説明

多層UV硬化性接着剤フィルム

本発明は、(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む接着剤フィルムである。さらなる実施形態は、結束されたウエハー積層フィルム、多層接着剤フィルムが貼り付けられた半導体ウエハー、半導体ダイを基体に取り付けるための方法、および個々にダイシングされたダイが互いにくっつくのを防ぐ方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、半導体パッケージで使用するための多層接着剤フィルム、これらのフィルムを使用するための方法、およびこれらのフィルムで組み立てられた半導体パッケージに関する。本発明のフィルムは、結束されたウエハー裏面積層方法(bundled wafer backside lamination processes)で使用される場合、ダイシングの後、個々のダイに互いのくっつきを起こさせない。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
接着剤フィルムは半導体パッケージの製造、例えば、シリコン半導体ダイの基体への取付けにおいて、しばしば使用される。一般に、これらのフィルムはキャリアに塗布され、次いで部分的に硬化または乾燥してフィルム形態にするためにB−ステージ化される組成物である。次いで、このフィルムはダイシングテープに貼り付けられ、キャリアが除去され、およびフィルムの露出面は半導体ウエハーの裏面に貼り付けられ、それにより接着剤フィルムはウエハーの裏面とダイシングテープの間に挟まれる。このことはウエハーが、取り付けられた接着剤フィルムを有する個々のダイ(即ち、ダイと、多層フィルムなどのフィルムとの組合せ、以下、ダイ構造と呼ぶ)にダイシングされることを可能にする。このダイ構造は、次いでダイシングテープから摘み取られ、基体に隣接した接着剤フィルムを有する基体上に配置される。この接着剤フィルムは、典型的には加熱によって硬化された場合、ダイを基体に接合(接着)する。操作を考慮すると、ウエハーを個々のダイにダイシングする時点と、基体に接合するためにダイをピックアップする時点の間に時間の遅延を必要とする可能性がある。これらの場合、個々のダイ後面の接着剤フィルムが時として隣接するダイ後面の接着剤フィルムにくっつき、1個より多くのダイがキャリアまたはダイシングテープから取り除かれることになる。これは問題であり、ダイシングの後およびダイ取付前にダイが共にくっつかない接着剤フィルムを手に入れることは好ましいと考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む、接着剤フィルムである。
【0004】
他の実施形態において、本発明は、(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む、支持体テープ上に積層された接着剤フィルムである。
【0005】
さらに他の実施形態において、本発明は、接着剤フィルムに取り付けられた半導体ウエハーであり、このウエハーにおいて前記接着剤フィルムは、(a)前記半導体ウエハー接着され、実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む。
【0006】
他の実施形態において、本発明は、
1.(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む接着剤フィルムを提供するステップ、
2.裏面と接着剤面を有する支持体テープを提供するステップ、
3.前記接着剤フィルムの最下層と前記支持体テープの接着剤面とを接触させることによって、前記接着剤フィルムを前記支持体テープに貼り付け、それにより、前記接着剤フィルムの最上層を露出し、結束されたウエハー裏面積層フィルムを形成するステップ、
4.活性面および不活性面を有する半導体ウエハーを提供するステップ、
5.前記接着剤フィルムの最上層と前記半導体ウエハーの不活性面とを接触させることによって、前記結束されたウエハー裏面積層フィルムを前記半導体ウエハーに貼り付けるステップ、
6.前記最上層を硬化進行させるステップ、
7.前記半導体ウエハーおよび貼り付けられた多層接着剤フィルムを複数の個々のダイ構造にダイシングするステップ、
8.選択した個々のダイ構造を取り上げるステップ、
9.基体を提供するステップ、
10.前記接着剤フィルムが前記ダイの裏面と前記基体の間に配置されるように、前記選択された個々のダイ構造を前記基体上に置くステップ、および
11.前記個々のダイ構造を前記基体に加熱して取り付けるステップ
を含む、半導体ダイを基体に取り付ける方法である。
【0007】
他の実施形態において、本発明は、個々にダイシングされたダイが互いにくっつくのを防ぐ方法である。この方法は、
1.(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む接着剤フィルムを提供するステップ、
2.裏面と接着剤面を有する支持体テープを提供するステップ、
3.前記接着剤フィルムの最下層と前記支持体テープの接着剤面とを接触させることによって、前記接着剤フィルムを前記支持体テープに貼り付け、それにより、前記接着剤フィルムの最上層を露出し、結束されたウエハー裏面積層フィルムを形成するステップ、
4.活性面および不活性面を有する半導体ウエハーを提供するステップ、
5.前記接着剤フィルムの最上層と前記半導体ウエハーの不活性面とを接触させることによって、前記結束されたウエハー裏面積層フィルムを前記半導体ウエハーに貼り付けるステップ、
6.前記最上層を硬化進行させるステップ、
7.前記半導体ウエハーおよび貼り付けられた多層接着剤フィルムを複数の個々のダイ構造にダイシングするステップ、および
8.選択された個々のダイ構造を取り上げるステップ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、添付する図を参照して、下記の詳細な説明を読むことによってより十分に理解されうる。ここで:
【図1】図1は、本発明の多層フィルムの断面図であり、
【図2】図2は、半導体ウエハーに貼り付けられた本発明の多層接着剤フィルムを有する半導体ウエハーの断面図であり、
【図3】図3は、本発明の結束されたウエハー積層フィルムの断面図であり、
【図4】図4は、半導体ウエハーに貼り付けられた本発明の結束されたウエハー積層フィルムを有する半導体ウエハーの断面図であり、
【図5】図5は、本発明に従って、個々のダイ構造にダイシングされたウエハーの断面図であり、
【図6】図6は、本発明に従って、基体に取り付けられた半導体ダイの断面図であり、および
【図7】図7の先行技術は、先行技術の接着剤フィルムで経験された再付着の問題の断面図を示す。
【0009】
(定義)
用語「アルキル」は、炭素原子1から24個の分岐鎖または非分岐鎖の飽和炭化水素基、例えば、メチル(「Me」)、エチル(「Et」)、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなどを意味する。
【0010】
用語「硬化進行させる(する)(advance)」は、硬化または部分的に硬化することを意味する。
【0011】
化合物、生成物、または組成物の用語「有効な量」は、所望の結果を与えるのに十分な化合物、生成物、または組成物の量を意味する。必要とされる正確な量は、使用される特定の化合物、生成物または組成物、その投与方式などに依存して、パッケージごとに変化する。すなわち、正確な量を明記することは常に可能ではない。しかしながら、有効な量は当業者が単に通常の実験でもって決定できる。
【0012】
用語「適した」は、述べられた目的のために本明細書で提供される化合物、生成物、または組成物と矛盾しない部分を意味する。述べられた目的に対する適合性は、当業者が単に通常の実験でもって決定してもよい。
【0013】
用語「置換された」は、一般に、水素原子または他の原子が除去され、他の部分で置き換えられた炭素または適したヘテロ原子を意味するために使用される。さらには、「置換された」は、本発明の基礎となる化合物、生成物または組成物の基本的で新規の有用性を変えない置換も意味することを意図している。
【0014】
用語「B−ステージ化する」(およびこの変形)は、加熱または照射による材料の加工を意味するために使用され、この処理によって材料が溶媒に溶解または分散されている場合、溶媒は材料の部分的な硬化を伴ってまたは伴わずに蒸発され、もしくは材料が溶媒のない純粋である場合、材料は粘着状態またはもっと硬い状態へと部分的に硬化される。材料が流動性接着剤の場合、B−ステージ化は、材料を完全に硬化させずにその流動性を非常に低くすることができ、そのために、1つの部材を他の部材に接続するために接着剤が使用された後、追加の硬化を実施することができる。流動性の減少は、溶媒の蒸発、樹脂またはポリマー、もしくは樹脂およびポリマーの部分硬化または硬化によって達成できる。
【0015】
用語「硬化剤」は、組成物の硬化を開始、進行、または促進するあらゆる材料または材料の組合せを意味するために使用されるが、促進剤に制限されることなく、触媒、開始剤、および固める材料を含む。
【0016】
用語「UV硬化性」は、紫外線照射の適用によって重合および/または架橋されるあらゆる樹脂を意味するために使用される。
【0017】
用語[Tg」または「ガラス転移温度」は、材料がガラス状態からゴム状態へ転移する温度を意味するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
ここで、本発明は図の参照によってさらに詳細に説明され、これらは本発明の様々な実施形態を例示することができる。これらの図は、本発明の特徴ならびに他の特徴および構造との関係を示している図表であり、測長するためには作製されていない。プレゼンテーションをさらに明確にするために、本発明の実施形態を例示する図面では、他の図面に示される素子に対応する素子は特にすべてが再ラベル化されているわけではないが、それらは図面全体においてすべて容易に識別可能である。
【0019】
1つの実施形態において、本発明は多層接着剤フィルムである。このフィルムは少なくとも1つの最上層および最下層を有する。図1は1つの実施形態であり、ただ1つの最上層および最下層を有する本発明のフィルムの断面図である。追加の好ましい性能特性を接着剤フィルムに付与することが必要な場合には、最上層および最下層の間に、任意に追加の層(示されていない)が存在してもよい。この最上層は50℃以下のガラス転移温度を有し、実質的にUV硬化性である。最下層は実質的にUV硬化性ではない。
【0020】
図2は本発明の1つの実施形態の断面図を示し、ここでは上記の多層接着剤フィルムが半導体ウエハーの裏面に貼り付けられている。半導体ウエハーは活性面および活性面に相対する裏面を有する。図2に例示された実施形態では、多層接着剤フィルムは半導体ウエハーに貼り付けられ、それによって前記フィルムの最上層は半導体ウエハーの裏面と直接接触する。他の実施形態(示されていない)では、多層接着剤フィルムは半導体ウエハーの前面、または活性面に貼り付けられる。
【0021】
他の実施形態において、本発明は支持体テープ上に積層された上記多層接着剤フィルムである。この実施形態の1つの例である結束されたウエハー積層(BWL)フィルムは、図3に例示されている。この実施形態では、支持体テープはダイシングテープであり、上記多層接着剤フィルムはこのダイシングテープに取り付けられており、それによって、このフィルムの最下層はダイシングテープの接着剤面と直接接触する。次いでBWLフィルムは、図4に例示されるように半導体ウエハーに貼り付けられて本発明の他の実施形態を形成できる。この実施形態では、多層接着剤フィルムは半導体ウエハーとダイシングテープの間に挟まれ、それによって、フィルムの最上層は半導体ウエハーの不活性面または裏面と接触し、フィルムの最下層はダイシングテープと接触する。この実施形態では、BWLフィルムは結束されたウエハー裏面積層(BWBL)フィルムと呼ばれる。他の実施形態(示されていない)では、多層接着剤フィルムは半導体ウエハーとダイシングテープの間に挟まれており、それによって、このフィルムの最上層は半導体ウエハーの活性面と接触し、フィルムの最下層はダイシングテープと接触する。
【0022】
本発明の他の実施形態は、半導体ダイを基体に取り付けるための方法である。第1に、BWBLフィルムは前記のように、多層接着剤フィルムをダイシングテープに貼り付けて形成される。次に、このBWBLフィルムは半導体ウエハーに貼り付けられ、それによって、フィルムの最上層はウエハーの裏面と直接接触する。次いで、多層接着剤フィルムの最上層は紫外線照射の適用により硬化進行させられる。最上層の硬化進行は、硬化する量がダイピックアップの間にダイ同士のくっつきを防止するのに適している限り、部分的なまたは完全な硬化のいずれかを引起してもよい。次に半導体ウエハーは、半導体ウエハーに貼り付けられた多層接着剤フィルムと共にダイシングされ、図5に例示されるように複数の個々のダイ構造を形成する。次いで選択された個々のダイ構造はピックアップされ、基体上に配置され、それによって接着剤フィルムはダイと基体の間に配置される。最後に、ダイは、多層接着剤フィルムの最下層を硬化するために加熱を適用することによって基体に取り付けられる。図6は、この方法を使って基体に取り付けられたダイの断面図を示す。
【0023】
多層接着剤フィルムの最上層は50℃以下のガラス転移温度を有し、実質的にUV硬化性である。1つの実施形態では、この最上層は、(i)UV硬化性樹脂および(ii)光開始剤を含む。Tgは、フィルムが形成された後に(すなわち、フィルムを形成するために、組成物がB−ステージ化された後、または乾燥された後)、しかし、フィルムのあらゆるUV硬化の前に測定される。Tgが低いと、比較的低い温度で半導体ウエハーを取り付けるのにフィルムが十分に流動することが可能になる。1つの実施形態では、最上層のTgは20℃未満である。他の実施形態では、最上層のTgは0から20℃の間である。UV硬化性樹脂および光開始剤により、半導体ウエハーに貼り付けられた後、最上層を硬化進行させてダイシングの後の隣接するダイ同士のくっつき防止が可能になる。フィルムは、典型的には、ラミネートのような加熱方法を用いて半導体ウエハーに貼り付けられる。一般に、80℃未満の積層温度を有することが好ましく、場合によっては65℃未満の積層温度が必要である。低い積層温度は、2つの理由で必要である。第1に、高い温度での積層は、接着剤フィルム中の樹脂を硬化進行させる(部分的に硬化)傾向がある。このことは、フィルムの可使時間を制限し、また流動を抑制して、それが後のダイと基体との接合を妨げることになる。第2に、高い温度での積層は半導体ウエハーを歪ませうる。このことは、半導体産業がより薄いウエハーに移行しているので特に問題であり、薄いウエハーは本質的に反り問題の影響をより受けやすい。残念ながら、低い温度での積層が可能になる低いTgの最上層では、また、フィルムが室温でわずかに流動することが可能になる。すなわち、フィルムがウエハーに積層され、個々のダイにダイシングされた後、このダイがすぐにピックアップされ基体上に配置されない場合には、連接するダイ上の接着剤フィルムが互いに接触するほど十分に流動する傾向がある。最上層において使用された樹脂は、ウエハーへの積層を容易にするためにベトベトしていることが多いので、この流動性によってダイ同士を共にくっつけるか、または「再付着」を起こしうる。この問題は図7に例示されており、この図はダイシングの後に流動して再付着につながる先行技術の接着剤フィルムを示す。本発明では、UV硬化性樹脂および光開始剤は必要であり、それによって、フィルムがウエハーに積層された後、このフィルムの最上層が実質的に硬化進行させられ、または硬化されうる。これは最上層の分子量を増加し、それにより溶融粘度も増加し、これは貯蔵中に受けるような環境条件下での接着剤の流動を防ぐのに役立つ。これは、くっつき、または再付着問題を軽減する。
【0024】
多層接着剤フィルムの最上層中のUV硬化性樹脂は、紫外線の存在下で反応させ、硬化進行させ、架橋させ、または重合させることができる任意のものであってよい。任意のUV硬化性樹脂が使用されるが、適したUV硬化性樹脂の非限定的な例としては、マレイミド類、アクリレート類、ビニルエーテル類、およびスチレン類が挙げられる。このUV硬化性樹脂は、有効な量、典型的にはフィラー含量を除いた最上層組成物の5から100重量%で存在することができる。
【0025】
1つの実施形態では、前記UV硬化性樹脂は、固体状芳香族ビスマレイミド(BMI)樹脂である。適した固体状BMI樹脂は、一般構造:
【0026】
【化1】

[構造中、Xは、芳香族基であり、例示的な芳香族基としては:
【0027】
【化2】

が挙げられる]
を有するものである。
【0028】
これらのX連結基を有するビスマレイミド樹脂は市販品が入手可能であり、例えば、Sartomer社(米国)またはHOS−Technic GmbH社(オーストリア)から得られる。
【0029】
他の実施形態では、前記UV硬化性樹脂は、一般構造:
【0030】
【化3】

(構造中、nは1から3であり、Xは脂肪族または芳香族基である)を有するマレイミド樹脂である。例示的なX構成要素としては、ポリ(ブタジエン類)、ポリ(カーボネート類)、ポリ(ウレタン類)、ポリ(エーテル類)、ポリ(エステル類)、単純な炭化水素類、および、例えばカルボニル、カルボキシル、アミド、カルバメート、尿素、またはエーテル等の官能基を含有する単純な炭化水素が挙げられる。これらの型の樹脂は市販品が入手可能であり、例えば、National Starchand Chemical Company社および大日本インキ化学工業社から得ることができる。
【0031】
1つの実施形態では、前記UV硬化性樹脂は、フェノールノボラックポリイミド:
【0032】
【化4】

である。
【0033】
他の実施形態では、前記UV硬化性樹脂は、3−マレイミドプロピオン酸/ジメチルオクタノール付加物である。
【0034】
さらに他の実施形態では、前記UV硬化性樹脂は:
【0035】
【化5】

[ここで、C36は、炭素原子36個の直鎖または分岐鎖(環状部分を有するかまたは有しない)を表す]、
【0036】
【化6】

からなる群より選択されるマレイミド樹脂である。
【0037】
1つの実施形態では、前記UV硬化性樹脂は、マレイミド2,5−フランジオンとアニリン−1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンポリマーとの反応生成物である。
【0038】
適したアクリレート樹脂の例としては、一般構造:
【0039】
【化7】

(構造中、nは1から6であり、Rは−Hまたは−CHであり、Xは芳香族または脂肪族基である)を有するものが挙げられる。例示的なX構成要素としては、これらに限定されるものではないが、ポリ(ブタジエン類)、ポリ(カーボネート類)、ポリ(ウレタン類)、ポリ(エーテル類)、ポリ(エステル類)、単純な炭化水素、および、例えばカルボニル、カルボキシル、アミド、カルバメート、尿素、またはエーテル等の官能基を含有する単純な炭化水素が挙げられる。市販品で入手可能な材料としては、共栄社化学社から入手できるブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)−アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ペルフルオロオクチルエチル−(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリプロポキシレート(メタ)アクリレート、およびポリペントキシレート・テトラヒドロフルフリルアクリレート;Sartomer Company,Inc.から入手できるポリブタジエンウレタンジメタクリレート(CN302、NTX6513)およびポリブタジエンジメタクリレート(CN301、NTX6039、PRO6270);根上化学工業社から入手できるポリカーボネートウレタンジアクリレート(ArtResin UN9200A);Radcure Specialities,Inc.から入手できるアクリレート化脂肪族ウレタンオリゴマー(Ebecryl 230、264、265、270、284、4830、4833、4834、4835、4866、4881、4883、8402、8800−20R、8803、8804);Radcure Secialities,Inc.から入手できるポリエステルアクリレートオリゴマー(Ebecryl 657、770、810、830、1657、1810、1830);およびSartomer Company,Inc.から入手できるエポキシアクリレート樹脂(CN104、111、112、115、116、117、118,119、120、124、136)が挙げられる。1つの実施形態では、アクリレート樹脂は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、アクリレート官能基を有するポリ(ブタジエン)およびメタクリレート官能基を有するポリ(ブタジエン)からなる群より選択される。
【0040】
1つの実施形態では、前記UV硬化性樹脂は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、アクリレート官能基を有するポリ(ブタジエン)およびメタクリレート官能基を有するポリ(ブタジエン)からなる群より選択される。
【0041】
適したビニルエーテル樹脂の例としては、一般構造:
【0042】
【化8】

(構造中、nは1から6であり、Xは芳香族または脂肪族基である)を有するものが挙げられる。例示的なX構成要素としては、これらに限定されるものではないが、ポリ(ブタジエン類)、ポリ(カーボネート類)、ポリ(ウレタン類)、ポリ(エーテル類)、ポリ(エステル類)、単純な炭化水素、および、例えばカルボニル、カルボキシル、アミド、カルバメート、尿素、またはエーテル等の官能基を含有する単純な炭化水素が挙げられる。市販品で入手可能なビニルエーテル樹脂としては、International Specialty Products(IPS)社から入手できるシクロヘキサン−ジメタノールジビニルエーテル;ドデシルビニルエーテル;シクロへキシルビニルエーテル;2−エチルヘキシルビニルエーテル;ジプロピレングリコールジビニルエーテル;ヘキサンジオールジビニルエーテル;オクタデシルビニルエーテル;ブタンジオールジビニルエーテル;Sigma−Aldrich,Inc.から入手できるVectomer 4010、4020、4030、4040、4051、4210、4220、4230、4060、および5015が挙げられる。
【0043】
適したスチレン樹脂としては、一般構造:
【0044】
【化9】

(構造中、nは1以上であり、Rは−Hまたは−CHであり、Xは脂肪族基である)を有する樹脂が挙げられる。例示的なX構成要素としては、ポリ(ブタジエン類)、ポリ(カーボネート類)、ポリ(ウレタン類)、ポリ(エーテル類)、ポリ(エステル類)、単純な炭化水素、および、例えばカルボニル、カルボキシル、アミド、カルバメート、尿素、またはエーテル等の官能基を含有する単純な炭化水素が挙げられる。これらの樹脂は市販品が入手可能であり、例えば、National Starch and Chemical Company社またはSigma−Aldrich社から得ることができる。
【0045】
前記多層接着剤フィルムの最上層中の光開始剤は、UV照射に曝されたとき、UV硬化性樹脂の硬化を開始する、容易にする、または増大する任意のものであってもよい。この光開始剤は、有効な量、典型的には溶媒の含量を除いたB−ステージ化する前の最上層の組成物の0.1から10重量%で存在することができる。適した光開始剤としては、Chiba Specialty Chemicals社から入手できる1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−エタン−1−オン)、2−ヒドロキシ−2−メトキシ−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メトキシ−1−プロパン−1−オン、およびこれらのブレンド、Sartomer Company社から入手できるベンゾイン正ブチルエーテルの混合物、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソプロピルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−4(1−メチルビニル)フェニルプロパン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパノン、およびこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
1種以上のUV硬化性樹脂に加えて、前記最上層は、実質的にUV硬化性ではない、すなわち、紫外線に曝されたときにそれらは実質的に、硬化進行しない、架橋しない、または重合しない1種以上の追加樹脂を含んでいてもよい。最上層中の任意の追加樹脂は、有効な量、典型的にはフィラーの含量を除いて最上層組成物の5から95重量%で存在してもよい。追加樹脂の量と型は、UV照射で硬化進行させられたときに最上層が非粘着性になる性能を妨げないことを保証するように選択されなければならない。
【0047】
前記多層接着剤フィルムの最上層は、具体的な半導体パッケージに対して必要ないかなる厚さでもよく、典型的には5から60μmである。1つの実施形態では、最上層は5から30μmの厚さである。この最上層は、最下層と同じ厚さであってもよく、または異なった厚さであってもよい。
【0048】
前記フィルムの最上層は、ウエハーに貼り付けられた後、UV照射に曝された場合、実質的に硬化され、対照的に最下層はUV照射に曝された場合、実質的に硬化しない。これにより、ダイ取り付けの間に最下層中の樹脂が流動し、ほとんどの基体の粗い表面を浸潤し、次いで加熱によって硬化することが可能になる。すなわち、多層接着剤フィルムは、取り上げ−および−配置の後、熱硬化操作によってダイを基体に接合することができる。最下層のTgは、ダイ取り付けの間に望まれる流動および浸潤を生み出す任意のものであってもよい。1つの実施形態では、最下層のTgは、−30から90℃である。他の実施形態では、0から20℃である。最下層のTgが室温より低い場合、最下層を構成する樹脂は粘着性であってはならない。そのように、隣接するダイ上の接着剤フィルムの最下層が互いに接触しても、それらは接着せず、くっつきまたは再付着を起こさせないと考えられる。最上層の樹脂とは対照的に、最下層に使用されたあらゆる樹脂は、ダイシングテープに強く接着する必要がないので、典型的には粘着性ではない。
【0049】
1つの実施形態では、前記多層接着剤フィルムの最下層は実質的にUV硬化性ではない、すなわち、紫外線に曝されたとき実質的に硬化進行しない、架橋しない、または重合しない1種以上の樹脂を含む。
【0050】
他の実施形態では、前記多層接着剤フィルムの最下層は、光開始剤の存在下、 実質的にUV硬化性である1種以上の樹脂を含む。この実施形態では、光開始剤は最下層中には存在せず、その結果として最下層はUV硬化性ではなく、紫外線に曝されても実質的に硬化進行しないかまたは硬化しない。最下層が1種以上のUV硬化性樹脂を含む場合(しかし、UV開始剤を含まない)、接着剤フィルムを、UV硬化性ダイシングテープと併用して使用しないほうが好ましい。なぜなら、最下層がダイシングテープ中の開始剤に接触すると、紫外線に曝されたとき接着剤フィルムの最下層で硬化が始まり、ダイシングテープにあまりにも強く接着してダイピックアップの問題につながる可能性があるからである。
【0051】
前記最下層は、ただ1種の樹脂または複数樹脂の組合せを含んでいてもよい。使用される任意の樹脂は室温で固体または液体のいずれであってもよく、1種以上の樹脂が使用される場合、それらは液体および固体の任意の組合せであってもよい。1つの実施形態では、最下層は少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。
【0052】
前記最下層は、具体的な半導体パッケージに必要な任意の厚さであってもよく、典型的には20から150μmの厚さである。最下層は、最上層と同じ厚さであっても、または異なった厚さであってもよい。
【0053】
実質的にUV硬化性ではなく、前記接着剤フィルムの最上層または最下層のいずれかに包含されるのに適した樹脂の例としては、エポキシ樹脂、ポリエステル類、ポリ(ブタジエン類)、ポリイミド類、ベンゾシクロブテン類、シリコーン化オレフィン類、シリコーン樹脂、シアネートエステル樹脂、熱可塑性ゴム、ポリオレフィン類、シロキサン類、またはジフェニルオキシドオリゴマー類が挙げられる。
【0054】
適したエポキシ樹脂としては、ビスフェノール、ナフタレン、および脂肪族型エポキシが挙げられる。市販品の入手可能な材料としては、大日本インキ化学工業社から入手できるビスフェノール型エポキシ樹脂(Epiclon 830LVP、830CRP、835LV、850CRP);大日本インキ化学工業社から入手できるナフタレン型エポキシ(Epiclon HP4032);脂肪族エポキシ樹脂(Araldite CY179、184、192、175、179、Ciba Specialty Chemicals社から入手できる)、(エポキシ 1234、249、206、Union Carbide Corporation社から入手できる)、および(EHPE−3150ダイセル化学工業社から入手できる)が挙げられる。他の適したエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、反応性エポキシ希釈剤、およびこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンおよびフェノールの重付加化合物から誘導される多官能性エポキシ樹脂である。1つの実施形態では、エポキシ樹脂はゴム化エポキシである。
【0055】
適したシリコーン化オレフィン樹脂は、一般構造:
【0056】
【化10】

(構造中、nは2以上であり、nは1以上であり、n>nである)を有し、シリコーンおよびジビニル物質の選択的ヒドロシリル化反応によって得られる。これらの材料は市販品が入手可能であり、例えば、National Starch and Chemicals Company社から得ることができる。
【0057】
適したシリコーン樹脂としては、一般構造:
【0058】
【化11】

(構造中、nは0または任意の整数であり、XおよびXは、水素、メチル、アミン、エポキシ、カルボキシル、ヒドロキシ、アクリレート、メタクリレート、メルカプト、フェノール、またはビニル官能基であり、RおよびRは、−H、−CH、ビニル、フェニル、または2個より多い炭素を有する任意の炭化水素構造であってよい)を有する反応性シリコーン樹脂が挙げられる。市販品の入手可能な材料としては、信越シリコーン国際貿易(上海)社から入手できるKF8012、KF8002、KF8003、KF1001、X−22−3710、KF6001、X−22−164C、KF2001、X−22−170DX、X−22−173DX、X−22−174DX、X−22−176DX、KF−857、KF862、KF8001、X−22−3367、およびX−22−3939Aが挙げられる。
【0059】
適したシアネートエステル樹脂としては、一般構造:
【0060】
【化12】

(構造中、nは1以上であり、Xは炭化水素基である)を有するものが挙げられる。例示的なX構成要素としては、ビスフェノール、フェノールまたはクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、またはポリエステルが挙げられる。市販品で入手可能な材料としては、Huntsman LLC社から入手できるAroCy L−10、AroCy XU366、AroCy XU371、AroCy XU378、XU71787.02L、およびXU71787.07L;Lonza Group Limited社から入手できる
Primaset PT30、Primaset PT30 S75、Primaset PT60、Primaset PT60S、Primaset BADCY、Primaset DA230S、Primaset MethylCy、およびPrimaset LECY;Oakwood Products,Inc.から入手できる2−アリルフェノールシアネートエステル、4−メトキシフェノールシアネートエステル、2,2−ビス(4−シアナトフェノール)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビスフェノールAシアネートエステル、ジアリルビスフェノールAシアネートエステル、4−フェニルフェノールシアネートエステル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、4−クミルフェノールシアネートエステル、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタンジオールジシアネートエステル、および4,4’−ビスフェノールシアネートエステルが挙げられる。
【0061】
適した熱可塑性ゴムの例としては、カルボキシ末端ブタジエン−ニトリル(CTBN)ゴム、カルボキシ末端ブタジエン−ニトリル(CTBN)/エポキシ付加物、アクリレートゴム、ビニル−末端ブタジエンゴム、およびニトリルブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。1つの実施形態では、CTBNエポキシ付加物は、約20−80重量%のCTBNおよび約20−80重量%のジグリシジルエーテルビスフェノールA:ビスフェノールAエポキシ(DGEBA)からなる。様々なCTBN材料がNoveon,Inc.から入手でき、様々なビスフェノールAエポキシ材料が大日本インキ化学工業社およびShell Chemicals社から入手できる。NBRゴムは、日本ゼオン社から市販品が入手可能である。
【0062】
適したポリ(ブタジエン)ポリマーとしては、ポリ(ブタジエン類)、エポキシ化ポリ(ブタジエン類)、マレイン酸ポリ(ブタジエン類)、アクリレート化ポリ(ブタジエン類)、ブタジエン−スチレンコポリマー類、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、およびブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、例えば、カルボキシル末端ブタジエン−アクリロニトリル(CTBN)ゴムが挙げられる。市販品で入手可能な材料としては、Sartomer Company,Inc.から入手できるホモポリマーブタジエン(Ricon130、131、134、142、150、152、153、154、156、157、P30D);Sartomer Company,Inc.から入手できるブタジエンおよびスチレンのランダムコポリマー(Ricon 100、181、184);Sartomer Company,Inc.から入手できるマレイン化ポリ(ブタジエン)(Ricon 130MA8、130MA13、130MA20、131MA5、131MA10、131MA17、131MA20、156MA17);Sartomer,Inc.から入手できるアクリレート化ポリ(ブタジエン)(CN302、NTX6513、CN301、NTX6039、PRO6270、Ricacryl 3100、Ricacryl 3500);エポキシ化ポリ(ブタジエン)(Sartomer Company,Inc.から入手できるPolybd 600、605)およびダイセル化学工業社から入手できるEpolead PB3600;ならびにHanse Chemical社から入手できるアクリロニトリルおよびブタジエンコポリマー(Hycar CTBNシリーズ、ATBNシリーズ、VTBNシリーズ、およびETBNシリーズ)が挙げられる。
【0063】
1つの実施形態では、前記多層接着剤フィルムの最上層は、ゴムコポリマー、例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、およびアクリル酸のコポリマー(CTBN)を含む。適したゴムコポリマーは、例えば、Zeon Chemicals LP社から入手できるNIPOL(登録商標)1072が挙げられる。ゴムコポリマーは、ウエハーに積層するために必要な低いTg、さらには柔軟性を与えるのに役立つ。
【0064】
前記接着剤フィルムの最下層は熱硬化剤を含む。接着剤フィルムの最上層は、熱硬化性樹脂がその組成物に含まれている場合、任意に熱硬化剤を含んでいてもよい。この熱硬化性樹脂は最上層中のUV硬化性樹脂と同じであっても、または異なった樹脂であってもよい。例えば、ビスマレイミド樹脂はUVまたは熱のいずれかの手段で開始することができる。ビスマレイミド樹脂が光開始剤および熱開始剤の両方の存在下で利用される場合、それはUV照射の間に最初に硬化すると考えられる(半導体ウエハーへの積層の後)。しかしながら、この硬化ステップの後、樹脂中にはなおも一部の不飽和結合が存在する可能性がある。UV開始剤に加えて熱開始剤を含むと、工程の終了段階(典型的には、ダイ取り付け硬化の間)で加熱したとき、樹脂のより完全な硬化が可能である。最下層中に熱開始剤が存在すると、加熱したときに最下層の硬化および基体への取り付けが可能になる。
【0065】
熱硬化剤は有効な量、典型的にはB−ステージ化する前、溶媒の含量を除いて最下層組成物の10重量%までの量で存在できる。最上層で利用される場合、熱硬化剤は有効な量、典型的にはB−ステージ化する前、溶媒の含量を除いて最上層組成物の10重量%までの量で存在できる。熱硬化剤は、各層で利用される具体的な樹脂に依存して、イオン性またはフリーラジカル性のどちらでもよい。適したイオン性硬化剤の例としては、芳香族アミン類、脂環式アミン類、脂肪族アミン類、第3級ホスフィン類、トリアジン類、金属塩類、芳香族ヒドロキシル化合物類、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド、BF3−アミン錯体類、アミン塩;イミダゾール類、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−グアナミノエチル−2−メチルイミダゾール、イミダゾールとトリメリット酸との付加生成物、および変性イミダゾール化合物等;アミンおよび第3級アミン、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジメチル−p−アニシジン、p−ハロゲノ−N,N−ジメチルアニリン、2−N−エチルアニリノエタノール、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N−メチルピペリジン、および4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等;フェノール類、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、およびフロログルシン等;有機金属塩類、例えば、ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、オレイン酸錫、マレイン酸ジブチル錫、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、およびアセチルアセトン鉄等;無機金属塩、例えば、塩化第二錫、塩化亜鉛および塩化アルミニウム等;ジ−t−ブチルジペルフタレート;酸無水物、例えば、カルボン酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、ラウリン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物等;ヘキサヒドロピロメリット酸無水物およびヘキサヒドロトリメリット酸無水物が挙げられる。適したフリーラジカル硬化剤の例としては、ペルオキシドおよびアゾ化合物、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、第3級−ブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、パラ−クロロベンゾイルペルオキシド、ブチルペルオクトエート、ジクミルペルオキシド、アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブタンニトリル)、m,m’−アゾキシスチレン、およびヒドロゾン等が挙げられる。
【0066】
また、前記硬化剤は、硬化促進剤、例えば、エポキシ硬化剤として使用されるものであってもよく、トリフェニルホスフィン、アルキル置換イミダゾール等、イミダゾリウム塩等、オニウム塩等、第4ホスホニウム化合物等、オニウムボレート等、金属キレート等、および1,8−ジアザシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンからなる群より選択されてもよい。
【0067】
また、金属化合物は、シアネートエステル樹脂システムのために硬化剤または促進剤として採用されてもよく、ナフテン酸金属、金属アセチルアセトナート(キレート)、金属オクトエート、金属アセテート、金属ハライド、金属イミダゾール錯体、および金属アミン錯体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
多層フィルムを製造するために、任意の適した方法が採用されてもよい。1つの実施形態では、最上層および最下層は個々に形成され、次いで多層接着剤フィルムを形成するために共に積層される。適した積層温度は、具体的なフィルムのTgに従って変化し、典型的な範囲は50から100℃である。積層圧力は通常5から60psiである。
【0069】
また、実施者は、特定の半導体パッケージまたは製造方法に適合するフィルム特性を調節する目的で、多層接着剤フィルムの最上層または最下層のいずれかにおける追加の成分を選択してもよい。そのような成分の型および量は当該技術分野において公知であり、フィラー、カップリング剤、接着促進剤、界面活性剤、湿潤剤、流動性制御剤、脱泡剤、粘着付与樹脂、および溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
レオロジー、応力、熱膨張係数、電気および/または熱伝導性、および弾性率を含めて、これらに限定されない多くの特性を調節するために、1種以上のフィラーが多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層中に含まれてもよい。特定の型のフィラーは、本発明に対して重要ではなく、具体的な最終用途での要求に適合するように当業者によって選択されうる。フィラーは伝導性または非伝導性であってもよい。伝導性フィラーの非限定的な例としては、カーボンブラック、グラファイト、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、シリコンカーバイド、窒化ホウ素、ダイヤモンド、およびアルミナが挙げられる。適した非伝導性フィラーの非限定的な例としては、アルミナ、アルミニウムヒドロキシド、シリカ、バーミキュライト、雲母、珪灰石、炭酸カルシウム、チタニア、砂、ガラス、バリウム硫酸塩、ジルコニウム、カーボンブラック、有機フィラー、および例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、および塩化ビニル等のハロゲン化エチレンポリマーが挙げられる。フィラー粒子は、ナノサイズから数ミルまでの範囲で任意の適したサイズであってもよい。何か特定のパッケージ構造に対するそのようなサイズの選択は、当業者の専門技術内である。フィラーは、B−ステージ化する前、溶媒の含量を除いてフィルム層の0から95重量%の量で存在してよい。
【0071】
1つの実施形態では、カップリング剤、または接着促進剤が多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層中に含まれてもよい。接着促進剤を選択するのは、適用要求および採用される具体的な樹脂化学によって決めることができる。接着促進剤が用いられる場合、有効な量、典型的にはB−ステージ化する前、溶媒の含量を除いて、フィルム層の5重量%までの量で使用することができる。適した接着促進剤の例としては、エポキシ型シランカップリング剤、アミン型シランカップリング剤、メルカプト型シランカップリング剤;γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;Dow Corning社から入手できるZ6040エポキシシラン、Z6030メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはZ6020アミンシラン;OSI Silquest社から入手できるA186シラン、A187シラン、A174シラン、またはA1289;Degussa社から入手できる有機シランSI264;城北化学工業社から入手できる城北化学CBT−1 カルボベンゾトリアゾール;官能性ベンゾトリアゾール;チアゾール、チタネート、およびジルコネートが挙げられる。
【0072】
さらに他の実施形態では、界面活性剤が前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層に添加されてもよい。適した界面活性剤としては、シリコーン類、ポリエチレングリコール類、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、エチレンジアミン系ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ポリオール系ポリオキシアルキレン類、脂肪族アルコール系ポリオキシアルキレン類、および脂肪族アルコールポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が挙げられる。界面活性剤が用いられる場合、有効な量で使用することができる。典型的な有効な量は、B−ステージ化する前、溶媒の含量を除いてフィルム層の5重量%までの量である。
【0073】
他の実施形態では、湿潤剤が前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層に含まれてもよい。湿潤剤の選択は、適用要求および採用される具体的な樹脂化学に依存する。湿潤剤が用いられる場合、有効な量で使用することができる。典型的な有効な量は、B−ステージ化する前、溶媒の含量を除いてフィルム層の5重量%までの量である。適した湿潤剤の例としては、3M社から入手できるFluorad FC−4430 Fluorosurfactant、Rhom and Hass社から入手できるClariant Fluowet OTN、BYK W−990、Surfynol 104 Surfactant、Crompton Silwet L−7280、Triton X100;240より大きく望ましいMwを有するプロピレングリコール、γ−ブチロラクトン、ひまし油、グリセリンまたは他の脂肪酸、およびシランが挙げられる。
【0074】
さらなる実施形態では、流動性制御剤が前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層に含まれてもよい。流動性制御剤の選択は、適用要求および採用される具体的な樹脂化学に依存する。流動性制御剤が用いられる場合、有効な量で存在することができる。典型的な有効な量は、B−ステージ化する前、溶媒の含量を除いてフィルム層の20重量%までの量である。適した流動性制御剤の例としては、Cabot社から入手できるCab−O−Sil TS720、Degussa社から入手できるAerosil R202またはR972;ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、またはヒュームド金属酸化物が挙げられる。
【0075】
さらなる実施形態では、脱泡剤(消泡剤)が前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層に含まれてもよい。脱泡剤の選択は、適用要求および採用される具体的な樹脂化学に依存する。脱泡剤が用いられる場合、有効な量で使用することができる。典型的な有効な量は、B−ステージ化する前、溶媒の含量を除いてフィルム層の5重量%までの量である。適した脱泡剤の例としては、Dow Corning社から入手できるAntifoam 1400;DuPont ModoflowおよびBYK A−510が挙げられる。
【0076】
一部の実施形態では、前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層は、接着力を改善し、タック性を導入するために粘着付与樹脂を使って形成される。この粘着付与樹脂の例としては、天然樹脂類および変性された天然樹脂類、ポリテルペン樹脂類、フェノール変性テルペン樹脂類、クマロン−インデン樹脂類、脂肪族および芳香族石油炭化水素樹脂類、フタル酸エステル類、水素化炭化水素類、水素化ロジン類および水素化ロジンエステル類が挙げられる。粘着付与樹脂が用いられる場合、有効な量で使用することができる。典型的な有効な量は、B−ステージ化する前、溶媒の含量を除いてフィルム層の5重量%までの量である。
【0077】
一部の実施形態では、他の成分が前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層に含まれてもよい。例えば、液体ポリブテンまたはポリプロピレンのような希釈剤、例えば、パラフィンおよび微結晶ワックスのような石油ワックス、ポリエチレングリース、水素化動物脂肪、魚脂肪および植物性脂肪、鉱油および合成ワックス、ナフテン系またはパラフィン系鉱油が挙げられる。
【0078】
また、型および量が当該技術分野において公知である他の添加物、例えば、安定剤、抗酸化剤、衝撃改質剤、および着色剤は、前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層に添加されてもよい。
【0079】
25℃から230℃の範囲の適当な沸点を有する通常の溶媒が、前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層に添加されてもよい。利用することができる適した溶媒の例としては、安定であり、組成物中で硬化性樹脂を溶解するケトン類、エステル類、アルコール類、エーテル類、および他の一般の溶媒が挙げられる。適した溶媒としては、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、エチルアセテート、および4−メチル−2−ペンタノンが挙げられる。
【0080】
また、1種以上のボイド低減化合物が前記多層接着剤フィルムの最上層および/または最下層に添加されてもよい。適したボイド低減化合物としては、少なくとも2つの互いに隣接したSi−O結合および少なくとも1つの反応性官能基を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの型のボイド低減化合物の非限定的な例としては:
【0081】
【化13】

【0082】
【化14】

およびこれらの組合せが挙げられる。
【0083】
前記多層接着剤フィルムの層の各々は、当該技術分野において公知の任意の適した方法で製造されてもよい。個々の層は、特定の配合物および採用された製造環境に対して必要に応じて異なった方法、または類似の方法で製造されてもよい。1つの典型的な工程では、フィルム層組成物は、キャリアに被覆されて薄く均一な層を形成する。この組成物は、次いでB−ステージ化され、接着剤フィルムの非粘着性の均一層を形成する。接着剤フィルム層を固めるのは多くの方法で達成され、採用された接着剤の配合によって決まる。
【0084】
1つの実施形態では、前記最上層および/または最下層組成物は少なくとも液状硬化性樹脂および溶媒を含む。この実施形態では、前記接着剤は、組成物を十分に加熱して溶媒を蒸発させ、硬化性樹脂または樹脂を部分的に硬化させることによって非接着性または非常に低流動性の状態に固められる。
【0085】
他の実施形態では、前記最上層および/または最下層組成物は溶媒に溶解された固体状の硬化性樹脂を含む。この実施形態では、組成物を十分に加熱して溶媒を蒸発させることによって、前記接着剤は非接着性または非常に低流動性の状態に固められ、非流動性の樹脂ベースのフィルムが得られる。この方法は、非粘着性フィルム層を製造するために樹脂の硬化進行が必要ないので、特に多層接着剤フィルムの最上層に対してよく適合し、従ってUV硬化性樹脂システムを利用することができる。
【0086】
他の実施形態では、前記最上層および/または最下層組成物は、少なくとも1種の液状の熱硬化性樹脂を含む。この実施形態では、組成物は、接着剤を十分に加熱して硬化性樹脂を非接着性または非常に低流動性の状態に部分的に硬化進行させることによって、非接着性または非常に低流動性の状態に固められる。
【0087】
前記個々のフィルム層および多層接着剤フィルムのためのキャリアは、個々の層組成物が薄層で塗布され、B−ステージ化してフィルムにする間、組成物を保持できるどのようなものであってもよい。また、このキャリアは、被接合部品に貼り付けるまで、および/または例えばウエハーに対して、他のフィルム層に対して、またはダイシングテープに対してラミネートする追加の加工ステップまでフィルムを保持できる。1つの特に適したキャリアは剥離ライナーである。適した剥離ライナーの例としては、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、およびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが挙げられる。
【0088】
本発明の1つの実施形態では、上記多層接着剤フィルムは、ダイシングテープに貼り付けられ、それによって、多層接着剤フィルムの最下層がダイシングテープと直接接触する。この多層接着剤フィルムは、典型的には、ラミネートによってダイシングテープに貼り付けられる。このダイシングテープは、
感圧接着剤(PSA)ダイシングテープまたは紫外線(UV)硬化性ダイシングテープのいずれかであってもよい。典型的なテープは、70から100μmの厚さのポリオレフィンまたはポリ塩化ビニル(PVC)キャリアフィルム上に3から30μmの厚さの接着剤を有する。しかしながら、当業者であれば、採用される特定の工業プロセスに適合するように異なった構造を有するテープが選択されてもよいことを理解するであろう。
【0089】
本発明の他の実施形態では、上記BWBLフィルムは半導体ウエハーに貼り付けられ、それによって、多層接着剤フィルムは半導体ウエハーとダイシングテープの間に挟まれる。この構造においては、多層接着剤フィルムの最上層は半導体ウエハーの裏面、または不活性面と接触し、多層接着剤フィルムの最下層はダイシングテープの接着剤面と接触する。このBWBLフィルムは、典型的には積層方法を用いて温度40から100℃、圧力5から40psiで半導体ウエハーに貼り付けられる。1つの実施形態では、フィルムは温度50から80℃、圧力15から30psiで半導体ウエハーに積層される。
【0090】
本発明の他の実施形態は、基体に半導体ダイを取り付けるための方法である。第1に、BWBLフィルムは前記のように多層接着剤フィルムおよびダイシングテープを使って形成される。次に、このBWBLフィルムは前記のように半導体ウエハーに貼り付けられ、それによって、フィルムの最上層は半導体ウエハーの裏面、または不活性面と直接接触する。次いで、最上層中のUV硬化性樹脂が紫外線照射により硬化進行させられ、または実質的に硬化される。UVは半導体ウエハーの裏面に照射され、それによって、UVはダイシングテープおよび多層接着剤フィルムの最下層を通過し、多層接着剤フィルムの最上層中にあるUV硬化性樹脂の硬化を開始する。UV照射は、採用される特定の製造方法に対して任意の適した方法、照射量で供給される。典型的なUV照射量は、50から500mJ/cmの範囲にある。1つの実施形態では、UV照射は100から300mJ/cmの範囲にある。次に、半導体ウエハーは、それに取り付けられた多層接着剤フィルムと共に複数の個々のダイ構造にダイシングされる。ダイは、特定の最終用途に適するような任意のサイズおよび形であってよく、ダイシングは当該技術分野で公知の実施されている任意の方法で達成されてよい。次いで、選択された個々のダイ構造は取り上げられ、基体上に配置され、それによって、接着剤フィルムはダイの裏面と基体との間に配置される。この「ピックアップおよび配置」操作は、典型的には自動ダイ取り付け装置を使って達成される。最後に、ダイは加熱することによって基体に取り付けられる。硬化は数秒から2時間の時間範囲、および90から180℃の温度範囲で達成されてよい。硬化は1ステップでもまたは複数のステップで達成されてもよい。
【0091】
上記方法の実施形態において、UV硬化は前記多層接着剤フィルムの最上層が室温で流動するのを防止するキーであることに注目すべきである。これは順繰りに、ダイシングの後に個々のダイをダイシングテープから取り出すとき、隣接するダイが共にくっつくのを防止する。
【実施例】
【0092】
同じ最下層フィルムの配合であって、最上層配合を変動させて3つの例示的な多層接着剤フィルムを製造した。溶媒を除いて、層組成物を表1に特定する。
【0093】
【表1】

【0094】
約5000rpmで30分間の高剪断混合によって均一な混合物を得るまで、すべての成分を混合して各層を製造した。前記組成物に50−80重量%のメチルエチルケトン(MEK)溶媒を添加し、すべての固体状樹脂を溶解して混合物を剥離ライナーに均一に塗布できるようにした。混合物を減圧チャンバー内で脱気し、気泡を放出した。次いで混合物をシリコーンで被覆された剥離ライナー上にコーティングし、対流式オーブン中、100℃で3分間乾燥してフィルムを形成した。乾燥(B−ステージ化)後の最上層フィルムの厚みが約20μm、最下層フィルムの厚みが約40μmであるように、混合物を十分な量で塗布した。
【0095】
UV照射前の溶融粘度を測定するために、最上層フィルムの試料をレオメータで試験した。次いで、最上層フィルムの試料を500mJ/cmのUV照射に曝し、再度溶融粘度を試験した。この試験結果を表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
最上層フィルムの試料を、ロールラミネーターを使って80℃、20psiの圧力下で最下層フィルムに積層し、対応する多層接着剤フィルムを形成した。この最上層フィルムの試料は、これを最下層フィルムに積層して多層接着剤フィルム試験片を形成するときにはまだ照射されていないということに注意すべきである。
【0098】
前記多層接着剤フィルムについて、ダイ剪断強度、重量損失、剥離強度、再付着、およびピックアップ(摘み取り)性能を試験した。ダイ剪断強度試験のために、選択した多層接着剤フィルムを室温でダイシングテープに積層し、ダイシングテープに相対する多層接着剤フィルムの最下層および露出した多層接着剤フィルムの最上層を有するBWBLを形成して試験片を製造した。次いで、このBWBLフィルムの最上層とシリコンウエハーの裏面、または不活性面とを65℃、20psiで接触させることでBWBLフィルムをシリコンウエハーに積層した。次にウエハーの裏面上のフィルムを200mJ/cmでUV照射に曝した。このウエハーをダイシングし、多層接着剤フィルムが貼り付けられた個々のダイ構造とした。個々のダイ構造をピックアップし、より大きなシリコン基体上に配置し、175℃で1時間、加熱硬化した。デージ社製ダイ剪断強度試験機を使って室温および260℃でダイ剪断強度を試験した。各試料に対して5つの試験片を試験し、算術平均値を報告した。一般に、260℃で100×100ミルのダイを試験する場合、1.0kgf/ダイより大きいダイ剪断強度が必要である。本実施例の目的のために80×80ミルのダイを採用したことに注意すべきである。より小さなダイは、典型的には、同じ接着剤を使ってもダイ剪断強度の読取はより低いことが期待されるので、80×80ミルのダイで1.0kgf/ダイより大きい読取は、典型的な要求を超えていると考えられる。
【0099】
パーキン−エルマー(Perkin−Elmer)の熱重量分析器(TGA)を使って10℃/分の昇温速度で、様々な温度での重量損失を試験した。最終組立品でボイドおよび他の性能問題を起こす可能性がある過剰のガス放出がないことを保証するために、重量損失を、典型的には接着剤フィルムにおいて試験した。典型的には、150℃で0.8%未満の重量損失が必要である。
【0100】
多層接着剤フィルムの最下層とダイシングテープの接着剤(PSA)面とを接触してBWLフィルムを形成するように、このフィルムを室温でPSAダイシングテープに積層して剥離強度を評価した。1インチ幅のBWLフィルムの試験片を切り出した。シリコン基体にBWLフィルム試験片を両面テープ(多層フィルムの最下層と基体との間)を使って積層し、それによって、ダイシングテープを基体の反対側に露出した。次いで、ダイシングテープを多層接着剤フィルムから角度180°で剥離した。接着剤フィルムがあまり強くダイシングテープにくっつかないことを保証するために、剥離強度を試験した。非常に高い剥離強度は、半導体ダイから接着剤フィルムの剥離が生じ、ダイ取り上げの間にダイシングテープ上に残る可能性がある。典型的には、室温で0.2N/cm未満の剥離強度が必要である。
【0101】
ダイの再付着およびピックアップを、多層接着剤フィルムの最下層から剥離ライナーを除き、それをPSAダイシングテープに多層接着剤フィルムの最下層がダイシングテープの接着剤(PSA)面に相対するように室温で積層してBWBLフィルムを形成することにより評価した。次いで剥離ライナーを、BWBLフィルムの最上層(これは、最初、多層接着剤フィルムの最上層であった)から除去し、このBWBLフィルムを厚さ100μmのシリコンウエハーの裏面、または不活性面にBWBLフィルムの最上層がウエハーの裏面と相対するように、55℃、圧力20psiで積層した。次いでBWBLが取り付けられたシリコンウエハーの裏面を、500mJ/cmの照射量で照射に曝し、多層接着剤フィルムの最上層中のUV硬化性樹脂を硬化した。次いで、BWBLが付着したウエハーを、その裏面に貼り付けられた多層接着剤フィルムを有し、そしてBWBLのダイシングテープから引き離すことが可能な個々のダイ構造にダイシングした。ダイシングした後すぐに、個々のダイ構造のいくつかを手作業でダイシングされたウエハーからピックアップし、ピックアップしたダイ構造に隣接するダイ構造がくっついているかどうか注目した。ピックアップしたダイ構造に隣接するダイ構造のいずれかがくっついていた場合、試料は再付着することを意味し、取り上げは「劣る」と評価した。しかしながら、取り上げるダイ構造の近隣にあるダイ構造のいずれもくっついていない場合、試料は再付着「なし」を意味し、取り上げは「良好」と評価した。
次いで、ダイシングされたウエハーを室温で3日間放置し、取り上げ試験手順を繰り返し、その時点で多層接着剤フィルムが、再付着問題を浮上させるのに十分な程度に流動したかどうかを決定した。多層接着剤フィルム試料の試験結果を表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
本発明の多くの修正および変更については、当業者には明らかであるように、その精神と範囲を外れることなく行うことができる。本明細書に記載された特定の実施形態は、単なる例示として提供され、本発明は、添付特許請求の範囲の用語と共に、そのような特許請求の範囲によって権利を認められる均等の十分な範囲によってだけ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む、接着剤フィルム。
【請求項2】
前記最上層が、アクリレートおよびビスマレイミドからなる群より選択されるUV硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項3】
前記最下層が、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項4】
前記最上層が、0から20℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項5】
前記接着剤フィルムが、(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む、支持体テープ上に積層された接着剤フィルム。
【請求項6】
前記最上層が、アクリレートおよびビスマレイミドからなる群より選択される硬化性樹脂を含む、請求項5に記載の接着剤フィルム。
【請求項7】
前記最下層がエポキシ樹脂を含む、請求項5に記載の接着剤フィルム。
【請求項8】
前記支持体テープが、PSAダイシングテープおよびUV硬化性ダイシングテープからなる群より選択されるダイシングテープである、請求項5に記載の接着剤フィルム。
【請求項9】
接着剤フィルムに取り付けられた半導体ウエハーであって、前記接着剤フィルムが、(a)前記半導体ウエハーに接着され、実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む、半導体ウエハー。
【請求項10】
前記最上層が、アクリレートおよびビスマレイミドからなる群より選択されたUV硬化性樹脂を含む、請求項9に記載の半導体ウエハー。
【請求項11】
前記最下層が、エポキシ樹脂を含む、請求項9に記載の半導体ウエハー 。
【請求項12】
以下のステップ:
a.(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む、接着剤フィルムを提供するステップ、
b.裏面および接着面を有する支持体テープを提供するステップ、
c.前記接着剤フィルムの最下層を前記支持体テープの接着面と接触させることによって、前記接着剤フィルムを前記支持体テープに貼り付け、それにより前記接着剤フィルムの最上層を露出し、および結束されたウエハー裏面積層フィルムを形成するステップ、
d.活性面および不活性面を有する半導体ウエハーを提供するステップ、
e.前記接着剤フィルムの最上層を前記半導体ウエハーの不活性面と接触させることによって、前記結束されたウエハー裏面積層フィルムを前記半導体ウエハーに貼り付けるステップ、
f.前記最上層を硬化進行させるステップ、
g.前記半導体ウエハーおよび貼り付けられた多層接着剤フィルムを複数の個々のダイ構造にダイシングするステップ、
h.選択された個々のダイ構造をピックアップするステップ、
i.基体を提供するステップ、
j.前記選択された個々のダイ構造を前記基体に置き、前記接着剤フィルムを前記ダイの裏面と前記基体との間に配置するステップ、および
k.前記個々のダイ構造を前記基体に加熱して取り付けるステップを含む、半導体ダイを基体に取り付けるための方法。
【請求項13】
前記最上層が、アクリレートおよびビスマレイミドからなる群より選択されるUV硬化性樹脂を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記最下層が、エポキシ樹脂を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記最上層が、0から20℃の間のガラス転移温度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記支持体テープが、PSAダイシングテープおよびUV硬化性ダイシングテープからなる群より選択されるダイシングテープである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
以下のステップ:
a)(a)実質的にUV硬化性であり、50℃以下のガラス転移温度を有する最上層、および(b)実質的にUV硬化性ではない最下層を含む接着剤フィルムを提供するステップ、
b)裏面と接着剤面を有する支持体テープを提供するステップ、
c)前記接着剤フィルムの最下層と前記支持体テープの接着剤面とを接触させることによって、前記接着剤フィルムを前記支持体テープに貼り付け、それにより前記接着剤フィルムの最上層を露出し、および結束されたウエハー裏面積層フィルムを形成するステップ、
d)活性面および不活性面を有する半導体ウエハーを提供するステップ、
e)前記接着剤フィルムの最上層を前記半導体ウエハーの不活性面と接触させることによって、前記結束されたウエハー裏面積層フィルムを前記半導体ウエハーに貼り付けるステップ、
f)前記最上層を硬化進行させるステップ、
g)前記半導体ウエハーおよび取り付けられた多層接着剤フィルムを複数の個々のダイ構造にダイシングするステップ、および
h)選択された個々のダイ構造をピックアップするステップを含む、個々にダイシングされたダイが互いにくっつくのを防ぐ方法。
【請求項18】
前記最上層が、アクリレートおよびビスマレイミドからなる群より選択されるUV硬化性樹脂を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記最下層が、エポキシ樹脂を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記支持体テープが、感圧接着剤(PSA)ダイシングテープおよびUV硬化性ダイシングテープからなる群より選択されるダイシングテープである、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−516658(P2011−516658A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502911(P2011−502911)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/058867
【国際公開番号】WO2009/123608
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】