説明

塗布膜形成方法、塗布膜形成装置、及び記憶媒体

【課題】スリット状の吐出口から被処理基板に対して処理液を吐出し、塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、ノズル吐出口のビード量およびノズル吐出口からの吐出圧力の変化に拘わらず、現場オペレータの熟練度に依存することなく、安定した膜厚形成を行うことができ、基板に形成される塗布膜の有効面積を広範囲なものとする。
【解決手段】経過時間Tsにおける推定膜厚Thは、式(1)により規定され、前記式(1)の推定膜厚Thに目標膜厚を代入し、基板Gの相対的移動速度Vを変数とすることにより、時間Tsごとに前記基板の相対的移動速度Vを求めるステップと、前記時間Tsごとに求められた前記基板の相対的移動速度Vに従い、ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御するステップとを含む。
Th=(ΔB+Q)・β/(Ts・V・L) ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット状の吐出口から被処理基板に対して処理液を吐出し、所定膜厚の塗布膜を形成する塗布膜形成方法、塗布膜形成装置、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
このフォトリソグラフィ工程では、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、処理液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)が塗布されレジスト膜(感光膜)が形成される。そして、回路パターンに対応して前記レジスト膜が露光され、これが現像処理され、パターン形成される。
【0003】
このようなフォトリソグラフィ工程において、被処理基板にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する方法として、例えば特許文献1に開示されるようにスリット状のノズル吐出口からレジスト液を帯状に吐出し、レジストを基板上に塗布する方法がある。
この方法を用いた従来のレジスト塗布装置について、図14を用いて簡単に説明する。
図14に示すレジスト塗布装置200は、基板Gがその上を搬送される長尺のステージ201と、このステージ201の上方に配設されるレジスト供給ノズル202と、ステージ201の長手方向(X方向)に沿って基板Gを搬送する基板搬送手段203とを具備している。レジスト供給ノズル202には、基板の幅方向(Y方向)に延びる微小隙間を有するスリット状の吐出口202aが設けられ、レジスト液供給源204からポンプ205を介して供給されたレジスト液が吐出口202aから吐出される構成となっている。
【0004】
また、基板搬送手段203は、ステージ201に沿って、その左右両側に敷設された一対のレール203aと、レール203aに沿って移動可能な一対のスライダ203bと、このスライダ203bにそれぞれ設けられ、基板Gの角部をそれぞれ下方から吸着保持する基板保持部203cとを有している。即ち、基板Gの四隅は基板保持部203cによって保持され、レール203aに沿って移動ベース203bが移動することにより基板Gがステージ201上を移動するようになされている。
【0005】
尚、図14に示す構成にあっては、基板Gの下面がステージ201と接触しないように、基板Gはステージ201上で浮上した状態となされている。具体的には、ステージ201上面には、エアを噴出する複数のエア孔201aが設けられ、これらエア孔201aから噴出したエア流によって基板Gの下面を持ち上げるようになされる。
【0006】
このように構成されたレジスト塗布装置において、基板Gにレジスト膜を塗布形成する場合、基板搬送手段203によって基板Gがステージ201上を搬送開始される。
また、基板Gの先端部がレジスト供給ノズル202の下方に達すると、一端、基板Gは搬送停止される。
そして、ノズル202の吐出口202aと基板G先端とが位置合わせされた状態で、吐出口202aからレジスト液が吐出開始されると共に、基板Gは再び搬送開始される。これにより、基板G上にはレジスト液が膜状に塗布される。
また、基板Gの後端がノズル202の下方に達すると、吐出口202aからのレジスト液吐出が停止されると共に、基板Gの搬送が停止され、基板G上に所定膜厚のレジスト膜が形成される。
【0007】
ところで、図14に示したレジスト塗布装置200にあっては、前記したようにノズル先端の吐出口202aが基板Gの先端から後端まで相対的に走査する間、吐出口202aからレジスト液が吐出される。
この塗布期間において、基板Gは、停止状態から所定速度まで加速され、一定速度で搬送された後、停止される。一方、ノズル202にレジスト液を供給するポンプ205は、そのポンプ内圧が所定値まで上昇され、塗布期間が終了するまで前記所定圧力が維持された後、減圧される。
【0008】
ここで、前記基板Gの搬送速度、及びポンプ内圧が一定のときには、ノズル吐出口202aからは安定して一定流量のレジスト液が吐出され、一定の膜厚が形成される。
しかしながら、塗布開始時にあたっては、基板Gの搬送開始(加速時)のタイミングと、ポンプ205の立上り(ポンプ内圧の上昇)のタイミングが同時、かつ、常に比例関係にあっても、基板Gの前端部においてレジスト膜が所望の膜厚とならず、基板Gの有効面積(製品として使用可能な領域)が小さくなるという課題があった。
【0009】
前記課題が生じるのは、基板Gに対する塗布動作(基板Gとポンプの動作)を行う以前に、ノズル吐出口202aにはプライミング処理後のレジスト液の盛り上がり部(以下、ビードと呼ぶ)が付着しており、この少量のレジスト液が塗布開始部において、レジスト膜の膜厚に影響するためである。
【0010】
前記課題を解決するため、従来は、塗布動作中にノズル202の吐出圧力の時間的な特性および基板搬送速度の時間的な特性をそれぞれ制御するための吐出圧力制御波形および基板搬送速度制御波形の少なくとも1つを毎回可変または修正する方法で実際の塗布処理に準じた試験用の塗布処理を何度も行っていた。
そして、その中で最も膜厚均一性に優れたレジスト膜が得られる吐出圧力制御波形および基板搬送速度制御波形の組み合わせを決定し、その決定した吐出圧力制御波形および基板搬送速度制御波形をそれぞれ実際の塗布処理における吐出圧力制御および基板搬送速度制御として用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−243670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記のように幾多の試験用塗布処理を重ねてトライアンドエラーにより塗布処理の最適条件を求める方法は、現場のオペレータにかなりの熟練度と多大の作業時間を課すだけでなく、試験用の塗布処理のために多数の基板を使用するため、実施に当たってシステム上の煩雑性があり、また、コストが嵩むという課題があった。
【0013】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、スリット状の吐出口から被処理基板に対して処理液を吐出し、塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、ノズル吐出口のビード量およびノズル吐出口からの吐出圧力の変化に拘わらず、現場オペレータの熟練度に依存することなく、安定した膜厚形成を行うことができ、基板に形成される塗布膜の有効面積を広範囲なものとすることのできる塗布膜形成方法、塗布膜形成装置、及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布膜形成方法は、スリット状のノズル吐出口に処理液のビードを形成すると共に、前記吐出口の下方を該吐出口に対し相対的に移動される被処理基板に対し前記吐出口から処理液を吐出し、前記基板上に所定膜厚の塗布膜を形成する塗布膜形成方法であって、所定の経過時間Tsにおける前記ビード量の差分をΔB、所定の経過時間Tsの間に前記吐出口から吐出された処理液量をQ、基板上で処理液が乾燥固化する分の濃度をβ、前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法をL、経過時間Tsにおける前記基板の相対的移動速度をVとすると、経過時間Tsにおける推定膜厚Thは、式(1)により規定され、前記式(1)の推定膜厚Thに目標膜厚を代入し、前記基板の相対的移動速度Vを変数とすることにより、時間Tsごとに前記基板の相対的移動速度Vを求めるステップと、前記時間Tsごとに求められた前記基板の相対的移動速度Vに従い、前記ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御するステップとを含むことに特徴を有する。
Th=(ΔB+Q)・β/(Ts・V・L) ・・・(1)
【0015】
このように推定膜厚Thを算出するための前記式(1)において、推定膜厚Thとして目標膜厚値を代入し、式中のパラメータである基板の相対的移動速度Vを変数とすることにより時間Tsごとに必要な基板の相対的移動速度Vが求められる。
即ち、前記求められた基板の相対的移動速度Vに従って基板搬送制御を行うことにより、塗布形成される実際の塗布膜の膜厚を目標値と略一致させることができる。
したがって、ノズル吐出口のビード量およびノズル吐出口からの吐出圧力の変化に拘わらず、現場オペレータの熟練度に依存することなく、基板の相対的移動速度の制御のみで塗布膜の膜厚を所望の膜厚とすることができる。それにより、吐出圧力の立ち上がりである塗布開始時においても安定した膜厚制御を行うことができ、基板に形成される塗布膜の有効面積(製品利用可能な領域)を広範囲なものとすることができる。
【0016】
また、本発明に係る記憶媒体は、被処理基板に所定膜厚の塗布膜を形成するための塗布膜形成装置を制御するコンピュータ実行可能なプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記塗布膜形成装置において前記プログラムが実行されることにより、該塗布膜形成装置において前記塗布膜形成方法の各ステップが実行されることを特徴としている。
【0017】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布膜形成装置は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルを具備し、前記ノズルの下方を基板搬送路に沿って相対的に移動される前記基板に対し、前記ノズルの吐出口から処理液を吐出し、所定の塗布膜を形成する塗布膜形成装置であって、前記ノズル吐出口に処理液のビードを形成するプライミング手段と、前記ノズルに対し前記基板搬送路上の前記基板を相対的に移動させる基板搬送手段と、少なくとも前記ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御するプログラムが記憶された記憶手段と、前記プログラムをコンピュータにより実行させ、前記基板搬送手段による前記基板の相対的移動速度を制御する制御手段とを備え、前記記憶手段には、所定の経過時間Tsにおける前記ビード量の差分をΔB、所定の経過時間Tsの間における前記吐出口からの処理液の吐出流量をQ、基板上で処理液が乾燥固化する分の濃度をβ、前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法をL、経過時間Tsにおける前記基板の相対的移動速度をVとすると、経過時間Tsにおける推定膜厚Thを規定する式(1)が記憶され、前記コンピュータにおいて前記プログラムが実行されることにより、前記制御手段は、前記式(1)の推定膜厚Thに目標膜厚を代入し、前記基板の相対的移動速度Vを変数とすることにより、時間Tsごとに前記基板の相対的移動速度Vを求め、前記時間Tsごとに求められた前記基板の相対的移動速度Vに従い、前記ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御することに特徴を有する。
Th=(ΔB+Q)・β/(Ts・V・L) ・・・(1)
【0018】
このような構成によれば、推定膜厚Thを算出するための前記式(1)において、推定膜厚Thとして目標膜厚値を代入し、式中のパラメータである基板の相対的移動速度Vを変数とすることにより時間Tsごとに必要な基板の相対的移動速度Vが求められる。
即ち、前記求められた基板の相対的移動速度Vに従って基板搬送制御を行うことにより、塗布形成される実際の塗布膜の膜厚を目標値と略一致させることができる。
したがって、ノズル吐出口のビード量およびノズル吐出口からの吐出圧力の変化に拘わらず、現場オペレータの熟練度に依存することなく、基板の相対的移動速度の制御のみで塗布膜の膜厚を所望の膜厚とすることができる。それにより、吐出圧力の立ち上がりである塗布開始時においても安定した膜厚制御を行うことができ、基板に形成される塗布膜の有効面積(製品利用可能な領域)を広範囲なものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スリット状の吐出口から被処理基板に対して処理液を吐出し、塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、ノズル吐出口のビード量およびノズル吐出口からの吐出圧力の変化に拘わらず、現場オペレータの熟練度に依存することなく、安定した膜厚形成を行うことができ、基板に形成される塗布膜の有効面積を広範囲なものとすることのできる塗布膜形成方法、塗布膜形成装置、及び記憶媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図3は、図1が具備するレジスト供給手段の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、図1の制御部が実行可能なシミュレーションプログラムの構成を示すブロック図である。
【図5】図5(a)は、膜厚推定式を説明するための側面図であり、図5(b)はその平面図である。
【図6】図6は、図4のパラメータ同定部の動作の流れを示すフローである。
【図7】図7は、図4のチューニング部の動作を含む塗布処理工程の流れを示すフローである。
【図8】図8は、本発明にかかる一実施形態の動作を説明するための断面図である。
【図9】図9は、塗布膜の膜厚管理を制御部10において行う際の機能ブロック図である。
【図10】図10は、塗布膜の膜厚管理を行う際の処理の流れを示すフローである。
【図11】図11は、推定膜厚と基板上塗布位置との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、マスター膜厚(目標とする膜厚)と基板上塗布位置との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、推定膜厚とマスター膜厚との差分値と基板上塗布位置との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、従来の塗布処理ユニットの概略構成を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の塗布膜形成方法にかかる一実施形態を、図面に基づき説明する。尚、この実施形態にあっては、本発明に係る塗布膜形成方法が、被処理基板であるガラス基板を浮上搬送しながら、前記基板に対し処理液であるレジスト液の塗布処理を行うレジスト塗布処理ユニットにおいて実施される場合を例にとって説明する。
図1は、本発明の塗布膜形成方法が実施されるレジスト塗布ユニット(塗布膜形成装置)の平面図であり、図2は、図1のA−A矢視断面図である。
【0022】
図1、図2に示すように、このレジスト塗布処理ユニット1は、ガラス基板Gを枚様式に一枚ずつ浮上搬送するための浮上搬送ステージ2を備え、基板Gが所謂平流し搬送されるように構成されている。
浮上ステージ2は、基板搬送方向(X方向)に沿って、基板搬入部2Aと、塗布処理部2Bと、基板搬出部2Cとが順に配置され構成されている。基板搬入部2A及び基板搬出部2Cの上面には、図1に示すように多数のガス噴出口2aがX方向とY方向に一定間隔で設けられ、ガス噴出口2aからの不活性ガスの噴出による圧力負荷によって、ガラス基板Gを浮上させている。また、塗布処理部2Bの上面には、多数のガス噴出口2aとガス吸気口2bとがX方向とY方向に一定間隔で交互に設けられている。そして、この塗布処理部2Bにおいては、ガス噴出口2aからの不活性ガスの噴出量と、ガス吸気口2bからの吸気量との圧力負荷を一定とすることによって、ガラス基板Gをよりステージに近接させた状態で浮上させている。
【0023】
また、浮上ステージ2の幅方向(Y方向)の左右側方には、X方向に平行に延びる一対のガイドレール5が設けられている。この一対のガイドレール5には、基板搬送方向(X方向)に移動可能に取り付けられたスライダ6が設けられ、各スライダ6の前端部及び後端部には、それぞれガラス基板Gの片側の2隅を下方から吸着保持する基板保持部7が設けられている。尚、前記一対のガイドレール5及びスライダ6等により基板搬送手段が構成されている。
【0024】
各基板保持部7は、図2に示すように、基板Gの下面に対し吸引動作により吸着可能な吸着部材7aと、吸着部材7aを昇降移動させる昇降駆動部7bとを有する。
尚、吸着部材7aには、吸引ポンプ(図示せず)が接続され、基板Gとの接触領域の空気を吸引して真空状態に近づけることにより、基板Gに吸着するようになされている。
また、スライダ6は、搬送駆動部8によって、その移動の開始及び停止、並びに移動速度の制御がなされ、搬送駆動部8は、コンピュータを含む制御部10(制御手段)によって動作制御される。また、前記昇降駆動部7bと前記吸引ポンプもまた、制御部10によって、その駆動が制御される。
【0025】
また、図1、図2に示すように、浮上ステージ2上には、ガラス基板Gにレジスト液を吐出するノズル11が設けられている。ノズル11は、Y方向に向けて長い例えば略直方体形状に形成され、ガラス基板GのY方向の幅よりも長く形成されている。図2に示すようにノズル11の下端部には、浮上ステージ3の幅方向に長いスリット状の吐出口11aが形成され、このノズル11には、レジスト液供給手段30からレジスト液が供給されるようになされている。
また、図1に示すようにノズル11は、門形または逆さコ字形のフレーム12に取り付けられ、例えばボールネジ機構を有するノズル昇降部13の駆動によってZ方向に昇降移動可能となされている。
【0026】
図3は、レジスト供給手段30の構成を示すブロック図である。レジスト供給手段30は、図3に示すようにレジスト液Rを貯留するボトル20と、このボトル20より吸入管21を介して少なくとも塗布処理1回分(基板1枚分)のレジスト液Rを充填可能なレジストポンプ22とを備えている。塗布処理時においては、レジストポンプ22よりレジスト液Rがレジスト液供給管23を介してノズル11に圧送され、ノズル11から基板G上にレジスト液Rが吐出されるようになされている。
また、吸入管21の途中には、例えばエアオペレートバルブからなる開閉弁24が設けられ、吸入管21におけるレジスト液Rの流れをオン(全開導通)またはオフ(遮断)することが可能な構成となっている。
【0027】
また、レジスト液供給管23の途中には、例えばエアオペレートバルブからなる開閉弁25が設けられ、レジスト液供給管23におけるレジスト液Rの流れをオン(全開導通)またはオフ(遮断)することが可能な構成となっている。更に、レジスト液供給管23には、圧力センサ26が取り付けられている。この圧力センサ26は、例えばゲージ圧力計からなり、大気圧を基準としてセンサ取付位置におけるレジスト供給管23内のレジスト液Rの圧力を計測し、圧力測定値をゲージ圧力で現す電気信号を出力するようになされている。この圧力センサ26の出力は、フィードバック制御等のために制御部10に供給される構成となっている。
また、ポンプ22は、例えばシリンジポンプからなり、ポンプ室を有するポンプ本体22aと、ポンプ室の容積を任意に変えるためのプランジャ22bと、このプランジャ22bを往復運動させるためのポンプ駆動部22cとを有している。
【0028】
また、このレジスト塗布ユニット1においては、制御部10が備える記憶手段10aの記憶媒体に、ノズル11からのレジスト液Rの吐出圧力と基板Gの搬送速度とに基づき塗布膜厚を推定するための(コンピュータ実行可能な)シミュレーションプログラムPが格納されている。記憶媒体はハードディスク等の固定的なものであってもよいし、CD−ROM、DVD等の可搬性のものであってもよい。このシミュレーションプログラムPは、図4に示すようにパラメータ同定部35とチューニング部36とを含む。
【0029】
パラメータ同定部35は、処理液であるレジスト液の種類、ガラス基板Gの種類等のロット毎の処理条件(以下、レシピと呼ぶ)に応じて決まる固有のパラメータ(以下、レシピ固有パラメータと呼ぶ)、具体的には、ノズル11の吐出口11aにおける初期持込レジスト量Bと、ノズル吐出口11aから基板面にレジスト液Rが付着する際の付着度を示す基板付着係数μとを同定するためのプログラムである。
尚、前記初期持込レジスト量Bは、プライミング手段(図示せず)によるプライミング処理後にノズル吐出口11aに付着するレジスト液Rの盛り上がり部(以下、ビードと呼ぶ)の液量と、前記ビードを基板面に着液させるために吐出されたレジスト液量とを合わせた量である。
【0030】
また、このパラメータ同定部35においては、前記レシピ固有パラメータ(B、μ)を同定するために、塗布処理工程中に形成されるレジスト膜の膜厚を経過時間Tsごとに推定する下記の膜厚推定式(1)、及びノズル先端に形成されるビード量を経過時間Tsごとに推定するビード量推定式(2)が用いられる。
具体的には、下記式(1)によって求めた推定膜厚Thと、塗布形成されたレジスト膜の実膜厚とが一致するレシピ固有パラメータ(B、μ)が同定される。
式(1):Th=(Bn-1−B+Q)・β/(ΔX・L) ・・・(1a)
=(Bn-1−B+P・α)・β/(Ts・V・L) ・・・(1b)
式(2):B=Bn-1+Q・Ts−Bn-1・μ・ΔX・L ・・・(2a)
=Bn-1+P・α・Ts−Bn-1・μ・Ts・V・L ・・・(2b)
【0031】
尚、前記式(1)、(2)において、Thは膜厚、Bはノズル先端のビード量、Qは時間Tsの間にノズル吐出口11aから吐出されたレジスト液量(Qは吐出圧力Pに流量/圧力係数αを乗じて求められる)、βは基板上に吐出されて乾燥固化した分のレジスト濃度、ΔXは基板移動量(基板搬送速度V(基板Gの相対的移動速度)と時間Tsとの積)、Lはノズル吐出口11aの幅寸法(基板幅方向の寸法)である。また、nは1以上の整数である。
【0032】
即ち、式(1)において、時間Tsの間において塗布されたレジスト膜の膜厚Thは、図5(a)、図5(b)に模式的に示すように、時間Tsにおけるビード量の差ΔB=(Bn-1−B)と新たに吐出された量Qとの和(図5のハッチング部)のうち乾燥固化した体積を、時間Tsの間における塗布面積(ΔX・L)で割った値である。
また、式(2)において、ノズル先端のビード量B(図5(a)のクロスハッチング部)は、直前のビード量Bn-1と新たに吐出された量Qとの和から基板Gに付された量(Bn-1・μ・ΔX・L)を減じた量である。
【0033】
また、チューニング部36は、前記式(1)、式(2)を用い、目標とする膜厚値に基づき、必要な基板搬送速度Vを求めるためのプログラムである。このプログラムにあっては、前記式(1)のパラメータとして、パラメータ同定部35において同定されたレシピ固有パラメータ等が用いられ、また、推定膜厚Thが目標膜厚値に固定され、基板搬送速度Vを変数とすることによって必要な基板搬送速度Vが求められる。
このチューニング部36のプログラムは、基板Gに塗布処理を行う工程において実行され、それにより、制御部10は、経過時間Tsごとに必要な基板搬送速度Vを得ることができる。
即ち、制御部10は、得られた基板搬送速度で基板Gが搬送されるよう搬送駆動部8を制御することによって、実膜厚を目標とする膜厚値にすることができる。
【0034】
続いて、前記シミュレーションプログラムPにおけるパラメータ同定部35の動作、即ちレシピ固有パラメータを同定する工程について、図6のフローを用いて説明する。
レジスト塗布ユニット1においては、その準備工程として、前記したようにパラメータ同定部35が実行されることにより、レシピに応じて定まる固有のパラメータ(初期持込レジスト量B、基板付着係数μ)を同定する作業を行う。この工程においては、少なくとも1枚のガラス基板Gに対し、レジスト液Rの塗布処理を行うことにより前記パラメータの同定を行うことができる。
【0035】
即ち、先ず、所定の吐出圧力P、及び所定の基板搬送速度Vが設定され、1枚の基板Gに対するレジスト液Rの塗布処理が実行される(図6のステップS1)。
この塗布処理によって、制御部10には、吐出圧力Pと基板搬送速度Vとの時間Tsごとのフィードバックデータが収集される(図6のステップS2)。また、制御部10には、基板上に形成されたレジスト膜の膜厚(実膜厚とする)が入力される。
制御部10は、前記式(2b)において、2つのレシピ固有パラメータ(初期持込レジスト量B、基板付着係数μ)に所定の仮値を設定すると共に、その他のパラメータとして、前記流量/圧力変換係数α、ノズル吐出口11aの幅寸法L、時間Tsの値を設定する。そして、前記収集された吐出圧力Pと基板搬送速度Vとに基づき時間Tsごとのビード量Bを算出する(図6のステップS3)。
ビード量Bが算出されると、制御部10は、前記式(1b)において、基板上でレジスト液Rが乾燥固化する分の濃度βと、前記ビード量Bと、ノズル吐出口11aの幅寸法L、時間Tsの値を設定し、前記収集された吐出圧力Pと基板搬送速度Vとに基づき時間Tsごとの推定膜厚Thを算出する(図6のステップS4)。
【0036】
次いで、基板上に塗布されたレジスト膜の実膜厚と、ステップS4において算出された推定膜厚Thとを比較し(図6のステップS5)、一致しない場合には前記レシピ固有パラメータ(B、μ)の仮値をそれぞれ所定の変動幅で変更する(図6のステップS6)。そして、再度、ステップS1の推定膜厚Thを算出し、実膜厚との比較を行う(図6のステップS5)。
このようにして、実膜厚と推定膜厚Thとが一致するまで、ステップS6と、S3〜S5の処理が繰り返し行われ、実膜厚と推定膜厚Thとが一致したときに設定された初期持込レジスト量B、及び基板付着係数μがレシピ固有パラメータとして同定される(図6のステップS7)。
尚、前記フローにあっては、推定膜厚Thを求める式(1b)、及びビード量Bを求める式(2b)に対し、吐出圧力Pの値を代入することにより演算を行うものとしたが、吐出圧力Pに所定の流量/圧力係数αを乗じて吐出流量Qを求め、その値を式(1a)、式(2a)に代入するようにしてもよい。
【0037】
続いて、前記チューニング部36の処理を用いた塗布処理工程について、図7のフロー、及び図8の状態遷移図(基板Gへの塗布処理の推移を示す側面図)に沿って説明する。
先ず、チューニング部36に対する入力パラメータ(前記式(1b)、(2b)に代入するパラメータ)として、パラメータ同定部35の処理により同定された初期持込レジスト量B及び基板付着係数μが、レシピ固有パラメータとして設定される。また、その他のパラメータとして、前記流量/圧力変換係数α、ノズル吐出口11aの幅寸法L、レジスト固形分濃度βが設定される。更には、目標とする膜厚値が設定される(図7のステップSt1)。
【0038】
また、基板Gが浮上ステージ2の基板搬入部2Aに搬入され、その四隅が基板保持部7により保持されると、搬送駆動部8によってスライダ6がガイドレール5に沿って搬送方向(X方向)に移動される。
図8(a)に示すように、基板Gの先端が塗布処理部2Bの上方に配備されたノズル11の直下に達すると、一旦、基板搬送が停止される(図7のステップSt2)。尚、この時点で、ノズル11の吐出口11aには、既に実施されたプライミング処理により、所定量のレジスト液Rがビード状に形成されている。
【0039】
次いで、ノズル昇降部13によりノズル11が下降され、その先端の吐出口11aが基板先端面上に近接される。そして、所定量のレジスト液Rが吐出されることにより、レジスト液Rが基板Gに着液し、図8(b)に示すように吐出口11aと基板Gの上面とがレジスト液Rで繋がった状態になされる(図7のステップSt3)。尚、ここでノズル吐出口11aに付着しているビード量は、前記設定された初期持込レジスト量Bに略等しい。
【0040】
次に、制御部10は、搬送駆動部8を制御し、所定の初期速度で基板Gを搬送開始させると共に、ポンプ駆動部22cを制御し、所定の初期圧力値によりノズル吐出口11aからレジスト液Rを吐出させる(図7のステップSt4)。
ここで、制御部10にあっては、圧力センサ26からの吐出圧力のフィードバック値Pと、搬送駆動部8に指示した搬送速度Vのデータとが収集され、チューニング部36の実行により、経過時間Tsごとに実膜厚が目標膜厚と等しくなるための基板搬送速度Vが算出される(図7のステップSt5)。
【0041】
具体的には、前記膜厚推定式(1b)において、膜厚Thに目標膜厚値が設定されて基板搬送速度Vが変数とされる。また、前記式(1b)、(2b)に、パラメータとして初期持込レジスト量B、基板付着係数μ、流量/圧力変換係数α、ノズル吐出口11aの幅寸法L、レジスト固形分濃度βが代入される。そして、時間Ts毎に取得されるフィードバックデータである吐出圧力Pに基づき、必要な基板搬送速度Vが算出される。
【0042】
基板搬送速度Vが求められると、制御部10は、その基板搬送速度Vで基板搬送されるよう搬送駆動部8を制御し、図8(c)に示すように基板Gへの塗布処理を継続して行う(図7のステップSt6)。ここで、塗布処理中におけるステップSt5の基板搬送速度Vの算出は、経過時間Tsごとに繰り返し行われるため(図7のステップSt7)、基板Gに塗布されるレジスト膜の膜厚は、目標膜厚値に略一致する。
【0043】
図8(d)に示すように、搬送駆動部8により搬送される基板Gの後端がノズル11の直下に達すると(図7のステップSt8,9)、制御部10は、基板搬送及びノズル吐出口11aからのレジスト液Rの吐出を停止させる(図7のステップSt10)。
そして、制御部10は、図8(e)に示すようにノズル昇降部13によりノズル11を上昇させ、レジスト液Rの塗布処理が終了する(図7のステップSt11)。
【0044】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、推定膜厚Thを算出するための前記膜厚推定式(1a)、(1b)において、推定膜厚Thとして目標膜厚値を代入し、式中のパラメータである基板搬送速度Vを変数とすることにより時間Tsごとに必要な基板搬送速度Vが求められる。
即ち、制御部10においては、前記求められた基板搬送速度Vに従って搬送駆動部8を制御することにより、塗布形成される実際のレジスト膜の膜厚を目標値と略一致させることができる。
したがって、ノズル吐出口のビード量およびノズル吐出口からの吐出圧力の変化に拘わらず、現場オペレータの熟練度に依存することなく、基板の相対的移動速度の制御のみで塗布膜の膜厚を所望の膜厚とすることができる。それにより、吐出圧力の立ち上がりである塗布開始時においても安定した膜厚制御を行うことができ、基板に形成される塗布膜の有効面積(製品利用可能な領域)を広範囲なものとすることができる。
【0045】
尚、前記実施の形態においては、ノズル11の吐出口11aの基板搬送方向の位置(X方向の位置)が固定され、その下方を基板Gが搬送されるものとし、基板搬送速度Vを求めて基板搬送の制御を行うものとした。
しかしながら、本発明に係る塗布膜形成方法にあっては、その構成に限定されるものではなく、ノズル11に対して基板Gが相対的に移動する構成であってもよい。例えば、静止する基板Gに対し、ノズル11が走査しながら塗布処理を行うようにしてもよい。その場合、前記実施形態での基板搬送速度Vは基板Gの相対的移動速度V(ノズル移動速度)とすればよい。
【0046】
また、前記実施の形態に加えて、更に後述するような制御により塗布膜の膜厚管理を行ってもよい。この膜厚管理について、図9乃至図13を用いて説明する。尚、図9は、塗布膜の膜厚管理を制御部10において行う際の機能ブロック図であり、図10は、その処理の流れを示すフローである。また、図11は、推定膜厚と基板上塗布位置との関係を示すグラフであり、図12は、マスター膜厚と基板上塗布位置との関係を示すグラフである。更に図13は、推定膜厚とマスター膜厚との差分値と基板上塗布位置との関係を示すグラフである。
【0047】
先ず、前記実施の形態で説明したように、制御部10において基板搬送速度Vの値と吐出圧力Pの値とを決定し、基板Gの塗布処理を開始する。そして、基板Gにレジスト液を塗布したときの実際の基板搬送速度Vと吐出圧力Pのフィードバックデータを収集し、経過時間Ts毎に記憶手段10aに記録する(図10のステップStp1)。
【0048】
次いで、前記記憶手段10aに記憶された基板搬送速度Vと吐出圧力Pとを用い、前記式(1)、式(2)に基づき、図9に示すように基板Gに形成された塗布膜の膜厚(推定膜厚Th)を算出する(図10のステップStp2)。尚、この算出された推定膜厚Thは、例えば図11に示すようなグラフに表すことができる。
【0049】
また、図9に示すように、記憶手段10aに予め記憶されたマスター膜厚Mth(目標とする所定の膜厚)と前記推定膜厚Thとの差分eを算出する(図10のステップStp3)。尚、マスター膜厚MThとは、実際に基板上に塗布膜を形成し、塗布状態が良好であったときの塗布膜厚と基板上の位置との関係をデータ化したものである。このマスター膜厚MThは、例えば図12に示すようなグラフに表すことができる。また、前記膜厚の差分eは、例えば図13に示すようなグラフに表すことができる。
【0050】
次に制御部10は、図9に示す判定器10bにおいて前記膜厚の差分eと所定の判定閾値JTとを比較し(図10のステップStp4)、差分eが前記判定閾値JTより常に小さい場合には、基板Gに塗布された塗布膜を良品と判定する(図10のステップStp5)。
【0051】
一方、差分eが前記判定閾値JTより大きい場合には、基板Gに塗布された塗布膜を不良品と判定する(図10のステップStp6)。
また、塗布膜が不良品の場合には、制御部10は、基板搬送速度Vの値と吐出圧力Pの値とに対し、例えば、それぞれ前記差分eに応じた所定値を加算或いは減算することにより補正を行う(図10のステップStp7)。
そして、以降に行う基板Gへの塗布処理においては、補正した基板搬送速度Vと吐出圧力Pとを用いて塗布処理を行い(図10のステップStp8)、ステップStp1の処理に戻る。
このように図10に示したフローの処理に沿って制御を行うことで、より安定して塗布膜厚を管理することができる。
【0052】
尚、前記した実施の形態においては、FPD用のガラス基板Gにフォトレジストを塗布する場合を例に説明したが、それに限定することなく、その他の処理液を塗布する場合や、その他の基板、例えば半導体ウエハに塗布膜を形成する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 レジスト塗布処理ユニット
11 ノズル
11a ノズル吐出口
30 レジスト供給源
B ビード
G ガラス基板(被処理基板)
R レジスト液(処理液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット状のノズル吐出口に処理液のビードを形成すると共に、前記吐出口の下方を該吐出口に対し相対的に移動される被処理基板に対し前記吐出口から処理液を吐出し、前記基板上に所定膜厚の塗布膜を形成する塗布膜形成方法であって、
所定の経過時間Tsにおける前記ビード量の差分をΔB、所定の経過時間Tsの間における前記吐出口からの処理液の吐出流量をQ、基板上で処理液が乾燥固化する分の濃度をβ、前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法をL、経過時間Tsにおける前記基板の相対的移動速度をVとすると、経過時間Tsにおける推定膜厚Thは、式(1)により規定され、
前記式(1)の推定膜厚Thに目標膜厚を代入し、前記基板の相対的移動速度Vを変数とすることにより、時間Tsごとに前記基板の相対的移動速度Vを求めるステップと、
前記時間Tsごとに求められた前記基板の相対的移動速度Vに従い、前記ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御するステップとを含むことを特徴とする塗布膜形成方法。
Th=(ΔB+Q)・β/(Ts・V・L) ・・・(1)
【請求項2】
前記ビード量をBとし、時間Ts前のビード量をBn-1とし、前記ノズル吐出口から吐出された処理液が前記基板に付着する際の付着度を示す基板付着係数をμとすると、
前記ビード量Bは、式(2)により規定され、
式(2)に基づき、式(1)の経過時間Tsにおける前記ビード量の差分ΔB=B−Bn-1が設定されることを特徴とする請求項1に記載された塗布膜形成方法。
=Bn-1+Q−Bn-1・μ・Ts・V・L ・・・(2)
(nは1以上の整数)
【請求項3】
前記式(1)の推定膜厚Thに目標膜厚を代入し、前記基板の相対的移動速度Vを変数とすることにより、時間Tsごとに前記基板の相対的移動速度Vを求めるステップの前において、
所定の吐出圧力Pで処理液を前記基板上に吐出すると共に、前記ノズル吐出口に対し前記基板を所定の相対的移動速度Vで移動させるステップと、
時間Tsごとの前記吐出圧力Pと前記基板の相対的移動速度Vとのフィードバックデータを収集するステップと、
前記収集した吐出圧力Pに所定の係数を乗じ、時間Tsごとに前記吐出口からの吐出流量Qを算出するステップと、
前記式(2)において、前記ビード量の初期値Bと、基板付着係数μとに、それぞれ所定の仮値を設定すると共に、前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法Lと時間Tsとを設定し、前記算出した吐出流量Qと前記収集した基板の相対的移動速度Vとに基づき時間Tsごとにビード量Bを算出するステップと、
前記式(1)において、基板上で処理液が乾燥固化する分の濃度βと、前記算出されたビード量Bと前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法Lと時間Tsとを設定し、前記吐出流量Qと前記収集した基板の相対的移動速度Vとに基づき時間Tsごとに推定膜厚Thを算出するステップと、
前記算出した推定膜厚Thと前記基板上に形成された塗布膜の実膜厚とを比較し、その値が一致するまで前記ビード量の初期値B及び基板付着係数μの仮値を変更して、前記式(1)及び式(2)を演算し、推定膜厚Thを算出するステップとを実行し、
前記算出した推定膜厚Thと前記実膜厚の値が一致したときの前記ビード量の初期値B及び基板付着係数μを定数として用いることを特徴とする請求項2に記載された塗布膜形成方法。
【請求項4】
前記時間Tsごとに求められた前記基板の相対的移動速度Vに従い、前記ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御するステップにおいて、
前記時間Tsごとに、所定の吐出圧力Pで処理液を前記基板上に吐出すると共に、前記ノズル吐出口に対し前記基板を前記相対的移動速度Vで移動させるステップと、
前記時間Tsごとの吐出圧力Pと前記基板の相対的移動速度Vとのフィードバックデータを収集するステップとを実行し、
さらに、前記収集した吐出圧力Pに所定の係数を乗じ、時間Tsごとに前記吐出口からの吐出流量Qを算出するステップと、
前記式(2)において、前記ビード量の初期値Bと、基板付着係数μとに、それぞれ所定の仮値を設定すると共に、前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法Lと時間Tsとを設定し、前記算出した吐出流量Qと前記収集した基板の相対的移動速度Vとに基づき時間Tsごとにビード量Bを算出するステップと、
前記式(1)において、基板上で処理液が乾燥固化する分の濃度βと、前記算出されたビード量Bと前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法Lと時間Tsとを設定し、前記吐出流量Qと前記収集した基板の相対的移動速度Vとに基づき時間Tsごとに推定膜厚Thを算出するステップと、
前記算出した推定膜厚Thと、目標とする所定の膜厚とを比較し、その差分を求めるステップと、
前記差分と所定の閾値の大きさを比較するステップと、
前記差分と所定の閾値の大きさを比較するステップにおいて、前記差分が前記閾値よりも小さい場合、前記基板に形成された塗布膜を良品と判定するステップと、
前記差分と所定の閾値の大きさを比較するステップにおいて、前記差分が前記閾値よりも大きい場合、前記基板に形成された塗布膜を不良品と判定するステップとを実行することを特徴とする請求項2または請求項3に記載された塗布膜形成方法。
【請求項5】
前記差分と所定の閾値の大きさを比較するステップにおいて、前記差分が前記閾値よりも大きく、前記基板に形成された塗布膜を不良品と判定した場合、
前記基板の相対的移動速度Vと吐出圧力Pの値をそれぞれ補正し、それら補正値を次に塗布する基板の塗布膜形成の制御に用いることを特徴とする請求項4に記載された塗布膜形成方法。
【請求項6】
被処理基板に所定膜厚の塗布膜を形成するための塗布膜形成装置を制御するコンピュータ実行可能なプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記塗布膜形成装置において前記プログラムが実行されることにより、該塗布膜形成装置において前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された塗布膜形成方法の各ステップが実行されることを特徴とする記憶媒体。
【請求項7】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルを具備し、前記ノズルの下方を基板搬送路に沿って相対的に移動される前記基板に対し、前記ノズルの吐出口から処理液を吐出し、所定の塗布膜を形成する塗布膜形成装置であって、
前記ノズル吐出口に処理液のビードを形成するプライミング手段と、前記ノズルに対し前記基板搬送路上の前記基板を相対的に移動させる基板搬送手段と、少なくとも前記ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御するプログラムが記憶された記憶手段と、前記プログラムをコンピュータにより実行させ、前記基板搬送手段による前記基板の相対的移動速度を制御する制御手段とを備え、
前記記憶手段には、所定の経過時間Tsにおける前記ビード量の差分をΔB、所定の経過時間Tsの間における前記吐出口からの処理液の吐出流量をQ、基板上で処理液が乾燥固化する分の濃度をβ、前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法をL、経過時間Tsにおける前記基板の相対的移動速度をVとすると、経過時間Tsにおける推定膜厚Thを規定する式(1)が記憶され、
前記コンピュータにおいて前記プログラムが実行されることにより、前記制御手段は、
前記式(1)の推定膜厚Thに目標膜厚を代入し、前記基板の相対的移動速度Vを変数とすることにより、時間Tsごとに前記基板の相対的移動速度Vを求め、
前記時間Tsごとに求められた前記基板の相対的移動速度Vに従い、前記ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御することを特徴とする塗布膜形成装置。
Th=(ΔB+Q)・β/(Ts・V・L) ・・・(1)
【請求項8】
前記記憶手段には、
前記ビード量をBとし、時間Ts前のビード量をBn-1とし、前記ノズル吐出口から吐出された処理液が前記基板に付着する際の付着度を示す基板付着係数をμとすると、
前記ビード量Bを規定する式(2)が記憶され、
前記制御手段は、式(2)に基づき、式(1)の経過時間Tsにおける前記ビード量の差分ΔB=B−Bn-1を設定することを特徴とする請求項7に記載された塗布膜形成装置。
=Bn-1+Q−Bn-1・μ・Ts・V・L ・・・(2)
(nは1以上の整数)
【請求項9】
前記制御手段が、前記式(1)の推定膜厚Thに目標膜厚を代入し、前記基板の相対的移動速度Vを変数として、時間Tsごとに前記基板の相対的移動速度Vを求める前において、
前記制御手段は、所定の吐出圧力Pで処理液を前記基板上に吐出すると共に、前記ノズル吐出口に対し前記基板を所定の相対的移動速度Vで移動させ、
時間Tsごとの前記吐出圧力Pと前記基板の相対的移動速度Vのフィードバックデータを収集し、
前記収集した吐出圧力Pに所定の係数を乗じ、時間Tsごとに前記吐出口からの吐出流量Qを算出し、
前記式(2)において、前記ビード量の初期値Bと、基板付着係数μとに、それぞれ所定の仮値を設定すると共に、前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法Lと時間Tsとを設定し、前記算出した吐出流量Qと前記収集した基板の相対的移動速度Vとに基づき時間Tsごとにビード量Bを算出し、
前記式(1)において、基板上で処理液が乾燥固化する分の濃度βと、前記算出されたビード量Bと前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法Lと時間Tsとを設定し、前記吐出流量Qと前記収集した基板の相対的移動速度Vとに基づき時間Tsごとに推定膜厚Thを算出し、
前記算出した推定膜厚Thと前記基板上に形成された塗布膜の実膜厚とを比較し、その値が一致するまで前記ビード量の初期値B及び基板付着係数μの仮値を変更して、前記式(1)及び式(2)を演算し、推定膜厚Thを算出し、
前記算出した推定膜厚Thと前記実膜厚の値が一致したときの前記ビード量の初期値B及び基板付着係数μを定数として用いることを特徴とする請求項8に記載された塗布膜形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記時間Tsごとに求められた前記基板の相対的移動速度Vに従い、前記ノズル吐出口に対する前記基板の相対的移動速度を制御すると共に、所定の吐出圧力Pで処理液を前記基板上に吐出し、
さらに、前記時間Tsごとの吐出圧力Pと前記基板の相対的移動速度Vとのフィードバックデータを収集し、
前記収集した吐出圧力Pに所定の係数を乗じ、時間Tsごとに前記吐出口からの吐出流量Qを算出し、
前記式(2)において、前記ビード量の初期値Bと、基板付着係数μとに、それぞれ所定の仮値を設定すると共に、前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法Lと時間Tsとを設定し、前記算出した吐出流量Qと前記収集した基板の相対的移動速度Vとに基づき時間Tsごとにビード量Bを算出し、
前記式(1)において、基板上で処理液が乾燥固化する分の濃度βと、前記算出されたビード量Bと前記ノズル吐出口の基板幅方向の寸法Lと時間Tsとを設定し、前記吐出流量Qと前記収集した基板の相対的移動速度Vとに基づき前記時間Tsごとに推定膜厚Thを算出し、
前記算出した推定膜厚Thと、目標とする所定の膜厚とを比較して、その差分を算出し、
前記差分と所定の閾値の大きさを比較し、前記差分が前記閾値よりも小さい場合、前記基板に形成された塗布膜を良品と判定し、
前記差分と所定の閾値の大きさを比較し、前記差分が前記閾値よりも大きい場合、前記基板に形成された塗布膜を不良品と判定することを特徴とする請求項8または請求項9に記載された塗布膜形成装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記差分と所定の閾値の大きさを比較し、前記差分が前記閾値よりも大きく、前記基板に形成された塗布膜を不良品と判定した場合、
前記基板の相対的移動速度Vと吐出圧力Pの値をそれぞれ補正し、それら補正値を次に塗布する基板の塗布膜形成の制御に用いることを特徴とする請求項10に記載された塗布膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−206114(P2012−206114A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50125(P2012−50125)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】