説明

塗布装置、塗布方法および被膜形成装置

【課題】 半導体ウェーハやガラス基板などの基板表面に供給された塗布液をエッジビードのない均一な厚さに簡単に均すことができる塗布装置を提供する。
【解決手段】 塗布装置はトレイ1と塗布液供給ノズル2と塗布液を押し広げるアプリケータとしてのスキージ3を備え、トレイ1には基板Wを嵌め込むための凹部11が形成され、この凹部11にはスピンナーチャック12が設けられている。このスピンナーチャック12は昇降自在とされたスピンナー軸13の上端部に基板Wを吸引するチャック14が取り付けられ、スピンナー軸13が最下位まで下がった状態でチャック14上面と凹部11の底面とが面一になるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやガラス基板等の基板の表面に、被膜形成などのための塗布液や現像液を塗布する装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に均一な厚みの塗膜を形成するための装置として特許文献1〜6に開示されるものが知られている。
特許文献1には、ガラス基板の短辺方向に往復動可能とされたノズルからガラス基板表面にレジスト液を所定幅で供給し、この所定幅で供給されたレジスト液をガラス基板の長辺方向に移動するプレート(スキージ)にて均一な厚さに均す内容が開示されている。
【0003】
特許文献2には、スピンチャックにて水平回転せしめられる基板の表面にノズルから現像液を供給し、この現像液を基板表面との間に微小間隔を隔てて配置された拡散部材(スキージ)で受け止めながら基板表面に所定厚で現像液を液盛りする内容が開示されている。
【0004】
特許文献3及び特許文献4には、基板ステージに凹部を設け、この凹部に基板を嵌め込んで基板ステージの上面と基板上面とを面一とし、この状態でスリットノズルから基板を含むステージ上面に塗布液を供給し、基板表面に所定厚みの塗膜を形成する内容が開示されている。
【0005】
特許文献5には、基板を収納可能な凹部を形成したトレイを搬送する間に、トレイの凹部に基板をセットし、この上からスリットノズルを用いて塗布液を供給し、次いでトレイとともに基板を移動せしめて被膜を形成し、この後トレイのみを洗浄ステーション及び乾燥ステーションに移動するようにしている。
【0006】
特許文献6には、全体構成として特許文献5に類似しているが、トレイの構造として、基板を嵌め込む凹部に隣接してプリディスペンスエリアを設けることが開示されている。
【特許文献1】特開平7−289973号公報
【特許文献2】特開平8−022952号公報
【特許文献3】特開2001−269610号公報
【特許文献4】特開2002−59060号公報
【特許文献5】特開2003−245591号公報
【特許文献6】特開2004−209340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される塗布方法では、塗布開始点における膜厚が厚くなってしまい、またガラス基板の周縁まで完全に塗膜を形成することができない。
【0008】
特許文献2に開示される塗布方法では、基板を回転させることで現像液を拡散せしめるようにしているため基板の外側部に塗布液が移動し中心部において塗布液が不足しがちになる。
【0009】
特許文献3及び特許文献4にあっては、スリットノズルを用いているが、スリットノズルによって基板の辺方向に均一な厚みの塗布液を供給するのは困難である。例えばスリットノズルの長さ方向において、一部でもノズル幅が他の箇所より大きくなるとその部分で大量に塗布液が落下してしまう。また、スリットノズルが走行して塗布している間に圧力変動があっても供給される塗布液の量が変化してしまう。このように、スリットノズルは装置的に極めて微妙な調整を必要とし、取り扱いが面倒である。
【0010】
特許文献5にあっては、前記同様スリットノズルを用いているため、取り扱いが面倒であり、また洗浄ステーションと乾燥ステーションとが別々なので、スペース的に不利となる。特許文献6に開示される特許文献5と同様の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく本発明に係る塗布装置は、回転可能なトレイと塗布液供給ノズルと塗布液を押し広げるアプリケータとを備え、前記トレイには基板収納用の凹部が形成され、この凹部は基板を収納した状態で基板上面とトレイ上面とが面一になる深さで且つ基板と相似形とされ、また前記塗布液供給ノズルは前記凹部を外したトレイの上方に配置され、更に前記アプリケータは前記凹部に収納された基板の上面との間に隙間を形成した状態で相対的に水平方向に移動可能とされた構成とした。
【0012】
前記アプリケータとしてははスキージまたはローラ等が好ましい。また、トレイの凹部内には昇降可能なスピンナーチャックを設けてもよい。スピンナーチャッの代わりに昇降ピンを用いてもよい。
【0013】
上記の塗布装置を用いた本発明に係る塗布方法は、以下の工程を含む。
工程1:トレイの凹部に基板を嵌め込む。
工程2:塗布液供給ノズルから塗布液をトレイの上面で凹部から外れた箇所に供給するとともに、トレイを所定角度回転させるかノズルを移動させることで、アプリケータの移動方向を基準として基板よりも上流側に円弧状または直線状の塗布液だまりを形成する。
工程3:アプリケータを基板に向かって移動させ前記塗布液だまりの塗布液を基板上面に押し広げる。
工程4:トレイの凹部から基板を払い出す。
【0014】
また、上記の工程に以下の工程を付加してもよい。
工程5:基板が払い出されたトレイの上面に洗浄液を供給しつつトレイを回転して洗浄せしめる。
工程6:洗浄液が飛散してから更に回転を継続して乾燥せしめる。
【0015】
上記の工程4に引き続いて塗布液をベークして乾燥せしめることで被膜が形成される。この被膜形成装置の構成としては、基板のローダ/アンローダ部、基板表面への塗布部、基板加熱部、基板の裏面又は端面の洗浄部及びこれら各部との基板の受け渡しを行うロボットを備えた被膜形成装置であって、前記塗布部には請求項1乃至請求項3に記載の塗布装置が配置された構成が考えられる。
【0016】
上記被膜形成装置の基板加熱部または洗浄部にも塗布部に設けたトレイと同じトレイを配置することで、ロボットによる受取/受渡が効率よく行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体ウェーハやガラス基板などの基板表面に供給された塗布液をエッジビードのない均一な厚さに簡単に均すことができる。
また、本発明によれば従来の回転塗布に比べて無駄になる塗布液の量が大幅に少なくなる。
また、本発明によれば従来のスリットノズルに比較して機構が簡単なため均一な厚みの塗膜を形成するための微妙な調整を必要としない。
更に、本発明によれば塗布から洗浄までをトレイを移動することなく行うことも可能で、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0018】
また本発明に係る被膜形成装置では上記塗布装置を組み込んだため、ロボットにとって基板の受取/受渡が効率よく行え、特に同じトレイを加熱装置や洗浄装置にも用いることで、搬送装置がロボット1つで足りることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1〜図8は本発明を工程順に説明した図であり、各図において(a)は塗布装置の平面図、(b)は塗布装置の縦断面図である。
【0020】
本発明に係る塗布装置は、トレイ1と塗布液供給ノズル2と塗布液を押し広げるアプリケータとしてのスキージ3を備えている。
トレイ1には基板Wを嵌め込むための凹部11が形成されている。この凹部11は平面視で基板Wと相似で、深さは基板Wの厚みと略等しくされている。
【0021】
前記凹部11にはスピンナーチャック12が設けられている。このスピンナーチャック12は昇降自在とされたスピンナー軸13の上端部に基板Wを吸引するチャック14が取り付けられ、スピンナー軸13が最下位まで下がった状態でチャック14上面と凹部11の底面とが面一になるように設定されている。
【0022】
図示例ではチャック14を平面視で円形にしているが、矩形などとすることでスピンナー軸13の回転を直接トレイ1に伝えることができる。
【0023】
また塗布液供給ノズル2は、前記トレイ1の上方で凹部11を外した位置に配置され、特に本実施例ではトレイ1の中心よりもスキージ3に寄った位置に配置されている。
【0024】
またスキージ3は、棒状をなすとともに下面3aは丸みをもっている。このスキージ3は図示しないシリンダユニットなどによってトレイ1に向かって往復動可能とされ、トレイ1上に移動した際にはスキージ3の下面3aと基板W上面との間に一定の隙間が形成され、この隙間が塗膜の厚みになる。
【0025】
以上の構成からなる塗布装置を用いて基板Wに塗布液を塗布する手順を説明する。先ず図1に示す状態が待機状態であり、この状態から図2に示すように、凹部11内に基板Wを嵌め込む。
【0026】
次いで、トレイ1上面にノズル2からレジスト液などの塗布液を滴下するとともにトレイ1をスピンナー軸13にて回動せしめる。回動角度は90〜120°程度とする。この回動により、図3に示すように、トレイ1上面に塗布液だまりRが形成される。この実施例では塗布液だまりRは基板Wの直前に形成されている。
【0027】
塗布液だまりRの形成方法としては、ノズル2を移動させるようにしてもよい。この場合はノズル2の移動軌跡を円弧状とすることで前記と同様の塗布液だまりRが形成されるが、ノズル2の移動軌跡を直線状としたり、不連続な塗布液だまりRとしてもよい。
【0028】
この後、図4に示すようにスキージ3を基板Wに向かって水平移動せしめ、スキージ3の下面3aにて塗布液だまりRの塗布液を基板W上面に押し広げる。そして、図5に示すように塗布が終了したならば、トレイ1を回転せしめ基板W上に形成された均一な厚みの塗布液層を乾燥せしめる。
【0029】
塗布液層が乾燥したならば、図6に示すように、スピンナー軸13を上昇せしめ基板Wを凹部11内から払い出す。このとき塗膜は基板Wと凹部11の境目において自動的に切断される。
【0030】
以上の如くして、基板Wを凹部11から払い出したら、図7に示すように、洗浄液供給ノズル4をトレイ1の上方に臨ませ、洗浄液供給ノズル4を前後に往復動させつつ洗浄液をトレイ1上面に供給し、更にトレイ1を回転させることで、トレイ1上に残っている塗布液を除去する。また別に設けたブラシをトレイに当てることで効率よく除去を行ってもよい。この後、更にトレイ1を回転せしめて乾燥させる。この状態を図8で示した。図8の状態は図1と同じ待機状態である。
【0031】
図9(a)〜(c)は別実施例を示す平面図であり、図9(a)に示す実施例はトレイ1に設ける凹部11の平面視形状を矩形状とし、液晶用ガラス基板に対応している。
【0032】
また、図9(b)に示す実施例は塗布液だまりRの中央部を他の部分より大きくし、中央部での塗布液の不足を補うようにしている。
【0033】
更に、図9(c)に示す実施例はスキージ3の平面視形状を円弧状とし、塗布液を押し広げる際に塗布液が中央部分に寄るようにしている。尚、スキージの形状はこれに限らず逆向きの円弧状としてもよい。
【0034】
図10は本発明に係る被膜形成装置の全体平面図であり、被膜形成装置は伸縮自在なアームを備えたロボット20を中心として、その周囲にローダ/アンローダ部21、基板表面への塗布部22、基板の裏面又は端面の洗浄部23及び基板加熱部24を配置している。そして、この実施例では洗浄部23及び加熱部24にもトレイ1を配置し、このトレイ1に対しロボット20によって基板を受け渡すようにしている。
【0035】
また、ローダ/アンローダ部21はローダ部21aとアンロ−ダ部21bから構成される。このローダ部21aとアンロ−ダ部21bの代わりに異なるサイズの基板のロ−ダ部としてもよい。
【0036】
また、前記塗布部22にはトレイ1の洗浄部25が設けられ、塗布部22に隣接して薬液ストック部26が設けられ、更に前記基板加熱部24にはオーブンまたはベーク装置を設けているが、この基板加熱部24を前記洗浄部23に重ねて配置してもよい。
【0037】
以上の被膜形成装置によってレジスト膜などの被膜を形成するには、塗布部22においてトレイ1を回転せしめ基板W上に形成された均一な厚みの塗布液層を乾燥せしめ、この後スピンナー軸13を上昇せしめ基板Wをトレイ1の凹部11内から払い出し、更にロボット20のハンドで基板Wを受け取り、洗浄部23のトレイに渡して、エッジ洗浄若しくは裏面洗浄を行い、この後再びロボット20のハンドで基板Wを受け取り、加熱部24に送り込んで被膜を形成する。
【0038】
また、上記では「塗布」→「回転乾燥」→「裏面、端面洗浄」→「ベークまたはオーブン」としたが、塗布液の粘度が低い場合などには「塗布」→「回転乾燥」→「ベークまたはオーブン」→「裏面、端面洗浄」としてもよく、塗布液によっては回転乾燥させるとトレイから基板を払い出す際にトレイに基板がくっついてしまい基板が斜めになることもあるので、回転乾燥を省略した被膜形成方法、即ち、「塗布」→「裏面、端面洗浄」→「ベークまたはオーブン」或いは「塗布」→「ベークまたはオーブン」→「裏面、端面洗浄」としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は塗布装置の待機状態の平面図、(b)は塗布装置の待機状態の縦断面図
【図2】(a)はトレイの凹部に基板を入れる状態の平面図、(b)はトレイの凹部に基板を入れる状態の縦断面図
【図3】(a)はトレイ上面に塗布液だまりを形成した状態の平面図、(b)はトレイ上面に塗布液だまりを形成した状態の縦断面図
【図4】(a)はスキージによって塗布液を均している状態の平面図、(b)はスキージによって塗布液を均している状態の縦断面図
【図5】(a)は塗布完了後にトレイを回転させて塗布液を乾燥させている状態の平面図、(b)は塗布完了後にトレイを回転させて塗布液を乾燥させている状態の縦断面図
【図6】(a)はトレイから基板を持ち上げた状態の平面図、(b)はトレイから基板を持ち上げた状態の縦断面図
【図7】(a)はトレイを洗浄している状態の平面図、(b)はトレイを洗浄している状態の縦断面図
【図8】(a)及び(b)は再生完了状態を示す図1と同様の図
【図9】(a)〜(c)は別実施例の平面図
【図10】本発明に係る被膜形成装置の全体平面図
【符号の説明】
【0040】
1…トレイ、2…塗布液供給ノズル、3…アプリケータとしてのスキージ、3a…スキージの下面、4…洗浄液供給ノズル、11…凹部、12…スピンナーチャック、13…スピンナー軸、14…チャック、20…ロボット、21…ローダ/アンローダ部、21a…ローダ部、21b…アンローダ部、22…基板表面への塗布部、23…基板の裏面又は端面の洗浄部、24…基板加熱部、25…トレイの洗浄部、26…薬液ストック部、W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なトレイと塗布液供給ノズルと塗布液を押し広げるアプリケータとを備えた塗布装置であって、前記トレイには基板収納用の凹部が形成され、この凹部は基板を収納した状態で基板上面とトレイ上面とが面一になる深さで且つ基板と相似形とされ、また前記塗布液供給ノズルは前記凹部を外したトレイの上方に配置され、更に前記アプリケータは前記凹部に収納された基板の上面との間に隙間を形成した状態で相対的に水平方向に移動可能とされていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、前記アプリケータはスキージまたはローラであることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項1に記載の塗布装置において、前記トレイの凹部内には昇降可能なスピンナーチャックが設けられていることを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の塗布装置を用いた塗布方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする塗布方法。
工程1:トレイの凹部に基板を嵌め込む。
工程2:塗布液供給ノズルから塗布液をトレイの上面で凹部から外れた箇所に供給するとともに、トレイを所定角度回転させるかノズルを移動させることで、アプリケータの移動方向を基準として基板よりも上流側に円弧状または直線状の塗布液だまりを形成する。
工程3:アプリケータを基板に向かって移動させ前記塗布液だまりの塗布液を基板上面に押し広げる。
工程4:トレイの凹部から基板を払い出す。
【請求項5】
請求項4に記載の塗布方法であって、前記工程に引き続いて以下の工程を行うことを特徴とする塗布方法。
工程5:基板が払い出されたトレイの上面に洗浄液を供給しつつトレイを回転して洗浄せしめる。
工程6:洗浄液が飛散してから更に回転を継続して乾燥せしめる。
【請求項6】
基板のローダ/アンローダ部、基板表面への塗布部、基板加熱部、基板の裏面又は端面の洗浄部及びこれら各部との基板の受け渡しを行うロボットを備えた被膜形成装置であって、前記塗布部には請求項1乃至請求項3に記載の塗布装置が配置されていることを特徴とする被膜形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の被膜形成装置において、前記基板加熱部または洗浄部にも塗布部に設けたトレイと同じトレイを配置していることを特徴とする被膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−150233(P2006−150233A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344819(P2004−344819)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】