説明

安全走行用の自動支援機器の制御装置

【課題】運転が不慣れな道路の走行時に、ライト、ワイパ、暗視カメラ等の自動支援機器の作動を制御して安全性を高める。
【解決手段】自車位置情報取得部と、既に走行した道路の走行回数を記憶している走行履歴記憶部と、カーナビゲーション装置で入力された目的地に応じて設定された走行経路に含まれる道路区間または走行区域が、運転が不慣れな道路区間または走行区域であるかを、前記走行履歴記憶部を参照して判定する判定部と、前記判定部で運転が不慣れであると判定された場合に、ライト、ワイパおよび暗視カメラのいずれか1つを含む安全走行用の自動支援機器の作動条件の閾値を緩和する閾値に変更し、前記道路区間または走行区域を走行する直前に前記自動支援機器を作動させる機器制御指令形成部と、前記機器制御指令形成部からの機器制御指令を前記自動支援機器へ送る送信部と、を備えていることを特徴とする安全走行用の自動支援機器の制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全走行用の自動支援機器の制御装置に関し、詳しくは、安全走行のために自動的に作動するライト、ワイパ、暗視カメラ等の自動支援機器を、運転に不慣れな道路や交通事故の多発地域を走行する際に、自動的に作動する条件及び時期を調節して安全走行性を高めるものである。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置を搭載した車両では、目的地の名称、電話番号、住所等を入力すると、カーナビゲーション装置が目的地までの走行経路を探索して提示している。運転者は、カーナビゲーション装置のモニタに表示された地図上の指示や、交差点、曲がり角等で案内される音声ガイドによる経路案内に従って走行経路を辿ることで、初めての土地であっても迷うことなく目的地に到達することができる。
【0003】
しかし、カーナビゲーション装置が提示した走行経路に、運転者が初めて走行する道路や、滅多に走行しないような道路が含まれていると、道路の状況がわからず、運転者の負担になる。
そこで、特開2006−71539号公報(特許文献1)において、運転者が走行した道路を記憶しておき、これから案内しようとする経路に、運転者が初めて走行する道路が含まれている場合は、その道路に近づいた時に、初めて走行する道路である旨を運転者に知らせて運転者の注意を喚起し、安全運転を支援するカーナビゲーション装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−71539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のカーナビゲーション装置では、初めて走行する道路であることを運転者に知らせるのみである。従って、運転者は、周辺環境、時刻、天候などの走行条件を考慮して、ライト、ワイパ、暗視カメラなどの車載負荷を作動させるべきか否かを判断し、必要であればスイッチなどを操作しなければならない。よって、初めて走行する道路である旨を知らせるだけでは運転者の注意を喚起するだけで、負担を軽減することまではできない。
【0006】
また、最近では、天候、時刻、トンネルなどの走行条件に応じて、スモールランプやヘッドライトを自動的に点灯/消灯するオートライト機能、フロントガラスの雨滴量に応じた速度やピッチでワイパを自動的に作動させるオートワイパ機能、悪天候下や暗闇で歩行者を検知する暗視カメラ等の安全走行を支援する機能を備えた車種がある。これらの機能を備えた安全走行用の機器を装備すると、悪条件下での走行時に運転者の負担を軽減することができる。
【0007】
しかし、上述のように、ライト、ワイパ、暗視カメラ等の走行安全用の機器を自動的に作動させる機能が備わっていた場合でも、走り慣れない道路や、交通事故多発地帯の道路などでは、ヘッドライトやスモールランプを点灯するほどでもない曇天や薄暮、ワイパを作動させるほどでもない小雨、暗視カメラで歩行者を検知しなければならないほどでもない暗さといったわずかな悪条件が安全運転の妨げになる。
ところが、スモールランプやヘッドライトの点灯条件、ワイパの作動条件、暗視カメラにおける画像のエッジ抽出条件は予め作動閾値が設定されているため、該閾値に達しなければ、運転者はライトやワイパのスイッチを手動で操作しなければならない。同様に、人物と周辺環境の輝度差が小さ過ぎて暗視カメラで歩行者を検知できない場合もある。
【0008】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、運転に不慣れな道路や交通事故多発地域の道路などを走行する際に、道路の走行回数や交通事故多発地域の情報に基づき、ライト、ワイパ、暗視カメラなどの、安全走行を支援する車載機器の作動条件を緩和するように調節して、運転者に運転が不慣れな道路区間や走行区域であることを意識させることなく、車両の安全走行を支援する機器を自動的に動作できる車載制御装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第1の発明として、
自車位置情報取得部と、
既に走行した道路の走行回数を記憶している走行履歴記憶部と、
カーナビゲーション装置で入力された目的地に応じて設定された走行経路に含まれる道路区間または走行区域が、運転が不慣れな道路区間または走行区域であるかを、前記走行履歴記憶部を参照して判定する判定部と、
前記判定部で運転が不慣れであると判定された場合に、ライト、ワイパおよび暗視カメラのいずれか1つを含む安全走行用の自動支援機器の作動条件の閾値を緩和する閾値に変更し、前記道路区間または走行区域を走行する直前に前記自動支援機器を作動させる機器制御指令形成部と、
前記機器制御指令形成部からの機器制御指令を前記自動支援機器へ送る送信部と、
を備えていることを特徴とする安全走行用の自動支援機器の制御装置を提供している。
【0010】
本発明の制御装置は、カーナビゲーション装置に内蔵または接続した電子制御ユニットからなり、
前記自車位置および目的地に応じて設定された前記道路区間または走行区域はカーナビゲーションの機能を利用して取得し、
前記道路区間はカーナビゲーション装置で登録されているリンクに相当し、
前記走行区域はカーナビゲーション装置に登録されていない道路を含む地図上で縦横に区画されたメッシュ領域に相当する。
【0011】
本発明の制御装置は、カーナビゲーションの情報を利用するため、カーナビゲーション装置に内蔵した電子制御装置から構成することが好ましいが、既存のカーナビゲーション装置と接続するアダプタの電子制御ユニットとしてもよい。
【0012】
本発明の制御装置は、カーナビゲーション装置の地図情報を利用して、道路の走行回数を走行履歴記憶部で記憶しておき、カーナビゲーション装置により経路案内される走行予定の道路、または車両位置検出手段が検出した走行中の道路の走行回数から不慣れな道路であると判定部が判定した場合、機器制御指令形成部は、ライト、ワイパ、暗視カメラなどの安全走行用の自動支援機器の作動条件の閾値を緩和するように変更した閾値に達すると、機器制御指令を自動支援機器に送信している。
【0013】
例えば、ライトの場合、安全走行を支援するために予め設定した照度の閾値に達するとライドを自動的に点灯している。この自動点灯する照度の閾値を緩和するように変更し、設定した閾値の照度よりも明るい照度でも自動点灯して安全走行を支援している。
ワイパの場合は通常の雨量の閾値よりも、雨量が少ない場合にワイパを自動動作させるように閾値を低く変更している。
暗視カメラの場合もライトと同様に、自動設定した照度より明るい照度から映写できるように検出閾値を緩和し、作動時期を早めている。
これにより、走行に不慣れな道路区間、走行区域では、通常より明るいうちからライトが自動点灯され、また通常より少ない雨量でもワイパが自動払拭を開始し、また通常より周囲と歩行者との輝度差が少ない明るいうちから歩行者を検知して、安全走行を支援している。
【0014】
また、本発明では、カーナビゲーション装置で目的地として設定した道路区間をリンクで示される場合の外、登録されていない道路を含む地図上で縦横に区画されたメッシュ領域を利用して、走行履歴の記憶および新たに走行する目的地までの経路を認識している。
このように、カーナビゲーション装置に登録されている道路上を走行する場合はもちろん、登録されていない細い街路、また道路以外の駐車場内等を走行する場合であっても、安全走行支援を行うことができる。
【0015】
前記判定部は、道路区間または走行区域の走行回数の閾値を、例えば、0〜3回の範囲で設定し、前記閾値回数以下であれば、運転が不慣れ道路区間または走行区域であると判定している。
【0016】
前記走行履歴記憶部は、走行回数を少なくとも現在から3年以内〜5年以内の範囲で記憶している。かつ、該走行履歴記録手段は、前記走行回数を運転者毎に記憶していることが好ましい。
前記のように走行回数の記憶期間を5年以内としているのは、5年以上も記憶し続けると記憶容量が増大する。かつ、最長5年を経過すると、以前に走行した道路状況を忘れがちになると共に道路状況は変更されている場合が多いことに因る。
【0017】
さらに、前記走行履歴記憶部に道路区間および走行区域毎に走行時の日付を記録する一方、前記判定手段は走行時に現在走行しているか若しくはカーナビゲーションによる案内で走行予定となっている道路区間もしくは走行区間について、走行履歴記録手段で記録された日付と、現在の日付を比較し、所定の日数以上経過している場合は前記不慣れな道路区間または走行区域と判定することが好ましい。
例えば、走行回数の閾値を3回までと設定しても、走行日が直近である場合には不慣れ道路ではないため、自動支援機器の動作閾値を緩和する必要はない、よって、前回の走行日付と現在の日付とから不慣れであるか否かを判定することが好ましい。
【0018】
また、1台の車両を複数の運転者が使用している場合、運転者によって運転の頻度や走行経路が異なる場合であっても、運転者毎に走行履歴を記憶しておくことにより、運転者に応じた適切な安全走行支援を行うことができる。
運転者の識別は、キーレスエントリシステムの携帯型通信機が発信するIDで運転者を識別することができる。また、カーナビゲーション装置に予め運転者別にスイッチ等を設け、運転者が自分のスイッチを押すことで、運転者が判別できるようにしてもよい。さらに、運転者が所有する携帯電話を接続して、そのIDで運転者を識別できるようにしてもよい。
【0019】
前記機器制御指令形成部から送信部をへて自動支援機器へ機器制御指令を送信する時期は、これら自動支援機器の作動開始時期が前記運転が不慣れな道路区間または走行区域に入る交差点の直前となるように設定することが好ましい。
【0020】
前記ライト、ワイパ、暗視カメラ等の安全走行用の自動支援機器は電子制御ユニットで制御している場合が多い。これらの電子制御ユニットは予め自動的に作動する閾値を有し、該閾値に達すると機器を作動している。
本発明の制御装置の機器制御指令形成部では、前記自動支援機器を自動制御する電子制御ユニットで規定した閾値よりも作動条件を低く緩和した閾値を設定しており、該閾値に達すると、自動支援機器の電子制御ユニットに機器制御指令を送信している。
【0021】
即ち、ライト、ワイパ、暗視カメラ等の自動支援機器が電子制御ユニットを備え、該電子制御ユニットで制御されている場合は、該電子制御ユニットへ前記送信部から制御指令を通信ネットワークを介して送信している。
一方、前記自動支援機器が電子制御ユニットで制御されていない場合は、該自動支援機器と前記送信部との間に配線した通信線を介して前記制御指令を送信している。
【0022】
自動支援機器の作動開始時は、前記運転が不慣れであると判定された道路区間または走行区域へと入る交差点の直前に設定している。
直前とは、運転速度等によって異なるが、10〜20秒前に設定していることが好ましく、具体的には、交差点の手前100〜200mの範囲が好ましい。
【0023】
第2の発明として、
自車位置情報取得部と、
交通事故多発地域である道路区間または地域であることを記憶する記憶部と、
自車位置および走行方向から予測される走行経路に前記記憶部で記憶された交通事故多発地域が含まれるか否かを判定する判定部と、
前記判定部で交通事故多発地域を走行すると判定された場合に、ライト、ワイパおよび暗視カメラのいずれか1つを含む安全走行用の自動支援機器の作動条件の閾値を緩和する閾値に変更し、前記道路区間または走行区域を走行する直前に前記自動支援機器を作動させる機器制御指令形成部と、
前記機器制御指令形成部からの機器制御指令を前記自動支援機器へ送る送信部と、
を備えていることを特徴とする安全走行用の自動支援機器の制御装置を提供している。
【0024】
第2の発明の制御装置も、第1の発明と同様にカーナビゲーション装置に内蔵または接続した電子制御ユニットからなり、カーナビゲーション装置の機能を利用している。
第2の発明では、走行回数に関係なく、地図情報の一部として記録されている交通事故多発地域の情報を取得し、またはリアルタイムで交通事故多発地域の情報を取得し、カーナビゲーション装置により経路案内される走行予定の道路、または車両位置検出手段が検出した走行中の道路が交通事故多発地域に含まれると判定した場合、ライト、ワイパ、暗視カメラなどの安全走行用の自動支援機器に予め設定した閾値を変更して、車載機器の作動条件を緩和している。これにより、交通事故多発地域の走行時に安全走行を支援することができる。
【0025】
なお、前記第1の発明と第2の発明とを組み合わせて、不慣れな道路区間や走行区域を走行する場合と、走行する道路や地域が交通事故多発する道路または地域であれば、前記自動支援機器の動作閾値を更に緩和しても良い。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明の走行安全用の自動支援機器の制御装置によれば、初めて走行するか、または走行回数が少ない、あるいは前回の走行からかなりの期間が経過しているなど走行に不慣れな道路である場合、交通事故多発地域を走行する場合、ライト、ワイパ、暗視カメラなどの安全走行用の自動支援機器に予め設定されている作動条件の閾値を緩和するように設定して、作動を早めて安全性に寄与している。
よって、走行に不慣れな道路区間、走行区域あるいは交通事故多発地域において、運転者の操作を待たずに、早期に、オートライトが点灯し、ワイパが作動し、暗視カメラが運転方向前方を写すことにより、安全走行を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至図4に第一実施形態を示す。
図1に示す安全走行用の自動支援機機器の制御装置1は電子制御ユニット(以下、ECUと称す)からなり、カーナビゲーション装置2に内蔵している。なお、カーナビゲーション装置2に内蔵せずに、制御装置1のECUをカーナビゲーション装置2と接続しても良い。
【0028】
前記制御装置1で制御する走行安全用の自動支援機器は、ライト3、ワイパ4、暗視カメラ5とし、ライト3を制御するECU10A、ワイパ4を制御するECU10B、暗視カメラ5を制御するECU10Cを制御装置1と通信線を介して接続している。
ライト制御用のECU10Aはライトを自動点灯する照度の閾値を予め有している。ワイパ制御用のECU10Bはワイパを自動的に作動する雨量の閾値を予め有している。暗視カメラ制御用のECU10Cは暗視カメラを自動的に作動する時期および映像の検出閾値を予め有している。
なお、制御装置1は前記ライト3、ワイパ4、暗視カメラ5のいずれか1つの機器を制御するものでもよい。
【0029】
制御装置1は、受信部11、判定部12、機器制御指令作成部13、送信部14、受信データバッファ部19を備えている。
判定部12は、受信データバッファ部19、機器制御指令形成部13と接続している。さらに、RAMからなる走行履歴記憶部15、およびカーナビゲーションのプログラム16および地図データベース17とを備えたHDD、さらに、制御基準を記憶したROMからなる制御基準記憶部18と接続している。
機器制御指令作成部13は、受信データバッファ部19、制御基準記憶部18、送信部14と接続している。
送信部14は前記自動支援機器のECU10A〜10Cと通信ネートワークを介して接続している。
【0030】
受信部11はカーナビゲーション装置2に接続したGPS受信機7、多数のセンサ8(車体方位センサ8A、車速センサ8B、距離センサ8C、照度センサ8D、雨量センサ8E等)及び、目的地を設定する操作スイッチ9と接続して、所要のデータを受信している。受信したデータは受信データバッファ部19に格納している。
【0031】
判定部12と接続したRAMからなる走行履歴記憶部15は、既に走行した道路の走行回数および走行日付を少なくとも現在から3年以内〜5年以内記憶している。本実施形態では3年以内としている。
ROMからなる制御基準記憶部18は、3年以内の走行履歴が0回である場合に運転に不慣れな道路であるとする判定基準を記憶している。また、判定部12で運転が不慣れな道路区間または走行区域であるとの判定した時に、ライト3、ワイパ4、暗視カメラ5を自動的に作動する変更閾値を予め記憶している。該変更閾値はライト3、ワイパ4、暗視カメラ5のECU10A〜10Cで設定している閾値よりも作動条件を緩和した低い閾値としている。さらに、暗視カメラでは撮影した映像の検出閾値を緩和する閾値も設定している。かつ、機器側のECU10A〜10Cで予め設定している閾値も制御基準記憶部18に記憶している。
さらに、機器制御指令作成部13から、送信部14から通信ネットワークを介して前記ECU10A〜10Cへ機器制御指令を送信する基準送信時期を記憶している。
具体的には、これらECU10A〜10Cで制御されるライト3、ワイパ4、暗視カメラ5を自動的に作動開始する時期が、運転に不慣れな道路区間または走行区域に入る交差点への到着前の10〜20秒の範囲となるように設定している。
【0032】
受信部11は、GPS受信機7から自車位置データを取得し、車体方位センサ8A、車速センサ8Bおよび距離センサ8Cから、前記変更閾値に基づいてライト3、ワイパ4、暗視カメラ5の動作を開始させる交差点C(図2に示す)に達するまでのデータを取得している。
【0033】
前記判定部12は、カーナビゲーション装置2から受信する目的地データおよび目的地に応じて設定された走行経路に含まれる道路区間Rまたは走行区域Sを、走行履歴記憶部15を参照して、制御基準記憶部18の基準に基づいて、3年以内の走行回数が0回であるか否かを判定している。
【0034】
判定部12で、走行履歴で3年以内の運転回数が0回であった場合、運転が不慣れな道路区間Rまたは走行区域Sであると判定している。該判定がなされた場合に、機器制御指令形成部13は制御基準記憶部18から変更閾値を取得し、該変更閾値に達していると、不慣れ道路区間Rまたは走行区域Sに入る道路の交差点Cに達する前に、送信部14をへてECU10A〜10Cに制御指令を送信している。
【0035】
カーナビゲーション装置2は、操作スイッチ9で運転者が目的地の住所、電話番号、名称などの目的地を入力すると、最短、特定地点の経由などの指定条件に応じた経路を探索して提示する。運転者が経路を選択すると、選択された経路をモニタの地図上に明示し、また音声で経路を案内している。
【0036】
地図データベース17は、図2に示すように、地図を縦横方向に矩形で区切ったメッシュMで地図データを管理している。本発明ではメッシュMで囲まれたクロス斜線で示す領域を走行区域Sとして規定している。
また、地図データベース17では、道路の隣接する交差点C間の線分をリンクRとして管理し、本発明ではリンクを道路区間Rとして規定している。
前記走行区域Sおよび道路区間RはそれぞれID(識別子)を付している。
走行履歴記録部15は、自車が走行する都度、走行した道路区間Rもしくは走行区域SのIDを記憶し、かつ、同一IDの走行回数を記憶している。
【0037】
前記安全走行用の自動支援機器であるライト3、ワイパ4、暗視カメラ5は夫々接続したECU10A〜10Cで下記のように自動的に動作している。
【0038】
ライト用のECU10Aは、運転者のスイッチ操作に応じてスモールランプ、ヘッドライトなどのライト(図示省略)を点灯させる。また、車外の照度を検出するセンサの検出値が予め設定した閾値(第1閾値)より低下した場合、すなわち車外が暗くなった場合に、スモールランプ、ヘッドライトなどのライトを自動点灯させるオートライト機能を有している。前記制御装置1から制御指令を受信した時は、前記第1閾値で規定した条件に達していない明るさであっても、ライトを自動点灯するように制御している。
【0039】
ワイパ用のECU10Bは、運転者のスイッチ操作に応じてワイパ(図示省略)を作動させる。また、雨滴量と光量のセンサ検出値から所定の閾値(第1の閾値)を超えた場合、即ち、雨滴が視界を邪魔し始めた場合に、ワイパを自動的に動作させるオートワイパ機能を有している。前記制御装置1から制御指令を受信した時は、第1閾値で設定した状態よりも少ない雨量および明るい曇であっても、ワイパを自動に動作するように制御している。
【0040】
カメラ用のECU10Cは、運転者のスイッチ操作に応じて暗視カメラ(図示省略)を作動させて車前方を撮影し、撮影した画像をモニタで表示している。また、前記ライトと同様に、車外の照度を検出するセンサの検出値が予め設定した閾値(第1閾値)より低下した場合、すなわち車外が暗くなった場合に、暗視カメラで自動的に撮影を開始してモニタで表示している。さらに、前記制御装置1から制御指令を受信した時は、前記第1閾値で規定した条件に達していない明るさであっても自動的に撮影の時期を早め、かつ、撮影された映像の検出閾値を緩和してモニタで表示するように制御している。
【0041】
次に、第1実施形態による安全走行支援の手順を、図3および図4のフローチャートに基づいて説明する。
図3は、カーナビゲーション装置2による経路案内を実施している場合を示し、図4は経路案内を実施していない場合を示す。
【0042】
受信部11でGPS受信機7より自車位置情報を取得する(ステップS1)。
操作スイッチ8からの受信の有無により、カーナビゲーション装置2による経路案内を実施中か否かを判断する(ステップS2)。
経路案内を実施中でない場合は(ステップS2のNO)、図4に示す制御タイミングと判断対象の決定ルーチンに移行する。
【0043】
一方、経路案内を実施中の場合は(ステップS2のYES)、自車位置を参照して、次の交差点までの残距離が、100m以下であるかを判断する(ステップS3)。
次の交差点までの残距離が100m以下ではない場合は(ステップS3のNO)、ステップS1に戻る。
【0044】
次の交差点までの残距離が100m以下になった場合(ステップS3のYES)、次の交差点Cに付されたID、もしくは当該交差点Cで曲折した先の道路区間(リンク)Rに付されたIDに基づいて走行履歴記録部15を参照する。
次の交差点Cから先の道路区間Rまたは交差点Cで曲がった先の道路区間Rは、走行回数が所定回数以下(0回で記録されていない場合)であるか否かを判断する(ステップ4)。
【0045】
次の交差点Cから先の道路または曲がった先の道路の走行回数が0回であった場合(ステップS4のYES)、照度センサ8Dおよび雨量センサ8Eから受信する計測値がECU10A〜10Cで照度、雨量等が予め設定した閾値に達しているか否かを判断する。(ステップS5)。
ECU10A〜10Cの閾値に達している場合には(ステップS5のYES)、ステップS1に戻り、自車位置を検出して(ステップS1)、次の交差点をターゲットとする判断ステップに移行する。
【0046】
一方、ECU10A〜10Cで設定した閾値に達していない場合(ステップS5のNO)は、変更閾値に基づいて作動条件を緩和する(ステップS6)。
すなわち、オートライト機能の点灯条件を、より明るいうちから自動点灯される条件に緩和し、オートワイパ機能のワイパ作動条件を、雨滴がより少ない時点から自動的に作動する条件に緩和する。暗視カメラの撮影開始条件を明るいうちから撮影するように早め、かつ、撮影された映像の検出閾値を緩和する。
【0047】
変更閾値の条件に達し、かつ、前記交差点Cに達する前に、機器制御形成部13から送信部14に制御指令を出し、送信部14から通信ネットワークを介して各ECU10A〜10Cに機器の制御指令を送信し、機器を動作する。即ち、ライト3を点灯し、ワイパ4を作動し、暗視カメラ5を作動する。
【0048】
一方、判定部12で、次の交差点Cからの走行回数が0回では無い、慣れた道路区間Rである場合(ステップS4のNO)には、ECU10A〜10Cに指示を出さず、ECU10A〜10Cで予め規定した閾値に基づいて、ライト3、ワイパ4、暗視カメラ5を自動的に作動する。
【0049】
次に、カーナビゲーション装置100の経路案内を利用していない場合の、安全走行支援の判断対象「道路区間(リンク)/走行区域(メッシュ)」を決定する手順を、図4のフローチャートに基づいて説明する。
現在走行中の自車位置を検出する(ステップS101)。
検出した自車位置が道路区間(リンク)R上にあるか否かを判断する(ステップS102)。
道路区間R上にある場合は(ステップS102のYES)、現在走行中の地点に対する制御を実施する。この場合の、不慣れかどうかの判断対象は道路区間R(リンク)である。
【0050】
すなわち、判断対象の決定後、経路案内を実施中の場合と同様に、走行履歴記録部15を参照して、現在走行中の道路区間RのIDに基づき、この道路区間Rの走行回数が0回であるか否かを判断する。
現在走行中の道路区間の走行回数が0回であれば、条件を緩和した変更閾値でライト、ワイパ、暗視カメラを自動的に制御する。
【0051】
ステップS102で自車位置が道路区間R上にない場合は(ステップS102のNO)、現在走行中の地点に対する制御を実施するが、この場合、不慣れかどうかの判断対象はメッシュで区画された走行区域Sである(ステップS104)。
【0052】
判断対象の決定後、走行履歴記録部15を参照して、現在走行中のメッシュの座標データに基づき、この走行区域の走行回数が0回であるか否かを判断する。
現在走行中の走行区域Sの走行回数が0回である場合は、条件を緩和した変更閾値でライト、ワイパ、暗視カメラを自動的に制御する。
【0053】
カーナビゲーション装置2による経路案内を実施中でない場合、図4の制御タイミングと判断対象の決定ルーチンを所定時間毎に実行する。
【0054】
図5に、第一実施形態の変形例のフローチャートを示す。
変形例のハードウェア構成は第1の実施形態と同じである。
本変形例では、カーナビゲーション装置2による経路案内で走行予定の道路区間R(リンク)、または経路案内なしで現在走行中の道路区間R(リンク)もしくは走行区域S(メッシュ)が、走行に不慣れであるかの判断を、前回から今回の走行日までに所定日数以上が経過しているかを判断する点である。
【0055】
したがって、この変形例では、走行履歴記録部15に、走行した道路区間R(リンク)のIDまたは走行区域S(メッシュ)の座標データに対応付けて、前回の走行年月日が記録してある。
制御装置1の判定部12では、走行時に、現在走行中か、もしくはカーナビゲーション装置2による案内により走行予定の道路区間Rもしくは走行区域Sの、走行履歴記録部15に記録された日付と、現在の日付を比較し、所定の日数以上経過している場合に不慣れな道路区間または走行区域と判定する。
制御装置1のROMからなる制御基準記憶部18に、不慣れな道路区間Rまたは走行区域Sと判定するための「所定の日数」を設定している。
【0056】
本変形例の安全走行支援の手順を図5のフローチャートに基づいて説明する。
走行に不慣れな道路区間R、走行区域Sであるか否かを判定する前のステップS11〜S13、および判定した後のステップS15〜S16は、第1の実施形態の場合のステップ1〜S3,およびステップS5〜S6と同様であるので、その説明を省略する。
制御装置1は、カーナビゲーション装置2による経路案内により走行予定の道路区間Rおよび走行区域Sの走行履歴記録部15に記録されている前回走行の日付と、現在の日付を比較し、所定の日数以上経過している場合に不慣れな道路区間Rまたは走行区域Sと判定すると(ステップS14のYES)、ステップS15に移行してライト等の自動支援機器の閾値の条件を緩和する変更閾値とする(ステップS16)。
【0057】
一方、所定の日数以上経過していない場合(ステップS14のNO)は、不慣れな道路ではないので、ステップS17に移行する。
また、経路案内を実行中でない場合、制御タイミングと判断対象の決定ルーチンにおいて、現在走行中の道路区間Rまたは走行区域Sの走行履歴記録部15に記録されている前回走行の日付と、現在の日付を比較し、所定の日数以上経過している場合に不慣れな道路区間または走行区域と判定し、経過していない場合は慣れた道路と判定している。
【0058】
図6に、本発明の第二実施形態のブロック図を示す。
第二実施形態では、運転者ごとに走行履歴を記録しておき、1台の車両を複数の運転者が使用して、運転者により運転の頻度や走行経路が異なる場合であっても、運転者ごとに適切な安全走行支援を行うものであり、乗員判定部30を設けている。
制御装置1の走行履歴記録部15に、運転者に付与されたID別に、走行した道路区間RのID、走行区域Sの座標データに対応付けた走行回数が記録してある。
なお、運転者のID別に、第一実施形態の変形例のように、走行した道路区間RのID、走行区域Sの座標データに対応付けた前回の走行日を記録しておくこともできる。
【0059】
乗員判定部30は、キーレスエントリシステムを応用して送信される運転者別の識別信号、携帯電話からの個人識別信号、画面表示された運転者情報の選択入力信号などを受信部11から受信して運転者を識別する。
制御装置1は、安全走行支援を開始する前に、運転手のIDを取得し、前述の第1実施形態またはその変形例と同様の処理手順で安全走行支援を行う。
乗員判定以降の、第二実施形態における安全走行支援の手順は、第一実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0060】
前記した第一実施形態、その変形例、および第二実施形態では、走行履歴記憶部15で3年以内の走行履歴が0回であると運転が不慣れな道路であると判定しているが、例えば5年以内の走行回数が3回以下の場合は不慣れ道路であると判定する設定としてもよい。
【0061】
図7および図8に本発明の第三実施形態を示す。
第三実施形態は、交通事故多発地域を走行する場合に安全走行支援を行う。
図7に示すブロック図において、事故情報取得部40は、カーナビゲーション装置2の地図データベース17に登録されている静的な交通事故多発地域の情報を読み出し、またはVICSからリアルタイムの交通事故多発地域の情報を受信して、交通事故多発地域の情報を取得する。
第三実施形態では、判定部12ー1で、道路区間Rまたは走行区域Sが交通事故多発区域が否かを事故情報取得部40を参照して判定している。
他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
次に、第三実施形態の安全走行支援の手順を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
交通事故多発地域であるか否かを判定する前のステップS21〜S23、および交通事故多発地域であると判定した後のステップS25〜S27は、第1実施形態の場合のステップ1〜S3,およびステップS5〜S7と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
制御装置1はカーナビゲーション装置2による経路案内により走行予定の道路区間Rまたは走行区域Sが、事故情報取得部40の取得した交通事故多発地域に含まれるか否かを判定する(ステップS24)。
交通事故多発地域に含まれていると判定すると(ステップS24のYES)、ステップS25に移行してライト等の自動支援機器の作動条件を緩和した変更閾値で自動的に作動する(ステップS26)。
一方、交通事故多発地域に含まれていない場合(ステップS24のNO)は、危険な道路ではないので、ステップS27に移行する。
また、第1実施形態における、経路案内を実行中でない場合の、制御タイミングと判断対象の決定ルーチンにおいても、現在走行中の道路区間Rまたは走行区域Sが、事故情報取得部40の取得した交通事故多発地域に含まれるか否かを判定し、交通事故多発地域に含まれている場合は、変更閾値でライト等を自動的に制御する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の安全走行用の自動支援機器の制御装置の第一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】地図情報における道路区間と走行区域とを示す図面である。
【図3】第一実施形態の安全走行支援の手順を示すフローチャートである。
【図4】制御タイミングと判断対象(リンク/メッシュ)決定の手順を示すフローチャートである。
【図5】第一実施形態の変形例による安全走行支援の手順を示すフローチャートである。
【図6】第二実施形態の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】第三実施形態の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第三実施形態における安全走行支援の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 制御装置
2 カーナビゲーション装置
3 ライト(自動支援機器)
4 ワイパ(自動支援機器)
5 暗視カメラ(自動支援機器)
7 GPS受信機
8 センサ
9 操作スイッチ
10A〜10C 自動支援機器制御用の電子制御ユニット
11 受信部
12 判定部
13 機器制御指令形成部
14 送信部
15 走行履歴記録部
17 地図データベース
18 制御基準記録部
30 乗員識別部
40 事故情報取得部
R 道路区間
S 走行区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置情報取得部と、
既に走行した道路の走行回数を記憶している走行履歴記憶部と、
カーナビゲーション装置で入力された目的地に応じて設定された走行経路に含まれる道路区間または走行区域が、運転が不慣れな道路区間または走行区域であるかを、前記走行履歴記憶部を参照して判定する判定部と、
前記判定部で運転が不慣れであると判定された場合に、ライト、ワイパおよび暗視カメラのいずれか1つを含む安全走行用の自動支援機器の作動条件の閾値を緩和する閾値に変更し、前記道路区間または走行区域を走行する直前に前記自動支援機器を作動させる機器制御指令形成部と、
前記機器制御指令形成部からの機器制御指令を前記自動支援機器へ送る送信部と、
を備えていることを特徴とする安全走行用の自動支援機器の制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、道路区間または走行区域の走行回数の閾値を0〜3回の範囲で設定し、前記閾値回数以下であれば、運転が不慣れな道路区間または走行区域であると判定している請求項1に記載の安全走行用の自動支援機器の制御装置。
【請求項3】
前記走行履歴記憶部は、走行回数を少なくとも現在から3年以内〜5年以内の範囲で記憶し、かつ、運転者毎に記憶している請求項1または請求項2に記載の安全走行用の自動支援機器の制御装置。
【請求項4】
カーナビゲーション装置に内蔵または接続した電子制御ユニットからなり、
前記自車位置および目的地に応じて設定された前記道路区間または走行区域はカーナビゲーションの機能を利用して取得し、
前記道路区間はカーナビゲーション装置で登録されているリンクに相当し、
前記走行区域はカーナビゲーション装置に登録されていない道路を含む地図上で縦横に区画されたメッシュ領域に相当するものである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の安全走行用の自動支援機器の制御装置。
【請求項5】
前記機器制御指令形成部から送信部をへて自動支援機器へ機器制御指令を送信する時期は、これら自動支援機器の作動開始時期が前記運転が不慣れな道路区間または走行区域に入る交差点の直前となるように設定している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の安全走行用の自動支援機器の制御装置。
【請求項6】
前記走行履歴記憶部に道路区間および走行区域毎に走行時の日付を記録し、
前記判定部は、走行時に現在走行しているか若しくはカーナビゲーションによる案内で走行予定となっている道路区間もしくは走行区域の前記記録された日付と、現在の日付を比較し、所定の日数以上経過している場合に前記不慣れな道路区間または走行区域と判定する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の安全走行用の自動支援機器の制御装置。
【請求項7】
自車位置情報取得部と、
交通事故多発地域である道路区間または地域であることを記憶する記憶部と、
自車位置および走行方向から予測される走行経路に前記記憶部で記憶された交通事故多発地域が含まれるか否かを判定する判定部と、
前記判定部で交通事故多発地域を走行すると判定された場合に、ライト、ワイパおよび暗視カメラのいずれか1つを含む安全走行用の自動支援機器の作動条件の閾値を緩和する閾値に変更し、前記道路区間または走行区域を走行する直前に前記自動支援機器を作動させる機器制御指令形成部と、
前記機器制御指令形成部からの機器制御指令を前記自動支援機器へ送る送信部と、
を備えていることを特徴とする安全走行用の自動支援機器の制御装置。
【請求項8】
前記自動支援機器が電子制御ユニットで制御されている場合は該電子制御ユニットへ前記送信部から前記制御指令を通信ネットワークを介して送信し、
前記自動支援機器が電子制御ユニットで制御されていない場合は、該自動支援機器と前記送信部との間に配線した通信線を介して前記制御指令を送信している請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の安全走行用の自動支援機器の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−26951(P2010−26951A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190304(P2008−190304)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】