説明

基板処理方法及びその装置

【課題】洗浄対象の膜の材料にかかわらず簡易に高い洗浄効果を得ることが可能な基板処理方法及びその装置を提供する。
【解決手段】被処理基板1の表面上に洗浄液を供給しながら回転させることで乾燥させる基板処理方法であって、回転中の被処理基板の表面上に洗浄液を供給する洗浄液供給位置を被処理基板上で移動させる際に、被処理基板の表面上の少なくとも一部の領域において、被処理基板の表面上における所定の箇所における水位を計測し、計測された水位に基づいて、洗浄液を供給する位置を移動させるときの洗浄液供給位置の移動速度又は被処理基板の回転速度、あるいは洗浄液供給位置の移動速度及び被処理基板の回転速度を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、LSI、電子回路部品、液晶表示素子等の製造におけるウェット処理工程、特に感光性レジスト膜を用いた処理において、基板を洗浄する必要がある。近年では、基板の大口径化に伴い、感光性レジスト膜の洗浄工程、例えば現像工程におけるリンス工程や液浸プロセスにおける洗浄工程では、洗浄が不十分であることによる致命的な欠陥の発生が大きな問題となっている。
【0003】
従来は、基板を回転しながら、位置が固定されたノズルから洗浄液を供給し洗浄及び乾燥を行っていた。しかしこの手法では、大口径化に伴う基板外周での乱流の影響により、基板中心部よりも外周部での乾燥が進み、その結果、中心部で洗浄除去された物質が基板外周部に残存するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、後述する特許文献1に記載されたように、洗浄工程の初期に基板を回転しながら中心で洗浄液を供給し、ノズルを基板中心から外周に移動させる洗浄方法が提案されている。
【0005】
しかしながらこの方法では、ノズルの移動制御に関する最適化が困難であった。仮に、特定の洗浄工程において試行錯誤を行って最適化を図ったとしても、感光性レジストの材料が変わる毎に最適解が異なる。このため、材料毎に最適化を図る必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【特許文献1】特開2006−80315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、洗浄工程において洗浄の対象となる膜の材料にかかわらず、簡易な手法により高い洗浄効果を得ることが可能な基板処理方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による基板処理方法は、被処理基板の表面上に洗浄液を供給しながら回転させることで前記被処理基板を乾燥させる基板処理方法であって、回転中の前記被処理基板の表面上に前記洗浄液を供給する洗浄液供給位置を前記被処理基板上で移動させる際に、前記被処理基板の表面上の少なくとも一部の領域において、前記被処理基板の表面上における所定の箇所における水位を計測し、計測された前記水位に基づいて、前記洗浄液を供給する位置を移動させるときの洗浄液供給位置の移動速度又は前記被処理基板の回転速度、あるいは前記洗浄液供給位置の移動速度及び前記被処理基板の回転速度を制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様による基板処理装置は、被処理基板の表面上に洗浄液を供給しながら回転させることで前記被処理基板を乾燥させる基板処理装置であって、前記被処理基板を保持し回転させる被処理基板保持及び回転部と、回転中の前記被処理基板の表面上に前記洗浄液を、前記被処理基板上を移動しながら供給する洗浄液供給部と、前記被処理基板の表面上において、前記洗浄液の水位を計測する計測部と、前記被処理基板の表面上の少なくとも一部の領域において、計測された前記洗浄液の水位に基づいて、前記洗浄液供給位置の移動速度又は前記被処理基板の回転速度、あるいは前記洗浄液供給位置の移動速度及び前記被処理基板の回転速度を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の一態様による基板処理装置は、被処理基板の表面上に洗浄液を供給しながら回転させることで前記被処理基板を乾燥させる基板処理装置であって、前記被処理基板を保持し回転させる被処理基板保持及び回転部と、回転中の前記被処理基板の表面上に前記洗浄液を、前記被処理基板上を移動しながら供給する洗浄液供給部と、予め計測された、前記被処理基板上に形成された所定の膜を洗浄する際における前記洗浄液の水位の変化に関するデータを記憶する記憶部と、前記被処理基板の表面上の少なくとも一部の領域において、前記記憶部に記憶された前記データに基づいて、前記洗浄液供給位置の移動速度又は前記被処理基板の回転速度、あるいは前記洗浄液供給位置の移動速度及び前記被処理基板の回転速度を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の基板処理方法及びその装置によれば、異なる材料から成る膜を洗浄する際にも、簡易な手法により高い洗浄効果を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
先ず、比較例による洗浄処理における手順について説明する。
【0012】
例えば、被処理基板として、300mmの半導体ウェーハ上に反射防止膜を形成し、さらに化学増幅型レジストを塗布する。
【0013】
ArFエキシマレーザを用いて、露光用レチクルを介して所望のパターンの縮小投影露光を行う。被処理基板に熱処理を行った後、現像処理を行う。
【0014】
ここで、現像処理の具体的方法として、現像液供給ノズルから現像液を吐出しながら、被処理基板の外周領域から被処理基板の表面上を半径方向に沿って一方向に走査することで現像液膜を被処理基板上に形成する。所定時間、静止現像処理を行う。
【0015】
引き続いて、純水を用いた洗浄処理、乾燥処理を行う。一般的なリンス乾燥方法は、被処理基板を回転させながら洗浄液供給ノズルから、所定時間被処理基板中心部に純水を供給する。その後、被処理基板を回転させながら、洗浄液供給ノズルを移動させて、洗浄液供給位置を被処理基板の中心部から外側に向かって移動させることにより、乾燥領域を中心部から外側に広げ、最期に洗浄液供給位置を被処理基板の外側まで移動させる。あるいは、洗浄液の供給を停止させることにより乾燥させる。
【0016】
このような比較例としての一般的な洗浄処理を行ったときの洗浄結果を図1(a)〜(c)に示す。
【0017】
図1(a)に被処理基板の回転数が1500(rpm)、図1(b)に被処理基板の回転数が1000(rpm)、図1(c)に被処理基板の回転数が500(rpm)であって、それぞれ洗浄液供給ノズルの移動速度を一定とした場合における欠陥の分布並びに数を示す。
【0018】
図1(a)〜図1(c)からも明らかなように、被処理基板の回転数により欠陥数に大きな変化があるため、洗浄処理方法の最適化が必要であることがわかる。
【0019】
また、上述したようにあるレジスト材料に対して最適化を行ったとしても、レジスト材料が変わると最適解が変わるため、レジスト材料毎に最適化を行うのは困難である。
【0020】
次に、本発明の実施の形態による基板処理方法及びその装置について図面を参照して説明する。本実施の形態は、感光性樹脂膜の現像工程におけるリンス・乾燥処理を対象とする。
【0021】
図2に、本実施の形態による基板処理装置の構成を示す。この装置は、被処理基板1を保持する基板保持部2と、被処理基板1を回転させるための回転軸3、駆動部4を含む回転機構部と、現像液を供給する現像液供給ノズル13と、現像液供給ノズル13を被処理基板1と並行するように移動させる移動機構部14と、洗浄液を供給する洗浄液供給ノズル11と、洗浄液供給ノズル11を移動させる移動機構部12と、被処理基板1の表面上の複数の箇所における乾燥状態を計測する乾燥モニタ部21と、駆動部4、移動機構部12及び14、乾燥モニタ部21の動作を制御する制御部22とを備える。
【0022】
ここで、乾燥モニタ部21は、単一波長の光を被処理基板1上に照射し、被処理基板1からの反射光強度をモニタすることで、乾燥状態、具体的には被処理基板1上に存在する洗浄液の水位を計測するものである。
【0023】
このような基板処理装置を用いて、本実施の形態に従い洗浄処理を行う手順について説明する。
【0024】
所定時間静止現像を行った後に、被処理基板1を回転させながら洗浄液供給ノズル11から洗浄液として純水を被処理基板1の中心部に供給する。
【0025】
所定時間経過後、被処理基板1を回転させながら、洗浄液供給ノズル11を被処理基板1の中心部から外側へ移動させることにより、洗浄液供給位置を基板中心部から外側に移動させて、乾燥領域を基板中心部から外側に広げていく。
【0026】
その際に、被処理基板1の表面上における複数箇所において乾燥状態を、乾燥モニタ21の出力に基づいて計測する。この計測結果に基づき、被処理基板1の中心部から外側へ向けて広がっていく乾燥移動速度を、制御部22において算出する。そして、この乾燥移動速度に洗浄液供給位置の移動速度が一致するように、被処理基板1の回転数、又は洗浄液供給ノズル11の移動速度、あるいは被処理基板1の回転数及び洗浄液供給ノズル11の移動速度を制御部22により制御する。
【0027】
例えば、計測して得られた乾燥移動速度が、予め設定していた洗浄液供給位置移動速度よりも遅い場合は、その計測結果に基づいて洗浄液供給位置移動速度が遅くなるように、制御部22が洗浄液供給ノズル11の移動速度を遅くする。
【0028】
より具体的な乾燥状態の計測、また乾燥移動速度の計測について説明する。図3に、被処理基板1の表面上において乾燥状態を計測する複数の計測点A、B、Cを示す。被処理基板1の中心Oから外周へ半径方向に沿って順に計測点A、B、Cが配置されている。
【0029】
図4(a)〜(c)に、計測点A、B、Cにおける水位の変化を示す。計測点Aでは、図4(a)に示されたように、水位が時間の経過と共に低下していき所定レベルL1に到達するまでに時間t1が経過している。
【0030】
計測点Bでは、図4(b)に示されたように、水位が同じ所定レベルL1に到達するまでにt1より長い時間t2が経過する。さらに計測点Cでは、図4(c)に示されたように、水位が所定レベルL1に到達するまでに時間t2よりさらに長い時間t3が経過している。
【0031】
このように、被処理基板1の表面上において、中心Oから外周に向かって計測点A、B、Cと移動するにつれて、洗浄液が回転により外周へ移動することによって、水位の低下に要する時間が長くなる。そこで、各計測点A、B、Cにおいて水位が所定レベルL1に到達する際に洗浄液供給ノズル11が各計測点上に一致するように、洗浄液供給ノズル11の移動速度又は被処理基板1の回転速度、あるいは洗浄液供給ノズル11の移動速度及び被処理基板1の回転速度を制御すればよい。
【0032】
上述した比較例に従い洗浄を行った時、即ち乾燥移動速度と洗浄液供給位置移動速度が不一致の場合に2000個の欠陥が発生した。これに対し、本実施の形態に従って、乾燥移動速度と洗浄液供給位置移動速度が一致するように制御しながら洗浄を行った場合、欠陥数が60個まで減少した。これにより、上記実施の形態による洗浄効果が確認された。
【0033】
ここで、乾燥移動速度と洗浄液供給位置移動速度が一致するように制御する際に、ここでは洗浄液供給ノズル11の移動速度を制御している。しかし、これに限らず、洗浄液供給ノズル11の移動速度を当初の設定から変更することなく、被処理基板1の回転速度を変更してもよい。例えば、乾燥移動速度が洗浄液供給位置の移動速度より速い場合は、被処理基板1の回転速度を下げて乾燥移動速度を低下させる。逆に、乾燥移動速度が洗浄液供給位置の移動速度より遅い場合は、被処理基板1の回転速度を上げて乾燥移動速度を速くする。
【0034】
あるいはまた、乾燥移動速度と洗浄液供給位置移動速度が一致するように、洗浄液供給ノズル11の移動速度及び被処理基板1の回転速度を共に制御してもよい。
【0035】
また、測定された乾燥移動速度が速い場合、即ち被処理基板の中心部から外周へ向かって水位が所定レベルまで下がっていく速度が速い場合は、洗浄液供給ノズルを被処理基板の中心側へ一旦戻して乾燥移動速度を低下させてもよい。
【0036】
洗浄の対象となる膜が同一材料である場合は、以前に洗浄を行った際に測定した乾燥移動速度を用いて洗浄液供給位置移動速度が一致するように制御することができる。よって、同一材料から成る膜を複数回洗浄する際には、その都度乾燥移動速度を測定する必要はなく、以前に測定した結果を制御部内あるいは外部に設けられた記憶部に格納しておき、洗浄の際に読み出して制御に用いてもよい。
【0037】
また、洗浄の対象となる膜の乾燥速度が同一かどうかは、自動的に判断することもできる。例えば、接触角測定器を用いて、膜の表面上に形成された水滴と膜の表面との間の接触角を測定して判断することが可能である。予め、接触角毎に、即ち膜の材料毎に最適化を図った洗浄液供給位置移動速度を記憶部に格納しておき、このデータに基づいて制御部22が制御を行ってもよい。
【0038】
上記実施の形態では、被処理基板の表面全体の洗浄を最適化するように制御対象としている。しかしこれに限らず、図1(c)に示されたなように、欠陥が発生し易い基板の中心から例えば50mmというように所定半径までの円形領域等、少なくとも一部の領域の洗浄が最適化されるように制御を行ってもよい。
【0039】
上述した実施の形態は一例であって、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲内において様々に変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】比較例による基板処理方法に従って、被処理基板の回転速度を変えたときのそれぞれの欠陥の分布を示した説明図。
【図2】本発明の実施の形態による基板処理装置の構成を示した概略図。
【図3】同実施の形態による基板処理装置において計測する被処理基板上の水位の計測点を示す平面図。
【図4】図3における各計測点の水位の時間的変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0041】
1 被処理基板
2 基板保持部
11 洗浄液供給ノズル
12、14 移動機構部
13 現像液供給ノズル
21 乾燥モニタ部
22 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の表面上に洗浄液を供給しながら回転させることで前記被処理基板を乾燥させる基板処理方法であって、
回転中の前記被処理基板の表面上に前記洗浄液を供給する洗浄液供給位置を前記被処理基板上で移動させる際に、前記被処理基板の表面上の少なくとも一部の領域において、前記被処理基板の表面上における所定の箇所における水位を計測し、計測された前記水位に基づいて、前記洗浄液を供給する位置を移動させるときの洗浄液供給位置の移動速度又は前記被処理基板の回転速度、あるいは前記洗浄液供給位置の移動速度及び前記被処理基板の回転速度を制御することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
回転中の前記被処理基板の表面上に洗浄液を供給する際に、前記被処理基板の表面上における複数の箇所における水位を計測し、それぞれの前記箇所で水位が所定レベルまで低下した時点で、前記洗浄液を供給する位置が前記箇所と一致するように、前記洗浄液供給位置の移動速度又は前記被処理基板の回転速度、あるいは前記洗浄液供給位置の移動速度及び前記被処理基板の回転速度を制御することを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
被処理基板の表面上に洗浄液を供給しながら回転させることで前記被処理基板を乾燥させる基板処理装置であって、
前記被処理基板を保持し回転させる被処理基板保持及び回転部と、
回転中の前記被処理基板の表面上に前記洗浄液を、前記被処理基板上を移動しながら供給する洗浄液供給部と、
前記被処理基板の表面上において、前記洗浄液の水位を計測する計測部と、
前記被処理基板の表面上の少なくとも一部の領域において、計測された前記洗浄液の水位に基づいて、前記洗浄液供給位置の移動速度又は前記被処理基板の回転速度、あるいは前記洗浄液供給位置の移動速度及び前記被処理基板の回転速度を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記被処理基板の表面上の複数箇所において、前記洗浄液の水位を計測し、
前記制御部は、それぞれの前記箇所で水位が所定レベルまで低下した時点で、前記洗浄液供給位置が前記箇所と一致するように、前記洗浄液供給位置の移動速度又は前記被処理基板の回転速度、あるいは前記洗浄液供給位置の移動速度及び前記被処理基板の回転速度を制御することを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
被処理基板の表面上に洗浄液を供給しながら回転させることで前記被処理基板を乾燥させる基板処理装置であって、
前記被処理基板を保持し回転させる被処理基板保持及び回転部と、
回転中の前記被処理基板の表面上に前記洗浄液を、前記被処理基板上を移動しながら供給する洗浄液供給部と、
予め計測された、前記被処理基板上に形成された所定の膜を洗浄する際における前記洗浄液の水位の変化に関するデータを記憶する記憶部と、
前記被処理基板の表面上の少なくとも一部の領域において、前記記憶部に記憶された前記データに基づいて、前記洗浄液供給位置の移動速度又は前記被処理基板の回転速度、あるいは前記洗浄液供給位置の移動速度及び前記被処理基板の回転速度を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−294276(P2008−294276A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138933(P2007−138933)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】