説明

多層配線基板の製造方法、及びペースト印刷用マスク

【課題】少なくとも1層の導体層と少なくとも1層の樹脂絶縁層とが交互に積層され、表面をなす前記樹脂絶縁層から複数の導電性パッドが突出してなる積層構造体を含む多層配線基板において、はんだバンプを均一に形成し、半導体素子との接続不良を抑制する。
【解決手段】少なくとも1層の樹脂絶縁層の表面上において、この表面から突出するようにして形成された導電性パッドに対して、第1の開口径を有する第1の開口部が形成されてなるメタル層と、前記第1の開口径及び前記導電性パッドの外径よりも大きな第2の開口径を有する第2の開口部が形成されてなる樹脂層とが、前記第1の開口部及び前記第2の開口部が連通するように積層されてなるマスクを介してはんだペーストを供給し、リフローする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の製造方法、及びペースト印刷用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子部品を搭載するパッケージとしては、コア基板の両側に樹脂絶縁層と導体層とを交互に積層してビルドアップ層を形成した多層配線基板が用いられている。多層配線基板において、コア基板は例えばガラス繊維を含んだ樹脂からなり、高い剛性によりビルドアップ層を補強する役割がある。
【0003】
しかしながら、コア基板は厚く形成されるため、多層配線基板の小型化の妨げになるとともに、ビルドアップ層間を電気的に接続するスルーホール導体を設ける必要があるため配線長が必然的に長くなり、高周波信号の伝送性能の劣化を招く恐れがある。
【0004】
このような観点から、近年では、コア基板を設けることなく、小型化に適し、かつ高周波信号の伝送性能の向上が可能な構造を有する、いわゆるコアレス多層配線基板が提案されている(特許文献1、特許文献2)。このようなコアレス多層配線基板は、例えば、剥離可能な2つの金属膜を積層してなる剥離シートを表面に設けた支持体にビルドアップ層を形成した後、上記剥離シートの剥離界面で分離することによりビルドアップ層を支持体から分離して、目的とする多層配線基板を得るものである。
【0005】
一方、多層配線基板の半導体素子搭載領域に位置し、半導体素子とフリップチップ接続するための導電性パッドは、最上層に位置するレジスト層の下方において、レジスト層に形成された開口から露出するようにして形成するのみならず、レジスト層の表面において、このレジスト層の表面から突出するようにして形成する場合がある(特許文献3)。
【0006】
レジスト層の表面から突出するようにして形成した導電性パッドに対してはんだペーストを供給し、リフローしてはんだバンプを形成する場合において、通常、はんだペーストの供給はメタルマスクを介して行われる。すなわち、メタルマスクの開口部を導電性パッドの位置に合わせるとともに、メタルマスクをレジスト層に密着させた状態で、開口部を介して導電性パッドにはんだペーストを供給する。
【0007】
しかしながら、レジスト層の表面から突出するようにして形成された導電性パッドに対し、上述のようにメタルマスクを介してはんだペーストを供給する場合、メタルマスクの開口部の位置が導電性パッドの位置からずれてしまうと、例えばメタルマスクの非開口部が導電性パッド上に位置してレジスト層に密着しなくなり、メタルマスクとレジスト層との間に隙間が生じてしまう場合がある。このような状態で、メタルマスクを介して導電性パッドにはんだペーストを供給すると、はんだペーストが前述した隙間に流れ込み、隣接した導電性バンプ同士がはんだペーストによって繋がってしまう、いわゆるブリッジ現象が生じる。
【0008】
このようなブリッジ現象が生じると、各導電性バンプに供給すべきはんだペーストの量が変動するため、リフローしてはんだバンプを形成した場合において、各導電性バンプに形成されるはんだバンプの厚さ等が変動し、導電性バンプの全体に亘って均一なはんだバンプを形成することができないという問題が生じる。したがって、このような状態の多層配線基板を半導体素子とフリップチップ接合しようとした場合において、上述したはんだバンプの不均一性に起因して、半導体素子との接触不良が生じるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−289848号
【特許文献2】特開2007−214427号
【特許文献3】特開2009−212140号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、少なくとも1層の導体層と少なくとも1層の樹脂絶縁層とが交互に積層され、表面をなす前記樹脂絶縁層から複数の導電性パッドが突出してなる積層構造体を含む多層配線基板において、はんだバンプを均一に形成し、半導体素子との接続不良を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明は、
少なくとも1層の導体層と少なくとも1層の樹脂絶縁層とが交互に積層され、表面をなす前記樹脂絶縁層から複数の導電性パッドが突出してなる積層構造体を準備する工程と、
第1の開口径を有する第1の開口部が形成されてなるメタル層、並びに第1の開口径及び前記複数の導電性パッドそれぞれの外径よりも大きな第2の開口径を有する第2の開口部が形成されてなる樹脂層が積層されて、前記第1の開口部及び前記第2の開口部が連通してなるマスクを準備する工程と、
前記マスクの前記樹脂層が、前記複数の導電性パッド間において前記樹脂絶縁層の表面に密着するとともに、前記複数の導電性パッドそれぞれが前記第1の開口部及び前記第2の開口部に対応するようにして配置するマスク配置工程と、
前記マスクを介して前記複数の導電性パッドそれぞれにはんだペーストを供給し、前記複数の導電性パッドそれぞれの上に、はんだバンプを形成する工程と、
を備えることを特徴とする、多層配線基板の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、
第1の開口径を有する第1の開口部が形成されてなるメタル層と、
前記第1の開口径の外径よりも大きな第2の開口径を有する第2の開口部が形成されてなる樹脂層とを備え、
前記メタル層及び前記樹脂層が積層されて、前記第1の開口部及び前記第2の開口部が連通してなることを特徴とする、ペースト印刷用マスクに関する。
【0013】
本発明によれば、いわゆるコアレスの多層配線基板を製造方法において、少なくとも1層の導体層と少なくとも1層の樹脂絶縁層とが交互に積層され、表面をなす前記樹脂絶縁層から複数の導電性パッドが突出してなる積層構造体を含む多層配線基板において、積層構造体の樹脂絶縁層から突出するようにして形成された複数の導電性パッドに対してはんだペーストを供給してはんだバンプを形成する場合に、第1の開口径を有する第1の開口部が形成されてなるメタル層と、第1の開口径及び複数の導電性パッドそれぞれの外径よりも大きな第2の開口径を有する第2の開口部が形成されてなる樹脂層とを備え、メタル層及び樹脂層が、第1の開口部及び第2の開口部が連通するようにして積層されてなるマスクを用いて行う。
【0014】
具体的には、上記マスクの樹脂層が、複数の導電性パッド間において樹脂絶縁層の表面に密着するとともに、複数の導電性パッドそれぞれが第1の開口部及び第2の開口部に対応するようにしてマスクを配置して行う。この場合、メタル層の第1開口部の位置と導電性パッドの位置とが多少ずれたような場合においても、樹脂層の第2の開口部はメタル層の第1の開口部よりも大きいので、例えばマスクの非開口部が導電性パッド上に位置してもマスクが樹脂絶縁層から剥離することなく、樹脂層は樹脂絶縁層に密着したままの状態となる。
【0015】
したがって、マスクと樹脂絶縁層との間に隙間が生じることがないので、このような状態で、マスクを介して導電性パッドにはんだペーストを供給しても、隣接した導電性バンプ同士がはんだペーストによって繋がってしまう、いわゆるブリッジ現象が生じることがない。このため、各導電性バンプに供給すべきはんだペーストの量が均一となるため、リフローしてはんだバンプを形成した場合において、各導電性バンプに形成されるはんだバンプの厚さ等の変動が抑制され、導電性バンプの全体に亘って均一なはんだバンプを形成することができるようになる。
【0016】
この結果、このような状態の多層配線基板を半導体素子とフリップチップ接合しようとした場合において、上述したはんだバンプの均一性のために、半導体素子との接触不良が生じることがない。
【0017】
なお、本発明の一例において、マスクにおける前記樹脂層の前記第2の開口径が、前記メタル層側から前記メタル層と相対する側に向けて、拡径するように構成することができる。すなわち、マスクを多層配線基板の樹脂絶縁層上に配置した場合において、マスクを構成する樹脂層の第2の開口部に露出した端面をなす第2の開口部の開口径が、前記メタル層側から前記メタル層と相対する側に向けて、拡径するように、テーパー状に形成することができる。
【0018】
この場合、上記マスクを少なくとも1層の樹脂絶縁層に密着させた状態で導電性パッドにはんだペーストを供給し、その後マスクを除去する場合に、上記マスクの、特に樹脂層とはんだペーストとの間に形成される摩擦力が軽減されるので、樹脂層にはんだペーストが付着することなく、マスクの除去をより簡易かつ良好に行うことができるようになる。
【0019】
また、本発明の一例において、マスク配置工程において、樹脂層の第2の開口部の内周面が、複数の導電性パッドそれぞれの外周側に位置するようにしてマスクを配置することができる。
【0020】
この場合、マスクを介してはんだペーストを供給する場合に、上述した樹脂層を設けることに起因したブリッジ現象の抑制に加えて、相当する導電性パッドに対して当初より均一にはんだペーストを供給でき、特に導電性パッドの両側面に対してより均一にはんだペーストを供給することができるようになる。したがって、後のリフローを経ることにより、導電性パッドに対して、左右前後の形状が均一なはんだバンプを形成することができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも1層の導体層と少なくとも1層の樹脂絶縁層とが交互に積層され、表面をなす前記樹脂絶縁層から複数の導電性パッドが突出してなる積層構造体を含む多層配線基板において、はんだバンプを均一に形成し、半導体素子との接続不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態における多層配線基板の平面図である。
【図2】同じく、実施形態における多層配線基板の平面図である。
【図3】図1及び2に示す多層配線基板をI−I線に沿って切った場合の断面の一部を拡大して示す図である。
【図4】実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図5】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図6】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図7】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図8】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図9】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図10】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図11】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図12】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図13】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図14】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図15】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図16】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図17】同じく、実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0024】
(多層配線基板)
最初に、本発明の方法及びマスクを用いて製造される多層配線基板の一例について説明する。図1及び図2は、本実施形態における多層配線基板の平面図であり、図1は、多層配線基板を上側から見た場合の状態を示し、図2は、多層配線基板を下側から見た場合の状態を示している。また、図3は、図1及び2に示す多層配線基板をI−I線に沿って切った場合の断面の一部を拡大して示す図である。
【0025】
但し、以下に示す多層配線基板は、本発明の特徴を明確にするための例示であって、交互に積層されてなる少なくとも1層の導体層及び少なくとも1層の樹脂絶縁層を含むビルドアップ層と、少なくとも1層の樹脂絶縁層の表面上において、表面から突出するようにして形成されてなる導電性パッドと、この導電性パッド上に形成されてなるはんだバンプとを備えていれば特に限定されるものではない。
【0026】
図1〜3に示す多層配線基板10は、必要に応じてシリカフィラー等を含む熱硬化性樹脂組成物からなる第1の樹脂絶縁層21及び第2の樹脂絶縁層22と、銅等の電気的良導体からなり、それぞれ所定のパターンを有する第1の導体層31及び第2の導体層32とが交互に積層されている。また、第1の樹脂絶縁層21上には、開口部41Aが形成されてなる、例えばエポキシ系のレジスト材からなる第1のレジスト層41が形成され、第2の樹脂絶縁層22上には、開口部、すなわちビアホール42Aが形成されてなる、例えばエポキシ系のレジスト材からなる第2のレジスト層42が形成されている。
【0027】
なお、順次に積層されてなる第1のレジスト層41、第1の樹脂絶縁層21、第1の導電層31、第2の樹脂絶縁層22、第2の導電層32及び第2のレジスト層42は、ビルドアップ層を構成する。
【0028】
また、第1の樹脂絶縁層21及び第2の樹脂絶縁層22には、これらの層を厚さ方向に貫通するようにして開口部、すなわちビアホール21A及び22Aがそれぞれ形成され、これらビアホール21A及び22Aを埋設するようにして、ビア導体51及び52がそれぞれ形成されている。なお、ビア導体52によって第1の導体層31及び第2の導体層32は互いに電気的に接続されるようになる。
【0029】
この場合、第1の導体層31の、ビア導体51と電気的に接触する部分311はビアランドを構成し、ビア導体51と接触していない部分312は配線層を構成する。同じく、第2の導体層32の、ビア導体52と電気的に接触する部分321はビアランドを構成し、ビア導体52と接触していない部分322は配線層を構成する。
【0030】
第1のレジスト層41の開口部41Aからは、第1の樹脂絶縁層21上に形成された第1の導電性パッド61が露出している。なお、ビア導体51によって第1の導体層31及び第1の導電性パッド61は互いに電気的に接続されるようになる。
【0031】
なお、第1の導電性パッド61は、多層配線基板10をマザーボードに接続するための裏面ランド(LGAパッド)として利用されるものであって、多層配線基板10の裏面において矩形状に配列されている。
【0032】
また、第2のレジスト層42のビアホール42A内には、このビアホール42Aを埋設するようにしてビア導体53が形成され、さらに第2のレジスト層42の表面から突出するとともにビア導体53と連続するようにして、第2の導電性パッド62が形成されている。なお、ビア導体53によって第2の導体層32及び導電性パッド62は互いに電気的に接続されるようになる。
【0033】
なお、第2の導電性パッド62は、図示しない半導体素子をフリップチップ接続するためのパッド(FCパッド)であり、半導体素子搭載領域を構成する。第2の導電性パッド62は、多層配線基板10の表面の略中心部において矩形状に配置されている。
【0034】
また、上述した説明から明らかなように、ビア導体51、52及び53によって、第1の導電性パッド61、第1の導体層31、第2の導体層32及び第2の導電性パッド62は、多層配線基板10の厚さ方向において電気的に接続されている。
【0035】
さらに、図3に示すように、第2の導電性パッド62の全体を覆うようにして、例えばSn−Bi、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Sb等の実質的にPbを含有しないはんだペーストからなるはんだバンプ64が形成されている。なお、第2の導電性パッド62及びはんだバンプ64間には、必要に応じてNi/Auメッキ膜等からなるバリアメタル層を形成してもよい。
【0036】
なお、多層配線基板10の大きさは、例えば200mm×200mm×0.8mmの大きさに形成することができる。
【0037】
(多層配線基板の製造方法)
次に、図1〜図3に示す多層配線基板10の製造方法について説明する。図4〜図17は、本実施形態における多層配線基板10の製造方法における工程図である。なお、図4〜図17に示す工程図は、図3に示す多層配線基板10の断面図に対応するものである。
【0038】
最初に、図4に示すように、両面に銅箔12が貼り付けられた支持基板11を準備する。支持基板11は、例えば耐熱性樹脂板(例えばビスマレイミド−トリアジン樹脂板)や、繊維強化樹脂板(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂板)等から構成することができる。次いで、支持基板11の両面に形成された銅箔12上に、接着層としてのプリプレグ層13を介して、例えば真空熱プレスにより剥離シート14を圧着形成する。
【0039】
剥離シート14は、例えば第1の金属膜14a及び第2の金属膜14bからなり、これらの膜間にはCrメッキ等が施されて、外部張力によって互いに剥離可能に構成されている。なお、第1の金属膜14a及び第2の金属膜14bは銅箔から構成することができる。
【0040】
次いで、図5に示すように、支持基板11の両側に形成された剥離シート14上にそれぞれ感光性のドライフィルムを積層し、露光及び現像することによりマスクパターン15を形成する。マスクパターン15には、アライメントマーク形成部Pa及び外周部画定部Poに相当する開口部がそれぞれ形成されている。
【0041】
次いで、図6に示すように、支持基板11の両側において、マスクパターン15を介して剥離シート14に対してエッチング処理を行い、剥離シート14の、上記開口部に相当する位置に、アライメントマーク形成部Pa及び外周部画定部Poを形成する。図7は、図6に示すアセンブリを上側から見た場合の平面図であるが、アライメントマーク形成部Paは、剥離シート14においてプリプレグ13が露出するようにして形成された開口部として構成され、外周部画定部Poは、剥離シート14の端部をプリプレグ13が露出するようにして切除して形成された切り欠きとして構成される。
【0042】
なお、アライメントマーク形成部Pa及び外周部画定部Poを形成した後、マスクパターン15はエッチング除去する。
【0043】
また、マスクパターン15を除去した後に露出した剥離シート14の表面に対してエッチング処理を施し、その表面を粗化しておくことが好ましい。これにより、剥離シート14と後述する樹脂層との密着性を高めることができる。
【0044】
次いで、図8に示すように、剥離シート14上に樹脂フィルムを積層し、真空下において加圧加熱することにより硬化させて第1の樹脂絶縁層21を形成する。これにより、剥離シート14の表面が第1の樹脂絶縁層21で覆われるとともに、アライメントマーク形成部Paを構成する開口部及び外周部画定部Poを構成する切り欠きは、第1の樹脂絶縁層21が充填された状態となる。これによって、アライメントマーク形成部Paの部分にアライメントマークAMの構造が形成される。
【0045】
また、外周部画定部Poも第1の樹脂絶縁層21で覆われるようになるので、以下に示す剥離シート14を介した剥離工程において、剥離シート14の端面が例えばプリプレグ13から剥がれて浮き上がり、剥離工程を良好に行うことができずに、目的とする多層配線基板10を製造できなくなるというような不利益を排除することができる。
【0046】
次いで、図9に示すように、第1の樹脂絶縁層21に対して、例えばCOガスレーザやYAGレーザから所定強度のレーザ光を照射し、ビアホール21Aを形成した後、ビアホール21Aを含む第1の樹脂絶縁層21に対して粗化処理を実施する。なお、第1の樹脂絶縁層21がフィラーを含む場合は、粗化処理を実施するとフィラーが遊離して第1の樹脂絶縁層21上に残存するようになるので、適宜水洗を行う。
【0047】
次いで、ビアホール21Aに対してデスミア処理及びアウトラインエッチングを施し、ビアホール21A内を洗浄する。なお、上述のように水洗浄を実施した場合は、デスミア工程における水洗浄の際に、上記フィラーが樹脂絶縁層21上に残存することを抑制することができる。
【0048】
また、上記水洗浄とデスミア処理との間に、エアーブローを行うことができる。これによって、上述した水洗浄によって遊離したフィラーが完全に除去されていない場合でも、エアーブローにおいてフィラーの除去を補完することができる。
【0049】
次いで、第1の樹脂絶縁層21に対してパターンメッキを行い、第1の導体層31及びビア導体51を形成する。なお、第1の導体層31及びビア導体51は、セミアディティブ法によって、以下のようにして形成する。最初に、第1の樹脂絶縁層21上に無電解メッキ膜を形成した後、この無電解メッキ膜上にレジストを形成し、このレジストの非形成部分に電解銅メッキを行うことによって形成する。第1の導体層31及びビア導体51を形成した後、レジストはKOH等で剥離除去する。
【0050】
次いで、第1の導体層31に粗化処理を施した後、第1の導体層31を覆うようにして、第1の樹脂絶縁層21上に樹脂フィルムを積層し、真空下において加圧加熱することにより硬化させて第2の樹脂絶縁層22を形成する。
【0051】
次いで、図10に示すように、第2の樹脂絶縁層22に対して、例えばCOガスレーザやYAGレーザから所定強度のレーザ光を照射し、ビアホール22Aを形成した後、ビアホール22Aを含む第2の樹脂絶縁層22に対して粗化処理を実施する。なお、第2の樹脂絶縁層22がフィラーを含む場合は、粗化処理を実施するとフィラーが遊離して第2の樹脂絶縁層22上に残存するようになるので、適宜水洗を行う。
【0052】
次いで、ビアホール22Aに対してデスミア処理及びアウトラインエッチングを施し、ビアホール22A内を洗浄する。なお、上述のように水洗浄を実施した場合は、デスミア工程における水洗浄の際に、上記フィラーが樹脂絶縁層22上に残存することを抑制することができる。
【0053】
また、上記水洗浄とデスミア処理との間に、エアーブローを行うことができる。これによって、上述した水洗浄によって遊離したフィラーが完全に除去されていない場合でも、エアーブローにおいてフィラーの除去を補完することができる。
【0054】
次いで、第2の樹脂絶縁層22に対してパターンメッキを行い、第1の導体層31等の場合と同様に、セミアディティブ法等により第2の導体層32及びビア導体52を形成する。
【0055】
次いで、第2の樹脂絶縁層22上に第2のレジスト層42を形成し、この第2のレジスト層42に対して所定のマスクを介して露光及び現像処理を施して開口部42Aを形成した後、第1の導体層31等の場合と同様に、セミアディティブ法等により第2の導電性パッド62及びビア導体53を形成する。
【0056】
次いで、図11に示すように、上記工程を経て得られた積層体10aを外周部画定部Poより僅かに内側に設定された切断線に沿って切断し、積層体10aから不要な外周部を除去して、多層配線基板としての有効領域を画定する。
【0057】
次いで、図12に示すように、外周部画定部Poを基準にして不要な外周部を除去した後、積層体10aの剥離シート14を構成する第1の金属膜14a及び第2の金属膜14bの剥離界面で剥離し、積層体10aから支持基板11を除去する。これによって、図12に示すような、同一構造の積層体10bを得る。
【0058】
次いで、図13に示すように、積層体10bの下方に残存する剥離シート14の第1の金属膜14aに対してエッチングを施し、第1の樹脂絶縁層21上に第1の導電性パッド61を形成する。また、第1の樹脂絶縁層21上に、第1の導電性パッド61が露出するような開口部41を有する第1のレジスト層41を形成する。
【0059】
次いで、図14及び図15に示すようなマスク70を準備する。図14は、マスク70の断面図であり、図15は、マスク70の上平面図である。マスク70は、第1の開口径d1を有する第1の開口部71Aが形成されてなるメタル層71と、第1の開口径d1及び配置すべき多層配線基板10、すなわち第2のレジスト層42の表面において、この表面から突出するようにして形成された第2の導電性パッド62の外径よりも大きな第2の開口径d2を有する第2の開口部72Aが形成されてなる樹脂層72とからなり、図15に示すように、メタル層71と樹脂層72とが、第1の開口部71A及び第2の開口部72Aが連通するように積層されて2段構成となっている。
【0060】
また、本実施例では、ステンレスでメタル層71が構成され、鉛筆硬度が5Hであるエポキシ樹脂を用いて樹脂層72が構成される。但し、マスク70を構成する樹脂層72は、エポキシ樹脂に特に限られず、積層体10bの表面をなす樹脂絶縁層と同じ樹脂材料を用いて構成すると、当該樹脂絶縁層との密着性を効果的に向上させることができる。
【0061】
さらに、マスク70の樹脂層72の硬度は、JIS5600−5−4にもとづく鉛筆硬度が9B〜9Hの範囲であることが好ましい。硬度が9Bより小さいと、マスク70を配置した際に樹脂層72が変形することにより、所定量のはんだペーストを供給できない虞があり、鉛筆硬度が9Hより大きいとマスク70と積層体10bの第2のレジスト層42との間に隙間が生じる場合やレジスト層42表面を傷つける場合がある。しかしながら、マスク70の樹脂層72の硬度を上述した範囲に設定することにより、樹脂層72の変形による不具合の発生と、マスク70と第2のレジスト層42との間の隙間の発生を確実に防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、マスク70における樹脂層72の第2の開口径d2が、メタル層71側からメタル層71と相対する側に向けて、拡径するようにマスク70を構成している。すなわち、マスク70を多層配線基板10の第2のレジスト層42上に配置した場合において、マスク70を構成する樹脂層72の第2の開口部72Aの第2の開口径d2が、メタル層71側からメタル層71と相対する側に向けて拡径するように構成している。なお、第2の開口部72Aの上記拡径に伴う、樹脂層72の端面72Bの、メタル層71の表面に対する傾斜角θは、例えば90度より小さく10度以上となる範囲に設定することができる。
【0063】
また、メタル層71の第1の開口部71Aの第1の開口径d1も、第2の導電性パッド62の外径よりも大きくなっている。
【0064】
なお、図14及び図15に示すマスク70においては、図13に示す積層体10bの形態、すなわち第2の導電性パッド62の数に合わせて第1の開口部71A及び第2の開口部72Aの数を便宜上決定している(それぞれ縦方向に2個、横方向に2個)ものであって、実際には、図1に示すような第2の導電性パッド62の数に応じて適宜に設定する。
【0065】
次いで、図16に示すように、マスク70を、メタル層71の第1の開口部71A及び樹脂層72の第2の開口部72Aが第2の導電性パッド62の位置と合致し、樹脂層72が第2のレジスト層42と密着するようにして配置する。なお、メタル層71の第1の開口部71Aの第1の開口径d1を、第2の導電性パッド62の外径よりも大きくしたことに起因して、メタル層71の、第1の開口部71Aに露出した端面71Bが、第2の導電性パッド62の外方に位置するようにする。
【0066】
次いで、図16に示すようなマスク70の配置状態において、マスク70の第1の開口部71A及び第2の開口部72Aを介して、第2の導電性パッド62に対しはんだペーストを供給する。
【0067】
この場合、マスク70の樹脂層72が第2のレジスト層42に密着しているので、本来的なマスクであるメタル層71が第2の導電性パッド62の位置からずれてしまったような場合においても、マスク70と第2のレジスト層42との間に隙間が生じることがない。したがって、このような状態で、マスク70を介して第2の導電性パッド62にはんだペーストを供給しても、図17に示すように、はんだペーストの供給によって形成されたはんだ層64Pが、隣接する第2の導電性パッド62同士を繋げてしまうような、いわゆるブリッジ現象を生じることがない。
【0068】
このため、第2の導電性パッド62に供給すべきはんだペーストの量が均一となるため、リフローしてはんだバンプを形成した場合において、第2の導電性パッド62に形成されるはんだバンプ64の厚さ等の変動が抑制され、図3に示すように、第2の導電性パッド62の全体に亘って均一なはんだバンプ64を形成することができるようになる。この結果、このような状態の多層配線基板10を半導体素子とフリップチップ接合しようとした場合において、上述したはんだバンプ64の均一性のために、半導体素子との接触不良が生じることがない。
【0069】
なお、本実施形態では、メタル層71の、第1の開口部71Aに露出した端面71Bが、第2の導電性パッド62の外方に位置するようにしているので、上述した樹脂層72を第2のレジスト層42に密着させることによるブリッジ現象の抑制に加えて、第2の導電性パッド62に対して当初より均一にはんだペーストを供給できる。その結果、図17に示すように、特に第2の導電性パッド62の両側面に対してより均一にはんだペーストを供給することができ、当該両側面を均一に覆うようなはんだ層64Pを形成することができる。したがって、後のリフローを経ることにより、図3に示すような、第2の導電性パッド62に対して、平面方向における断面が均一であり、左右前後の形状が均一なはんだバンプ64を形成することができる。
【0070】
また、本実施形態では、マスク70を、樹脂層72の第2の開口径d2が、メタル層71側からメタル層71と相対する側に向けて、拡径するように構成しているので、図17に示すようなはんだ層64Pを形成した後、マスク70を除去する場合に、マスク70の、特に樹脂層72とはんだ層64Pとの間に形成される摩擦力が軽減される。したがって、樹脂層72にはんだが付着することなく、マスク70の除去をより簡易かつ良好に行うことができるようになる。
【0071】
次いで、はんだ層64Pに対してリフローを施してはんだバンプ64を形成することによって、図1〜3に示すような多層配線基板10を得る。
【0072】
なお、本実施形態においては、必要に応じて、第2の導電性パッド62を覆うようにして、例えばNi/Auメッキ膜からなるバリアメタル層を形成することができる。
【0073】
また、上述したアライメントマークAMは、例えば第1のレジスト層41を形成する際の位置基準として用いることができる。
【0074】
本実施形態では、多層配線基板10の製造工程において、アライメントマークAMを形成するようにしているが、アライメントマークAMは必ずしも必要とされるものではない。また、本実施形態のように、剥離シート14に対してエッチング処理を実施してアライメントマークAMを形成する代わりに、ドリル加工などの機械加工によってアライメントマークAMを形成することもできる。
【0075】
以上、本発明を具体例を挙げながら詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0076】
例えば、本実施形態では、マスク70を、マスク70における樹脂層72の第2の開口径d2が、メタル層71側からメタル層71と相対する側に向けて、拡径するようにしているが、第2の開口径d2を拡径することなく、樹脂層72の端面72Bが、メタル層71の表面に対して鉛直な端面(θ=90度)となるようにして形成することもできる。しかしながら、この場合は、第2の開口径d2を拡径したことによる作用効果、すなわちマスク70のはんだ層64Pからの除去をより簡易かつ良好に行うことができない場合がある。
【0077】
また、本実施形態では、メタル層71の第1の開口部71Aの第1の開口径d1を、第2の導電性パッド62の外径よりも大きくし、メタル層71の、第1の開口部71Aに露出した端面71Bが、第2の導電性パッド62の外方に位置するようにしているが、例えば第1の開口径d1を、第2の導電性パッド62の外径よりも小さくし、メタル層71の、第1の開口部71Aに露出した端面71Bが、第2の導電性パッド62の内方に位置するようにしてもよい。しかしながら、この場合は、第2の導電性パッド62に対して、左右前後の形状が均一なはんだバンプ64を形成することができるという作用効果を奏することができない場合がある。
【符号の説明】
【0078】
10 多層配線基板、
11 支持基板
13 プリプレグ
14 剥離シート
15 マスクパターン
21 第1の樹脂絶縁層
22 第2の樹脂絶縁層
31 第1の導体層
32 第2の導体層
41 第1のレジスト層
42 第2のレジスト層
51,52,53 ビア導体
61 第1の導電性パッド
62 第2の導電性パッド
64 はんだバンプ
70 マスク
71 メタル層
71A (メタル層における)第1の開口部
71B (メタル層における第1の開口部に露出した)端面
72 樹脂層
72A (樹脂層における)第2の開口部
72B (樹脂層における第2の開口部に露出した)端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の導体層と少なくとも1層の樹脂絶縁層とが交互に積層され、表面をなす前記樹脂絶縁層から複数の導電性パッドが突出してなる積層構造体を準備する工程と、
第1の開口径を有する第1の開口部が形成されてなるメタル層、並びに第1の開口径及び前記複数の導電性パッドそれぞれの外径よりも大きな第2の開口径を有する第2の開口部が形成されてなる樹脂層が積層されて、前記第1の開口部及び前記第2の開口部が連通してなるマスクを準備する工程と、
前記マスクの前記樹脂層が、前記複数の導電性パッド間において前記樹脂絶縁層の表面に密着するとともに、前記複数の導電性パッドそれぞれが前記第1の開口部及び前記第2の開口部に対応するようにして配置するマスク配置工程と、
前記マスクを介して前記複数の導電性パッドそれぞれにはんだペーストを供給し、前記複数の導電性パッドそれぞれの上に、はんだバンプを形成する工程と、
を備えることを特徴とする、多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記マスクにおける前記樹脂層の前記第2の開口径が、前記メタル層側から前記メタル層と相対する側に向けて、拡径してなることを特徴とする、請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記マスク配置工程において、前記樹脂層の前記第2の開口部の内周面が、前記複数の導電性パッドそれぞれの外周側に位置するようにして前記マスクを配置することを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項4】
第1の開口径を有する第1の開口部が形成されてなるメタル層と、
前記第1の開口径の外径よりも大きな第2の開口径を有する第2の開口部が形成されてなる樹脂層とを備え、
前記メタル層及び前記樹脂層が積層されて、前記第1の開口部及び前記第2の開口部が連通してなることを特徴とする、ペースト印刷用マスク。
【請求項5】
前記マスクにおける前記樹脂層の前記第2の開口部が、前記メタル層側から前記メタル層と相対する側に向け、拡径してなることを特徴とする、請求項4に記載のペースト印刷用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−156325(P2012−156325A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14394(P2011−14394)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】