説明

基体上の誘電体層とその作製方法

【課題】半導体装置等において、薄型で容量が大きく、かつ、少ないスルーホール発生率の誘電体膜を提供する。
【解決手段】第1の基体、第1の誘電体材料からなる第1の基体上の誘電体層であって、誘電体層が誘電体膜厚を有し、第1の基体との境界面から誘電体層の半対面まで通じるスルーホールに貫通される誘電体層、及び、スルーホールを少なくとも部分的に塞ぐ第2の誘電体材料からなる装置、並びに、そのような装置を作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基体上の誘電体層とその作製方法に関する。本発明はさらにそのような基体上の誘電体層とその作製方法を取り入れたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
基体上の誘電体膜には多くの用途がある。例えば、誘電体膜を導体基体に積層した薄膜電界効果トランジスタ(TFET)や他の超小型能動電子素子が作製できる。さらに、絶縁された2つの導電電極に誘電体膜を組み込んだコンデンサも作製できる。これらのような又は他のデバイスにおいて、誘電体膜の有効比誘電率及び容量はそのデバイスの全体的な性能を決める上で重要な役割を果たす。
【0003】
誘電体膜の厚さが増すにつれ、絶縁体としての能力が大きくなる。導電膜の厚みを一方の表面から他方の表面に完全に貫通するピンホール(いわゆる「スルーホール」)の発生率もそれに従って減る。しかしながら、誘電体膜の厚さが増すにつれ、誘電体膜の容量が減ることになる。一般的なTFETにおいて、誘電体膜の厚さが増すにつれ、半導体のチャネル領域の導電性に影響を与えるゲート電極の能力が弱められる。一般的なコンデンサにおいて、2つの導体基体間の間隔が広がるとデバイスの容量が減る。それゆえ、コンデンサの電荷を蓄える能力は減少する。
【0004】
従って、電荷のリークや不足を引き起こす誘電体膜のスルーホール回避の要求と、容量増加への要求とは、誘電体膜の厚さを、それぞれ、減したいあるいは増やしたいといった相容れない設計を要求することになる。
【0005】
薄型で容量が大きく、かつ、少ないスルーホール発生率の誘電体膜が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によると、基体上に形成された第1の誘電体材料からなり、そのスルーホールが第2の誘電体材料に充填される膜が提供される。
【0007】
一つの具体例において、第1の基体、第1の誘電体材料からなる第1の基体上の誘電体層であって、誘電体層が誘電体層の厚みを有し、第1の基体との境界面から誘電体層の反対面まで通じるスルーホールに貫通される誘電体層、及び、スルーホールを少なくとも部分的に塞ぐ第2の誘電体材料からなる装置が提供される。他の具体例において、第2の誘電体材料が相互に隣接する一対のスルーホールを、相互に隣接する一対のスルーホール間に連続する膜を形成することなく、少なくとも部分的に塞ぐ装置が提供される。追加的な具体例において、誘電体層が誘電体層の一表面に面の粗さをもたらすピットからなり、第2の誘電体材料はその粗さを減らすようにピットを少なくとも部分的に埋める装置が提供される。さらなる具体例において、誘電体層が誘電体層の一表面上のバンプからなり、バンプを囲む領域は少なくとも部分的に第2の誘電体材料で平らにされる装置が提供される。
【0008】
他の具体例において、第1の基体及び誘電体層からなる装置を作製する方法が提供され、その方法は、第1の基体を提供するステップ、第1の誘電体材料からなる誘電体層であって、誘電体層が誘電体層の厚みを有し、第1の基体との境界面から誘電体層の反対面まで通じるスルーホールに貫通される誘電体層を第1の基体上に提供するステップ、及び、スルーホールを少なくとも部分的に塞ぐ第2の誘電体材料を提供するステップからなる。
【0009】
なお、本発明のより充実した理解が発明の他の特徴や効果とともに以下の詳細な説明とそれに伴う図面から明確になされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、上記の限定的でない具体例の説明を下記の図面を参照して読むことでよりよく理解されるであろう。
なお、例示の図面は実寸法ではなく、単に模式したものである。従って、本発明の特定の寸法を描くことを意図するものではなく、特定の寸法はここに開示されたものの試験を通じて熟練の職人によって決められるものである。
【図1】図1は本発明で作製される代表的なTFET100の断面透視図である。
【図2】図2は図1のTFETの一部分を示す図である。
【図3】図3は本発明で作製される代表的なコンデンサ300の断面透視図である。
【図4】図4は図1及び図2に示されるTFETを作製する方法400の具体例を示すフローチャートである。
【図5】図5は図3に示されるコンデンサを作製する方法500の具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は付随する図面を参照してより詳しく説明され、図面にはいくつかの具体例が示される。しかしながら、本発明は様々な形態で具現化されるものなので後述の具体例に限定して解釈されるものではない。むしろ、これらの具体例はこの開示が発明の範囲が当業者に充分伝わるように提供されるものである。
【0012】
本発明によると、基体上に第1の誘電体前駆体成分から形成された薄膜が、スルーホールを第2の誘電体前駆体成分で充填して提供される。第1の誘電体前駆体成分から形成された膜は不規則な又は規則的な構造を有する。さらに、そのような基体上の誘電体膜を作製する好例が提供され、その方法において第2の誘電体前駆体成分がスルーホールの中に優先的にメッキされるように導かれる。TFETやコンデンサをはじめとする基体上の誘電体膜からなるデバイスを含む具体例もまた提供される。
【0013】
図1は本発明に従って作製される好例となるTFET100の断面透視図を示すものである。TFET100は絶縁基体105、導体基体110、誘電体層115、半導体層120、ソース電極125及びドレイン電極130からなる。
【0014】
導体基体110は絶縁基体105を覆い接触している。誘電体層115は導体基体110を覆い接触している。半導体層120は誘電体層115を覆い接触している。ソース電極125、ドレイン電極130及び導体基体110は、図示されていないが例えば集積回路等の外部回路により電気的な作用関係にある。
【0015】
絶縁基体105は導体基体110の構造的支持を担い、導体基体110とは電気的に絶縁されている。誘電体層115は、導体基体110と半導体層120間の漏れ電流を効果的に最小にする一方、導体基体110が半導体層120の導電性に影響を及ぼすようにして、半導体層120を導体基体110から分離している。電荷キャリアの電流はソース電極125とドレイン電極130間に半導体層120を介して流れる。導体基体110は、TFET10を動作させる半導体層120の導電性を制御するゲート電極の役割を持つ。
【0016】
絶縁基体105は導体基体110の構造的支持を与え、また、不要な電荷の放散が導体基体110に印加されるのを防止するために導体基体110を絶縁するという2つの目的を果たすものである。絶縁基体105は、例えば、二酸化珪素コーティングされたシリコンウエハのような誘電体材料から、又は、マイラー(商標)ポリエステルシートから作製されることになる。
【0017】
導体基体110はTFET100の動作において半導体層120の導電性を制御するゲート電流を提供する。導体基体110は金属、重度にドーピングされた半導体、導電性セラミックス又は導電性ポリマーのような導電性物質から作製される。適切な金属とは、例えば、アルミニウム、金、銀、ガリウム、インジウム、プラチナ、パラジウム、ニッケル、チタン、銅、合金等である。例えば、電気メッキ、蒸着、鋳造、無電解メッキ、スパッタリンクができる金属であればいずれの金属も使用できる。導電性セラミックスは例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)が含まれる。導電性ポリマーは、例えば、ポリアニリンやポリ(エチレンジオキシチオフェン)(poly(ethylene dioxythiophene)等であり、後者はまた「PEDOT」として知られている。導体基体110は、意図すれば、自身での支持に不十分な厚みの薄膜として形成されることもある。
【0018】
誘電体層115は、電荷の放散が導体基体110に印加されるのを防止するために半導体層120を導体基体110から絶縁し、また、導体基体110にかけられる電界が半導体層120の導電性に影響を及ぼすようにするという2つの目的を果たす。誘電体層115は第1の誘電体前駆体成分から作製される。誘電体層115は無機又は有機合成物のような適切な誘電体前駆体成分から作製されることになる。第1の誘電体前駆体成分は、モノマー、オリゴマー若しくはポリマー系有機材料、又は、無機材料やそれらの混合物等であればよい。この明細書で使用される「混合物」の語は、どのように生成されるものであっても、対応するモノマー、オリゴマー及びポリマーから形成される同等のポリマー、ポリマーの混合物、及び、無機材料からなる合成物と同様に上記からなる他の混合物を広く包含及び包括するものがある。一つの具体例では、誘電体層115は少なくとも約2、好ましくは少なくとも4、さらに好適には少なくとも10の比誘電率を有する。このような比誘電率は単位がなく、そうでない場合は相対誘電率として言及される。他の具体例において、誘電体層115は少なくとも約1×10オーム・センチメートルの抵抗率を有する。他の具体例では、誘電体前駆体成分は、イミド、アクリレート、メタアクリレート、イソシアネート、エポキサイド、ビニルシラン、シルセスキオキサン、シクロアルケン、エタアクリレート等のような誘電体ポリマーを形成するために重合可能な有機化合物からなる。好適な誘電体層115は、例えば、ジルコニウム・ビフェニル-4,4´-ジソフホネート(zirconium biphenyl-4,4’-diphosphonate)の表面成長によって形成することができる。Katz, H.E.他、「Chemistry of Materials」、第5巻1162−1166ページ(1993年)が参照される。他の好適な誘電体層115は、例えば、ポリノルボルネン(polynorbornenes)又はポリシクロペンタジエン(polycyclopentadienes)の表面成長、環を開いた重合物による派生物等によって、「Grubbs触媒」として知られるベンジリデンルテニウム(benzylideneruthenium)ジクロライド複合体を用いて形成することができる。これらの試料はSigma-Aldrich社から市販されている。
【0019】
一つの具体例では、第1の誘電体前駆体成分は生成される誘電体層115の全体的な比誘電率を増大させる目的で高い誘電性の材料からなる。そのような具体例では、高誘電体材料は他の部材中に浮遊する粒子状物質の形態をとることになり、結果として誘電体層115中の不均質をもたらす。これらの不均質部はスルーホール、ピット及びバンプを含むものであるが、下記により改善される。ここで、ピットとは誘電体層115の表面のくぼみであり、バンプとは表面上の隆起部のことである。好適な高誘電体材料とは、例えば、チタン二酸化物、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、他のチタン、バリウム、ストロンチウム、ランタン及び/又はジルコニウムからなる酸化化合物等である。具体的には、本願と同時に出願された米国特許出願;出願番号 、発明者:Howard E.Katz 及び Ashok J.Maliakal、発明の名称「LAYER INCORPORATING PARTICLES WITH A HIGH DIELECTRIC CONSTANT」の全体がここに取り入れられ、参照される。
【0020】
他の具体例において、第1の誘電体前駆体成分は半導体層120の作製のために選定される半導体に対して非放射性となるように選択される。このようにして、誘電体層115によってもたらされる半導体層120の劣化を最小限にすることができる。
【0021】
一つの具体例では、誘電体層115は充分に薄いので、スルーホール135及び140に例示される不均質部は、導体基体110と誘電体層115の境界面145から誘電体層115と半導体層120の境界面150までの厚さtに亘って充分に伸びている。この要領で、誘電体層115を充分に薄くして導体基体110にかかる電界が半導体層120の導電性により強く影響を及ぼすようにしている。これにより誘電体層115は高い容量を持つ。しかしながら、そのようなスルーホールを放置すると、誘電体層115はまた境界面145と150との間の大きな漏れ電流を伝導させてしまう。
【0022】
図2は図1のTFETの境界面150上の代表的なピンホール135及び140を含む一部分を示すものである。代表的スルーホール135及び140は厚さtを完全に貫通しているが、それらは図1に示されるそのようなスルーホール間の平均間隔wより実質的に小さい直径dとして表される平均径を持つ。ここで、誘電体層115は、導体基体110上をスルーホール等による不連続部分を除いて広く覆う連続的な物質である。一つの具体例では、wはdよりも少なくとも5倍大きい値である。他の具体例では、wはdよりも少なくとも10倍大きい値である。さらに、この具体例では、スルーホール135及び140で例示される誘電体層115中のスルーホール部は、それぞれ136及び141で示される第2の誘電体材料によって少なくとも部分的に塞がれる。誘電体層115中のそのようなスルーホールの部分的な遮断によって導体基体110と半導体層120間の漏れ電流の発生はそれだけ減少する。この方法において、それに続くスルーホールの少なくとも部分的な遮断は、そうしなかった場合にもたらされる過大な漏れ電流を許容レベルまで減らすことができるので、比較的薄型の誘電体層115の作製が容易になる。また、従って、誘電体層115の作製に使用される第1の誘電体前駆体成分において実質的に大きいスルーホール密度が許容される。
【0023】
一つの具体例では、第2の誘電体材料のメッキはスルーホール135及び140で例示されるスルーホールにおいて局所化するように導かれる。これゆえ、第2の誘電体材料は、個別の、不連続の、かつ、相互に絶縁された領域において、誘電体層115と半導体層120の境界面150で頻繁にメッキされる。例えば、第2の誘電体材料は、図1に示される代表的スルーホール142及び143の隣り合う一対をその隣り合う一対のスルーホール間に亘る膜を形成することなく、少なくとも部分的に遮断することになる。従って、第2の誘電体材料で形成される連続的な層は存在しない。従って、第2の誘電体材料は誘電体層115の全体的な平均的厚さtを大勢に影響のない程度に増す。第2の誘電体材料を配置して導体基体110と半導体層120間のスルーホールを介した蓄積する電気的作用を効果的に減らすことは、「スルーホールに局所化された」という語を参照して広義に解釈される。具体的には、第2の誘電体材料は、境界面150付近に、かつ、発生したスルーホールの内部、開口部内又は開口部上に位置することになる。図2は代表的なスルーホール135及び140の開口部が、第2の誘電体材料から形成されるプラグ136及び141によって少なくとも部分的に塞がれるのを示すものである。スルーホールのある部分が塞がれるのでそのようなスルーホールを介した漏れ電流の伝導が阻止されることは、「少なくとも部分的に塞がれた」という語を参照して広義に解釈される。発生したスルーホールは完全に塞がれる。
【0024】
他の具体例では、第2の誘電体材料のメッキは、ピット155及び160並びに表面バンプ165及び170によって例示される誘電体層115上の局所的な粗い部分を埋めたり平らにしたりするように導かれる。誘電体層115と半導体層120間の境界面150でピット及び表面バンプの周辺を、個別の、不連続の、かつ、相互に絶縁された領域において第2の誘電体材料でメッキすることによりピットが埋められ、バンプを囲む領域が平らにされる。図2は、誘電体層115における表面の粗さをもたらす境界面150での代表的ピット155及び160並びにバンプ165及び170を示すものである。ピット155及び160は、粗さを減らすようにピットを少なくとも部分的に埋める第2の誘電体材料から形成されるプラグ156及び161によって平らにされ、バンプ165や170を囲む領域は、第2の誘電体材料から形成されるテーパー状のメッキ物166及び177で少なくとも部分的に平らにされる。誘電体層115上の半導体の大きい単結晶のその後の成長は、境界面150での表面のなだらかさを増すことで促進される。従って、半導体の大きい単結晶の形成が可能となる。
【0025】
一つの具体例では、使用される第2の誘電体材料成分はスルーホール中で効果的に局所化され得る誘電体材料とその誘電体材料の前駆体から選択される。具体的には、第2の誘電体材料の局所化されたメッキは、電界を導体基体110にかけることで誘導され、漏れ電流として境界面145からスルーホール135及び140を介して導電され、選択的に境界面150に到達する。この場合、第2の誘電体材料の局所化されたメッキは境界面145、境界面150のスルーホール付近で及びスルーホール内の境界間のどこでも起こり得る。一方、反応開始剤は境界面145で導体基体110上に提供される。誘電体層115のメッキに続いて、反応開始剤の曝露はスルーホール下面の境界面145で局所的な領域に制限される。さらに、反応開始剤は誘電体層115上の境界面150に付加され、スルーホール、ピット及びバンプの近くのみに位置する活性開始剤を残して選択的に不活性化される。その後のいずれかのこれら好適な方法による第2の誘電体材料のメッキは、スルーホール、ピット及びバンプを囲む領域上での局所化される重合のような選択的反応となる。
【0026】
ここで、スルーホールで局所化された第2の誘電体材料のメッキは電荷を導体基体110に印加することで誘導され、電荷による吸着が可能ないずれのモノマー、オリゴマー又はポリマー系誘電体材料も使用され得る。一つの具体例では、第2の誘電体材料とスルーホール間の吸着力を増大させるために、第2の誘電体材料成分には電荷、酸化可能又は還元可能な部分が与えられる。
【0027】
ここで、スルーホール内、ピット上及びバンプの周囲で局所化された第2の誘電体材料のメッキは反応開始剤によって誘導され、第2の誘電体材料として選択された成分に重合反応のような反応を誘発するのに適切なものであればいずれの開始剤でも利用され得る。開始剤は自由基重合、開環置換、光重合等のような反応を開始するのに使用される。
【0028】
第2の誘電体材料を生成するのに使用する典型的な前駆体は、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、フェノール、アルキルフェノール、ヒドロキシアルキルフェノール、アリルフェノール、フェールアミド、フェノールアミン、スチレン、アクリレート、フェノールエステル等である。例えば、α-ブロモ-α、α-ジアルキルアセテート(dialkylacetate)エステル等が、銅ブロマイド-4,4´-ジノニルビピリジン(copper bromide-4,4’-dinonylbipyridine)複合物の存在下でスチレンとアクリレートのラジカル重合を制御するための適切な開始剤となる。さらに、Grubbs触媒は変形シクロアルケンの開環置換重合に好適である。
【0029】
半導体層120成分は、上述の他の選択される物質との親和性だけでなく、所望の導電性能を与える能力によって選択される。半導体は有機物若しくは無機物又は有機及び無機要素両方からなるものであればよい。ナノチューブやナノワイヤが使用できる。半導体はモノマー、オリゴマー又はポリマー系であればよい。一つの具体例では、半導体は例えばペンタンのようなアセン類である。さらに他の具体例では、5,5´-ビス-(4-エチルフェニル)2,2´-ビチオフェン(5,5’-bis-(4-ethylphenyl)2,2’-bithiophene)又は5,5´-ビス-(8-フッ化ヘキシル-1-イル)2,2´-ビチオフェン(5,5’-bis-(8-hexylfluorine-1-yl)2,2’-bithiophene)のようなビチオフェンが半導体として用いられる。さらなる具体例にでは、セクシチオフェン(sexithiophene)又はベンゾチオフェン(benzothiophene)二量体が半導体として用いられる。使用できるさらに好適なチオフェン化合物は、無置換の又は第5枝で線形アルキル又はアルクオキサルキル(alkoxyalkyl)鎖の約4から約12の長さの原子で置換された2,5-環チオフェン4量体、5量体及び6量体、例えばジヘキシルアントラジチオフェン(dihexylanthradithiophene)を含むアントラジチオフェン(anthradithiophene)及びその末端ジアルキル派生物、配向規則ポリ(3ヘキシルチオフェン)(regioregular poly(3-hexylthiophene))、並びに、例えば1,4-bis-(5-(5-ヘキシルシエン-2-イル)シエン-2-イル)ベンゼン(1,4-bis(5-(5-hexylthien-2-yl)thien-2-yl)benzene(DHT4Ph)を含むチオフェンオリゴマーとして記述されるような無置換又は置換された2,5-環チオフェン環の共通オリゴマー及び約5環分の長さの1,4-環ベンゼン環などである。DHT4Phは公知の方法に従って合成される。好適な方法は、ベンゼン環の元として1,4-ジヨードベンゼンを用いてヘキシレーテッド5-及び6-環化合物を生成ためのものとして、W. Li 氏他, Chem. Mater.、第11巻の458ページ(1999年)(「Li氏の記事」)に記載されている。例えば、アントラセン(anthracene)、ペンタンス(pentance)、ヘキサンス(hexance)等の他の置換された又は無置換のアセン類、他のビチオフェン、他のチオフェン、例えば銅フタロシアニン(phthalocyanine)及びフッ素化合された銅フタロシアニン、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸ジイミド化合物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、11,11,12,12-テトラシアノナフト-2,6-キノジメタン(11,11,12,12-tetracyanonaphtho-2,6-quinodimethane)等のフタロシアニン(phthalocyanines)がまた用いられる。具体的には、Dimitrakopoulos氏他の米国特許番号5981970、Bauntech氏他の米国特許番号5625199、Garnier氏他の米国特許番号5347144及びKlauck,Hagen氏他の「Deposition:Pentacene organic thin-film transistor and ICs」Solid State Technology,第43巻、第3号、3月2日、63−75ページ等が参照される。上記の特許及びこの段落で引用したLi氏の記事の全容はそれらを参照してここに取り入れられている。膜内に形成される時に電荷キャリアを伝導する能力のある他の有機化合物もまた使用できる。
【0030】
使用され得る好適な無機半導体には、元素のシリコン、元素のテルリウム、砒化ガリウム、硝酸インジウム、燐化インジウム、硝酸アルミニウム、硝酸インジウム、ガリウムアンチモン、インジウムアンチモン、アルミニウムアンチモン、硝酸アルミニウムガリウム、砒化アルミニウムガリウム、アルミニウムガリウムアンチモン、ガリウムアルミニウムアンチモン、インジウムガリウムアンチモン、砒化ガリウムアンチモン、砒素燐化インジウムガリウム、砒化インジウムアルミニウムガリウム、硝酸インジウムアルミニウムガリウム、インジウムアルミニウムガリウムアンチモン、硫黄化鉛、カドミウムセレン、硫黄化スズ、硫黄化カドミウム、亜鉛セレン、ビスマス、セレニウムなどがある。例えば、ガリウム、砒素、インジウム、燐酸、アルミニウム、窒素、アンチモン、鉛、硫黄、カドミウム、セレニウム、スズ、亜鉛又はビスマスから選択される2又はそれ以上の元素、又は、3、4若しくは5属の元素からなるもの等の他の半導体がまた使用できる。
【0031】
好適なソース電極125及びドレイン電極130は上記で説明されるような導体基体110の作製に好適な材料と同じもので作製できる。
【0032】
図3は本発明で作製される代表的なコンデンサ300の断面透視図である。コンデンサ300は誘電体層310が挿入された導体305及び315からなる。挿入された誘電体層310は導体305及び315から互いに電気的に絶縁されている。導体305及び315は集積回路等の図示されない外部回路により電気的な作用関係にある。
【0033】
導体305及び315はコンデンサ300の動作中に逆極性の電荷を保持する能力を持つ。適切な動作を保つために、コンデンサ300はそのような逆極性の電荷を挿入された誘電体層310を介したリークによる電荷の放散を最小限にしてそれぞれ導電体305及び315上に保つことが必要である。コンデンサ300の容量は、通常、導体305及び315の表面積に比例し、両導体間の距離に反比例する。さらに容量は導体305及び315を離隔する誘電体層310の誘電率に線形的に依存する。コンデンサ300の全体の厚さxは容量を最大にするために可能な限り小さくするのが望ましい。しかしながら、誘電体層310の厚さy自身は容量増加を助長するために小さくされるが、誘電体層310を介した電荷のリークの可能性が高まる。本発明によれば、誘電体層の厚さyの減少は結果として増加される容量をもって容易にできる一方、誘電体層310を介した導体間の電荷のリークの可能性を許容できる程度に低く保つものである。
【0034】
導体305及び315の各々は、金属、重度にドープされた半導体、導電性セラミック又は導電性ポリマー等の導電性物質から作られる。好適な金属は、例えば、アルミニウム、金、銀、ガリウム、インジウム、プラチナ、パラジウム、ニッケル、チタン、銅、合金などである。例えば、電気メッキ、蒸着、鋳造、無電解メッキ、スパッタリンクができる金属であればいずれの金属も使用できる。導電性セラミックスは例えば酸化インジウムスズ(ITO)が含まれる。導電性ポリマーは、例えば、ポリアニリンやポリ(エチレンジオキシチオフェン)等であり、後者はまた「PEDOT」として知られている。導体305及び315は、意図すれば、自身での支持に不十分な厚みを持つ薄膜として形成されることもある。
【0035】
誘電体層310は、図1及び2に関連して説明したようにTFET100の誘電体層115の作製に用いられるのと同じ第1の誘電体前駆体成分で構成される。一つの具体例では、コンデンサ300の作製に用いられる第1の誘電体前駆体成分は、結果としてできる誘電体層310の全体的な比誘電率を増加させる目的で高い比誘電率の物質からなる。そのような具体例においては、高誘電体材料は他の部材中に浮遊する粒子状物質の形態をとることになり、結果として誘電体層310中の不均質をもたらす。これらの不均質部はスルーホール等であるが、下記により改善される。コンデンサ300に関しては一般に小さなピットやバンプは重要な問題ではない、それらがあっても導体305及び315は誘電体層310上でメッキ可能だからである。
【0036】
他の具体例では、誘電体層310は充分に薄く不均質なので、スルーホール320及び325に例示されるスルーホールは導体305と誘電体層310の境界面330から誘電体層310と導体315の境界面335までの厚さyに亘って充分に伸びている。この形態において、誘電体層310の厚さを最小限にしてコンデンサ300の作製及び動作の効率を改善している。代表的なスルーホール320及び325は厚さyを貫通しているが、それらはスルーホール間の平均距離sより実質的に小さい直径zとして表される平均径を持つ。従って、そのようなスルーホールによる不連続部を除いて、誘電体層310は導体305及び315間に挿入された広く連続的な物体である。さらに本具体例によれば、スルーホール320及び325に例示される誘電体層310中のスルーホール部は第2の誘電体材料によって少なくとも部分的に片端又は両端が塞がれる。この具体例における第2の誘電体材料は図1及び2に関連して上述したものと同じ成分でよい。誘電体層310中のそのようなスルーホールの少なくとも部分的な遮断は導体305及び315間を流れる漏れ電流の発生を相応に減少させる。この方法において、それに続くスルーホールの少なくとも部分的な遮断は、そうしなかった場合にもたらされる過大な漏れ電流を許容レベルまで減らすことができるので比較的薄い誘電体層310の作製が容易となる。また、スルーホールの実質的に大きい密度は誘電体層310において許容される。
【0037】
一つの具体例では、第2の誘電体材料のメッキはスルーホール320及び325で例示されるスルーホールにおいて局所化するように導かれる。これゆえ、第2の誘電体材料は、個別の、不連続の、かつ、相互に絶縁された領域において、導体305と誘電体層310の境界面330及び誘電体層310と導体315の境界面335で頻繁にメッキされる。従って、第2の誘電体材料で形成される連続的な層は境界面330又は335のどちらにも存在しない。従って、第2の誘電体材料は誘電体層310の全体的な平均厚yを大勢に影響しない程度に増す。第2の誘電体材料を配置して導体305と導体315間のスルーホールを介した蓄積的な電気的作用を効果的に減らすことは、「スルーホールに局所化された」という語を参照して広義に解釈される。具体的には、第2の誘電体材料は境界面330若しくは335又はその両方の付近に、かつ、発生したスルーホールの内部、開口部内又は開口部上に配置されることになる。
【0038】
一つの具体例では、使用される第2の誘電体材料成分はスルーホール中で効果的に局所化され得る誘電体材料とその誘電体材料の前駆体から選択される。具体的には、導体305を誘電体層310へ又はその逆に付加し、そして導体315の作製に先立って電荷を導体305から境界面330に印加することによって第2の誘電体材料の局所化されたメッキが誘導されるので、電荷は代表的スルーホール320及び325を介した漏れ電流として境界面335に選択的に到達する。一方、例えば、反応開始剤は誘電体層310の作製の前に境界面330で導体305上に提供される。誘電体層310の作製後の境界面335における反応開始剤の曝露はスルーホール下面の境界面330の局所化された領域に制限される。さらに、反応開始剤は導体315の作製に先立って誘電体層310上の境界面335に付加され、スルーホールの付近のみに位置する活性開始剤を残して選択的に不活性化される。いずれかのこれら好適な方法によって、後に続く第2の誘電体材料のメッキによってスルーホール内に局所化された第2の誘電体材料の選択的反応が行われる。導体315は誘電体層310上に積層される。第2の誘電体材料成分は図1及び2に関連して述べられたものと同様の成分から選択すればよい。
【0039】
図4は図1及び2に示されるTFET100を作製するための方法400の具体例である。ステップ405において、適切な絶縁基体105が提供される。先に述べたように、絶縁基体105は導体基体110の構造的支持を与え、電荷の不要な放散が導体基体110に印加されるのを防ぐために導体基体110を絶縁する。一つの具体例では、絶縁基体105は二酸化珪素コーティングを有するシリコンウエハのような予め作製された誘電性材料である。他の具体例では、導体基体110は自身で支持するとともに図示されない外部手段によって絶縁される。この場合、絶縁基体105は省かれる。
【0040】
ステップ410において、導体基体110は絶縁基体105上に提供される。一つの具体例では、導体基体110は金などの上述した適切な金属の薄膜又は他の導電性材料で構成される。好適な金の薄膜は絶縁基体105にスパッタリング等のような適切な固体、液体又は気体状態でのメッキプロセスによって付加される。他の具体例では、導体基体110は自身で支持する薄板材料としていずれかの適切なプロセスで作製され、絶縁基体105は省かれる。
【0041】
ステップ420において、誘電体層115が導体基体110上に付加される。導体基体110の露出表面は最初に充分に洗浄される。誘電体層115を作製するために導体基体110が最初にピラニア溶液のような強力な洗浄溶液に曝される。好適なピラニア溶液は硫黄酸(水に対して体積比98%)及び過酸化水素水(水に対して体積比30%)の体積比2:1の混合物からなる。5分程度といった適度な時間のピラニア溶液への曝露に続いて、導体基体110は無イオン超純水で充分に洗浄される。導体基体110の完全な洗浄のための他の従来方法もまた用いることができる。
【0042】
誘電体層115を生成するために第1の誘電体前駆体成分が導体基体110に付加される。具体的には、選択された第1の誘電体前駆体成分が適切な液体で移動可能なようにしてもよいし、表面開始成長、スピンコーティング又は鋳造技術よって導体基体110に付加してもよい。コーティング及び鋳造技術において、誘電体層115は選択された被覆剤又は鋳造合成物の乾燥、重合及び/又は硬化によって固体に変えられる。一つの具体例では、誘電体層115の厚さtは高容量を与えるために充分小さい。一つの具体例では、厚さtは約10nmから約2μmの範囲内のある点で選ばれる。ある具体例では、厚さtは約1μmより小さくなるように選ばれる。さらなる具体例では厚さtは約1/2μmより小さい。またさらなる具体例では誘電体層115内のスルーホールの平均直径は約1nmから約100nmの範囲内である。さらなる具体例ではスルーホールの平均直径は約1nmから約10nmの範囲内である。またさらなる具体例では、誘電体層115は少なくとも単位面積あたり約5ナノファラド(nF/cm)、一般的には少なくとも約10nF/cm、さらに標準的には少なくとも約20nF/cmの容量を持つものとなる。
【0043】
他の具体例では、選択された第1の誘電体前駆体成分は、結果物となる誘電体層115の誘電率を増加させるために高誘電性材料の粒子からなる。結果としてできる誘電体層115が特に軟らかく多孔質で粗いような場合には高誘電性粒子は欠陥をもたらしてしまう。しかし、高誘電体材料の含有により、例えば5μm程度にまで増大した厚さtを持つ誘電体層115の作製、及び、高容量のコンデンサ中の厚膜の使用が容易化される。さらなる具体例では厚さtは約10nmから約2μmの範囲内である。他の具体例では、厚さtは誘電体層115の境界面150においてスルーホールが表面積の約20%以下を、一般的には表面積の約10%以下を、さらに標準的には表面積の1%以下を占めるように選択される。
【0044】
ステップ430において、第2の誘電体前駆体成分は上述したように選択され、誘電体層115上に提供される。具体的には、第2の誘電体前駆体成分は適切な液体による伝達により移動され、スピンコーティング、鋳造又は浸漬によって誘電体層115に付加される。一つの具体例では、そこに連続膜を形成しないように境界面150の他の領域における第2の誘電体前駆体成分の残留を最小限にする一方、境界面150で誘電体層115上のスルーホールやピットを埋め、バンプを囲む領域を平らにするのに好適なように第2の誘電体前駆体成分が誘電体層115に付加される。結果として第2の誘電体前駆体成分は誘電体層115上に個別の、不連続の、かつ、互いに絶縁された領域の形態で残される。
【0045】
一つの具体例では、第2の誘電体前駆体成分は電気メッキを用いて誘電体層115上に選択的に残る。このプロセスによって第2の誘電体前駆体成分は、例えば溶解、懸濁、エマルジョン又は拡散のような適切な液体による伝達で移動される形態で誘電体層115に付加される。一つの具体例では、伝達液中の第2の誘電体前駆体成分の濃度は重量で約1%から約100%の範囲内である。例えば溶解フェノールが使用できる。第2の誘電体前駆体成分が誘電体層115に付加される時、電流が導体基体110に流れる。この方法においては、電流は選択的に誘電体層115をスルーホール135及び140を介して貫流して境界面150に到達する。局所化された電流は第2の誘電体前駆体成分の分子をスルーホールの開口部に引き付ける。第2の誘電体前駆体の化学成分に従って、分子はスルーホールに対して、例えば静電気的に吸着され、イオン化され、重合され、又は結合される。境界面150は電気メッキ電流にそれほど影響されなかった第2の誘電体前駆体成分の分子を除去するために溶剤のような流体で洗い流される。そして、第2の誘電体前駆体成分は第2の誘電体前駆体成分の連続的な膜が境界面150からなくなるように個別の、不連続の、かつ、互いに絶縁された領域で、代表的スルーホールの135及び140内部及び付近のみに残る。他の具体例では、選択的電気メッキプロセスを容易化するために、第2の誘電体前駆体成分の分子、オリゴマー又はポリマーが荷電、酸化又は還元可能なグループに提供される。適切に荷電されたグループは導体基体110に印加された逆極性の電荷に引き付けられる。酸化又は還元可能なグループは互いに、又は、スルーホールの付近で誘電体層115と化学反応するように誘引される。例えば、フェノキサイドは酸化電極に電気的に引き付けられるアニオン系のグループである。さらに、フェノキサイド及びフェノールは酸化電極に固着される酸化中間性生物を形成するグループである。
【0046】
他の具体例では、ステップ420の前に反応開始剤が導体基体110に付加されるステップ415が入る。反応開始剤は第2の誘電体前駆体成分同士または誘電体層との反応に触媒作用を及ぼすか、そうでなくともそれを加速する能力によって選択される。例えば、反応開始剤が第2の誘電体前駆体成分の重合反応を起こさせてもよい。反応開始剤はまた第1の誘電体前駆体成分と導体基体110の密着性を阻害しないように、また、誘電体層115の作製及び機能を劣化又は阻害しないように選択される。
【0047】
選択された反応開始剤は導体基体110に適切なプロセスで付加される。具体的には、選択された反応開始剤は、溶解、懸濁、エマルジョン又は拡散等のような液体による伝達で移動され、導体基体110上に薄い被覆を形成するよう付加される。余分な被覆材料は除去され、薄い被覆が乾燥されるようにする。誘電体層はステップ420と関連して上述されたのと同じ要領で付加される。
【0048】
ステップ430で第2の誘電体前駆体成分が付加された結果、代表的スルーホール135及び140とともに点在するそれらの反応開始剤の被覆部は境界面150にむき出しになる。第2の誘電体前駆体成分は誘電体層115に先に述べたのと同じ要領で付加される。反応開始剤のむき出しになった領域は代表的スルーホール135及び140の開口部での第2の誘電体前駆体成分と相互に反応する。前駆体分子の反応は代表的スルーホール135及び140の付近において境界面150で選択的に起こる。そして、反応開始剤及び前駆体分子の化学物質に従って、分子は例えばイオン化され、重合され、又はスルーホールと結合することになる。そして、境界面150は反応開始剤にそれほど影響されなかった前駆体分子を除去するために溶剤のような流体で洗い流される。都合のよいことに、第2の誘電体前駆体成分は個別の、不連続の、かつ、互いに絶縁された領域で代表的スルーホールの135及び140内部及び付近のみに残る。
【0049】
さらなる具体例では、ステップ430の前に反応開始剤が誘電体層115に付加されるステップ425が入る。反応開始剤は、第2の誘電体前駆体成分との重合反応又はその誘電体層115のすでに形成された部分との反応に触媒作用を及ぼすか、そうでなくとも加速する能力によって選択される。例えば、反応開始剤が前記前駆体分子の重合反応を開始することもある。反応開始剤はまた、誘電体層115の機能を阻害するであろう劣化や他の反応を引き起こさないように選択される。また、都合のよいことに反応開始剤は半導体層のような結果的に付加される基体の適用と干渉することも機能と干渉することもない。
【0050】
選択された反応開始剤は適切なプロセスで誘電体層115に付加される。具体的には、選択された反応開始剤は溶解、懸濁、エマルジョン又は拡散等のような液体による伝達で移動され、誘電体層115上に薄い被覆を形成するよう塗布される。余分な被覆材料は除去され、薄い被覆が乾燥されるようにする。そして、反応開始剤は、代表的スルーホール135及び140の付近の領域を除いて選択的に不活性化され若しくは除去され、又は、選択的にそのようなスルーホールの付近で活性化され若しくはそのようなスルーホールに結合される。
【0051】
一つの具体例では、反応開始剤の誘電体層115への付加に続いて電流が導体基体110に印加される。この態様において、電流は代表的スルーホール135及び140を介して誘電体層115を貫流して境界面150に到達する。そして、局所化された電流は反応開始剤と相互に反応して、例えば反応開始剤を活性化させ、又は、反応開始剤がスルーホール付近で誘電体層に付着するようにする。従って、反応開始剤が誘電体層に選択的に付着された後に、電気メッキ電流でそれほど付着されなかった反応開始剤を除去するために誘電体層115は溶剤のような流体で洗い流される。そのような洗い流しに続いて、又は、もし代わりに反応開始剤が選択的に活性化されると、第2の誘電体前駆体成分の前駆体分子は上述のようにステップ430において付加される。残存の反応開始剤の活性化した領域が代表的スルーホール135及び140の付近において境界面150で第2の誘電体前駆体成分の分子と選択的に反応する。前駆体分子は反応開始剤及び選択された第2の誘電体前駆体成分の化学成分によって、例えば静電気的に引き付けられ、イオン化され、重合され、又は、スルーホールに結合されることになる。そして、それほど反応開始剤に影響されなかった前駆体分子を除去するために境界面150は溶剤のような液体で適切に洗い流される。そして、好ましくは、第2の誘電体前駆体成分は個別の、不連続の、かつ、互いに絶縁された領域で代表的スルーホールの135及び140内部及び付近のみに残る。誘電体層115上で境界面150に形成された第2の誘電体前駆体成分の膜はない。
【0052】
他の具体例では、誘電体層115上で反応開始剤の薄い被覆の形成に続いて反応開始剤が選択的に抑制される。一つの具体例では、選択された反応開始剤の薄い被覆上に不活性化の能力を持つ成分を選択的にメッキするための適切なプロセスが用いられる。この不活性化成分の被覆は、代表的スルーホール135及び140、代表的ピット155及び160並びに代表的バンプ165及び170を囲む領域が不活性成分によって不十分に被覆されるように選択的に行われる。
【0053】
例えば、反応開始剤を不活性化する能力のある成分の薄い膜で平らな打ち抜き表面を被覆することができる。そして、平らな抜き打ち表面は反応開始剤の薄い被覆上に付加される。そして、反応開始剤は、抜き打ちの平らな表面によって充分に被覆されない代表的スルーホール135及び140、代表的ピット155及び160並びに代表的バンプの頂点を囲む傾斜面の付近のみで活性化している。第2の誘電体前駆体成分はステップ430において上述の要領で付加される。そして、反応開始剤の活性化された領域は境界面150上で代表的スルーホール、ピット及びバンプの付近の第2の誘電体前駆体成分の分子と選択的に反応する。第2の誘電体前駆体成分の分子、オリゴマー又はポリマーが反応開始剤及び選択された第2の誘電体前駆体成分の化学成分によって、例えばイオン化され、重合され又はスルーホール、ピット及びバンプを囲む領域に結合される。そして、境界面150は反応開始剤にそれほど影響されなかった第2の誘電体前駆体の部分を除去するために溶剤のような流体で洗い流される。そして、好ましくは、第2の誘電体前駆体成分は個別の、不連続の、かつ、互いに絶縁された領域で代表的スルーホールの135及び140、代表的ピット155及び160並びに代表的バンプ165及び170の頂点を囲む領域の内部及び付近のみに残る。誘電体層115上で境界面150に形成された第2の誘電体前駆体成分の膜はない。この具体例の一つの利点は、境界面150で誘電体層115によって形成された粗い面をピット及びバンプの不均質部を除去することによって平らにすることができることである。半導体の単結晶の最大成長の可能性は誘電体層115の平坦さに直接比例するので、この具体例は後の半導体層120の付加において特に有益である。例えば、ラジカル重合開始剤は4-ter-ブチルカテコール(4-tert-butylcatechol)のようなラジカルトラップ剤及び第1アミンのような強配位子によって不活性化できる。さらに、例えば、強酸、塩基及び酸化剤がGrubbs触媒を不活性化するために用いることができる。
【0054】
代替例として、不活性成分が代表的スルーホール135及び140又は代表的ピット155及び160を貫通できないようにするために、不活性成分を境界面150上に斜めの蒸着刻み込みによって付加することができる。
【0055】
ステップ435において、半導体成分が選択されるとともに半導体層120が誘電体層115に付加される。半導体成分を、例えば真空昇華、溶剤からの液体膜若しくはスピン鋳造、印刷、軽い浸漬、浸漬又は蒸着よって付加できる。
【0056】
ステップ440において、ソース電極125及びドレイン電極130が半導体層120上に付設される。例えば、スチールシャドウマスクが半導体層120の表面上に、それらの電極が位置する表面の部分を露出したまま配置される。そして、半導体層120を含む部分的に作製されたデバイスはベルジャーのような適切な真空チャンバーにセットされ、その後排気が行われる。金の蒸発源金属もまた真空チャンバーにセットして、加熱蒸発し、シャドウマスク上から金メッキしてソース及びドレイン電極――それぞれ125及び130――を作製する。
【0057】
図5は、図3に示すコンデンサ300を作製するための方法500の具体例を示すものである。ステップ510において、導体305が例えば後に外すことができるリリース基体上に形成される。他の具体例では、導体305は例えば金等の上述のような適切な金属又は他の導体材料の薄膜によって構成される。好適な金の薄膜は電気メッキ又はスパッタリング等のいずれかの適切な固体、液体又は気体状態でのメッキプロセスによって適切なリリース基体上に形成される。
【0058】
ステップ530において、誘電体層310が図4のステップ420と関連して述べたのと同じ要領で導体305上に付設される。他の具体例では、ステップ530の前に、反応開始剤が図4のステップ415に関連して述べたのと同じ要領で導体305に付加されるステップ520が先行する。
【0059】
ステップ550において、第2の誘電体前駆体成分が図4のステップ430に関連して述べたのと同じ要領で誘電体層310に付加される。さらなる具体例では、ステップ550の前に反応開始剤が図4のステップ425に関連して述べたのと同じ要領で誘電体層310に付加されるステップ540が先行する。誘電体層310の反応開始剤の薄い被覆の形成に続いて反応開始剤が選択的に抑制される具体例において、スルーホール及びピットが埋められ、バンプを囲む領域が平らにされる。しかしながら、好適なコンデンサ300は半導体を有しないので、ピットを埋めたりバンプを囲む領域を平らにしたりすることは一般に不要である。
【0060】
ステップ560において、導体315が誘電体層310上に形成される。一つの具体例では、導体315は上述のように例えば金のような適切な金属又は導電材料の薄膜で構成される。金の標準的な薄膜は、例えば電解メッキやスパッタリングのような適切な固体、液体又は気体状態でのメッキのプロセスによって誘電体層310上に形成される。
【0061】
本発明が目下の好ましい状況において開示されたが、この教示がこの開示及び特許請求の範囲に調和する様々な状況に適用できることが理解される。例えば、本発明は一般的に第2の誘電体材料によって少なくとも部分的に塞がれたスルーホールを有する基体上の超薄型誘電体膜の作製に適用できる。そのような膜は、例えば、小型電子デバイスや腐食防止コーティングに使用できる。さらに、本発明を高容量の薄い誘電体層を要する小型電子デバイスであって、特に高容量及び薄さの両方が望ましいデバイス特性となるものの作製に一般的に適用できる。例えば、上述の図1、2及び4に示される具体例は全て各々が単半導体層を用いるTFETであるが、他の、例えば2層の半導体層からなる電界効果トランジスタの設計も採用されうる。例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)設計や接合型電界効果トランジスタ(JFET)設計も採用されうる。さらに本発明は基体上に誘電体薄膜を必要とする小型電子デバイスの作製にも一般的に適用でき、それは大きな半導体単結晶を成長させるための基体としての用途に適用できる。例えば、ダイオード、不揮発メモリデバイス等が類似の要領で作製できる。
【符号の説明】
【0062】
105 絶縁基体
110 導体基体
115 誘電体層
120 半導体層
125 ソース電極
130 ドレイン電極
135、140 スルーホール
155、160 ピット
165、170 バンプ
300 コンデンサ
305、315 導体
310 誘電体層
320、325 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体及び誘電体層からなる装置を製作する方法であって、
前記基体を提供するステップ、
第1の誘電体材料を含む前記誘電体層を前記基体上に提供するステップであって、前記誘電体層が誘電体層の厚みを有し、前記基体との境界面から前記誘電体層の反対面まで通じるスルーホールに貫通される、ステップ、
前記誘電体層の前記反対面上に反応開始剤を提供するステップ、
前記反応開始剤を非活性化する物質を、スルーホールを覆う領域を除いて前記反応開始剤上に被覆するステップ、及び
前記スルーホールを少なくとも部分的に塞ぐように前記スルーホール付近の反応開始剤と反応する第2の誘電体材料を提供するステップ
を備える方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記誘電体層が該誘電体層の一方の面に表面粗さをもたらすピット及びバンプを有し、前記反応開始剤を非活性化する物質がピット及びバンプにおいて被覆されない状態とし、前記第2の誘電体材料が前記ピットを少なくとも部分的に充填し、前記バンプを囲む領域を、前記表面粗さを減らすように少なくとも部分的に平坦化する、方法。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記反応開始剤を非活性化する物質を被覆するステップが、該非活性化する物質を平らな抜き打ち表面から前記反応開始剤上に移動させるステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、さらに、前記誘電体層上に半導体層を形成するステップを備える方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、さらに、前記半導体層上に、互いに離隔させてソース電極及びドレイン電極を形成するステップを備える方法。
【請求項6】
請求項1の方法において、前記誘電体層が該誘電体層の一方の面に表面粗さをもたらすピット及びバンプを有し、前記第2の誘電体材料が前記ピットを少なくとも部分的に充填し、前記バンプを囲む領域を、前記表面粗さを減らすように少なくとも部分的に平坦化する、方法。
【請求項7】
請求項1の方法において、前記誘電体層を提供するステップが10nmから5μmの間の範囲の層厚を生成するものである、方法。
【請求項8】
請求項1の方法であって、さらに、前記誘電体層上に導電体を形成するステップを備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−119762(P2011−119762A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43790(P2011−43790)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【分割の表示】特願2004−196161(P2004−196161)の分割
【原出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】