説明

基板検査装置

【目的】検査処理時間を短縮させる基板検査装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様の基板検査装置100は、基板101を検査する基板検査装置100において、水平方向に移動するXYステージ121と、前記XYステージ121上に配置され、上下方向と回転方向に移動するZ・θステージ122と、基板101の検査面の高さ位置が、Z・θステージ122の重心高さ位置に配置されるように基板101を保持する保持具102と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板検査装置に係り、例えば、半導体製造に用いる試料となる物体のパターン欠陥を検査するパターン検査技術に関し、半導体素子や液晶ディスプレイ(LCD)を製作するときに使用されるフォトマスク、ウェハ、あるいは液晶基板などの極めて小さなパターンの欠陥を検査する装置に関する。
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができるパターン描画装置を用いる。かかるパターン描画装置を用いてウェハに直接パターン回路を描画することもある。
【0003】
ここで、上述したようなパターン描画装置で作成されたウェハやマスクのパターンには、その製作過程でさまざまな欠陥が発生することが知られている。このような欠陥は、製作された半導体素子の動作を不可能にすることだけではなく、製造の歩留まりにも大きく影響することになる。よって、最終的な製品にかかる欠陥が生じないようにするためにも、製造過程において、欠陥を検出して修正や再製作工程にまわす検査修正工程が半導体製造では重要な技術となる。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査する基板検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
そこで、かかるウェハやマスク等の基板に生じた欠陥を検査検出する基板検査装置の開発が試みられている。基板検査装置では、一般に、XYステージ上において、保持具で保持された基板をXY方向に所定の速度で連続移動或いはステップ移動させ、かかる移動を繰り返しながらレーザー光源を用いた光学系により光学画像を得る。そして、かかる光学画像を処理しながら基板に生じた欠陥の有無を検査する。
例えば、パターン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die検査」や、マスクパターンを描画する時に使用した設計データとなるCADデータやCADデータを装置入力フォーマットに変換した描画データをベースに設計画像データを生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像データとを比較する「die to database検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はXYステージ上に載置され、XYステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサー上に結像される。センサーで撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0006】
ここで、上述したXYステージを含めたテーブル装置で、対向する2箇所の位置にそれぞれ圧電素子で光軸方向に変位させる技術が文献に開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、θステージをエア浮上させる記載が文献に開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−123787号公報
【特許文献2】特開昭59−46611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、基板が配置されるステージのX・Y方向及びZ方向の重心位置と基板の検査面の位置がかけ離れていると、XYステージが走行する際の加減速の影響(加速度)が重心位置と検査面との距離分、つまりモーメント負荷となる為、基板のピッチング・ヨーイング又はローリングなどの姿勢変化に影響を与えることがある。このような複合的な原因による基板の姿勢変化を調整しようとすると検査処理に時間を費やすことになるといった問題があった。
【0009】
また、基板の角度補正のためθステージを配置することになるが、θステージを回転させる場合に、回転中心位置への芯出し調整に時間がかかるといった問題があった。芯出し調整に時間がかかると検査処理に時間を費やすことになるといった問題があった。
また、θステージを回転させる場合には、エア浮上させる摩擦を減らした状態で回転させることが望ましいが、浮上量の調整もまた時間がかかるといった問題があった。
また、θステージの回転角度は、微小角度であるのに対して、θステージの軸受には、角度の際限を必要としないリング状の外輪が用いられていた。
【0010】
本発明は、かかる問題点を克服し、検査処理時間を短縮させる基板検査装置を提供することを目的とする。また、他の目的として、θステージにおける微小角度の移動を効率良く支持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の基板検査装置は、
被検査基板を検査する基板検査装置において、
水平方向に移動するXYステージと、
前記XYステージ上に配置され、上下方向と回転方向に移動するZ・θステージと、
前記被検査基板の検査面の高さ位置が、前記Z・θステージの重心高さ位置に配置されるように前記被検査基板を保持する保持部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の態様の基板検査装置は、
被検査基板を検査する基板検査装置において、
水平方向に移動するXYステージと、
前記XYステージ上に配置され、上下方向に移動するZステージと、
前記Zステージ上に配置され、回転方向に移動するθステージと、
前記θステージの外周を支持し、前記Zステージに固定されて配置された2つの固定型軸受と、
前記θステージの外周を支持し、前記θステージの回転中心に向かって位置を調整自在に前記Zステージに配置された1つの調整型軸受と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の態様の基板検査装置は、
被検査基板を検査する基板検査装置において、
水平方向に移動するXYステージと、
前記XYステージ上に配置され、上下方向に移動するZステージと、
前記Zステージ上に配置され、回転方向に移動するθステージと、
棒状に形成され、前記θステージに接続して前記θステージの回転を弾性変形しながら支持する弾性部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の態様の基板検査装置は、
被検査基板を検査する基板検査装置において、
水平方向に移動するXYステージと、
前記XYステージ上に配置され、上下方向に移動するZステージと、
前記Zステージ上に配置され、回転方向に移動するθステージと、
前記θステージの外周面に気体を吹きつけて前記θステージの回転を支持する気体軸受と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、被検査基板の姿勢の調整時間を短縮することができる。よって、被検査基板の検査処理時間を短縮することができる。また、本発明の一態様によれば、θステージにおける微小角度の駆動を効率良く支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1における基板検査装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1におけるZ・θステージの構成の一例を示す平面図である。
【図3】図2のQ矢視図の一部を示す図である。
【図4】図2のB矢視図の一部を示す図である。
【図5】実施の形態2におけるZ・θステージの構成の一例を示す平面図である。
【図6】図5のA矢視図の一部を示す図である。
【図7】図5のS矢視図の一部を示す図である。
【図8】実施の形態3におけるZ・θステージの構成の一例を示す平面図である。
【図9】図8のD矢視図の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における基板検査装置の構成を示す概念図である。
図1において、基準ベースとなる定盤120は、設置床から除振台119を介して取り付けられている。定盤120上には、レーザー光源117と、反射ミラー211,212,213、受光器214といった光学系118が配置される。また、定盤120上には、XYステージ121、及びXYステージ121の上に上下方向と回転方向に移動するZ・θステージ122が搭載される。ここで、Z・θステージ122上には、被検査基板となる基板101を保持する保持部の一例となる保持具102が搭載される。基板101は、図示していないローダーによって搬送され、所定の受け渡し位置で定盤120と別置き(又は連結)のロボットハンド123のチャッキング機構でチャッキングされ、ロボットハンド123により基板検査装置100内の保持具102の所定位置に搭載配置される。言い換えれば、基板101は、搬送機構やロボットハンド123等の組み合わせによりZ・θステージ122上に搬送され、ロボットハンド123により基板検査装置100内の保持具102の保持位置となる中央部の所定位置に搭載配置される。また、保持具102の平面には、基板101の幅よりも大きな開口面の開口部が形成される。保持具102の開口部は、検査用の光学系のレーザー光が透過できるように、及びロボットハンド123の基板101搭載時のチャック機構動作の干渉回避ができるように設けられている。
ここで、基板検査装置100及び基板検査システムは、クリーンルームチャンバー内に設置され、クリーン度や温度が厳しく管理された環境で使用されることが望ましい。
【0018】
以下、基板検査装置の動作について説明する。
XYステージ121がZ・θステージ122上で保持具102に保持された基板101を水平方向(光軸方向と直交する方向)となるXY方向に所定の速度で連続移動或いはステップ移動を繰り返しながら、レーザー光源117から照射されたレーザー光が反射ミラー211,212で反射され、基板101の検査位置となるパターン像を透過した後、反射ミラー213で反射され、受光器214で受光される。かかる光学系118により光学画像を得ることができる。そして、かかる光学画像を図示していない画像処理装置により処理することにより基板101に生じた欠陥の有無を検査する。
【0019】
図2は、実施の形態1におけるZ・θステージの構成の一例を示す平面図である。
図3は、図2のQ矢視図の一部を示す図である。
ただし、各図において、縮尺等は一致させている訳ではない。
ここで、上述したZ・θステージ122は、Zステージ103とθステージ106を有している。Zステージ103は、XYステージ121上に配置され、中央部に開口部が形成されている。Zステージ103は、上下方向(Z方向、或いは光軸方向ともいう。)に移動する。そして、θステージ106は、Zステージ103に形成された開口部に落とし込むように配置され、開口部の底面に配置される。θステージ106は、回転方向に移動する。また、θステージ106には、基板101を保持する保持具102が配置されている。そして、基板101の検査面(保持具102と接触する側の面)の高さ位置が、Z・θステージ122の重心高さ位置に配置されるように保持具102で基板が保持される。基板101の検査面の高さ位置とZ・θステージ122の重心高さ位置とを合わせることで、XYステージ121が走行する際の加減速の影響(加速度)によるモーメント負荷の発生を無くす、或いは低減することができる。その結果、基板101のピッチング・ヨーイング又はローリングなどの姿勢変化への影響を無くす、或いは小さくすることができる。
また、XY方向についても基板101の検査面の中心位置とZ・θステージ122の重心位置とがずれているとXY平面自体に傾き成分(Z方向成分)が生じている場合にモーメント負荷が生じる場合がある。そこで、高さ方向と同様に、水平方向についても、基板101の検査面の中心位置座標(X,Y)がZ・θステージ122の重心位置座標(X,Y)に一致するように保持具102で基板101を保持する。XY方向についても基板101の検査面の中心位置とZ・θステージ122の重心位置とを合わせることで、基板101のヨーイングなどの姿勢変化への影響をさらに無くす、或いは小さくすることができる。よって、従来、かかる姿勢変化に対応するために画像の取り込み重複幅を広げて画像を取り込む必要があったが、かかる画像の取り込み重複幅を無くす、或いは狭めることができ、検査時間を短縮することができる。
【0020】
また、図2において、そして、XYステージ121とZステージ103間は、略均等な角度で振り分けられた3つのピエゾ(圧電素子の一例)をそれぞれ搭載した3つのアクチュエータ機構107(a,b,c)で接続され、Zステージ103を3箇所で上下方向に移動させる。3つのアクチュエータ機構107は、Z・θステージ122の全質量を負荷できる構造で、個々に高さ調整機構を具備している。アクチュエータ機構107は、ピエゾを用いるためZステージ103をZ方向に微動させることができる。さらに、変芯円盤と異なりリニア駆動させることができる。さらに、3点でZステージ103を駆動するため面の傾き制御(チルト調整)を容易にすることができ、基板101の平面度を高精度に保つことができる。また、2点でZステージ103を駆動する場合には、面の傾き制御が困難となり、さらに、4点以上でZステージ103を駆動する場合には、少なくとも2点以上のアクチュエータ機構107を駆動させなければ面制御が困難となるが、本実施の形態1のように3点でZステージ103を駆動することにより、面の傾き制御ができるだけでなく面の角度によっては1点で調整することもできる。1点で調整することで制御を容易にすることができる。
【0021】
また、基板101の検査面の位置変化に影響する要素として、例えば、XYステージ121の走行精度すなわち上下動(含むピッチング)が大きいと基板101も同じように変化しながら移動するため光学系のオートフォーカスに多少なりとも影響をおよぼすことになる。そこで、本実施の形態のように、Zステージ103はピエゾ(圧電素子)を駆動源とし、3箇所に配置し、Z・θステージ122の全質量を負荷しながら個々に高さ調整することで、基板101の上下動に追従させることができる。
【0022】
また、図示していない引っ張りばねが、XYステージ121とZステージ103とに固定部材を介して接続され、Zステージ103をXYステージ121側へと与圧する。与圧することで、Zステージ103の浮上り防止を抑制している。引張バネはバネ力を調整できる構造を有している。その結果、アクチュエータ機構107の動作をZステージ103に正確に伝達することができる。また、引っ張りばねで構成することで、場所をとらずに簡易な方法でZステージ103に与圧を与えることができる。以上のように、アクチュエータ機構107の両端または片側近傍に引張バネを配置することで、Z・θステージ122の浮上りを抑制している。
【0023】
また、3つのピエゾ素子による各アクチュエータ機構107の移動によるZステージ103の移動量は、例えば、3つの各アクチュエータ機構107近傍に3つの変位計の一例となる各マイクロセンス(静電容量型変位計)等を配置して計測すればよい。また、マイクロセンスは測定対象物と数十μmの初期ギャップ調整が必要となるが、かかる場合にはテーパースライド型やネジ調整型などのギャップ調整機構を備えればよい。
【0024】
また、X・Y・θ方向の支持は3つの弾性ヒンジ108を介してXYステージ121とZステージ103とに接続され、XYステージ121とZステージ103を連結している。3つの弾性ヒンジ108は、各アクチュエータ機構107の動きに合わせて弾性変形しながらZステージ103を支持することができる。
【0025】
また、Zステージ103上には基板101の中心を仮想中心軸として回転方向に移動するθステージ106が配置される。θステージ106は額縁形状(フレーム形状ともいう)をしていて、θステージ106の回転をガイドする機構として、外周に3個の軸受けを同心円で配置している。そして、3個の軸受けのうちの2個は固定型軸受110とし、他の1個についてはスキマ調整用として回転軸芯方向に調整機構を備えている調整型軸受111とすると好適である。調整型軸受111を用いることで回転軸芯を合わせることができる。2つの固定型軸受110は、θステージ106の外周を支持し、Zステージ103に固定されて配置される。そして、1つの調整型軸受111は、θステージ106の外周を支持し、θステージ106の回転中心に向かって位置を調整自在にZステージ103に配置される。
【0026】
また、θステージ106の回転位置合せ方法については以下のように実施される。θステージ106を回転させる時には空気圧にて浮上させた状態において、基板101の検査面に描かれているパターン領域の端から端までをXYステージ121で移動させ、X又はY方向の一方の走行軸に対してパターンの傾きを所定量以下に合わせ、θステージ106を着座させ、真空チャックで固定する。一旦回転位置合せをした後、画像で確認して良否を判断するが、ダメなときは所定精度以下に入るまで上述の動作を何度か繰返して調整する。
【0027】
ここで、θステージ106の回転をガイドする機構として、固定型軸受110を2個、また回転軸芯方向に調整可能な調整型軸受111を2個として、回転軸中心に計4個を周囲に配置する構成も考えられる。しかしながら固定型2個と調整型2個の組合せの場合、互いに干渉しやすい状況が発生し、θステージ106回転面と接触する軸受との間にスキマが生じることがある。そのため、XYステージ121の走行軸と基板101に描かれているパターン面との回転方向の位置合せをする際、θステージ106の回転精度が悪いと回転位置合せに時間がかかることになる。そこで、本実施の形態1のように、固定型2個と調整型1個の組合せにすることにより、互いの干渉を避けることができる。その結果、θステージ106回転面と接触する軸受との間のスキマを無くすことができる。
【0028】
Zステージ103上には、XY平面上を直線方向に移動するロッド308を有する直線方向駆動部の一例となるθ駆動用リニアアクチュエータ112がθステージ106の外側で配置されている。θ駆動用リニアアクチュエータ112には、位置制御がし易いエンコーダー内蔵型を用いると好適である。
また、ロッド308には、弾性変形しながらロッド308の移動に伴う動きに合わせてθステージ106を回転させる弾性部材113が接続される。弾性部材113は、取り付け部材302を介してθステージ106に接続されている。弾性部材113を用いることで、ロッド308の直線方向の動きをθステージ106が移動する回転方向に変換することができる。言い換えれば、θステージ106が回転することによる起こるオフセット量を弾性構造部材113の変形により吸収することが可能である。
弾性部材113は、例えば、φ1〜2mm程度の細い棒状の線材(ワイヤー)を用いると好適である。例えば、ステンレスの線材を用いると好適である。断面が円形の線材を用いることで上下左右に同じ力で変形させることができる。そのため、θステージ106をスムーズに回転させることができる。また、θ駆動用リニアアクチュエータ112は、例えば、ロッド308をネジ機構により移動させる。そして、図示していない引っ張りばねでロッド308の移動方向に与圧を与えると好適である。与圧を与えることで、θ駆動用リニアアクチュエータ112のネジ機構で生じる移動方向のバックラッシュ分のガタを生じさせないようにすることができる。また、移動量のリミッターについてはリニアアクチュエータ112に内臓又は外部に図示していないフォトセンサーを取り付けて、かかるフォトセンサーにより制御し、原点位置についてもフォトセンサーで位置決めすればよい。
【0029】
また、Zステージ103上には、気体(例えば、空気)を用いてθステージ106を上述したように浮上させるための開口部となる孔hが形成されている。図2では、4箇所に形成され、Zステージ103の側面から外部につながっている。さらに、Zステージ103上には、θステージ106を上述したように真空チャックするための開口部となるθ真空チャック溝114が形成されている。図2では、4箇所に形成され、Zステージ103の側面から外部につながっている。かかるθ真空チャック溝114から真空引きする。
【0030】
θステージ106の駆動方法として、検査時はθステージ106下面をZステージ103上面に設けられたθ真空チャック溝114によりZステージ103上面に吸着(真空チャック)した状態(着座した状態)で検査する。また、基板101の回転方向の位置合せをする時にはZステージ103上面に設けられた孔hよりθステージ106下面に向けて空気を吹き出し、数10μm以下でZステージ103上面からθステージ106を浮上させた状態でθ駆動用リニアアクチュエータ112を駆動させ、光学系の画像処理で確認しながら回転位置合せを実施する。
【0031】
ここで、基板101を保持具102に登載する場合での基板101の位置決め精度やXYステージ121の検査方向の走行精度によっては、傾き精度(ヨーイング)の要素も考慮する必要が生じる。しかしながら、かかる傾き精度の要素を考慮して画像の取り込み重複幅を広げて画像を取り込むと、非常に検査時間がかかり効率の悪いといった問題が生じる。そこで、本実施の形態1のようにθステージ106を備えたことで、傾き精度を向上させることができる。よって、画像の取り込み重複幅を小さくすることができる。その結果、検査時間を短縮させることができる。
【0032】
また、基板101を保持する保持具102はθステージ106の中央部に配置され搭載されている。保持具102はθステージ106上に設けられた複数個のピン142により位置決めすることができる。そして、保持具102は光学系のメンテナンスの際に着脱可能に配置されている。保持具102のほぼ中央近傍に基板101をロボットハンド123にて搭載するが、設置場所の4隅には基板101のズレ防止用の柔軟ブロック137が配置されている。図3では、柔軟ブロック137等は省略されている。また基板101を設置する面は高精度に平面出し及び高さ管理され、そこには真空チャック溝が具備されていて図2では省略した配管を介して真空引きされ、検査時には確実に真空保持され、ズレが生じないように構成している。また、保持具102には図示していないが「反射用光量センサー」・「透過用光量センサー」や「温度センサー」などが搭載されていると好適である。
【0033】
また、Zステージ上103には、基板101の画像処理位置データを計測するために、レーザー光を用いてX方向とY方向の位置を測長するためにレーザー測長用の角棒状の反射ミラー104と反射ミラー105をX方向及びY方向に具備している。反射ミラー104と反射ミラー105の固定は図示していない弾性構造体で必要方向を支持し、ミラーにたわみが生じないように工夫をし、XYステージ121が動作し加速度がかかっても動かないように固定されていると好適である。Zステージ上103に反射ミラー104と反射ミラー105とを配置することで、XYステージ121に配置する場合と比べ基板位置に近いため、基板101面の高さとレーザー測長用の反射位置の高さとを合わせ易くすることができる。さらに、Zステージ上103に配置することで、θステージ106上に配置する場合にθステージ106が回転することにより生じる反射ミラーの角度変化を防止することができる。Zステージ103上に配置されたレーザー測長用の反射ミラー104と反射ミラー105で、検査中の基板101のXY方向の位置をリアルタイムでデータ処理している。
【0034】
図4は、図2のB矢視図の一部を示す図である。
図4では、θステージ106の同心円外周に1個配置している調整型軸受111の構成を示している。調整型軸受111も回転ガイド軸受けで、θステージ106の回転中心方向への調整が可能に構成されている。調整型軸受111の軸台146は軸と一体に形成され、Zステージ103側にネジ等で固定されるが、かかるネジを通す固定用の穴を長穴等にしておくことで回転中心方向への調整が可能に構成されている。一定の与圧をθステージ106の同心円外周に付加した後、軸台146はZステージ103側に固定される。それによってθステージ106の外周方向の遊びを除去することができる。調整型軸受111の外輪320は、軸台146の軸にはめられている。固定型軸受110の外輪はθステージ106の外周円とスキマ無く接触している。但し、固定型軸受110と調整型軸受111とは共に、θステージ106が数十μ浮上する際には上下方向に移動可能な軸受構造を有するため、θステージ106の上下の負荷にはならないように滑る。
【0035】
以上のように、Z・θステージ122全体の重心位置と基板101の中心と検査面位置を一致させることにより、XYステージ121の加減速の時のモーメント負荷を低減又は無視することができる。さらに、Zステージ103のフレームの中にθステージ106を落とし込む構造にすることにより、全体高さを低くすることができるので振動面でも有利である。さらに、θステージ106の回転ガイドを高精度なガイド機構にすることにより回転中心の芯ズレ及び遊びを最小限にすることが可能で、回転の位置合せを短時間に効率良く行なうことができる。その結果、検査時間を短縮することができる。
【0036】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2におけるZ・θステージの構成の一例を示す平面図である。
図5において、基板検査装置100について、Z・θステージ122が固定型軸受110と調整型軸受111との代わりにθステージ106の同心円外周に4個配置している棒状の弾性ヒンジ115を備えた点、θステージ106フレームの上面にかかるように、位置決めブロック139をZステージ103に複数個配置した点、及びZステージ103に位置決めブロック139の内部流路に空気を供給するための流路が形成された点以外は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。よって、実施の形態2でも、実施の形態1と同様、θステージ106はZステージ103の構造体の中に落とし込まれるような形でZステージ103に形成された開口部に搭載されている。Z・θステージ122全体の重心位置X・Y・Zと基板101の検査面がほぼ一致する位置に配置されている。
【0037】
図6は、図5のA矢視図の一部を示す図である。
弾性部材の一例となる棒状に形成された弾性ヒンジ115は、一方はθステージ106に、片側は取付部材156を介してZステージ103側に固定されている。実施の形態2では、θステージ106を回転させるときには、Zステージ103上面に設けられた溝114から空気を吹き出し、θステージ106を空気圧にて数十μ浮上させ、外側に配置しているリニアアクチュエータ112と弾性部材113を介して連結されている状態でリニアアクチュエータ112を駆動させることでθステージ106を回転させる。θステージ106を着座させた後は、Zステージ103上面に設けられた孔hあるいは溝114によりZステージ103上面に吸着(真空チャック)した状態(着座した状態)で固定し、検査モードに入る。棒状の弾性ヒンジ115は回転方向及び上下方向に柔軟に撓む構造であれば良い。弾性ヒンジ115は、θステージ106の回転を弾性変形しながら支持する。弾性ヒンジ115の強度は、4本の弾性ヒンジ115を弾性変形させた場合に弾性部材113が座屈しない程度の強度であればよい。材料として、例えばステンレス、チタン、アルミニウム等が好適である。また、φ1mm程度の棒材が好適である。断面が円形な棒材を用いると回転方向及び上下方向に同じ力で弾性変形するため好適である。また、ここでは、4本で支持しているが、3本でも構わない。3本にすることで部品点数を減らすことができる。或いは5本以上でも構わない。
以上のように、本実施の形態2によれば、回転ガイド軸受けを用いなくともθステージ106における微小角度の駆動を効率良く支持することができる。また、弾性ヒンジ115の弾性変形によりθステージ106の回転方向にテンションがかかるため、θ駆動用リニアアクチュエータ112に与圧を与えることができる。その結果、θ駆動用リニアアクチュエータ112のネジ機構で生じる移動方向のバックラッシュ分のガタを生じさせないようにすることができる。
【0038】
図7は、図5のS矢視図の一部を示す図である。
上述したように、Zステージ103には、θステージ106の上面の一部に被さるように位置決めブロック139が配置される。θステージ106が浮上しても位置決めブロック139により拘束され、浮上高さ位置を制御することができる。さらに、位置決めブロック139の下面には、溝152が形成され、溝152からはZステージ103へと続く流路154が形成されている。そして、Zステージ103にも流路154から続く流路が形成され、外部へと繋がっている。そして、Zステージ103の開口部上面に形成された溝114から空気を吹き出し、θステージ106を浮上させる場合に、位置決めブロック139下面の溝152からも空気を吹き出す。溝152からも空気を下向きに供給して吹き出すことによりθステージ106の浮上高さを制御することができる。
以上のように、本実施の形態2によれば、上下からの空気圧により所定量の浮上量を確保することができる。溝114用の流路と溝152用の流路とを別系統とすることで、エア配管系統の切り替えにより溝114を真空チャック機構として流用することができる。
【0039】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3におけるZ・θステージの構成の一例を示す平面図である。
図8において、基板検査装置100について、Z・θステージ122が固定型軸受110と調整型軸受111との代わりにθステージ106の同心円外周に4個配置している静圧空気軸受ブロック116を備えた点、Zステージ103上面に溝114及び孔hを設けていない点、及びZステージ103に静圧空気軸受ブロック116の内部流路に空気を供給するための流路が形成された点以外は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。よって、実施の形態3でも、実施の形態1と同様、θステージ106はZステージ103の構造体の中に落とし込まれるような形でZステージ103に形成された開口部に搭載されている。Z・θステージ122全体の重心位置X・Y・Zと基板101の検査面がほぼ一致する位置に配置されている。
【0040】
図9は、図8のD矢視図の一部を示す図である。
図9において、気体軸受の一例となる静圧空気軸受ブロック116は、Zステージ103の開口部の底面に固定されている。そして、θステージ106の外周回転面及び上面とは数μmのスキマを有した状態で配置される。そして、流路169を介して溝166からθステージ106の下面に向けて、流路168を介して溝164からθステージ106の回転する外周面に向けて、及び流路168を介して溝162からθステージ106の上面に向けて空気を吹付けることにより非接触な状態で浮上させることができる。そして、浮上させた状態で基板101の回転位置合せをし、検査時はZステージ103に着座させる。そして、流路168と流路169とを別系統とすることで、流路169と溝166とをエア配管系統の切り替えにより真空チャック機構として流用することができる。そして、溝166を流用して流路169につながるエア配管系統の切り替えにより真空チャックして固定保持する。回転精度はθステージ106や静圧空気軸受ブロック116の加工精度に依存し、剛性は浮上ギャップや軸受面積及び供給空気圧力に依存するので必要条件において決定すればよい。
以上のように、静圧空気軸受ブロック116は、θステージ106の外周面に気体を吹きつけてθステージ106の回転を支持すると共に、θステージ106がZステージ103から浮上する場合に、θステージ106の上面に空気を吹きつけることにより、浮上量を制御することができる。また、ここでは、静圧空気軸受ブロック116を用いて、4箇所で支持しているが、3箇所でも構わない。3箇所にすることで部品点数を減らすことができる。或いは5箇所以上でも構わない。
【0041】
以上説明したように、上記各実施の形態によれば、基板101を高精度なZ・θステージ122に搭載及び管理・調整することにより、無駄な検査時間を排除することにより必要最小時間で検査ができる。その結果、効率良く信頼性の高い基板検査装置を提供することができる。
【0042】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、θステージ106を浮上、外周面の回転支持、或いは上面への供給による浮上量制御に用いる気体は、空気に限るものではなく、その他の気体でも構わない。例えば、窒素等でも好適である。
【0043】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0044】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての基板検査装置、基板検査方法、及びステージ機構は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0045】
100 基板検査装置
101 基板
102 保持具
103 Zステージ
106 θステージ
112 リニアアクチュエータ
113 弾性部材
114,152,162,164,166 溝
115 弾性ヒンジ
116 静圧空気軸受ブロック
121 XYステージ
122 Z・θステージ
139 位置決めブロック
154,168,169 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査基板を検査する基板検査装置において、
水平方向に移動するXYステージと、
前記XYステージ上に配置され、上下方向に移動するZステージと、
前記Zステージ上に配置され、回転方向に移動するθステージと、
前記θステージの外周を支持し、前記Zステージに固定されて配置された2つの固定型軸受と、
前記θステージの外周を支持し、前記θステージの回転中心に向かって位置を調整自在に前記Zステージに配置された1つの調整型軸受と、
を備えたことを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
被検査基板を検査する基板検査装置において、
水平方向に移動するXYステージと、
前記XYステージ上に配置され、上下方向に移動するZステージと、
前記Zステージ上に配置され、回転方向に移動するθステージと、
棒状に形成され、前記θステージに接続して前記θステージの回転を弾性変形しながら支持する弾性部材と、
を備えたことを特徴とする基板検査装置。
【請求項3】
被検査基板を検査する基板検査装置において、
水平方向に移動するXYステージと、
前記XYステージ上に配置され、上下方向に移動するZステージと、
前記Zステージ上に配置され、回転方向に移動するθステージと、
前記θステージの外周面に気体を吹きつけて前記θステージの回転を支持する気体軸受と、
を備えたことを特徴とする基板検査装置。
【請求項4】
前記θステージは、前記Zステージから浮上して回転し、
前記気体軸受は、さらに、前記θステージの上面に気体を吹きつけることを特徴とする請求項3記載の基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−105439(P2009−105439A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22331(P2009−22331)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【分割の表示】特願2005−336487(P2005−336487)の分割
【原出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【Fターム(参考)】