説明

基板処理装置

【課題】基板へのパーティクルの付着量が十分に低減された基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置100において、ドライエア発生装置60により発生されたドライエアDFは、配管61を通してドライエア供給ダクト62に送られる。それにより、昇降機構30により内槽40から引き上げられる基板WにドライエアDFが吹き付けられ、基板Wの乾燥処理が行われる。ドライエア発生装置60により発生されたドライエアDFが処理槽4の内槽40から引き上げられる基板Wに供給されるまでに通過する経路(配管61、供給ダクト62および通気ガイド62a)には、塩化ビニルよりもガス放出速度が低くかつ塩化ビニルよりも吸水率が低い材料が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に種々の処理を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の基板に種々の処理を行うために、基板処理装置が用いられている。
【0003】
複数の基板を処理槽に貯留された処理液に浸漬し、洗浄処理を行う基板処理装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の基板処理装置においては、処理槽内で基板の表面が薬液および純水により洗浄処理される。洗浄処理の施された基板は処理槽内から引き上げられる。
【0005】
洗浄処理後の基板に純水が付着していると、基板にパーティクルが付着し易くなる。また、基板に付着した純水が自然乾燥すると、基板にウォーターマークが形成される。このような、基板へのパーティクルの付着およびウォーターマークの発生は、基板の処理不良の原因となる。
【0006】
そこで、特許文献1の基板処理装置においては、処理槽内から引き上げられた基板にドライエアが供給される。これにより、基板に付着した純水がドライエアにより置換され、基板の表面が乾燥される。それにより、基板へのパーティクルの付着が抑制され、ウォーターマークの発生も防止される。
【0007】
なお、特許文献1において、ドライエアとは極めて露点の低い気体をいい、基板に供給されるドライエアの露点は例えば約−70℃である。
【特許文献1】特開2006−310759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、実際には、処理槽内から引き上げられる基板にドライエアを供給しても、基板へのパーティクルの付着を完全に防止することはできない。また、基板に付着するパーティクルを低減できる量には限界がある。このため、基板へのパーティクルの付着量を十分に低減することが求められる。
【0009】
本発明の目的は、基板へのパーティクルの付着量が十分に低減された基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、基板に付着するパーティクルを低減できる量に限界があるのは、基板に供給されるドライエアにパーティクルが含まれることにより、それらのパーティクルが基板の表面に付着するためであると考えた。そこで、本発明者は、基板にドライエアを供給するドライエア供給系に用いられる材料に着目し、以下の発明を案出した。
【0011】
(1)本発明に係る基板処理装置は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、処理液を貯留する処理槽と、処理槽内の処理液中と処理槽の上方位置との間で基板を昇降させる基板昇降装置と、ドライエア発生装置により発生されるドライエアの通路を構成し、基板昇降装置により処理槽から引き上げられる基板にドライエア発生装置により発生されたドライエアを供給するドライエア供給系とを備え、ドライエア供給系は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成されたものである。
【0012】
この基板処理装置においては、基板が、基板昇降装置により処理槽内の処理液中と処理槽の上方位置との間で昇降される。基板が処理槽から引き上げられるときには、ドライエア発生装置により発生されたドライエアが、ドライエア供給系を通して処理槽から引き上げられる基板に供給される。これにより、基板に付着した処理液がドライエアにより乾燥する。
【0013】
ドライエア供給系を構成する材料には、水分および水以外のガスの成分が含まれる。このため、ドライエアがドライエア供給系を通過する際には、ドライエア供給系に含まれる水分がドライエアにより置換されて乾燥する。このとき、ドライエアにより乾燥する水分に水以外のガスの成分が含まれていると、その成分は、水分の乾燥とともにパーティクルとして析出する。
【0014】
ここで、ドライエア供給系は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成される。
【0015】
これにより、ドライエアにより置換されるドライエア供給系の水分が低減されるとともに、ドライエアにより置換される水分に含まれる水以外のガスの成分が低減される。
【0016】
それにより、ドライエアがドライエア供給系を通過する際に、ドライエア供給系に含まれる水以外のガスの成分がパーティクルとして析出することが低減される。したがって、ドライエアとともに処理槽から引き上げられる基板に供給されるパーティクルの量を十分に低減することができる。その結果、基板へのパーティクルの付着量を十分に低減することができる。
【0017】
(2)ドライエア供給系の少なくとも一部は、四フッ化エチレンまたはポリフッ化ビニリデンにより形成されてもよい。
【0018】
四フッ化エチレンおよびポリフッ化ビニリデンは、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する。これにより、基板へのパーティクルの付着量を十分に低減することができる。
【0019】
(3)ドライエア供給系の少なくとも一部は、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム、銅またはジュラルミンにより形成されてもよい。
【0020】
ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム、銅およびジュラルミンは、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する。これにより、基板へのパーティクルの付着量を十分に低減することができる。
【0021】
(4)ドライエア供給系は、四フッ化エチレンにより形成されてもよい。
【0022】
この場合、ドライエア発生装置により発生されたドライエアが、四フッ化エチレンからなるドライエア供給系を通して処理槽から引き上げられる基板に供給される。
【0023】
四フッ化エチレンは、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する。これにより、基板へのパーティクルの付着量を十分かつ確実に低減することができる。
【0024】
(5)ドライエア供給系は、処理槽の上端に沿って、処理槽の一側方から他側方へドライエアを供給することにより、基板昇降装置により処理槽から引き上げられる基板にドライエア発生装置により発生されたドライエアを供給し、処理槽の上端部を含む部分は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成されてもよい。
【0025】
この場合、基板が基板昇降装置により処理槽から引き上げられる際には、ドライエア供給系により、処理槽の上端に沿って一側方から処理槽の他側方へドライエアが供給される。
【0026】
このとき、処理槽の上端にドライエアが接触する場合でも、処理槽の上端部を含む部分に含まれる水分および水以外のガスの成分が低減されるので、ドライエアとともに処理槽から引き上げられる基板に供給されるパーティクルの量をより十分に低減することができる。その結果、基板へのパーティクルの付着量をより十分に低減することができる。
【0027】
(6)ドライエア供給系は、処理槽から引き上げられる基板に向かって開口するドライエア供給口を含み、基板処理装置は、少なくとも一部がドライエア供給口に対向するように配置され、基板に供給されたドライエアを排出する気体排出部をさらに備え、気体排出部のドライエア供給口に対向する部分は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成されてもよい。
【0028】
この場合、ドライエア供給口に対向する気体排出部の部分に接触したドライエアが乱流等の影響により再び基板に供給される場合でも、ドライエア供給口に対向する気体排出部の部分に含まれる水分および水以外のガスの成分が低減されるので、ドライエアが気体排出部に接触することにより発生するパーティクルの量をより十分に低減することができる。その結果、基板へのパーティクルの付着量をより十分に低減することができる。
【0029】
(7)基板処理装置は、ドライエア供給系から基板に供給されるドライエアの供給路および気体排出部によるドライエアの排出路を除いて処理槽上の空間の周囲および上部を取り囲むように設けられる遮蔽部材をさらに備え、遮断部材は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成されてもよい。
【0030】
この場合、遮蔽部材により処理槽上の空間の周囲および上部が取り囲まれる。これにより、ドライエア供給系から処理槽上に供給されるドライエアは、遮蔽部材の内部を通って気体排出部から排出される。
【0031】
また、遮蔽部材に含まれる水分および水以外のガスの成分が低減されるので、遮蔽部材の内面に接触したドライエアが遮蔽部材の内部を循環する場合でも、ドライエアが遮蔽部材に接触することにより発生するパーティクルの量をより十分に低減することができる。その結果、基板へのパーティクルの付着量をより十分に低減することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、基板へのパーティクルの付着量が十分に低減されるとともに、ウォーターマークの発生が十分に低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の一実施の形態に係る基板処理装置について説明する。以下の説明において、基板とは、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等をいう。
【0034】
(1)基板処理装置の構成および動作
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す模式的断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る基板処理装置100は、処理槽4、ダクト20、昇降機構30、処理液ミキシング装置50、ドライエア発生装置60、外気遮断部材70、制御部80、搬送駆動部300、搬送ロボット310、開閉駆動部700およびドライエア排出機構900を備える。
【0035】
ダクト20は、矩形の筒形状を有し、鉛直方向の軸に沿うように立設されている。ダクト20の上端部には外気遮断部材70が、ダクト20の上端部開口を開閉自在に取り付けられている。
【0036】
外気遮断部材70は、上蓋部71、筒部72およびヒンジ部73を含む。外気遮断部材70の上蓋部71は、矩形の平板形状を有し、ヒンジ部73を中心として回動可能である。
【0037】
外気遮断部材70は、開閉駆動部700により駆動される。この場合、上蓋部71がヒンジ部73を中心として回動する。それにより、ダクト20の上端部開口が開放または閉塞される。
【0038】
筒部72は、ダクト20よりも小さい矩形の略筒形状を有する。この筒部72は上蓋部71の下面に形成されている。外気遮断部材70の構造の詳細は後述する。
【0039】
ダクト20の内部には、処理槽4が設けられている。処理槽4は複数の基板Wを収容可能な内槽40、およびその内槽40の上部外周を取り囲むように設けられた外槽43により形成されている。内槽40は略直方体形状を有する。
【0040】
内槽40の底部には、内槽40内に処理液を供給するための処理液供給管41の一端および内槽40内の処理液を排出するための処理液排出管42の一端が接続されている。本実施の形態において、内槽40内では処理液により基板Wの洗浄処理が行われる。洗浄処理時に内槽40内に供給される処理液は、洗浄液またはリンス液である。
【0041】
内槽40内に洗浄液を供給し、内槽40内の洗浄液に基板Wを浸漬することにより、基板Wの表面を洗浄する。その後、内槽40内の洗浄液をリンス液で置換する。
【0042】
洗浄液としては、BHF(バッファードフッ酸)、DHF(希フッ酸)、フッ酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸またはアンモニア等の薬液が用いられる。リンス液としては、純水、炭酸水、水素水、電解イオン水等が用いられる。
【0043】
本実施の形態では、処理液供給管41の他端が処理液ミキシング装置50に接続されている。処理液ミキシング装置50には、例えば薬液および純水が供給されている。処理液ミキシング装置50は、供給される薬液および純水を所定の割合で混合することができる。したがって、処理液ミキシング装置50は、薬液、純水またはそれらの混合液を処理液またはリンス液として処理液供給管41を介して内槽40内に供給する。
【0044】
外槽43の底部には、内槽40の上部から溢れ出して外槽43内に流れ込む処理液を排出するための処理液排出管44の一端が接続されている。
【0045】
ダクト20の内部には、昇降機構30が設けられている。昇降機構30は、複数の基板Wを保持する保持部31を内槽40の内部とその上方位置との間で上下方向に移動させる。これにより、複数の基板Wを内槽40内の処理液中に浸漬し、処理液から引き上げることができる。
【0046】
ダクト20の対向する2つの側面における上端部近傍の位置に、それぞれドライエア供給ダクト62およびドライエア排出ダクト63が取り付けられている。
【0047】
ドライエア供給ダクト62には複数の通気ガイド62aが設けられている。ドライエア供給ダクト62は配管61を介してドライエア発生装置60と接続されている。ドライエア排出ダクト63には複数の通気ガイド63aが設けられるとともにドライエア排出機構900が取り付けられている。
【0048】
ドライエア発生装置60により発生されたドライエアDFが、配管61を通してドライエア供給ダクト62に送られる。それにより、昇降機構30により内槽40から引き上げられる基板WにドライエアDFが吹き付けられ、基板Wの乾燥処理が行われる。
【0049】
ドライエア排出機構900が取り付けられたドライエア排出ダクト63は、処理槽4上の雰囲気を吸引して外部へ排出する。これにより、基板Wに吹き付けられたドライエアDFおよび基板W周辺の雰囲気がドライエア排出ダクト63から排出される。
【0050】
なお、本実施の形態において、ドライエアDFとは、極めて露点の低い気体をいう。ドライエア供給ダクト62からダウンフローダクト20内に供給されるドライエアDFの露点は、例えば約−30℃である。
【0051】
外気遮断部材70の上方には、搬送エリアTEが設けられている。搬送エリアTEには、搬送ロボット310が移動可能に設けられている。
【0052】
搬送ロボット310は、アームヒンジ部311および2本のアーム312を備える。搬送ロボット310は、搬送駆動部300により駆動される。この場合、2本のアーム312がアームヒンジ部311を中心としてそれぞれ対称な方向に回動し、搬送ロボット310の下端部が開閉する。
【0053】
これにより、搬送ロボット310は、複数の基板Wを保持する保持部31を2本のアーム312の間に挟み込んで、複数の基板を保持することができる。また、搬送ロボット310は、搬送駆動部300により駆動されることにより、搬送エリアTE内を移動する。
【0054】
制御部80は、例えばCPU(中央演算処理装置)および記憶装置またはマイクロコンピュータ等からなる。図1に示すように、制御部80は、昇降機構30、処理液ミキシング装置50、ドライエア発生装置60、搬送駆動部300、開閉駆動部700、およびドライエア排出機構900と接続されている。
【0055】
制御部80が各構成部の動作を制御することにより、複数の基板Wを保持する保持部31の昇降動作、基板Wの洗浄処理、基板Wの乾燥処理、処理槽4に対する基板Wの搬入搬出動作、ダクト20の上端部開口の開閉動作、および処理槽4上の雰囲気の排出動作が制御される。
【0056】
(2)外気遮断部材の構造の詳細
図2は、図1の外気遮断部材70の構造の詳細を説明するための斜視図である。なお、図2では、外気遮断部材70の構造を明確に示すために、処理槽4の外槽43およびダクト20の図示を省略している。
【0057】
図2に示すように、外気遮断部材70の筒部72は、第1の遮断側板72a、第2の遮断側板72b、第3の遮断側板72cおよび第4の遮断側板72dを有する。第1の遮断側板72aおよび第2の遮断側板72bが互いに対向し、第3の遮断側板72cおよび第4の遮断側板72dが互いに対向している。
【0058】
ダクト20(図1)の上端部開口が上蓋部71により閉塞された状態で、第1および第2の遮断側板72a,72bは、上蓋部71の下面からドライエア供給ダクト62およびドライエア排出ダクト63の上端部まで延びている。一方、第3および第4の遮断側板72c,72dは、上蓋部71の下面から処理槽4の上端部まで延びている。
【0059】
これにより、ダクト20(図1)の上端部が上蓋部71により閉塞された場合には、処理槽4の直上の空間WUが、上蓋部71の下面、筒部72の第1〜第4の遮断側板72a〜72d、ドライエア供給ダクト62のドライエア供給口621およびドライエア排出ダクト63の排気口631により取り囲まれる。そのため、空間WU内の雰囲気が外部の雰囲気から遮断される。
【0060】
それにより、処理槽4の内槽40から引き上げられる基板Wにドライエア供給ダクト62からドライエアDFを供給する際に、空間WU内に外部の雰囲気が進入することが防止される。その結果、外部の雰囲気に含まれるパーティクルが空間WU内に進入して基板Wに付着することが防止される。
【0061】
また、空間WU内の雰囲気が外部の雰囲気から遮断されるので、基板W周辺の雰囲気の露点を十分に低い状態に維持することができ、基板Wの乾燥効率を向上させることができる。
【0062】
なお、上述のように、外気遮断部材70は図1の開閉駆動部700により駆動される。制御部80が開閉駆動部700を制御することにより、外気遮断部材70は洗浄処理時に開放状態となり、乾燥処理時に閉塞状態となる。
【0063】
(3)ドライエア供給系に用いられる材料
以下、ドライエア発生装置60により発生されたドライエアDFが処理槽4の内槽40から引き上げられる基板Wに供給されるまでに通過する経路を構成する部材をドライエア供給系と呼ぶ。本実施の形態では、ドライエア供給系は、配管61、供給ダクト62および通気ガイド62aを含む。従来の基板処理装置においては、PVC(塩化ビニル)が用いられている。
【0064】
ところで、上述のように、ドライエアDFは、極めて露点の低い気体である。そのため、図1のドライエア発生装置60により発生されたドライエアDFは、基板Wに付着する処理液だけでなく、ドライエア発生装置60から処理槽4上の空間に供給されるまでの間に接触する部材に含まれる水分も置換する。
【0065】
この場合、ドライエアDFにより置換される水分に当該部材の水以外の成分が含まれていると、その成分がパーティクルとして析出し、ドライエアDFとともに処理槽4上の空間に供給される。
【0066】
従来の基板処理装置のように、ドライエア供給系をPVCで構成する場合、PVCには加工性を向上するための可塑剤が添加される。そのため、このドライエア供給系を通るドライエアDFが可塑剤の成分を含む水分を置換すると、可塑剤の成分がパーティクルとして析出し、ドライエアDFとともに処理槽4上の空間に供給される。
【0067】
そこで、本発明者は、ドライエア供給系を構成する材料として、PVCよりもガス放出速度が低くかつPVCよりも吸水率が低い材料を用いることにより、ドライエア供給系にPVCを用いる場合に比べて、処理槽4上の空間に送られるパーティクルの量を低減できると考えた。
【0068】
ここで、ガス放出速度は、単位時間当たりに対象物から放出されるガスの放出量を表し、対象物の表面に蓄積(吸着)可能なガスの量に依存する。したがって、ドライエア供給系にPVCよりもガス放出速度が低い材料を用いた場合、ドライエア供給系にPVCを用いる場合に比べて、ドライエアDFにより置換される水分に含まれる水以外のガスの成分がパーティクルとして析出することが低減される。
【0069】
一方、吸水率は、対象物が蓄え得る水分量を示す指標である。したがって、ドライエア供給系にPVCよりも吸水率が低い材料を用いることにより、ドライエア供給系にPVCを用いる場合に比べて、ドライエアDFにより置換される水分が低減され、パーティクルの発生が抑制される。
【0070】
(4)ドライエア供給系に用いられる材料の選定
(4−1)複数種類の材料間におけるガス放出速度の関係
ガス放出速度は、例えば対象物を真空容器内に配置し、ポンプによりその真空容器内の雰囲気を排気したときに、対象物から放出される単位面積当りのガスの放出量を測定することにより得られる。
【0071】
図3は、同一条件で測定された複数種類の材料間におけるガス放出速度の関係を示す図である。図3では、測定開始から約1時間または約2時間経過時における各材料のガス放出速度を示す。図3に示すように、点線で囲まれたPVCのガス放出速度は約10−3(Pa・m/s)程度である。
【0072】
これに対して、ステンレス鋼、真鍮板、アルミニウム板、銅管およびジュラルミン等の金属材料、硼珪酸ガラス、多孔質アルミナ、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、ならびにPTFE(四フッ化エチレン)の各ガス放出速度は、いずれもPVCのガス放出速度よりも低い。これらの材料のうち、PTFE(四フッ化エチレン)のガス放出速度は約10−4(Pa・m/s)程度である。一方、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)のガス放出速度はPVCのガス放出速度よりも高い。
【0073】
(4−2)複数種類の材料間における吸水率の関係
吸水率は、例えば対象物を一定温度で一定時間蒸留水に浸漬したときの重量増加分を本来の対象物の重量で除算し、百分率で表したものである。
【0074】
ここで、金属材料の吸水率は、樹脂材料の吸水率よりも低い。したがって、図3に示されたステンレス鋼、真鍮板、アルミニウム板、銅管およびジュラルミン等の金属材料の吸水率は、いずれもPVCの吸水率よりも低い。
【0075】
図4は、同一条件で測定された複数種類の樹脂材料間における吸水率の関係を示す図である。図4に示すように、点線で囲まれたPVCの吸水率は約0.1(%)よりも高い。
【0076】
これに対して、PS、PE、およびPTFEの各吸水率は、いずれもPVCの吸水率よりも低い。これらの材料のうち、PTFEの吸水率は約0.01(%)よりも低い。一方、PMMAの吸水率はPVCの吸水率よりも高い。
【0077】
(4−3)ドライエア供給系に適用可能な材料
上述のように、本実施の形態において、ドライエア供給系には、PVCよりもガス放出速度が低くかつPVCよりも吸水率が低い材料が用いられる。
【0078】
したがって、図3および図4に例示される材料のなかでは、ドライエア供給系に、ステンレス鋼、真鍮板、アルミニウム板、銅管もしくはジュラルミン等の金属材料、PS、PE、またはPTFEを用いることができる。また、これらの材料の他、ドライエア供給系にはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を用いることもできる。
【0079】
本実施の形態に係る基板処理装置100においては、例えば配管61がステンレス鋼により構成され、ドライエア供給ダクト62および通気ガイド62aがPTFEにより構成される。これにより、処理槽4上に供給されるドライエアDFに含まれるパーティクルの量が低減され、乾燥処理中の基板Wに付着するパーティクルの量が十分に低減される。
【0080】
(5)パーティクルの付着量評価
本発明者は、実施例の基板処理装置100を用いて基板Wの洗浄処理および乾燥処理を行った後、その基板Wへのパーティクルの付着状態について評価を行った。実施例の基板処理装置100では、配管61がステンレス鋼により構成され、ドライエア供給ダクト62および通気ガイド62aがPTFEにより構成される。
【0081】
また、本発明者は、比較例の基板処理装置を用いて基板Wの洗浄処理および乾燥処理を行った後、その基板Wへのパーティクルの付着状態について評価を行った。比較例の基板処理装置では、配管61、ドライエア供給ダクト62および通気ガイド62aがPVCにより構成される。
【0082】
図5は、基板Wに付着するパーティクルの分布を示す模式的上面図である。図5(a)に実施例の基板処理装置100による処理後の基板Wが示され、図5(b)に比較例の基板処理装置による処理後の基板Wが示されている。図5(a)および図5(b)では、基板Wに付着するパーティクルが微細な黒点で示されている。
【0083】
図5(a)および図5(b)に示されるように、実施例の基板処理装置100による処理後の基板Wに付着するパーティクルの量は、比較例の基板処理装置による処理後の基板Wに付着するパーティクルの量に比べて著しく低減されている。
【0084】
この結果から、ドライエア供給系に同一条件で測定されるガス放出速度がPVCよりも低くかつ同一条件で測定される吸水率がPVCよりも低い材料を用いることにより、基板へのパーティクルの付着量を十分に低減できることが明らかとなった。
【0085】
(6)ドライエア供給系以外の構成に用いられる材料
処理槽4、外気遮断部材70、ドライエア排出ダクト63、および通気ガイド63aに、ドライエア供給系と同様に、PVCよりもガス放出速度が低くかつPVCよりも吸水率が低い材料を用いてもよい。
【0086】
基板Wの乾燥処理時には、ドライエア供給ダクト62から処理槽4上の空間にドライエアDFが供給される。そして、処理槽4上の空間の雰囲気は、ドライエア排出ダクト63を通して外部へ排出される。したがって、基板Wの乾燥処理時には、処理槽4上の空間に円滑な流れが発生する。
【0087】
しかしながら、ドライエア供給ダクト62から処理槽4上の空間に供給されるドライエアDFの全てがドライエア排出ダクト63の排気口631に向かって流れるとは限らない。
【0088】
処理槽4上の空間に供給されるドライエアDFの一部は、例えば処理槽4、外気遮断部材70、ドライエア排出ダクト63、および通気ガイド63aに接触し、外気遮断部材70内で循環する。このとき、各部材に含まれる水分がそのドライエアDFにより置換される。また、それらの部材に含まれる水分に、水以外の成分が含まれる場合にはパーティクルが析出する。
【0089】
そこで、処理槽4、外気遮断部材70、ドライエア排出ダクト63、および通気ガイド63aにも、PVCよりもガス放出速度が低くかつPVCよりも吸水率が低い材料を用いることにより、外気遮断部材70内でのパーティクルの発生が十分に低減される。
【0090】
(7) 請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0091】
上記実施の形態では、昇降機構30および保持部31が基板昇降装置の例であり、配管61、ドライエア供給ダクト62および通気ガイド62aがドライエア供給系の例であり、ドライエア排出ダクト63およびドライエア排出機構900が気体排出部の例であり、外気遮断部材70が遮蔽部材の例である。
【0092】
なお、請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る基板処理装置は、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の基板の製造に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す模式的断面図である。
【図2】図1の外気遮断部材の構造の詳細を説明するための斜視図である。
【図3】同一条件で測定された複数種類の材料間におけるガス放出速度の関係を示す図である。
【図4】同一条件で測定された複数種類の樹脂材料間における吸水率の関係を示す図である。
【図5】基板に付着するパーティクルの分布を示す模式的上面図である。
【符号の説明】
【0095】
4 処理槽
30 昇降機構
31 保持部
60 ドライエア発生装置
61 配管
62 ドライエア供給ダクト
62a 通気ガイド
63 ドライエア排出ダクト
70 外気遮断部材
100 基板処理装置
621 ドライエア供給口
631 排気口
900 ドライエア排出機構
DF ドライエア
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内の処理液中と前記処理槽の上方位置との間で基板を昇降させる基板昇降装置と、
ドライエアを発生するドライエア発生装置と、
前記ドライエア発生装置により発生されるドライエアの通路を構成し、前記基板昇降装置により前記処理槽から引き上げられる基板に前記ドライエア発生装置により発生されたドライエアを供給するドライエア供給系とを備え、
前記ドライエア供給系は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成されたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記ドライエア供給系の少なくとも一部は、四フッ化エチレンまたはポリフッ化ビニリデンにより形成されたことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ドライエア供給系の少なくとも一部は、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム、銅またはジュラルミンにより形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ドライエア供給系は、四フッ化エチレンにより形成されたことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ドライエア供給系は、前記処理槽の上端に沿って、前記処理槽の一側方から他側方へドライエアを供給することにより、前記基板昇降装置により前記処理槽から引き上げられる基板にドライエア発生装置により発生されたドライエアを供給し、
前記処理槽の上端部を含む部分は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ドライエア供給系は、前記処理槽から引き上げられる基板に向かって開口するドライエア供給口を含み、
少なくとも一部が前記ドライエア供給口に対向するように配置され、基板に供給されたドライエアを排出する気体排出部をさらに備え、
前記気体排出部の前記ドライエア供給口に対向する部分は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成されたことを特徴とする請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記ドライエア供給系から基板に供給されるドライエアの供給路および前記気体排出部によるドライエアの排出路を除いて前記処理槽上の空間の周囲および上部を取り囲むように設けられる遮蔽部材をさらに備え、
前記遮断部材は、塩化ビニルのガス放出速度よりも低いガス放出速度を有しかつ塩化ビニルの吸水率よりも低い吸水率を有する材料により形成されたことを特徴とする請求項6記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−193998(P2009−193998A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30187(P2008−30187)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】