基準信号生成装置及びこれを用いた機器
【課題】広く普及しているADSL方式等を採用した通信回線を利用して、利用者側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることが可能な基準信号生成装置及びこれを用いた機器を提供する。
【解決手段】局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムを用いて基準信号を生成する基準信号生成装置において、前記局側の通信装置から前記通信回線を介して伝送される一定の周波数を有する基準信号が含まれる信号を入力し、前記入力信号から基準信号を抽出する基準信号抽出回路を備えるように構成した。
【解決手段】局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムを用いて基準信号を生成する基準信号生成装置において、前記局側の通信装置から前記通信回線を介して伝送される一定の周波数を有する基準信号が含まれる信号を入力し、前記入力信号から基準信号を抽出する基準信号抽出回路を備えるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line :非対称デジタル加入者専用線)方式等を採用した通信回線を介して利用者側の端末装置に入力される信号を利用して、非常に高精度の基準信号を生成することが可能な基準信号生成装置及びこれを用いた機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2007−215104号公報
【特許文献2】特開2007−221551号公報
【特許文献3】特開2007−300471号公報
【特許文献4】特開2007−306352号公報
【特許文献5】特開2008−10994号公報
【0003】
近年、光ファイバーを用いた光通信が企業は勿論のこと、一般家庭にまで普及しつつあるが、既存の電話回線を利用して安価にインターネット通信等を可能とし、ブロードバンド環境を実現する手段として、ADSL方式に代表されるxDSL方式が広く利用されている。
【0004】
ところで、ADSL方式等を採用した通信技術を含むあらゆる技術分野で、アナログ方式に代わってデジタル方式が用いられてきている。その一例として、デジタル通信技術の発達・普及等に伴って、一般ユーザ間において、文字情報や画像情報等からなるデータの作成や、作成されたデータの送受信等を行う機会が増加してきている。
【0005】
上述した例では、ユーザがデータを作成した日時や、データの送受信等を行った日時を正確に記録したり証明する必要性が生じてきており、データの送信日時や受信日時等を証明するタイムスタンプと称される時刻証明技術などが種々提案されている。
【0006】
かかる時刻証明技術に関するものとしては、例えば、特開2007−215104号公報や特開2007−221551号公報、あるいは特開2007−300471号公報、特開2007−306352号公報等に開示されたものが既に種々提案されている。
【0007】
上記特開2007−215104号公報に係る端末機器は、子機端末と、前記子機端末と通信可能な端末機器と、前記端末機器から計測値を受信する情報処理サーバと、を用いて構成された情報処理システムで使用する端末機器であって、
前記子機端末が計測対象を計測した計測値を前記子機端末から取得する計測値取得手段と、
前記計測値受信手段で計測値を受信した際の時刻を計測する時計装置と、
前記受信した計測値に対して前記取得した時刻による時刻証明情報を生成する時刻証明情報生成手段と、
を具備するように構成したものである。
【0008】
また、上記特開2007−221551号公報に係る記録装置は、記録対象の情報をデジタルデータとして取得するデジタルデータ取得手段と、
前記デジタルデータを取得した際の時刻を計測する時計装置と、
前記デジタルデータを取得した際の現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
秘密鍵を記憶する秘密鍵記憶手段と、
前記取得したデジタルデータと、前記取得した時刻と、前記取得した現在位置情報と、を含む記録データを生成し、前記記憶した秘密鍵で当該生成した記録データをデジタル署名する署名手段と、
を具備するように構成したものである。
【0009】
さらに、上記特開2007−306352号公報に係る基準時刻提供装置は、基準時刻を計測するための基準時計装置と、
前記計測された基準時刻を電子署名する署名手段と、
前記基準時刻と前記電子署名を含む時刻証明書を生成する時刻証明書生成手段と、
デジタル放送によって送信するために、前記生成した時刻証明書をデジタル放送システムに提供する時刻証明書提供手段と、
を具備するように構成したものである。
【0010】
又、上記特開2007−300471号公報に係るデータ作成時刻証明システムは、データ作成プログラムを備えた端末装置と、データ作成時刻証明サーバと、タイムスタンプを発行するタイムスタンプサーバと、をネットワークを介して接続したデータ作成時刻証明システムであって、
前記端末装置が、
データ作成時刻証明サーバとの通信を開始する通信開始手段、
データ作成時刻証明サーバから通信開始の応答を受けた時からデータ作成プログラムが起動するまでの時間を第1の時間として計測する第1の時間計測手段、
データ作成時刻証明サーバに、少なくともデータ作成プログラムで生成したコンテンツデータの特徴データを送信する特徴データ送信手段、
データ作成プログラムの終了時から、特徴データ送信手段による送信開始時までの時間を第2の時間として計測する第2の時間計測手段、
データ作成時刻証明サーバに前記第1の時間および前記第2の時間を送信する計測時間送信手段、
を備え、
前記データ作成時刻証明サーバが、
端末装置からの通信開始要求を受けた時から、端末装置から少なくとも特徴データを受信するまでの時間を第3の時間として計測する第3の時間計測手段、
端末装置から受信した特徴データをタイムスタンプサーバに送信する特徴データ転送手段、
特徴データ転送手段が送信した特徴データについてのタイムスタンプをタイムスタンプサーバから受信するタイムスタンプ受信手段、
タイムスタンプサーバに特徴データを送信した時から、タイムスタンプサーバからタイムスタンプを受信するまでの時間を第4の時間として計測する第4の時間計測手段、
を備え、
前記タイムスタンプサーバが、
前記データ作成時刻証明サーバから受信した特徴データについて、タイムスタンプ時刻を含むタイムスタンプを生成するタイムスタンプ生成手段、
前記データ作成時刻証明サーバにタイムスタンプを送信するタイムスタンプ送信手段、
を備えたデータ作成時刻証明システムにおいて、
前記データ作成時刻証明サーバが、
前記端末装置から受信した第1の時間および第2の時間と、前記第3の時間計測手段で計測した第3の時間と、前記第4の時間計測手段で計測した第4の時間と、前記タイムスタンプサーバから受信したタイムスタンプ時刻と、に基づいてデータ作成時刻証明を生成するデータ作成時刻証明生成手段、
を備えるように構成したものである。
【0011】
上記の如く提案された種々の技術では、いずれも、時刻を計測する時計装置が必須の構成要素となっている。ところで、時刻を計測する時計装置は、時刻を証明するために使用されるものであり、非常に高い精度が要求される。この非常に高い精度が要求される時計装置としては、現在、セシウム原子(Cs)やルビジウム(Rb)原子のもつ極めて安定度の高い固有周波数を利用した基準発信器が用いられている。
【0012】
独立行政法人情報通信研究機構では、セシウム原子時計7台を使用して時間を計測しており、セシウム原子時計は、誤差が10-12程度という非常に高い精度を有している。因みに、日本の標準時はこのセシウム原子時計を基準に定められている。また、NTTやテレビ放送局などの通信事業者や放送事業者は、独立行政法人情報通信研究機構のセシウム原子時計をレファレンスとして、累積誤差の無い正確な時刻に基づいて通信事業や放送事業を提供している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような技術的課題を有している。すなわち、上記特開2007−215104号公報や特開2007−300471号公報、あるいは特開2007−306352号公報、特開2007−221551号公報等に開示された技術は、いずれも、時計装置として、独立行政法人情報通信研究機構等に設置されたセシウム原子時計等から時刻情報を得る必要があり、一般企業や個人等が使用する端末機器側において、正確な時刻等の基準となる非常に高い周波数精度を有する基準信号を容易に得ることができないという技術的課題を有していた。
【0014】
また、上記基準発信器として、ルビジウム(Rb)原子を用いた基準発信器なども市販されており、このルビジウム(Rb)原子を用いた基準発信器は、周波数安定性が5×10-11以下であり、非常に高い精度を有しているものの、価格が数100万円程度と非常に高価であるという技術的課題を有していた。
【0015】
一方、既存のシステムを変更することなく、クロック伝送を行うことを目的とした技術としては、特開2008−10994号公報等に開示された技術が既に提案されている。
【0016】
この特開2008−10994号公報に係るxDSLシステムは、第1及び第2のxDSL(x Digital Subscriber Line)装置を対向して配置するxDSLシステムであって、
前記第1のxDSL装置側及び第2のxDSL装置側各々に、電話音声用の4KHz以下の帯域において基準クロックを変復調する変復調手段を有するように構成したものである。
【0017】
しかしながら、上記特開2008−10994号公報に係るxDSLシステムの場合には、第1のxDSL装置側及び第2のxDSL装置側各々に、電話音声用の4KHz以下の帯域において基準クロックを変復調する変復調手段を新たに設ける必要があり、電話局側のDSLAM周辺機器に、各電話回線毎の改造が必要であり、コストアップを招くとともに、電話音声用の4KHz以下の帯域において基準クロックを重畳させる必要があるため、音声にノイズが生じたり、同期動作時に電話の発着信が制約される虞れがあるという技術的課題を有していた。
【0018】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、広く普及しているADSL方式等を採用した通信回線を利用して、利用者側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることが可能な基準信号生成装置及びこれを用いた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
すなわち、上記の課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムを用いて基準信号を生成する基準信号生成装置において、
前記局側の通信装置から前記通信回線を介して伝送される一定の周波数を有する基準信号が含まれる信号を入力し、前記入力信号から基準信号を抽出する基準信号抽出回路を備えたことを特徴とする基準信号生成装置である。
【0020】
また、請求項2に記載された発明は、前記基準信号抽出回路によって抽出された基準信号の位相を補正することにより、前記局側の基準信号と同期した基準信号を出力する位相補正回路と
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の基準信号生成装置である。
【0021】
さらに、請求項3に記載された発明は、前記通信回線は、ADSL方式を採用した通信回線であって、前記基準信号として、ISDN方式の基準信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の基準信号生成装置である。
【0022】
又、請求項4に記載された発明は、前記通信回線は、ADSL方式を採用した通信回線であって、前記基準信号として、ISDN方式の基準信号に位相同期させた送受信のベース信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の基準信号生成装置である。
【0023】
更に、請求項5に記載された発明は、前記位相補正回路は、前記基準信号抽出回路によって抽出された基準信号の位相を平均化することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基準信号生成装置である。
【0024】
また、請求項6に記載された発明は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
移動体無線通信を行う通信領域を複数のセルに分割するとともに、前記各セルを更に複数のセクタに分割し、前記各セル毎に無線通信基地局を配置し、前記無線通信基地局と対応するセル内に位置する移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うIPデータ無線通信システムに用いる無線通信基地局装置において、
前記無線通信基地局と前記移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うために使用される信号を、前記複数のセル間又は前記複数のセクタ間の少なくとも一方で同期させることによって干渉を低減する干渉低減手段を備え、
前記干渉低減手段は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置によって基準信号を用いて、前記IPデータの無線通信を行うために使用される信号を同期させることで干渉を低減することを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器である。
【0025】
さらに、請求項7に記載された発明は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
前記基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する計時手段を備えたことを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器である。
【0026】
又、請求項8に記載された発明は、前記計時手段によって計測された時刻と基準時刻との同期をとる時刻同期手段を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の機器である。
【0027】
更に、請求項9に記載された発明は、前記計時手段によって計測された時刻に基づいて時刻証明を発行する発行手段を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の機器である。
【0028】
また、請求項10に記載された発明は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
互いに離間した場所に配置される複数の基準信号生成装置と、
前記複数の基準信号生成装置に対応して配置され、各基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する複数の計時手段と、
前記各計時手段によって計測された時刻に基づいて、互いに離間した場所で同一時刻に同期制御する同期制御手段とを備えたことを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、広く普及しているADSL方式等を採用した通信回線を利用して、利用者側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることが可能な基準信号生成装置及びこれを用いた機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0031】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1に係る基準信号生成装置を適用したADSL方式の通信システムを示す構成図である。なお、この通信システムは、ADSL方式のうち、Annex C方式を採用している。
【0032】
図1において、100はNTT等の電話局の局舎内に設置される局側の通信装置としてのDSLAM(Digital Subscriber Line Access Multiplexer:DSL アクセス集線装置)を示すものであり、このDSLAM100は、一般電話回線等からなる通信回線200を介してユーザである企業や個人の自宅等に設置された通信端末装置としての子機モデム300と接続されている。そして、ユーザ側の子機モデム300は、一般電話回線等からなる通信回線200など、NTTや他の通信事業者が提供するコア・ネットワークを経由して、インターネット等の通信網と接続可能となっている。
【0033】
上記DSLAM100は、ADSL方式等によって通信を提供する通信事業者が電話局の局舎内に設置するものであり、このDSLAM100は、電話局に接続される一般電話回線等からなる通信回線200に対して、図示しない主配電盤であるMDF(main distributing frame)を介して電話交換機(図示せず)と分岐されている。
【0034】
また、上記DSLAM100は、通信回線200を介してユーザ側の子機モデム300と通信を行うための送受信機101を備えており、この送受信機101は、ベース信号である周波数f1 のDSLAMクロック信号102を用いてADSL方式によるデータの送受信を行う。なお、図示例では、ユーザ側の子機モデム300が1つのみ図示されているが、DSLAM100に接続された子機モデム300は、複数存在することは勿論である。
【0035】
ところで、通信事業者が提供するADSL方式の通信は、ITU(国際電気通信連合)によって標準化された規格であるG.992(G.dmt/G.Lite)等によって規定されており、世界の各地域の通信事情を考慮した規定を加えた付帯規格として、日本向けのAnnex Cや、北米向けのAnnex A、あるいはヨーロッパ向けのAnnex Bなどが用意されている。
【0036】
我が国では、上述したように、主にAnnex C規格が用いられているが、通信事業者によっては、Annex C以外の規格であるAnnex A規格等が用いられている。これらの規格のうち、Annex C規格では、ISDN干渉を防ぐために、ISDNのピンポン伝送と称される時分割方向制御方式 (Time Compression Modulation) に同期させて、やはり時分割方向制御方式によるAMI符号化を採用したベースバンド伝送を行っている。そして、このAnnex C規格では、加入者線間で同期させて送信と受信を切り替えるため、近端漏話NEXT(Near End Crosstalk)が無く、遠端漏話FEXT(Far End Crosstalk)のみとなり、細い加入者線で比較的長距離の伝送が可能となっている。
【0037】
ここで、近端漏話とは、通信を行う端末の側で発生する漏話現象を言い、これに対して、遠端漏話とは、通信端末から離れた場所にある通信回線の束において、電磁波などの干渉によってノイズ等が発生することをいう。
【0038】
ISDNにおける時分割方向制御方式では、図2に示すように、局から子機への通信と、子機から局への通信とを、1.25msの時間間隔毎に切り替えている。
【0039】
そのため、上記DSLAM100では、図1に示すように、ハードウエア又はソフトウエアで実現されるISDN同期スケジュール手段103を用いて、送信と受信を切り替えるタイミングを、ISDN方式の基準信号である一定周波数f0=400Hzの基準同期クロック104に同期させている。この基準同期クロック104は、通信品質を維持するために、非常に高い精度が要求され、独立行政法人情報通信研究機構等に設置されたセシウム原子時計等から供給される基準信号や、NTT等の局舎内に設置されたセシウム原子やルビジウム原子を用いた基準発振器から出力される基準信号に基づいて生成されており、5×10-9 以下、原理的には5×10-12程度の非常に高い周波数精度を有している。
【0040】
また、上記局側のDSLAM100と通信回線200を介して接続されたユーザ側の子機モデム300は、図1に示すように、局側のDSLAM100と通信を行うための送受信機301を備えており、局側のDSLAM100から周波数f1 のベースバンド信号によって伝送されてくるデータ信号の受信及び所望のデータ信号の送信を行うように構成されている。
【0041】
上記局側のDSLAM100とユーザ側の子機モデム300との間で通信されるADSL信号は、図3に示すように、ISDN信号に同期して、局側のDSLAM100からユーザ側の子機モデム300への下りの通信と、ユーザ側の子機モデム300から局側のDSLAM100への上りの通信とが切り換えられる。また、局側のDSLAM100とユーザ側の子機モデム300との間で送受信されるADSL信号は、例えば、0.264msを周期とするフレームに分割されているとともに、下りフレームの数の方が上りフレームの数よりも多く設定されており、通信回線200は、非対称の非対称デジタル加入者専用線となっている。
【0042】
その結果、上記Annex C規格のADSL方式を採用した通信システムは、ISDN信号に同期した同期網(ATM:Asynchronous Transfer Mode)を構成している。この同期網では、図4に示すように、通信装置Aから通信装置Bを介して通信装置Cにデータを伝送する場合を例にとると、図5に示すように、通信装置Aから基準クロックに同期して送信されたデータ信号が、通信装置Bを介して通信装置Cで受信されるまでの間、データ信号は、各通信装置の間で完全に同期した基準クロックによって伝送される。この同期網においては、基準クロックの周波数が、各通信装置A〜C間で完全に一致している。ただし、上記データ信号が通信装置Aから通信装置Cまで伝送される間に、通信回線や中継機が持つ時定数等の電気特性に依存して遅延が発生する虞れがあるが、この遅延は、各通信装置で用いられる基準クロックの周波数が完全に一致しているため、固定的に取り扱うことが可能となっている。
【0043】
これに対して、通信システムがIP通信に代表される非同期網の場合には、図6に示すように、通信装置A〜C間で、基準クロックに基づいてデータの送受信が行われるが、基準クロックは、各通信装置A〜Cが個々に有するものであって、各通信装置A〜C間で基準クロックが同期している必要はない。従って、この非同期網では、基準クロックの周波数は保証されておらず、遅延は動的に変化するものである。
【0044】
そこで、この実施の形態では、Annex C規格のADSL方式を採用した通信システムが同期網を構成していることに鑑みて、局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムを用いて基準信号を生成する基準信号生成装置において、前記局側の通信装置から前記通信回線を介して伝送される一定の周波数を有する基準信号が含まれる信号を入力し、前記入力信号から基準信号を抽出する基準信号抽出回路と、前記基準信号回路によって抽出された基準信号の位相を補正することにより、前記局側の基準信号と同期した基準信号を出力する位相補正回路とを備えるように構成されている。
【0045】
すなわち、この実施の形態では、図1に示すように、ユーザ側において、子機モデム300に接続された通信回線200から分岐して基準信号生成装置400が接続されており、基準信号生成装置400には、電話局側のDSLAM100から通信回線200を介して伝送される一定の周波数f0を有する基準信号104が含まれる信号が入力されている。
【0046】
上記基準信号生成装置400は、図7に示すように、大別して、基準信号抽出回路410と、位相補正回路420と、位相同期回路430とから構成されている。この基準信号抽出回路410は、通信回線200を介して電話局側のDSLAM100から送信されてくる基準信号104を含むADSL信号501を増幅する第1段の増幅器411を備えており、この第1段の増幅器411によって増幅された信号は、第1段のフィルター回路412を介して基準信号に相当する周波数の信号502が抽出される。その後、上記基準信号抽出回路410では、第1段のフィルター回路412によって抽出された基準信号に相当する周波数の信号502が、第2段の増幅器413によって更に増幅されるとともに、第2段のフィルター回路414によって基準信号に相当する周波数の信号503のみが抽出される。なお、上記増幅器411、413とフィルター回路412、414は、上述したように、複数段(図示例では、2段)設けても良いが、増幅器やフィルター回路の特性によっては、1段のみ設けても良いことは勿論である。
【0047】
また、上記基準信号抽出回路410で抽出された基準信号503は、位相補正回路420に入力されて位相が補正され、局側の基準信号104との位相同期がとられる。この位相補正回路420は、位相比較器421と、平均化回路422と、VCO(電圧制御発振回路)423と、分周器424とから構成されている。上記基準信号抽出回路410で抽出された基準信号503は、位相補正回路421に入力されて分周器424から出力される信号と位相が比較される。この位相比較器421は、入力された基準信号503と、分周器424から出力される信号の位相差に応じた電圧からなる信号を出力する。上記位相比較器421から出力された信号は、平均化回路422によって平均化された後、VCO423に入力される。上記平均化回路422としては、例えば抽出したい目標の信号、すなわちISDNの同期周波数2.5ms前後の時定数の回路を使用するのが望ましい。
【0048】
上記VCO423からは、平均化回路421によって平均化された電圧に応じた周波数の正弦波やパルス状の信号504が出力される。このVCO423から出力される信号504は、分周器424に入力されて、当該分周器424からは、周波数がN分割(Nは整数または分数)された信号が出力される。
【0049】
そして、上記位相補正回路420からは、基準信号503の位相が平均化されて、局側の基準信号104との間で位相が同期した基準信号である基準クロック504が出力される。
【0050】
更に、この実施の形態では、図7に示すように、位相補正回路420の後段に、位相同期回路430が設けられており、この位相同期回路430からは、局側の基準信号104と位相が同期した基準クロック504であって、所望の周波数の基準クロック505が出力端子435から出力されるようになっている。上記位相同期回路430は、位相比較器431と、ループフィルター回路432と、VCO(電圧制御発振回路)433と、分周器434とから構成されている。
【0051】
上記位相補正回路420によって局側の基準信号104と同期がとられた基準信号504は、位相比較回路431に入力されて分周器434から出力される信号を位相が比較される。この位相比較器431は、入力された基準信号504と、分周器434から出力される信号の位相差に応じた電圧からなる信号を出力する。上記位相比較器431から出力された信号は、ローパスフィルタ等からなるループフィルター回路432によって位相が補償された後、VCO433に入力される。
【0052】
上記VCO433からは、ループフィルター回路432によって位相が補償された信号に応じた周波数のパルス信号が出力される。このVCO433から出力されるパルス信号は、分周器434に入力されて、当該分周器434からは、周波数がN分割(Nは整数または分数)された信号が出力される。なお、この分周器434によって分割される周波数の数Nは、分割数設定器436によって任意に設定可能となっている。
【0053】
そして、上記位相同期回路430からは、局側の基準信号104と位相が同期し、且つ所望の周波数の基準クロック505が出力端子435から外部に出力される。
【0054】
以上の構成において、この実施の形態に係る基準信号生成装置では、次のようにして、広く普及しているADSL方式等を採用した通信回線を利用して、利用者側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることが可能となっている。
【0055】
すなわち、この実施の形態に係る基準信号生成装置400では、図1に示すように、通信事業者が提供するADSLに加入したユーザが有する通信端末装置である子機モデム300を使用し、通信回線200を介して局側のDSLAM100と接続する。上記子機モデム300は、図3に例を示すように、DSLAM100と通信をする際に、ISDN干渉を抑制するために、局側のDSLAM100とISDNに同期した周期で通信を行っている。
【0056】
上記子機モデム300側では、通信回線200を介して局側のDSLAM100から伝送されてくるADSL信号501を、送受信機301の入力側から分岐して基準信号生成装置400に入力する。この基準信号生成装置400では、図7に示すように、局側のDSLAM100から伝送されてくるADSL信号501を、第1段の増幅器411によって増幅した後、第1段のフィルター回路412によってADSL信号に含まれる基準信号502が抽出される。更に、上記基準信号発生装置400では、抽出された基準信号502を、再度、第2段の増幅器413によって増幅した後、第2段のフィルター回路414によってADSL信号501に含まれる基準信号503のみが抽出される。
【0057】
その後、上記基準信号発生装置400では、図7に示すように、第2段目のフィルター回路414によって抽出された基準信号503を、位相補正回路420によって位相を補正することにより、局側の基準信号104と位相が同期した基準信号504が得られる。
【0058】
更に、上記基準信号発生装置400では、ユーザのニーズに応じて、位相同期回路430によって所望の周波数を有する基準信号505に変換された後、出力端子435から外部のシステムに出力される。
【0059】
このように、上記実施の形態に係る基準信号生成装置400では、通信回線200を介して局側のDSLAM100から伝送されてくるADSL信号501を用いて、当該ADSL信号に含まれる非常に精度の高い周波数精度を有する基準信号502、503を抽出し、位相を補正した上で基準クロック504を出力するため、通信回線200に通信以外に使用する信号を重畳させる必要がないとともに、局側のDSLAM周辺機器に新たな設備を増設する必要もなく、ユーザ側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることができる。
【0060】
実験例
次に、本発明者は、上記の如く構成される基準信号生成装置の動作を確認するため、図7及び図8に示すような基準信号生成装置400を試作し、当該基準信号生成装置400の各所に流れる信号をオシロスコープを用いて観察する実験を行った。尚、オシロスコープとしては、岩崎通信機社製のSS5711を用いた。
【0061】
図8は上記基準信号生成装置の各所に流れる信号をオシロスコープを用いて観察した状態を示す波形図である。
【0062】
図8の左上の波形は基準信号生成装置400に入力するADSL信号501を示すものであり、このADSL信号501には、周波数帯域が30KHz〜1.1MHzの信号、及び400Hzの基準信号104が含まれている。
【0063】
また、図8の左下の波形は基準信号生成装置400の第1段のフィルター回路412の出力信号502を示すものであり、この出力信号502には、ノイズ等がかなり含まれており、未だ基準信号のみが抽出されていないことが判る。
【0064】
さらに、図8の右下の波形は基準信号生成装置400の第2段のフィルター回路414の出力信号503を示すものであって、この出力信号503は、ノイズ等が除去されて基準信号のみが抽出されており、図9に示すように、1/2周期が1.25msと完全に一致しているが、位相が変動して振れている波形となっていることがわかる。
【0065】
又、図8の右下の波形は基準信号生成装置400の位相補正回路420の出力信号504を示すものであって、この出力信号504は、図10に示すように、1/2周期が1.25msと局側の基準信号104と完全に一致しているのは勿論のこと、位相も補正されて局側の基準信号104と同期したものとなっている。また、上記位相補正回路420の出力信号504は、上述したように、1/2周期が1.25msと完全に一致、つまり周波数が局側の基準信号104と完全に一致しているとともに、局側の基準信号104と位相差δを有していても、当該位相差δは一定となっており、完全に同期したものとなっている。
【0066】
実施の形態2
図11は本発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態2では、前記基準信号として、ADSL方式を採用した通信回線において、ISDN方式の基準信号に位相同期させた送受信のベース信号を用いるように構成されている。
【0067】
すなわち、この実施の形態では、図11に示すように、ADSL方式を採用した通信システムとして、Annex C規格以外のAnnex A規格等を採用したものとなっている。したがって、この通信システムでは、基本的に、局側の通信装置であるDSLAM100と、ユーザ側の子機モデム300との間で通信されるADSL信号501が、IDSN信号に同期していない構成が前提となっている。
【0068】
そこで、この実施の形態では、図11に示すように、DSLAM100がデータの伝送に使用するDSLAMクロック102そのものを、PLL同期回路105を用いて、ISDN方式の基準信号である一定周波数f0=400Hzの基準同期信号104と同期させるように構成されている。その結果、上記通信回線200を介して伝送されるADSL信号501そのものが、ISDN方式の基準信号である一定周波数f0=400Hzの基準クロック104と完全に同期したものとなっている。
【0069】
そして、この実施の形態に係る基準信号生成装置400は、図12に示すように、基本的に、基準信号抽出回路410そのものから構成されており、当該基準信号抽出回路410からは、通信回線200を介して伝送されるADSL信号501から、ISDN方式の基準信号である一定周波数f0=400Hzの基準信号104に同期したDSLAMクロック102そのものが抽出されて出力される。その際、上記基準信号抽出回路410を構成する増幅器411とフィルター回路412は、前記実施の形態1と同様に必要に応じて複数段(例えば、2段)設けても良い。
【0070】
また、上記基準信号抽出回路410の後段には、必要に応じて、位相同期回路430が配設され、所望の周波数の基準信号を出力可能となっている。
【0071】
この実施の形態2では、電話局内の改造は、DSLAM100にPLL同期回路104を追加するのみであり、又、音声に一切問題が生じることはなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることができる。
【0072】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
実施の形態3
図13は本発明の実施の形態3を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態3では、基準信号生成装置を用いた機器であって、移動体無線通信を行う通信領域を複数のセルに分割するとともに、前記各セルを更に複数のセクタに分割し、前記各セル毎に無線通信基地局を配置し、前記無線通信基地局と対応するセル内に位置する移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うIPデータ無線通信システムに用いる無線通信基地局装置において、前記無線通信基地局と前記移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うために使用される信号を、前記複数のセル間又は前記複数のセクタ間の少なくとも一方で同期させることによって干渉を低減する干渉低減手段を備え、前記干渉低減手段は、前記基準信号生成装置によって基準信号を用いて、前記IPデータの無線通信を行うために使用される信号を同期させることで干渉を低減するように構成されている。
【0074】
すなわち、この実施の形態3では、図13に示すように、本発明に係る基準信号生成装置を、IPデータ無線通信システムに適用したものである。このIPデータ無線通信システムでは、通信エリア601が複数のセル602に分割されているとともに、各セル602は、3つのセクタ603に区画されており、各セル602の中心には、無線通信基地局604が設置されている。各基地局604は、ルーター等の中継機606を介してインターネット網607と接続されている。
【0075】
ところで、ユーザが使用する通信機能を有するパーソナルコンピュータやデータ通信可能な携帯電話等からなる無線通信端末605は、自身が存在するセル602内の基地局604と無線通信を行うが、各基地局604は、無線通信端末605と通信を行う際に、符号化されたIPデータの変調や復調を行う必要がある。ここで、各基地局604相互に干渉しないで符号化されたIPデータの変調や復調を行うには、基準同期信号に同期して直交符号等を発生させる必要があり、各基地局604が高精度の基準同期信号を受信する必要がある。
【0076】
そのため、この実施の形態では、図14に示すように、上記該各基地局604にモデム300を設置して、通信回線200を介して局側のDSLAM100と接続しておくことにより、当該各基地局604で使用する基準同期信号として、基準信号生成装置400から出力される基準信号505を用いることで、直交符号発生部610に基準信号505を入力し、当該直交符号発生部610から出力される直交符号制御信号612に基づいて、IPデータ変復調部613によって変復調を行うことにより、IPデータ無線通信における干渉を低減することができる。
【0077】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
実施の形態4
図15は本発明の実施の形態4を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態4では、互いに離間した場所に配置される複数の基準信号生成装置と、前記複数の基準信号生成装置に対応して配置され、各基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する複数の計時手段と、前記各計時手段によって計測された時刻に基づいて、互いに離間した場所で同一時刻に同期制御する同期制御手段とを備えるように構成されている。
【0079】
すなわち、本実施の形態に係る基準信号生成装置を工場のプラントや各地にある水門などの同時起動や、電波の切り替え等、非常に正確な同時性を要求される制御用途に利用することができる。この場合、たとえば遠隔地と接続される各伝送路の精密な遅延を同期信号の数を基準として測定することにより、このシステムで正確な遅延の補正を行えば、遠隔地で同時に制御を行うことが可能となる。
【0080】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0081】
実施の形態5
図16は本発明の実施の形態5を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態5では、前記基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する計時手段と、
前記計時手段によって計測された時刻と基準時刻との同期をとる時刻同期手段とを備えるように構成されている。
【0082】
すなわち、この実施の形態5では、図16に示すように、本発明の基準信号生成装置400を時刻同期装置700に適用したものであって、基準信号生成装置400の後段に、当該基準信号生成装置400から出力される基準信号505をカウントすることにより時刻を計測する計時装置701を備えているとともに、この計時装置701には、高精度な時刻標準を持つ同期装置702が常時又は所定のタイミングで接続される。
【0083】
この時刻同期装置700では、計時装置701によって時刻の経過が高精度に計測されるとともに、高精度な時刻標準を持つ同期装置702と常時又は所定のタイミングで同期接続して、遅延の補正を行うことにより、絶対時刻を高精度に得ることが可能となる。
【0084】
これにより本発明を利用したシステムに接続した時刻同期装置700によれば、通常のNTP接続PCやJJY電波時計が到達可能な精度(±100〜10ms程度)に比べ、原子時計並の精度(10-12以下)を持った正確な時計を提供することができる。
【0085】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0086】
実施の形態6
図17は本発明の実施の形態6を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態6では、前記基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する計時手段と、前記計時手段によって計測された時刻に基づいて時刻証明を発行する発行手段とを備えるように構成されている。
【0087】
すなわち、この実施の形態6では、本発明の基準信号生成装置400を時刻証明装置800に適用したものであって、基準信号生成装置400の後段に、当該基準信号生成装置400から出力される基準信号505をカウントすることにより時刻を計測する計時装置801を備えているとともに、当該計時装置801によって計測された時刻に基づいて時刻証明を発行する発行装置802を備えており、当該計時装置801によって基準信号生成装置400から出力される基準信号505をカウントすることで、非常に高精度な時刻の計測及び時刻の証明が可能となっている。
【0088】
高精度な時刻標準は、タイムスタンプや暗号化を行うセキュリティ管理分野において非常に重要であり、例えば、「文章が作成され、暗号化された時刻」、「それ以降に改竄が行われなかったことの証明」を、従来は±100〜10ms程度の精度でしか利用できていない状況(タイムスタンプは数ms程度の精度)であり、高速の改竄装置を使用すれば、1ms程度の時間で偽造が可能となってしまっていた。
【0089】
これに対して、本発明では、原子時計並の精度(10-12 以下)を持った正確なタイムスタンプ(ns、ps等の精度)によってセキュリティレベルを飛躍的に向上させることが可能となる。
【0090】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0091】
なお、前記実施の形態では、局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムとして、ADSL方式を採用した場合について説明したが、本発明はADSL方式に限定されるものではなく、他のxDSL方式を採用した通信システムにも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る基準信号生成装置を適用した通信システムを示す構成図である。
【図2】図2はISDN方式における信号の切り替えタイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】図3はADSL信号とISDN信号の同期関係例を示す波形図である。
【図4】図4は通信システムを示す模式図である。
【図5】図5は同期網におけるデータの伝送状態を示すチャートである。
【図6】図6は非同期網におけるデータの伝送状態を示すチャートである。
【図7】図7は本発明の実施の形態1に係る基準信号生成装置を示すブロック図である。
【図8】図8は実験例を示す構成図及び波形図である。
【図9】図9はADSL信号とISDN信号を示す波形図である。
【図10】図10はADSL信号とISDN信号を示す波形図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態2に係る基準信号生成装置を適用した通信システムを示す構成図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態2に係る基準信号生成装置を示すブロック図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態3に係る基準信号生成装置を適用した通信システムを示す構成図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態2に係る基準信号生成装置を適用した通信基地局を示すブロック図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態4に係る基準信号生成装置を適用した計時装置を示す構成図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態5に係る基準信号生成装置を適用した計時装置を示す構成図である。
【図17】図17は本発明の実施の形態6に係る基準信号生成装置を適用した時刻証明装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0093】
100:DSLAM、200:通信回線、300:子機モデム、400:基準信号生成装置、410:基準信号抽出回路、420:位相補正回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line :非対称デジタル加入者専用線)方式等を採用した通信回線を介して利用者側の端末装置に入力される信号を利用して、非常に高精度の基準信号を生成することが可能な基準信号生成装置及びこれを用いた機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2007−215104号公報
【特許文献2】特開2007−221551号公報
【特許文献3】特開2007−300471号公報
【特許文献4】特開2007−306352号公報
【特許文献5】特開2008−10994号公報
【0003】
近年、光ファイバーを用いた光通信が企業は勿論のこと、一般家庭にまで普及しつつあるが、既存の電話回線を利用して安価にインターネット通信等を可能とし、ブロードバンド環境を実現する手段として、ADSL方式に代表されるxDSL方式が広く利用されている。
【0004】
ところで、ADSL方式等を採用した通信技術を含むあらゆる技術分野で、アナログ方式に代わってデジタル方式が用いられてきている。その一例として、デジタル通信技術の発達・普及等に伴って、一般ユーザ間において、文字情報や画像情報等からなるデータの作成や、作成されたデータの送受信等を行う機会が増加してきている。
【0005】
上述した例では、ユーザがデータを作成した日時や、データの送受信等を行った日時を正確に記録したり証明する必要性が生じてきており、データの送信日時や受信日時等を証明するタイムスタンプと称される時刻証明技術などが種々提案されている。
【0006】
かかる時刻証明技術に関するものとしては、例えば、特開2007−215104号公報や特開2007−221551号公報、あるいは特開2007−300471号公報、特開2007−306352号公報等に開示されたものが既に種々提案されている。
【0007】
上記特開2007−215104号公報に係る端末機器は、子機端末と、前記子機端末と通信可能な端末機器と、前記端末機器から計測値を受信する情報処理サーバと、を用いて構成された情報処理システムで使用する端末機器であって、
前記子機端末が計測対象を計測した計測値を前記子機端末から取得する計測値取得手段と、
前記計測値受信手段で計測値を受信した際の時刻を計測する時計装置と、
前記受信した計測値に対して前記取得した時刻による時刻証明情報を生成する時刻証明情報生成手段と、
を具備するように構成したものである。
【0008】
また、上記特開2007−221551号公報に係る記録装置は、記録対象の情報をデジタルデータとして取得するデジタルデータ取得手段と、
前記デジタルデータを取得した際の時刻を計測する時計装置と、
前記デジタルデータを取得した際の現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
秘密鍵を記憶する秘密鍵記憶手段と、
前記取得したデジタルデータと、前記取得した時刻と、前記取得した現在位置情報と、を含む記録データを生成し、前記記憶した秘密鍵で当該生成した記録データをデジタル署名する署名手段と、
を具備するように構成したものである。
【0009】
さらに、上記特開2007−306352号公報に係る基準時刻提供装置は、基準時刻を計測するための基準時計装置と、
前記計測された基準時刻を電子署名する署名手段と、
前記基準時刻と前記電子署名を含む時刻証明書を生成する時刻証明書生成手段と、
デジタル放送によって送信するために、前記生成した時刻証明書をデジタル放送システムに提供する時刻証明書提供手段と、
を具備するように構成したものである。
【0010】
又、上記特開2007−300471号公報に係るデータ作成時刻証明システムは、データ作成プログラムを備えた端末装置と、データ作成時刻証明サーバと、タイムスタンプを発行するタイムスタンプサーバと、をネットワークを介して接続したデータ作成時刻証明システムであって、
前記端末装置が、
データ作成時刻証明サーバとの通信を開始する通信開始手段、
データ作成時刻証明サーバから通信開始の応答を受けた時からデータ作成プログラムが起動するまでの時間を第1の時間として計測する第1の時間計測手段、
データ作成時刻証明サーバに、少なくともデータ作成プログラムで生成したコンテンツデータの特徴データを送信する特徴データ送信手段、
データ作成プログラムの終了時から、特徴データ送信手段による送信開始時までの時間を第2の時間として計測する第2の時間計測手段、
データ作成時刻証明サーバに前記第1の時間および前記第2の時間を送信する計測時間送信手段、
を備え、
前記データ作成時刻証明サーバが、
端末装置からの通信開始要求を受けた時から、端末装置から少なくとも特徴データを受信するまでの時間を第3の時間として計測する第3の時間計測手段、
端末装置から受信した特徴データをタイムスタンプサーバに送信する特徴データ転送手段、
特徴データ転送手段が送信した特徴データについてのタイムスタンプをタイムスタンプサーバから受信するタイムスタンプ受信手段、
タイムスタンプサーバに特徴データを送信した時から、タイムスタンプサーバからタイムスタンプを受信するまでの時間を第4の時間として計測する第4の時間計測手段、
を備え、
前記タイムスタンプサーバが、
前記データ作成時刻証明サーバから受信した特徴データについて、タイムスタンプ時刻を含むタイムスタンプを生成するタイムスタンプ生成手段、
前記データ作成時刻証明サーバにタイムスタンプを送信するタイムスタンプ送信手段、
を備えたデータ作成時刻証明システムにおいて、
前記データ作成時刻証明サーバが、
前記端末装置から受信した第1の時間および第2の時間と、前記第3の時間計測手段で計測した第3の時間と、前記第4の時間計測手段で計測した第4の時間と、前記タイムスタンプサーバから受信したタイムスタンプ時刻と、に基づいてデータ作成時刻証明を生成するデータ作成時刻証明生成手段、
を備えるように構成したものである。
【0011】
上記の如く提案された種々の技術では、いずれも、時刻を計測する時計装置が必須の構成要素となっている。ところで、時刻を計測する時計装置は、時刻を証明するために使用されるものであり、非常に高い精度が要求される。この非常に高い精度が要求される時計装置としては、現在、セシウム原子(Cs)やルビジウム(Rb)原子のもつ極めて安定度の高い固有周波数を利用した基準発信器が用いられている。
【0012】
独立行政法人情報通信研究機構では、セシウム原子時計7台を使用して時間を計測しており、セシウム原子時計は、誤差が10-12程度という非常に高い精度を有している。因みに、日本の標準時はこのセシウム原子時計を基準に定められている。また、NTTやテレビ放送局などの通信事業者や放送事業者は、独立行政法人情報通信研究機構のセシウム原子時計をレファレンスとして、累積誤差の無い正確な時刻に基づいて通信事業や放送事業を提供している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような技術的課題を有している。すなわち、上記特開2007−215104号公報や特開2007−300471号公報、あるいは特開2007−306352号公報、特開2007−221551号公報等に開示された技術は、いずれも、時計装置として、独立行政法人情報通信研究機構等に設置されたセシウム原子時計等から時刻情報を得る必要があり、一般企業や個人等が使用する端末機器側において、正確な時刻等の基準となる非常に高い周波数精度を有する基準信号を容易に得ることができないという技術的課題を有していた。
【0014】
また、上記基準発信器として、ルビジウム(Rb)原子を用いた基準発信器なども市販されており、このルビジウム(Rb)原子を用いた基準発信器は、周波数安定性が5×10-11以下であり、非常に高い精度を有しているものの、価格が数100万円程度と非常に高価であるという技術的課題を有していた。
【0015】
一方、既存のシステムを変更することなく、クロック伝送を行うことを目的とした技術としては、特開2008−10994号公報等に開示された技術が既に提案されている。
【0016】
この特開2008−10994号公報に係るxDSLシステムは、第1及び第2のxDSL(x Digital Subscriber Line)装置を対向して配置するxDSLシステムであって、
前記第1のxDSL装置側及び第2のxDSL装置側各々に、電話音声用の4KHz以下の帯域において基準クロックを変復調する変復調手段を有するように構成したものである。
【0017】
しかしながら、上記特開2008−10994号公報に係るxDSLシステムの場合には、第1のxDSL装置側及び第2のxDSL装置側各々に、電話音声用の4KHz以下の帯域において基準クロックを変復調する変復調手段を新たに設ける必要があり、電話局側のDSLAM周辺機器に、各電話回線毎の改造が必要であり、コストアップを招くとともに、電話音声用の4KHz以下の帯域において基準クロックを重畳させる必要があるため、音声にノイズが生じたり、同期動作時に電話の発着信が制約される虞れがあるという技術的課題を有していた。
【0018】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、広く普及しているADSL方式等を採用した通信回線を利用して、利用者側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることが可能な基準信号生成装置及びこれを用いた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
すなわち、上記の課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムを用いて基準信号を生成する基準信号生成装置において、
前記局側の通信装置から前記通信回線を介して伝送される一定の周波数を有する基準信号が含まれる信号を入力し、前記入力信号から基準信号を抽出する基準信号抽出回路を備えたことを特徴とする基準信号生成装置である。
【0020】
また、請求項2に記載された発明は、前記基準信号抽出回路によって抽出された基準信号の位相を補正することにより、前記局側の基準信号と同期した基準信号を出力する位相補正回路と
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の基準信号生成装置である。
【0021】
さらに、請求項3に記載された発明は、前記通信回線は、ADSL方式を採用した通信回線であって、前記基準信号として、ISDN方式の基準信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の基準信号生成装置である。
【0022】
又、請求項4に記載された発明は、前記通信回線は、ADSL方式を採用した通信回線であって、前記基準信号として、ISDN方式の基準信号に位相同期させた送受信のベース信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の基準信号生成装置である。
【0023】
更に、請求項5に記載された発明は、前記位相補正回路は、前記基準信号抽出回路によって抽出された基準信号の位相を平均化することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基準信号生成装置である。
【0024】
また、請求項6に記載された発明は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
移動体無線通信を行う通信領域を複数のセルに分割するとともに、前記各セルを更に複数のセクタに分割し、前記各セル毎に無線通信基地局を配置し、前記無線通信基地局と対応するセル内に位置する移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うIPデータ無線通信システムに用いる無線通信基地局装置において、
前記無線通信基地局と前記移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うために使用される信号を、前記複数のセル間又は前記複数のセクタ間の少なくとも一方で同期させることによって干渉を低減する干渉低減手段を備え、
前記干渉低減手段は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置によって基準信号を用いて、前記IPデータの無線通信を行うために使用される信号を同期させることで干渉を低減することを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器である。
【0025】
さらに、請求項7に記載された発明は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
前記基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する計時手段を備えたことを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器である。
【0026】
又、請求項8に記載された発明は、前記計時手段によって計測された時刻と基準時刻との同期をとる時刻同期手段を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の機器である。
【0027】
更に、請求項9に記載された発明は、前記計時手段によって計測された時刻に基づいて時刻証明を発行する発行手段を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の機器である。
【0028】
また、請求項10に記載された発明は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
互いに離間した場所に配置される複数の基準信号生成装置と、
前記複数の基準信号生成装置に対応して配置され、各基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する複数の計時手段と、
前記各計時手段によって計測された時刻に基づいて、互いに離間した場所で同一時刻に同期制御する同期制御手段とを備えたことを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、広く普及しているADSL方式等を採用した通信回線を利用して、利用者側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることが可能な基準信号生成装置及びこれを用いた機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0031】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1に係る基準信号生成装置を適用したADSL方式の通信システムを示す構成図である。なお、この通信システムは、ADSL方式のうち、Annex C方式を採用している。
【0032】
図1において、100はNTT等の電話局の局舎内に設置される局側の通信装置としてのDSLAM(Digital Subscriber Line Access Multiplexer:DSL アクセス集線装置)を示すものであり、このDSLAM100は、一般電話回線等からなる通信回線200を介してユーザである企業や個人の自宅等に設置された通信端末装置としての子機モデム300と接続されている。そして、ユーザ側の子機モデム300は、一般電話回線等からなる通信回線200など、NTTや他の通信事業者が提供するコア・ネットワークを経由して、インターネット等の通信網と接続可能となっている。
【0033】
上記DSLAM100は、ADSL方式等によって通信を提供する通信事業者が電話局の局舎内に設置するものであり、このDSLAM100は、電話局に接続される一般電話回線等からなる通信回線200に対して、図示しない主配電盤であるMDF(main distributing frame)を介して電話交換機(図示せず)と分岐されている。
【0034】
また、上記DSLAM100は、通信回線200を介してユーザ側の子機モデム300と通信を行うための送受信機101を備えており、この送受信機101は、ベース信号である周波数f1 のDSLAMクロック信号102を用いてADSL方式によるデータの送受信を行う。なお、図示例では、ユーザ側の子機モデム300が1つのみ図示されているが、DSLAM100に接続された子機モデム300は、複数存在することは勿論である。
【0035】
ところで、通信事業者が提供するADSL方式の通信は、ITU(国際電気通信連合)によって標準化された規格であるG.992(G.dmt/G.Lite)等によって規定されており、世界の各地域の通信事情を考慮した規定を加えた付帯規格として、日本向けのAnnex Cや、北米向けのAnnex A、あるいはヨーロッパ向けのAnnex Bなどが用意されている。
【0036】
我が国では、上述したように、主にAnnex C規格が用いられているが、通信事業者によっては、Annex C以外の規格であるAnnex A規格等が用いられている。これらの規格のうち、Annex C規格では、ISDN干渉を防ぐために、ISDNのピンポン伝送と称される時分割方向制御方式 (Time Compression Modulation) に同期させて、やはり時分割方向制御方式によるAMI符号化を採用したベースバンド伝送を行っている。そして、このAnnex C規格では、加入者線間で同期させて送信と受信を切り替えるため、近端漏話NEXT(Near End Crosstalk)が無く、遠端漏話FEXT(Far End Crosstalk)のみとなり、細い加入者線で比較的長距離の伝送が可能となっている。
【0037】
ここで、近端漏話とは、通信を行う端末の側で発生する漏話現象を言い、これに対して、遠端漏話とは、通信端末から離れた場所にある通信回線の束において、電磁波などの干渉によってノイズ等が発生することをいう。
【0038】
ISDNにおける時分割方向制御方式では、図2に示すように、局から子機への通信と、子機から局への通信とを、1.25msの時間間隔毎に切り替えている。
【0039】
そのため、上記DSLAM100では、図1に示すように、ハードウエア又はソフトウエアで実現されるISDN同期スケジュール手段103を用いて、送信と受信を切り替えるタイミングを、ISDN方式の基準信号である一定周波数f0=400Hzの基準同期クロック104に同期させている。この基準同期クロック104は、通信品質を維持するために、非常に高い精度が要求され、独立行政法人情報通信研究機構等に設置されたセシウム原子時計等から供給される基準信号や、NTT等の局舎内に設置されたセシウム原子やルビジウム原子を用いた基準発振器から出力される基準信号に基づいて生成されており、5×10-9 以下、原理的には5×10-12程度の非常に高い周波数精度を有している。
【0040】
また、上記局側のDSLAM100と通信回線200を介して接続されたユーザ側の子機モデム300は、図1に示すように、局側のDSLAM100と通信を行うための送受信機301を備えており、局側のDSLAM100から周波数f1 のベースバンド信号によって伝送されてくるデータ信号の受信及び所望のデータ信号の送信を行うように構成されている。
【0041】
上記局側のDSLAM100とユーザ側の子機モデム300との間で通信されるADSL信号は、図3に示すように、ISDN信号に同期して、局側のDSLAM100からユーザ側の子機モデム300への下りの通信と、ユーザ側の子機モデム300から局側のDSLAM100への上りの通信とが切り換えられる。また、局側のDSLAM100とユーザ側の子機モデム300との間で送受信されるADSL信号は、例えば、0.264msを周期とするフレームに分割されているとともに、下りフレームの数の方が上りフレームの数よりも多く設定されており、通信回線200は、非対称の非対称デジタル加入者専用線となっている。
【0042】
その結果、上記Annex C規格のADSL方式を採用した通信システムは、ISDN信号に同期した同期網(ATM:Asynchronous Transfer Mode)を構成している。この同期網では、図4に示すように、通信装置Aから通信装置Bを介して通信装置Cにデータを伝送する場合を例にとると、図5に示すように、通信装置Aから基準クロックに同期して送信されたデータ信号が、通信装置Bを介して通信装置Cで受信されるまでの間、データ信号は、各通信装置の間で完全に同期した基準クロックによって伝送される。この同期網においては、基準クロックの周波数が、各通信装置A〜C間で完全に一致している。ただし、上記データ信号が通信装置Aから通信装置Cまで伝送される間に、通信回線や中継機が持つ時定数等の電気特性に依存して遅延が発生する虞れがあるが、この遅延は、各通信装置で用いられる基準クロックの周波数が完全に一致しているため、固定的に取り扱うことが可能となっている。
【0043】
これに対して、通信システムがIP通信に代表される非同期網の場合には、図6に示すように、通信装置A〜C間で、基準クロックに基づいてデータの送受信が行われるが、基準クロックは、各通信装置A〜Cが個々に有するものであって、各通信装置A〜C間で基準クロックが同期している必要はない。従って、この非同期網では、基準クロックの周波数は保証されておらず、遅延は動的に変化するものである。
【0044】
そこで、この実施の形態では、Annex C規格のADSL方式を採用した通信システムが同期網を構成していることに鑑みて、局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムを用いて基準信号を生成する基準信号生成装置において、前記局側の通信装置から前記通信回線を介して伝送される一定の周波数を有する基準信号が含まれる信号を入力し、前記入力信号から基準信号を抽出する基準信号抽出回路と、前記基準信号回路によって抽出された基準信号の位相を補正することにより、前記局側の基準信号と同期した基準信号を出力する位相補正回路とを備えるように構成されている。
【0045】
すなわち、この実施の形態では、図1に示すように、ユーザ側において、子機モデム300に接続された通信回線200から分岐して基準信号生成装置400が接続されており、基準信号生成装置400には、電話局側のDSLAM100から通信回線200を介して伝送される一定の周波数f0を有する基準信号104が含まれる信号が入力されている。
【0046】
上記基準信号生成装置400は、図7に示すように、大別して、基準信号抽出回路410と、位相補正回路420と、位相同期回路430とから構成されている。この基準信号抽出回路410は、通信回線200を介して電話局側のDSLAM100から送信されてくる基準信号104を含むADSL信号501を増幅する第1段の増幅器411を備えており、この第1段の増幅器411によって増幅された信号は、第1段のフィルター回路412を介して基準信号に相当する周波数の信号502が抽出される。その後、上記基準信号抽出回路410では、第1段のフィルター回路412によって抽出された基準信号に相当する周波数の信号502が、第2段の増幅器413によって更に増幅されるとともに、第2段のフィルター回路414によって基準信号に相当する周波数の信号503のみが抽出される。なお、上記増幅器411、413とフィルター回路412、414は、上述したように、複数段(図示例では、2段)設けても良いが、増幅器やフィルター回路の特性によっては、1段のみ設けても良いことは勿論である。
【0047】
また、上記基準信号抽出回路410で抽出された基準信号503は、位相補正回路420に入力されて位相が補正され、局側の基準信号104との位相同期がとられる。この位相補正回路420は、位相比較器421と、平均化回路422と、VCO(電圧制御発振回路)423と、分周器424とから構成されている。上記基準信号抽出回路410で抽出された基準信号503は、位相補正回路421に入力されて分周器424から出力される信号と位相が比較される。この位相比較器421は、入力された基準信号503と、分周器424から出力される信号の位相差に応じた電圧からなる信号を出力する。上記位相比較器421から出力された信号は、平均化回路422によって平均化された後、VCO423に入力される。上記平均化回路422としては、例えば抽出したい目標の信号、すなわちISDNの同期周波数2.5ms前後の時定数の回路を使用するのが望ましい。
【0048】
上記VCO423からは、平均化回路421によって平均化された電圧に応じた周波数の正弦波やパルス状の信号504が出力される。このVCO423から出力される信号504は、分周器424に入力されて、当該分周器424からは、周波数がN分割(Nは整数または分数)された信号が出力される。
【0049】
そして、上記位相補正回路420からは、基準信号503の位相が平均化されて、局側の基準信号104との間で位相が同期した基準信号である基準クロック504が出力される。
【0050】
更に、この実施の形態では、図7に示すように、位相補正回路420の後段に、位相同期回路430が設けられており、この位相同期回路430からは、局側の基準信号104と位相が同期した基準クロック504であって、所望の周波数の基準クロック505が出力端子435から出力されるようになっている。上記位相同期回路430は、位相比較器431と、ループフィルター回路432と、VCO(電圧制御発振回路)433と、分周器434とから構成されている。
【0051】
上記位相補正回路420によって局側の基準信号104と同期がとられた基準信号504は、位相比較回路431に入力されて分周器434から出力される信号を位相が比較される。この位相比較器431は、入力された基準信号504と、分周器434から出力される信号の位相差に応じた電圧からなる信号を出力する。上記位相比較器431から出力された信号は、ローパスフィルタ等からなるループフィルター回路432によって位相が補償された後、VCO433に入力される。
【0052】
上記VCO433からは、ループフィルター回路432によって位相が補償された信号に応じた周波数のパルス信号が出力される。このVCO433から出力されるパルス信号は、分周器434に入力されて、当該分周器434からは、周波数がN分割(Nは整数または分数)された信号が出力される。なお、この分周器434によって分割される周波数の数Nは、分割数設定器436によって任意に設定可能となっている。
【0053】
そして、上記位相同期回路430からは、局側の基準信号104と位相が同期し、且つ所望の周波数の基準クロック505が出力端子435から外部に出力される。
【0054】
以上の構成において、この実施の形態に係る基準信号生成装置では、次のようにして、広く普及しているADSL方式等を採用した通信回線を利用して、利用者側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることが可能となっている。
【0055】
すなわち、この実施の形態に係る基準信号生成装置400では、図1に示すように、通信事業者が提供するADSLに加入したユーザが有する通信端末装置である子機モデム300を使用し、通信回線200を介して局側のDSLAM100と接続する。上記子機モデム300は、図3に例を示すように、DSLAM100と通信をする際に、ISDN干渉を抑制するために、局側のDSLAM100とISDNに同期した周期で通信を行っている。
【0056】
上記子機モデム300側では、通信回線200を介して局側のDSLAM100から伝送されてくるADSL信号501を、送受信機301の入力側から分岐して基準信号生成装置400に入力する。この基準信号生成装置400では、図7に示すように、局側のDSLAM100から伝送されてくるADSL信号501を、第1段の増幅器411によって増幅した後、第1段のフィルター回路412によってADSL信号に含まれる基準信号502が抽出される。更に、上記基準信号発生装置400では、抽出された基準信号502を、再度、第2段の増幅器413によって増幅した後、第2段のフィルター回路414によってADSL信号501に含まれる基準信号503のみが抽出される。
【0057】
その後、上記基準信号発生装置400では、図7に示すように、第2段目のフィルター回路414によって抽出された基準信号503を、位相補正回路420によって位相を補正することにより、局側の基準信号104と位相が同期した基準信号504が得られる。
【0058】
更に、上記基準信号発生装置400では、ユーザのニーズに応じて、位相同期回路430によって所望の周波数を有する基準信号505に変換された後、出力端子435から外部のシステムに出力される。
【0059】
このように、上記実施の形態に係る基準信号生成装置400では、通信回線200を介して局側のDSLAM100から伝送されてくるADSL信号501を用いて、当該ADSL信号に含まれる非常に精度の高い周波数精度を有する基準信号502、503を抽出し、位相を補正した上で基準クロック504を出力するため、通信回線200に通信以外に使用する信号を重畳させる必要がないとともに、局側のDSLAM周辺機器に新たな設備を増設する必要もなく、ユーザ側において、通信品質の低下や発着信の制約等を生じることなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることができる。
【0060】
実験例
次に、本発明者は、上記の如く構成される基準信号生成装置の動作を確認するため、図7及び図8に示すような基準信号生成装置400を試作し、当該基準信号生成装置400の各所に流れる信号をオシロスコープを用いて観察する実験を行った。尚、オシロスコープとしては、岩崎通信機社製のSS5711を用いた。
【0061】
図8は上記基準信号生成装置の各所に流れる信号をオシロスコープを用いて観察した状態を示す波形図である。
【0062】
図8の左上の波形は基準信号生成装置400に入力するADSL信号501を示すものであり、このADSL信号501には、周波数帯域が30KHz〜1.1MHzの信号、及び400Hzの基準信号104が含まれている。
【0063】
また、図8の左下の波形は基準信号生成装置400の第1段のフィルター回路412の出力信号502を示すものであり、この出力信号502には、ノイズ等がかなり含まれており、未だ基準信号のみが抽出されていないことが判る。
【0064】
さらに、図8の右下の波形は基準信号生成装置400の第2段のフィルター回路414の出力信号503を示すものであって、この出力信号503は、ノイズ等が除去されて基準信号のみが抽出されており、図9に示すように、1/2周期が1.25msと完全に一致しているが、位相が変動して振れている波形となっていることがわかる。
【0065】
又、図8の右下の波形は基準信号生成装置400の位相補正回路420の出力信号504を示すものであって、この出力信号504は、図10に示すように、1/2周期が1.25msと局側の基準信号104と完全に一致しているのは勿論のこと、位相も補正されて局側の基準信号104と同期したものとなっている。また、上記位相補正回路420の出力信号504は、上述したように、1/2周期が1.25msと完全に一致、つまり周波数が局側の基準信号104と完全に一致しているとともに、局側の基準信号104と位相差δを有していても、当該位相差δは一定となっており、完全に同期したものとなっている。
【0066】
実施の形態2
図11は本発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態2では、前記基準信号として、ADSL方式を採用した通信回線において、ISDN方式の基準信号に位相同期させた送受信のベース信号を用いるように構成されている。
【0067】
すなわち、この実施の形態では、図11に示すように、ADSL方式を採用した通信システムとして、Annex C規格以外のAnnex A規格等を採用したものとなっている。したがって、この通信システムでは、基本的に、局側の通信装置であるDSLAM100と、ユーザ側の子機モデム300との間で通信されるADSL信号501が、IDSN信号に同期していない構成が前提となっている。
【0068】
そこで、この実施の形態では、図11に示すように、DSLAM100がデータの伝送に使用するDSLAMクロック102そのものを、PLL同期回路105を用いて、ISDN方式の基準信号である一定周波数f0=400Hzの基準同期信号104と同期させるように構成されている。その結果、上記通信回線200を介して伝送されるADSL信号501そのものが、ISDN方式の基準信号である一定周波数f0=400Hzの基準クロック104と完全に同期したものとなっている。
【0069】
そして、この実施の形態に係る基準信号生成装置400は、図12に示すように、基本的に、基準信号抽出回路410そのものから構成されており、当該基準信号抽出回路410からは、通信回線200を介して伝送されるADSL信号501から、ISDN方式の基準信号である一定周波数f0=400Hzの基準信号104に同期したDSLAMクロック102そのものが抽出されて出力される。その際、上記基準信号抽出回路410を構成する増幅器411とフィルター回路412は、前記実施の形態1と同様に必要に応じて複数段(例えば、2段)設けても良い。
【0070】
また、上記基準信号抽出回路410の後段には、必要に応じて、位相同期回路430が配設され、所望の周波数の基準信号を出力可能となっている。
【0071】
この実施の形態2では、電話局内の改造は、DSLAM100にPLL同期回路104を追加するのみであり、又、音声に一切問題が生じることはなく、高精度な基準信号を容易且つ安価に得ることができる。
【0072】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
実施の形態3
図13は本発明の実施の形態3を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態3では、基準信号生成装置を用いた機器であって、移動体無線通信を行う通信領域を複数のセルに分割するとともに、前記各セルを更に複数のセクタに分割し、前記各セル毎に無線通信基地局を配置し、前記無線通信基地局と対応するセル内に位置する移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うIPデータ無線通信システムに用いる無線通信基地局装置において、前記無線通信基地局と前記移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うために使用される信号を、前記複数のセル間又は前記複数のセクタ間の少なくとも一方で同期させることによって干渉を低減する干渉低減手段を備え、前記干渉低減手段は、前記基準信号生成装置によって基準信号を用いて、前記IPデータの無線通信を行うために使用される信号を同期させることで干渉を低減するように構成されている。
【0074】
すなわち、この実施の形態3では、図13に示すように、本発明に係る基準信号生成装置を、IPデータ無線通信システムに適用したものである。このIPデータ無線通信システムでは、通信エリア601が複数のセル602に分割されているとともに、各セル602は、3つのセクタ603に区画されており、各セル602の中心には、無線通信基地局604が設置されている。各基地局604は、ルーター等の中継機606を介してインターネット網607と接続されている。
【0075】
ところで、ユーザが使用する通信機能を有するパーソナルコンピュータやデータ通信可能な携帯電話等からなる無線通信端末605は、自身が存在するセル602内の基地局604と無線通信を行うが、各基地局604は、無線通信端末605と通信を行う際に、符号化されたIPデータの変調や復調を行う必要がある。ここで、各基地局604相互に干渉しないで符号化されたIPデータの変調や復調を行うには、基準同期信号に同期して直交符号等を発生させる必要があり、各基地局604が高精度の基準同期信号を受信する必要がある。
【0076】
そのため、この実施の形態では、図14に示すように、上記該各基地局604にモデム300を設置して、通信回線200を介して局側のDSLAM100と接続しておくことにより、当該各基地局604で使用する基準同期信号として、基準信号生成装置400から出力される基準信号505を用いることで、直交符号発生部610に基準信号505を入力し、当該直交符号発生部610から出力される直交符号制御信号612に基づいて、IPデータ変復調部613によって変復調を行うことにより、IPデータ無線通信における干渉を低減することができる。
【0077】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
実施の形態4
図15は本発明の実施の形態4を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態4では、互いに離間した場所に配置される複数の基準信号生成装置と、前記複数の基準信号生成装置に対応して配置され、各基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する複数の計時手段と、前記各計時手段によって計測された時刻に基づいて、互いに離間した場所で同一時刻に同期制御する同期制御手段とを備えるように構成されている。
【0079】
すなわち、本実施の形態に係る基準信号生成装置を工場のプラントや各地にある水門などの同時起動や、電波の切り替え等、非常に正確な同時性を要求される制御用途に利用することができる。この場合、たとえば遠隔地と接続される各伝送路の精密な遅延を同期信号の数を基準として測定することにより、このシステムで正確な遅延の補正を行えば、遠隔地で同時に制御を行うことが可能となる。
【0080】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0081】
実施の形態5
図16は本発明の実施の形態5を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態5では、前記基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する計時手段と、
前記計時手段によって計測された時刻と基準時刻との同期をとる時刻同期手段とを備えるように構成されている。
【0082】
すなわち、この実施の形態5では、図16に示すように、本発明の基準信号生成装置400を時刻同期装置700に適用したものであって、基準信号生成装置400の後段に、当該基準信号生成装置400から出力される基準信号505をカウントすることにより時刻を計測する計時装置701を備えているとともに、この計時装置701には、高精度な時刻標準を持つ同期装置702が常時又は所定のタイミングで接続される。
【0083】
この時刻同期装置700では、計時装置701によって時刻の経過が高精度に計測されるとともに、高精度な時刻標準を持つ同期装置702と常時又は所定のタイミングで同期接続して、遅延の補正を行うことにより、絶対時刻を高精度に得ることが可能となる。
【0084】
これにより本発明を利用したシステムに接続した時刻同期装置700によれば、通常のNTP接続PCやJJY電波時計が到達可能な精度(±100〜10ms程度)に比べ、原子時計並の精度(10-12以下)を持った正確な時計を提供することができる。
【0085】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0086】
実施の形態6
図17は本発明の実施の形態6を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態6では、前記基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する計時手段と、前記計時手段によって計測された時刻に基づいて時刻証明を発行する発行手段とを備えるように構成されている。
【0087】
すなわち、この実施の形態6では、本発明の基準信号生成装置400を時刻証明装置800に適用したものであって、基準信号生成装置400の後段に、当該基準信号生成装置400から出力される基準信号505をカウントすることにより時刻を計測する計時装置801を備えているとともに、当該計時装置801によって計測された時刻に基づいて時刻証明を発行する発行装置802を備えており、当該計時装置801によって基準信号生成装置400から出力される基準信号505をカウントすることで、非常に高精度な時刻の計測及び時刻の証明が可能となっている。
【0088】
高精度な時刻標準は、タイムスタンプや暗号化を行うセキュリティ管理分野において非常に重要であり、例えば、「文章が作成され、暗号化された時刻」、「それ以降に改竄が行われなかったことの証明」を、従来は±100〜10ms程度の精度でしか利用できていない状況(タイムスタンプは数ms程度の精度)であり、高速の改竄装置を使用すれば、1ms程度の時間で偽造が可能となってしまっていた。
【0089】
これに対して、本発明では、原子時計並の精度(10-12 以下)を持った正確なタイムスタンプ(ns、ps等の精度)によってセキュリティレベルを飛躍的に向上させることが可能となる。
【0090】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0091】
なお、前記実施の形態では、局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムとして、ADSL方式を採用した場合について説明したが、本発明はADSL方式に限定されるものではなく、他のxDSL方式を採用した通信システムにも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る基準信号生成装置を適用した通信システムを示す構成図である。
【図2】図2はISDN方式における信号の切り替えタイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】図3はADSL信号とISDN信号の同期関係例を示す波形図である。
【図4】図4は通信システムを示す模式図である。
【図5】図5は同期網におけるデータの伝送状態を示すチャートである。
【図6】図6は非同期網におけるデータの伝送状態を示すチャートである。
【図7】図7は本発明の実施の形態1に係る基準信号生成装置を示すブロック図である。
【図8】図8は実験例を示す構成図及び波形図である。
【図9】図9はADSL信号とISDN信号を示す波形図である。
【図10】図10はADSL信号とISDN信号を示す波形図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態2に係る基準信号生成装置を適用した通信システムを示す構成図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態2に係る基準信号生成装置を示すブロック図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態3に係る基準信号生成装置を適用した通信システムを示す構成図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態2に係る基準信号生成装置を適用した通信基地局を示すブロック図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態4に係る基準信号生成装置を適用した計時装置を示す構成図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態5に係る基準信号生成装置を適用した計時装置を示す構成図である。
【図17】図17は本発明の実施の形態6に係る基準信号生成装置を適用した時刻証明装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0093】
100:DSLAM、200:通信回線、300:子機モデム、400:基準信号生成装置、410:基準信号抽出回路、420:位相補正回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムを用いて基準信号を生成する基準信号生成装置において、
前記局側の通信装置から前記通信回線を介して伝送される一定の周波数を有する基準信号が含まれる信号を入力し、前記入力信号から基準信号を抽出する基準信号抽出回路を備えたことを特徴とする基準信号生成装置。
【請求項2】
前記基準信号抽出回路によって抽出された基準信号の位相を補正することにより、前記局側の基準信号と同期した基準信号を出力する位相補正回路と
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の基準信号生成装置。
【請求項3】
前記通信回線は、ADSL方式を採用した通信回線であって、前記基準信号として、ISDN方式の基準信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の基準信号生成装置。
【請求項4】
前記通信回線は、ADSL方式を採用した通信回線であって、前記基準信号として、ISDN方式の基準信号に位相同期させた送受信のベース信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の基準信号生成装置。
【請求項5】
前記位相補正回路は、前記基準信号抽出回路によって抽出された基準信号の位相を平均化することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基準信号生成装置。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
移動体無線通信を行う通信領域を複数のセルに分割するとともに、前記各セルを更に複数のセクタに分割し、前記各セル毎に無線通信基地局を配置し、前記無線通信基地局と対応するセル内に位置する移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うIPデータ無線通信システムに用いる無線通信基地局装置において、
前記無線通信基地局と前記移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うために使用される信号を、前記複数のセル間又は前記複数のセクタ間の少なくとも一方で同期させることによって干渉を低減する干渉低減手段を備え、
前記干渉低減手段は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置によって基準信号を用いて、前記IPデータの無線通信を行うために使用される信号を同期させることで干渉を低減することを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器。
【請求項7】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
前記基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する計時手段を備えたことを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器。
【請求項8】
前記計時手段によって計測された時刻と基準時刻との同期をとる時刻同期手段を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の機器。
【請求項9】
前記計時手段によって計測された時刻に基づいて時刻証明を発行する発行手段を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の機器。
【請求項10】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
互いに離間した場所に配置される複数の基準信号生成装置と、
前記複数の基準信号生成装置に対応して配置され、各基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する複数の計時手段と、
前記各計時手段によって計測された時刻に基づいて、互いに離間した場所で同一時刻に同期制御する同期制御手段とを備えたことを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器。
【請求項1】
局側の通信装置と、利用者側の端末装置との間で、通信回線を介して通信を行う通信システムを用いて基準信号を生成する基準信号生成装置において、
前記局側の通信装置から前記通信回線を介して伝送される一定の周波数を有する基準信号が含まれる信号を入力し、前記入力信号から基準信号を抽出する基準信号抽出回路を備えたことを特徴とする基準信号生成装置。
【請求項2】
前記基準信号抽出回路によって抽出された基準信号の位相を補正することにより、前記局側の基準信号と同期した基準信号を出力する位相補正回路と
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の基準信号生成装置。
【請求項3】
前記通信回線は、ADSL方式を採用した通信回線であって、前記基準信号として、ISDN方式の基準信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の基準信号生成装置。
【請求項4】
前記通信回線は、ADSL方式を採用した通信回線であって、前記基準信号として、ISDN方式の基準信号に位相同期させた送受信のベース信号を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の基準信号生成装置。
【請求項5】
前記位相補正回路は、前記基準信号抽出回路によって抽出された基準信号の位相を平均化することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基準信号生成装置。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
移動体無線通信を行う通信領域を複数のセルに分割するとともに、前記各セルを更に複数のセクタに分割し、前記各セル毎に無線通信基地局を配置し、前記無線通信基地局と対応するセル内に位置する移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うIPデータ無線通信システムに用いる無線通信基地局装置において、
前記無線通信基地局と前記移動体端末装置との間でIPデータの無線通信を行うために使用される信号を、前記複数のセル間又は前記複数のセクタ間の少なくとも一方で同期させることによって干渉を低減する干渉低減手段を備え、
前記干渉低減手段は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置によって基準信号を用いて、前記IPデータの無線通信を行うために使用される信号を同期させることで干渉を低減することを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器。
【請求項7】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
前記基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する計時手段を備えたことを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器。
【請求項8】
前記計時手段によって計測された時刻と基準時刻との同期をとる時刻同期手段を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の機器。
【請求項9】
前記計時手段によって計測された時刻に基づいて時刻証明を発行する発行手段を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の機器。
【請求項10】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の基準信号生成装置を用いた機器であって、
互いに離間した場所に配置される複数の基準信号生成装置と、
前記複数の基準信号生成装置に対応して配置され、各基準信号生成装置から出力される基準信号を計数することによって時刻を計測する複数の計時手段と、
前記各計時手段によって計測された時刻に基づいて、互いに離間した場所で同一時刻に同期制御する同期制御手段とを備えたことを特徴とする基準信号生成装置を用いた機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−141759(P2010−141759A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317857(P2008−317857)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(501440684)ソフトバンクモバイル株式会社 (654)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(501440684)ソフトバンクモバイル株式会社 (654)
【Fターム(参考)】
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