基板保持装置および基板押し上げ状態判定方法
【課題】 静電チャックと基板間の残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができ、しかもセンサ系や基板状態等に異常がある場合にそれを検出することができる装置を提供する。
【解決手段】 この基板保持装置60は、基板2の押し上げの際に押し上げ部材34に加わる力を検出する力センサ36と、制御装置50とを備えている。制御装置50は、力センサ36が検出する力Fを測定して、測定した力Fが、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときは正常信号SN を出力し、下限値FL より小さいときは異常信号SL を出力し、上限値FH より大きいときは、所定時間T待機した後に、力センサ36が検出している力Fを再測定して、再測定した力Fが、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときは正常信号SN を出力し、下限値FL より小さいときは異常信号SL を出力し、上限値FH より大きいときは異常信号SH を出力する機能を有している。
【解決手段】 この基板保持装置60は、基板2の押し上げの際に押し上げ部材34に加わる力を検出する力センサ36と、制御装置50とを備えている。制御装置50は、力センサ36が検出する力Fを測定して、測定した力Fが、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときは正常信号SN を出力し、下限値FL より小さいときは異常信号SL を出力し、上限値FH より大きいときは、所定時間T待機した後に、力センサ36が検出している力Fを再測定して、再測定した力Fが、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときは正常信号SN を出力し、下限値FL より小さいときは異常信号SL を出力し、上限値FH より大きいときは異常信号SH を出力する機能を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばイオン注入装置、エッチング装置、薄膜形成装置等に用いられるものであって、基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックを備える基板保持装置、および、静電チャックに印加する電圧を切った後に押し上げ部材によって基板を押し上げる際の状態を判定する基板押し上げ状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板(例えば半導体基板)を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、静電チャック上の基板の一端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置が記載されている。
【0003】
上記のような静電チャックに基板を吸着した後に、静電チャックに印加する電圧を切っても、ある程度の時間、静電チャックと基板との間に電荷が残留していて、残留吸着力が発生している。仮にこの残留吸着力が大きい状態で、静電チャックから基板を離脱させると、基板の跳ね、位置ずれ、割れ等の不都合が発生する。
【0004】
この種の不都合の発生を防止する手段として、特許文献2には、基板を下から押し上げて離脱させるリフトピンにかかる負荷を残留吸着力として検出する残留吸着力検知部を設けておいて、それが検出した残留吸着力が所定値より大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合は、本来の基板処理動作とは別の残留電荷除去動作に進むようにする技術が記載されている。具体的には、残留電荷除去用の導電体ウエハを静電チャック上に搬入し、当該導電体ウエハを接地して残留電荷を除去した後、当該導電体ウエハを搬出することを行う。
【0005】
【特許文献1】特許第3814905号公報(段落0010−0012、図2−図5)
【特許文献2】特開2004−119792号公報(段落0034、0042、0043、図1、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載の技術は、1回の残留吸着力の判定で、異常(残留吸着力が所定値より大きい)か正常(残留吸着力が所定値より小さい)かを判定し、その1回の判定で異常であれば、すぐに、本来の基板処理動作とは別の残留電荷除去動作に移行するのであるが、この残留電荷除去動作に移行すると、その間は本来の基板処理動作を行うことができないので、スループット(単位時間当たりの基板の処理能力)を大きく低下させるという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術は、残留吸着力検知部で検出した残留吸着力(具体的にはリフトピンにかかる負荷)が所定値より小さいと判定した場合は、そのまま、本来の基板処理動作に進むのであるが、例えば検出系の異常で本来検出すべき負荷が検出できないとか、基板の位置が静電チャック上で大きくずれていてリフトピンにかかる負荷が小さい等のように、検出系(センサ系)や基板状態等に異常がある場合に、それを検出することができないという課題もある。
【0008】
そこでこの発明は、静電チャックと基板間の残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができ、しかもセンサ系や基板状態等に異常がある場合にそれを検出することができる装置および方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る基板保持装置の一つは、基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力(ちから)センサと、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該測定した力が前記下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該測定した力が前記上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が前記下限値以上かつ前記上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該再測定した力が前記下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該再測定した力が前記上限値より大きいときは異常を表す異常信号を出力する機能を有している制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0010】
この発明に係る基板押し上げ状態判定方法の一つは、基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、前記静電チャックに印加する電圧を切った後に、前記押し上げ部材によって基板を押し上げる際の状態を判定する方法であって、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサを設けておき、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下のときは正常と判定し、当該測定した力が前記下限値より小さいときは異常と判定し、当該測定した力が前記上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が前記下限値以上かつ前記上限値以下のときは正常と判定し、当該再測定した力が前記下限値より小さいときは異常と判定し、当該再測定した力が前記上限値より大きいときは異常と判定することを特徴としている。
【0011】
上記押し上げの際には、静電チャックに印加する電圧は予め切られているので、力センサが検出する力は、静電チャックと基板間の残留吸着力に、基板の重さによる力を加えたものとなる。
【0012】
この残留吸着力は、押し上げ部材によって基板の端付近を少しでも押し上げて基板を少しでも剥がすと、急速に弱まる。従って、初めの測定で残留吸着力が大きくて、力センサを用いて測定した力が上限値より大きくても、所定時間待機した後に再測定を行うと、その間に残留吸着力が低下して、力センサを用いて測定する力が上限値以下になることが期待できる。上限値以下になれば、正常と判定しても良く、この発明では正常と判定される。従ってこの発明によれば、残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができる。
【0013】
一方、センサ系や基板状態等に異常がなければ、初めの測定時および再測定時のいずれにおいても、力センサは少なくとも基板の重さによる力を検出する。従って、力センサを用いて測定する力を下限値と比較することによって、センサ系や基板状態等に異常がある場合はそれを検出することができる。
【0014】
初めの測定時の判定に用いる上限値および下限値を第1の上限値および第1の下限値とし、再測定時の判定に用いる上限値および下限値を第2の上限値および第2の下限値としても良い。そのようにすれば、各上限値および各下限値を、より状況に応じたものにすることができるので、より精密な判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載の発明によれば、力センサが検出する力が初めの測定および判定で所定の上限値より大きくても、所定時間待機した後に再測定を行って所定の上限値より大きいか否かという判定を再び行うので、残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができる。しかも、力センサを用いて測定する力を所定の下限値と比較するので、センサ系や基板状態等に異常がある場合にそれを検出することができる。
【0016】
請求項3、4に記載の発明によれば、初めの測定時の判定に用いる上限値および下限値を第1の上限値および第1の下限値とし、再測定時の判定に用いる上限値および下限値を第2の上限値および第2の下限値としているので、各上限値および各下限値を、より状況に応じたものにすることができ、より精密な判定を行うことができる、という更なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、この発明に係る基板保持装置の機構部および力センサ周りの一実施形態を示す側面図であり、基板の離脱開始直前の状態の一例を示す。
【0018】
この基板保持装置60は、基板(例えば半導体基板)2を静電気によって吸着して保持する静電チャック4と、この静電チャック4を保持するホルダ14と、静電チャック4上の基板2の端(一端)付近にその下から当接して基板2を押し上げるための押し上げ部材34と、静電チャック4を駆動して(この実施形態では後述するように少し傾けて)押し上げ部材34によって基板2を押し上げさせる駆動装置を兼ねている回転装置22とを備えている。
【0019】
更に、この基板保持装置60は、図5に示すように、前記押し上げの際に押し上げ部材34に、押し上げ方向に沿う方向に加わる力Fを検出する力センサ36と、この力センサ36が検出する力Fを測定して後述するような判定等の処理を行う制御装置50とを備えている。押し上げ部材34に加わる力Fは、基板2を押し上げることに伴って、反作用として基板2から押し上げ部材34に加えられる力であると言うこともできる。押し上げ部材34は、押し上げの際に基板2から加わる力を力センサ36に伝達する働きもする。
【0020】
押し上げ部材34および力センサ36は、この実施形態ではそれぞれ1個の場合を例にしているが、後述するようにこれに限られるものではない。後述する他の実施形態においても同様である。
【0021】
回転装置22は、この実施形態では、チャック駆動装置20の一部を構成している。即ち、チャック駆動装置20は、基板2を保持した静電チャック4およびホルダ14を、回転軸24を中心にして矢印Bに示すように往復回転させて、それらを立てた状態と、図1に示すように横に倒した状態(例えば実質的に水平状態)とに回転させる回転装置22と、基板2を保持した静電チャック4、ホルダ14および回転装置22を、昇降軸26を介して、矢印Yに示すように昇降させる昇降装置28とを備えている。
【0022】
基板2等を立てた状態で、基板2に例えばイオンビーム(図示省略)を照射して基板2にイオン注入等の処理を施すことができる。基板2を倒した状態で、基板搬送アーム30との間で基板2の受け渡し(例えばイオン注入済の基板2と未注入の基板2との入れ換え)を行うことができる。その際、基板搬送アーム30は、例えば図4に示すように水平面内で矢印Cのように往復方向に旋回させられる。基板2をこの基板搬送アーム30(より具体的にはその基板支持部32)と静電チャック4との間で受け渡しする際は、昇降装置28によって基板2を載せた静電チャック4を下降させても良いし、その代わりに基板搬送アーム30を上昇させても良いし、両者を併用しても良い。以下に述べる実施形態では静電チャック4を下降させる。
【0023】
静電チャック4および吸着電源16の構成の一例を図5に示す。この図5に示す電気的構成は、基板保持装置60の以下に述べる各実施形態に共通である。
【0024】
静電チャック4は、この例では、双極型と呼ばれるものであり、例えばセラミックス等から成る絶縁物6の表面近くに、二つの電極8、10を設けた構造をしている。両電極8、10は、例えば、共に半円形をしていて両者が相対向して円形を成すように絶縁物6内に埋め込まれている。この静電チャック4には、具体的にはその電極8、10には、吸着電源16から、吸着用の直流電圧(これを吸着電圧と呼ぶ)+V、−Vがそれぞれ印加される。吸着電源16は、この例では、上記電圧+Vを印加する正電源17と、上記電圧−Vを印加する負電源18とを有している。
【0025】
吸着電源16から静電チャック4に上記吸着電圧を印加すると、基板2と電極8、10間に正負の電荷が溜まり、その間に働くクーロン力によって基板2が吸着保持される。その状態で、基板2に例えばイオンビームを照射してイオン注入等の処理を施すことができる。
【0026】
但し、静電チャック4および吸着電源16の上記構成は一例であり、静電チャック4の電極構成を他のものにし、吸着電源16の構成も当該電極構成に応じたものにしても良い。
【0027】
再び図1を参照して、押し上げ部材34は、非回転部(即ち静電チャック4が前記矢印Bのように回転するのに対してそのように回転しない部分)の一例としての昇降軸26に固定された支持部材38によって支持されている。従って押し上げ部材34は、静電チャック4と共にY方向に昇降させられる。押し上げ部材34と支持部材38との間には、上記力センサ36が設けられている。即ち力センサ36は、より具体的には、押し上げ部材34と支持部材38との間に加わる力を検出する。力センサ36は、例えば圧電素子を用いて構成されたものであるが、これに限られるものではない。支持部材38の形状は、図示例のようなL形に限られるものではない。
【0028】
押し上げ部材34の先端部は、平面的に見て、例えば図4に示す例のように、倒した状態の静電チャック4上の基板2の周縁部の下方に位置している。押し上げ部材34の先端部と静電チャック4上の基板2の下面との間には、押し上げ動作を行う前には、若干の(例えば数mm程度の)隙間が存在している。押し上げ部材34は、例えばピン状のもの(この場合は押し上げピンとも呼ばれる)であるが、これに限られるものではない。その長さも、特定のものに限定されるものではない。例えば、力センサ36を設ける位置を高くして、押し上げ部材34の長さを非常に短くしても良い。
【0029】
静電チャック4から基板2を離脱させる動作は、静電チャック4に印加する吸着電圧を切った後に行われる。この離脱動作は、詳しく見れば、この実施形態では次の二つの動作によって行われる。両動作は通常は一連の動作である。
【0030】
(1)基板押し上げ動作
これは、押し上げ部材34によって静電チャック4上の基板2の一端付近を少し押し上げる動作であり、初期離脱動作と呼ぶこともできる。具体的にはこの実施形態では、図1に示す離脱開始直前の状態から、矢印B1 に示すように、回転装置22によって静電チャック4を押し上げ部材34側に少し(例えば1〜2度程度)傾けて、図2に示すように、押し上げ部材34によって基板2の一端付近を下から少し押し上げる。
【0031】
このとき、図1、図2中に2点鎖線で示すように、予め基板搬送アーム30をその基板支持部32が基板2を受ける状態に待機させておいて、その状態で基板2を上記のようにして押し上げるのが好ましい。そのようにすれば、基板2を押し上げる際に基板2がずれることは殆どないけれども、仮に基板2がずれたとしても、基板支持部32がその下に予め待機していて、静電チャック4から基板2が落下する恐れはないので、安全性が向上する。また、次に述べるように基板搬送アーム30を基板2の離脱完成に利用することができ、しかも離脱完成後速やかに基板2を搬送することができるので、無駄な待ち時間がなくなり、スループットがより向上する。このことは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0032】
(2)離脱完成動作
これは、上記基板押し上げ動作に次いで、昇降装置28によって静電チャック4等を下降させて、図3に示すように、基板2を基板搬送アーム30に載せて、基板2を静電チャック4から完全に離脱させる動作である。
【0033】
制御装置50は、上記(1)の基板押し上げ動作の際に、次のような判定等の制御を行う機能を有している。
【0034】
即ち、図6に示すように、吸着電圧を切り(ステップ100)、上記(1)に示したような基板押し上げ動作を行わせ(ステップ101)、その際に力センサ36が検出する力Fを測定する(ステップ102)。
【0035】
なお、制御装置50内または力センサ36からの信号を増幅するアンプ(図示省略)内等に、力センサ36が検出する力Fのピーク値を保持するピークホールド機能を持たせておいても良い。そのようにすれば、力センサ36が検出する力Fのピーク値をより正確に測定することができる。
【0036】
そして、上記測定した力Fを、所定の下限値FL および所定の上限値FH と比較して下限値FL 以上かつ上限値FH 以下(即ちFL ≦F≦FH )か否かを判定し(ステップ103)、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときはステップ104に進んで正常を表す正常信号SN を出力し、下限値FL より小さい(即ちF<FL )ときはステップ105に進んで異常を表す異常信号SL を出力し、上限値FH より大きい(即ちF>FH )ときはステップ106に進んで所定時間T待機する。
【0037】
上記上限値FH 、下限値FL および所定時間Tは、制御装置50に予め設定しておけば良い(図5参照)。
【0038】
上限値FH は、例えば、上記(1)の基板押し上げ動作の際に許容する最大の残留吸着力に、基板2の重さによる力を加えた値にしておけば良い。具体例を挙げると、1.5N〜2.0N(ニュートン)程度にしておけば良い。
【0039】
下限値FL は、例えば、0より大で、しかも上記(1)の基板押し上げ動作時の基板2の重さによる力よりも小さい値にしておけば良い。具体例を挙げると、0.2N程度にしておけば良い。
【0040】
所定時間Tは、あまり短いと後述する残留吸着力の低下が少なく、あまり長くするとスループットの低下につながるので、例えば、0.5秒〜10秒程度の範囲内にすれば良く、その内でも、0.5秒〜5秒の範囲内が好ましく、1秒〜3秒の範囲内がより好ましい。例えば2秒にすれば良い。
【0041】
そして、所定時間Tだけ待機した後に、力センサ36が検出している力Fを再測定する(ステップ107)。この再測定の直前に、その前に測定した値を一旦リセットすれば良い。
【0042】
そして、上記再測定した力Fを、上記下限値FL および上記上限値FH と比較して下限値FL 以上かつ上限値FH 以下(即ちFL ≦F≦FH )か否かを判定し(ステップ108)、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときはステップ104に進んで正常を表す正常信号SN を出力し、下限値FL より小さい(即ちF<FL )ときはステップ105に進んで異常を表す異常信号SL を出力し、上限値FH より大きい(即ちF>FH )ときはステップ109に進んで、今度は、異常を表す異常信号SH を出力する。上記信号SN 、SL 、SH の出力については図5も参照。
【0043】
上記信号SN 、SL 、SH の出力によって、制御装置50における判定等の動作は一応終ったことになる。その後は、この信号SN 、SL 、SH を用いて、必要に応じて、様々な制御を行うことができる。また、必要に応じて、更なる動作を続行させても良い。これについては後述する。
【0044】
上記(1)の押し上げ動作の際には、静電チャック4に印加する電圧は予め切られているので、力センサ36が検出する力Fは、静電チャック4と基板2間の残留吸着力に、基板2の重さによる力を加えたものとなる。
【0045】
この残留吸着力は、押し上げ部材34によって基板2の端付近を少しでも押し上げて基板2を静電チャック4から少しでも剥がすと、急速に弱まる。これは、基板2が静電チャック4から剥がれた箇所から、静電チャック4表面の残留電荷による分極状態が崩れてこれが周りに拡散することになり、それによって残留吸着力は急速に弱まるからである。従って、初めの測定で残留吸着力が大きくて、力センサ36を用いて測定した力Fが上限値FH より大きくても、所定時間T待機した後に再測定を行うと、その間に残留吸着力が低下して、力センサ36を用いて測定する力が上限値FH 以下になることが期待できる。上限値FH 以下になれば、正常と判定しても良く、この基板保持装置60では正常と判定される。
【0046】
特許文献2に記載の技術では、上記のような残留吸着力の急速な低下に着目しておらず、1回の判定で異常であれば直ぐに、本来の基板処理動作とは別の残留電荷除去動作に移行するので、スループットを大きく低下させるのに対して、この基板保持装置60では、上記のような残留吸着力の急速な低下に着目して、力センサ36が検出する力Fが初めの測定および判定で上記上限値FH より大きくても、所定時間T待機した後に再測定を行って上限値FH より大きいか否かという判定を再び行うので、残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができる。このスループットは、この基板保持装置60を経由して行う基板2の搬送、処理等のスループット、またはこの基板保持装置60を備えているイオン注入装置等の装置のスループットのことであると言うこともできる。
【0047】
一方、センサ系や基板状態等に異常がなければ、初めの測定時および再測定時のいずれにおいても、力センサ36は少なくとも基板2の重さによる力を検出する。従って、力センサ36を用いて測定する力Fを上記下限値FL と比較することによって、センサ系や基板状態等に異常がある場合はそれを検出することができる。例えば、力センサ36の電気系統に断線があれば力センサ36を用いて測定する力Fは0になるので、それを検出することができる。また、基板2の位置が静電チャック4上で大きくずれているとか、極端な場合に静電チャック4上に基板2が存在しないような場合は、押し上げ部材34に加わる力が異常に小さくなって力センサ36が検出する力が異常に小さくなるので、この異常を検出することができる。
【0048】
図6を参照して説明した上記技術は、見方を変えれば、力センサ36が検出する力Fを測定して、当該測定した力Fが、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときは正常と判定し、下限値FL より小さいときは異常と判定し、上限値FH より大きいときは、所定時間T待機した後に、力センサ36が検出している力Fを再測定して、当該再測定した力Fが、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときは正常と判定し、下限値FL より小さいときは異常と判定し、上限値FH より大きいときは異常と判定する、基板押し上げ状態判定方法であると言うこともできる。
【0049】
なお、初めの測定時の判定(上記ステップ103)に用いる上限値および下限値を第1の上限値および第1の下限値とし、再測定時の判定(上記ステップ108)に用いる上限値および下限値を、上記第1のものとは異なる第2の上限値および第2の下限値としても良い。そのようにすれば、各上限値および各下限値を、より状況に応じたものにすることができるので、より精密な判定を行うことができる。一方、図6に示す例のように、ステップ103、108のどちらの判定にも同じ下限値FL および上限値FH を用いると、下限値FL および上限値FH の設定が簡単になる。図7の場合も同様である。
【0050】
上記第1の上限値および下限値ならびに第2の上限値および下限値の値の定め方は、例えば、前述した上限値FH および下限値FL の値の定め方とそれぞれ同様である。
【0051】
図6に示すステップ104、105、109に続いて更なる動作を続行させる場合の例を図7に示す。図7に示す例では、正常信号SN の出力(ステップ104)に続いて、基板搬送アーム30による基板2の搬送を行わせる(ステップ110)。異常信号SL の出力(ステップ105)に続いて、異常表示を行ない(ステップ111)、基板搬送アーム30による基板2の搬送を停止させる。異常信号SH の出力(ステップ109)に続いて、異常表示を行ない(ステップ113)、基板搬送アーム30による基板2の搬送を停止させる(ステップ114)。
【0052】
その後は、例えば、ステップ113の異常表示を確認したオペレータによって、目視により基板2の状態を確認し、問題がなければ基板2の搬送を再開させ、仮に基板2が跳ね落ちる等の問題が見られた場合は、搬送が正常に行われるように復旧作業を実施した後に、基板2の搬送を再開させるようにしても良い。また、ステップ111の異常表示を確認したオペレータによって、基板2の状態異常や力センサ36の電気系統に断線がないか等を目視等により確認し、問題がなければ基板2の搬送を再開させ、問題があればその問題箇所の復旧作業を行った後に、基板2の搬送を再開させるようにしても良い。
【0053】
なお、(ア)信号SN 、SL 、SH のいずれが出力されても、少なくとも上記(2)の離脱完成動作までは完了させるようにしても良いし、(イ)異常信号SL またはSH が出力された場合には上記(2)の離脱完了動作を行わないようにしても良い。図7は(ア)のようにする場合の例である。
【0054】
次に、基板保持装置60の他の実施形態を、上記実施形態との相違点を主体に説明する。
【0055】
図8に示す実施形態のように、押し上げ部材34、力センサ36を支持する支持部材38を、非上下動部(即ち静電チャック4が前記Y方向に上下動するのに対してそのように上下動しない固定部)の一例としての真空容器内壁40に固定しても良い。押し上げ部材34と基板2の位置関係は、図1の実施形態で説明したのと同様である。
【0056】
この実施形態の場合は、昇降装置28によって静電チャック4をY1 方向に少し下降させることによって、図9に示すように、押し上げ部材34によって基板2を押し上げることができる。即ち、上記(1)の基板押し上げ動作を行うことができる。従ってこの実施形態では、昇降装置28が、静電チャック4を駆動して基板2を押し上げさせる駆動装置を兼ねている。回転装置22は、基板2の離脱動作に必須のものではない。
【0057】
図10に示す実施形態のように、支持部材38ひいてはそれに支持された押し上げ部材34等を矢印Y2 に示すように押し上げる昇降装置42を設けても良い。昇降装置42は、上記昇降軸26に固定された支持部材44に支持されている。押し上げ部材34と基板2との位置関係は、図1の実施形態で説明したのと同様である。
【0058】
この実施形態の場合は、昇降装置42によって押し上げ部材34をY2 方向に少し上昇させることによって、押し上げ部材34によって基板2を押し上げることができる。即ち、上記(1)の基板押し上げ動作を行うことができる。従ってこの実施形態では、昇降装置42が、押し上げ部材34を駆動して基板2を押し上げさせる駆動装置を構成している。回転装置22は、基板2の離脱動作に必須のものではない。
【0059】
なお、必要に応じて、上記図6、図7に示したステップ108とステップ109との間で、ステップ106〜108と同様の動作を1回以上行うようにしても良い。
【0060】
また、必要に応じて、基板2の端部付近を押し上げるための上記のような押し上げ部材34を複数m個(mは2以上の整数)設けても良い。その場合、複数m個の押し上げ部材34は、基板2の周縁部の全周に分散させて設けるよりも、一つの側にある程度近寄せて設けるのが好ましい。その辺りを起点として基板2を徐々に剥がし始めることができるからである。押し上げ部材34を2個設けた場合の一例を図11に示す。
【0061】
押し上げ部材34を複数m個設ける場合、その内の1個の押し上げ部材34について上記のような力センサ36を設けても良いし、複数n個(nは2≦n≦mの整数)の押し上げ部材34について上記のような力センサ36をそれぞれ設けても良い。いずれの場合も、各力センサ36は、上記押し上げの際に、担当する(対応する)押し上げ部材34に加わる力を検出するものである。
【0062】
押し上げ部材34を複数m個設ける場合、上記上限値FH 、下限値FL 等の上限値および下限値の値は、押し上げ部材34の数に応じたものにすれば良い。例えば、1個の場合の1/m程度にすれば良い。
【0063】
複数n個の押し上げ部材34について力センサ36をそれぞれ設ける場合、当該複数個の力センサ36を用いて測定した力の中から一つを選択して、それを上記上限値FH 、下限値FL 等の上限値および下限値と比較して判定を行っても良い。
【0064】
また、力センサ36が検出する力Fを測定して当該測定した力を上記上限値および下限値と比較して上記判定を行う際に、(ア)力センサ36が検出する力Fをそのまま上記測定した力として用いても良いし、(イ)力センサ36が検出する力Fに処理を施した力(例えば、力センサ36が検出する力Fに対して、所定値の加減乗除の内の少なくとも一つを行った力)を上記測定した力として用いても良いし、(ウ)力センサ36が検出する力Fを面積当たりの力に、即ち圧力に変換したものを上記測定した力として用いても良い。上述した各実施形態は、上記(ア)の場合の例である。上記(ウ)は(イ)の一例であると言うこともできる。
【0065】
また、基板2の押し上げの際に押し上げ部材34に加わる圧力Pを検出するという考えもあるが、圧力Pは力Fを面積Sで割ったものであり、面積Sは押し上げ部材34の寸法等によって決まる一定値であるから、この場合も実質的には力Fを検出していると言うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明に係る基板保持装置の機構部および力センサ周りの一実施形態を示す側面図であり、基板の離脱開始直前の状態の一例を示す。
【図2】図1に示す静電チャックを矢印B1 方向に少し傾けて基板を押し上げた状態の一例を示す側面図である。
【図3】図2に示す静電チャックを下降させて基板の離脱が完了した状態の一例を示す側面図である。
【図4】基板搬送アーム周りの一例を示す平面図である。
【図5】この発明に係る基板保持装置の電気的構成の一実施形態を示す図である。
【図6】図5に示す制御装置における制御内容の一例を示すフローチャートである。
【図7】図5に示す制御装置における制御内容の他の例を示すフローチャートである。
【図8】この発明に係る基板保持装置の機構部および力センサ周りの他の実施形態を示す側面図であり、基板の離脱開始直前の状態の一例を示す。
【図9】図8に示す静電チャックを矢印Y1 方向に少し下降させて基板を押し上げた状態の一例を示す側面図である。
【図10】この発明に係る基板保持装置の機構部および力センサ周りの更に他の実施形態を示す側面図であり、基板の離脱開始直前の状態の一例を示す。
【図11】基板搬送アーム周りの他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0067】
2 基板
4 静電チャック
16 吸着電源
20 チャック駆動装置
22 回転装置
28 昇降装置
34 押し上げ部材
36 力センサ
42 昇降装置
50 制御装置
60 基板保持装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばイオン注入装置、エッチング装置、薄膜形成装置等に用いられるものであって、基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックを備える基板保持装置、および、静電チャックに印加する電圧を切った後に押し上げ部材によって基板を押し上げる際の状態を判定する基板押し上げ状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板(例えば半導体基板)を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、静電チャック上の基板の一端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置が記載されている。
【0003】
上記のような静電チャックに基板を吸着した後に、静電チャックに印加する電圧を切っても、ある程度の時間、静電チャックと基板との間に電荷が残留していて、残留吸着力が発生している。仮にこの残留吸着力が大きい状態で、静電チャックから基板を離脱させると、基板の跳ね、位置ずれ、割れ等の不都合が発生する。
【0004】
この種の不都合の発生を防止する手段として、特許文献2には、基板を下から押し上げて離脱させるリフトピンにかかる負荷を残留吸着力として検出する残留吸着力検知部を設けておいて、それが検出した残留吸着力が所定値より大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合は、本来の基板処理動作とは別の残留電荷除去動作に進むようにする技術が記載されている。具体的には、残留電荷除去用の導電体ウエハを静電チャック上に搬入し、当該導電体ウエハを接地して残留電荷を除去した後、当該導電体ウエハを搬出することを行う。
【0005】
【特許文献1】特許第3814905号公報(段落0010−0012、図2−図5)
【特許文献2】特開2004−119792号公報(段落0034、0042、0043、図1、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載の技術は、1回の残留吸着力の判定で、異常(残留吸着力が所定値より大きい)か正常(残留吸着力が所定値より小さい)かを判定し、その1回の判定で異常であれば、すぐに、本来の基板処理動作とは別の残留電荷除去動作に移行するのであるが、この残留電荷除去動作に移行すると、その間は本来の基板処理動作を行うことができないので、スループット(単位時間当たりの基板の処理能力)を大きく低下させるという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術は、残留吸着力検知部で検出した残留吸着力(具体的にはリフトピンにかかる負荷)が所定値より小さいと判定した場合は、そのまま、本来の基板処理動作に進むのであるが、例えば検出系の異常で本来検出すべき負荷が検出できないとか、基板の位置が静電チャック上で大きくずれていてリフトピンにかかる負荷が小さい等のように、検出系(センサ系)や基板状態等に異常がある場合に、それを検出することができないという課題もある。
【0008】
そこでこの発明は、静電チャックと基板間の残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができ、しかもセンサ系や基板状態等に異常がある場合にそれを検出することができる装置および方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る基板保持装置の一つは、基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力(ちから)センサと、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該測定した力が前記下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該測定した力が前記上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が前記下限値以上かつ前記上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該再測定した力が前記下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該再測定した力が前記上限値より大きいときは異常を表す異常信号を出力する機能を有している制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0010】
この発明に係る基板押し上げ状態判定方法の一つは、基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、前記静電チャックに印加する電圧を切った後に、前記押し上げ部材によって基板を押し上げる際の状態を判定する方法であって、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサを設けておき、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下のときは正常と判定し、当該測定した力が前記下限値より小さいときは異常と判定し、当該測定した力が前記上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が前記下限値以上かつ前記上限値以下のときは正常と判定し、当該再測定した力が前記下限値より小さいときは異常と判定し、当該再測定した力が前記上限値より大きいときは異常と判定することを特徴としている。
【0011】
上記押し上げの際には、静電チャックに印加する電圧は予め切られているので、力センサが検出する力は、静電チャックと基板間の残留吸着力に、基板の重さによる力を加えたものとなる。
【0012】
この残留吸着力は、押し上げ部材によって基板の端付近を少しでも押し上げて基板を少しでも剥がすと、急速に弱まる。従って、初めの測定で残留吸着力が大きくて、力センサを用いて測定した力が上限値より大きくても、所定時間待機した後に再測定を行うと、その間に残留吸着力が低下して、力センサを用いて測定する力が上限値以下になることが期待できる。上限値以下になれば、正常と判定しても良く、この発明では正常と判定される。従ってこの発明によれば、残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができる。
【0013】
一方、センサ系や基板状態等に異常がなければ、初めの測定時および再測定時のいずれにおいても、力センサは少なくとも基板の重さによる力を検出する。従って、力センサを用いて測定する力を下限値と比較することによって、センサ系や基板状態等に異常がある場合はそれを検出することができる。
【0014】
初めの測定時の判定に用いる上限値および下限値を第1の上限値および第1の下限値とし、再測定時の判定に用いる上限値および下限値を第2の上限値および第2の下限値としても良い。そのようにすれば、各上限値および各下限値を、より状況に応じたものにすることができるので、より精密な判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜4に記載の発明によれば、力センサが検出する力が初めの測定および判定で所定の上限値より大きくても、所定時間待機した後に再測定を行って所定の上限値より大きいか否かという判定を再び行うので、残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができる。しかも、力センサを用いて測定する力を所定の下限値と比較するので、センサ系や基板状態等に異常がある場合にそれを検出することができる。
【0016】
請求項3、4に記載の発明によれば、初めの測定時の判定に用いる上限値および下限値を第1の上限値および第1の下限値とし、再測定時の判定に用いる上限値および下限値を第2の上限値および第2の下限値としているので、各上限値および各下限値を、より状況に応じたものにすることができ、より精密な判定を行うことができる、という更なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、この発明に係る基板保持装置の機構部および力センサ周りの一実施形態を示す側面図であり、基板の離脱開始直前の状態の一例を示す。
【0018】
この基板保持装置60は、基板(例えば半導体基板)2を静電気によって吸着して保持する静電チャック4と、この静電チャック4を保持するホルダ14と、静電チャック4上の基板2の端(一端)付近にその下から当接して基板2を押し上げるための押し上げ部材34と、静電チャック4を駆動して(この実施形態では後述するように少し傾けて)押し上げ部材34によって基板2を押し上げさせる駆動装置を兼ねている回転装置22とを備えている。
【0019】
更に、この基板保持装置60は、図5に示すように、前記押し上げの際に押し上げ部材34に、押し上げ方向に沿う方向に加わる力Fを検出する力センサ36と、この力センサ36が検出する力Fを測定して後述するような判定等の処理を行う制御装置50とを備えている。押し上げ部材34に加わる力Fは、基板2を押し上げることに伴って、反作用として基板2から押し上げ部材34に加えられる力であると言うこともできる。押し上げ部材34は、押し上げの際に基板2から加わる力を力センサ36に伝達する働きもする。
【0020】
押し上げ部材34および力センサ36は、この実施形態ではそれぞれ1個の場合を例にしているが、後述するようにこれに限られるものではない。後述する他の実施形態においても同様である。
【0021】
回転装置22は、この実施形態では、チャック駆動装置20の一部を構成している。即ち、チャック駆動装置20は、基板2を保持した静電チャック4およびホルダ14を、回転軸24を中心にして矢印Bに示すように往復回転させて、それらを立てた状態と、図1に示すように横に倒した状態(例えば実質的に水平状態)とに回転させる回転装置22と、基板2を保持した静電チャック4、ホルダ14および回転装置22を、昇降軸26を介して、矢印Yに示すように昇降させる昇降装置28とを備えている。
【0022】
基板2等を立てた状態で、基板2に例えばイオンビーム(図示省略)を照射して基板2にイオン注入等の処理を施すことができる。基板2を倒した状態で、基板搬送アーム30との間で基板2の受け渡し(例えばイオン注入済の基板2と未注入の基板2との入れ換え)を行うことができる。その際、基板搬送アーム30は、例えば図4に示すように水平面内で矢印Cのように往復方向に旋回させられる。基板2をこの基板搬送アーム30(より具体的にはその基板支持部32)と静電チャック4との間で受け渡しする際は、昇降装置28によって基板2を載せた静電チャック4を下降させても良いし、その代わりに基板搬送アーム30を上昇させても良いし、両者を併用しても良い。以下に述べる実施形態では静電チャック4を下降させる。
【0023】
静電チャック4および吸着電源16の構成の一例を図5に示す。この図5に示す電気的構成は、基板保持装置60の以下に述べる各実施形態に共通である。
【0024】
静電チャック4は、この例では、双極型と呼ばれるものであり、例えばセラミックス等から成る絶縁物6の表面近くに、二つの電極8、10を設けた構造をしている。両電極8、10は、例えば、共に半円形をしていて両者が相対向して円形を成すように絶縁物6内に埋め込まれている。この静電チャック4には、具体的にはその電極8、10には、吸着電源16から、吸着用の直流電圧(これを吸着電圧と呼ぶ)+V、−Vがそれぞれ印加される。吸着電源16は、この例では、上記電圧+Vを印加する正電源17と、上記電圧−Vを印加する負電源18とを有している。
【0025】
吸着電源16から静電チャック4に上記吸着電圧を印加すると、基板2と電極8、10間に正負の電荷が溜まり、その間に働くクーロン力によって基板2が吸着保持される。その状態で、基板2に例えばイオンビームを照射してイオン注入等の処理を施すことができる。
【0026】
但し、静電チャック4および吸着電源16の上記構成は一例であり、静電チャック4の電極構成を他のものにし、吸着電源16の構成も当該電極構成に応じたものにしても良い。
【0027】
再び図1を参照して、押し上げ部材34は、非回転部(即ち静電チャック4が前記矢印Bのように回転するのに対してそのように回転しない部分)の一例としての昇降軸26に固定された支持部材38によって支持されている。従って押し上げ部材34は、静電チャック4と共にY方向に昇降させられる。押し上げ部材34と支持部材38との間には、上記力センサ36が設けられている。即ち力センサ36は、より具体的には、押し上げ部材34と支持部材38との間に加わる力を検出する。力センサ36は、例えば圧電素子を用いて構成されたものであるが、これに限られるものではない。支持部材38の形状は、図示例のようなL形に限られるものではない。
【0028】
押し上げ部材34の先端部は、平面的に見て、例えば図4に示す例のように、倒した状態の静電チャック4上の基板2の周縁部の下方に位置している。押し上げ部材34の先端部と静電チャック4上の基板2の下面との間には、押し上げ動作を行う前には、若干の(例えば数mm程度の)隙間が存在している。押し上げ部材34は、例えばピン状のもの(この場合は押し上げピンとも呼ばれる)であるが、これに限られるものではない。その長さも、特定のものに限定されるものではない。例えば、力センサ36を設ける位置を高くして、押し上げ部材34の長さを非常に短くしても良い。
【0029】
静電チャック4から基板2を離脱させる動作は、静電チャック4に印加する吸着電圧を切った後に行われる。この離脱動作は、詳しく見れば、この実施形態では次の二つの動作によって行われる。両動作は通常は一連の動作である。
【0030】
(1)基板押し上げ動作
これは、押し上げ部材34によって静電チャック4上の基板2の一端付近を少し押し上げる動作であり、初期離脱動作と呼ぶこともできる。具体的にはこの実施形態では、図1に示す離脱開始直前の状態から、矢印B1 に示すように、回転装置22によって静電チャック4を押し上げ部材34側に少し(例えば1〜2度程度)傾けて、図2に示すように、押し上げ部材34によって基板2の一端付近を下から少し押し上げる。
【0031】
このとき、図1、図2中に2点鎖線で示すように、予め基板搬送アーム30をその基板支持部32が基板2を受ける状態に待機させておいて、その状態で基板2を上記のようにして押し上げるのが好ましい。そのようにすれば、基板2を押し上げる際に基板2がずれることは殆どないけれども、仮に基板2がずれたとしても、基板支持部32がその下に予め待機していて、静電チャック4から基板2が落下する恐れはないので、安全性が向上する。また、次に述べるように基板搬送アーム30を基板2の離脱完成に利用することができ、しかも離脱完成後速やかに基板2を搬送することができるので、無駄な待ち時間がなくなり、スループットがより向上する。このことは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0032】
(2)離脱完成動作
これは、上記基板押し上げ動作に次いで、昇降装置28によって静電チャック4等を下降させて、図3に示すように、基板2を基板搬送アーム30に載せて、基板2を静電チャック4から完全に離脱させる動作である。
【0033】
制御装置50は、上記(1)の基板押し上げ動作の際に、次のような判定等の制御を行う機能を有している。
【0034】
即ち、図6に示すように、吸着電圧を切り(ステップ100)、上記(1)に示したような基板押し上げ動作を行わせ(ステップ101)、その際に力センサ36が検出する力Fを測定する(ステップ102)。
【0035】
なお、制御装置50内または力センサ36からの信号を増幅するアンプ(図示省略)内等に、力センサ36が検出する力Fのピーク値を保持するピークホールド機能を持たせておいても良い。そのようにすれば、力センサ36が検出する力Fのピーク値をより正確に測定することができる。
【0036】
そして、上記測定した力Fを、所定の下限値FL および所定の上限値FH と比較して下限値FL 以上かつ上限値FH 以下(即ちFL ≦F≦FH )か否かを判定し(ステップ103)、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときはステップ104に進んで正常を表す正常信号SN を出力し、下限値FL より小さい(即ちF<FL )ときはステップ105に進んで異常を表す異常信号SL を出力し、上限値FH より大きい(即ちF>FH )ときはステップ106に進んで所定時間T待機する。
【0037】
上記上限値FH 、下限値FL および所定時間Tは、制御装置50に予め設定しておけば良い(図5参照)。
【0038】
上限値FH は、例えば、上記(1)の基板押し上げ動作の際に許容する最大の残留吸着力に、基板2の重さによる力を加えた値にしておけば良い。具体例を挙げると、1.5N〜2.0N(ニュートン)程度にしておけば良い。
【0039】
下限値FL は、例えば、0より大で、しかも上記(1)の基板押し上げ動作時の基板2の重さによる力よりも小さい値にしておけば良い。具体例を挙げると、0.2N程度にしておけば良い。
【0040】
所定時間Tは、あまり短いと後述する残留吸着力の低下が少なく、あまり長くするとスループットの低下につながるので、例えば、0.5秒〜10秒程度の範囲内にすれば良く、その内でも、0.5秒〜5秒の範囲内が好ましく、1秒〜3秒の範囲内がより好ましい。例えば2秒にすれば良い。
【0041】
そして、所定時間Tだけ待機した後に、力センサ36が検出している力Fを再測定する(ステップ107)。この再測定の直前に、その前に測定した値を一旦リセットすれば良い。
【0042】
そして、上記再測定した力Fを、上記下限値FL および上記上限値FH と比較して下限値FL 以上かつ上限値FH 以下(即ちFL ≦F≦FH )か否かを判定し(ステップ108)、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときはステップ104に進んで正常を表す正常信号SN を出力し、下限値FL より小さい(即ちF<FL )ときはステップ105に進んで異常を表す異常信号SL を出力し、上限値FH より大きい(即ちF>FH )ときはステップ109に進んで、今度は、異常を表す異常信号SH を出力する。上記信号SN 、SL 、SH の出力については図5も参照。
【0043】
上記信号SN 、SL 、SH の出力によって、制御装置50における判定等の動作は一応終ったことになる。その後は、この信号SN 、SL 、SH を用いて、必要に応じて、様々な制御を行うことができる。また、必要に応じて、更なる動作を続行させても良い。これについては後述する。
【0044】
上記(1)の押し上げ動作の際には、静電チャック4に印加する電圧は予め切られているので、力センサ36が検出する力Fは、静電チャック4と基板2間の残留吸着力に、基板2の重さによる力を加えたものとなる。
【0045】
この残留吸着力は、押し上げ部材34によって基板2の端付近を少しでも押し上げて基板2を静電チャック4から少しでも剥がすと、急速に弱まる。これは、基板2が静電チャック4から剥がれた箇所から、静電チャック4表面の残留電荷による分極状態が崩れてこれが周りに拡散することになり、それによって残留吸着力は急速に弱まるからである。従って、初めの測定で残留吸着力が大きくて、力センサ36を用いて測定した力Fが上限値FH より大きくても、所定時間T待機した後に再測定を行うと、その間に残留吸着力が低下して、力センサ36を用いて測定する力が上限値FH 以下になることが期待できる。上限値FH 以下になれば、正常と判定しても良く、この基板保持装置60では正常と判定される。
【0046】
特許文献2に記載の技術では、上記のような残留吸着力の急速な低下に着目しておらず、1回の判定で異常であれば直ぐに、本来の基板処理動作とは別の残留電荷除去動作に移行するので、スループットを大きく低下させるのに対して、この基板保持装置60では、上記のような残留吸着力の急速な低下に着目して、力センサ36が検出する力Fが初めの測定および判定で上記上限値FH より大きくても、所定時間T待機した後に再測定を行って上限値FH より大きいか否かという判定を再び行うので、残留吸着力の判定を慎重に行ってスループットの低下を抑えることができる。このスループットは、この基板保持装置60を経由して行う基板2の搬送、処理等のスループット、またはこの基板保持装置60を備えているイオン注入装置等の装置のスループットのことであると言うこともできる。
【0047】
一方、センサ系や基板状態等に異常がなければ、初めの測定時および再測定時のいずれにおいても、力センサ36は少なくとも基板2の重さによる力を検出する。従って、力センサ36を用いて測定する力Fを上記下限値FL と比較することによって、センサ系や基板状態等に異常がある場合はそれを検出することができる。例えば、力センサ36の電気系統に断線があれば力センサ36を用いて測定する力Fは0になるので、それを検出することができる。また、基板2の位置が静電チャック4上で大きくずれているとか、極端な場合に静電チャック4上に基板2が存在しないような場合は、押し上げ部材34に加わる力が異常に小さくなって力センサ36が検出する力が異常に小さくなるので、この異常を検出することができる。
【0048】
図6を参照して説明した上記技術は、見方を変えれば、力センサ36が検出する力Fを測定して、当該測定した力Fが、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときは正常と判定し、下限値FL より小さいときは異常と判定し、上限値FH より大きいときは、所定時間T待機した後に、力センサ36が検出している力Fを再測定して、当該再測定した力Fが、下限値FL 以上かつ上限値FH 以下のときは正常と判定し、下限値FL より小さいときは異常と判定し、上限値FH より大きいときは異常と判定する、基板押し上げ状態判定方法であると言うこともできる。
【0049】
なお、初めの測定時の判定(上記ステップ103)に用いる上限値および下限値を第1の上限値および第1の下限値とし、再測定時の判定(上記ステップ108)に用いる上限値および下限値を、上記第1のものとは異なる第2の上限値および第2の下限値としても良い。そのようにすれば、各上限値および各下限値を、より状況に応じたものにすることができるので、より精密な判定を行うことができる。一方、図6に示す例のように、ステップ103、108のどちらの判定にも同じ下限値FL および上限値FH を用いると、下限値FL および上限値FH の設定が簡単になる。図7の場合も同様である。
【0050】
上記第1の上限値および下限値ならびに第2の上限値および下限値の値の定め方は、例えば、前述した上限値FH および下限値FL の値の定め方とそれぞれ同様である。
【0051】
図6に示すステップ104、105、109に続いて更なる動作を続行させる場合の例を図7に示す。図7に示す例では、正常信号SN の出力(ステップ104)に続いて、基板搬送アーム30による基板2の搬送を行わせる(ステップ110)。異常信号SL の出力(ステップ105)に続いて、異常表示を行ない(ステップ111)、基板搬送アーム30による基板2の搬送を停止させる。異常信号SH の出力(ステップ109)に続いて、異常表示を行ない(ステップ113)、基板搬送アーム30による基板2の搬送を停止させる(ステップ114)。
【0052】
その後は、例えば、ステップ113の異常表示を確認したオペレータによって、目視により基板2の状態を確認し、問題がなければ基板2の搬送を再開させ、仮に基板2が跳ね落ちる等の問題が見られた場合は、搬送が正常に行われるように復旧作業を実施した後に、基板2の搬送を再開させるようにしても良い。また、ステップ111の異常表示を確認したオペレータによって、基板2の状態異常や力センサ36の電気系統に断線がないか等を目視等により確認し、問題がなければ基板2の搬送を再開させ、問題があればその問題箇所の復旧作業を行った後に、基板2の搬送を再開させるようにしても良い。
【0053】
なお、(ア)信号SN 、SL 、SH のいずれが出力されても、少なくとも上記(2)の離脱完成動作までは完了させるようにしても良いし、(イ)異常信号SL またはSH が出力された場合には上記(2)の離脱完了動作を行わないようにしても良い。図7は(ア)のようにする場合の例である。
【0054】
次に、基板保持装置60の他の実施形態を、上記実施形態との相違点を主体に説明する。
【0055】
図8に示す実施形態のように、押し上げ部材34、力センサ36を支持する支持部材38を、非上下動部(即ち静電チャック4が前記Y方向に上下動するのに対してそのように上下動しない固定部)の一例としての真空容器内壁40に固定しても良い。押し上げ部材34と基板2の位置関係は、図1の実施形態で説明したのと同様である。
【0056】
この実施形態の場合は、昇降装置28によって静電チャック4をY1 方向に少し下降させることによって、図9に示すように、押し上げ部材34によって基板2を押し上げることができる。即ち、上記(1)の基板押し上げ動作を行うことができる。従ってこの実施形態では、昇降装置28が、静電チャック4を駆動して基板2を押し上げさせる駆動装置を兼ねている。回転装置22は、基板2の離脱動作に必須のものではない。
【0057】
図10に示す実施形態のように、支持部材38ひいてはそれに支持された押し上げ部材34等を矢印Y2 に示すように押し上げる昇降装置42を設けても良い。昇降装置42は、上記昇降軸26に固定された支持部材44に支持されている。押し上げ部材34と基板2との位置関係は、図1の実施形態で説明したのと同様である。
【0058】
この実施形態の場合は、昇降装置42によって押し上げ部材34をY2 方向に少し上昇させることによって、押し上げ部材34によって基板2を押し上げることができる。即ち、上記(1)の基板押し上げ動作を行うことができる。従ってこの実施形態では、昇降装置42が、押し上げ部材34を駆動して基板2を押し上げさせる駆動装置を構成している。回転装置22は、基板2の離脱動作に必須のものではない。
【0059】
なお、必要に応じて、上記図6、図7に示したステップ108とステップ109との間で、ステップ106〜108と同様の動作を1回以上行うようにしても良い。
【0060】
また、必要に応じて、基板2の端部付近を押し上げるための上記のような押し上げ部材34を複数m個(mは2以上の整数)設けても良い。その場合、複数m個の押し上げ部材34は、基板2の周縁部の全周に分散させて設けるよりも、一つの側にある程度近寄せて設けるのが好ましい。その辺りを起点として基板2を徐々に剥がし始めることができるからである。押し上げ部材34を2個設けた場合の一例を図11に示す。
【0061】
押し上げ部材34を複数m個設ける場合、その内の1個の押し上げ部材34について上記のような力センサ36を設けても良いし、複数n個(nは2≦n≦mの整数)の押し上げ部材34について上記のような力センサ36をそれぞれ設けても良い。いずれの場合も、各力センサ36は、上記押し上げの際に、担当する(対応する)押し上げ部材34に加わる力を検出するものである。
【0062】
押し上げ部材34を複数m個設ける場合、上記上限値FH 、下限値FL 等の上限値および下限値の値は、押し上げ部材34の数に応じたものにすれば良い。例えば、1個の場合の1/m程度にすれば良い。
【0063】
複数n個の押し上げ部材34について力センサ36をそれぞれ設ける場合、当該複数個の力センサ36を用いて測定した力の中から一つを選択して、それを上記上限値FH 、下限値FL 等の上限値および下限値と比較して判定を行っても良い。
【0064】
また、力センサ36が検出する力Fを測定して当該測定した力を上記上限値および下限値と比較して上記判定を行う際に、(ア)力センサ36が検出する力Fをそのまま上記測定した力として用いても良いし、(イ)力センサ36が検出する力Fに処理を施した力(例えば、力センサ36が検出する力Fに対して、所定値の加減乗除の内の少なくとも一つを行った力)を上記測定した力として用いても良いし、(ウ)力センサ36が検出する力Fを面積当たりの力に、即ち圧力に変換したものを上記測定した力として用いても良い。上述した各実施形態は、上記(ア)の場合の例である。上記(ウ)は(イ)の一例であると言うこともできる。
【0065】
また、基板2の押し上げの際に押し上げ部材34に加わる圧力Pを検出するという考えもあるが、圧力Pは力Fを面積Sで割ったものであり、面積Sは押し上げ部材34の寸法等によって決まる一定値であるから、この場合も実質的には力Fを検出していると言うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明に係る基板保持装置の機構部および力センサ周りの一実施形態を示す側面図であり、基板の離脱開始直前の状態の一例を示す。
【図2】図1に示す静電チャックを矢印B1 方向に少し傾けて基板を押し上げた状態の一例を示す側面図である。
【図3】図2に示す静電チャックを下降させて基板の離脱が完了した状態の一例を示す側面図である。
【図4】基板搬送アーム周りの一例を示す平面図である。
【図5】この発明に係る基板保持装置の電気的構成の一実施形態を示す図である。
【図6】図5に示す制御装置における制御内容の一例を示すフローチャートである。
【図7】図5に示す制御装置における制御内容の他の例を示すフローチャートである。
【図8】この発明に係る基板保持装置の機構部および力センサ周りの他の実施形態を示す側面図であり、基板の離脱開始直前の状態の一例を示す。
【図9】図8に示す静電チャックを矢印Y1 方向に少し下降させて基板を押し上げた状態の一例を示す側面図である。
【図10】この発明に係る基板保持装置の機構部および力センサ周りの更に他の実施形態を示す側面図であり、基板の離脱開始直前の状態の一例を示す。
【図11】基板搬送アーム周りの他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0067】
2 基板
4 静電チャック
16 吸着電源
20 チャック駆動装置
22 回転装置
28 昇降装置
34 押し上げ部材
36 力センサ
42 昇降装置
50 制御装置
60 基板保持装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサと、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該測定した力が前記下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該測定した力が前記上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が前記下限値以上かつ前記上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該再測定した力が前記下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該再測定した力が前記上限値より大きいときは異常を表す異常信号を出力する機能を有している制御装置とを備えていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、前記静電チャックに印加する電圧を切った後に、前記押し上げ部材によって基板を押し上げる際の状態を判定する方法であって、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサを設けておき、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下のときは正常と判定し、当該測定した力が前記下限値より小さいときは異常と判定し、当該測定した力が前記上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が前記下限値以上かつ前記上限値以下のときは正常と判定し、当該再測定した力が前記下限値より小さいときは異常と判定し、当該再測定した力が前記上限値より大きいときは異常と判定することを特徴とする基板押し上げ状態判定方法。
【請求項3】
基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサと、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の第1の下限値以上かつ所定の第1の上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該測定した力が前記第1の下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該測定した力が前記第1の上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が所定の第2の下限値以上かつ所定の第2の上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該再測定した力が前記第2の下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該再測定した力が前記第2の上限値より大きいときは異常を表す異常信号を出力する機能を有している制御装置とを備えていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項4】
基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、前記静電チャックに印加する電圧を切った後に、前記押し上げ部材によって基板を押し上げる際の状態を判定する方法であって、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサを設けておき、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の第1の下限値以上かつ所定の第1の上限値以下のときは正常と判定し、当該測定した力が前記第1の下限値より小さいときは異常と判定し、当該測定した力が前記第1の上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が所定の第2の下限値以上かつ所定の第2の上限値以下のときは正常と判定し、当該再測定した力が前記第2の下限値より小さいときは異常と判定し、当該再測定した力が前記第2の上限値より大きいときは異常と判定することを特徴とする基板押し上げ状態判定方法。
【請求項1】
基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサと、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該測定した力が前記下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該測定した力が前記上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が前記下限値以上かつ前記上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該再測定した力が前記下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該再測定した力が前記上限値より大きいときは異常を表す異常信号を出力する機能を有している制御装置とを備えていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、前記静電チャックに印加する電圧を切った後に、前記押し上げ部材によって基板を押し上げる際の状態を判定する方法であって、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサを設けておき、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下のときは正常と判定し、当該測定した力が前記下限値より小さいときは異常と判定し、当該測定した力が前記上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が前記下限値以上かつ前記上限値以下のときは正常と判定し、当該再測定した力が前記下限値より小さいときは異常と判定し、当該再測定した力が前記上限値より大きいときは異常と判定することを特徴とする基板押し上げ状態判定方法。
【請求項3】
基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサと、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の第1の下限値以上かつ所定の第1の上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該測定した力が前記第1の下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該測定した力が前記第1の上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が所定の第2の下限値以上かつ所定の第2の上限値以下のときは正常を表す正常信号を出力し、当該再測定した力が前記第2の下限値より小さいときは異常を表す異常信号を出力し、当該再測定した力が前記第2の上限値より大きいときは異常を表す異常信号を出力する機能を有している制御装置とを備えていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項4】
基板を静電気によって吸着して保持する静電チャックと、この静電チャック上の基板の端付近にその下から当接して基板を押し上げるための押し上げ部材と、前記静電チャックおよび押し上げ部材の少なくとも一方を駆動して、前記押し上げ部材によって基板を押し上げさせる駆動装置とを備える基板保持装置において、前記静電チャックに印加する電圧を切った後に、前記押し上げ部材によって基板を押し上げる際の状態を判定する方法であって、
前記押し上げの際に前記押し上げ部材に加わる力を検出する力センサを設けておき、
前記力センサが検出する力を測定して、当該測定した力が所定の第1の下限値以上かつ所定の第1の上限値以下のときは正常と判定し、当該測定した力が前記第1の下限値より小さいときは異常と判定し、当該測定した力が前記第1の上限値より大きいときは、所定時間待機した後に、前記力センサが検出している力を再測定して、当該再測定した力が所定の第2の下限値以上かつ所定の第2の上限値以下のときは正常と判定し、当該再測定した力が前記第2の下限値より小さいときは異常と判定し、当該再測定した力が前記第2の上限値より大きいときは異常と判定することを特徴とする基板押し上げ状態判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−187106(P2008−187106A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21021(P2007−21021)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
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