説明

大気圧プラズマ処理方法及び装置

【課題】大気圧プラズマにて被処理物を処理するに際してプラズマ点灯後のプラズマの点灯状態やプラズマの照射状態を確認できて信頼性の高いプラズマ処理を確保することができる大気圧プラズマ処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】大気圧近傍の所定の反応空間11に第1のガス15を供給するとともに反応空間11近傍のアンテナ13又は電極に高周波電圧を印加して一次プラズマ16を発生させ、発生した一次プラズマ16又は前記一次プラズマ16を第2のガス18に衝突させて発生させた二次プラズマ21を被処理表面6に向けて照射し、被処理表面6をプラズマ処理する大気圧プラズマ処理方法において、一次プラズマ16の点灯後の反射波の大きさを検出し、反射波の大きさを第1の所定値と比較して一次プラズマ16が点灯しているか否かを確認するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧近傍でプラズマを発生させ、そのプラズマを被処理物の表面に照射して被処理物を処理する大気圧プラズマ処理方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気圧プラズマ発生装置は、所定の空間に不活性ガスやそれと反応性ガスとの混合ガスなどのガスを流しながらその空間に高周波電界を印加して放電を生じさせることで、大気圧近傍でプラズマを発生させるようにしたものであり、こうして発生させたプラズマを被処理物の表面に照射して、被処理物の表面のクリーニング、レジストの除去、表面改質、金属酸化物の還元、成膜等の処理をすることは知られている。
【0003】
また、誘導結合型の大気圧プラズマ発生装置として、放熱性の良い誘電体であるアルミナ製の基板に反応空間を構成する貫通穴を形成し、基板上にマイクロアンテナを配置し、貫通穴の一端からガスを供給するとともにマイクロアンテナに高周波電圧を印加することで、貫通穴の他端からマイクロプラズマを吹き出すようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、プラズマの発光強度を分光器で測定することが記載されている。また、高周波電源とマイクロアンテナの間に配設された整合回路をプラズマ点灯時に反射波がゼロ近傍になるように調整すること、及びその場合プラズマ点灯直後にはマイクロアンテナの温度上昇による抵抗変化に伴って反射波が増えてプラズマ投入電力が低下し、プラズマの発光強度が低下するが、その後マイクロアンテナの温度が10分程度で安定し、発光強度が安定することが記載されている。
【0004】
また、誘導結合型大気圧プラズマ発生装置を用いた分析装置であるICP分析装置において、プラズマ点灯後に反射波が発生し難く、プラズマ投入電力効率を高めるように、調整設定され、さらに反射波が発生しない状態にオートチューニングを行う機能を有する整合回路が設けられ、さらにそれだけの構成ではプラズマ点灯ミスを発生し易いので、整合回路の容量値を点灯前後の状態に適した値に調整する手段を設けたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、大気圧プラズマ発生装置ではなく、平行平板電極を用いた容量結合型の真空プラズマ処理装置において、プラズマの発生を検出する方法として、プラズマ発光を光検出器で検出する方法と、プラズマが発生すると入力電力の反射波が小さくなることを利用して反射波を検出する方法とを挙げ、かつ光検出器を用いる方法は設備コストがかかり、反射波を検出する方法はプラズマ発生以外でも反射波が小さくなることがあって誤検出する恐れがあるという問題があるため、プラズマ発生空間に浮遊電極を設けて浮遊電位と基準電位との電位差を検出する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3610688号明細書
【特許文献2】特開平10−19782号公報
【特許文献3】特開平7−326489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、大気圧プラズマ処理方法及び装置を、実際の生産工程に適用するにあたっては、プラズマを点灯させた後も、プラズマが点灯状態を維持しているか否か、またプラズマを被処理物表面に照射している状態となっているか否かを確認することが重要な要請となっている。というのは、ロボット装置に搭載した大気圧プラズマヘッドにて自動的に被処理物表面のプラズマ処理を行っている場合に、適正にプラズマ処理が行われていることを確認していないと、不良品が大量に発生してしまうためである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のように光検出器にてプラズマ点灯を検出する構成では、特許文献3でも指摘されているように、設備が大掛かりとなり、大気圧プラズマ処理装置を適用するようにコンパクトなスペースや設備に適用するのは困難であり、かつ設備コストもかかるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の構成では、大気圧プラズマの点灯ミスを防止することはできるが、プラズマを点灯した後、整合回路の容量値を反射波が小さくなるようにオートチューニングするように構成されているので、プラズマ処理中にプラズマが消灯した場合に速やかに検出することができず、また一時的に消灯した場合には全く検出することができず、適切なプラズマ処理がなされていなくても直ちに検出することができないという問題がある。
【0010】
また、特許文献3には、平行平板型の真空プラズマ処理装置において反射波の検出によってプラズマの点灯を検出することが記載されているが、特許文献3の中で説明されているように、種々の理由により反射波が変化するためにプラズマの点灯状態を適正に検出することはできないと記載されており、少なくとも大気圧プラズマにおいて、プラズマ点灯後にプラズマの点灯状態を確認する方法については記載も示唆もなされていない。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、大気圧プラズマにて被処理物を処理するに際してプラズマ点灯後のプラズマの点灯状態やプラズマの照射状態を確認できて信頼性の高いプラズマ処理を確保することができる大気圧プラズマ処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の大気圧プラズマ処理方法は、大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスを供給するとともに高周波電圧を印加して一次プラズマを発生させ、発生した一次プラズマに反応性ガスを混合してプラズマ化し、若しくは、大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスと反応性ガスの混合ガスを供給するとともに高周波電圧を印加してプラズマを発生させて反応性ガスをプラズマ化し、プラズマ化した反応性ガスを被処理表面に向けて照射し、被処理表面をプラズマ処理する大気圧プラズマ処理方法において、事前に固定の調整回路にてプラズマ点灯時の反射電力をゼロ近傍に調整しておき、プラズマ化した反応性ガスを被処理表面に照射してプラズマ処理を行うプラズマ照射動作中に、プラズマ点灯後の反射電力の大きさを検出し、反射電力の大きさを第1の所定値と比較して一次プラズマが点灯しているか否かを確認する。
【0013】
また、本発明の大気圧プラズマ処理装置は、大気圧近傍の所定の空間に第1のガスを供給するとともに前記所定の空間の近傍に配置したアンテナ又は電極に高周波電圧を印加して点灯手段にて一次プラズマを発生させ、発生した一次プラズマ又は前記一次プラズマを第2のガスに衝突させて発生させた二次プラズマを被処理物の表面に照射するプラズマヘッドと、高周波電圧を発生する高周波電源と、ガスを供給するガス供給部と、高周波電源とアンテナ又は電極の間に配置されアンテナ又は電極からの反射電力を調整する整合回路と、反射電力の大きさを検出する反射電力検出手段と、一次プラズマ点灯後における二次プラズマを被処理表面に照射してプラズマ処理を行うプラズマ照射動作中に、反射電力検出手段にて検出した反射出力の大きさに基づいて高周波電源とガス供給部を制御する制御部とを備えたものである。
【0014】
この構成によると、上記大気圧プラズマ処理方法を実施して大気圧プラズマにて被処理物を処理するに際して、プラズマ点灯後にプラズマが点灯した状態を維持している否かを確認することができ、信頼性の高いプラズマ処理を確保することができる。
【0015】
また、整合回路は、一次プラズマ点灯状態又はプラズマ処理状態での反射電力がゼロ近傍となるように調整設定されており、制御部は、反射電力の大きさを第1の所定値と比較して一次プラズマが点灯しているか否かを確認すると、一次プラズマの点灯状態でのアンテナ又は電極に対する電力投入を効率的に行うことができるとともに、プラズマの点灯状態を確認できる。
【0016】
また、整合回路は、一次プラズマ点灯状態又はプラズマ処理状態での反射電力がゼロ近傍となるように調整設定されており、制御部は、反射波の大きさを第2の所定値と比較して被処理表面にプラズマが照射されているか否かを確認すると、プラズマ処理状態でのアンテナ又は電極に対する電力投入を効率的に行うことができるとともに、プラズマ処理状態を確認できる。
【0017】
また、前記所定の空間に供給される第1のガスのガス濃度を検出するガス濃度検出手段を備え、制御部は前記ガス濃度が所定の値以上になった後一次プラズマの点灯手段を動作させると、点灯手段による点灯動作を最小限にしながら確実に点灯することができる。
【0018】
また、大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスを供給するとともに前記所定の空間の近傍に配置したアンテナ又は電極に高周波電圧を印加して点灯手段にてプラズマを発生させ、発生したプラズマに反応性ガスを混合してプラズマ化し、若しくは、大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスと反応性ガスの混合ガスを供給するとともに前記所定の空間の近傍に配置したアンテナ又は電極に高周波電圧を印加して点灯手段にてプラズマを発生させて反応性ガスをプラズマ化し、プラズマ化した反応性ガスを照射するプラズマヘッドと、高周波電圧を発生する高周波電源と、ガスを供給するガス供給部と、事前に高周波電源とアンテナ又は電極の間に配置されアンテナ又は電極からの反射電力をゼロ近傍に調整した固定の整合回路と、反射電力の大きさを検出する反射電力検出手段と、プラズマ点灯後に反射電力検出手段にて検出した反射出力の大きさに基づいて高周波電源とガス供給部を制御する制御部とを備えた。
【0019】
また、大気圧プラズマを照射するプラズマヘッドと、プラズマヘッドから照射されたプラズマが被処理表面に対向しつつ被処理表面に沿って相対移動するようにプラズマヘッドと被処理物を相対移動させる移動手段とを備えていると、被処理物の被処理表面のプラズマ処理を、プラズマヘッドと被処理物を相対移動させつつ効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の大気圧プラズマ処理方法及び装置によれば、一次プラズマ点灯後に、反射電力の大きさを第1の所定値と比較することで一次プラズマが点灯した状態を維持しているか否かを検出することができ、大気圧プラズマにて被処理物を処理するに際してプラズマ点灯後のプラズマの点灯状態を確認することができ、信頼性の高いプラズマ処理を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の大気圧プラズマ処理装置の第1の実施形態の全体概略構成を示す斜視図
【図2】同実施形態における被処理物の例を示し、(a)は回路基板の平面図、(b)はフラットパネルディスプレイの平面図
【図3】同実施形態のプラズマヘッドと要部構成を示す断面図
【図4】同実施形態のプラズマヘッドの斜視図
【図5】同実施形態における整合回路と位相回路の構成図
【図6】同実施形態のプラズマ処理動作のフローチャート
【図7】同プラズマ処理動作におけるプラズマ照射動作のフローチャート
【図8】同実施形態のプラズマ処理動作のタイミングチャート
【図9】本発明の大気圧プラズマ処理方法の第2の実施形態におけるプラズマ処理動作のタイミングチャート
【図10】本発明に適用可能なプラズマヘッドの第1の変形構成例を示す斜視図
【図11】本発明に適用可能なプラズマヘッドの第2の変形構成例を示す斜視図
【図12】本発明に適用可能なプラズマヘッドの第3の変形構成例を示す斜視図
【図13】本発明に適用可能なプラズマヘッドの第4の変形構成例を示す斜視図
【図14】本発明に適用可能なプラズマヘッドの第5の変形構成例を示す断面図
【図15】本発明に適用可能なプラズマヘッドの第6の変形構成例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の大気圧プラズマ処理装置の実施形態について、図1〜図15を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
まず、本発明の大気圧プラズマ処理装置の第1の実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
【0024】
本実施形態の大気圧プラズマ処理装置1は、図1に示すように、3軸方向に移動及び位置決め可能な移動手段としてのロボット装置2を備えている。ロボット装置2は、水平面内で直交する2軸方向(X−Y軸方向)に移動及び位置決め可能な移動体3に垂直方向(Z軸方向)に移動及び位置決め可能に可動ヘッド4を取付けて構成され、その可動ヘッド4にプラズマヘッド10が設置されている。一方、被処理物5は、搬入・搬出部7によってプラズマヘッド10の可動範囲の下部位置に搬入・搬出されるとともに、所定位置に位置決めされて固定される。
【0025】
被処理物5には、図2(a)、(b)に示すように、プラズマ処理を行うべき被処理表面6が複数箇所に分散して配されている。このような被処理物5としては、例えば図2(a)に示すように電子部品実装用のランド配設領域が被処理表面6である回路基板8の例や、図2(b)に示すように異方導電性膜の貼付領域が被処理表面6である液晶パネルやプラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイ9の例があり、それぞれプラズマ処理にてランド表面の表面改質や貼付面のクリーニングを行うものである。
【0026】
プラズマヘッド10の構成を、図3、図4を参照して説明する。断面円形の反応空間11を形成する誘電体からなる円筒状の反応容器12の周囲にコイル状のアンテナ13を配設し、アンテナ13に高周波電源14から高周波電圧を印加して反応空間11に高周波電界を印加し、反応容器12の上端12aから第1の不活性ガス15を供給することで、反応容器12の下端12bから一次プラズマ16を吹き出すように構成されている。
【0027】
反応容器12の下端12b近傍の周囲に円筒状又は角筒形状の混合ガス容器17が配設され、その周壁上部に混合ガス18を内部に供給する複数のガス供給口19が配設されている。混合ガス容器17は、反応容器12の下端12bより下方に延出され、反応容器12の下端12bより下方の部分に、一次プラズマ16が衝突して二次プラズマ21を発生する下端開放の混合ガス領域20が形成されている。
【0028】
アンテナ13に高周波電圧を供給する高周波電源14としては、その出力周波数帯が13.56MHzに代表されるRF周波数帯、100MHzに代表される又はVHF周波数帯、さらにマイクロ波周波数帯のものなどを使用することができる。なお、RF周波数帯やVHF周波数帯やマイクロ波周波数帯を使用する場合には、図3に示すように、高周波電源14とアンテナ13との間に、アンテナ13からの反射電力を調整し、反射電力によってアンテナ13への投入電力が低下するのを防止する整合回路22が介装される。
【0029】
この整合回路22は、図5に示すように、アンテナ13に並列に接続されたLOAD側リアクタンス素子(図示例では可変コンデンサ)23と、アンテナ13に直列に接続されたTUNE側のリアクタンス素子(図示例では可変コンデンサ)24にて構成されている。なお、リアクタンス素子23、24はともに可変コンデンサを例示したが、固定あるいは可変のコンデンサやインダクタンスを用いた構成とすることもできる。また、好適には、図5に示すように、整合回路22とアンテナ13との間に位相回路25を介装して、定在波の電流の振幅の最大値、又は定在波の電圧振幅の最小値の位置がアンテナ13の近傍に位置するようにして、投入電力がアンテナ13に流れる電流として効率良く供給されるようにするのが好適である。位相回路25は、図示例では、LOAD側リアクタンス素子23とアンテナ13との間に介装したインダクタンス素子26にて構成している。勿論、位相回路25を、LOAD側のリアクタンス素子23とアンテナ13との間に介装したインダクタンス素子若しくはコンデンサ素子と、TUNE側のリアクタンス素子24とアンテナ13との間に介装したコンデンサ素子若しくはインダクタンス素子にて構成しても良い。なお、図5において、Lはアンテナ13のインダンタンス成分、Rは回路の抵抗成分である。
【0030】
また、図3に示すように、高周波電源14と整合回路22の間に、高周波電源14からの入射電力を検出する入射電力検出手段27とアンテナ13からの反射電力を検出する反射電力検出手段28が配設され、その検出信号が制御部31に入力されている。また、反応容器12の上端12a近傍にガス濃度検出手段29が配設され、その検出信号も制御部31に入力されている。
【0031】
30は、反応容器12に第1の不活性ガス15を供給するガス供給管であり、流量制御部32を介してガス供給部33に接続されている。ガス濃度検出手段29は、このガス供給管30の出口部に配置されている。ガス供給部33は、第1の不活性ガス15を供給する第1の不活性ガス供給源(図示せず)と、第2の不活性ガスと反応性ガスの混合ガス18を供給する混合ガス源(図示せず)とを備え、それぞれのガス出口には圧力調整弁が設けられている。流量制御部32は、第1の不活性ガス15の流量を制御するマスフローコントローラなどから成る第1の流量制御装置(図示せず)と、混合ガス18の流量を制御するマスフローコントローラなどから成る第2の流量制御装置とを備えている。
【0032】
なお、第1及び第2の不活性ガスは、アルゴン、ネオン、キセノン、ヘリウム、窒素から選択された単独ガス又は複数の混合ガスが適用される。また、反応性ガスは、プラズマ処理の種類に応じて、酸素、空気、CO2、N2Oなどの酸化性ガス、水素、アンモニアなどの還元性ガス、CF4などのフッ素系ガスなどが適用される。なお、窒素ガスは、字義通りの不活性ガスではないが、大気圧プラズマの発生においては、本来の不活性ガスに準ずる挙動を示し、ほぼ同様に用いることができるので、本明細書においては不活性ガスを広い定義に基づいて窒素ガスを含むものとする。
【0033】
制御部31は、記憶部(図示せず)に予め記憶された動作プログラムや制御データに基づいて、プラズマヘッド10の移動手段としてのロボット装置2、高周波電源14、流量制御部32、及び反応空間11で一次プラズマ16を点灯させる点灯装置34を動作制御するように構成されている。
【0034】
具体例について説明すると、反応容器12の内径R1=0.8mm、混合ガス容器17の内径R2=5mm、混合ガス容器17の下端と被処理物表面6の間の間隔L1=1mm、反応容器12の下端と混合ガス容器17の下端の間の間隔L2=4mmの装置構成とし、第1の不活性ガス15はアルゴンガスを用いて流量を50sccmとし、混合ガス容器17内に供給する混合ガスは、不活性ガスとしてのアルゴンガス(流量500sccm)と反応性ガスとしての酸素ガス(流量50sccm)の混合ガスで構成した。
【0035】
次に、以上の構成におけるプラズマ処理動作について、主として、図3と、図6、図7の動作フローチャート、及び図8のタイミングチャートを参照して説明する。まず、ガス供給部33から流量制御部32を介して反応空間11に第1の不活性ガス15を供給し(ステップS1)、ガス濃度検出手段29にて供給ガスの濃度検出を行い(ステップS2)、その濃度が所定の濃度範囲になったか否かを判定し(ステップS3)、所定の濃度範囲になると、高周波電源14をONし(ステップS4)、点灯装置34をONする(ステップS5)。
【0036】
次に、入射電力検出手段27及び反射電力検出手段28にて入射電力及び反射電力を検出し(ステップS6)、入射電力が正常な状態で反射電力が所定値以内か否かを判定する(ステップS7)。ここで、整合回路22は、図8に示すように、予め反応空間11で一次プラズマ16が点灯している状態で、アンテナ13からの反射電力がほぼゼロになるように調整・設定されている。そのため、一次プラズマ16が点灯していない状態では反射電力が大きなP2となるので、検出した反射電力をP2とゼロの間に設定した第1の所定値T1と比較することで、一次プラズマ16が点灯しているか否かを判定することができる。一次プラズマ16が点灯するまでステップS5にリターンして点灯装置34を動作させ、一次プラズマ16が点灯すると点灯装置34をOFFする(ステップS8)。
【0037】
次に、ロボット装置2において、プラズマヘッド10を被処理物5の被処理表面6に沿って相対移動させる。本実施形態のプラズマヘッド10においては、反応空間11から混合ガス領域20に一次プラズマ16が吹き出して混合ガス18に衝突し、プラズマが展開して二次プラズマ21が発生し、その二次プラズマ21がプラズマヘッド10から被処理表面6に向けて照射され、被処理表面6のプラズマ処理が行われる(ステップS9)。また、このプラズマヘッド10においては、一次プラズマ16が点灯している状態で、混合ガス領域20に混合ガス18を供給することで二次プラズマ21を発生させて照射することができ、混合ガス18の供給を停止することで二次プラズマ21の照射を停止することができる。なお、このプラズマ照射動作の詳細は後に図7を参照して説明する。
【0038】
このプラズマ照射動作中に、反射電力が上記第1の所定値T1以内であるか否かの判定を行い(ステップS10)、一次プラズマ16が点灯状態を維持していて反射電力が所定値T1以内である時には、動作終了か否かの判定を行い(ステップS11)、動作終了でない場合はステップS9にリターンしてプラズマ照射動作を継続し、動作終了になっているとそこで終了する。一方、プラズマ照射動作中に一次プラズマ16が消灯してしまった場合には、図8に示すように、反射電力が第1の所定値T1を超えたP2となるので、ステップS10の判定の結果、ステップS12に移行し、一次プラズマ16の消灯を認識し、直ちにロボット装置2の動作を停止し(ステップS13)、エラー表示を行う(ステップS14)。
【0039】
プラズマ照射動作においては、図7に示すように、ロボット装置2にてプラズマヘッド10を被処理物5の被処理表面6に向けて移動させ(ステップS21)、プラズマヘッド10が被処理表面6の一端の照射開始点に位置したか否かの判定を行い(ステップS22)、位置していない場合はステップS21にリターンする。プラズマヘッド10が照射開始点に位置すると、混合ガス領域20に混合ガス18を供給して二次プラズマ21を発生させ、プラズマヘッド10から二次プラズマ21を被処理表面6に向けて照射しつつロボット装置2にてプラズマヘッド10を被処理表面6に沿って相対移動させて被処理表面6のプラズマ処理を行うとともに、その間に入射電力及び反射電力の検出を行う(ステップS23)。
【0040】
ここで、二次プラズマ21が被処理表面6に照射されている状態では、図8に示すように、入射電力の10%程度の反射電力P1が発生することになり、反射電力ゼロとP1の間に設定した第2の所定値T2を超えた反射電力が検出されると、適正にプラズマ照射が行われていることが確認され、反射電力がゼロ近傍のままの場合はプラズマ照射が行われていないことが判明する。そこで、反射電力の検出値が第2の所定値T2以上であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0041】
反射電力の検出値が第2の所定値T2以上の場合は、照射動作が正常であることが確認され(ステップS25)、ロボット動作を継続する(ステップS26)とともに、プラズマヘッド10が被処理表面6の他端に対向する照射終了点まで到達したか否かの判定を行い(ステップS27)、照射終了点に到達していない場合はステップS26にリターンし、照射終了点まで到達すると、混合ガス18の供給を停止して二次プラズマ21の発生・照射を停止する(ステップS28)。その後、すべての被処理表面6のプラズマ処理が終了したか否かの判定を行い(ステップS28)、終了していない場合はステップS21にリターンして以上の動作を繰り返し、終了している場合はそのまま終了する。
【0042】
一方、ステップS24の判定で、反射電力が第2の所定値T2以内の場合には、照射動作が異常であると認識し(ステップS30)、ロボット装置2の動作を停止し(ステップS31)、エラー表示を行う(ステップS32)。
【0043】
以上の本実施形態によれば、一次プラズマ16を点灯した後に、アンテナ13からの反射電力の大きさを第1の所定値T1と比較し、反射電力が第1の所定値T1より小さい場合は、一次プラズマ16が点灯状態を維持しており、反射電力が第1の所定値T1より大きくなっていると、一次プラズマ16が消灯したことを検出することができる。したがって、プラズマヘッド10にて被処理物5の被処理表面6のプラズマ処理をするに際して、一次プラズマ16が点灯した状態を維持している否か確認することができる。また、一次プラズマ16が点灯している状態での反射電力がゼロ近傍となるように整合回路22を調整・設定しているので、入射電力のアンテナ13への投入効率を向上することができる。なお、一次プラズマ16が点灯している状態で、二次プラズマ21を発生させても、二次プラズマ21を被処理物5に照射されていない状態では、反射電力はほぼゼロの状態が維持される。
【0044】
また、一次プラズマ16が点灯して二次プラズマ21が発生し、その二次プラズマ21を被処理表面6に照射している状態では、反射電力が入射電力の10分の1程度の大きさとなり、適正に照射されていない状態では反射電力がゼロ近傍になるので、反射電力の大きさを第2の所定値T2と比較することで、二次プラズマ21が被処理表面6に適切に照射されてプラズマ処理が実行されているか否かを直接検出・確認することができ、信頼性の高いプラズマ処理を確保することができる。
【0045】
また、一次プラズマ16の点灯時に、反応空間11に供給される第1の不活性ガス15のガス濃度をガス濃度検出手段29にて検出し、ガス濃度が所定の値以上になった後に、点灯手段34にて一次プラズマ16を点灯するようにしているので、点灯手段34による点灯動作を最小限にしながら確実に点灯することができる。
【0046】
また、反応空間11には第1の不活性ガス15のみを供給しているので一次プラズマ16を容易かつ確実に発生させることができ、その一次プラズマ16を、第2の不活性ガスと反応性ガスから成る混合ガス18が供給されている混合ガス領域20に衝突させていることで、二次プラズマ21が確実にかつ大きく発生・展開し、それに伴って混合ガス18中の反応性ガスが効率的にプラズマ化されることで、プラズマ密度が高くかつ一次プラズマ16よりも低温の二次プラズマ21にて所望のプラズマ処理を効果的に行うことができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、本発明の大気圧プラズマ処理装置の第2の実施形態について、図9を参照して説明する。
【0048】
上記第1の実施形態では、一次プラズマ16が発生し、二次プラズマ21が発生している状態で、反射電力がほぼゼロ近傍となるように整合回路22を調整・設定した例を示したが、図9に示すように、被処理表面6に二次プラズマ21を照射している状態のときに反射電力がほぼゼロ近傍となるように整合回路22を調整・設定してもよい。
【0049】
この場合も、一次プラズマ16を点灯後、一次プラズマ16が消灯すると、反射電力がP2となって、第1の所定値T1と比較することで消灯したしたことを検出することができ、また一次プラズマ16が発生し、二次プラズマ21が発生している状態では反射電力がP1となっており、二次プラズマ21が被処理表面6に適正に照射されている状態では、アンテナ13からの反射電力がゼロ近傍となることで、適正にプラズマ処理が行われていることを直接検出・確認することができ、信頼性の高いプラズマ処理を確保することができる。また、プラズマ処理状態での反射波がゼロ近傍となることで、電力の投入効率を一層向上することができる。
【0050】
以上の実施形態では、プラズマヘッド10として、反応空間11で発生させた一次プラズマ16を混合ガス領域20の混合ガス18に衝突させることで二次プラズマ21を発生させ、その二次プラズマ21を被処理表面6に照射してプラズマ処理するようにした例を示したが、本発明におけるプラズマヘッド10の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、プラズマヘッド10を、反応空間11を有する反応容器12とアンテナ13とからなる構成とし、発生した一次プラズマ16を被処理表面6に照射するようにし、そのプラズマヘッド10に上記図3に示した構成を適用し、反射電力を検出して一次プラズマ16の点灯状態及び照射状態を検出するようにすることもできる。
【0051】
また、以上のようなコイル状のアンテナ13にて高周波電力を印加して誘導結合型の一次プラズマ16を発生するようにしたプラズマヘッド10に限らず、図11に示すように、プラズマヘッド10として、所定空間41を挟んでその両側に誘電体42を介して一対の電極43a、43bを配設し、電極43a、43b間に高周波電圧を印加し、空間41の一端からガス(不活性ガス又は不活性ガスと反応性ガスの混合ガス)44を供給することで空間41の他端から容量結合型のプラズマ45を吹き出すように構成したものでも良い。
【0052】
また、図12に示すように、誘電体から成る反応管46の外周に軸心方向に間隔をあけて一対の電極47a、47bを配設し、電極47a、47b間に高周波電圧を印加し、反応管46の一端からガス44を供給することで反応管46の他端からプラズマ45を吹き出すように構成したものでも良い。また、図13に示すように、断面形状が細長い長方形状の誘電体から成る反応管48の外周に軸心方向に間隔をあけて一対の電極49a、49bを配設し、電極49a、49b間に高周波電圧を印加するようにしたものでも良い。
【0053】
また、図14に示すように、誘電体から成る反応管50の内側に内側電極51を、外周に外側電極52を配設し、電極51、52間に高周波電圧を印加し、反応管50内にガスを供給することで反応管50内でプラズマ45を発生して吹き出し口53から吹き出すように構成したものでも良い。さらに、図15に示すように、内側電極54の先端部を円錐形にするとともに、その円錐部55の外面を誘電体56にて覆い、その外側を空間57をあけて取り囲むとともに、円錐部55の先端部に対向して吹出し口60を形成された外側電極58を配置し、外側電極58に形成したガス供給通路59から空間57内にガスに供給するとともに、内側電極54と外側電極58間に高周波電圧を印加し、空間57でプラズマを発生させて吹出し口60から吹き出すように構成したものでも良い。さらに、プラズマヘッド10としては、その他の種々の構成のものを適用することができる。
【0054】
また、図10〜図15に示した各実施形態において、大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスを供給し、高周波電圧を印加して一次プラズマを発生させ、発生した一次プラズマに不活性ガスと反応性ガスの混合ガス若しくは反応性ガスのみを混合して二次プラズマを発生させ、反応性ガスをプラズマ化して被処理物表面に向けて照射するようにしても良い。また、大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスと反応性ガスの混合ガスを供給し、高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、プラズマ化した反応性ガスを被処理物表面に向けて照射するようにしても良い。
【0055】
本発明は、以上の実施形態に限らず、請求項の記載に基づいて各実施形態に示した種々の構成要素を組み合わせた構成で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の大気圧プラズマ処理方法及び装置によれば、一次プラズマ点灯後に、反射電力の大きさを第1の所定値と比較することで一次プラズマが点灯した状態を維持しているか否かを検出することができ、大気圧プラズマにて被処理物を処理するに際してプラズマ点灯後のプラズマの点灯状態を確認することができるので、信頼性の高いプラズマ処理が要請される大気圧プラズマ処理に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 大気圧プラズマ処理装置
2 ロボット装置(移動手段)
5 被処理物
6 被処理表面
10 プラズマヘッド
11 反応空間
13 アンテナ
14 高周波電源
15 第1の不活性ガス(第1のガス)
16 一次プラズマ
18 混合ガス(第2のガス)
21 二次プラズマ
22 整合回路
28 反射電力検出手段
29 ガス濃度検出手段
31 制御部
34 点灯手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスを供給するとともに高周波電圧を印加して一次プラズマを発生させ、発生した一次プラズマに反応性ガスを混合してプラズマ化し、若しくは、大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスと反応性ガスの混合ガスを供給するとともに高周波電圧を印加してプラズマを発生させて反応性ガスをプラズマ化し、プラズマ化した反応性ガスを被処理表面に向けて照射し、被処理表面をプラズマ処理する大気圧プラズマ処理方法において、事前に固定の調整回路にてプラズマ点灯時の反射電力をゼロ近傍に調整しておき、プラズマ化した反応性ガスを被処理表面に照射してプラズマ処理を行うプラズマ照射動作中に、プラズマ点灯後の反射電力の大きさを検出し、反射電力の大きさを第1の所定値と比較して一次プラズマが点灯しているか否かを確認することを特徴とする大気圧プラズマ処理方法。
【請求項2】
大気圧近傍の所定の空間に第1のガスを供給するとともに前記所定の空間の近傍に配置したアンテナ又は電極に高周波電圧を印加して点灯手段にて一次プラズマを発生させ、発生した一次プラズマ又は前記一次プラズマを第2のガスに衝突させて発生させた二次プラズマを被処理物の表面に照射するプラズマヘッドと、高周波電圧を発生する高周波電源と、ガスを供給するガス供給部と、高周波電源とアンテナ又は電極の間に配置されアンテナ又は電極からの反射電力を調整する整合回路と、反射電力の大きさを検出する反射電力検出手段と、一次プラズマ点灯後における二次プラズマを被処理表面に照射してプラズマ処理を行うプラズマ照射動作中に、反射電力検出手段にて検出した反射出力の大きさに基づいて高周波電源とガス供給部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【請求項3】
整合回路は、一次プラズマ点灯状態又はプラズマ処理状態での反射電力がゼロ近傍となるように調整設定されており、制御部は、反射波の大きさを第1の所定値と比較して一次プラズマが点灯しているか否かを確認することを特徴とする請求項2記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項4】
整合回路は、一次プラズマ点灯状態又はプラズマ処理状態での反射電力がゼロ近傍となるように調整設定されており、制御部は、反射電力の大きさを第2の所定値と比較して被処理表面にプラズマが照射されているか否かを確認することを特徴とする請求項2記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記所定の空間に供給される第1のガスのガス濃度を検出するガス濃度検出手段を備え、制御部は前記ガス濃度が所定の値以上になった後一次プラズマの点灯手段を動作させることを特徴とする請求項2〜4の何れか1つに記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項6】
大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスを供給するとともに前記所定の空間の近傍に配置したアンテナ又は電極に高周波電圧を印加して点灯手段にてプラズマを発生させ、発生したプラズマに反応性ガスを混合してプラズマ化し、若しくは、大気圧近傍の所定の空間に不活性ガスと反応性ガスの混合ガスを供給するとともに前記所定の空間の近傍に配置したアンテナ又は電極に高周波電圧を印加して点灯手段にてプラズマを発生させて反応性ガスをプラズマ化し、プラズマ化した反応性ガスを被処理物の表面に照射するプラズマヘッドと、高周波電圧を発生する高周波電源と、ガスを供給するガス供給部と、事前に高周波電源とアンテナ又は電極の間に配置されアンテナ又は電極からの反射電力をゼロ近傍に調整した固定の整合回路と、反射電力の大きさを検出する反射電力検出手段と、プラズマ点灯後における二次プラズマを被処理表面に照射してプラズマ処理を行うプラズマ照射動作中に、反射電力検出手段にて検出した反射出力の大きさに基づいて高周波電源とガス供給部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【請求項7】
大気圧プラズマを照射するプラズマヘッドと、プラズマヘッドから照射されたプラズマが被処理表面に対向しつつ被処理表面に沿って相対移動するようにプラズマヘッドと被処理物を相対移動させる移動手段とを備えていることを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の大気圧プラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−124170(P2012−124170A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12697(P2012−12697)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2008−49363(P2008−49363)の分割
【原出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】