多色性分布を持つX線ビームを用いて対象物の画像を検知するシステムと方法
多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを用いて対象物の画像を検知するシステムと方法を開示する。一つの観点によれば、この方法は対象物の画像を検知する段階を含んでもよい。この方法は、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含んでもよい。更に、この方法は該第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター単結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階を含んでもよい。更に、この方法は、この対象物をこの第二のX線ビームが透過して、この対象物から透過したX線ビームが放射されるように、この第二のX線ビームの経路上に対象物を置くことができる。この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向けることができる。更に、このアナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年1月24日に出願された暫定米国出願番号60/761,796、2006年1月24日に出願された暫定米国出願番号60/761,797及び2006年7月6日に出願された暫定米国出願番号60/819,019の優先権を主張する。
この発明は、X線画像化(イメージング)に関し、より詳細には、多色性分布を持つX線ビームを用いて対象物の画像を検知するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像化は、対象物を画像化するために広い分野で用いられている。例えば、X線画像化は、医療分野の非破壊試験やコンピュータ断層撮影法(CT)に広く用いられている。他の様々なタイプの技術も医療画像化に用いられている。以下、現在利用可能な医療画像化技術のいくつかを説明する。
【0003】
X線吸収を用いたX線ラジオグラフィー
従来のX線ラジオグラフィーは、対象物の投影されたX線吸収や減衰を測定する。対象物の減衰差は、埋め込まれた特徴のコントラストとなって、画像として表示することができる。例えば、癌性組織は周辺の非癌性組織よりも高密度であることを利用して、従来のラジオグラフィーで癌性組織は検知される。最も良い吸収コントラストは、吸収の高いX線エネルギーにおいて得られる。従来のX線ラジオグラフィーは、より大きい吸収を達成するために、典型的には、低いX線エネルギーで高い照射線量を用いて行われる。高エネルギーのX線を使うと、一般的に、患者の安全への懸念から、低い照射線量を使うことが求められる。一般的に、X線エネルギーが高くなって照射線量が低くなると、従来のラジオグラフィーの画質は悪くなる。
現在の世代のラジオグラフィー画像化システムのX線源は、標準陰極/陽極X線管に基づくデザインである。X線管のエネルギースペクトルや一般的出力性能は、陽極の材料と構成によって定まる。適正な陽極材料の選択はその用途により、特に、どのような療法か、どのような構造を画像化するのかによる。
【0004】
マンモグラフィーの場合、最も一般的な陽極材料はモリブデンであるが、ロジウムも使える。平均エネルギーが約10KeVのモリブデンを用いると、軟組織の画像化に適切なスペクトルがとれる。マンモグラフィーシステムにおいて、陽極は通常固定されており、熱さましのため銅ブロックに固定されている。技術上の主な問題は、集光された電子ビームにより陽極に熱が発生することである。熱の除去の主な手段は周囲の銅陽極であるので、それが高い熱伝導性を持っているとはいえ、固定された陽極を持つX線管は発熱しがちである。X線管の開発の進展により、回転式陽極が使用できるようになった。陽極が回転するので、陽極から発した電子ビームがその陽極の同じ場所に当たらない。主な獲得検知方法は、最近のデジタル検知器が現れるまでは、X線フィルムである。
スクリーニングマンモグラフィー用のX線画像化は、初期の乳癌を検知するために用いられてきた。遮蔽制御された女性の乳癌死亡率は、遮蔽制御されていない女性の乳癌死亡率より低い。マンモグラフィーは、胸部の物理的診断や胸部の自己診断で見つかる癌に比べて、小さくて進行していない段階の癌を検知できる。小さくて進行していない段階の乳癌を治療すれば、生存率は高まる。強化された放射線治療法が、小さくて進行していない段階の乳癌の検知に使えることは明らかである。臨床上明らかな乳癌の約10%は、従来のマンモグラフィー法では画像に可視化することはできない。更に従来のラジオグラフィーを用いて、良性の傷害と悪性の傷害を区別することは困難である。
【0005】
特に、従来のラジオグラフィーを用いても見えない乳癌は、比較的多量の乳腺組織を有する患者にしばしば見られる。乳腺組織が高密度であることが、潜在的病状の発見を困難にしている。初期の癌を検知するためには、マンモグラフィーの感度を上げて、小さくて初期段階の乳癌を検知できるようにすることが望ましい。乳癌を初期に検知できるようになれば、死亡率を下げることができるかもしれない。
マンモグラフィー技術はこの数十年で劇的に進歩してきた。例えば、今では、X線ビーム品質が適切で、肺の圧縮が適切で、かつ暴露制御が自動である専用のマンモグラフィー装置まである。しかし、従来のマンモグラフィー技術は、正常組織と異常組織との違いを区別するために、X線吸収の描写に頼っている。
従来のラジオグラフィーの限界は、傷害や変形性関節症のような退行性の関節疾患の検知や治療の間における、画像化カートリッジに於ても明らかである。より良い画像化技術は、ダメージが不可逆になる前のように、退行性疾患をより早い段階で検知するためにも有効である。
【0006】
回折強調型イメージング(DEI)
DEIは、従来のX線画像化の性能を劇的に拡大させたX線画像化技術である。このDEI技術は、X線吸収、X線屈折、及び微小角散乱排除(減衰)からコントラストを生じることのできるX腺画像化物理療法である。対照的に、従来のX線画像化技術は、単にX線の吸収を測るのみである。DEIの吸収画像とピーク画像は、実質上散乱減衰が無いことを除いて、従来のラジオグラフィーと同じ情報を示す。DEIは、角度の変化を強度の変化に変換して、角度の小さな変化を強度の大きな変化にするために、X線回折のブラッグ則nλ=2dsin(θ)に基づいて、完全結晶回折のブラッグピークを利用する。従って、DEIは、軟組織の画像化に適しており、マンモグラフィーとして非常に有望です。
DEI技術は、従来のX線画像化技術に比べて、対象物の可視化に大きな進歩を示しましたが、今まで、使用可能なエネルギー範囲の拡大の可能性や、X線吸収の必要性を少なくすることや除くことに、取り組んだ人はいない。X線吸収の必要性を少なくすることや除くことは、医療分野の顕著な関心事である。
【0007】
シリコンアナライザー結晶をX線ビームの経路上に置くと、X線屈折、及び微小角散乱排除(吸収度)に更に2つの形式の画像コントラストを生じる。DEIは、完全単結晶シリコンからのX線回折により得られる、高度に平行にされたX線を利用する。これは、今までは画像を生じるためにはシンクロトロンの高いフラックスとエネルギー範囲を必要とした。これらの平行にされたX線は単一エネルギーであり、実質的に単色であり、対象物を画像化するためビームとして用いられる。
非常に小さい吸収コントラストを持つ対象物は、相当な屈折と減衰のコントラストを持ち、可視化を改善し、X線画像化の用途を拡大するかもしれない。DEI技術を生物学や材料科学に応用すれば、コントラストと解像度に大きな進歩をもたらし、このことは医療画像化の主流として用いられる潜在性があることを示す。DEIが特に効果的かもしれない医薬の分野は、癌検査のための胸部の画像化であり、この分野では診断構造はしばしば吸収コントラストが低くて可視化が困難である。悪性塊からの針状体のような、吸収コントラストが低い構造は、高い屈折と微小角散乱コントラストを有する。DEIシステムに、X線に基づく胸部画像化の感度と特異性の両方を高めることができる可能性を付与できることが望まれる。
【0008】
DEIを医療と工業の両方に応用するために、多くの研究が、画像コントラストを改善したことを示してきた。医療分野における、従来のX線画像化システムに対するDEIシステムの利点には、患者の照射線量の劇的な減少と画像の質の改善がある。照射線量の減少は、DEIシステムが高X線エネルギーで機能することができることによる。X線吸収は、光電子効果、Z2/E3(Zは原子番号、Eは光子エネルギーを表す。)、により支配されている。
今まで、DEIシステムは、初期の放射ビームを生じさせるためにシンクロトロンを用いることを要した。このビームは対象物を画像化するために他のシステム部品により操作される。シンクロトロンは、広範囲のエネルギーに渡って、高度に平行にされ、高いフラックスのX線ビームを提供する。シンクロトロンは、円形軌道を荷電粒子、特に電子が動き、光子の放出を引き起こして、放射を生じる。シンクロトロン放射の独特の性質により、広範囲のエネルギーに渡って、高いフラックスのX線ビームを生じ、これを広範囲の用途に用いることができる。
DEIの中心理論は、X線回折のブラッグ則に基づき、下式で定義される。
【数1】
式中、λは入射X線ビームの波長、θは入射角、dは結晶内の電子層間の距離、nは数字を表す。
【0009】
単一エネルギーX線写真は、画像コントラストと解像度に影響しうるいくつかの成分を含む:即ち、コヒーレントに散乱する成分IC、非コヒーレントに散乱する成分Il、及び屈折成分。密度に変化のある対象物又は媒体を通過するX線は屈折し、角度のずれを生じる。特に、ビームの経路に沿ったρt(式中、ρは密度、tは厚さを表す。)の変化からX線範囲のずれが生じる。入射光子部分もまた、対象物の構造により回折するかもしず、それは一般的にミリラジアンのオーダーであり、小角度散乱と呼ばれる。これらの相互作用の合計は、記録されたX線写真の強度INに影響し、下式で表される。
【数2】
システムの空間分解能とコントラストは、コヒーレント散乱と非コヒーレント散乱の両方の寄与により低下する。医療画像化では、散乱の影響を少なくするために、抗散乱グリッドがしばしば用いられるが、その性能は限定的であり、グリッドを用いることはしばしば強度の損失を補うためにより高い放射線量を必要とする。
【0010】
DEI技術は、シリコンアナライザー結晶を目標物の後のX線ビームの経路上に置き、コヒーレント散乱と非コヒーレント散乱の両方の効果を実質的に排除する。このシリコンアナライザー結晶の狭い角度受容窓を、そのロッキングカーブと呼び、DEIに用いられるX線エネルギーについてはマイクロラジアンのオーダーである。このアナライザーは正確に高感度な角度フィルターとして機能し、屈折及び減衰コントラストの両方を測定するために用いることができる。減衰コントラストとは、散乱による入射ビームの強度の低下をいい、これはコントラストと解像度の両方を実質的に改善することができる。
ダーウィン幅(DW)は、反射カーブを表示するために用いられ、ほぼ反射カーブの半値幅(FWHM)に等しい。−1/2DWと+1/2DWの地点は、そのカーブ上で鋭い傾斜を持つ地点であり、特定の分析反射とビームエネルギーのマイクロラジアンあたりの光子強度の最大変化をもたらす。アナライザー結晶ロッキングカーブのピークにおいては、X線吸収と減衰におけるコントラストが、散乱のほとんど無いX線写真をもたらす。−1/2DWと+1/2DWの地点において、ロッキングカーブの傾斜が最大のときに、屈折コントラストが最大になる。あるDEIに基づく画像処理技術は、これらの地点を利用して、これらの画像ペアから、屈折や見掛吸収のコントラスト成分を抽出する。
【0011】
以下、画像ペアから、屈折や見掛吸収のコントラスト成分を抽出するための技術を記載する。アナライザー結晶を、与えられた反射及びビームエネルギーの+/−1/2DWを示す角度にセットした場合、ロッキングカーブの傾斜は、下式の二項テーラー級数近似法でほぼ表される。
【数3】
アナライザー結晶を、そのロッキングカーブ(−1/2DW)の低角度側にセットした場合、その結果られる画像強度は、下式で表される。
【数4】
高角度位置(+1/2DW)にセットしたアナライザー結晶で得られた記録された画像の強度は、下式で表される。
【数5】
【0012】
これらの式を解いて、下式の吸収に起因する強度の変化(IR)及びZ方向に観測される屈折角度(ΔθZ)を得ることができる。
【数6】
これらの等式を、ピクセル単位で高又は低角度画像に適用して、2つのコントラスト成分をDEI見掛吸収及び屈折画像と知られているものに分離することができる。しかし、DEI見掛吸収及び屈折画像を生成するために、それぞれの単一地点のロッキングカーブ画像を用いることが有効である。
【0013】
上記のように、現在のDEIシステムは、X線ビームを生成させるためにシンクロトロンを用いる。シンクロトロンに基づくDEIシステムは、過去印象的な結果を生んできた。しかし、シンクロトロンは大きくて高価な装置であり、医療や工業の用途には現実的ではない。コントラストが劇的に改善し、照射線量を減らせるのであれば、DEIシステムの広範囲の臨床用途への応用を増やすことができる。
臨床のDEI画像機器の開発は、以下の理由から、女性の健康や医療画像化にとって重要であるかもしれない:(1)DEIは乳癌の検知やキャラクタリゼーションにとって最も重要な特質に非常に高いコントラストを作り上げることを示してきた。(2)DEIは、吸収のみを用いた場合より、高いX線エネルギーにおける画像化が可能である。(3)DEIは吸収すべき光子を必要とせずにコントラストを生成することができるので、イオン化操作を減らせるし、その結果、吸収される照射線量を減らすことができる。
【0014】
更に、スクリーンフィルムマンモグラフィーは過去40年間熱心に研究されてきた。そして、乳癌による死亡率を約18−30%減らすことができたことが知られている。この画像化検査が広まったおかげで、過去数年間の乳癌による死亡率は減り始めた。しかし、標準スクリーンフィルムマンモグラフィーは、完全に高感度でもないし完全に特異的でもない。乳腺組織が高密度であり、胸部に腫瘍が分散していることから、スクリーンフィルムマンモグラフィーの感度は低い傾向がある。高密度の乳腺組織を持つ女性にとって、進行する傷害は、光子の吸収が周囲の脂肪組織よりも顕著に大きくないため、可視化のためのコントラストが小さいので、検知することが困難である。自己診断又は物理的検査によって検知される乳癌の約10−20%は、スクリーンフィルムマンモグラフィーでは見ることができない。更に、傷害をマンモグラフィーやバイオプシーで検知できたとしても、その5−40%しか悪性ではない。更に、乳癌の約30%は以前のマンモグラフィーの後ろ向き検査で見つかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
現在のDEIとDEI画像化処理技術は、従来の画像化理論に基づいており、画像を生成するために少なくともその一部はX線吸収に頼っている。従って、これらの技術を使って画像化された対象物は、照射を吸収している。このような照射に曝されることは、照射線量が問題であるような医療画像化のような分野では望ましくない。この理由により、技術的な限界があり、それが臨床や工業的応用に挑戦の対象となる。従って、高品質の画像を作り出し、吸収が少なくて、X線写真と同等の品質と特徴が可視できる画像を生成するDEI及びDEI技術を提供することが望まれている。
そのため、DEI及びDEIシステムを改善する観点から、対象物の画像を検知するために、改善されたDEI及びDEIシステム並びに関連方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ここに記載する主題は、多色性エネルギー分布を持つX線ビームを利用して対象物の画像を検知するためのシステムと方法である。一つの態様として、ここに記載する主題は、対象物の画像を検知する方法を含むことができる。この方法は、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。更にこの方法は、該第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター単結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階を含むことができる。更に、この対象物を、第二のX線ビームの経路上に置くことができ、該対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される。この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向けてもよい。更に、対象物の画像は、このアナライザー結晶から回折したビームにより検知することができる。
【0017】
別の観点から見ると、ここに記載する本主題の方法は、多色性エネルギー分布を持つX線ビームを生成することを含む。更に、第一のX線ビームの一部は、この第一のX線ビームが平行にされた扇形ビームとなるようにブロックされることができる。第二のX線ビームが予め決めたエネルギーレベルを持つように、この平行にされた扇形ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を予め決めた位置に置くことができる。この方法は、対象物を第二のX線ビームが透過して、対象物から透過したX線ビームが放射されるために、対象物を第二のX線ビームの経路上に置く段階を含むことができる。更に、この方法は、この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階を含むことができる。この方法は、また、このアナライザー結晶から回折したビームにより、この対象物の画像を検知する段階を含むことができる。
【0018】
別の観点から見ると、ここに記載する本主題の方法は、X線点源から異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することにより、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。この方法はまた、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームが生成するように、この第一のX線ビームを遮るようにモノクロメーター結晶を予め決めた位置に置く段階を含むことができる。更に、この方法はまた、第二のX線ビームが対象物を透過して、対象物から透過したX線ビームが放射されるように、第二のX線ビームの経路上に対象物を置く段階を含むことができる。この透過したX線ビームをアナライザー結晶上の入射角に向けることができる。更に、この方法は、このアナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階を含むことができる。
【0019】
別の観点から見ると、ここに記載する本主題の方法は、第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。この方法はまた、第一のX線ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームを生成する段階を含むことができる。更にこの方法は、第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちの一つを選択的にブロックし、第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものを通過させる段階を含むことができる。対象物を、第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものの経路上に置くことができ、この対象物を該第二のX線ビームのブロックされていない固有線が透過して、対象物から透過したX線ビームが放射される。この方法は、この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階を含むことができる。更にこの方法は、このアナライザー結晶から回折したビームにより、この対象物の画像を検知する段階を含むことができる。
【0020】
別の観点から見ると、ここに記載する本主題の方法は、第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。モノクロメーター結晶を、第一のX線ビームを遮るように、予め決めた位置に置くことができ、第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームを生成する。更にこの方法は、第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線の経路上に対象物を置いて、この対象物を第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線が透過して、この対象物から透過したX線ビームが放射される段階を含むことができる。この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向けることができる。この方法は、このアナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知する段階を含むことができる。
この開示に従えば、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを用いて、対象物の画像を検知するためのシステムと方法が提供される。
従って、この開示の目的は、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを用いて、対象物の画像を検知するための新規なシステムと方法を提供することである。この開示が明らかになるに従って、ここに記載する発明により、この目的及びその他の目的の少なくとも全部又はその一部が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ここに記載した主題は、多色性エネルギー分布を持つX線ビームを利用して対象物の画像を検知するためのシステムと方法を含む。特に、ここに記載の主題は、対象物の画像を検知するための改良されたDEI及びDEIシステム並びに関連方法を開示する。一つの側面によれば、ここに記載の主題は、対象物の画像を検知するための方法を含む。この方法は多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。さらに、この方法は、第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター単結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階を含むことができる。さらに、この対象物を、第二のX線ビームの経路上に置くことができ、対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される。透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向けることができる。さらにアナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知することができる。これらのシステムと方法は、例えば、医療用途において極めて低い照射線量、早い走査速度、高い解像度及び比較的低い操作と建造コストを提供することができるので、有利である。さらに、これらのシステムは、例えば、コンパクトなユニットに組み込むことができるし、治療用途や工業用途に利用可能である。
【0022】
ここに記載した主題に従ったDEIを用いる画像化方法技術は、対象物の見掛吸収及び屈折画像を生成するために、ロッキングカーブの対称点で得られる画像を利用することができる。DEI見掛吸収画像は従来のX線写真画像と同様であるが、散乱排除のため、より大きいコントラストを示す。DEI屈折画像により、大規模な屈折率の特徴によって引き起こされるビームの小さな屈折の大きさを描くことができる。DEI減衰画像は、第一次のコントラスト機構が、対象物によって散乱されるマイクロラジアンのオーダーの光子によるものである、ロッキングカーブ上の各点において生じる。画像化方法技術に基づく他のDEIは、多重画像X線写真(MIR)と呼ばれ、これは対象物のX線吸収、X線屈折、及び微小角散乱排除で表わされる定量的画像を生じるために、ロッキングカーブ上の多重点を利用する。本発明のシステムと方法は、アナライザーロッキングカーブ上のいかなる点における画像を生成することができ、そのため、(1)いかなるアナライザー位置における単一の画像、(2)DEI見掛吸収及び屈折画像、(3)MIR吸収、屈折、及び散乱画像、及び(4)質量密度画像を生成することができる。これらの方法及びその他のDEIに基づく方法技術に要求される未処理画像データを生成することができることは、すべてのDEIに基づく方法技術にとって有用である。さらに、ここに記載のシステムと方法は、コンピュータ断層撮影法での利用に適用可能あり、いかなるDEIに基づくコンピュータ断層撮影法アルゴリズムにおいて利用するための未処理データを提供することができる。
【0023】
光子と物体との相互作用
本章はX線生成、フォトニクス及び光子と物体との相互作用の概略を提供する。本章は、さらにX線吸収、屈折及び散乱のメカニズム並びにDEI及びこれらがどのようにDEIに関係するかについて説明する。さらに、エネルギー堆積、照射線量の測定、及び放射暴露による健康への影響についても説明する。
X線写真における物理的相互作用のうち最も重要なものは、光電子効果である。この理論をX線画像化に適用することにより、従来のX線写真でどのようにコントラストが得られるかを説明することが容易になる。乳房組織のような対象物を通過するX線は、電子に衝突して、そのエネルギーを軌道への結合エネルギーを上回るレベルまで上げることができる。これが起きると、その電子は核への引力を上回るに十分なエネルギーを持つに至り、入射光子のエネルギーから電子の結合エネルギーを差し引いたエネルギーに等しい全エネルギーをもって原子から離れる。生物組織においては、入射X線は直接又は非直接にフリーラジカルを生成し、これはDNAやこのほかの細胞構造体と相互作用して、突然変異やそのほかの有害な結果を引き起こす。この相互作用の有益な効果として、X線光子のエネルギーが電子に転移することがあり、これはX線光子が画像化システムのフィルムや感知器と遭遇しないことを意味する。対象物を透過したX線の量が減少することは、X線減衰と呼ばれ、従来の画像化におけるこのプロセスの第一の成分は光電子効果による吸収によるものである。
【0024】
単位質量あたりの光電子吸収の確率は、Z3/E3に比例する(式中、Zは原子番号、Eは入射光子のエネルギーを表す。)。医療用画像化の場合、この等式はしばしばビームエネルギーの効果を表し、光電子吸収の確率は、1/E3に比例する。従来のX線写真のコントラストは吸収に基づくので、エネルギーレベルが高くなると、吸収コントラストは急速に低下する。この傾向の例外は、原子のK−吸収端で起こり、これは各要素に特有の固有エネルギーである。光電子相互作用の確率は、入射光子エネルギーがK−吸収エネルギー又はK−端の直下である場合に、特徴的に増加する。
原子番号が高く、ビームエネルギーが低いほど、光電子吸収は増大するので、乳房組織の画像化は挑戦しがいのあるものである。軟組織の第一要素のほとんどは、水素、炭素、窒素及び酸素から成り、これらすべては、原子番号が比較的小さく、1keV以下の吸収端をもつ。乳房組織の軟組織の第一要素の原子番号が比較的小さいことと、吸収端が低いことの両方は、特に病気の初期において、良性と悪性の特徴の問題の決定的な差をつくる。
【0025】
従来のX線生成に内在する物理的相互作用は、制動放射(bremsstrahlung)のものであり、これは破壊放射(break radiation)のドイツ語である。画像化システムで用いられる非相対的速度における電子は電位により加速され、下式の力学的エネルギーを持つ。
【化7】
X線管の陽極のような金属に放射された電子は、高密度の原子核を通過すると屈折し、急速に減速する。電子は、通過する電子がどのくらい核に近いかによって定まるエネルギー損失を差し引いた、0から全KEまでの範囲のエネルギーを放出することができる。大エネルギー放出を生じる屈折よりも、小エネルギー放出を生じる屈折が、高い確率で起こる。高いポテンシャルエネルギーで加速され、速度が顕著に減速することになる核との強い相互作用を持つ電子は、エネルギースペクトルのX線バンドにある光子を放出する。診断用X線管から生じるX線の主な源は、制動放射によるものである。
【0026】
原子と相互作用する加速された電子は、主として対象物の原子の性質に基づいて、固有X線として知られている他のタイプのX線を生成することができる。加速された電子が原子軌道にある電子と衝突すると、そのエネルギーの一部は移転されて、衝突した電子をより高いエネルギーレベルに上げる。そして、移転されたエネルギーがその電子の結合エネルギーと同じ又はそれより大きい場合には、衝突した電子は放出される。いくつかの電子のうちの一つでも放出されるような相互作用が起きると、高いエネルギーレベルにある電子が落ちて、そのギャップを埋める。これらの電子は高いエネルギーレベルから低いエネルギーレベルに落ちるので、エネルギーレベルの変化はエネルギーの放出を伴う。第2のエネルギーレベルから第1のエネルギーレベル(n=2からn=1)に転移した電子については、KαX線と呼ばれる。第3のエネルギーレベルから第1のエネルギーレベル(n=3からn=1)に転移した電子については、KβX線と呼ばれる。この電子の衝突に基づいて多くの転移が起こるが、固有X線を生じる相互作用は、比較的低いエネルギーレベル間の転移により生じる。
X線ターゲットのエネルギー出力スペクトルは、用いる金属の性質に依存する。特定の画像化用途に必要とされる平均エネルギーを決めることは、ターゲットを選択する場合に重要なことである。単色のX線を利用する用途において、ターゲットによって生成される固有X線は特に重要である。
【0027】
X線吸収に関して、X線光子が物体に衝突すると、相互作用により、X線の一部は吸収され、他の一部は透過して、入射X線は減衰する。X線の減衰は、電子密度と対象物の平均原子番号に基づく光子強度の損失である。光子が物体を通過するに従って、X線の散乱も起こり、強度の低下をもたらすが、この成分は従来のX線写真では測定することが困難であった。光子が、厚さがXの物体を通過する際に吸収される光子量の測定は、入射ビーム中の光子数に比べて(Io)、どのくらい多くの光子が透過したか(It)によって決定される。光子が物体を通過するにつれて光子が減衰する程度は、cm−1の単位で減衰係数(μ)として測定可能な物質の性質である。線状の減衰係数の違いにより、X線画像コントラストが可能になり、高い減衰と低い減衰の領域の間で、最も高大きいコントラストが生じる。
線状の吸収係数は、透過する物質の密度に比例し、この表値はμ/ρで表される。この値は質量吸収係数と呼ばれ、物質の物理的状態(固体、液体又は気体)と無関係である。
【0028】
光がある媒体から他の媒体へ通過する際の屈折は、最初ウイルブロード・スネルによって発見された。このプロセスを規定する法則はスネルの法則として知られている。この関係は数学的に下式で規定される:
【数8】
式中、入射媒体を媒体1、屈折媒体を媒体2とする。
電磁波がある媒体から他の媒体へ通過する経路は、屈折率の違いによるずれはあるが、可視光が媒体を通過する現象に似ている。可視光の古典的例によれば、光がある屈折率の媒体からより高い屈折率の媒体へ移動すると、その光は屈折する。この例は、可視光の屈折を説明するために一般的に用いられるが、この法則はX線にも適用できる。しかし、X線の場合、複素屈折率の実数部分は1より小さく、下式で表わされる:
【数9】
【0029】
高エネルギーX線と平均原子番号の低い材料を用いる場合、δの近似値は下式で表わされる:
【数10】
式中、Nはサンプル材料の単位体積当たりの電子数、reは古典的電子半径、λはX線の波長を表す。これらの数式を用いて、異なる屈折率を持つ2つの領域の間の線状界面について、入射光子は、ほぼ下式に従って、角度Δθで屈折する:
【数11】
【0030】
光子は対象物に衝突すると、3つの事象を経る:すなわち、光子は、相互作用せずに通過する、光子は光電子効果により吸収される、又は散乱する。最も一般的な定義によれば、散乱は、他の対象物との相互作用に副次的な、ある光子の進路の角度のずれである。光子の特徴、光子が通過する媒体、及び光子が遭遇する対象物の性質は、相互作用の結果に大きく影響する。
エネルギーの損失や転移を伴わずに起こる相互作用は弾性であり、入射光子のエネルギー損失を伴わずに起こるX線相互作用は弾性散乱又はコヒーレント散乱と呼ばれる。コヒーレント散乱事象において、主なX線光子のエネルギーは、最初に完全に吸収され、次に単一原子の電子により再放射される。この相互作用においては、正味のエネルギー損失は無いが、光子の再放射の方向は完全に任意である。医療用画像化の場合、コヒーレント散乱相互作用は、非コヒーレント散乱として知られるエネルギー損失を伴う光電子的相互作用や散乱よりも顕著に小さい。
【0031】
診断画像化で用いられるエネルギー範囲において、優勢でしばしば問題となるこの散乱相互作用は、非コヒーレント散乱である。この効果はコンプトン散乱として知られている。コンプトン散乱相互作用は、X線光子と原子の外部エネルギーの電子との間の衝突として説明される。この外部電子を結合するエネルギーは極小であり、光子と電子の相互作用で失われるエネルギーのすべては、電子に運動エネルギーとして転移する。このエネルギー転移により、光子のエネルギーは減少して波長が長くなり、衝突した電子がその原子から放出される。衝突に際しエネルギーと運動量は保存されるので、散乱する光子のエネルギーと角度のずれは、電子へ移転したエネルギー量に依存する。波長の変化を記載するコンプトン散乱式は下式で表わされる:
【数12】
式中、λは入射光子の波長、λ'は散乱光子の波長を表す。
【0032】
高エネルギーX線光子は典型的には少量のエネルギーしか転移しないので、散乱角は、光子の最初の軌道に対して小さい。これと反対に、低エネルギーX線光子の散乱は、より等方性である。従来のX線写真技術の問題は、診療画像化に用いる低エネルギーX線は等方に散乱するにもかかわらず、前向きの光子だけが検知されることである。画像を生成するために用いられる望ましい光子と比べると、これらの散乱する光子は同じエネルギーと方向を持つ。エネルギーと方向が同じであることは、抗散乱グリッドやエネルギーフィルターでこれらを除去することを困難にする。そのため、コンプトン散乱は、生成する画像をぼやけさせ、解像度とコントラストを低下させる。いままでX線写真技術においてコンプトン散乱の効果を小さくするためにいくつかの独創的な方法が用いられてきたが、この効果を完全に排除することに成功したX線画像化技術はない。
電離放射線を用いる画像化システムの開発と利用は、対象物又は患者の内部構造を可視化するために用いられる電磁放射に基づいて可能となる。電離放射線は、原子に電子を失なわせてイオンにするために十分なエネルギーを持つ放射線として定義される。X線画像化は最も一般的に用いられている電離画像化理学療法であるが、この他の解剖用及び機能的画像化理学療法も診療情報を得るために電離放射線を利用している。電離放射線を利用すれば、それに伴って放射線照射を浴びることは避けられないので、照射線量がどの程度であるかを測定することやその健康への影響を理解することは必須である。測定システムを用いて、照射暴露量を定量するために多くの装置や方法が開発されてきている。
【0033】
照射線量は、患者や対象物に照射された放射の量又は患者や対象物が吸収した放射の量で定義される。レントゲンはX線やガンマ線の照射により空気中に生成する電離を測定するために用いられる暴露の単位である。レントゲンの単位で暴露量は、空気の容積要素当たりの光子により遊離したすべての電子が空気中で完全に停止した場合に、空気中に生成した一つの符号のすべてのイオンの電荷の合計を、空気の容積要素当たりの重量により除す(割る)ことにより得られる。1レントゲン(R)は、空気1KgあたりX線やガンマ線により生成する電荷が2.58×10−4クーロンとして定義される。レントゲンはまた、標準温度と圧において、乾燥空気1cc中に1esu(2.08×109イオンペア)の電荷を生成させるX線及び/又はガンマ線の照射の量をいう。レントゲンは、X線とガンマ線の照射の測定に限定して使用され、吸収された照射線量の尺度ではない。医療用画像化機器ではこの単位は一般的に使用されていないが、この他の分野では空気のイオン化の測定に使い続けられている。
生物画像化用途における放射の有用な測定方法として、ラド(rad)で表わされる患者や対象物により吸収された放射線量が考慮されている。1ラドは、1グラムの組織が吸収した100エルグ(1erg=10−7J)のエネルギーに等しい。吸収された放射量の国際的に受け入れられている単位はグレイ(gray)であり、これは100ラドに等しい。ラドやグレイは全エネルギーの尺度ではない。これらは、1グラムの組織あたりに吸収された照射線量の尺度である。どれだけの全エネルギーが出力されたかを測定するためには、暴露された組織の全量を知らなければならない。ラドもグレイも吸収された照射線量の尺度を提供するが、組織に残留するエネルギー量の尺度にすぎない。
【0034】
特定タイプの照射の効果を決めることに加えて、暴露された組織のタイプもまた全体の効果に大きく影響する。あるタイプの組織は、他の組織よりも照射に敏感であり、最も敏感な細胞には、造血幹細胞、腸皮覆組織及び精子形成細胞のような急速に分割する細胞がある。有効照射線量として知られている量は、照射された組織のタイプの等価の照射線量とその加重係数との積を合計したものであり、下式で表わされる:
【数13】
生物システムは、生命に必要な機能を実行するために、分子と構造の超複合システムに依存している。電離放射線は、細胞の働きを乱し、細胞の機能喪失又は細胞死をもたらす。生体内の分子は、化学結合で統合され、よく決められた順序で相互作用し、しばしば酵素や他の生物組織によって補助される。電離により放出されるエネルギーは、化学結合を破壊し、これら分子の形や機能を潜在的に変える。その細胞への影響は、その細胞のどの部分が乱されたかや、与えられた時間内にどれだけ多くの事象が生じたかに依存する。
【0035】
最も敏感で重要な細胞の成分は、DNA(デオキシリボ核酸)であり、これは細胞の複製、転写及びその後の翻訳に関与する。DNAに電子の放出を引き起こす電離事象が起きた場合には、DNA中に電荷が生じる。このようにして起きる相互作用を直接作用と呼び、電離事象はDNA中又は近接分子から直接起きる。X線から生じるフリーラジカルの約2/3は、放出された電子が水分子に衝突する際に起きる間接作用と分類される。これは、水分子をイオン化し、数段階を経てフリーラジカルを生成する。一旦フリーラジカルが生成すると、フリーラジカルは他の分子と強力に反応して、安定な電子配置を回復する。フリーラジカルがDNA分子と相互作用すると、何もしない間違いを作り出し、一時的な機能異常を引き越すか、又は細胞を不安定化し、最終的に細胞死をもたらす。
過剰な照射暴露は、細胞死を引き起こし、2つの基本的形態に顕在化する。イオン化は、細胞死をもたらす細胞がそれ自体を維持できないところまで細胞の機能を乱すことができる。分裂抑制も起きて、その細胞を機能させるが、その細胞は複製しなくなる。細胞レベルへの影響を持つ効果は、臓器、シシテム又は生物レベルで計ることができる。人体への100グレイの照射線量は、24〜48時間内に死をもたらす。人体への2.5〜5グレイの照射線量は、数週間以内に死をもたらす。臓器や他の人体部分への局所照射は、局部の細胞死や機能異常をもたらし、組織のタイプの感受性によって部分的に決まるダメージをもたらす。
細胞死は電離放射線への暴露のひとつの結果に過ぎず、DNAの変化はDNA青写真に間違いをもたらすことがある。癌の進行は、体細胞へのDNAダメージの起こりうる帰結である。DNAの間違いは、細胞制御に欠陥をもたらし、制御されない増殖や癌の進行をもたらす場合がある。胚細胞のDNAに間違いを誘導することは、遺伝的欠陥をもたらし、数世代にわたって発症するかもしれない。
【0036】
DEI、DEIシステム及び関連方法
本発明の一つの実施態様のDEIシステムは、X線管から放射される特定のX線を反射するためのモノクロメーター単結晶を含む。図1A〜Cは、DEIシステム100の概略図、上面図及び側面図を示す。このシステムは、モノクロメーター単結晶を含み、本発明の一つの実施態様に従って、対象物Oの画像を形成するように機能することができる。更に、図1Dと1Eは、DEIシステム100の概略図を示し、本発明の実施態様に従って、異なるモードで機能する。図1Aと1Bによれば、DEIシステム100は、多色性X線ビームXB又は、X線管XTの点源から異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成するように機能することができるX線管XTを含むことができる。X線ビームXBは、異なる複数のエネルギーを持つ複数の光子を含むことができる。一例として、X線管XTは、X線ビームXBを放射することができる点源を有するタングステンX線管XTである。
図2は、本発明の一つの実施形態の固定X線管デザインに基づくX線管XTの概略図である。図2によれば、X線管XTは、電子ビームEBを生成するように構成された陰極Cを含む。陰極Cは、タングステン製である。陰極Cと陽極Aとの間に高電圧を加えると、X線管XTの中の真空室Vに高い電位差が形成される。電位差は陽極回路ANCを介して陽極に加えられる。X線管XTは、陰極Cを加熱するために構成されたフィラメントFを含むことができる。フィラメントFは、フィラメント回路FCにより、電源に連結されることができる。
【0037】
真空室Vは、X線管ハウジングXTHの中に設けられる。陰極Cを加熱することにより、陰極Cから電子が熱的に放射されてもよい。電子の放出点の周りを、静電的集束カップEFCが囲み、陽極へ向かう電子流を集束することを助ける。更に、陰極Cから放射された電子は真空室Vにより陽極Aに集束され、間隔の間の電子の速度は、回路に加えられる電圧によって定まる。
陰極Cから放射された電子は、陽極AのタングステンターゲットTに入射する。電子がターゲットTに衝突すると、X線ビームXBが生成される。X線ビームXBは、X線窓XWを経て真空室Vから出る。X線ビームXBは固有輝線と制動放射を有することができる。
X線発生器の一例として、SOVOLT TITAN 160 (GE Inspection Technologies of Ahrensburg, Germany)を挙げることができ、この他のX線発生器の例として、COMET MXR-160 シリーズのX線管、例えば、MXR-160HP/20 X線管(Comet AG of Flamatt, Switzerland)が挙げられる。この他のX線管として、タングステン以外の、例えば、モリブデン、鉄又は銅などの陽極を用いたものを挙げることができる。この他のターゲットとして、バリウム六臭化物ターゲットやサマリウムターゲットを挙げることができる。バリウム六臭化物ターゲットは、約30keVでX線を生成することができる。サマリウムのKα1ラインは約40keVでX線を生成する。一例として、X線管の陽極は回転する陽極であってもよく、そこからX線ビームが放射される。他の例として、X線管の陽極は固定された陽極であってもよく、そこからX線ビームが放射される。
【0038】
図1Aと1Bによれば、モノクロメーター結晶MCの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために、コリメーターC1を置くことができる。また、システム100は、モノクロメーター結晶MCの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために、X線管XTとモノクロメーター結晶MCとの間に置かれた追加の複数のコリメーターを含むことができる。このコリメーターは、X線ビームXBが通過してモノクロメーター結晶MCに向かうように、スリット又は孔を規定することができる。更に、コリメーターは鉛のような、X線ビームを遮断するいかなる適当な材料で作られてもよい。X線管XTとコリメーターC1との距離Xは約100mmであってもよい。
モノクロメーター結晶MCは、それに入射するX線ビームの一部の予め決められたエネルギーを選択するように構成されてもよい。例えば、モノクロメーター結晶MCは、所望のエネルギーを有していないX線ビームXBの光子の大部分を反射するように採用された、シリコン[333]モノクロメーター結晶である。タングステンX線管の場合、シリコンモノクロメーター結晶により反射されるビームエネルギーの範囲がある。この場合、X線ビームの固有輝線は59.13keV(Kα1)と57.983keV(Kα2)と制動放射であり、モノクロメーター結晶の狭い角度受容窓の範囲内に入る。この制動放射の輝度は、これら2つのKα輝線のものよりも数オーダー小さい。
【0039】
X線ビームXBはモノクロメーター結晶MCによりいくつかの方向に散乱される。アナライザー結晶ACの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために、コリメーターC1を置くことができる。このコリメーターC2は、X線ビームXBの一部が通過してアナライザー結晶ACに向かいアナライザー結晶ACで遮られるように、スリット又は孔を規定することができる。一例において、モノクロメーター結晶MCとアナライザー結晶ACとの距離Xは約500mmであってもよい。
アナライザー結晶ACは、特定方向に進む放射の量を測定するために、回転してもよい。この結晶システムの角度感度機能は、固有のロッキングカーブと呼ばれ、この性質は画像屈折コントラストを生成するために用いられる。X線光子が、このロッキングカーブのピークへ外れる場合、この強度は増大する。もし対象物の性質が、光子をこのロッキングカーブの下へ偏光させたり、ピーク反射位置から外れるものであれば、それは強度低下を引きこす。
試料又は対象物は、空気中で又は水のような媒体に浸漬して画像化することができる。この媒体を使用することは、空気と画像化すべき対象物の間の屈折率の差を縮小するために用いられ、空気と対象物の界面に顕著な屈折なしに、入射X線が試料を通過することができる。このことは、多くの対象物にとって必要なことではないが、DEIを応用する際に対象物の内部コントラストを改善するために利用することができる。
【0040】
一例として、モノクロメーター結晶MCは一方向へ狭い対称結晶である。対称結晶の格子面(X線ビームを回折させる原子層)は結晶の表面に平行である。対称結晶は、入射ビームの発散とサイズを保持する。比較すると、非対称結晶は入射ビームの発散とサイズを変更する。モノクロメーター結晶MCが対称結晶である場合、2次元の大きい画像面(例えば、約100mm×100mmの画像面)は、対称結晶を用いた検知器を用いて対象物を走査することにより達成することができる。非対称結晶に対して対称結晶が優れている点の一つは、非対称結晶は画像化ビームを用意するために(例えば、X線を選択して平行にするために)、大きいモノクロメーター結晶を必要とし、大きい結晶を完全にするには厳しい制限を課すことである。更に、X線ビームエネルギーが大きくなるにつれて非対称結晶のサイズも増大し、従って約59.13keVのX線については実行不可能になる。比較のため、例えば、本発明に従って、対称モノクロメーター結晶を用いた場合には、長さが約30mmのあまり大きくないサイズの結晶を用いて、59.13keVのX線を用いることができる。
【0041】
再度図1Aと1Bを参照して、対象物Oを画像化するための走査台STにより、対象物OをX線ビームXBの軌道上に置いてもよい。矢印Aが示すようにX線ビームXBの方向に直角に対象物Oを走査することができる。対象物Oを走査する間、X線ビームXBは対象物Oを透過し、モノクロメーター結晶MCと一致するシリコン[333]結晶のような、アナライザー結晶ACで分析することができる。アナライザー結晶ACに入射したX線ビームXBは回折して、デジタル検知器(又は画像プレート)DDで遮られる。デジタル検知器DDは、この遮られたX線ビームXBを検知することができ、この遮られたX線ビームXBを表す電気シグナルを生成する。
ある例においては、線光源捜査システムを用いてもよい。またある例においては、捜査システムが、対象物と検知器が1:1の対応関係にあってもよい。
電気シグナルはコンピューターCに伝達され、画像の分析を行い作業者に表示することができる。電気シグナルで表わされる画像は、画像のKα1とKα2エネルギーの両方の寄与を含むことができる。ある例においては、関心のあるエネルギーは59.319keVのKα1エネルギーである。この例の場合、Kα2エネルギーによって作り出される画像の特徴は、画像プロセシングを介して除去することができる。
X線ビームのKα2部分によって作り出される特徴が、所望の解像度よりも低い距離にある場合、この2つを一緒に用いて必要とされる全体の画像化時間を短縮することができる。解像度が高い用途の場合、このKα2エネルギー部分は陰影効果を引き起こし、画像プロセシングを介して除去することができる。コンピューターCは、吸収画像、屈折効果を示す画像、及び微小角散乱を描く画像を生成するように構成されることができる。これらは以下に詳説する。
【0042】
図1Bにおいて、モノクロメーター結晶MCは、X線ビームXBを扇状ビームとして伝播することができる。望まないX線をさえぎるために、コリメーターを用いてこの扇状ビームを平行にすることができる。その結果、明瞭なDEI画像を得ることができ、患者の照射線量を低くすることができる。2次元のビームに比べて、扇状ビームは、望まないX線をさえぎるための制御をしやすい。
図1Cに、X線管XT(図1Aと1Bに示した)からモノクロメーター結晶MCへのX線放射の線源C、対象物O、アナライザー結晶AC及び検知器DDの間の典型的な距離を示す。これらの構成部品を、用途によりそれぞれ適当な距離に置いてよい。この例において、DEIシステム100はマンモグラフィー用に構成されている。
図1Dと1Eを参照すると、上記で述べたように、これらの図は異なる操作モードにおけるDEIシステムを示す。このX線ビームの固有放射線Kα1(K1)とKα2(K2)はX線管XTにより発生する。放射線Kα1(K1)とKα2(K2)は同じ点源PSから生じる。上記で述べたように、モノクロメーター結晶MCは、望むエネルギーを持たないX線ビームの光子の大部分を阻止する。この場合、放射線Kα1(K1)とKα2(K2)と制動放射はモノクロメーター結晶MCを通過し、図に示されているように再度アナライザー結晶ACに向かう。
【0043】
コリメーターC2は放射線Kα1(K1)とKα2(K2)の経路上に置かれる。コリメーターC2は、放射線がアナライザー結晶ACに向かって選択的に通過することができる調整可能なスリットを規定する。図1Dに示す第一の操作モードにおいて、このスリットは、点源PSからの距離が約400mm、開口Xが0.6mmに調整され、放射線Kα1(K1)がコリメーターC2を通過し、Kα2(K2)がブロックされるように置かれる。こうして、コリメーターC2は放射線Kα1(K1)と非常に狭い範囲の制動放射以外の全てのX線を排除する。このモードにおいて、このX線ビームは発散性ではなく、そのため対象物Oと検知器DDは同じ走査速度で異なる方向で走査される。このモードは最大可能な面外解像度(DEIコントラストの方向)をもたらすが、X線ビームから一部のX線を除くことから、曝露時間を長くする必要がある。対象物の仮想の点源をVPSと呼ぶ。
【0044】
図1Dを参照すると、第2の操作モードにおいて、同様なエネルギーの放射線Kα1(K1)とKα2(K2)及び制動放射はコリメーターC2を通過する。コリメーターC2のスリットは、点源PSからの距離が約400mm、開口Xが2.0mmに調整され、放射線Kα1(K1)とKα2(K2)及び制動放射がコリメーターC2を通過するように置かれる。このモードにおいては、ビームの発散が考慮される。画像が不鮮明になることを避けるために、対象物Oと検知器DDは同じ角速度で走査される。対象物Oが置かれる試料台と検知器DDの走査速度は、線源と対象物の間の距離と線源と検知器の間の距離によって定めることができる(これらの距離はビームの経路に沿ってとられる)。このモードにおけるビームの発散性は、面外の解像度が低くなる結果をもたらすが、このモードは、より多くのX線が通過するという利点も有するので、曝露時間を短くすることができる。検知器DDの仮想の点源をDVPSと呼ぶ。円部分C1とC2はそれぞれ対象物Oの仮想点源と検知器DDの仮想点源を中心とする。
【0045】
更に、この第2の操作モードの一つの実施態様において、2つのKα線と異なるX線エネルギーの制動放射を捕まえることができる。従って、この実施態様において、このシステムは、固有放射エネルギーに限定されないX線エネルギーに調整可能である。この機能は、モノクロメーター結晶とアナライザー結晶の入射角を変えることにより、達成することができる。一例において、この機能は、ブラッグの法則に従って、入射角を11.4度にして、銅製フィルターをアルミニウム製フィルターに置き換えることにより達成することができる。この例において、30keVのX線エネルギーで画像化を行なうことができる。対象物が比較的薄い場合には、タングステン放射線エネルギーよりも低いX線エネルギーを用いることができる。
一例において、望まない結晶の反射や高調波を低減又は除去するために、銅製フィルターを約19keVの制動放射を除去するように構成することができる。このフィルターが無いと、画像が低品質になる可能性がある。
【0046】
図3は、本発明の一つの実施形態の図1A〜1EのDEIシステム100を示す概略図を示す。図3において、X線ビームXBはX線管XTで発生する。コリメーターC1とC2は、X線管XTの線源から約5.7度の角度でアナライザー結晶を通過するX線ビームの分散部分をブロックする。コリメーターC1とC2を通過するX線ビームの部分は、これらコリメーター中のスリットを通過するX線ビーム部分である。
システム100は、右と左の分析ヨウ化ナトリウム検知器D1とD2と、右と左のモノクロメーターヨウ化ナトリウム検知器D3とD4を備える。検知器D1〜D4は、分析用に整列するように構成される。これらの検知器は、モノクロメーター結晶MCとアナライザー結晶ACから放射される回折したX線ビームの強度を測定するために用いられる。システムの整列のために、検知器D1とD2は、アナライザー結晶ACの次に置かれる。このアナライザー結晶が所望の角度に調整されていない場合には、検知器D1とD2により測定される強度は調整されていないことを示すので、システムを調整することができる。同様のことは、モノクロメーター結晶MCの次に置かれる検知器にもいえる。更に、検知器D1〜D4はリアルタイムにX線ビームXBを測定し、アナライザー結晶、D1及びD2、chi(X線ビームの経路に沿った軸について測定された角度)又はモノクロメーター結晶、chi、D3及びD4を調整するために用いることができる。これらの検知器を用いて、モノクロメーター結晶MCとアナライザー結晶ACをセットし、測定し、調整することは、DEIシステムの画像を成功裏に取得するために重要なことである。
【0047】
図4は、本発明の一つの実施形態の図1A〜1EのDEIシステム100を使用して対象物Oを画像化する典型的な方法のフローチャートを示す。図4のブロック400において、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームが生成することができる。例えば、X線管XBにより生成するX線ビームXBは多色性エネルギー分布を持つ。更に、例えば、X線管XBを、このようなX線ビームを生成させるために、少なくとも50kWのパワーを持つようにセットすることができる。代替として、例えば、いくつかの医療用途、研究及び開発、更に小動物の画像化などのために、X線管XBのパワーを50kW以下(例えば、約30kW)にセットすることができる。比較的小さいパワーを使うことの利点は、経費削減である。この第一のX線ビームは、約10keV〜約60keVの範囲のビームエネルギーを持つことができる。一例として、この第一のX線ビームをシンクロトロンにより生成させることができる。
【0048】
ブロック402において、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成するように、第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター結晶MCを、予め決めた位置に置くことができる。例えば、モノクロメーター結晶MCの表面をX線ビームXBの経路上に置いて、そのX線ビームXBを遮ることができる。上記で述べたように、モノクロメーター結晶MCは、所望のエネルギーを有していないX線ビームXBの光子の大部分を反射するように採用されることができる。そのため、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成することができる。一例として、モノクロメーター結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して、モノクロメーター結晶MCの表面を約5度と20度の間の角度に置くことができる。この例の場合、[333]面の反射に、これらの角度を用いることができる。代替として、モノクロメーター結晶MCの表面の位置に他の適当な角度を用いてもよい。他の例では、モノクロメーター結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して、モノクロメーター結晶MCの表面を約1度と20度の間の角度に置くことができる。[333]と[111]の反射を用いた場合、10〜70keVのエネルギー範囲について、この角度範囲は約1度と約40度の間であることができる。
【0049】
ブロック404において、第二のX線ビームの経路上に対象物Oを置き、該対象物Oを該第二のX線ビームが透過して、該対象物Oから透過したX線ビームが放射される。例えば、対象物Oが第二のX線ビームの経路上に移動できるように、対象物Oを走査台STの上に置くことができる。
ブロック406において、透過したX線ビームを、アナライザー結晶AC上の入射角に向けることができる。例えば、アナライザー結晶ACを、透過したX線ビームの経路上で、入射角でこのX線ビームを遮るようにな角度で置くことができる。アナライザー結晶ACで遮られたX線ビームの少なくとも一部は回折して検知器DDに向かうことができる。
ブロック408において、アナライザー結晶ACから回折したビームにより、対象物Oの画像を検知することができる。例えば、検知器DDはアナライザー結晶ACから回折したビームを検知することができる。この回折したビームは、以下の典型的な検知器のいずれかで検知できる:検知した画像をデジタル化するよう構成された検知器;X線フィルム;及び画像プレート。一例として、アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク及び/又はその近傍で、アナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知することができる。検知された画像は処理されて、コンピューターCを介して使用者に表示されることができる。
【0050】
対象物の画像を検知する他の例において、第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶ACから放射される第一の回折ビームから、第一の角度の対象物Oの画像を検知することができる。対象物Oの第一の角度の画像を、アナライザー結晶ACの低ロッキングカーブ角度で検知することができる。更に、第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶ACから放射される第二の回折ビームから、第二の角度の対象物Oの画像を検知することができる。対象物Oの第二の角度の画像を、アナライザー結晶ACの高ロッキングカーブ角度で検知することができる。これら第一と第二の画像をコンピューターCで結合して一つの回折画像を導き出すことができる。更に、コンピューターCは、この回折画像から、対象物Oの重量密度画像を導き出すことができる。重量密度画像は、コンピューターCのディスプレーを介して使用者に表示されることができる。
図5は、本発明の一つの実施形態の図1A〜1E及び3に示されたDEIシステム10のアナライザー結晶ACの側面図を示す。図5は、固有放射線Kα1とKα2がアナライザー結晶ACの表面で回折する様子を示す。一つ以上のX線エネルギーを調節することは改善されたX線フラックスをもたらすことができる。
【0051】
他の実施態様において、本発明のDEIシステムは、X線管から放射される特定のX線を除くように設計されたミスマッチ結晶を含むことができる。この設計において、モノクロメータで固有X線ビームのKα2放射線を除くことができる。図6Aと6Bは、本発明の一つの実施形態のミスマッチのモノクロメーター結晶を含み、対象物の画像を作るように機能するDEIシステム600の概略図、上面図及び側面図である。図6Aと6Bにおいて、DEIシステム600はX線ビームXBを生成するように機能するX線管XTを含む。第一のモノクロメーター結晶MC1の角度受容窓の外のX線ビームの一部をブロックするように、コリメーターC1を置くことができる。X線ビームXBのブロックされていない部分は、第一のモノクロメーター結晶MC1で遮られ、第二のモノクロメーター結晶MC2で遮られる方向に屈折されることができる。非常に狭い範囲の光子エネルギーを選択して、第二のモノクロメーター結晶MC2の方向に向いた回折した単色ビームをもたらすように、第一のモノクロメーター結晶MC1を、ブラッグの法則に従って特定の角度に調節することができる。X線管XTからX線ビームXBが分散するため、第一のモノクロメーター結晶MC1は、近いエネルギーの固有放射線Kα1とKα2及び制動放射を含むエネルギー範囲を回折することができる。第二のモノクロメーター結晶MC2の機能は、このビームを再度入射ビームに平行な方向に向けて、アナライザー結晶ACと整列させることである。システムを特定エネルギーに調節する場合、ビームの位置を見出すために、この第一のモノクロメーター結晶を最初に調節し、次に第二のモノクロメーター結晶を調節する。
【0052】
第二のモノクロメーター結晶を調節したら、アナライザー結晶ACを走査して、結晶上のビームの位置を見つける。この結晶を見つけたビーム位置に固定することは、ラジオのダイアルを特定放送局に合わせることに似ており、アナライザー結晶の角度位置を第二のモノクロメーター結晶と完全に整列させた場合には、強度がシャープに立ち上がる。一旦アナライザー結晶ACを整列させると、システムは調整されたことになり、使用すること準備ができたことになる。
ミスマッチ結晶を設計する際に、X線管から放射される特定X線を除くように第一と第二のモノクロメーター結晶MC1とMC2を構成することができる。モノクロメーター結晶MC1とMC2を用いて、異なる結晶のエネルギーに対する角度受容を利用することにより、X線ビームのKα2放射線を除くことができる。一例として、モノクロメーター結晶MC1とMC2を、それぞれゲルマニウム[333]とシリコン[333]モノクロメーター結晶とすることができる。
【0053】
図7は、発明の一つの実施形態の図6Aと6BのDEIシステム600を使用して対象物Oを画像化するための典型的な方法のフローチャートを示す。図7のブロック700において、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームが生成することができる。例えば、X線管XBにより生成するX線ビームXBは多色性エネルギー分布を持つ。更に、例えば、X線管XBを、このようなX線ビームを生成させるために、少なくとも50kWのパワーを持つようにセットすることができる。この第一のX線ビームは、約10keV〜約60keVの範囲のビームエネルギーを持つことができる。一例として、この第一のX線ビームをシンクロトロンにより生成させることができる。
ブロック702において、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成するように、第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター結晶MC1を、予め決めた位置に置くことができる。例えば、モノクロメーター結晶MC1の表面をX線ビームXBの経路上に置いて、そのX線ビームXBを遮ることができる。上記で述べたように、モノクロメーター結晶MC1は、所望のエネルギーを有していないX線ビームXBの光子の大部分を反射するように採用されることができる。そのため、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成することができる。一例として、モノクロメーター結晶MC1の表面に入射するX線ビームXBの経路に対して、モノクロメーター結晶MC1の表面を約5度と20度の間の角度に置くことができる。
【0054】
ブロック704において、第二のX線ビームを遮り、この第二のX線ビームをアナライザー結晶ACの方向に向けるように、第二のモノクロメーター結晶MC2を置くことができる。一例として、第二のX線ビームが、コリメーターC2を通過するX線ビームXBの一部の経路と平行な経路に沿うような方向に向かうように、第二のモノクロメーター結晶MC2を置くことができる。他の例では、モノクロメーター結晶MC1とMC2がミスマッチであることができる。また他の例では、モノクロメーター結晶MC1とMC2をX線ビームXBの予め決められた部分を除くように選択されることができる。また他の例では、モノクロメーター結晶MC1とMC2を、ゲルマニウム[333]とシリコン[333]モノクロメーター結晶のいずれかとすることができる。
ブロック706において、第二のX線ビームの経路上に対象物Oを置き、該対象物Oを該第二のX線ビームが透過して、該対象物Oから透過したX線ビームが放射される。例えば、対象物Oが第二のX線ビームの経路上に移動できるように、対象物Oを走査台STの上に置くことができる。
ブロック708において、透過したX線ビームを、アナライザー結晶AC上の入射角に向けることができる。例えば、アナライザー結晶ACを、透過したX線ビームの経路上で、入射角でこのX線ビームを遮るようにな角度で置くことができる。アナライザー結晶ACで遮られたX線ビームの少なくとも一部は回折して検知器DDに向かうことができる。
【0055】
ブロック710において、アナライザー結晶ACから回折したビームにより、対象物Oの画像を検知することができる。例えば、検知器DDはアナライザー結晶ACから回折したビームを検知することができる。この回折したビームは、以下の典型的な検知器のいずれかで検知できる:検知した画像をデジタル化するよう構成された検知器;X線フィルム;及び画像プレート。一例として、アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク及び/又はその近傍で、アナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知することができる。
この例においては、これらのピークはロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にあることができる。検知された画像は処理されて、コンピューターCを介して使用者に表示されることができる。
対象物の画像を検知する他の例において、第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶ACから放射される第一の回折ビームから、第一の角度の対象物Oの画像を検知することができる。対象物Oの第一の角度の画像を、アナライザー結晶ACの低ロッキングカーブ角度で検知することができる。更に、第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶ACから放射される第二の回折ビームから、第二の角度の対象物Oの画像を検知することができる。対象物Oの第二の角度の画像を、アナライザー結晶ACの高ロッキングカーブ角度で検知することができる。これら第一と第二の画像をコンピューターCで結合して一つの回折画像を導き出すことができる。更に、コンピューターCは、この回折画像から、対象物Oの重量密度画像を導き出すことができる。重量密度画像は、コンピューターCのディスプレーを介して使用者に表示されることができる。
【0056】
図8〜10は、異なる波長におけるゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモン(DuMond)ダイアグラムのグラフを示す。特に図8は、タングステンのKα1とKα2に相当する波長範囲内にあるゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモン(DuMond)ダイアグラムのグラフを示す。図9は、タングステンのKα1に相当する波長範囲内にあるゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモン(DuMond)ダイアグラムのグラフを示す。タングステンのKα1(59.319keV)に相当する波長において、ゲルマニウム[333]面とシリコン[333]面は完全に重なり、第一の遮られた結晶(即ち、ゲルマニウムモノクロメーター結晶)と第二の遮られた結晶(即ち、シリコンモノクロメーター結晶)を通過して回折する際に、Kα1エネルギーが除かれなかったことを示す。しかし、より長い波長においては、与えられた角度において、それぞれの結晶に受け入れられる波長が分離される。図10で、タングステンのKα2(57.982keV)に相当する波長において、ゲルマニウム[333]とシリコン[333]を受け入れる波長の重なりは無い。これを図6Aと6Bに示された例で記載されたタングステンの線源に適用すると、ゲルマニウムとシリコンモノクロメーター結晶を平行に置いて、Kα1波長におけほとんど損失の無い反射と、Kα2波長の完全な除去とが可能になる。
【0057】
図11は、本発明の一つの実施形態の図6Aと6BのDEIシステム600のゲルマニウムモノクロメーター結晶MC1とシリコンモノクロメーター結晶MC2の側面図を示す。図11において、タングステンX線管のKα1波長がほとんど損失の無く反射し、Kα2波長が完全に除去されるように、モノクロメーター結晶MC1とMC2は平行な構成で示されている。
再び図6Aと6Bを参照すると、モノクロメーター結晶MC1とMC2を通過するX線ビームXBの一部は、異なる様々な方向へ散乱される。コリメーターC2は、アナライザー結晶ACの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために置かれたスリット又は孔を有することができる。
走査台STにより画像化するために、対象物OをX線ビームXBの経路上に置くことができる。対象物Oを走査している間、X線ビームXBは対象物Oを通過し、アナライザー結晶ACにより分析されることができる。このアナライザー結晶ACは、モノクロメーター結晶MC2に適合するシリコン[333]結晶であってもよい。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは回折してデジタル検知器DDで遮られることができる。デジタル検知器DDは、遮られたX線ビームXBを検知して、遮られたX線ビームXBにより表される電気信号を生じ、これはコンピューターCに伝えられる。コンピューターCは表された信号を分析し、オペレーターに対象物Oの画像を示す。特に、コンピューターCは、吸収画像、屈折効果を示す画像、及び微小角散乱を描く画像を生成するように構成されることができる。これらは以下に詳説する。
【0058】
図12は、本発明の一つの実施形態のミスマッチのモノクロメーター結晶を含み、対象物Oの画像を作るように機能するDEIシステム1200の概略図を示す。図12を参照すると、DEIシステム1200は矢印Aで示される方向を向いたX線ビームXBを生成するように機能するタングステンX線管XTを含むことができる。ベリリウム(Be)窓BWを、X線ビームXBを遮るために、X線管XTのビーム出口端BEにおくことができる。Be窓BWの機能は、低エネルギーX線をフィルターし、X線管XTの真空室内をシールすることを含む。Be窓BWは、ハウジングH1に保持され、ビーム出口端BEに接続するように構成される。
アルミニウム(Al)フィルターAFを、Be窓BWを通過するX線ビームXBを遮るために、Be窓BWの下流におくことができる。AlフィルターAFをハウジングH2に保持し、Be窓BWに接続するように構成されることができる。AlフィルターAFを、望まれない低エネルギーX線を減衰させるために用いることができる。
【0059】
モノクロメータータンクMTを、AlフィルターAFを通過するX線ビームXBを遮るために、AlフィルターAFの下流におくことができる。モノクロメータータンクMTは、ミスマッチ第一及び第二モノクロメーター結晶MC1及びMC2、並びにX線ビームXBが通過できるスリットを規定する一組のコリメーターC1及びC2を含むことができる。モノクロメータータンクMTは、X線ビームXBの入口端E1と出口端E2を含むことができるコリメーターC1及びC2は、X線ビームXBの一部を平行化する。第一及び第二モノクロメーター結晶MC1及びMC2は、X線管XTから放射される特定のX線を除くために設計されたミスマッチ結晶となるように構成される。モノクロメーター結晶MC1及びMC2は、X線ビームのKα2放射線を除くように用いられることができる。一例として、モノクロメーター結晶MC1及びMC2は、それぞれ、ゲルマニウム[333]モノクロメーター結晶及びシリコン[333]モノクロメーター結晶であってもよい。モノクロメータータンクMTは、特定エネルギーのX線ビームXBを選択するために、モノクロメーター結晶MC1及びMC2を回転させるための機構を内蔵することができる。
システム1200は、モノクロメータータンクMTの下流に置かれた、この他のコリメーターC3、鉄製の小室IC、及びシャッターアッセンブリーSAを含むことができる。X線ビームXBの少なくとも一部は、モノクロメータータンクMTの端E2を出る際に、X線ビームXBを平行化し、X線ビームXBの少なくとも一部をブロックするために、モノクロメータータンクMTの下流に置かれたコリメーターC3内のスリットを通過することができる。鉄製の小室ICは、この小室を通過するX線光子はイオン化して電位差を形成するという原理に基づいて、X線フラックスを測定するために用いられる。シャッターアッセンブリーSAは、X線ビームXBを選択的にブロックし及び通過させるよう機能することができ、そのため、対象物Oを選択的にX線ビームXBに曝すことができる。
【0060】
対象物Oは、画像化を行なう間、X線ビームXBの経路を横切りながら走査するために、走査台アッセンブリーSSAにより保持されることができる。対象物Oを走査する間、X線ビームXBは対象物Oを通過し、アナライザー結晶ACにより分析されることができる。このアナライザー結晶ACは、第二モノクロメーター結晶MC2とマッチするシリコン[333]結晶であってもよい。アナライザー結晶ACは、ここに記載するように第二モノクロメーター結晶MC2に対して適当な角度にまで回転することができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは回折して、移動可能なデジタル検知器DDにより遮られることができる。検知器DDは、遮られたX線ビームXBを検知し、遮られたX線ビームXBを示す電気信号を生成し、この信号はコンピューターCに送られることができる。コンピューターCは、このシグナルを分析し、オペレーターに対象物Oの画像を表示することができる。特に、コンピューターCは、吸収画像及び屈折効果を示す画像を生成するように構成されることができる。これらは以下に詳説する。DEIシステム1200は、DEI技術に従って、微小角散乱効果を示す画像を表示するように改変することができる。
テーブルTは、花崗岩の表面を有することができ、その上に、モノクロメータータンクMT、コリメーターC3、鉄製の小室IC、及びシャッターアッセンブリーSAを置くことができる。テーブルTは、複数の脚Lを持ち、システム1200を安定化させるために、それぞれ床Fとその下端の間にゴム製パッドRPを有することができる。これらは以下に詳説する。テーブルTは、アナライザー結晶ACを垂直方向に上下に動かすように構成された接線アームTAを備えることができる。
【0061】
図13−16は、本発明の一つの実施形態のX線管XTと足場SC上のモノクロメーター単結晶MCを有するモノクロメータータンクMTの典型的配置の概略図を示す。特に、図13は典型的配置の側面図を示す。図13において、足場SCは、互いに結合する複数の台PLと棒RDを含み、モノクロメータータンクMTに対してX線管XT(XTと表示される穴の中にその一部が固定される。)を固定する。X線管XTとモノクロメータータンクMTは、X線管XTから放射されるX線ビームXBが窓A1を通してモノクロメータータンクMTに入り、モノクロメーター結晶MCの角度受容窓内に入るように、相互に正確に位置する。モノクロメーター結晶MCから回折したX線ビームXBは、窓A2からモノクロメータータンクMTを出る。図13−16中の数字で示される距離の単位は特記しない限りインチである。
図14は、図13で示された典型的配置の上面図である。図14において、X線ビームXBが、X線管XT内の点源Pから広がる扇形を形成することが示されている。
図15と図16は、それぞれ図13と図14で示された典型的配置の別の側面図と別の上面図である。図15と図16は、遮蔽Sを示すために、それぞれ側板と上板のない配置を示す。遮蔽Sは、X線ビームXBが望まない方向へ放射することを防止する機能を持つ。更に、適当な遮蔽は必要に応じて医療用装置内に設けられる。
【0062】
図17−26は、本発明のDEIシステムの典型的部品の写真を示す。特に図17はX線管XTのX線ビームの出口の写真を示す。X線ビームはX線管XTから、Be窓BWを通って放射される。Be窓BWは、X線管XTに取り付けられ、X線ビームを遮るように置かれる。Be窓BWは、二層の内部鉛(Pb)遮蔽PSを備える。
図18は、図17に示すX線管XTのX線ビームの出口の別の写真を示す。この写真において、アルミニウムフィルターAFとコリメーターC1は、X線管XTに取り付けられ、X線ビームを遮るように置かれる。アルミニウムフィルターAFの厚さは約2mmである。コリメーターC1は、タンタル製であり、その厚さは約1/8インチ(即ち、約3.2mm)である。一例として、スリットのサイズは、X線管上のスポットサイズよりも僅かに大きい。一例として、スリットのサイズは1mmであり、X線管上のスポットサイズ0.4mmである。このスリットは、垂直に平行化された扇型ビームを提供する。
図19は、アルミニウム製フィルターAFとコリメーターC1と別のコリメーターC2の写真を示す。この写真において、各部品は図示のために分解されている。これらの部品は組み上げられた状態においては、相互にぴったり適合されている。
【0063】
図20は、X線管XTの端から望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐためのX線管の端の遮蔽蓋S1の写真である。遮蔽蓋S1は約1/8インチ(即ち、約3.2mm)の鉛シートを、X線管XTの端に適合する蓋の形に切断して曲げたものである。図21は、遮蔽蓋S1の写真である。この蓋は、本体から取り外され、X線管XTの端に適合させるために切断されているが、曲げられていない。
図22は、X線管XTの側面から望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐためのX線管XTの端に近い場所に設置された遮蔽S2の別の部分の写真を示す。遮蔽S2は、約1/16インチ(即ち、約1.6mm)の鉛シートを、X線管XTの側面に適合する形に切断して曲げたものである。約1/16インチ(即ち、約1.6mm)の鉛シートは150keVのX線を1/1000に減少させる。
図23は、モノクロメータータンクMTから望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐための鉛遮蔽S3を含むモノクロメータータンクMTの写真を示す。遮蔽S3は、厚さが約1/4インチ(即ち、約6.4mm)の鉛シートであり、X線ビームの望ましい部分を放射するためのスリットSLを含む。X線管から放射されたX線ビームは、遮蔽S3のスリットSLを経由してモノクロメータータンクMTに入る。
図24は、モノクロメータータンクMTから望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐための鉛遮蔽S4を含むモノクロメータータンクMTの写真を示す。
遮蔽S4は、厚さが約1/2インチ(即ち、約12.7mm)の鉛シートであり、X線ビームの望ましい部分を放射するためのスリットSLを含む。X線管から放射されたX線ビームは、遮蔽S4のスリットSLを経由してモノクロメータータンクMTから出る。
【0064】
図25は、互いに作動状態にあるX線管XTとモノクロメータータンクMTの写真を示す。
図26は、モノクロメータータンクMTの内部部品の正面写真を示す。特にモノクロメータータンクMTが示されている。
図27は、本発明の一つの実施形態の典型的DEIシステム2700の上から見た透視図である。図27において、DEIシステム2700は複数のX線ビームXBを生成するタングステン陽極を有するX線管XTを含んでもよい。コリメーターC1は、モノクロメーター結晶MCの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために置かれる。この例において、モノクロメーター結晶MCはシリコン結晶である。コリメーターC2は、アナライザー結晶ACの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために置かれる。
コリメーターC2を通過するX線ビームXBの一部を、銅フィルターFTRにより遮り、熱を遮断し、X線管XTが生成する20keVの制動放射X線を減衰するように構成することができる。与えられたブラッグ角においては、モノクロメーターを通り抜けることのできる望ましくない結晶反射がありうる。一例では、59.13keV[333]反射を選択するために約5.7度のブラッグ角を用いた場合、19.71keV[111]X線を通過させることができる。これらのX線がモノクロメーター結晶MCで回折するならば、これらは画像をぼやけさせ、画像の品質を落とす。銅フィルターFTRは、X線ビームXBから放射されモノクロメーター結晶MCで回折する低エネルギーのX線、特に、19.71keVの制動放射を減衰するために用いられる。
【0065】
アナライザー結晶ACを、銅フィルターFTRを通過するX線ビームXBの少なくとも一部を遮るために置くことができる。更に、対象物の画像を取得するために、対象物を走査台STに載せてX線ビームXBの経路上に置くことができる。対象物Oを走査する間、X線ビームXBは対象物を通過し、アナライザー結晶ACにより分析されることができる。このアナライザー結晶ACは、モノクロメーター結晶MCにマッチするシリコン[333]結晶であってもよい。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは回折し、デジタル検知器DDで遮られる。デジタル検知器DDは、この遮られたX線ビームXBを検知することができ、この遮られたX線ビームXBを表す電気信号を生成する。電気信号はコンピューターCに伝えられ、この信号は分析され、オペレーターに表示される。コンピューターは、吸収画像及び屈折効果を示す画像を生成するように構成されることができる。これらは以下に詳説する。
図28は、本発明の一つの実施形態の典型的モノクロメーター結晶MCの側面図、上面図及び正面図を含む概念図を示す。図28において、モノクロメーター結晶MCの側面図、上面図及び正面図モノクロメーター結晶MCの側面図、上面図及び正面図はそれぞれSV、TV及びFVと表示されている。モノクロメーター結晶MCの寸法は、図中に示されており、その数値は±0.5mmの誤差がありうる。この代わりに、モノクロメーター結晶MCは、画像化用途により部分的に決められる、この他の適当な寸法であってもよい。モノクロメーター結晶MCの表面の向きを、その結晶の大きな表面に平行な格子平面と一致させてもよい。組み立てられたときに、他のより小さな直交表面の向きを参考のために記されてもよい。典型的なモノクロメーター結晶MCは、A型のゲルマニウム[111]モノクロメーター結晶及びA型のシリコン[111]モノクロメーター結晶でありうる。
モノクロメーター結晶MCは、この結晶の上部に、歪を逃がすため切れ込みCを有していてもよい。この切れ込みCの幅は約1/16インチ(即ち、約1.6mm)である。この代わりに、この幅はこの他の適当な寸法であってもよい。切れ込みCは、結晶を取り付けるための部品を除くことができ、アナライザー結晶ACとモノクロメーター結晶MCの残りの部分の歪を無くすることができる。アナライザー結晶ACやモノクロメーター結晶MCの画像化部分に歪やストレスがあると、回折性能を変化させ、システムの性能に悪い影響を与える。
【0066】
画像化の手順とDEI及びDEIシステムを使うための品質管理
本発明のミスマッチ結晶デザインを用いて構成されたDEIシステムを用いて画像を取得することは、まず与えられた実験条件にあわせて、適切なビームエネルギーを選択することから始める。一例として、ビームエネルギーを約10keV〜約60keVの範囲から選択してもよい。ブラッグ則を用いて所望の波長のための適切な角度を計算することにより、画像化のために特定のエネルギーを選択することができる。一例として、選択されたビームエネルギー以外の入射X線ビームの全てのエネルギーを排除するために、モノクロメーター中の第一の結晶を一軸に対して特定の角度に調整することができるようにする。下記の表1は、18keV〜60keVの範囲の画像を得るために、第一のモノクロメーター結晶の典型的な角度を示す。これらの角度は、シリコンについてブラッグ則、λ=2dsin(θ)を用いて計算したこれらの角度は、モノクロメーター結晶MCで回折するX線ビームの入射角(θ)と回折した角度(θ)を規定する。検知器を、選択されたX線ビームエネルギーについて第一の結晶で用いたブラッグ角度の2倍である2θの角度に置く。
【0067】
表1:画像を得るための第一のモノクロメーター結晶のシリコン[333]反射の典型的な角度
【表1】
【0068】
ミスマッチ結晶デザインを用いて構成されたDEIシステムは、注意深く調整されて整列されるべき3つの結晶、モノクロメーター中の2つの結晶、及びアナライザー結晶から成る。例えば、DEIシステム600は、調整と整列ができる、モノクロメーター結晶MC1とMC2及びアナライザー結晶ACを含む。第一の結晶(例えば、図6Aと6Bに示すモノクロメーター結晶MC1)とアナライザー結晶(例えば、図6Aと6Bに示すアナライザー結晶AC)は、各エネルギーについて計算された角度(θ角)に調整される。例えば、システムを25keVに調整するために、第一のモノクロメーター結晶とアナライザー結晶を13.72度にセットすることができる。デジタル検知器アッセンブリーをアナライザー結晶の角度の2倍、即ち27.44度にセットすることができる。
第二の結晶(例えば、図6Aと6Bに示すモノクロメーター結晶MC2)を、chi角度と表示する水平方向に合わせることができる。この水平方向の整列が、これらの結晶間に外れる場合には、画像において左から右へ強度がシフトするかもしれない。二つのイオンチャンバーを用いて、モノクロメーター結晶とアナライザー結晶の両方から放射され、内向き領域と外向き領域に分けられるフラックスを測定することができる。線源からデジタル検知器アッセンブリーへの方向からX線ビームを見ると、内向き領域は右側に、外向き領域は左側になる。複数のロッキングカーブピークが整列していることを確かめるために、これら内向き領域と外向き領域を抽出することができる。整列していない場合には、chi角度を調整することができる。図29は、モノクロメーター結晶の透視図であり、内側領域と外側領域を示し、回転角ChiとThetaを示す。
【0069】
DEIシステムにより注がれる線量は、いくつかの方法により調整することができる。例えば、アルミニウムフィルターの厚さを変更したり、X線ビームの経路上に吸収材を置くことにより、線量を調整することができる。また、第二のモノクロメーター結晶を、そのロッキングカーブのピークから離調することによっても、線量を減少させることができ、必要ならば、回折強度を劇的に減少させることができる。一例において、X線管をシンクロトロンに代えることができ、この場合、第一のモノクロメーター結晶に入射するフラックスをそのシンクロトロンの環状電流により決めることができる。
サンプル取得時間は、段階/秒で測定されたサンプル台の変換速度を用いて、入射フラックスにより決めることができる。この線量を調整することにより、段階/秒で測定された、走査速度を上げたり下げたりすることができる。ノイズ量が一定のところで画像プレートを使用する場合には、走査速度は決定的な因子ではないが、積分デジタル検知器を使用する場合には、ノイズ量が部分的に獲得時間によって定まるため、走査速度を考慮しなければならない。デジタル検知器を使用する場合、可能な限り走査速度が最大になるように、DEIシステムを調整すべきである。
【0070】
一旦DEI又はDEIシステムを適切なエネルギーと線量に調整したら、画像化する対象物をサンプル台の上に載せ、整列させる。一例では、X線ビームの最大幅は120mmであり、これは得られる画像の幅を物理的に制限する。幅が120mm以下のデジタル検知器又は画像プレートを使用する場合、視野が制限されうる。一例では、サンプル台の垂直方向の最大変位が約200mmである。しかし、サンプルの高さには物理的制限は無い。対象物の特定領域を画像化するために、そのシステムにとって、この領域がこの200mm範囲内にあるかどうかを決めなくてはならない。X線ビームの位置を固定してもよく、その場合、対象物の垂直領域は、そのビームに対する対象物の相対的位置によって決めることができる。
DEIシステムで用いられる結晶は、結晶の与えられた領域で光子を回折することができる能力と同様に考えられるが、その結晶の構造は、強度が強められたり弱められたりする副次的な領域があるような構造である。対象物は固定された寸法のビームで走査されるので、画像の垂直方向の寸法にわたって"グリッチ"で汚される。この"グリッチ"はしばしば垂直方向の線に適用されるが、その影響は予期されたものであり、システムの予期された性能と考えられるべきである。
【0071】
システムの性能についての実験
X線管を備えたDEIやDEIシステムを組み立てる前に、X線源としてシンクロトロンを用いて試験目的の実験を行なった。まず、モリブデンとタングステンに基づくX線源を想定した18keVと59keVのX線を用いた画像化時間とフラックスの要求値を計算した。更に、システムの構成に、ピクセルサイズやピクセルあたりの光子数のようないくつかの仮定を設けた。これらの値は、必要に応じて概算することができるので、この例では、5cmの組織(水)を、ピクセルあたり1000の光子数で横切る、100ミクロンのピクセルサイズを用いる。
ピクセルあたりの光子数を、この場合5cmの水である対象物を通過する際の光子の減衰で除して、100ミクロン平方ピクセルに必要な光子数を計算する。
【数14】
この結果、18keVのX線源について、100ミクロン平方ピクセルについてそれぞれ約1.6×105の入射光子が必要である。59keVのX線の減衰は、18keVのX線における場合よりもはるかに小さく、その結果、100ミクロン平方ピクセルについて、2.9×103の入射光子が必要である。
【0072】
線状放射源を用いた、固定角度への入射X線フラックス
DEI及びDEIシステムに使用される結晶光学部品は、高度に選択的な角度ノッチフィルターとして機能し、適切なエネルギー又は角度発散性を持たない光子をX線ビームから除去する。X線管に基づくX線源において、光子はほぼ全ての立体角に放射することが期待される。フラックス要求値を決定するためには、検知器と結晶光学部品によって定まる立体角に基づいて、このフラックスを計算しなければならない。いかなるX線管も多色性エネルギー分布を持ち、結晶システムはブラッグ則で規定される放射線のうちの一つを選択する。完全結晶を用いれば、与えられた反射に対するピークの反射性は1に非常に近いことが期待され、統合された反射率は、ブラッグの通常の方向の固有反射幅又はダーウィン幅に近くなる。ブラッグ[333]反射を有するシリコン結晶を仮定すると、18keVと59keVのダーウィン幅は以下である:
18keV Si[333]ダーウィン幅=2.9×10−6ラジアン、及び
59.3keV Si[333]ダーウィン幅=0.83×10−6ラジアン
結晶格子平面に平行に進むX線はブラッグ平行として知られており、ブラッグ平行方向の角度受容度は結晶では決まらず、検知器の解像度で決まる。画像化されるべき対象物が、X線源から1mの距離にあり、100ミクロン空間解像度が必要とされるならば、ブラッグ平行受容角度は100マイクロラジアンである。ブラッグ平行受容角度が100マイクロラジアンである場合、18keVと59keVのステラジアンあたり必要とされる光子数は以下のとおりである:
【数15】
【0073】
X線管フラックス
X線管に基づくX線源は、そのX線スペクトルに、固有放射線と制動放射の二種の成分を有する。DEI及びDEIシステムに使用される結晶光学部品は、管のターゲットの固有放射線を中心とする極めて狭いエネルギーバンドを一つ選択することが許される。この場合、モリブデンのKα1(17.478keV)とタングステンのKα1(59.319keV)を用いて、各線源の放射線のフラックを決めることができる。
実際の画像化条件下において生成するフラックスを決定するために、複数の電圧と電流におけるモリブデンとタングステンのX線管のモンテカルロシミュレーションを行なった。10kWの電力と75kVの加速電圧を用いたモリブデンターゲットを用いた場合、Kα1に放射されるフラックスは以下のとおりである:
【数16】
50kWの電力と150kVの加速電圧を用いたタングステンターゲットを用いた場合、このKα1放射は以下のとおりである:
【数17】
【0074】
画像取得時間の予測
アナライザーがピーク位置から一定値(80%)離調した場合、屈折コントラストといくつかの減衰コントラストを含む露光を得ることができる。これらの計算は、DEIシステムがモノクロメーター単結晶とアナライザー結晶を有することを仮定している。このシミュレーションの配置は、対象物をビームを通して走査する線状X線源を使用するNational Synchrotron Light Source(NSLS)のX15Aビームライン(Brookhaven National Laboratory, Upton, New York)で用いられた構造に一致する。高さが10cmの対象物と100ミクロンのピクセルサイズ(0.1mm)を用いる場合、1000走査線が必要とされる。
【数18】
10kWの電力と75kVの加速電圧を用いたモリブデンターゲットを用いた場合(約18keV):
【数19】
50kWの電力と150kVの加速電圧を用いたタングステンターゲットを用いた場合(約59.3keV):
【数20】
上記のパラメーターのモリブデンターゲットを用いた場合、最大反射率が80%のロッキングカーブ上の一点における単一画像を得るために必要な時間は約2.2時間である。同じ反射率を用いてタングステンを用いた場合、必要な時間は約4.6分間である。ピクセルあたり必要な光子のような変数や、線源から対象物までの距離を変えることにより、画像化時間を更に減らすことができるかもしれない。
【0075】
線源から対象物までの距離を1000mmにしてブラッグ[333]反射を用いて計算したデータに基づくと、画像取得時間を他の反射や距離を用いて予測することができる。DEIとDEIに使用することのできる結晶反射には、ブラッグ[333]反射とブラッグ[111]反射の二つがある。DEIにおける両方の反射と減衰コントラストの大部分は、角度の変化に対してより大きなコントラストをもたらす急な傾きをもつアナライザー反射カーブの傾きによって決定される。屈折及び減衰コントラストから見た場合、ブラッグ[333]反射はブラッグ[111]反射より優れているかもしれないが、[333]反射からの回折フラックスは[111]反射よりも強度が約1オーダー小さい。図30は、シリコン[111]、[333]、[444]及び[555]の回折面を用いた、NSLS X15A ハッチ中の単色ビーム束を示すグラフである。フラックスが10倍になると、画像化時間を1/10に減らすことができ、用途によっては[111]反射が有利になることもある。ここでは線源から対象物までの距離を1000mmとして計算しているが、線源から対象物までの距離を縮めることによって画像化時間を更に短縮できる。線源から対象物までの光子強度は、1/r2に比例する。線源から対象物までの距離を1000mmから500mmに縮めると、その強度は4倍に増える。線源から対象物までの距離を支配するいくつかの因子があるが、顕著なものとして対象物のサイズが挙げられる。用途によっては必要に応じて、アナライザー/検知器アッセンブリーを線源に近づけたり線源から遠ざけたりすることができる。
【0076】
エネルギーが増加するに従って、アナライザーロッキングカーブの半値幅(FWHM)は小さくなる(例えば、18keVでは3.86マイクロラジアン、60keVでは1.25マイクロラジアン)。エネルギーに対するロッキングカーブの幅の例を表2に示す。表2は、18、30及び60keVにおける[333]アナライザーロッキングカーブのFWHMの測定値及び理論値を示す。[333]ダブル−ブラッグモノクロメーターは、ブラッグピークから離調している。
表2:18、30及び60keVにおける[333]アナライザーロッキングカーブのFWHMの測定値及び理論値
【表2】
FWHMが小さくなると、ロッキングカーブの傾きが大きくなり、更に屈折及び減衰コントラストが大きくなる。図31は、FWHMが小さくなるにつれてロッキングカーブの傾斜が大きくなることを示すグラフである。50kWで計算されたフラックス、ブラッグ[333]反射、及び線源から対象物までの距離1000mm、を用いて、様々な距離や結晶反射について必要とされる画像化時間を予測することができる。この予測を表3に示す。
表3:結晶反射や線源と対象物の距離に基づいて予測される画像化時間
【表3】
【0077】
シンクロトロンに基づくDEIとDEI実験
上記のように、シンクロトロンを用いて、DEIとDEIシステムの実験を行なった。特に、そのために、NSLS X15Aビームラインを利用した。DEI又はDEI画像を作るために、この実験に使用したシンクロトロンX線源を、本願発明のX線源に置き換えることができる。
NSLSにおけるX線リングは2.8GeVシンクロトロンであり、10〜60keVの高フラックスのX線を生成することができる。図32は、本発明の一つの実施形態のシンクロトロンX線ビームを用いたDEIシステム3200の実験装置の概略図である。図32によれば、シンクロトロンから放射されるX線ビームXBは、高度に平行化され、垂直方向の発散は約0.2ミリラジアンである。長さが16.3mのビームラインパイプ(図中に無い)が、実験箱をシンクロトロンX線リングに連結する。高強度の多色性X線ビームXBは、この実験箱に入り、ダブル結晶モノクロメータータンクMTを使用して、単色に変えられる。モノクロメータータンクMTは、両方とも水冷で冷却される2つのモノクロメーター結晶MC1及びMC2(それぞれ幅150mm×幅90mm×高さ10mm)を含む。モノクロメータータンクMTを出るX線ビームXBは単色である。
次に、単色のX線ビームXBはイオンチャンバーICと高速シャッターアッセンブリーSAを通過し、サンプル台アッセンブリ−SSAに進み、幅が120mmで高さが3mmの最大寸法を有する線状X線ビームを生成する。X線ビームの位置は固定され、サンプル台アッセンブリ−SSA上の対象物Oは、ステッパーモーターによって駆動される移行台を用いて、X線ビームの中を移動する。
【0078】
従来のX線写真は、ビームの経路にある対象物Oの背後に直接検知器D1を置き(X線写真用の配置)、アナライザー結晶ACの効果を除くことにより得られた。この配置により得られる画像は、吸収が主なコントラスト機構である従来のX線システムに似ている。しかしシンクロトロンを用いたX線写真は、従来のX線システムにより得られる画像と比べると、より優れたコントラストを有することが示されてきた。ここに提供される実験で得られた従来のX線写真は、DEI画像と比較するために用いられる。
DEI画像は、検知器D2を、計算されたブラッグ角の2倍の角度で、アナライザー結晶ACの後に置いて得られる。18〜60keVの範囲の画像化に用いられる角度をまとめたものは上記の表1に示した。線状X線源を用いると、DEIのためには、検知器を、サンプルの方向とは逆の方向に移動することが必要になり、シンクロトロンを用いたX線写真を撮るためには、検知器を、同じ方向に移動することが必要になる。この実験では、Fuji BAS2500画像プレートリーダーとFuji HR V 画像プレート(Fuji Medical Systems of Stamford, Connecticut)を用いて、DEI画像を得た。このプレートは、厚さが約0.5mmであり、有機バインダーで結合された光刺激性の発光体(BaFBR:Eu2+)で被覆された柔軟性プラスチックプレートで構成される。画像は、解像度が50ミクロンで16ビットグレイレベルで、Fuji BAS2500画像プレートリーダーを用いて走査された。
【0079】
更に、他の実験では、画像プレートを用いた場合には実際的又は可能ではなかった、回折強化計算トモグラフィー(Diffraction Enhanced Computed Tomography)や複合的画像ラジオグラフィー(Multiple Image Radiography)のようなDEI用途を可能にするために、このシステムにデジタル検知器を加えた。使用してもよい典型的な検知器として、50×100mmの活性領域と12ビットアウトプットを有するShad-o-Box 2048 (Rad-icon Imaging Corp of Santa Clara, California)が挙げられる。この検知器は、Gd2O2Sシンチレータースクリーンに直接接触するように配置された、48ミクロンピクセルの1024×2048ピクセルを含むフォトダイオードアレイを利用する。この他の典型的な検知器として、0ミクロンピクセルサイズの120mm×80mmのFOVを有するPhotonic Science VHR-150 X線カメラ(Robersbridge of East Sussex, United Kingdom)が挙げられる。X線写真とDEIの配置の両方において、これら両方の典型的な検知器を画像プレートと同じ方法で据え付けることができる。
ビーム中に対象物を置かずにアナライザー結晶のロッキングカーブを横切って画像を取得すると、固有のロッキングカーブが得られ、それは異なるレベルの分析反射における、モノクロメーター結晶とアナライザー結晶の畳み込みを表す。固有のロッキングカーブは、吸収、屈折、又は微小角散乱によって変わることは無く、これはそれを優れた参考点とすることができる。ビーム中に対象物を置くと、ピクセル×ピクセルに基づいたロッキングカーブにおける変化を、どのX線相互作用が、与えられたピクセルにおいてコントラストを導いているかを決定するための用いることができる。
【0080】
ERA法で用いられるモデルはガウス分布としてこのロッキングカーブをモデルにしており、これは近似であり、このロッキングカーブはモノクロメーター結晶とアナライザー結晶の畳み込みであり、三角形であるからである。このモデルのための式は下記の等式で提供される:
【数21】
式中、μTは線形吸収係数、χsは吸光率、tは対象物の厚さ、θZは屈折角、ωsはガウス散乱分布を表す。
MIRはERA法のより洗練された変法である。MIRは従来のプロセス技術に存在する多くの問題の解決に取り組み、画像コントラスト成分の完全な描写を可能にした。上記のように、MIR法を用いて処理された画像は、吸収及び屈折画像だけでなく、微小角散乱画像を生成することができる。またMIRは、DEI吸収及び屈折画像に存在する本質的誤りを正すことを示し、ノイズに対してより耐性がある。
【0081】
ERA法と同様に、対象物の吸収、屈折、及び微小角散乱を表す画像を生じるために、MIR法もアナライザー結晶ロッキングカーブを利用する。もし、固有ロッキングカーブが基線であるなら、そのカーブ以下の領域が減るような変化は、光子吸収は全体の強度を減少させるので、吸収として理解することができる。純粋に屈折の現象であれば、このロッキングカーブの重心は転移するであろうが、ロッキングカーブの幅は変化しないであろう。微小角散乱に導く相互作用は、ロッキングカーブの角度分布に光子を散乱し、そのカーブを幅広いものにする。光子がロッキングカーブの受容幅外に散乱しないと仮定すると、散乱効果は、そのカーブ以下の領域には影響しないであろう。もしロッキングカーブが本来ガウス曲線であると仮定すると、そのカーブの変動を、存在する散乱の量を表すために用いることができる。
ロッキングカーブの幅は、エネルギーが大きくなるほど小さくなり、この変化を補償するためにサンプリング手順を修正する必要があるかもしれない。ロッキングカーブのFWHMは、エネルギーが18keVのとき3.64マイクロラジアンであり、エネルギーが60keVでは1.11マイクロラジアンに減少する。ロッキングカーブの幅が小さくなるにつれて、屈折コントラストが顕著である角度範囲は小さくなる。これを補償するために、角度サンプリング範囲とその増分は小さくなるかもしれない。60keVの増加した傾斜は、マイクロラジアンあたり大きな強度変化を生じるため、有益である。X線管のようなフラックスが限定されたX線源を用いると、これらの性質は最大化され、与えられたフラックスあたり可能な限り大きな屈折を生じることができる。
【0082】
DEIシステムの安定化
アナライザー結晶を用いて、角度変化を強度に変換することにより、例外的なコントラストが得られるが、この技術は、アナライザー結晶のロッキングカーブ上の位置は時間的に一定であるという仮定に基づく。実際上、この仮定は当てはまらず、この様な狭いロッキングカーブ幅では、アナライザーピーク位置の僅かな変化でも、得られた画像上に顕著な誤差を生み出し得る。DEI見かけ吸収、及び屈折画像、MIR及びMIR-CTのような処理手続き上のアルゴリズムの適用は、高度のシステム安定性を必要とする。乳房組織における吸収、屈折及び散乱パラメーター決定のゴールに到達するには、不安定性を起こさせる諸因子を取り出すために、NSLSX−15Aビームラインの体系的な工学的解析が必要である。
【0083】
この場合のDEIシステムに対する安定性は、長時間にわたり、アナライザー結晶ロッキングカーブのピーク位置を一定に保つ能力と定義されるだろう。もう一度見直すと、多色X線ビームは、モノクロメーターの第1結晶に入射し、これにより、ブラッグ法則を用いて、特定の角度に調節され、単一光子エネルギーが選択される。回折した単色光ビームは、第2のモノクロメーター結晶と出会い、この結晶により、ビームは入射ビームへ平行な方向へ変えられ、アナライザー結晶に向けられる。システムを特定なエネルギーに同調する際、第1のモノクロメーター結晶を最初に合わせ、次ぎに第2の結晶を調節して、ビームの位置を見出す。モノクロメータータンク内は常にヘリウムを流して、タンク内の重要な構成品を急速に酸化させ損傷させるオゾン発生を減少させる。
第2のモノクロメーター結晶を調節しながら、アナライザーを走査して、ビームの位置を結晶上に見出す。ビーム位置を見出すための結晶の揺れ動きは、特定の放送局を見出すためにラジオのダイアルを走査させることに似ており、アナライザーの角度位置が第2のモノクロメーター結晶と完全に合致すると、強度の鋭い立ち上がりが生ずる。一度、アナライザーが合わされると、システムは同調され、直ちに使用できる。
DEIシステムにおいて、ドリフトを起こしうる因子は、3種のカテゴリーに分けられる:振動的、機械的、及び熱的。結晶上の微少な振動さえ微少な角度の変化をもたらすことが出来て、コントラストに変化をもたらすので、DEIシステムの光学的部分は、振動に敏感である。NSLS X−15Aビームラインでは、大きな花崗岩の厚板を用いて、外部環境からの振動を減衰させる。アナライザー後のX線ビームをモニターするためにオシロスコープを用いて測定すると、強度上約2〜3%の振動があり、これは外部駆動のファン及びビームライン上のポンプに起因する。
【0084】
結晶を動かし、試料台及び検出器アセンブリーを移動させるために、複数のモーターを使用した。ピコモーター駆動を、第1モノクロメーター結晶、第2モノクロメーター結晶、及びアナライザー結晶に対して用いて、シータ(θ)角度を調節した。第2モノクロメーター結晶及びアナライザー結晶に対して、第2のピコモーターを用いて、カイ(χ)角度を調節した。これらの駆動モーターにどんな不安定性があっても、システムの調節に大きな偏りをもたらすことが可能で、また機械的ドリフトは、最初DEIシステム不安定性の第1の原因であると当初考えられた。試料台、及び検出器アセンブリーを動かすために用いるモーターは、画像品質に重要であるが、X線ビームの安定性には寄与しない。
システム不安定性に寄与する3番目の因子は、入射X線ビーム及びシステム駆動のモーター及び増幅器で発生する熱による温度である。該システムにおける熱変化は、システム安定性に対して幾らかの影響を持つことは知られてきたが、これが主要な不安定化因子であることは考慮されなかった。熱変化とシステム不安定性の結びつきは、重要な観測が為された時、アナライザーにおけるドリフトが相対的に不変であり、また周期的である時に、明らかとなった。この例では、周期的であるDEIシステムの唯一の変数があり、またそれは、主要X線シャッターの開閉により発生、消失する熱である。
不安定性の原因を見出すために得た実験的検査及び観測により、ドリフトの主要な原因として、シリコン結晶構造の拡張と収縮が指摘された。これらの実験観測の簡単な説明をブラッグ法則(λ=2dsin(θ))を用いて見出すことができる。希望するエネルギーで回折するために、所定の角度に置かれた1結晶を考えると、格子構造の間隔dに如何なる変化があっても、回折したビームの角度が変わり得る。モノクロメーター内のX線ビームにより発生した熱は、シリコン結晶に線膨張係数に従う、膨張を引き起こす、Δd/d = 3x10-6 ΔT (℃)。
【0085】
ブラッグ法則を用いて、dを解くと、次の式が得られる:
【数22】
上式を微分すると、以下の式が得られる。
【数23】
dを代入して、式を立て直すと、
【数24】
が得られ、この式は書き換えられて、
【数25】
となる。Δd/dに対してシリコン線型膨張係数を代入すると、次式が得られる:
【数26】
【0086】
18keV及び40keVに対するブラッグ角度、それぞれ、19.2及び8.4度を用いると、18keVに対して、摂氏1度あたり、1.05マイクロラジアンの角度変化、40keVに対して、摂氏1度につき、0.44マイクロラジアンの角度変化を見ると期待出来であろう。この計算をドリフトの理論的説明と考えると、ビームエネルギーが増加するにつれ、全体的ビームライン安定性は増加し、アナライザードリフトが減少することが分かると期待出来よう。
アナライザーの最初の安定性検査により、このシステムは非常に不安定であり、ピークアナライザー位置での安定性は平均60秒以下であることが分かった。このことは単一画像走査に対しては許容されるかも知れないが、MIR及び全てのCT応用に対しては許容されなかった。起動時から12時間の連続運転の間のアナライザー位置の変化を測定する多重ドリフト評価は、50及び100マイクロラジアンの間であった。システム安定性に対する温度の重要性を認識して、全てのシステム構成品の総合的評価を行い、どの熱源を抑える、又は除去できるか決定した。
大きな温度変化を履歴する一つのシステムはアルミニウムフィルターアセンブリーであり、この機能は、不必要な低エネルギーX線を減らすことである。これらの厚さ0.5mmのアルミニウムシートは、シンクロトロン白色ビームに曝されると急速に加熱し、ビームが切られると急速に冷却する。アルミニウムフィルターアセンブリーが隣接したモノクロメータータンク内の熱感受性の結晶に接近していることから、これが第1の不安定源となった。フィルターにより発生した熱の除去、及びアルミニウムフィルターアセンブリーを熱的に隔離するために、吸熱部が必要となった。図33は、本出願に従うアルミニウムフィルター吸熱部の例を示す画像である。図33については、アルミニウムフィルター挿入口及び、冷却水注入/排出チューブが示されている。
【0087】
アルミニウムフィルターにより発生した熱を熱的に隔離し、この熱を、循環する、高流速冷却水管路に移動させるために、システムに銅フィルターアセンブリーを設置した。また、アルミニウムフィルターサイズを小さくし放射表面積を制限し、また銅吸熱部との接触を増やした。水滴下による冷却したフィルターアセンブリー後に得た安定性検査によると、全体的なシステムドリフトは、約一桁減少し、起動後12時間連続運転ドリフト測定は、平均マイナス6マイクロラジアンであった。
水冷フィルター吸熱器の接続後、全体的システムドリフトの劇的な減少は、アナライザー及びモノクロメーター結晶に対して、等温環境を維持することの重要さを明示した。しかしながら、当業者に対して、他の熱源を変えることにより、さらに熱を減らす効果を持つことができると期待すべきである。各システム構成物、及び外部環境の周期的変化の組織的分析により、熱ドリフトの残された原因を取り出した。
熱を減らすために、実験棚より、増幅器及びコントロールシステムを除くことができる。ドライブモーターもまた除くことが出来であろう。しかしながら、本実験において、試料台及び検出器アセンブリーを制御するモーターを除くことは出来なかった。さらに、棚の扉を閉じることが出来て、一定の周囲の空気温度を維持する助けとなった。アナライザー結晶温度、周囲の空気温度、及び重力冷却水温度の12時間測定の結果、温度の実質的変化は少しも無かった。連続実験により、第2モノクロメーター結晶と直接接触し、またこれにより加熱される、第2のモノクロメーター結晶のアルミニウム台には、顕著な熱変化が生じた。
【0088】
第2モノクロメーター結晶機能は、第1モノクロメーター結晶からの単色光X線ビームを回折して、アナライザー結晶の方向にビームを水平に合わせることである。理論的には、結晶とX線の相互作用は、弾性的であり、熱発生は生じない。このことは、第1モノクロメーター結晶には当てはまらず、高強度、多色シンクロトロン白色ビームが第1結晶の内部構造に吸収される。振動を減らすために、重力ドライブの水冷システムをシステムに組込み、第1モノクロメーター結晶からの過剰な熱を除いた。第2モノクロメーター結晶に対しては、強力な冷却は不要であったが、24時間の間得た温度測定によると、改善が必要であった。
アルミニウム支持板上にサーミスターを置き、一般的な運転期間24時間にわたり、5秒ごとに温度を測定した。図34は、24時間の間サーミスターで測定した温度を示すグラフである。ビームが、作動開始、停止の間に、支持板の温度は、約1.3℃増加した。シンクロトロン貯蔵リングの電流は、時間と共にゆっくり低下し、停止し、再充填され、このことは温度グラフより明白である。12時間の連続運転後、ビームラインを停止し、ベースラインに温度が戻るまでの時間を測定した。データ解析によると、第2結晶でも充分な加熱があり、強力な水冷却のために、支持板を後から取り付けることが正当化される。図34のグラフは、如何に正規のビームライン運転が、結晶温度に影響を与えるかについて、注釈を付ける。この熱不安定性の原因が同定されたので、水流と熱交換の内部導管を備えた銅支持板を用意した。図35は、温度を下げるために、冷却水ラインを備えた、改良した第2モノクロメーターベース及び支持板の見本の俯瞰図の画像である。
【0089】
約2000時間のビームライン運転後、及び性能向上したモノクロメーターを用いて1000時間の運転後、ビームライン安定性の予想できる傾向を測定し、評価した。予想したように、光学系の安定性を維持する圧倒的な因子は温度である。温度の絶対値は、時間に対する温度変化に比べ重要ではない。等温環境が維持出来れば、システムは平衡に達し、モノクロメーター及びアナライザー結晶の両者にほとんど、又は全くドリフトはない。貯蔵リングにおけるリング電流はゆっくりと、だが時間と共に予期できるほど減少するので、NSLSでの画像は独自の問題を示す。第1モノクロメーター結晶への入射X線の強度は、リング電流に比例して低下し、第1結晶の温度は時間とともに低下するであろう。結晶システムに強いフィードバックコントロールがされなければ、第1アナライザー結晶は、時間と共に収縮し、ゆっくりd間隔を変え、回折エネルギーを変える。第1結晶上のブラッグ角度の変化は、第2結晶上のビームの位置を変化させ、第2結晶から放射される回折した単色光光子フラックスを減少させる。このことは、アナライザー結晶上に入射するX線ビームの強度を減少させ、X線ビームの位置を変え、アナライザードリフトをもたらす。
【0090】
アナライザードリフトの効果は、ビームラインの起動時に最もはっきりと示され、起動時には全てのビームライン成分は、X線シャッターが閉まって、少なくとも24時間は室温である。一連の安定性検査により、システムが平衡に達するまでどの位時間を要するかと言う実際的目的を持って、起動後最初の100分内にアナライザーはどの様にドリフトするかテストを行った。X線シャッターを有効にし、アナライザー位置をゼロにリセットした直後にシステムを調節することにより、アナライザーの短時間安定性試験を行った。その後、シータ(θ)増分を0.2マイクロラジアンとして、アナライザーを−10から10マイクロラジアンの範囲で、100秒毎に走査した。その後、各ロッキングカーブを解析して、各ロッキングカーブの重心を決定したが、この重心をピーク位置として記録し、また対応するアナライザー位置に沿って記録する。一度、システムを最初に同調すると、実験が開始され、さらなる同調又は調節は行われない。
他の全てのビームラインパラメータ、及びアルミニウムフィルターを通常の画像化条件の下で用いるレベルにセットして、テストのために2種の光子エネルギー、18keV及び40keVを選択した。より高エネルギーのX線はより低エネルギーのX線よりはるかに透過性があり、またプレモノクロメーターフィルターをより必要とするが、このプレフィルターはフラックスを希望するレベルまで下げ、また多色光シンクロトロン白色ビームに存在する、より低エネルギーのX線を弱める。フィルター量を増すと、X線がモノクロメーターに入る前に吸収量が増加し、従って第1モノクロメーター結晶に負荷される熱量が減少する。フィルターアセンブリーに生ずるX線吸収により発生する熱を除くために水冷吸熱部を付加することにより、結晶はシンクロトロン白色ビームからの弱まった熱効果を受ける。高エネルギーにおいて、摂氏温度あたりの角度変化が減少すること、及びフィルターの増加によりモノクロメーターへの熱負荷が減少することで、ビームエネルギーの増加に比例して、安定性が増加する。
【0091】
ビームラインの起動から行われた安定性実験により、リング電流の減少直後のアナライザードリフトを示すこの効果が明かとなった。強力な入射シンクロトロン白色ビームは、殆ど瞬間的に深く第1モノクロメーター結晶を加熱し、急速に最大温度に達するということを、現在の理論は仮定する。リング電流が時間と共に散逸するに従い、温度はゆっくり下がり、ドリフトをもたらす。最終的には、システムは周囲の空気、システム構成物を加熱し、時間単位あたりのドリフトを引き起こして、安定化する。40keVで、フィルター量を増すと、熱負荷効果を下げ、システムが熱平衡に達するまでの時間を減少させる。ひと度、ビームラインを5〜7時間連続運転行うと、各結晶への熱負荷の効果は、最小化され、ビームラインは極度に安定化し、殆ど又は全くアナライザードリフトが無くなる。
図36〜39は、安定性試験結果のグラフである。特に、図36は、18keVシステム安定性試験のグラフであり、ある時間内のアナライザーピーク位置を示す。図37は、18keVシステム安定性試験時間内のNSLSX線リング電流のグラフである。図38は、40keVシステム安定性試験のグラフであり、ある時間内のアナライザーピーク位置を示す。図39は、40keV安定性試験の時間内のNSLSX線リング電流のグラフである。
この実験結果によると、光学系のドリフトは、光学系の結晶を等温に保つことによりコントロール出来て、正確な加熱システムを用いて一定温度に保つことにより、シンクロトロン及び非シンクロトロンベースのDEIシステムにおいて、実現されている。組織的工学解析により、アナライザー/モノクロメーター不安定性の問題は、基本的制限から小さな苛立ちに減じた。さらに工夫を加えることで、この問題は完全に除かれるかも知れず、全てのコンピューター断層撮影法をベースとしたDEI及びMIR法の全面的な利用を可能にする。
【0092】
DEIのための最適な画像化パラメーターを決定するマンモグラフィーファントムの読み取り機研究解析
上述のように、DEIはX線吸収、屈折及び超微少角散乱(減衰コントラスト)からコントラストを得るラジオグラフィー(放射線画像)技術である。DEIは、X線吸収及び屈折からコントラストを得る同様なラジオグラフィーシステムである。従来のラジオグラフィー技術は、平面及びCT共に、X線が物体を通過する時のX線の減少に基づく画像を作成する。X線吸収は電子密度及び、平均原子数に基づくので、コントラストは、対象物又は患者における減衰差に基づいて得られる。X線光子と物体との相互作用は、入射ビームから除かれた特定の光子数以上の構造的情報を提供することができる。DEIは、X線ビームの経路にシリコンアナライザー結晶を取り込み、これは、極めて素晴らしく感度の高い角度フィルターとして働き、X線屈折及び超微少角散乱の測定を容易にする。名目上の吸収コントラストを有する対象物は、対象物の性質又はその局所的環境により、高い屈折及び超微少角散乱コントラストを有しても良い。
【0093】
乳房組織内の所定の構造は、一般的に、低い吸収コントラストを持ち、特に疾病の初期段階では低い吸収コントラストを有するので、DEIは乳房画像化において、途方もない潜在力を持つことができる。悪性乳房組織のDEI研究により、従来型のマンモグラフィーと比較して、乳癌におけるスピキュレーション(針状体)の可視化の大幅な増加が可能となった。乳房における所定の初期診断構造には、石灰沈着、総量、及びフィブリル(微細繊維)があり、これら全ては、周囲の脂肪細胞、及び腺組織と比べると、かなりの屈折及び散乱痕跡を有する。マンモグラフィーへのDEIの利用を適切に研究するために、独自のシステムパラメーター及び配置を最適化し、乳房画像化に診断的に重要な特徴を検知しなければならない。この研究の不可欠な構成要素は、照射量を減らす可能性を決定する事であり、これは吸収、屈折、超微少角散乱減衰を用いて成就できる。臨床的に有用なマンモグラフィーシステムを設計し、構築するために明記しなければならない、最初のDEI画像化構成要素は、ビームエネルギー、アナライザー結晶反射、及びアナライザー結晶ロッキングカーブ上の位置である。
【0094】
この研究のための実験を、NSLSでX−15Aビームラインを用いて行った。解析されるパラメーターを理解するために、システムの簡単な説明が望ましい。これらの実験のためのX線源は、NSLSのX線リングであり、これは、10から60keVのX線高フラックスを発生できる、2.8GeVシンクロトロンである。ダブルの結晶シリコンモノクロメーターを用いて、入射X線ビームから特定のエネルギーを選んだ。特定の角度を選択するよう同調したシリコンアナライザー結晶を、対象物の背後に置いて、DEI画像を得た。アナライザーは、数十マイクロラジアンのオーダーの解像度を持つ角度フィルターであり、これは、X線屈折及び超微少角散乱の測定に役立つ。反射率曲線上の異なる位置にアナライザーを同調すると、X線分布の不連続な角度を選択出来て、いくつかの位置は、対象物と障害検知に対する有用な情報を提供する。
ブラッグ[111]及びブラッグ[333]反射の様な、DEIで用いることができる、多重結晶反射がある。DEI屈折コントラストは、アナライザー結晶ロッキングカーブの勾配をもって増加し、ブラッグ[333]反射はブラッグ[111]反射よりずっと急な勾配を有する。ブラッグ[333]反射は、より良いコントラストを提供することができるが、入射多色光X線ビームから、ブラッグ[333]反射における結晶により選択されたX線光子の数は、ブラッグ[111]反射による場合より、およそ一桁少ない。これらの反射間の可視化の相対的差異を決定することは、臨床をベースとするDEIシステムを設計する上で重要な因子であることができる。
【0095】
X線管は、陰極/陽極配置を用いて、X線を作ることができるが、出力スペクトル、振幅は、陽極材料、電圧及び電流の関数である。マンモグラフィーシステムとしては、X線ビームを作るために、電圧範囲は28から32kVpで、モリブデンターゲットを持つX線源を含むことができる。この配置は、多色光のエネルギースペクトルの中心が約モリブデンのKα、18keVである、発散型のX線ビームを作る。軟組織を画像化(画像化)するための比較的低エネルギーX線に対して、吸収ベースのX線システムがセットされる。18keVのX線は、軟組織において、大きなコントラストを提供するが、一つの難点は、低エネルギーX線に関わる患者への吸収量の増加である。いくつかの従来型のDEI乳房画像化(画像化)研究は、従来型のマンモグラフィーに比較できるX線エネルギーに基づいてる。これらの技術は、X線吸収を測定する上で潜在的有用性を持つが、屈折と超微少角散乱による付加的DEIコントラスト機構の長所に充分に対応してない。
DEIに利用できる、見かけ上の吸収及び屈折画像の作成を含む、いくつかの画像処理技術がある。他の発展しつつあるDEIベースの画像処理方法は、MIRであり、これはコントラスト構成要素のより正確で、詳しい分離である。MIRを用いた準備的研究によると、この方法は、低い光子計数レベルで操作可能であり、また従来型のX線源の使用可能性を持つ。DEIで作業するいくつかのグループは、DEI方法をCTに適用する過程にあり、これは、CTの空間解像度にDEIの追加的なコントラスト機構を組み合わせものである。この研究は平面画像化に焦点を合わせているが、平面画像化(画像化)に対するシステムパラメーターは、またシンクロトロン及び非シンクロトロンベース両者のCT応用に適用できる。
【0096】
本明細書で記載する実験には、標準的マンモグラフィーファントムの画像化の間で得たパラメーターの注意深い変化が含まれる。研究のために得た画像は、二次的な画像処理を行わずに、各システム配置で得た生の画像データを表わす。専門家読者は、理想的DEIマンモグラフィーユニットの仕様に役立つために、全ての実験条件下での既知のファントム特性の可視化を記録する。
工学的及び医学的両者の観点から、最も重要なシステムパラメーターの一つは、ビームエネルギーである。DEIにおいて、構造的可視化がエネルギーの関数として変化することの理解を得るために、研究のために以下のエネルギーを選択した:18keV、25keV,30keV、及び40keV。入射シンクロトロンビームより所望のエネルギーを選択するために、所望の波長に対して、モノクロメーターを適切なブラッグ角度に調節した。
診断的に価値のある情報を得るために、解析の間、アナライザー結晶ロッキングカーブを横切って3個の代表点を用いても良い。各ビームエネルギー/結晶反射組合せに対して、−1/2ダーウィン幅 (DW)、ピーク、及び+1/2DW位置を選択した。比較のために、対応するシンクロトロンラジオグラフを得た。
【0097】
標準化した乳房画像化ファントムをこの実験で用いて、乳房組織と乳癌の構造的特性をシミュレートした。最初の試みでは、実際の乳房組織試料を用いたが、生物組織に存在するばらつき、及び悪性特性の主観的評価のために、この研究ではファントムの使用がより適切であった。本明細書で既述する対象に合致したDEIシステムは、多くのメカニズムに基づくコントラストを得ることができるので、それぞれに従う特徴でファントムを選んだ。本実験では、ルーサイト(Lucite)から作られ、一連の様々な直径と深さの円形の窪みが表面に機械加工された精細なコントラスト(CD)ファントム(the Sunnybrook and Women's Research Institute at Tront, Ontario, Canadaから得られる)が選択された。直径と深さのばらつきは、コントラストと空間解像度を評価する上で有用な傾斜を作り出す。より深い窪みは、減衰における増分をもたらし、従って、コントラストを上げた。窪みの円形の端はX線屈折に対し導電性の界面を提供する。既知の半径と高さを用いて、各シリンダーの容積は計算出来て、全可視化容積を決める。
図40A〜40C及び41A〜41Cはそれぞれ18keV及び30keVで得たCDファントムの画像例である。特に、図40A〜40Cは、それぞれ、18keVシンクロトロンラジオグラフ画像、+1/2ダーウィン幅(DW)アナライザー結晶位置での18keV DEI画像、及びピークアナライザー結晶位置で得た18keV DEI画像を示す。DEI例に用いた結晶反射はブラッグ[333]反射である。
【0098】
図41A〜41Cは、それぞれ、30keVシンクロトロンラジオグラフの画像(画像)、−1/2ダーウィン幅(DW)アナライザー結晶位置で得た30keV DEI画像、ピークアナライザー結晶位置で得た30keV DEI画像(画像)を示す。DEI例に用いた結晶反射はブラッグ[333]反射である。18keVシンクロトロンラジオグラフと比べて、30keVシンクロトロンラジオグラフにおいて、コントラストは減少する。
実験には第2のファントムを用いた。第2のファントムは、デジタルマンモグラフィーシステムをテストするための国際デジタルマンモグラフィー開発グループ(IDMDG)のために設計された。具体的には、このファントムは、デジタルマンモグラフィーメージングスクリーニングトライアル(DMIST)のために開発され、またMISTY(the Sunnybrook and Women's Research Instituteより入手可能)として知られている。MISTYファントムは、マンモグラ画像品質を定量する為に用いることができる様々な領域を含む。構造的には、このファントムは、システムコントラストと分解能を定量するために用いることができる、いくつかの高分解能詳細図を含む水銀で強化されたオーバーレイ(上層)を備えた、ポリメチルメタクリル酸塩(PMMA)からなる。
【0099】
MISTYファントムの3種の領域を実験に用いるために選択した。図42A〜42Cは、30keV、ブラッグ[333]、ピークアナライザー結晶位置における、MISTYファントムの3種の異なる領域の画像である。特に、図42Aは、一連の線対のクラスター(集合)の画像であり、各クラスターは4本の線を含み、その線間の距離は減少して最早解像が出来なくなるまでである。
図42Bは、一連の星印クラスターの画像であり、これは乳房組織の分類をシミュレートする。各クラスターが6個の星印を含む、7個のクラスターの列が用いられ、各星印のクラスターは1個の星印を欠いた点として持つ。解像度及びコントラストが低下するに従い、星印は可視的でなくなり、スペック(小さな染み)として見える。この実験において、逆転すると石灰沈着シミュレーションとして使用される。
図42Cはステップウェッジ(階段光学くさび、stepwedge)の画像である。このステップウェッジは吸収コントラストを測定するために用いられる。ステップウェッジは6ウェルの定義済みの界面を含む。
【0100】
この実験において、DEI画像は、Fuji BAS2500 Image Plate Reader 及び Fuji HR V画像プレートを用いて得た。上記のように、画像プレートは弾力性のあるプラスティックシートであり、厚さは約0.5mmであり、有機性の結合剤と組み合わせた光刺激性蛍光物質で被覆されている。さらに、全ての画像は、50μmピクセルサイズ及び16−ビット階調を用いて走査した。画像獲得のために用いられた表面線量は、エネルギーに基づいて変わるが、各エネルギー設定において、ラジオグラフ及びDEI画像の両者に対して、同一表面線量を用いた。30kevでの画像獲得には表面線量3.0mGyが用いられ、25kevでの画像獲得には1.5mGy,40keVでの画像獲得には0.2mGyが用いられた。
本実験において、2台の研究読み取り機(study reader)がCD及びMISTYファントム画像結果を解析するために用いられた。多くのDEI配置間の劇的な差異を組み合わせて標準化したファントムを用いた結果、適切なレベルの統計検出力を達成するために、2台の読み取り機で十分であることが分かった。1人の乳房画像専門家及び1人の医療物理学者が研究に参加した。可視化環境を最適にするために、読み取り機研究は、ピーク輝度500cd/m2を備えた、5メガピクセルCRTモニターを用いて、特別に設計された暗室で行われた。読み取り機には各画像に対して階調を合わさせ、また最大可視化のために拡大鏡を用意した。
【0101】
障害の周辺全体を可視化できることは、マンモグラフィーにおいて、診断上の重要性を持ち、その1例は、良く制限された境界を備えた良性繊維腺腫、及び境界は明確にされておらず、針状体(スピキュレーション)を持つあるいは持たない、潜在的に悪性腫瘍塊の間の差異である。さらに、石灰沈着及びその形態の可視化は、内在する病理学への洞察を提供することができる。診断上の応用を臨床マンモグラフィーに反映する議論は、読み取り機研究設計に不可欠であり、適切なところでは、仕事を明確な信頼レベルに分ける。
どの因子が最高の性能を与えるかを決定するために、読み取り機により用いられる8個の性能測定を確立した:
1.CDファントムにおいて、外周全体を可視化できる円形の容積;
2.CDファントムにおいて、少なくとも半分の外周が可視化される円形の容積;
3.CDファントムにおいて、外周のどの部分も可視化される円形の容積;
4.MISTYファントムにおいて、観測される線対群の数;
5.MISTYファントムの石灰沈着シミュレーションにおいて可視される星印の数;
6.MISTYファントムの石灰沈着シミュレーションにおいて見える全ての点を備えた最後のクラスター数;
7.MISTYファントムの石灰沈着シミュレーションにおいて見えるスペック(小さな染み)の数;及び
8.MISTYファントムのステップウェッジのはっきりと特徴付けられた区分数。
【0102】
画像におけるデータを体系化しやすくするために、対応する遂行課題を持つ各ファントムのグラフ表示を各読み取り機に用意し、画像を記録した。CDファントムに対しては、読み取り機には、画像の各行及び列において、どの円形が可視できるか示すことが求められた。MISTYファントム線対領域を評価するために、読み取り機には、全ての4本線がはっきりと可視される最高のクラスターを示すよう求められた。石灰沈着シミュレーションの記録には、先ず、可視できる全星印数の計数が含まれ、次ぎに、可能な29点の中、各クラスター内に見える星印点の数の計数が含まれた。さらに、読み取り機には、可視できる全てのスペック(小さな染み)数の計数が求められた。興味あるステップウェッジ領域に対して、読み取り機には、6個の境界面の中どれが最もはっきりと可視されるかマークすることが求められた。画像提出の順番は、記録のために、各読み取りに対して、無作為にされた。
ばらつきの多元解析を用いて、全て8個の結果に合わせた。解析には、ビームエネルギー、結晶反射、カーブ位置、及び読み取り機の全ての相互作用が含まれた。BoXCox変換をいくつかの結果に適用して、正規性の仮定の有効性を検証した。全ての因子を比較する際多くの結果を考慮したので、ボンフェローニ(Bonferroni)テストを用いて、有意性レベルとして0.05/8(0.00625)をセットすることで、全体的Type I誤差を調節した。この有意性レベルにおいて、全ての因子の組合せにおいて、性能の差異を比較するために、トゥキイ(Tukey)テストを用いた。
【0103】
CDファントム結果
外周のどの部分も可視可能である円形の容積に対し、2台の読み取り機間で有意な差異は無く(p値=0.0185)、また異なるエネルギー間でも差異は無かった(p値=0.0176)。しかしながら、該円形容積に対し、結晶反射及びロッキングカーブ位置の両者、並びにこれらの相互作用は有意であった(全3部門のp値<0.001)。ターキーテスト解析によると、ブラッグ[333]反射では、より大きな容積が見られる。ラジオグラフは、最低の可視容積を持ち、また−1/2DW,+1/2DW,及びピークアナライザー結晶位置の間には殆ど差がなかった。
結論が少なくとも半分の外周が可視可能である円形の容積に及ぶ時、全ての因子の主要な効果は、p値が0.001以下であり、有意である。トゥキイテスト解析によると、25keVは最善の結果をもたらし、25keV及び30keVの両者は、18keV及び40keVよりもより可視可能な容積を作り出した。このデータによると、結晶反射とアナライザー位置の間には有意な相互作用がある(p値<0.001)。ブラッグ[333]反射とピークアナライザー位置の組合せは、最大の可視可能な容積を作り出すが、ブラッグ[333]、+1/2DW及びブラッグ[333]、−1/2DW位置の組合せより良く機能したことを支持する証拠はない。シンクロトロンラジオグラフは、最低の可視領域を作り出した。
外周全体が可視可能である円形の容積に対して、ただ、読み取り機の主要な効果、ビームエネルギー、及びロッキングカーブ位置が、それぞれ、p値が、<0.001、=0.002、<0.001で、有意である。トゥキイテスト解析によると、ビームエネルギーの全てのレベルについて差異は無いが、データの傾向としては、25keVは30keVより良く機能し、後者は、40keV及び18keVより良く機能した。他の実績測定については、シンクロトロンラジオグラフは最小の可視可能な容積を作り出した。
【0104】
MISTYファントム
線対群の解析により、ビームエネルギー、結晶反射、及びアナライザーロッキングカーブ位置の主要な効果は、全てp値が0.001以下であり、有意である。さらに、結晶反射とロッキングカーブ位置野間には、有意な相互作用があるようである(p値<0.001)。このデータより、ピークアナライザー位置における18keV、ブラッグ[333]、の組合せは、ピーク又は+1/2DWアナライザー位置における25keV、ブラッグ[333]の組合せは、よく機能したことがわかる。線対領域に対する最善の成績は、ロッキングカーブ位置+1/2DWにおける、30keV、ブラッグ[333]である。
高度に平行化されたX線ビームを備えたシステムにおいて、発散X線のために設計されたファントムを用いて作成した星印クラスター画像の多くには、アーティファクトが存在した。完全を期すため、及び従来型のファントム全体としての構造設計が、可視化にどの様に影響するかを実証するために、データを示した。可視化した星印数の解析によると、ビームエネルギーだけが、p値=0.0026で、有意である。テスト結果によると、25keVが最善の選択であるが、30keVと有意に差がない。全ポイントが見える最後のクラスター番号については、どの因子も有意ではない。見えるスペックの数からのデータによると、最善の組合せは、18keVとブラッグ[111]、18keVとブラッグ[333]、並びに30keVとブラッグ[111]又は [333]反射のいずれかである。
【0105】
ステップウェッジ領域に対し、ビームエネルギーの差異レベル及び異なるロッキングカーブ位置の間に有意な差異が在るようである。データによると、18keV、25keV、及び30keVのビームエネルギーは、ほぼ等価であるが、これら全ては40keVで得た画像より良く機能する。ロッキングカーブ位置の性能への効果は、−1/2DW、ピーク及び+1/2DWの位置は等価であり、またシンクロトロンラジオグラフの性能と等しい。
全ての性能測定の解析によると、最適なDEIシステム配置は、−1/2DW又はピークアナライザー結晶位置におけるブラッグ[333]反射を用いて、25又は30keVである。表4〜6は、読み取り機研究データのまとめを示す。具体的には、表4は、X線ビームエネルギーに関する読み取り研究データのまとめを示す。表5は、結晶反射に関する読み取り機研究データのまとめを示す。以下の表6は、ロッキングカーブ位置に従ってグループ化された読み取り機研究のまとめを示す。
【0106】
表4:X線ビームエネルギーに関する読み取り研究データのまとめ
【表4】
【0107】
表5:結晶反射に関する読み取り機研究データのまとめ
【表5】
【0108】
表6:ロックカーブ位置に従ってグループ化された読み取り機研究のまとめ
【表6】
【0109】
ビームエネルギーに関して、両ファントムに対する読み取り機研究データによると、18keV以上のエネルギーが、DEIに対して最適である。吸収コントラストは1/E3に従い減少するので、従来型X線システムでは、エネルギーが増加するに伴い、軟組織吸収コントラストは、急速に減少する。読み取り機研究データによると、より高いビームエネルギーでは、吸収からの情報の損失は、DEI特異的コントラストからの情報により補償される。最初屈折性であった構造に対して、DEI感受性は1/Eに比例し、40keV又はそれ以上のエネルギーにおいて、軟組織の画像獲得の潜在力を持つ。消滅に寄与する散乱光の拒絶は、エネルギー非依存的であるが、散乱強度は、エネルギーが増加するに従い減少する。乳房組織における最も重要となる診断上の構造は、顕著な屈折性及び散乱特性を持つことと信じられているので、より高エネルギーでの画像化は、吸収から離れて、屈折及び超微少角散乱コントラストに焦点を合わせることにより促進されるであろう。
ブラッグ[333]反射に対して可視化が増加することは、特により高い性能レベルのCDファントムで明白である。ブラッグ[333]反射は大多数の性能測定において優れているが、この反射と、ブラッグ[111]との間の差異は期待以下である。このことは、線フラックスを工学的に考慮すると、ブラッグ[111]反射が容認可能であることを示すかも知れないが、より可能性のある説明は、ファントムの設計が、X線屈折及び消滅に基づくコントラスト機構を測定するには不適当であると言うことである。
【0110】
ピークアナライザー位置が、大多数の性能測定において優れている、アナライザー結晶位置に対して同じ理由付けが適用できるであろう。逸脱しない光子の強度が最大の時、(これがアナライザーロッキングカーブのピークであるが)、吸収コントラスト及び解像度は、最高となる。ロッキングカーブの尾の方向に散乱光子が、除去される構造において、消滅効果はピーク位置でまた役割を果たし、余分のコントラストをもたらす。これらのファントムは、X線吸収に基づく画像化システムをテストするために設計されたので、ピーク位置は、この種の研究で最善に機能するであると期待される。屈折コントラストは、ロッキングカーブのピークでは存在せず、また一般的に、−1/2DW及び+1/2DWの性能と等しい又は減少することは、非常に屈折性であるファントムに構造が不在であることを示す。
本研究は、画像品質に対して各システム構成要素が持つ効果への洞察を得るために設計され、最も有用である画像処理方法に付いてではない。画像化の全パラメーター空間を狭くする第一歩として、各配置について生のデータの解析が、見かけ上の吸収及び屈折画像を作り出すためにDEI画像対を処理するよりも、より適切である。
最も勇気づける結果の一つは、より高いエネルギーのX線−潜在的には40keVの高さ−を用いることができる能力である。より高いエネルギーでの光電効果の急速な減少は、患者に吸収された光子の数が減ることに対応し、結果的に、劇的に放射線量を減らす。検出器に到達する同数の光子(107ph/cm2)に対して、18keVにおいて5cmの水を通す表面吸収線量は、3.3mGyであり、30keVにおいては0.045mGy及び40keVでは、0.016mGyである。このことは、18keVと比較して30keVでは73倍の減少、及び40keVでは206倍の減少を表す。吸収は組織の厚さと共に増加するので、この線量の減少はより厚い試料に対してはさらに大きい。
【0111】
多重画像ラジオグラフィーを用いた乳癌コントラスト機構の解析
DEI及びMIR技術を用いた乳房画像研究は、従来型のマンモグラフィーと比較して可視化の点で進歩を示した。特に、乳癌フィブリルの内在するコントラスト機構を解析するために、DEI技術を用いた研究は、X線消滅が画像コントラストにおいて大きな役割をすることを示した。さらに、乳癌スピキュレーション(針状体)の研究は、対応するラジオグラフと比較すると、DEIピーク画像が8から33倍増加することを示した。MIRは、対象物の超微少角散乱を表す画像を加えることで、より完全で、厳密なこれらの特性の評価を可能にした。
本研究は、X線源の使用可能なエネルギー範囲の拡張及びX線吸収の必要の低下又は除去に対処する。軟組織における吸収コントラストは光子エネルギーが増加すると急激に減少するので、乳房組織における内在するX線コントラスト機構は、非シンクロトロンベースのDEIシステムでは、危機的になる。より高エネルギーX線の使用は、検出器に達する入射光子の数を増加することにより、DEIシステムの効率を上げ、またX線吸収の減少は、表面及び吸収した放射線量を低下させる。しかしながら、もし乳房組織可視化において、吸収が主要となるコントラスト機構であるならば、どのDEIシステムも従来型のX線システムと同様の範囲のより低いエネルギーのX線を用いるかも知れない。この実験は、さらに18keVと60keVでのシステムの特性を比較する。
【0112】
乳房組織における、エネルギー依存性の吸収、回折、及び散乱を評価するために、固有の特徴を持つ4種の乳房組織資料を多くのX線エネルギーで画像化し、MIRを使って処理し、個々のコントラスト構成要素を分離した。研究に用いたエネルギー領域は、従来型のモリブデン及びタングステンX線管を用いたエネルギー、それぞれ18keV及び60keV、に基づいて定めた。25keV、30keV、40keV、及び50keVのビームエネルギーを選択し、各MIRコントラスト機構に対して、密着してコントラストの減少を追跡した。
一つの実験において、NSLS X-15Aビームラインでの画像化に3個の乳癌試料を選んだ。MIR画像セット及びシンクロトロンラジオグラフは、NSLSでのX−15Aビームラインを用いて得た。画像取得には、Photonic Science VHR-150 X線カメラを用いて、120mmx80mmのFOV及び30micron pixelサイズで得た。
X線屈折及び散乱に関して、光電効果の急激な減少は一定表面線量を維持することを困難な課題としている。例えば、18keVでのX線吸収に対して最適化した表面線量を用いて得た画像は、光子吸収の減少により、60keVのようなより高いビームエネルギーでは、ひどく露出過度になるであろう。MIR画像化に用いるエネルギー範囲の中間、40keV、モノクロメーターを調節することにより、また平均的露出にするための表面線量を検出器の動作範囲のおよそ中間に選択することで、バランスを見出した。18keV、25keV、30keV及び40keVのMIR及びラジオグラフ画像に対し表面線量350mradを選択した。湾曲した磁場X線源からのこれらのエネルギーの光子フラックスが急激に減少するので、50keV及び60keVで用いた表面線量は、50keVでは20mradまた60keVでは4mradと減少した。アナライザー結晶ロッキングカーブの半値幅(FWHM)はエネルギーの増加に伴い減少する。
ロッキングカーブの肩で、屈折コントラストは優勢となり、各エネルギーに対するサンプリングパラメーターの僅かな修正を必要とする。ロッキングカーブ幅に無関係に各MIRセットに対して、21画像を得た、また高エネルギーでは、FWHMの減少を補正するために、角度範囲及びシ−タ(θ)増分を減らした。図43は、異なるエネルギーに対する、乳房における吸収、インコヒーレントな散乱及びコヒーレントな散乱の寄与率を示すグラフである。
【0113】
NSLSでの画像に対して、4種の乳房試料を選択した。18keV及び25keVで得たMIR画像を、各0.5マイクロラジアン毎にサンプリングして、ピークより−5から5マイクロラジアンの範囲で得た。30keV及び40keVでは、θ角度増分が0.4ミクロラジアンで、MIR画像のサンプリング範囲は、±4マイクロラジアンに減少した。50keVでは、角度幅±3ミクロラジアン、θ角度増分0.3マイクロラジアンを用い、また60keVでのMIR画像には角度幅±2マイクロラジアン、θ角度増分0.2マイクロラジアンを用いた。各エネルギー及び線量に対して、対応するシンクロトロンラジオグラフを得た。さらに、乳房試料を、General Electric Senographe 2000D (General Electric Company of Fairfield, Connecticutより取得可能)を用いて画像化した。各エネルギーで、1枚の画像のために用いた線量は、熱ルミネッセンス検出器を用いて、平均乳腺線量、試料を通しての分布、及び画像生成に必要なフラックスを測定した。
従来技術と比較するため、図44は、従来型のラジオグラフィーシステム上の乳房試料例の画像である。この試料は、GE Senographe 2000Dを用いて、100micron pixel分解能で、空気中で画像化したものである。図45A〜45Fは、本明細書に記載した対象物に従った技術を用いて、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのビームエネルギーにおける同一試料のシンクロトロンラジオグラフである。これらの画像は、NSLSでの画像に対して用いたと比較しうる圧縮度で、空気中で得た。
【0114】
図46A〜46Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房試料の画像である。特に、図46Aは、サンプリングパラメーター±5ミクロラジアン、θ角度増分0.5ミクロラジアンで、18keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Bは、サンプリングパラメーター±5ミクロラジアン、θ角度増分0.5ミクロラジアンで、25keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Cは、サンプリングパラメーター±4ミクロラジアン、θ角度増分0.4ミクロラジアンで、30keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Dは、サンプリングパラメーター±4ミクロラジアン、θ角度増分0.4ミクロラジアンで、40keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Eは、サンプリングパラメーター±3ミクロラジアン、θ角度増分0.3ミクロラジアンで、50keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Fは、サンプリングパラメーター±2ミクロラジアン、θ角度増分0.2ミクロラジアンで、60keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。
【0115】
平均乳腺線量及び分布を熱ルミネッセンス検出器を用いて測定した。図47A〜47Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのビームエネルギーでの平均乳腺線量及び分布を示すグラフである。
図48は、本明細書に記載した対象物に従い、MIRの為に使用したエネルギーに対する、X線ビームエネルギーを示すグラフである。各エネルギーに対して求めた線量計データを用いて、各ラジオグラフ及びMIRセットの構成要素を得るために用いたフラックスを計算し、図に示した。
上記の実験は、MIRを用いる乳房画像化は如何に広いエネルギー領域で機能するかと言うことを示す。吸収だけを考えると、40keV又はそれ以上のエネルギーで殆ど吸収コントラストが無いように、エネルギーが増すと、軟組織のコントラストは劇的に減少することが予想されるであろう。各エネルギーにおけるシンクロトロンラジオグラフは、コントラストの減少を示し、特に60keVにおいて、軟組織では実質的にゼロ吸収コントラストである。
モリブデン源を用いた従来型のX線管に基づく画像取得時間は、臨床的画像化に対して必要な時間窓をはるかに超えて、10,000秒ほどの長さである。モリブデンX線管は固定した陽極を持ち、これは熱散逸を制限し、また単位時間に発生できるフラックス上に深刻な工学的制限を置く。タングステンX線管は、大きな、回転陽極を持ち、ずっと高電圧及び高電流に堪えられる。タングステンX線管は、フラックス及び熱散逸において、多くの長所を有するが、タンクステンにより発生した固有X線は、軟組織において吸収コントラストを生成するには高過ぎる。しかしながら、この実験によると、屈折と散乱のMIR特異的コントラスト機構は、X線吸収の必要無しに優れた軟組織コントラストを生成することが分かる。
【0116】
高エネルギーでの光子の減少は、線量分布曲線からも明らかであり、18keVと60keVの分布間で大きな差異がある。18keVでは、組織での吸収により、フラックスの大きな低下がある。このフラックスの低下は、エネルギー増加と共に減少し、50keV及び60keVにおいて、光子は最高に透過する。吸収の減少は、効率の増加に変わり、このことは図48に示すフラックス測定で明らかである。
実験に対して、適合アルゴリズムを校正するために、既知の直径及び屈折率の多数のナイロン単一フィラメントファイバー及びルーサイト桿体を解析のために選んだ。乳癌針状体の直径及び幾何学構造を近似するためにより小さなナイロンファイバーを選んだ。40keVX線ビームエネルギー及び350mrad表面線量を用いて、各試料及び対応するシンクロトロンラジオグラフが捕捉された。MIRに対しては、±4マイクロラジアンの角度分布及び0.4マイクロラジアンのθ増分を選んで、21画像を作成した。これらの画像を、MIR法を用いて処理して、X線吸収、屈折及び散乱から作られたコントラストを表す画像を作り出した。
【0117】
2次元画像から3次元情報を抽出することは、不均一対象物(対象物)に対して特に、重要な課題を提示する。乳癌針状体は、自然では円筒形であり、これは、これらの材料特性に関して近似的に作られることを許可する。乳癌針状体についての情報を抽出するために、解析方法を設計し、また校正することが、先ず必要である。適切なMIRベースの解析方法を用いて、ナイロン及びルーサイトファイバー、及び乳癌針状体の直径及び屈折率を測定した。これら2種の重要な特性と共に、ファイバー及び針状体の多くの他の側面が解析出来て、またモデル化できる。MIR画像には、3種類のコントラスト構成要素があるが、臨床的画像化システムにとって、屈折画像が最も重要でありそうである。もしより高いエネルギーX線が画像化に用いられるならば、屈折画像と比較して、吸収画像の質は悪いだろう。ロッキングカーブの尾において、フラックスは主に減少するので、散乱画像もまた、屈折画像に比べると二次的役割のままであろう。多くの乳癌試料を横切る屈折率の計算及び比較によって、屈折コントラストを生成する材料特性は、矛盾が無く、異常ではないと言うことが、ある程度保証され得る。
【0118】
方法の校正は、様々な直径のナイロン及びルーサイトファイバーを用いて行われた。直径200ミクロン、360ミクロン及び560ミクロンのナイロンファイバーをMIRを用いて、40keVで、サンプリング範囲−4から4マイクロラジアン、及びθ増分0.4ミクロラジアンで、画像化した。臨床的に重要な針状体の、幾何学構造及び直径を近似するためにこれらのファイバーを選んだ。直径13,000ミクロン及び19,000ミクロンのより大きなルーサイト桿体は、より大きな直径の対象物に対するアルゴリズムを評価するために選んだ。図49は、MIRを用いたファイバー直径の見積りを示す画像である。ナイロンファイバーは弱い吸収性があり、従って、DEI及びMIRコントラストを評価するための完全なファントム材料である。図49におけるファントムは、減少する直径のナイロンファイバーを用いて、MIR及びDEIのコントラストと及び解像能を測定するために設計した。直径が小さい程、画像課題はより困難である。
ナイロンファイバー及び乳癌針状体のような円筒型対象物は、ナイロンファイバー屈折プロフィールを示すグラフである、図50に示すような特徴的屈折プロフィールを示す。屈折は桿体の端で最大であり、中間でゼロであろう。対象物を円筒型と仮定すると、MIR又はDEI屈折画像から屈折痕跡を用いて、直径に外挿することができる。既知の直径の円筒について、ファイバー又はフィブリル(微細繊維)の屈折係数が外挿できる。
【0119】
以下の表7及び8はナイロン及びルーサイト直径及び屈折係数情報を含む。
表7:MIR直径の校正
【表7】
【0120】
表8:MIR屈折係数の校正
【表8】
【0121】
図51は、直径校正に合うMIR屈折を示すグラフである。既知の大きさのフィブリル(微細繊維)は画像化された、また屈折係数及び直径を計算するために、あるアルゴリズムが用いられた。乳癌に見られる針状体は、ナイロンファイバーに類似した性質を持つという理由で、システムキャリブレーションにナイロンファントムが使われた。
この実験において、ナイロン及びルーサイトファイバーに対して直径及び屈折係数を抽出する為に用いられた同じ方法を、3個の分離した乳癌試料中の興味ある5個の領域に適用した。図52A〜52Cは、乳癌試料のMIR屈折画像である。以下の表9は、計算した針状体直径及び屈折係数を示す。
【0122】
表9:フィブリル屈折係数
【表9】
【0123】
図53は、本明細書に記載した対象物に従いDEIシステムにより得た局所化した乳癌塊及び針状体のMIRセットの画像である。
図54A〜54E従来型のラジオグラフと比較したDEIによるフィブリルの可視化を示す画像である。特に、図54Aは、浸潤性の小葉癌を含む乳房組織の従来型ラジオグラフの画像である。試料は組織学的評価を受け、1cm白箱中のフィブリルは、腫瘍の表面から広がる腫瘍の指に相当すると確認された。図54Bは、図54Aの1cm白箱により示された領域の拡大図を示す、従来型のラジオグラフ画像である。図54C〜54Eは、図54Aの1cm白箱により示された領域の拡大図を示す、DEI画像である。領域のこれらの拡大図において、従来型のラジオグラフよりDEI画像において組織コントラストは高いことは明らかであり、DEI画像では、当該構造はかろうじて見ることができる。
DEIの改善されたコントラストを定量するために、フィブリルのコントラストを、図54B〜54Eに垂直白線に示す画像プロフィールに沿っての計算により測定した。組織試料の他の領域に対しても計算を繰り返した。統計解析によると、DEI屈折画像は、従来型ラジオグラフより8〜14倍大きなコントラストを持ち、一方ピーク画像は、ラジオグラフより12〜33倍大きなコントラストを持った。
【0124】
X線屈折及び散乱画像化に内在する物理は、吸収に基づく画像化の100プラス年の歴史に比較すると、なお研究の初期段階にある。生物組織に特有の不均一性が与えられると、およそ円筒型の乳癌星印状体の解析により、信頼性を持って多くの組織標本と比較できる診断的に有用な特徴が提供される。
空気中で画像化した多数の標準化した均一円筒を用いると、屈折ベースの合わせアルゴルズムの正確な校正が可能となる。生物組織の解析のためにこのアルゴリズムを用いると、生物組織の不均一な性質により、計算にエラーが入り込む可能性があるが、乳房組織の特性及び診断への応用は、絶対計算におけるこの種のエラーの重要性を減ずる。
従来型のマンモグラフィーにおける基本的な問題は、脂肪細胞という非常に高い吸収バックグラウンドに漬けられた低コントラスト対象物を可視化する上での困難さである。腫瘍性病変は時間と共に、大きさも密度も増加し、最終的には、十分大きく、高い密度になり、バックグラウンドを超えて盛り上がり、従来型の方法でも可視可能となる。乳癌死亡率は、病変の大きさ及び進行度に直接関係するので、悪性病変の発生と検出までの時間を減少させることが、全ての新乳房画像化様式のゴールである。
【0125】
良性及び悪性構造との間を区別する一助にするために、多くのX線コントラスト機構の差異を利用することにより、DEI及びMIRは従来型ラジオグラフを改善する。脂肪組織は小さな悪性病変に類似したX線減衰を起こすかも知れないが、これらは、同じ屈折痕跡を持たない。脂肪組織は殆ど屈折及び散乱コントラストを持たないが、乳癌病変の小さな円筒針状体は、大きな屈折及び散乱痕跡を持つ。40keVにおいて、軟組織の吸収コントラストは最低であり、さらに、当該病変とバックグラウンド組織の間で、全体としてのコントラスト勾配が増加する。
針状体に対する屈折コントラストのさらなる利得は、その幾何学構造から来るもので、これはX線屈折にとって理想的である。円筒型対象物への平行化したX線ビーム入射二対して、屈折コントラストは、円筒型の先端部及び底部において最大となり、中央において最低の屈折コントラストを持つであろう。円筒の直径が減るに伴い、吸収コントラストのレベルがバックグラウンドまで下がった後も、対象物の幾何学構造により屈折コントラストは変わらないままである可能性がある。多くの乳癌針状体を横切って得る屈折係数値によると、材料特性は似ており、またコントラストの上昇は、最も類似した癌試料で観察されることを示す。
【0126】
乳房組織の可視化促進を与える内在するコントラスト機構の決定は、非シンクロトロンベースのDEI/MIRシステムを設計する上で、最優先事項である。この研究によると、屈折と散乱のMIR特異的コントラスト機構は、構造可視化において、主要な役割を演じ、さらに、病変可視化において、X線吸収への依存性を減らす。X線吸収の減少は、患者の吸収線量の減少と言い換えられ、このことは、従来型のマンモグラフィーに必要とされる相対的に高線量を考慮すると、途方もない利点である。
これらの実験でナイロンを使用することは、将来のモデリング及びシミュレーション実験のための可能性のある用途を示す。同様な幾何学構造、直径、及び屈折係数を備えて、ナイロン単一フィラメントは、これらの診断上重要な構造が何故高いコントラストを生み出すのかについての洞察を提供する。
【0127】
コンピューターシミュレーション
コンピューターシミュレーションソフトウェアーを、DEI設計を検査するために開発した。開発したソフトウェアーは、患者線量を計算し、また、線源、結晶、対象物及び検出器の特定の配置及び仕様に基づいて、DEIシステムを通して、X線フラックスを追跡するために光線痕跡を用いる。結晶光学は、望まない方向に進むX線を退けるので、DEIの主要な実現性障害は、消失せず検出器平面に到達する十分な数の光子を獲ることである。
システムパラメーター仕様のリスト、及び一つの設計に対するシミュレーション結果をそれぞれ、以下の表10及び表11に提供する。
表10:システムパラメーター仕様
【表10】
【0128】
表11:システムパラメーター結果
【表11】
*全ての減衰は、組織中へのエネルギー堆積になるという最悪の見積り
【0129】
図55A〜55Cは、DEIシステムの概要図であり、一般的に5500と表され、本明細書で記載された対象物の実施態様に従い、コンピューターシミュレーションソフトウェアーを用いてシミュレートした。特に、図55A〜55Cは、DEIシステムの俯瞰図、側面図及び上面図である。図55A〜55Cに関しては、X線ビームは線源を持つX線管XTにより発生する。一つのシミュレーションにおいて、X線管XTは、Siemens DURA(R) Akron B X線管(Siemens Medical Solutions USA, Inc. of Malvern, Pennsylvaniaより入手可能)として、シミュレートした。ジーメンス(Siemens)X線管は、タングステンターゲットを含むので、これは、59.3keVで、Kα1X線を作成する。従って、X線管XTは59.3keVでKαX線を発生するようシミュレートした。ビームが患者に達する前に結晶光学システム内での損失を克復するために必要なフラックスを得るために、DEIの為には強力な管が必要かも知れない。ジーメンスX線管は回転陽極を有し、これは熱を散逸させ、管が高電圧(60kW)で作動することを可能にする。シミュレートしたDEIシステムは、管上の線源ポートを用いる。
図56は、本明細書に記載した対象物の実施態様に従って、DEIモノクロメーター結晶5602と組み合わせたログスパイラル(対数ラセン)焦点合わせ要素5600の俯瞰図である。図56に関しては、要素5600は、光子フラックスを増やすために配置した湾曲した回折結晶であることができる。要素5600はX線源に対して大きなターゲット範囲を提供するが、これは高能力を作り出すことが出来て、放射された放射線を集光して薄い仮想的線源を作る。この仮想的線源は、小さく、強く輝くことができる。さらに、湾曲回折結晶5600は、ログスパイラルの一部の表面である。
【0130】
図57は、コースティックな線源を備えた、ログスパイラル要素の焦点効果を描写する俯瞰図である。表面の形により、ブラッグ回折要素は、焦点を作るデバイスとして働く。ログスパイラル要素は次の特徴を有する:(1)輝度が最大である、固定した放射角度で、大きなターゲット範囲から放射する光を集める;(2)これはビームを分光する;(3)これは、放射光を高い輝度の、仮想線源にするように焦点合わせする。図58A及び58Bは、それぞれ、実験研究のための説明システムの上面図、及び正面図である。図58A及び58Bに関しては、図は、放射線を焦点合わせして、高輝度の、仮想線源を作るためのログスパイラル要素を描く図である。
DEIシステム5500は3個の結晶を含む:プレモノクロメーター、モノクロメーター及びアナライザー。3個全ての結晶は、シリコンであり、[440]反射指令に調節する。この方向にスライスすることにより、大きな結晶を作ることができる。その様な結晶は直ちに入手可能である。
DEIシステム5500のシミュレーションにおける走査プロトコールは、検出器Dに対し6秒にセットされた。一つの例において、検出器Dは、画像ラインについて1度出力する単一ラインデバイスであることができる。他の例において、検出器Dは、X線ビームを横切る対象物Oの運動に同調して走査する全分野デバイスであることができる。単一ライン検出器又は全分野検出器のいずれかにおいて、画像データーの1ライン又は1片は、同時に得られる。
【0131】
他の例において、検出器Dは、厚い吸収物を用いて空間解像度の顕著な損失無しに、高エネルギーにおける効率を得るために用いる、X線より直接荷電変換する検出器であるかも知れない。図59は、X線より直接荷電変換する検出器の概念図であり、一般的に5900と記される。検出器5900は、タングステンX線管によって発生するような、高X線エネルギーで、良好な空間解像度及び阻止力を提供することができる。CZT,IbI2又はHgI2のような、より高いZ及び密度を持つ検出器材料が、高エネルギー性能を上げる為に使われた。
シミュレーションの結果によると、検出器におけるフルーエンスは、ピクセル当たり約600光子であり、これは従来型マンモグラフィーの約1/3から1/9である。従って、シミュレーション結果によると、シミュレートしたMIRシステムのノイズレベルは、従来型のマンモグラフィーより約1.7から3倍高いであろう。しかしながら、低いノイズレベルにおいて、従来型マンモグラフィーより、屈折コントラストは、8から33倍高い。
さらに、シミュレートしたDEIシステムに対し、平均乳腺線量は、約0.004mGrayであり、これは、5cm圧縮において、従来型マンモグラフィーより約250から750倍低い。10cm圧縮に対して、MIRにおける吸収線量は、0.019mGrayであり、これは同一圧縮率における従来型マンモグラフィーで得られる値より、1千倍低い。
【0132】
画像結果の例
上述のように、シンクロトロン及びX線管は、本明細書で記載した対象物に従って、DEI画像を作り出すためのX線源として2種類の適切なタイプのX線源である。比較の目的で、図60A及び60Bは、本明細書で記載された対象物に従う、それぞれ、シンクロトロンベース及びX線管ベースのシステムにより、同じナイロンフィブリルファントムから作られた画像である。図60Aの画像は、60keVのシンクロトロンにより発生したX線ビームより作られ、4.0mradの線量で、アナライザーロッキングカーブ位置+0.4ミクロラジアンで得られた。図60Bの画像は、0.4mradの線量で、アナライザーロッキングカーブ位置+0.4ミクロラジアン、及び160kV及び6.2mAの管設定で作られた。画像化したナイロンファイバーは、直径560micron(最上のファイバー)、360micron(中央のファイバー)及び200micron(下のファイバー)である。ナイロンファイバーは、非常に弱い吸収を持ち、従って、これらの画像は、このように弱い吸収材料を見るための屈折画像化を用いた利点の一つである。特に、例えば、軟組織の画像が、本明細書に記載した対象物に従い、160kVの電圧を用いたX線管を使って得ることができることを、これらの結果が示していることに注目することが重要である。
図61は、本明細書に記載した対象物に従う技術を用いて、図44,及び45A〜45Fに示された同じ乳房試料のシンクロトロン屈折画像である。この例において、ビームエネルギーは60keVで、線量は4mradであった。
【0133】
比較の目的で、図62A及び62Bは、本明細書に記載した対象物に従い、それぞれ、X線管及びシンクロトロンを用いて得た乳房組織試料の同じ部分の画像である。図62Bに示した画像は、0.4mradの線量で、X線管を用いて得た。図62Bに示した画像は、アナライザー位置+0.4ミクロラジアン及び、350mradの線量で、40keVシンクロトロンを用いて得た。
図63は、本明細書に記載した対象物に従い、X線管を用いて得た乳癌切除試料の画像である。該画像は、0.4mrad線量で、7.0cm、全厚み、最小圧縮乳房を通して得た。最適の画像を得るために、他の対象物又は組織に対して0.5mrad又はそれ以下の線量を適用することができる。この画像は、従来型のマンモグラフィーと比較して、数百倍少ない線量で全厚みの乳房組織の診断特徴を示す。本明細書で記載した対象物は、厚みの大きな軟組織対象物の画像を得ることができるという理由で有利である。以前のシンクロトロンベースのデバイスは、この様な画像を得ることが出来なかった。さらに、例えば、本明細書に記載された対象物は、軟組織対象物のような対象物に非常に低線量を適用することにより、この様に高画質の画像を得るために用いることができる。本明細書に記載した対象物は、高画質画像を得るために、従来型のラジオグラフィーより高エネルギーのX線ビームを使うことが出来て、従って、本明細書に記載した対象物は、患者の安全性を考慮して、低線量を要求することができる。
【0134】
適用例
本明細書に記載した対象物に従う、システムと方法は、様々な医学的応用に適用できる。上述のように、本明細書で記載したシステム及び方法は、乳房画像に適用できる。さらに、例えば、本明細書に記載したシステム及び方法は、軟骨組織画像、神経画像法、心臓画像法、血管画像法(コントラスト有り、及び無しで)、肺画像法、骨画像法、性尿器画像法、胃腸画像化法、一般的な軟組織画像法、血球システム画像法、及び内分泌システム画像法に適用できる。画像時間及び線量に加えて、高エネルギーX線を用いる主要な利点は、画像化できる対象物の厚さである。乳房画像化の様な応用のために、記載したシステムは、全厚みの乳房組織を、臨床的に実現できる画像化時間で画像化することを可能にする。同様のことを、頭、首、手足、腹部、及び骨盤のような、身体の他の領域に対しても言うことができる。X−線吸収の制限無しに、より高エネルギーのX線を用いたDEIの利用は、X線の透過力を劇的に増加する。軟組織に対して、対象物上へのX線光子入射のほんの小部分が吸収され、このことは、X線管からの放射光子が検知器に届く効率を非常に増加する。
肺画像法については、本明細書で記載したDEI技術は、肺において優れたコントラストを作り出すことが出来、また肺炎のような肺の状態を診断する上で、盛んに用いることができる。肺における流体集積は、DEIで容易に検出できる非常に密度の高い勾配を作り出す。周囲の組織の特徴である、密度勾配、及び正常肺組織及び腫瘍を持つ組織間の幾何学構造の違いは、大きく、良いコントラストを作り出す。さらに、本明細書に記載したDEI技術は、肺癌スクリーニング及び診断にも適用できる。
【0135】
骨画像法について、本明細書に記載したDEI技術は、一般的に骨の優れた画像を作り出すことができる。DEIの高い屈折と減衰のコントラストは、骨内部の破損及び病変を可視化する上で特に有用であることができる。
さらに、本明細書に記載した対象物に従うシステムと方法は、様々な検査及び産業上の応用に適用できる。例えば、該システム及び方法は、家禽検査のような肉検査に適用できる。例えば、該システム及び方法は、スクリーニング及び/又は除去が要求される、肉内の鋭い骨、羽、及び他の低コントラスト対象物を可視化するために用いることができる。本明細書に記載したシステム及び方法は、この様なスクリーニングに適用できる。
本明細書に記載したシステムと方法は、また商品検査に適用できる。例えば、該システム及び方法は、航空機製造のような、溶接の検査に用いることができる。本明細書に記載したようにDEI技術は、ジェットタービン回転翼のような深刻な摩擦及び裂け目を受ける重要な構造的部品を検査するために用いることができる。さらに、例えば、本明細書に記載した該システム及び方法は、回路板及び他の電子機器を検査するために用いることができる。他の例として、本明細書に記載した該視システム及び方法は、金属ベルト及び段板保全性の検査ような、疲労検査に用いることができる。
【0136】
さらに、本明細書に記載した対象物に従うシステムと方法は、セキュリティスクリーニングの目的に用いることができる。例えば、システムと方法を、空港、及び港でのスクリーニングに使用できる。本明細書で記載したDEI技術を、プラスチックナイフ、コンポジット銃のような従来型のX線では検出が難しいプラスチック及び低吸収対象物、及びプラスチック爆弾のスクリーニングに用いることができる。空港荷物検査のような、大きな対象物の画像化のために、X線管と検出器の距離を増して、ビームを発散させることができる。より大きな扇形ビームを収容するには、より大きなアナライザー結晶が必要となろう。
記載したデバイスは、コンピューターによる断層撮影画像化システム、又はDEI−CTに飜訳できる機構を提供する。第3世代従来型コンピューターによる断層撮影システムに類似したDEI−CTシステムは、同じ装置を使うが、中心点の周りを回転するよう修正されるであろう。あるいは、該システムは、固定したままで、対象物、試料又は患者がビームの中を回転できるかも知れない。この設計によるDEI−CTシステムは、X線吸収、屈折、及び超微少角散乱排除(消滅)を表す画像を作るであろう、しかしこれらの画像は3次元に解像されるであろう。
本明細書に記載した対象物の様々な詳細は、本明細書に記載した対象物適用範囲から離れることなく変更可能であると言うことを理解すべきである。さらに、本明細書で記載した対象物は、既に示した請求の範囲で定義づけたように、既述の事項は、例証を目的としたものであり、制限の目的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0137】
本発明の好ましい実施態様は、以下の添付図面を参照しながら記載される。
【図1】図1A〜Cは、本発明の一つの実施形態の対象物の画像を作るDEIシステムの概略図、上面図及び側面図である。図1Dと1Eは、本発明の別の形態の概略図を示す。
【図2】本発明の一つの実施形態の陰極/陽極管デザインに基づくX線管の概略図である。
【図3】本発明の一つの実施形態の図1A〜1EのDEIシステムの概略図である。
【図4】本発明の一つの実施形態の図1A〜1EのDEIシステムを使用して対象物を画像化する典型的な方法のフローチャートである。
【図5】本発明の一つの実施形態の図1A〜1E及び3に示されたDEIシステムのアナライザー結晶の側面図である。
【図6】図6Aと6Bは、本発明の一つの実施形態のミスマッチのモノクロメーター結晶を含み、対象物の画像を作るように機能するDEIシステムの概略図、上面図及び側面図である。
【図7】本発明の一つの実施形態の図6Aと6BのDEIシステムを使用して対象物を画像化する典型的な方法のフローチャートである。
【図8−10】異なる波長におけるゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモン(DuMond)ダイアグラムのグラフである。
【図11】本発明の一つの実施形態の図6Aと6BのDEIシステムのゲルマニウムモノクロメーター結晶とシリコンモノクロメーター結晶の側面図である。
【図12】本発明の一つの実施形態のミスマッチのモノクロメーター結晶を含み、対象物の画像を作るように機能するDEIシステムの概略図である。
【図13−16】本発明の一つの実施形態のX線管と足場上のモノクロメーター単結晶を有するモノクロメータータンクの典型的配置の概略図である。
【図17】発明の一つの実施形態のX線管のX線ビームの出口の写真である。
【図18】図17に示すX線管のX線ビームの出口の別の写真である。
【図19】本発明の一つの実施形態のアルミニウム製のフィルターとコリメーターの写真である。
【図20】本発明の一つの実施形態のX線管の端に適合させるための蓋の写真である。この蓋は、本体から取り外され、切断されているが、曲げられていない。
【図21】本発明の一つの実施形態のX線管の端から望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐためのX線管の端の蓋の写真である。
【図22】本発明の一つの実施形態のX線管の側面から望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐためのX線管の端に近い場所に設置された遮蔽の別の部分の写真である。
【図23】本発明の一つの実施形態のモノクロメータータンクから望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐための鉛遮蔽を含むモノクロメータータンクの写真である。
【図24】本発明の一つの実施形態のモノクロメータータンクから望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐための鉛遮蔽を含む図23のモノクロメータータンクの写真である。
【図25】本発明の一つの実施形態の作動状態にあるX線管とモノクロメータータンクの写真である。
【図26】本発明の一つの実施形態のモノクロメータータンクの内部部品の正面写真である。
【図27】本発明の一つの実施形態の典型的DEIシステムの上から見た透視図である。
【図28】発明の一つの実施形態の典型的モノクロメーター結晶の側面図、上面図及び正面図である。
【図29】発明の一つの実施形態のモノクロメーター結晶の透視図であり、内側領域と外側領域を示し、回転角ChiとThetaを示す。
【図30】シリコン[111]、[333]、[444]及び[555]の回折面を用いた、National Synchrotron Light Source X15A hutch中の単色ビーム束のグラフである。
【図31】半値幅(FWHM)が小さくなるにつれてロッキングカーブの傾斜が大きくなることを示すグラフである。
【図32】本発明の一つの実施形態のシンクロトロンX線ビームを用いたDEIシステムの実験装置の概略図である。
【図33】本発明の典型的なアルミニウム製フィルターヒートシンクの写真である。
【図34】24時間に渡ってサーミスターにより測定した温度グラフである。
【図35】本発明の一つの実施形態の典型的な後付の第二のモノクロメーターベースと温度を下げるための水冷却ラインを備えた支持板の写真である。
【図36】18keVシステムの安定性試験のグラフである。時間に対するアナライザーのピーク位置を示す。
【図37】18keVシステムの安定性試験の間のNational Synchrotron Light Source(NSLS)X線のリング電流のグラフである。
【図38】40keVシステムの安定性試験のグラフである。時間に対するアナライザーのピーク位置を示す。
【図39】40keVシステムの安定性試験の間のNSLS X線のリング電流のグラフである。
【図40】図40A−40Cは、本発明の一つの実施形態の18keVにおいて得られた典型的なCDファントムの写真である。
【図41】図41A−41Cは、本発明の一つの実施形態の30keVにおいて得られた典型的なCDファントムの写真である。
【図42】図42A−42Cは、本発明のシステム及び方法によって得られた、ピームアナライザー結晶位置ブラッグ[333]における、30keVにおいて得られた典型的なMISTYファントムの3つの異なる領域の写真である。
【図43】エネルギーに対する、胸部の吸収、非コヒーレント散乱及びコヒーレント散乱のグラフである。
【図44】典型的な従来の胸部試料のX線写真である。
【図45】図45A−45Fは、本発明の技術を用いて得た、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのビームエネルギーにおける同じサンプルのシンクロトロンX線写真である。
【図46】図46A−46Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのMIRビームエネルギーにおける胸部試料の写真である。
【図47】図47A−47Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのビームエネルギーにおける腺の平均照射線量とその分布を示すグラフである。
【図48】本発明のMIRに用いられたエネルギーに対するX線ビームエネルギーのグラフである。
【図49】MIRを用いたファイバー径の予測値を示すグラフである。
【図50】本発明の技術により得られた、ナイロン(R)ファイバー屈折プロファイルを示すグラフである。
【図51】直径の較正に適合するMIR屈折を示すグラフである。
【図52】図52A−52Cは、本発明の技術により得られた、乳癌試料のMIR屈折写真である。
【図53】本発明のDEIシステムによって得られた、局在する乳癌塊と針状体のMIR写真である。
【図54】図54A−54Eは、従来のX線写真と比較した、DEIを用いて可視化した写真である。
【図55】図55A−55Cは、本発明の一つの実施形態のコンンピューターシミュレーションソフトウエアを用いてシミュレートしたDEIシステムの概略図である。
【図56】本発明の一つの実施形態のDEIモノクロメーター結晶に結合されたログスパイラル焦点調製部品の透視図である。
【図57】コースティックな線源を用いたログスパイラル部品の焦点調製を示す透視図である。
【図58】図58Aと58Bは、実験用キャラクタリゼーションシステムの平面図と立面図である。
【図59】ダイレクトX線−チャージ変換検知器をの概略図である。
【図60】図60Aと60Bは、それぞれ本発明のシンクロトロンに基づくシステムとX線管に基づくシステムにより得られた、ナイロン(R)ファイバーファントムの写真である。
【図61】本発明の技術により得られた、図44、45A−45Fに示す胸部試料のシンクロトロン屈折写真である。
【図62】図62Aと62Bは、それぞれ本発明のX線管とシンクロトロンを用いて得られた、乳房組織試料の同じ部分の写真である。
【図63】本発明のX線管を用いて得られた、乳癌切断試料の写真である。
【符号の説明】
【0138】
XT X線管
XB X線ビーム
C1、C2 コリメーター
MC モノクロメーター結晶
AC アナライザー結晶
O 対象物
ST 走査台
DD デジタル検知器
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年1月24日に出願された暫定米国出願番号60/761,796、2006年1月24日に出願された暫定米国出願番号60/761,797及び2006年7月6日に出願された暫定米国出願番号60/819,019の優先権を主張する。
この発明は、X線画像化(イメージング)に関し、より詳細には、多色性分布を持つX線ビームを用いて対象物の画像を検知するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像化は、対象物を画像化するために広い分野で用いられている。例えば、X線画像化は、医療分野の非破壊試験やコンピュータ断層撮影法(CT)に広く用いられている。他の様々なタイプの技術も医療画像化に用いられている。以下、現在利用可能な医療画像化技術のいくつかを説明する。
【0003】
X線吸収を用いたX線ラジオグラフィー
従来のX線ラジオグラフィーは、対象物の投影されたX線吸収や減衰を測定する。対象物の減衰差は、埋め込まれた特徴のコントラストとなって、画像として表示することができる。例えば、癌性組織は周辺の非癌性組織よりも高密度であることを利用して、従来のラジオグラフィーで癌性組織は検知される。最も良い吸収コントラストは、吸収の高いX線エネルギーにおいて得られる。従来のX線ラジオグラフィーは、より大きい吸収を達成するために、典型的には、低いX線エネルギーで高い照射線量を用いて行われる。高エネルギーのX線を使うと、一般的に、患者の安全への懸念から、低い照射線量を使うことが求められる。一般的に、X線エネルギーが高くなって照射線量が低くなると、従来のラジオグラフィーの画質は悪くなる。
現在の世代のラジオグラフィー画像化システムのX線源は、標準陰極/陽極X線管に基づくデザインである。X線管のエネルギースペクトルや一般的出力性能は、陽極の材料と構成によって定まる。適正な陽極材料の選択はその用途により、特に、どのような療法か、どのような構造を画像化するのかによる。
【0004】
マンモグラフィーの場合、最も一般的な陽極材料はモリブデンであるが、ロジウムも使える。平均エネルギーが約10KeVのモリブデンを用いると、軟組織の画像化に適切なスペクトルがとれる。マンモグラフィーシステムにおいて、陽極は通常固定されており、熱さましのため銅ブロックに固定されている。技術上の主な問題は、集光された電子ビームにより陽極に熱が発生することである。熱の除去の主な手段は周囲の銅陽極であるので、それが高い熱伝導性を持っているとはいえ、固定された陽極を持つX線管は発熱しがちである。X線管の開発の進展により、回転式陽極が使用できるようになった。陽極が回転するので、陽極から発した電子ビームがその陽極の同じ場所に当たらない。主な獲得検知方法は、最近のデジタル検知器が現れるまでは、X線フィルムである。
スクリーニングマンモグラフィー用のX線画像化は、初期の乳癌を検知するために用いられてきた。遮蔽制御された女性の乳癌死亡率は、遮蔽制御されていない女性の乳癌死亡率より低い。マンモグラフィーは、胸部の物理的診断や胸部の自己診断で見つかる癌に比べて、小さくて進行していない段階の癌を検知できる。小さくて進行していない段階の乳癌を治療すれば、生存率は高まる。強化された放射線治療法が、小さくて進行していない段階の乳癌の検知に使えることは明らかである。臨床上明らかな乳癌の約10%は、従来のマンモグラフィー法では画像に可視化することはできない。更に従来のラジオグラフィーを用いて、良性の傷害と悪性の傷害を区別することは困難である。
【0005】
特に、従来のラジオグラフィーを用いても見えない乳癌は、比較的多量の乳腺組織を有する患者にしばしば見られる。乳腺組織が高密度であることが、潜在的病状の発見を困難にしている。初期の癌を検知するためには、マンモグラフィーの感度を上げて、小さくて初期段階の乳癌を検知できるようにすることが望ましい。乳癌を初期に検知できるようになれば、死亡率を下げることができるかもしれない。
マンモグラフィー技術はこの数十年で劇的に進歩してきた。例えば、今では、X線ビーム品質が適切で、肺の圧縮が適切で、かつ暴露制御が自動である専用のマンモグラフィー装置まである。しかし、従来のマンモグラフィー技術は、正常組織と異常組織との違いを区別するために、X線吸収の描写に頼っている。
従来のラジオグラフィーの限界は、傷害や変形性関節症のような退行性の関節疾患の検知や治療の間における、画像化カートリッジに於ても明らかである。より良い画像化技術は、ダメージが不可逆になる前のように、退行性疾患をより早い段階で検知するためにも有効である。
【0006】
回折強調型イメージング(DEI)
DEIは、従来のX線画像化の性能を劇的に拡大させたX線画像化技術である。このDEI技術は、X線吸収、X線屈折、及び微小角散乱排除(減衰)からコントラストを生じることのできるX腺画像化物理療法である。対照的に、従来のX線画像化技術は、単にX線の吸収を測るのみである。DEIの吸収画像とピーク画像は、実質上散乱減衰が無いことを除いて、従来のラジオグラフィーと同じ情報を示す。DEIは、角度の変化を強度の変化に変換して、角度の小さな変化を強度の大きな変化にするために、X線回折のブラッグ則nλ=2dsin(θ)に基づいて、完全結晶回折のブラッグピークを利用する。従って、DEIは、軟組織の画像化に適しており、マンモグラフィーとして非常に有望です。
DEI技術は、従来のX線画像化技術に比べて、対象物の可視化に大きな進歩を示しましたが、今まで、使用可能なエネルギー範囲の拡大の可能性や、X線吸収の必要性を少なくすることや除くことに、取り組んだ人はいない。X線吸収の必要性を少なくすることや除くことは、医療分野の顕著な関心事である。
【0007】
シリコンアナライザー結晶をX線ビームの経路上に置くと、X線屈折、及び微小角散乱排除(吸収度)に更に2つの形式の画像コントラストを生じる。DEIは、完全単結晶シリコンからのX線回折により得られる、高度に平行にされたX線を利用する。これは、今までは画像を生じるためにはシンクロトロンの高いフラックスとエネルギー範囲を必要とした。これらの平行にされたX線は単一エネルギーであり、実質的に単色であり、対象物を画像化するためビームとして用いられる。
非常に小さい吸収コントラストを持つ対象物は、相当な屈折と減衰のコントラストを持ち、可視化を改善し、X線画像化の用途を拡大するかもしれない。DEI技術を生物学や材料科学に応用すれば、コントラストと解像度に大きな進歩をもたらし、このことは医療画像化の主流として用いられる潜在性があることを示す。DEIが特に効果的かもしれない医薬の分野は、癌検査のための胸部の画像化であり、この分野では診断構造はしばしば吸収コントラストが低くて可視化が困難である。悪性塊からの針状体のような、吸収コントラストが低い構造は、高い屈折と微小角散乱コントラストを有する。DEIシステムに、X線に基づく胸部画像化の感度と特異性の両方を高めることができる可能性を付与できることが望まれる。
【0008】
DEIを医療と工業の両方に応用するために、多くの研究が、画像コントラストを改善したことを示してきた。医療分野における、従来のX線画像化システムに対するDEIシステムの利点には、患者の照射線量の劇的な減少と画像の質の改善がある。照射線量の減少は、DEIシステムが高X線エネルギーで機能することができることによる。X線吸収は、光電子効果、Z2/E3(Zは原子番号、Eは光子エネルギーを表す。)、により支配されている。
今まで、DEIシステムは、初期の放射ビームを生じさせるためにシンクロトロンを用いることを要した。このビームは対象物を画像化するために他のシステム部品により操作される。シンクロトロンは、広範囲のエネルギーに渡って、高度に平行にされ、高いフラックスのX線ビームを提供する。シンクロトロンは、円形軌道を荷電粒子、特に電子が動き、光子の放出を引き起こして、放射を生じる。シンクロトロン放射の独特の性質により、広範囲のエネルギーに渡って、高いフラックスのX線ビームを生じ、これを広範囲の用途に用いることができる。
DEIの中心理論は、X線回折のブラッグ則に基づき、下式で定義される。
【数1】
式中、λは入射X線ビームの波長、θは入射角、dは結晶内の電子層間の距離、nは数字を表す。
【0009】
単一エネルギーX線写真は、画像コントラストと解像度に影響しうるいくつかの成分を含む:即ち、コヒーレントに散乱する成分IC、非コヒーレントに散乱する成分Il、及び屈折成分。密度に変化のある対象物又は媒体を通過するX線は屈折し、角度のずれを生じる。特に、ビームの経路に沿ったρt(式中、ρは密度、tは厚さを表す。)の変化からX線範囲のずれが生じる。入射光子部分もまた、対象物の構造により回折するかもしず、それは一般的にミリラジアンのオーダーであり、小角度散乱と呼ばれる。これらの相互作用の合計は、記録されたX線写真の強度INに影響し、下式で表される。
【数2】
システムの空間分解能とコントラストは、コヒーレント散乱と非コヒーレント散乱の両方の寄与により低下する。医療画像化では、散乱の影響を少なくするために、抗散乱グリッドがしばしば用いられるが、その性能は限定的であり、グリッドを用いることはしばしば強度の損失を補うためにより高い放射線量を必要とする。
【0010】
DEI技術は、シリコンアナライザー結晶を目標物の後のX線ビームの経路上に置き、コヒーレント散乱と非コヒーレント散乱の両方の効果を実質的に排除する。このシリコンアナライザー結晶の狭い角度受容窓を、そのロッキングカーブと呼び、DEIに用いられるX線エネルギーについてはマイクロラジアンのオーダーである。このアナライザーは正確に高感度な角度フィルターとして機能し、屈折及び減衰コントラストの両方を測定するために用いることができる。減衰コントラストとは、散乱による入射ビームの強度の低下をいい、これはコントラストと解像度の両方を実質的に改善することができる。
ダーウィン幅(DW)は、反射カーブを表示するために用いられ、ほぼ反射カーブの半値幅(FWHM)に等しい。−1/2DWと+1/2DWの地点は、そのカーブ上で鋭い傾斜を持つ地点であり、特定の分析反射とビームエネルギーのマイクロラジアンあたりの光子強度の最大変化をもたらす。アナライザー結晶ロッキングカーブのピークにおいては、X線吸収と減衰におけるコントラストが、散乱のほとんど無いX線写真をもたらす。−1/2DWと+1/2DWの地点において、ロッキングカーブの傾斜が最大のときに、屈折コントラストが最大になる。あるDEIに基づく画像処理技術は、これらの地点を利用して、これらの画像ペアから、屈折や見掛吸収のコントラスト成分を抽出する。
【0011】
以下、画像ペアから、屈折や見掛吸収のコントラスト成分を抽出するための技術を記載する。アナライザー結晶を、与えられた反射及びビームエネルギーの+/−1/2DWを示す角度にセットした場合、ロッキングカーブの傾斜は、下式の二項テーラー級数近似法でほぼ表される。
【数3】
アナライザー結晶を、そのロッキングカーブ(−1/2DW)の低角度側にセットした場合、その結果られる画像強度は、下式で表される。
【数4】
高角度位置(+1/2DW)にセットしたアナライザー結晶で得られた記録された画像の強度は、下式で表される。
【数5】
【0012】
これらの式を解いて、下式の吸収に起因する強度の変化(IR)及びZ方向に観測される屈折角度(ΔθZ)を得ることができる。
【数6】
これらの等式を、ピクセル単位で高又は低角度画像に適用して、2つのコントラスト成分をDEI見掛吸収及び屈折画像と知られているものに分離することができる。しかし、DEI見掛吸収及び屈折画像を生成するために、それぞれの単一地点のロッキングカーブ画像を用いることが有効である。
【0013】
上記のように、現在のDEIシステムは、X線ビームを生成させるためにシンクロトロンを用いる。シンクロトロンに基づくDEIシステムは、過去印象的な結果を生んできた。しかし、シンクロトロンは大きくて高価な装置であり、医療や工業の用途には現実的ではない。コントラストが劇的に改善し、照射線量を減らせるのであれば、DEIシステムの広範囲の臨床用途への応用を増やすことができる。
臨床のDEI画像機器の開発は、以下の理由から、女性の健康や医療画像化にとって重要であるかもしれない:(1)DEIは乳癌の検知やキャラクタリゼーションにとって最も重要な特質に非常に高いコントラストを作り上げることを示してきた。(2)DEIは、吸収のみを用いた場合より、高いX線エネルギーにおける画像化が可能である。(3)DEIは吸収すべき光子を必要とせずにコントラストを生成することができるので、イオン化操作を減らせるし、その結果、吸収される照射線量を減らすことができる。
【0014】
更に、スクリーンフィルムマンモグラフィーは過去40年間熱心に研究されてきた。そして、乳癌による死亡率を約18−30%減らすことができたことが知られている。この画像化検査が広まったおかげで、過去数年間の乳癌による死亡率は減り始めた。しかし、標準スクリーンフィルムマンモグラフィーは、完全に高感度でもないし完全に特異的でもない。乳腺組織が高密度であり、胸部に腫瘍が分散していることから、スクリーンフィルムマンモグラフィーの感度は低い傾向がある。高密度の乳腺組織を持つ女性にとって、進行する傷害は、光子の吸収が周囲の脂肪組織よりも顕著に大きくないため、可視化のためのコントラストが小さいので、検知することが困難である。自己診断又は物理的検査によって検知される乳癌の約10−20%は、スクリーンフィルムマンモグラフィーでは見ることができない。更に、傷害をマンモグラフィーやバイオプシーで検知できたとしても、その5−40%しか悪性ではない。更に、乳癌の約30%は以前のマンモグラフィーの後ろ向き検査で見つかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
現在のDEIとDEI画像化処理技術は、従来の画像化理論に基づいており、画像を生成するために少なくともその一部はX線吸収に頼っている。従って、これらの技術を使って画像化された対象物は、照射を吸収している。このような照射に曝されることは、照射線量が問題であるような医療画像化のような分野では望ましくない。この理由により、技術的な限界があり、それが臨床や工業的応用に挑戦の対象となる。従って、高品質の画像を作り出し、吸収が少なくて、X線写真と同等の品質と特徴が可視できる画像を生成するDEI及びDEI技術を提供することが望まれている。
そのため、DEI及びDEIシステムを改善する観点から、対象物の画像を検知するために、改善されたDEI及びDEIシステム並びに関連方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ここに記載する主題は、多色性エネルギー分布を持つX線ビームを利用して対象物の画像を検知するためのシステムと方法である。一つの態様として、ここに記載する主題は、対象物の画像を検知する方法を含むことができる。この方法は、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。更にこの方法は、該第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター単結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階を含むことができる。更に、この対象物を、第二のX線ビームの経路上に置くことができ、該対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される。この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向けてもよい。更に、対象物の画像は、このアナライザー結晶から回折したビームにより検知することができる。
【0017】
別の観点から見ると、ここに記載する本主題の方法は、多色性エネルギー分布を持つX線ビームを生成することを含む。更に、第一のX線ビームの一部は、この第一のX線ビームが平行にされた扇形ビームとなるようにブロックされることができる。第二のX線ビームが予め決めたエネルギーレベルを持つように、この平行にされた扇形ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を予め決めた位置に置くことができる。この方法は、対象物を第二のX線ビームが透過して、対象物から透過したX線ビームが放射されるために、対象物を第二のX線ビームの経路上に置く段階を含むことができる。更に、この方法は、この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階を含むことができる。この方法は、また、このアナライザー結晶から回折したビームにより、この対象物の画像を検知する段階を含むことができる。
【0018】
別の観点から見ると、ここに記載する本主題の方法は、X線点源から異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することにより、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。この方法はまた、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームが生成するように、この第一のX線ビームを遮るようにモノクロメーター結晶を予め決めた位置に置く段階を含むことができる。更に、この方法はまた、第二のX線ビームが対象物を透過して、対象物から透過したX線ビームが放射されるように、第二のX線ビームの経路上に対象物を置く段階を含むことができる。この透過したX線ビームをアナライザー結晶上の入射角に向けることができる。更に、この方法は、このアナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階を含むことができる。
【0019】
別の観点から見ると、ここに記載する本主題の方法は、第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。この方法はまた、第一のX線ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームを生成する段階を含むことができる。更にこの方法は、第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちの一つを選択的にブロックし、第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものを通過させる段階を含むことができる。対象物を、第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものの経路上に置くことができ、この対象物を該第二のX線ビームのブロックされていない固有線が透過して、対象物から透過したX線ビームが放射される。この方法は、この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階を含むことができる。更にこの方法は、このアナライザー結晶から回折したビームにより、この対象物の画像を検知する段階を含むことができる。
【0020】
別の観点から見ると、ここに記載する本主題の方法は、第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。モノクロメーター結晶を、第一のX線ビームを遮るように、予め決めた位置に置くことができ、第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームを生成する。更にこの方法は、第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線の経路上に対象物を置いて、この対象物を第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線が透過して、この対象物から透過したX線ビームが放射される段階を含むことができる。この透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向けることができる。この方法は、このアナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知する段階を含むことができる。
この開示に従えば、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを用いて、対象物の画像を検知するためのシステムと方法が提供される。
従って、この開示の目的は、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを用いて、対象物の画像を検知するための新規なシステムと方法を提供することである。この開示が明らかになるに従って、ここに記載する発明により、この目的及びその他の目的の少なくとも全部又はその一部が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ここに記載した主題は、多色性エネルギー分布を持つX線ビームを利用して対象物の画像を検知するためのシステムと方法を含む。特に、ここに記載の主題は、対象物の画像を検知するための改良されたDEI及びDEIシステム並びに関連方法を開示する。一つの側面によれば、ここに記載の主題は、対象物の画像を検知するための方法を含む。この方法は多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階を含むことができる。さらに、この方法は、第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター単結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階を含むことができる。さらに、この対象物を、第二のX線ビームの経路上に置くことができ、対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される。透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向けることができる。さらにアナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知することができる。これらのシステムと方法は、例えば、医療用途において極めて低い照射線量、早い走査速度、高い解像度及び比較的低い操作と建造コストを提供することができるので、有利である。さらに、これらのシステムは、例えば、コンパクトなユニットに組み込むことができるし、治療用途や工業用途に利用可能である。
【0022】
ここに記載した主題に従ったDEIを用いる画像化方法技術は、対象物の見掛吸収及び屈折画像を生成するために、ロッキングカーブの対称点で得られる画像を利用することができる。DEI見掛吸収画像は従来のX線写真画像と同様であるが、散乱排除のため、より大きいコントラストを示す。DEI屈折画像により、大規模な屈折率の特徴によって引き起こされるビームの小さな屈折の大きさを描くことができる。DEI減衰画像は、第一次のコントラスト機構が、対象物によって散乱されるマイクロラジアンのオーダーの光子によるものである、ロッキングカーブ上の各点において生じる。画像化方法技術に基づく他のDEIは、多重画像X線写真(MIR)と呼ばれ、これは対象物のX線吸収、X線屈折、及び微小角散乱排除で表わされる定量的画像を生じるために、ロッキングカーブ上の多重点を利用する。本発明のシステムと方法は、アナライザーロッキングカーブ上のいかなる点における画像を生成することができ、そのため、(1)いかなるアナライザー位置における単一の画像、(2)DEI見掛吸収及び屈折画像、(3)MIR吸収、屈折、及び散乱画像、及び(4)質量密度画像を生成することができる。これらの方法及びその他のDEIに基づく方法技術に要求される未処理画像データを生成することができることは、すべてのDEIに基づく方法技術にとって有用である。さらに、ここに記載のシステムと方法は、コンピュータ断層撮影法での利用に適用可能あり、いかなるDEIに基づくコンピュータ断層撮影法アルゴリズムにおいて利用するための未処理データを提供することができる。
【0023】
光子と物体との相互作用
本章はX線生成、フォトニクス及び光子と物体との相互作用の概略を提供する。本章は、さらにX線吸収、屈折及び散乱のメカニズム並びにDEI及びこれらがどのようにDEIに関係するかについて説明する。さらに、エネルギー堆積、照射線量の測定、及び放射暴露による健康への影響についても説明する。
X線写真における物理的相互作用のうち最も重要なものは、光電子効果である。この理論をX線画像化に適用することにより、従来のX線写真でどのようにコントラストが得られるかを説明することが容易になる。乳房組織のような対象物を通過するX線は、電子に衝突して、そのエネルギーを軌道への結合エネルギーを上回るレベルまで上げることができる。これが起きると、その電子は核への引力を上回るに十分なエネルギーを持つに至り、入射光子のエネルギーから電子の結合エネルギーを差し引いたエネルギーに等しい全エネルギーをもって原子から離れる。生物組織においては、入射X線は直接又は非直接にフリーラジカルを生成し、これはDNAやこのほかの細胞構造体と相互作用して、突然変異やそのほかの有害な結果を引き起こす。この相互作用の有益な効果として、X線光子のエネルギーが電子に転移することがあり、これはX線光子が画像化システムのフィルムや感知器と遭遇しないことを意味する。対象物を透過したX線の量が減少することは、X線減衰と呼ばれ、従来の画像化におけるこのプロセスの第一の成分は光電子効果による吸収によるものである。
【0024】
単位質量あたりの光電子吸収の確率は、Z3/E3に比例する(式中、Zは原子番号、Eは入射光子のエネルギーを表す。)。医療用画像化の場合、この等式はしばしばビームエネルギーの効果を表し、光電子吸収の確率は、1/E3に比例する。従来のX線写真のコントラストは吸収に基づくので、エネルギーレベルが高くなると、吸収コントラストは急速に低下する。この傾向の例外は、原子のK−吸収端で起こり、これは各要素に特有の固有エネルギーである。光電子相互作用の確率は、入射光子エネルギーがK−吸収エネルギー又はK−端の直下である場合に、特徴的に増加する。
原子番号が高く、ビームエネルギーが低いほど、光電子吸収は増大するので、乳房組織の画像化は挑戦しがいのあるものである。軟組織の第一要素のほとんどは、水素、炭素、窒素及び酸素から成り、これらすべては、原子番号が比較的小さく、1keV以下の吸収端をもつ。乳房組織の軟組織の第一要素の原子番号が比較的小さいことと、吸収端が低いことの両方は、特に病気の初期において、良性と悪性の特徴の問題の決定的な差をつくる。
【0025】
従来のX線生成に内在する物理的相互作用は、制動放射(bremsstrahlung)のものであり、これは破壊放射(break radiation)のドイツ語である。画像化システムで用いられる非相対的速度における電子は電位により加速され、下式の力学的エネルギーを持つ。
【化7】
X線管の陽極のような金属に放射された電子は、高密度の原子核を通過すると屈折し、急速に減速する。電子は、通過する電子がどのくらい核に近いかによって定まるエネルギー損失を差し引いた、0から全KEまでの範囲のエネルギーを放出することができる。大エネルギー放出を生じる屈折よりも、小エネルギー放出を生じる屈折が、高い確率で起こる。高いポテンシャルエネルギーで加速され、速度が顕著に減速することになる核との強い相互作用を持つ電子は、エネルギースペクトルのX線バンドにある光子を放出する。診断用X線管から生じるX線の主な源は、制動放射によるものである。
【0026】
原子と相互作用する加速された電子は、主として対象物の原子の性質に基づいて、固有X線として知られている他のタイプのX線を生成することができる。加速された電子が原子軌道にある電子と衝突すると、そのエネルギーの一部は移転されて、衝突した電子をより高いエネルギーレベルに上げる。そして、移転されたエネルギーがその電子の結合エネルギーと同じ又はそれより大きい場合には、衝突した電子は放出される。いくつかの電子のうちの一つでも放出されるような相互作用が起きると、高いエネルギーレベルにある電子が落ちて、そのギャップを埋める。これらの電子は高いエネルギーレベルから低いエネルギーレベルに落ちるので、エネルギーレベルの変化はエネルギーの放出を伴う。第2のエネルギーレベルから第1のエネルギーレベル(n=2からn=1)に転移した電子については、KαX線と呼ばれる。第3のエネルギーレベルから第1のエネルギーレベル(n=3からn=1)に転移した電子については、KβX線と呼ばれる。この電子の衝突に基づいて多くの転移が起こるが、固有X線を生じる相互作用は、比較的低いエネルギーレベル間の転移により生じる。
X線ターゲットのエネルギー出力スペクトルは、用いる金属の性質に依存する。特定の画像化用途に必要とされる平均エネルギーを決めることは、ターゲットを選択する場合に重要なことである。単色のX線を利用する用途において、ターゲットによって生成される固有X線は特に重要である。
【0027】
X線吸収に関して、X線光子が物体に衝突すると、相互作用により、X線の一部は吸収され、他の一部は透過して、入射X線は減衰する。X線の減衰は、電子密度と対象物の平均原子番号に基づく光子強度の損失である。光子が物体を通過するに従って、X線の散乱も起こり、強度の低下をもたらすが、この成分は従来のX線写真では測定することが困難であった。光子が、厚さがXの物体を通過する際に吸収される光子量の測定は、入射ビーム中の光子数に比べて(Io)、どのくらい多くの光子が透過したか(It)によって決定される。光子が物体を通過するにつれて光子が減衰する程度は、cm−1の単位で減衰係数(μ)として測定可能な物質の性質である。線状の減衰係数の違いにより、X線画像コントラストが可能になり、高い減衰と低い減衰の領域の間で、最も高大きいコントラストが生じる。
線状の吸収係数は、透過する物質の密度に比例し、この表値はμ/ρで表される。この値は質量吸収係数と呼ばれ、物質の物理的状態(固体、液体又は気体)と無関係である。
【0028】
光がある媒体から他の媒体へ通過する際の屈折は、最初ウイルブロード・スネルによって発見された。このプロセスを規定する法則はスネルの法則として知られている。この関係は数学的に下式で規定される:
【数8】
式中、入射媒体を媒体1、屈折媒体を媒体2とする。
電磁波がある媒体から他の媒体へ通過する経路は、屈折率の違いによるずれはあるが、可視光が媒体を通過する現象に似ている。可視光の古典的例によれば、光がある屈折率の媒体からより高い屈折率の媒体へ移動すると、その光は屈折する。この例は、可視光の屈折を説明するために一般的に用いられるが、この法則はX線にも適用できる。しかし、X線の場合、複素屈折率の実数部分は1より小さく、下式で表わされる:
【数9】
【0029】
高エネルギーX線と平均原子番号の低い材料を用いる場合、δの近似値は下式で表わされる:
【数10】
式中、Nはサンプル材料の単位体積当たりの電子数、reは古典的電子半径、λはX線の波長を表す。これらの数式を用いて、異なる屈折率を持つ2つの領域の間の線状界面について、入射光子は、ほぼ下式に従って、角度Δθで屈折する:
【数11】
【0030】
光子は対象物に衝突すると、3つの事象を経る:すなわち、光子は、相互作用せずに通過する、光子は光電子効果により吸収される、又は散乱する。最も一般的な定義によれば、散乱は、他の対象物との相互作用に副次的な、ある光子の進路の角度のずれである。光子の特徴、光子が通過する媒体、及び光子が遭遇する対象物の性質は、相互作用の結果に大きく影響する。
エネルギーの損失や転移を伴わずに起こる相互作用は弾性であり、入射光子のエネルギー損失を伴わずに起こるX線相互作用は弾性散乱又はコヒーレント散乱と呼ばれる。コヒーレント散乱事象において、主なX線光子のエネルギーは、最初に完全に吸収され、次に単一原子の電子により再放射される。この相互作用においては、正味のエネルギー損失は無いが、光子の再放射の方向は完全に任意である。医療用画像化の場合、コヒーレント散乱相互作用は、非コヒーレント散乱として知られるエネルギー損失を伴う光電子的相互作用や散乱よりも顕著に小さい。
【0031】
診断画像化で用いられるエネルギー範囲において、優勢でしばしば問題となるこの散乱相互作用は、非コヒーレント散乱である。この効果はコンプトン散乱として知られている。コンプトン散乱相互作用は、X線光子と原子の外部エネルギーの電子との間の衝突として説明される。この外部電子を結合するエネルギーは極小であり、光子と電子の相互作用で失われるエネルギーのすべては、電子に運動エネルギーとして転移する。このエネルギー転移により、光子のエネルギーは減少して波長が長くなり、衝突した電子がその原子から放出される。衝突に際しエネルギーと運動量は保存されるので、散乱する光子のエネルギーと角度のずれは、電子へ移転したエネルギー量に依存する。波長の変化を記載するコンプトン散乱式は下式で表わされる:
【数12】
式中、λは入射光子の波長、λ'は散乱光子の波長を表す。
【0032】
高エネルギーX線光子は典型的には少量のエネルギーしか転移しないので、散乱角は、光子の最初の軌道に対して小さい。これと反対に、低エネルギーX線光子の散乱は、より等方性である。従来のX線写真技術の問題は、診療画像化に用いる低エネルギーX線は等方に散乱するにもかかわらず、前向きの光子だけが検知されることである。画像を生成するために用いられる望ましい光子と比べると、これらの散乱する光子は同じエネルギーと方向を持つ。エネルギーと方向が同じであることは、抗散乱グリッドやエネルギーフィルターでこれらを除去することを困難にする。そのため、コンプトン散乱は、生成する画像をぼやけさせ、解像度とコントラストを低下させる。いままでX線写真技術においてコンプトン散乱の効果を小さくするためにいくつかの独創的な方法が用いられてきたが、この効果を完全に排除することに成功したX線画像化技術はない。
電離放射線を用いる画像化システムの開発と利用は、対象物又は患者の内部構造を可視化するために用いられる電磁放射に基づいて可能となる。電離放射線は、原子に電子を失なわせてイオンにするために十分なエネルギーを持つ放射線として定義される。X線画像化は最も一般的に用いられている電離画像化理学療法であるが、この他の解剖用及び機能的画像化理学療法も診療情報を得るために電離放射線を利用している。電離放射線を利用すれば、それに伴って放射線照射を浴びることは避けられないので、照射線量がどの程度であるかを測定することやその健康への影響を理解することは必須である。測定システムを用いて、照射暴露量を定量するために多くの装置や方法が開発されてきている。
【0033】
照射線量は、患者や対象物に照射された放射の量又は患者や対象物が吸収した放射の量で定義される。レントゲンはX線やガンマ線の照射により空気中に生成する電離を測定するために用いられる暴露の単位である。レントゲンの単位で暴露量は、空気の容積要素当たりの光子により遊離したすべての電子が空気中で完全に停止した場合に、空気中に生成した一つの符号のすべてのイオンの電荷の合計を、空気の容積要素当たりの重量により除す(割る)ことにより得られる。1レントゲン(R)は、空気1KgあたりX線やガンマ線により生成する電荷が2.58×10−4クーロンとして定義される。レントゲンはまた、標準温度と圧において、乾燥空気1cc中に1esu(2.08×109イオンペア)の電荷を生成させるX線及び/又はガンマ線の照射の量をいう。レントゲンは、X線とガンマ線の照射の測定に限定して使用され、吸収された照射線量の尺度ではない。医療用画像化機器ではこの単位は一般的に使用されていないが、この他の分野では空気のイオン化の測定に使い続けられている。
生物画像化用途における放射の有用な測定方法として、ラド(rad)で表わされる患者や対象物により吸収された放射線量が考慮されている。1ラドは、1グラムの組織が吸収した100エルグ(1erg=10−7J)のエネルギーに等しい。吸収された放射量の国際的に受け入れられている単位はグレイ(gray)であり、これは100ラドに等しい。ラドやグレイは全エネルギーの尺度ではない。これらは、1グラムの組織あたりに吸収された照射線量の尺度である。どれだけの全エネルギーが出力されたかを測定するためには、暴露された組織の全量を知らなければならない。ラドもグレイも吸収された照射線量の尺度を提供するが、組織に残留するエネルギー量の尺度にすぎない。
【0034】
特定タイプの照射の効果を決めることに加えて、暴露された組織のタイプもまた全体の効果に大きく影響する。あるタイプの組織は、他の組織よりも照射に敏感であり、最も敏感な細胞には、造血幹細胞、腸皮覆組織及び精子形成細胞のような急速に分割する細胞がある。有効照射線量として知られている量は、照射された組織のタイプの等価の照射線量とその加重係数との積を合計したものであり、下式で表わされる:
【数13】
生物システムは、生命に必要な機能を実行するために、分子と構造の超複合システムに依存している。電離放射線は、細胞の働きを乱し、細胞の機能喪失又は細胞死をもたらす。生体内の分子は、化学結合で統合され、よく決められた順序で相互作用し、しばしば酵素や他の生物組織によって補助される。電離により放出されるエネルギーは、化学結合を破壊し、これら分子の形や機能を潜在的に変える。その細胞への影響は、その細胞のどの部分が乱されたかや、与えられた時間内にどれだけ多くの事象が生じたかに依存する。
【0035】
最も敏感で重要な細胞の成分は、DNA(デオキシリボ核酸)であり、これは細胞の複製、転写及びその後の翻訳に関与する。DNAに電子の放出を引き起こす電離事象が起きた場合には、DNA中に電荷が生じる。このようにして起きる相互作用を直接作用と呼び、電離事象はDNA中又は近接分子から直接起きる。X線から生じるフリーラジカルの約2/3は、放出された電子が水分子に衝突する際に起きる間接作用と分類される。これは、水分子をイオン化し、数段階を経てフリーラジカルを生成する。一旦フリーラジカルが生成すると、フリーラジカルは他の分子と強力に反応して、安定な電子配置を回復する。フリーラジカルがDNA分子と相互作用すると、何もしない間違いを作り出し、一時的な機能異常を引き越すか、又は細胞を不安定化し、最終的に細胞死をもたらす。
過剰な照射暴露は、細胞死を引き起こし、2つの基本的形態に顕在化する。イオン化は、細胞死をもたらす細胞がそれ自体を維持できないところまで細胞の機能を乱すことができる。分裂抑制も起きて、その細胞を機能させるが、その細胞は複製しなくなる。細胞レベルへの影響を持つ効果は、臓器、シシテム又は生物レベルで計ることができる。人体への100グレイの照射線量は、24〜48時間内に死をもたらす。人体への2.5〜5グレイの照射線量は、数週間以内に死をもたらす。臓器や他の人体部分への局所照射は、局部の細胞死や機能異常をもたらし、組織のタイプの感受性によって部分的に決まるダメージをもたらす。
細胞死は電離放射線への暴露のひとつの結果に過ぎず、DNAの変化はDNA青写真に間違いをもたらすことがある。癌の進行は、体細胞へのDNAダメージの起こりうる帰結である。DNAの間違いは、細胞制御に欠陥をもたらし、制御されない増殖や癌の進行をもたらす場合がある。胚細胞のDNAに間違いを誘導することは、遺伝的欠陥をもたらし、数世代にわたって発症するかもしれない。
【0036】
DEI、DEIシステム及び関連方法
本発明の一つの実施態様のDEIシステムは、X線管から放射される特定のX線を反射するためのモノクロメーター単結晶を含む。図1A〜Cは、DEIシステム100の概略図、上面図及び側面図を示す。このシステムは、モノクロメーター単結晶を含み、本発明の一つの実施態様に従って、対象物Oの画像を形成するように機能することができる。更に、図1Dと1Eは、DEIシステム100の概略図を示し、本発明の実施態様に従って、異なるモードで機能する。図1Aと1Bによれば、DEIシステム100は、多色性X線ビームXB又は、X線管XTの点源から異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成するように機能することができるX線管XTを含むことができる。X線ビームXBは、異なる複数のエネルギーを持つ複数の光子を含むことができる。一例として、X線管XTは、X線ビームXBを放射することができる点源を有するタングステンX線管XTである。
図2は、本発明の一つの実施形態の固定X線管デザインに基づくX線管XTの概略図である。図2によれば、X線管XTは、電子ビームEBを生成するように構成された陰極Cを含む。陰極Cは、タングステン製である。陰極Cと陽極Aとの間に高電圧を加えると、X線管XTの中の真空室Vに高い電位差が形成される。電位差は陽極回路ANCを介して陽極に加えられる。X線管XTは、陰極Cを加熱するために構成されたフィラメントFを含むことができる。フィラメントFは、フィラメント回路FCにより、電源に連結されることができる。
【0037】
真空室Vは、X線管ハウジングXTHの中に設けられる。陰極Cを加熱することにより、陰極Cから電子が熱的に放射されてもよい。電子の放出点の周りを、静電的集束カップEFCが囲み、陽極へ向かう電子流を集束することを助ける。更に、陰極Cから放射された電子は真空室Vにより陽極Aに集束され、間隔の間の電子の速度は、回路に加えられる電圧によって定まる。
陰極Cから放射された電子は、陽極AのタングステンターゲットTに入射する。電子がターゲットTに衝突すると、X線ビームXBが生成される。X線ビームXBは、X線窓XWを経て真空室Vから出る。X線ビームXBは固有輝線と制動放射を有することができる。
X線発生器の一例として、SOVOLT TITAN 160 (GE Inspection Technologies of Ahrensburg, Germany)を挙げることができ、この他のX線発生器の例として、COMET MXR-160 シリーズのX線管、例えば、MXR-160HP/20 X線管(Comet AG of Flamatt, Switzerland)が挙げられる。この他のX線管として、タングステン以外の、例えば、モリブデン、鉄又は銅などの陽極を用いたものを挙げることができる。この他のターゲットとして、バリウム六臭化物ターゲットやサマリウムターゲットを挙げることができる。バリウム六臭化物ターゲットは、約30keVでX線を生成することができる。サマリウムのKα1ラインは約40keVでX線を生成する。一例として、X線管の陽極は回転する陽極であってもよく、そこからX線ビームが放射される。他の例として、X線管の陽極は固定された陽極であってもよく、そこからX線ビームが放射される。
【0038】
図1Aと1Bによれば、モノクロメーター結晶MCの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために、コリメーターC1を置くことができる。また、システム100は、モノクロメーター結晶MCの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために、X線管XTとモノクロメーター結晶MCとの間に置かれた追加の複数のコリメーターを含むことができる。このコリメーターは、X線ビームXBが通過してモノクロメーター結晶MCに向かうように、スリット又は孔を規定することができる。更に、コリメーターは鉛のような、X線ビームを遮断するいかなる適当な材料で作られてもよい。X線管XTとコリメーターC1との距離Xは約100mmであってもよい。
モノクロメーター結晶MCは、それに入射するX線ビームの一部の予め決められたエネルギーを選択するように構成されてもよい。例えば、モノクロメーター結晶MCは、所望のエネルギーを有していないX線ビームXBの光子の大部分を反射するように採用された、シリコン[333]モノクロメーター結晶である。タングステンX線管の場合、シリコンモノクロメーター結晶により反射されるビームエネルギーの範囲がある。この場合、X線ビームの固有輝線は59.13keV(Kα1)と57.983keV(Kα2)と制動放射であり、モノクロメーター結晶の狭い角度受容窓の範囲内に入る。この制動放射の輝度は、これら2つのKα輝線のものよりも数オーダー小さい。
【0039】
X線ビームXBはモノクロメーター結晶MCによりいくつかの方向に散乱される。アナライザー結晶ACの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために、コリメーターC1を置くことができる。このコリメーターC2は、X線ビームXBの一部が通過してアナライザー結晶ACに向かいアナライザー結晶ACで遮られるように、スリット又は孔を規定することができる。一例において、モノクロメーター結晶MCとアナライザー結晶ACとの距離Xは約500mmであってもよい。
アナライザー結晶ACは、特定方向に進む放射の量を測定するために、回転してもよい。この結晶システムの角度感度機能は、固有のロッキングカーブと呼ばれ、この性質は画像屈折コントラストを生成するために用いられる。X線光子が、このロッキングカーブのピークへ外れる場合、この強度は増大する。もし対象物の性質が、光子をこのロッキングカーブの下へ偏光させたり、ピーク反射位置から外れるものであれば、それは強度低下を引きこす。
試料又は対象物は、空気中で又は水のような媒体に浸漬して画像化することができる。この媒体を使用することは、空気と画像化すべき対象物の間の屈折率の差を縮小するために用いられ、空気と対象物の界面に顕著な屈折なしに、入射X線が試料を通過することができる。このことは、多くの対象物にとって必要なことではないが、DEIを応用する際に対象物の内部コントラストを改善するために利用することができる。
【0040】
一例として、モノクロメーター結晶MCは一方向へ狭い対称結晶である。対称結晶の格子面(X線ビームを回折させる原子層)は結晶の表面に平行である。対称結晶は、入射ビームの発散とサイズを保持する。比較すると、非対称結晶は入射ビームの発散とサイズを変更する。モノクロメーター結晶MCが対称結晶である場合、2次元の大きい画像面(例えば、約100mm×100mmの画像面)は、対称結晶を用いた検知器を用いて対象物を走査することにより達成することができる。非対称結晶に対して対称結晶が優れている点の一つは、非対称結晶は画像化ビームを用意するために(例えば、X線を選択して平行にするために)、大きいモノクロメーター結晶を必要とし、大きい結晶を完全にするには厳しい制限を課すことである。更に、X線ビームエネルギーが大きくなるにつれて非対称結晶のサイズも増大し、従って約59.13keVのX線については実行不可能になる。比較のため、例えば、本発明に従って、対称モノクロメーター結晶を用いた場合には、長さが約30mmのあまり大きくないサイズの結晶を用いて、59.13keVのX線を用いることができる。
【0041】
再度図1Aと1Bを参照して、対象物Oを画像化するための走査台STにより、対象物OをX線ビームXBの軌道上に置いてもよい。矢印Aが示すようにX線ビームXBの方向に直角に対象物Oを走査することができる。対象物Oを走査する間、X線ビームXBは対象物Oを透過し、モノクロメーター結晶MCと一致するシリコン[333]結晶のような、アナライザー結晶ACで分析することができる。アナライザー結晶ACに入射したX線ビームXBは回折して、デジタル検知器(又は画像プレート)DDで遮られる。デジタル検知器DDは、この遮られたX線ビームXBを検知することができ、この遮られたX線ビームXBを表す電気シグナルを生成する。
ある例においては、線光源捜査システムを用いてもよい。またある例においては、捜査システムが、対象物と検知器が1:1の対応関係にあってもよい。
電気シグナルはコンピューターCに伝達され、画像の分析を行い作業者に表示することができる。電気シグナルで表わされる画像は、画像のKα1とKα2エネルギーの両方の寄与を含むことができる。ある例においては、関心のあるエネルギーは59.319keVのKα1エネルギーである。この例の場合、Kα2エネルギーによって作り出される画像の特徴は、画像プロセシングを介して除去することができる。
X線ビームのKα2部分によって作り出される特徴が、所望の解像度よりも低い距離にある場合、この2つを一緒に用いて必要とされる全体の画像化時間を短縮することができる。解像度が高い用途の場合、このKα2エネルギー部分は陰影効果を引き起こし、画像プロセシングを介して除去することができる。コンピューターCは、吸収画像、屈折効果を示す画像、及び微小角散乱を描く画像を生成するように構成されることができる。これらは以下に詳説する。
【0042】
図1Bにおいて、モノクロメーター結晶MCは、X線ビームXBを扇状ビームとして伝播することができる。望まないX線をさえぎるために、コリメーターを用いてこの扇状ビームを平行にすることができる。その結果、明瞭なDEI画像を得ることができ、患者の照射線量を低くすることができる。2次元のビームに比べて、扇状ビームは、望まないX線をさえぎるための制御をしやすい。
図1Cに、X線管XT(図1Aと1Bに示した)からモノクロメーター結晶MCへのX線放射の線源C、対象物O、アナライザー結晶AC及び検知器DDの間の典型的な距離を示す。これらの構成部品を、用途によりそれぞれ適当な距離に置いてよい。この例において、DEIシステム100はマンモグラフィー用に構成されている。
図1Dと1Eを参照すると、上記で述べたように、これらの図は異なる操作モードにおけるDEIシステムを示す。このX線ビームの固有放射線Kα1(K1)とKα2(K2)はX線管XTにより発生する。放射線Kα1(K1)とKα2(K2)は同じ点源PSから生じる。上記で述べたように、モノクロメーター結晶MCは、望むエネルギーを持たないX線ビームの光子の大部分を阻止する。この場合、放射線Kα1(K1)とKα2(K2)と制動放射はモノクロメーター結晶MCを通過し、図に示されているように再度アナライザー結晶ACに向かう。
【0043】
コリメーターC2は放射線Kα1(K1)とKα2(K2)の経路上に置かれる。コリメーターC2は、放射線がアナライザー結晶ACに向かって選択的に通過することができる調整可能なスリットを規定する。図1Dに示す第一の操作モードにおいて、このスリットは、点源PSからの距離が約400mm、開口Xが0.6mmに調整され、放射線Kα1(K1)がコリメーターC2を通過し、Kα2(K2)がブロックされるように置かれる。こうして、コリメーターC2は放射線Kα1(K1)と非常に狭い範囲の制動放射以外の全てのX線を排除する。このモードにおいて、このX線ビームは発散性ではなく、そのため対象物Oと検知器DDは同じ走査速度で異なる方向で走査される。このモードは最大可能な面外解像度(DEIコントラストの方向)をもたらすが、X線ビームから一部のX線を除くことから、曝露時間を長くする必要がある。対象物の仮想の点源をVPSと呼ぶ。
【0044】
図1Dを参照すると、第2の操作モードにおいて、同様なエネルギーの放射線Kα1(K1)とKα2(K2)及び制動放射はコリメーターC2を通過する。コリメーターC2のスリットは、点源PSからの距離が約400mm、開口Xが2.0mmに調整され、放射線Kα1(K1)とKα2(K2)及び制動放射がコリメーターC2を通過するように置かれる。このモードにおいては、ビームの発散が考慮される。画像が不鮮明になることを避けるために、対象物Oと検知器DDは同じ角速度で走査される。対象物Oが置かれる試料台と検知器DDの走査速度は、線源と対象物の間の距離と線源と検知器の間の距離によって定めることができる(これらの距離はビームの経路に沿ってとられる)。このモードにおけるビームの発散性は、面外の解像度が低くなる結果をもたらすが、このモードは、より多くのX線が通過するという利点も有するので、曝露時間を短くすることができる。検知器DDの仮想の点源をDVPSと呼ぶ。円部分C1とC2はそれぞれ対象物Oの仮想点源と検知器DDの仮想点源を中心とする。
【0045】
更に、この第2の操作モードの一つの実施態様において、2つのKα線と異なるX線エネルギーの制動放射を捕まえることができる。従って、この実施態様において、このシステムは、固有放射エネルギーに限定されないX線エネルギーに調整可能である。この機能は、モノクロメーター結晶とアナライザー結晶の入射角を変えることにより、達成することができる。一例において、この機能は、ブラッグの法則に従って、入射角を11.4度にして、銅製フィルターをアルミニウム製フィルターに置き換えることにより達成することができる。この例において、30keVのX線エネルギーで画像化を行なうことができる。対象物が比較的薄い場合には、タングステン放射線エネルギーよりも低いX線エネルギーを用いることができる。
一例において、望まない結晶の反射や高調波を低減又は除去するために、銅製フィルターを約19keVの制動放射を除去するように構成することができる。このフィルターが無いと、画像が低品質になる可能性がある。
【0046】
図3は、本発明の一つの実施形態の図1A〜1EのDEIシステム100を示す概略図を示す。図3において、X線ビームXBはX線管XTで発生する。コリメーターC1とC2は、X線管XTの線源から約5.7度の角度でアナライザー結晶を通過するX線ビームの分散部分をブロックする。コリメーターC1とC2を通過するX線ビームの部分は、これらコリメーター中のスリットを通過するX線ビーム部分である。
システム100は、右と左の分析ヨウ化ナトリウム検知器D1とD2と、右と左のモノクロメーターヨウ化ナトリウム検知器D3とD4を備える。検知器D1〜D4は、分析用に整列するように構成される。これらの検知器は、モノクロメーター結晶MCとアナライザー結晶ACから放射される回折したX線ビームの強度を測定するために用いられる。システムの整列のために、検知器D1とD2は、アナライザー結晶ACの次に置かれる。このアナライザー結晶が所望の角度に調整されていない場合には、検知器D1とD2により測定される強度は調整されていないことを示すので、システムを調整することができる。同様のことは、モノクロメーター結晶MCの次に置かれる検知器にもいえる。更に、検知器D1〜D4はリアルタイムにX線ビームXBを測定し、アナライザー結晶、D1及びD2、chi(X線ビームの経路に沿った軸について測定された角度)又はモノクロメーター結晶、chi、D3及びD4を調整するために用いることができる。これらの検知器を用いて、モノクロメーター結晶MCとアナライザー結晶ACをセットし、測定し、調整することは、DEIシステムの画像を成功裏に取得するために重要なことである。
【0047】
図4は、本発明の一つの実施形態の図1A〜1EのDEIシステム100を使用して対象物Oを画像化する典型的な方法のフローチャートを示す。図4のブロック400において、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームが生成することができる。例えば、X線管XBにより生成するX線ビームXBは多色性エネルギー分布を持つ。更に、例えば、X線管XBを、このようなX線ビームを生成させるために、少なくとも50kWのパワーを持つようにセットすることができる。代替として、例えば、いくつかの医療用途、研究及び開発、更に小動物の画像化などのために、X線管XBのパワーを50kW以下(例えば、約30kW)にセットすることができる。比較的小さいパワーを使うことの利点は、経費削減である。この第一のX線ビームは、約10keV〜約60keVの範囲のビームエネルギーを持つことができる。一例として、この第一のX線ビームをシンクロトロンにより生成させることができる。
【0048】
ブロック402において、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成するように、第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター結晶MCを、予め決めた位置に置くことができる。例えば、モノクロメーター結晶MCの表面をX線ビームXBの経路上に置いて、そのX線ビームXBを遮ることができる。上記で述べたように、モノクロメーター結晶MCは、所望のエネルギーを有していないX線ビームXBの光子の大部分を反射するように採用されることができる。そのため、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成することができる。一例として、モノクロメーター結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して、モノクロメーター結晶MCの表面を約5度と20度の間の角度に置くことができる。この例の場合、[333]面の反射に、これらの角度を用いることができる。代替として、モノクロメーター結晶MCの表面の位置に他の適当な角度を用いてもよい。他の例では、モノクロメーター結晶MCの表面に入射するX線ビームXBの経路に対して、モノクロメーター結晶MCの表面を約1度と20度の間の角度に置くことができる。[333]と[111]の反射を用いた場合、10〜70keVのエネルギー範囲について、この角度範囲は約1度と約40度の間であることができる。
【0049】
ブロック404において、第二のX線ビームの経路上に対象物Oを置き、該対象物Oを該第二のX線ビームが透過して、該対象物Oから透過したX線ビームが放射される。例えば、対象物Oが第二のX線ビームの経路上に移動できるように、対象物Oを走査台STの上に置くことができる。
ブロック406において、透過したX線ビームを、アナライザー結晶AC上の入射角に向けることができる。例えば、アナライザー結晶ACを、透過したX線ビームの経路上で、入射角でこのX線ビームを遮るようにな角度で置くことができる。アナライザー結晶ACで遮られたX線ビームの少なくとも一部は回折して検知器DDに向かうことができる。
ブロック408において、アナライザー結晶ACから回折したビームにより、対象物Oの画像を検知することができる。例えば、検知器DDはアナライザー結晶ACから回折したビームを検知することができる。この回折したビームは、以下の典型的な検知器のいずれかで検知できる:検知した画像をデジタル化するよう構成された検知器;X線フィルム;及び画像プレート。一例として、アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク及び/又はその近傍で、アナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知することができる。検知された画像は処理されて、コンピューターCを介して使用者に表示されることができる。
【0050】
対象物の画像を検知する他の例において、第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶ACから放射される第一の回折ビームから、第一の角度の対象物Oの画像を検知することができる。対象物Oの第一の角度の画像を、アナライザー結晶ACの低ロッキングカーブ角度で検知することができる。更に、第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶ACから放射される第二の回折ビームから、第二の角度の対象物Oの画像を検知することができる。対象物Oの第二の角度の画像を、アナライザー結晶ACの高ロッキングカーブ角度で検知することができる。これら第一と第二の画像をコンピューターCで結合して一つの回折画像を導き出すことができる。更に、コンピューターCは、この回折画像から、対象物Oの重量密度画像を導き出すことができる。重量密度画像は、コンピューターCのディスプレーを介して使用者に表示されることができる。
図5は、本発明の一つの実施形態の図1A〜1E及び3に示されたDEIシステム10のアナライザー結晶ACの側面図を示す。図5は、固有放射線Kα1とKα2がアナライザー結晶ACの表面で回折する様子を示す。一つ以上のX線エネルギーを調節することは改善されたX線フラックスをもたらすことができる。
【0051】
他の実施態様において、本発明のDEIシステムは、X線管から放射される特定のX線を除くように設計されたミスマッチ結晶を含むことができる。この設計において、モノクロメータで固有X線ビームのKα2放射線を除くことができる。図6Aと6Bは、本発明の一つの実施形態のミスマッチのモノクロメーター結晶を含み、対象物の画像を作るように機能するDEIシステム600の概略図、上面図及び側面図である。図6Aと6Bにおいて、DEIシステム600はX線ビームXBを生成するように機能するX線管XTを含む。第一のモノクロメーター結晶MC1の角度受容窓の外のX線ビームの一部をブロックするように、コリメーターC1を置くことができる。X線ビームXBのブロックされていない部分は、第一のモノクロメーター結晶MC1で遮られ、第二のモノクロメーター結晶MC2で遮られる方向に屈折されることができる。非常に狭い範囲の光子エネルギーを選択して、第二のモノクロメーター結晶MC2の方向に向いた回折した単色ビームをもたらすように、第一のモノクロメーター結晶MC1を、ブラッグの法則に従って特定の角度に調節することができる。X線管XTからX線ビームXBが分散するため、第一のモノクロメーター結晶MC1は、近いエネルギーの固有放射線Kα1とKα2及び制動放射を含むエネルギー範囲を回折することができる。第二のモノクロメーター結晶MC2の機能は、このビームを再度入射ビームに平行な方向に向けて、アナライザー結晶ACと整列させることである。システムを特定エネルギーに調節する場合、ビームの位置を見出すために、この第一のモノクロメーター結晶を最初に調節し、次に第二のモノクロメーター結晶を調節する。
【0052】
第二のモノクロメーター結晶を調節したら、アナライザー結晶ACを走査して、結晶上のビームの位置を見つける。この結晶を見つけたビーム位置に固定することは、ラジオのダイアルを特定放送局に合わせることに似ており、アナライザー結晶の角度位置を第二のモノクロメーター結晶と完全に整列させた場合には、強度がシャープに立ち上がる。一旦アナライザー結晶ACを整列させると、システムは調整されたことになり、使用すること準備ができたことになる。
ミスマッチ結晶を設計する際に、X線管から放射される特定X線を除くように第一と第二のモノクロメーター結晶MC1とMC2を構成することができる。モノクロメーター結晶MC1とMC2を用いて、異なる結晶のエネルギーに対する角度受容を利用することにより、X線ビームのKα2放射線を除くことができる。一例として、モノクロメーター結晶MC1とMC2を、それぞれゲルマニウム[333]とシリコン[333]モノクロメーター結晶とすることができる。
【0053】
図7は、発明の一つの実施形態の図6Aと6BのDEIシステム600を使用して対象物Oを画像化するための典型的な方法のフローチャートを示す。図7のブロック700において、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームが生成することができる。例えば、X線管XBにより生成するX線ビームXBは多色性エネルギー分布を持つ。更に、例えば、X線管XBを、このようなX線ビームを生成させるために、少なくとも50kWのパワーを持つようにセットすることができる。この第一のX線ビームは、約10keV〜約60keVの範囲のビームエネルギーを持つことができる。一例として、この第一のX線ビームをシンクロトロンにより生成させることができる。
ブロック702において、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成するように、第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター結晶MC1を、予め決めた位置に置くことができる。例えば、モノクロメーター結晶MC1の表面をX線ビームXBの経路上に置いて、そのX線ビームXBを遮ることができる。上記で述べたように、モノクロメーター結晶MC1は、所望のエネルギーを有していないX線ビームXBの光子の大部分を反射するように採用されることができる。そのため、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成することができる。一例として、モノクロメーター結晶MC1の表面に入射するX線ビームXBの経路に対して、モノクロメーター結晶MC1の表面を約5度と20度の間の角度に置くことができる。
【0054】
ブロック704において、第二のX線ビームを遮り、この第二のX線ビームをアナライザー結晶ACの方向に向けるように、第二のモノクロメーター結晶MC2を置くことができる。一例として、第二のX線ビームが、コリメーターC2を通過するX線ビームXBの一部の経路と平行な経路に沿うような方向に向かうように、第二のモノクロメーター結晶MC2を置くことができる。他の例では、モノクロメーター結晶MC1とMC2がミスマッチであることができる。また他の例では、モノクロメーター結晶MC1とMC2をX線ビームXBの予め決められた部分を除くように選択されることができる。また他の例では、モノクロメーター結晶MC1とMC2を、ゲルマニウム[333]とシリコン[333]モノクロメーター結晶のいずれかとすることができる。
ブロック706において、第二のX線ビームの経路上に対象物Oを置き、該対象物Oを該第二のX線ビームが透過して、該対象物Oから透過したX線ビームが放射される。例えば、対象物Oが第二のX線ビームの経路上に移動できるように、対象物Oを走査台STの上に置くことができる。
ブロック708において、透過したX線ビームを、アナライザー結晶AC上の入射角に向けることができる。例えば、アナライザー結晶ACを、透過したX線ビームの経路上で、入射角でこのX線ビームを遮るようにな角度で置くことができる。アナライザー結晶ACで遮られたX線ビームの少なくとも一部は回折して検知器DDに向かうことができる。
【0055】
ブロック710において、アナライザー結晶ACから回折したビームにより、対象物Oの画像を検知することができる。例えば、検知器DDはアナライザー結晶ACから回折したビームを検知することができる。この回折したビームは、以下の典型的な検知器のいずれかで検知できる:検知した画像をデジタル化するよう構成された検知器;X線フィルム;及び画像プレート。一例として、アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク及び/又はその近傍で、アナライザー結晶から回折したビームにより、対象物の画像を検知することができる。
この例においては、これらのピークはロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にあることができる。検知された画像は処理されて、コンピューターCを介して使用者に表示されることができる。
対象物の画像を検知する他の例において、第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶ACから放射される第一の回折ビームから、第一の角度の対象物Oの画像を検知することができる。対象物Oの第一の角度の画像を、アナライザー結晶ACの低ロッキングカーブ角度で検知することができる。更に、第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶ACから放射される第二の回折ビームから、第二の角度の対象物Oの画像を検知することができる。対象物Oの第二の角度の画像を、アナライザー結晶ACの高ロッキングカーブ角度で検知することができる。これら第一と第二の画像をコンピューターCで結合して一つの回折画像を導き出すことができる。更に、コンピューターCは、この回折画像から、対象物Oの重量密度画像を導き出すことができる。重量密度画像は、コンピューターCのディスプレーを介して使用者に表示されることができる。
【0056】
図8〜10は、異なる波長におけるゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモン(DuMond)ダイアグラムのグラフを示す。特に図8は、タングステンのKα1とKα2に相当する波長範囲内にあるゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモン(DuMond)ダイアグラムのグラフを示す。図9は、タングステンのKα1に相当する波長範囲内にあるゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモン(DuMond)ダイアグラムのグラフを示す。タングステンのKα1(59.319keV)に相当する波長において、ゲルマニウム[333]面とシリコン[333]面は完全に重なり、第一の遮られた結晶(即ち、ゲルマニウムモノクロメーター結晶)と第二の遮られた結晶(即ち、シリコンモノクロメーター結晶)を通過して回折する際に、Kα1エネルギーが除かれなかったことを示す。しかし、より長い波長においては、与えられた角度において、それぞれの結晶に受け入れられる波長が分離される。図10で、タングステンのKα2(57.982keV)に相当する波長において、ゲルマニウム[333]とシリコン[333]を受け入れる波長の重なりは無い。これを図6Aと6Bに示された例で記載されたタングステンの線源に適用すると、ゲルマニウムとシリコンモノクロメーター結晶を平行に置いて、Kα1波長におけほとんど損失の無い反射と、Kα2波長の完全な除去とが可能になる。
【0057】
図11は、本発明の一つの実施形態の図6Aと6BのDEIシステム600のゲルマニウムモノクロメーター結晶MC1とシリコンモノクロメーター結晶MC2の側面図を示す。図11において、タングステンX線管のKα1波長がほとんど損失の無く反射し、Kα2波長が完全に除去されるように、モノクロメーター結晶MC1とMC2は平行な構成で示されている。
再び図6Aと6Bを参照すると、モノクロメーター結晶MC1とMC2を通過するX線ビームXBの一部は、異なる様々な方向へ散乱される。コリメーターC2は、アナライザー結晶ACの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために置かれたスリット又は孔を有することができる。
走査台STにより画像化するために、対象物OをX線ビームXBの経路上に置くことができる。対象物Oを走査している間、X線ビームXBは対象物Oを通過し、アナライザー結晶ACにより分析されることができる。このアナライザー結晶ACは、モノクロメーター結晶MC2に適合するシリコン[333]結晶であってもよい。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは回折してデジタル検知器DDで遮られることができる。デジタル検知器DDは、遮られたX線ビームXBを検知して、遮られたX線ビームXBにより表される電気信号を生じ、これはコンピューターCに伝えられる。コンピューターCは表された信号を分析し、オペレーターに対象物Oの画像を示す。特に、コンピューターCは、吸収画像、屈折効果を示す画像、及び微小角散乱を描く画像を生成するように構成されることができる。これらは以下に詳説する。
【0058】
図12は、本発明の一つの実施形態のミスマッチのモノクロメーター結晶を含み、対象物Oの画像を作るように機能するDEIシステム1200の概略図を示す。図12を参照すると、DEIシステム1200は矢印Aで示される方向を向いたX線ビームXBを生成するように機能するタングステンX線管XTを含むことができる。ベリリウム(Be)窓BWを、X線ビームXBを遮るために、X線管XTのビーム出口端BEにおくことができる。Be窓BWの機能は、低エネルギーX線をフィルターし、X線管XTの真空室内をシールすることを含む。Be窓BWは、ハウジングH1に保持され、ビーム出口端BEに接続するように構成される。
アルミニウム(Al)フィルターAFを、Be窓BWを通過するX線ビームXBを遮るために、Be窓BWの下流におくことができる。AlフィルターAFをハウジングH2に保持し、Be窓BWに接続するように構成されることができる。AlフィルターAFを、望まれない低エネルギーX線を減衰させるために用いることができる。
【0059】
モノクロメータータンクMTを、AlフィルターAFを通過するX線ビームXBを遮るために、AlフィルターAFの下流におくことができる。モノクロメータータンクMTは、ミスマッチ第一及び第二モノクロメーター結晶MC1及びMC2、並びにX線ビームXBが通過できるスリットを規定する一組のコリメーターC1及びC2を含むことができる。モノクロメータータンクMTは、X線ビームXBの入口端E1と出口端E2を含むことができるコリメーターC1及びC2は、X線ビームXBの一部を平行化する。第一及び第二モノクロメーター結晶MC1及びMC2は、X線管XTから放射される特定のX線を除くために設計されたミスマッチ結晶となるように構成される。モノクロメーター結晶MC1及びMC2は、X線ビームのKα2放射線を除くように用いられることができる。一例として、モノクロメーター結晶MC1及びMC2は、それぞれ、ゲルマニウム[333]モノクロメーター結晶及びシリコン[333]モノクロメーター結晶であってもよい。モノクロメータータンクMTは、特定エネルギーのX線ビームXBを選択するために、モノクロメーター結晶MC1及びMC2を回転させるための機構を内蔵することができる。
システム1200は、モノクロメータータンクMTの下流に置かれた、この他のコリメーターC3、鉄製の小室IC、及びシャッターアッセンブリーSAを含むことができる。X線ビームXBの少なくとも一部は、モノクロメータータンクMTの端E2を出る際に、X線ビームXBを平行化し、X線ビームXBの少なくとも一部をブロックするために、モノクロメータータンクMTの下流に置かれたコリメーターC3内のスリットを通過することができる。鉄製の小室ICは、この小室を通過するX線光子はイオン化して電位差を形成するという原理に基づいて、X線フラックスを測定するために用いられる。シャッターアッセンブリーSAは、X線ビームXBを選択的にブロックし及び通過させるよう機能することができ、そのため、対象物Oを選択的にX線ビームXBに曝すことができる。
【0060】
対象物Oは、画像化を行なう間、X線ビームXBの経路を横切りながら走査するために、走査台アッセンブリーSSAにより保持されることができる。対象物Oを走査する間、X線ビームXBは対象物Oを通過し、アナライザー結晶ACにより分析されることができる。このアナライザー結晶ACは、第二モノクロメーター結晶MC2とマッチするシリコン[333]結晶であってもよい。アナライザー結晶ACは、ここに記載するように第二モノクロメーター結晶MC2に対して適当な角度にまで回転することができる。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは回折して、移動可能なデジタル検知器DDにより遮られることができる。検知器DDは、遮られたX線ビームXBを検知し、遮られたX線ビームXBを示す電気信号を生成し、この信号はコンピューターCに送られることができる。コンピューターCは、このシグナルを分析し、オペレーターに対象物Oの画像を表示することができる。特に、コンピューターCは、吸収画像及び屈折効果を示す画像を生成するように構成されることができる。これらは以下に詳説する。DEIシステム1200は、DEI技術に従って、微小角散乱効果を示す画像を表示するように改変することができる。
テーブルTは、花崗岩の表面を有することができ、その上に、モノクロメータータンクMT、コリメーターC3、鉄製の小室IC、及びシャッターアッセンブリーSAを置くことができる。テーブルTは、複数の脚Lを持ち、システム1200を安定化させるために、それぞれ床Fとその下端の間にゴム製パッドRPを有することができる。これらは以下に詳説する。テーブルTは、アナライザー結晶ACを垂直方向に上下に動かすように構成された接線アームTAを備えることができる。
【0061】
図13−16は、本発明の一つの実施形態のX線管XTと足場SC上のモノクロメーター単結晶MCを有するモノクロメータータンクMTの典型的配置の概略図を示す。特に、図13は典型的配置の側面図を示す。図13において、足場SCは、互いに結合する複数の台PLと棒RDを含み、モノクロメータータンクMTに対してX線管XT(XTと表示される穴の中にその一部が固定される。)を固定する。X線管XTとモノクロメータータンクMTは、X線管XTから放射されるX線ビームXBが窓A1を通してモノクロメータータンクMTに入り、モノクロメーター結晶MCの角度受容窓内に入るように、相互に正確に位置する。モノクロメーター結晶MCから回折したX線ビームXBは、窓A2からモノクロメータータンクMTを出る。図13−16中の数字で示される距離の単位は特記しない限りインチである。
図14は、図13で示された典型的配置の上面図である。図14において、X線ビームXBが、X線管XT内の点源Pから広がる扇形を形成することが示されている。
図15と図16は、それぞれ図13と図14で示された典型的配置の別の側面図と別の上面図である。図15と図16は、遮蔽Sを示すために、それぞれ側板と上板のない配置を示す。遮蔽Sは、X線ビームXBが望まない方向へ放射することを防止する機能を持つ。更に、適当な遮蔽は必要に応じて医療用装置内に設けられる。
【0062】
図17−26は、本発明のDEIシステムの典型的部品の写真を示す。特に図17はX線管XTのX線ビームの出口の写真を示す。X線ビームはX線管XTから、Be窓BWを通って放射される。Be窓BWは、X線管XTに取り付けられ、X線ビームを遮るように置かれる。Be窓BWは、二層の内部鉛(Pb)遮蔽PSを備える。
図18は、図17に示すX線管XTのX線ビームの出口の別の写真を示す。この写真において、アルミニウムフィルターAFとコリメーターC1は、X線管XTに取り付けられ、X線ビームを遮るように置かれる。アルミニウムフィルターAFの厚さは約2mmである。コリメーターC1は、タンタル製であり、その厚さは約1/8インチ(即ち、約3.2mm)である。一例として、スリットのサイズは、X線管上のスポットサイズよりも僅かに大きい。一例として、スリットのサイズは1mmであり、X線管上のスポットサイズ0.4mmである。このスリットは、垂直に平行化された扇型ビームを提供する。
図19は、アルミニウム製フィルターAFとコリメーターC1と別のコリメーターC2の写真を示す。この写真において、各部品は図示のために分解されている。これらの部品は組み上げられた状態においては、相互にぴったり適合されている。
【0063】
図20は、X線管XTの端から望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐためのX線管の端の遮蔽蓋S1の写真である。遮蔽蓋S1は約1/8インチ(即ち、約3.2mm)の鉛シートを、X線管XTの端に適合する蓋の形に切断して曲げたものである。図21は、遮蔽蓋S1の写真である。この蓋は、本体から取り外され、X線管XTの端に適合させるために切断されているが、曲げられていない。
図22は、X線管XTの側面から望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐためのX線管XTの端に近い場所に設置された遮蔽S2の別の部分の写真を示す。遮蔽S2は、約1/16インチ(即ち、約1.6mm)の鉛シートを、X線管XTの側面に適合する形に切断して曲げたものである。約1/16インチ(即ち、約1.6mm)の鉛シートは150keVのX線を1/1000に減少させる。
図23は、モノクロメータータンクMTから望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐための鉛遮蔽S3を含むモノクロメータータンクMTの写真を示す。遮蔽S3は、厚さが約1/4インチ(即ち、約6.4mm)の鉛シートであり、X線ビームの望ましい部分を放射するためのスリットSLを含む。X線管から放射されたX線ビームは、遮蔽S3のスリットSLを経由してモノクロメータータンクMTに入る。
図24は、モノクロメータータンクMTから望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐための鉛遮蔽S4を含むモノクロメータータンクMTの写真を示す。
遮蔽S4は、厚さが約1/2インチ(即ち、約12.7mm)の鉛シートであり、X線ビームの望ましい部分を放射するためのスリットSLを含む。X線管から放射されたX線ビームは、遮蔽S4のスリットSLを経由してモノクロメータータンクMTから出る。
【0064】
図25は、互いに作動状態にあるX線管XTとモノクロメータータンクMTの写真を示す。
図26は、モノクロメータータンクMTの内部部品の正面写真を示す。特にモノクロメータータンクMTが示されている。
図27は、本発明の一つの実施形態の典型的DEIシステム2700の上から見た透視図である。図27において、DEIシステム2700は複数のX線ビームXBを生成するタングステン陽極を有するX線管XTを含んでもよい。コリメーターC1は、モノクロメーター結晶MCの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために置かれる。この例において、モノクロメーター結晶MCはシリコン結晶である。コリメーターC2は、アナライザー結晶ACの角度受容窓の外のX線ビームXBの一部をブロックするために置かれる。
コリメーターC2を通過するX線ビームXBの一部を、銅フィルターFTRにより遮り、熱を遮断し、X線管XTが生成する20keVの制動放射X線を減衰するように構成することができる。与えられたブラッグ角においては、モノクロメーターを通り抜けることのできる望ましくない結晶反射がありうる。一例では、59.13keV[333]反射を選択するために約5.7度のブラッグ角を用いた場合、19.71keV[111]X線を通過させることができる。これらのX線がモノクロメーター結晶MCで回折するならば、これらは画像をぼやけさせ、画像の品質を落とす。銅フィルターFTRは、X線ビームXBから放射されモノクロメーター結晶MCで回折する低エネルギーのX線、特に、19.71keVの制動放射を減衰するために用いられる。
【0065】
アナライザー結晶ACを、銅フィルターFTRを通過するX線ビームXBの少なくとも一部を遮るために置くことができる。更に、対象物の画像を取得するために、対象物を走査台STに載せてX線ビームXBの経路上に置くことができる。対象物Oを走査する間、X線ビームXBは対象物を通過し、アナライザー結晶ACにより分析されることができる。このアナライザー結晶ACは、モノクロメーター結晶MCにマッチするシリコン[333]結晶であってもよい。アナライザー結晶ACに入射するX線ビームXBは回折し、デジタル検知器DDで遮られる。デジタル検知器DDは、この遮られたX線ビームXBを検知することができ、この遮られたX線ビームXBを表す電気信号を生成する。電気信号はコンピューターCに伝えられ、この信号は分析され、オペレーターに表示される。コンピューターは、吸収画像及び屈折効果を示す画像を生成するように構成されることができる。これらは以下に詳説する。
図28は、本発明の一つの実施形態の典型的モノクロメーター結晶MCの側面図、上面図及び正面図を含む概念図を示す。図28において、モノクロメーター結晶MCの側面図、上面図及び正面図モノクロメーター結晶MCの側面図、上面図及び正面図はそれぞれSV、TV及びFVと表示されている。モノクロメーター結晶MCの寸法は、図中に示されており、その数値は±0.5mmの誤差がありうる。この代わりに、モノクロメーター結晶MCは、画像化用途により部分的に決められる、この他の適当な寸法であってもよい。モノクロメーター結晶MCの表面の向きを、その結晶の大きな表面に平行な格子平面と一致させてもよい。組み立てられたときに、他のより小さな直交表面の向きを参考のために記されてもよい。典型的なモノクロメーター結晶MCは、A型のゲルマニウム[111]モノクロメーター結晶及びA型のシリコン[111]モノクロメーター結晶でありうる。
モノクロメーター結晶MCは、この結晶の上部に、歪を逃がすため切れ込みCを有していてもよい。この切れ込みCの幅は約1/16インチ(即ち、約1.6mm)である。この代わりに、この幅はこの他の適当な寸法であってもよい。切れ込みCは、結晶を取り付けるための部品を除くことができ、アナライザー結晶ACとモノクロメーター結晶MCの残りの部分の歪を無くすることができる。アナライザー結晶ACやモノクロメーター結晶MCの画像化部分に歪やストレスがあると、回折性能を変化させ、システムの性能に悪い影響を与える。
【0066】
画像化の手順とDEI及びDEIシステムを使うための品質管理
本発明のミスマッチ結晶デザインを用いて構成されたDEIシステムを用いて画像を取得することは、まず与えられた実験条件にあわせて、適切なビームエネルギーを選択することから始める。一例として、ビームエネルギーを約10keV〜約60keVの範囲から選択してもよい。ブラッグ則を用いて所望の波長のための適切な角度を計算することにより、画像化のために特定のエネルギーを選択することができる。一例として、選択されたビームエネルギー以外の入射X線ビームの全てのエネルギーを排除するために、モノクロメーター中の第一の結晶を一軸に対して特定の角度に調整することができるようにする。下記の表1は、18keV〜60keVの範囲の画像を得るために、第一のモノクロメーター結晶の典型的な角度を示す。これらの角度は、シリコンについてブラッグ則、λ=2dsin(θ)を用いて計算したこれらの角度は、モノクロメーター結晶MCで回折するX線ビームの入射角(θ)と回折した角度(θ)を規定する。検知器を、選択されたX線ビームエネルギーについて第一の結晶で用いたブラッグ角度の2倍である2θの角度に置く。
【0067】
表1:画像を得るための第一のモノクロメーター結晶のシリコン[333]反射の典型的な角度
【表1】
【0068】
ミスマッチ結晶デザインを用いて構成されたDEIシステムは、注意深く調整されて整列されるべき3つの結晶、モノクロメーター中の2つの結晶、及びアナライザー結晶から成る。例えば、DEIシステム600は、調整と整列ができる、モノクロメーター結晶MC1とMC2及びアナライザー結晶ACを含む。第一の結晶(例えば、図6Aと6Bに示すモノクロメーター結晶MC1)とアナライザー結晶(例えば、図6Aと6Bに示すアナライザー結晶AC)は、各エネルギーについて計算された角度(θ角)に調整される。例えば、システムを25keVに調整するために、第一のモノクロメーター結晶とアナライザー結晶を13.72度にセットすることができる。デジタル検知器アッセンブリーをアナライザー結晶の角度の2倍、即ち27.44度にセットすることができる。
第二の結晶(例えば、図6Aと6Bに示すモノクロメーター結晶MC2)を、chi角度と表示する水平方向に合わせることができる。この水平方向の整列が、これらの結晶間に外れる場合には、画像において左から右へ強度がシフトするかもしれない。二つのイオンチャンバーを用いて、モノクロメーター結晶とアナライザー結晶の両方から放射され、内向き領域と外向き領域に分けられるフラックスを測定することができる。線源からデジタル検知器アッセンブリーへの方向からX線ビームを見ると、内向き領域は右側に、外向き領域は左側になる。複数のロッキングカーブピークが整列していることを確かめるために、これら内向き領域と外向き領域を抽出することができる。整列していない場合には、chi角度を調整することができる。図29は、モノクロメーター結晶の透視図であり、内側領域と外側領域を示し、回転角ChiとThetaを示す。
【0069】
DEIシステムにより注がれる線量は、いくつかの方法により調整することができる。例えば、アルミニウムフィルターの厚さを変更したり、X線ビームの経路上に吸収材を置くことにより、線量を調整することができる。また、第二のモノクロメーター結晶を、そのロッキングカーブのピークから離調することによっても、線量を減少させることができ、必要ならば、回折強度を劇的に減少させることができる。一例において、X線管をシンクロトロンに代えることができ、この場合、第一のモノクロメーター結晶に入射するフラックスをそのシンクロトロンの環状電流により決めることができる。
サンプル取得時間は、段階/秒で測定されたサンプル台の変換速度を用いて、入射フラックスにより決めることができる。この線量を調整することにより、段階/秒で測定された、走査速度を上げたり下げたりすることができる。ノイズ量が一定のところで画像プレートを使用する場合には、走査速度は決定的な因子ではないが、積分デジタル検知器を使用する場合には、ノイズ量が部分的に獲得時間によって定まるため、走査速度を考慮しなければならない。デジタル検知器を使用する場合、可能な限り走査速度が最大になるように、DEIシステムを調整すべきである。
【0070】
一旦DEI又はDEIシステムを適切なエネルギーと線量に調整したら、画像化する対象物をサンプル台の上に載せ、整列させる。一例では、X線ビームの最大幅は120mmであり、これは得られる画像の幅を物理的に制限する。幅が120mm以下のデジタル検知器又は画像プレートを使用する場合、視野が制限されうる。一例では、サンプル台の垂直方向の最大変位が約200mmである。しかし、サンプルの高さには物理的制限は無い。対象物の特定領域を画像化するために、そのシステムにとって、この領域がこの200mm範囲内にあるかどうかを決めなくてはならない。X線ビームの位置を固定してもよく、その場合、対象物の垂直領域は、そのビームに対する対象物の相対的位置によって決めることができる。
DEIシステムで用いられる結晶は、結晶の与えられた領域で光子を回折することができる能力と同様に考えられるが、その結晶の構造は、強度が強められたり弱められたりする副次的な領域があるような構造である。対象物は固定された寸法のビームで走査されるので、画像の垂直方向の寸法にわたって"グリッチ"で汚される。この"グリッチ"はしばしば垂直方向の線に適用されるが、その影響は予期されたものであり、システムの予期された性能と考えられるべきである。
【0071】
システムの性能についての実験
X線管を備えたDEIやDEIシステムを組み立てる前に、X線源としてシンクロトロンを用いて試験目的の実験を行なった。まず、モリブデンとタングステンに基づくX線源を想定した18keVと59keVのX線を用いた画像化時間とフラックスの要求値を計算した。更に、システムの構成に、ピクセルサイズやピクセルあたりの光子数のようないくつかの仮定を設けた。これらの値は、必要に応じて概算することができるので、この例では、5cmの組織(水)を、ピクセルあたり1000の光子数で横切る、100ミクロンのピクセルサイズを用いる。
ピクセルあたりの光子数を、この場合5cmの水である対象物を通過する際の光子の減衰で除して、100ミクロン平方ピクセルに必要な光子数を計算する。
【数14】
この結果、18keVのX線源について、100ミクロン平方ピクセルについてそれぞれ約1.6×105の入射光子が必要である。59keVのX線の減衰は、18keVのX線における場合よりもはるかに小さく、その結果、100ミクロン平方ピクセルについて、2.9×103の入射光子が必要である。
【0072】
線状放射源を用いた、固定角度への入射X線フラックス
DEI及びDEIシステムに使用される結晶光学部品は、高度に選択的な角度ノッチフィルターとして機能し、適切なエネルギー又は角度発散性を持たない光子をX線ビームから除去する。X線管に基づくX線源において、光子はほぼ全ての立体角に放射することが期待される。フラックス要求値を決定するためには、検知器と結晶光学部品によって定まる立体角に基づいて、このフラックスを計算しなければならない。いかなるX線管も多色性エネルギー分布を持ち、結晶システムはブラッグ則で規定される放射線のうちの一つを選択する。完全結晶を用いれば、与えられた反射に対するピークの反射性は1に非常に近いことが期待され、統合された反射率は、ブラッグの通常の方向の固有反射幅又はダーウィン幅に近くなる。ブラッグ[333]反射を有するシリコン結晶を仮定すると、18keVと59keVのダーウィン幅は以下である:
18keV Si[333]ダーウィン幅=2.9×10−6ラジアン、及び
59.3keV Si[333]ダーウィン幅=0.83×10−6ラジアン
結晶格子平面に平行に進むX線はブラッグ平行として知られており、ブラッグ平行方向の角度受容度は結晶では決まらず、検知器の解像度で決まる。画像化されるべき対象物が、X線源から1mの距離にあり、100ミクロン空間解像度が必要とされるならば、ブラッグ平行受容角度は100マイクロラジアンである。ブラッグ平行受容角度が100マイクロラジアンである場合、18keVと59keVのステラジアンあたり必要とされる光子数は以下のとおりである:
【数15】
【0073】
X線管フラックス
X線管に基づくX線源は、そのX線スペクトルに、固有放射線と制動放射の二種の成分を有する。DEI及びDEIシステムに使用される結晶光学部品は、管のターゲットの固有放射線を中心とする極めて狭いエネルギーバンドを一つ選択することが許される。この場合、モリブデンのKα1(17.478keV)とタングステンのKα1(59.319keV)を用いて、各線源の放射線のフラックを決めることができる。
実際の画像化条件下において生成するフラックスを決定するために、複数の電圧と電流におけるモリブデンとタングステンのX線管のモンテカルロシミュレーションを行なった。10kWの電力と75kVの加速電圧を用いたモリブデンターゲットを用いた場合、Kα1に放射されるフラックスは以下のとおりである:
【数16】
50kWの電力と150kVの加速電圧を用いたタングステンターゲットを用いた場合、このKα1放射は以下のとおりである:
【数17】
【0074】
画像取得時間の予測
アナライザーがピーク位置から一定値(80%)離調した場合、屈折コントラストといくつかの減衰コントラストを含む露光を得ることができる。これらの計算は、DEIシステムがモノクロメーター単結晶とアナライザー結晶を有することを仮定している。このシミュレーションの配置は、対象物をビームを通して走査する線状X線源を使用するNational Synchrotron Light Source(NSLS)のX15Aビームライン(Brookhaven National Laboratory, Upton, New York)で用いられた構造に一致する。高さが10cmの対象物と100ミクロンのピクセルサイズ(0.1mm)を用いる場合、1000走査線が必要とされる。
【数18】
10kWの電力と75kVの加速電圧を用いたモリブデンターゲットを用いた場合(約18keV):
【数19】
50kWの電力と150kVの加速電圧を用いたタングステンターゲットを用いた場合(約59.3keV):
【数20】
上記のパラメーターのモリブデンターゲットを用いた場合、最大反射率が80%のロッキングカーブ上の一点における単一画像を得るために必要な時間は約2.2時間である。同じ反射率を用いてタングステンを用いた場合、必要な時間は約4.6分間である。ピクセルあたり必要な光子のような変数や、線源から対象物までの距離を変えることにより、画像化時間を更に減らすことができるかもしれない。
【0075】
線源から対象物までの距離を1000mmにしてブラッグ[333]反射を用いて計算したデータに基づくと、画像取得時間を他の反射や距離を用いて予測することができる。DEIとDEIに使用することのできる結晶反射には、ブラッグ[333]反射とブラッグ[111]反射の二つがある。DEIにおける両方の反射と減衰コントラストの大部分は、角度の変化に対してより大きなコントラストをもたらす急な傾きをもつアナライザー反射カーブの傾きによって決定される。屈折及び減衰コントラストから見た場合、ブラッグ[333]反射はブラッグ[111]反射より優れているかもしれないが、[333]反射からの回折フラックスは[111]反射よりも強度が約1オーダー小さい。図30は、シリコン[111]、[333]、[444]及び[555]の回折面を用いた、NSLS X15A ハッチ中の単色ビーム束を示すグラフである。フラックスが10倍になると、画像化時間を1/10に減らすことができ、用途によっては[111]反射が有利になることもある。ここでは線源から対象物までの距離を1000mmとして計算しているが、線源から対象物までの距離を縮めることによって画像化時間を更に短縮できる。線源から対象物までの光子強度は、1/r2に比例する。線源から対象物までの距離を1000mmから500mmに縮めると、その強度は4倍に増える。線源から対象物までの距離を支配するいくつかの因子があるが、顕著なものとして対象物のサイズが挙げられる。用途によっては必要に応じて、アナライザー/検知器アッセンブリーを線源に近づけたり線源から遠ざけたりすることができる。
【0076】
エネルギーが増加するに従って、アナライザーロッキングカーブの半値幅(FWHM)は小さくなる(例えば、18keVでは3.86マイクロラジアン、60keVでは1.25マイクロラジアン)。エネルギーに対するロッキングカーブの幅の例を表2に示す。表2は、18、30及び60keVにおける[333]アナライザーロッキングカーブのFWHMの測定値及び理論値を示す。[333]ダブル−ブラッグモノクロメーターは、ブラッグピークから離調している。
表2:18、30及び60keVにおける[333]アナライザーロッキングカーブのFWHMの測定値及び理論値
【表2】
FWHMが小さくなると、ロッキングカーブの傾きが大きくなり、更に屈折及び減衰コントラストが大きくなる。図31は、FWHMが小さくなるにつれてロッキングカーブの傾斜が大きくなることを示すグラフである。50kWで計算されたフラックス、ブラッグ[333]反射、及び線源から対象物までの距離1000mm、を用いて、様々な距離や結晶反射について必要とされる画像化時間を予測することができる。この予測を表3に示す。
表3:結晶反射や線源と対象物の距離に基づいて予測される画像化時間
【表3】
【0077】
シンクロトロンに基づくDEIとDEI実験
上記のように、シンクロトロンを用いて、DEIとDEIシステムの実験を行なった。特に、そのために、NSLS X15Aビームラインを利用した。DEI又はDEI画像を作るために、この実験に使用したシンクロトロンX線源を、本願発明のX線源に置き換えることができる。
NSLSにおけるX線リングは2.8GeVシンクロトロンであり、10〜60keVの高フラックスのX線を生成することができる。図32は、本発明の一つの実施形態のシンクロトロンX線ビームを用いたDEIシステム3200の実験装置の概略図である。図32によれば、シンクロトロンから放射されるX線ビームXBは、高度に平行化され、垂直方向の発散は約0.2ミリラジアンである。長さが16.3mのビームラインパイプ(図中に無い)が、実験箱をシンクロトロンX線リングに連結する。高強度の多色性X線ビームXBは、この実験箱に入り、ダブル結晶モノクロメータータンクMTを使用して、単色に変えられる。モノクロメータータンクMTは、両方とも水冷で冷却される2つのモノクロメーター結晶MC1及びMC2(それぞれ幅150mm×幅90mm×高さ10mm)を含む。モノクロメータータンクMTを出るX線ビームXBは単色である。
次に、単色のX線ビームXBはイオンチャンバーICと高速シャッターアッセンブリーSAを通過し、サンプル台アッセンブリ−SSAに進み、幅が120mmで高さが3mmの最大寸法を有する線状X線ビームを生成する。X線ビームの位置は固定され、サンプル台アッセンブリ−SSA上の対象物Oは、ステッパーモーターによって駆動される移行台を用いて、X線ビームの中を移動する。
【0078】
従来のX線写真は、ビームの経路にある対象物Oの背後に直接検知器D1を置き(X線写真用の配置)、アナライザー結晶ACの効果を除くことにより得られた。この配置により得られる画像は、吸収が主なコントラスト機構である従来のX線システムに似ている。しかしシンクロトロンを用いたX線写真は、従来のX線システムにより得られる画像と比べると、より優れたコントラストを有することが示されてきた。ここに提供される実験で得られた従来のX線写真は、DEI画像と比較するために用いられる。
DEI画像は、検知器D2を、計算されたブラッグ角の2倍の角度で、アナライザー結晶ACの後に置いて得られる。18〜60keVの範囲の画像化に用いられる角度をまとめたものは上記の表1に示した。線状X線源を用いると、DEIのためには、検知器を、サンプルの方向とは逆の方向に移動することが必要になり、シンクロトロンを用いたX線写真を撮るためには、検知器を、同じ方向に移動することが必要になる。この実験では、Fuji BAS2500画像プレートリーダーとFuji HR V 画像プレート(Fuji Medical Systems of Stamford, Connecticut)を用いて、DEI画像を得た。このプレートは、厚さが約0.5mmであり、有機バインダーで結合された光刺激性の発光体(BaFBR:Eu2+)で被覆された柔軟性プラスチックプレートで構成される。画像は、解像度が50ミクロンで16ビットグレイレベルで、Fuji BAS2500画像プレートリーダーを用いて走査された。
【0079】
更に、他の実験では、画像プレートを用いた場合には実際的又は可能ではなかった、回折強化計算トモグラフィー(Diffraction Enhanced Computed Tomography)や複合的画像ラジオグラフィー(Multiple Image Radiography)のようなDEI用途を可能にするために、このシステムにデジタル検知器を加えた。使用してもよい典型的な検知器として、50×100mmの活性領域と12ビットアウトプットを有するShad-o-Box 2048 (Rad-icon Imaging Corp of Santa Clara, California)が挙げられる。この検知器は、Gd2O2Sシンチレータースクリーンに直接接触するように配置された、48ミクロンピクセルの1024×2048ピクセルを含むフォトダイオードアレイを利用する。この他の典型的な検知器として、0ミクロンピクセルサイズの120mm×80mmのFOVを有するPhotonic Science VHR-150 X線カメラ(Robersbridge of East Sussex, United Kingdom)が挙げられる。X線写真とDEIの配置の両方において、これら両方の典型的な検知器を画像プレートと同じ方法で据え付けることができる。
ビーム中に対象物を置かずにアナライザー結晶のロッキングカーブを横切って画像を取得すると、固有のロッキングカーブが得られ、それは異なるレベルの分析反射における、モノクロメーター結晶とアナライザー結晶の畳み込みを表す。固有のロッキングカーブは、吸収、屈折、又は微小角散乱によって変わることは無く、これはそれを優れた参考点とすることができる。ビーム中に対象物を置くと、ピクセル×ピクセルに基づいたロッキングカーブにおける変化を、どのX線相互作用が、与えられたピクセルにおいてコントラストを導いているかを決定するための用いることができる。
【0080】
ERA法で用いられるモデルはガウス分布としてこのロッキングカーブをモデルにしており、これは近似であり、このロッキングカーブはモノクロメーター結晶とアナライザー結晶の畳み込みであり、三角形であるからである。このモデルのための式は下記の等式で提供される:
【数21】
式中、μTは線形吸収係数、χsは吸光率、tは対象物の厚さ、θZは屈折角、ωsはガウス散乱分布を表す。
MIRはERA法のより洗練された変法である。MIRは従来のプロセス技術に存在する多くの問題の解決に取り組み、画像コントラスト成分の完全な描写を可能にした。上記のように、MIR法を用いて処理された画像は、吸収及び屈折画像だけでなく、微小角散乱画像を生成することができる。またMIRは、DEI吸収及び屈折画像に存在する本質的誤りを正すことを示し、ノイズに対してより耐性がある。
【0081】
ERA法と同様に、対象物の吸収、屈折、及び微小角散乱を表す画像を生じるために、MIR法もアナライザー結晶ロッキングカーブを利用する。もし、固有ロッキングカーブが基線であるなら、そのカーブ以下の領域が減るような変化は、光子吸収は全体の強度を減少させるので、吸収として理解することができる。純粋に屈折の現象であれば、このロッキングカーブの重心は転移するであろうが、ロッキングカーブの幅は変化しないであろう。微小角散乱に導く相互作用は、ロッキングカーブの角度分布に光子を散乱し、そのカーブを幅広いものにする。光子がロッキングカーブの受容幅外に散乱しないと仮定すると、散乱効果は、そのカーブ以下の領域には影響しないであろう。もしロッキングカーブが本来ガウス曲線であると仮定すると、そのカーブの変動を、存在する散乱の量を表すために用いることができる。
ロッキングカーブの幅は、エネルギーが大きくなるほど小さくなり、この変化を補償するためにサンプリング手順を修正する必要があるかもしれない。ロッキングカーブのFWHMは、エネルギーが18keVのとき3.64マイクロラジアンであり、エネルギーが60keVでは1.11マイクロラジアンに減少する。ロッキングカーブの幅が小さくなるにつれて、屈折コントラストが顕著である角度範囲は小さくなる。これを補償するために、角度サンプリング範囲とその増分は小さくなるかもしれない。60keVの増加した傾斜は、マイクロラジアンあたり大きな強度変化を生じるため、有益である。X線管のようなフラックスが限定されたX線源を用いると、これらの性質は最大化され、与えられたフラックスあたり可能な限り大きな屈折を生じることができる。
【0082】
DEIシステムの安定化
アナライザー結晶を用いて、角度変化を強度に変換することにより、例外的なコントラストが得られるが、この技術は、アナライザー結晶のロッキングカーブ上の位置は時間的に一定であるという仮定に基づく。実際上、この仮定は当てはまらず、この様な狭いロッキングカーブ幅では、アナライザーピーク位置の僅かな変化でも、得られた画像上に顕著な誤差を生み出し得る。DEI見かけ吸収、及び屈折画像、MIR及びMIR-CTのような処理手続き上のアルゴリズムの適用は、高度のシステム安定性を必要とする。乳房組織における吸収、屈折及び散乱パラメーター決定のゴールに到達するには、不安定性を起こさせる諸因子を取り出すために、NSLSX−15Aビームラインの体系的な工学的解析が必要である。
【0083】
この場合のDEIシステムに対する安定性は、長時間にわたり、アナライザー結晶ロッキングカーブのピーク位置を一定に保つ能力と定義されるだろう。もう一度見直すと、多色X線ビームは、モノクロメーターの第1結晶に入射し、これにより、ブラッグ法則を用いて、特定の角度に調節され、単一光子エネルギーが選択される。回折した単色光ビームは、第2のモノクロメーター結晶と出会い、この結晶により、ビームは入射ビームへ平行な方向へ変えられ、アナライザー結晶に向けられる。システムを特定なエネルギーに同調する際、第1のモノクロメーター結晶を最初に合わせ、次ぎに第2の結晶を調節して、ビームの位置を見出す。モノクロメータータンク内は常にヘリウムを流して、タンク内の重要な構成品を急速に酸化させ損傷させるオゾン発生を減少させる。
第2のモノクロメーター結晶を調節しながら、アナライザーを走査して、ビームの位置を結晶上に見出す。ビーム位置を見出すための結晶の揺れ動きは、特定の放送局を見出すためにラジオのダイアルを走査させることに似ており、アナライザーの角度位置が第2のモノクロメーター結晶と完全に合致すると、強度の鋭い立ち上がりが生ずる。一度、アナライザーが合わされると、システムは同調され、直ちに使用できる。
DEIシステムにおいて、ドリフトを起こしうる因子は、3種のカテゴリーに分けられる:振動的、機械的、及び熱的。結晶上の微少な振動さえ微少な角度の変化をもたらすことが出来て、コントラストに変化をもたらすので、DEIシステムの光学的部分は、振動に敏感である。NSLS X−15Aビームラインでは、大きな花崗岩の厚板を用いて、外部環境からの振動を減衰させる。アナライザー後のX線ビームをモニターするためにオシロスコープを用いて測定すると、強度上約2〜3%の振動があり、これは外部駆動のファン及びビームライン上のポンプに起因する。
【0084】
結晶を動かし、試料台及び検出器アセンブリーを移動させるために、複数のモーターを使用した。ピコモーター駆動を、第1モノクロメーター結晶、第2モノクロメーター結晶、及びアナライザー結晶に対して用いて、シータ(θ)角度を調節した。第2モノクロメーター結晶及びアナライザー結晶に対して、第2のピコモーターを用いて、カイ(χ)角度を調節した。これらの駆動モーターにどんな不安定性があっても、システムの調節に大きな偏りをもたらすことが可能で、また機械的ドリフトは、最初DEIシステム不安定性の第1の原因であると当初考えられた。試料台、及び検出器アセンブリーを動かすために用いるモーターは、画像品質に重要であるが、X線ビームの安定性には寄与しない。
システム不安定性に寄与する3番目の因子は、入射X線ビーム及びシステム駆動のモーター及び増幅器で発生する熱による温度である。該システムにおける熱変化は、システム安定性に対して幾らかの影響を持つことは知られてきたが、これが主要な不安定化因子であることは考慮されなかった。熱変化とシステム不安定性の結びつきは、重要な観測が為された時、アナライザーにおけるドリフトが相対的に不変であり、また周期的である時に、明らかとなった。この例では、周期的であるDEIシステムの唯一の変数があり、またそれは、主要X線シャッターの開閉により発生、消失する熱である。
不安定性の原因を見出すために得た実験的検査及び観測により、ドリフトの主要な原因として、シリコン結晶構造の拡張と収縮が指摘された。これらの実験観測の簡単な説明をブラッグ法則(λ=2dsin(θ))を用いて見出すことができる。希望するエネルギーで回折するために、所定の角度に置かれた1結晶を考えると、格子構造の間隔dに如何なる変化があっても、回折したビームの角度が変わり得る。モノクロメーター内のX線ビームにより発生した熱は、シリコン結晶に線膨張係数に従う、膨張を引き起こす、Δd/d = 3x10-6 ΔT (℃)。
【0085】
ブラッグ法則を用いて、dを解くと、次の式が得られる:
【数22】
上式を微分すると、以下の式が得られる。
【数23】
dを代入して、式を立て直すと、
【数24】
が得られ、この式は書き換えられて、
【数25】
となる。Δd/dに対してシリコン線型膨張係数を代入すると、次式が得られる:
【数26】
【0086】
18keV及び40keVに対するブラッグ角度、それぞれ、19.2及び8.4度を用いると、18keVに対して、摂氏1度あたり、1.05マイクロラジアンの角度変化、40keVに対して、摂氏1度につき、0.44マイクロラジアンの角度変化を見ると期待出来であろう。この計算をドリフトの理論的説明と考えると、ビームエネルギーが増加するにつれ、全体的ビームライン安定性は増加し、アナライザードリフトが減少することが分かると期待出来よう。
アナライザーの最初の安定性検査により、このシステムは非常に不安定であり、ピークアナライザー位置での安定性は平均60秒以下であることが分かった。このことは単一画像走査に対しては許容されるかも知れないが、MIR及び全てのCT応用に対しては許容されなかった。起動時から12時間の連続運転の間のアナライザー位置の変化を測定する多重ドリフト評価は、50及び100マイクロラジアンの間であった。システム安定性に対する温度の重要性を認識して、全てのシステム構成品の総合的評価を行い、どの熱源を抑える、又は除去できるか決定した。
大きな温度変化を履歴する一つのシステムはアルミニウムフィルターアセンブリーであり、この機能は、不必要な低エネルギーX線を減らすことである。これらの厚さ0.5mmのアルミニウムシートは、シンクロトロン白色ビームに曝されると急速に加熱し、ビームが切られると急速に冷却する。アルミニウムフィルターアセンブリーが隣接したモノクロメータータンク内の熱感受性の結晶に接近していることから、これが第1の不安定源となった。フィルターにより発生した熱の除去、及びアルミニウムフィルターアセンブリーを熱的に隔離するために、吸熱部が必要となった。図33は、本出願に従うアルミニウムフィルター吸熱部の例を示す画像である。図33については、アルミニウムフィルター挿入口及び、冷却水注入/排出チューブが示されている。
【0087】
アルミニウムフィルターにより発生した熱を熱的に隔離し、この熱を、循環する、高流速冷却水管路に移動させるために、システムに銅フィルターアセンブリーを設置した。また、アルミニウムフィルターサイズを小さくし放射表面積を制限し、また銅吸熱部との接触を増やした。水滴下による冷却したフィルターアセンブリー後に得た安定性検査によると、全体的なシステムドリフトは、約一桁減少し、起動後12時間連続運転ドリフト測定は、平均マイナス6マイクロラジアンであった。
水冷フィルター吸熱器の接続後、全体的システムドリフトの劇的な減少は、アナライザー及びモノクロメーター結晶に対して、等温環境を維持することの重要さを明示した。しかしながら、当業者に対して、他の熱源を変えることにより、さらに熱を減らす効果を持つことができると期待すべきである。各システム構成物、及び外部環境の周期的変化の組織的分析により、熱ドリフトの残された原因を取り出した。
熱を減らすために、実験棚より、増幅器及びコントロールシステムを除くことができる。ドライブモーターもまた除くことが出来であろう。しかしながら、本実験において、試料台及び検出器アセンブリーを制御するモーターを除くことは出来なかった。さらに、棚の扉を閉じることが出来て、一定の周囲の空気温度を維持する助けとなった。アナライザー結晶温度、周囲の空気温度、及び重力冷却水温度の12時間測定の結果、温度の実質的変化は少しも無かった。連続実験により、第2モノクロメーター結晶と直接接触し、またこれにより加熱される、第2のモノクロメーター結晶のアルミニウム台には、顕著な熱変化が生じた。
【0088】
第2モノクロメーター結晶機能は、第1モノクロメーター結晶からの単色光X線ビームを回折して、アナライザー結晶の方向にビームを水平に合わせることである。理論的には、結晶とX線の相互作用は、弾性的であり、熱発生は生じない。このことは、第1モノクロメーター結晶には当てはまらず、高強度、多色シンクロトロン白色ビームが第1結晶の内部構造に吸収される。振動を減らすために、重力ドライブの水冷システムをシステムに組込み、第1モノクロメーター結晶からの過剰な熱を除いた。第2モノクロメーター結晶に対しては、強力な冷却は不要であったが、24時間の間得た温度測定によると、改善が必要であった。
アルミニウム支持板上にサーミスターを置き、一般的な運転期間24時間にわたり、5秒ごとに温度を測定した。図34は、24時間の間サーミスターで測定した温度を示すグラフである。ビームが、作動開始、停止の間に、支持板の温度は、約1.3℃増加した。シンクロトロン貯蔵リングの電流は、時間と共にゆっくり低下し、停止し、再充填され、このことは温度グラフより明白である。12時間の連続運転後、ビームラインを停止し、ベースラインに温度が戻るまでの時間を測定した。データ解析によると、第2結晶でも充分な加熱があり、強力な水冷却のために、支持板を後から取り付けることが正当化される。図34のグラフは、如何に正規のビームライン運転が、結晶温度に影響を与えるかについて、注釈を付ける。この熱不安定性の原因が同定されたので、水流と熱交換の内部導管を備えた銅支持板を用意した。図35は、温度を下げるために、冷却水ラインを備えた、改良した第2モノクロメーターベース及び支持板の見本の俯瞰図の画像である。
【0089】
約2000時間のビームライン運転後、及び性能向上したモノクロメーターを用いて1000時間の運転後、ビームライン安定性の予想できる傾向を測定し、評価した。予想したように、光学系の安定性を維持する圧倒的な因子は温度である。温度の絶対値は、時間に対する温度変化に比べ重要ではない。等温環境が維持出来れば、システムは平衡に達し、モノクロメーター及びアナライザー結晶の両者にほとんど、又は全くドリフトはない。貯蔵リングにおけるリング電流はゆっくりと、だが時間と共に予期できるほど減少するので、NSLSでの画像は独自の問題を示す。第1モノクロメーター結晶への入射X線の強度は、リング電流に比例して低下し、第1結晶の温度は時間とともに低下するであろう。結晶システムに強いフィードバックコントロールがされなければ、第1アナライザー結晶は、時間と共に収縮し、ゆっくりd間隔を変え、回折エネルギーを変える。第1結晶上のブラッグ角度の変化は、第2結晶上のビームの位置を変化させ、第2結晶から放射される回折した単色光光子フラックスを減少させる。このことは、アナライザー結晶上に入射するX線ビームの強度を減少させ、X線ビームの位置を変え、アナライザードリフトをもたらす。
【0090】
アナライザードリフトの効果は、ビームラインの起動時に最もはっきりと示され、起動時には全てのビームライン成分は、X線シャッターが閉まって、少なくとも24時間は室温である。一連の安定性検査により、システムが平衡に達するまでどの位時間を要するかと言う実際的目的を持って、起動後最初の100分内にアナライザーはどの様にドリフトするかテストを行った。X線シャッターを有効にし、アナライザー位置をゼロにリセットした直後にシステムを調節することにより、アナライザーの短時間安定性試験を行った。その後、シータ(θ)増分を0.2マイクロラジアンとして、アナライザーを−10から10マイクロラジアンの範囲で、100秒毎に走査した。その後、各ロッキングカーブを解析して、各ロッキングカーブの重心を決定したが、この重心をピーク位置として記録し、また対応するアナライザー位置に沿って記録する。一度、システムを最初に同調すると、実験が開始され、さらなる同調又は調節は行われない。
他の全てのビームラインパラメータ、及びアルミニウムフィルターを通常の画像化条件の下で用いるレベルにセットして、テストのために2種の光子エネルギー、18keV及び40keVを選択した。より高エネルギーのX線はより低エネルギーのX線よりはるかに透過性があり、またプレモノクロメーターフィルターをより必要とするが、このプレフィルターはフラックスを希望するレベルまで下げ、また多色光シンクロトロン白色ビームに存在する、より低エネルギーのX線を弱める。フィルター量を増すと、X線がモノクロメーターに入る前に吸収量が増加し、従って第1モノクロメーター結晶に負荷される熱量が減少する。フィルターアセンブリーに生ずるX線吸収により発生する熱を除くために水冷吸熱部を付加することにより、結晶はシンクロトロン白色ビームからの弱まった熱効果を受ける。高エネルギーにおいて、摂氏温度あたりの角度変化が減少すること、及びフィルターの増加によりモノクロメーターへの熱負荷が減少することで、ビームエネルギーの増加に比例して、安定性が増加する。
【0091】
ビームラインの起動から行われた安定性実験により、リング電流の減少直後のアナライザードリフトを示すこの効果が明かとなった。強力な入射シンクロトロン白色ビームは、殆ど瞬間的に深く第1モノクロメーター結晶を加熱し、急速に最大温度に達するということを、現在の理論は仮定する。リング電流が時間と共に散逸するに従い、温度はゆっくり下がり、ドリフトをもたらす。最終的には、システムは周囲の空気、システム構成物を加熱し、時間単位あたりのドリフトを引き起こして、安定化する。40keVで、フィルター量を増すと、熱負荷効果を下げ、システムが熱平衡に達するまでの時間を減少させる。ひと度、ビームラインを5〜7時間連続運転行うと、各結晶への熱負荷の効果は、最小化され、ビームラインは極度に安定化し、殆ど又は全くアナライザードリフトが無くなる。
図36〜39は、安定性試験結果のグラフである。特に、図36は、18keVシステム安定性試験のグラフであり、ある時間内のアナライザーピーク位置を示す。図37は、18keVシステム安定性試験時間内のNSLSX線リング電流のグラフである。図38は、40keVシステム安定性試験のグラフであり、ある時間内のアナライザーピーク位置を示す。図39は、40keV安定性試験の時間内のNSLSX線リング電流のグラフである。
この実験結果によると、光学系のドリフトは、光学系の結晶を等温に保つことによりコントロール出来て、正確な加熱システムを用いて一定温度に保つことにより、シンクロトロン及び非シンクロトロンベースのDEIシステムにおいて、実現されている。組織的工学解析により、アナライザー/モノクロメーター不安定性の問題は、基本的制限から小さな苛立ちに減じた。さらに工夫を加えることで、この問題は完全に除かれるかも知れず、全てのコンピューター断層撮影法をベースとしたDEI及びMIR法の全面的な利用を可能にする。
【0092】
DEIのための最適な画像化パラメーターを決定するマンモグラフィーファントムの読み取り機研究解析
上述のように、DEIはX線吸収、屈折及び超微少角散乱(減衰コントラスト)からコントラストを得るラジオグラフィー(放射線画像)技術である。DEIは、X線吸収及び屈折からコントラストを得る同様なラジオグラフィーシステムである。従来のラジオグラフィー技術は、平面及びCT共に、X線が物体を通過する時のX線の減少に基づく画像を作成する。X線吸収は電子密度及び、平均原子数に基づくので、コントラストは、対象物又は患者における減衰差に基づいて得られる。X線光子と物体との相互作用は、入射ビームから除かれた特定の光子数以上の構造的情報を提供することができる。DEIは、X線ビームの経路にシリコンアナライザー結晶を取り込み、これは、極めて素晴らしく感度の高い角度フィルターとして働き、X線屈折及び超微少角散乱の測定を容易にする。名目上の吸収コントラストを有する対象物は、対象物の性質又はその局所的環境により、高い屈折及び超微少角散乱コントラストを有しても良い。
【0093】
乳房組織内の所定の構造は、一般的に、低い吸収コントラストを持ち、特に疾病の初期段階では低い吸収コントラストを有するので、DEIは乳房画像化において、途方もない潜在力を持つことができる。悪性乳房組織のDEI研究により、従来型のマンモグラフィーと比較して、乳癌におけるスピキュレーション(針状体)の可視化の大幅な増加が可能となった。乳房における所定の初期診断構造には、石灰沈着、総量、及びフィブリル(微細繊維)があり、これら全ては、周囲の脂肪細胞、及び腺組織と比べると、かなりの屈折及び散乱痕跡を有する。マンモグラフィーへのDEIの利用を適切に研究するために、独自のシステムパラメーター及び配置を最適化し、乳房画像化に診断的に重要な特徴を検知しなければならない。この研究の不可欠な構成要素は、照射量を減らす可能性を決定する事であり、これは吸収、屈折、超微少角散乱減衰を用いて成就できる。臨床的に有用なマンモグラフィーシステムを設計し、構築するために明記しなければならない、最初のDEI画像化構成要素は、ビームエネルギー、アナライザー結晶反射、及びアナライザー結晶ロッキングカーブ上の位置である。
【0094】
この研究のための実験を、NSLSでX−15Aビームラインを用いて行った。解析されるパラメーターを理解するために、システムの簡単な説明が望ましい。これらの実験のためのX線源は、NSLSのX線リングであり、これは、10から60keVのX線高フラックスを発生できる、2.8GeVシンクロトロンである。ダブルの結晶シリコンモノクロメーターを用いて、入射X線ビームから特定のエネルギーを選んだ。特定の角度を選択するよう同調したシリコンアナライザー結晶を、対象物の背後に置いて、DEI画像を得た。アナライザーは、数十マイクロラジアンのオーダーの解像度を持つ角度フィルターであり、これは、X線屈折及び超微少角散乱の測定に役立つ。反射率曲線上の異なる位置にアナライザーを同調すると、X線分布の不連続な角度を選択出来て、いくつかの位置は、対象物と障害検知に対する有用な情報を提供する。
ブラッグ[111]及びブラッグ[333]反射の様な、DEIで用いることができる、多重結晶反射がある。DEI屈折コントラストは、アナライザー結晶ロッキングカーブの勾配をもって増加し、ブラッグ[333]反射はブラッグ[111]反射よりずっと急な勾配を有する。ブラッグ[333]反射は、より良いコントラストを提供することができるが、入射多色光X線ビームから、ブラッグ[333]反射における結晶により選択されたX線光子の数は、ブラッグ[111]反射による場合より、およそ一桁少ない。これらの反射間の可視化の相対的差異を決定することは、臨床をベースとするDEIシステムを設計する上で重要な因子であることができる。
【0095】
X線管は、陰極/陽極配置を用いて、X線を作ることができるが、出力スペクトル、振幅は、陽極材料、電圧及び電流の関数である。マンモグラフィーシステムとしては、X線ビームを作るために、電圧範囲は28から32kVpで、モリブデンターゲットを持つX線源を含むことができる。この配置は、多色光のエネルギースペクトルの中心が約モリブデンのKα、18keVである、発散型のX線ビームを作る。軟組織を画像化(画像化)するための比較的低エネルギーX線に対して、吸収ベースのX線システムがセットされる。18keVのX線は、軟組織において、大きなコントラストを提供するが、一つの難点は、低エネルギーX線に関わる患者への吸収量の増加である。いくつかの従来型のDEI乳房画像化(画像化)研究は、従来型のマンモグラフィーに比較できるX線エネルギーに基づいてる。これらの技術は、X線吸収を測定する上で潜在的有用性を持つが、屈折と超微少角散乱による付加的DEIコントラスト機構の長所に充分に対応してない。
DEIに利用できる、見かけ上の吸収及び屈折画像の作成を含む、いくつかの画像処理技術がある。他の発展しつつあるDEIベースの画像処理方法は、MIRであり、これはコントラスト構成要素のより正確で、詳しい分離である。MIRを用いた準備的研究によると、この方法は、低い光子計数レベルで操作可能であり、また従来型のX線源の使用可能性を持つ。DEIで作業するいくつかのグループは、DEI方法をCTに適用する過程にあり、これは、CTの空間解像度にDEIの追加的なコントラスト機構を組み合わせものである。この研究は平面画像化に焦点を合わせているが、平面画像化(画像化)に対するシステムパラメーターは、またシンクロトロン及び非シンクロトロンベース両者のCT応用に適用できる。
【0096】
本明細書で記載する実験には、標準的マンモグラフィーファントムの画像化の間で得たパラメーターの注意深い変化が含まれる。研究のために得た画像は、二次的な画像処理を行わずに、各システム配置で得た生の画像データを表わす。専門家読者は、理想的DEIマンモグラフィーユニットの仕様に役立つために、全ての実験条件下での既知のファントム特性の可視化を記録する。
工学的及び医学的両者の観点から、最も重要なシステムパラメーターの一つは、ビームエネルギーである。DEIにおいて、構造的可視化がエネルギーの関数として変化することの理解を得るために、研究のために以下のエネルギーを選択した:18keV、25keV,30keV、及び40keV。入射シンクロトロンビームより所望のエネルギーを選択するために、所望の波長に対して、モノクロメーターを適切なブラッグ角度に調節した。
診断的に価値のある情報を得るために、解析の間、アナライザー結晶ロッキングカーブを横切って3個の代表点を用いても良い。各ビームエネルギー/結晶反射組合せに対して、−1/2ダーウィン幅 (DW)、ピーク、及び+1/2DW位置を選択した。比較のために、対応するシンクロトロンラジオグラフを得た。
【0097】
標準化した乳房画像化ファントムをこの実験で用いて、乳房組織と乳癌の構造的特性をシミュレートした。最初の試みでは、実際の乳房組織試料を用いたが、生物組織に存在するばらつき、及び悪性特性の主観的評価のために、この研究ではファントムの使用がより適切であった。本明細書で既述する対象に合致したDEIシステムは、多くのメカニズムに基づくコントラストを得ることができるので、それぞれに従う特徴でファントムを選んだ。本実験では、ルーサイト(Lucite)から作られ、一連の様々な直径と深さの円形の窪みが表面に機械加工された精細なコントラスト(CD)ファントム(the Sunnybrook and Women's Research Institute at Tront, Ontario, Canadaから得られる)が選択された。直径と深さのばらつきは、コントラストと空間解像度を評価する上で有用な傾斜を作り出す。より深い窪みは、減衰における増分をもたらし、従って、コントラストを上げた。窪みの円形の端はX線屈折に対し導電性の界面を提供する。既知の半径と高さを用いて、各シリンダーの容積は計算出来て、全可視化容積を決める。
図40A〜40C及び41A〜41Cはそれぞれ18keV及び30keVで得たCDファントムの画像例である。特に、図40A〜40Cは、それぞれ、18keVシンクロトロンラジオグラフ画像、+1/2ダーウィン幅(DW)アナライザー結晶位置での18keV DEI画像、及びピークアナライザー結晶位置で得た18keV DEI画像を示す。DEI例に用いた結晶反射はブラッグ[333]反射である。
【0098】
図41A〜41Cは、それぞれ、30keVシンクロトロンラジオグラフの画像(画像)、−1/2ダーウィン幅(DW)アナライザー結晶位置で得た30keV DEI画像、ピークアナライザー結晶位置で得た30keV DEI画像(画像)を示す。DEI例に用いた結晶反射はブラッグ[333]反射である。18keVシンクロトロンラジオグラフと比べて、30keVシンクロトロンラジオグラフにおいて、コントラストは減少する。
実験には第2のファントムを用いた。第2のファントムは、デジタルマンモグラフィーシステムをテストするための国際デジタルマンモグラフィー開発グループ(IDMDG)のために設計された。具体的には、このファントムは、デジタルマンモグラフィーメージングスクリーニングトライアル(DMIST)のために開発され、またMISTY(the Sunnybrook and Women's Research Instituteより入手可能)として知られている。MISTYファントムは、マンモグラ画像品質を定量する為に用いることができる様々な領域を含む。構造的には、このファントムは、システムコントラストと分解能を定量するために用いることができる、いくつかの高分解能詳細図を含む水銀で強化されたオーバーレイ(上層)を備えた、ポリメチルメタクリル酸塩(PMMA)からなる。
【0099】
MISTYファントムの3種の領域を実験に用いるために選択した。図42A〜42Cは、30keV、ブラッグ[333]、ピークアナライザー結晶位置における、MISTYファントムの3種の異なる領域の画像である。特に、図42Aは、一連の線対のクラスター(集合)の画像であり、各クラスターは4本の線を含み、その線間の距離は減少して最早解像が出来なくなるまでである。
図42Bは、一連の星印クラスターの画像であり、これは乳房組織の分類をシミュレートする。各クラスターが6個の星印を含む、7個のクラスターの列が用いられ、各星印のクラスターは1個の星印を欠いた点として持つ。解像度及びコントラストが低下するに従い、星印は可視的でなくなり、スペック(小さな染み)として見える。この実験において、逆転すると石灰沈着シミュレーションとして使用される。
図42Cはステップウェッジ(階段光学くさび、stepwedge)の画像である。このステップウェッジは吸収コントラストを測定するために用いられる。ステップウェッジは6ウェルの定義済みの界面を含む。
【0100】
この実験において、DEI画像は、Fuji BAS2500 Image Plate Reader 及び Fuji HR V画像プレートを用いて得た。上記のように、画像プレートは弾力性のあるプラスティックシートであり、厚さは約0.5mmであり、有機性の結合剤と組み合わせた光刺激性蛍光物質で被覆されている。さらに、全ての画像は、50μmピクセルサイズ及び16−ビット階調を用いて走査した。画像獲得のために用いられた表面線量は、エネルギーに基づいて変わるが、各エネルギー設定において、ラジオグラフ及びDEI画像の両者に対して、同一表面線量を用いた。30kevでの画像獲得には表面線量3.0mGyが用いられ、25kevでの画像獲得には1.5mGy,40keVでの画像獲得には0.2mGyが用いられた。
本実験において、2台の研究読み取り機(study reader)がCD及びMISTYファントム画像結果を解析するために用いられた。多くのDEI配置間の劇的な差異を組み合わせて標準化したファントムを用いた結果、適切なレベルの統計検出力を達成するために、2台の読み取り機で十分であることが分かった。1人の乳房画像専門家及び1人の医療物理学者が研究に参加した。可視化環境を最適にするために、読み取り機研究は、ピーク輝度500cd/m2を備えた、5メガピクセルCRTモニターを用いて、特別に設計された暗室で行われた。読み取り機には各画像に対して階調を合わさせ、また最大可視化のために拡大鏡を用意した。
【0101】
障害の周辺全体を可視化できることは、マンモグラフィーにおいて、診断上の重要性を持ち、その1例は、良く制限された境界を備えた良性繊維腺腫、及び境界は明確にされておらず、針状体(スピキュレーション)を持つあるいは持たない、潜在的に悪性腫瘍塊の間の差異である。さらに、石灰沈着及びその形態の可視化は、内在する病理学への洞察を提供することができる。診断上の応用を臨床マンモグラフィーに反映する議論は、読み取り機研究設計に不可欠であり、適切なところでは、仕事を明確な信頼レベルに分ける。
どの因子が最高の性能を与えるかを決定するために、読み取り機により用いられる8個の性能測定を確立した:
1.CDファントムにおいて、外周全体を可視化できる円形の容積;
2.CDファントムにおいて、少なくとも半分の外周が可視化される円形の容積;
3.CDファントムにおいて、外周のどの部分も可視化される円形の容積;
4.MISTYファントムにおいて、観測される線対群の数;
5.MISTYファントムの石灰沈着シミュレーションにおいて可視される星印の数;
6.MISTYファントムの石灰沈着シミュレーションにおいて見える全ての点を備えた最後のクラスター数;
7.MISTYファントムの石灰沈着シミュレーションにおいて見えるスペック(小さな染み)の数;及び
8.MISTYファントムのステップウェッジのはっきりと特徴付けられた区分数。
【0102】
画像におけるデータを体系化しやすくするために、対応する遂行課題を持つ各ファントムのグラフ表示を各読み取り機に用意し、画像を記録した。CDファントムに対しては、読み取り機には、画像の各行及び列において、どの円形が可視できるか示すことが求められた。MISTYファントム線対領域を評価するために、読み取り機には、全ての4本線がはっきりと可視される最高のクラスターを示すよう求められた。石灰沈着シミュレーションの記録には、先ず、可視できる全星印数の計数が含まれ、次ぎに、可能な29点の中、各クラスター内に見える星印点の数の計数が含まれた。さらに、読み取り機には、可視できる全てのスペック(小さな染み)数の計数が求められた。興味あるステップウェッジ領域に対して、読み取り機には、6個の境界面の中どれが最もはっきりと可視されるかマークすることが求められた。画像提出の順番は、記録のために、各読み取りに対して、無作為にされた。
ばらつきの多元解析を用いて、全て8個の結果に合わせた。解析には、ビームエネルギー、結晶反射、カーブ位置、及び読み取り機の全ての相互作用が含まれた。BoXCox変換をいくつかの結果に適用して、正規性の仮定の有効性を検証した。全ての因子を比較する際多くの結果を考慮したので、ボンフェローニ(Bonferroni)テストを用いて、有意性レベルとして0.05/8(0.00625)をセットすることで、全体的Type I誤差を調節した。この有意性レベルにおいて、全ての因子の組合せにおいて、性能の差異を比較するために、トゥキイ(Tukey)テストを用いた。
【0103】
CDファントム結果
外周のどの部分も可視可能である円形の容積に対し、2台の読み取り機間で有意な差異は無く(p値=0.0185)、また異なるエネルギー間でも差異は無かった(p値=0.0176)。しかしながら、該円形容積に対し、結晶反射及びロッキングカーブ位置の両者、並びにこれらの相互作用は有意であった(全3部門のp値<0.001)。ターキーテスト解析によると、ブラッグ[333]反射では、より大きな容積が見られる。ラジオグラフは、最低の可視容積を持ち、また−1/2DW,+1/2DW,及びピークアナライザー結晶位置の間には殆ど差がなかった。
結論が少なくとも半分の外周が可視可能である円形の容積に及ぶ時、全ての因子の主要な効果は、p値が0.001以下であり、有意である。トゥキイテスト解析によると、25keVは最善の結果をもたらし、25keV及び30keVの両者は、18keV及び40keVよりもより可視可能な容積を作り出した。このデータによると、結晶反射とアナライザー位置の間には有意な相互作用がある(p値<0.001)。ブラッグ[333]反射とピークアナライザー位置の組合せは、最大の可視可能な容積を作り出すが、ブラッグ[333]、+1/2DW及びブラッグ[333]、−1/2DW位置の組合せより良く機能したことを支持する証拠はない。シンクロトロンラジオグラフは、最低の可視領域を作り出した。
外周全体が可視可能である円形の容積に対して、ただ、読み取り機の主要な効果、ビームエネルギー、及びロッキングカーブ位置が、それぞれ、p値が、<0.001、=0.002、<0.001で、有意である。トゥキイテスト解析によると、ビームエネルギーの全てのレベルについて差異は無いが、データの傾向としては、25keVは30keVより良く機能し、後者は、40keV及び18keVより良く機能した。他の実績測定については、シンクロトロンラジオグラフは最小の可視可能な容積を作り出した。
【0104】
MISTYファントム
線対群の解析により、ビームエネルギー、結晶反射、及びアナライザーロッキングカーブ位置の主要な効果は、全てp値が0.001以下であり、有意である。さらに、結晶反射とロッキングカーブ位置野間には、有意な相互作用があるようである(p値<0.001)。このデータより、ピークアナライザー位置における18keV、ブラッグ[333]、の組合せは、ピーク又は+1/2DWアナライザー位置における25keV、ブラッグ[333]の組合せは、よく機能したことがわかる。線対領域に対する最善の成績は、ロッキングカーブ位置+1/2DWにおける、30keV、ブラッグ[333]である。
高度に平行化されたX線ビームを備えたシステムにおいて、発散X線のために設計されたファントムを用いて作成した星印クラスター画像の多くには、アーティファクトが存在した。完全を期すため、及び従来型のファントム全体としての構造設計が、可視化にどの様に影響するかを実証するために、データを示した。可視化した星印数の解析によると、ビームエネルギーだけが、p値=0.0026で、有意である。テスト結果によると、25keVが最善の選択であるが、30keVと有意に差がない。全ポイントが見える最後のクラスター番号については、どの因子も有意ではない。見えるスペックの数からのデータによると、最善の組合せは、18keVとブラッグ[111]、18keVとブラッグ[333]、並びに30keVとブラッグ[111]又は [333]反射のいずれかである。
【0105】
ステップウェッジ領域に対し、ビームエネルギーの差異レベル及び異なるロッキングカーブ位置の間に有意な差異が在るようである。データによると、18keV、25keV、及び30keVのビームエネルギーは、ほぼ等価であるが、これら全ては40keVで得た画像より良く機能する。ロッキングカーブ位置の性能への効果は、−1/2DW、ピーク及び+1/2DWの位置は等価であり、またシンクロトロンラジオグラフの性能と等しい。
全ての性能測定の解析によると、最適なDEIシステム配置は、−1/2DW又はピークアナライザー結晶位置におけるブラッグ[333]反射を用いて、25又は30keVである。表4〜6は、読み取り機研究データのまとめを示す。具体的には、表4は、X線ビームエネルギーに関する読み取り研究データのまとめを示す。表5は、結晶反射に関する読み取り機研究データのまとめを示す。以下の表6は、ロッキングカーブ位置に従ってグループ化された読み取り機研究のまとめを示す。
【0106】
表4:X線ビームエネルギーに関する読み取り研究データのまとめ
【表4】
【0107】
表5:結晶反射に関する読み取り機研究データのまとめ
【表5】
【0108】
表6:ロックカーブ位置に従ってグループ化された読み取り機研究のまとめ
【表6】
【0109】
ビームエネルギーに関して、両ファントムに対する読み取り機研究データによると、18keV以上のエネルギーが、DEIに対して最適である。吸収コントラストは1/E3に従い減少するので、従来型X線システムでは、エネルギーが増加するに伴い、軟組織吸収コントラストは、急速に減少する。読み取り機研究データによると、より高いビームエネルギーでは、吸収からの情報の損失は、DEI特異的コントラストからの情報により補償される。最初屈折性であった構造に対して、DEI感受性は1/Eに比例し、40keV又はそれ以上のエネルギーにおいて、軟組織の画像獲得の潜在力を持つ。消滅に寄与する散乱光の拒絶は、エネルギー非依存的であるが、散乱強度は、エネルギーが増加するに従い減少する。乳房組織における最も重要となる診断上の構造は、顕著な屈折性及び散乱特性を持つことと信じられているので、より高エネルギーでの画像化は、吸収から離れて、屈折及び超微少角散乱コントラストに焦点を合わせることにより促進されるであろう。
ブラッグ[333]反射に対して可視化が増加することは、特により高い性能レベルのCDファントムで明白である。ブラッグ[333]反射は大多数の性能測定において優れているが、この反射と、ブラッグ[111]との間の差異は期待以下である。このことは、線フラックスを工学的に考慮すると、ブラッグ[111]反射が容認可能であることを示すかも知れないが、より可能性のある説明は、ファントムの設計が、X線屈折及び消滅に基づくコントラスト機構を測定するには不適当であると言うことである。
【0110】
ピークアナライザー位置が、大多数の性能測定において優れている、アナライザー結晶位置に対して同じ理由付けが適用できるであろう。逸脱しない光子の強度が最大の時、(これがアナライザーロッキングカーブのピークであるが)、吸収コントラスト及び解像度は、最高となる。ロッキングカーブの尾の方向に散乱光子が、除去される構造において、消滅効果はピーク位置でまた役割を果たし、余分のコントラストをもたらす。これらのファントムは、X線吸収に基づく画像化システムをテストするために設計されたので、ピーク位置は、この種の研究で最善に機能するであると期待される。屈折コントラストは、ロッキングカーブのピークでは存在せず、また一般的に、−1/2DW及び+1/2DWの性能と等しい又は減少することは、非常に屈折性であるファントムに構造が不在であることを示す。
本研究は、画像品質に対して各システム構成要素が持つ効果への洞察を得るために設計され、最も有用である画像処理方法に付いてではない。画像化の全パラメーター空間を狭くする第一歩として、各配置について生のデータの解析が、見かけ上の吸収及び屈折画像を作り出すためにDEI画像対を処理するよりも、より適切である。
最も勇気づける結果の一つは、より高いエネルギーのX線−潜在的には40keVの高さ−を用いることができる能力である。より高いエネルギーでの光電効果の急速な減少は、患者に吸収された光子の数が減ることに対応し、結果的に、劇的に放射線量を減らす。検出器に到達する同数の光子(107ph/cm2)に対して、18keVにおいて5cmの水を通す表面吸収線量は、3.3mGyであり、30keVにおいては0.045mGy及び40keVでは、0.016mGyである。このことは、18keVと比較して30keVでは73倍の減少、及び40keVでは206倍の減少を表す。吸収は組織の厚さと共に増加するので、この線量の減少はより厚い試料に対してはさらに大きい。
【0111】
多重画像ラジオグラフィーを用いた乳癌コントラスト機構の解析
DEI及びMIR技術を用いた乳房画像研究は、従来型のマンモグラフィーと比較して可視化の点で進歩を示した。特に、乳癌フィブリルの内在するコントラスト機構を解析するために、DEI技術を用いた研究は、X線消滅が画像コントラストにおいて大きな役割をすることを示した。さらに、乳癌スピキュレーション(針状体)の研究は、対応するラジオグラフと比較すると、DEIピーク画像が8から33倍増加することを示した。MIRは、対象物の超微少角散乱を表す画像を加えることで、より完全で、厳密なこれらの特性の評価を可能にした。
本研究は、X線源の使用可能なエネルギー範囲の拡張及びX線吸収の必要の低下又は除去に対処する。軟組織における吸収コントラストは光子エネルギーが増加すると急激に減少するので、乳房組織における内在するX線コントラスト機構は、非シンクロトロンベースのDEIシステムでは、危機的になる。より高エネルギーX線の使用は、検出器に達する入射光子の数を増加することにより、DEIシステムの効率を上げ、またX線吸収の減少は、表面及び吸収した放射線量を低下させる。しかしながら、もし乳房組織可視化において、吸収が主要となるコントラスト機構であるならば、どのDEIシステムも従来型のX線システムと同様の範囲のより低いエネルギーのX線を用いるかも知れない。この実験は、さらに18keVと60keVでのシステムの特性を比較する。
【0112】
乳房組織における、エネルギー依存性の吸収、回折、及び散乱を評価するために、固有の特徴を持つ4種の乳房組織資料を多くのX線エネルギーで画像化し、MIRを使って処理し、個々のコントラスト構成要素を分離した。研究に用いたエネルギー領域は、従来型のモリブデン及びタングステンX線管を用いたエネルギー、それぞれ18keV及び60keV、に基づいて定めた。25keV、30keV、40keV、及び50keVのビームエネルギーを選択し、各MIRコントラスト機構に対して、密着してコントラストの減少を追跡した。
一つの実験において、NSLS X-15Aビームラインでの画像化に3個の乳癌試料を選んだ。MIR画像セット及びシンクロトロンラジオグラフは、NSLSでのX−15Aビームラインを用いて得た。画像取得には、Photonic Science VHR-150 X線カメラを用いて、120mmx80mmのFOV及び30micron pixelサイズで得た。
X線屈折及び散乱に関して、光電効果の急激な減少は一定表面線量を維持することを困難な課題としている。例えば、18keVでのX線吸収に対して最適化した表面線量を用いて得た画像は、光子吸収の減少により、60keVのようなより高いビームエネルギーでは、ひどく露出過度になるであろう。MIR画像化に用いるエネルギー範囲の中間、40keV、モノクロメーターを調節することにより、また平均的露出にするための表面線量を検出器の動作範囲のおよそ中間に選択することで、バランスを見出した。18keV、25keV、30keV及び40keVのMIR及びラジオグラフ画像に対し表面線量350mradを選択した。湾曲した磁場X線源からのこれらのエネルギーの光子フラックスが急激に減少するので、50keV及び60keVで用いた表面線量は、50keVでは20mradまた60keVでは4mradと減少した。アナライザー結晶ロッキングカーブの半値幅(FWHM)はエネルギーの増加に伴い減少する。
ロッキングカーブの肩で、屈折コントラストは優勢となり、各エネルギーに対するサンプリングパラメーターの僅かな修正を必要とする。ロッキングカーブ幅に無関係に各MIRセットに対して、21画像を得た、また高エネルギーでは、FWHMの減少を補正するために、角度範囲及びシ−タ(θ)増分を減らした。図43は、異なるエネルギーに対する、乳房における吸収、インコヒーレントな散乱及びコヒーレントな散乱の寄与率を示すグラフである。
【0113】
NSLSでの画像に対して、4種の乳房試料を選択した。18keV及び25keVで得たMIR画像を、各0.5マイクロラジアン毎にサンプリングして、ピークより−5から5マイクロラジアンの範囲で得た。30keV及び40keVでは、θ角度増分が0.4ミクロラジアンで、MIR画像のサンプリング範囲は、±4マイクロラジアンに減少した。50keVでは、角度幅±3ミクロラジアン、θ角度増分0.3マイクロラジアンを用い、また60keVでのMIR画像には角度幅±2マイクロラジアン、θ角度増分0.2マイクロラジアンを用いた。各エネルギー及び線量に対して、対応するシンクロトロンラジオグラフを得た。さらに、乳房試料を、General Electric Senographe 2000D (General Electric Company of Fairfield, Connecticutより取得可能)を用いて画像化した。各エネルギーで、1枚の画像のために用いた線量は、熱ルミネッセンス検出器を用いて、平均乳腺線量、試料を通しての分布、及び画像生成に必要なフラックスを測定した。
従来技術と比較するため、図44は、従来型のラジオグラフィーシステム上の乳房試料例の画像である。この試料は、GE Senographe 2000Dを用いて、100micron pixel分解能で、空気中で画像化したものである。図45A〜45Fは、本明細書に記載した対象物に従った技術を用いて、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのビームエネルギーにおける同一試料のシンクロトロンラジオグラフである。これらの画像は、NSLSでの画像に対して用いたと比較しうる圧縮度で、空気中で得た。
【0114】
図46A〜46Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのMIRビームエネルギーを用いた乳房試料の画像である。特に、図46Aは、サンプリングパラメーター±5ミクロラジアン、θ角度増分0.5ミクロラジアンで、18keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Bは、サンプリングパラメーター±5ミクロラジアン、θ角度増分0.5ミクロラジアンで、25keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Cは、サンプリングパラメーター±4ミクロラジアン、θ角度増分0.4ミクロラジアンで、30keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Dは、サンプリングパラメーター±4ミクロラジアン、θ角度増分0.4ミクロラジアンで、40keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Eは、サンプリングパラメーター±3ミクロラジアン、θ角度増分0.3ミクロラジアンで、50keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。図46Fは、サンプリングパラメーター±2ミクロラジアン、θ角度増分0.2ミクロラジアンで、60keVにおけるMIRを用いた乳房試料の画像である。
【0115】
平均乳腺線量及び分布を熱ルミネッセンス検出器を用いて測定した。図47A〜47Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのビームエネルギーでの平均乳腺線量及び分布を示すグラフである。
図48は、本明細書に記載した対象物に従い、MIRの為に使用したエネルギーに対する、X線ビームエネルギーを示すグラフである。各エネルギーに対して求めた線量計データを用いて、各ラジオグラフ及びMIRセットの構成要素を得るために用いたフラックスを計算し、図に示した。
上記の実験は、MIRを用いる乳房画像化は如何に広いエネルギー領域で機能するかと言うことを示す。吸収だけを考えると、40keV又はそれ以上のエネルギーで殆ど吸収コントラストが無いように、エネルギーが増すと、軟組織のコントラストは劇的に減少することが予想されるであろう。各エネルギーにおけるシンクロトロンラジオグラフは、コントラストの減少を示し、特に60keVにおいて、軟組織では実質的にゼロ吸収コントラストである。
モリブデン源を用いた従来型のX線管に基づく画像取得時間は、臨床的画像化に対して必要な時間窓をはるかに超えて、10,000秒ほどの長さである。モリブデンX線管は固定した陽極を持ち、これは熱散逸を制限し、また単位時間に発生できるフラックス上に深刻な工学的制限を置く。タングステンX線管は、大きな、回転陽極を持ち、ずっと高電圧及び高電流に堪えられる。タングステンX線管は、フラックス及び熱散逸において、多くの長所を有するが、タンクステンにより発生した固有X線は、軟組織において吸収コントラストを生成するには高過ぎる。しかしながら、この実験によると、屈折と散乱のMIR特異的コントラスト機構は、X線吸収の必要無しに優れた軟組織コントラストを生成することが分かる。
【0116】
高エネルギーでの光子の減少は、線量分布曲線からも明らかであり、18keVと60keVの分布間で大きな差異がある。18keVでは、組織での吸収により、フラックスの大きな低下がある。このフラックスの低下は、エネルギー増加と共に減少し、50keV及び60keVにおいて、光子は最高に透過する。吸収の減少は、効率の増加に変わり、このことは図48に示すフラックス測定で明らかである。
実験に対して、適合アルゴリズムを校正するために、既知の直径及び屈折率の多数のナイロン単一フィラメントファイバー及びルーサイト桿体を解析のために選んだ。乳癌針状体の直径及び幾何学構造を近似するためにより小さなナイロンファイバーを選んだ。40keVX線ビームエネルギー及び350mrad表面線量を用いて、各試料及び対応するシンクロトロンラジオグラフが捕捉された。MIRに対しては、±4マイクロラジアンの角度分布及び0.4マイクロラジアンのθ増分を選んで、21画像を作成した。これらの画像を、MIR法を用いて処理して、X線吸収、屈折及び散乱から作られたコントラストを表す画像を作り出した。
【0117】
2次元画像から3次元情報を抽出することは、不均一対象物(対象物)に対して特に、重要な課題を提示する。乳癌針状体は、自然では円筒形であり、これは、これらの材料特性に関して近似的に作られることを許可する。乳癌針状体についての情報を抽出するために、解析方法を設計し、また校正することが、先ず必要である。適切なMIRベースの解析方法を用いて、ナイロン及びルーサイトファイバー、及び乳癌針状体の直径及び屈折率を測定した。これら2種の重要な特性と共に、ファイバー及び針状体の多くの他の側面が解析出来て、またモデル化できる。MIR画像には、3種類のコントラスト構成要素があるが、臨床的画像化システムにとって、屈折画像が最も重要でありそうである。もしより高いエネルギーX線が画像化に用いられるならば、屈折画像と比較して、吸収画像の質は悪いだろう。ロッキングカーブの尾において、フラックスは主に減少するので、散乱画像もまた、屈折画像に比べると二次的役割のままであろう。多くの乳癌試料を横切る屈折率の計算及び比較によって、屈折コントラストを生成する材料特性は、矛盾が無く、異常ではないと言うことが、ある程度保証され得る。
【0118】
方法の校正は、様々な直径のナイロン及びルーサイトファイバーを用いて行われた。直径200ミクロン、360ミクロン及び560ミクロンのナイロンファイバーをMIRを用いて、40keVで、サンプリング範囲−4から4マイクロラジアン、及びθ増分0.4ミクロラジアンで、画像化した。臨床的に重要な針状体の、幾何学構造及び直径を近似するためにこれらのファイバーを選んだ。直径13,000ミクロン及び19,000ミクロンのより大きなルーサイト桿体は、より大きな直径の対象物に対するアルゴリズムを評価するために選んだ。図49は、MIRを用いたファイバー直径の見積りを示す画像である。ナイロンファイバーは弱い吸収性があり、従って、DEI及びMIRコントラストを評価するための完全なファントム材料である。図49におけるファントムは、減少する直径のナイロンファイバーを用いて、MIR及びDEIのコントラストと及び解像能を測定するために設計した。直径が小さい程、画像課題はより困難である。
ナイロンファイバー及び乳癌針状体のような円筒型対象物は、ナイロンファイバー屈折プロフィールを示すグラフである、図50に示すような特徴的屈折プロフィールを示す。屈折は桿体の端で最大であり、中間でゼロであろう。対象物を円筒型と仮定すると、MIR又はDEI屈折画像から屈折痕跡を用いて、直径に外挿することができる。既知の直径の円筒について、ファイバー又はフィブリル(微細繊維)の屈折係数が外挿できる。
【0119】
以下の表7及び8はナイロン及びルーサイト直径及び屈折係数情報を含む。
表7:MIR直径の校正
【表7】
【0120】
表8:MIR屈折係数の校正
【表8】
【0121】
図51は、直径校正に合うMIR屈折を示すグラフである。既知の大きさのフィブリル(微細繊維)は画像化された、また屈折係数及び直径を計算するために、あるアルゴリズムが用いられた。乳癌に見られる針状体は、ナイロンファイバーに類似した性質を持つという理由で、システムキャリブレーションにナイロンファントムが使われた。
この実験において、ナイロン及びルーサイトファイバーに対して直径及び屈折係数を抽出する為に用いられた同じ方法を、3個の分離した乳癌試料中の興味ある5個の領域に適用した。図52A〜52Cは、乳癌試料のMIR屈折画像である。以下の表9は、計算した針状体直径及び屈折係数を示す。
【0122】
表9:フィブリル屈折係数
【表9】
【0123】
図53は、本明細書に記載した対象物に従いDEIシステムにより得た局所化した乳癌塊及び針状体のMIRセットの画像である。
図54A〜54E従来型のラジオグラフと比較したDEIによるフィブリルの可視化を示す画像である。特に、図54Aは、浸潤性の小葉癌を含む乳房組織の従来型ラジオグラフの画像である。試料は組織学的評価を受け、1cm白箱中のフィブリルは、腫瘍の表面から広がる腫瘍の指に相当すると確認された。図54Bは、図54Aの1cm白箱により示された領域の拡大図を示す、従来型のラジオグラフ画像である。図54C〜54Eは、図54Aの1cm白箱により示された領域の拡大図を示す、DEI画像である。領域のこれらの拡大図において、従来型のラジオグラフよりDEI画像において組織コントラストは高いことは明らかであり、DEI画像では、当該構造はかろうじて見ることができる。
DEIの改善されたコントラストを定量するために、フィブリルのコントラストを、図54B〜54Eに垂直白線に示す画像プロフィールに沿っての計算により測定した。組織試料の他の領域に対しても計算を繰り返した。統計解析によると、DEI屈折画像は、従来型ラジオグラフより8〜14倍大きなコントラストを持ち、一方ピーク画像は、ラジオグラフより12〜33倍大きなコントラストを持った。
【0124】
X線屈折及び散乱画像化に内在する物理は、吸収に基づく画像化の100プラス年の歴史に比較すると、なお研究の初期段階にある。生物組織に特有の不均一性が与えられると、およそ円筒型の乳癌星印状体の解析により、信頼性を持って多くの組織標本と比較できる診断的に有用な特徴が提供される。
空気中で画像化した多数の標準化した均一円筒を用いると、屈折ベースの合わせアルゴルズムの正確な校正が可能となる。生物組織の解析のためにこのアルゴリズムを用いると、生物組織の不均一な性質により、計算にエラーが入り込む可能性があるが、乳房組織の特性及び診断への応用は、絶対計算におけるこの種のエラーの重要性を減ずる。
従来型のマンモグラフィーにおける基本的な問題は、脂肪細胞という非常に高い吸収バックグラウンドに漬けられた低コントラスト対象物を可視化する上での困難さである。腫瘍性病変は時間と共に、大きさも密度も増加し、最終的には、十分大きく、高い密度になり、バックグラウンドを超えて盛り上がり、従来型の方法でも可視可能となる。乳癌死亡率は、病変の大きさ及び進行度に直接関係するので、悪性病変の発生と検出までの時間を減少させることが、全ての新乳房画像化様式のゴールである。
【0125】
良性及び悪性構造との間を区別する一助にするために、多くのX線コントラスト機構の差異を利用することにより、DEI及びMIRは従来型ラジオグラフを改善する。脂肪組織は小さな悪性病変に類似したX線減衰を起こすかも知れないが、これらは、同じ屈折痕跡を持たない。脂肪組織は殆ど屈折及び散乱コントラストを持たないが、乳癌病変の小さな円筒針状体は、大きな屈折及び散乱痕跡を持つ。40keVにおいて、軟組織の吸収コントラストは最低であり、さらに、当該病変とバックグラウンド組織の間で、全体としてのコントラスト勾配が増加する。
針状体に対する屈折コントラストのさらなる利得は、その幾何学構造から来るもので、これはX線屈折にとって理想的である。円筒型対象物への平行化したX線ビーム入射二対して、屈折コントラストは、円筒型の先端部及び底部において最大となり、中央において最低の屈折コントラストを持つであろう。円筒の直径が減るに伴い、吸収コントラストのレベルがバックグラウンドまで下がった後も、対象物の幾何学構造により屈折コントラストは変わらないままである可能性がある。多くの乳癌針状体を横切って得る屈折係数値によると、材料特性は似ており、またコントラストの上昇は、最も類似した癌試料で観察されることを示す。
【0126】
乳房組織の可視化促進を与える内在するコントラスト機構の決定は、非シンクロトロンベースのDEI/MIRシステムを設計する上で、最優先事項である。この研究によると、屈折と散乱のMIR特異的コントラスト機構は、構造可視化において、主要な役割を演じ、さらに、病変可視化において、X線吸収への依存性を減らす。X線吸収の減少は、患者の吸収線量の減少と言い換えられ、このことは、従来型のマンモグラフィーに必要とされる相対的に高線量を考慮すると、途方もない利点である。
これらの実験でナイロンを使用することは、将来のモデリング及びシミュレーション実験のための可能性のある用途を示す。同様な幾何学構造、直径、及び屈折係数を備えて、ナイロン単一フィラメントは、これらの診断上重要な構造が何故高いコントラストを生み出すのかについての洞察を提供する。
【0127】
コンピューターシミュレーション
コンピューターシミュレーションソフトウェアーを、DEI設計を検査するために開発した。開発したソフトウェアーは、患者線量を計算し、また、線源、結晶、対象物及び検出器の特定の配置及び仕様に基づいて、DEIシステムを通して、X線フラックスを追跡するために光線痕跡を用いる。結晶光学は、望まない方向に進むX線を退けるので、DEIの主要な実現性障害は、消失せず検出器平面に到達する十分な数の光子を獲ることである。
システムパラメーター仕様のリスト、及び一つの設計に対するシミュレーション結果をそれぞれ、以下の表10及び表11に提供する。
表10:システムパラメーター仕様
【表10】
【0128】
表11:システムパラメーター結果
【表11】
*全ての減衰は、組織中へのエネルギー堆積になるという最悪の見積り
【0129】
図55A〜55Cは、DEIシステムの概要図であり、一般的に5500と表され、本明細書で記載された対象物の実施態様に従い、コンピューターシミュレーションソフトウェアーを用いてシミュレートした。特に、図55A〜55Cは、DEIシステムの俯瞰図、側面図及び上面図である。図55A〜55Cに関しては、X線ビームは線源を持つX線管XTにより発生する。一つのシミュレーションにおいて、X線管XTは、Siemens DURA(R) Akron B X線管(Siemens Medical Solutions USA, Inc. of Malvern, Pennsylvaniaより入手可能)として、シミュレートした。ジーメンス(Siemens)X線管は、タングステンターゲットを含むので、これは、59.3keVで、Kα1X線を作成する。従って、X線管XTは59.3keVでKαX線を発生するようシミュレートした。ビームが患者に達する前に結晶光学システム内での損失を克復するために必要なフラックスを得るために、DEIの為には強力な管が必要かも知れない。ジーメンスX線管は回転陽極を有し、これは熱を散逸させ、管が高電圧(60kW)で作動することを可能にする。シミュレートしたDEIシステムは、管上の線源ポートを用いる。
図56は、本明細書に記載した対象物の実施態様に従って、DEIモノクロメーター結晶5602と組み合わせたログスパイラル(対数ラセン)焦点合わせ要素5600の俯瞰図である。図56に関しては、要素5600は、光子フラックスを増やすために配置した湾曲した回折結晶であることができる。要素5600はX線源に対して大きなターゲット範囲を提供するが、これは高能力を作り出すことが出来て、放射された放射線を集光して薄い仮想的線源を作る。この仮想的線源は、小さく、強く輝くことができる。さらに、湾曲回折結晶5600は、ログスパイラルの一部の表面である。
【0130】
図57は、コースティックな線源を備えた、ログスパイラル要素の焦点効果を描写する俯瞰図である。表面の形により、ブラッグ回折要素は、焦点を作るデバイスとして働く。ログスパイラル要素は次の特徴を有する:(1)輝度が最大である、固定した放射角度で、大きなターゲット範囲から放射する光を集める;(2)これはビームを分光する;(3)これは、放射光を高い輝度の、仮想線源にするように焦点合わせする。図58A及び58Bは、それぞれ、実験研究のための説明システムの上面図、及び正面図である。図58A及び58Bに関しては、図は、放射線を焦点合わせして、高輝度の、仮想線源を作るためのログスパイラル要素を描く図である。
DEIシステム5500は3個の結晶を含む:プレモノクロメーター、モノクロメーター及びアナライザー。3個全ての結晶は、シリコンであり、[440]反射指令に調節する。この方向にスライスすることにより、大きな結晶を作ることができる。その様な結晶は直ちに入手可能である。
DEIシステム5500のシミュレーションにおける走査プロトコールは、検出器Dに対し6秒にセットされた。一つの例において、検出器Dは、画像ラインについて1度出力する単一ラインデバイスであることができる。他の例において、検出器Dは、X線ビームを横切る対象物Oの運動に同調して走査する全分野デバイスであることができる。単一ライン検出器又は全分野検出器のいずれかにおいて、画像データーの1ライン又は1片は、同時に得られる。
【0131】
他の例において、検出器Dは、厚い吸収物を用いて空間解像度の顕著な損失無しに、高エネルギーにおける効率を得るために用いる、X線より直接荷電変換する検出器であるかも知れない。図59は、X線より直接荷電変換する検出器の概念図であり、一般的に5900と記される。検出器5900は、タングステンX線管によって発生するような、高X線エネルギーで、良好な空間解像度及び阻止力を提供することができる。CZT,IbI2又はHgI2のような、より高いZ及び密度を持つ検出器材料が、高エネルギー性能を上げる為に使われた。
シミュレーションの結果によると、検出器におけるフルーエンスは、ピクセル当たり約600光子であり、これは従来型マンモグラフィーの約1/3から1/9である。従って、シミュレーション結果によると、シミュレートしたMIRシステムのノイズレベルは、従来型のマンモグラフィーより約1.7から3倍高いであろう。しかしながら、低いノイズレベルにおいて、従来型マンモグラフィーより、屈折コントラストは、8から33倍高い。
さらに、シミュレートしたDEIシステムに対し、平均乳腺線量は、約0.004mGrayであり、これは、5cm圧縮において、従来型マンモグラフィーより約250から750倍低い。10cm圧縮に対して、MIRにおける吸収線量は、0.019mGrayであり、これは同一圧縮率における従来型マンモグラフィーで得られる値より、1千倍低い。
【0132】
画像結果の例
上述のように、シンクロトロン及びX線管は、本明細書で記載した対象物に従って、DEI画像を作り出すためのX線源として2種類の適切なタイプのX線源である。比較の目的で、図60A及び60Bは、本明細書で記載された対象物に従う、それぞれ、シンクロトロンベース及びX線管ベースのシステムにより、同じナイロンフィブリルファントムから作られた画像である。図60Aの画像は、60keVのシンクロトロンにより発生したX線ビームより作られ、4.0mradの線量で、アナライザーロッキングカーブ位置+0.4ミクロラジアンで得られた。図60Bの画像は、0.4mradの線量で、アナライザーロッキングカーブ位置+0.4ミクロラジアン、及び160kV及び6.2mAの管設定で作られた。画像化したナイロンファイバーは、直径560micron(最上のファイバー)、360micron(中央のファイバー)及び200micron(下のファイバー)である。ナイロンファイバーは、非常に弱い吸収を持ち、従って、これらの画像は、このように弱い吸収材料を見るための屈折画像化を用いた利点の一つである。特に、例えば、軟組織の画像が、本明細書に記載した対象物に従い、160kVの電圧を用いたX線管を使って得ることができることを、これらの結果が示していることに注目することが重要である。
図61は、本明細書に記載した対象物に従う技術を用いて、図44,及び45A〜45Fに示された同じ乳房試料のシンクロトロン屈折画像である。この例において、ビームエネルギーは60keVで、線量は4mradであった。
【0133】
比較の目的で、図62A及び62Bは、本明細書に記載した対象物に従い、それぞれ、X線管及びシンクロトロンを用いて得た乳房組織試料の同じ部分の画像である。図62Bに示した画像は、0.4mradの線量で、X線管を用いて得た。図62Bに示した画像は、アナライザー位置+0.4ミクロラジアン及び、350mradの線量で、40keVシンクロトロンを用いて得た。
図63は、本明細書に記載した対象物に従い、X線管を用いて得た乳癌切除試料の画像である。該画像は、0.4mrad線量で、7.0cm、全厚み、最小圧縮乳房を通して得た。最適の画像を得るために、他の対象物又は組織に対して0.5mrad又はそれ以下の線量を適用することができる。この画像は、従来型のマンモグラフィーと比較して、数百倍少ない線量で全厚みの乳房組織の診断特徴を示す。本明細書で記載した対象物は、厚みの大きな軟組織対象物の画像を得ることができるという理由で有利である。以前のシンクロトロンベースのデバイスは、この様な画像を得ることが出来なかった。さらに、例えば、本明細書に記載された対象物は、軟組織対象物のような対象物に非常に低線量を適用することにより、この様に高画質の画像を得るために用いることができる。本明細書に記載した対象物は、高画質画像を得るために、従来型のラジオグラフィーより高エネルギーのX線ビームを使うことが出来て、従って、本明細書に記載した対象物は、患者の安全性を考慮して、低線量を要求することができる。
【0134】
適用例
本明細書に記載した対象物に従う、システムと方法は、様々な医学的応用に適用できる。上述のように、本明細書で記載したシステム及び方法は、乳房画像に適用できる。さらに、例えば、本明細書に記載したシステム及び方法は、軟骨組織画像、神経画像法、心臓画像法、血管画像法(コントラスト有り、及び無しで)、肺画像法、骨画像法、性尿器画像法、胃腸画像化法、一般的な軟組織画像法、血球システム画像法、及び内分泌システム画像法に適用できる。画像時間及び線量に加えて、高エネルギーX線を用いる主要な利点は、画像化できる対象物の厚さである。乳房画像化の様な応用のために、記載したシステムは、全厚みの乳房組織を、臨床的に実現できる画像化時間で画像化することを可能にする。同様のことを、頭、首、手足、腹部、及び骨盤のような、身体の他の領域に対しても言うことができる。X−線吸収の制限無しに、より高エネルギーのX線を用いたDEIの利用は、X線の透過力を劇的に増加する。軟組織に対して、対象物上へのX線光子入射のほんの小部分が吸収され、このことは、X線管からの放射光子が検知器に届く効率を非常に増加する。
肺画像法については、本明細書で記載したDEI技術は、肺において優れたコントラストを作り出すことが出来、また肺炎のような肺の状態を診断する上で、盛んに用いることができる。肺における流体集積は、DEIで容易に検出できる非常に密度の高い勾配を作り出す。周囲の組織の特徴である、密度勾配、及び正常肺組織及び腫瘍を持つ組織間の幾何学構造の違いは、大きく、良いコントラストを作り出す。さらに、本明細書に記載したDEI技術は、肺癌スクリーニング及び診断にも適用できる。
【0135】
骨画像法について、本明細書に記載したDEI技術は、一般的に骨の優れた画像を作り出すことができる。DEIの高い屈折と減衰のコントラストは、骨内部の破損及び病変を可視化する上で特に有用であることができる。
さらに、本明細書に記載した対象物に従うシステムと方法は、様々な検査及び産業上の応用に適用できる。例えば、該システム及び方法は、家禽検査のような肉検査に適用できる。例えば、該システム及び方法は、スクリーニング及び/又は除去が要求される、肉内の鋭い骨、羽、及び他の低コントラスト対象物を可視化するために用いることができる。本明細書に記載したシステム及び方法は、この様なスクリーニングに適用できる。
本明細書に記載したシステムと方法は、また商品検査に適用できる。例えば、該システム及び方法は、航空機製造のような、溶接の検査に用いることができる。本明細書に記載したようにDEI技術は、ジェットタービン回転翼のような深刻な摩擦及び裂け目を受ける重要な構造的部品を検査するために用いることができる。さらに、例えば、本明細書に記載した該システム及び方法は、回路板及び他の電子機器を検査するために用いることができる。他の例として、本明細書に記載した該視システム及び方法は、金属ベルト及び段板保全性の検査ような、疲労検査に用いることができる。
【0136】
さらに、本明細書に記載した対象物に従うシステムと方法は、セキュリティスクリーニングの目的に用いることができる。例えば、システムと方法を、空港、及び港でのスクリーニングに使用できる。本明細書で記載したDEI技術を、プラスチックナイフ、コンポジット銃のような従来型のX線では検出が難しいプラスチック及び低吸収対象物、及びプラスチック爆弾のスクリーニングに用いることができる。空港荷物検査のような、大きな対象物の画像化のために、X線管と検出器の距離を増して、ビームを発散させることができる。より大きな扇形ビームを収容するには、より大きなアナライザー結晶が必要となろう。
記載したデバイスは、コンピューターによる断層撮影画像化システム、又はDEI−CTに飜訳できる機構を提供する。第3世代従来型コンピューターによる断層撮影システムに類似したDEI−CTシステムは、同じ装置を使うが、中心点の周りを回転するよう修正されるであろう。あるいは、該システムは、固定したままで、対象物、試料又は患者がビームの中を回転できるかも知れない。この設計によるDEI−CTシステムは、X線吸収、屈折、及び超微少角散乱排除(消滅)を表す画像を作るであろう、しかしこれらの画像は3次元に解像されるであろう。
本明細書に記載した対象物の様々な詳細は、本明細書に記載した対象物適用範囲から離れることなく変更可能であると言うことを理解すべきである。さらに、本明細書で記載した対象物は、既に示した請求の範囲で定義づけたように、既述の事項は、例証を目的としたものであり、制限の目的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0137】
本発明の好ましい実施態様は、以下の添付図面を参照しながら記載される。
【図1】図1A〜Cは、本発明の一つの実施形態の対象物の画像を作るDEIシステムの概略図、上面図及び側面図である。図1Dと1Eは、本発明の別の形態の概略図を示す。
【図2】本発明の一つの実施形態の陰極/陽極管デザインに基づくX線管の概略図である。
【図3】本発明の一つの実施形態の図1A〜1EのDEIシステムの概略図である。
【図4】本発明の一つの実施形態の図1A〜1EのDEIシステムを使用して対象物を画像化する典型的な方法のフローチャートである。
【図5】本発明の一つの実施形態の図1A〜1E及び3に示されたDEIシステムのアナライザー結晶の側面図である。
【図6】図6Aと6Bは、本発明の一つの実施形態のミスマッチのモノクロメーター結晶を含み、対象物の画像を作るように機能するDEIシステムの概略図、上面図及び側面図である。
【図7】本発明の一つの実施形態の図6Aと6BのDEIシステムを使用して対象物を画像化する典型的な方法のフローチャートである。
【図8−10】異なる波長におけるゲルマニウム[333]及びシリコン[333]結晶のデュモン(DuMond)ダイアグラムのグラフである。
【図11】本発明の一つの実施形態の図6Aと6BのDEIシステムのゲルマニウムモノクロメーター結晶とシリコンモノクロメーター結晶の側面図である。
【図12】本発明の一つの実施形態のミスマッチのモノクロメーター結晶を含み、対象物の画像を作るように機能するDEIシステムの概略図である。
【図13−16】本発明の一つの実施形態のX線管と足場上のモノクロメーター単結晶を有するモノクロメータータンクの典型的配置の概略図である。
【図17】発明の一つの実施形態のX線管のX線ビームの出口の写真である。
【図18】図17に示すX線管のX線ビームの出口の別の写真である。
【図19】本発明の一つの実施形態のアルミニウム製のフィルターとコリメーターの写真である。
【図20】本発明の一つの実施形態のX線管の端に適合させるための蓋の写真である。この蓋は、本体から取り外され、切断されているが、曲げられていない。
【図21】本発明の一つの実施形態のX線管の端から望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐためのX線管の端の蓋の写真である。
【図22】本発明の一つの実施形態のX線管の側面から望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐためのX線管の端に近い場所に設置された遮蔽の別の部分の写真である。
【図23】本発明の一つの実施形態のモノクロメータータンクから望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐための鉛遮蔽を含むモノクロメータータンクの写真である。
【図24】本発明の一つの実施形態のモノクロメータータンクから望ましくないX線ビームが放出するのを防ぐための鉛遮蔽を含む図23のモノクロメータータンクの写真である。
【図25】本発明の一つの実施形態の作動状態にあるX線管とモノクロメータータンクの写真である。
【図26】本発明の一つの実施形態のモノクロメータータンクの内部部品の正面写真である。
【図27】本発明の一つの実施形態の典型的DEIシステムの上から見た透視図である。
【図28】発明の一つの実施形態の典型的モノクロメーター結晶の側面図、上面図及び正面図である。
【図29】発明の一つの実施形態のモノクロメーター結晶の透視図であり、内側領域と外側領域を示し、回転角ChiとThetaを示す。
【図30】シリコン[111]、[333]、[444]及び[555]の回折面を用いた、National Synchrotron Light Source X15A hutch中の単色ビーム束のグラフである。
【図31】半値幅(FWHM)が小さくなるにつれてロッキングカーブの傾斜が大きくなることを示すグラフである。
【図32】本発明の一つの実施形態のシンクロトロンX線ビームを用いたDEIシステムの実験装置の概略図である。
【図33】本発明の典型的なアルミニウム製フィルターヒートシンクの写真である。
【図34】24時間に渡ってサーミスターにより測定した温度グラフである。
【図35】本発明の一つの実施形態の典型的な後付の第二のモノクロメーターベースと温度を下げるための水冷却ラインを備えた支持板の写真である。
【図36】18keVシステムの安定性試験のグラフである。時間に対するアナライザーのピーク位置を示す。
【図37】18keVシステムの安定性試験の間のNational Synchrotron Light Source(NSLS)X線のリング電流のグラフである。
【図38】40keVシステムの安定性試験のグラフである。時間に対するアナライザーのピーク位置を示す。
【図39】40keVシステムの安定性試験の間のNSLS X線のリング電流のグラフである。
【図40】図40A−40Cは、本発明の一つの実施形態の18keVにおいて得られた典型的なCDファントムの写真である。
【図41】図41A−41Cは、本発明の一つの実施形態の30keVにおいて得られた典型的なCDファントムの写真である。
【図42】図42A−42Cは、本発明のシステム及び方法によって得られた、ピームアナライザー結晶位置ブラッグ[333]における、30keVにおいて得られた典型的なMISTYファントムの3つの異なる領域の写真である。
【図43】エネルギーに対する、胸部の吸収、非コヒーレント散乱及びコヒーレント散乱のグラフである。
【図44】典型的な従来の胸部試料のX線写真である。
【図45】図45A−45Fは、本発明の技術を用いて得た、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのビームエネルギーにおける同じサンプルのシンクロトロンX線写真である。
【図46】図46A−46Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのMIRビームエネルギーにおける胸部試料の写真である。
【図47】図47A−47Fは、それぞれ18keV、25keV、30keV、40keV、50keV及び60keVのビームエネルギーにおける腺の平均照射線量とその分布を示すグラフである。
【図48】本発明のMIRに用いられたエネルギーに対するX線ビームエネルギーのグラフである。
【図49】MIRを用いたファイバー径の予測値を示すグラフである。
【図50】本発明の技術により得られた、ナイロン(R)ファイバー屈折プロファイルを示すグラフである。
【図51】直径の較正に適合するMIR屈折を示すグラフである。
【図52】図52A−52Cは、本発明の技術により得られた、乳癌試料のMIR屈折写真である。
【図53】本発明のDEIシステムによって得られた、局在する乳癌塊と針状体のMIR写真である。
【図54】図54A−54Eは、従来のX線写真と比較した、DEIを用いて可視化した写真である。
【図55】図55A−55Cは、本発明の一つの実施形態のコンンピューターシミュレーションソフトウエアを用いてシミュレートしたDEIシステムの概略図である。
【図56】本発明の一つの実施形態のDEIモノクロメーター結晶に結合されたログスパイラル焦点調製部品の透視図である。
【図57】コースティックな線源を用いたログスパイラル部品の焦点調製を示す透視図である。
【図58】図58Aと58Bは、実験用キャラクタリゼーションシステムの平面図と立面図である。
【図59】ダイレクトX線−チャージ変換検知器をの概略図である。
【図60】図60Aと60Bは、それぞれ本発明のシンクロトロンに基づくシステムとX線管に基づくシステムにより得られた、ナイロン(R)ファイバーファントムの写真である。
【図61】本発明の技術により得られた、図44、45A−45Fに示す胸部試料のシンクロトロン屈折写真である。
【図62】図62Aと62Bは、それぞれ本発明のX線管とシンクロトロンを用いて得られた、乳房組織試料の同じ部分の写真である。
【図63】本発明のX線管を用いて得られた、乳癌切断試料の写真である。
【符号の説明】
【0138】
XT X線管
XB X線ビーム
C1、C2 コリメーター
MC モノクロメーター結晶
AC アナライザー結晶
O 対象物
ST 走査台
DD デジタル検知器
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター単結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(3)該第二のX線ビームの経路上に対象物を置き、該対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(4)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項2】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記モノクロメーター結晶を置くことが、該モノクロメーター結晶の表面を、前記第一のX線ビームの該モノクロメーター結晶の表面への入射経路に対して、約1度〜40度の間の一定角度で位置させることである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記モノクロメーター結晶の配向と格子面が、前記アナライザー結晶のものと一致する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記モノクロメーター結晶が、対称結晶である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モノクロメーター結晶が、シリコン結晶である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリコン結晶が、[333]反射を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アナライザー結晶が、ブラッグ型アナライザーである請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記対象物が、軟組織である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記軟組織が胸組織である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第二のX線ビームが、前記対象物に、約0.5mrad以下の照射線量をそそぐ請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記対象物の画像を検知することが、検知器で回折したビームを受けることである請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記検知器が、前記対象物のデジタル化された画像を形成するように構成された請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記検知器が、X線写真フィルムである請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記検知器が、画像プレートである請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記対象物の画像を検知することが、前記アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク又はその近傍で、該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知することである請求項1に記載の方法。
【請求項24】
更に、前記検知された画像から、前記対象物の、回折強調型イメージ、吸収画像、屈折画像、散乱画像及び質量密度のうちの少なくとも一つを得る請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ロッキングカーブのピーク又はその近傍が、該ロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にある請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記対象物の画像を検知することが、
(i)第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第一の回折ビームにより、該対象物の第一角度の画像を検知する段階、
(ii)第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第二の回折ビームにより、該対象物の第二角度の画像を検知する段階、
(iii)該第一角度と該第二角度の画像を結合して一つの屈折画像を得る段階、及び
(iv)該屈折画像から質量密度画像を得る段階
から成る請求項1に記載の方法。
【請求項27】
第一角度の画像を検知することが、前記アナライザー結晶の低ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第一角度の該対象物の画像を検知することであり、第二角度の画像を検知することが、前記アナライザー結晶の高ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第二角度の該対象物の画像を検知することである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第二のX線ビームが該対象物を透過する前に、該第二のX線ビームの一部をブロックして、該X線ビームの予め決めた固有線がブロックされた請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記第二のX線ビームをブロックすることが、前記モノクロメーター結晶と前記対象物との間に、コリメーターを配置して、該X線ビームの予め決めた固有線がブロックされることである請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記予め決めた固有発光線が、固有発光線Kα1である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第一のX線ビームをモノクロメーター結晶で遮る前に、該モノクロメーター結晶の角度受容窓の外の第一のX線ビームの一部をブロックすることから成る請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記第一のX線ビームをブロックすることが、該第一のX線ビームの経路上にコリメーターを配置することである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記モノクロメーター結晶が第一のモノクロメーター結晶であり、更に、前記第二のX線ビームを遮るように、第二のモノクロメーター結晶を置き、該第二のX線ビームをアナライザー結晶に向ける請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記第二のモノクロメーター結晶を置くことが、該第二のモノクロメーター結晶を、前記第二のX線ビームが前記第一のX線ビームの経路に平行に向くように置く請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶がミスマッチである請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、前記第一のX線ビームの予め決めた部分を阻止することにより選択された請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、ゲルマニウムモノクロメーター結晶及びシリコンモノクロメーター結晶のうちの一つである請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、ゲルマニウム[333]モノクロメーター結晶及びシリコン[333]モノクロメーター結晶のうちの一つである請求項33に記載の方法。
【請求項39】
更に前記第二のX線ビームから前記対象物への照射線量を調整する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項40】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線源、
(2)対象物を透過するために、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームが生成されるように、該第一のX線ビームを直接遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター単結晶、
(3)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(4)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項41】
前記X線源がX線管である請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項41に記載のシステム。
【請求項45】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項41に記載のシステム。
【請求項46】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項47】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記X線源が、X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成するように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項49】
前記モノクロメーター結晶の表面が、前記第一のX線ビームの該モノクロメーター結晶の表面への入射経路に対して、約1度〜40度の間の一定角度で位置する請求項40に記載のシステム。
【請求項50】
前記モノクロメーター結晶の配向と格子面が、前記アナライザー結晶のものと一致する請求項40に記載のシステム。
【請求項51】
前記モノクロメーター結晶が、対称結晶である請求項40に記載のシステム。
【請求項52】
前記モノクロメーター結晶が、シリコン結晶である請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記シリコン結晶が、[333]反射を有する請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記アナライザー結晶が、ブラッグ型アナライザーである請求項40に記載のシステム。
【請求項55】
前記対象物が、軟組織である請求項40に記載のシステム。
【請求項56】
前記軟組織が胸組織である請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
前記第二のX線ビームが、前記対象物に、約0.5mrad以下の照射線量をそそぐ請求項40に記載のシステム。
【請求項58】
前記検知器が、回折したビームを受けるように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項59】
前記検知器が、前記対象物のデジタル化された画像を形成するように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項60】
前記検知器が、X線写真フィルムである請求項40に記載のシステム。
【請求項61】
前記検知器が、画像プレートである請求項40に記載のシステム。
【請求項62】
前記検知器が、前記アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク又はその近傍で、該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項63】
更に、検知された画像から、前記対象物の、回折強調型イメージ、吸収画像、屈折画像、散乱画像及び質量密度のうちの少なくとも一つを得るように構成されたコンピュターを有する請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記ロッキングカーブのピーク又はその近傍が、該ロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にある請求項62に記載のシステム。
【請求項65】
前記検知器が、第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第一の回折ビームにより、前記対象物の第一角度の画像を検知するように構成され、第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第二の回折ビームにより、該対象物の第二角度の画像を検知するように構成され、前記システムが、該第一角度と該第二角度の画像を結合して一つの屈折画像を得るように構成され、かつ該屈折画像から質量密度画像を得るように構成されたコンピューターを備えた請求項40に記載のシステム。
【請求項66】
前記検知器が、前記アナライザー結晶の低ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第一角度の該対象物の画像を検知するように構成され、前記アナライザー結晶の高ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第二角度の該対象物の画像を検知するように構成された請求項65に記載のシステム。
【請求項67】
前記第二のX線ビームが前記対象物を透過する前に、該第二のX線ビームの一部をブロックして、該X線ビームの予め決めた固有線がブロックされるように置かれたコリメーターを有する請求項40に記載のシステム。
【請求項68】
前記予め決めた固有発光線が、固有発光線Kα1である請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記第一のX線ビームがモノクロメーター結晶によって遮られる前に、該モノクロメーター結晶の角度受容窓の外の第一のX線ビームの一部をブロックするように置かれたコリメーターを有する請求項40に記載のシステム。
【請求項70】
前記モノクロメーター結晶が第一のモノクロメーター結晶であり、前記システムが、前記第二のX線ビームを遮り、該第二のX線ビームをアナライザー結晶に向けるように置かれた第二のモノクロメーター結晶を有する請求項40に記載のシステム。
【請求項71】
前記第二のモノクロメーター結晶が、前記第二のX線ビームが前記第一のX線ビームの経路に平行に向くように置かれた請求項70に記載のシステム。
【請求項72】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶がミスマッチである請求項70に記載のシステム。
【請求項73】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、前記第一のX線ビームの予め決めた部分を阻止することにより選択された請求項70に記載のシステム。
【請求項74】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、ゲルマニウムモノクロメーター結晶及びシリコンモノクロメーター結晶のうちの一つである請求項70に記載のシステム。
【請求項75】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、ゲルマニウム[333]モノクロメーター結晶及びシリコン[333]モノクロメーター結晶のうちの一つである請求項70に記載のシステム。
【請求項76】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームの一部を、該第一のX線ビームが平行にされた扇形ビームとなるように、ブロックする段階、
(3)該平行にされた扇形ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(4)該第二のX線ビームの経路上に対象物を置き、該対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(5)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(6)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項77】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項76に記載の方法。
【請求項83】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することである請求項76に記載の方法。
【請求項85】
前記第一のX線ビームの一部をブロックすることが、前記平行にされた扇形ビームが、第一の方向に約10度の広がりを持ち、第二の方向に約1度の広がりを持つように該第一のX線ビームの一部をブロックすることである請求項76に記載の方法。
【請求項86】
前記第一のX線ビームの一部をブロックすることが、前記モノクロメーター結晶と前記対象物との間に、コリメーターを配置することである請求項76に記載の方法。
【請求項87】
前記コリメーターが、前記平行にされた扇形ビームが通過するスリットを規定する請求項87に記載の方法。
【請求項88】
前記第一のX線ビームが、前記コリメーターのスリットにより、前記平行にされた扇形ビームとして規定される請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記モノクロメーター結晶を置くことが、該モノクロメーター結晶の表面を、前記第一のX線ビームの該モノクロメーター結晶の表面への入射経路に対して、約1度〜40度の間の一定角度で位置させることである請求項86に記載の方法。
【請求項90】
前記モノクロメーター結晶の配向と格子面が、前記アナライザー結晶のものと一致する請求項86に記載の方法。
【請求項91】
前記モノクロメーター結晶が、対称結晶である請求項86に記載の方法。
【請求項92】
前記モノクロメーター結晶が、シリコン結晶である請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記シリコン結晶が、[333]反射を有する請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記アナライザー結晶が、ブラッグ型アナライザーである請求項76に記載の方法。
【請求項95】
前記対象物が、軟組織である請求項76に記載の方法。
【請求項96】
前記軟組織が胸組織である請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記第二のX線ビームが、前記対象物に、約0.5mrad以下の照射線量をそそぐ請求項76に記載の方法。
【請求項98】
前記対象物の画像を検知することが、検知器で回折したビームを受けることである請求項76に記載の方法。
【請求項99】
前記対象物の画像を検知することが、前記アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク又はその近傍で、該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知することである請求項76に記載の方法。
【請求項100】
更に、前記検知された画像から、前記対象物の、回折強調型イメージ、吸収画像、屈折画像、散乱画像及び質量密度のうちの少なくとも一つを得る請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記ロッキングカーブのピーク又はその近傍が、該ロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にある請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記対象物の画像を検知することが、
(i)第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第一の回折ビームにより、該対象物の第一角度の画像を検知する段階、
(ii)第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第二の回折ビームにより、該対象物の第二角度の画像を検知する段階、
(iii)該第一角度と該第二角度の画像を結合して一つの屈折画像を得る段階、及び
(iv)該屈折画像から質量密度画像を得る段階
から成る請求項76に記載の方法。
【請求項103】
第一角度の画像を検知することが、前記アナライザー結晶の低ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第一角度の該対象物の画像を検知することであり、第二角度の画像を検知することが、前記アナライザー結晶の高ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第二角度の該対象物の画像を検知することである請求項102に記載の方法。
【請求項104】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線源、
(2)該第一のX線ビームが平行にされた扇形ビームとなるように、該第一のX線ビームの一部を直接遮るように置かれたコリメーター、
(3)対象物を透過するために、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームが生成されるように、該平行にされた扇形ビームを遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター結晶、
(4)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項105】
前記X線源がX線管である請求項104に記載のシステム。
【請求項106】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項105に記載のシステム。
【請求項107】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項105に記載のシステム。
【請求項108】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項105に記載のシステム。
【請求項109】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項105に記載のシステム。
【請求項110】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項104に記載のシステム。
【請求項111】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項110に記載のシステム。
【請求項112】
前記X線源が、X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成するように構成された請求項104に記載のシステム。
【請求項113】
前記平行にされた扇形ビームが、第一の方向に約10度の広がりを持ち、第二の方向に約1度の広がりを持つように、前記コリメーターが前記第一のX線ビームの一部をブロックするように置かれた請求項104に記載のシステム。
【請求項114】
前記コリメーターを、前記モノクロメーター結晶と前記対象物との間に配置する請求項104に記載のシステム。
【請求項115】
前記コリメーターが、前記平行にされた扇形ビームが通過するスリットを規定する請求項114に記載のシステム。
【請求項116】
前記第一のX線ビームが、前記コリメーターのスリットにより、前記平行にされた扇形ビームとして規定される請求項115に記載のシステム。
【請求項117】
前記モノクロメーター結晶が、前記第一のX線ビームの該モノクロメーター結晶の表面への入射経路に対して、約1度〜40度の間の一定角度で位置する表面を含む請求項104に記載のシステム。
【請求項118】
前記モノクロメーター結晶の配向と格子面が、前記アナライザー結晶のものと一致する請求項104に記載のシステム。
【請求項119】
前記モノクロメーター結晶が、対称結晶である請求項104に記載のシステム。
【請求項120】
前記モノクロメーター結晶が、シリコン結晶である請求項119に記載のシステム。
【請求項121】
前記シリコン結晶が、[333]反射を有する請求項120に記載のシステム。
【請求項122】
前記アナライザー結晶が、ブラッグ型アナライザーである請求項104に記載のシステム。
【請求項123】
前記対象物が、軟組織である請求項104に記載のシステム。
【請求項124】
前記軟組織が胸組織である請求項123に記載のシステム。
【請求項125】
前記第二のX線ビームが、前記対象物に、約0.5mrad以下の照射線量をそそぐ請求項104に記載のシステム。
【請求項126】
前記検知器が、回折したビームを受けるように構成された請求項104に記載のシステム。
【請求項127】
前記検知器が、前記アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク又はその近傍で、該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された請求項104に記載のシステム。
【請求項128】
更に、検知された画像から、前記対象物の、回折強調型イメージ、吸収画像、屈折画像、散乱画像及び質量密度のうちの少なくとも一つを得るように構成されたコンピュターを有する請求項127に記載のシステム。
【請求項129】
前記ロッキングカーブのピーク又はその近傍が、該ロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にある請求項127に記載のシステム。
【請求項130】
前記検知器が、第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第一の回折ビームにより、前記対象物の第一角度の画像を検知するように構成され、第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第二の回折ビームにより、該対象物の第二角度の画像を検知するように構成され、前記システムが、該第一角度と該第二角度の画像を結合して一つの屈折画像を得るように構成され、かつ該屈折画像から質量密度画像を得るように構成されたコンピューターを備えた請求項104に記載のシステム。
【請求項131】
前記検知器が、前記アナライザー結晶の低ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第一角度の該対象物の画像を検知するように構成され、前記アナライザー結晶の高ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第二角度の該対象物の画像を検知するように構成された請求項130に記載のシステム。
【請求項132】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することにより、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(3)該第二のX線ビームの経路上に対象物を置き、該対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(4)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項133】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項133に記載の方法。
【請求項137】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項133に記載の方法。
【請求項138】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項133に記載の方法。
【請求項139】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項138に記載の方法。
【請求項140】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することにより、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線点源、
(2)対象物を透過するために、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームが生成されるように、該第一のX線ビームを遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター結晶、
(3)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(4)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項141】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項140に記載のシステム。
【請求項142】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項140に記載のシステム。
【請求項143】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項140に記載のシステム。
【請求項144】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項140に記載のシステム。
【請求項145】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項140に記載のシステム。
【請求項146】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項145に記載のシステム。
【請求項147】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、該第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(3)該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちの一つを選択的にブロックし、該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものを通過させる段階、
(4)該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものの経路上に対象物を置き、該対象物を該第二のX線ビームのブロックされていない固有線が透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(5)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(6)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項148】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項148に記載の方法。
【請求項151】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項148に記載の方法。
【請求項152】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項148に記載の方法。
【請求項153】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項147に記載の方法。
【請求項154】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項153に記載の方法。
【請求項155】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線源、
(2)該第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームが生成されるように、該第一のX線ビームを遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター結晶、
(3)該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちの一つを選択的にブロックするように調製可能なスリットを有し、該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものを対象物を透過させるコリメーター、
(4)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項156】
前記X線源がX線管である請求項155に記載のシステム。
【請求項157】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項156に記載のシステム。
【請求項158】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項156に記載のシステム。
【請求項159】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項156に記載のシステム。
【請求項160】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項156に記載のシステム。
【請求項161】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項148に記載のシステム。
【請求項162】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項161に記載のシステム。
【請求項163】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、該第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(3)該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線の経路上に対象物を置いて、該対象物を該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線が透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(4)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項164】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項163に記載の方法。
【請求項165】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項164に記載の方法。
【請求項167】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項164に記載の方法。
【請求項168】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項164に記載の方法。
【請求項169】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項163に記載の方法。
【請求項170】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項163に記載の方法。
【請求項171】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線源、
(2)該第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームが生成させて対象物を透過させるように、該第一のX線ビームを遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター結晶、
(3)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(4)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項172】
前記X線源がX線管である請求項171に記載のシステム。
【請求項173】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項172に記載のシステム。
【請求項174】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項172に記載のシステム。
【請求項175】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項172に記載のシステム。
【請求項176】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項172に記載のシステム。
【請求項177】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項171に記載のシステム。
【請求項178】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項177に記載のシステム。
【請求項1】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームを直接遮るように、モノクロメーター単結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(3)該第二のX線ビームの経路上に対象物を置き、該対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(4)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項2】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記モノクロメーター結晶を置くことが、該モノクロメーター結晶の表面を、前記第一のX線ビームの該モノクロメーター結晶の表面への入射経路に対して、約1度〜40度の間の一定角度で位置させることである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記モノクロメーター結晶の配向と格子面が、前記アナライザー結晶のものと一致する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記モノクロメーター結晶が、対称結晶である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モノクロメーター結晶が、シリコン結晶である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリコン結晶が、[333]反射を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アナライザー結晶が、ブラッグ型アナライザーである請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記対象物が、軟組織である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記軟組織が胸組織である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第二のX線ビームが、前記対象物に、約0.5mrad以下の照射線量をそそぐ請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記対象物の画像を検知することが、検知器で回折したビームを受けることである請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記検知器が、前記対象物のデジタル化された画像を形成するように構成された請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記検知器が、X線写真フィルムである請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記検知器が、画像プレートである請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記対象物の画像を検知することが、前記アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク又はその近傍で、該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知することである請求項1に記載の方法。
【請求項24】
更に、前記検知された画像から、前記対象物の、回折強調型イメージ、吸収画像、屈折画像、散乱画像及び質量密度のうちの少なくとも一つを得る請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ロッキングカーブのピーク又はその近傍が、該ロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にある請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記対象物の画像を検知することが、
(i)第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第一の回折ビームにより、該対象物の第一角度の画像を検知する段階、
(ii)第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第二の回折ビームにより、該対象物の第二角度の画像を検知する段階、
(iii)該第一角度と該第二角度の画像を結合して一つの屈折画像を得る段階、及び
(iv)該屈折画像から質量密度画像を得る段階
から成る請求項1に記載の方法。
【請求項27】
第一角度の画像を検知することが、前記アナライザー結晶の低ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第一角度の該対象物の画像を検知することであり、第二角度の画像を検知することが、前記アナライザー結晶の高ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第二角度の該対象物の画像を検知することである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第二のX線ビームが該対象物を透過する前に、該第二のX線ビームの一部をブロックして、該X線ビームの予め決めた固有線がブロックされた請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記第二のX線ビームをブロックすることが、前記モノクロメーター結晶と前記対象物との間に、コリメーターを配置して、該X線ビームの予め決めた固有線がブロックされることである請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記予め決めた固有発光線が、固有発光線Kα1である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第一のX線ビームをモノクロメーター結晶で遮る前に、該モノクロメーター結晶の角度受容窓の外の第一のX線ビームの一部をブロックすることから成る請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記第一のX線ビームをブロックすることが、該第一のX線ビームの経路上にコリメーターを配置することである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記モノクロメーター結晶が第一のモノクロメーター結晶であり、更に、前記第二のX線ビームを遮るように、第二のモノクロメーター結晶を置き、該第二のX線ビームをアナライザー結晶に向ける請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記第二のモノクロメーター結晶を置くことが、該第二のモノクロメーター結晶を、前記第二のX線ビームが前記第一のX線ビームの経路に平行に向くように置く請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶がミスマッチである請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、前記第一のX線ビームの予め決めた部分を阻止することにより選択された請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、ゲルマニウムモノクロメーター結晶及びシリコンモノクロメーター結晶のうちの一つである請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、ゲルマニウム[333]モノクロメーター結晶及びシリコン[333]モノクロメーター結晶のうちの一つである請求項33に記載の方法。
【請求項39】
更に前記第二のX線ビームから前記対象物への照射線量を調整する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項40】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線源、
(2)対象物を透過するために、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームが生成されるように、該第一のX線ビームを直接遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター単結晶、
(3)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(4)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項41】
前記X線源がX線管である請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項41に記載のシステム。
【請求項45】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項41に記載のシステム。
【請求項46】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項47】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記X線源が、X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成するように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項49】
前記モノクロメーター結晶の表面が、前記第一のX線ビームの該モノクロメーター結晶の表面への入射経路に対して、約1度〜40度の間の一定角度で位置する請求項40に記載のシステム。
【請求項50】
前記モノクロメーター結晶の配向と格子面が、前記アナライザー結晶のものと一致する請求項40に記載のシステム。
【請求項51】
前記モノクロメーター結晶が、対称結晶である請求項40に記載のシステム。
【請求項52】
前記モノクロメーター結晶が、シリコン結晶である請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記シリコン結晶が、[333]反射を有する請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記アナライザー結晶が、ブラッグ型アナライザーである請求項40に記載のシステム。
【請求項55】
前記対象物が、軟組織である請求項40に記載のシステム。
【請求項56】
前記軟組織が胸組織である請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
前記第二のX線ビームが、前記対象物に、約0.5mrad以下の照射線量をそそぐ請求項40に記載のシステム。
【請求項58】
前記検知器が、回折したビームを受けるように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項59】
前記検知器が、前記対象物のデジタル化された画像を形成するように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項60】
前記検知器が、X線写真フィルムである請求項40に記載のシステム。
【請求項61】
前記検知器が、画像プレートである請求項40に記載のシステム。
【請求項62】
前記検知器が、前記アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク又はその近傍で、該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された請求項40に記載のシステム。
【請求項63】
更に、検知された画像から、前記対象物の、回折強調型イメージ、吸収画像、屈折画像、散乱画像及び質量密度のうちの少なくとも一つを得るように構成されたコンピュターを有する請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記ロッキングカーブのピーク又はその近傍が、該ロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にある請求項62に記載のシステム。
【請求項65】
前記検知器が、第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第一の回折ビームにより、前記対象物の第一角度の画像を検知するように構成され、第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第二の回折ビームにより、該対象物の第二角度の画像を検知するように構成され、前記システムが、該第一角度と該第二角度の画像を結合して一つの屈折画像を得るように構成され、かつ該屈折画像から質量密度画像を得るように構成されたコンピューターを備えた請求項40に記載のシステム。
【請求項66】
前記検知器が、前記アナライザー結晶の低ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第一角度の該対象物の画像を検知するように構成され、前記アナライザー結晶の高ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第二角度の該対象物の画像を検知するように構成された請求項65に記載のシステム。
【請求項67】
前記第二のX線ビームが前記対象物を透過する前に、該第二のX線ビームの一部をブロックして、該X線ビームの予め決めた固有線がブロックされるように置かれたコリメーターを有する請求項40に記載のシステム。
【請求項68】
前記予め決めた固有発光線が、固有発光線Kα1である請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記第一のX線ビームがモノクロメーター結晶によって遮られる前に、該モノクロメーター結晶の角度受容窓の外の第一のX線ビームの一部をブロックするように置かれたコリメーターを有する請求項40に記載のシステム。
【請求項70】
前記モノクロメーター結晶が第一のモノクロメーター結晶であり、前記システムが、前記第二のX線ビームを遮り、該第二のX線ビームをアナライザー結晶に向けるように置かれた第二のモノクロメーター結晶を有する請求項40に記載のシステム。
【請求項71】
前記第二のモノクロメーター結晶が、前記第二のX線ビームが前記第一のX線ビームの経路に平行に向くように置かれた請求項70に記載のシステム。
【請求項72】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶がミスマッチである請求項70に記載のシステム。
【請求項73】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、前記第一のX線ビームの予め決めた部分を阻止することにより選択された請求項70に記載のシステム。
【請求項74】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、ゲルマニウムモノクロメーター結晶及びシリコンモノクロメーター結晶のうちの一つである請求項70に記載のシステム。
【請求項75】
前記第一と第二のモノクロメーター結晶が、ゲルマニウム[333]モノクロメーター結晶及びシリコン[333]モノクロメーター結晶のうちの一つである請求項70に記載のシステム。
【請求項76】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームの一部を、該第一のX線ビームが平行にされた扇形ビームとなるように、ブロックする段階、
(3)該平行にされた扇形ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(4)該第二のX線ビームの経路上に対象物を置き、該対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(5)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(6)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項77】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項76に記載の方法。
【請求項83】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することである請求項76に記載の方法。
【請求項85】
前記第一のX線ビームの一部をブロックすることが、前記平行にされた扇形ビームが、第一の方向に約10度の広がりを持ち、第二の方向に約1度の広がりを持つように該第一のX線ビームの一部をブロックすることである請求項76に記載の方法。
【請求項86】
前記第一のX線ビームの一部をブロックすることが、前記モノクロメーター結晶と前記対象物との間に、コリメーターを配置することである請求項76に記載の方法。
【請求項87】
前記コリメーターが、前記平行にされた扇形ビームが通過するスリットを規定する請求項87に記載の方法。
【請求項88】
前記第一のX線ビームが、前記コリメーターのスリットにより、前記平行にされた扇形ビームとして規定される請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記モノクロメーター結晶を置くことが、該モノクロメーター結晶の表面を、前記第一のX線ビームの該モノクロメーター結晶の表面への入射経路に対して、約1度〜40度の間の一定角度で位置させることである請求項86に記載の方法。
【請求項90】
前記モノクロメーター結晶の配向と格子面が、前記アナライザー結晶のものと一致する請求項86に記載の方法。
【請求項91】
前記モノクロメーター結晶が、対称結晶である請求項86に記載の方法。
【請求項92】
前記モノクロメーター結晶が、シリコン結晶である請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記シリコン結晶が、[333]反射を有する請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記アナライザー結晶が、ブラッグ型アナライザーである請求項76に記載の方法。
【請求項95】
前記対象物が、軟組織である請求項76に記載の方法。
【請求項96】
前記軟組織が胸組織である請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記第二のX線ビームが、前記対象物に、約0.5mrad以下の照射線量をそそぐ請求項76に記載の方法。
【請求項98】
前記対象物の画像を検知することが、検知器で回折したビームを受けることである請求項76に記載の方法。
【請求項99】
前記対象物の画像を検知することが、前記アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク又はその近傍で、該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知することである請求項76に記載の方法。
【請求項100】
更に、前記検知された画像から、前記対象物の、回折強調型イメージ、吸収画像、屈折画像、散乱画像及び質量密度のうちの少なくとも一つを得る請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記ロッキングカーブのピーク又はその近傍が、該ロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にある請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記対象物の画像を検知することが、
(i)第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第一の回折ビームにより、該対象物の第一角度の画像を検知する段階、
(ii)第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第二の回折ビームにより、該対象物の第二角度の画像を検知する段階、
(iii)該第一角度と該第二角度の画像を結合して一つの屈折画像を得る段階、及び
(iv)該屈折画像から質量密度画像を得る段階
から成る請求項76に記載の方法。
【請求項103】
第一角度の画像を検知することが、前記アナライザー結晶の低ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第一角度の該対象物の画像を検知することであり、第二角度の画像を検知することが、前記アナライザー結晶の高ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第二角度の該対象物の画像を検知することである請求項102に記載の方法。
【請求項104】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線源、
(2)該第一のX線ビームが平行にされた扇形ビームとなるように、該第一のX線ビームの一部を直接遮るように置かれたコリメーター、
(3)対象物を透過するために、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームが生成されるように、該平行にされた扇形ビームを遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター結晶、
(4)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項105】
前記X線源がX線管である請求項104に記載のシステム。
【請求項106】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項105に記載のシステム。
【請求項107】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項105に記載のシステム。
【請求項108】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項105に記載のシステム。
【請求項109】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項105に記載のシステム。
【請求項110】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項104に記載のシステム。
【請求項111】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項110に記載のシステム。
【請求項112】
前記X線源が、X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成するように構成された請求項104に記載のシステム。
【請求項113】
前記平行にされた扇形ビームが、第一の方向に約10度の広がりを持ち、第二の方向に約1度の広がりを持つように、前記コリメーターが前記第一のX線ビームの一部をブロックするように置かれた請求項104に記載のシステム。
【請求項114】
前記コリメーターを、前記モノクロメーター結晶と前記対象物との間に配置する請求項104に記載のシステム。
【請求項115】
前記コリメーターが、前記平行にされた扇形ビームが通過するスリットを規定する請求項114に記載のシステム。
【請求項116】
前記第一のX線ビームが、前記コリメーターのスリットにより、前記平行にされた扇形ビームとして規定される請求項115に記載のシステム。
【請求項117】
前記モノクロメーター結晶が、前記第一のX線ビームの該モノクロメーター結晶の表面への入射経路に対して、約1度〜40度の間の一定角度で位置する表面を含む請求項104に記載のシステム。
【請求項118】
前記モノクロメーター結晶の配向と格子面が、前記アナライザー結晶のものと一致する請求項104に記載のシステム。
【請求項119】
前記モノクロメーター結晶が、対称結晶である請求項104に記載のシステム。
【請求項120】
前記モノクロメーター結晶が、シリコン結晶である請求項119に記載のシステム。
【請求項121】
前記シリコン結晶が、[333]反射を有する請求項120に記載のシステム。
【請求項122】
前記アナライザー結晶が、ブラッグ型アナライザーである請求項104に記載のシステム。
【請求項123】
前記対象物が、軟組織である請求項104に記載のシステム。
【請求項124】
前記軟組織が胸組織である請求項123に記載のシステム。
【請求項125】
前記第二のX線ビームが、前記対象物に、約0.5mrad以下の照射線量をそそぐ請求項104に記載のシステム。
【請求項126】
前記検知器が、回折したビームを受けるように構成された請求項104に記載のシステム。
【請求項127】
前記検知器が、前記アナライザー結晶のロッキングカーブのピーク又はその近傍で、該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された請求項104に記載のシステム。
【請求項128】
更に、検知された画像から、前記対象物の、回折強調型イメージ、吸収画像、屈折画像、散乱画像及び質量密度のうちの少なくとも一つを得るように構成されたコンピュターを有する請求項127に記載のシステム。
【請求項129】
前記ロッキングカーブのピーク又はその近傍が、該ロッキングカーブのダーウィン幅の約半分以内にある請求項127に記載のシステム。
【請求項130】
前記検知器が、第一の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第一の回折ビームにより、前記対象物の第一角度の画像を検知するように構成され、第二の角度位置に置かれたアナライザー結晶から放射された第二の回折ビームにより、該対象物の第二角度の画像を検知するように構成され、前記システムが、該第一角度と該第二角度の画像を結合して一つの屈折画像を得るように構成され、かつ該屈折画像から質量密度画像を得るように構成されたコンピューターを備えた請求項104に記載のシステム。
【請求項131】
前記検知器が、前記アナライザー結晶の低ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第一角度の該対象物の画像を検知するように構成され、前記アナライザー結晶の高ロッキングカーブ角度設定における該アナライザー結晶から第二角度の該対象物の画像を検知するように構成された請求項130に記載のシステム。
【請求項132】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)X線点源から、異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することにより、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(3)該第二のX線ビームの経路上に対象物を置き、該対象物を該第二のX線ビームが透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(4)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項133】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項133に記載の方法。
【請求項137】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項133に記載の方法。
【請求項138】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項133に記載の方法。
【請求項139】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項138に記載の方法。
【請求項140】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)異なる方向へ扇形に広がる複数のX線ビームを生成することにより、多色性エネルギー分布を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線点源、
(2)対象物を透過するために、予め決めたエネルギーレベルを持つ第二のX線ビームが生成されるように、該第一のX線ビームを遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター結晶、
(3)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(4)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項141】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項140に記載のシステム。
【請求項142】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項140に記載のシステム。
【請求項143】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項140に記載のシステム。
【請求項144】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項140に記載のシステム。
【請求項145】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項140に記載のシステム。
【請求項146】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項145に記載のシステム。
【請求項147】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、該第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(3)該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちの一つを選択的にブロックし、該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものを通過させる段階、
(4)該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものの経路上に対象物を置き、該対象物を該第二のX線ビームのブロックされていない固有線が透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(5)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(6)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項148】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項148に記載の方法。
【請求項151】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項148に記載の方法。
【請求項152】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項148に記載の方法。
【請求項153】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項147に記載の方法。
【請求項154】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項153に記載の方法。
【請求項155】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線源、
(2)該第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームが生成されるように、該第一のX線ビームを遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター結晶、
(3)該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちの一つを選択的にブロックするように調製可能なスリットを有し、該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線のうちのブロックされていないものを対象物を透過させるコリメーター、
(4)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項156】
前記X線源がX線管である請求項155に記載のシステム。
【請求項157】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項156に記載のシステム。
【請求項158】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項156に記載のシステム。
【請求項159】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項156に記載のシステム。
【請求項160】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項156に記載のシステム。
【請求項161】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項148に記載のシステム。
【請求項162】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項161に記載のシステム。
【請求項163】
対象物の画像を検知する方法であって、
(1)第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成する段階、
(2)該第一のX線ビームを遮るように、モノクロメーター結晶を、予め決めた位置に置き、該第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームを生成する段階、
(3)該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線の経路上に対象物を置いて、該対象物を該第二のX線ビームの第一と第二の固有輝線が透過して、該対象物から透過したX線ビームが放射される段階、
(4)該透過したX線ビームを、アナライザー結晶上の入射角に向ける段階、及び
(5)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知する段階
から成る方法。
【請求項164】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管を用いて第一のX線ビームを生成することである請求項163に記載の方法。
【請求項165】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の回転する陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記第一のX線ビームを生成することが、X線管の固定された陽極から第一のX線ビームを生成することである請求項164に記載の方法。
【請求項167】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項164に記載の方法。
【請求項168】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項164に記載の方法。
【請求項169】
前記第一のX線ビームを生成することが、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項163に記載の方法。
【請求項170】
前記第一のX線ビームを生成することが、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成することである請求項163に記載の方法。
【請求項171】
対象物の画像を検知するためのシステムであって、
(1)第一と第二の固有輝線を持つ第一のX線ビームを生成するように構成されたX線源、
(2)該第一と第二の固有輝線を持つ第二のX線ビームが生成させて対象物を透過させるように、該第一のX線ビームを遮るように予め決めた位置に置かれたモノクロメーター結晶、
(3)透過したX線ビームを、アナライザー結晶の入射角で遮るように置かれたアナライザー結晶、及び
(4)該アナライザー結晶から回折したビームにより、該対象物の画像を検知するように構成された画像検知器
から成るシステム。
【請求項172】
前記X線源がX線管である請求項171に記載のシステム。
【請求項173】
前記X線管が回転する陽極を含む請求項172に記載のシステム。
【請求項174】
前記X線管が固定された陽極を含む請求項172に記載のシステム。
【請求項175】
前記X線管が、タングステンターゲット、バリウム六臭化物ターゲット、サマリウムターゲット及びモリブデンターゲットのうちの一つを含む請求項172に記載のシステム。
【請求項176】
前記X線管が、前記第一のX線ビームを生成するために、少なくとも50kWの出力を持つようにセットされた請求項172に記載のシステム。
【請求項177】
前記X線源が、約10keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項171に記載のシステム。
【請求項178】
前記X線源が、約50keV〜約70keVの範囲の固有X線エネルギーを有するX線ビームを生成するように構成された請求項177に記載のシステム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40A】
【図40B】
【図40C】
【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図42A】
【図42B】
【図42C】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
【図46D】
【図46E】
【図46F】
【図47A】
【図47B】
【図47C】
【図47D】
【図47E】
【図47F】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52A】
【図52B】
【図52C】
【図53】
【図54A】
【図54B】
【図54C】
【図54D】
【図54E】
【図55A】
【図55B】
【図55C】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60A】
【図60B】
【図61】
【図62A】
【図62B】
【図63】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40A】
【図40B】
【図40C】
【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図42A】
【図42B】
【図42C】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
【図46D】
【図46E】
【図46F】
【図47A】
【図47B】
【図47C】
【図47D】
【図47E】
【図47F】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52A】
【図52B】
【図52C】
【図53】
【図54A】
【図54B】
【図54C】
【図54D】
【図54E】
【図55A】
【図55B】
【図55C】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60A】
【図60B】
【図61】
【図62A】
【図62B】
【図63】
【公表番号】特表2009−536717(P2009−536717A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552372(P2008−552372)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/001836
【国際公開番号】WO2007/087329
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【出願人】(501050830)ブルックヘヴン サイエンス アソシエイツ (9)
【出願人】(506096361)ユニヴァーシティ オブ サスカチュワン (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/001836
【国際公開番号】WO2007/087329
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【出願人】(501050830)ブルックヘヴン サイエンス アソシエイツ (9)
【出願人】(506096361)ユニヴァーシティ オブ サスカチュワン (5)
【Fターム(参考)】
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