説明

基板貼合せ方法およびこれを用いた装置

【課題】両面粘着シートを介して半導体ウエハなど凹凸の設けられたワークに支持用の基板を精度よく貼り合せることのできる基板貼合せ方法およびこれを用いた装置を提供する。
【解決手段】バンプの設けられたウエハWの表面に貼付けローラを押圧して転動させながらウエハWと支持基板Gを、その間に介在させた両面粘着シートSによって貼り合せた後に、さらに支持基板Gの周縁に沿って貼付けローラ19を押圧して転動させながら支持基板Gの周縁部分を両面粘着シートSに貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハや電子部品など表面にバンプなどの凹凸の設けられたワークの面に支持用の基板を、両面粘着シートを用いて貼り合せる基板貼合せ方法およびこれを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや電子部品などのワークの研削や切断といった加工工程において、ワークを仮固定する材料に保護テープなどの粘着テープを含む粘着シートが使用されている。しかしながら、半導体ウエハや電子部品の小型化や薄型化にともなって、ワークの剛性が低下し、粘着シートだけで仮固定して保持することが困難になっている。また、粘着シートによる保持力の低下が加工精度までも低下させている。そこで、近年、ワークに両面粘着シートを介して支持用の基板で裏打ち保持する方法が実施されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2004−241568号公報
【特許文献2】特開2001−148412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、半導体チップのデバイス形態の増加や、デバイスの高性能化にともない、シリコンやガリウム−ヒ素などからなる半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)の基板上に形成された凹凸の段差の大きいもの、例えば、10〜200μm程度のバンプの設けられたものがある。このバンプのあるウエハの裏面を研削するために、そのバンプ面に両面粘着シートを介在させて支持用の基板を貼り合せて裏打ち保持するが、凹凸の段差を接着剤が十分に吸収しきれず、特にバンプのない周縁部分では支持用の基板に両面粘着シートが密着しきれずに浮き上がった状態になる。
【0004】
その結果、ウエハの研削加工において支持用の基板の浮き上がった部分から水などが浸入し、ウエハを破損させるといった問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、両面粘着シートを介して半導体ウエハなど凹凸の設けられたワークと支持用の基板を精度よく貼り合せることのできる基板貼合せ方法およびこれを用いた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するために次のような構成をとる。
第1の発明は、凹凸のあるワークの面に両面粘着シートを介在させて支持用の基板を貼り合せる基板貼合せ方法において、
前記ワークの凹凸のある面に前記両面粘着シートを貼り付ける第1貼付け過程と、
前記両面粘着シートよりも接着力の弱い支持シートの粘着面に前記基板を貼り付け、所定の間隙をもって前記ワークと対向させて位置合せして配置する位置合せ過程と、
前記支持シートの被粘着面に第1貼付け手段を押圧しなが前記ワークに貼り付けた両面粘着シートに前記基板を貼り付ける第2貼付け過程と、
保持手段に保持した前記基板と一体になった前記ワークの基板面の周縁部分に第2貼付け手段を押圧するとともに、このワークの周縁に沿って第2貼付け手段が移動するように、この第2貼付け手段と保持手段を相対的に移動させて基板をワークに貼り付ける第3貼付け過程と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
(作用・効果) 上記方法によると、先ず、ワークの面上に両面粘着シートを貼り合せ、次に、支持用の基板を支持シートに貼り付ける。その後、この支持シートをワークの面上に位置させた状態で支持シートの表面に第1貼付け手段を押圧移動させることで、支持シートに貼り付け支持された基板をワークに貼り合わせてゆく。ワークに基板が貼り合わされると、さらに、第2貼付け手段を基板の周縁部分に押圧しながら移動するように第2貼付け手段と保持手段を相対的に移動させながら、基板の周縁部分を両面粘着シートに密着させてゆく。すなわち、支持用の基板の周縁部分に両面粘着シートを精度よく貼り合せることができる。その結果、基板貼り合せ後の研削など各種加工工程において、支持用の基板とウエハの周縁部分から水などの浸入を防ぐことができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の基板貼合せ方法において、
前記第1貼付け手段は、前記支持用の基板および前記ワークよりも幅広の貼付けローラであり、
前記第2貼付け手段は、前記ワークの面に形成された凹凸の最も外周寄りの部分から支持用の基板の外周端を含む所定幅を有する貼付けローラである
ことを特徴とするものである。
【0009】
(作用・効果) これによると、支持用の基板の凹凸のない周縁部分を除く内面部分には、第1の貼付けローラによって略均一に押圧を加えることができる。また、支持用の基板の周縁部分には、その特定領域を含む所定長さの第2貼付けローラによって押圧が均一に加えられる。したがって、接着不良になりがちな基板の周縁部分に両面粘着シートを精度よく密着させることができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明の基板貼合せ方法において、
前記第2貼付けローラのローラ面を支持用の基板の周縁に向かって斜め下がり傾斜で当接する
ことを特徴とするものである。
【0011】
(作用・効果) これによると、支持用の基板の周縁に向かって斜め下がり傾斜で第2貼付けローラを当接することにより、この基板の浮き上がった部分を適度に撓ませて両面粘着シートに密着させることができる。
【0012】
第4の発明は、第1ないし第3の発明の基板貼合せ方法において、
前記第2貼付け過程および前記第3貼付け過程では、減圧雰囲気中で支持用の基板を前記ワークに貼り合せる
ことを特徴とするものである。
【0013】
(作用・効果) これによると、支持用の基板を両面粘着シートに貼り付けるときに、その接着界面への気泡の巻き込みを抑制することができ、基板をワークに精度よく貼り合せることができる。
【0014】
第5の発明は、凹凸のあるワークの面に両面粘着シートを介在させて支持用の基板を貼り合せる基板貼合せ装置において、
前記ワークを載置保持する保持テーブルと、
前記保持テーブルにおける基板載置部位の外側箇所に設けられた支持テープ張設用のシートクランプと、
前記シートクランプに接着面を下向きにして張設支持された支持シートの上面を押圧移動させて、支持シートの下面に貼り付け支持して前記ワークと間隙をもって対向配置した基板を、ワークの上面に貼り付けた両面粘着シートに貼り付けて行く第1貼付けローラと、
前記第1貼付けローラによって前記ワークに貼り合された前記基板の周縁部分を押圧するように、前記ワークの面に形成された凹凸の最も外側寄りの部分から支持用の基板の外周端を含む所定幅を有する第2貼付けローラと、
前記第2貼付けローラが前記支持用の基板の周縁に沿って押圧転動するように、この第2貼付けローラと前記保持テーブルを相対的に移動させる駆動手段と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
(作用・効果) 上記構成によると、第1貼付けローラによって両面粘着シートに貼り付けられたウエハに支持用の基板が貼り合わされた後、第2貼付けローラによって基板の周縁部分が押圧されて貼り合わされてゆく。すなわち、上記第1の発明方法を好適に実現することができる。
【0016】
第6の発明は、第5の発明の基板貼合せ装置において、
前記第2貼付けローラのローラ面が前記支持用の基板の外周に向かって斜め下がり傾斜で当接するように傾き姿勢で配置した
ことを特徴とするものである。
【0017】
第7の発明は、第5の発明の基板貼合せ装置において、
前記第2貼付けローラのローラ面が前記支持用の基板の外周に向かって斜め下がり傾斜で当接するように弾性付勢する付勢手段を備えた
ことを特徴とするものである。
【0018】
第8の発明は、第5の発明の基板貼合せ装置において、
前記第2貼付けローラは、前記基板の外周側の直径が内側の直径よりも大径となるテーパー状のローラである
ことを特徴とするものである。
【0019】
(作用・効果) 第2貼付けローラのローラ面を支持用の基板の外周に向かってを斜め下がり傾斜で当接することが好ましく、例えば、第2貼付けローラを傾斜姿勢に配置したり、第2貼付けローラが傾斜姿勢となるよう付勢手段によって弾性付勢したり、第2貼付けローラの基板側の直径が内側の直径よりも大径となるテーパー状のローラを用いたりする。
【0020】
第9の発明は、第5ないし第8のいずれかの発明の基板貼合せ装置において、
前記保持テーブル、前記シートクランプ、第1貼付けローラおよび第2貼付けローラを減圧チャンバーに収容した
ことを特徴とするものである。
【0021】
(作用・効果) 上記構成によると、第1および第2貼付けローラによって支持用の基板をワークに貼り合せを減圧雰囲気中で行えるので、基板と両面粘着シートの接着界面への気泡の巻き込みを抑制することができる。すなわち、第4の発明の方法を好適に実現することができる。
【0022】
第10の発明は、第5ないし第9の発明のいずれかの基板貼合せ装置において、
前記第1および第2貼合せローラを、貼合せ前進移動速度と同一の周速度で駆動するよう構成した
ことを特徴とするものである。
【0023】
(作用・効果) 上記構成によると、支持用の基板にローラ移動方向への外力を全く作用することなく、第1および第2貼合せローラを転動移動させることができる。したがって、両基板の貼り合せ精度の向上を図ることができる。
【0024】
第11の発明は、第5ないし第10の発明のいずれかの基板貼合せ装置において、
前記保持テーブルに加熱手段が組み込まれている
ことを特徴とするものである。
【0025】
(作用・効果) 上記構成によると、保持テーブルに過熱手段が組み込まれることにより、ワークに貼り付けられた両面粘着シートの粘着剤を軟化させることができ、効率よく基板を貼り合せてゆくことができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明に係る基板貼合せ方法およびこれを用いた装置によれば、第2貼付け手段を基板の周縁部分に押圧しながら移動するように第2貼付け手段と保持手段を相対的に移動させながら、基板の周縁部分を両面粘着シートに密着させてゆく。すなわち、支持用の基板の周縁部分に両面粘着シートを精度よく貼り合せることができる。その結果、基板貼り合せ後の研削など各種加工工程において、支持用の基板とウエハの周縁部分から水などの浸入を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る基板貼合せ方法を実行する第1基板貼合せ装置の基本構造の縦断正面図、図2は図1の平面図がそれぞれ示されている。なお、本実施例では、ワークとしての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)に両面粘着シートを介して支持用の基板を貼り合せる本発明の第1貼付け工程に相当する第1基板貼合せ装置と、ワークに貼り合わされた基板の周縁部分を両面粘着シートに貼り付ける第2貼付け工程に相当する第2貼付け装置とによって構成されている。
【0029】
本実施例の第1基板貼合せ装置Aは、図1および図2に示すように、表面に凹凸であるバンプ付きのウエハWの面に、支持用の基板としてのガラス板からなる支持基板Gを両面粘着シートSを介して貼り合せるよう構成されたものであり、開閉自在な減圧チャンバー1の内部に貼合せ機構2が収容された構造となっている。
【0030】
減圧チャンバー1は、上方が開放された矩形箱状の主ケース1aと、これに揺動開閉可能に連結されたカバーケース1bとから構成されており、カバーケース1bを主ケース1aに密着閉止し、真空ポンプ10を作動させて減圧チャンバー内を抜気減圧することができるようになっている。
【0031】
貼合せ機構2は主ケース側に装備されており、ウエハWを水平に載置して保持する保持テーブル3と、この保持テーブル3の外側の前後に対向する位置に立設された一対のシートクランプ4,5と、左右水平に支架されて両シートクランプ4,5の間で前後に駆動移動される貼付けローラ6などを備えている。なお、便宜上、図の右方を前方、左方を後方とする。なお、貼付けローラ6は、本発明の第1貼付けローラに相当する。
【0032】
保持テーブル3は、その上面が真空吸着面に構成されており、位置決め載置されたウエハWを吸着保持することができる。また、保持テーブル3の内部には、後述するように、ウエハWに貼付けられた両面粘着シートSの接着剤を加熱軟化させて接着性を高めるためのヒータ7が埋設されている。なお、ヒータ7は、本発明の加熱手段に相当する。
【0033】
シートクランプ4,5は、図9に示すように、支持基板Gを貼り付け保持する支持シートTの前後両端を保持して保持テーブル3の上方に沿って浮上張設するためのものであって、その上部には支持シートTの前後の端部をくわえ込み支持するシート保持部4a,5aがそれぞれ備えられている。ここで、後方(図では左方)のシートクランプ5が固定配備されているのに対して、前方(図では右方)のシートクランプ4は、その下端の支点xを中心に前後揺動可能に支持され、かつ、常態では所定の起立姿勢に弾性保持されるとともに、後方への設定以上のモーメントが作用するとシートクランプ4が後方に傾動するよう、図示されないネジリバネが支点xに組付けられている。
【0034】
図1および図2に戻り貼付けローラ6は、金属ローラの外周にシリコンゴムなどの弾性材を被覆して構成されたものであり、主ケース1aの内部に前後移動ならびに昇降可能に配備された可動台8の下部に左右水平に支承されている。また、貼付けローラ6はモータ9で回転駆動可能であり、貼合せローラ6を前方に水平移動させる貼合せ作動の際、前進移動速度と同じ周速度で前方に自転駆動されるようになっている。
【0035】
なお、詳細な構造は図示されていないが、可動台8は、パルスモータなどによって駆動昇降制御される昇降枠にガイド軸を介して前後に水平移動可能に支持されて、ベルト式あるいはネジ式の水平駆動手段によって前後水平に移動されるようになっており、この可動台8の前後移動によって貼合せローラ6が水平に前後移動され、図示されない昇降枠の昇降によって貼付けローラ6が上下移動するようになっている。
【0036】
また、貼付けローラ6はモータ9によって回転駆動可能であり、貼付けローラ6を前方に移動させる貼合せ作動の際、前進移動速度と同じ周速度で前方に自転駆動されるようになっている。
【0037】
次に、第2基板貼合せ装置の構成について説明する。
【0038】
図3は、第1基板貼合せ装置の基本構造の縦断正面図である。
【0039】
第2基板貼合せ装置Bは、図3に示すように、支持基板Gの貼り合わされたウエハWを裏面から吸着保持する保持テーブル11と、支持基板Gの周縁部分を押圧しながら転動する貼合せ機構12とが減圧チャンバー13に収容された構造になっている。
【0040】
保持テーブル11は、ウエハWより大径の円盤状であって、その中心円筒軸14回りに回転するよう、無端ベルト15によってモータ16の回転駆動力が伝達されるように構成されている。この中心円筒軸14の先端には吸着パットが設けられており、真空ポンプ17の作動により、表面に載置されたウエハWを吸着保持する。また、保持テーブル11の内部には、ウエハWに貼付けられた両面粘着シートSの接着剤を加熱軟化させて接着性を高めるためのヒータ18が埋設されている。なお、ヒータ18は、本発明の加熱手段に相当する。
【0041】
貼り合せ機構11は、減圧チャンバー13の天井に配備されており、保持テーブル11に吸着保持されたウエハWの上側にある支持基板Gの周縁部分を押圧するように上方の待機位置と作用位置とに亘って昇降可能な貼付けローラ19が備わっている。つまり、シリンダ20に連結されたロッド先端のフランジ21に、貼付けローラ19が遊転自在に取り付けられている。なお、貼付けローラ19は、その回転軸方向の長さが、ウエハWに設けられたバンプBの最も外側寄り部分と支持基板Gの外周端を含む長さに設定されている。好ましくは、支持基板Gの外周端から所定長さはみ出る程度である。
【0042】
減圧チャンバー13は、側面に開閉自在な扉22を備えるとともに、この扉を閉止して真空ポンプ17を作動させて減圧チャンバー内を抜気減圧する。
【0043】
このように構成された第1および第2基板貼合せ装置A,Bを用いた基板貼合せ手順を、図4ないし図11を参照して以下に説明する。
【0044】
先ず、図4に示すように、カバーケース1bを持上げて減圧チャンバー1を開放し、保持テーブル3の上面にバックグラインド処理前のウエハWを、素子形成面(バンプB面)である表面を上向き姿勢で位置合せ載置して吸着保持する。なお、この時点では貼付けローラ6は手前の原点位置に待機している。
【0045】
この保持テーブル3に吸着保持されているウエハWの表面に、ウエハWと略同形状に切り抜かれたセパレータ付きの両面粘着シートSを、セパレータstを上面にして貼り合せる。
【0046】
そして、図5に示すように、ウエハWに貼り合せた両面粘着シートSのセパレータstの上面に、ウエハWと略同形状に形成した支持基板Gを位置合せ載置する。
【0047】
次に、前後のシートクランプ4,5に亘って支持シートTを、その粘着面を下向きにして張設する。ここで用いられる支持シートTは、下面に補強用基板Gを貼り付けて保持することができる接着力を有するとともに、両面粘着シートSよりも接着力の弱いものが利用される。
【0048】
支持シートTの張設が終わると、図6に示すように、貼付けローラ6を支持シートTの上面に接するまで下降させた後、自転駆動しながら前進移動させ、支持シートTの下面に支持基板Gを貼り付ける。
【0049】
支持シートTへの支持基板Gの貼り付けが終了すると、図7に示すように、貼付けローラ6を後退させるとともに、前方のシートクランプ4におけるシート保持部4aを開放し、支持シートTを前端側から上方にめくり上げて支持基板Gを一旦上方に退避させ、露呈した両面粘着シートSのセパレータstを剥離除去する。
【0050】
次に、めくり上げた支持シートTを再び下ろして前方のシートクランプ4に支持させる。これによって、支持シートTの下面に貼付け保持した支持基板Gが、ウエハWの表面に貼り付けた両面粘着シートSに対して0.5〜2.0mm、好ましくは0.1〜5.0mmの小間隙をもって対向される。この状態でカバーケース1bを閉じて減圧チャンバー1から抜気するとともに、ヒータ7をONにして保持テーブル3を加熱して両面粘着シートSの接着剤を軟化させる。
【0051】
減圧されると、図8に示すように、貼付けローラ6を前方に自転駆動しながら再び支持シートTの上面に沿って前進移動させ、支持シートTの下面に貼り付け支持した支持基板Gを両面粘着シートSに後端から前端に向けて順次貼り合せてゆく。
【0052】
この場合、自転駆動される貼付けローラ6の周速度が、ローラ前進移動速度と一致するように自転駆動速度が制御されるので、支持シートTに面方向への引きずり力が作用することが回避される。
【0053】
また、貼合せローラ6の前進移動が進むに連れて支持シートTの張力が大きくなり、この張力によって前方のシートクランプ4に働く後方へのモーメントも次第に大きくなり、シート張力が設定以上に大きくなると前方のシートクランプ4がその弾性保持力に抗して後方に傾動され、支持シートTに過大な張力が作用して伸びが発生することが回避される。
【0054】
上記処理が終了して貼付けローラ6を後退させると、図9に示すように、支持シートTは復元浮上し、支持基板Gが貼り合わされたウエハWが保持テーブル3の上の残される。ここで、減圧チャンバー内を大気圧まで戻した後、カバーケース1bを開放して前方のシートクランプ4によるシート保持を解除し、支持シートTを前端側から上方にめくり上げ退避させ、支持基板W2が貼合わされたウエハWを第2基板貼合せ装置Bに搬出する。
【0055】
この時点で、支持基板Gの貼り合わされたウエハWは、図10に示すような断面形状となる。つまり、ウエハWの表面の中央よりにはバンプBが集中しているが、周縁部分にはバンプが形成されていないため、バンプBによる凹凸の段差を接着剤が十分に吸収しきれないために、バンプBがなく低くなった周縁部分では、両面粘着シートSに支持基板Gが密着しきれない状態にある。
【0056】
第2貼付け装置Bは、このような接着不良となっている支持基板Gの周縁部分を両面粘着シートSに貼り付ける。
【0057】
先ず、減圧チャンバー13の扉22が開放され、図示しないロボットアームによって支持基板Gを上向きにした状態でウエハWが保持テーブル11に載置保持される。ウエハWが裏面から吸着保持された後、減圧チャンバー13を抜気減圧するとともに、ヒータ18をONにして保持テーブル11を加熱して両面粘着シートSの接着剤を軟化させる。このときの加熱温度としては、両面粘着シートSが変形や変質しない程度の温度が好ましく、例えば、30〜60℃、さらに好ましくは40〜50℃の範囲に設定する。
【0058】
減圧されると、図11に示すように、貼付けローラ19が上方の待機地から下方の作用位置に降下し、支持基板Gが周縁部分を押圧する。この状態で、保持テーブル11が回転し、貼付けローラ19が支持基板Gの周縁部分に沿って押圧転動しながら、この支持基板Gの周縁部分を両面粘着シートSに貼り付けてゆく。このとき、貼付けローラ19による押圧力はウエハWを破損させなければ特に限定されてないが、10〜1000Nが好ましく、さらに好ましくは100〜500Nである。
【0059】
保持テーブル11が1回転または複数回転すると回転を停止し、貼付けローラ19が待機位置に戻る。同時に減圧チャンバー内を大気圧まで戻した後、扉22を開放し、ロボットアームを挿入して吸着保持して減圧チャンバー内から搬出する。
【0060】
以上で1回の貼合せ処理が完了し、上述の処理が新たなウエハWに対して順次に繰り返し行う。
【0061】
以下に、良好な基板貼り合せを行うための好ましい実施の形態を例示する。
【0062】
(a)支持基板Gとしては、ガラス板の他に、シリコン、石英、サファイアなどの各種無機ウエハや、ステンレス鋼板などの金属板を使用することができ、ウエハWよりも硬質材料であることが好ましい。また、その外形は、ウエハWと同じサイズのものが好ましく、さらに好ましくは、ウエハWの直径よりも0.5〜5mmの範囲で大きいものである。さらに、その厚さは、その剛性にもよるが、400〜800μm程度のものである。
【0063】
(b)上記両面粘着シートSに使用する基材kとしては、プラスチックのフィルムやシートが使用されるが、これらに限定されるものではく、例えば、布、不織布、金属箔、または、これらのラミネート体、プラスチックの積層体などの適宜な枚葉体を使用することができる。また、基材kの厚さは使用する材料にもよるが、500μm以内、好ましくは1〜300μ以内、さらに好ましくは5〜250μmの範囲である。
【0064】
(c)両面粘着シートSの接着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリビニルエーテルなどの各種接着剤または粘着剤が使用できる。具体的には、感圧粘着剤、可溶性粘着剤、熱硬化性粘着剤、熱可塑性粘着剤、放射線硬化型粘着剤、熱剥離性粘着剤など、周知の粘着剤を利用できるが、裏面研削加工を行った後にウエハを損傷なく剥離することが望まれる場合には、放射線硬化型粘着剤や熱剥離性粘着剤などのエネルギ線硬化型粘着剤を使用することが好ましい。
【0065】
また、接着層または粘着層の厚さは、ウエハに損傷を与えることなく容易に剥離することができれば特に限定されないが、例えば、5〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲である。なお、バンプ側の接着層または粘着層については、ウエハ表面のバンプBの凹凸を吸収できる中間層を設けることが好ましい。
【0066】
接着層が形成する中間層としては、硬化前の弾性率が30〜1000kPa、好ましくは50〜700kPaで、かつ、中間層のゲル分率が20%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10%以下である。ここで、弾性率とは、動的粘弾性測定装置(Rheometric Scientific社製:レオメトリックARES)を利用し、25℃で測定したときの弾性率G‘である。
【0067】
(d)支持シートTは張力による伸びができるだけ少ないもの、つまり、高いヤング率を有するものが望ましく、200kg/mm2以上、好ましくは250kg/mm2以上、より好ましくは350kg/mm2以上のものを使用するとよい。このような性能を備えた支持シートの基材としては、プラスチックシート、紙、金属箔、などが挙げられるが、加工性、コスト、などの点でプラスチックシートが好適である。なお、プラスチックシートの素材としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニルサルフェート、などが挙げられる。また、このプラスチックシートに塗布される接着材としては、ゴム系、アクリル系、シリコーン系などの汎用のものを使用でき、1.5N/10mm、好ましくは、2.0〜8.0N/10mm程度の粘着力があれば、貼付け過程における補強用基板の保持性、および、貼付け過程の後における補強用基板からの剥離性を好適に発揮する。
【0068】
(e)ワークとしてのウエハWとしては、例えば、シリコン半導体ウエハの他に、プラスチックセラミック、金属などからなる回路基板や、ガリウムーヒ素、ガリウムーリンなどの化合物ウエハが考えられ、その大きさや形状は任意である。また、電子部品などにも適用できる。
【0069】
次に、本実施例の方法と装置を利用してワークであるウエハWに支持基板Gを貼り合せた後に、バックグラインド処理を施した具体例と、本具体例と異なる従来例を含む条件でワークに支持基板を貼り合せた比較実験(以下、「比較例」という)を行った。
【0070】
先ず、ワークに支持基板を貼り合せる両面粘着シートを次のようのして得た。
アクリル酸エチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸2−ヒドロキシエチル(重合比78/100/40)共重合体(平均分子量30万)100重量部に、43重量部の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させ、ポリマー分子内側鎖に炭素−炭素二重結合を導入した。
【0071】
この得られたポリマー100部に対して、ポリイソシアネート系架橋剤0.5部、アセトフェノン系光重合開始剤3部を配合し、厚さ100μmのポリエステル上に乾燥後の厚さが100μmとなるよに塗布して中間層を形成した。なお、中間層の弾性率は500kPa、ゲル分は5%であった。
【0072】
次に、アクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸エチル−メチルメタクリレート共重合体系感圧接着剤100重量部にポリウレタン系架橋剤2重量部を配合したものに、熱膨張性微小球(平均粒径が13.5μmのマツモトマイクロファイアF−30D:松本油脂製)30重量部を配合し、これをセパレータ上に乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布および乾燥して形成し、上記ポリエステルフィルム上に形成した中間層に貼り合せ、両面粘着シートを得た。
【0073】
具体例では、100μmのバンプが設けられたウエハの表面に両面粘着シートの中間層を介して設けられたエネルギ硬化型粘着層を貼り合せた後に、加熱剥離層側にガラス製のウエハと略同形状の支持基板を貼り合せた。その後、支持基板の周縁部分を100Nで押圧した。
【0074】
比較例1では、100μmのバンプが設けられたウエハの表面に両面粘着シートの中間層を介して設けられたエネルギ硬化型粘着層を貼り合せた後に、加熱剥離層側にガラス製のウエハと略同形状の支持基板を貼り合せただけである。
【0075】
比較例2では、100μmのバンプが設けられたウエハの表面に両面粘着シートの中間層を介して設けられたエネルギ硬化型粘着層を貼り合せた後に、加熱剥離層側にガラス製のウエハと略同形状の支持基板を貼り合せた。その後、支持基板の周縁部分を1Nで押圧した。
【0076】
具体例および各比較例1,2で得た支持基板の貼り合せたウエハを各10枚用意し、各ウエハの裏面をディスコ株式会社製のシリコンウエハ研削機により厚さが50μmになるまで研削した後、ウエハ周縁部分への水の浸入および割れを目視により確認した。
【0077】
その結果、具体例によって得たウエハは、10枚とも水の浸入および割れが確認できなかった。これに対して、比較例1で得たウエハは、10枚全部に水および割れが確認された。さらに、比較例2で得たウエハについても、10枚中8枚に水の浸入が確認でき、また10枚中7枚に割れが確認できた。
【0078】
以上のことから、バンプBの設けられたウエハWの表面に支持基板Gを貼り合せた後に、さらに支持基板Gの周縁部分を押圧して貼り合せることにより、支持基板Gを両面粘着シートSに精度よく密着させることができ、ひいて支持基板GをウエハWの貼り合せ精度を向上させることができる。その結果、ウエハ裏面の研削加工時に端部からの水の侵入などを防止し、ウエハWの破損を抑制することができる。
【0079】
本発明は上述した実施例のものに限らず、次のように変形実施することもできる。
【0080】
(1)上記実施例では、第2基板貼合せ装置Bの貼付けローラ19を上方の待機位置から下方の作用位置に降下させて水平姿勢のまま支持基板Gを押圧していたが、支持基板Gの外周に向かって貼付けローラ19を斜め下がり傾斜姿勢となるように支持基板Gを押圧するように構成してもよい。このように構成する場合、例えば、図12に示すように、ローラの内側の軸を上側に向うバネ付勢に抗して押し当てて斜め傾斜姿勢となるように構成してもよいし、図13に示すように、支持基板Gの外周側の貼付けローラ19の直径を内側の直径よりも大径にしたテーパー状の貼付けローラ19aを利用してもよい。
【0081】
これらいずれの変形例の場合も、その傾斜角度は適宜に設定変更できるように構成することが好ましい。このように構成することで、支持基板Gのが周縁部分に略均一に押圧を加えることができ、ウエハWの端部の破損を防止することができる。
【0082】
(2)上記実施例では、第2基板貼合せ装置Bの各機構を減圧チャンバー内に収納していたが、減圧チャンバーのない構成であってもよい。
【0083】
(3)上記実施例では、第2基板貼合せ装置Bの貼合せローラ19を遊転自在に支持していたが、貼合せローラ19自体を回転駆動させるように構成してもよい。この場合、保持テーブル11の回転速度と同一の周動速度で駆動するように構成することが好ましい。
【0084】
また、保持テーブル11の回転駆動に代わって、貼付けローラ19を支持基板Gの周縁に沿って転動するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る第1基板貼合せ装置の縦断側面図である。
【図2】本発明に係る第1基板貼合せ装置の平面図である。
【図3】本発明に係る第2基板貼合せ装置の縦断側面図である。
【図4】基板貼合せ過程を示す概略側面図である。
【図5】基板貼合せ過程を示す概略側面図である。
【図6】基板貼合せ過程を示す概略側面図である。
【図7】基板貼合せ過程を示す概略側面図である。
【図8】基板貼合せ過程を示す概略側面図である。
【図9】基板貼合せ過程を示す概略側面図である。
【図10】第1基板貼合せ装置で支持基板をウエハに貼り合せたときの断面図である。
【図11】基板貼合せ過程を示す概略側面図である。
【図12】変形例装置の貼付けローラを示す図である。
【図13】変形例装置の貼付けローラを示す図である。
【符号の説明】
【0086】
A … 第1基板貼合せ装置
B … 第2基板貼合せ装置
W … ウエハ
W2… 補強用基板
S … 両面粘着シート
T … 支持シート
3 … 保持テーブル
4 … シートクランプ
5 … シートクランプ
6 … 貼付けローラ(第1貼付けローラ)
11 … 保持テーブル
19 … 貼付けローラ(第2貼付けローラ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸のあるワークの面に両面粘着シートを介在させて支持用の基板を貼り合せる基板貼合せ方法において、
前記ワークの凹凸のある面に前記両面粘着シートを貼り付ける第1貼付け過程と、
前記両面粘着シートよりも接着力の弱い支持シートの粘着面に前記基板を貼り付け、所定の間隙をもって前記ワークと対向させて位置合せして配置する位置合せ過程と、
前記支持シートの被粘着面に第1貼付け手段を押圧しなが前記ワークに貼り付けた両面粘着シートに前記基板を貼り付ける第2貼付け過程と、
保持手段に保持した前記基板と一体になった前記ワークの基板面の周縁部分に第2貼付け手段を押圧するとともに、このワークの周縁に沿って第2貼付け手段が移動するように、この第2貼付け手段と保持手段を相対的に移動させて基板をワークに貼り付ける第3貼付け過程と、
を備えたことを特徴とする基板貼合せ方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板貼合せ方法において、
前記第1貼付け手段は、前記支持用の基板および前記ワークよりも幅広の貼付けローラであり、
前記第2貼付け手段は、前記ワークの面に形成された凹凸の最も外周寄りの部分から支持用の基板の外周端を含む所定幅を有する貼付けローラである
ことを特徴とする基板貼合せ方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板貼合せ方法において、
前記第2貼付けローラのローラ面を支持用の基板の周縁に向かって斜め下がり傾斜で当接する
ことを特徴とする基板貼合せ方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板貼合せ方法において、
前記第2貼付け過程および前記第3貼付け過程では、減圧雰囲気中で支持用の基板を前記ワークに貼り合せる
ことを特徴とする基板貼合せ方法。
【請求項5】
凹凸のあるワークの面に両面粘着シートを介在させて支持用の基板を貼り合せる基板貼合せ装置において、
前記ワークを載置保持する保持テーブルと、
前記保持テーブルにおける基板載置部位の外側箇所に設けられた支持テープ張設用のシートクランプと、
前記シートクランプに接着面を下向きにして張設支持された支持シートの上面を押圧移動させて、支持シートの下面に貼り付け支持して前記ワークと間隙をもって対向配置した基板を、ワークの上面に貼り付けた両面粘着シートに貼り付けて行く第1貼付けローラと、
前記第1貼付けローラによって前記ワークに貼り合された前記基板の周縁部分を押圧するように、前記ワークの面に形成された凹凸の最も外側寄りの部分から支持用の基板の外周端を含む所定幅を有する第2貼付けローラと、
前記第2貼付けローラが前記支持用の基板の周縁に沿って押圧転動するように、この第2貼付けローラと前記保持テーブルを相対的に移動させる駆動手段と、
を備えたことを特徴とする基板貼合せ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板貼合せ装置において、
前記第2貼付けローラのローラ面が前記支持用の基板の外周に向かって斜め下がり傾斜で当接するように傾き姿勢で配置した
ことを特徴とする基板貼合せ装置。
【請求項7】
請求項5に記載の基板貼合せ装置において、
前記第2貼付けローラのローラ面が前記支持用の基板の外周に向かって斜め下がり傾斜で当接するように弾性付勢する付勢手段を備えた
ことを特徴とする基板貼合せ装置。
【請求項8】
請求項5に記載の基板貼合せ装置において、
前記第2貼付けローラは、前記基板の外周側の直径が内側の直径よりも大径となるテーパー状のローラである
ことを特徴とする基板貼合せ装置。
【請求項9】
請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の基板貼合せ装置において、
前記保持テーブル、前記シートクランプ、第1貼付けローラおよび第2貼付けローラを減圧チャンバーに収容した
ことを特徴とする基板貼合せ装置。
【請求項10】
請求項5ないし請求項9のいずれかに記載の基板貼合せ装置において、
前記第1および第2貼合せローラを、貼合せ前進移動速度と同一の周速度で駆動するよう構成した
ことを特徴とする基板貼合せ装置。
【請求項11】
請求項5ないし請求項10のいずれかに記載の基板貼合せ装置において、
前記保持テーブルに加熱手段が組み込まれている
ことを特徴とする基板貼合せ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−258210(P2007−258210A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76639(P2006−76639)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(394016601)日東精機株式会社 (79)
【Fターム(参考)】