説明

変速装置

【課題】入力軸と出力手段間に生じる回転差に応じて出力手段の回転制御が可能な、部品点数が少なく、コンパクトで構造も簡素となる変速装置を提供する。
【解決手段】入力軸11と、入力軸11を軸心にして支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする偏心ガイド部12を有する偏心ガイド板13と、偏心ガイド板13を、動力伝達手段14を介して回転駆動する第2の入力手段15と、偏心ガイド部12にガイドされる円筒ガイド部16を備え、偏心ガイド板13の偏心位置を軸心とした外歯17及び内歯18が設けられた内外歯車19と、回転中心が入力軸11と同一軸心上にあって外歯17と歯車連結する連結内歯20を有する出力手段21とを備え、内歯18は入力軸11に歯車連結機構22を介して連結され、入力軸11及び第2の入力手段15の回転数の差に応じて内外歯車19を回転させながら偏心ガイド部12に沿って周回させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸と出力手段にそれぞれ内歯と外歯を介して歯車連結する内外歯車を、入力軸の回りに周回させることで出力手段の回転を制御する変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自転車用の変速装置として、多数段のスプロケットの中から選択したスプロケットにチェーンを掛け替える外装式の変速装置、遊星歯車機構を使用した内装式の変速装置が提案されている。ここで、内装式の変速装置では、例えば、フレームに組み込まれるギヤケースとペダルの踏み力により回転するクランク軸に対して回動自在に従動回転体を設け、その一側にスプロケットを固定し、クランク軸と一体に回転するキャリヤに複数段の遊星歯車を軸支し、遊星歯車の各段内側にそれぞれ回動可能な太陽歯車を噛合させ、キャリヤと従動回転体の間に回転速度差を吸収するラチェット機構を設け、各段の太陽歯車の回転を許容、阻止する一方向クラッチの切り替え操作を行うことにより、クランク軸に対して増速される内歯歯車を切り替えて変速を行うものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−263081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外装式の変速装置では、走行中にレバーの操作を行うため、チェーンがスプロケットから外れるという問題が生じる。また、特許文献1に記載された内装式のものでは、ラチェット機構や各段の太陽歯車又は内歯歯車に対応した一方向クラッチを構成する多数の部品が必要となり、構造が複雑になるという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、入力軸と出力手段間に生じる回転差に応じて出力手段の回転制御が可能な、部品点数が少なく、コンパクトで構造も簡素となる変速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る変速装置は、入力手段と接続する入力軸と、
前記入力軸を軸心にして回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の偏心ガイド部を有する偏心ガイド板と、
前記偏心ガイド板を、動力伝達手段を介して回転駆動する第2の入力手段と、
前記偏心ガイド板の偏心ガイド部にガイドされる円筒ガイド部を備え、前記偏心ガイド板の偏心位置を軸心とした外歯及び内歯が設けられた内外歯車と、
回転中心が前記入力軸と同一軸心上にあって、前記内外歯車の前記外歯と歯車連結する連結内歯を有する出力手段と、
前記偏心ガイド板、前記内外歯車、前記入力軸の一部、及び前記出力手段の一部を収容するケーシングとを備え、
前記内外歯車の前記内歯は前記入力軸に歯車連結機構を介して連結され、前記入力軸及び前記第2の入力手段の回転数の差に応じて前記内外歯車を回転させながら前記偏心ガイド部に沿って周回させている。
【0007】
第1の発明に係る変速装置において、前記偏心ガイド部と前記円筒ガイド部との間にはころ軸受が装着されていることが好ましい。
また、前記歯車連結機構は、前記入力軸と接続する大径歯車と、前記出力手段に外周側で接続して前記入力軸と同一軸心上で回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の第2の偏心ガイド部を有する第2の偏心ガイド板と、前記第2の偏心ガイド部にガイドされる第2の円筒ガイド部を備え、前記第2の偏心ガイド板の偏心位置を共通の軸心として前記大径歯車に設けられた大径内歯に歯車連結する第2の外歯及び第2の内歯がそれぞれ設けられた第2の内外歯車と、前記入力軸と軸心を合わせて配置され、前記内外歯車の前記内歯に歯車連結される第3の外歯及び前記第2の内歯に歯車連結する第4の外歯をそれぞれ両側に備えた小径外歯車とを有する構成とすることが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る変速装置において、前記入力軸は一方向クラッチを介して前記ケーシングと接続していることが好ましい。
また、前記第2の偏心ガイド部と前記第2の円筒ガイド部との間には第2のころ軸受が装着されていることが好ましい。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係る変速装置は、中央に配置される固定軸と、
前記固定軸に回転自在に取付けられ、該固定軸の軸心とは異なる偏心位置を中心とする環状の偏心ガイド部を有する偏心ガイド板と、
前記偏心ガイド板に一方向クラッチを介して連結する入力手段の入力軸と、
前記偏心ガイド部に嵌入してガイドされる円筒ガイド部を備え、該円筒ガイド部と軸心を共通にした内歯及び外歯を備える内外歯車と、
前記固定軸に回転可能に取付けられ、該固定軸の軸心を共通にして、前記内外歯車の前記外歯と歯車連結する連結内歯を備えた出力手段と、
前記内外歯車の前記内歯と歯車連結機構を介して歯車連結し、一方側が前記偏心ガイド板の側部中央に押圧取付け手段を介して当接し、他方側が中央部を貫通する前記固定軸と第2の一方向クラッチを介して接続して、該偏心ガイド板と一体で回転する押圧部とを有し、前記出力手段に負荷が発生した場合、回転する前記内外歯車を前記偏心ガイド部に沿って周回させながら前記押圧部を前記偏心ガイド板に対して滑らせている。
【0010】
第2の発明に係る変速装置において、前記偏心ガイド部と前記円筒ガイド部との間にはころ軸受が装着されていることが好ましい。
また、前記押圧取付け手段は、前記押圧部の前記偏心ガイド板に対向する側に開口を備え該押圧部を貫通している前記固定軸と平行に該固定軸を取囲んで周方向に等間隔に形成された複数の穴部と、前記穴部にそれぞれ基側から挿入され先側にボールが設けられたバネと、前記偏心ガイド板の前記押圧部に対向する側に設けられ、前記バネで付勢された前記ボールを収容する谷と該ボールの移動を防止する山が前記穴部の間隔に合わせて周方向に交互に形成されている環状溝とを有する構成とすることができる。
【0011】
第2の発明に係る変速装置において、前記歯車連結機構は、前記出力手段に外周側で接続して前記固定軸と同一軸心上で回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の第2の偏心ガイド部を有する第2の偏心ガイド板と、前記第2の偏心ガイド部にガイドされる第2の円筒ガイド部を備え、前記第2の偏心ガイド板の偏心位置を共通の軸心にした第2の内歯及び前記押圧部に設けられた大径内歯に歯車連結する第2の外歯をそれぞれ備える第2の内外歯車と、前記内外歯車の前記内歯と歯車連結する第1の小径外歯及び前記第2の内外歯車の前記第2の内歯と歯車連結する第2の小径外歯をそれぞれ両側に備えた小径外歯車とを有する構成とすることができる。
そして、前記第2の偏心ガイド部と前記第2の円筒ガイド部との間には第2のころ軸受が装着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜5記載の変速装置においては、入力軸と出力手段にそれぞれ内歯及び外歯を介して歯車連結する内外歯車が入力軸の回りを偏心ガイド部に沿って周回するので、入力軸の回転が歯車間の歯数で決まる比率で出力手段に伝達されず、出力手段の回転を変速(減速)することができる。そして、内外歯車の周回速度を調整するだけで出力手段の回転を変速できるので、変速装置を構成する部品点数が少なくなって、変速装置の構造の簡素化及びコンパクト化が可能になる。
【0013】
特に、請求項2記載の変速装置においては、偏心ガイド部と円筒ガイド部との間にころ軸受が装着されているので、内外歯車を偏心ガイド部に沿って低抵抗で周回させることができ、入力手段から出力手段への動力の伝達効率を高位に維持することができる。
【0014】
請求項3記載の変速装置においては、偏心ガイド板を第2の入力手段の回転数で入力軸の回りに回転させることで、偏心ガイド部を入力軸の回りに回転させることができ、歯車連結機構を介して入力軸の回転数に基づいた回転数で回転している内外歯車を偏心ガイド部に沿って周回させることができる。
【0015】
請求項4記載の変速装置においては、入力軸は一方向クラッチを介してケーシングと接続しているので、出力手段がロックされた場合、内外歯車を介して小径外歯車に逆回転が発生し、第2の内外歯車に伝達され、この逆回転は第2の内外歯車を介して大径歯車に伝達され大径歯車を逆回転させようとするが、大径歯車は逆回転できず停止する。これにより、出力手段、偏心ガイド板、内外歯車、小径外歯車、第2の内外歯車、及び大径歯車がすべて一体で停止することができる。
【0016】
請求項5記載の変速装置においては、第2の偏心ガイド部と第2の円筒ガイド部との間には第2のころ軸受が装着されているので、第2の内外歯車を第2の偏心ガイド部に沿って低抵抗で周回させることができ、第2の内外歯車を介して入力手段からの回転動力を内外歯車に効率よく伝達できる。
【0017】
請求項6〜10記載の変速装置においては、出力手段に負荷が発生した場合、回転する内外歯車を偏心ガイド部に沿って周回させながら押圧部を偏心ガイド板に対して滑らせるので、内外歯車の回転が歯車間の歯数で決まる比率で出力手段に伝達されず、出力手段の回転を変速(減速)することができる。
【0018】
特に、請求項7記載の変速装置においては、偏心ガイド部と円筒ガイド部との間にころ軸受が装着されているので、内外歯車を偏心ガイド部に沿って低抵抗で周回させることができ、入力手段から出力手段への動力の伝達効率を高位に維持することができる。
【0019】
請求項8記載の変速装置においては、入力軸と一体的に回転している出力手段に負荷が加わった場合に、簡単な構成で押圧部を滑らせて、出力手段に伝達される回転数を調整することができる。
【0020】
請求項9記載の変速装置においては、出力手段に負荷が加わった場合、その負荷を押圧部に伝えることができる。
【0021】
請求項10記載の変速装置においては、第2のころ軸受が装着されているので、第2の内外歯車を第2の偏心ガイド部に沿って低抵抗で周回させることができ、出力手段に加わった負荷を押圧部に効率的に伝達できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る変速装置の側断面図、図2は同変速装置の一部切欠き正面図、図3は本発明の第2の実施の形態に係る変速装置の側断面図である。
【0023】
図1、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る変速装置10は、図示しない入力手段と接続する入力軸11と、入力軸11を軸心にして回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の偏心ガイド部12を有する偏心ガイド板13と、偏心ガイド板13を、動力伝達手段の一例である歯車14を介して回転駆動する第2の入力手段の一例である回転数可変型のモータ15とを有している。更に、変速装置10は、偏心ガイド板13の偏心ガイド部12にガイドされる円筒ガイド部16を備え、偏心ガイド板13の偏心位置を軸心とした外歯17及び内歯18が設けられた内外歯車19と、回転中心が入力軸11と同一軸心上にあって、内外歯車19の外歯17と歯車連結する連結内歯20を有する出力手段の一例である出力軸21とを備えており、内外歯車19の内歯18は入力軸11に歯車連結機構22を介して連結されている。以下、詳細に説明する。
【0024】
変速装置10は内側に偏心ガイド板13と内外歯車19を収容するケーシング23を有し、ケーシング23の(軸方向)両側には軸受24を備えケーシング23内に突出して設けられた入力軸挿通部25と、入力軸挿通部25と同心で軸受26を備えた出力軸挿通部27がそれぞれ形成されている。そして、基側が図示しない回転動力源と接続している入力軸11の先側が軸受24で支持されて、ケーシング23内に導入されている。一方、出力軸21は、軸受26で支持されてケーシング23内から外部に先側が導出される軸部28と、軸部28の基側に連接してケーシング23内に設けられ軸部28と同心の円板部29と、円板部29の外周部に先側が連接して設けられ軸部28と同心の円筒部30とを有している。また、連結内歯20は、円筒部30の内面の基側に形成され、入力軸11の先側は、入力軸挿通部25の突出端部に取付けられた一方向クラッチ31を介してケーシング23に連結している。
【0025】
歯車連結機構22は、入力軸11の先部に連接して設けられた大径歯車32と、出力軸21の円筒部30内面の中間部(連結内歯20より先側)に外周側で接続して入力軸11と同一軸心上で回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の第2の偏心ガイド部33を有する第2の偏心ガイド板34と、第2の偏心ガイド部33にガイドされる第2の円筒ガイド部35を備え、第2の偏心ガイド板34の偏心位置を共通の軸心として大径歯車32に設けられた大径内歯36に歯車連結する第2の外歯37及び第2の内歯38がそれぞれ設けられた第2の内外歯車39と、入力軸11と軸心を合わせて配置され、内外歯車19の内歯18に歯車連結される第3の外歯40と、第2の内歯38に歯車連結する第4の外歯41をそれぞれ軸方向両側に備えた小径外歯車42とを有している。
【0026】
ここで、大径歯車32は、出力軸21の軸部28の基端部に軸受43を介して回転自在に取付けられている。また、出力軸21の円筒部30内面の基端部と偏心ガイド板13の外周端部との間には軸受44が配置され、偏心ガイド板13は入力軸挿通部25の外周側に軸受45を介して回転自在に設けられている。これによって、モータ15を駆動させてモータ15のモータ軸47に取付けられた歯車14から偏心ガイド板13に設けた歯車46を介して偏心ガイド板13に回転動力を伝達させて、偏心ガイド板13を入力軸11及び軸部28(出力軸21)と同心状態で回転させることができる。そして、偏心ガイド部12と円筒ガイド部16との間にはころ軸受48が装着され、第2の偏心ガイド部33と第2の円筒ガイド部35との間には第2のころ軸受49が装着されており、内外歯車19、第2の内外歯車39がそれぞれ偏心ガイド部12、第2の偏心ガイド部33に沿って低抵抗で周回できるようにしている。
【0027】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る変速装置10の作用について説明する。
図1、図2に示すように、モータ15を駆動停止した状態で、入力軸11を正転方向に回転させると、大径歯車32が同一方向に回転し、大径歯車32の大径内歯36、第2の内外歯車39の第2の外歯37、第2の内歯38、小径外歯車42の第4の外歯41が噛み合った状態で回転し、小径外歯車42に歯車連結する内外歯車19も噛み合って回転することで、内外歯車19に噛み合う円筒部30も入力軸11と同一方向に回転し、入力軸11の回転が出力軸21に伝達する。このとき、偏心ガイド板13も回転するので、全て一体で回転することになる。また、偏心ガイド板13に設けられている歯車46に噛み合っている歯車14と一体のモータ軸47は、空転することになる。
【0028】
モータ15を駆動させて偏心ガイド板13を入力軸11と同心で回転させると、偏心ガイド板13より入力された回転は、内外歯車19の外歯17に連結内歯20を介して噛み合う円筒部30(出力軸21)を回転させる。この際、内外歯車19の内歯18に噛み合う第3の外歯40を備えた小径外歯車42には逆回転の力が負荷される。一方、小径外歯車42に第4の外歯41を介して噛み合う第2の内外歯車39は、円筒部30に接続する第2の偏心ガイド板34に第2の円筒ガイド部35を介して連結され、第2の内外歯車39の第2の外歯37は大径歯車32の大径内歯36に噛み合い、大径歯車32は入力軸11と接続して回転制御されている。このため、小径外歯車42は逆回転できず、内外歯車19は、回転しながら円筒部30の連結内歯20に沿って周回し、円筒部30(出力軸21)を減速回転させる。ここで、円筒部30に第2の偏心ガイド板34を介して連結する第2の内外歯車39は大径歯車32の大径内歯36に噛み合って周回し、第2の内外歯車39の第2の内歯38に噛み合っている小径外歯車42を逆回転させる。その逆回転は、内外歯車19の内歯18に噛み合う第3の外歯40に伝わり、その逆回転数は内外歯車19が回転しながら円筒部30の連結内歯20に噛み合って周回する回転数を変化させて変速を行う。
【0029】
ここで、出力軸21がロックされると、内外歯車19を介して小径外歯車42に逆回転が発生し、この逆回転は第2の内外歯車39を介して大径歯車32に伝達され大径歯車32を逆回転させようとする。しかし、入力軸11は一方向クラッチ31を介してケーシング23と接続しているので、大径歯車32は逆回転することができず停止する。これにより、出力軸21、偏心ガイド板13、内外歯車19、小径外歯車42、第2の内外歯車39、及び大径歯車32がすべて一体で停止する。
【0030】
図3に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る変速装置50は自転車に使用されるもので、中央に配置される固定軸50aと、固定軸50aに軸受53を介して回転自在に取付けられ、固定軸50aの軸心とは異なる偏心位置を中心とする環状の偏心ガイド部54を有する偏心ガイド板55と、偏心ガイド板55に一方向クラッチ85を介して連結し、軸受51aを介して固定軸50aに回転自在に取付けられる入力手段の一例であるスプロケット51に設けられた入力軸52と、偏心ガイド部54に嵌入してガイドされる円筒ガイド部56を備え、円筒ガイド部56と軸心を共通にした内歯57及び外歯58を備える内外歯車59とを備えている。更に、変速装置50は、固定軸50aに回転可能に取付けられ、固定軸50aの軸心を共通にして、内外歯車59の外歯58と歯車連結する連結内歯60を備えた出力手段の一例でありスポーク61を介して後輪を回転させるホイール62と、内外歯車59の内歯57と歯車連結機構63を介して歯車連結し、一方側が偏心ガイド板55の側部中央に押圧取付け手段64を介して当接し、他方側が中央部を貫通する固定軸50aと第2の一方向クラッチ84を介して接続して、偏心ガイド板55と一体で回転する押圧部65とを有している。ここで、一方向クラッチ85と第2の一方向クラッチ84の正転方向は一致させている。以下、詳細に説明する。
【0031】
歯車連結機構63は、ホイール62の内側に外周側で接続して固定軸50aと同一軸心上で回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の第2の偏心ガイド部66を有する第2の偏心ガイド板67と、第2の偏心ガイド部66にガイドされる第2の円筒ガイド部68を備え、第2の偏心ガイド板67の偏心位置を共通の軸心にした第2の内歯69及び押圧部65に設けられた大径歯車75の大径内歯76に歯車連結する第2の外歯70をそれぞれ備える第2の内外歯車71と、内外歯車59の内歯57と歯車連結する第1の小径外歯72及び第2の内外歯車71の第2の内歯69と歯車連結する第2の小径外歯73をそれぞれ両側に備えた小径外歯車74とを有している。なお、大径歯車75は、軸受75aを介して固定軸50aに回転自在に取付けられている。
【0032】
また、押圧取付け手段64は、押圧部65の偏心ガイド板55に対向する側に開口を備え押圧部65を貫通している固定軸50aと平行に固定軸50aを取囲んで周方向に等間隔に形成された複数の穴部78と、穴部78にそれぞれ基側から挿入され先側にボール79が設けられたバネ80と、偏心ガイド板55の押圧部65に対向する側に設けられ、バネ80で付勢されたボール79を収容する谷81とボール79の移動を防止する山82が穴部78の間隔に合わせて周方向に交互に形成されている環状溝83とを有している。
【0033】
ここで、ホイール62内面の両側には、それぞれ中央部に固定軸50aを支持する軸受87を備えた円板部86と、偏心ガイド板55の外周側を支持する軸受88が配置されている。これにより、ホイール62が固定軸50aと同心で回転するのを補助している。なお、円板部86の半径方向中間部には、円板部86と同心で円筒部89が設けられ、円筒部89の外周部にはブレーキパッド90を介して押圧リング状部材91が設けられている。
また、偏心ガイド部54と円筒ガイド部56との間にはころ軸受92が装着され、第2の偏心ガイド部66と第2の円筒ガイド部68との間には第2のころ軸受93が装着されており、内外歯車59、第2の内外歯車71がそれぞれ偏心ガイド部54、第2の偏心ガイド部66に沿って低抵抗で周回できるようにしている。
【0034】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る変速装置50の作用について説明する。
図3に示すように、入力軸52を一方向クラッチ85(第2の一方向クラッチ84)の正転方向に回転させると、偏心ガイド板55が固定軸50aの回りで同一方向に回転し、これに伴って内外歯車59が回転しホイール62も入力軸52と同一方向に回転する。一方
内外歯車59の回転は歯車連結機構63を介して押圧部65に伝達され、押圧部65は押圧取付け手段64を介して偏心ガイド板55と一体で回転する。
【0035】
偏心ガイド板55より入力された回転は、内外歯車59の外歯58に連結内歯60を介して噛み合うホイール62を回転させる。この際、内外歯車59の内歯57に噛み合う第1の小径外歯72を備えた小径外歯車74には逆回転の力が負荷される。一方、小径外歯車74に第2の小径外歯73を介して噛み合う第2の内外歯車71は、ホイール62に接続する第2の偏心ガイド板67に第2の円筒ガイド部68を介して連結され、第2の内外歯車71の第2の外歯70は大径歯車75の大径内歯76に噛み合い、大径歯車75は押圧取付け手段64を介して偏心ガイド板55(入力軸52)と一体で回転制御されている。このため、小径外歯車74は逆回転できず、内外歯車59は、回転しながらホイール62の連結内歯60に沿って周回し、ホイール62を減速回転させる。ここで、ホイール62に第2の偏心ガイド板67を介して連結する第2の内外歯車71は大径歯車75の大径内歯76に噛み合って周回し、第2の内外歯車71の第2の内歯69に噛み合っている小径外歯車74を逆回転させる。その逆回転は、内外歯車59の内歯57に噛み合う第1の小径外歯72に伝わり、その逆回転数は内外歯車59が回転しながらホイール62の連結内歯60に噛み合って周回する回転数を変化させて変速を行う。
【0036】
回転しているホイール62に負荷がかかると、内外歯車59は、偏心ガイド板55の偏心ガイド部54に沿って周回しながら入力軸52の回転をホイール62に伝える。ここで、内外歯車59を介して小径外歯車74には逆回転の力が発生し、この逆回転の力が第2の内外歯車71を介して押圧部65に伝わり、押圧取付け手段64を介して偏心ガイド板55と一体で回転していた押圧部65は偏心ガイド板55上でスリップする。これにより、偏心ガイド板55の回転数と押圧部65の回転数の差が吸収される。
【0037】
ここで、ホイール62がロックされると、内外歯車59を介して小径外歯車74に逆回転が発生し、この逆回転は第2の内外歯車71を介して押圧部65を逆回転させようとする。しかし、押圧部65と固定軸50aは第2の一方向クラッチ84を介して接続しているので、押圧部65は逆回転することができず停止する。これにより、ホイール62、偏心ガイド板55、内外歯車59、小径外歯車74、第2の内外歯車71、及び押圧部65がすべて一体で停止する。
【0038】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る変速装置の側断面図である。
【図2】同変速装置の一部切欠き正面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る変速装置の側断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10:変速装置、11:入力軸、12:偏心ガイド部、13:偏心ガイド板、14:歯車、15:モータ、16:円筒ガイド部、17:外歯、18:内歯、19:内外歯車、20:連結内歯、21:出力軸、22:歯車連結機構、23:ケーシング、24:軸受、25:入力軸挿通部、26:軸受、27:出力軸挿通部、28:軸部、29:円板部、30:円筒部、31:一方向クラッチ、32:大径歯車、33:第2の偏心ガイド部、34:第2の偏心ガイド板、35:第2の円筒ガイド部、36:大径内歯、37:第2の外歯、38:第2の内歯、39:第2の内外歯車、40:第3の外歯、41:第4の外歯、42:小径外歯車、43、44、45:軸受、46:歯車、47:モータ軸、48:ころ軸受、49:第2のころ軸受、50:変速装置、50a:固定軸、51:スプロケット、51a:軸受、52:入力軸、53:軸受、54:偏心ガイド部、55:偏心ガイド板、56:円筒ガイド部、57:内歯、58:外歯、59:内外歯車、60:連結内歯、61:スポーク、62:ホイール、63:歯車連結機構、64:押圧取付け手段、65:押圧部、66:第2の偏心ガイド部、67:第2の偏心ガイド板、68:第2の円筒ガイド部、69:第2の内歯、70:第2の外歯、71:第2の内外歯車、72:第1の小径外歯、73:第2の小径外歯、74:小径外歯車、75:大径歯車、75a:軸受、76:大径内歯、77:挿通部、78:穴部、79:ボール、80:バネ、81:谷、82:山、83:環状溝、84:第2の一方向クラッチ、85:一方向クラッチ、86:円板部、87、88:軸受、89:円筒部、90:ブレーキパッド、91:押圧リング状部材、92:ころ軸受、93:第2のころ軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力手段と接続する入力軸と、
前記入力軸を軸心にして回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の偏心ガイド部を有する偏心ガイド板と、
前記偏心ガイド板を、動力伝達手段を介して回転駆動する第2の入力手段と、
前記偏心ガイド板の偏心ガイド部にガイドされる円筒ガイド部を備え、前記偏心ガイド板の偏心位置を軸心とした外歯及び内歯が設けられた内外歯車と、
回転中心が前記入力軸と同一軸心上にあって、前記内外歯車の前記外歯と歯車連結する連結内歯を有する出力手段と、
前記偏心ガイド板、前記内外歯車、前記入力軸の一部、及び前記出力手段の一部を収容するケーシングとを備え、
前記内外歯車の前記内歯は前記入力軸に歯車連結機構を介して連結され、前記入力軸及び前記第2の入力手段の回転数の差に応じて前記内外歯車を回転させながら前記偏心ガイド部に沿って周回させることを特徴とする変速装置。
【請求項2】
請求項1記載の変速装置において、前記偏心ガイド部と前記円筒ガイド部との間にはころ軸受が装着されていることを特徴とする変速装置。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の変速装置において、前記歯車連結機構は、前記入力軸と接続する大径歯車と、前記出力手段に外周側で接続して前記入力軸と同一軸心上で回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の第2の偏心ガイド部を有する第2の偏心ガイド板と、前記第2の偏心ガイド部にガイドされる第2の円筒ガイド部を備え、前記第2の偏心ガイド板の偏心位置を共通の軸心として前記大径歯車に設けられた大径内歯に歯車連結する第2の外歯及び第2の内歯がそれぞれ設けられた第2の内外歯車と、前記入力軸と軸心を合わせて配置され、前記内外歯車の前記内歯に歯車連結される第3の外歯及び前記第2の内歯に歯車連結する第4の外歯をそれぞれ両側に備えた小径外歯車とを有することを特徴とする変速装置。
【請求項4】
請求項3記載の変速装置において、前記入力軸は一方向クラッチを介して前記ケーシングと接続していることを特徴とする変速装置。
【請求項5】
請求項3及び4のいずれか1項に記載の変速装置において、前記第2の偏心ガイド部と前記第2の円筒ガイド部との間には第2のころ軸受が装着されていることを特徴とする変速装置。
【請求項6】
中央に配置される固定軸と、
前記固定軸に回転自在に取付けられ、該固定軸の軸心とは異なる偏心位置を中心とする環状の偏心ガイド部を有する偏心ガイド板と、
前記偏心ガイド板に一方向クラッチを介して連結する入力手段の入力軸と、
前記偏心ガイド部に嵌入してガイドされる円筒ガイド部を備え、該円筒ガイド部と軸心を共通にした内歯及び外歯を備える内外歯車と、
前記固定軸に回転可能に取付けられ、該固定軸の軸心を共通にして、前記内外歯車の前記外歯と歯車連結する連結内歯を備えた出力手段と、
前記内外歯車の前記内歯と歯車連結機構を介して歯車連結し、一方側が前記偏心ガイド板の側部中央に押圧取付け手段を介して当接し、他方側が中央部を貫通する前記固定軸と第2の一方向クラッチを介して接続して、該偏心ガイド板と一体で回転する押圧部とを有し、前記出力手段に負荷が発生した場合、回転する前記内外歯車を前記偏心ガイド部に沿って周回させながら前記押圧部を前記偏心ガイド板に対して滑らせることを特徴とする変速装置。
【請求項7】
請求項6記載の変速装置において、前記偏心ガイド部と前記円筒ガイド部との間にはころ軸受が装着されていることを特徴とする変速装置。
【請求項8】
請求項6及び7のいずれか1項に記載の変速装置において、前記押圧取付け手段は、前記押圧部の前記偏心ガイド板に対向する側に開口を備え該押圧部を貫通している前記固定軸と平行に該固定軸を取囲んで周方向に等間隔に形成された複数の穴部と、前記穴部にそれぞれ基側から挿入され先側にボールが設けられたバネと、前記偏心ガイド板の前記押圧部に対向する側に設けられ、前記バネで付勢された前記ボールを収容する谷と該ボールの移動を防止する山が前記穴部の間隔に合わせて周方向に交互に形成されている環状溝とを有することを特徴とする変速装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の変速装置において、前記歯車連結機構は、前記出力手段に外周側で接続して前記固定軸と同一軸心上で回転自在に支持され、その回転中心とは異なる偏心位置を中心とする環状の第2の偏心ガイド部を有する第2の偏心ガイド板と、前記第2の偏心ガイド部にガイドされる第2の円筒ガイド部を備え、前記第2の偏心ガイド板の偏心位置を共通の軸心にした第2の内歯及び前記押圧部に設けられた大径内歯に歯車連結する第2の外歯をそれぞれ備える第2の内外歯車と、前記内外歯車の前記内歯と歯車連結する第1の小径外歯及び前記第2の内外歯車の前記第2の内歯と歯車連結する第2の小径外歯をそれぞれ両側に備えた小径外歯車とを有することを特徴とする変速装置。
【請求項10】
請求項9記載の変速装置において、前記第2の偏心ガイド部と前記第2の円筒ガイド部との間には第2のころ軸受が装着されていることを特徴とする変速装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−127776(P2009−127776A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304764(P2007−304764)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【特許番号】特許第4160628号(P4160628)
【特許公報発行日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(594010021)
【Fターム(参考)】