説明

基板処理方法及び基板処理装置

【課題】本発明は、各種基板をリンス液により洗浄処理した後、乾燥させる基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【解決手段】リンス液吐出ノズルヘッドよりリンス液を基板主面の全面に行き渡せ、基板を洗浄する基板洗浄工程と、
前記基板洗浄工程が終了した前記基板を低速で回転させると同時に、リンス液吐出ノズルヘッドより、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥する基板乾燥工程と、
前記基板乾燥工程が終了した前記基板の外周に残ったリンス液を飛散させるため前記基板を前記基板乾燥工程のときより高速で回転させる飛散工程を有することを特徴とする基板処理方法及び基板処理装置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子形成用のウェハ、ガラス基板、セラミック基板などの各種基板をリンス液により洗浄処理した後、乾燥させる基板処理技術に関するものであって、特に、基板上に発生する微小な液塊の残留を防ぎ、異物検査装置により計測できる微小の斑点を発生させないととともに、同時に、リンス液や残留する異物により発生するウォーターマークを発生させずに、基板を洗浄し、乾燥することのできる基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、基板を洗浄処理した後の乾燥処理の手段としては、基板を回転させ液膜を遠心力により基板主面上から排出する技術(スピン乾燥)が多く用いられているが、従来のスピン乾燥方法では、基板上の水分を完全に排出することが出来ず、結果として、微小な斑点及びウォーターマークの発生を抑えることが出来なかった。
【0003】
従来の洗浄及び乾燥処理方法においては、数百NL/分という多量の乾燥用ガスを使用しているため、乱流が発生し、多数の霧状の液滴の分散と再付着を招いていた(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。これらは、異物検査装置にて計測できる微小の斑点として残ることになる。また、基板上方に平盤で覆い、閉ざされた空間で固定された吐出口からのガス噴出するのでは、ガスは流れ易い方向にしか流れず、基板上で不均一な流れになり易く乾燥ムラが発生する。この乾燥ムラはウォーターマークの原因となる。
また、従来の他の方法として、基板上に液体が盛られている状態で、乾燥ガスとして不活性ガスを吹き付けながら、高速回転する基板処理技術があるが、この方法では、基板上で水膜の分割による多数の比較的微小な液塊を生じる。この水膜の分割による多数の液塊は、大きさにより基板上に残り易く、排出されたとしても基板の高速回転による乱流により多数の霧状の液滴となって再付着し易くなるとともに、ウォーターマークや異物検査装置にて計測できる微小の斑点は歩留まり低下の原因となる(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
スピン乾燥は、一般に、基板表面が親水性であれば、均一な液膜を形成することができ、かつ遠心力により徐々に液膜を薄くし乾燥させることができるが、フッ酸などの薬液を使用してエッチング処理を行う基板処理や研磨することにより基板を削る処理では、処理後基板表面の状態は疎水性となる。この疎水性の基板は、親水性の基板と異なり表面で均一な液膜を形成されず液塊として存在し易く、とくに、遠心力により外周へと移動する際に水膜の分割による多数の比較的微小な液塊の発生を生じ、この液塊に微量なシリコンが溶解し、その後、乾燥して異物検査装置にて計測できる微小の斑点として残る。基板全体が疎水性である場合は、基板上に液盛りした液を低速回転することにより微小な液塊の発生を抑えながら水分を基板外周へ排出すれば、水膜の分割による多数の比較的微小な液塊の発生を抑制することができるが、実際に基板上にデバイスを形成する基板では疎水性と親水性となっている表面部分が混在している場合が多く、その親水性部分の表面張力によって基板上には薄膜状に水分が付着して残存する。このように薄膜状に付着した水分にシリコンが溶解し、その後乾燥してウォーターマークとなる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−330039号公報
【特許文献2】特開平11−274135号公報
【特許文献3】特開2006−66579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
即ち、従来の洗浄及び乾燥処理方法において、異物検査装置にて計測できる微小の斑点は、リンス液の移動時に大きな液塊から分離して出来るものや、乾燥ガスを拭きつけながら、基板上に液盛りしたリンス液を高速回転でスピン乾燥した折に分散するように出来るものや、分散して基板外周に排出されたものの基板周辺の乱流により基板表面に再度付着するものが主な要因と考えられている。異物検査装置にて計測できる微小の斑点の発生を無くす為には、基板上にこれら微小な液塊を発生あるいは残留させないことである。
また、ウォーターマークは基板上に混在する親水性表面部分に薄膜状に水分が付着し、水分にシリコンが溶解した後に基板乾燥工程において水分が蒸発とともに珪素成分が残留することが主な要因と考えられている。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、基板上に発生する微小な液塊の残留を防ぎ、異物検査装置により計測できる微小の斑点を発生させないととともに、同時に、リンス液や残留する異物により発生するウォーターマークを発生させずに、基板を洗浄し、乾燥することのできる基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、基板をリンス液により洗浄処理した後、基板を乾燥させる基板処理方法において、
リンス液吐出ノズルヘッドよりリンス液を基板主面の全面に行き渡せ、基板を洗浄する基板洗浄工程と、
前記基板洗浄工程が終了した前記基板を低速で回転させると同時に、リンス液吐出ノズルヘッドより、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥する基板乾燥工程と、
前記基板乾燥工程が終了した前記基板の外周に残ったリンス液を飛散させるため前記基板を前記基板乾燥工程のときより更に高速で回転させる飛散工程と、
を有することを特徴とする基板処理方法を提供することにある。
【0009】
また、第2の解決課題は、前記基板乾燥工程において、前記基板洗浄工程が終了した前記基板を低速で回転させると同時に、リンス液吐出ノズルヘッドより、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥するとともに、前記リンス液吐出ノズルヘッドから離れた場所に乾燥用ガス吐出ノズルヘッドを設け、前記乾燥用ガス吐出ノズルヘッドから前記基板に乾燥用ガスの吹きつけ、前記基板の主面上に残留するリンス液を乾燥させる乾燥ガス吐出工程を設けたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法を提供することにある。
【0010】
また、第3の解決課題は、前記乾燥用ガス吐出ノズルヘッドを前記リンス液吐出ノズルヘッドと同じ軌道上に固定したことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法を提供することにある。
【0011】
また、第4の解決課題は、前記乾燥用ガス吐出ノズルヘッドを前記リンス液吐出ノズルヘッドと別の軌道状で走査するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法を提供することにある。
【0012】
また、第5の解決課題は、前記乾燥用ガス吐出口の面積が0.2mm2〜13mm2であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法を提供することにある。
【0013】
また、第6の解決課題は、前記乾燥用ガス吐出口から吐出する乾燥用ガスが100NL/分以下であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法を提供することにある。
【0014】
また、第7の解決課題は、前記乾燥用ガス吐出口の吐出角度を調整し、前記リンス液と前記基板との界面に前記乾燥用ガスが当る角度を調整できるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法を提供することにある。
【0015】
また、第8の解決課題は、前記リンス液と前記基板との界面に前記乾燥用ガスが当る角度を調整するために前記乾燥用ガスの吐出方向を制御できるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法を提供することにある。
【0016】
また、第9の解決課題は、基板をリンス液により洗浄処理した後、基板を乾燥させる基板処理装置において、
基板を保持して回転させる基板回転手段と、
基板の回転数を制御する基板回転制御手段と、
保持された基板の主面にリンス液吐出ノズルよりリンス液を吐出し、基板を洗浄する基板洗浄手段と、
基板洗浄手段による基板洗浄工程終了後に基板の回転を低速にし、基板中心近傍からリンス液を吐出しながら基板外周へと移動してリンス液を水塊として排出する基板乾燥手段と、
を有することを特徴とする基板処理装置を提供することにある。
【0017】
また、第10の解決課題は、基板をリンス液により洗浄処理した後、基板を乾燥させる基板処理装置において、
基板を保持して回転させる基板回転手段と、
基板の回転数を制御する基板回転制御手段と、
保持された基板の主面にリンス液吐出ノズルよりリンス液を吐出し、基板洗浄する基板洗浄手段と、
保持された基板の主面に乾燥用ガスを吐出する乾燥用ガス吐出手段と、
基板洗浄手段による基板洗浄工程終了後に基板の回転を低速にし、基板中心近傍からリンス液を吐出しながら基板外周へと移動してリンス液を水塊として排出させ、基板を乾燥する基板乾燥手段と、
基板乾燥手段において同時にリンス液の吐出口近傍に設けた乾燥用ガス吐出ノズルヘッドより乾燥用ガスを吐出し基板の主面上に残留する水分を乾燥させるガス吐出手段と、
を有することを特徴とする基板処理装置を提供することにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板洗浄工程が終了した前記基板を低速で回転させると同時に、リンス液吐出ノズルヘッドより、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥するので、基板上に行き渡らせたリンス液を微小な液塊の発生を抑えながら大きな液塊として基板外周へ排出し、大きな液塊から微小な液塊を生成させることがなく、異物検査装置にて計測できる微小な斑点が発生せず、良好な乾燥を行うことができるとともに、低速回転にすることで、これまで問題となっていた高回転での液塊の分散や飛散を減少させることができるともに、ウォーターマークの発生を抑えることができ、均一な疎水性表面基板では良好な乾燥が行うことができる。
本発明によれば、このようにして、基板主面上に残留する液塊を完全に除去した後、基板を高速回転することにより、基板の端面に付着した微小な付着物のみを飛散させることが出来る。
また、親水性と疎水性が表面に混在する基板では、基板上に混在する親水性表面部分に薄膜状に水分が付着し、この水分にシリコンが溶解した後に基板乾燥工程において水分が蒸発するとともに、珪素成分が残留するため、ウォーターマークが発生することがあるため、このような場合、基板を低速で回転させながら、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥するとともに、同時に、前記基板に乾燥用ガスの吹きつけ、前記基板の主面上に残留するリンス液を乾燥させることにより、基板表面の微小な水分を乾燥することが出来、親水性と疎水性が表面に混在する基板においても、ウォーターマークの発生を防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施の形態として示した図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に関わる基板処理装置の概略構成を示す縦断面図である。この基板処理装置は、基板Wに洗浄処理、及び乾燥処理を行う枚葉式基板処理装置である。
本発明による基板処理装置は、廃液ライン7及び薬液雰囲気の排出を行う排気口を有するチャンバ1で囲まれ、モータ2を動力とし、その動力をギヤ3や伝達ベルト4及びギヤ5を用いて伝え、基板Wを保持したチャックテーブル6を回転させる構造を有している。なお、基板処理装置には、乾燥用ガス供給源10からバルブ11に乾燥用ガスが供給され、バルブ11を開けることで基板主面への乾燥用ガスの吐出が行われる。なお、乾燥用ガスの吐出については、絞り弁12の開度調整することで吐出される乾燥用ガスの流量を調整することができる。その流量は流量計13で確認することができる。
【0020】
図2に示すように、乾燥用ガス吐出ノズルヘッド18は、乾燥用ガスの吐出口面積を小さくし、乾燥用ガスを局所的に吐出する構造となっている。乾燥用ガス吐出ノズルヘッド18の吐出口の面積は、小さくした方が乾燥ガスを局所的に吐出できるため好ましいが、小さすぎると、供給量が不足するため、0.2mm2〜13mm2が好ましい。また、乾燥用ガスの基板へ吐出される角度を調整するために、図3に示すようなボールジョイントを使用し乾燥用ガス供給ノズルヘッド18の角度を3次元的に自由に調整することができる。また、図4に示すように、乾燥用ガス供給ノズルヘッド18の構造を乾燥用ガスの流動を制御するような構造にすることで乾燥用ガス吐出ノズルヘッド18は基板に垂直に設置されるが乾燥用ガスが基板に当る角度を調整することも出来る。図2では、局所的に乾燥用ガスを吐出することで乾燥用ガスによる乱流を小さくする効果ができ、図3では乾燥用ガスが基板に当る角度を調節することでガスの流れ遠心方向に強制し基板から剥がれた微小な液塊を乾燥した基板に戻すことを無くす効果がある。また、図4では、乾燥用ガスの吐出ノズル角度を変えず乾燥用ガスの向きを強制的に変える構造にすることで、図3と同じ効果を持ちつつノズルは、基板と垂直に設置することができノズルの固定スペースを確保することができる。
【0021】
乾燥用ガスは、一般的には窒素、空気、アルゴン、酸素などが考えられる。乾燥用ガスの流量は、大流量の場合は、100NL/分以上を流し、小流量の場合は、100NL/分以下を流しているが、本発明においては、乾燥用ガスの流量は、100NL/分以下とすることが好ましい。なお、乾燥用ガスの吐出は一概に大流量が良いと言うことではなく、局所的に(スポット的に)乾燥用ガスを吐出することで効率良く乾燥が行える。この方法であれば、乾燥用ガスの消費量を減少させるだけで無く、液塊の飛散量を減少させることもでき、更に乾燥用ガスの流れによる雰囲気の乱れも少なくすることができ、微小な液塊の乱流による基板上への再付着も対応することができる。この2つの工程は液とガスの流れが干渉しないよう位置を最適にすることで同時に行うことができ処理時間の短縮も行える。ただし、完全に工程を分けて行うことでも良好な乾燥が行えるが、処理時間はその分長くなる。
【0022】
また、超純水供給源14からバルブ15に超純水が供給され、バルブ15を開けることで基板主面への超純水の吐出が行われる。
薬液供給源16からバルブ17に薬液が供給され。バルブ17を開けることで基板主面への薬液の吐出が行われる。
また、これらの基板主面へ供給される乾燥用ガス、超純水、薬液の供給ラインは、ノズルアーム9に固定され、ノズルアーム9は、モータ8の動力によって基板主面へ移動が可能となり、また基板主面上部で走査することも出来る。
超純水と乾燥用ガスは、図5に示すように、リンス液吐出ノズルヘッド19、乾燥用ガス吐出ノズルヘッド18より基板上に吐出され、その距離を最適な位置にすることで互いの流動を干渉することなく吐出することができる。尚、超純水の供給は、リンス液吐出ノズルヘッド19より基板上に吐出しながら、基板上を外周まで走査し、その後、再び基板中心に移動し外周に向かって乾燥用ガスの吐出走査を行うように完全に処理を分けて行うことも出来る。また、薬液は、薬液供給ノズルヘッド20より基板上に吐出される。
【0023】
本発明による基板処理方法は次の工程からなる。
(1)基板洗浄工程
リンス液吐出ノズルヘッド19よりリンス液を基板主面の全面に行き渡せ、基板を洗浄する。基板洗浄工程において、チャックテーブル6に保持された基板は、酸化膜エッチングの場合、例えば、500RPMで回転される。
(2)基板乾燥工程
次いで、前記基板洗浄工程が終了した前記基板を低速で回転させると同時に、リンス液吐出ノズルヘッド19より、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥する。本工程にける低速回転は、10RPM以上、1000RPM以下することが好ましい。この回転数がこれ以上大きくなると、高速回転になり、高速回転により、基板に液盛りしたリンス液がスピン乾燥した折に分散し、微小な斑点となり、また、分散して基板周辺の乱流により基板表面に再度付着することがある。一方、回転数が10RPM以下の場合、リンス液を効果的に排出できなくなることがある。
(3)乾燥ガス吐出工程
基板乾燥工程において、同時に、前記リンス液吐出ノズルヘッド19から離れた場所に乾燥用ガス吐出ノズルヘッド18を設け、前記乾燥用ガス吐出ノズルヘッド18から前記基板に乾燥用ガスを吹きつけ、前記基板の主面上に残留するリンス液を乾燥させる。本発明においては、この乾燥ガス吐出工程は、必ずしも必要としない。
(4)飛散工程
しかる後、前記基板乾燥工程及び乾燥ガス吐出工程が終了した後、前記基板の外周に残ったリンス液を飛散させるため前記基板を前記乾燥工程のときより高速で回転させている。
この飛散工程において、基板を高速で回転するが、この飛散工程においては、乾燥ガスは、一切、流さないで実施する。本工程における高速回転の場合の回転数は、1000〜4000RPMの範囲とすることが好ましく、1000RPM以下では、基板端面より残ったリンス液を十分に飛散させることが出来ず、4000RPM以上にしてもその効果は、変わらない。
【実施例1】
【0024】
以下、具体的な実施の一例を示す。次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例および比較例はあくまで一つの例であり、本発明を何ら限定するものではない。
図1に示す枚葉式基板処理装置を用いて、BHF(フッ酸、フッ化アンモニウム、超純水からなる混合薬液)によるエッチング処理後、100rpmの低速回転で基板を回転させると同時に基板中心近傍からリンス液吐出ノズルヘッド19より純水を吐出しながらノズルを徐々に外周に移動させた後に純水を止め、再度中心近傍にこのリンス液吐出ノズルヘッド19を移動させるとともに、図2に示す乾燥用ガス吐出ノズルヘッド18を使用し乾燥用ガスを吹きつけながら、徐々に外周に移動させ、乾燥用ガスを止める。それと同時に、1500RPMで高速回転し乾燥処理を行った。乾燥用ガスとしては、窒素ガスを使用し、乾燥処理時には、乾燥用ガス吐出ノズルヘッド18より表1、表2に示す5条件で窒素ガスの吹きつけを行った。ただし、窒素流量が0NL/分は、乾燥用ガスを吐出しない乾燥処理を示したものである。
【0025】
本実施例1の評価結果は、以下に示すとおりであった。
(1)パーティクルの有無
上記条件で8インチシリコン基板の処理を行い、処理前後での異物検査装置にて計測できる微小の斑点数の変化を調べた。異物検査装置にて計測できる微小の斑点は、パターンなしウェハ表面異物検査装置である、サーフスキャンSP1(KLA−Tencor社製)を使用して、0.12μm以上の異物検査装置にて計測できる微小の斑点数を測定した。評価結果を表1に示した。
【0026】
【表1】

【0027】
一方、比較実験として、エッチング処理に続く純水リンス後に低速回転を行わず、高速回転のみによる乾燥処理を行ったところ、微小斑点の増加数は数千個であった。
【0028】
(2)ウォーターマークの有無
上記条件で8インチシリコン基板とPatterned Wafer(IBM社製)の処理を行い、15〜20分放置後のウォーターマークの有無を調べた。BHF処理を行った後、シリコン基板は均一な疎水性表面となるが、Patterned Wafer(IBM社製)は親水性と疎水性が表面に混在する。ウォーターマークは、光学顕微鏡で基板表面を観察し、以下の基準で評価し、評価結果を表2に示した。
○:基板表面のいずれにもウォーターマークは全く見られない
×:ウォーターマークが見られる
【0029】
【表2】

【0030】
BHF処理後に均一な疎水性表面となるシリコン基板では、いずれの窒素ガス流量でも良好なウォーターマーク結果が得られたが、親水性と疎水性が混在するPatterned Wafer(IBM社製)では、乾燥処理時に20〜40NL/分の窒素ガス吹きつけを行った場合に良好なウォーターマーク結果が得られた。但し、表1で窒素ガス流量が多いほどパーティクル数も増えていることから、本実施例の条件では20NL/分程度の窒素吹きつけが適切だと思われる。
【0031】
(3)乾燥用ガスの種類による違い評価
乾燥用ガスを窒素、酸素、空気の3種類を用い乾燥用ガス流量を20NL/分にし、それぞれのウォーターマークの発生状況を評価(2)と同様に光学顕微鏡を用いて基板表面を観察した。結果全ての乾燥用ガスにおいてウォーターマークは発生しておらず、本発明を用いて基板乾燥工程において基板上の水分を完全に除去することでウォーターマークの発生を無くすことができることが判った。
【0032】
本発明は、上記の実施例に何ら制約されるものではなく、種々変形し、展開することが可能である。上記の実施例においては、適宜変更して使用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上の実施例からも明らかなように、本発明によれば、低速回転にすることで、異物検査装置にて計測できる微小な斑点が発生せず、良好な乾燥を行うことができるとともにこれまで問題となっていた高回転での液塊の分散や飛散を減少させることができるともに、ウォーターマークの発生を抑えることができ、均一な疎水性表面基板では良好な乾燥が行うことができる。
更に、本発明によれば、このようにして、基板主面上に残留する液塊を完全に除去した後、基板を高速回転することにより、基板の端面に残ったリンス液を飛散させることが出来る。
また、親水性と疎水性が表面に混在する基板では、基板上に混在する親水性表面部分に薄膜状に水分が付着し、この水分にシリコンが溶解した後に基板乾燥工程において水分が蒸発するとともに、珪素成分が残留するため、ウォーターマークが発生することがあるため、このような場合、基板を低速で回転させながら、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥するとともに、同時に、前記基板に乾燥用ガスの吹きつけ、前記基板の主面上に残留するリンス液を乾燥させることにより、基板表面の微小な水分を乾燥することが出来、親水性と疎水性が表面に混在する基板においても、ウォーターマークの発生を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による基板処理装置の概略構成を示す縦断面図。
【図2】吐出面積を小さくした乾燥用ガス吐出ノズルヘッドの形状を示す縦断面図。
【図3】乾燥用ガス吐出方向を制御するボールジョイント形状にした乾燥用ガス吐出ノズルヘッドを示す縦断面。
【図4】乾燥用ガス吐出流路を制御した乾燥用ガス吐出ノズルヘッドのノズル形状を示す縦断面図。
【図5】超純水と乾燥用ガスの吐出を同時に行う処理を示す本発明の維持医師例を示す概略図。
【符号の説明】
【0035】
1:チャンバ
2:モータ
3:ギヤ
4:伝達ベルト
5:ギヤ
6:チャックテーブル
7:廃液ライン
8:モータ
9:ノズルアーム
10:乾燥ガス供給源
11:バルブ
12:絞り弁
13:流量計
14:リンス液供給源
15:バルブ
16:薬液供給源
17:バルブ
18:乾燥用ガス吐出ノズルヘッド
19:リンス液吐出ノズルヘッド
20:薬液吐出ノズルヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をリンス液により洗浄処理した後、基板を乾燥させる基板処理方法において、
リンス液吐出ノズルヘッドよりリンス液を基板主面の全面に行き渡せ、基板を洗浄する基板洗浄工程と、
前記基板洗浄工程が終了した前記基板を低速で回転させると同時に、リンス液吐出ノズルヘッドより、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥する基板乾燥工程と、
前記基板乾燥工程が終了した前記基板の外周に残ったリンス液を飛散させるため前記基板を前記基板乾燥工程のときより更に高速で回転させる飛散工程と、
を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記基板乾燥工程において、前記基板洗浄工程が終了した前記基板を低速で回転させると同時に、リンス液吐出ノズルヘッドより、リンス液を吐出しながら前記基板の中心近傍から徐々に前記基板の外周へと前記リンス液吐出ノズルヘッドを移動し、リンス液を大きな液塊として前記基板上から排出させ、基板を乾燥するとともに、前記リンス液吐出ノズルヘッドから離れた場所に乾燥用ガス吐出ノズルヘッドを設け、前記乾燥用ガス吐出ノズルヘッドから前記基板に乾燥用ガスの吹きつけ、前記基板の主面上に残留するリンス液を乾燥させる乾燥ガス吐出工程を設けたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記乾燥用ガス吐出ノズルヘッドを前記リンス液吐出ノズルヘッドと同じ軌道上に固定したことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記乾燥用ガス吐出ノズルヘッドを前記リンス液吐出ノズルヘッドと別の軌道状で走査するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記乾燥用ガス吐出口の面積が0.2mm2〜13mm2であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記乾燥用ガス吐出口から吐出する乾燥用ガスが100NL/分以下であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記乾燥用ガス吐出口の吐出角度を調整し、前記リンス液と前記基板との界面に前記乾燥用ガスが当る角度を調整できるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記リンス液と前記基板との界面に前記乾燥用ガスが当る角度を調整するために前記乾燥用ガスの吐出方向を制御できるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板をリンス液により洗浄処理した後、基板を乾燥させる基板処理装置において、
基板を保持して回転させる基板回転手段と、
基板の回転数を制御する基板回転制御手段と、
保持された基板の主面にリンス液吐出ノズルよりリンス液を吐出し、基板を洗浄する基板洗浄手段と、
基板洗浄手段による基板洗浄工程終了後に基板の回転を低速にし、基板中心近傍からリンス液を吐出しながら基板外周へと移動してリンス液を水塊として排出する基板乾燥手段と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
基板をリンス液により洗浄処理した後、基板を乾燥させる基板処理装置において、
基板を保持して回転させる基板回転手段と、
基板の回転数を制御する基板回転制御手段と、
保持された基板の主面にリンス液吐出ノズルよりリンス液を吐出し、基板洗浄する基板洗浄手段と、
保持された基板の主面に乾燥用ガスを吐出する乾燥用ガス吐出手段と、
基板洗浄手段による基板洗浄工程終了後に基板の回転を低速にし、基板中心近傍からリンス液を吐出しながら基板外周へと移動してリンス液を水塊として排出させ、基板を乾燥する基板乾燥手段と、
基板乾燥手段において同時にリンス液の吐出口近傍に設けた乾燥用ガス吐出ノズルヘッドより乾燥用ガスを吐出し基板の主面上に残留する水分を乾燥させるガス吐出手段と、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−258441(P2008−258441A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99685(P2007−99685)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(597140523)アプリシアテクノロジー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】