説明

太陽電池モジュールのための封止材としての使用のための硬化性ポリオルガノシロキサン組成物

本発明は、太陽電池モジュールのための封止材としての使用のための、とりわけ、光起電性モジュールの封止のための硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、それから製造される硬化ポリオルガノシロキサン組成物およびそれを封止材として含む光起電性モジュールに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールのための封止材としての使用のための、とりわけ、光起電性モジュールの封止のための硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、それから製造される硬化ポリオルガノシロキサン組成物およびそれを封止材として含む光起電性モジュールに関する。好適には、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、未硬化の状態で、室温(25℃)において液体であり、そして、エラストマーに硬化し、そして、特に隣接したガラスおよびプラスチックの基板への永続的な接着を、とりわけ長期間にわたる屋外での風化後または対応する加速劣化試験後に強力な接着力をもって構築する。
【背景技術】
【0002】
典型的な光起電性太陽電池モジュールにおいては、結晶性または非晶質の半導体太陽電池は、相互接続され、機械的に支持され、そして電池を積層構造中に組入れることによって環境による劣化に対して保護されている。モジュールは通常、好ましくはガラスから製造される、透明な前面パネルまたは基板、および、通常はプラスチックまたは金属のシートおよび時にはガラスである背面の「バックスキン(backskin)」またはスーパーストレートを含む。半導体太陽電池は通常、部分的または完全に封入材料によって封止され、そして、一体化された太陽電池は前面パネルおよびバックスキンのあいだに位置している。
【0003】
種々の材料が封止材として考慮され、また使用されてきた。宇宙での適用のためのソーラーモジュールの初期の使用においては、シリコーン封止材が、その卓越した絶縁特性ならびに極限的な温度条件および放射線に対するその安定性のため、第一選択材料であった。たとえば、非特許文献1を参照のこと。典型的には、ケイ素結合アルケニル基とのSiH基の反応によって硬化可能であるシリコーン組成物、たとえばDow Corning Corp.によるSylgard 182もしくは184またはGeneral ElectricによるRTV 615などの、いわゆる付加加硫型材料が、たとえば特許文献1、特許文献2、特許文献3または特許文献4などの特許文献に記載されている。後に、シリコーン封止材は地球上のモジュール中での幅広い使用としては高価すぎる、または複雑すぎることが判明した。結晶性太陽電池を有するモジュールのための最善の封止材と考えられたエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)とともに、有機ポリマーがより重要となった。しかしながら、EVAは、太陽光、一連の工程の影響下、時間とともに変色する傾向があり、これはモジュールの効率を低下させる。別の欠点は、EVAで封止されたモジュールの製造のための真空ラミネータの必要性である。この時間のかかる、そして複雑な製造過程を避けるために、経済的なモジュール製造のための製造過程が望ましいであろう。シリコーン封止材、そして、硬化副生成物がないという点からとりわけ付加加硫型材料が再び興味の対象となった(特許文献5)。シリコーンの適用性のために最も重要な条件の一つは、封止材と接触する基板への接着性である。
【0004】
付加加硫型シリコーン材料は通常、大部分の基板に良好に接着しない。長年にわたって、接着特性を有する付加加硫型材料について記載した、多数の特許および科学出版物が刊行されてきているが(たとえば、特許文献6〜29、非特許文献2)、これらは接着現象の多大な多様性および複雑性を反映しており、そして、同一の添加剤では解決できずしばしば特定の解決策を必要とする、接着性に関る種々の問題を示している。多くの特許は、熱可塑性材料およびシリコーンからなる複合材料の製造に関していた。その他はシリコーンを金属基板上における接着剤として使用することを目的とするものであった。ガラスもまた、いくつかの場合において基板として言及されている。しかしながら、これらの文献においては、たとえあったとしても硬化シリコーン組成物の当初の接着特性のみが報告されている。しかし、光起電性太陽電池応用における使用のためには、いかなる封止材も卓越した初期の接着特性を提供するだけでなく、光起電性太陽電池モジュールの通常保障される耐用年数が25年であることを考慮して、そして、光起電性太陽電池モジュールが暴露される極限的な温度差、湿度、UV光などを含む極限的な天候条件を考慮して、卓越した長期にわたる接着特性をまた提供しなければならない。
【0005】
さらに、光起電性太陽電池モジュールの封止材は、その運用期間中に、電池モジュール材料の腐食または曇りを引き起こし、続いて光起電性太陽電池モジュールの故障または低下した効率の原因となり得る、揮発性成分を遊離すべきではない。
【0006】
上述した要件以外の、光起電性太陽電池モジュールの封止材のためのさらなる要件は、ガラス、コーティングされたガラスを含む、光起電性太陽電池モジュールの製造に関与する種々の基板および金属、高分子などのほかの基板へのプライマーなしでの同時接着性の必要性である。プライマーなしでの接着は光起電性モジュールのコスト効率の高い製造工程のために必要である。経済的な、高効率の製造のためのさらなる要件は、速い硬化速度ならびに架橋および接着性の進展に必要とされる温度が低いことである。
【0007】
多数の出版物が、LEDまたはICを含む半導体装置の封止を扱っている(特許文献30〜38)。しかしながら、そのような半導体装置のための要件は、通常、湿度、温度の変化への暴露およびこれによる熱的膨張、酸性雨への暴露、太陽光への暴露がソーラーモジュールと比較して少ないため、厳しくない。また、半導体装置の封止材に使用される基板はソーラーモジュールで使用されるものとは異なっている。本発明において使用されるソーラーモジュールでは、半導体装置では使用されていない専用のガラスおよびフィルムが使用される。
【0008】
特許文献5は、様々な硬化機構、とりわけヒドロシリル化などの硬化機構によって得られる硬化シリコーン封止材を有する太陽電池モジュールについて記載している。SiH末端架橋剤をもっぱら含む様々な種類のSiH架橋剤が言及されているが、しかしながらこれらは、長期間の耐用年数という観点からは特定されていない。また、実施例はSiH架橋剤の性質について明確な開示をしていない。Si含有量の低いSi架橋剤が使用されているようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4056405号明細書
【特許文献2】米国特許第4093473号明細書
【特許文献3】米国特許第4143949号明細書
【特許文献4】米国特許第4167644号明細書
【特許文献5】国際公開第2005/006451号
【特許文献6】米国特許第3699072号明細書
【特許文献7】米国特許第3892707号明細書
【特許文献8】米国特許第4077943号明細書
【特許文献9】米国特許第4082726号明細書
【特許文献10】米国特許第4087585号明細書
【特許文献11】米国特許第4245079号明細書
【特許文献12】米国特許第4257936号明細書
【特許文献13】米国特許第4677161号明細書
【特許文献14】米国特許第4701503号明細書
【特許文献15】米国特許第4721764号明細書
【特許文献16】米国特許第4912188号明細書
【特許文献17】米国特許第5051467号明細書
【特許文献18】米国特許第5106933号明細書
【特許文献19】米国特許第5312855号明細書
【特許文献20】米国特許第5364921号明細書
【特許文献21】米国特許第5438094号明細書
【特許文献22】米国特許第5516823号明細書
【特許文献23】米国特許第5536803号明細書
【特許文献24】米国特許第6743515号明細書
【特許文献25】米国特許第7119159号明細書
【特許文献26】米国特許第7288322号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2003/0236380号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2005/0089696号明細書
【特許文献29】国際公開第2008/103227号
【特許文献30】特開2009−235265号公報
【特許文献31】米国特許出願公開第2006/0270792号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2007/0032595号明細書
【特許文献33】特開平6−16942号公報
【特許文献34】米国特許第5021494号明細書
【特許文献35】特開2006−335857号公報
【特許文献36】米国特許出願公開第2004/0178509号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2002/0037963号明細書
【特許文献38】欧州特許第1801163号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】P. BermamおよびR.K. Yasui、Technical report 32-7547、Jet Propulsion Laboratory、Californian Institute of Technology1、1971
【非特許文献2】Toshio SuzukiおよびAkira Kasuya、J. Adhesion Sci. Technol. Vol. 3、No. 6 pp 463-473、1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記で言及した必要性を満たす光起電性モジュールのためのシリコーン封止材は、特定のSiH架橋剤の選択を必要とするという発見に基づく。本発明の特定の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、加速劣化試験に光起電性太陽電池モジュールの損傷または効率の悪化なしに合格し、そして、低い温度で硬化し得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によって、封止材としての使用のための硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が提供され、前記組成物は、
(A)少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル残基を有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、
(B)少なくとも7個のSi原子を有する、少なくとも1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、全てのSi原子に対するSiH基のモル比が0.55より大きいポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(C)少なくとも1つのヒドロシリル化触媒、
(D)任意には、少なくとも1つの接着促進剤、
(E)任意には、少なくとも1つの補強充填材、
を含み、
ここで、配合中の成分(A)中の不飽和ヒドロカルビル残基の総計に対する、成分(B)中のSiH基の総計のモル比は、0.7および4のあいだ、好ましくは1および4のあいだであって、前記封止材は太陽電池モジュールのためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において使用される用語封止材は、半導体素子(とりわけ、光起電性太陽電池半導体素子)、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板などを含む基板を部分的にまたは完全に覆う材料であって、全ては太陽電池モジュールのため、特には光起電性太陽電池モジュールのための材料を含むが、これらに限定されるわけではない。本発明の文脈において「部分的に」とは、半導体素子、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板などを含む、全ては太陽電池モジュールのため、特には光起電性太陽電池モジュールのための基板が、硬化シリコーン組成物によって部分的にのみ覆われる場合、たとえば、半導体素子の、および任意には、太陽電池モジュール中のとりわけ光起電性太陽電池モジュール中の半導体素子に連結されている電導線のバックレイヤー(backlayer)(受光面の対向)としてなどで半導体素子を部分的に覆うことを含んでもよい。「部分的に」とはまた、ガラス基板の一部および半導体素子の一部(特には背面)を同時に、部分的に被膜し、それゆえ具体的には太陽電池モジュール中の半導体素子を取り囲む完全なエンベロープ(envelope)を形成するための硬化性組成物の使用を含んでもよい。「部分的に」とはまた、表面上の半導体素子(すなわち光が太陽電池モジュールに入射する面)を被膜するための硬化性組成物の使用を含んでも良い。「完全に」とは、特には、半導体素子、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板などを含む、全ては太陽電池モジュールとりわけ光起電性太陽電池モジュールの基板が、硬化シリコーン組成物によって完全に取り囲まれている場合を含んでもよい。本発明のシリコーン封止材を使用する光起電性太陽電池モジュールのさらなる実施態様が下記に説明される。本発明のシリコーン封止材は、コーティング有りおよび無しのガラス基板、たとえばフッ化熱可塑性物質またはEVAコポリマーでできているようなバリアフォイル、結晶性もしくは多結晶のシリコンなどの、または、たとえば非晶質、半結晶性シリコンなどの薄膜シリコン、ひ化ガリウム、ジセレン化銅インジウム、テルル化カドミウム、ジセレン化銅インジウムガリウムなどの半導体素子を含む光起電性太陽電池モジュール中に使用される可能性のあるいくつかの材料に対するより良好な接着性を特徴とする。さらに、本発明のシリコーン封止材は、高湿度での大きな温度変化という極限の状態下での長期間にわたる、これらの基板に対するより良好な接着性を特徴とする。好ましい実施態様において、本発明のシリコーン封止材は、ガラス基板およびバリアフォイルと、好ましくはバックスキンフォイルと同時に接触しており、任意には、半導体素子と接触する。
【0014】
成分(A)
本発明の組成物は少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル残基を有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン(成分(A))を含む。成分(A)としては、平均で少なくとも2つのアルケニル基を有する、1またはそれ以上のポリオルガノシロキサンが挙げられ得る。適切な成分(A)は、一般式(4):
[Mabcd9em (4)
で表されることができ、ここで、式(4)中の指数は、ポリオシロキサン中にブロックでまたはランダムに分布し得るシロキシユニットM、D、TおよびQの比を表している。ポリシロキサン中において、それぞれのシロキサンユニットは同一または異なっていてもよく、そして
a=0〜10
b=0〜2000
c=0〜50
d=0〜1
e=1〜300
m=1〜1000
であり、
a、b、c、dおよびmは、成分(A)の25℃における粘度が50000mPa.s未満(25℃でD=1s-1のせん断速度において測定された)であるようにするものである。
【0015】
成分(A)の粘度とは、単一の成分(A)の、または複数の成分(A)の混合物の粘度を意味する。後者の混合物の場合、その中に25℃において50000mPa.sを超える粘度を有するかもしれない個々の成分(A)の存在が含まれていてもよく、たとえば、QおよびまたはTユニットを含む樹脂性成分(A)が含まれていてもよい。
【0016】
式(4)において、指数は、数平均分子量Mnに基づいた数平均重合度Pnを表すものである。
【0017】
式(4)中、
M=R3SiO1/2、またはM*
D=R2SiO2/2、またはD*
T=RSiO3/2、またはT*
Q=SiO4/2
9は二価で、上記のシロキシ基間の架橋基
であって、
それぞれのRは、同一または異なっていてもよく、任意には置換されていてもよい炭素原子数30までのアルキル基、任意には置換されていてもよい炭素原子数30までのアリール基、1000個までのアルキレンオキシユニットを有するポリ(C2〜C4)アルキレンエーテル基から選択され、
R基は脂肪族不飽和結合を有さず、および
*=R1p3-pSiO1/2、D*=R1q2-qSiO2/2、T*=R1SiO3/2であって、
p=0〜3、好ましくは1〜3、
q=1〜2、ならびに
9は下記に規定される。
【0018】
Rは好ましくは、追加で1つまたはそれ以上のO、N、SまたはF原子で置換されていてもよい、n−、イソ、もしくは三級のアルキル、アルコキシアルキル、C5〜C30環状アルキル、またはC6〜C30アリール、アルキルアリール、または、500個までのアルキレンオキシユニットを有するポリ(C2〜C4)アルキレンエーテルより選択され、R基は脂肪族不飽和結合を有さない。
【0019】
好ましい一価の炭化水素ラジカルの例としては、アルキルラジカル、好ましくはたとえば、CH3、CH3CH2、(CH32CH、C817およびC1021などのアルキルラジカル、ならびに、たとえばシクロヘキシルエチルなどの脂環式ラジカル、たとえばフェニル、トリル、キシリルなどのアリールラジカル、たとえばベンジルおよび2−フェニルエチルなどのアラルキルラジカルなどが挙げられる。好ましい一価のハロ炭化水素ラジカルは、Cn2n+1CH2CH2の化学式をもち、式中nは1から10までの値であり、たとえば、CF3CH2CH2、C49CH2CH2、C613CH2CH2、C25−O(CF2−CF2−O)1~10CF2、F[CF(CF3)−CF2−O]1~5−(CF20~2、C37−OCF(CF3)およびC37−OCF(CF3)−CF2−OCF(CF3)である。
【0020】
好ましいR基は、メチル、フェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルである。
【0021】
1は、任意には1つまたはそれ以上のOまたはF原子で置換されていてもよい、たとえばn、イソ、三級、もしくは環状のアルケニル、C6〜C30シクロアルケニル、C8〜C30アルケニルアリール、シクロアルケニルアルキル、ビニル、アリル、メタリル、3−ブテニル、5−ヘキセニル、7−オクテニル、エチリデン−ノルボルニル、スチリル、ビニルフェニルエチル、ノルボネニル−エチル、リモネニルなどのC=C基含有基(アルケニル基)、または、任意には1つまたはそれ以上のOまたはF原子を含んでもよい、C≡C基含有基(アルキニル基)を含む不飽和基から選択される。
【0022】
アルケニルラジカルは、アルケニルシロキサンを製造するために使用されるアルファ−、オメガ−ジエン類のより容易な入手可能性のため、好ましくは末端のケイ素原子に結合しており、オレフィン機能は高級アルケニルラジカルのアルケニル基の末端にある。
【0023】
1基は好ましくは、ビニル、5−ヘキセニル、シクロヘキセニル、リモニル、スチリル、ビニルフェニルエチルである。
【0024】
9としてはたとえば、二価の脂肪族または芳香族の、n−、イソ−、三級もしくは環状の、炭素原子数14までのアルキレン、アリーレン、またはアルキレンアリール基が挙げられる。R9は2つのシロキシユニットのあいだの架橋要素を形成する。R9基の含有量は、全てのシロキサンユニットの30mol%を超えず、好ましくは20mol%を超えない。好ましくは、R9は含まれない。好適な二価の炭化水素基R9の好ましい例としては、任意のアルキレン残基、好ましくはたとえば−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2(CH3)CH−、−(CH24−、−CH2CH(CH3)CH2−、−(CH26−、−(CH28−および−(CH218−など;シクロアルキレンラジカル、たとえばシクロヘキシレンなど;アリーレンラジカル、たとえばフェニレン、キシレンなど、ならびに、たとえばベンジレンなどの炭化水素ラジカルの組み合わせ、すなわち−CH2CH2−C64−CH2CH2−、−C64CH2−が挙げられる。好ましい基は、アルファ、オメガ−エチレン、アルファ、オメガ−ヘキシレンまたは1,4−フェニレンである。
【0025】
さらなる例は、たとえば任意の二価の炭化水素基R9であって、1つまたはそれ以上の水素原子がハロゲン、たとえばフッ素、塩素、臭素などによって置換されている基である、二価のハロ炭化水素ラジカルR9を含む。好ましい二価のハロ炭化水素残基は、たとえば−CH2CH2CF2CF2CH2CH2−などの化学式−CH2CH2(CF21~10CH2CH2−を有し、また、好適な二価の炭化水素エーテルラジカルおよびハロ炭化水素エーテルラジカルの他の例としてたとえば、−CH2CH2OCH2CH2−、−C64−O−C64−、−CH2CH2CF2OCF2CH2CH2−および−CH2CH2OCH2CH2CH2−が挙げられる。
【0026】
成分(A)として、R、R1および/またはR9ラジカルを含む、このようなポリマーは、たとえば、アルケニルジメチルシロキシまたはトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンであって、アルケニルメチルシロキシ基、ジメチルシロキシ基以外のシロキサンユニット、たとえばポリ(ジメチル−コ−ジフェニル)シロキサンなどを含んでもよい。
【0027】
広く明示される、本発明の組成物の成分(A)は、酸素および/または二価の基R9によって結合された2つまたはそれ以上のケイ素原子を含む任意のポリオルガノシロキサン化合物であり得るが、ここで、ポリオルガノシロキサン化合物が少なくとも2つのケイ素結合不飽和炭化水素残基を含んでいるという条件で、ケイ素はケイ素原子1個あたり0個から3個の一価の基に結合している。
【0028】
ラジカルRおよび/またはR1を有するシロキサンユニットは、それぞれのケイ素原子において同一でも、また、異なっていてもよい。好ましい実施態様において、構造は
1p3-pSiO[R2SiO]m1[R1RSiO]nSiR1p3-p (1)
式中、
p=0〜3、好ましくは1、
m1=0〜2000、好ましくは10〜1000、
n=0〜500、好ましくは0〜200
である。
【0029】
本発明の組成物のためのある好ましいポリオルガノシロキサン成分(A)は、実質的に直鎖のポリオルガノシロキサン(A1)である。「実質的に直鎖の(substantially linear)」との表現は、0.2mol%(痕跡量)を超える量のTまたはQ型のシロキシユニットを含有しないポリオルガノシロキサン(A1)を含む。これは、ポリマー(A)が好ましくは直鎖の、流動性を有する流体(A1):
1p3-pSiO(R2SiO)m1SiR3-pp1 (1a)
式中、
1分子あたり、少なくとも2個のアルケニル基が存在するという条件で、
1、R、pおよびm1は上記で規定される
であることを意味する。
【0030】
好ましい構造としては
VipMe3-pSiO(Me2SiO)10~2000SiMe3-pVip (1b)
PhpMeViSiO(Me2SiO)10~2000SiPhMeVi (1c)
が挙げられる。
【0031】
シロキサン(A)を含むアルケニル基において、成分(A2)および/または(A3)として第二または第三のシロキサンの添加が好ましい。いわゆるビニル基に富んだポリマーである(A2)および(A3)成分の目的は、力学的特性および架橋密度を変更することである。
【0032】
ポリマー(A2)は、式(1d)から(1i)式で表されるポリマー、すなわち追加のアルケニル側鎖を有する直鎖のポリオルガノシロキサンであって、TおよびQ基の濃度が0.2mol%より少ないポリオルガノシロキサンからなる群、または、前記ポリマー型である(A1)もしくは(A2)に比べてより高い濃度のTおよびQ基を有するポリオルガノシロキサンのどちらかから選択される。
【0033】
ポリマー(A2)は式(6)で表され、
1p3-p(R2SiO)b1(R1RSiO)b1xSiR3-pp1 (1d)
Me3SiO(Me2SiO)b1(MeR1SiO)b1xSiMe3 (1e)
1Me2SiO(Me2SiO)b1(MeR1SiO)b1xSiMe21 (1f)
式中、
b1=>0〜2000
b1x=0〜500
b1+b1x=>10〜100
1、R、pは上記で規定され、
1=好ましくは、ビニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、リモニル、スチリル、ビニルフェニルエチルである。
【0034】
Rとして好ましい基は、メチル、フェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルである。
【0035】
b1xの好ましい値は、0.5×b1より小さく、好ましくは0.0001×b1から0.25×b1、より好ましくは0.0015×b1から0.2×b1である。
【0036】
その他の好ましい(A2)の構造は
VipMe3-pSiO(Me2SiO)10~2000(MeViSiO)1~1000SiMe3-pVip (1g)、
Me3SiO(Me2SiO)10~2000(MeViSiO)1~1000SiMe3 (1h)、
PhMeViSiO(Me2SiO)10~2000(MePhSiO)1~1000SiPhMeVi (1i)ならびに
式中、
Me=メチル、Vi=ビニル、Ph=フェニル、およびp=0から3、好ましくはp=1である。
【0037】
ポリマー(A)の第三の成分、分岐のポリマー(A3)は、好ましくは、式(4a)で表されるポリマーから選択され、ここでアルケニル基を含むポリオルガノシロキサン(A3)は、0.2mol%より多い量のT=RSiO3/2またはQ=SiO4/2−ユニットを含む。
【0038】
[M0.4~40~10000~500~11~1000 (4a)
式中、
M=R3SiO1/2、またはM*
D=R2SiO2/2、またはD*
T=RSiO3/2、またはT*
Q=SiO4/2
であって、
*、D*およびT*は上記で規定され、不飽和基R1を含む。このようなM*、D*およびT*ユニットの量は、全てのシロキシユニットを基準として、好ましくは0.001から20mol%、より好ましくは0.01から15mol%、最も好ましくは0.1から10mol%である。
【0039】
副添字の範囲は、数平均分子量Mnに照らした平均重合度Pnの可能な範囲を規定する。指数は下記に規定される好適な粘度と関連しており、かつ粘度調節のためのいかなる溶媒も含まないポリマーを示している。
【0040】
好ましい分岐のポリオルガノシロキサン(A2)および(A3)は通常、より高濃度の不飽和基R1を含む。分岐ポリマー(A3)はたとえば、米国特許第5109095号明細書に記載されている。好ましくは、分岐の、ビニル基に富んだポリマー(A3)は以下:
D:T>10:1、好ましくは>33:1および/またはそれぞれ、(M:Q)=0.6〜4:1
の範囲を有しており、
たとえば、
[M0.7*0.05Q]10~500 (1j)
である。
【0041】
これらのポリマー全ては、トリオルガノシロキサン末端ポリジオルガノシロキサンを製造するための任意の従来型方法によって製造され得る。たとえば、適切な割合の、たとえばビニルジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシランおよびジメチルジクロロシランまたはその対応するアルコキシシランなどの適切な加水分解可能なシランが、共加水分解され、そして縮合され得る。その他の反応経路が、たとえば対称のジビニルジメチルジフェニルシロキサンまたはジビニルテトラメチルシロキサンなどの、ポリジオルガノシロキサンの末端基を供給する1,3−ジビニルテトラオルガノジシロキサンであって、酸性または塩基性触媒の存在下、たとえばオクタメチルシクロテトラノシロキサンなどの適切なポリジオルガノシロキサンを使用して平衡化され得る、1,3−ジビニルテトラオルガノジシロキサンの平衡反応に対して代わりに適用されてもよい。
【0042】
好ましい実施態様において、ポリマー成分(A)は式(1a)の、および/または式(1d)および/または(1j)のポリマーの混合物であって、混合物は、好ましくは混合物(A)の全てのシロキサンユニットの2mol%未満であるアルケニル含有量を平均で有し、ここでポリマー(A1)は(A2)または(A3)よりも高容量で存在している。
【0043】
本発明の目的のために上記で規定されたポリジオルガノシロキサン(A)の粘度は、好ましくは、実質的に環状のポリジオルガノシロキサンを含まない(150℃、20mbar下の1時間での測定で1wt%より少ない、好ましくは0.5wt%より少ない)ことを意味する。
【0044】
数平均分子量Mnを基準とした、GPS測定により標準ポリスチレン換算で測定されたポリマー(A)のシロキサンユニット(M、D、T、Q)の数平均重合度Pnは、好ましくは、Pn>10から2000の範囲であり、より好ましい範囲は40から1000である。このようなポリマーの粘度は、25℃、せん断速度D=1s-1において10から100000mPa.sの範囲、より好ましくは40から50000mPa.sである。
【0045】
好ましい実施態様において、ポリマー(または複数のポリマー)(A)は、より大きな継ぎ目をシールするために有利である封止材組成物としての充分に高い粘性を確実にするために、25℃、せん断速度D=1s-1において15000mPa.sより大きい粘度を有する。
【0046】
成分(A)のアルケニル含有量は、本発明において、1H−NMRによって測定され得る。A. L. Smith (ed.): The Analytical Chemistry of Silicones, J. Wiley & Sons 1991 Vol. 112 pp. 356を参照のこと。Chemical Analysis ed. by J. D. Winefordnerを参照。
【0047】
成分(B)−架橋剤
成分(B)は、少なくとも7個のSi原子を有する、少なくとも1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、全てのSi原子に対するSiH基のモル比が0.55より大きい、好ましくは≧0.6、さらにより好ましくは≧0.7、特に好ましくは0.7から0.95であるポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。
【0048】
SiHユニットを含む適切なポリオルガノハイドロジェンシロキサン(B)は、一般式(2)
[M1a21b21c2d29e2m2 (2)
で式としては表されることができ、
式中、シロキサンユニット
1=上記で規定されるM、またはM**
1=上記で規定されるD、またはD**
1=上記で規定されるT、またはT**
Qは上記で規定され、
9は上記で規定され、
**=HR2SiO1/2、D**=HRSiO2/2、T**=HSiO3/2
一般式(2)において少なくとも7個のSi原子が存在し、かつ、全てのSi原子に対するSiH基(SiH基を含むシロキシ基)のモル比が0.55より大きいという条件で
a2=0.01〜10、好ましくは=2〜5、最も好ましくは=2
b2=0〜1000、好ましくは=10〜500
c2=0〜50、好ましくは=0
d2=0〜1、好ましくは=0または1、最も好ましくは=0
e2=0〜3、好ましくは=0
m2=1〜1000、好ましくは=1〜500、最も好ましくは=1、
である。好ましくは、成分(B)は、有機残基としてメチルまたはフェニルのみを有するポリシロキサンより選択される。
【0049】
好ましくは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(B)は、少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも20個、さらにより好ましくは少なくとも25個および最も好ましくは少なくとも30個のケイ素原子を有する。
【0050】
シロキシユニットは、ポリマー鎖中にブロックでまたはランダムに分布し得る。
【0051】
前述の指数は、数平均分子量Mnに基づいた数平均重合度Pnを表すものである。
【0052】
分子中に存在するM、D、TおよびQユニットの範囲は、流体、流動性を有するポリマー、液体および固体樹脂に相当するほとんど全ての値に及ぶ。液体の直鎖、環状または分岐のシロキサンを使用することが好ましい。任意には、これらのシロキサンは追加で、合成からの残存物である痕跡量のC1〜C6アルコキシまたはSi−水酸基を含んでもよい。
【0053】
本発明の組成物における成分(B)の好ましい構造は、式(2a)から(2d)
a1(R)3-a1Si[RHSiO]x[R2SiO]y[RR1SiO]zSi(R)3-a1a1 (2a)
より具体的には:
HR2SiO(R2SiO)y(RR1SiO)z(RHSiO)xSiR2H (2b)
HMe2SiO(Me2SiO)y(RR1SiO)z(MeHSiO)xSiMe2H (2c)
Me3SiO(MeHSiO)xSiMe3 (2d)
式中、
RおよびR1は上記で規定され、Rは好ましくはメチルおよび/またはフェニルであり、R1は好ましくはビニルであり、および、指数「a1」は0〜1、好ましくは0であり、ならびに
x=2〜1000、好ましくは=2〜500、
y=0〜650、好ましくは=0〜100、
z=0〜65、好ましくは0であり
7≦x+y+z<1000、好ましくは10≦x+y+z<650であって、
各式(2a)〜2(d)において、全てのSi原子に対するSiH基のモル比が0.55より大きい
で表されるシロキサンである。
【0054】
さらに以下の式:
{[T1][R101/2n2m2 (2e)
{[SiO4/2][R101/2n2[M10.01~10[T10~50[D10~1000m2 (2f)
式中、
1、M1、D1は、上記で規定され、
n2=0から3
m2は、上記で規定され
10は、水素、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−、イソ−およびtert−ブチルなどのC1〜C25アルキル、たとえばアシル、アリールなどのアルカノイル、たとえばブタノンオキシムなどの−N=CHR、たとえばプロペニルなどのアルケニルである
で表される樹脂性ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであってもよい。
【0055】
化合物(2f)のある好ましい実施態様は、例として、式[(Me2HSiO0.5kSiO4/21.5~1000であって、式中、指数kが0.3から4までである式によって表され得る、単量体から高分子までの化合物によって提供される。このような液体または樹脂性の分子は、ケイ素原子に関して10mol%までの高い濃度のSiOH、および/または(C1〜C6)アルコキシ−Si基を含んでいてもよい。
【0056】
本発明の組成物中の成分(B)としての好ましい適切な化合物の具体的な例としては
Me3SiO−(MeHSiO)5~650−SiMe3
(MeHSiO)7
HMe2SiO(Me2SiO)0~300(MePhSiO)0~300(MeHSiO)1~650SiMe2H、
Me3SiO(Me2SiO)0~300(MePhSiO)0~300(MeHSiO)2~650SiMe3
Me3SiO(Me2SiO)0~300(Ph2SiO)0~300(MeHSiO)2~650SiMe3
式中、
各式において、全てのSi原子に対するSiH基のモル比が0.55より大きく、かつ、Si原子の総数が少なくとも7である
が挙げられる。
【0057】
成分(B)は、1つのポリオルガノシロキサンポリマーの単一の成分としてまたはそれらの混合物として使用され得る。
【0058】
硬化速度の増大が必要とされる場合、硬化速度をより短い時間に調節するために、HMe2SiO0.5ユニットを有するいくつかのオルガノポリシロキサン(B)またはMeHSiOホモポリマーを使用することが好ましい。
【0059】
硬化速度をさらに一層増大させる必要がある場合、これは、例としてSiアルケニルに対するSiHのモル比の増大によって、また増加された触媒(C)の量によって達成され得る。
【0060】
成分(B)は好ましくは、2から1000mPa.sである25℃における粘度を有する。
【0061】
好ましくは、架橋剤(B)は、1分子あたり少なくとも3より多くの、より好ましくは15より多くの、さらにより好ましくは20より多くの、および、最も好ましくは25より多くのSiH基を有するべきである。
【0062】
配合中の成分(A)および存在する場合は(B)中の、不飽和ヒドロカルビル残基R1の総数に対する組成物(B)中のSiH基の総数のモル比は、本発明の封止材を含む高効率の光起電性モジュールを提供するため、0.7および4のあいだ、好ましくは1から4、より好ましくは0.8から2.5、より好ましくは1.0から2.1、さらにより好ましくは1.2から2である。
【0063】
成分(B)は成分(D)を含まず、また、言い換えれば、成分(D)と異なっている。
【0064】
成分(C)−触媒
本発明の組成物は、成分(C)として、ヒドロシリル化を触媒する能力を有する有機金属化合物、塩または金属の群より選択される、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒を含み、ここで金属は、米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、米国特許第3,419,593号明細書、米国特許第3,715,334号明細書、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,730号明細書で開示されるように、Ni、Ir、Rh、Ru、Os、PdおよびPt化合物の群より選択される。
【0065】
本発明の組成物のヒドロシリル化反応のための成分(C)は、触媒化合物であり、成分(B)のケイ素結合水素原子の、成分(A)のケイ素結合オレフィン炭化水素置換基との反応を促進する。金属または有機金属化合物は、任意の触媒的に活性な金属であってよく、そして、一般的には、白金族金属を含有の触媒的に活性である成分である。理論によって束縛されることを意図するわけではないが、触媒(C)は、シグマ−およびパイ−結合の炭素配位子ならびにS、N、またはP原子を有する配位子をもつ錯体、上述した金属の金属コロイドまたは塩を含むと考えられる。触媒は、金属を有している、たとえばシリカゲルまたは粉末木炭などの担体上に存在していてもよく、または、前記金属の化合物もしくは錯体であってもよい。好ましくは、成分(C)の金属は、任意の白金錯体化合物である。
【0066】
本発明のポリオルガノシロキサン成分中の、典型的なプラチナ含有の触媒成分は、本発明の亜リン酸塩と錯体を形成し得る、プラチナ(0)、(II)または(IV)化合物の任意の型であってよい。好ましい錯体は、ポリオルガノシロキサン組成物中でのその分配容易性により、アルケニル、シクロアルケニル、ビニルシロキサンなどのアルケニルシロキサンなどのPt−(0)−アルケニル錯体である。
【0067】
プラチナ錯体の特に有用な型は、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン(Vinyl−M2またはカールシュテット触媒(Karstedt catalyst))などの脂脂肪族の不飽和オルガノシリコーン化合物とのPt(0)−錯体であり、米国特許第3,419,593号明細書に開示され、本明細書に参照として組み込まれるように、シクロヘキセン−Pt、シクロオクタジエン−Ptおよびテトラビニルテトラメチル−テトラシクロシロキサン(Vinyl−D4)が特に好ましい。
【0068】
Pt(0)−オレフィン錯体は、例として1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン(MVi2)の存在下で、例としてたとえばアルカリ炭酸塩または水酸化アルカリなどの塩基性化合物の存在下でのアルコールによる、ヘキサクロロ白金酸または他の塩化白金の還元により製造される。
【0069】
本発明の組成物中に使用されるプラチナ含有触媒成分の量は、本発明の組成物の他の全ての成分の存在下で、要求される時間内に、所望の温度において、(A)および(B)のあいだのヒドロシリル化を加速するために充分な量が存在している限り狭義に限定されるものではない。前記触媒成分の正確な必要量は、個々の触媒、他の阻害化合物の量およびSiHのオレフィンに対する比次第であり、容易に予測可能なものではない。しかしながら、白金触媒において、前記量は、コスト上の理由により、可能な限り低いものであり得る。他の未確定の阻害性痕跡物の存在下における硬化を確実なものとするために、有機ケイ素成分(A)および(B)の100万重量部ごとに1より多い重量部のプラチナが好ましくは添加されるべきである。本発明のコーティング方法によって使用される本発明の成分としては、適用されるプラチナを含む触媒成分の量が、ポリオルガノシロキサン成分(A)プラス(B)の1重量あたり、1〜200重量ppm、好ましくは2〜100重量ppm、特に好ましくは4〜60重量ppmのプラチナを提供するために充分な量であることが好ましい。
【0070】
好ましくは、前記量は、(A)および(B)の合計あたり、少なくとも4重量ppmである。
【0071】
ヒドロシリル化触媒はまた、光活性化(photoactivated)されることが可能である触媒群から選択され得る。
【0072】
これらの光活性化可能な(photo-activatable)触媒は、好ましくは、Pt、Pd、Rh、Co、Ni、IrまたはRuからなる群より選択される少なくとも1つの金属を含む。光活性化されることが可能である触媒は好ましくは、プラチナ化合物を含む。
【0073】
光活性化されることが可能である触媒は、好ましくは、有機金属化合物、すなわち炭素含有配位子を含む化合物、またはその塩から選択される。好ましい実施態様において、光活性化触媒(C)は、シグマ−およびパイ−結合を含む、金属炭素結合を有する。好ましくは、光活性化されることが可能である触媒(C)は、少なくとも1つの金属炭素シグマ結合を有する有機金属錯体化合物であり、さらにより好ましくは、好ましくは1つまたはそれ以上のシグマ結合アルキルおよび/またはアリール基、好ましくはアルキル基(複数のアルキル基)を有するプラチナ錯体化合物である。シグマ結合配位子としては特には、シグマ結合有機基、好ましくはシグマ結合C1〜C6アルキル、より好ましくはシグマ結合メチル基、たとえばフェニルなどのシグマ結合アリール基、たとえばトリスオルガノシリルアルキル基などのSiおよびO置換シグマ結合アルキルまたはアリール基、たとえばトリアルキルシリル基などのシグマ結合シリル基が挙げられる。最も好ましい光活性化可能な触媒としては、シグマ結合配位子、好ましくはシグマ結合アルキル配位子を有する、η5−(任意には置換された)−シクロペンタジエニルプラチナ錯体化合物が挙げられる。
【0074】
光活性化されることが可能である、さらなる触媒としては(η−ジオレフィン)−(シグマ−アリール)−プラチナ錯体が挙げられる(例えば米国特許第4,530,879号明細書を参照)。
【0075】
光活性化されることが可能である触媒は、それ自体として、または担体上に担持されて、使用することができる。
【0076】
光活性化されることが可能である触媒は、本発明の亜リン酸塩に加えて、反応性シリコーンベース組成物の浴寿命時間を延長する追加のオプションを提供し、そして、成分のゲル化前の加工時間を増大させることを可能にする触媒である。
【0077】
光活性化されることが可能である触媒としては、例えば米国特許第4,530,879号明細書、欧州特許第122008号明細書、欧州特許第146307号明細書(米国特許第4,510,094号明細書およびその中で引用されている先行技術文献に対応する)または米国特許出願公開第2003/0199603号明細書に開示されるような、η−ジオレフィン−σ−アリール−プラチナ錯体が挙げられ、そしてまた、米国特許第4,640,939号明細書に開示されるアゾジカルボン酸エステル、またはジケトン酸塩をたとえば使用することにより、その反応性が制御され得るプラチナ化合物も挙げられる。
【0078】
使用可能な、光活性化されることが可能であるプラチナ化合物はさらに、たとえばベンゾイルアセトンまたはアセチレンジカルボン酸エステルなどのジケトンから選択される配位子を有する群より選択される化合物および光分解性有機樹脂中に包埋固定化されたプラチナ触媒である。その他のPt触媒が、例として米国特許第3,715,334号明細書または米国特許第3,419,593号明細書、欧州特許出願公開第1672031号明細書およびLewis、Colborn、Grade、Bryant、SumpterおよびScott、Organometallics、1995、14、2202-2213に記載されており、本明細書に参照として組み込まれる。
【0079】
光活性化されることが可能である触媒はまた、Pt0−オレフィン錯体を使用すること、および、適切な光活性化可能な配位子をそこに添加することによって、成形されるシリコーン組成物中にin−situで形成されてもよい。
【0080】
しかしながら、本発明において使用され得る、光活性化されることが可能である触媒は、上述された例に限定されるわけではない。
【0081】
本発明の工程において使用される最も好ましい光活性化されることが可能である触媒は、(η5−シクロペンタジエニル)−トリメチル−プラチナ、(η5−シクロペンタジエニル)−トリフェニル−プラチナ錯体であり、特には、(η5−メチルシクロペンタジエニル)−トリメチル−プラチナが好ましい。
【0082】
光活性化されることが可能である触媒の量は、好ましくは1から500ppmであり、そして好ましくは、上記に記載した熱活性化可能なヒドロシリル化触媒について規定した範囲と同じ低い範囲にある。
【0083】
すでに上記で説明したように、本発明にしたがい使用される特定の亜リン酸塩は、従来の遷移金属化合物と配位子交換反応によって相互作用し、そのため、一方での貯蔵安定性および硬化における温度上昇時においての反応性のあいだで驚くべきほどの卓越したバランスを提供するように触媒のヒドロシリル化活性に影響を及ぼす。
【0084】
成分(D)
硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、任意には、少なくとも1つの接着促進剤(D)を含む。
【0085】
成分(D)は好ましくは、
(D1):少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む、少なくとも1つのオルガノシロキサン、
(D2):少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む、少なくとも1つのオルガノシラン、
(D3):少なくとも2つの芳香族部位および少なくとも1つのヒドロシリル化において活性である基を有する、少なくとも1つの芳香族有機化合物
の少なくとも1つから選択される。
【0086】
成分(D)は、好ましくは、以下
RHSiO2/2および
5(R)SiO2/2
式中、
Rは上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、R5は炭素原子数14までの不飽和脂肪族基、炭素原子数14までのエポキシ基含有脂肪族基、シアヌル酸塩含有基およびイソシアヌル酸塩含有基からなる群より選択される
からなる群より選択される少なくとも1つのユニットを含み、ならびに、
式(3):
2/2(R)Si−R4−SiRd(OR33-d (3)
式中、
Rは上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、
3は、H(水素)および1〜6個の炭素原子を有するアルキルラジカルから選択され、そして、同一または異なっていてもよく、
4は、二官能性の、任意には置換されていてもよい炭素原子数15までのヒドロカルビルラジカルであって、O、NおよびS原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、そして、Si−C結合を通してケイ素原子に結合しており、そして
dは0から2
で表される少なくとも1つのユニットをさらに含む、
ポリオルガノシロキサンである。
【0087】
成分(D1)の例としては、式(3a〜3d)の化合物が挙げられる:
【化1】

11はRまたはR5であり、ここで、R、R3、R4およびR5は上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、
少なくとも1つの−(OSi(R)H)−または−(OSi(R)(R11))−基が化合物中にあるという条件で
s1=0〜6、好ましくは1
t1=0〜6、好ましくは1または2
s1+t1=2〜6、好ましくは2または3、
好ましくは、式:
【化2】

式中、R、R3、R4およびR11は上記で規定される
の化合物ならびにその環の位置異性体、
式:
【化3】

の化合物およびその環の位置異性体。
【0088】
さらに、式:
【化4】

式中、
R、R3、R4およびR5は上記で規定され、
少なくとも1つの−(OSi(R)H)−または−(OSi(R)(R5))−基が化合物中にあるという条件で
s=0〜10、好ましくは=0〜5
t=0〜50、好ましくは=2〜30
u=1〜10、好ましくは=1
s+t+u=≦70
の化合物。これらの化合物は、ある程度の含有量の、Dユニットを置換するQまたはT分岐基を含んでいてもよい。
【0089】
5は、たとえば以下:
【化5】

から選択される。
【0090】
成分(D2)は好ましくは、式(4):
X−(CR62e−Y−(CH2eSiRd(OR33-d
式中、
Xは、ハロゲン、擬ハロゲン、炭素原子数14までの不飽和脂肪族基、炭素原子数14までのエポキシ基含有脂肪族基、シアヌル酸塩含有基およびイソシアヌル酸塩含有基からなる群より選択され、
Yは、単結合、−COO−、−O−、−S−、−CONH−、−HN−CO−NH−から選択されるヘテロ原子基からなる群より選択され、
6は、水素および上記で規定されるRから選択され、
eは、0、1、2、3、4、5、6、7または8であり、そして、同一または異なっていてもよく、
Rは上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、
3は上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、
dは0、1または2である
で表される化合物から選択される。
【0091】
成分(D2)の好ましい例としては、
【化6】

式中、
Rおよびdは上記で規定される
が挙げられる。
【0092】
接着促進剤としての作用から離れて、成分(D2)はさらに、充填材(E)のためのin−situ表面処理剤としても機能し得る。低コストで許容範囲の接着特性を得るために、成分(D2)のシランの混合物を使用することが好ましい。
【0093】
成分(D3)は好ましくは、式(3i):
【化7】

式中、
rは0または1、
7は、同一または異なる基でもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基およびアリール基、および、
式−Ef−Si(OR)3-dd、式中、Rは同一または異なっていてもよく、かつ、dは、上記で規定される、で表される基
式−O−Si(R)21、式中、RおよびR1は上記で規定される、で表される基
式−Ef−Si(R)2H、式中、Rは上記で規定される、で表される基
からなる群より選択され、
ここで、Eは、8個までの炭素原子ならびに−O−、−NH−、C=Oおよび−C(=O)O−から選択される0〜3個のヘテロ原子基を有する2価の有機基であり、および
fは、0または1、
そして、Zは次の基:
【化8】

式中、R8は、水素原子、ハロゲン原子、または、置換されたもしくは無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基およびアルキニル基の群から選択され、ならびに
gは少なくとも2である正の数である、
から選択される
で表される化合物から選択され、
ここで、R7およびR8から選択される少なくとも1つの基がヒドロシリル化において反応性である。
【0094】
好ましい成分(D3)としては、
【化9】

式中、Zr、R7、R3、Rおよびdはそれぞれ、上記で規定される
が挙げられる。
【0095】
成分(E)補強充填材
封止材としての使用のための硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、適切な場合、任意には、1つまたはそれ以上の表面修飾された補強充填材(E)を含む。補強充填材(E)は、50m2/gまたはそれ以上であるBET表面積を特徴とする。
【0096】
一般的に、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が放射線硬化される場合、そのような充填材は透明であるかまたは高い光透過率が可能であるものでなければならない。
【0097】
例として、充填材としては、微粒子充填財、すなわち、100μmよりも小さい粒子を有するもの、好ましくはすなわち、そのような粒子からなるもの、の全てが挙げられる。これらは無機充填材、たとえばケイ酸塩、カルボン酸塩、窒化物、酸化物またはシリカなどであってもよい。充填材としては、補強性シリカとして公知のものが好ましく、照射に対して充分な透明性を有するエラストマーの製造を可能にする。架橋後の硬化封止材の特性を改良する補強性シリカが好ましく、とりわけ、強度を増大させるものが好ましい。例として、BET表面積が50から400m2/gである、フュームドシリカまたは沈降シリカが挙げられる。これらの充填材は表面疎水化されていることが好ましい。成分(E)が使用される場合、その量は、100重量部の成分(A)および(B)を基準として、1から100重量部、好ましくは0から70重量部、さらに好ましくは0から50重量部、さらにより好ましくは5から45重量部である。
【0098】
BET表面積が50m2/gより大きい充填材は、改良された特性を有するシリコーンエラストマーの製造を可能にする。強度および透明性の観点から、フュームドシリカが好ましく、およびさらにより好ましいシリカとしては、例えば、200m2/gより大きいBET表面積を有する、Aerosil(登録商標)200、300、HDK(登録商標)N20またはT30、Cab−O−Sil(登録商標)MS7またはHS5である。BET表面積が増大すると、これらの材料がその中に存在しているシリコーン混合物の透明性もまた増大する。沈降シリカ、または湿式シリカとして公知の材料の商品名の例としては、例えば、Vulkasil(登録商標)VN3、またはEvonik(もとDegussa)によるFK 160、またはNippon Silica K.K.によるNipsil(登録商標)LPなどが挙げられる。
【0099】
50m2/g以上のBET表面積、好ましくは少なくとも150m2/gのBET表面積を有するシリカ充填材を使用することが好ましい。このような組成物は、所望の場合には、充分な透明性により光活性化されることも可能である。
【0100】
充填材(E)は、充填材とシリコーンポリマーとの相互作用に影響を及ぼす、例えば稠度増大作用などに影響を及ぼす、適切な疎水化剤を用いた疎水化処理、適切な分散剤を用いた分散化処理に属する、適切な表面処理剤を用いた任意の適切な従来型の表面処理の対象物であってもよい。充填材の表面処理は好ましくは、シランを用いた、または、シロキサンを用いた疎水化である。これは、例として、例えばヘキサメチルジシラザンおよび/または1,3−ジビニルテトラメチルジシラザンなどのシラザンの添加によって、水の添加によって、in situで行うことができ、そして、「in−situ」疎水化('in-situ'-hydrophobation)が好ましい。また、架橋反応のための反応部位を提供することを目的として、鎖長が2から50であり、そして、不飽和有機ラジカルを産生するポリオルガノシロキサンジオールを用いて、他のよく知られた充填材処理剤を使用して行われてもよい。
【0101】
種々のシランを用いて前疎水化された市販のシリカの例としては、Aerosil R 972、R 974、R 976もしくはR 812、またはたとえば、HDK 2000もしくはH30などが挙げられる。疎水化された沈降シリカまたは湿式シリカとして知られる材料の商品名の例としては、たとえば、Evonik(もとDegussa)によるSipernat D10またはD15などが挙げられる。未硬化のシリコーンラバー混合物の流体力学的特性、すなわち技術的加工特性は、充填材の型、その量、そして疎水性の特徴の総計の選択によって影響を受け得る。
【0102】
従来型の補助的な添加物
本発明の封止材としての使用のための硬化性ポリオルガノシロキサン組成物はまた、従来型の補助的な添加物を含んでいてもよい。
【0103】
このような補助的なまた従来型の添加物は、高温空気、油もしくは溶媒に対する安定化剤、加工助剤、離型剤、湿潤剤、顔料、熱もしくは電気伝導率を増大させるための機能性充填材、いわゆる増量剤と呼ばれる容積を増大させるための低表面積もしくは不活性充填材、溶媒、補強のための天然もしくは合成の繊維、発泡を開始させるための膨張剤、抗菌剤、殺菌剤または防カビ性を高めるための添加剤を含み得る。
【0104】
たとえば、充填材または増量剤として作用する材料(BET表面積<50m2/g)は、非補強性充填材として知られている。これらとしては例えば、粉末石英、珪藻土、粉末クリストバライト、マイカ、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムなどが挙げられる。BET表面積が0.2から50m2/gより小さい二酸化チタンまたは酸化鉄、酸化Zn、チョーク、またはカーボンブラックが熱安定化剤として使用されてもよい。これらの充填材は、たとえばSicron(登録商標)、Min−U−Sil(登録商標)、Dicalite(登録商標)、Crystallite(登録商標)などといった、種々の商品名のもと入手可能である。BET表面積が50m2/gより小さい不活性充填材または増量剤として公知の材料は、有利には、ふるいまたはノズルの通過などの下流の工程の間でさらなる加工が問題を生じないために、シリコーンゴム中での使用のためには、100μmより大きい粒子を含むべきではなく(<0.005重量%)、さもなければ、それから製造された品物の機械的特性に悪影響が及ぼされる。また、他の不透明充填材は、特には非透過性であり、特には無機の顔料、またはカーボンブラックである。
【0105】
これらの不透明充填材の使用は、着色が必要である場合、または、熱もしくは電気伝導度のような物理的機能が必要とされる場合にのみ限って好まれる。
【0106】
不透明な非透過性充填材の使用は、処理工程における活性化および成形工程の通常のシークエンスを変更することを必要とする。それらを含まない、または、透過性の充填材が使用される場合には、通常、照射による光活性化(photo-activation)は最終的な成形処理の後に行われる。光活性化可能な触媒の光活性化を阻害するであろう、不透明な非透過性充填材が使用される場合、光活性化工程は不透明な非透過性充填材が組入れられ、そして混合物が成形される前に行われる。
【0107】
当業者において公知であるように、充填材はまた、顔料、例えば有機染料もしくは顔料、または無機顔料であってもよい。
【0108】
補助的または従来型の添加物としてはさらに、たとえば可塑剤、またはリリースオイル、または好ましくは25度で0.001〜10Pa.sである粘度を有するポリジメチルシロキサンオイルなどの疎水化オイルが挙げられる。さらなる離型剤または流れ改良剤がまた使用されてもよく、例としては、脂肪酸誘導体または脂肪アルコール誘導体、フルオロアルキル界面活性剤などが挙げられる。本明細書中において有利に使用される化合物は、速やかに分離しそして表面に移動する化合物である。例としては、高温空気への暴露後の安定性が、公知の高温空気安定化剤、たとえばFe、Mn、Ti、CeまたはLa化合物およびこれらの有機塩、好ましくはこれらの有機錯体の使用によって増大され得る。補助的な添加物としてはまた、いわゆる架橋反応を制御するための阻害剤が挙げられる。しかしながら、これらの阻害剤の存在は一般的には好ましくない。しかしながら、成形されるシリコーン組成物の浴寿命を延長することを目的とする場合には、例えば、非透明性充填材が光活性化の後に混ぜ合わされることとなる場合、そのような阻害剤の使用は硬化速度を減少させるために適しているかもしれない。有利な阻害剤の例としては、例えば、ビニルシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルヂシロキサン、またはテトラビニル−テトラメチル−テトラシクロシロキサンなどが挙げられる。その他の公知の阻害剤、例えばエチニルシクロヘキサノール、3−メチルブチノール、またはマレイン酸ジメチルなどを使用することがまた可能である。
【0109】
本発明の組成物は、成分(A)〜(E)を、たとえばスパチュラ、ドラムローラー、メカニカルスターラー、三本ロール練り機、シグマブレードミキサー、ドウミキサー、遊星型ミキサー、スクリュー、溶解機、バタフライミキサー、プレスミキサー、または真空ミキサーなどの適切な混合手段を使用することによって均一に混合することによって製造され得る。成分(A)〜(E)を混合する順番は重要ではないが、しかし、いくつかの成分は、所望の場合には保管可能である2またはそれ以上のパッケージを形成するために混合することが可能であり、そして、その後、それらの意図される使用の直前に最終工程で混合され得る。
【0110】
第一のパッケージを提供するために、成分(C)ならびに成分(A)、(D)および(E)の一部を混合することが好ましい。別途に、成分(A)、(B)、(D)、(E)が第二のパッケージを提供するために混合される。これらの2つのパッケージはその後、保管され、そして、その後、使用前に均一に混合され得る。他の組み合わせがまた可能であるが、成分(B)および(C)を離しておくことが重要である。
【0111】
本発明の封止材としての使用のための硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は好ましくは、
100重量部の成分(A)、
0.1から200重量部の成分(B)、好ましくは0.5から50重量部、
遷移金属の量を基準として、および、成分(A)および(B)の総計を基準として、0.5から1000、好ましくは1から100ppmの成分(C)、
0.01から5、好ましくは0.1から5、さらに好ましくは0.5から3重量部の成分(D)、
0から50重量部の成分(E)、好ましくは0から40重量部、
ならびに、任意には、0から15重量部、好ましくは0から6重量部の補助剤
を含む。
【0112】
成分(A)および(B)の量は通常、配合中の、成分(A)中の不飽和ヒドロカルビル残基の総計に対する、成分(B)中のSiH基の総計のモル比が、0.7および4のあいだ、好ましくは0.7および2.4のあいだ、さらに好ましくは0.7および2のあいだであるような様式で選択される。
【0113】
本発明のさらに特に好ましい実施態様は、光活性化可能な硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関し、前記組成物は、
(A)少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル残基を有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン
(B)少なくとも7個のSi原子を有する、少なくとも1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、全てのSi原子に対するSiH基のモル比が0.35より大きいポリオルガノハイドロジェンシロキサン
(C)少なくとも1つの光活性化可能な触媒、
(D)任意には、以下:
(D1)少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む、少なくとも1つのオルガノシロキサン、および
(D3)少なくとも2つの芳香族部位および少なくとも1つのヒドロシリル化において活性である基を有する、少なくとも1つの芳香族有機化合物
より選択される少なくとも1つの接着促進剤、
(E)任意には、少なくとも1つの補強充填材
を含む。
【0114】
このような新規の組成物に関し、成分(C)すなわちヒドロシリル化触媒が、上記で詳細に記載したように、光活性化可能な(light activatable)触媒または光活性化可能な(photoactivatable)触媒(両方の用語は同義的に使用される)から選択されるということを除き、上記で記載したような同じ規定が適用される。
【0115】
このような光活性化可能な(light activatable)組成物は、高温での熱硬化を必要とせず、したがって太陽電池モジュール、とりわけ光起電性モジュールへの熱応力を減少させることから特に好ましい。さらに、これらの組成物は「指示に応じて(on command)」、浴寿命時間または保管寿命期間なしに硬化され得る。
【0116】
本発明の付加硬化性封止材は、ソーラーモジュールの適切な基板の表面上に、たとえばローリング、展延(spreading)、噴霧(spraying)、カレンダリング(calandering)などの任意の適切な手段によって適用され、そして、適切な温度で硬化され得る。必要とされる硬化温度および時間は、触媒および阻害剤系の特定の選択に依存するであろう。
【0117】
本発明の成分(A)から(E)を含む付加硬化性封止材組成物および補助剤は、好ましくは、25℃およびせん断速度D=1s-1において200から100000mPa.s、好ましくは2500から80000mPa.s、最も好ましくは10500から70000mPa.sの粘度を有する。
【0118】
好ましくは、封止材は、5および30分のあいだの期間にわたって、50および120℃のあいだで硬化される。その他の実施態様は、光活性化可能な(light activatable)触媒または開始剤を用いた、光活性化可能な(light activatable)ポリオルガノシロキサン組成物の使用を含む。硬化がその後、光照射によって、特には300および550nmのあいだの極大波長を有するUV光の照射によって開始される。照射硬化は好ましくは室温(25℃)で行われる。
【0119】
好ましくは封止材は、約150から2000μmまでの、より好ましくは約200から600μmまでの乾燥膜厚で適用される。
【0120】
本発明による硬化封止材は好ましくは、2mmの膜厚で、400nmの波長で光度計を用いて測定した場合に、80%透過より高い、より好ましくは90%透過より高い透明性を有する。
【0121】
光起電性モジュールのための多数のデザインが公表されている。
【0122】
本発明による通常の太陽電池モジュールは、前面のガラススーパーストレート、半導体セル(ウェーハーまたは薄膜)、導電線、基板またはバックスキン、および半導体セルを部分的にまたは完全に封止するであろう封止材からなり得る。封止とは、それが半導体セルを保護する機能を満たしている限り、必ずしもシリコーン封止材および半導体セルのあいだの固定された接触を意味するものではない。好ましくは、本発明の太陽電池モジュールは、ガラススーパーストレートおよび半導体セルのあいだにもはやEVAシートを含まない。
【0123】
本発明の太陽電池モジュールは加えて、好ましくは例えばアルミニウムなどの金属から作られる支持フレームを含んでもよい。
【0124】
本発明の好ましい実施態様において、硬化シリコーン封止材は、ガラススーパーストレートとともに半導体セルを含む閉鎖空間を形成する。この実施態様は、半導体セルが、ガラススーパーストレートと接触している硬化シリコーン封止材の中に完全に包埋固定化される場合、または、硬化シリコーン封止材および半導体セルを含むガラススーパーストレートが間隙を形成する場合のどちらを含んでもよい。さらに好ましい実施態様において、硬化シリコーン封止材およびガラススーパーストレートによって形成される間隙は、半導体セルおよび導電線以外の他の材料を含まない。
【0125】
さらに好ましい実施態様において、本発明の太陽電池モジュールは、たとえば120℃より高いといった、好ましくは高いガラス転移温度をもつ外側のバックスキンを有する。バックスキン基板は、モジュールの裏面の保護を提供するために剛直または硬いバックスキンである。このような基板としては、必ずしも光に透過性である必要はない、多岐にわたる材料が提案されてきている。これらとしては、たとえば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、テドラー(Tedlar)などの有機フルオロポリマー、または単独のもしくはケイ素および酸素ベースの材料(SiOx)で被膜されたポリエチレンテレフタレート(PET)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVF−PET−PVFなどの多層材料、または分解抵抗性がより低いためにあまり好ましくはないがEVAコポリマーなどの材料が挙げられる。
【0126】
上述した外側のバックスキン層は、好ましくは本発明の硬化シリコーン封止材と接触する。上記で説明したように、硬化シリコーン封止材は、太陽電池モジュールのガラススーパーストレートおよびバックスキン層、とりわけバックスキン層としてのフッ素系熱可塑性シートへの卓越したおよび耐久性のある接着を同時に提供する。
【0127】
硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が、ガラスと接触する封止材として好ましく使用される。
【0128】
本発明はさらに、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を光起電性太陽電池モジュールに含まれる少なくとも1つの基板上に適用する工程、およびポリオルガノシロキサン組成物を硬化してそのような光起電性太陽電池モジュールの基板の封止を提供する工程を含む、光起電性太陽電池モジュールの製造方法に関する。好ましくはポリオルガノシロキサン組成物は、ガラススーパーストレートおよび光起電性太陽電池モジュールの半導体セルのあいだに適用され、これにより、ガラススーパーストレートおよび半導体セルのあいだのギャップが埋められる。半導体セルの表面には半導体材料(特には、シリコン)および任意には導電線が担持されており、この態様においては、これにより封止材は半導体材料(特には、シリコン)および任意には導電線およびガラススーパーストレートと直接接触している。
【0129】
光起電性太陽電池モジュールの半導体セルは、受光面および/またはその対向面へと向かう導電線を有していてもよい。
【0130】
本発明は、封止材が光起電性太陽電池モジュールの半導体セルの裏面(すなわち受光面に対向する面を意味する)のみを覆っている実施態様を含む。この実施態様は、封止材がガラススーパーストレートに連結されており、それゆえ半導体セルおよびガラススーパーストレートとのあいだに間隙を形成している可能性を含む。
【0131】
本発明はさらに、封止材が光起電性太陽電池モジュールの半導体セルを完全に覆っているような好ましい実施態様を含む。また、この実施態様は、封止材がガラススーパーストレートに連結されており、それゆえガラススーパーストレートおよび半導体セルとのあいだに連結層を形成している可能性を含む。
【0132】
本発明の太陽電池モジュールを製造する方法は、連続的にまたは非連続的に(バッチ式で)行われてもよいが、連続的が好ましい。
【0133】
太陽電池ガラススーパーストレートを製造するために使用される、および、本発明の硬化シリコーン封止材への接着のために特に有益であるガラスの種類としては、ロールドガラス、フロートガラスが挙げられる。太陽電池製造に使用されるこれらの種類のガラスは、通常、無機または有機の保護コーティングを有しており、本発明の硬化シリコーン封止材はこのような保護コーティングに対してもまた、卓越した接着特性を必要とする。保護ガラスコーティングとしては、たとえば金属酸化物コーティングなどの、たとえば酸化ケイ素ベースのコーティング、酸化チタンベースのコーティングなどの無機の保護コーティング、フッ素樹脂コーティングなどの有機の保護コーティングなどが挙げられる。ガラス保護コーティングの特有の機能は、ガラスを混濁または不透明にする浸出を防ぐことである。
【0134】
本発明は以下の実施例にしたがい、より詳細に記載される。
【実施例】
【0135】
試験方法
ガラス上への接着性のための試験方法
試験方法は、本質的にASTM C 794−06に従う。2mmの厚さの50mm×150mmの標準フロートガラス板が、他に示されない限り、接着試験のために使用された。ガラス板は、2−プロパノールを用いて洗浄され、そして空気乾燥された。マイクロメッシュのスチールワイヤ格子(Rocholl GmbH;幅25mmおよび長さ300mm、ワイヤ厚み:0.5mm;メッシュ幅1mm×1mm)が試料を作製するために使用された。
【0136】
方法:
ガラス板は、シリコーン封止材を用いて4mmの厚さで被覆された。格子をコーティング内に押し付け、そして、シリコーン封止材の第二の層をその上に適用した。格子は一つの面で重なり合っている。格子の外側のシリコーン封止材はふき取られる。試料を、事前に90℃に加熱されていたオーブン内に10分間静置した。試料は、試験される前に少なくとも12時間周囲条件下で保管される。接着性試験のために、シリコーンはメスを用いて、格子が重なりあっている試料の端においてガラスから2〜3mmの深さで切り出される。試料は、引張試験機の中に垂直に固定される。格子の自由端は、ロードセルの適切なクランプに固定される。格子はガラス板と180°の角度を形成しながら50mm/分で引っ張られる。
【0137】
シリコーン中に純粋な接着性不全がある場合、接着性は正に評価された。初期接着性の場合、試料は加速劣化試験に付され、そして、種々の時間帯で再テストされた。加熱および加湿下における加速劣化試験のために、試料は85℃および85%の相対湿度の人工気候室に静置された。上記の接着性試験が1000時間後に繰り返された。他に断りが無い場合、3個のサンプルがそれぞれの材料に対して試験された。
【0138】
プラスチック上への接着性のための試験方法
テドラー(登録商標)フォイルがソーラーモジュールのプラスチックバックスキンの代表例として使用された。試験試料は、ガラスについて上記に記載したのと同様に作製され、そして試験された。金属格子はフォイルによって置き換えられた。ガラス板はシリコーン封止材で4mmの厚さに被膜され、その後、フォイルはコーティング上に充分に押し付けられた。フォイルの外側のシリコーンペーストは拭き取られる。加速劣化試験のため、試料は85℃および85%の相対湿度に1000時間のあいだ付された。
【0139】
封止材の製造
封止材は調理用ミキサーを用いてプラスチックビーカー内に製造された。充填材のバッチが、少なくとも2つのアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いて注意深く希釈され、そしてその後、その他の成分が添加された。混合物は使用前に減圧下、脱気された。
【0140】
充填材バッチ(F1)の製造
充填材バッチ(F1)が以下のように製造された。25℃における粘度10Pa.sを有するビニル末端直鎖ポリジメチルシロキサン22.5kgを遊星型ミキサー中に入れ、そして2.8kgのヘキサメチルジシラザンおよび0.9kgの水とともに混合した。BET表面積が300m2/gであるフュームドシリカ12.0kgを段々と加え、そして、硬い混合物が得られるまで混ぜ合わせた。この混合物をかき混ぜ、そして30分間リフラックスするまで加熱した。揮発物は蒸留によって取り出され、そして続いて30分間減圧された。混合物を7.8kgの上記ポリジメチルシロキサンを用いて希釈した。得られた充填材バッチが下記の封止材の製造のために使用された場合、28.3%のシリカおよび71.7%の10Pa.sの粘度をもつビニル末端ポリマーを有すると計算された。
【0141】
実施例1
種々の架橋剤を用いた封止材
52gの充填材バッチ(F1)が、表1に%で記載されているような種々の架橋剤成分(B)のグラム単位の量、1%のプラチナを含むカールシュテット型のプラチナ溶液0.12g、10.5μLの阻害剤エチニルシクロヘキサノール−(1)(ECH)と混合され、そしてその後、混合物は約46.5〜47.5gの10Pa.sの粘度を有するビニル末端直鎖ポリジメチルシロキサンを用いて、100gとされた。
【0142】
1.1〜1.4の全ての例は、約14.7重量%の充填材、12ppmのプラチナおよび100ppmの阻害剤ECHを含んでいた。材料は液体からペースト状であり、わずかに垂れのある稠度を有していた。
【0143】
【表1】

【0144】
比較例1.3および1.4は、本発明のSiH比の範囲から外れている直鎖架橋剤が初期段階の試験条件下でさえガラス上へ接着せず、一方、実施例1.1および1.2は製造したばかりの状態で、そして、85℃および85%の相対湿度で1000時間での加速劣化試験の後でさえ良好に接着することを示している。封止材1.1および1.2はまた、テドラー(登録商標)フォイル(PVF)上でも試験され、そして、85℃および85%の相対湿度で1000時間後では接着性において機能しなかった。この結果は、さらなる接着促進剤の添加のない組成物は、ガラスおよびバックスキンのPVFのようなプラスチックの両方に対する必要とされる接着性を完全には実現できないことを示している。
【0145】
実施例2:種々の架橋剤および接着促進剤(D1)を有する封止材
本実施例の組成物は、本実施例においては式(3c)に準じた1:1のモル比でのメタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびDH3Dの付加生成物である、追加のシロキサン接着促進剤(D1)を使用する。
【0146】
52gの充填材バッチ(F1)が、表2に%で記載されているような種々の架橋剤成分(B)のグラム単位の量、1%のプラチナを含むカールシュテット型のプラチナ溶液0.12g、10.5μLの阻害剤エチニルシクロヘキサノール−(1)(ECH)、0.7gの接着促進剤(D1)と混合され、そしてその後、混合物は約44.7〜46.8gの10Pa.sの粘度を有するビニル末端直鎖ポリジメチルシロキサンを用いて、100gとされた。
【0147】
2.1〜2.10の全ての例は、約14.7重量%の充填材、12ppmのプラチナおよび100ppmの阻害剤ECHおよび0.7gの接着促進剤(D1)を含んでいた。材料は液体からペースト状であり、わずかに垂れのある稠度を有していた。
【0148】
【表2】

【0149】
架橋構造が本発明の範囲から外れているが、接着を促進するシロキサン(D1)を含む、比較例2.7から2.10は、初期段階でガラスに良好に接着した。しかしながら、例2.7から2.10の試料は、85℃および85%の相対湿度で250時間は耐えたものの、全ての試料は、85℃および85%の相対湿度での1000時間後には機能しなくなった。
【0150】
本発明の定義にしたがう、成分(B)を含む例2.1から2.6の試料は、この剥離接着試験において接着不全を起こすことなく、85℃および85%の相対湿度で1000時間の試験に合格した。
【0151】
加えて、テドラー(登録商標)フォイル(RVF)への接着が例2.6を用いて試験された。封止材は初期の試験において接着し、そして、フォイルへのいかなる接着性の損失も生じることなく、85℃および85%の相対湿度で1000時間、機能を保った。
【0152】
実施例3:種々の架橋剤および接着促進剤を含む封止材
実施例3において、接着促進剤成分(D2)である例2のシロキサンおよび成分(D2)としてのシランが混合された:
Memo=メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OCH33
Glymo=グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(C23O)CH2O(CH23Si(OCH33
【0153】
封止材は実施例1および2に記載されたように、約14.7%の充填材、10Pa.sの粘度を有するビニル末端ポリシロキサン、12ppmのプラチナ、100ppmのECHならびに表3に記載されている量の架橋剤および接着促進剤を含むように製造された。
【0154】
【表3】

【0155】
例3.1から3.4は、2または1の場合、すなわち、(D2)である接着促進剤が少なくとも存在していれば、1000時間試験条件下での充分な接着性を示しているが、一方、例えばSiHのモル比0.5未満の成分(B)を有している例3.5は、85℃および85%の湿度で1000時間後に不十分な接着性を示している。
【0156】
例えば例3.4は、加えて、テドラー(登録商標)フォイル、すなわちポリビニルフッ化物(PVF DuPont)への1000時間後の良好な接着性もまた示している。封止材は、初期試験において接着し、そして、85℃および85%の相対湿度で、PVFフォイルへのいかなる接着性の損失も生じることなく1000時間経過した。
【0157】
実施例4:光活性化可能な(photo activable)金属触媒を含む封止材
成分(A)として、52gの、25℃で10Pa.sの粘度を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンポリマーが、充填材バッチ(F1)の製造方法にしたがって得られた、29gのヘキサメチルジシラザンで処理されたAerosil 300と混合された。その後、得られた混合物に、さらに16.7gの、10Pa.sの粘度を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンが添加された。その後、成分(D2)として、0.9gのDynasilan GLYMO(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、0.25gのDynasilan MEMO(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、式3c記載の接着促進剤(D1)1g、成分(B)として0.9gのトリメチルシリル末端ポリ(コ−ジフェニルメチルハイドロジェンジメチルシロキサン)M2Ph2H254が添加された。密封し暗くしたグローブボックス内で、(少なくとも青色およびUV光を除いた)電球の赤色または黄色光下、25℃で1Pa.sのビニル末端ポリジメチルシロキサンに溶解したトリメチル(メチルシクロペンタジエニル)−プラチナ(IV)である光活性化可能な金属触媒が、本実施例の合計の成分中でプラチナ濃度が24ppmPtとなるように、10gのこの成分を用いて混合された。成分(B)中の全てのSiユニットに対するDHユニットの比は0.76であり、本実施例におけるSiH:Si−ビニル比は1.9であった。
【0158】
組成物は、光源としてUVランプ、Panacol UV−H255型LH365E 250W 320〜405nmを用いて、5cmの距離から120mW/cm2(=1200mJ/cm2)で10秒間照射された。
【0159】
硬化した成分は10〜12N/mmの剥離力で接着し、そして、25℃で7日間の保存後、PVC(ポリビニルクロライド)、PA 6.6(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のシート上には接着不全である。
【0160】
硬化した成分は、25℃で90分の保管後、ガラス上に8N/mmの剥離力で接着する。
【0161】
剥離力は上記に記載した試験方法(ASTM C 794−06)により測定した。
【0162】
実施例4は接着促進剤(D1)を使用する光活性化可能な成分がまた、様々な基板に接着することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止材としての使用のための硬化性ポリオルガノシロキサン組成物であって、前記組成物が、
(A)少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル残基を有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、
(B)少なくとも7個のSi原子を有する、少なくとも1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、全てのSi原子に対するSiH基のモル比が0.55より大きいポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(C)少なくとも1つのヒドロシリル化触媒、
(D)任意には、少なくとも1つの接着促進剤、
(E)任意には、少なくとも1つの補強充填材、
を含み、
配合中の成分(A)中の不飽和ヒドロカルビル残基の総計に対する、成分(B)中のSiH基の総計のモル比が、0.7および4のあいだであって、前記封止材が太陽電池モジュールのためのものである硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
前記封止材が光起電性モジュールのためのものである請求項1記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、以下の式(1):
1a3-aSiO[R2SiO]m[R1RSiO]nSiR1a3-a (1)
式中、
Rは、任意には置換されていてもよい炭素原子数30までのアルキル基、任意には置換されていてもよい炭素原子数30までのアリール基、1000個までのアルキレンオキシユニットを有するポリ(C2〜C4)アルキレンエーテル基から選択され、R基は脂肪族不飽和結合を有さず、
1は、C=C基含有基(アルケニル基)またはC≡C基含有基(アルキニル基)を含み、任意には1つまたはそれ以上のOまたはF原子を含む、炭素原子数30までの脂肪族または芳香族基から選択され、
a=0〜3
m=0〜2000
n=0〜500
で表される化合物である請求項1または2記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
前記成分(B)が、以下の式(2a):
a(R)3-aSi[RHSiO]x[R2SiO]y[RR1SiO]zSi(R)3-aa (2a)
式中、
R、R1は上記で規定され、
7≦x+y+z<1000
で表される化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
前記成分(C)が少なくとも1つの遷移金属化合物であって、前記遷移金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよびプラチナからなる群より選択される請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項6】
前記成分(D)を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項7】
前記成分(D)が、
(D1):少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む、少なくとも1つのオルガノシロキサン、
(D2):少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む、少なくとも1つのオルガノシラン、
(D3):少なくとも2つの芳香族部位および少なくとも1つのヒドロシリル化において活性である基を有する、少なくとも1つの芳香族有機化合物
の少なくとも1つから選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項8】
前記成分(D1)が、
RHSiO2/2および
5(R)SiO2/2
式中、
Rは上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、R5は、炭素原子数14までの不飽和脂肪族基、炭素原子数14までのエポキシ基含有脂肪族基、シアヌル酸塩含有基およびイソシアヌル酸塩含有基からなる群より選択される
からなる群より選択される少なくとも1つのユニットを含み、ならびに、
式(3):
2/2(R)Si−R4−SiRd(OR33-d (3)
式中、
Rは上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、
3は、H(水素)および1〜6個の炭素原子を有するアルキルラジカルから選択され、そして、同一または異なっていてもよく、
4は、二官能性の、任意には置換されていてもよい炭素原子数15までのヒドロカルビルラジカルであって、O、NおよびS原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、そして、Si−C結合を通してケイ素原子に結合しており、そして
dは0から2
で表される少なくとも1つのユニットをさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項9】
前記成分(D2)が式:
X−(CR62e−Y−(CH2eSiRd(OR33-d
式中、
Xは、ハロゲン、擬ハロゲン、炭素原子数14までの不飽和脂肪族基、炭素原子数14までのエポキシ基含有脂肪族基、シアヌル酸塩含有基およびイソシアヌル酸塩含有基からなる群より選択され、
Yは、単結合、−COO−、−O−、−S−、−CONH−、−HN−CO−NH−から選択されるヘテロ原子基からなる群より選択され、
6は、水素および上記で規定されるRから選択され、
eは、0、1、2、3、4、5、6、7または8であり、そして、同一または異なっていてもよく、
Rは上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、
3は上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよく、
dは上記で規定され、そして、同一または異なっていてもよい
で表される化合物から選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項10】
前記成分(D3)が式:

式中、
rは0または1、
7は、同一または異なる基でもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基およびアリール基、および、
式−Ef−Si(OR)3-dd、式中、Rは同一または異なっていてもよく、かつ、dは、上記で規定される、で表される基
式−O−Si(R)21、式中、RおよびR1は上記で規定される、で表される基
式−Ef−Si(R)2H、式中、Rは上記で規定される、で表される基
からなる群より選択され、
ここで、Eは、8個までの炭素原子ならびに−O−、−NH−、C=Oおよび−C(=O)O−から選択される0〜3個のヘテロ原子基を有する2価の有機基であり、および
fは、0または1、
そして、Zは次の基:

式中、R8は、水素原子、ハロゲン原子、または、置換されたもしくは無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基およびアルキニル基の群から選択され、ならびに
gは少なくとも2である正の数である、
から選択され、
ここで、R7およびR8から選択される少なくとも1つの基がヒドロシリル化において反応性である
で表される化合物から選択される請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項11】
前記成分(E)が、少なくとも150m2/gのBET表面積を有するシリカから選択される請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項12】
前記組成物が、
100重量部の成分(A)、
0.1から200重量部の成分(B)、
遷移金属の量を基準として、および、成分(A)および(B)の総計を基準として、0.5から1000ppmの成分(C)、
0.01から5重量部の成分(D)、
0から50重量部の成分(E)
を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項13】
光活性化可能な、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物であって、前記組成物が、
(A)少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル残基を有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン
(B)少なくとも7個のSi原子を有する、少なくとも1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、全てのSi原子に対するSiH基のモル比が0.35より大きいポリオルガノハイドロジェンシロキサン
(C)少なくとも1つの光活性化可能な触媒、
(D)任意には、以下:
(D1)少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む、少なくとも1つのオルガノシロキサン、および
(D3)少なくとも2つの芳香族部位および少なくとも1つのヒドロシリル化において活性である基を有する、少なくとも1つの芳香族有機化合物
より選択される少なくとも1つの接着促進剤、
(E)任意には、少なくとも1つの補強充填材
を含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項14】
太陽電池モジュールのための封止材としての請求項1〜12のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物使用。
【請求項15】
太陽電池モジュールのための封止材としての使用のための、ガラス基板、熱可塑性基板および/または半導体基板と接触している請求項1〜13のいずれか1項に記載の硬化ポリオルガノシロキサン組成物を含む複合材料。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の硬化ポリオルガノシロキサン組成物を含む光起電性モジュール。

【公表番号】特表2013−521640(P2013−521640A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555438(P2012−555438)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053310
【国際公開番号】WO2011/107592
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512135078)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】