説明

基板を乾燥させるための装置および方法

本出願は、基板を乾燥させるためのシステムを説明し、そのシステムは、チャンバと、チャンバ内に位置決めされた上部エッジを有する内側容器とを含む。プロセス流体が、内側容器の中へ向けられ、そして、上部エッジを越えて流れ落ちる。内側容器の上部エッジが下げられ、それによって、基板の表面を横断するカスケードレベルを下げ、それと同時に、乾燥蒸気が、チャンバの中へ流し込まれる。カスケードレベルが、基板の表面を横断するように減少するにつれて、基板表面は、乾燥蒸気に曝される。境界層を薄くすることを使用した乾燥を促進するために、高周波超音波エネルギーが、内側容器の中へ送出されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の内容】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的には、高いレベルの洗浄度を必要とする基板を乾燥させるための装置および方法の分野に関する。
【0002】
発明の背景
ある種の産業においては、対象物を極めて高いレベルの洗浄度にするために使用されなければならないプロセスが存在する。例えば、半導体基板は、化学薬品、残留物、および微粒子を基板から除去するために、集積回路の製造中、複数のステージにおいて、洗浄され、リンスされ、乾燥される。集積回路製造技術は、微細特徴部の寸法が90nmほどの大きさかあるいはそれよりも小さくてもよい段階にまで進歩している。デバイスサイズが、減少するにつれて、製造プロセスで必要とされる洗浄度のレベルは増大する。90nmの特徴部寸法の場合、基板の洗浄および乾燥中に残されたウォーターマークでさえ、いわゆる「キラー欠陥」を集積回路デバイスに発生させることがある。本出願は、基板を洗浄するための大きな効果を有する新しいシステムおよび方法を説明するものであり、このシステムおよび方法は、微粒子およびウォーターマークが基板上に堆積するのを最小限に抑制することを志向するものである。
【0003】
図面の詳細な説明
(構造)
図1Aを参照すると、乾燥システムは、開口11を有するチャンバ10と、その開口11を覆うために所定の場所に移動することのできる蓋12とを含む。チャンバ10は、外側容器14と、その外側容器14内に設置された内側容器16とを有する。
【0004】
外側容器は、プロセス環境において使用される化学薬品に対して不活性であるPVDFまたはTeflon(商標)のような材料から形成される。
【0005】
内側容器16は、上部エッジ20を有する側壁18を含む。図1A〜図1Cは、内側容器16が複数の基板Sを同時に処理するように適合されたバッチシステムを図示するが、その代わりとして、内側容器は、ただ1つの基板を処理するように適合されてもよく、あるいは、2つの基板だけを同時に処理するように適合されてもよい。1枚基板ウェットプロセスシステムおよび2枚基板ウェットプロセスシステムのための機器構成が、発明の名称が“APPARATUS AND METHOD FOR SINGLE− OR DOUBLE−SUBSTRATE PROCESSING”である国際公開公報第03050861号に示され、かつ説明されており、その明細書は、参考の為に本明細書に組み込まれる。さらに、1枚基板ウェットプロセスシステムおよびそれに関連する自動制御機械に適合された容器は、SCP Global Technologies,Boise,ID.によって製作された“EMERSION 300(商標) Single Wafer Processor”である。
【0006】
以下で詳細に説明されるように、内側容器16の上部エッジおよび壁は、溢れ堰の機能を果たし、それによって、内側容器16の中に流し込まれた流体は、内側容器16の壁から外側容器14の中へ溢れ出る。内側容器の上部エッジ20は、好ましくは、図示されるようにギザギザがあり、エッジ上に流体が溜まるのを最小限に抑制する。
【0007】
さらに、システムは、システムの使用中に、ウェーハ基板の高さに比較した上部エッジ20の高さ(すなわち、内側容器16から流れ落ちる流体のカスケードレベル)を増加させる、または下げることができるように構成される。図1A〜図1Cの実施形態において、これは、側壁18をチャンバ10内において折り畳み可能に提供することによって実現される。側壁18を折り畳むことによって、上部エッジ20は、図1Aに示される上部位置と図1Cに示される下部位置との間で動かされてもよい。一実施形態において、折り畳み可能な側壁は、図1Bに図示されるように、「アコーデオン」式に折れ曲がってもよい。内側容器16は、PTFE、または、プロセス環境において使用される化学薬品に対して不活性でありかつ多くのサイクルを通して疲労することなく折り畳むことができかつ膨張することができるその他の材料から作られてもよい。内側容器は、外側容器の外側に位置決めされ、かつリンク装置を介して内側容器に結合されたモーターおよびそれに関連する機器を含む駆動システム(図示しない)を含む。外部環境からのガス、ヒューム、および微粒子が、チャンバ10内に存在するリンス流体の中に拡散する可能性があるので、チャンバ10内に空気が流れ込むのを防止することは望ましいことである。酸素がチャンバヘッドスペースおよびリンス槽流体の中に拡散することは、望ましくないウォーターマークを基板上に発生させることがある。したがって、好ましくは、リンク装置は、流体インターロック(配管に使用されるp−トラップに類似する)の中を通り、外部空気がリンク装置に沿ってチャンバ10内に流れ込むのを防止する。また、代替の構成が、1つ以上の基板の表面に比較したカスケードレベルを変更し、あるいは位置決めするのを可能にするために、使用されてもよい。例えば、別の一実施形態においては、その代わりとして、内側容器16は、その容積を維持することができるが、上部位置と下部位置との間で外側容器内を移動することができ、かつ、好ましくは、基板の高さは、固定されたままである。別の代替実施形態においては、内側容器は、外側容器内において折り畳み可能なものではなく、外側容器の開口内を摺動できるものであってもよい。
【0008】
必要であれば、システムは、始動されたときにプロセスチャンバ内において高周波超音波エネルギーの領域を作り出すために位置決めされた高周波超音波トランスデューサを提供してもよい。エネルギーのこの領域は、参考の為に本明細書に組み込まれた発明の名称が“APPARATUS AND METHOD FOR SINGLE− OR DOUBLE−SUBSTRATE PROCESSING”である国際公開公報第03050861号に詳細に説明されるように、内側容器内における活性ゾーンの役割をなし、洗浄プロセス、リンスプロセス、および/または、乾燥プロセスを改善する。
【0009】
図1Aの内側容器16に類似していてもよく、しかも、高周波超音波能力によって改善された内側容器が、図2Aおよび図2Bに図示される。これらの内側容器は、高周波超音波能力が望まれる場合に、図1Aに示される種類の内側容器16の代わりに使用されてもよい。
【0010】
図2Aは、1枚ウェーハプロセスに適合され、かつ、内側容器16aの側壁に結合された一対の高周波超音波トランスデューサ40および42を含む折り畳み可能な内側容器16aを図示する。それぞれのトランスデューサ40および42は、ただ1つのトランスデューサエレメント、または、複数のトランスデューサからなるアレイを含んでもよい。トランスデューサ40および42は、内側容器16aの上部エッジ20aの高さよりも低い高さに位置決めされ、トランスデューサ40が高周波超音波エネルギーを基板の前面に向けて送出し、かつトランスデューサ42が高周波超音波エネルギーを基板の背面に向けて送出するような方向に配置される。
【0011】
図2Aの実施形態において、トランスデューサは、好ましくは、エネルギービームが、ガス/流体界面において、または、ガス/流体界面の真下において、例えば、内側容器16a内に存在する液体の上側の0〜20%の範囲にある高さにおいて、基板表面と相互作用するように位置決めされる。トランスデューサは、基板表面に垂直な方向に、あるいは、垂線からある角度を有する方向に、高周波超音波エネルギーを送出するように構成されてもよい。エネルギーは、好ましくは、垂線から約0〜30°の角度で送出され、最も好ましくは、垂線から約5〜30°の角度で送出される。
【0012】
垂線に対する角度および/または電力を別個に調節できるようにトランスデューサ40および42を提供することは、望ましいだろう。例えば、ある角度を有する高周波超音波エネルギーが、トランスデューサ40によって、基板前面に向けて送出される場合、トランスデューサ42からのエネルギーを背面に向けて基板表面に垂直な方向に伝搬させることは望ましいだろう。そのようにすることは、ある角度を有するエネルギーによって前面に加えられる力を相殺することによって、前面上に存在する特徴部を破壊することを低減させ、あるいは防止することができる。さらに、微細特徴部への損傷を回避するためには、比較的に小さな電力またはゼロの電力が、基板前面に対して望ましく、かつ、より大きな電力が、背面に対して伝達されてもよい(ある角度で、あるいは、基板に垂直な方向に)。より大きな電力は、基板において共鳴することができ、基板前面上のトレンチ内におけるマイクロキャビテーションを改善し、それによって、トレンチ空洞から不純物を流し去るのを助ける。
【0013】
さらに、調節可能な角度を有するようにトランスデューサ40および42を提供することは、基板の特質(例えば、微細特徴部のような)に応じて、また、実行されるプロセスステップに応じて、角度を変化させることを可能にする。また、場合によっては、一対のトランスデューサ40および42ではなく、ただ1つのトランスデューサ、または、2つよりも多いトランスデューサを有することが、望ましいだろう。
【0014】
図2Bは、図2Aの内側容器に類似するが図1Aに図示されるシステムのようなバッチシステムにおいて使用するように変更されたさらに別の代替の内側容器16bを図示する。図2Bの実施形態において、トランスデューサ44および46は、好ましくは、図示されるように、基板Sのエッジと向かい合うような方向に配置され、それによって、トランスデューサ44および46によって放射される高周波超音波エネルギーが隣接する基板間を通過するのを可能にする。トランスデューサは、基板表面に垂直な方向に、あるいは、垂線からある角度で、高周波超音波エネルギーを送出するように構成されてもよい。エネルギーは、好ましくは、垂線から約0〜10°の角度で送出され、最も好ましくは、垂線から約1〜3°の角度で送出される。
【0015】
再び、図1Aを参照すると、システムは、DIリンス水のようなプロセス流体を内側容器16の中へ流し込む流体入口22を含む。第1のドレイン24が、内側容器16から延び、好ましくは、迅速なダンプを実行する場合のように、流体を内側容器から迅速に排出させることができる(例えば、15cm/秒か、またはそれよりも速く)。必要であれば、第1のドレイン24は、代替として、内側容器をより遅い速度および/またはより良好に制御された速度で排出するのを可能にしてもよい。
【0016】
第2のバルブ26は、外側容器内に存在する流体を、制御された速度(例えば、0.5mm/秒から10mm/秒までの範囲にある速度)で徐々に排出するのを可能にする。
【0017】
蒸気/ガスポート28が、蓋12に流体結合される。蓋12は、ガス/蒸気がチャンバ10内に均一に分配されるのを最適化するように構成されたマニホルドを含む。
【0018】
排気口30が、好ましくは、蓋12のわずかに下方において(例えば、約1mmだけ下方において)、チャンバ10から延びる。外部空気が、排気口30からチャンバ内に流れ込むのを防止するために、排気口30は、好ましくは、液体を含むコンテナ32の中に浸される。
【0019】
図1Aに示されるバッチシステムの内側容器16は、好ましくは、1つ以上の基板を保持するプロセスカセット36を収容する機能を備える。リフト34が、好ましくは、内側容器16内に位置決めされる。リフト34は、リフトを下部位置と上部位置との間で動かす自動制御機械(図示しない)を含み、それによって、動作中、リフトが基板をプロセスカセットからわずかに持ち上げるのを可能にする。基板列の中の最初の基板および最後の基板は、列の中央に存在する基板とはわずかに異なるプロセス条件に曝され得るので、リフト34は、リフトの両端に「ダミー基板(図示しない)」を含んでもよく、それによって、ダミー基板間に位置決めされた実際の基板は、均一なプロセス条件に曝される。所望であれば、リフトは、微粒子を列の中のその他の基板から引き離すために、ダミー基板の一方に電荷を加えるのを可能にするように構成されてもよい。
【0020】
代替のシステムは、プロセスカセットではなく1つ以上の基板を内側容器16内に移送する「カセットレス」移送システムを採用してもよいことがわかる。一実施例として、1つ以上の基板をカセットから分離するには、処理のためにカセットから基板を取り出すための当分野において周知の種類の受動的リフトシステムを使用してもよい。発明の名称が“APPARATUS AND METHOD FOR SINGLE− OR DOUBLE−SUBSTRATE PROCESSING”である国際公開公報第03050861号に詳細に説明されている別の例として、カセットレスシステム基板において、1つ以上の基板は、内側容器の中に延びるエンドエフェクターによって、および/または、内側容器内に提供されたリテンションシステムによって、内側容器内に支持されてもよい。
(動作)
次に、基板をリンスし、かつ乾燥させるために図1A〜図1Cのシステムを使用する方法を説明する。
【0021】
最初に、1つ以上の基板Sが、内側容器16の中に降ろされる。蓋12が閉じられ、基板をチャンバの中に密閉する。DIリンス水のようなプロセス流体が、入口22から内側容器16内に向けられ、エッジ20を越えて外側容器14の中へ流れ落ちる。ドレイン26が開かれ、リンス流体が、制御された速度で外側容器14から徐々に排出される。プロセス流体の流入は、基板が空気に曝されるのを最小限に抑制するために、好ましくは、基板がチャンバ10の中へ移される前に開始されるが、その代わりとして、流入は、基板をチャンバ内に配置しているときあるいは配置した後に開始されてもよい。
【0022】
システムが、プロセスカセット36を使用するシステムである場合、リフト34が、わずかに上方へ動かされ、1つ以上の基板をプロセスカセットから持ち上げる。このステップは、オプションであるが、乾燥中に接触点に水が溜まるのを防止するために、1つ以上の基板をカセットから分離することが望ましい。別の変形として、1つ以上の基板は、上述したように、流入の前にあるいは流入中にカセットから分離されてもよい。
【0023】
上述したように、システムの性能は、周囲空気からプロセス流体の中へ拡散し得る酸素の量を最小限に抑制することによって、改善される。したがって、基板が、プロセス流体の中に完全に浸されるとともに、空気をチャンバ10から除去するために、空気置換ステップが、実行されてもよい。このステップに従って、排気口30が開かれ、蓋12と流れ落ちるプロセス流体の上面Uとの間の間隙Gから空気を追い出すために、置換ガス(例えば、窒素、または、アルゴン、または、その他の不活性ガスのような)が、入口28からチャンバ10の中に流し込まれる。空気は、排気口30を介してチャンバ10から置換される。一実施形態において、置換ステップは、置換ガスとしてアルゴンが使用される第1のステップと、置換ガスとして窒素が使用される第2のステップとを含んでもよい。アルゴンを使用することは、置換ステップの全体期間を短くすることができる。なぜなら、より重たいアルゴン分子は、より軽い窒素分子よりも迅速に酸素ガスを間隙Gから流し去ることができるからである。置換ステップ全体を通して、アルゴンが使用されてもよいが、この2つのステッププロセスは望ましいだろう。なぜなら、Nは、価格がアルゴンよりも極めて安いからである。別の実施形態においては、間隙Gから酸素を除去するのを助けるために、置換ガスが流し込まれる前に、わずかな負圧が、排気口30を介して、かけられてもよい。
【0024】
さらなるリンスが必要とされる場合、IPA乾燥のための時間になるまで、窒素およびアルゴンのような不活性ガスが、わずかながら流し続けられてもよい。
【0025】
次に、乾燥ステップが、好ましくは、約1Atm〜1Atm+5inHOまでの範囲にあるチャンバ圧力において、実行される。基板を乾燥させるために、乾燥蒸気(IPAのような)とキャリアガス(窒素ガスのような)との混合物が、ポート28を介して、チャンバの中に流し込まれる。IPA蒸気の生成は、ウェーハを乾燥させる準備ができる時点よりも前に、独立したIPA蒸気生成チャンバ(図示しない)において実行される。IPA蒸気は、従来の方法を用いて、例えば、大量の液体IPA中において窒素ガスを泡立たせることによって、形成されてもよい。別の実施形態においては、IPA蒸気は、予め測定された量のIPA液体を加熱された表面上に射出することによって、IPA蒸気生成チャンバ内において作り出されてもよい。この第2の実施形態によれば、IPAは、好ましくはIPAの沸点(1気圧において82.4°Cである)よりも低い温度にまで加熱され、濃いIPA蒸気雲が、作り出される。基板を乾燥させるためにIPA蒸気をチャンバ10の中に流し込む時点になると、加熱されたNガス(約70〜120°Cの温度を有する)が、IPA生成チャンバの中に流し込まれ、IPAをIPA生成チャンバからポート28を通ってチャンバ10の中へ搬送させられる。蓋12に配置されたマニホルドが、蓋のチャンネルを介してIPAを均一に分配することを助長し、その結果として、蒸気は、入口を通り基板上へ均一に流れる。
【0026】
プロセスに利用されるIPAおよび窒素は、好ましくは、「ppb」または10億分の1の品質または99.999%の純度のような高い純度を有する。N/IPAは、好ましくは5〜10分のIPA乾燥期間中に、好ましくは約50リットル/分(slpm)の速度でチャンバ内に流れ込む。N/IPA混合物におけるIPAの割合を一定に維持することが望ましい。使用される割合は、乾燥させられる表面に応じて変化する。例として、約20〜40%のIPA蒸気を有するN/IPA混合物は、親水性の表面に対しては都合がよいが、約2〜10%のIPA蒸気は、疎水性の表面に対して都合がよい。
【0027】
IPA乾燥ステップ全体を通して、新しいリンス流体は、内側容器16の中に流れ込み、エッジ20を越えて外側容器14の中に流れ落ち続ける。N/IPAが、チャンバの中に流れ込んでいるとき、内側容器16は、ゆっくりと折り畳まれ、外側容器14内において、その上部エッジ20(すなわち、流れ落ちる液体の高さ)を均一な速度でゆっくりと引き下げる。好ましくは、内側容器16は、上部エッジ20(すなわち、流れ落ちる液体のカスケードレベル)を約0.5〜10mm/秒の速度および最も好ましくは1〜2mm/秒の速度で降ろすような速度で折り畳まれる。内側容器16が、滑らかに折り畳まれ、それによって、はね散らかしおよび液体/ガス界面における高さの急激な変化を防止することを保証することが望ましい。なぜなら、そのようなはね散らかしは、基板の乾燥領域を再び湿らせることがあるからである。
【0028】
IPA乾燥ステップ全体を通して、カスケードレベルは、基板の表面に沿って低くなる。新しいリンス流体は、内側容器16の中へ流れ込み続け、エッジ20を越えて外側容器14の中へ流れ落ち、それによって、溶解IPAおよび/または微粒子がリンス流体の表面に溜まるのを防止する。流体が外側容器14からドレイン26を介して徐々に排出される速度は、外側容器内の流体の高さをエッジ20の高さ以下に維持するように、また、外側容器が完全に排出されるのを防止するように、制御される。外側容器を完全に空にすることは(あるいは、液体の高さが、好ましい方法においては、約2cm程の予め定められた高さよりも低い位置まで空にすることさえも)、望ましくない。なぜなら、それは、空気が露出したドレイン26からチャンバ10の中へ入り込むことを発生させることがあるからである。
【0029】
図3は、説明したばかりの乾燥ステップ中における基板Sの乾燥を概略的に図示する。図3を参照すると、IPA蒸気を流し込んでいるときに、カスケードレベルLが、基板の表面に沿って減少するにつれて、流体メニスカスが、基板と内側容器内に存在する大量の流体との間に延びる。流し込まれたIPA蒸気は、この流体メニスカスの中へ溶解する。図3に示されるように、溶解IPA蒸気の濃度は、基板表面SSにおいて最も高く、ウェーハ表面から離れたリンス流体の領域においてより低い。IPA濃度が、増加するにつれて、表面張力は、減少するので、水の表面張力は、IPA濃度が最も高い基板表面において最も小さい。したがって、濃度勾配は、矢印Aによって示されるように、基板の表面から遠ざかるリンス水の「マランゴーニ流」をもたらす。それによって、リンス水は、ウェーハ表面から取り除かれ、ウェーハ表面を乾燥した状態に維持する。
【0030】
図1Cを参照すると、内側容器16のエッジ20が、予め定められた高さ(例えば、基板よりも低い位置まで、あるいは、少なくとも基板の底部に存在する排他ゾーンまで)にまで降ろされてしまえば、50〜100°Cの範囲にある温度を有する熱い不活性ガス(例えば、窒素)が入口28からチャンバ10の中へ流し込まれる最終ステップが、実行される。加熱されたガスは、残存するあらゆるリンス流体およびIPA蒸気を基板およびカセットから除去し、チャンバの環境からIPA蒸気を追い出す。
【0031】
1つ以上の基板が、内側容器内において高周波超音波エネルギーの領域を形成する機能を備えるシステムを用いて処理される場合、代替の乾燥方法が、実行されてもよい。図2Aの内側容器16aを利用する単一ウェーハシステムに関連してこの方法を説明するが、図2Bの内側容器16bを有するバッチシステムについても同じことが言える。
【0032】
図2Aを参照すると、上述した乾燥方法の場合と同様に、カスケードレベルは、IPAが流し込まれているときに、内側容器16aの上部エッジ20aを引き下げることによって、また、同時に、外側容器14(容器14は、図1Aに示される)から流体を徐々に排出することによって、基板Sの表面を横断するように下げられる。乾燥を助長するために、高周波超音波トランスデューサ40および42(図2A)が駆動され、それと同時に、カスケードレベルが下げられ、それによって、乱流が、内側容器16a内の高周波超音波エネルギー領域または領域Zに作り出される。この乱流は、基板に付着した流体の境界層を薄くする。領域Zにおける薄い境界層によって、IPAは、より迅速に基板の表面上におよび構造内に拡散することができ、それによって、より少ないIPAの使用によって、より速い乾燥をもたらす。上部エッジ20aが、下げられるにつれて、領域Zは、基板の表面に沿って下がるので、基板は、比較的に迅速にIPA雰囲気に曝されてもよいが(すなわち、好ましくは、30mm/秒以下の速度で、そして、最も好ましくは、約5mm/秒〜30mm/秒の範囲にある速度で)、上述したような比較的によりゆっくりとした取り出し速度が、使用されてもよい。
【0033】
これまでに説明した乾燥方法の場合と同様に、残存するあらゆるIPAおよび/または水膜を基板から蒸発させるために、また、IPA蒸気をチャンバから追い出すために、加熱された窒素のようなガスが、流し込まれてもよい。
【0034】
その他の異なる乾燥ステップが、開示されたシステムを用いて実行されてもよい。そのような異なる一乾燥ステップにおいては、リンス流体を容器の中へ流し込むことが、終了され、内側容器内の流体は、バルブ24から「迅速ダンプ」を実行することによって、予め定められた高さ(例えば、完全に、あるいは、基板の高さよりも低い位置まで、あるいは、少なくとも基板の底部に存在する排他領域まで)にまで迅速に排出される。容器内の液体が、ウェーハよりも低い高さにまで放出されてしまえば、窒素ガスおよびIPAが、生成チャンバからポート28を通ってチャンバ10の中へ流し込まれる。
【0035】
IPA蒸気は、ウェーハ上で凝結し、ウェーハ表面に付着した液体の状態にある均一な濃度のIPAを形成する。凝結したIPAは、ウェーハ上の水の表面張力を弱め、ウェーハ表面からリンス水を奪い取る。IPA乾燥期間の終わりまでには、リンス水は、ウェーハ、カセット、および容器壁から完全に除去されており、凝結したIPAの層に置き換えられている。
【0036】
代替の乾燥ステップの迅速ダンプステップおよびIPA蒸気ステップは、従来技術よりも優れたいくつかの利点を提供する。従来の蒸気乾燥装置よりも優れた提供される1つの利点は、ウェーハがリンス容器から乾燥容器に移されるときにそれらのウェーハが酸素および微粒子に曝されるのではなく、ウェーハはプロセス全体を通してパージ環境の中にとどまることである。さらに、迅速ダンプが実行された後には、水のキャリーオーバー層が、ウェーハ表面に残る。IPA蒸気が、チャンバの中へ入り始めると、それは、このキャリーオーバー層の表面上で凝結し、水層の中に拡散する。IPAが、さらに水面上に凝結するにつれて、それは、最終的に水がウェーハ表面から落ちるまで、水の表面張力を徐々に減少させる。IPA蒸気は、チャンバの中に入り続け、ウェーハ表面上で凝結し、凝結したIPAの層をウェーハ表面上に残す。
【0037】
水を除去するこの方法は、とりわけ、多くの狭い空間がウェーハ表面に存在する高いアスペクト比または厳密なトポグラフィーを有するウェーハにとって有益である。そのような狭い空間においては、毛管力が、大きく、そのために、それらの空間から水を除去することは、難しいことである。水の中に入り込み、そしてウェーハの狭いジオメトリーの中に入り込み得る(そして、キャリーオーバー層がウェーハから落ちた後に、ウェーハ表面上で凝結し続け得る)IPAを水のキャリーオーバー層上に凝結させる方法は、深いあるいは狭いパターンを有する領域においてさえも、乾燥を容易にする。
【0038】
さらに、凝結した水および凝結したIPAをウェーハ表面から流すことは、ウェーハ表面をIPA/水によってリンスするのを促進し、それは、ウェーハ上に残り得るあらゆる微粒子を除去するのを容易にする。
【0039】
別の利点は、極めて短い時間で、好ましくは、5秒以下の時間で、内側容器を完全に排出するために(あるいは、容器内に存在する流体を少なくともウェーハの下方まで徐々に排出するために)、迅速ダンプステップが実行されることである。液体のこの高速ドレインは、ウェーハの表面から水(および水の中にある何らかの微粒子)を取り除くのに有益である。したがって、それは、IPA蒸気ステップが開始される前でさえも、水を除去するのを容易にする。
【0040】
このように、本明細書で説明されたシステムは、それが、基板の特徴または実行されるプロセスの特質に応じてユーザが実行されるべき乾燥モード(例えば、カスケードレベルが基板に比較して下げられる最初に説明されたモード、または、迅速ダンプモード、または、可能であれば、高周波超音波支援乾燥モード)を選択するのを可能にする点において、有益である。
【0041】
本発明の原理を利用した特定の実施形態が説明された。これらの実施形態は、単なる例として提供されたものであり、請求項の範囲を限定しようとするものではない。なぜなら、本発明の装置および方法は、本明細書で詳細に説明された形に加えて、様々な形で構成および実行されてもよいからである。例えば、システムは、本明細書に参考の為に組み込まれた発明の名称が“APPARATUS AND METHOD FOR SINGLE− OR DOUBLE−SUBSTRATE PROCESSING”である国際公開公報第03050861号に説明されるものを含めて、(高周波超音波エネルギー領域を具備し、あるいは、具備することなく)1つ以上の基板の表面を横断するようにカスケードレベルを変更することが望ましいエッチング方法、洗浄方法、およびリンス方法を実施するのに使用されてもよい。さらに、多くの特徴が、説明されたそれぞれの実施形態に関連して説明された。説明された特徴は、様々な形で組み合わせられてもよいこと、および開示された一実施形態に関して説明された特徴は、同様に、本発明から逸脱することなくその他の実施形態に含められてもよいことを理解すべきである。最後に、様々な寸法、時間、プロセスシーケンス、化学薬品、容積などは、例として与えられ、限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】基板を乾燥させるためのシステムおよび方法の使用を図示する概略図である。
【図1B】基板を乾燥させるためのシステムおよび方法の使用を図示する概略図である。
【図1C】基板を乾燥させるためのシステムおよび方法の使用を図示する概略図である。
【図2A】図1A〜図1Cのシステムとともに使用するための代替の内側容器を図示する断面端面図である。
【図2B】図1A〜図1Cのシステムとともに使用するための第2の代替の内側容器を示す断面端面図である。
【図3】水表面から流れるマランゴーニ流を概略的に図示している。
【符号の説明】
【0043】
10…チャンバ、11…開口、12…蓋、14…外側容器、16…内側容器、18…側壁、20…上部エッジ、22…流体入口、24…第1のドレイン、26…バルブ、28…蒸気/ガスポート、30…排気口、32…コンテナ、34…リフト、36…プロセスカセット、G…間隙、U…上面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を乾燥させるためのシステムであって、
チャンバと、
チャンバ内に位置決めされた内側容器であり、前記内側容器が、カスケードレベルを規定する上部エッジを有する少なくとも1つの壁を含み、上部エッジが、チャンバ内において、カスケードレベルが第1の高さにある第1の位置から、カスケードレベルが第2の高さにある第2の位置まで後退させることができる、前記内側容器と、
を備えるシステム。
【請求項2】
壁が、上部エッジを第1の位置から第2の位置まで後退させるために、折り畳み可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
内側容器が、上部エッジが第1の位置にあるときには、第1の容積を有し、上部エッジが第2の位置にあるときには、第2の容積を有し、第2の容積が、第1の容積よりも小さい、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
内側容器が、上部エッジを後退させるために、チャンバ内において、第1の高さから第2の高さまで移動可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
プロセス流体を内側容器の中に収容するために内側容器に流体結合された流体入口をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
乾燥ガスをチャンバの中に向けるためにチャンバに流体結合されたガス入口をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
チャンバを密閉する閉じた位置に移動可能な蓋をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
内側容器が、少なくとも1つの基板を搬送する基板キャリアを収容するように適合され、システムが、基板をキャリアから持ち上げるために、チャンバ内において移動可能なリフトをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
内側容器の中に存在する流体を横断するように高周波超音波エネルギー領域を形成するように位置決めされた少なくとも1つの高周波超音波トランスデューサをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
高周波超音波トランスデューサが、上部エッジが第1の位置から第2の位置まで移動するときに容器内において高周波超音波エネルギー領域が降下するように位置決めされた、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
基板を処理する方法であって、
チャンバとチャンバ内の内側容器とを提供し、内側容器が、カスケードレベルを規定するエッジを含む、前記提供するステップと、
ウェーハ基板を内側容器の中に位置決めするステップと、
プロセス流体を内側容器の中に向け、プロセス流体をエッジを越えて溢れさせるステップと、
向けるステップ中に、チャンバ内におけるエッジを下げ、それによって、カスケードレベルを下げるステップと、
を備える方法。
【請求項12】
下げるステップが、内側容器の少なくとも一部分を折り畳む工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
折り畳む工程が、内側容器の容積を減少させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
下げるステップが、内側容器を低くする工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、基板をリンスし、かつ乾燥させるためのものであり、向けるステップが、リンス流体を向け、前記方法が、下げるステップ中に、乾燥ガスをチャンバの中へ送り込み、カスケードレベルの上方において基板に付着した流体に乾燥ガスを接触させるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
乾燥ガスが、カスケードレベルの上方において基板に付着した流体の表面張力を低減させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
乾燥ガスが、カスケードレベルの上方において基板に付着した流体のマランゴーニ流(Marangoni flow)をもたらす請求項16に記載の方法。
【請求項18】
乾燥ガスが、イソプロピルアルコールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
チャンバが、排気口を含み、前記方法が、下げるステップの前に、置換ガスをチャンバの中へ流し込み、酸素をチャンバから排気口を介してパージするステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
流し込むステップが、アルゴンを含む第1の置換ガスを流し込み、その後に、窒素を含む第2の置換ガスを流し込む工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
下げるステップが、約0.5〜10mm/秒の範囲にある速度でカスケードレベルを下げる、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
下げるステップが、約1〜2mm/秒の範囲にある速度でカスケードレベルを下げる、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
高周波超音波エネルギーをプロセス流体の中へ送出するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
送出するステップが、高周波超音波エネルギーの領域をプロセス流体の中に形成し、前記方法が、高周波超音波エネルギーの領域をウェーハ基板の高さに比較して下げるステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
高周波超音波エネルギーをプロセス流体の中へ送出するステップが、エッジに結合された少なくとも1つの高周波超音波トランスデューサから高周波超音波エネルギーを放射する工程を含み、エッジを下げるステップが、ウェーハ基板の高さに比較して高周波超音波エネルギーの領域を下げることになる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
下げるステップが、約30mm/秒以下の速度でカスケードレベルを下げる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
下げるステップが、約8〜30mm/秒の範囲にある速度でカスケードレベルを下げる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
向けるステップおよび下げるステップが、ウェーハ基板をチャンバから引き上げることなく実行される、請求項11に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−525848(P2007−525848A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501023(P2007−501023)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/006181
【国際公開番号】WO2005/086208
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】