説明

多層配線の形成方法

【課題】 工程数の増加がなく、しかも銅を使用している配線にダメージが及ぶ可能性も少ない多層配線の形成方法を提供すること。
【解決手段】 銅を使用している下層配線3上にエッチングストップ層5を形成し、エッチングストップ層5上に層間絶縁膜6を形成し、層間絶縁膜6にエッチングストップ層5に達する開孔7を形成し。層間絶縁膜6上に酸化マンガン膜8を形成し、酸化マンガン膜8を開孔7から露呈した層間絶縁膜6の表面に残しながら、下層配線3上に形成されたエッチングストップ層5を除去し、開孔7の底に下層配線3を露呈させ、開孔7の底に露呈した下層配線3上に、上層配線を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層配線の形成方法に係わり、特に、配線どうしの接触抵抗を軽減する多層配線の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の内部金属配線からの金属、例えば、銅(Cu)の拡散を防ぐ拡散防止膜(以下バリア層という)の材料として金属酸化物、例えば、酸化マンガンが注目されている。
【0003】
酸化マンガン膜は電気的な抵抗値が銅よりも高い。しかも、酸化マンガン膜は、銅の上に僅かながら付着する。このため、酸化マンガン膜をバリア層に用いた場合、銅を使用している配線どうしの接触抵抗の増大が懸念される。
【0004】
そこで、特許文献1には、銅を使用している配線上に付着した酸化マンガン膜を、パンチスルーして除去する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−16782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、パンチスルー工程が必要であるため、工程数が増加する。また、銅を使用している配線上から酸化マンガン膜を除去するため、銅を使用している配線へのダメージが懸念される。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、工程数の増加がなく、しかも銅を使用している配線にダメージが及ぶ可能性も少ない多層配線の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の第1の態様に係る多層配線の形成方法は、(1)銅を使用している下層配線上に、エッチングストップ層を形成する工程と、(2)前記エッチングストップ層上に、層間絶縁膜を形成する工程と、(3)前記層間絶縁膜に、前記エッチングストップ層に達する開孔を形成する工程と、(4)前記層間絶縁膜上に、酸化マンガン膜を形成する工程と、(5)前記酸化マンガン膜を前記開孔から露呈した前記層間絶縁膜の表面に残しながら、前記下層配線上に形成されたエッチングストップ層を除去し、前記開孔の底に、前記下層配線を露呈させる工程と、(6)前記開孔の底に露呈した前記下層配線上に、上層配線を形成する工程と、を、具備する。
【0009】
この発明の第2の態様に係る多層配線の形成方法は、(1)銅を使用している下層配線上に、第1のエッチングストップ層を形成する工程と、(2)前記第1のエッチングストップ層上に、第1の層間絶縁膜を形成する工程と、(3)前記第1の層間絶縁膜上に、前記第1のエッチングストップ層よりも膜厚が厚い第2のエッチングストップ層を形成する工程と、(4)前記第2のエッチングストップ層上に、第2の層間絶縁膜を形成する工程と、(5)前記第2の層間絶縁膜に、前記第2のエッチングストップ層に達する第1の開孔を形成する工程と、(6)前記第1の開孔の底の露呈した前記第2のエッチングストップ層及び前記第1の層間絶縁膜に、前記第1のエッチングストップ層に達する第2の開孔を形成する工程と、(7)前記第1の層間絶縁膜及び前記第2の層間絶縁膜上に、酸化マンガン膜を形成する工程と、(8)前記第2のエッチングストップ層を前記第1の層間絶縁膜上に残すとともに、前記酸化マンガン膜を前記第1の開孔及び前記第2の開孔から露呈した前記層間絶縁膜の表面に残しながら、前記下層配線上に形成された第1のエッチングストップ層を除去し、前記第2の開孔の底に、前記下層配線を露呈させる工程と、(9)前記第2の開孔の底に露呈した前記下層配線上に、上層配線を形成する工程と、を、具備する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、工程数の増加がなく、しかも銅を使用している配線にダメージが及ぶ可能性も少ない多層配線の形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第1例を示す断面図
【図1B】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第1例を示す断面図
【図1C】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第1例を示す断面図
【図1D】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第1例を示す断面図
【図1E】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第1例を示す断面図
【図1F】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第1例を示す断面図
【図1G】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第1例を示す断面図
【図2】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第2例を示す断面図
【図3A】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第3例を示す断面図
【図3B】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第3例を示す断面図
【図3C】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第3例を示す断面図
【図3D】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第3例を示す断面図
【図3E】この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第3例を示す断面図
【図4A】この発明の第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の一例を示す断面図
【図4B】この発明の第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の一例を示す断面図
【図4C】この発明の第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の一例を示す断面図
【図4D】この発明の第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の一例を示す断面図
【図4E】この発明の第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の一例を示す断面図
【図5】この発明の第1、第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の実施に好適な処理装置の一例を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0013】
(第1の実施形態)
(第1例)
第1例は、この発明を、上層配線を下層配線に接続する孔状開孔(ヴィア孔、スルー孔、コンタクト孔等)に適用した例である。
【0014】
図1A〜図1Gは、この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第1例を示す断面図である。なお、本明細書に添付する図面においては、シリコンウエハやトランジスタ等の素子の図示は省略し、シリコンウエハ上に形成されている配線、及び層間絶縁膜の部分のみを概略的に示すことにする。
【0015】
まず、図1Aに示すように、図示基板1は半導体ウエハ、例えば、シリコンウエハである。シリコンウエハ上には、第1層層間絶縁膜2が形成されている。第1層層間絶縁膜2の材料例はCVD−酸化シリコン系絶縁膜であり、その上面にハードマスク層HMが残されている例を示している。ハードマスク層HMは除去されていても良い。CVD−酸化シリコン系絶縁膜の一例はTEOS膜であるが、TEOS膜に限られるものではない。第1層層間絶縁膜2には、配線を形成するための溝が形成されており、この溝の内部には、銅を使用している下層配線3が形成されている。下層配線3の周囲にはバリア膜4が形成されている。このような基板1の少なくとも下層配線3上にエッチングストップ層5を形成する。本例では、層間絶縁膜2上に及び下層配線3上にエッチングストップ層5を形成する。エッチングストップ層5は、銅に対するバリア性を有する材料が選ばれることが良い。そのような材料の例としては、SiC、SiN、SiCN等を挙げることができる。
【0016】
次に、図1Bに示すように、エッチングストップ層5上に、第2層層間絶縁膜6を形成する。第2層層間絶縁膜6の材料例は、第1層層間絶縁膜2と同様にCVD−酸化シリコン系絶縁膜である。また、その上面にはハードマスク層HMが残されているが、ハードマスク層HMは第1層層間絶縁膜2と同様に除去されていても良い。CVD−酸化シリコン系絶縁膜の一例はTEOS膜であるが、TEOS膜に限られるものではない。
【0017】
次に、図1Cに示すように、第2層層間絶縁膜6に、エッチングストップ層5に達する開孔7を形成する。開孔7は、例えば、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて形成される。フォトリソグラフィ法において使用されたフォトレジスト膜は残っていても、また、図1Cに示すように残らなくてもどちらでも良い。また、第2層層間絶縁膜6の上面にあるハードマスクHMは図1Cに示すように残されても良いし、除去されても良い。
【0018】
次に、図1Dに示すように、第2層層間絶縁膜6上に、酸化マンガン膜8を形成する。酸化マンガン膜8は、例えば、マンガン前駆体ガス、例えば、ビスエチルシクロペンタジエニルマンガン((EtCp)Mn[=Mn(C])ガスを用いた熱CVD法によって形成される。
【0019】
この熱CVDにおける成膜処理条件の一例は次の通りである。
【0020】
処理容器内圧力 : 1Pa以上10Pa以下
基板温度 : 50℃以上400℃以下
処理容器内雰囲気: マンガン前駆体ガス雰囲気
もしくは不活性ガスで希釈されたマンガン前駆体ガス雰囲気
処理時間 : 10sec以上60sec以下
次に、図1Eに示すように、酸化マンガン膜8を、開孔7から露呈した第2層層間絶縁膜6の表面(開孔7の側面)に残しながら、下層配線3上に形成されたエッチングストップ層5を除去する。これにより、開孔7の底に、下層配線3を露呈させる。
【0021】
エッチングストップ層5の材料を、例えば、膜厚50nmのSiCとし、平行平板型2周波プラズマエッチング装置を用いたときのエッチング処理条件の一例は次の通りである。
【0022】
処理容器内圧力 : 1Pa以上10Pa以下
エッチングガス流量: CH(又はCHF)/O/Ar
=10/10/100(sccm)
上部電極のRF電力: 1500W
上部電極の周波数 : 60MHz
下部電極のRF電力: 100W
下部電極の周波数 : 2MHz
電極間ギャップ : 35mm
処理時間 : 30sec以上180sec以下
次に、開孔7の底に露呈した下層配線3上に、上層配線9を形成する。本例では、図1Fに示すように、開孔7の底に露呈した下層配線3上及び第2層層間絶縁膜6上に、銅又は銅合金膜9aを形成した後、図1Gに示すように、銅又は銅合金膜9aの表面を平坦化し、上層配線9を形成する。本例における上層配線9はヴィアである。
【0023】
(第2例)
第2例は、開孔の幅が下層配線の幅より広いことを想定した例である。
【0024】
図2は、この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第2例を示す断面図である。図2には、上層配線9が、例えば、ヴィアであるとき、このヴィア9に上層配線15を接続した例を示している。
【0025】
図2に示す構造を得るための方法は、第1例において説明した形成方法と同じであり、第2層層間絶縁膜6上にはエッチングストップ層11が形成される。エッチングストップ層11上には第3層層間絶縁膜12が形成され、第3層層間絶縁膜12にはエッチングストップ層11に達する開孔13が形成される。開孔13に露呈した第3層層間絶縁膜12の表面には酸化マンガン膜14が形成され、開孔13の中にはヴィア9に接続され、例えば、銅が使用されている上層配線15が形成される。
【0026】
第2例が第1例と異なるところは、第3層層間絶縁膜12に形成された開孔13の幅W13が、開孔13の下層にある開孔7の幅W7よりも広く、開孔13が第2層層間絶縁膜6上に拡がって形成されることである。
【0027】
このような場合、第2層層間絶縁膜6の上面にハードマスクHMを残し、かつ、第2層層間絶縁膜6の上面のハードマスクHMに、銅に対するバリア性を有する材料が選ばれることが良い。そのような材料の例としては、SiC、SiN、SiCN等を挙げることができる。また、ハードマスクHMには、銅の拡散を抑制するために必要な膜厚を持たせることが良い。
【0028】
このように、この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法は、開孔の幅が下層にある配線の幅よりも狭い場合に限られるものではなく、開孔の幅が下層にある配線の幅よりも広い場合、もしくは開孔が下層にある配線から同じく下層にある層間絶縁膜上にかけて形成される場合にも適用することができる。
【0029】
(第3例)
第3例は、この発明をデュアルダマシン技術に適用した例である。
【0030】
図3A〜図3Fは、この発明の第1の実施形態に係る多層配線の形成方法の第3例を示す断面図である。
【0031】
まず、図3Aに示すように、図1Aを参照して説明した基板1の、第1層層間絶縁膜2上及び下層配線3上に、エッチングストップ層5を形成する。エッチングストップ層5の材料例は、第1例において説明したものと同様で良い。しかし、本例では、エッチングストップ層5の酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量を、次に形成される第2層層間絶縁膜6の酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量よりも少ない膜を使用する。もしくはエッチングストップ層5の酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量を、次に形成される第2層層間絶縁膜6の酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量より少なくする。
【0032】
このようなエッチングストップ層5の材料例としては、SiC、SiN、SiCN等を挙げることができる。また、エッチングストップ層5の酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量を、第2層層間絶縁膜6よりも少なくするには、例えば、エッチングストップ層5を形成した後、酸素原子を抜く処理、例えば、含有水分を蒸発させるなどの処理を行えば良い。次いで、エッチングストップ層5上に、第2層層間絶縁膜6を形成する。本例では、まず、下層部分6−1を形成し、次いで、上層部分6−2を形成する。下層部分6−1の材料と上層部分6−2の材料とは異ならせても良いし、同じであっても良い。次に、第2層層間絶縁膜6に、エッチングストップ層5に達する開孔を形成するが、本例では、下層配線と上層配線との接続パターンに対応した孔状部分と、上層配線の配線パターンに対応した溝状部分と、を形成する(デュアルダマシン技術)。まず、上層部分6−2に配線パターンに対応した溝状の開孔13を形成する。次いで、溝状の開孔13の底に露呈した下層部分6−1に、接続パターンに対応し、エッチングストップ層5に達する孔状の開孔7を形成する。
【0033】
なお、開孔7を形成してから開孔13を形成するようにしても良い。
【0034】
次に、図3Bに示すように、第2層層間絶縁膜6上に、酸化マンガン膜8を形成する。酸化マンガン膜8の形成方法、及び成膜処理条件は、第1例において説明したものと同様で良い。このとき、上述したように、第2層層間絶縁膜6の酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量は、エッチングストップ層5酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量よりも多くされている。このため、酸化マンガン膜8は、第2層層間絶縁膜6上で厚く形成されるが、エッチングストップ層5上では薄くなるか、あるいはほとんど形成されなくすることができる。
【0035】
次に、図3Cに示すように、酸化マンガン膜8を、開孔13及び開孔7から露呈した第2層層間絶縁膜6の表面(開孔7の側面、開孔13の側面及び底面)に残しながら、下層配線3上に形成されたエッチングストップ層5を除去する。これにより、開孔7の底に、下層配線3を露呈させる。エッチングの処理条件は、第1例において説明したものと同様で良い。
【0036】
次に、開孔7の底に露呈した下層配線3上に、上層配線9を形成する。本例では、図3Dに示すように、開孔7の底に露呈した下層配線3上及び第2層層間絶縁膜6上に、銅又は銅合金膜9aを形成した後、図3Eに示すように、銅又は銅合金膜9aの表面を平坦化し、上層配線9を形成する。
【0037】
このような第1の実施形態に係る多層配線の形成方法によれば、第2層層間絶縁膜6に、エッチングストップ層5に達する開孔7、13を形成し、第2層層間絶縁膜6上に、酸化マンガン膜8を形成し、酸化マンガン膜8を開孔7、13から露呈した第2層層間絶縁膜6の表面に残しながら、下層配線3上に形成されたエッチングストップ層5を除去し、開孔7、13の底に、下層配線3を露呈させる。そして、上層配線9を形成する。
【0038】
このようにしながら、下層配線3に上層配線9を接続するので、下層配線3と上層配線9との接触面に酸化マンガン膜8が存在することがなく、下層配線3と上層配線9との接触抵抗の増大を抑制することができる。
【0039】
さらに、下層配線3上に形成されたエッチングストップ層5の除去にあっては、酸化マンガン膜8を開孔7、13から露呈した第2層層間絶縁膜6の表面に残しながら、酸化マンガン膜8と同一の工程で除去することができるので、工程数が増加することもない。また、銅を使用している下層配線3の表面から酸化マンガン膜を除去するようなパンチスルー工程も必要ないので、下層配線3にダメージが及ぶ可能性も少なくすることができる。
【0040】
このように、第1の実施形態に係る多層配線の形成方法によれば、工程数の増加がなく、しかも銅を使用している配線にダメージが及ぶ可能性も少なくすることができる、という利点を得ることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、この発明をデュアルダマシン技術に適用した例である。
【0042】
図4A〜図4Dは、この発明の第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の一例を示す断面図である。なお、第2の実施形態において、エッチングストップ層、及び層間絶縁膜の材料は、第1の実施形態において説明したものと同様のものを使用することができる。
【0043】
まず、図4Aに示すように、図1Aを参照して説明した基板1の、第1層層間絶縁膜2上及び下層配線3上に、第1のエッチングストップ層5を形成する。次いで、第1のエッチングストップ層5上に、第2層層間絶縁膜6を形成する。次いで、第2層層間絶縁膜6上に、第2のエッチングストップ層11を形成する。本例では、第2のエッチングストップ層11の膜厚t11は、第1のエッチングストップ層5の膜厚t5よりも厚くなるように形成する。また、第2のエッチングストップ層11の材質が、第1のエッチングストップ層5の材質と同じとしても良い。次いで、第2のエッチングストップ層11上に、第3層層間絶縁膜12を形成する。本例では、第3層層間絶縁膜12の上面にはハードマスクHMが残されているが、もちろん除去されていても良い。次いで、第3層層間絶縁膜12に、第2のエッチングストップ層11に達する開孔13を形成する。本例の開孔13は、上層配線の配線パターンに対応した溝状の開孔である。次いで、開孔13の底に露呈した第2のエッチングストップ層11及び第2層層間絶縁膜6に、第1のエッチングストップ層5に達する開孔7を形成する。本例の開孔7は、上層配線と下層配線3との接続パターンに対応した孔状の開孔7である。
【0044】
次に、図4Bに示すように、第2層層間絶縁膜6及び第3層層間絶縁膜12上に、酸化マンガン膜8を形成する。
【0045】
次に、図4Cに示すように、第2のエッチングストップ層11を第2層層間絶縁膜6上に残すとともに、酸化マンガン膜8を開孔7、13露呈した第2層層間絶縁膜6、第3層層間絶縁膜12の表面に残しながら、下層配線3上に形成された第1のエッチングストップ層5を除去する。これにより、開孔7の底に、下層配線3を露呈させる。
【0046】
次に、開孔7の底に露呈した下層配線3上に、上層配線9を形成する。本例では、図4Dに示すように、開孔7の底に露呈した下層配線3上、第2層層間絶縁膜6上、及び第3層層間絶縁膜12上に銅又は銅合金膜9aを形成した後、図4Eに示すように、銅又は銅合金膜9aの表面を平坦化し、上層配線9を形成する。
【0047】
このような第2の実施形態に係る多層配線の形成方法によれば、第1の実施形態と同様に、下層配線3と上層配線9との接触面に酸化マンガン膜8が存在することがなく、下層配線3と上層配線9との接触抵抗の増大を抑制することができる。
【0048】
さらに、下層配線3上に形成されたエッチングストップ層5の除去にあっては、酸化マンガン膜8の除去と同一の工程で除去することができるので、工程数が増加することもない。また、銅を使用している下層配線3の表面から酸化マンガン膜を除去するようなパンチスルー工程も必要ない。
【0049】
よって、第2の実施形態に係る多層配線の形成方法によっても、工程数の増加がなく、しかも銅を使用している配線にダメージが及ぶ可能性も少なくすることができる、という利点を得ることができる。
【0050】
かつ、第2の実施形態にあっては、第2のエッチングストップ層11の膜厚t11を、第1のエッチングストップ層5の膜厚t5よりも厚くする。このため、開孔7の底に露呈した第1のエッチングストップ層5を除去したとしても、開孔13の底に、第2のエッチングストップ層11を残すことができる。そして、第2のエッチングストップ層11に、銅に対するバリア性を有する材料が選び、かつ、残された第2のエッチングストップ層11の膜厚を、銅に対するバリア性が充分な膜厚とする。このようにすると、第2のエッチングストップ層11を、上層配線9の、開孔13の側面及び底面におけるバリア膜として使用することができる。
【0051】
このように第2の実施形態によれば、第1のエッチングストップ層5と、第2のエッチングストップ層11との材質と同じとしても、開孔13の側面及び底面から、第2のエッチングストップ層11が消失することがない、という利点も得ることができる。
【0052】
第1のエッチングストップ層5と、第2のエッチングストップ層11との材質と同じにできれば、二つのエッチングストップ層5、11を作るために、別々の成膜装置を使用することもなく、電気的製品、例えば、半導体集積回路装置の製造コストの低減にも有利である。
【0053】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1、第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の実施に、好適な処理装置に関する例である。
【0054】
(装置構成)
図5は、この発明の第1、第2の実施形態に係る多層配線の形成方法の実施に好適な処理装置の一例を概略的に示す断面図である。
【0055】
図5に示すように、処理装置100は、例えば、ドライエッチング装置として構成され、特に、酸化マンガン膜8、及びエッチングストップ層5の除去に使用されるものである。しかし、本例では、これに酸化マンガン膜8を成膜する成膜機能を付加し、第1、第2の実施形態に多層配線の形成方法に実施に有用な構成としたものである。
【0056】
図5に示すように、処理装置100は、処理容器(処理室)101を有する。処理容器101内には基板1を水平に載置する載置台102が、処理容器101から絶縁部材103により絶縁された状態で設けられている。載置台102内には基板1の温調手段となるヒータ104が設けられている。基板1は、ヒータ104により、例えば、200℃程度の温度まで昇温することが可能である。また、載置台102は、ブロッキングコンデンサ105を介して高周波電源106aに接続されている。これにより、載置台102には、高周波電力の供給が可能になっている。
【0057】
処理容器101の底部には排気口107が設けられており、排気口107は排気装置108に接続されている。処理容器101の内部は、排気装置108により排気されることで、内部の圧力を、所定の減圧環境下とすることが可能に構成されている。なお、処理容器101の側壁には、図示せぬゲートバルブにより開閉される図示せぬ搬送口が形成されており、搬送口を介して基板1の搬入及び搬出が行われる。
【0058】
処理容器101の上面には載置台102に対向し、高周波電源106bに接続されたガスシャワーヘッド109が設けられている。これにより、ガスシャワーヘッド109には、高周波電力の供給が可能となるとともに、平行平板型2周波プラズマエッチング装置が構成される。さらに、ガスシャワーヘッド109はガス室110を備え、ガス室110に供給されたガスは複数のガス吐出孔111から処理容器101内に供給される。ガス室110には、エッチングガス供給系112、及びマンガン前駆体ガス供給系113が接続されている。
【0059】
エッチングガス供給系112は、エッチングガス供給源112aを備えている。エッチングガス供給源112aは、エッチングガスの流量を調節するマスフローコントローラ(MFC)112b、及びバルブ112cを介してガス室110に接続される。
【0060】
また、マンガン前駆体ガス供給系113は、マンガン前駆体ガス供給源113aを備えている。エッチングガス供給源113aは、マンガン前駆体ガスの流量を調節するマスフローコントローラ(MFC)113b、及びバルブ113cを介してガス室110に接続される。
【0061】
制御部114は、処理装置100を制御する。制御部114は、プロセスコントローラ115、ユーザーインターフェース116、及び記憶部117を含んで構成される。ユーザーインターフェース116は、工程管理者が、処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボード、処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含む。記憶部117には、処理装置100による処理を、コントローラ115の制御にて実現するための制御プログラムや駆動条件データ等が記録されたレシピが格納される。レシピは、必要に応じてユーザーインターフェース116からの指示により記憶部117から呼び出され、コントローラ115に実行させることで処理装置100が制御される。レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させて利用したりすることも可能である。
【0062】
処理装置100を用いて、酸化マンガン膜8の成膜、及び酸化マンガン膜8及びエッチングストップ層5の除去を行う場合には、例えば、次のようにする。
【0063】
(酸化マンガン膜8の成膜)
基板1を載置台102に載置し、ヒータ104を用いて、基板1を、例えば、200℃に加熱する。この際、例えば、高周波電源106a、106bはオフさせ、高周波電力が載置台102に供給されないようにしておく。
【0064】
バルブ112cを閉じ、バルブ113cを開ける。これにより、マンガン前駆体ガス、例えば、(EtCp)Mnガスをガス室110に供給し、複数のガス吐出孔111を介して処理容器101内に(EtCp)Mnガスを吐出させ、加熱された基板1上に、酸化マンガン膜8を形成する。なお、酸化マンガン膜8の形成に必要な酸素は、第2層層間絶縁膜6等に含まれた水分、もしくは第2層層間絶縁膜6の表面に残留した水分を利用することができる。このため、酸素の添加は、基本的に不要である。
【0065】
このように、酸化マンガン膜8は、基板1を加熱する、いわゆる熱CVD法を用いて成膜される。
【0066】
(酸化マンガン膜8及びエッチングストップ層5の除去)
酸化マンガン膜8が形成された基板1を載置台102に載置したまま、排気装置108を用いて、処理容器101の内部を排気する。ヒータ104の温度を調節し、基板1の温度を、例えば、50℃とする。
【0067】
バルブ113cを閉じ、バルブ112cを開ける。これにより、エッチングガス、例えば、CH又はCHFガスをガス室110に供給し、複数のガス吐出孔111を介して処理容器101内にCH又はCHFガスを吐出させる。
【0068】
高周波電源106a、106bをオンさせ、載置台102とガスシャワーヘッド109との間に高周波電界を形成し、処理容器101内に供給されたCH又はCHFガスをプラズマ化させる。プラズマ化されたCH又はCHFガスを用いて、基板1上に形成された酸化マンガン膜8、及びエッチングストップ層5を除去する。
【0069】
このように、酸化マンガン膜8、及びエッチングストップ層5は、プラズマを用いた基ドライエッチング法を用いて除去される。
【0070】
このような処理装置100によれば、酸化マンガン膜8の成膜、及び酸化マンガン膜8及びエッチングストップ層5の除去を連続して行うことができる。このため、第1、第2の実施形態に係る多層配線の形成方法を実施するにあたり、スループットの向上に有利である。
【0071】
以上、この発明を第1〜第3の実施形態に従って説明したが、この発明は第1〜第3の実施形態に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【0072】
例えば、上記一実施形態においては、マンガン前駆体として、(EtCp)Mnを用いたが、これに限られるものではなく、他のマンガン前駆体を用いることもできる。
【0073】
他のマンガン前駆体としては、例えば、
CpMn[=Mn(C
(MeCp)Mn[=Mn(CH
(i−PrCp)Mn[=Mn(C
MeCpMn(CO)[=(CH)Mn(CO)
(t−BuCp)Mn[=Mn(C
Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11)]
Mn(acac)[=Mn(C
Mn(acac)[=Mn(C
Mn(hfac)[=Mn(CHF
((CHCp)Mn[=Mn((CH
等を挙げることができる。
【0074】
また、上記一実施形態においては、層間絶縁膜としてTEOS膜を用いたが、TEOS膜に限られるものではなく、酸化マンガン膜8の形成に必要な水分を含む絶縁物であれば良い。
【0075】
また、水分に限らず、OH基を含む膜であっても良い。特に、OH基を含む膜としては、反応させることでOH基が水分(HO)に変化する膜であることが良い。OH基が変化して生成された水分を表面に出すことによって、金属原料ガスを表面に出た水分と接触させることができるからである。
【0076】
また、エッチングストップ層のエッチングガスとして、CHやCHFではなく、CFなどの他のガスを使用しても良い。
【0077】
また、第1、第2の実施形態に係る多層配線の形成方法は、第3の実施形態において図5を参照して説明した処理装置100によってのみ実施されるものではない。例えば、プロセス毎に処理容器を複数に分け、かつ、複数の処理容器それぞれに接続され、基板1を大気暴露することなく搬送させる搬送室を持つ、いわゆるクラスターツール型の処理装置を用いて実施することもできる。
【0078】
その他、この発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…基板、2…第1層層間絶縁膜、3…銅を使用している下層配線、4…バリア膜、5…エッチングストップ層、6…第2層層間絶縁膜、7…開孔、8…酸化マンガン膜、9…上層配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)銅を使用している下層配線上に、エッチングストップ層を形成する工程と、
(2)前記エッチングストップ層上に、層間絶縁膜を形成する工程と、
(3)前記層間絶縁膜に、前記エッチングストップ層に達する開孔を形成する工程と、
(4)前記層間絶縁膜上に、酸化マンガン膜を形成する工程と、
(5)前記酸化マンガン膜を前記開孔から露呈した前記層間絶縁膜の表面に残しながら、前記下層配線上に形成されたエッチングストップ層を除去し、前記開孔の底に、前記下層配線を露呈させる工程と、
(6)前記開孔の底に露呈した前記下層配線上に、上層配線を形成する工程と、
を、具備することを特徴とする多層配線の形成方法。
【請求項2】
前記エッチングストップ層の酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量を、前記層間絶縁膜の酸素原子含有量又は表面の酸素原子残留量よりも少なくすることを特徴とする請求項1に記載の多層配線の形成方法。
【請求項3】
前記層間絶縁膜に形成された開孔が、
前記下層配線と前記上層配線との接続パターンに対応した孔状部分と、
前記上層配線の配線パターンに対応した溝状部分と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の多層配線の形成方法。
【請求項4】
前記上層配線に銅を使用し、
前記エッチングストップ層に、前記銅に対するバリア性を有する材料を選ぶことを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか一項に記載の多層配線の形成方法。
【請求項5】
(1)銅を使用している下層配線上に、第1のエッチングストップ層を形成する工程と、
(2)前記第1のエッチングストップ層上に、第1の層間絶縁膜を形成する工程と、
(3)前記第1の層間絶縁膜上に、前記第1のエッチングストップ層よりも膜厚が厚い第2のエッチングストップ層を形成する工程と、
(4)前記第2のエッチングストップ層上に、第2の層間絶縁膜を形成する工程と、
(5)前記第2の層間絶縁膜に、前記第2のエッチングストップ層に達する第1の開孔を形成する工程と、
(6)前記第1の開孔の底の露呈した前記第2のエッチングストップ層及び前記第1の層間絶縁膜に、前記第1のエッチングストップ層に達する第2の開孔を形成する工程と、
(7)前記第1の層間絶縁膜及び前記第2の層間絶縁膜上に、酸化マンガン膜を形成する工程と、
(8)前記第2のエッチングストップ層を前記第1の層間絶縁膜上に残すとともに、前記酸化マンガン膜を前記第1の開孔及び前記第2の開孔から露呈した前記層間絶縁膜の表面に残しながら、前記下層配線上に形成された第1のエッチングストップ層を除去し、前記第2の開孔の底に、前記下層配線を露呈させる工程と、
(9)前記第2の開孔の底に露呈した前記下層配線上に、上層配線を形成する工程と、
を、具備することを特徴とする多層配線の形成方法。
【請求項6】
前記第2のエッチングストップ層の材質が、前記第1のエッチングストップ層の材質と同じであることを特徴とする請求項5に記載の多層配線の形成方法。
【請求項7】
前記上層配線に銅を使用し、
前記第1のエッチングストップ層及び前記第2のエッチングストップ層に、前記銅に対するバリア性を有する材料を選ぶことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の多層配線の形成方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−3687(P2011−3687A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144944(P2009−144944)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】