説明

基板処理方法

【課題】基板上に平坦な表面を有する熱可塑性の被膜を形成する基板処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の基板処理方法は、基板上に熱可塑性の被膜を形成する形成工程と、被膜を加熱した後に押圧する、または被膜を加熱しつつ押圧する押圧工程と、被膜に対する押圧状態を維持すると共に、被膜を冷却する冷却工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性の被膜が形成された基板を処理する基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、デジタルAV機器およびICカードなどの高機能化にともない、搭載される半導体チップの小型化、薄型化および高集積化への要求が高まっている。この要求を満たすためには、組み込まれる半導体チップについても薄型の半導体チップとしなければならない。このため、半導体チップの基になる半導体ウエハの厚さ(膜厚)は、現状では125〜150μm程度であるが、次世代のチップ用には25〜50μm程度にしなければならないと言われている。
【0003】
しかし、25〜50μm程度にまで研磨された半導体ウエハは、肉薄となるため、その強度は弱くなり、クラックおよび反りが生じやすくなる。そのため、研磨される半導体ウエハに保護基板(以下、サポートプレートと称する)と呼ばれるガラスまたは硬質プラスチックなどを貼り合せることによって、半導体ウエハの強度を保持し、クラックの発生および半導体ウエハに反りが生じることを防止する方法が開発されている。
【0004】
この方法では、まず、半導体ウエハとサポートプレートとを、接着剤などの接着物質を介して貼り付ける。次に、サポートプレートにより保護されている状態において、グラインダーなどにより半導体ウエハの研磨を行う。これによって、薄化された半導体ウエハが形成される。最後に、薄化された半導体ウエハからサポートプレートを剥がす。
【特許文献1】特開2007−54798号公報(平成19年3月8日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、半導体ウエハにサポートプレートを貼り合せる場合、接着剤層を形成する半導体ウエハの接着面には、すでに回路などが形成されている。すなわち、半導体ウエハの接着面は平坦ではなく、凹凸を有している。したがって、接着剤層をこの凹凸を有する接着面に形成すると、接着面の凹凸に追従するように、形成した接着剤層の表面にも凹凸が形成されてしまう。また、接着剤層をサポートプレート上に形成する場合であっても、サポートプレートには、半導体ウエハをサポートプレートから剥離する際に剥離剤を浸入させる貫通孔が形成されているため、サポートプレート上に形成した接着剤層の表面に凹凸が形成されてしまう。
【0006】
接着剤層の表面が凹凸を有していると、半導体ウエハにサポートプレートを貼り合せた際に、半導体ウエハとサポートプレートとの厚みの分布が不均一となり、半導体ウエハからサポートプレートを剥離する際における剥離性が悪化する問題がある。また、半導体ウエハの薄化工程において、半導体ウエハの接着面と反対側の面(研磨面)に接着剤層の凹凸による転写を生じる問題がある。
【0007】
例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂に加熱を施しつつ、断続的に押圧することによって平坦な被膜を形成する技術が記載されている。しかし、特許文献1に記載の技術は、加熱により硬化する熱硬化性樹脂でなければ実現不可能な技術である。例えば熱可塑性樹脂には適用することができない。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、基板上に平坦な表面を有する熱可塑性の被膜を形成する基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、上記課題を解決するために、
基板上に平坦化膜を形成する基板処理方法であって、
上記基板上に熱可塑性の被膜を形成する形成工程と、
上記被膜を加熱した後に押圧する、または上記被膜を加熱しつつ押圧する押圧工程と、
上記被膜に対する押圧状態を維持すると共に、上記被膜を冷却する冷却工程と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る基板処理方法では、基板上に形成した熱可塑性の被膜を加熱した後、または加熱しつつ押圧し、成膜することによって被膜の表面を平坦化している。
【0011】
熱可塑性の被膜は、そのガラス転移点よりも高い温度にまで加熱することによって、熱流動を生じるようになる。したがって、熱流動を生じる状態の被膜の表面を押圧することによって、基板の凹凸に追従するように形成された凹凸を平坦化することができる。そして、凹凸を平坦化した状態のまま、被膜を冷却することによって、基板上に表面の平坦な被膜を形成することができるという効果を奏する。
【0012】
また、例えば、半導体ウエハとサポートプレートとを貼り合せる場合において、上記の基板処理を半導体ウエハまたはサポートプレート上に形成した接着剤層に対して施すことにより、半導体ウエハとサポートプレートとの厚みの分布の均一性が向上し、半導体ウエハとサポートプレートとを剥離する際における剥離性を向上することができるという効果を奏する。また、半導体ウエハを薄化する際における接着剤層の転写を抑制することができるという効果も併せて奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔実施形態1〕
本発明に係る基板処理方法の一実施形態について以下に説明する。本発明に係る基板処理方法は、基板上に平坦な表面を有する被膜を形成することができれば、その具体的な用途は特に限定されるものではない。例えば、接着剤層表面の平坦化、またはエッチング膜表面の平坦化などに用いることができる。本実施形態では、半導体ウエハにサポートプレートを貼り合せる場合であり、かつ半導体ウエハ上に接着剤層を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0014】
本発明に係る基板処理方法は、主として、形成工程、押圧工程、および冷却工程を含んでいる。これらの工程について以下に説明する。
【0015】
なお、本明細書等において「平坦化」とは、電子顕微鏡(SEM)によって被膜表面を観測した際、処理前と比してその凹凸が低減されることを意味している。
【0016】
(形成工程)
形成工程は、半導体ウエハ(基板)上に熱可塑性の接着剤層(被膜)を形成する工程である。
【0017】
接着剤層は、液体状の接着剤組成物を塗布し、乾燥することによって形成してもよいし、フィルム(支持フィルム)上に接着剤層を備えた接着剤フィルムを半導体ウエハ上に重ね合わせることによって形成してもよい。
【0018】
液体状の接着剤組成物を塗布する場合に、塗布方法としては、従来公知の方法を用いることができる。従来公知の塗布方法として、具体的には、スピンコート、ディッピング、およびローラーブレードなどを挙げることができる。また、接着剤フィルムを用いて半導体ウエハ上に接着剤層を形成する場合には、接着剤層から保護フィルムを剥離し、露出した接着剤層を半導体ウエハに重ねた後、接着剤層から支持フィルムを剥離することによって形成することが好ましい。
【0019】
接着剤層の材質は、加熱することによって熱流動を生じ、かつ冷却することによって成膜する材質、すなわち熱可塑性を有する材質であれば、特に限定されるものではない。接着剤層の材質として、具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、などを挙げることができる。
【0020】
(押圧工程)
押圧工程は、形成工程において形成した接着剤層を加熱した後、または加熱しつつ押圧する工程である。
【0021】
押圧工程において、接着剤層は少なくとも熱流動を生じる温度以上に加熱することが好ましい。すなわち、接着剤層のガラス転移点よりも高い温度となるように加熱することが好ましく、接着剤層のガラス転移点よりも100℃以上高い温度となるように加熱することがより好ましい。
【0022】
接着剤層をそのガラス転移点よりも高い温度となるように加熱することによって、押圧した接着剤層の表面を平坦化することができる。すなわち、接着剤層をそのガラス転移点よりも高い温度となるように加熱すると、接着剤層の表面に形成された凹凸部において、凸部から凹部へと接着剤層が熱流動する。さらに、熱流動を生じている状態の接着剤層を、平坦な押圧面を有する押圧部材によって押圧してやることより、表面に凹凸が形成されている接着剤層を平坦化することができる。
【0023】
なお、接着剤層を加熱した後に押圧する場合には、少なくとも押圧を開始する時点において、接着剤層の温度がそのガラス転移点よりも高い温度であることが好ましい。
【0024】
また、押圧工程における接着剤層の温度は、そのガラス転移点よりも高い温度以上であれば、押圧工程の間に温度を変化させてもよい。例えば、後述する冷却工程のために、押圧工程の開始時よりも押圧工程の終了時の方が低い温度となるように徐々に接着剤層の温度を下げるようにしてもよい。
【0025】
押圧工程において、接着剤層に加えられる圧力は、接着剤層1mあたり、10〜500KPaの範囲内であることが好ましい。
【0026】
押圧工程において接着剤層に加えられる圧力を上記範囲内とすることによって、接着剤層を押圧部材の押圧面の形状に沿って流動させることができる。また、押圧部材の押圧面の微細な凹凸が接着剤層に対して写ることを抑制することができる。
【0027】
なお、押圧工程において接着剤層に加えられる圧力は、押圧工程を通して一定であってもよく、また変化させてもよい。例えば、接着剤層の温度が高い場合、すなわち接着剤層の流動性が高い場合には、接着剤層により大きな圧力を加えるようにしてもよい。
【0028】
また、押圧工程において、接着剤層を押圧する押圧時間は、10秒〜3分の範囲内であることが好ましく、1〜2分の範囲内であることがより好ましい。押圧時間を上記範囲内とすることによって、接着剤層の表面を十分に均すことができるため、凹凸の形成されていた接着剤層の表面をほぼ完全に平坦化することができる。
【0029】
さらに、押圧工程を行う空間内、例えばチャンバー内の圧力は、100Pa以下であることが好ましい。押圧工程を行う空間内の圧力を上記範囲とすることによって、流動する接着剤層にボイドが巻き込まれることなく平坦化処理を行うことができる。
【0030】
(冷却工程)
冷却工程は、押圧工程においてその表面を平坦化した熱可塑性の接着剤層を冷却することにより接着剤層を成膜する工程である。
【0031】
冷却工程における接着剤層の温度は、少なくとも冷却工程の終了時において、ガラス転移点未満の温度であることが好ましく、室温(25℃)以下の温度であることがより好ましい。
【0032】
冷却工程において接着剤層の温度をガラス転移点未満の温度にまで冷却することによって、押圧工程において表面を平坦化した接着剤層をほぼ完全に成膜させることができる。
【0033】
また、上述した押圧工程の終了時における接着剤層の温度と、冷却工程の終了時における接着剤層の温度との温度差は、できる限り小さいことが好ましい。
【0034】
押圧工程の少なくとも終了時における接着剤層の温度と、後述する冷却工程の少なくとも終了時における接着剤層の温度との温度差をできる限り小さくすることによって、基板を冷却する時間を低減する、すなわち平坦化処理におけるタクトを低減することができる。
【0035】
また、冷却工程においても引き続き押圧状態を維持することによって、押圧工程において平坦化した接着剤層の表面を変形させることなく、接着剤層を成膜させることができる。
【0036】
冷却工程における押圧は、冷却工程を終了した後に解除してもよいし、冷却工程の途中に解除してもよい。押圧を冷却工程の途中に解除する場合、押圧を解除する時点における接着剤層の温度は、接着剤層のガラス転移点以下であることが好ましい。
【0037】
押圧を解除する時点における接着剤層の温度を接着剤層のガラス転移点以下とすることによって、接着剤層が押圧部材に付着することなく、接着剤層に対する押圧を解除することができる。
【0038】
また、冷却工程において、接着剤層に加えられる圧力の大きさは、上述した押圧工程において接着剤層に加えられる圧力の大きさと同等であってもよく、また異なっていてもよい。冷却工程において接着剤層に加えられる圧力の大きさは、接着剤層の表面の形状を変化することなく抑えつけることが可能な大きさであれば特に限定されるものではない。
【0039】
(サポートプレートとの貼り合せ)
以上の工程により平坦化した接着剤層を備えた半導体ウエハは、続いて、サポートプレートに貼り合せられ、薄化される。しかし、半導体ウエハ上に形成された接着剤層を平坦化したことによって、半導体ウエハとサポートプレートとの厚みの分布の均一性が向上するため、半導体ウエハとサポートプレートとを剥離する際における剥離性を向上することができる。また、半導体ウエハを薄化する際における接着剤層の転写を抑制することができる。
【0040】
なお、本明細書等における「転写」とは、半導体ウエハの薄化処理の終了後に半導体ウエハの表面(サポートプレートに接着されていない側の面)に形成される隆起を意味している。
【0041】
(付記事項)
本実施形態に係る基板処理方法は、押圧工程の直前までに、半導体ウエハ上に形成した接着剤層を乾燥(プリベーク)する乾燥工程を含んでいてもよい。乾燥工程における接着剤層の乾燥温度は、接着剤層に含まれる溶剤の種類に応じて適宜設定することができる。
【0042】
また、乾燥工程は、互いに異なる温度で行う少なくとも2段階の工程であることが好ましい。言い換えれば、プリベークする際には、乾燥工程を施す加熱器の温度を段階的に昇温させることが好ましい。
【0043】
乾燥工程の段階数は、特に限定されるものではないが、乾燥工程にかかる手間を考えると2段階から3段階程度であることが好ましい。例えば、乾燥工程が3段階である場合、第1段階の乾燥温度を50〜150℃程度とし、第2段階の乾燥温度を100〜200℃程度とし、第3段階の乾燥温度を150〜200℃程度とすることが好ましい。
【0044】
乾燥工程を多段階とすることによって、接着剤層に含有されている多様な種類の溶剤をほぼ完全に除去することができる。
【0045】
なお、乾燥工程における乾燥時間は、特に限定されるものではないが、各温度において1〜3分程度であることが好ましい。
【0046】
また、押圧工程の直後から冷却工程の直前までの間に接着剤層の表面を均す均し工程を含んでいてもよい。均し工程を含むことによって、押圧部材の押圧面における凹凸に由来する接着剤層の表面の凹凸も平坦化することができる。
【0047】
均し工程における接着剤層の温度は、熱流動を生じる温度以上であれば、特に限定されるものではない。また、均し工程において、接着剤層に加えられる圧力は、押圧手段の押圧面における凹凸によって生じた接着剤層の表面における凹凸を平坦化できる圧力であれば特に限定されるものではない。また、均し工程における加熱温度などその他の条件については、適宜設定することができる。
【0048】
〔実施形態2〕
実施形態1に記載の基板処理方法を実現する基板処理装置について、実施形態2として以下に説明する。なお、実施形態1と同様の用語については同一の意味で使用している。
【0049】
また、本実施形態に係る基板処理装置は、基板上に平坦な表面を有する被膜を形成することができれば、その具体的な用途は特に限定されるものではない。本実施形態では、半導体ウエハにサポートプレートを貼り合せる場合であり、かつ半導体ウエハ上に接着剤層を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0050】
(基板処理装置の構成)
基板処理装置の構成について、図1を参照して以下に説明する。図1は、本実施形態における基板処理装置を示す断面図である。
【0051】
図1に示すように、基板処理装置1は、筐体2、加熱器3、プレス板4、プレス板駆動部5、制御部6および扉7を備えている。各部材の詳細について以下に説明する。
【0052】
(筐体2、扉7)
筐体2は、押圧処理の際の熱が外部に漏れないように、断熱性の素材によって形成されており、その一部に扉7を備えている。扉7は、前後、上下、または左右のいずれかに開閉可能である。なお、扉7の開閉は、下記に説明する制御部6によって制御されている。
【0053】
(加熱器3)
加熱器3は、図1に示すように、加熱器3の上に半導体ウエハ(基板)10を戴置すると共に、半導体ウエハ10を加熱し、半導体ウエハ10上に形成された接着剤層(被膜)11に熱流動を生じさせるものである。加熱器3は、半導体ウエハ10を変形させることなく、接着剤層11に熱流動を生じさせることができるものであれば、特に限定されるものではない。加熱器3として、具体的には、電熱線を内蔵しているヒーター、またはランプなどを挙げることができる。また、半導体ウエハ10を戴置する戴置台と加熱機構とが一体をなして形成されている必要はなく、半導体ウエハ10を戴置する戴置台と、例えばヒーターなどの加熱機構とがそれぞれ独立していてもよい。
【0054】
また、加熱器3の大きさは、半導体ウエハ10の大きさと同等であるか、または大きいことが好ましい。また、加熱器3の形状は、半導体ウエハ10と同一の形状であることが好ましい。なお、加熱器3による加熱時間および加熱温度などの設定は、下記に説明する制御部6によって制御されており、筐体2の一部に備えられた操作表示部(図示しない)によって、操作者に通知される。
【0055】
(プレス板4、プレス板駆動部5)
プレス板4は、加熱部3に対向するように備えられた、接着剤層11を押圧する押圧部材であり、平坦な押圧面4aを有している。プレス板4の大きさは、半導体ウエハ10と同等であるか、または半導体ウエハ10よりも大きいことが好ましい。また、プレス板4の形状は、半導体ウエハ10と同一の形状であることが好ましい。
【0056】
プレス板4の材質は、高温の接着剤層10と接触することにより変形したり、損傷したりする材質でなければ特に限定されるものではない。プレス板4の材質として、具体的には、鉄およびニッケルなどを挙げることができる。
【0057】
プレス板4の押圧面4aには、プレス板4を接着剤層11から剥離する際に押圧面4aに接着剤層11が付着することを防止する処理が施されていることが好ましい。接着剤層11の付着を防止する処理としては、例えば、フッ素樹脂加工、または離系剤による処理などを挙げることができる。
【0058】
プレス板駆動部5は、プレス板4を支持すると共に、プレス板4を図1中に示す矢印方向(上下方向)に駆動するものである。プレス板駆動部5として、具体的には、シリンダなどを挙げることができる。なお、プレス板駆動部5におけるプレス板4の駆動タイミングおよび接着剤層11に施す圧力の大きさは、下記に説明する制御部6によって制御されている。
【0059】
なお、プレス板4は、接着剤層11の表面を平坦化できるものであれば、図1に示すような板状の部材に限定されるものではない。板状以外にも、例えば、ローラー状の部材であってもよい。
【0060】
(制御部6)
制御部6は、上述したように扉7の開閉、加熱器3における加熱時間および加熱温度、ならびにプレス板4の駆動タイミングおよび接着剤層11に施す圧力の大きさを制御するものであり、マイクロコンピュータ(マイコン)などが用いられる。
【0061】
(基板処理装置1の動作)
次に、基板処理装置1における半導体ウエハ10の処理プロセスについて以下に説明する。
【0062】
接着剤層形成装置(図示しない)において、表面に接着剤層11を形成された半導体ウエハ10は、半導体ウエハ10を搬送する搬送手段(図示しない)によって、加熱器3上に戴置される。より具体的には、半導体ウエハ10を保持した搬送手段が、接着剤層形成装置から扉7の前に移動したことを認識すると、制御部6は扉7を開ける指示を送る。搬送手段は扉7から筐体2内へと移動し、半導体ウエハ10を加熱器3上に戴置する。半導体ウエハ10を加熱器3上に戴置した搬送手段は、扉7から筐体2外へと移動する。搬送手段が筐体2外へと移動したことを認識すると、制御部6は扉7を閉じる指示を送る。
【0063】
扉7が閉じると制御部6は、加熱器3に対して加熱を開始する指示を送る。制御部6からの指示を受けた加熱器3は、半導体ウエハ10を加熱し、接着剤層11の乾燥を開始する。なお、接着剤層11の乾燥は、必ずしも基板処理装置1において施される必要はなく、例えば接着剤層形成装置において予め施されてもよい。接着剤層11の乾燥が終了すると、加熱器3は、接着剤層11の表面において熱流動の生じる温度まで半導体ウエハ10をさらに加熱する。なお、加熱温度などの加熱条件については、実施形態1において説明したため、ここではその説明を省略する。また、加熱条件は、用いる接着剤層11の材質に応じて、操作者が適宜設定することが好ましい。
【0064】
接着剤層11の温度が操作者の設定した温度、すなわち接着剤層11の表面において熱流動の生じる温度となると、制御部6は、プレス板駆動部5に対して接着剤層11を押圧(プレス)するように指示を送る。制御部6からの指示を受けたプレス板駆動部5は、プレス板4を用いて接着剤層11を押圧する。また、減圧装置(図示しない)は、筐体2内の圧力を低減する。接着剤層11の押圧における圧力などの押圧条件については実施形態1において説明したため、ここではその説明を省略する。また、プレス板4による押圧の圧力、および押圧時間などの押圧(プレス)条件についても、加熱条件と同様に、用いる接着剤層11の材質に応じて操作者が適宜設定することが好ましい。
【0065】
なお、本実施形態では接着剤層11を加熱した後、プレス板4によって接着剤層11を押圧する場合について説明しているが、プレス板4によって接着剤層11を押圧しつつ接着剤層11を加熱してもよい。
【0066】
制御部6は、予め設定された押圧時間を経過したことを認識すると、加熱部3に対して加熱を終了させる指示を送る。制御部6からの指示を受けた加熱部3は、加熱を終了する。そして、接着剤層11のガラス転移点未満の温度となるまで半導体ウエハ10を静置する。接着剤層11の温度がそのガラス転移点未満になると、制御部6は、プレス板駆動部5に対してプレス板4による接着剤層11の押圧を解除するように指示を送る。指示を受けたプレス板駆動部5は、プレス板4による接着剤層11の押圧を解除する。
【0067】
なお、本実施形態では、接着剤層11を静置することによって冷却しているが、より迅速に接着剤層11を冷却するための冷却部(図示しない)を備えていてもよい。冷却部は、平坦化した接着剤層11の表面の形状を変形させるものでなければ、特に限定されるものではない。例えば、筐体2内に冷風を送る送風器であってもよく、またプレス板4に備えられており、接着剤層11に接触して冷却するようなものであってもよい。
【0068】
また、本実施形態では、制御部6が自動でプレス板4による押圧を開始し、解除するような構成としているが、これに限定されるものではなく、例えば操作者が手動で押圧を開始し、解除するようにしてもよい。
【0069】
接着剤層11を冷却することによる成膜が終了すると、半導体ウエハ10は、搬送手段によって筐体2から取り出され、半導体ウエハ10にサポートプレート(図示しない)を貼り合せるための処理装置へと搬送される。
【0070】
(付記事項)
本実施形態では、制御部6は、予め設定された押圧時間を経過したことを認識すると、加熱部3に対して加熱を終了する指示を送っているが、押圧時間を経過した後すぐに加熱を終了せず、接着剤層11を均す均し処理を施してもよい。
【0071】
より具体的に説明すると、制御部6は、予め設定された押圧時間を経過したことを認識すると、プレス板駆動部5に対して、プレス板4による接着剤層11の押圧を緩めるように指示する。指示を受けたプレス板駆動部5は、押圧面4aに接着剤層11が付着しない程度に押圧を緩める。このとき、加熱器3は、引き続き接着剤層11の表面において熱流動を生じる温度となるように半導体ウエハ10を加熱する。加熱時間は、接着剤層11の材質などに応じて操作者が適宜設定することが好ましい。なお、押圧工程の少なくとも直後から冷却工程の少なくとも直前までに接着剤層11の表面を均す、均し工程における加熱温度などの条件については、実施形態1において説明したため、ここではその説明を省略する。
【0072】
制御部6は、予め設定された加熱時間が経過したことを認識すると、加熱部3に対して加熱を終了させる指示を送る。制御部6からの指示を受けた加熱部3は、加熱を終了する。
【0073】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る基板処理方法は、例えば、半導体ウエハとサポートプレートとを貼り合せる際において、熱可塑性の接着剤層を平坦化する処理として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施形態2における基板処理装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 基板処理装置
2 筐体
3 加熱器
4 プレス板
5 プレス板駆動部
6 制御部
7 扉
10 半導体ウエハ(基板)
11 接着剤層(被膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に平坦化膜を形成する基板処理方法であって、
上記基板上に熱可塑性の被膜を形成する形成工程と、
上記被膜を加熱した後に押圧する、または上記被膜を加熱しつつ押圧する押圧工程と、
上記被膜に対する押圧状態を維持すると共に、上記被膜を冷却する冷却工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
上記冷却工程では、上記被膜をそのガラス転移点未満の温度まで冷却することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
上記押圧工程において上記被膜に加えられる圧力は、上記被膜1mあたり、10〜500KPaの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
上記押圧工程では、上記被膜をそのガラス転移点以上に加熱することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
上記基板の少なくとも一方の面には、回路が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
上記被膜は、接着剤層であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理方法によって形成された接着剤層を備えた基板に、サポートプレートを貼り合せる貼合工程を含むことを特徴とするサポートプレートの貼合方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−54883(P2009−54883A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221620(P2007−221620)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】