説明

塗布装置

【課題】基板に塗布された塗布液の膜厚の均一性を向上する技術を提供する。
【解決手段】塗布液を塗布する塗布装置であって、塗布液を吐出するノズルと、基板に対して、ノズルを移動させるノズル移動機構と、塗布液を貯留するタンクと、タンクに貯留された塗布液をノズルに向けて送液する送液部と、塗布液をノズルに供給するためにタンクとノズルとの間に設けられ、ノズル移動機構によるノズルの移動に追従して変形する接続チューブと、タンクからノズルに向けて供給される塗布液の流量を測定する流量測定部と、流量測定部による測定結果に基づき、送液部を制御することによって、ノズルに向けて送液される塗布液の送液量を調節する送液制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(Plasma Display Panel)用ガラス基板、有機EL表示パネル用ガラス基板、磁気或いは光ディスク用のガラス、または、セラミック基板、太陽光発電パネルなどの電池用基板など、各種被処理基板に塗布液を塗布する塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)材料を利用した有機EL表示装置の製造において、有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」とも称する。)などを、表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」と称する)上に形成された複数の隔壁間の溝にストライプ状に塗布する塗布装置が用いられている。これまでにも、この種の塗布装置として特許文献1に開示のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、基板に向けて有機EL液を連続的に吐出する複数のノズルを備えた塗布ヘッドを、基板上に形成された隔壁間の溝に沿った主走査方向に移動させるとともに、塗布ヘッドの主走査方向への移動が行われる毎に基板を塗布ヘッドに対して副走査方向に移動する移動機構と、塗布ヘッドに対して副走査方向における相対位置が固定され、複数のノズルから吐出された有機EL液が流動性を有する間に、有機EL液に光を照射して有機EL液の乾燥を促進する光照射部とを有する塗布装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−123585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機EL表示装置においては、有機ELを発光させるときの輝度ムラを防止するために基板上に形成される有機EL層の乾燥後の膜厚を均一化することが求められている。特許文献1に記載の塗布装置では、基板に塗布された複数のラインの有機EL液の乾燥速度の均一性を向上させることによって、該複数のラインの有機EL液の乾燥後における膜厚の均一性の向上が図られている。
【0006】
ところが、特許文献1の塗布装置において、基板上に塗布された有機EL液の乾燥後における膜厚の均一性を向上させるためには、塗布された有機EL液の膜厚の均一性を向上させることが必要である。そこで、従来の塗布装置では、例えば、マスフローコントローラー(MFC:Mass Flow Controller)等を用いて、塗布液の吐出量を一定化する制御を試みられている。
【0007】
しかしながら、従来の塗布装置では、塗布ヘッドの移動にともなってスキャンチューブが屈曲することによるスキャンチューブ内の体積変動や、塗布液にかかる慣性力などが、塗布液の吐出量に影響を与える場合がある。このため、塗布された塗布液の膜厚の均一性が低下する場合があった。
【0008】
そこで、上記課題に鑑み、基板に塗布された塗布液の膜厚の均一性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、塗布液を吐出するノズルと、基板に対して、前記ノズルを移動させるノズル移動機構と、前記塗布液を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された塗布液を前記ノズルに向けて送液する送液部と、前記塗布液を前記ノズルに供給するために前記タンクと前記ノズルとの間に設けられ、前記ノズル移動機構による前記ノズルの移動に追従して変形する接続チューブと、前記タンクから前記ノズルに向けて供給される塗布液の流量を測定する流量測定部と、前記流量測定部による測定結果に基づき、前記送液部を制御することによって、前記ノズルに向けて送液される塗布液の送液量を調節する送液制御部とを備える。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る塗布装置において、前記送液部は、前記タンク内に貯留された塗布液を加圧して、前記塗布液を前記ノズルに向けて送液する加圧部、を含み、前記送液制御部は、前記加圧部を制御する。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に係る塗布装置において、前記タンク部は、内部に中空空間を形成するとともに、前記加圧部によって前記中空空間内部が昇圧される外装体と、前記中空空間内部に配置され、容積を変動させることによって、内部に貯留された塗布液を前記ノズルに向けて送液する袋体とを有する。
【0012】
第4の態様は、第3の態様に係る塗布装置において、前記中空空間には、圧縮性流体が充填されている。
【0013】
第5の態様は、第3の態様に係る塗布装置において、前記中空空間には、非圧縮性流体が充填されている。
【0014】
第6の態様は、第1から5までのいずれか1態様に係る塗布装置において、基板を前記ノズルに対して第1方向に相対移動させる相対移動機構、をさらに備え、前記ノズル移動機構は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って、前記ノズルを往復移動させる。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様に係る塗布装置によれば、ノズルの移動によって起こる接続チューブ内の体積変動や塗布液に作用する慣性力の影響を、タンクによって吸収することができる。したがって、接続チューブの変形やノズルの移動に伴う塗布液の吐出量の変動を抑制し得る。
【0016】
第2の態様に係る塗布装置によれば、加圧部によって送液調節を精度良く実施することができる。
【0017】
第3の態様に係る塗布装置によれば、容積が変動する袋体を設けることによって、接続チューブの変形に伴う塗布液流路内の圧力変動を、袋体によって吸収することができる。
【0018】
第4の態様に係る塗布装置によれば、袋体の周囲が圧縮性流体で充填されているため、袋体が圧力変動を効果的に吸収しやすくなる。
【0019】
第5の態様に係る塗布装置によれば、袋体の周囲が非圧縮性流体で充填されていることにより、中空空間内部を昇圧した際に、袋体が圧縮されやすくなる。したがって、送液制御部による送液制御を精度良く行うことができる。
【0020】
第6の態様に係る塗布装置によれば、ノズル移動機構による主走査移動と、副走査移動とによって、基板表面の全体に渡って塗布液を塗布することができる。このとき、ノズルの第2方向への往復移動によって、接続チューブが周期的に変形することとなるが、タンクを設けることによって、接続チューブの変形に伴う周期的な容積変動や塗布液にかかる慣性力の影響を、タンク内で吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る塗布装置の概略を示した平面図である。
【図2】塗布装置の概略を示した正面図である。
【図3】ヘッド移動機構の構成要素をYZ平面で切断して示した概略断面図である。
【図4】一回の主走査移動により塗布液が塗布された基板を概念的に示した平面図である。
【図5】加圧タンクと複数のノズルとの間の接続関係を示した模式図である。
【図6】加圧タンクの内部構造を概念的に示した断面図である。
【図7】ノズルから吐出される塗布液の吐出量の経時変化を示した図である。
【図8】第2実施形態に係る加圧タンクの内部構造を概念的に示した断面図である。
【図9】変形例に係る複数の加圧と複数のノズルとの間の接続関係を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
<1.第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る塗布装置1の概略を示した平面図である。また図2は、塗布装置1の概略を示した正面図である。全図中のX方向、Y方向、及び、Z方向は、それぞれ後述する主走査方向に沿った方向、該X方向に直交する水平方向、及び、鉛直方向(上下方向)となっている。
【0024】
塗布装置1は、矩形状(正方形を含む。)である角型ガラス基板(以下、単に「基板」と称する。)100に対して塗布液を塗布する装置である。塗布装置1は、例えば、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置用のガラス基板を処理対象とする場合に、例えば揮発性の溶媒(例えば、芳香族の有機溶媒の一つである4−メチルアニソール)、及び、発光材料としての有機EL材料を含む塗布液を基板100に塗布する装置として機能する。ただし、塗布装置1は、その他の電子機器用の基板を処理対象とすることも可能であり、各基板の用途に応じて、使用される塗布液の種類は変更し得る。
【0025】
塗布装置1は、基板を保持する基板保持部10、基板保持部10を移動させることで、基板100を移動させる基板移動機構11、基板保持部10に保持された基板100の表面に塗布液を塗布するための塗布ヘッド20を備えている。
【0026】
基板保持部10は、その上面に基板100を略水平姿勢で保持する載置部である。基板保持部10は、基板を載置する載置部として機能する。なお、基板保持部10は、好ましくは、その表面に吸引孔(図示せず。)が設けられている。基板保持部10は、吸引孔(図示せず。)を負圧にして基板100を吸着することにより、載置された基板100が動かないように保持する。また、基板保持部10は、好ましくは、基板100を下側から加熱するヒーターをその内部に備えており、載置された基板100を加熱できるように構成されている。
【0027】
基板移動機構11は、Y方向に沿って延びるとともに、X方向に所定間隔をあけて設けられた一対のレール12,12、一対のレール12,12に沿ってY方向に移動する基台13、基台13の上面に設けられた回転台14を備える。
【0028】
基板保持部10は、回転台14の上部に設けられることによって、基板移動機構11に支持されている。したがって、基板保持部10は、基台13がY方向に移動することにより、Y方向に移動可能となっている。このY方向は、後述する塗布ヘッド20の往復移動方向である主走査方向(X方向)と直交する水平方向である。以下、Y方向を「副走査方向」とも称する。また、回転台14が鉛直方向(Z方向)を軸にして所定範囲で回転することにより、基板保持部10が回転する。
【0029】
基板保持部10に載置される基板100の表面(上面)には、Y方向に関して所定ピッチ(例えば、100〜150マイクロメートル)で、X方向に延びる塗布対象領域が複数列設定されている。この塗布対象領域は、例えば、X方向に沿って延びる一対の隔壁(図示せず)に挟まれて区画されたライン状の領域となっている。また、塗布対象領域の1つは、1つのノズル23による、一回の主走査方向の移動(X方向に関して、基板100の一方側端部から他方側端部への移動)によって、塗布液が塗布される領域に相当する。ただし、塗布対象領域への塗布方法はこのようなものに限られるものではない。また、上記隔壁は、必須のものではなく、隔壁がない状態で塗布が実施されてもよい。
【0030】
塗布装置1は、好ましくは、基板100の表面に形成された図示しないアライメントマークを撮像して検出する、Y方向に並列された一対の撮像部15,15を備えている。撮像部15は、例えばCCDカメラを含んで構成されている。
【0031】
塗布装置1は、塗布ヘッド20を移動させるヘッド移動機構21を備えている。ヘッド移動機構21は、X方向に沿って延びる一対のガイド部22を備えており、X方向に移動可能に構成されている。塗布ヘッド20は、ヘッド移動機構21によって、基板100の表面に平行な主走査方向(X方向)に往復移動する。
【0032】
塗布ヘッド20には、同一種類の塗布液を連続的に吐出するための複数のノズル23が設けられている。複数のノズル23は、副走査方向に関して等間隔に並べられて、塗布ヘッド20に搭載されている。本実施形態では、ノズル23を5個搭載しているが、ノズル23の搭載数はこれに限られるものではなく、少なくとも1以上搭載されていればよい。また、複数のノズル23は、必ずしも等間隔に並べられていなくてもよい。
【0033】
塗布装置1は、塗布液が貯留される加圧タンク24(塗布液貯留部)、エアの供給源であるエア供給源25、後述するエア供給管及び後述する複数の接続チューブ64で構成される供給管群26をさらに備えている。塗布ヘッド20は、供給管群26を介して、加圧タンク24、及び、エア供給源25と接続されている。
【0034】
塗布装置1は、X方向に関して、基板保持部10の外側両サイドに受液部17,18が設けられている。受液部17,18は、ノズル23の移動経路に対応する位置に、開口部を有している。受液部17,18は、該開口部を介して、ノズル23が基板100の表面外に吐出した塗布液を受け止めて、その内部に貯留する。貯留された塗布液は、適宜廃棄してもよいし、再利用するようにしてもよい。
【0035】
図3は、ヘッド移動機構21の構成要素をYZ平面で切断して示した概略断面図である。ヘッド移動機構21は、一対のガイド部22,22に取り付けられたスライダー31を備えている。スライダー31には、X方向に貫通する貫通孔32,32が形成されており、各貫通孔32,32にガイド部22,22がそれぞれ遊挿されている。
【0036】
スライダー31には、供給管群26に含まれるエア供給管を介して、エア供給源25から所定圧力のエアが供給される。該エアは、貫通孔32の内周面に設けられた噴出孔(図示省略)から、ガイド部22の外周面に向けて噴出される(矢印A1参照)。これにより、スライダー31は、ガイド部22に非接触状態にて係合し、主走査方向に案内される。
【0037】
図1に示したように、ヘッド移動機構21は、一対のガイド部22,22の両端部付近に、Z方向に延びる軸を中心にして回転可能に構成された一対のプーリー33,33を備えている。また、一対のプーリー33,33には、無端状の同期ベルト34が巻回されている。スライダー31は、同期ベルト34に取り付けられている。また、スライダー31の、Y方向に関して、同期ベルト34が取り付けられている側の反対側に、塗布ヘッド20が取り付けられている(図3参照)。
【0038】
塗布装置1では、図示しないモーターを駆動することで同期ベルト34を時計回り、または、反対周りに回転させることによって、塗布ヘッド20をX方向に往復運動させることができる。また、上述した、スライダー31からガイド部22に向けて噴出される気体の作用によって、スライダー31がガイド部22に対して非接触状態で支持される。このため、塗布ヘッド20を、比較的高速で移動させた場合でも、ガイド部22に沿って滑らかに往復移動させることができる。塗布装置1においては、ヘッド移動機構21が、塗布ヘッド20を主走査方向に移動させる主走査方向移動機構となる。また、基板移動機構11が、基板保持部10を副走査方向に移動させる副走査方向移動機構となる。なお、ノズル23は、塗布ヘッド20の移動にともなって移動する。このため、ヘッド移動機構21は、ノズル移動機構でもある。
【0039】
図4は、一回の主走査移動により塗布液が塗布された基板100を概念的に示した平面図である。塗布装置1においては、ノズル23から連続的に塗布液を吐出しつつ、塗布ヘッド20が主走査方向(X方向)へ移動(主走査移動)する毎に、塗布液が基板100の表面にストライプ状に塗布される。この一回の主走査移動が完了すると、塗布装置1は、基板100を副走査方向に移動させた後、反対方向の主走査移動を実行することによって、基板100の次の塗布対象領域に対して、塗布液を塗布する。
【0040】
基板100表面の主走査方向両側の縁部は、図示しないマスクによって覆われているため、この領域には、塗布液が塗布されないようになっている。なお、必要に応じて、副走査方向(Y方向)の縁部分をマスクで覆ってもよい。もちろん、これらのマスクは、必ずしも設けなければならないものではなく、省略することも可能である。
【0041】
なお、塗布ヘッド20が主走査移動を行う場合、ノズル23が受液部17,18上にあるときに、塗布ヘッド20が加速される。そして、ノズル23が基板100上方にあるときに、塗布ヘッド20は、例えば、一定速度(3〜5メートル/秒)で移動するように制御される。この一定速度で移動する間に、ノズル23から塗布液が吐出されて、基板100に塗布される。なお、塗布時に基板100上を移動する塗布ヘッド20の速度は、必ずしも一定とされる必要はない。
【0042】
図5は、加圧タンク24と複数のノズル23との間の接続関係を示した模式図である。また、図6は、加圧タンク24の内部構造を概念的に示した断面図である。
【0043】
加圧タンク24には、塗布液を圧送して、ノズル23に塗布液を送液するための電空レギュレーター61(送液部)が、配管611を介して接続されている。電空レギュレーター61には、圧力調整用のガス(例えば、窒素ガス)が供給される。電空レギュレーター61に供給された窒素ガスは、所定圧力に調整され、加圧タンク24へと送られる。
【0044】
図6に示したように、加圧タンク24は、内部に中空空間24Sを形成する外装体240と、ノズル23に向けて延びる配管241aと、中空空間24Sに配置された樹脂パック242とを有している。電空レギュレーター61から供給された窒素ガスは、中空空間24Sへ送られることにより、中空空間24S内部の圧力が昇圧される。この作用により、樹脂パック242が圧縮され、樹脂パック242の内部に貯留された塗布液が、配管241aを通じてノズル23に向けて供給される。すなわち、電空レギュレーター61は、加圧部として機能する。樹脂パック242は、その容積を変動させることによって、ノズル23に塗布液を送液する袋体を構成する。樹脂パック242に接続された配管241aは、塗布液流路の一部を形成する。
【0045】
なお、塗布液を貯留する袋体は、樹脂パック242のようなものに限定されるものではなく、圧縮されることでその内容積が変動するものであればどのようなものでもよい。ただし、内部に貯留される液体に対して、耐性を有する材料で構成されることが望ましい。
【0046】
図5に示したように、加圧タンク24から延びる配管241aの途中には、マスフローメーター62が設けられている。そして、配管241aは、マスフローメーター62の下流側で、複数(ノズル23の個数に相当する数)に分岐した後、複数の分岐管241bに接続される。この複数の分岐管241bは、それぞれ接続チューブ64に接続されている。また、複数の分岐管241bのそれぞれには、電磁開閉弁63が設けられている。
【0047】
接続チューブ64の先には、ノズル23が接続されている。接続チューブ64は、可撓性を有する材料で構成されており、塗布ヘッド20の主走査方向の往復運動に追従して変形するように構成されている。
【0048】
電空レギュレーター61の作用により、加圧タンク24(詳細には、樹脂パック242)に貯留された塗布液は、配管241aを通って、マスフローメーター62に向けて圧送される。そして塗布液は、マスフローメーター62を通過した後、電磁開閉弁63を通過して、分岐管241b及び接続チューブ64を通過してノズル23に供給される。
【0049】
マスフローメーター62は、例えば、熱式流量センサーを備えており、塗布液流路内の上流側と下流側との温度差を検出して所定演算を行うことにより、塗布液流路内を通過する塗布液の流量を検出する。ただし、マスフローメーター62は、圧力差に基づいて測定する差圧式流量計や、羽根車を使って測定する羽根車式流量計など、その他の方式で流量を測定するように構成されていてもよい。
【0050】
マスフローメーター62は、加圧タンク24と接続チューブ64まで延びる配管(配管241aと分岐管241b)の途中に設けられている。したがって、マスフローメーター62は、塗布液供給部である加圧タンク24から、可撓性を有する接続チューブ64までの間の塗布液流路内を通過する塗布液の流量を測定することとなる。
【0051】
図1に示したように、塗布装置1は、塗布装置1の各構成要素の動作を制御する制御部8を備えている。制御部8は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)などのプログラム記憶媒体、RAM(Random Access Memory)などがバス接続された、一般的なコンピューターで構成されている。制御部8は、CPUがROMなどの記憶媒体に格納されたプログラムに従って動作することによって、塗布装置1全体の制御を行う。
【0052】
また、図5に示したように、制御部8は、電空レギュレーター61の動作を制御する。具体的に、制御部8が電空レギュレーター61を制御する場合、マスフローメーター62により流量値を表す検出信号が制御部8に出力される。制御部8は、該検出信号に基づき、電空レギュレーター61を制御することにより、加圧タンク24内の圧力を調整する。これにより、ノズル23に向けて送液される塗布液の送液量(流量)が調整される。
【0053】
電磁開閉弁63は、制御部8によって制御され、分岐管241bを開閉する。電磁開閉弁63は、分岐管241bを開状態とすることにより塗布液を通過させ、また、閉状態とすることにより塗布液の通過を抑制する。分岐管241bのそれぞれに電磁開閉弁63を設けることで、複数のノズル23のそれぞれからの塗布液の吐出のオン・オフを制御することができる。ただし、電磁開閉弁63を設ける位置は、分岐管241b以外でもよく、例えば、配管241aの途中に設けられていてもよい。
【0054】
また、電空レギュレーター61によって、ノズル23からの塗布液吐出のオン・オフを制御できるのであれば、電磁開閉弁63を省略することも可能である。ただし、電磁開閉弁63を設けることによって、より確実に、流体の通過を遮断することができる。
【0055】
制御部8は、基板移動機構11、ヘッド移動機構21、及び、電空レギュレーター61を制御することによって、塗布装置1による基板100の塗布処理が実施される。制御部8は、好ましくは、オペレーターからの入力操作に応じて、各構成要素の制御内容を適宜変更できるように構成される。制御部8と制御部8が制御する塗布装置1の構成要素とは、互いに有線的に接続されていてもよいし、無線的に接続されていてもよい。
【0056】
図7は、ノズル23から吐出される塗布液の吐出量の経時変化を示した図である。なお、同図に示したグラフの横軸は、塗布ヘッド20が停止状態から主走査移動を一回行って停止するまでの時間を示している。また縦軸は、ノズル23から吐出される塗布液の単位時間当たりの吐出量(以下、単に「吐出量」とも称する。)を示している。
【0057】
また、図7中、実線で示した線91は、本実施形態に係る吐出量の経時変化を示している。すなわち、電空レギュレーター61のみが制御されたときの、ノズル23から吐出される塗布液の吐出量の経時変化を示している。また、二点鎖線で示した線92は、比較例に係る塗布装置(図示せず。)における塗布液の吐出量の経時変化を示している。
【0058】
比較例に係る塗布装置では、塗布装置1のように電空レギュレーター61を制御するのではなく、分岐管241b、または、配管241aなどの塗布液流路の途中に設けられたコントロールバルブを制御することによる流量制御が行われる。なお、コントロールバルブは、例えば、電動バルブなどによって構成され、マスフローメーター62の測定信号に基づいて、適正な流量となるように、塗布液流路内の開度を調節するように構成される。つまり、コントロールバルブとマスフローメーター62とによって、マスフローコントローラーが構成される。なお、比較例に係る塗布装置のコントロールバルブ以外の構成については、塗布装置1の構成とほぼ同様である。
【0059】
上述したように、塗布装置1または比較例に係る塗布装置においても、電空レギュレーター61またはコントロールバルブを制御することによって、ノズル23から吐出される塗布液の吐出量の一定化が図られている。しかしながら、塗布処理中は、塗布ヘッド20が周期的に主走査方向へ移動するため、これに追従する接続チューブ64が屈曲変形され、また、塗布ヘッド20や接続チューブ64内の塗布液が主走査方向に加減速される。これにより、塗布液流路内が周期的に体積変動したり、塗布ヘッド20接続チューブ64内の塗布液に周期的に慣性力が作用したりする。この体積変動や慣性力の作用は、例えば図7に示したように、ノズル23からの塗布液の吐出量の変動として現れる。
【0060】
特に、比較例に係る塗布装置の場合、線92で示したように、塗布ヘッド20の加減速時に吐出量が一過性に大きくなったり小さくなったりする。これは、開度調節が行われた結果、コントロールバルブの位置で塗布液流路の開口断面が縮小されてしまい、塗布液が行き来しにくくなることが原因と考えられる。すなわち、接続チューブ64の容積変動や塗布液に作用する慣性力などの影響を受けた塗布液が、塗布液流路の上流側の加圧タンク24に行き来できずに、そのまま下流側のノズル23へ向かってしまう。
【0061】
これに対して、塗布装置1では、線91で示したように、加減速時における吐出量の一過性の変化は、線92の場合に比べて顕著に抑制されている。これは、塗布装置1では、開度調節が行われる場合に比べて、塗布液流路内での圧力損失が少ないため、塗布液が上流側の加圧タンク24に行き来しやすい。このため、接続チューブ64の容積変動や塗布液に作用する慣性力の影響が、加圧タンク24によって吸収されるため、吐出量の一過性の変化が起きにくくなる。
【0062】
また、塗布液流路は、樹脂パック242に接続されている(図6参照)。この樹脂パック242の伸縮作用により、塗布ヘッド20の主走査移動に伴う塗布液流路内の圧力変動を効果的に吸収することができる。さらに、樹脂パック242が配置される中空空間24Sは、窒素ガスなどの圧縮性流体で充填されている。このため、樹脂パック242は、比較的自由に伸縮することができるため、塗布液流路内の圧力変動をより効果的に吸収することができる。
【0063】
<2.第2実施形態>
上記実施形態では、中空空間24Sを窒素ガスなどの圧縮性流体で充填していたが、加圧タンク24の構成は、このようなものに限定されない。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、適宜同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0064】
図8は、第2実施形態に係る加圧タンク24Aの内部構造を概念的に示した断面図である。加圧タンク24Aは、外装体240Aの内部に形成された中空空間24SAが、水などの非圧縮性流体で充填されている。そして、この中空空間24SAに樹脂パック242が配置されている。また、第2実施形態に係る塗布装置1は、電空レギュレーター61の代わりに、制御部8によって制御される押圧装置61Aを備えている。
【0065】
図8に示したように、中空空間24SAを形成する外装体240Aの一部は、ダイヤフラム243で構成されている。加圧タンク24Aでは、ピストンなどで構成される押圧装置61Aにより、ダイヤフラム243が内部に押し込まれ、中空空間24SA内が加圧されるように構成されている。この作用により、樹脂パック242が圧縮され、塗布液がノズル23に向けて送液される。このように、本実施形態では、押圧装置61Aが、加圧部として機能する送液部として構成されている。制御部8が、マスフローメーター62による流量の検出信号に基づいて、押圧装置61Aを制御することによって、ノズル23に向けて送液される塗布液の送液量が調整される。
【0066】
本実施形態によれば、樹脂パック242の周囲が非圧縮性流体で充填されているため、中空空間24SAを昇圧した際に、樹脂パックが圧縮されやすくなる。したがって、押圧装置61Aにより加圧した際に、送液の応答性がよくなるため、吐出量の制御を精度よく行うことができる。
【0067】
<3.変形例>
以上、実施形態の詳細について説明したが様々な変形が可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、制御部8の制御機能を、ソフトウエア的に実現するようにしているが、その機能の一部または全部を専用の回路に置き換えてハードウェア的に実現するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、塗布液を供給する塗布液供給部として、電空レギュレーター61と加圧タンク24、または、押圧装置61Aと加圧タンク24Aとで構成していたが、塗布液供給の構成は、このようなものに限られるものではない。例えば、塗布液を貯留したタンクから、制御部8などによって回転数の制御が可能な渦巻き羽根等で塗布液に圧力を与えて、塗布液をノズル23に送液するようにしてもよい。すなわち、制御部8によって制御可能な状態で、塗布液貯留部から塗布液を送液できるのであれば、塗布液供給部は自由に構成することができる。
【0070】
また、上記実施形態に係る塗布装置1は、図5に示したように、一の電空レギュレーター61と一の加圧タンク24とで構成される単一の塗布液供給機構から、複数のノズル23に向けて塗布液を供給するように構成されている。ここで、電空レギュレーター61および加圧タンク24をノズル23の個数分設けて、ノズル23毎に独立して塗布液を供給するようにしてもよい。この変形例について、図9を参照しつつ説明する。
【0071】
図9は、変形例に係る複数の加圧タンク24と複数のノズル23との間の接続関係を示した模式図である。本変形例では、各ノズル23に対して、一つの加圧タンク24が設けられている。また、各加圧タンク24には、一つの電空レギュレーター61が接続されており、複数の加圧タンク24をそれぞれ独立して加圧するように構成されている。また、加圧タンク24のそれぞれには、接続チューブ64まで延びる配管241aが接続されている。そして、各配管241aの途中に、マスフローメーター62と電磁開閉弁63とがそれぞれ設けられている。
【0072】
この変形例に係る塗布装置では、各配管241aに設けられたマスフローメーター62の測定信号に基づき、制御部8が対応する電空レギュレーター61を制御する。これにより、適切な量の塗布液が各加圧タンク24から各ノズル23に向けて供給されるように制御される。本変形例の場合、互いに独立した塗布液供給機構から各ノズル23に向けて塗布液が供給されるため、ノズル23毎に塗布液の吐出量を調整することができる。
【0073】
以上が、変形例の説明である。なお、上記実施形態及び変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜組み合わせたり省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 塗布装置
100 基板
10 基板保持部
11 基板移動機構
20 塗布ヘッド
21 ヘッド移動機構(ノズル移動機構)
23 ノズル
24,24A 加圧タンク
240,240A 外装体
241a 配管
241b 分岐管
242 樹脂パック
243 ダイヤフラム
24S,24SA 中空空間
26 供給管群
61 電空レギュレーター(送液部)
61A 押圧装置(送液部)
62 マスフローメーター(流量測定部)
64 接続チューブ
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、
塗布液を吐出するノズルと、
基板に対して、前記ノズルを移動させるノズル移動機構と、
前記塗布液を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された塗布液を前記ノズルに向けて送液する送液部と、
前記塗布液を前記ノズルに供給するために前記タンクと前記ノズルとの間に設けられ、前記ノズル移動機構による前記ノズルの移動に追従して変形する接続チューブと、
前記タンクから前記ノズルに向けて供給される塗布液の流量を測定する流量測定部と、
前記流量測定部による測定結果に基づき、前記送液部を制御することによって、前記ノズルに向けて送液される塗布液の送液量を調節する送液制御部と、
を備える塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記送液部は、
前記タンク内に貯留された塗布液を加圧して、前記塗布液を前記ノズルに向けて送液する加圧部、
を含み、
前記送液制御部は、前記加圧部を制御する塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布装置において、
前記タンク部は、
内部に中空空間を形成するとともに、前記加圧部によって前記中空空間内部が昇圧される外装体と、
前記中空空間内部に配置され、容積を変動させることによって、内部に貯留された塗布液を前記ノズルに向けて送液する袋体と、
を有する塗布装置。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布装置において、
前記中空空間には、圧縮性流体が充填されている塗布装置。
【請求項5】
請求項3に記載の塗布装置において、
前記中空空間には、非圧縮性流体が充填されている塗布装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の塗布装置において、
基板を前記ノズルに対して第1方向に相対移動させる相対移動機構、
をさらに備え、
前記ノズル移動機構は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って、前記ノズルを往復移動させる塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−71266(P2012−71266A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218823(P2010−218823)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】