによる型締力と前記第2タイバーによる型締力とを設定する型締力設定手段を備え、
前記型締力設定手段は、前記第1タイバーによる型締力と前記第2タイバーによる型締力との差が、所定値を超える場合には、当該型締力を設定出来ない処理を行う制御装置を備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の型締装置。
【請求項6】
ベースフレームと、
前記ベースフレームに固設され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、
前記固定ダイプレートの前記固定金型が取り付けられる面と対向する面に接する第1押圧体と、
前記固定ダイプレートに対して進退可能に前記ベースフレームに配設され、可動金型を保持する移動ダイプレートと、
前記移動ダイプレートの前記可動金型が取り付けられる面と対向する面に接する第2押圧体と、
前記第1押圧体又は前記第2押圧体のいずれか一方に設けられる型締シリンダと、
一端に形成されたラムが前記型締シリンダに配置され、他端が前記第1押圧体又は前記第2押圧体に対して固定される複数のタイバーと、を備え、
前記タイバーによる型締力が、前記第1押圧体から前記固定ダイプレートに、また、前記第2押圧体から前記移動ダイプレートに伝達されて前記固定金型と前記可動金型とが所定の力で型締可能であり、且つ前記第1押圧体と前記第2押圧体の少なくとも一方が前記ベースフレームに対し固設されていないことを特徴とする型締装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−110948(P2010−110948A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284143(P2008−284143)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(505139458)三菱重工プラスチックテクノロジー株式会社 (50)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】