基板収容装置
【課題】先に追加された基板または基板保持部材ほど、先に取り出される基板収容装置を提供する。
【解決手段】1以上の基板100を積層した状態で収容する基板収容機構は、積層された基板100を下方から支える支持台17を備える。この支持台17は、下方から供給される基板100aにより上方向に押圧されることで、当該供給される基板100aの通過を許容する退避位置に移動する。また、この基板100aによる押圧が解除されると、支持台17は、バネの付勢力により積層された基板100bを支える支持位置に移動する。
【解決手段】1以上の基板100を積層した状態で収容する基板収容機構は、積層された基板100を下方から支える支持台17を備える。この支持台17は、下方から供給される基板100aにより上方向に押圧されることで、当該供給される基板100aの通過を許容する退避位置に移動する。また、この基板100aによる押圧が解除されると、支持台17は、バネの付勢力により積層された基板100bを支える支持位置に移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板や、基板を保持した基板保持部材(例えばパレットなど)を、収容する基板収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板に半導体素子などの部品を実装するために、基板に対して各種処理を施す装置が広く知られている。こうした装置では、使用する基板または基板を保持したパレットなどの基板保持部材を収容する基板収容機構が設けられていることが多い。例えば、特許文献1には、複数のプリント基板を積層して収容する基板収容機構が開示されている。基板の搬送装置は、この積層された基板を上から順に一枚ずつ取り出し、後段の各種装置へ基板を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−035889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした従来の基板収容機構では、この収容されている基板が少なくなると、新たな基板を、上側から追加する構成となっていた。この場合、収容機構に先に収容されていた基板の上に、後から追加された基板が積層されることになる。この場合、搬送装置は、この上側に積まれた基板(すなわち後から追加された基板)から先に取り出すことになる。かかる手順を繰り返すと、先に追加された基板は、いつまでも基板積層体の下層に位置し、取り出されることなく、長時間、放置されることになる。
【0005】
半田付け前の基板は、長時間放置されるとランド部分の酸化が進み、半田が付きにくくなるという問題があった。こうした問題を避けるために、収容機構に収容された基板が全て取り出されてから、新たな基板を追加するということも考えられる。しかし、この場合、作業者は、最後の基板が取り出されてから次の基板を取り出すまでの短い時間に、新たな基板を追加しなければならず、作業者の負担が大きかった。また、基板の追加が遅れると、後段における基板への各種処理が停滞してしまい、結果として、部品実装の効率が低下するという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明では、先に追加された基板または基板保持部材ほど、先に取り出される基板収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板収容装置は、1以上の基板または基板保持部材を積層した状態で収容する基板収容装置であって、前記積層された基板または基板保持部材を下方から支える支持部材であって、下方から供給される基板または基板保持部材により上方向に押圧されることで当該供給される基板または基板保持部材の通過を許容する退避位置に移動するとともに、当該押圧が解除されると前記積層された基板または基板保持部材を支える支持位置に移動する支持部材を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記支持部材を支持位置方向に付勢する付勢手段を備え、前記支持部材は、基板または基板保持部材により上方向に押圧された際に前記付勢手段の付勢力に抗して上方向に回動することで退避位置に移動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな基板または基板保持部材を下方から追加できるため、先に追加された基板または基板保持部材が、後から追加された基板または基板保持部材の下側になることがない。そして、その結果、先に追加された基板または基板保持部材ほど、先に取り出される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態である電子部品実装システムを構成する基板前処理装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である電子部品実装システムを構成する部品実装装置の斜視図である。
【図3】基板前処理装置の概略上面図である。
【図4】収容機構の上面図および正面図である。
【図5】他の収容機構の一例を示す図である。
【図6】搬送ヘッドの正面図および側面図である。
【図7】押出板による基板送出の様子を示す図である。
【図8】マーカヘッド周辺の正面図である。
【図9】クリーナーユニット周辺の側面図である。
【図10】ネジ締結ヘッド周辺の正面図である。
【図11】パレットの斜視図である。
【図12】上側ユニットの概略上面図である。
【図13】ディスペンス部の正面図である。
【図14】ディスペンスヘッドの正面図および上面図である。
【図15】捨打円盤の斜視図である。
【図16】マウントヘッドの側面図である。
【図17】テープ交換時にバッファ充填する場合のタイミングチャートである。
【図18】マウント作業の合間にバッファ充填する場合のタイミングチャートである。
【図19】下側ユニットの概略側面図である。
【図20】上昇部の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である電子部品実装システムを構成する基板前処理装置10の概略斜視図である。また、図2は、電子部品実装システムを構成する部品実装装置49の概略斜視図である。
【0012】
本実施形態の電子部品実装システムは、プリント基板上に、半導体素子などの電子部品を実装するためのシステムであり、基板前処理装置10および部品実装装置49の二つの装置で構成される。
【0013】
はじめに、この電子部品実装システムでの、基板100への部品実装の流れについて簡単に説明する。実装前の基板100は、通常、基板前処理装置10に設けられた基板収容部12に積層された状態で保管される。搬送ヘッド20は、この基板収容部12から必要な基板100を取り出し、搬送する。搬送された基板100の表面および裏面には、当該基板100の識別に必要なマーキングが、マーカヘッド26により施される。マーキングが施された基板100は、続いて、対向配置された一対のクリーナーユニット34により、清掃される。清掃後の基板100は、コンベアにより、コネクタセット位置に運ばれる。ネジ締結ヘッド46が、この基板100に、コネクタを螺合締結することで、基板100の前処理は完了となる。
【0014】
前処理が完了した基板100は、作業者の手作業により、部品実装装置49にセットされる。部品実装装置49において、基板100は、パレット110と呼ばれる保持具に保持された状態で搬送される。一つのパレット110には、表面を上向きにした基板100fと裏面を上向きにした基板100bとがセットされる。
【0015】
部品実装装置49は、上側ユニット50および下側ユニット80に大別される。上側ユニット50には、基板100にクリーム半田を塗布するディスペンス部51と、基板100に電子部品をマウントするマウント部67が設けられている。また、下側ユニット80には、電子部品が実装された基板100を加熱するリフロー部81が設けられている。
【0016】
基板100は、パレット110ごと、まず、上側ユニット50に投入される。ディスペンス部51に設けられたディスペンスヘッドは、制御部(図示せず)からの指示に従い、この基板100の上面に、クリーム半田を塗布する。なお、この基板100への半田塗布に先立って、ディスペンスヘッドは、捨て打ち円盤に試験的にクリーム半田を塗布する捨て打ち作業を実行する。また、ディスペンスヘッドは、基板100に付されたマーカーを読み取ることで、当該基板100の種類、ひいては、クリーム半田の塗布箇所などを特定している。
【0017】
クリーム半田が塗布された基板100の上面には、続いて、マウント部67に設けられたマウントヘッドにより、電子部品がマウントされていく。マウント部67には、この電子部品を一列に並べて保持するキャリアテープ71を、順次、送り出すテープ送出機構72が設けられている。マウントヘッドは、このテープ送出機構72により送出されたキャリアテープ71から電子部品を取り出し、基板上にマウントしていく。キャリアテープ71から電子部品が全て取り出されると、作業者は、当該キャリアテープ71をテープ送出機構72から取り出し、代わりに、新たなキャリアテープ71をセットする。マウント部67には、このキャリアテープ71の交換の間に使用すべき電子部品がセットされたバッファ部も設けられている。マウントヘッドは、処理の進行状況に応じて、キャリアテープ71またはバッファ部から電子部品を取り出し、基板上にマウントしていく。
【0018】
電子部品がマウントされた基板100は、下降部84に設けられた下降機構により下側ユニット80へと搬送される。下側ユニット80に搬送された基板100は、当該下側ユニット80に設けられたコンベアにより、一方向に搬送される。この下側ユニット80における基板100の搬送経路上には、基板100を加熱して、当該基板100に塗布されたクリーム半田を溶融するリフロー炉が複数設けられている。この複数のリフロー炉を通過した基板100は、上昇部85へと出力される。
【0019】
上昇部85において、表面および裏面の両方への部品実装が完了した基板100は、完成基板100cとして取り出され、表面への部品実装のみが完了した基板は、上昇部85に設けられた上昇機構により上側ユニット50に再度搬送され、裏面への部品実装が施される。
【0020】
なお、上述した基板前処理装置10および部品実装装置49は、共通の一つの制御部により制御されてもよいし、それぞれが別個の制御部を有し、この二つの制御部をさらに、上位の制御部で制御するようにしてもよい。いずれにしても、基板前処理装置10および部品実装装置49が、連動して制御されることが望ましい。
【0021】
以上が、電子部品実装システムにおける電子部品実装の流れである。以下では、この電子部品実装システムの各部について詳説していく。
【0022】
[基板前処理装置の概要]
まず、基板前処理装置10の概略構成について図3を参照して説明する。図3は、基板前処理装置10の概略上面図である。なお、この図において、搬送ヘッド20、マーカヘッド26f,26b(以下、特に区別しない場合はアルファベット添字を省略する。他部材も同じ)、ネジ締結ヘッド46に付された矢印および丸は、それぞれ、各ヘッド20,26,46の可動方向を示している。したがって、本実施形態において、搬送ヘッド20およびネジ締結ヘッド46は、X方向、Y方向、Z方向の三方向に移動可能であり、マーカヘッド26はX方向、Z方向にのみ移動可能となっている。
【0023】
既述したとおり、この基板前処理装置10は、電子部品を実装する前の基板100に対して、マーキングやクリーニング、コネクタ締結といった前処理を施す装置である。基板収容部12には、二つの収容機構がX方向に並んで設置されている。各収容機構には、同一種類の基板100が、積層されて収容されている。
【0024】
ここで、本実施形態で取り扱う基板100は、略長方形の一辺から、より小さい長方形が突出した、漢字の「凸」のような形状をしている。この基板100の一隅には、コネクタを締結するネジの通過を許容する締結孔102が二つ形成されている。また、基板100には、表面および裏面が存在し、その両面に部品が実装可能となっている。
【0025】
搬送ヘッド20は、基板収容部12から、基板100を一枚ずつ取り出し搬送するヘッドである。この搬送ヘッド20は、X方向に並んだ二つの吸引パッドで基板100を吸引保持した状態で移動し、当該基板100を、Y方向に延びるレール31上に載置する。レール31の近傍には、ペン先が下向きになるように設置された表用マーカヘッド26f、および、ペン先が上向きになるように設置された裏用マーカヘッド26bが設けられている。表用マーカヘッド26fは基板100の表面に、裏用マーカヘッド26bは基板100の裏面に、それぞれ、基板100の種類判別用のマーキングを施す。なお、後に詳説するように、各マーカヘッドは、X方向およびZ方向にのみ移動可能となっており、当該マーカヘッド26と基板100とのY方向の相対位置関係は、搬送ヘッド20での基板100のY方向搬送量により調整される。
【0026】
マーキングが施された基板100は、コンベア43によりY方向下流側へと搬送される。この搬送経路上には、上下に対向配置された一対のクリーナーユニット34が設けられている。各クリーナーユニット34には、基板100の表面または裏面に付着した粉塵を掃き上げるブラシと、当該ブラシにより掃き上げられた粉塵を吸引し、収集するバキューム機構と、が設けられている。なお、本実施形態では、このブラシとコンベアを、同一の駆動源で駆動しているが、これについても後述する。
【0027】
コンベア43よりY方向下流側には、コネクタセット部47が設けられている。このコネクタセット部47は、基板100に締結すべきコネクタが収容される凹部である。作業者は、二つのネジ穴が形成されたコネクタを、当該ネジ穴が上向きになるような姿勢で、コネクタセット部47に順次セットする。コンベア43は、このコネクタセット部47に収容されたコネクタのネジ穴と、基板100に形成された締結孔102と、が略一致する位置まで基板100を搬送する。ネジ締結ヘッド46は、コネクタのネジ穴と基板100の締結孔102が略一致すれば、締結ネジを締結孔102およびネジ穴に差し込み、コネクタを基板100の裏面に螺合締結する。
【0028】
以上、説明したような各部は、いずれも、同一の制御部(図示せず)により制御されている。制御部は、上位制御装置またはユーザからの指示に基づいて、前処理が必要な基板100の種類を特定し、当該基板の種類に応じた駆動量を、搬送ヘッド20やマーカヘッド26に指示する。また、クリーナーユニット34や、コンベア43、ネジ締結ヘッド46の駆動も指示する。
【0029】
[基板収容部]
図4は、収容機構の上面図および正面図である。部品実装前の基板100は、四本のフレーム13で構成される収容空間14に、積層された状態で収容される。搬送ヘッド20は、この積層して収容された基板100を、上側から順に一枚ずつ取り出す。
【0030】
ここで、従来の装置にも、こうした基板の収容機構が設けられていたが、従来の収容機構では、後から追加された基板が、先に追加された基板より先に取り出されるという問題があった。
【0031】
すなわち、従来の収容機構でも、積層収容した基板を上側から一枚ずつ取り出すが、従来の収容機構では、この収容されている基板が少なくとなると、新たな基板を、上側から追加する構成となっていた。この場合、収容機構に先に追加された基板の上に、後から追加された基板が積層されることになる。この場合、搬送ヘッドは、この上側に積まれた基板(すなわち後から追加された基板)から先に取り出すことになる。かかる手順を繰り返すと、先に追加された基板は、いつまでも基板積層体の下層に位置し、取り出されることなく、長時間、放置されることになる。
【0032】
半田付け前の基板は、長時間放置されるとランド部分の酸化が進み、半田が付きにくくなるという問題があった。こうした問題を避けるために、収容機構に収容された基板が全て取り出されてから、新たな基板を追加するということも考えられる。しかし、この場合、作業者は、最後の基板が取り出されてから次の基板を取り出すまでの短い時間に、新たな基板を追加しなければならず、作業者の負担が大きかった。また、基板の追加が遅れると、後段における基板への各種処理が停滞してしまい、結果として、部品実装の効率が低下するという問題もあった。
【0033】
本実施形態では、こうした問題を避けるために、基板100の収容機構を、下側から新たな基板100を追加できるようにし、これにより、先に追加された基板100が、先に取り出されるような構成としている。より具体的に説明すると、本実施形態の収容機構は、収容空間14を構成する四本のフレーム13と、収容空間14内に突出するように設けられた支持台17と、を備えている。
【0034】
各フレーム13は、断面略L字状の上側部分13uと、略平板状の下側部分13dと、から構成されている。そのため、収容空間14は、断面略L字状のフレーム上側部分13uにより四コーナーが規定される上側空間14uと、略平板状のフレーム下側部分13dにより両サイドが規定された下側空間14dと、に大別される。上側空間14uにおいては、基板100のXY方向への移動は規制され、Z方向(上下方向)への移動のみが許容されることになる。一方、下側空間14dにおいては、略平板状のフレーム下側部分13dにより両サイドのみが規定されているため、基板100は、Z方向だけでなくY方向にも移動可能となっている。その結果、下側空間14dの正面から、下側空間14d内に基板100を差し入れることが出来るようになっている。
【0035】
上側空間14uの両サイド付近には、一対の支持台17が、当該上側空間14u内に突出した形で設けられている。この支持台17は、積層された基板100b(図4(b)参照)の幅方向両端を下側から支持する台である。積層された基板100bは、この支持台17の上に載置されることにより、落下することなく上側空間14u内に留まる。
【0036】
この支持台17は、フレーム13に取り付けられたL字状のアングル15に、バネ付蝶番16を介して取り付けられている。そして、このバネ付蝶番16の可動性により、支持台17は、積層された基板100bを支える支持位置(図4(b)において実線で図示した位置)と、下側空間14dから上側空間14uへの基板100aの通過を許容する退避位置(図4(b)において破線で図示した位置)と、に移動可能となっている。
【0037】
バネ付蝶番16は、支持台17を支持位置方向に付勢するバネを有しており、このバネの付勢力により、通常(すなわち、支持台17が下方から力を受けていない場合)、支持台17は支持位置に位置する。一方、支持台17に対して下から上向きの力が加えられると、支持台17は、バネの付勢力に抗して、上方(上側空間14uの外側方向)へと回動し、退避位置へと移動する。
【0038】
以上のような構成の収容機構において、基板100を追加する際の流れについて説明する。部品実装前の基板100bは、積層された状態で、支持台17で支えられ、上側空間14u内に収容されている。この上側空間14u内に、新たに基板100aを追加したい場合、作業者は、新たな基板100aを、下側空間14dに正面から差し入れる。
【0039】
そして、この新たな基板100aを、既に収容されている基板100bの下側まで移動させれば、続いて、この新たな基板100aを上方向へと移動させる。この移動の過程で、新たな基板100aは、支持台17の底面に当接し、当該支持台17を上向きに押圧することになる。かかる上向きの力を受けた支持台17は、バネ付蝶番16の付勢力に抗して上方向(外側方向)に回動し、新たな基板100aの上方向への移動を阻害しない退避位置へと移動する。支持台17が退避位置まで移動したとき、それまで支持台17で支持されていた既存の基板100bは、支持台17から落ちて、新たに追加された基板100aの上に載ることになる。換言すれば、後から追加された基板100aの上に、先に追加された基板100bが積まれた積層体が形成されることになる。作業者は、この新たに形成された積層体を、支持台17より上側へと移動させる。積層体が支持台17より上側に移動し、当該支持台17を上向きに押す力が解除されると、支持台17は、バネ付蝶番16の付勢力により、支持位置へと戻る。
【0040】
このとき、上側空間14uには、先に追加された基板100bが上側に、後から追加された基板100aが下側になった状態で基板が積層されて収容されていることになる。この状態で、積層された基板100を上から順に一枚ずつ取り出せば、先に追加された基板100bが先に取り出されることになる。そして、これにより、基板100が長時間放置されることがなくなり、部品実装を良好に行うことが可能となる。また、基板100の残存数に関係なく、新たな基板100を追加することができるため、作業者にとって都合のよいタイミングで基板追加が可能となり、作業者の負担を軽減できる。
【0041】
なお、本実施形態では、バネ付蝶番16を用いて支持台17を可動にしているが、下方から供給される基板100aにより上方向に押圧されることで当該基板100aの通過を許容する退避位置に移動し、当該押圧が解除されると積層された基板100を支えることができるのであれば、他の構成であってもよい。
【0042】
例えば、図5に示すように、支持台17の底面にテーパを施すとともに、当該支持台17を上側空間14uの内側方向に付勢する圧縮コイルバネ16a、および、当該支持台17の水平方向への進退をガイドするレール16bを設けてもよい。かかる構成の場合、下方から供給される基板100aにより、支持台17が上方向に押圧されると、支持台17は、圧縮コイルバネ16aの付勢力に抗して、外側方向に移動する。その結果、新たに追加された基板100aの上方向への移動が許容されることになる。そして、この新たに追加された基板100aが、支持台17より上側に到達すると、支持台17は、圧縮コイルバネ16aの付勢力により、積層された基板100を下側から支持する支持位置へと戻る。
【0043】
[搬送ヘッド]
次に、搬送ヘッド20について詳説する。図6は、搬送ヘッド20の正面図、および側面図である。搬送ヘッド20は、収容機構に積層されて収容された基板100を一枚ずつ取り出して搬送するものである。この搬送ヘッド20は、X方向に並んだ二つの吸引パッド23を有しており、各吸引パッド23は、ノズルを介して、圧力ポンプ(図示せず)に接続されている。制御部は、この圧力ポンプの駆動を制御することで、搬送ヘッド20による基板100の保持、および、保持解除を制御する。また、二つの吸引パッド23は、X方向に長尺な平板状のフレーム22に取り付けられている。そして、この搬送ヘッド20は、XYZ方向に可動となっている。このヘッドの移送構成は、種々の公知技術を用いて構成できるため、ここでの詳説は省略する。いずれにしても、吸引パッド23で基板100を吸引保持した状態で、搬送ヘッド20をXYZ方向に駆動することで、基板100が搬送されることになる。
【0044】
吸引パッド23とフレーム22の間には圧力センサ(図示せず)が設けられており、当該圧力センサでの検出値に基づいて吸引パッド23の高さが制御される。すなわち、本実施形態では、基板100を取り出す際には、吸引パッド23を、積層された基板100の上面に向けて徐々に下降させる。下降の結果、吸引パッド23が基板100の上面に当接すると、当該当接圧力が圧力センサにより検知されることになる。かかる当接圧が検知されれば、制御部は、吸引パッド23が基板100の上面まで下降したと判断し、当該吸引パッド23による基板100の吸引保持を開始する。
【0045】
搬送ヘッド20のフレーム22には、断面略L字状の押出板24が、Y方向に突出して取り付けられている。この押出板24は、搬送ヘッド20により搬送され、レール31(図3参照)上に載置された基板100の端部をY方向に押すことで、当該基板100をY方向へと移送させる部材である。かかる押出板24を設けることにより、基板のY方向の移送範囲を広げることが可能となる。これについて図7を参照して説明する。
【0046】
搬送ヘッド20のストロークの関係上、吸引パッド23が、Y方向に関しては、図7において二点鎖線で図示したY方向限界位置L1までしか移動できないとする。この場合、吸引パッド23で基板100を吸引保持して搬送するだけでは、基板100は、図7の上段に図示した位置までしか搬送できないことになる。
【0047】
この移送範囲を広げるためには、搬送ヘッド20のストロークを広げることが考えられる。しかし、搬送ヘッド20のストロークを広げるためには、搬送ヘッド20を駆動する駆動源の出力を大幅に増大させたり、搬送ヘッド20を支える各種部材の剛性を向上させる必要があり、装置の大型化、コスト増加という問題を招く。
【0048】
そこで、本実施形態では、搬送ヘッド20のストロークを広げることなく、基板100の搬送範囲を広げるために、吸引パッド23で基板100を吸引保持して搬送した後に、既述の押出板24で基板100の端部をY方向に押すようにしている。すなわち、制御部は、吸引パッド23で基板100を吸引保持した状態で搬送ヘッド20を駆動し、当該基板100をレール上に載置する。その後、搬送ヘッド20に設けられた押出板24で、基板の端部をY方向に押せば、図7の下段に示すように、基板100をさらにY方向奥側へと移送することができる。すなわち、基板100を保持して搬送した後、当該搬送した基板100の端部を押して当該基板100を送出する構成とすることで、搬送ヘッド20のストロークを広げることなく、換言すれば、コストやサイズの増加を招くことなく、基板100の搬送範囲を大幅に広げることができる。
【0049】
[マーカヘッド]
次に、マーカヘッド26について詳説する。図8は、マーカヘッド26の周辺の正面図である。マーカヘッド26は、基板100の表面または裏面に、当該基板100を識別するためのマークを付与するためのものである。後段のディスペンスヘッドやマウントヘッドは、この基板100に付与されたマークに基づいて、基板100の種類を特定し、この特定された基板種類に基づいて、半田の塗布位置やマウントすべき部品種類などを特定する。
【0050】
本実施形態では、基板100の表面にマーキングを施す表用マーカヘッド26fと、基板100の裏面にマーキングを施す裏用マーカヘッド26bと、を設けている。この二つのマーカヘッド26は、その設置位置やペン先の向きなどが異なるものの、基本的な構成は同じである。
【0051】
この二つのマーカヘッド26は、基板100が載置されるレール31の両側において待機している。ここで、レール31は、基板100の両サイドを支持する部材である。本実施形態では、Y方向に長尺な二本のレール31を、基板100の幅より若干小さい間隔を開けてX方向に配設している。
【0052】
各マーカヘッド26は、XZ方向に可動となっており、アングル28、および、当該アングル28により保持されたマーキングペン29を備えている。アングル28は、マーキングペン29を着脱自在に保持する金具である。作業者は、取り付けられたマーキングペン29のインクが切れた場合には、当該アングル28からマーキングペン29を取り外し、新たなマーキングペン29を取り付ける。
【0053】
マーキングペン29は、実際に基板100上にマークを付与するマーカ部材として機能するものである。このマーキングペン29は、基板100にマークを付与できるのであれば、その種類は特に限定されず、例えば、市販の油性フェルトペンなどを用いることができる。
【0054】
マーカヘッド26の待機位置には、当該マーカヘッド26に取り付けられたマーキングペン29のペン先29aを覆う蓋体30が固定設置されている。蓋体30は、マーキングペン29のペン先29aが挿入でき得る穴が形成されたブロック部材である。この穴内部にペン先29aが収容されることで、ペン先29aの乾燥が防止される。
【0055】
ここで、既述したように、本実施形態では、マーカヘッド26をXZの二方向にのみ可動としている。これは、Y方向移動に関与する駆動源や伝達機構を省略し、これにより、サイズ低減やコスト低減を図るためである。
【0056】
一方で、XZ方向にしか移動できない場合、マーカヘッド26を駆動するだけでは、マーキングペン29と基板100とのY方向の相対位置関係を調整できず、結果として、所望の位置にマーキングが施せない恐れがある。そこで、本実施形態では、かかる問題を避けるために、マーキングペン29と基板100とのY方向の相対位置は、搬送ヘッド20による基板100のY方向搬送量で調整するようにしている。すなわち、本実施形態では、マーキングペン29と基板100とのY方向の相対位置が所望の関係になる位置まで、搬送ヘッド20で基板100を搬送するようにしている。搬送ヘッド20により、Y方向の相対位置関係が所望の状態になれば、マーカヘッド26は、所望のX方向位置まで移動し、基板100の表面または裏面にマーキングを施す。なお、マーキング処理が完了すれば、マーカヘッド26は、取り付けられたマーキングペン29のペン先29aが、蓋体30に設けられた穴に挿入される待機位置に移動し、待機する。
【0057】
[クリーナ機構およびコンベア]
次に、クリーナーユニット34およびコンベア43について図3、図9を参照して説明する。図9は、クリーナーユニット34およびコンベア43の概略構成を示す図である。
【0058】
コンベア43は、マーキングが施された基板100を、Y方向下流側(図3において図面右側)に搬送する部材で、X方向に並んだ二本のコンベアベルト42を有している。各コンベアベルト42は、図9に示すように、複数のコンベアローラ41a,41b,41c,41dに張架され、適度なテンションを保った状態で循環回転する。このコンベアベルト42の循環回転により、当該コンベアベルト42の上面に載置された基板100が、Y方向下流側へと搬送されることになる。なお、コンベア43で構成される搬送路の上側には、基板100の浮き上がりを防止する従動ローラ45が複数設けられている。
【0059】
また、コンベア43により形成される搬送経路途中には、基板100の表面および裏面から粉塵を除去するクリーナーユニット34が設けられている。このクリーナーユニット34は、図9に示すように、搬送経路を挟んで上下に対向配置された一対のクリーナブラシ35u,35dを備えている。この二つのクリーナブラシ35は、いずれも、基板100の搬送方向と同一方向に回転し、基板の表面および裏面に付着した粉塵を吐き出す。このように、クリーナブラシ35の回転方向を、基板搬送方向と同方向とすることで、基板100の搬送性を向上させることができ、より確実に基板100を搬送することができる。
【0060】
各クリーナブラシ35の周囲には、当該クリーナブラシ35を覆う、略箱状のカバー体36が設けられている。そして、このカバー体36には、クリーナブラシ35により掃き上げられた粉塵を吸引する吸引パイプ37が連結されている。
【0061】
ここで、本実施形態では、コンベア43を駆動して基板100を搬送させつつ、クリーナブラシ35を回転駆動させて粉塵を掃き上げている。換言すれば、コンベア43の駆動タイミングと、クリーナブラシ35の駆動タイミングは、ほぼ同じとなっている。本実施形態では、コスト低減、サイズ低減などのために、この同じタイミングで駆動するクリーナブラシ35およびコンベア43の駆動源を共通化し、単一のモータ44で駆動するようにしている。
【0062】
これについて図9を参照して詳説する。本実施形態において、モータ44の出力軸には、コンベアローラ41aと、ブラシ駆動用の第一プーリ39aが連結されており、これらコンベアローラ41aおよび第一プーリ39aが、モータ44の駆動に連動して回転するようになっている。コンベアローラ41aには、既述のコンベアベルト42が張架されており、コンベアローラ41aの回転、ひいては、モータ44の駆動に伴い、コンベアベルト42が循環回転するようになっている。
【0063】
ブラシ駆動用の第一プーリ39aには、タイミングベルト40が張架されており、このタイミングベルト40の他端は、第二プーリ39bに張架されている。第二プーリ39bは、下側クリーナブラシ35dの回転軸に連結されており、第二プーリ39bの回転に伴い下側クリーナブラシ35dが回転するようになっている。また、この下側クリーナブラシ35dの回転軸には、第一ギア38dも連結されている。この第一ギア38dと歯合する第二ギア38uは、上側クリーナブラシ35uの回転軸に連結されており、第一ギア38dの回転が、第二ギア38uを介して上側クリーナブラシ35uにも伝達されるようになっている。
【0064】
このように、一つの駆動源(モータ44)で、コンベア43および上下のクリーナブラシ35を駆動する構成とすることにより、部品点数を低減でき、結果としてサイズやコストを低減できる。
【0065】
[ネジ締結ヘッド]
次に、ネジ締結ヘッド46について図3、図10を参照して説明する。図10は、ネジ締結ヘッド46周辺の正面図である。ネジ締結ヘッド46は、基板100の裏面にコネクタ104を螺合締結するためのヘッドである。このネジ締結ヘッド46は、XYZ方向に移動可能となっており、制御部の指示に応じて駆動する。また、ネジ締結ヘッド46には、先端に設けられたガイド筒46aと、当該ガイド筒46aの上側に設けられたドライバ筒46b、ガイド筒46aの上端近傍に角度をもって接続されたネジ供給筒46cと、を備えている。ドライバ筒46bには、ネジを回転させるドライバが収容されている。このドライバは、適宜、ガイド筒46aの先端から突出する位置まで下降してネジの頭部に係合し、その状態で回転することでネジ締めを行う。ネジ供給筒46cには、螺合締結に用いられるネジが収容されている。この収容されているネジは、適宜、ガイド筒46aへと供給され、ガイド筒46aに供給されたネジは、当該ガイド筒46aに従って、落下し、ガイド筒46aの真下に位置するネジ穴や締結孔へと差し込まれる。
【0066】
このネジ締結ヘッドによるネジ締結作業は、コネクタセット部47の上側において行われる。コネクタセット部47は、基板100に締結すべきコネクタ104を収容する部位で、当該コネクタ104に対応した形状の凹部が設けられている。この凹部は、搬送されてきた基板100の下側に位置している。作業者は、ネジ穴105が上向きになるような姿勢で、コネクタ104を、この凹部(コネクタセット部47)にセットする。また、コンベア43は、このセットされたコネクタ104のネジ穴105と、基板100に形成された締結孔102とか重複する位置まで、基板100を搬送する。
【0067】
基板100が、規定の位置まで搬送され、コネクタ104のネジ穴105と基板100の締結孔102とが重なれば、制御部はネジ締結ヘッド46を駆動し、ガイド筒46aを締結孔102の真上まで移動させ、ガイド筒46aの先端を基板100の上面に近接または接触させる。その状態になれば、ネジ供給筒46cから締結用のネジが供給される。供給されたネジは、ガイド筒46aに案内されつつ落下し、締結孔102およびネジ穴105へと落ち込む。この状態になれば、ドライバ筒46bからドライバを下降させて、ネジの頭部にドライバを係合させ、その状態でドライバを回転させる。これにより、基板100の裏面にコネクタ104が螺合締結されることになる。そして、このコネクタ104の螺合締結が完了すれば、基板100の前処理は完了となる。前処理が完了した基板100は、作業者の手により、実装装置49へと供給される。
【0068】
以上が、前処理装置10の具体的構成である。以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、基板供給機能、マーキング機能、クリーニング機能、コネクタ締結機能が、全て一つの前処理装置10に搭載されている。そのため、各機能を別個の独立した装置としていた従来技術に比して、設置スペースを大幅に低減できる。
【0069】
[パレット]
次に、実装装置49について説明する。この実装装置49の各部について説明する前に、まず、当該実装装置49に供給される基板100の状態について説明する。本実施形態において、基板100は、パレット110と呼ばれる保持具に保持された状態で、実装装置に供給される。図11はパレット110の概略斜視図である。パレット110には、基板100を収容保持するための収容凹部114が二つ、線対象に並んで形成されている。各収容凹部114は、基板100の外形に対応した形状をしている。また、この収容凹部114の中央には貫通穴112が形成されており、当該収容凹部114に収容された基板100は、その周縁のみが支持されることになる。別の見方をすれば、この収容凹部114に収容された基板100の上面の全面および底面の大部分は、外部に露出した状態になる。
【0070】
本実施形態では、図12に示すように、この二つの収容凹部114のうち、奥側(図12における右側)に位置する収容凹部には、表面への部品実装が完了した基板100bが、その裏面が上向きになるように収容される。この二つの収容凹部のうち、手前側に位置する収容凹部には、前処理装置10から出力され、表面裏面のいずれにも部品実装がなされていない基板100fが、その表面が上向きになるように収容される。
【0071】
表面が上向きの基板100fおよび裏面が上向きの基板100bは、パレット110に収容された状態で、実装装置49の上側ユニット50に投入される。上側ユニット50に設けられたディスペンスヘッド52やマウントヘッド68は、各基板100の上向きになっている面に対して半田塗布や部品のマウントを施す。つまり、パレット110が一回、上側ユニットを通過する過程で、一つの基板100fの表面、および、他の基板100bの裏面に対して、半田塗布や部品のマウントが施される。その後、この二つの基板100は、下側ユニット80に供給され、リフロー炉による加熱を受ける。下側ユニット80から出力された二つの基板100のうち、裏面が上向きになっている基板100bは、表面および裏面の両方への部品実装が完了した完成基板100cとして取り出され、出力される。一方、表面が上向きになっていた基板100fは、表面の部品実装のみが完成した半完成基板となる。この半完成基板(表面の部品実装のみが終了した基板)は、表裏反転した形(裏面が上向きになる形)でパレット110に再セットされる。また、このパレット110には、前処理装置10から出力され、表面裏面のいずれにも部品実装が施されていない新規の基板100もセットされる。そして、この二つの基板100を搭載したパレット110が、再び、上側ユニット50、下側ユニット80へと投入される。
【0072】
以上の説明で明らかなとおり、本実施形態によれば、パレット110が上側ユニット50および下側ユニット80を1回通過する過程で、一つの基板100fの表面への部品実装および他の基板100bの裏面への部品実装の両方が実行される。そして、1回の通過の過程で、一つの完成基板100cと、一つの半完成基板が得られる。完成基板100cは随時取り出され、この完成基板100cに変えて、表裏面いずれにも部品実装が成されていない新規の基板100が随時、部品実装工程に投入される。また、半完成基板も、即座に、次の部品実装工程に投入される。つまり、本実施形態によれば、片面への部品実装が終わった段階で基板100が放置される、といったことがなく、各基板100が効率的に部品実装工程に投入されることになる。換言すれば、本実施形態に寄れば、中間在庫を無くすことができ、効率的な処理が可能となる。
【0073】
[上側ユニットの概要]
次に、上側ユニット50の概要について図12を参照して説明する。図12は、上側ユニット50の概略上面図である。既述したとおり、本実施形態の部品実装装置は、上側ユニット50と、当該上側ユニット50の下側に設けられた下側ユニット80の二段構成となっている。かかる二段構成とすることで、装置のサイズを低減することができる。
【0074】
上側ユニット50には、基板上面(上向きになっている面)に、クリーム半田を塗布するディスペンス部51と、電子部品をマウントするマウント部67と、が設けられている。基板100を収容したパレット110は、このディスペンス部51およびマウント部67を縦断するコンベア65により搬送される。コンベア65により、最下流まで搬送されたパレット110は、上側ユニット50の下流端に接続された下降部84により、下側ユニット80へと搬送される。また、上側ユニット50の上流端には、上昇部85が接続されている。この上昇部85は、下側ユニット80から出力されたパレット110を上側ユニット50まで上昇して搬送する。この上昇部85により搬送されたパレット110が、上側ユニット50に再投入される。
【0075】
[ディスペンス部]
次に、ディスペンス部51について図12〜図15を参照して説明する。図13はディスペンス部の正面図であり、図14はディスペンスヘッド52の正面図および上面図である。また、図15は捨打円盤61の概略斜視図である。
【0076】
ディスペンス部51は、パレット110により搬送される基板100の上面にクリーム半田を塗布するための部位である。このディスペンス部51には、実際にクリーム半田を塗布するディスペンスヘッド52や、試験的な半田塗布(捨て打ち)を受け付ける捨打円盤61や、パレット110(基板100)を搬送方向下流側に搬送するコンベア65などが設けられている。
【0077】
コンベア65や捨打円盤61は、同じ支持プレート60上に設置されている。この支持プレート60は、図示しない駆動源(例えばモータなど)の駆動に応じて、Y軸方向に延びるY軸レール56Yに沿って移動する。支持プレート60がY軸方向に移動することで、当該支持プレート60に載置されたコンベア65、ひいては、当該コンベア65上に載置された基板100の、ディスペンスヘッド52に対するY軸方向位置が調整される。別の言い方をすれば、本実施形態では、ディスペンスヘッド52をY軸方向に移動させるのではなく、基板100をY軸方向に移動させることで、両者のY軸方向の相対位置関係を調整している。
【0078】
かかる構成としたのは次の理由による。基板100の上側に設けられたディスペンスヘッド52をY軸方向に移動させるためには、当該ディスペンスヘッド52に接続されたY軸レールを、ディスペンスヘッド52と同じ程度の高さ位置に設ける必要がある。このようなディスペンスヘッド52と同じ程度の高さに、Y軸レールを設けた場合、(ディスペンスヘッド52に接続された)Y軸レールが、マウントヘッド68をY軸方向に駆動するためのY軸レール77Y(図16参照)と干渉する恐れが出てくる。この干渉を避けるためには、ディスペンス部51とマウント部67とのY軸方向の間隔を広げなければならないが、その場合、実装装置49全体のサイズ増加という問題を招く。本実施形態では、こうした問題を避けるために、ディスペンスヘッド52に接続されたY軸レールは設けず、基板100をY軸方向に移動させるY軸レール56Yを上側ユニット50の床面近傍に設けている。かかる構成とすることにより、Y軸レール同士の干渉を防止でき、ひいては、実装装置49のY軸方向サイズを低減することができる。
【0079】
[ディスペンスヘッド]
ディスペンスヘッド52は、実際に基板100の上面にクリーム半田を塗布するヘッドである。このディスペンスヘッド52には、第一塗布器54、第二塗布器55、撮影機構53、測距センサ59(図14(b)参照)が設けられている。第一塗布器54、第二塗布器55は、いずれも、基板にクリーム半田を塗布する機器である。このうち、第一塗布器54は、シリンジに貯留されたクリーム半田をエア圧で押出塗布するエアディスペンス構成となっている。第二塗布器55はシリンジに貯留されたクリーム半田をスクリューで押出塗布するスクリューディスペンス構成となっている。エアディスペンスである第一塗布器54は、比較的、大きい形状での半田塗布が可能となっている。また、スクリューディスペンスである第二塗布器55は、比較的微細な形状での半田塗布が可能となっている。なお、各シリンジには、収容されているクリーム半田の粘度を適正に保つためのペルチェなどを利用した温調器が搭載されている。
【0080】
ここで、従来の装置では、半田は、メタル版を用いて印刷塗布されることが多かった。すなわち、従来、半田の塗布形状に応じた穴が形成されたメタル版を基板上に配置し、その上から半田を塗布(印刷)することが多かった。また、コネクタ、スイッチ、コンデンサなどのリード部品は、後付部品として、他の部品の半田付けが完了した後に再度、半田付けされることが多かった。
【0081】
一方、本実施形態では、塗布器54,55を用いて、半田を塗布している。特に、微細な形状での半田塗布が可能な第二塗布器55によれば、メタル版を用いて印刷した場合と同様な微細な半田形状を得ることができる。そのため、メタル版を適宜、段替えする必要がなく、実装装置を簡略化することができる。また、基板上にメタル版を載置する印刷処理の場合、コネクタのような突出物を事前に基板に締結することはできず、半田塗布の後にコネクタを締結しなければならない。一方、本実施形態によれば、基板100上にメタル版を載置する必要はないため、事前にコネクタ104などの突出部品を基板に締結することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、比較的、大きい塗布形状が得られる第一塗布器54でリード部品に線引き塗布を行っている。そのため、後付半田を廃止することができ、工程をより簡略化できる。
【0083】
撮影機構53は、基板100や捨打円盤61の上面を撮影するための機構で、垂直下向きの光軸を有したカメラ53aと、当該カメラ53aの真下に設けられたリング照明53bと、を備えている。リング照明53bは、カメラ53aの画角から外れた位置において、光源(例えばLEDなど)を環状に配置したものであり、撮影対象物を照明する。
【0084】
カメラ53aは、基板100や捨打円盤61に塗布された半田などを撮影する。制御部は、撮影で得られた基板100の画像に基づいて基板100の正確な位置を取得し、この得られた位置に基づいて、ディスペンスヘッド52と基板100との相対位置を微調整する。また、制御部は、基板100の撮影画像に基づいて、基板100の上に付されたマーカを特定し、このマーカに基づいて基板種類の判定も行う。そして、判定された基板種類に応じて、後に行う半田の塗布位置などを決定する。さらに、制御部は、捨打円盤61に塗布された半田の画像に基づいて塗布器54,55による半田の塗布量を取得し、得られた塗布量に基づいて、各塗布器54,55における半田の塗布圧を調整する。
【0085】
測距センサ59は、非接触で、半田の塗布面(基板100の上面または捨打円盤61の上面)までの距離を測定するセンサである。制御部は、この測距センサ59での検出値に基づいて、塗布器54,55のZ軸方向の駆動量を制御する。
【0086】
ここで、ディスペンスヘッド52を構成する各部のうち、撮影機構53および測距センサ59は、X軸方向にのみ移動可能であり、第一、第二塗布器54,55は、XZ軸方向に移動可能となっている。すなわち、撮影機構53、測距センサ59、および、Z軸レール56Zは、第一フレーム57aを介して、X軸レール56Xに接続されており、当該X軸レール56Xに沿って移動可能となっている。また、Z軸レール56Zには、第二フレーム57bを介して第一、第二塗布器54,55が連結されている。したがって、第一、第二塗布器54,55は、Z軸レール56Zに沿って昇降可能となっている。また、第一塗布器54と第二フレーム57bとの間には、さらに、Z軸方向に昇降可能なエアシリンダ58(図14(b)参照)も設けられている。したがって、第一塗布器54だけは、Z軸レール56Zに沿った昇降と、エアシリンダ58によるZ軸方向の昇降という二段階の昇降が可能となっている。別の言い方をすれば、第一塗布器54は、第二塗布器55に対する相対高さが可変となっている。そのため、第二塗布器55により半田塗布が成されている間、第一塗布器54は、第二塗布器55の先端より高い退避位置において待機することができる。また、第一塗布器54による半田塗布が必要な間は、第二塗布器55の先端より低い塗布位置にまで下降することができ、第二塗布器55と基板100との干渉を生じさせることなく、第一塗布器54による半田塗布が可能となる。
【0087】
[捨打円盤]
次に、捨打円盤61について、図13、図15を参照して説明する。捨打円盤61は、コンベア65の脇、基板100の搬送を阻害しない位置に設けられた円盤である。本実施形態では、この捨打円盤61の上面に、試験的な半田塗布、いわゆる捨て打ちを行う。
【0088】
すなわち、通常、半田を基板100に塗布する場合には、その塗布圧(塗布量)が適正か否かを判断するために、基板100への塗布に先立って、別な場所に、試験的に半田を塗布する捨て打ちを行う。制御部は、この捨て打ちにより塗布された半田の形状に基づいて、塗布圧(塗布量)が適正か否かを判断し、塗布圧を制御する。ここで、従来、こうした捨て打ちは、使い捨てのテープ上に行われることが多かった。すなわち、長尺なテープは、供給ロールから引き出され、巻取ロールに巻き取られる。この供給ロールと巻取ロールの間に設けられた捨打部において、テープへの捨て打ちが行われる。捨て打ちが行われるたびに、テープは、巻取ロールに巻き取られ、テープのうち新規な箇所が捨打部に位置させられる。そして、全てのテープが巻取ロールに巻き取られれば、このテープは廃棄され、新たなテープに交換される仕組みとなっていた。かかる使い捨てのテープを使用する従来の構成では、テープの分だけコストがかり、また、使い捨てという環境への負荷があった。
【0089】
そこで、本実施形態では、テープに代えて、捨打円盤61に捨て打ちを行うようにしている。捨打円盤61は、上面に接合材料(半田)が試験的に塗布される被塗布部材として機能するものであり、モータ63の駆動により回転軸を中心として回転可能な円盤である。
【0090】
この捨打円盤61の上側には、クリーナ部材62が設けられている。クリーナ部材62は、その底面62aが、捨打円盤61の上面の一部に密着した状態で設置された部材である。このクリーナ部材62の底面62aには、塗布された半田の拭き取りに適した材料、例えば、繊維素材などが配されている。また、クリーナ部材62は、捨打円盤61の上面に密着するべく、図示しない付勢部材(バネなど)により、捨打円盤61に近づく方向に付勢されている。そして、捨打円盤61の回転に伴いクリーナ部材62と捨打円盤61とが相対移動すると、このクリーナ部材62の底面62aが捨打円盤61の上面に試験的に塗布された半田を拭き取り、捨打円盤61の上面から半田を除去する。
【0091】
こうした構成の捨打円盤に捨て打ち作業を行う場合には、まず、捨打円盤61のうち、露出している箇所に、ディスペンスヘッド52により半田を試験的に塗布(捨て打ち)する。塗布された半田は、ディスペンスヘッド52に設けられたカメラ53aにより撮影される。制御部は撮影により得られた画像に基づいて、塗布圧の適否を判断する。また、制御部は、試験的な塗布が完了すれば、モータ63を駆動して、捨打円盤61を360度回転、すなわち、一回転させる。この回転の際、塗布された半田は、クリーナ部材62aにより拭き取られ、除去される。その結果、捨打円盤61の上面は、再度の半田塗布が可能なクリーンな状態となり、再度、捨て打ちを行うことが可能となる。換言すれば、本実施形態によれば、半田が塗布される部材である捨打円盤61を繰り返し使用できる。そのため、従来のようにテープを使い捨てるという無駄を無くすことができる。
【0092】
なお、本実施形態では、半田が試験的に塗布される被塗布部材を円盤状としているが、繰り返し使用できるものであれば、円盤に限らず、他の形状であってもよい。例えば、Y方向に進退する板状部材であってもよい。この場合でも、板状部材の上面に密着するクリーナ部材を設けておき、捨て打ちのたびに板状部材を進退させることで、塗布された半田を除去するようにしてもよい。また、本実施形態では、被塗布部材(捨打円盤)を移動させているが、被塗布部材ではなく、クリーナ部材を移動させて、半田を拭き取るようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、捨て打ちのたびに、捨打円盤を360度回転させている。これは、捨打円盤61のうち、同じ位置に、半田塗布(捨て打ち)できるようにするためである。このように、同じ箇所に半田塗布するのは、塗布面(捨打円盤61の上面)の高さが変わることを防止するためである。すなわち、捨打円盤61を厳密に水平に保つことは難しい。そのため、回転角度によって、捨打円盤61の上面高さが微妙に異なる。この上面高さの違いが、塗布圧の厳密な判断に影響を与える恐れがある。そこで、本実施形態では、捨て打ちのたびに、捨打円盤を360度回転させ、塗布面の高さが常に同じになるようにしている。なお、当然ながら、捨打円盤61を厳密に水平に設置したり、捨て打ちのたびに上面高さを測定したりなどするのであれば、360度未満で回転させてもよい。
【0094】
[マウント部概要]
次に、マウント部67について図12、図16を参照して説明する。図16は、マウント部67に設けられたマウントヘッド68の側面図である。
【0095】
マウント部67は、搬送されてきた基板100の上面に、半導体素子などの電子部品をマウントする部位である。このマウント部67には、マウントヘッド68や、テープ送出機構72、バッファ部73、部品撮影機構69、ヘッド交換機構70などが設けられている。
【0096】
マウントヘッド68は、電子部品を保持して搬送し、基板100にマウントするヘッドである。このマウントヘッド68の構成については後に詳説するが、当該マウントヘッド68は、XYZ方向に移動可能であり、部品を吸引保持する吸引ヘッド74はZ軸周りに回転可能となっている。
【0097】
テープ送出機構72は、電子部品を保持したキャリアテープ71を順次、送り出す機構である。一つのキャリアテープ71には、同じ種類の電子部品が、一列に間隔を開けて配置されている。テープ送出機構72は、マウントヘッド68により電子部品が取り出されるたびに、このキャリアテープ71を送り出し、マウントヘッド68による取り出しが可能な取り出し位置に、新たな電子部品が位置するようにしている。ここで、本実施形態では、一つの基板100に多種類の部品を配置するため、テープ送出機構72も多数、用意する必要がある。かかる多数のテープ送出機構72を一列に並べると、一方向に長尺な構成となり、装置の大型化を招く。また、一方向に長尺に並べると、その分、テープから部品を取り出すマウントヘッド68のストロークも一方向に長尺にする必要がある。しかし、ストロークを過度に大きくすると、その分、モータの出力や支持部材の剛性向上などが必要になり、装置の更なる大型化、コストの増加という問題を招く。そこで、本実施形態では、多数のテープ送出機構72の一部をX方向に並べ、残りのテープ送出機構72をY方向に並べて配置している。別の見方をすると、本実施形態では、テープ送出機構72の一部を、マウントヘッド68の駆動範囲E(図12参照)の一辺に沿って配置し、残りのテープ送出機構72を駆動範囲Eの他の辺に沿って配置している。かかる構成とすることで、テープの配置範囲が一方向に長尺になることが防止される。そして、これにより、マウントヘッド68のストロークを一方向にのみ大きくする必要がなく、結果として、コストやサイズの増加を防止できる。
【0098】
バッファ部73は、電子部品を一時的に保持する部位であるが、これについては、後に詳説する。ヘッド交換機構70は、マウントヘッド68に設けられた吸引ヘッド74の先端に設けられた吸引ノズル75を交換するための機構である。すなわち、後述するように、マウントヘッド68には、部品を吸引保持する吸引ヘッド74が設けられている。この吸引ヘッド74の先端に設けられた吸引ノズル75の形状は、保持する部品の形状やサイズに応じて適宜、交換されることが望ましい。そこで、本実施形態では、交換用の吸引ノズル75を複数、用意しておき、適宜、吸引ノズル75を交換できるようにしている。
【0099】
部品撮影機構69は、吸引ヘッド74により吸引保持された部品を撮影する機構である。部品撮影機構69には、吸引ヘッド74により保持された部品を照らすための環状の照明と、垂直上向きの光軸を備えたカメラと、が設けられている。キャリアテープ71またはバッファ部73から部品を取り出し、当該部品を吸引保持した吸引ヘッド74は、マウント動作に先立って、この部品撮影機構69の真上に移動する。部品撮影機構69のカメラは、この吸引ヘッド74に保持されている部品を撮影する。
【0100】
制御部は、この部品撮影機構69により撮影された画像に基づいて、吸引保持された部品の水平面内での回転角度を算出し、この算出結果に基づいて、部品の水平面内での角度が適正になるように、吸引ヘッド74をZ軸周りに回転させる。これにより、適正な角度で部品をマウントすることが可能となる。
【0101】
[マウントヘッド]
次に、マウントヘッド68について、図16を参照して詳説する。マウントヘッド68は、キャリアテープ71またはバッファ部73から部品を取り出し、基板100にマウントするものである。このマウントヘッド68には、吸引ヘッド74および撮影機構78が設けられている。
【0102】
撮影機構78は、基板100の上面を撮影するための機構で、垂直下向きの光軸を有したカメラ78aと、当該カメラ78aの真下に設けられたリング照明78bと、を備えている。制御部は、この撮影機構78で撮影された基板100の画像に基づいて、基板の正確な位置や、基板100に付されたマーカを特定する。そして、特定された基板位置に基づいて吸引ヘッド74と基板100との相対位置を微調整する。また、得られたマーカに基づいて、基板種類の判定を行い、判定された基板種類に応じて、部品のマウント位置などを決定する。
【0103】
吸引ヘッド74は、部品を吸引保持するためのヘッドで、その先端には吸引ノズル75が取り付けられている。この吸引ノズル75は、図示しないポンプに接続されており、当該ポンプの駆動に応じて部品を吸引保持したり吸引解除したりする。この吸引ノズル75は、既述したとおり、保持すべき部品の形状に応じて交換自在となっている。
【0104】
この吸引ノズル75および撮影機構78は、互いに連動して、Y軸レール77YおよびX軸レール77Xに沿って移動可能となっている。さらに、吸引ヘッド74は、シリンダ76の駆動に応じてZ軸方向に移動自在(昇降自在)であり、また、Z軸周りに回転自在にもなっている。
【0105】
[バッファ部]
次にバッファ部73について詳説する。既述したとおり、マウント部67には、マウントすべき部品を一時的に収容したバッファ部73が設けられている(図12参照)。このバッファ部73に収容された部品は、空になったキャリアテープ71を交換している間に利用される。
【0106】
すなわち、既述したとおり、キャリアテープ71には、同じ種類の電子部品が一列に間隔を開けて多数配置されている。マウントヘッド68は、このキャリアテープ71から部品を一つずつ取り出し、基板100に配置する。テープ送出機構72は、部品が取り出されるたびに、キャリアテープ71を送り出し、マウントヘッド68による取り出しが可能な取り出し位置に、新たな電子部品を位置させている。
【0107】
このキャリアテープ71から全ての部品が取り出され、キャリアテープ71が空になれば、作業者は、テープ送出機構72から空になったキャリアテープ71を取り外し、代わりに、新たなキャリアテープ71をセットするテープ交換をする必要がある。当然ながら、このテープ交換の間、マウントヘッド68は、キャリアテープ71から部品を取り出すことはできない。そのため、バッファ部73を設けていなかった従来の実装装置では、このテープ交換の間は、部品のマウント作業ができず、ひいては、処理効率が下がるという問題があった。
【0108】
こうした問題を避けるために、本実施形態では、少なくとも、このテープ交換に要する時間の間に必要となる数の電子部品を保持するバッファ部73を設けている。そして、テープ交換の間は、このバッファ部73から部品を取り出し、基板100にマウントするようにしている。これにより、テープ交換の時間もマウント作業を継続することができ、処理効率を向上できる。
【0109】
なお、本実施形態では、このバッファ部73において部品を保持するために、使用済みキャリアテープ71を用いている。すなわち、部品が全て取り出された後のキャリアテープ71は、通常、廃棄される。しかし、このキャリアテープ71には、部品保持のために、部品の外形に応じた凹部が形成されている。かかる凹部が形成されたキャリアテープ71を、バッファ部73に配置し、当該凹部にバッファ用の部品を配置することで、部品をより安定して保持することができる。また、廃棄されるキャリアテープ71を有効活用することで、新たな部品保持用の部品を製造する必要がなく、コストを低減することができる。
【0110】
ところで、このバッファ部73への部品のセットは、手動で行ってもよいし、マウントヘッドにより自動で行ってもよい。手動で行う場合には、例えば、生産開始時に予めキャリアテープ71からバッファ部73に、必要な数だけ、部品を移し変える。
【0111】
また、別の形態として、実装装置49の起動時およびキャリアテープ71の交換完了時に、バッファ部73における部品の不足数を検知し、自動的に(マウントヘッドによって)、その不足数だけキャリアテープ71からバッファ部73に供給するようにしてもよい。
【0112】
図17は、この場合におけるタイミングチャートである。図17の一段目はキャリアテープ71から部品を取り出してマウント作業をするタイミングを、二段目はテープ交換を行っているタイミングを、三段目はマウントヘッド68でキャリアテープ71からバッファ部73に部品を補充するバッファ充填のタイミングを、四段目はバッファ部73から部品を取り出してマウント作業をするタイミングをそれぞれ示している。なお、この図17では、見易さのために、各時間の比率を、実際とは変えており、実際には、通常マウントの時間はより長く、バッファ充填の時間はより短い。
【0113】
時刻T1に実装装置49を起動した際、制御部は、バッファ部73における部品の不足数を検知する。ここで、不足数とは、テープ交換に要する時間の間に必要となる電子部品の数から、バッファ部73に配置された部品数を引いた数である。
【0114】
部品の不足があると判断された場合、バッファ充填作業(図17の三段目)が行われる。すなわち、制御部は、マウントヘッド68を駆動して、キャリアテープ71から不足数分の部品を、バッファ部73に供給させる。当然のことながらこの間、マウント作業は行われない。
【0115】
時刻T2において、バッファ部73への部品充填が完了すれば、通常のマウント作業(図17の一段目)が行われる。すなわち、マウントヘッド68が、キャリアテープ71から部品を取り出し、基板100にマウントする動作が行われる。
【0116】
時刻T3の時点で、キャリアテープ71が空になると、作業者は、キャリアテープ71の交換を行う(図17の二段目)。一方、制御部は、バッファ部73からの部品取り出しをマウントヘッド68に指示する。この指示を受けて、マウントヘッド68は、バッファ部73から部品を取り出してマウント作業を行う(図17の四段目)。ここで、バッファ部73には、テープ交換に要する時間の間に必要となる数だけ部品が配置されているため、テープ交換が完了する時刻T4まで、継続してマウント作業を行うことができる。
【0117】
時刻T4において、テープ交換が完了すれば、制御部は、マウントヘッド68に対して、キャリアテープ71からの部品取り出しを指示する。この指示を受けて、マウントヘッド68は、キャリアテープ71から部品を取り出しマウントする通常のマウント作業を再開する(図17の一段目)。
【0118】
その後、時刻T5において、再び、テープが空になれば、作業者はテープ交換を開始する(図17の二段目)。このとき、バッファ部73の部品は、前回テープ交換の際に用いられて無くなっているため、今回のテープ交換時には利用することはできない。したがって、この時刻T5から、後述するバッファ補充が完了する時刻T7までは、マウント作業は、中断されることになる。
【0119】
時刻T6において、テープ交換が完了すれば、制御部は、バッファ部73における部品の不足数を検知するとともに、当該不足数だけの補充をマウントヘッド68に指示する。この指示を受けて、マウントヘッド68は、キャリアテープ71から部品を取り出し、バッファ部73に配置するバッファ補充(図17の三段目)を行う。
【0120】
そして、時刻T7においてバッファ充填が完了すれば、再び、キャリアテープ71から部品を取り出し、基板にマウントする通常のマウント作業を開始する(図17の一段目)。そして、以降も、同様の作業を繰り返す。
【0121】
以上の説明から明らかなとおり、この形態によれば、テープ交換のたびに、マウント作業を中断する必要がないため、従来に比して、効率的に装置の稼働率を向上させることができる。なお、この形態によれば、キャリアテープ71を二つ使いきるたびに、テープ交換に要する時間およびバッファ充填に要する時間分だけ、マウント作業を中断しなければならない。しかし、バッファ充填に要する時間は、テープ交換に要する時間に比して、十分に小さい。そのため、テープ交換のたびに、テープ交換に要する時間分だけマウント作業を中断していた従来技術に比して、この形態におけるマウント中断の合計時間は十分小さくなる。また、ここでは、一回のテープ交換の時間に必要となる数の部品数をバッファ部73に配置する場合を例示しているが、より多数の部品をバッファ部73に待機させておいてもよい。かかる構成とすることで、テープ交換に起因する装置のマウントの中断時間をより短くすることができ、装置の稼働率をより向上させることができる。
【0122】
また、この形態では、テープ交換完了時にバッファ充填する形態としたが、通常マウントの間にバッファ充填を行ってもよい。これについて図18を用いて説明する。
【0123】
図18は、通常マウントの間にバッファ充填を行う場合のタイミングチャートである。図18の一段目はキャリアテープ71から部品を取り出してマウント作業をするタイミングを、二段目はテープ交換を行っているタイミングを、三段目はマウントヘッド68でキャリアテープ71からバッファ部73に部品を供給するタイミングを、四段目はバッファ部73から部品を取り出してマウント作業をするタイミングをそれぞれ示している。
【0124】
図17では、通常マウント作業の間、マウント作業が休み無く行われているかのように図示したが、実際には、マウント完了した基板100をマウント部67から出力した後、新たな基板100がマウント部67に送られるまでの間など、マウント作業ができない時間が度々、生じる。その結果、図18の一段目に示すように、キャリアテープ71から部品を取り出してマウントする通常マウント作業には微小な中断時間Tkが、繰り返し発生する。
【0125】
この微小な中断時間Tkの間に、キャリアテープ71から部品を取り出し、バッファ部73に部品充填を行うバッファ充填を行うようにしてもよい。この場合、制御部は、中断時間Tkが発生するたびに、バッファ部73において部品が不足しているか否かを判断する。そして、部品が不足していると判断された場合には、マウントヘッド68を駆動して、キャリアテープ71から部品を取り出し、バッファ部73に補充する(図18の三段目)。
【0126】
その後、キャリアテープ71が空になり、テープ交換が開始されれば、このバッファ部73から部品を取り出し、基板100にマウントする。テープ交換が完了すれば、再び、キャリアテープ71から部品を取り出す、通常マウントを行う。
【0127】
このように、通常マウント作業中に生じる、微小な中断時間Tkにバッファ充填を行うようにすれば、テープ交換のためにマウント作業を中断させる必要がなく、装置の稼働率をより向上できる。
【0128】
[下側ユニット(リフロー部)]
次に、下側ユニット80について図19を参照して説明する。図19は、下側ユニット80の概略側面図である。下側ユニット80には、基板を加熱して、半田を溶融するリフロー部81が設けられている。このリフロー部81には、基板100(パレット110)を搬送するコンベア83と、三組、合計六個のリフロー炉82が設けられている。
【0129】
上側ユニット50のマウント部67から出力された基板100は、下降部84に設けられた下降機構により、下側ユニット80と同じ高さまで運ばれ、このリフロー部81に投入される。リフロー部81に投入された基板100は、コンベア83により、下流側へと搬送される。ここで、下側ユニット80と上側ユニット50では、搬送方向が逆転している。すなわち、上側ユニット50では、図12に示すように、上昇部85側から下降部84側へと基板が搬送されるのに対し、下側ユニット80では、下降部84側から上昇部85側へと搬送される。
【0130】
リフロー炉82は、基板100を加熱するヒータや、当該ヒータからの熱を送るファンなどからなるユニットである。この本実施形態では、コンベア83を挟んで上下に対向配置させたリフロー炉82を三組、合計六個設けている。このリフロー炉82の間を搬送される過程で、基板100に塗布された半田が溶融され、基板100に部品が半田付けされる。リフロー炉82から出力された基板100は、上昇部に設けられた上昇機構により、運ばれる。そして、この上昇機構による搬送の過程で冷却されることで、半田が固着し、部品が基板100に固着される。
【0131】
[下降部および上昇部]
次に、下降部84および上昇部85について詳説する。既述したとおり、下降部84は、上側ユニット50から出力された基板100(パレット110)を下側ユニット80に搬送する機構であり、上昇部85は、下側ユニット80から出力された基板100(パレット110)を上側ユニット50に搬送する機構である。
【0132】
下降部84は、例えば、パレット110が載置されるテーブルと、当該テーブルにモータの回転を直線運動に変換して伝達する伝達機構(例えばリードスクリュー、ギアおよびチェーンなど)、および、駆動源となるモータなどで構成される。こうした下降機構は、種々の公知技術を用いて構成できるため、ここでの詳説は省略する。
【0133】
次に、上昇部85について詳説する。図20は、上昇部85の概略正面図(図12における概略A方向視図)である。
【0134】
この上昇部85には、基板100をパレット110ごと上昇させる上昇機構86と、上昇されたパレット110を収容する収容機構94と、パレット110から完成基板100cを取り出す取出機構96と、が設けられている。上昇機構86は、下側ユニット80から出力されたパレット110を下方から押し上げる上昇アーム92を備えている。この上昇アーム92の両端は、垂直方向に立脚するガイドシャフト93に挿通されており、上昇アーム92は、当該ガイドシャフト93に沿って垂直方向にのみ移動するようになっている。また、駆動源であるモータ88の出力軸には、ギア90が連結されており、このギア90の回転は、チェーン91を介して、直線運動に変換されて上昇アーム92に伝達されるようになっている。そして、モータ88の駆動に応じて、上昇アーム92が上昇することで、下側ユニット80から出力されたパレット110が押し上げられ、収容機構94へと搬送されることになる。
【0135】
取出機構96は、この上昇アーム92によるパレット110の上昇に先立って、完成基板100cを取り出す機構である。この取出機構96には、基板100を吸引する吸引ヘッド97が設けられている。そして、基板100を吸引保持した状態で、この吸引ヘッド97が移動することで、完成基板100cがパレット110から取り出され、搬送される。この吸引ヘッド97は、ロータリーアクチュエータ98R、Z軸ロボ98Z、X軸ロボ98Xにより、Z軸周りの回転、Z軸に沿った昇降、X軸に沿った移動が可能となっている。
【0136】
この吸引ヘッド97による完成基板100cの取り出しについて簡単に説明する。下側ユニット80からパレット110が出力されると、吸引ヘッド97は、このパレット110に保持された完成基板100cの真上位置まで移動し、当該完成基板100cを吸引保持する。そして、完成基板100cを吸引保持した状態で、吸引ヘッド97が僅かに上昇することで、完成基板100cがパレット110から離脱する。その後、吸引ヘッド97は、Z軸周りに回転し、パレット110の真上から離れる。続いて、吸引ヘッド97は、完成基板100cを載置する完成品レール99より僅かに高い位置まで上昇する。そして、X軸方向に移動し、完成品レール99の真上位置まで移動すれば、吸引ヘッド97による吸引を解除し、完成品レール99の上に完成基板100cを載置する。
【0137】
この取出機構96の動きにより、上昇機構86により上側ユニット50へと搬送されるパレット110には、片面にのみ部品実装が施された半完成の基板100のみが残ることになる。この半完成の基板100が一枚だけ残ったパレット110は、新たな未完成基板100が追加セットされた上で、再度、上側ユニット50に投入されることになる。
【0138】
ここで、このパレット110の上側ユニット50への再投入の順番は、前処理装置10における基板100の投入順番と同じく、先に追加されたパレット110ほど先に投入されることが望まれる。そこで、この実装装置49の上昇部85にも、前処理装置10における収容機構(図4参照)と同様の収容機構94を設けている。
【0139】
すなわち、図20に示すように、上昇機構86によるパレット110の搬送経路(上昇経路)上には、積層されたパレット110を下方から支える支持板95を設けている。この支持板95は、バネ付蝶番により回動自在となっており、下方から供給されるパレット110で上方向に押圧されることで、当該供給されるパレット110の通過を許容する退避位置に移動する。また、パレット110による押圧が解除されると、この支持板95は、バネ付蝶番に設けられたバネの付勢力により、積層されたパレット110を支える支持位置に戻るようになっている。
【0140】
かかる支持板95を設けることにより、下側ユニット80から先に出力されたパレット110ほど、上側に積層され、ひいては、先に、上側ユニット50に投入されることになる。これにより、一つの基板100が長時間放置されることがなくなり、基板100の劣化等が防止される。
【符号の説明】
【0141】
10 基板前処理装置、12 基板収容部、14 収容空間、16 バネ付蝶番、17 支持台、20 搬送ヘッド、24 押出板、26 マーカヘッド、29 マーキングペン、34 クリーナーユニット、35 クリーナブラシ、43 コンベア、46 ネジ締結ヘッド、47 コネクタセット部、49 部品実装装置、50 上側ユニット、51 ディスペンス部、52 ディスペンスヘッド、53,78 撮影機構、54,55 塗布器、58 エアシリンダ、59 測距センサ、61 捨打円盤、62 クリーナ部材、67 マウント部、68 マウントヘッド、69 部品撮影機構、70 ヘッド交換機構、71 キャリアテープ、72 テープ送出機構、73 バッファ部、74 吸引ヘッド、75 吸引ノズル、80 下側ユニット、82 リフロー炉、84 下降部、85 上昇部、86 上昇機構、92 上昇アーム、94 収容機構、95 支持板、96 取出機構、97 吸引ヘッド、100 基板、104 コネクタ、110 パレット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板や、基板を保持した基板保持部材(例えばパレットなど)を、収容する基板収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板に半導体素子などの部品を実装するために、基板に対して各種処理を施す装置が広く知られている。こうした装置では、使用する基板または基板を保持したパレットなどの基板保持部材を収容する基板収容機構が設けられていることが多い。例えば、特許文献1には、複数のプリント基板を積層して収容する基板収容機構が開示されている。基板の搬送装置は、この積層された基板を上から順に一枚ずつ取り出し、後段の各種装置へ基板を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−035889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした従来の基板収容機構では、この収容されている基板が少なくなると、新たな基板を、上側から追加する構成となっていた。この場合、収容機構に先に収容されていた基板の上に、後から追加された基板が積層されることになる。この場合、搬送装置は、この上側に積まれた基板(すなわち後から追加された基板)から先に取り出すことになる。かかる手順を繰り返すと、先に追加された基板は、いつまでも基板積層体の下層に位置し、取り出されることなく、長時間、放置されることになる。
【0005】
半田付け前の基板は、長時間放置されるとランド部分の酸化が進み、半田が付きにくくなるという問題があった。こうした問題を避けるために、収容機構に収容された基板が全て取り出されてから、新たな基板を追加するということも考えられる。しかし、この場合、作業者は、最後の基板が取り出されてから次の基板を取り出すまでの短い時間に、新たな基板を追加しなければならず、作業者の負担が大きかった。また、基板の追加が遅れると、後段における基板への各種処理が停滞してしまい、結果として、部品実装の効率が低下するという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明では、先に追加された基板または基板保持部材ほど、先に取り出される基板収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板収容装置は、1以上の基板または基板保持部材を積層した状態で収容する基板収容装置であって、前記積層された基板または基板保持部材を下方から支える支持部材であって、下方から供給される基板または基板保持部材により上方向に押圧されることで当該供給される基板または基板保持部材の通過を許容する退避位置に移動するとともに、当該押圧が解除されると前記積層された基板または基板保持部材を支える支持位置に移動する支持部材を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記支持部材を支持位置方向に付勢する付勢手段を備え、前記支持部材は、基板または基板保持部材により上方向に押圧された際に前記付勢手段の付勢力に抗して上方向に回動することで退避位置に移動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな基板または基板保持部材を下方から追加できるため、先に追加された基板または基板保持部材が、後から追加された基板または基板保持部材の下側になることがない。そして、その結果、先に追加された基板または基板保持部材ほど、先に取り出される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態である電子部品実装システムを構成する基板前処理装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である電子部品実装システムを構成する部品実装装置の斜視図である。
【図3】基板前処理装置の概略上面図である。
【図4】収容機構の上面図および正面図である。
【図5】他の収容機構の一例を示す図である。
【図6】搬送ヘッドの正面図および側面図である。
【図7】押出板による基板送出の様子を示す図である。
【図8】マーカヘッド周辺の正面図である。
【図9】クリーナーユニット周辺の側面図である。
【図10】ネジ締結ヘッド周辺の正面図である。
【図11】パレットの斜視図である。
【図12】上側ユニットの概略上面図である。
【図13】ディスペンス部の正面図である。
【図14】ディスペンスヘッドの正面図および上面図である。
【図15】捨打円盤の斜視図である。
【図16】マウントヘッドの側面図である。
【図17】テープ交換時にバッファ充填する場合のタイミングチャートである。
【図18】マウント作業の合間にバッファ充填する場合のタイミングチャートである。
【図19】下側ユニットの概略側面図である。
【図20】上昇部の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である電子部品実装システムを構成する基板前処理装置10の概略斜視図である。また、図2は、電子部品実装システムを構成する部品実装装置49の概略斜視図である。
【0012】
本実施形態の電子部品実装システムは、プリント基板上に、半導体素子などの電子部品を実装するためのシステムであり、基板前処理装置10および部品実装装置49の二つの装置で構成される。
【0013】
はじめに、この電子部品実装システムでの、基板100への部品実装の流れについて簡単に説明する。実装前の基板100は、通常、基板前処理装置10に設けられた基板収容部12に積層された状態で保管される。搬送ヘッド20は、この基板収容部12から必要な基板100を取り出し、搬送する。搬送された基板100の表面および裏面には、当該基板100の識別に必要なマーキングが、マーカヘッド26により施される。マーキングが施された基板100は、続いて、対向配置された一対のクリーナーユニット34により、清掃される。清掃後の基板100は、コンベアにより、コネクタセット位置に運ばれる。ネジ締結ヘッド46が、この基板100に、コネクタを螺合締結することで、基板100の前処理は完了となる。
【0014】
前処理が完了した基板100は、作業者の手作業により、部品実装装置49にセットされる。部品実装装置49において、基板100は、パレット110と呼ばれる保持具に保持された状態で搬送される。一つのパレット110には、表面を上向きにした基板100fと裏面を上向きにした基板100bとがセットされる。
【0015】
部品実装装置49は、上側ユニット50および下側ユニット80に大別される。上側ユニット50には、基板100にクリーム半田を塗布するディスペンス部51と、基板100に電子部品をマウントするマウント部67が設けられている。また、下側ユニット80には、電子部品が実装された基板100を加熱するリフロー部81が設けられている。
【0016】
基板100は、パレット110ごと、まず、上側ユニット50に投入される。ディスペンス部51に設けられたディスペンスヘッドは、制御部(図示せず)からの指示に従い、この基板100の上面に、クリーム半田を塗布する。なお、この基板100への半田塗布に先立って、ディスペンスヘッドは、捨て打ち円盤に試験的にクリーム半田を塗布する捨て打ち作業を実行する。また、ディスペンスヘッドは、基板100に付されたマーカーを読み取ることで、当該基板100の種類、ひいては、クリーム半田の塗布箇所などを特定している。
【0017】
クリーム半田が塗布された基板100の上面には、続いて、マウント部67に設けられたマウントヘッドにより、電子部品がマウントされていく。マウント部67には、この電子部品を一列に並べて保持するキャリアテープ71を、順次、送り出すテープ送出機構72が設けられている。マウントヘッドは、このテープ送出機構72により送出されたキャリアテープ71から電子部品を取り出し、基板上にマウントしていく。キャリアテープ71から電子部品が全て取り出されると、作業者は、当該キャリアテープ71をテープ送出機構72から取り出し、代わりに、新たなキャリアテープ71をセットする。マウント部67には、このキャリアテープ71の交換の間に使用すべき電子部品がセットされたバッファ部も設けられている。マウントヘッドは、処理の進行状況に応じて、キャリアテープ71またはバッファ部から電子部品を取り出し、基板上にマウントしていく。
【0018】
電子部品がマウントされた基板100は、下降部84に設けられた下降機構により下側ユニット80へと搬送される。下側ユニット80に搬送された基板100は、当該下側ユニット80に設けられたコンベアにより、一方向に搬送される。この下側ユニット80における基板100の搬送経路上には、基板100を加熱して、当該基板100に塗布されたクリーム半田を溶融するリフロー炉が複数設けられている。この複数のリフロー炉を通過した基板100は、上昇部85へと出力される。
【0019】
上昇部85において、表面および裏面の両方への部品実装が完了した基板100は、完成基板100cとして取り出され、表面への部品実装のみが完了した基板は、上昇部85に設けられた上昇機構により上側ユニット50に再度搬送され、裏面への部品実装が施される。
【0020】
なお、上述した基板前処理装置10および部品実装装置49は、共通の一つの制御部により制御されてもよいし、それぞれが別個の制御部を有し、この二つの制御部をさらに、上位の制御部で制御するようにしてもよい。いずれにしても、基板前処理装置10および部品実装装置49が、連動して制御されることが望ましい。
【0021】
以上が、電子部品実装システムにおける電子部品実装の流れである。以下では、この電子部品実装システムの各部について詳説していく。
【0022】
[基板前処理装置の概要]
まず、基板前処理装置10の概略構成について図3を参照して説明する。図3は、基板前処理装置10の概略上面図である。なお、この図において、搬送ヘッド20、マーカヘッド26f,26b(以下、特に区別しない場合はアルファベット添字を省略する。他部材も同じ)、ネジ締結ヘッド46に付された矢印および丸は、それぞれ、各ヘッド20,26,46の可動方向を示している。したがって、本実施形態において、搬送ヘッド20およびネジ締結ヘッド46は、X方向、Y方向、Z方向の三方向に移動可能であり、マーカヘッド26はX方向、Z方向にのみ移動可能となっている。
【0023】
既述したとおり、この基板前処理装置10は、電子部品を実装する前の基板100に対して、マーキングやクリーニング、コネクタ締結といった前処理を施す装置である。基板収容部12には、二つの収容機構がX方向に並んで設置されている。各収容機構には、同一種類の基板100が、積層されて収容されている。
【0024】
ここで、本実施形態で取り扱う基板100は、略長方形の一辺から、より小さい長方形が突出した、漢字の「凸」のような形状をしている。この基板100の一隅には、コネクタを締結するネジの通過を許容する締結孔102が二つ形成されている。また、基板100には、表面および裏面が存在し、その両面に部品が実装可能となっている。
【0025】
搬送ヘッド20は、基板収容部12から、基板100を一枚ずつ取り出し搬送するヘッドである。この搬送ヘッド20は、X方向に並んだ二つの吸引パッドで基板100を吸引保持した状態で移動し、当該基板100を、Y方向に延びるレール31上に載置する。レール31の近傍には、ペン先が下向きになるように設置された表用マーカヘッド26f、および、ペン先が上向きになるように設置された裏用マーカヘッド26bが設けられている。表用マーカヘッド26fは基板100の表面に、裏用マーカヘッド26bは基板100の裏面に、それぞれ、基板100の種類判別用のマーキングを施す。なお、後に詳説するように、各マーカヘッドは、X方向およびZ方向にのみ移動可能となっており、当該マーカヘッド26と基板100とのY方向の相対位置関係は、搬送ヘッド20での基板100のY方向搬送量により調整される。
【0026】
マーキングが施された基板100は、コンベア43によりY方向下流側へと搬送される。この搬送経路上には、上下に対向配置された一対のクリーナーユニット34が設けられている。各クリーナーユニット34には、基板100の表面または裏面に付着した粉塵を掃き上げるブラシと、当該ブラシにより掃き上げられた粉塵を吸引し、収集するバキューム機構と、が設けられている。なお、本実施形態では、このブラシとコンベアを、同一の駆動源で駆動しているが、これについても後述する。
【0027】
コンベア43よりY方向下流側には、コネクタセット部47が設けられている。このコネクタセット部47は、基板100に締結すべきコネクタが収容される凹部である。作業者は、二つのネジ穴が形成されたコネクタを、当該ネジ穴が上向きになるような姿勢で、コネクタセット部47に順次セットする。コンベア43は、このコネクタセット部47に収容されたコネクタのネジ穴と、基板100に形成された締結孔102と、が略一致する位置まで基板100を搬送する。ネジ締結ヘッド46は、コネクタのネジ穴と基板100の締結孔102が略一致すれば、締結ネジを締結孔102およびネジ穴に差し込み、コネクタを基板100の裏面に螺合締結する。
【0028】
以上、説明したような各部は、いずれも、同一の制御部(図示せず)により制御されている。制御部は、上位制御装置またはユーザからの指示に基づいて、前処理が必要な基板100の種類を特定し、当該基板の種類に応じた駆動量を、搬送ヘッド20やマーカヘッド26に指示する。また、クリーナーユニット34や、コンベア43、ネジ締結ヘッド46の駆動も指示する。
【0029】
[基板収容部]
図4は、収容機構の上面図および正面図である。部品実装前の基板100は、四本のフレーム13で構成される収容空間14に、積層された状態で収容される。搬送ヘッド20は、この積層して収容された基板100を、上側から順に一枚ずつ取り出す。
【0030】
ここで、従来の装置にも、こうした基板の収容機構が設けられていたが、従来の収容機構では、後から追加された基板が、先に追加された基板より先に取り出されるという問題があった。
【0031】
すなわち、従来の収容機構でも、積層収容した基板を上側から一枚ずつ取り出すが、従来の収容機構では、この収容されている基板が少なくとなると、新たな基板を、上側から追加する構成となっていた。この場合、収容機構に先に追加された基板の上に、後から追加された基板が積層されることになる。この場合、搬送ヘッドは、この上側に積まれた基板(すなわち後から追加された基板)から先に取り出すことになる。かかる手順を繰り返すと、先に追加された基板は、いつまでも基板積層体の下層に位置し、取り出されることなく、長時間、放置されることになる。
【0032】
半田付け前の基板は、長時間放置されるとランド部分の酸化が進み、半田が付きにくくなるという問題があった。こうした問題を避けるために、収容機構に収容された基板が全て取り出されてから、新たな基板を追加するということも考えられる。しかし、この場合、作業者は、最後の基板が取り出されてから次の基板を取り出すまでの短い時間に、新たな基板を追加しなければならず、作業者の負担が大きかった。また、基板の追加が遅れると、後段における基板への各種処理が停滞してしまい、結果として、部品実装の効率が低下するという問題もあった。
【0033】
本実施形態では、こうした問題を避けるために、基板100の収容機構を、下側から新たな基板100を追加できるようにし、これにより、先に追加された基板100が、先に取り出されるような構成としている。より具体的に説明すると、本実施形態の収容機構は、収容空間14を構成する四本のフレーム13と、収容空間14内に突出するように設けられた支持台17と、を備えている。
【0034】
各フレーム13は、断面略L字状の上側部分13uと、略平板状の下側部分13dと、から構成されている。そのため、収容空間14は、断面略L字状のフレーム上側部分13uにより四コーナーが規定される上側空間14uと、略平板状のフレーム下側部分13dにより両サイドが規定された下側空間14dと、に大別される。上側空間14uにおいては、基板100のXY方向への移動は規制され、Z方向(上下方向)への移動のみが許容されることになる。一方、下側空間14dにおいては、略平板状のフレーム下側部分13dにより両サイドのみが規定されているため、基板100は、Z方向だけでなくY方向にも移動可能となっている。その結果、下側空間14dの正面から、下側空間14d内に基板100を差し入れることが出来るようになっている。
【0035】
上側空間14uの両サイド付近には、一対の支持台17が、当該上側空間14u内に突出した形で設けられている。この支持台17は、積層された基板100b(図4(b)参照)の幅方向両端を下側から支持する台である。積層された基板100bは、この支持台17の上に載置されることにより、落下することなく上側空間14u内に留まる。
【0036】
この支持台17は、フレーム13に取り付けられたL字状のアングル15に、バネ付蝶番16を介して取り付けられている。そして、このバネ付蝶番16の可動性により、支持台17は、積層された基板100bを支える支持位置(図4(b)において実線で図示した位置)と、下側空間14dから上側空間14uへの基板100aの通過を許容する退避位置(図4(b)において破線で図示した位置)と、に移動可能となっている。
【0037】
バネ付蝶番16は、支持台17を支持位置方向に付勢するバネを有しており、このバネの付勢力により、通常(すなわち、支持台17が下方から力を受けていない場合)、支持台17は支持位置に位置する。一方、支持台17に対して下から上向きの力が加えられると、支持台17は、バネの付勢力に抗して、上方(上側空間14uの外側方向)へと回動し、退避位置へと移動する。
【0038】
以上のような構成の収容機構において、基板100を追加する際の流れについて説明する。部品実装前の基板100bは、積層された状態で、支持台17で支えられ、上側空間14u内に収容されている。この上側空間14u内に、新たに基板100aを追加したい場合、作業者は、新たな基板100aを、下側空間14dに正面から差し入れる。
【0039】
そして、この新たな基板100aを、既に収容されている基板100bの下側まで移動させれば、続いて、この新たな基板100aを上方向へと移動させる。この移動の過程で、新たな基板100aは、支持台17の底面に当接し、当該支持台17を上向きに押圧することになる。かかる上向きの力を受けた支持台17は、バネ付蝶番16の付勢力に抗して上方向(外側方向)に回動し、新たな基板100aの上方向への移動を阻害しない退避位置へと移動する。支持台17が退避位置まで移動したとき、それまで支持台17で支持されていた既存の基板100bは、支持台17から落ちて、新たに追加された基板100aの上に載ることになる。換言すれば、後から追加された基板100aの上に、先に追加された基板100bが積まれた積層体が形成されることになる。作業者は、この新たに形成された積層体を、支持台17より上側へと移動させる。積層体が支持台17より上側に移動し、当該支持台17を上向きに押す力が解除されると、支持台17は、バネ付蝶番16の付勢力により、支持位置へと戻る。
【0040】
このとき、上側空間14uには、先に追加された基板100bが上側に、後から追加された基板100aが下側になった状態で基板が積層されて収容されていることになる。この状態で、積層された基板100を上から順に一枚ずつ取り出せば、先に追加された基板100bが先に取り出されることになる。そして、これにより、基板100が長時間放置されることがなくなり、部品実装を良好に行うことが可能となる。また、基板100の残存数に関係なく、新たな基板100を追加することができるため、作業者にとって都合のよいタイミングで基板追加が可能となり、作業者の負担を軽減できる。
【0041】
なお、本実施形態では、バネ付蝶番16を用いて支持台17を可動にしているが、下方から供給される基板100aにより上方向に押圧されることで当該基板100aの通過を許容する退避位置に移動し、当該押圧が解除されると積層された基板100を支えることができるのであれば、他の構成であってもよい。
【0042】
例えば、図5に示すように、支持台17の底面にテーパを施すとともに、当該支持台17を上側空間14uの内側方向に付勢する圧縮コイルバネ16a、および、当該支持台17の水平方向への進退をガイドするレール16bを設けてもよい。かかる構成の場合、下方から供給される基板100aにより、支持台17が上方向に押圧されると、支持台17は、圧縮コイルバネ16aの付勢力に抗して、外側方向に移動する。その結果、新たに追加された基板100aの上方向への移動が許容されることになる。そして、この新たに追加された基板100aが、支持台17より上側に到達すると、支持台17は、圧縮コイルバネ16aの付勢力により、積層された基板100を下側から支持する支持位置へと戻る。
【0043】
[搬送ヘッド]
次に、搬送ヘッド20について詳説する。図6は、搬送ヘッド20の正面図、および側面図である。搬送ヘッド20は、収容機構に積層されて収容された基板100を一枚ずつ取り出して搬送するものである。この搬送ヘッド20は、X方向に並んだ二つの吸引パッド23を有しており、各吸引パッド23は、ノズルを介して、圧力ポンプ(図示せず)に接続されている。制御部は、この圧力ポンプの駆動を制御することで、搬送ヘッド20による基板100の保持、および、保持解除を制御する。また、二つの吸引パッド23は、X方向に長尺な平板状のフレーム22に取り付けられている。そして、この搬送ヘッド20は、XYZ方向に可動となっている。このヘッドの移送構成は、種々の公知技術を用いて構成できるため、ここでの詳説は省略する。いずれにしても、吸引パッド23で基板100を吸引保持した状態で、搬送ヘッド20をXYZ方向に駆動することで、基板100が搬送されることになる。
【0044】
吸引パッド23とフレーム22の間には圧力センサ(図示せず)が設けられており、当該圧力センサでの検出値に基づいて吸引パッド23の高さが制御される。すなわち、本実施形態では、基板100を取り出す際には、吸引パッド23を、積層された基板100の上面に向けて徐々に下降させる。下降の結果、吸引パッド23が基板100の上面に当接すると、当該当接圧力が圧力センサにより検知されることになる。かかる当接圧が検知されれば、制御部は、吸引パッド23が基板100の上面まで下降したと判断し、当該吸引パッド23による基板100の吸引保持を開始する。
【0045】
搬送ヘッド20のフレーム22には、断面略L字状の押出板24が、Y方向に突出して取り付けられている。この押出板24は、搬送ヘッド20により搬送され、レール31(図3参照)上に載置された基板100の端部をY方向に押すことで、当該基板100をY方向へと移送させる部材である。かかる押出板24を設けることにより、基板のY方向の移送範囲を広げることが可能となる。これについて図7を参照して説明する。
【0046】
搬送ヘッド20のストロークの関係上、吸引パッド23が、Y方向に関しては、図7において二点鎖線で図示したY方向限界位置L1までしか移動できないとする。この場合、吸引パッド23で基板100を吸引保持して搬送するだけでは、基板100は、図7の上段に図示した位置までしか搬送できないことになる。
【0047】
この移送範囲を広げるためには、搬送ヘッド20のストロークを広げることが考えられる。しかし、搬送ヘッド20のストロークを広げるためには、搬送ヘッド20を駆動する駆動源の出力を大幅に増大させたり、搬送ヘッド20を支える各種部材の剛性を向上させる必要があり、装置の大型化、コスト増加という問題を招く。
【0048】
そこで、本実施形態では、搬送ヘッド20のストロークを広げることなく、基板100の搬送範囲を広げるために、吸引パッド23で基板100を吸引保持して搬送した後に、既述の押出板24で基板100の端部をY方向に押すようにしている。すなわち、制御部は、吸引パッド23で基板100を吸引保持した状態で搬送ヘッド20を駆動し、当該基板100をレール上に載置する。その後、搬送ヘッド20に設けられた押出板24で、基板の端部をY方向に押せば、図7の下段に示すように、基板100をさらにY方向奥側へと移送することができる。すなわち、基板100を保持して搬送した後、当該搬送した基板100の端部を押して当該基板100を送出する構成とすることで、搬送ヘッド20のストロークを広げることなく、換言すれば、コストやサイズの増加を招くことなく、基板100の搬送範囲を大幅に広げることができる。
【0049】
[マーカヘッド]
次に、マーカヘッド26について詳説する。図8は、マーカヘッド26の周辺の正面図である。マーカヘッド26は、基板100の表面または裏面に、当該基板100を識別するためのマークを付与するためのものである。後段のディスペンスヘッドやマウントヘッドは、この基板100に付与されたマークに基づいて、基板100の種類を特定し、この特定された基板種類に基づいて、半田の塗布位置やマウントすべき部品種類などを特定する。
【0050】
本実施形態では、基板100の表面にマーキングを施す表用マーカヘッド26fと、基板100の裏面にマーキングを施す裏用マーカヘッド26bと、を設けている。この二つのマーカヘッド26は、その設置位置やペン先の向きなどが異なるものの、基本的な構成は同じである。
【0051】
この二つのマーカヘッド26は、基板100が載置されるレール31の両側において待機している。ここで、レール31は、基板100の両サイドを支持する部材である。本実施形態では、Y方向に長尺な二本のレール31を、基板100の幅より若干小さい間隔を開けてX方向に配設している。
【0052】
各マーカヘッド26は、XZ方向に可動となっており、アングル28、および、当該アングル28により保持されたマーキングペン29を備えている。アングル28は、マーキングペン29を着脱自在に保持する金具である。作業者は、取り付けられたマーキングペン29のインクが切れた場合には、当該アングル28からマーキングペン29を取り外し、新たなマーキングペン29を取り付ける。
【0053】
マーキングペン29は、実際に基板100上にマークを付与するマーカ部材として機能するものである。このマーキングペン29は、基板100にマークを付与できるのであれば、その種類は特に限定されず、例えば、市販の油性フェルトペンなどを用いることができる。
【0054】
マーカヘッド26の待機位置には、当該マーカヘッド26に取り付けられたマーキングペン29のペン先29aを覆う蓋体30が固定設置されている。蓋体30は、マーキングペン29のペン先29aが挿入でき得る穴が形成されたブロック部材である。この穴内部にペン先29aが収容されることで、ペン先29aの乾燥が防止される。
【0055】
ここで、既述したように、本実施形態では、マーカヘッド26をXZの二方向にのみ可動としている。これは、Y方向移動に関与する駆動源や伝達機構を省略し、これにより、サイズ低減やコスト低減を図るためである。
【0056】
一方で、XZ方向にしか移動できない場合、マーカヘッド26を駆動するだけでは、マーキングペン29と基板100とのY方向の相対位置関係を調整できず、結果として、所望の位置にマーキングが施せない恐れがある。そこで、本実施形態では、かかる問題を避けるために、マーキングペン29と基板100とのY方向の相対位置は、搬送ヘッド20による基板100のY方向搬送量で調整するようにしている。すなわち、本実施形態では、マーキングペン29と基板100とのY方向の相対位置が所望の関係になる位置まで、搬送ヘッド20で基板100を搬送するようにしている。搬送ヘッド20により、Y方向の相対位置関係が所望の状態になれば、マーカヘッド26は、所望のX方向位置まで移動し、基板100の表面または裏面にマーキングを施す。なお、マーキング処理が完了すれば、マーカヘッド26は、取り付けられたマーキングペン29のペン先29aが、蓋体30に設けられた穴に挿入される待機位置に移動し、待機する。
【0057】
[クリーナ機構およびコンベア]
次に、クリーナーユニット34およびコンベア43について図3、図9を参照して説明する。図9は、クリーナーユニット34およびコンベア43の概略構成を示す図である。
【0058】
コンベア43は、マーキングが施された基板100を、Y方向下流側(図3において図面右側)に搬送する部材で、X方向に並んだ二本のコンベアベルト42を有している。各コンベアベルト42は、図9に示すように、複数のコンベアローラ41a,41b,41c,41dに張架され、適度なテンションを保った状態で循環回転する。このコンベアベルト42の循環回転により、当該コンベアベルト42の上面に載置された基板100が、Y方向下流側へと搬送されることになる。なお、コンベア43で構成される搬送路の上側には、基板100の浮き上がりを防止する従動ローラ45が複数設けられている。
【0059】
また、コンベア43により形成される搬送経路途中には、基板100の表面および裏面から粉塵を除去するクリーナーユニット34が設けられている。このクリーナーユニット34は、図9に示すように、搬送経路を挟んで上下に対向配置された一対のクリーナブラシ35u,35dを備えている。この二つのクリーナブラシ35は、いずれも、基板100の搬送方向と同一方向に回転し、基板の表面および裏面に付着した粉塵を吐き出す。このように、クリーナブラシ35の回転方向を、基板搬送方向と同方向とすることで、基板100の搬送性を向上させることができ、より確実に基板100を搬送することができる。
【0060】
各クリーナブラシ35の周囲には、当該クリーナブラシ35を覆う、略箱状のカバー体36が設けられている。そして、このカバー体36には、クリーナブラシ35により掃き上げられた粉塵を吸引する吸引パイプ37が連結されている。
【0061】
ここで、本実施形態では、コンベア43を駆動して基板100を搬送させつつ、クリーナブラシ35を回転駆動させて粉塵を掃き上げている。換言すれば、コンベア43の駆動タイミングと、クリーナブラシ35の駆動タイミングは、ほぼ同じとなっている。本実施形態では、コスト低減、サイズ低減などのために、この同じタイミングで駆動するクリーナブラシ35およびコンベア43の駆動源を共通化し、単一のモータ44で駆動するようにしている。
【0062】
これについて図9を参照して詳説する。本実施形態において、モータ44の出力軸には、コンベアローラ41aと、ブラシ駆動用の第一プーリ39aが連結されており、これらコンベアローラ41aおよび第一プーリ39aが、モータ44の駆動に連動して回転するようになっている。コンベアローラ41aには、既述のコンベアベルト42が張架されており、コンベアローラ41aの回転、ひいては、モータ44の駆動に伴い、コンベアベルト42が循環回転するようになっている。
【0063】
ブラシ駆動用の第一プーリ39aには、タイミングベルト40が張架されており、このタイミングベルト40の他端は、第二プーリ39bに張架されている。第二プーリ39bは、下側クリーナブラシ35dの回転軸に連結されており、第二プーリ39bの回転に伴い下側クリーナブラシ35dが回転するようになっている。また、この下側クリーナブラシ35dの回転軸には、第一ギア38dも連結されている。この第一ギア38dと歯合する第二ギア38uは、上側クリーナブラシ35uの回転軸に連結されており、第一ギア38dの回転が、第二ギア38uを介して上側クリーナブラシ35uにも伝達されるようになっている。
【0064】
このように、一つの駆動源(モータ44)で、コンベア43および上下のクリーナブラシ35を駆動する構成とすることにより、部品点数を低減でき、結果としてサイズやコストを低減できる。
【0065】
[ネジ締結ヘッド]
次に、ネジ締結ヘッド46について図3、図10を参照して説明する。図10は、ネジ締結ヘッド46周辺の正面図である。ネジ締結ヘッド46は、基板100の裏面にコネクタ104を螺合締結するためのヘッドである。このネジ締結ヘッド46は、XYZ方向に移動可能となっており、制御部の指示に応じて駆動する。また、ネジ締結ヘッド46には、先端に設けられたガイド筒46aと、当該ガイド筒46aの上側に設けられたドライバ筒46b、ガイド筒46aの上端近傍に角度をもって接続されたネジ供給筒46cと、を備えている。ドライバ筒46bには、ネジを回転させるドライバが収容されている。このドライバは、適宜、ガイド筒46aの先端から突出する位置まで下降してネジの頭部に係合し、その状態で回転することでネジ締めを行う。ネジ供給筒46cには、螺合締結に用いられるネジが収容されている。この収容されているネジは、適宜、ガイド筒46aへと供給され、ガイド筒46aに供給されたネジは、当該ガイド筒46aに従って、落下し、ガイド筒46aの真下に位置するネジ穴や締結孔へと差し込まれる。
【0066】
このネジ締結ヘッドによるネジ締結作業は、コネクタセット部47の上側において行われる。コネクタセット部47は、基板100に締結すべきコネクタ104を収容する部位で、当該コネクタ104に対応した形状の凹部が設けられている。この凹部は、搬送されてきた基板100の下側に位置している。作業者は、ネジ穴105が上向きになるような姿勢で、コネクタ104を、この凹部(コネクタセット部47)にセットする。また、コンベア43は、このセットされたコネクタ104のネジ穴105と、基板100に形成された締結孔102とか重複する位置まで、基板100を搬送する。
【0067】
基板100が、規定の位置まで搬送され、コネクタ104のネジ穴105と基板100の締結孔102とが重なれば、制御部はネジ締結ヘッド46を駆動し、ガイド筒46aを締結孔102の真上まで移動させ、ガイド筒46aの先端を基板100の上面に近接または接触させる。その状態になれば、ネジ供給筒46cから締結用のネジが供給される。供給されたネジは、ガイド筒46aに案内されつつ落下し、締結孔102およびネジ穴105へと落ち込む。この状態になれば、ドライバ筒46bからドライバを下降させて、ネジの頭部にドライバを係合させ、その状態でドライバを回転させる。これにより、基板100の裏面にコネクタ104が螺合締結されることになる。そして、このコネクタ104の螺合締結が完了すれば、基板100の前処理は完了となる。前処理が完了した基板100は、作業者の手により、実装装置49へと供給される。
【0068】
以上が、前処理装置10の具体的構成である。以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、基板供給機能、マーキング機能、クリーニング機能、コネクタ締結機能が、全て一つの前処理装置10に搭載されている。そのため、各機能を別個の独立した装置としていた従来技術に比して、設置スペースを大幅に低減できる。
【0069】
[パレット]
次に、実装装置49について説明する。この実装装置49の各部について説明する前に、まず、当該実装装置49に供給される基板100の状態について説明する。本実施形態において、基板100は、パレット110と呼ばれる保持具に保持された状態で、実装装置に供給される。図11はパレット110の概略斜視図である。パレット110には、基板100を収容保持するための収容凹部114が二つ、線対象に並んで形成されている。各収容凹部114は、基板100の外形に対応した形状をしている。また、この収容凹部114の中央には貫通穴112が形成されており、当該収容凹部114に収容された基板100は、その周縁のみが支持されることになる。別の見方をすれば、この収容凹部114に収容された基板100の上面の全面および底面の大部分は、外部に露出した状態になる。
【0070】
本実施形態では、図12に示すように、この二つの収容凹部114のうち、奥側(図12における右側)に位置する収容凹部には、表面への部品実装が完了した基板100bが、その裏面が上向きになるように収容される。この二つの収容凹部のうち、手前側に位置する収容凹部には、前処理装置10から出力され、表面裏面のいずれにも部品実装がなされていない基板100fが、その表面が上向きになるように収容される。
【0071】
表面が上向きの基板100fおよび裏面が上向きの基板100bは、パレット110に収容された状態で、実装装置49の上側ユニット50に投入される。上側ユニット50に設けられたディスペンスヘッド52やマウントヘッド68は、各基板100の上向きになっている面に対して半田塗布や部品のマウントを施す。つまり、パレット110が一回、上側ユニットを通過する過程で、一つの基板100fの表面、および、他の基板100bの裏面に対して、半田塗布や部品のマウントが施される。その後、この二つの基板100は、下側ユニット80に供給され、リフロー炉による加熱を受ける。下側ユニット80から出力された二つの基板100のうち、裏面が上向きになっている基板100bは、表面および裏面の両方への部品実装が完了した完成基板100cとして取り出され、出力される。一方、表面が上向きになっていた基板100fは、表面の部品実装のみが完成した半完成基板となる。この半完成基板(表面の部品実装のみが終了した基板)は、表裏反転した形(裏面が上向きになる形)でパレット110に再セットされる。また、このパレット110には、前処理装置10から出力され、表面裏面のいずれにも部品実装が施されていない新規の基板100もセットされる。そして、この二つの基板100を搭載したパレット110が、再び、上側ユニット50、下側ユニット80へと投入される。
【0072】
以上の説明で明らかなとおり、本実施形態によれば、パレット110が上側ユニット50および下側ユニット80を1回通過する過程で、一つの基板100fの表面への部品実装および他の基板100bの裏面への部品実装の両方が実行される。そして、1回の通過の過程で、一つの完成基板100cと、一つの半完成基板が得られる。完成基板100cは随時取り出され、この完成基板100cに変えて、表裏面いずれにも部品実装が成されていない新規の基板100が随時、部品実装工程に投入される。また、半完成基板も、即座に、次の部品実装工程に投入される。つまり、本実施形態によれば、片面への部品実装が終わった段階で基板100が放置される、といったことがなく、各基板100が効率的に部品実装工程に投入されることになる。換言すれば、本実施形態に寄れば、中間在庫を無くすことができ、効率的な処理が可能となる。
【0073】
[上側ユニットの概要]
次に、上側ユニット50の概要について図12を参照して説明する。図12は、上側ユニット50の概略上面図である。既述したとおり、本実施形態の部品実装装置は、上側ユニット50と、当該上側ユニット50の下側に設けられた下側ユニット80の二段構成となっている。かかる二段構成とすることで、装置のサイズを低減することができる。
【0074】
上側ユニット50には、基板上面(上向きになっている面)に、クリーム半田を塗布するディスペンス部51と、電子部品をマウントするマウント部67と、が設けられている。基板100を収容したパレット110は、このディスペンス部51およびマウント部67を縦断するコンベア65により搬送される。コンベア65により、最下流まで搬送されたパレット110は、上側ユニット50の下流端に接続された下降部84により、下側ユニット80へと搬送される。また、上側ユニット50の上流端には、上昇部85が接続されている。この上昇部85は、下側ユニット80から出力されたパレット110を上側ユニット50まで上昇して搬送する。この上昇部85により搬送されたパレット110が、上側ユニット50に再投入される。
【0075】
[ディスペンス部]
次に、ディスペンス部51について図12〜図15を参照して説明する。図13はディスペンス部の正面図であり、図14はディスペンスヘッド52の正面図および上面図である。また、図15は捨打円盤61の概略斜視図である。
【0076】
ディスペンス部51は、パレット110により搬送される基板100の上面にクリーム半田を塗布するための部位である。このディスペンス部51には、実際にクリーム半田を塗布するディスペンスヘッド52や、試験的な半田塗布(捨て打ち)を受け付ける捨打円盤61や、パレット110(基板100)を搬送方向下流側に搬送するコンベア65などが設けられている。
【0077】
コンベア65や捨打円盤61は、同じ支持プレート60上に設置されている。この支持プレート60は、図示しない駆動源(例えばモータなど)の駆動に応じて、Y軸方向に延びるY軸レール56Yに沿って移動する。支持プレート60がY軸方向に移動することで、当該支持プレート60に載置されたコンベア65、ひいては、当該コンベア65上に載置された基板100の、ディスペンスヘッド52に対するY軸方向位置が調整される。別の言い方をすれば、本実施形態では、ディスペンスヘッド52をY軸方向に移動させるのではなく、基板100をY軸方向に移動させることで、両者のY軸方向の相対位置関係を調整している。
【0078】
かかる構成としたのは次の理由による。基板100の上側に設けられたディスペンスヘッド52をY軸方向に移動させるためには、当該ディスペンスヘッド52に接続されたY軸レールを、ディスペンスヘッド52と同じ程度の高さ位置に設ける必要がある。このようなディスペンスヘッド52と同じ程度の高さに、Y軸レールを設けた場合、(ディスペンスヘッド52に接続された)Y軸レールが、マウントヘッド68をY軸方向に駆動するためのY軸レール77Y(図16参照)と干渉する恐れが出てくる。この干渉を避けるためには、ディスペンス部51とマウント部67とのY軸方向の間隔を広げなければならないが、その場合、実装装置49全体のサイズ増加という問題を招く。本実施形態では、こうした問題を避けるために、ディスペンスヘッド52に接続されたY軸レールは設けず、基板100をY軸方向に移動させるY軸レール56Yを上側ユニット50の床面近傍に設けている。かかる構成とすることにより、Y軸レール同士の干渉を防止でき、ひいては、実装装置49のY軸方向サイズを低減することができる。
【0079】
[ディスペンスヘッド]
ディスペンスヘッド52は、実際に基板100の上面にクリーム半田を塗布するヘッドである。このディスペンスヘッド52には、第一塗布器54、第二塗布器55、撮影機構53、測距センサ59(図14(b)参照)が設けられている。第一塗布器54、第二塗布器55は、いずれも、基板にクリーム半田を塗布する機器である。このうち、第一塗布器54は、シリンジに貯留されたクリーム半田をエア圧で押出塗布するエアディスペンス構成となっている。第二塗布器55はシリンジに貯留されたクリーム半田をスクリューで押出塗布するスクリューディスペンス構成となっている。エアディスペンスである第一塗布器54は、比較的、大きい形状での半田塗布が可能となっている。また、スクリューディスペンスである第二塗布器55は、比較的微細な形状での半田塗布が可能となっている。なお、各シリンジには、収容されているクリーム半田の粘度を適正に保つためのペルチェなどを利用した温調器が搭載されている。
【0080】
ここで、従来の装置では、半田は、メタル版を用いて印刷塗布されることが多かった。すなわち、従来、半田の塗布形状に応じた穴が形成されたメタル版を基板上に配置し、その上から半田を塗布(印刷)することが多かった。また、コネクタ、スイッチ、コンデンサなどのリード部品は、後付部品として、他の部品の半田付けが完了した後に再度、半田付けされることが多かった。
【0081】
一方、本実施形態では、塗布器54,55を用いて、半田を塗布している。特に、微細な形状での半田塗布が可能な第二塗布器55によれば、メタル版を用いて印刷した場合と同様な微細な半田形状を得ることができる。そのため、メタル版を適宜、段替えする必要がなく、実装装置を簡略化することができる。また、基板上にメタル版を載置する印刷処理の場合、コネクタのような突出物を事前に基板に締結することはできず、半田塗布の後にコネクタを締結しなければならない。一方、本実施形態によれば、基板100上にメタル版を載置する必要はないため、事前にコネクタ104などの突出部品を基板に締結することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、比較的、大きい塗布形状が得られる第一塗布器54でリード部品に線引き塗布を行っている。そのため、後付半田を廃止することができ、工程をより簡略化できる。
【0083】
撮影機構53は、基板100や捨打円盤61の上面を撮影するための機構で、垂直下向きの光軸を有したカメラ53aと、当該カメラ53aの真下に設けられたリング照明53bと、を備えている。リング照明53bは、カメラ53aの画角から外れた位置において、光源(例えばLEDなど)を環状に配置したものであり、撮影対象物を照明する。
【0084】
カメラ53aは、基板100や捨打円盤61に塗布された半田などを撮影する。制御部は、撮影で得られた基板100の画像に基づいて基板100の正確な位置を取得し、この得られた位置に基づいて、ディスペンスヘッド52と基板100との相対位置を微調整する。また、制御部は、基板100の撮影画像に基づいて、基板100の上に付されたマーカを特定し、このマーカに基づいて基板種類の判定も行う。そして、判定された基板種類に応じて、後に行う半田の塗布位置などを決定する。さらに、制御部は、捨打円盤61に塗布された半田の画像に基づいて塗布器54,55による半田の塗布量を取得し、得られた塗布量に基づいて、各塗布器54,55における半田の塗布圧を調整する。
【0085】
測距センサ59は、非接触で、半田の塗布面(基板100の上面または捨打円盤61の上面)までの距離を測定するセンサである。制御部は、この測距センサ59での検出値に基づいて、塗布器54,55のZ軸方向の駆動量を制御する。
【0086】
ここで、ディスペンスヘッド52を構成する各部のうち、撮影機構53および測距センサ59は、X軸方向にのみ移動可能であり、第一、第二塗布器54,55は、XZ軸方向に移動可能となっている。すなわち、撮影機構53、測距センサ59、および、Z軸レール56Zは、第一フレーム57aを介して、X軸レール56Xに接続されており、当該X軸レール56Xに沿って移動可能となっている。また、Z軸レール56Zには、第二フレーム57bを介して第一、第二塗布器54,55が連結されている。したがって、第一、第二塗布器54,55は、Z軸レール56Zに沿って昇降可能となっている。また、第一塗布器54と第二フレーム57bとの間には、さらに、Z軸方向に昇降可能なエアシリンダ58(図14(b)参照)も設けられている。したがって、第一塗布器54だけは、Z軸レール56Zに沿った昇降と、エアシリンダ58によるZ軸方向の昇降という二段階の昇降が可能となっている。別の言い方をすれば、第一塗布器54は、第二塗布器55に対する相対高さが可変となっている。そのため、第二塗布器55により半田塗布が成されている間、第一塗布器54は、第二塗布器55の先端より高い退避位置において待機することができる。また、第一塗布器54による半田塗布が必要な間は、第二塗布器55の先端より低い塗布位置にまで下降することができ、第二塗布器55と基板100との干渉を生じさせることなく、第一塗布器54による半田塗布が可能となる。
【0087】
[捨打円盤]
次に、捨打円盤61について、図13、図15を参照して説明する。捨打円盤61は、コンベア65の脇、基板100の搬送を阻害しない位置に設けられた円盤である。本実施形態では、この捨打円盤61の上面に、試験的な半田塗布、いわゆる捨て打ちを行う。
【0088】
すなわち、通常、半田を基板100に塗布する場合には、その塗布圧(塗布量)が適正か否かを判断するために、基板100への塗布に先立って、別な場所に、試験的に半田を塗布する捨て打ちを行う。制御部は、この捨て打ちにより塗布された半田の形状に基づいて、塗布圧(塗布量)が適正か否かを判断し、塗布圧を制御する。ここで、従来、こうした捨て打ちは、使い捨てのテープ上に行われることが多かった。すなわち、長尺なテープは、供給ロールから引き出され、巻取ロールに巻き取られる。この供給ロールと巻取ロールの間に設けられた捨打部において、テープへの捨て打ちが行われる。捨て打ちが行われるたびに、テープは、巻取ロールに巻き取られ、テープのうち新規な箇所が捨打部に位置させられる。そして、全てのテープが巻取ロールに巻き取られれば、このテープは廃棄され、新たなテープに交換される仕組みとなっていた。かかる使い捨てのテープを使用する従来の構成では、テープの分だけコストがかり、また、使い捨てという環境への負荷があった。
【0089】
そこで、本実施形態では、テープに代えて、捨打円盤61に捨て打ちを行うようにしている。捨打円盤61は、上面に接合材料(半田)が試験的に塗布される被塗布部材として機能するものであり、モータ63の駆動により回転軸を中心として回転可能な円盤である。
【0090】
この捨打円盤61の上側には、クリーナ部材62が設けられている。クリーナ部材62は、その底面62aが、捨打円盤61の上面の一部に密着した状態で設置された部材である。このクリーナ部材62の底面62aには、塗布された半田の拭き取りに適した材料、例えば、繊維素材などが配されている。また、クリーナ部材62は、捨打円盤61の上面に密着するべく、図示しない付勢部材(バネなど)により、捨打円盤61に近づく方向に付勢されている。そして、捨打円盤61の回転に伴いクリーナ部材62と捨打円盤61とが相対移動すると、このクリーナ部材62の底面62aが捨打円盤61の上面に試験的に塗布された半田を拭き取り、捨打円盤61の上面から半田を除去する。
【0091】
こうした構成の捨打円盤に捨て打ち作業を行う場合には、まず、捨打円盤61のうち、露出している箇所に、ディスペンスヘッド52により半田を試験的に塗布(捨て打ち)する。塗布された半田は、ディスペンスヘッド52に設けられたカメラ53aにより撮影される。制御部は撮影により得られた画像に基づいて、塗布圧の適否を判断する。また、制御部は、試験的な塗布が完了すれば、モータ63を駆動して、捨打円盤61を360度回転、すなわち、一回転させる。この回転の際、塗布された半田は、クリーナ部材62aにより拭き取られ、除去される。その結果、捨打円盤61の上面は、再度の半田塗布が可能なクリーンな状態となり、再度、捨て打ちを行うことが可能となる。換言すれば、本実施形態によれば、半田が塗布される部材である捨打円盤61を繰り返し使用できる。そのため、従来のようにテープを使い捨てるという無駄を無くすことができる。
【0092】
なお、本実施形態では、半田が試験的に塗布される被塗布部材を円盤状としているが、繰り返し使用できるものであれば、円盤に限らず、他の形状であってもよい。例えば、Y方向に進退する板状部材であってもよい。この場合でも、板状部材の上面に密着するクリーナ部材を設けておき、捨て打ちのたびに板状部材を進退させることで、塗布された半田を除去するようにしてもよい。また、本実施形態では、被塗布部材(捨打円盤)を移動させているが、被塗布部材ではなく、クリーナ部材を移動させて、半田を拭き取るようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、捨て打ちのたびに、捨打円盤を360度回転させている。これは、捨打円盤61のうち、同じ位置に、半田塗布(捨て打ち)できるようにするためである。このように、同じ箇所に半田塗布するのは、塗布面(捨打円盤61の上面)の高さが変わることを防止するためである。すなわち、捨打円盤61を厳密に水平に保つことは難しい。そのため、回転角度によって、捨打円盤61の上面高さが微妙に異なる。この上面高さの違いが、塗布圧の厳密な判断に影響を与える恐れがある。そこで、本実施形態では、捨て打ちのたびに、捨打円盤を360度回転させ、塗布面の高さが常に同じになるようにしている。なお、当然ながら、捨打円盤61を厳密に水平に設置したり、捨て打ちのたびに上面高さを測定したりなどするのであれば、360度未満で回転させてもよい。
【0094】
[マウント部概要]
次に、マウント部67について図12、図16を参照して説明する。図16は、マウント部67に設けられたマウントヘッド68の側面図である。
【0095】
マウント部67は、搬送されてきた基板100の上面に、半導体素子などの電子部品をマウントする部位である。このマウント部67には、マウントヘッド68や、テープ送出機構72、バッファ部73、部品撮影機構69、ヘッド交換機構70などが設けられている。
【0096】
マウントヘッド68は、電子部品を保持して搬送し、基板100にマウントするヘッドである。このマウントヘッド68の構成については後に詳説するが、当該マウントヘッド68は、XYZ方向に移動可能であり、部品を吸引保持する吸引ヘッド74はZ軸周りに回転可能となっている。
【0097】
テープ送出機構72は、電子部品を保持したキャリアテープ71を順次、送り出す機構である。一つのキャリアテープ71には、同じ種類の電子部品が、一列に間隔を開けて配置されている。テープ送出機構72は、マウントヘッド68により電子部品が取り出されるたびに、このキャリアテープ71を送り出し、マウントヘッド68による取り出しが可能な取り出し位置に、新たな電子部品が位置するようにしている。ここで、本実施形態では、一つの基板100に多種類の部品を配置するため、テープ送出機構72も多数、用意する必要がある。かかる多数のテープ送出機構72を一列に並べると、一方向に長尺な構成となり、装置の大型化を招く。また、一方向に長尺に並べると、その分、テープから部品を取り出すマウントヘッド68のストロークも一方向に長尺にする必要がある。しかし、ストロークを過度に大きくすると、その分、モータの出力や支持部材の剛性向上などが必要になり、装置の更なる大型化、コストの増加という問題を招く。そこで、本実施形態では、多数のテープ送出機構72の一部をX方向に並べ、残りのテープ送出機構72をY方向に並べて配置している。別の見方をすると、本実施形態では、テープ送出機構72の一部を、マウントヘッド68の駆動範囲E(図12参照)の一辺に沿って配置し、残りのテープ送出機構72を駆動範囲Eの他の辺に沿って配置している。かかる構成とすることで、テープの配置範囲が一方向に長尺になることが防止される。そして、これにより、マウントヘッド68のストロークを一方向にのみ大きくする必要がなく、結果として、コストやサイズの増加を防止できる。
【0098】
バッファ部73は、電子部品を一時的に保持する部位であるが、これについては、後に詳説する。ヘッド交換機構70は、マウントヘッド68に設けられた吸引ヘッド74の先端に設けられた吸引ノズル75を交換するための機構である。すなわち、後述するように、マウントヘッド68には、部品を吸引保持する吸引ヘッド74が設けられている。この吸引ヘッド74の先端に設けられた吸引ノズル75の形状は、保持する部品の形状やサイズに応じて適宜、交換されることが望ましい。そこで、本実施形態では、交換用の吸引ノズル75を複数、用意しておき、適宜、吸引ノズル75を交換できるようにしている。
【0099】
部品撮影機構69は、吸引ヘッド74により吸引保持された部品を撮影する機構である。部品撮影機構69には、吸引ヘッド74により保持された部品を照らすための環状の照明と、垂直上向きの光軸を備えたカメラと、が設けられている。キャリアテープ71またはバッファ部73から部品を取り出し、当該部品を吸引保持した吸引ヘッド74は、マウント動作に先立って、この部品撮影機構69の真上に移動する。部品撮影機構69のカメラは、この吸引ヘッド74に保持されている部品を撮影する。
【0100】
制御部は、この部品撮影機構69により撮影された画像に基づいて、吸引保持された部品の水平面内での回転角度を算出し、この算出結果に基づいて、部品の水平面内での角度が適正になるように、吸引ヘッド74をZ軸周りに回転させる。これにより、適正な角度で部品をマウントすることが可能となる。
【0101】
[マウントヘッド]
次に、マウントヘッド68について、図16を参照して詳説する。マウントヘッド68は、キャリアテープ71またはバッファ部73から部品を取り出し、基板100にマウントするものである。このマウントヘッド68には、吸引ヘッド74および撮影機構78が設けられている。
【0102】
撮影機構78は、基板100の上面を撮影するための機構で、垂直下向きの光軸を有したカメラ78aと、当該カメラ78aの真下に設けられたリング照明78bと、を備えている。制御部は、この撮影機構78で撮影された基板100の画像に基づいて、基板の正確な位置や、基板100に付されたマーカを特定する。そして、特定された基板位置に基づいて吸引ヘッド74と基板100との相対位置を微調整する。また、得られたマーカに基づいて、基板種類の判定を行い、判定された基板種類に応じて、部品のマウント位置などを決定する。
【0103】
吸引ヘッド74は、部品を吸引保持するためのヘッドで、その先端には吸引ノズル75が取り付けられている。この吸引ノズル75は、図示しないポンプに接続されており、当該ポンプの駆動に応じて部品を吸引保持したり吸引解除したりする。この吸引ノズル75は、既述したとおり、保持すべき部品の形状に応じて交換自在となっている。
【0104】
この吸引ノズル75および撮影機構78は、互いに連動して、Y軸レール77YおよびX軸レール77Xに沿って移動可能となっている。さらに、吸引ヘッド74は、シリンダ76の駆動に応じてZ軸方向に移動自在(昇降自在)であり、また、Z軸周りに回転自在にもなっている。
【0105】
[バッファ部]
次にバッファ部73について詳説する。既述したとおり、マウント部67には、マウントすべき部品を一時的に収容したバッファ部73が設けられている(図12参照)。このバッファ部73に収容された部品は、空になったキャリアテープ71を交換している間に利用される。
【0106】
すなわち、既述したとおり、キャリアテープ71には、同じ種類の電子部品が一列に間隔を開けて多数配置されている。マウントヘッド68は、このキャリアテープ71から部品を一つずつ取り出し、基板100に配置する。テープ送出機構72は、部品が取り出されるたびに、キャリアテープ71を送り出し、マウントヘッド68による取り出しが可能な取り出し位置に、新たな電子部品を位置させている。
【0107】
このキャリアテープ71から全ての部品が取り出され、キャリアテープ71が空になれば、作業者は、テープ送出機構72から空になったキャリアテープ71を取り外し、代わりに、新たなキャリアテープ71をセットするテープ交換をする必要がある。当然ながら、このテープ交換の間、マウントヘッド68は、キャリアテープ71から部品を取り出すことはできない。そのため、バッファ部73を設けていなかった従来の実装装置では、このテープ交換の間は、部品のマウント作業ができず、ひいては、処理効率が下がるという問題があった。
【0108】
こうした問題を避けるために、本実施形態では、少なくとも、このテープ交換に要する時間の間に必要となる数の電子部品を保持するバッファ部73を設けている。そして、テープ交換の間は、このバッファ部73から部品を取り出し、基板100にマウントするようにしている。これにより、テープ交換の時間もマウント作業を継続することができ、処理効率を向上できる。
【0109】
なお、本実施形態では、このバッファ部73において部品を保持するために、使用済みキャリアテープ71を用いている。すなわち、部品が全て取り出された後のキャリアテープ71は、通常、廃棄される。しかし、このキャリアテープ71には、部品保持のために、部品の外形に応じた凹部が形成されている。かかる凹部が形成されたキャリアテープ71を、バッファ部73に配置し、当該凹部にバッファ用の部品を配置することで、部品をより安定して保持することができる。また、廃棄されるキャリアテープ71を有効活用することで、新たな部品保持用の部品を製造する必要がなく、コストを低減することができる。
【0110】
ところで、このバッファ部73への部品のセットは、手動で行ってもよいし、マウントヘッドにより自動で行ってもよい。手動で行う場合には、例えば、生産開始時に予めキャリアテープ71からバッファ部73に、必要な数だけ、部品を移し変える。
【0111】
また、別の形態として、実装装置49の起動時およびキャリアテープ71の交換完了時に、バッファ部73における部品の不足数を検知し、自動的に(マウントヘッドによって)、その不足数だけキャリアテープ71からバッファ部73に供給するようにしてもよい。
【0112】
図17は、この場合におけるタイミングチャートである。図17の一段目はキャリアテープ71から部品を取り出してマウント作業をするタイミングを、二段目はテープ交換を行っているタイミングを、三段目はマウントヘッド68でキャリアテープ71からバッファ部73に部品を補充するバッファ充填のタイミングを、四段目はバッファ部73から部品を取り出してマウント作業をするタイミングをそれぞれ示している。なお、この図17では、見易さのために、各時間の比率を、実際とは変えており、実際には、通常マウントの時間はより長く、バッファ充填の時間はより短い。
【0113】
時刻T1に実装装置49を起動した際、制御部は、バッファ部73における部品の不足数を検知する。ここで、不足数とは、テープ交換に要する時間の間に必要となる電子部品の数から、バッファ部73に配置された部品数を引いた数である。
【0114】
部品の不足があると判断された場合、バッファ充填作業(図17の三段目)が行われる。すなわち、制御部は、マウントヘッド68を駆動して、キャリアテープ71から不足数分の部品を、バッファ部73に供給させる。当然のことながらこの間、マウント作業は行われない。
【0115】
時刻T2において、バッファ部73への部品充填が完了すれば、通常のマウント作業(図17の一段目)が行われる。すなわち、マウントヘッド68が、キャリアテープ71から部品を取り出し、基板100にマウントする動作が行われる。
【0116】
時刻T3の時点で、キャリアテープ71が空になると、作業者は、キャリアテープ71の交換を行う(図17の二段目)。一方、制御部は、バッファ部73からの部品取り出しをマウントヘッド68に指示する。この指示を受けて、マウントヘッド68は、バッファ部73から部品を取り出してマウント作業を行う(図17の四段目)。ここで、バッファ部73には、テープ交換に要する時間の間に必要となる数だけ部品が配置されているため、テープ交換が完了する時刻T4まで、継続してマウント作業を行うことができる。
【0117】
時刻T4において、テープ交換が完了すれば、制御部は、マウントヘッド68に対して、キャリアテープ71からの部品取り出しを指示する。この指示を受けて、マウントヘッド68は、キャリアテープ71から部品を取り出しマウントする通常のマウント作業を再開する(図17の一段目)。
【0118】
その後、時刻T5において、再び、テープが空になれば、作業者はテープ交換を開始する(図17の二段目)。このとき、バッファ部73の部品は、前回テープ交換の際に用いられて無くなっているため、今回のテープ交換時には利用することはできない。したがって、この時刻T5から、後述するバッファ補充が完了する時刻T7までは、マウント作業は、中断されることになる。
【0119】
時刻T6において、テープ交換が完了すれば、制御部は、バッファ部73における部品の不足数を検知するとともに、当該不足数だけの補充をマウントヘッド68に指示する。この指示を受けて、マウントヘッド68は、キャリアテープ71から部品を取り出し、バッファ部73に配置するバッファ補充(図17の三段目)を行う。
【0120】
そして、時刻T7においてバッファ充填が完了すれば、再び、キャリアテープ71から部品を取り出し、基板にマウントする通常のマウント作業を開始する(図17の一段目)。そして、以降も、同様の作業を繰り返す。
【0121】
以上の説明から明らかなとおり、この形態によれば、テープ交換のたびに、マウント作業を中断する必要がないため、従来に比して、効率的に装置の稼働率を向上させることができる。なお、この形態によれば、キャリアテープ71を二つ使いきるたびに、テープ交換に要する時間およびバッファ充填に要する時間分だけ、マウント作業を中断しなければならない。しかし、バッファ充填に要する時間は、テープ交換に要する時間に比して、十分に小さい。そのため、テープ交換のたびに、テープ交換に要する時間分だけマウント作業を中断していた従来技術に比して、この形態におけるマウント中断の合計時間は十分小さくなる。また、ここでは、一回のテープ交換の時間に必要となる数の部品数をバッファ部73に配置する場合を例示しているが、より多数の部品をバッファ部73に待機させておいてもよい。かかる構成とすることで、テープ交換に起因する装置のマウントの中断時間をより短くすることができ、装置の稼働率をより向上させることができる。
【0122】
また、この形態では、テープ交換完了時にバッファ充填する形態としたが、通常マウントの間にバッファ充填を行ってもよい。これについて図18を用いて説明する。
【0123】
図18は、通常マウントの間にバッファ充填を行う場合のタイミングチャートである。図18の一段目はキャリアテープ71から部品を取り出してマウント作業をするタイミングを、二段目はテープ交換を行っているタイミングを、三段目はマウントヘッド68でキャリアテープ71からバッファ部73に部品を供給するタイミングを、四段目はバッファ部73から部品を取り出してマウント作業をするタイミングをそれぞれ示している。
【0124】
図17では、通常マウント作業の間、マウント作業が休み無く行われているかのように図示したが、実際には、マウント完了した基板100をマウント部67から出力した後、新たな基板100がマウント部67に送られるまでの間など、マウント作業ができない時間が度々、生じる。その結果、図18の一段目に示すように、キャリアテープ71から部品を取り出してマウントする通常マウント作業には微小な中断時間Tkが、繰り返し発生する。
【0125】
この微小な中断時間Tkの間に、キャリアテープ71から部品を取り出し、バッファ部73に部品充填を行うバッファ充填を行うようにしてもよい。この場合、制御部は、中断時間Tkが発生するたびに、バッファ部73において部品が不足しているか否かを判断する。そして、部品が不足していると判断された場合には、マウントヘッド68を駆動して、キャリアテープ71から部品を取り出し、バッファ部73に補充する(図18の三段目)。
【0126】
その後、キャリアテープ71が空になり、テープ交換が開始されれば、このバッファ部73から部品を取り出し、基板100にマウントする。テープ交換が完了すれば、再び、キャリアテープ71から部品を取り出す、通常マウントを行う。
【0127】
このように、通常マウント作業中に生じる、微小な中断時間Tkにバッファ充填を行うようにすれば、テープ交換のためにマウント作業を中断させる必要がなく、装置の稼働率をより向上できる。
【0128】
[下側ユニット(リフロー部)]
次に、下側ユニット80について図19を参照して説明する。図19は、下側ユニット80の概略側面図である。下側ユニット80には、基板を加熱して、半田を溶融するリフロー部81が設けられている。このリフロー部81には、基板100(パレット110)を搬送するコンベア83と、三組、合計六個のリフロー炉82が設けられている。
【0129】
上側ユニット50のマウント部67から出力された基板100は、下降部84に設けられた下降機構により、下側ユニット80と同じ高さまで運ばれ、このリフロー部81に投入される。リフロー部81に投入された基板100は、コンベア83により、下流側へと搬送される。ここで、下側ユニット80と上側ユニット50では、搬送方向が逆転している。すなわち、上側ユニット50では、図12に示すように、上昇部85側から下降部84側へと基板が搬送されるのに対し、下側ユニット80では、下降部84側から上昇部85側へと搬送される。
【0130】
リフロー炉82は、基板100を加熱するヒータや、当該ヒータからの熱を送るファンなどからなるユニットである。この本実施形態では、コンベア83を挟んで上下に対向配置させたリフロー炉82を三組、合計六個設けている。このリフロー炉82の間を搬送される過程で、基板100に塗布された半田が溶融され、基板100に部品が半田付けされる。リフロー炉82から出力された基板100は、上昇部に設けられた上昇機構により、運ばれる。そして、この上昇機構による搬送の過程で冷却されることで、半田が固着し、部品が基板100に固着される。
【0131】
[下降部および上昇部]
次に、下降部84および上昇部85について詳説する。既述したとおり、下降部84は、上側ユニット50から出力された基板100(パレット110)を下側ユニット80に搬送する機構であり、上昇部85は、下側ユニット80から出力された基板100(パレット110)を上側ユニット50に搬送する機構である。
【0132】
下降部84は、例えば、パレット110が載置されるテーブルと、当該テーブルにモータの回転を直線運動に変換して伝達する伝達機構(例えばリードスクリュー、ギアおよびチェーンなど)、および、駆動源となるモータなどで構成される。こうした下降機構は、種々の公知技術を用いて構成できるため、ここでの詳説は省略する。
【0133】
次に、上昇部85について詳説する。図20は、上昇部85の概略正面図(図12における概略A方向視図)である。
【0134】
この上昇部85には、基板100をパレット110ごと上昇させる上昇機構86と、上昇されたパレット110を収容する収容機構94と、パレット110から完成基板100cを取り出す取出機構96と、が設けられている。上昇機構86は、下側ユニット80から出力されたパレット110を下方から押し上げる上昇アーム92を備えている。この上昇アーム92の両端は、垂直方向に立脚するガイドシャフト93に挿通されており、上昇アーム92は、当該ガイドシャフト93に沿って垂直方向にのみ移動するようになっている。また、駆動源であるモータ88の出力軸には、ギア90が連結されており、このギア90の回転は、チェーン91を介して、直線運動に変換されて上昇アーム92に伝達されるようになっている。そして、モータ88の駆動に応じて、上昇アーム92が上昇することで、下側ユニット80から出力されたパレット110が押し上げられ、収容機構94へと搬送されることになる。
【0135】
取出機構96は、この上昇アーム92によるパレット110の上昇に先立って、完成基板100cを取り出す機構である。この取出機構96には、基板100を吸引する吸引ヘッド97が設けられている。そして、基板100を吸引保持した状態で、この吸引ヘッド97が移動することで、完成基板100cがパレット110から取り出され、搬送される。この吸引ヘッド97は、ロータリーアクチュエータ98R、Z軸ロボ98Z、X軸ロボ98Xにより、Z軸周りの回転、Z軸に沿った昇降、X軸に沿った移動が可能となっている。
【0136】
この吸引ヘッド97による完成基板100cの取り出しについて簡単に説明する。下側ユニット80からパレット110が出力されると、吸引ヘッド97は、このパレット110に保持された完成基板100cの真上位置まで移動し、当該完成基板100cを吸引保持する。そして、完成基板100cを吸引保持した状態で、吸引ヘッド97が僅かに上昇することで、完成基板100cがパレット110から離脱する。その後、吸引ヘッド97は、Z軸周りに回転し、パレット110の真上から離れる。続いて、吸引ヘッド97は、完成基板100cを載置する完成品レール99より僅かに高い位置まで上昇する。そして、X軸方向に移動し、完成品レール99の真上位置まで移動すれば、吸引ヘッド97による吸引を解除し、完成品レール99の上に完成基板100cを載置する。
【0137】
この取出機構96の動きにより、上昇機構86により上側ユニット50へと搬送されるパレット110には、片面にのみ部品実装が施された半完成の基板100のみが残ることになる。この半完成の基板100が一枚だけ残ったパレット110は、新たな未完成基板100が追加セットされた上で、再度、上側ユニット50に投入されることになる。
【0138】
ここで、このパレット110の上側ユニット50への再投入の順番は、前処理装置10における基板100の投入順番と同じく、先に追加されたパレット110ほど先に投入されることが望まれる。そこで、この実装装置49の上昇部85にも、前処理装置10における収容機構(図4参照)と同様の収容機構94を設けている。
【0139】
すなわち、図20に示すように、上昇機構86によるパレット110の搬送経路(上昇経路)上には、積層されたパレット110を下方から支える支持板95を設けている。この支持板95は、バネ付蝶番により回動自在となっており、下方から供給されるパレット110で上方向に押圧されることで、当該供給されるパレット110の通過を許容する退避位置に移動する。また、パレット110による押圧が解除されると、この支持板95は、バネ付蝶番に設けられたバネの付勢力により、積層されたパレット110を支える支持位置に戻るようになっている。
【0140】
かかる支持板95を設けることにより、下側ユニット80から先に出力されたパレット110ほど、上側に積層され、ひいては、先に、上側ユニット50に投入されることになる。これにより、一つの基板100が長時間放置されることがなくなり、基板100の劣化等が防止される。
【符号の説明】
【0141】
10 基板前処理装置、12 基板収容部、14 収容空間、16 バネ付蝶番、17 支持台、20 搬送ヘッド、24 押出板、26 マーカヘッド、29 マーキングペン、34 クリーナーユニット、35 クリーナブラシ、43 コンベア、46 ネジ締結ヘッド、47 コネクタセット部、49 部品実装装置、50 上側ユニット、51 ディスペンス部、52 ディスペンスヘッド、53,78 撮影機構、54,55 塗布器、58 エアシリンダ、59 測距センサ、61 捨打円盤、62 クリーナ部材、67 マウント部、68 マウントヘッド、69 部品撮影機構、70 ヘッド交換機構、71 キャリアテープ、72 テープ送出機構、73 バッファ部、74 吸引ヘッド、75 吸引ノズル、80 下側ユニット、82 リフロー炉、84 下降部、85 上昇部、86 上昇機構、92 上昇アーム、94 収容機構、95 支持板、96 取出機構、97 吸引ヘッド、100 基板、104 コネクタ、110 パレット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の基板または基板保持部材を積層した状態で収容する基板収容装置であって、
前記積層された基板または基板保持部材を下方から支える支持部材であって、下方から供給される基板または基板保持部材により上方向に押圧されることで当該供給される基板または基板保持部材の通過を許容する退避位置に移動するとともに、当該押圧が解除されると前記積層された基板または基板保持部材を支える支持位置に移動する支持部材を備えることを特徴とする基板収容装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板収容装置であって、
前記支持部材を支持位置方向に付勢する付勢手段を備え、
前記支持部材は、基板または基板保持部材により上方向に押圧された際に前記付勢手段の付勢力に抗して上方向に回動することで退避位置に移動する、
ことを特徴とする基板収容装置。
【請求項1】
1以上の基板または基板保持部材を積層した状態で収容する基板収容装置であって、
前記積層された基板または基板保持部材を下方から支える支持部材であって、下方から供給される基板または基板保持部材により上方向に押圧されることで当該供給される基板または基板保持部材の通過を許容する退避位置に移動するとともに、当該押圧が解除されると前記積層された基板または基板保持部材を支える支持位置に移動する支持部材を備えることを特徴とする基板収容装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板収容装置であって、
前記支持部材を支持位置方向に付勢する付勢手段を備え、
前記支持部材は、基板または基板保持部材により上方向に押圧された際に前記付勢手段の付勢力に抗して上方向に回動することで退避位置に移動する、
ことを特徴とする基板収容装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−101879(P2012−101879A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250851(P2010−250851)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】
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