官能基で置換されたポリオレフィンの制御下での合成における遷移金属錯体
【化1】
遷移金属触媒を用いて、官能基で置換されたオレフィンの、重合の方法が提供される。この方法は、触媒構造に組み込まれた1以上の安定化基によるものであり、重合工程における、それぞれの連続的な反応の間、遷移金属錯体に対するそれぞれのオレフィンモノマーの立体配置を「固定」する。本発明は、実質的に、重合中に触媒の活性部位におけるオレフィン転移の可能性を減少させる。1つの特定の実施形態では、官能基は極性、電子供与性基であり、安定化基はルイス酸置換基であり;このような系で調製され得るポリマーの例は、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、およびポリ(ビニルエーテル)を含む。重合方法において有用な新規の錯体および触媒系もまた、提供される。
遷移金属触媒を用いて、官能基で置換されたオレフィンの、重合の方法が提供される。この方法は、触媒構造に組み込まれた1以上の安定化基によるものであり、重合工程における、それぞれの連続的な反応の間、遷移金属錯体に対するそれぞれのオレフィンモノマーの立体配置を「固定」する。本発明は、実質的に、重合中に触媒の活性部位におけるオレフィン転移の可能性を減少させる。1つの特定の実施形態では、官能基は極性、電子供与性基であり、安定化基はルイス酸置換基であり;このような系で調製され得るポリマーの例は、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、およびポリ(ビニルエーテル)を含む。重合方法において有用な新規の錯体および触媒系もまた、提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的なオレフィンの重合における、触媒としての有機金属錯体の単一部位への使用に関する。より詳しくは、本発明は、1以上の官能基により置換したオレフィンの重合における遷移金属錯体の使用に関する。本発明はさらに、前述の方法に有用な、新規の遷移金属錯体および触媒系に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
エチレン−ビニルアルコール(EVOH)およびポリ(ビニルアルコール)(PVOH)の商業的な有用性により、洗練された、官能基により置換された直鎖のポリマー作製への興味に、一部では拍車がかかっている。EVOHおよびPVOHは、ガスおよび炭化水素に対して非常に良好なバリヤー性を示し、食物の包装、生物医学用および製薬産業での用途が見出されている。Lagaronら、(2001)Polym.Testing 20:569〜577、およびRamakrishnan、(1991)Macromolecules 24:3753〜3759を参照のこと。ポリマーは、特別な化学的抵抗性および磨耗抵抗性をも提供する。しかしながら、これらのポリアルコールの合成は、遠回りで高価な経路が要求される。ビニルアルコールモノマーは、アセトアルデヒドに互変異性化し、アセトアルデヒドは、ビニルアルコールのモノマーとしての使用を防止する。
【0003】
結果として、最も広く採用されているEVOHの合成経路は、ポリ(エチレンビニルアセテート)(EVAc)を生成するための、エチレンおよび酢酸ビニルの遊離ラジカル重合であり、次いで、EVAcはけん化によってEVOHに変換され得る。Meckingら、(1998)J.Am.Chem.SoC.120:888〜899;およびRamakrishnan(1990)Macromolecules23:4519〜4524を参照のこと。これらのEVOHコポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)とよく似た枝分かれ度を持ち、そしてポリマー骨格に沿ってアルコール官能基がランダムに分布する(Ramakrishnan(1991);Valentiら、(1998)Macromolecules 31:2764−2773)。PVOHは、ポリ(酢酸ビニル)の加水分解によるものとよく似た方法で調製され、同様の問題に遭遇している。これらのポリマー、または官能基で置換されたその別のポリオレフィンを調製するための従来のプロセスのさらなる欠点は、そのラジカル重合技術は、分子量(MW)、分子量分布(MWD)、ブロック構造、コモノマーの取り込みの制御手段をほとんど提供せず、それゆえに、ポリマーの機械的特性も同様に、ほとんど制御できない。
【0004】
官能基許容性後期遷移金属オレフィンメタセシス触媒の開発に起因して、開環メタセシス重合(「ROMP」)を介した、直鎖ポリマーの骨格に沿った、極性官能基の直接結合が可能となった。例えば、Hillmyerらは、ルテニウムオレフィンメタセシス触媒を用いる、アルコール置換シクロオクテン、ケトン置換シクロオクテン、ハロゲン置換シクロオクテンおよびアセテート置換シクロオクテンのROMPを報告している(Hillmyerら、(1995)Macromolecules 28:6311−6316)。しかしながら、非対称の置換シクロオクテンは、結果として頭部と頭部(HH)、頭部と尾部(HT)、尾部と尾部(TT)のカップリングを生じ、官能基の位置ランダム(regiorandom)。同様の問題が生じ、初期の遷移金属を介したボラン置換シクロオクテンのROMPに続く、アルコール官能基化した直鎖ポリマーの酸化について、Chungらが報告してる(Ramakrishnanら、(1990),前出)。官能基のこの位置ランダム分布に対する解決法は、アルコール含有対称性ジエンの非環状ジエンメタセシス(ADMET)重合を用いた方法が、Valentiらにより報告されているne(Valentiら、前出;Schellekensら、(2000) J.Mol.Sci.Rev.Macromol.Chem.Phys.C40:167−192))。しかしながら、これらのポリマーの分子量は、ADMETにより、3×104g/mol未満に制限され、これらの炭化水素含量が豊富なものは、最終EVOHコポリマーの障壁の特性を制限する(Lagaronら、前出)。
【0005】
単一部位有機金属触媒は、MW、MWD、微細構造、従って合成されるポリマーの機械的特徴の特別な制御を、提供することが示された。最近、多くの研究者たちが、特別な置換ジイミン配位子との、後期金属錯体に使用する、第2世代の単一部位触媒を開発している。例えば、Meckingら、(1998)前出;Johnsonら、(1996)J.Am.Chem.Soc.118:267〜268;および国際特許公開公報番号WO96/23010を参照のこと。これらの触媒は、比較的低コストで、合成および支持が簡単で、そしてあるケースでは、官能基の寛容の重要な利点を保持している。これらの触媒は、非常に高度な分枝鎖ポリエチレン、高密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、そして官能性モノマーを組み込む様々のポリマーの新しいクラスの生成に使用される。しかしながら、これらの触媒は、酢酸ビニルとブチルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテルとの重合をさせ得ない。
【0006】
従って、官能基に寛容であり、分子量および分子量分布を正確に制御できるプロセスを可能にする触媒を用いたポリマー合成の技術的な方法について、当該分野で必要性がある。理想的には、このような方法は、立体規則性ポリマーの合成にも有益である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
本発明は、当該分野における、前述した必要性に関し、非常に効率的な重合プロセスを提供する。ここで、ポリオレフィンは、遷移金属触媒を用いて合成され、この遷移金属触媒は、重合プロセスのそれぞれの連続的な反応の際に、オレフィンモノマー上の官能基に寛容であるのみではなく、遷移金属錯体に対してそれぞれの官能基化オレフィンモノマーの立体配置も「固定」する。本方法では、錯体の活性部位におけるオレフィンの転移は防止され、次いで、触媒被毒の可能性または、望まない反応が生じることに付随する別の問題(すなわち、触媒の活性部位に関連して、オレフィンの転位によって生じる反応)が減少する。
【0008】
第1の実施形態において、このように、本発明は、ペンダント官能基により置換したポリオレフィンの調製方法を、重合条件下で、以下:
(a)官能基を有するオレフィン炭素原子上で置換したオレフィンを構成する、官能基化オレフィンモノマーと、
(b)オレフィンモノマーの連続的な挿入反応による、段階的なポリマー合成の促進をする触媒有効量の遷移金属錯体とを接触させることにより提供する。この錯体は以下:
(i)それぞれの連続反応期間中に、官能基化オレフィンモノマーと結合した活性部位として機能する遷移金属原子、そして
(ii)官能基と非共有結合を形成し、そしてそれによって、それぞれの連続した反応の間、遷移金属錯体に対して官能基化オレフィンモノマーを単一の立体化学構造に維持する安定化基により置換した配位子から構成される。これにより、それぞれの反応の間、遷移金属錯体に対する、官能基化オレフィンの転位を予防する。
【0009】
触媒上の安定化基とオレフィン上の官能基との間の相互作用は、水素結合、イオン結合、またはいくつかの別の種類の非共有結合を含み得る。水素結合は、ルイス塩基置換基(例えば、極性、電子供与基)とルイス酸置換基(例えば、ボロナート(boronato)もしくはジアルキルアルミニウム基)との間に形成される。しばしば、オレフィン官能基は、極性で、電子供与基(例えば、アルコキシル基、アルキルエーテル基、もしくはエステル基)であり、そして触媒上の安定化基は、ルイス酸置換基である。本方法は、任意の様々な、触媒としての遷移金属錯体(例えば、Brookhart型の触媒、有機金属配位化合物触媒など)を使用して行われ得る。分子量、分子量分布、および微細構造に対する特別的な制御を提供する範囲で、単一部位触媒は、非常に好ましく、そして立体規則的なポリオレフィン生成物を生じ得る。
【0010】
本方法論は、PVOHおよびEVOHのような重要なポリオレフィンの、商業上適した合成であるという点で、当該分野にかなりの進歩を提供する。すなわち、官能基化オレフィンモノマーが酢酸ビニルであり、触媒上の安定化基がルイス酸置換基であり、ポリオレフィンがポリ(酢酸ビニル)である場合、これが容易に加水分解され、直接かつ周知の方法論を使用してPVOHを生じ得る。エチレンがオレフィンコモノマーとして使用される場合、得られるポリオレフィンは、ポリ(エチレン酢酸ビニル)であり、これは再び、加水分解を経てEVOHに容易に変換され得る。別の実施例として、官能基化オレフィンモノマーがビニルエーテル(例えば、アルキルビニルエーテル)であり、安定化基がルイス酸置換基である場合、得られるポリオレフィンはポリ(ビニルエーテル)である。
【0011】
別の実施形態中で、前述した方法を行う過程で有益である新規の遷移金属錯体が提供される。この錯体は、式(I)の構造:
【0012】
【化7】
を有し、ここで:
M1は酸化状態wを有する遷移金属であり;
xおよびyは、0からwの範囲の整数であり、xとyの合計はwであり;
X1およびX2は、M1に配位するヘテロ原子であり;
R1は、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンであり;
S*は、安定化基であり;
R2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルもしくは−R1−S*であり;
Qは、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンリンカーであり、さらにここで、Qにおける隣接する原子上の2つ以上の置換基は、結合されて、環状基を形成し得;そして
Q1およびQ2は、1価のラジカルである。
【0013】
一般的に、M1は、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、V(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Ti(IV)、Ru(II)、Rh(II)、Os(II)、Ir(II)、およびPt(II)から選択される。錯体は正に荷電し得、従って、負に荷電した対イオンと結合し得る。すなわち、式(I)の金属錯体が正の電荷+aを保持し得、aは1〜4の範囲の整数であり、より代表的には1または2であり、そしてそれぞれが負の電荷−bを有するa/bアニオンが付随する。金属錯体は双性イオンでもあり得、すなわち、錯体は、一つの原子もしくは領域は、正の電荷を保有し、そして別の原子または領域は、負の電荷を保有する。
【0014】
本発明の別の実施形態中で、(1)式(I)の構造を有する遷移金属錯体、(2)触媒活性化剤、および必要に応じて(3)不活性な希釈剤から構成される触媒系が提供される。本明細書中での代表的な触媒活性化剤としては、塩または弱配位アニオン(例えば、フルオロヒドロカルビルボレートイオン、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、SbF6−およびPF6−)が挙げられ、これらは全て、対イオンとして前述したアニオンの一つと会合するカチオン性触媒を生じる。本明細書中での別の触媒活性化剤は、ハロゲン化ジアルキルアルミニウムのようなアルキルアルミニウム試薬であり、これは、双性イオン触媒を生じる。従って、触媒活性化剤は、電気的に中性な遷移金属を、カチオンに変換するために通常は使用され、これにより、触媒がカチオン錯体または双性錯体を形成することが理解される。
【0015】
(発明の詳細な説明)
(定義および命名法:)
他に示さない限り、本発明は、変化し得るので、特定の反応物、反応条件、配位子、遷移金属錯体などに限定されないと理解される。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載する目的にのみ使用され、限定を意図するものではないこともまた理解される。
【0016】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形式の「a」、「an」、および「the」は、文脈で他に示されない限り、複数の指示物を含む。従って、このように、「錯体」(「a complex」)を参照すると、単一の錯体(complex)と同様に、異なる錯体の組み合わせもしくは混合物を包含し、「置換基」(「a 置換基」)を参照すると、単一の置換基ならびに同一であっても、同一でなくてもよい2つ以上の置換基となどを包含する。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、多くの用語が参照されるが、これは、以下の意味を有するように定義される:
本明細書中で使用される場合、「式を有する」もしくは「構造を有する」という語句は、限定を意図するのではなく、通常使用される用語「構成する」と同様に使用される。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖、もしくは環状飽和炭化水素基を意味し、必須ではないが代表的には1〜約20の炭素原子、好ましくは1〜約12の炭素原子を保持し、これらは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなど、ならびにシクロペンチル、シクロへキシルなどのようなシクロアルキル基と同様のものである。一般的に、再び、ここで必ずではないが、本明細書中でのアルキル基は、1〜約12の炭素原子を保持している。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基を意図し、そして特別な用語「シクロアルキル」は、代表的には4〜8個、好ましくは5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意図する。用語「置換アルキル」は、1以上の置換基で置換されたアルキルを意味し、そして「ヘテロ原子含有アルキル」および「ヘテロアルキル」は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルキルを意味する。他に明記されない限り、用語「アルキル」および「低級アルキル」は、それぞれ、直鎖状、分枝鎖状、環状、不飽和、置換、および/あるいはヘテロ原子含有のアルキルおよび低級アルキルを包含する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」および「低級アルキレン」は、二官能性の直鎖状、分枝鎖状、または環状のアルキルまたは低級アルキル基をそれぞれが意味し、「アルキル」および「低級アルキル」は、上記の定義と同様である。
【0020】
本明細書中で使用される、用語「アルケニル」は、直鎖状、分枝鎖状、または環状の2〜約20炭素原子の炭化水素基で、少なくとも1個の二重結合を含むもの(例えば、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニルなど)を意味する。本明細書中で、好ましいアルケニル基は、2〜12個の炭素原子を保持している。用語「低級アルケニル」は、2〜6個の炭素原子のアルケニル基を意図しており、特定の用語「シクロアルケニル」は、好ましくは、5〜8個の炭素原子を有する、シクロアルケニル基を意図する。用語「置換アルケニル」は、1つ以上の置換基で置換されたアルケニルを意味し、用語「ヘテロ原子含有アルケニル」および「ヘテロアルケニル」は、少なくとも1個の炭素原子が、ヘテロ原子で置換されているアルケニルを意味する。他に明示されなければ、「アルケニル」および「低級アルケニル」はそれぞれ、直鎖状、分枝鎖状、環状、不飽和、置換、および/あるいはヘテロ原子含有のアルケニルおよび低級アルケニルを包含する。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「アルケニレン」および「低級アルケニレン」はそれぞれ、二官能性の直鎖状、分枝鎖状または、環状のアルケニルおよび低級アルケニル基を意味し、「アルケニル」および「低級アルケニル」は、上記で定義したものと同様である。
【0022】
本明細書中で使用される、用語「アルキニル」は、直鎖状、もしくは分枝鎖状の炭化水素基を意味し、2〜約20の炭素原子を保持し、少なくとも1個の3重結合(例えば、エチニル、n−プロピニルなど)を保持する。本明細書中のアルキニル基は、好ましくは2〜約12の炭素原子を保持している。用語「低級アルキニル」は、2〜6個の炭素原子のアルキニル基を意図する。用語「置換アルキニル」は、1以上の置換基で置換されたアルキニルを意味し、そして「ヘテロ原子含有アルキニル」および「ヘテロアルキニル」は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルキニルを意味する。他に明記されなければ、用語「アルキニル」および「低級アルキニル」は、直鎖状、分枝鎖状、不飽和、置換、および/あるいはヘテロ原子含有のアルキニルおよび低級アルキニルをそれぞれ包含する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキニレン」および「低級アルキニレン」は、二官能性の直鎖状、分枝鎖状または、環状のアルキニルおよび低級アルキニル基をそれぞれ意味し、「アルキニル」および「低級アルキニル」は、上記で定義したものと同様である。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「アルコキシ」は、単結合で、末端エーテル結合を介して結合したアルキル基を意味する;すなわち、「アルコキシ基」は−O−アルキルとして表され得、アルキルは上で定義したものと同様である。「低級アルコキシ基」は、1〜6個の炭素原子を保持するアルコキシ基を意味し、そして例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブチルオキシなどを包含する。同様に、「アルケニルオキシ」および「低級アルケニルオキシ」はそれぞれ、単結合の末端エーテル結合を介して結合したアルケニルおよび低級アルケニル基であり、そして「アルキニルオキシ」および「低級アルキニルオキシ」はそれぞれ、単結合の末端エーテル結合を介して結合したアルキニルおよび低級アルキニル基であることを意味する。
【0025】
本明細書中で使用される、用語「アリール」は、他に指定しない限り、単一の芳香族環または、相互に融合したり、直接結合したり、間接的に結合したりした複数の芳香族環を保持する芳香族置換基を意味する(その結果、異なる芳香族環は、メチレンまたはエチレン部分といった一般基に結合される)。好ましくは、アリール基は5〜20個の炭素原子および1個の芳香族環または2〜4個の融合もしくは結合した芳香族環(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニルなど)のいずれかを包含し、より好ましいアリール基は、1〜3個の芳香族環を保持し、そして特に好ましいアリール基は、1または2個の芳香族環および5〜14個の炭素原子を保持するものである。「置換アリール」は、1以上の置換基で置換されたアリール部分を意味し、そして用語「ヘテロ原子含有アリール」および「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアリールを意味する。他に明記されない限り、用語「芳香族」、「アリール」および「アリーレン」は、ヘテロ芳香族化学種、置換芳香族化学種、および置換へテロ芳香族化学種を包含する。
【0026】
本明細書中で使用される、用語「アリールオキシ」は、単結合の末端エーテル結合を介して結合したアリール基を意味する。ここで、「アリール」は、上記で定義されたものと同様である。「アリールオキシ」基は、−O−アリールと同様に示され得、アリールは、上記で定義されたものと同様である。好ましいアリールオキシ基は、5〜20個の炭素原子を保持し、そして特に好ましいアリールオキシ基は、5〜14個の炭素原子を保持する。アリールオキシ基の実施例は、限定されないが、フェノキシ,o−ハロ−フェノキシ、m−ハロ−フェノキシ、p−ハロ−フェノキシ、o−メトキシ−フェノキシ、m−メトキシ−フェノキシ、p−メトキシ−フェノキシ、2,4−ジメトキシ−フェノキシ、3,4,5−トリメトキシ−フェノキシなどを包含する。
【0027】
用語「アルカアリール」は、アルキル置換基を持つアリール基を意味し、そして、用語「アラルキル」は、アリール置換基を持つアルキル基を意味し、ここで、および「アリール」および「アルキル」は、上と同様に定義される。一般的には、アルカアリールおよびアラルキル基が、6〜30個の炭素原子を保持しており、好ましくは6〜24個の炭素原子そして特に好ましくは、アルカアリールおよびアラルキル基が、6〜16個の炭素原子を保持する。アラルキル基の実施例は、限定されないが、ベンジル、2−フェニル−エチル、3−フェニル−プロピル、4−フェニル−ブチル、5−フェニル−ペンチル、4−フェニルシクロヘキシル、4−ベンジルシクロヘキシル、4−フェニルシクロヘキシルメチル、4−ベンジルシクロヘキシルメチルなどを包含する。例えば、アルカアリール基は、p−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル、2,7−ジメチルナフチル、7−シクロオクチルナフチル、3−エチル−シクロペンタ−1,4−ジエンなどを包含する。
【0028】
用語「アルカアリーレン」および「アラルキレン」は、先ほど定義した「アルカアリール」および「アラルキル」と同様であるが、これらは、一官能性ではなく二官能性である。すなわち、「アルカアリーレン」部分は、アルキル基で置換したアリーレン結合を意味し、一方で、「アラルキレン」部分は、アリール基で置換したアルキレン結合を意味する。
【0029】
用語「ハロ」、「ハライド」および「ハロゲン」は、クロロ、ブロモ、フルオロ、またはヨード置換基を意味するように、慣習的な意味で使用される。用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルキニル」(または、「ハロゲン化アルキル」、「ハロゲン化アルケニル」および「ハロゲン化アルキニル」)は、アルキル、アルケニル、または、アルキニル基をそれぞれ意味し、基内の少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換されている。
【0030】
「ヒドロカルビル」は、1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約20個の炭素原子、より好ましくは1〜約12個の炭素原子を持つ、一価のヒドロカルビルラジカルを意味し、そしてこのラジカルは、直鎖状、分枝鎖状、環状、飽和および不飽和化学種(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基など)を包含する。用語「低級ヒドロカルビル」は、1〜6個の炭素原子のヒドロカルビル基を意図し、そして用語「ヒドロカルビレン」は、1〜30個の炭素原子、好ましくは1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子を持つ二価のヒドロカルビル部分を意図し、そしてこのヒドロカルビル部分は、直鎖状、分枝鎖状、環状、飽和および不飽和化学種を包含する。用語「低級ヒドロカルビレン」は、1〜6個の炭素原子を持つヒドロカルビレン基を意図している。他に指示が無い限り、用語「ヒドロカルビル」および「ヒドロカルビレン」は、置換および/あるいはヘテロ原子含有ヒドロカルビルおよびヒドロカルビレン部分をそれぞれ包含すると解釈されるべきである。
【0031】
「ヘテロ原子含有アルキル基」(「ヘテロアルキル」基とも呼ばれる)または「ヘテロ原子含有アリール基」(「ヘテロアリール」基とも呼ばれる)として用いられる、用語「ヘテロ原子含有」は、1個または2個以上の炭素原子が炭素原子と異なる原子(例えば、窒素、酸素、硫黄、リン、またはケイ素(代表的には、窒素、酸素または硫黄))で置換されている分子、結合または置換基を意味する。同様に、用語「ヘテロアルキル」は、ヘテロ原子含有アルキル置換基を意味し、用語「ヘテロ環式」は、ヘテロ原子含有環状置換基を意味し、用語「ヘテロアリール」および「ヘテロ芳香族」は、それぞれ、ヘテロ原子含有の「アリール」および「芳香族」置換基などを意味する。ヘテロアルキル基の例は、アルコキシアリール、アルキルスルファニル−置換アルキル、N−アルキル化アミノアルキルなどを包含する。ヘテロアリール置換基の例は、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、ピリミジニル、イミダゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリルなどを包含し、そしてヘテロ原子含有脂環基の例は、ピロリジノ、モルフォリノ、ピペラジノ、ピペリジノなどである。「ヘテロ環式」基または化合物は、芳香族を含み得るかまたは芳香族を含み得ず、さらに、用語「アリール」に関して上で定義したように、「ヘテロ環式」は単環式、二環式または多環式であり得る。
【0032】
上記で定義したことが暗示するように、「置換ヒドロカルビル」、「置換アルキル」、「置換アリール」などで用いられる、「置換」は、ヒドロカルビル、アルキル、アリールまたは別の部分において、炭素原子(または別の原子)と結合している少なくとも1個の水素原子が、水素原子ではない置換基で置換されていることを意味する。このような置換基の例は、限定されないが、以下を含む:官能基(例えば、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C6〜C20アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、モノ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、ジ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、C2〜C20アルキルアミド、C6〜C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、およびアリールイミノ)、;ならびに、ヒドロカルビル部分(例えば、C1〜C20アルキル(好ましくはC1〜C18アルキル、より好ましくはC1〜C12アルキル、最も好ましくはC1〜C6アルキル)、C2〜C20アルケニル(好ましくはC2〜C18アルケニル、より好ましくはC2〜C12アルケニル、最も好ましくはC2〜C6アルケニル)、C2〜C20アルキニル(好ましくはC2〜C18アルキニル、より好ましくはC2〜C12アルキニル、最も好ましくはC2〜C6アルキニル)、C5〜C20アリール(好ましくはC5〜C14アリール)、C6〜C24アルカアリール(好ましくはC6〜C18アルカアリール)、およびC6〜C24アラルキル(好ましくはC6〜C18アラルキル))。
【0033】
さらに、特定の基が可能である場合、前述した官能基はさらに、1以上のさらなる官能基か、または上で特に列挙されたような、1以上のヒドロカルビル部分で置換され得る。同様に、上で述べたヒドロカルビル部分は、1以上の官能基、または特に列挙されたような、さらなるヒドロカルビル部分で置換され得る。
【0034】
用語「置換」は、置換される可能性がある基のリストの前に見られ、この用語は、その群の全てのメンバーに適用することが意図される。すなわち、「置換アルキル、置換アルケニル、および置換アルキニル」という句は、「置換アルキル、置換アルケニル、および置換アルキニル」と同様であると解釈できる。同様に、用語「必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、およびアルキニル」は「必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアルケニル、および必要に応じて置換されたアルキニル」と同様であると解釈でき、そして「架橋された二環式または多環式オレフィンモノマー」は、「架橋された二環式オレフィンモノマー」または「架橋された多環式オレフィンモノマー」と同様であると解釈できる。
【0035】
用語「立体規則性ポリマー」は、モノマーユニット間の「結合性」が規則的な配置を持っているポリマーを意味して使用される。
【0036】
「任意の」または「必要に応じて」は、引き続いて記載される状況が起こり得るまたは、状況が起こり得ないことを意味し、これにより、この記述は状況が起こる例および起こらない例を包含する。例えば、「必要に応じて置換された」という句は、非水素置換基が、所定の原子上に存在し得る、または存在し得ないことを意味し、そしてこのような記述は、非水素置換基が存在する構造、および非水素置換基が存在しない構造を包含する。
【0037】
本明細書中における分子構造中では、IUPAC協会に従い、太字および点線を利用して基の特定の配置を示している。破線で示された結合は、問題の基が、描かれた分子の紙面より下にあることを示しており、(「α」配座)そして、太線で示された結合は、問題の位置の基が、描かれた分子の紙面より上にあることを意味してている(「β」配座)。
【0038】
(触媒)
本発明の触媒は遷移金属錯体であり、この錯体は以下で構成される:(i)挿入重合反応のそれぞれの工程の間、官能基化オレフィンモノマーが結合する活性部位として機能する、遷移金属原子、および(ii)上で述べたそれぞれの工程の間、官能基と非共有結合を形成する安定化基で置換される配位子。官能基がルイス塩基置換基(例えば、極性の電子供与性基)である場合に、安定化基がルイス酸置換基の構造であるか、または官能基がルイス酸である場合に、安定化基がルイス酸置換構造であるので、安定化基は、特定の官能基と水素結合を形成し得る。別の実施例では、安定化基は、オレフィンモノマーの官能基とイオン結合を形成するように選択され得、この場合、安定化基および官能基の一つがカチオン性であり、他方はアニオン性である。好ましい遷移金属錯体は、単一の遷移金属原子を持っており、その結果、この錯体は単一部位遷移金属触媒である。単一部位の触媒は、その触媒が、調製されるポリオレフィンの分子量、分子量分布、および微細構造の正確な制御を可能にし、立体規則的なポリマーを生じうる限りにおいて、非常に有利である。
【0039】
1実施形態において、触媒として利用される遷移金属錯体は式(I)の構造
【0040】
【化8】
を有する。
【0041】
構造(I)中には、以下のような様々な置換基がある。
【0042】
M1は酸化状態wを有する遷移金属であり、一般的には、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、V(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Ti(IV)、Ru(II)、Rh(II)、Os(II)、Ir(II)、およびPt(II)から選択され、xおよびyは0〜wの範囲の整数であり、そしてxとyの合計はwであり、この時、M1は電気的に中性の形態である。好ましい実施形態では、wが2であり、M1がPd(II)、Fe(II)、Co(II)またはNi(II)であり、xが1、yが1である。
【0043】
X1およびX2は、M1に配位するヘテロ原子であり、好ましくはNまたはP、最も好ましくは、Nである。
【0044】
R1は、ヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカアリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、置換ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20アルキレン、置換C2〜C20アルケニレン、置換C2〜C20アルキニレン、置換C5〜C20アリーレン、置換C6〜C24アルカアリーレン、または置換C6〜C24アラルキレン)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリーレン)、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリーレン)である。R1は、結合部位Q中に含まれる原子とも結合し得る。好ましいR1基は、C5〜C14アリーレン、置換C5〜C14アリーレン、C5〜C14ヘテロアリーレン、および置換C5〜C14ヘテロアリーレンを包含するが、これらに限定されず、より好ましいR1基は、C5〜C14アリーレンおよび置換C5〜C14アリーレンから選択される。最も好ましいR1基は、フェニレンおよびモノ−、ジ−、およびトリ(低級アルキル)−置換フェニレンである。R1が結合Q中の原子に結合する時、得られた環状基はN−ヘテロ環状基であると理解される。このような事例での、好ましい環状基は5員環および6員環、代表的にはピリジンおよび置換ピリジン基のような芳香族環である。
【0045】
S*は安定化基であり、多くの場合、オレフィンモノマー上に存在する、極性の電子供与性基の安定化を提供するためのルイス酸置換基である。適したルイス酸置換基は、当業者には明らかであり、一例として、−OBE2、−OAlE2、−OPE2、−OSnE3、−OSiE3、および−OZnEを包含し、ここでEは、ハロゲン化物、ヒドロキシル、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C5〜C14アリール、C5〜C14オキシアリールなどから選択され、好ましくはハロゲン化物、低級アルキル、および低級アルコキシである。前述したルイス酸置換基のうち、より一般的な置換基は、−OBE2、−OAlE2、−OSnE3、および−OZnEであり、ここでEは、クロロ、ブロモ、アルコキシ、または低級アルキル、またはフェニルである。ルイス酸置換基の特定の好ましい実施例としては、−OBcatであるが、これに限定されず、
【0046】
【化9】
ここで「cat」はカテコール、−OAlCl2、−OAl(CH3)2、−OSn(CH3)3、および−OZnOPh(ここで、Phはフェニルを意味する)を表す。いくつかの例では、水素原子それ自体で、現文脈上でのルイス酸安定化基のように作用し得る。ルイス酸置換基は、極性、電子供与性基(例えば、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C6〜C20オキシアリールカルボニル、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、モノ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、ジ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、C2〜C20アルキルアミド、C6〜C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、およびアリールイミノ置換基)に、重合しているオレフィンモノマー上で非共有結合する。
【0047】
R2は、ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、またはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)であり、これはR1に結合する安定化基と同じであり得るか、または安定化基と同じであり得ない、安定化基S*で置換され得る。R2は、結合Qに含まれる原子に結合し得る。好ましいR2基としては、C5〜C14アリール、置換C5〜C14アリール、C5〜C14ヘテロアリール、および置換C5〜C14ヘテロアリールを包含し、より好ましいR2基は、C5〜C14アリールおよび置換C5〜C14アリールから選択されるが、これらに限定されない。R2は、結合部位Qに含まれる原子と結合する場合、得られた環状基はN−ヘテロ環状基であると理解される。このような状況での、好ましい環状基は5員環および6員環、代表的には芳香族環である。
【0048】
最も好ましい実施形態では、R1はフェニルまたは低級アルキル−置換フェニルであり、R2は、ピリジン環を形成するための、結合Qに含まれる隣接する炭素原子に結合する。
【0049】
Qはヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカアリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、置換ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカアリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリーレン)、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリーレン)リンカーであり、さらにここで、Qに含まれる隣接する原子上の2以上の置換基は、環状基を形成するように結合し得、またはここで、Qに含まれる1以上の原子は、R1および/またはR2に結合する。好ましいQ結合としては、C2〜C12アルケニレン、置換C2〜C12アルケニレン、C2〜C12ヘテロアルケニレン、および置換C2〜C12ヘテロアルケニレンが挙げられるが、これらに限定されず、より好ましいQ結合は、C2〜C6アルケニレンおよび置換C2〜C6アルケニレンより選択される。
【0050】
Q1およびQ2は、それぞれ一価のラジカルであり、好ましくは独立して水素、ハロゲン化物、C1〜C20アルコキシ、アミド、および置換/非置換C1〜C30ヒドロカルビルから選択され;置換される場合、必然性はないが、置換基は、代表的に、電子吸引基(例えば、ハロゲン化物、アルコキシ、4族元素など)である。あるいは、Q1およびQ2はアルキリデンオレフィン(すなわち、=CR2であり、ここでRは、水素またはヒドロカルビル、代表的には低級アルキル)、アセチレン、または5員環または6員環のヒドロカルビル基を一緒になって形成し得る。好ましいQ1およびQ2部分は、水素、ハロゲン化物、C1〜C12アルキル、および1以上のハロゲンおよび/あるいはアルコキシ基で置換されたC1〜C12アルキルであり、代表的には1〜6個のそのような基、および4族元素で置換されたC1〜C12アルキルである。特に、好ましいQ1およびQ2部分は、水素、塩素、ヨウ素、臭素、メチルである。
【0051】
特定の式(I)の錯体は、塩の形態、すなわち、正に荷電し、それに負に荷電した対イオンと会合する。前者の事例では、正の電荷は金属上にあり、このような場合はxとyの合計はwより小く、そして錯体は、遊離したアニオン(例えば弱く配位したアニオン)を会合する。好ましいアニオンは、好ましくは立体的にかさが高く、その結果、イオンにより保有される負の電荷は非局在化する。弱く配位したかさ高いアニオンは、当業者に公知であり、例として、限定されないが、フルオロヒドロカルビルボレートイオン、トリフルオロメタンスルホネート、BF4−、Ph4B−(Ph=フェニル)、p−トルエンスルホネート、SbF6−、およびPF6−を包含する。特に好ましいアニオンは、フルオロヒドロカルビルボレートイオン、(例えば,テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BAF−)、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、H+(OCH2CH3)2[(ビス−3、5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、およびトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート)である。
【0052】
別の式(I)の錯体は、双性イオンであり、一般的には、正電荷は金属中心上に存在し(これは、再び、xおよびyの合計はw以下であることを意味する)、負電荷は、錯体中に、代表的には配位子上のペンダント基の原子上に存在する。双性イオンは、ジアルキルアルミニウムハロゲン化合物のようなルイス塩基(例えば、塩化ジメチルアルミニウム)と、イオン化可能酸性基(例えば、ヒドロキシル、スルフヒドリル、またはカルボキシル基)を有する電気的に中性な錯体との反応によって形成され得る。錯体は、塩または双性イオン形態中の重合触媒として使用され得るが、より代表的に、錯体は、電気的に中性な形態で使用され、そしてインサイチュでの適切な試薬との混合により、イオン性または双性を付与させる。ある好ましい実施形態中で、Qは式(II)の構造
【0053】
【化10】
を有し、これにより、遷移金属錯体は式(III)の構造
【0054】
【化11】
を有する。
【0055】
式(II)および式(III)中で:R1、R2、M1、X1、X2、Q1、Q2、S*、xおよびyは、式(I)の錯体を定義したものと同様であり;zは0または1であり;R3およびR4は水素、ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、および置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)から選択され、そして好ましくは水素、またはC1〜C12ヒドロカルビルであり、より好ましくは、水素、または低級アルキルであり、最も好ましくは、水素、またはメチルであり;そしてR5およびR6は、上のように、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、およびヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルから選択され、そして好ましくは、水素、または低級アルキルであり、最も好ましくは水素である。
【0056】
さらに、R2、R3、R4、R5、およびR6のいずれかは、ルイス酸安定化基S*で置換され得、これはR1と結合しているS*と同様であり得るか、または同様であり得ず、そしてさらに、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6のいずれか2つ以上は、一緒になって環状基を形成し得る。最適なのは、(a)R1およびR3および/または、(b)R2およびR4が一緒になって環状基を形成する。(a)R1およびR3および/または、(b)R2およびR4が結合する場合、そのように形成される環状構造は脂環、芳香族環であり得、例えば、フラニル、ピロリル、チオフェニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサチオリル、ピリジニル、メチルピリジニル、エチルピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルフォリニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、1,4−ジオキサニルなどを包含する。R3およびR4が結合する場合、得られた構造は、脂環であり、ヘテロ原子を含み得るか、または含み得ず;このような部分は、例えば、シクロペンテン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、1,4−ジオキサン、1,2−ジチオール、1,3−ジチオール、ピペラジン、モルフォリンなどを包含しうる。
【0057】
より好ましい触媒は、式(III)に包含され、ここで、zは0であり、qは二重結合として存在し、xおよびyは1であり、X1およびX2はNであり、S*はルイス酸置換基であり、R1はフェニレンまたはモノ−、ジ−、またはトリ−(低級アルキル)−置換フェニレンであり、R3は水素またはメチルであり、好ましくはメチルであり、そして(a)R2はフェニレンまたはモノ−、ジ−、またはトリ−(低級アルキル)−置換フェニルであり、かつR4はR3と同一であるか、または(b)R2およびR4は一緒になり、S*または別の置換基で置換され得、または置換され得ないピリジン環を形成するかのいずれかであるが、好ましくは非置換型であり、R3は水素である。さらに、例示的な触媒は、M1がPd(II)、Fe(II)、Co(II)、またはNi(II)である。これらのより好ましい触媒の例は、式(IV)および(V):
【0058】
【化12】
によって示される。
【0059】
構造(IV)および(V)の中で、M1、Q1、およびQ2は、上で定義したものと同様であり、そしてLAはルイス酸置換基である。
【0060】
式(IV)の錯体は、代表的には、「DAD」(ジアザブタ−1,3−ジエン)前駆体配位子Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arから合成され、ここで、Meはメチル、Arは2,4,6−トリメチル3−PrおよびPrはルイス酸置換基LAへの前駆体である。Pr部分は、所望のLA置換基配位を与えるための、適切な試薬との反応により、所望のルイス酸置換基で置換され、次いで、メタレーションされ得る。例えば、ヒドロキシル部分は、Prとして機能し得、この場合、配位子前駆体は所望の配位子に変換され得、このことは、脱プロトン試薬(例えば、ヘキサメチルジシルアジドカリウム)を用いて脱プロトン化することによって起こり、一致するフェノキシドを生じ、続いて、MEC−Lgとの反応によりルイス酸置換基−LAを生じ、またこの場合、これは置換基OMECである。Mは通常は、B、Al、P、Sn、Si、またはZnであり、好ましくはB、Al、またはSnであり、Eは前述のものであり、cはMに独立して1、2、または3であり、およびLgはハロゲン化物、特に塩素のような脱離基である。代表的なこのような合成は、本明細書中の実施例1および6に述べている。
【0061】
あるいは、前駆体配位子(再び、Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar、ここで、Arは2,4,6−トリメチル3−PrおよびPrはルイス酸置換基LAの前駆体)は、メタレーションされ、そして反応混合物中への適切な触媒活性化剤(すなわち、前述した弱く配位したアニオンおよび/またはMEC−Lg試薬の塩または酸)の取り込みにより、触媒のLA置換形態へとインサイチュで変換される。触媒活性化剤はまた、錯体の金属部位を変換し、電気的に中性な構造である場合、カチオンに変換し、そしてこれにより錯体はカチオン性または双性となる。実施例2、3、4、および10〜15を参照のこと。
【0062】
式(V)の錯体は、「ピリム」(ピリジルイミン)前駆体配位子Ar−N=C(H)−2−ピリジン(Ar=2,4,6−トリメチル3−ヒドロオキシフェニル)から同様の方法で合成され、これは実施例5、7、8および9に述べられている。
【0063】
式(IV)の錯体に対応する塩および双性イオン形態の触媒は、それぞれ、以下の構造(IVA)および(IVB):
【0064】
【化13】
で示される。
【0065】
ここで、An−は、負に荷電した対イオン(たとえば、本明細書中で他に述べたような弱く配位したアニオン)であり、一方で式(V)の錯体に対応する塩および双性イオン形態の触媒は、それぞれ、以下の構造(VA)および(VB):
【0066】
【化14】
で示される。
【0067】
別の実施形態では、本明細書中でオレフィン重合触媒として使用されている遷移金属錯体は、SPI International(Menlo Park,CA)に譲渡されたTaggeらに対する米国特許第6,355,746号に述べられている。ある実施形態では、錯体は式L1[M2Q1Q2]L2であり、M2は中間遷移金属、Q1およびQ2は上で定義した一価のラジカルであり、そしてL1およびL2は、窒素性配位子であり、このうちの少なくとも1つは、上で定義した安定化基S*で置換される。L1およびL2のそれぞれは、C=N基および第2の配位原子中に窒素原子を包含しており、この配位原子は第2の窒素原子(必要に応じて第2のC=N基として存在)、もしくは酸素原子、硫黄原子、もしくはリン原子のいずれかである。
【0068】
関連した実施形態中では、米国特許第6,355,746号でTaggeらも述べたように、触媒は式(VI)の構造:
【0069】
【化15】
を有する遷移金属であり、
ここで:
M2は、代表的には、Mb、Ta、Mo、W、Mn、およびReから選択される中間遷移金属であり、そしてQ1、Q2、R3、R4、R5、R6、q、およびzは上で定義されたものと同様であり;
nは0または1であり;
R1a、R2a、およびR7は、上でR2で定義されたものと同様であり、ここでさらに、R1a、R2a、R3、R4、R5、R6、およびR7の任意の2つ以上は一緒になり、式(III)の錯体として定義されたものと同様の環状基を形成し得;
LAおよびLBは同一または異なる配位子であり得、そしてこれらは、窒素含有ヘテロ環状基、硫黄含有ヘテロ環状基、および酸素含有ヘテロ環状基、第三級アミンおよび第三級ホスフィンからなる群より選択され、またはLAおよびLBは一緒になり、上のような単一の二座配位子L2を形成し得るか、このL2は、L1と同一であり得、または同一であり得ず;そして
ここで、R1a、R2a、R5、R6、およびR7の少なくとも1つ、好ましくは、R1a、R2a、および/またはR7の少なくとも1つは安定化基S*で置換される。
【0070】
LAおよびLBは一般的には、以下から選択される:窒素−含有ヘテロ環(例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、ピロール、2H−ピロール、3H−ピロール、ピラゾール、2H−イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、
インドール、3H−インドール、1H−イソインドール、シクロペンタ(b)ピリジン、
インダゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピラゾリジン、キヌクリジン、およびイミダゾーリジン);硫黄含有ヘテロ環(例えば、チオフェン、1,2−ジチオール、1,3−ジチオール、チエピン、ベンゾ(b)チオフェン、およびベンゾ(c)チオフェン);酸素含有ヘテロ環(例えば、2H−ピラン、4H−ピラン、2−ピロン、4−ピロン、1,2−ジオキシン、1,3−ジオキシン、オキセピン、フラン、2H−1−ベンゾピラン、クマリン、クロマン−4−オン、イソクロメン−1−オン、イソクロメン−3−オン、キサンテン、テトラヒドロフラン、および1,4−ジオキサン);混合ヘテロ環(例えば、イソキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール、3H−1,2,3−ジオキサゾール、3H−1,2−オキサチオール、1,3−オキサチオール、4H−1,2−オキサジン、2H−1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2,5−オキサチアジン、o−イソオキサジン、ピラノ[3,4−B]ピロール、インドキサジン、ベンゾキサゾール、アンスラニル、およびモルフォリン);第3級アミン、特にトリアルキルアミン、および好ましくは、トリ(低級アルキル)アミン(例えば、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリメチルアミン、メチルジイソプロピルアミンなど);ホスフィン、特にトリアルキルホスフィン、そして好ましくは、トリ(低級アルキル)ホスフィン(例えば、トリエチルホスフィン、メチルジエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メチルジイソプロピルホスフィンなど)。しかしながら、特に好ましい実施形態では、LAおよびLBはまた一緒になり単一の二座配位子L2を形成し得、ここで、L2は上で定義したものと同一であり、最適なものとしては、L1と同一である。
【0071】
Taggeらに対する米国特許第6,355,746号で述べられるように、模範的な化合物は、式(VII)の構造:
【0072】
【化16】
を有し、
ここで:
iおよびjは独立して0、1、2、および3であり;そして
R1bおよびR2bは独立して、水素またはC1〜C10ヒドロカルビルであり、R8およびR9は独立して、C1〜C10ヒドロカルビル、または置換C1〜C10ヒドロカルビルであり、ここで、R1b、R2b、R8、およびR9の少なくとも1つは、安定化基S*で置換される。iまたはjがそれぞれに2より大きい場合、任意の2以上のオルトR8部分またはオルトR9部分は一緒になり、さらなる環(例えば、ベンゼン環)を形成し得る。
【0073】
関連した実施形態では、遷移金属錯体は式(VIII)の構造:
【0074】
【化17】
を有し、
ここで:
M2、Q1、およびQ2は前に定義されたもの同様であり;
R10は、ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、ヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)であるか、R10およびR11一緒になり、環を形成する;
(R10)’はR10と同様に定義され、そして(R11)’はR11と同様に定義され、または(R10)’および(R11)’は一緒になって、環を形成し;
R12’はR10と同様に定義され、そしてR13’はR11と同様に定義され、またはR12’およびR13’は一緒になって、環を形成し;
(R12)’はR12と同様に定義され、そして(R13)’はR13と同様に定義され、または(R12)’および(R13)’は一緒になって、環を形成し;
R14、(R14)’、R15、および(R15)’は、上述のように、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、および置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルから独立して選択され、そして好ましくは水素または低級アルキルであり、最も好ましくは水素であり;そして
mおよびm’は、独立して0または1であり、
ここで、R10、(R10)’、R11、(R11)’、R12、(R12)’、R13、(R13)’、R14、(R14)’、R15、および(R15)’のうちの少なくとも1つが、好ましくは、R10、(R10)’、R11、(R11)’、R12、(R12)’、R13、および(R13)’のうちの少なくとも1つが、前に定義したような安定化基S*で置換される。
式(VI)、(VII)および(VIII)の錯体は、米国特許第6,355,746号に記載された方法論を用いて、合成され得る。一般的には、ジイミン型の配位子(すなわち、「DAD」配位子)は、第一級アミンの付加による、1,2−ジケトンから合成される。例えば、米国特許第5,866,663号、同第5,880,241号、および同第6,355,746号、および国際特許公開番号WO 98/30612および WO 98/49208を参照のこと。1つ以上のC=N基を含む別の配位子は、選択されたアルデヒドまたはケトンと、適切な第一級アミンとの反応により、同様の方法で合成され得る。例えば、非対称の配位子:
【0075】
【化18】
は、実施例5で述べられるように、3−アミノ−2,4,6−トリメチルフェノール、およびピリジンカルボキシアルデヒドから、容易に合成され得る。Weidenbruchら、Organometallic Chemistry 454:35(1993),およびPatai編,The Chemistry of the Carbon−Nitrogen Double Bond(New York:John Wiley&Sons,February 1970)は、イミンの調製において使用され得る多様な合成方法の情報を提供する。
錯体(VI)では、LAおよびLBは一緒になって、式−Cp(R)i−B−T−を有する結合を形成し得、結果としてM2を含む環状基を形成し得、その結果、遷移金属錯体は式(IX)の構造:
【0076】
【化19】
を有し、ここで、M2、Q1、Q2、R1a、R2a、R3、R4、R5、R6、R7、n、q、およびzは式(VI)の錯体で定義されたものと同様であり、ただし、R1a、R2a、およびR7のうちの少なくとも1つは、安定化基S*で置換され,そしてさらにここで、R1a、R2a、R3、R4、R5、R6、およびR7の任意の2つ以上は一緒になり、上で定義された環状基を形成し得,iは0、1、2、3、または4であり、そしてR、T、およびBは以下の通りである:
Rはハロゲン化物、ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)であり、または、iが2、そして2つのRが互いに対してオルトである場合、2つのRは結合し、さらなる環状部分を形成し得る。好ましい錯体は、iが0でない場合、R部分は、ハロゲン化物またはC1〜C12アルキルであり、またはシクロペンタジエニル環上の互いにオルトである、2つのR置換基は一緒になり、5員環または6員環状構造を形成し得る。この環状構造は、非置換または置換され得、好ましくは上記で述べたようなハロゲン化物またはヒドロカルビル基によって置換される。特に好ましいR基は、ハロゲン化物および低級アルキルであり;2つのR置換基が互いにオルトであり、結合して、シクロペンタジエニル環(従って、インデニル部分も)を形成し、必要に応じて低級アルキル基により置換される錯体が特に好ましい。
【0077】
Tはシクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、インドリル、またはアミノボレートベンジルであり、非置換または上記の様に定義されたR基で置換され、またはTはJ(RT)rであり得、ここで、Jは窒素、リン、酸素、または硫黄であり、RTはそれぞれ、水素、ヒドロカルビル、ハロゲン化物−置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、またはアルコキシであり、そしてrはJから2を減じた配位数である。好ましいT置換基は式J(RT)rを有しており、ここでJは窒素またはリンであり、rは1であり、RTはC1〜C12アルキルであり、これは必要に応じて1以上の、代表的には1〜6個のハロゲン原子で置換される。特に好ましいT基はNRT部分であり、ここで、RTは低級アルキルまたはフェニルである。
【0078】
Bは非金属性結合部分であり、例えばヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、置換ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカリーレン)、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカリーレン)である。好ましいB結合は、置換された、または非置換のC1〜C12アルキレンおよびC5〜C14アリーレンである。
【0079】
別の実施形態中では、遷移金属錯体は式(VIII)の構造
【0080】
【化20】
を有し、
ここで:
hは1または2であり;
iは0、1、2、または3であり;
M3は3族元素、4族元素、5族元素、ランタニド、またはアクチニドであり、2つの1価の配位子、またはiが1の場合には2価の配位子で置換され;そして
R、T、およびBは、式(IX)の錯体と同様に定義され、
ここで、R置換基およびTの少なくとも1つは、上で定義された安定化基S*で置換される。
【0081】
なお別の実施形態では、遷移金属錯体は式(XI)の構造
【0082】
【化21】
を有し、
ここで:
Ar1は、シクロペンタジエニル基を含む少なくとも1つの芳香族環を有する1〜3個の芳香族環を含む芳香族部分であり、ここで、Ar1は必要に応じてC1〜C2アルキルまたはC5〜C14アリール置換基で置換され、そしてさらに、Ar1が2または3個の芳香族環を有する場合、環は好ましくは融合し;
M4は3族、4族、5族、6族、ランタニド、またはアクチニド金属であり;
Q1およびQ2は上で定義したものと同様であり、そして好ましくは、ハロゲン化物、低級アルコキシ、低級アルキルおよびアミドから独立して選択され;
R16はヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、ヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、またはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)であり、好ましくはC1〜C12ヒドロカルビルであり;
R17、R18、R19、およびR20は、水素、C1〜C12アルキル、およびC5〜C14アリールから独立して選択され、そして好ましくは、水素、低級アルキル、フェニル、およびベンジルから選択され、そしてここで、R19およびR20は、一緒になってカルボニル基を形成し得;
R21は、水素、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;
eは0または1であり、fはeが1の場合、配位結合であり、そしてfはeが0の場合、共有結合であり、但し、R21が水素の場合、eは0およびfは共有結合であり;
Spは−CR222−、−CR222−CR222−、−O−、−S−、−NR22−、−BR22−、−C(O)−、およびそれらの組み合わせから選択され、ここでR22は、水素、低級アルキルまたはC5〜C14アリールであり、但し、Spは隣接する炭素原子の間に2原子より多く導入せず;そして
gは0または1であり、
ここでR17、R18、R19、R20、およびR21の少なくとも1つは、好ましくは少なくともR21が安定化基S*で置換される。
【0083】
好ましいこのような錯体において:Ar1はシクロペンタジエニル、1、2、3、または4個の低級アルキル置換基で置換されたシクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、およびインドリルであり;M4は4族であり;R16は、C1〜C12アルキルまたはC2〜C12アルケニルである。
【0084】
特に好ましいこのような錯体において:Ar1はシクロペンタジエニル、1、2、3、または4個の低級アルキル置換基で置換されたシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル、またはフルオレニルであり;M4は、Ti、Zr、およびHfから選択され;そしてR16は低級アルキルまたは低級アルケニルである。
【0085】
式(XI)の構造を有する触媒の合成は、Wilson Jr.らに対する米国特許第6,048,992号および第6,369,253号(両方ともSRI International(Menlo Park,CA)に譲渡された)で述べられた方法論を使用して生じ得る。
【0086】
(オレフィンモノマー)
前述の節で説明のあった遷移金属錯体は、官能基化オレフィンモノマーおよび、必要に応じて官能基化され得るか、またはされ得ないオレフィンコモノマーが関与する挿入重合反応を介したオレフィンの重合の触媒として有益である。官能基化オレフィンモノマーは、構造R23R24C=CR25(−[Ln]s−Fn)を有し、ここで、R23、R24、およびR25は、水素またはヒドロカルビルであり、好ましくは水素または低級ヒドロカルビルである。好ましくは、R23およびR24が水素、そしてR25が低級アルキルであり、そして最も好ましくは、R23、R24、およびR25が全て水素である。Fnは以下で述べる官能基であり、Lnは1原子〜6原子の結合であり、好ましくはC1〜C4ヒドロカルビルまたはC1〜C4ヘテロ原子含有ヒドロカルビルであり、sは0または1であり、その結果、結合は任意である。
【0087】
官能基Fnは、例えば、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、モノ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、ジ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、C2〜C20アルキルアミド、C6〜C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、またはアリールイミノであり得る。好ましい官能基は、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、およびC6〜C20アリールカルボニルオキシを包含する。例示的な官能基化オレフィンモノマーは、酢酸ビニルおよび低級アルキルビニルエーテル(例えば、ブチルビニルエーテル)を包含する。
【0088】
官能基化オレフィンモノマーは、環状基でもあり得、この場合、官能基は、(a)オレフィン炭素原子への結合部分Ln介して、または(b)直接的に、または環状構造に含まれる非オレフィン炭素原子への結合部分Lnを介して、モノマーに結合する。
【0089】
オレフィンコモノマーは、官能基化オレフィンと共重合し得、以下を包含する:直鎖状、または分枝鎖状オレフィン(例えば、エチレン、ポリプロピレン、1−ブテン、3−メチル1−ブテン、1,3−ブタジエン、1−ペンテン、4−メチル1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル1−ヘキセン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1−オクテン、1,6−オクタジエン、1−ノネン、1−デセン、1,4−ドデカジエン、
1−ヘキサデセン、および1−オクタデセン)。シクロオレフィンおよびジオレフィンもまた、使用され得;このような化合物は、例えば、シクロペンテン、3−ビニルシクロヘキセン、ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−ビニルベンゾシクロブタン、テトラシクロドデセン、ジメタノ−オクタヒドロナフタレン、および7−オクテニル−9−ボラビシクロ−(3,3,1)ノナンを包含する。新規のメタロセンを使用して重合され得る芳香族モノマーは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−フルオロスチレン、インデン、4−ビニルビフェニル、アセナフタレン、ビニルフルオレン、ビニルアントラセン、ビニルフェナントレン、ビニルピレン、およびビニルクリセンを包含する。
(触媒系の調製)
本発明の重合反応を行う上で、本明細書中で重合触媒として述べられる遷移金属錯体は、必ずではないが、好ましくは、錯体の電気的に中性な金属中心を、カチオンに変換する触媒活性化剤と組合わせて使用され、これにより錯体がカチオンまたは双性イオンとなる。このように、重合の前、または重合中、重合触媒として選択された遷移金属錯体は、そのような活性化剤を含む触媒系に組み込まれることが好ましい。適切な触媒活性化剤は、代表的には、イオン性共触媒といわれるものがあり;このような化合物は、例えば、フルオロヒドロカルビルボロン化合物(例えば、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレートナトリウム、H+(OCH2CH3)2[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)−フェニル]ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリフルオロメタンスルホネート)、およびBF4−、Ph4B−(Ph=フェニル)、p−トルエンスルホネート、SbF6−、およびPF6−の塩または酸を包含する。活性化剤の混合物が、所望ならば、使用し得る。
【0090】
液状重合またはスラリー重合のために、触媒および活性化剤は、一般的には、これらが溶解している不活性な希釈剤(例えば、脂肪族または芳香族炭化水素(例えば、液化されたエタン、プロパン、ブタン、イソブタン、n−ブタン、n−ヘキサン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロへプタン、メチルシクロへプタン、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、ケロセン、Isopar(登録商標) M、Isopar(登録商標) E、および、これの混合物))の存在下で混合される。重合過程でモノマーまたはコモノマーとして機能する、液体オレフィンなどは、希釈剤としても機能し得;このようなオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、1−ヘキセンなどを包含する。希釈剤中の触媒量は、一般的には、添加される活性化剤により、約0.01〜1.0mmole/リットルの範囲であり、触媒の活性化剤に対する比は、モル換算で、約10:1〜1:2000の範囲であり、好ましくは、約1:1〜約1:200の範囲である。
【0091】
触媒/活性化剤/希釈剤混合物の調製は、通常は、無水条件下、無酸素で、約−90℃〜約300℃の範囲の温度で、好ましくは、約−10℃〜約200℃の範囲で行う。
【0092】
触媒、活性化剤および希釈剤は、適切な反応容器内に添加され、任意の順序で、しかし上に記述したように、通常は、触媒および活性化剤を希釈剤中で混合し、このように調製される混合物が反応容器に添加される。
(重合)
本発明に沿った重合は、単数および複数のモノマー、触媒、および任意の触媒活性化剤の、適切な温度、減圧、加圧または大気圧下で、不活性大気中で、所望のポリマー組成物を生成するのに有効な時間接触させることにより行われる。触媒は、適切な支持体として使用され得るか、または支持体上に支持されて使用され得る。ある実施形態では、遷移金属錯体は、均質な触媒(すなわち、ガス相または液相中の重合工程における非支持触媒)として使用される。溶媒は、所望ならば、使用され得る。反応は、液状またはスラリー条件下、過フッ化炭化水素または同様の液体を用いた懸濁物中で、ガス相で、または固相粉末重合で実施され得る。
【0093】
液相重合は、一般的には、重合希釈剤中のモノマーと触媒/活性化剤混合物との接触を包含しており、重合条件下、すなわち、所望のポリマー生成物を生成するのに十分な時間および温度で反応させる。重合は、窒素、アルゴンなどのような不活性な雰囲気下、または減圧下で行われ得る。好ましくは、重合は、反応しているモノマーの部分圧が最大になる雰囲気下で行われる。液相重合は、減圧、加圧、大気圧下で行われ得る。添加溶媒が無い、すなわち、オレフィンモノマーが希釈剤としても機能する場合、加圧下が好ましい。代表的には、溶媒が無い状態での高圧重合は、0℃〜300℃の範囲の温度で行われ、好ましくは、50℃〜200℃の範囲、そして圧力はおよそ1〜5000気圧のオーダー、代表的には約10〜500気圧の範囲である。溶媒が加えられる場合は、重合は、一般的には、約0℃〜200℃の範囲の温度で行われ、好ましくは約50℃〜約100℃の範囲、圧力は10〜500気圧のオーダーである。
【0094】
重合は、ガス相(例えば、流動層または撹拌層リアクター内)で、およそ60℃〜120℃の範囲の温度、および、圧力はおよそ10〜1000気圧の範囲で行われ得る。
【0095】
ガス相重合およびスラリー重合では、触媒は、不均質の工程、すなわち、不活性無機基材上で支持されて、使用される。従来の材料は支持として使用され、そして代表的には、微粒子で、多孔性の材料であり;例としては、ケイ素およびアルミニウムの酸化物、またはマグネシウムおよびアルミニウムのハロゲン化物である。商業的観点から特に好ましい支持体は、二酸化ケイ素および二塩化マグネシウムである。
【0096】
前述した反応から得られたポリオレフィンは、濾過または別の適切な技術により、回収され得る。所望するならば、添加物および補助薬は、重合の前、最中、または後に、ポリマー組成物中に組み込まれ得;このような化合物は、例えば、色素、酸化防止剤、潤滑剤、および可塑剤を含み得る。
【0097】
本発明は、好ましい特定の実施形態と組合わせて記載されてきたが、前述の説明ならびに例としての以降の例は、説明を意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。本発明の範囲内の他の局面、利点および改変は、、本発明が関する当業者に対して明らかである。
【実施例】
【0098】
(実験)
全ての無機反応および有機反応を、標準のSchlenkおよびドライボックス技術を使用して実行した。アルゴンを、BASF R3−11触媒および4−Å分子ふるいのカラムを通すことによって精製した。窒素を、4−Å分子ふるいを通すことによって精製した。NMRスペクトルを、Varian Gemini300分光計を用いて記録した。
【0099】
他に特定されない限り、全ての試薬を業者から購入し、そしてさらなる精製をせずに使用した。エチレンを、BASF R3−11触媒および4−Å分子ふるいのカラムを通すことによって精製した。トルエンおよびヘプタンを、BASF R3−11触媒および4−Å分子ふるいのカラムを通すことによって精製した。クロロベンゼンを、窒素下、P2O5から蒸留した。ジエチルエーテル、ブチルビニルエーテル、およびベンゼン−d6を、ナトリウム/ベンゾフェノンで乾燥させ、そして減圧下に移した。塩化メチレン−d2を、CaH2で乾燥させ、減圧下に移した。(1,5−COD)PdMeCl(1,5−COD=1,5−シクロオクタジエン、Me=メチル)を、文献の手順に従って調製した。Rulkeら(1993)Inorg.Chem.32:5769。代表的な錯体を調製する手順を、以下に記載する。
【0100】
以下の実施例において、次の慣習を使用して、配位子および触媒を命名する。N,N−ジアリール置換ジイミン配位子ジアザブタ−1,3−ジエンを、「DAD」といい、一方、N−アリール置換ピリジルイミン配位子を、「pyim」という。以下の「DAD」は、ジイミン構造の2つの炭素原子上の基の識別子であり、それに続くジイミン窒素原子の各々に結合した芳香族基上の置換である。従って、DAD(Me)(m−OH)は、構造Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arを有する配位子をいい、ここで、各Ar基は、ヒドロキシ基によってメタ−置換される。配位子が金属錯体に組み込まれるとき、DAD(Me)(m−OH)PdCl2の場合には、用語は、配位子の後に、金属、次いでアニオンが続く。pyim配位子および錯体を参照するために、類似の技術を使用する。
【0101】
(実施例1)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、ルイス酸置換基OSn(CH3)3で置換されたアリ−ル基を有する、N,N−ジアリール置換ジイミン配位子を含有するパラジウム(II)触媒の合成を記載する。この合成を、図1に記載する。
【0102】
((a)配位子前駆体m−アミノメシトールの調製)
250mLの丸底フラスコに、2,4,6−トリメチルアニリン(メシジン(mesidine)、11.88mL、84.62mmol)およびピリジン(50mL)を充填した。この混合物に、ピリジン(50mL)中、p−塩化トルエンスルホニル(16.13g、84.62mmol)の溶液を添加し、この反応混合物を、17時間にわたって室温にて攪拌した。この反応混合物を、37% HCl(125ml)を含む酸性の氷水(800mL)に注いだ。この混合物を、3時間、0℃に冷却し、黄色固体を沈殿させた。この黄色固体を、濾過によって回収し、そして5% NaOH(18L)に溶解した。この混合物のpHが5に達するまで、この溶液に、37% HCl(1850mL)を添加した。得られた白色沈殿物を、回収し、水(800mL)で洗浄し、次いで真空中で乾燥させ、N−(p−トルエンスルホニル)−2,4,6−トリメチルアニリン(N−(p−トルエンスルホニル)メシジン)(21.73g、89%)を得た。1H NMR(300MHz、CDCl3):δ7.6(d,2H),7.2(d,2H),6.8(s,2H),5.9(s,1H),2.4(s,3H),2.3(s,3H)2.0(s,3H)。
【0103】
500mLの丸底フラスコに、上で調製したようなN−(p−トルエンスルホニル)メシジン(19.7g、67.9mmol)、酢酸(30mL)、およびCHCl3(400mL)を充填した。混合物を、5分間攪拌し、N−(p−トルエンスルホニル)メシジンを溶解した。この溶液に、Pb(OAc)4(32g、68.4mmol)を添加し、この反応混合物を、24時間にわたって室温で攪拌した。得られた褐色混合物を、水(1L)に注いで、激しく振盪させ、次いでセライトに通して濾過し、黄色濾液を得た。この濾液を、5% NaOH(水溶液、3×150mL)で洗浄し、乾固するまでエバポレートし、黄色固体を得た。400mLの熱EtOHからの再結晶化により、3−アセトキシ−N−p−トルエンスルホニルメシジン(9.89g、42%)の黄色針状物を得た。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ7.8(d,2H),7.4(d,2H),6.8(s,1H),5.9(s,1H),2.4(s,3H),2.1(s,3H),1.85(s,3H),1.80(s,3H)、および1.64(s,3H)。
【0104】
250mLの丸底フラスコに、濃H2SO4(50mL)を充填し、−20℃まで冷却した。3−アセトキシ−N−p−トルエンスルホニルメシジン(9.89g、28.5mmol)を、このフラスコに1時間にわたってゆっくりと添加し、茶色溶液を得た。この溶液を、0℃で8時間攪拌し、そして−25℃で16時間保存した。この溶液を、約100mLの氷に注ぎ、得られた茶色−白色混合物を、室温で3時間攪拌した。茶色濾液を、ガラスフリットに通して濾過することによって回収し、28%水酸化アンモニウム(約120mL)でpH7に中和した。次いで、この混合物を、16時間にわたって10℃まで冷却した。灰色沈殿物を回収し、真空中で乾燥させ、次いで200mLのCHCl3で抽出した。茶色抽出物をエバポレートして、淡茶色固体として、m−アミノメシトール(1.62g、38%)を得た。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ7.6(s,1H),6.5(s,1H),4.2(s,1H),2.0(s,3H),1.95(s,3H)、および1.94(s,3H)。
【0105】
((b)Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arの合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(Me)(m−OH)」;化合物1))
100mLのSchlenkフラスコに、m−アミノメシトール(700mg、4.63mmol)、メタノール(50mL)、および88%蟻酸(0.24mL)を充填した。この混合物に、2,3−ブタジオン(0.20mL、2.3mmol)を、シリンジによって添加し、次いでこの反応混合液を、6時間還流して攪拌し、乾固するまでエバポレートしてオレンジ色固体1を得た。この固体を、乾燥ペンタン(50mL)で洗浄し、真空中で乾燥させた(0.61g、75%)。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ8.0(s,2H),6.8(s,2H),2.1(s,6H),1.9(s,6H)、および1.8(s,6H)。1H NMR(300MHz、CD2Cl2):δ6.8(s,2H),4.7(br,2H),2.2(s,6H),2.0(s,6H)、および1.9(s,6H)。
【0106】
((c)Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arの合成、Ar=カリウム2,4,6−トリメチル−3−フェノキシド(「DAD(Me)(m−O−)(K+)」;化合物2))
1の赤色溶液(299mg、0.848mmol)に、KN(SiMe3)2溶液を滴下し、不均質の黄色/茶色混合物を得た。この混合物を、室温で17時間にわたって攪拌した。黄色/茶色固体を、濾過によって回収し、そしてTHF(3×3mL)で洗浄し、次いで真空中で乾燥させた。収量は、405mgであり、生成物2は、0.6当量のTHFを含んだ。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ6.4(s,2H),3.4(m,0.6当量のTHF),1.9,1.7、および1.6(重複 s、合計24H)、1.8(m,0.6当量のTHF)。
【0107】
((d)Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arの合成、Ar=(2,4,6−トリメチル−3−フェノキシ)トリメチルスズ(「DAD(Me)(m−OSnMe3)」;化合物3))
Et2O(5mL)中、塩化トリメチルスズ(74mg、0.371mmol)の溶液を、Et2O(5mL)中、2(80mg、0.186mmol)の溶液に滴下し、そして混合物を、室温で3日間攪拌した。3時間以内に、黄色溶液は、不均質な黄色混合物になった。黄色/白色固体3を、濾過によって回収し、真空中で乾燥させた(42mg、33%)。1H NMR(300MHz、CD2Cl2):δ6.8(s,2H),2.1,1.96,1.9および1.8(重複s,合計24H),0.46(s,18)。
【0108】
((e)[Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar]PdMeClの合成、Ar=(2,4,6−トリメチル−3−フェノキシ)トリメチルスズ(「DAD(Me)(m−OSnMe3)PdMeCl」;化合物4))
5mLのCH2Cl2中、冷却した(−30℃)3(20mg、0.03mmol)の溶液に、5mLのCH2Cl2中、(1,5−COD)PdMeCl(8mg、0.03mmol)の冷却した溶液を滴下した。この反応混合物を、室温で17時間攪拌した。この混合物を、乾固するまでエバポレートして、オレンジ色固体4を得た(30mg)。1H NMR(300MHz、CD2Cl2):δ6.92および6.88(s,2H),5.6および2.4(CODなし),2.15,2.07,2.01,1.96,1.93(重複 s、合計24H),0.5(s,18H),0.27(s,3H)。
【0109】
(実施例2)
(代表的な触媒合成)
([Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar]PdCl2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(Me)(m−OH)PdCl2」;化合物5))
参照した錯体を、以下のように図2に記載した反応スキームを使用して合成した。20mLのバイアルに、1、(1,5−COD)PdCl2(78mg、0.28mmol)、および5mLのTHFを充填し、そして得られたオレンジ色スラリーを、室温で16時間にわたって攪拌した。このオレンジ色固体をフリットで回収し、次いでCH2Cl2(10mL)に懸濁した。このスラリーを、1時間攪拌し、次いでオレンジ色粉末をフリットに回収し、そして真空中で乾燥させ、生成物5を得た(0.090g、61%)。1H NMR(300MHz、THF−d8):δ7.27(s,2H),6.81(s,2H),2.19,2.16,2.15(重複 一重項,合計18H),2.06(s,6H)。
【0110】
(実施例3)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、図3に示されるような、本明細書中で触媒または触媒前駆体として適切な、別のパラジウム(II)錯体の合成を記載する。
【0111】
((a)Ar−N=C(H)−C(H)=N−Arの合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(H)(m−OH)」;化合物6))
MeOH(5mL)中、グリオキサール(40重量%水溶液、70mg、0.482mmol)溶液に、MeOH(10mL)中、m−アミノメシトール(146mg、0.968mmol)の溶液を添加した。得られた均質なオレンジ色/黄色混合物を、室温で17時間にわたって攪拌した。この反応混合物を、エバポレートし、60℃で乾燥させて、黄色固体を得た。ジエチルエーテルからの再結晶化により、黄色針状物(6mg)として所望の生成物6を得た。この黄色濾液を乾固するまでエバポレートして黄色粉末(118mg)を得た。これらの生成物を合わせて、総収量124mg(78%)を得た。1H NMR(300MHz、CDCl3):δ8.0(s,2),6.9(s,2,H),4.7(s,2),2.2,2.07、および2.06(全てs、合計18H)。
【0112】
((b)[Ar−N=C(H)−C(H)=N−Ar]PdCl2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(H)(m−OH)PdCl2」;化合物7))
20mLのバイアルに、6(95mg、0.286mmol)、(1,5−COD)PdCl2(81mg、0.284mmol)、および10mLのCH2Cl2を充填した。室温で3日間攪拌した後、この混合物は、黄色溶液から茶色スラリーに変化した。この茶色固体を、ガラスフリットに回収し、CH2Cl2で洗浄し、次いで真空中で乾燥させ、茶色粉末(104mg、73%)を得た。1H NMR(300MHz、DMSO):δ8.33(s,2H),8.17(s,2H),6.82(s,2H),2.18(s,6H),2.17(s,6H),2.14(s,6H)。
【0113】
(実施例4)
(代表的な触媒合成)
([Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar]NiBr2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(Me)(m−OH)NiBr2」;化合物8))
参照した錯体を、下記のとおり、図4に記載した反応スキームを用いて合成した。20mLのバイアルに、1(50mg、0.14mmol)、(DME)NiBr2(DME=1,2−ジメトキシエタン)(42mg,0.14mmol)、および5mLのTHFを充填し、そして茶色スラリーを、16時間にわたって室温で攪拌した。この茶色固体を、フリットに回収し、CH2Cl2(10mL)で洗浄して、次いで真空中で乾燥させて8(0.038g、48%)を得た。
【0114】
(実施例5)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、図5に記載するようなピリジルイミン(「pyim」)配位子を含有する遷移金属錯体の合成を記載する。
【0115】
((a)Ar−N=C(H)−2−ピリジンの合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「pyim(m−OH)」;化合物9))
250mLの丸底フラスコに、3−アミノ−2,4,6−トリメチルフェノール(0.96g、6.3mmol)、ピリジンカルボキシアルデヒド(0.68g、6.3mmol)、およびメタノール(75mL)を充填した。この混合物を、16時間攪拌した。黄色溶液を、乾固するまでエバポレートした。この固体を、トルエン(2×10mL)で洗浄し、そして真空中で乾燥させて、黄色粉末9(1.4g、91%)を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ8.69(d,1H),8.27(d,1H),8.24(s,1H),7.85(t,1H),7.41(dd,1H),6.84(s,1H),4.92(br,1H),2.21(s,3H),2.04(s,3H),2.03(s,3H)。
【0116】
((b)Ar−N=C(H)−2−ピリジンの合成、Ar=カリウム2,4,6−トリメチル−3−フェノキシド(「pyim(m−O−)(K+)」;化合物10))
バイアルに、9(0.25g、1.03mmol)およびジエチルエーテル(5mL)を充填した。ジエチルエーテル(5mL)中、ヘキサメチルジシラジドカリウム(0.206g、1.03mmol)を添加すると、この混合物はオレンジ色スラリーになった。この溶液を、2時間攪拌し、次いで−30℃に冷却した。オレンジ色固体を、ガラスフリットに回収し、真空中で乾燥させた(0.254g、88%)。1H NMR(300MHz、DMSO):δ8.65(d,1H),8.16(d,1H),8.08(s,1H),7.91(t,1H),7.45(m,1H),6.41(s,1H),1.90(s,3H)1.87(s,3H),1.78(s,3H)。
【0117】
((c)Ar−N=C(H)−2−ピリジンの合成、Ar=B−(2,4,6−トリメチル−3−フェノキシ)カテコールボラン(「pyim(m−OBcat)」;化合物11))
バイアルに、10(0.131g、0.47mmol)およびCH2Cl2(5mL)を充填し、そして−30℃に冷却した。CH2Cl2(5mL)中、B−クロロカテコールボラン(0.072g、0.47mmol)の冷却した(−30℃)溶液を添加すると、この混合物は、赤−オレンジ色スラリーから黄褐色溶液に変化した。この混合物を、室温まで温め、1時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートして、黄色固体を得た。この溶液を、CH2Cl2で抽出し、セライトに通して濾過し、次いで乾固するまでエバポレートして、黄−緑色粉末11(これは、熱感受性に起因して−30℃で保存した)(0.138g、82%)を得た。1H NMR(300MHz、CD2Cl2):δ8.74(d,1H),8.50(s,1H),8.37(d,1H),7.98(t,1H),7.52(t,1H),7.13(m,2H),7.06(m,2H),7.00(s,1H),2.22(s,3H),2.15(s,3H),2.06,(s,3H)。
【0118】
((d)11のメタレーション)
先の節で調製した配位子11は、任意の適切なメタレーション試薬および本明細書中に記載される手順を用いてメタレーションされ得る。好ましいパラジウム試薬としては、(1,5−COD)PdMeCl、(1,5−COD)PdCl2、(1,5−COD)PdMe2、および(1,5−COD)Pd(CH2SiMe3)2が挙げられるが、一方、好ましいニッケル試薬は、(DME)NiBr2であり、そして好ましい亜鉛試薬は、アリールエチル亜鉛化合物(例えば、フェノキシエチル亜鉛(EtZnOPh)である。(1,5−COD)PdMeCl、(1,5−COD)PdCl2、および(DME)NiBr2は、業者から得られ得、そして(1,5−COD)Pd(CH2SiMe3)2の合成を、以下の実施例8に記載する。他のメタレーション試薬を以下のとおり合成した:
(1,5−COD)PdMe2:100mLのSchlenkフラスコに、(1,5−COD)PdMeCl(263mg、0.996mmol)およびジエチルエーテル(30mL)を充填し、次いで−78℃に冷却した。臭化メチルマグネシウム(0.8mLの1.5Mトルエン/THF溶液、1.2mmol)を滴下し、反応混合液を、−78℃で3時間にわたって攪拌した。この溶媒を、−30℃で取り除き、灰色固体を得た。この固体を、冷却したペンタン(−30℃、3×30mL)で抽出し、この抽出物を、セライトに通して濾過し、無色液体を得た。この液体を、−30℃でエバポレートし、灰色粉末(73mg、30%)を得た。
【0119】
EtZnOPh:ドライボックスにおいて、100mLのSchlenkフラスコに、Et2O(30mL)を充填し、そして−78℃に冷却した。ジエチル亜鉛(9.0mLの1.0Mヘキサン溶液、9.0mmol)をシリンジによって添加した。フェノール(Et2O(10mL)中、0.847gのフェノール)溶液を、このSchlenkフラスコに添加し、そして無色反応混合物を、−78℃で1時間攪拌した。この混合物をエバポレートして、白色固体(1.593g、94%)を得た。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ7.1,6.6(m,5H),1.2(t,3H),0.1(m,2H)。
【0120】
(実施例6)
(代表的な触媒合成)
([Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar]PdMeClの合成、Ar=2,4,6−(トリメチル−3−カテコールボラン)(「DAD(Me)(m−O−Bcat)PdMeCl」;化合物13))
参照した錯体を、以下のとおり、図6に記載した反応スキームを用いて合成した。実施例5の(c)部に記載したように、B−クロロカテコールボランとの反応によって、化合物1から触媒を調製し、ボラン−置換配位子12(Ar−N=C(Me)−C(Me)−N−Ar、Ar=2,4,6−(トリメチル−3−カテコールボラン)(「DAD(Me)(O−Bcat)」)を得た。この生成物を、先の実施例に記載するように単離し、次いで実施例1の(e)部に記載したように(1,5−COD)PdMeClを用いてメタレーションし、所望の生成物13を得た。
【0121】
(実施例7)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、図7に記載するような、ピリジルイミン(「pyim」)配位子を含有する別の遷移金属錯体の合成を記載する。
【0122】
((a)Ar−N=C(H)−2−ピリジンの合成、Ar=2−ヒドロキシフェニル(「pyim(o−OH)」;化合物14))
250mLの丸底フラスコに、2−アミノフェノール(3.15g、28.9mmol)、2−ピリジンカルボキシアルデヒド(3.14g、29.3mmol)、およびメタノール(75mL)を充填した。この混合物を、15時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートして、黄褐色固体(5.20g、91%)として14を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ8.84(s,1H),8.70(br,1H),8.18(d,1H),7.80(t,1H),7.62(br,1H),7.39(m,2H),7.25(t,1H),7.04(d,1H),6.95(t,1H)。
【0123】
((b)[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]PdCl2、Ar=2−ヒドロキシフェニル(「pyim(o−OH)PdCl2」;化合物15))
ドライボックスにおいて、20mLのバイアルに、14(0.20g、1.0mmol)、(1,5−COD)PdCl2(0.29g、1.0mmol)およびCH2Cl2(10mL)を充填した。この混合物を、24時間攪拌し、そしてこの溶液を、黄褐色沈殿物からデカントした。この固体を、トルエン(2×5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させ、黄褐色粉末(0.30g、79%)として15を得た。1H NMR(DMSO−d6):δ10.05(br,1H),9.05(d,1H),8.73(s,1H),8.39(t,1H),8.20(d,1H),7.97(t,1H),7.19(m,2H),6.92(d,1H),6.83(t,1H)。
【0124】
(実施例8)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、図8に記載するような、ピリジルイミン(「pyim」)配位子を含有する別の遷移金属錯体の合成を記載する。
【0125】
(メタレーション試薬(1,5−COD)Pd(CH2SiMe3)2の合成(化合物16))
100mLのSchlenkフラスコに、(1,5−COD)PdCl2(200mg、0.701mmol)および30mLのEt2Oを充填し、そして−78℃に冷却した。トリメチルシリルメチルリチウム(1.4mLの1Mペンタン溶液、1.4mmol)を、Et2O(10mL)で希釈した。得られた溶液を、カニューレによってSchlenkフラスコに添加し、そしてこの反応混合物を、−78℃にて1.5時間攪拌した。次いでこの溶媒を、−30℃で取り除き、茶色固体(74mg、27%)として16を得た。1H NMR(300MHz、C6D6):δ5.1(m,4H),1.9(m,8H),0.8(s,4H),0.3(s,18H)。
【0126】
((b)[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH2SiMe3)2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル)(「pyim(m−OH)Pd(CH2SiMe3)2」;化合物17))
ドライボックスにおいて、100mLの丸底フラスコに、16(0.30g、0.77mmol)およびジエチルエーテル(15mL)を充填した。この混合物を、−30℃に冷却し、次いで、実施例5の(a)部に記載したように合成した、配位子9(0.19g、0.77mmol)を、ジエチルエーテル溶液(5mL)として滴下した。この混合物を、室温まで温めると、次いで暗赤色に変化した。この混合物を、2時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートして、赤色油状固体を得た。この固体を、ヘプタン(10mL)に溶解し、そしてセライトに通して濾過し、次いで乾固するまでエバポレートした。この固体を、ヘプタンから再結晶化して、赤色結晶(多重フラクション、0.98g,25%)を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ8.82(d,1H),8.32(s,1H),8.04(t,1H),7.70(m,2H),6.91(s,1H),4.80(br,1H),2.25(s,3H),2.16(s,6H),0.19(s,2H),−0.03(s,9H),−0.22(s,9H),−0.30(s,2H)。
【0127】
(実施例9)
(代表的な触媒合成)
([Ar−N=C(H)−2−ピリジン]PdCl2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「pyim(m−OH)PdCl2」化合物18))
以下のとおり、図9に記載した反応スキームを使用して、参照錯体を合成した。ドライボックスにおいて、20mLのバイアルに、実施例5の(a)部に記載したように合成した、配位子9、(0.200g、0.825mmol)、(1,5−COD)PdCl2(0.235g、0.823mmol)、およびCH2Cl2(10mL)を充填した。この混合物は、オレンジ色沈殿物をともなってオレンジ色になった。このスラリーを16時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートし、黄色粉末を得た。この粉末を、トルエン(2×10mL)およびCH2Cl2(10mL)で洗浄した。この粉末を、ガラスフリットに回収し、そして真空中で乾燥させて、18(0.277g、80%)を得た。1H NMR(DMSO−d6):δ9.06(d,1H),8.59(s,1H),8.42(t,1H),8.32(s,1H),8.16(d,1H),7.99(t,1H),6.82(s,1H),2.14(s,6H),2.12(s,3H)。
【0128】
(実施例10)
(本発明のPd/Sn触媒を使用する重合)
以下の一般的な手順を、図10に記載したように、重合触媒としてDAD(Me)(m−OSnMe3)Pd−BAF 19を使用するオレフィンモノマーの重合に用いた:塩化メチレン(150mL)を、300mLガラス反応器に入れ、次いでフラッシュし、15psigの圧力までエチレンを充填した。この溶液を、室温で15分間平衡化し、次いで、実施例1に記載したとおりに合成した、触媒4(約0.01mmol)の溶液、およびCH2Cl2(10mL)中の極性モノマーを添加した。CH2Cl2(10mL)中、NaBAF(1等量)の溶液を、アルゴン過剰圧力で反応器に注入してインサイチュで活性触媒19を形成し、重合を開始した。所望の期間後、アリコートを除去し、乾固するまでエバポレートした。サンプルを秤量し、1H NMRによって分析した。選択されたモノマーが、エチレンおよびBVEであった場合、NMRスペクトルは、生成物中のポリエチレンの存在を確認し、そしてこの触媒が、現在のBrookhart触媒(DAD(Me)Pd−BAF)で観察されるのと比べて、相対的に低い濃度のBVEで驚くべき耐性を有することが見出された。エチレンおよび酢酸ビニルをモノマー反応物として選択した場合に、同様のことが観察された。
【0129】
(実施例11)
(本発明の双性イオンPd/Al触媒を用いる重合)
以下の一般的な手順を、重合触媒としてDAD(Me)(m−OAlMe2)Pd−zwit 20を使用するオレフィンモノマーの重合に用いた:ドライボックスにおいて、20mLのバイアルに、1−ヘキセン(0.7g)、実施例2に記載したように合成した触媒5(0.004g)、およびトルエン(2mL)を充填した。このスラリーを攪拌し、AlM2Cl(15mL、2当量)を、シリンジによって添加し、インサイチュで触媒20を形成した。この混合物は、黄色で、不均質になった。極性モノマー(0.2g)を添加し、そして混合物を、16時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートした。得られたポリマーを、秤量し、1H NMRによって分析した。いくつかの場合において、このポリマーを、トルエンに再溶解し、そしてNMR分析の前にアセトンで沈殿させた。
【0130】
選択されたモノマーが、1−ヘキセンおよびBVEであった場合、NMRスペクトルは、生成物中のポリへキセンおよびポリ(BVE)の存在を確認した。
【0131】
(実施例12)
(本発明のカチオン性Pd/Al触媒を使用する重合)
以下の一般的な手順を、図12に記載したように、重合触媒としてDAD(Me)(m−OAlMe2)Pd−BAF 21を使用するオレフィンモノマーの重合に用いた:ドライボックスにおいて、20mLのバイアルに、1−ヘキセン(0.7g)、化合物5(0.004g)、およびトルエン(2mL)を充填した。スラリーを攪拌し、そしてAlMe2Cl(15μL、2当量)を、シリンジによって添加した。この混合物は、黄色で、均質になった。5分後、HBAF(0.008g、1当量)を添加すると、この混合物は、赤−茶色に変わり、インサイチュで触媒21を形成した。さらに5分後、極性モノマー(0.2g)を添加し、そしてこの混合物を16時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートした。得られたポリマーを、秤量し、1H NMRによって分析した。NMRスペクトルは、実施例11の重合反応において使用された双性イオンPd/Al触媒の場合と同じように、生成物中のポリへキセンおよびポリ(BVE)の存在を確認した。
【0132】
(実施例13)
(本発明の双性イオンNi/Al触媒を使用する重合)
図13に記載するように、重合触媒としてDAD(Me)(m−OAlMe2)Ni−zwit 22を用いて、実施例11の手順を繰り返した:本実施例において、触媒8を、触媒5の代わりに使用した。反応器へのAlMe2Clの添加の際、活性触媒22がインサイチュで形成されることが理解される。得られた重合生成物を秤量し、1H NMRによって分析した。NMRスペクトルは、実施例11の重合反応において使用された双性イオンPd/Al触媒の場合と同じように、生成物中のポリへキセンおよびポリ(BVE)の存在を確認した。
【0133】
(実施例14)
(本発明のカチオン性Ni/Al触媒を使用する重合)
図14に記載するように、重合触媒としてDAD(Me)(m−OAlMe2)Ni−BAF 23を用いて、実施例12の手順を繰り返した:本実施例において、触媒8を、触媒5の代わりに使用した。反応器へのAlMe2ClおよびHBAFの添加の際、活性触媒23がインサイチュで形成されることが理解される。1H NMRスペクトルは、生成物中のポリへキセンおよびポリ(BVE)の存在を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、本発明の代表的なPd(II)触媒の合成を模式的に示しており、ここで、α−ジイミン配位子は、実施例1に記載されるように−OSn(CH3)3安定化基で置換されている。
【図2】図2は、実施例2で述べた、本発明の別のPd(II)触媒の合成をを模式的に示している。
【図3】図3は、本発明の類似Pd(II)触媒の合成を模式的に示しており、ここで、α−ジイミン配位子の隣接する炭素原子は、実施例3に記載されるように、メチル基で置換され以外は非置換である。
【図4】図4は、本発明の代表的なNi(II)触媒の合成を模式的に示しており、ここで、α−ジイミン配位子は、実施例4に記載されるように、ヒドロキシル基で置換される。
【図5】図5は、本発明の別の代表的な触媒の合成を模式的に示しており、ここで、ピリジルイミン配位子は、実施例5に記載されるように、−O−カテコールボラン安定化基で置換される。
【図6】図6は、Pd(II)触媒の合成を模式的に示しており、これは、実施例6に記載されるように、α−ジイミン配位子が、−O−カテコールボラン安定化基で置換される。
【図7】図7は、実施例7に記載されるように、ヒドロキシル置換ピリジルイミン配位子を持つ、本発明のPd(II)触媒の合成を模式的に示している。
【図8】図8は、実施例8に記載されるように、本発明の類似のPd(II)触媒の合成を模式的に示すが、一価の配位子が−CH2−Si(CH3)3基である。
【図9】図9は、本発明の類似Pd(II)触媒の合成を模式的に示すが、実施例9に記載されるように、それぞれの一価の配位子が塩素原子である。
【図10】図10は、実施例10のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、カチオン性Pd(II)/Sn錯体は、重合触媒として使用されている。
【図11】図11は、実施例11のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、双イオン性Pd(II)/Al錯体は、重合触媒として使用されている。
【図12】図12は、実施例12のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、カチオン性Pd(II)/Al錯体は、重合触媒として使用されている。
【図13】図13は、実施例13のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、双イオン性Ni(II)/Al錯体は、重合触媒として使用されている。
【図14】図14は、実施例14のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、カチオン性Ni(II)/Al錯体は、重合触媒として使用されている。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的なオレフィンの重合における、触媒としての有機金属錯体の単一部位への使用に関する。より詳しくは、本発明は、1以上の官能基により置換したオレフィンの重合における遷移金属錯体の使用に関する。本発明はさらに、前述の方法に有用な、新規の遷移金属錯体および触媒系に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
エチレン−ビニルアルコール(EVOH)およびポリ(ビニルアルコール)(PVOH)の商業的な有用性により、洗練された、官能基により置換された直鎖のポリマー作製への興味に、一部では拍車がかかっている。EVOHおよびPVOHは、ガスおよび炭化水素に対して非常に良好なバリヤー性を示し、食物の包装、生物医学用および製薬産業での用途が見出されている。Lagaronら、(2001)Polym.Testing 20:569〜577、およびRamakrishnan、(1991)Macromolecules 24:3753〜3759を参照のこと。ポリマーは、特別な化学的抵抗性および磨耗抵抗性をも提供する。しかしながら、これらのポリアルコールの合成は、遠回りで高価な経路が要求される。ビニルアルコールモノマーは、アセトアルデヒドに互変異性化し、アセトアルデヒドは、ビニルアルコールのモノマーとしての使用を防止する。
【0003】
結果として、最も広く採用されているEVOHの合成経路は、ポリ(エチレンビニルアセテート)(EVAc)を生成するための、エチレンおよび酢酸ビニルの遊離ラジカル重合であり、次いで、EVAcはけん化によってEVOHに変換され得る。Meckingら、(1998)J.Am.Chem.SoC.120:888〜899;およびRamakrishnan(1990)Macromolecules23:4519〜4524を参照のこと。これらのEVOHコポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)とよく似た枝分かれ度を持ち、そしてポリマー骨格に沿ってアルコール官能基がランダムに分布する(Ramakrishnan(1991);Valentiら、(1998)Macromolecules 31:2764−2773)。PVOHは、ポリ(酢酸ビニル)の加水分解によるものとよく似た方法で調製され、同様の問題に遭遇している。これらのポリマー、または官能基で置換されたその別のポリオレフィンを調製するための従来のプロセスのさらなる欠点は、そのラジカル重合技術は、分子量(MW)、分子量分布(MWD)、ブロック構造、コモノマーの取り込みの制御手段をほとんど提供せず、それゆえに、ポリマーの機械的特性も同様に、ほとんど制御できない。
【0004】
官能基許容性後期遷移金属オレフィンメタセシス触媒の開発に起因して、開環メタセシス重合(「ROMP」)を介した、直鎖ポリマーの骨格に沿った、極性官能基の直接結合が可能となった。例えば、Hillmyerらは、ルテニウムオレフィンメタセシス触媒を用いる、アルコール置換シクロオクテン、ケトン置換シクロオクテン、ハロゲン置換シクロオクテンおよびアセテート置換シクロオクテンのROMPを報告している(Hillmyerら、(1995)Macromolecules 28:6311−6316)。しかしながら、非対称の置換シクロオクテンは、結果として頭部と頭部(HH)、頭部と尾部(HT)、尾部と尾部(TT)のカップリングを生じ、官能基の位置ランダム(regiorandom)。同様の問題が生じ、初期の遷移金属を介したボラン置換シクロオクテンのROMPに続く、アルコール官能基化した直鎖ポリマーの酸化について、Chungらが報告してる(Ramakrishnanら、(1990),前出)。官能基のこの位置ランダム分布に対する解決法は、アルコール含有対称性ジエンの非環状ジエンメタセシス(ADMET)重合を用いた方法が、Valentiらにより報告されているne(Valentiら、前出;Schellekensら、(2000) J.Mol.Sci.Rev.Macromol.Chem.Phys.C40:167−192))。しかしながら、これらのポリマーの分子量は、ADMETにより、3×104g/mol未満に制限され、これらの炭化水素含量が豊富なものは、最終EVOHコポリマーの障壁の特性を制限する(Lagaronら、前出)。
【0005】
単一部位有機金属触媒は、MW、MWD、微細構造、従って合成されるポリマーの機械的特徴の特別な制御を、提供することが示された。最近、多くの研究者たちが、特別な置換ジイミン配位子との、後期金属錯体に使用する、第2世代の単一部位触媒を開発している。例えば、Meckingら、(1998)前出;Johnsonら、(1996)J.Am.Chem.Soc.118:267〜268;および国際特許公開公報番号WO96/23010を参照のこと。これらの触媒は、比較的低コストで、合成および支持が簡単で、そしてあるケースでは、官能基の寛容の重要な利点を保持している。これらの触媒は、非常に高度な分枝鎖ポリエチレン、高密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、そして官能性モノマーを組み込む様々のポリマーの新しいクラスの生成に使用される。しかしながら、これらの触媒は、酢酸ビニルとブチルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテルとの重合をさせ得ない。
【0006】
従って、官能基に寛容であり、分子量および分子量分布を正確に制御できるプロセスを可能にする触媒を用いたポリマー合成の技術的な方法について、当該分野で必要性がある。理想的には、このような方法は、立体規則性ポリマーの合成にも有益である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
本発明は、当該分野における、前述した必要性に関し、非常に効率的な重合プロセスを提供する。ここで、ポリオレフィンは、遷移金属触媒を用いて合成され、この遷移金属触媒は、重合プロセスのそれぞれの連続的な反応の際に、オレフィンモノマー上の官能基に寛容であるのみではなく、遷移金属錯体に対してそれぞれの官能基化オレフィンモノマーの立体配置も「固定」する。本方法では、錯体の活性部位におけるオレフィンの転移は防止され、次いで、触媒被毒の可能性または、望まない反応が生じることに付随する別の問題(すなわち、触媒の活性部位に関連して、オレフィンの転位によって生じる反応)が減少する。
【0008】
第1の実施形態において、このように、本発明は、ペンダント官能基により置換したポリオレフィンの調製方法を、重合条件下で、以下:
(a)官能基を有するオレフィン炭素原子上で置換したオレフィンを構成する、官能基化オレフィンモノマーと、
(b)オレフィンモノマーの連続的な挿入反応による、段階的なポリマー合成の促進をする触媒有効量の遷移金属錯体とを接触させることにより提供する。この錯体は以下:
(i)それぞれの連続反応期間中に、官能基化オレフィンモノマーと結合した活性部位として機能する遷移金属原子、そして
(ii)官能基と非共有結合を形成し、そしてそれによって、それぞれの連続した反応の間、遷移金属錯体に対して官能基化オレフィンモノマーを単一の立体化学構造に維持する安定化基により置換した配位子から構成される。これにより、それぞれの反応の間、遷移金属錯体に対する、官能基化オレフィンの転位を予防する。
【0009】
触媒上の安定化基とオレフィン上の官能基との間の相互作用は、水素結合、イオン結合、またはいくつかの別の種類の非共有結合を含み得る。水素結合は、ルイス塩基置換基(例えば、極性、電子供与基)とルイス酸置換基(例えば、ボロナート(boronato)もしくはジアルキルアルミニウム基)との間に形成される。しばしば、オレフィン官能基は、極性で、電子供与基(例えば、アルコキシル基、アルキルエーテル基、もしくはエステル基)であり、そして触媒上の安定化基は、ルイス酸置換基である。本方法は、任意の様々な、触媒としての遷移金属錯体(例えば、Brookhart型の触媒、有機金属配位化合物触媒など)を使用して行われ得る。分子量、分子量分布、および微細構造に対する特別的な制御を提供する範囲で、単一部位触媒は、非常に好ましく、そして立体規則的なポリオレフィン生成物を生じ得る。
【0010】
本方法論は、PVOHおよびEVOHのような重要なポリオレフィンの、商業上適した合成であるという点で、当該分野にかなりの進歩を提供する。すなわち、官能基化オレフィンモノマーが酢酸ビニルであり、触媒上の安定化基がルイス酸置換基であり、ポリオレフィンがポリ(酢酸ビニル)である場合、これが容易に加水分解され、直接かつ周知の方法論を使用してPVOHを生じ得る。エチレンがオレフィンコモノマーとして使用される場合、得られるポリオレフィンは、ポリ(エチレン酢酸ビニル)であり、これは再び、加水分解を経てEVOHに容易に変換され得る。別の実施例として、官能基化オレフィンモノマーがビニルエーテル(例えば、アルキルビニルエーテル)であり、安定化基がルイス酸置換基である場合、得られるポリオレフィンはポリ(ビニルエーテル)である。
【0011】
別の実施形態中で、前述した方法を行う過程で有益である新規の遷移金属錯体が提供される。この錯体は、式(I)の構造:
【0012】
【化7】
を有し、ここで:
M1は酸化状態wを有する遷移金属であり;
xおよびyは、0からwの範囲の整数であり、xとyの合計はwであり;
X1およびX2は、M1に配位するヘテロ原子であり;
R1は、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンであり;
S*は、安定化基であり;
R2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルもしくは−R1−S*であり;
Qは、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンリンカーであり、さらにここで、Qにおける隣接する原子上の2つ以上の置換基は、結合されて、環状基を形成し得;そして
Q1およびQ2は、1価のラジカルである。
【0013】
一般的に、M1は、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、V(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Ti(IV)、Ru(II)、Rh(II)、Os(II)、Ir(II)、およびPt(II)から選択される。錯体は正に荷電し得、従って、負に荷電した対イオンと結合し得る。すなわち、式(I)の金属錯体が正の電荷+aを保持し得、aは1〜4の範囲の整数であり、より代表的には1または2であり、そしてそれぞれが負の電荷−bを有するa/bアニオンが付随する。金属錯体は双性イオンでもあり得、すなわち、錯体は、一つの原子もしくは領域は、正の電荷を保有し、そして別の原子または領域は、負の電荷を保有する。
【0014】
本発明の別の実施形態中で、(1)式(I)の構造を有する遷移金属錯体、(2)触媒活性化剤、および必要に応じて(3)不活性な希釈剤から構成される触媒系が提供される。本明細書中での代表的な触媒活性化剤としては、塩または弱配位アニオン(例えば、フルオロヒドロカルビルボレートイオン、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、SbF6−およびPF6−)が挙げられ、これらは全て、対イオンとして前述したアニオンの一つと会合するカチオン性触媒を生じる。本明細書中での別の触媒活性化剤は、ハロゲン化ジアルキルアルミニウムのようなアルキルアルミニウム試薬であり、これは、双性イオン触媒を生じる。従って、触媒活性化剤は、電気的に中性な遷移金属を、カチオンに変換するために通常は使用され、これにより、触媒がカチオン錯体または双性錯体を形成することが理解される。
【0015】
(発明の詳細な説明)
(定義および命名法:)
他に示さない限り、本発明は、変化し得るので、特定の反応物、反応条件、配位子、遷移金属錯体などに限定されないと理解される。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載する目的にのみ使用され、限定を意図するものではないこともまた理解される。
【0016】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形式の「a」、「an」、および「the」は、文脈で他に示されない限り、複数の指示物を含む。従って、このように、「錯体」(「a complex」)を参照すると、単一の錯体(complex)と同様に、異なる錯体の組み合わせもしくは混合物を包含し、「置換基」(「a 置換基」)を参照すると、単一の置換基ならびに同一であっても、同一でなくてもよい2つ以上の置換基となどを包含する。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、多くの用語が参照されるが、これは、以下の意味を有するように定義される:
本明細書中で使用される場合、「式を有する」もしくは「構造を有する」という語句は、限定を意図するのではなく、通常使用される用語「構成する」と同様に使用される。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖、もしくは環状飽和炭化水素基を意味し、必須ではないが代表的には1〜約20の炭素原子、好ましくは1〜約12の炭素原子を保持し、これらは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなど、ならびにシクロペンチル、シクロへキシルなどのようなシクロアルキル基と同様のものである。一般的に、再び、ここで必ずではないが、本明細書中でのアルキル基は、1〜約12の炭素原子を保持している。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基を意図し、そして特別な用語「シクロアルキル」は、代表的には4〜8個、好ましくは5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意図する。用語「置換アルキル」は、1以上の置換基で置換されたアルキルを意味し、そして「ヘテロ原子含有アルキル」および「ヘテロアルキル」は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルキルを意味する。他に明記されない限り、用語「アルキル」および「低級アルキル」は、それぞれ、直鎖状、分枝鎖状、環状、不飽和、置換、および/あるいはヘテロ原子含有のアルキルおよび低級アルキルを包含する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」および「低級アルキレン」は、二官能性の直鎖状、分枝鎖状、または環状のアルキルまたは低級アルキル基をそれぞれが意味し、「アルキル」および「低級アルキル」は、上記の定義と同様である。
【0020】
本明細書中で使用される、用語「アルケニル」は、直鎖状、分枝鎖状、または環状の2〜約20炭素原子の炭化水素基で、少なくとも1個の二重結合を含むもの(例えば、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニルなど)を意味する。本明細書中で、好ましいアルケニル基は、2〜12個の炭素原子を保持している。用語「低級アルケニル」は、2〜6個の炭素原子のアルケニル基を意図しており、特定の用語「シクロアルケニル」は、好ましくは、5〜8個の炭素原子を有する、シクロアルケニル基を意図する。用語「置換アルケニル」は、1つ以上の置換基で置換されたアルケニルを意味し、用語「ヘテロ原子含有アルケニル」および「ヘテロアルケニル」は、少なくとも1個の炭素原子が、ヘテロ原子で置換されているアルケニルを意味する。他に明示されなければ、「アルケニル」および「低級アルケニル」はそれぞれ、直鎖状、分枝鎖状、環状、不飽和、置換、および/あるいはヘテロ原子含有のアルケニルおよび低級アルケニルを包含する。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「アルケニレン」および「低級アルケニレン」はそれぞれ、二官能性の直鎖状、分枝鎖状または、環状のアルケニルおよび低級アルケニル基を意味し、「アルケニル」および「低級アルケニル」は、上記で定義したものと同様である。
【0022】
本明細書中で使用される、用語「アルキニル」は、直鎖状、もしくは分枝鎖状の炭化水素基を意味し、2〜約20の炭素原子を保持し、少なくとも1個の3重結合(例えば、エチニル、n−プロピニルなど)を保持する。本明細書中のアルキニル基は、好ましくは2〜約12の炭素原子を保持している。用語「低級アルキニル」は、2〜6個の炭素原子のアルキニル基を意図する。用語「置換アルキニル」は、1以上の置換基で置換されたアルキニルを意味し、そして「ヘテロ原子含有アルキニル」および「ヘテロアルキニル」は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルキニルを意味する。他に明記されなければ、用語「アルキニル」および「低級アルキニル」は、直鎖状、分枝鎖状、不飽和、置換、および/あるいはヘテロ原子含有のアルキニルおよび低級アルキニルをそれぞれ包含する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキニレン」および「低級アルキニレン」は、二官能性の直鎖状、分枝鎖状または、環状のアルキニルおよび低級アルキニル基をそれぞれ意味し、「アルキニル」および「低級アルキニル」は、上記で定義したものと同様である。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「アルコキシ」は、単結合で、末端エーテル結合を介して結合したアルキル基を意味する;すなわち、「アルコキシ基」は−O−アルキルとして表され得、アルキルは上で定義したものと同様である。「低級アルコキシ基」は、1〜6個の炭素原子を保持するアルコキシ基を意味し、そして例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブチルオキシなどを包含する。同様に、「アルケニルオキシ」および「低級アルケニルオキシ」はそれぞれ、単結合の末端エーテル結合を介して結合したアルケニルおよび低級アルケニル基であり、そして「アルキニルオキシ」および「低級アルキニルオキシ」はそれぞれ、単結合の末端エーテル結合を介して結合したアルキニルおよび低級アルキニル基であることを意味する。
【0025】
本明細書中で使用される、用語「アリール」は、他に指定しない限り、単一の芳香族環または、相互に融合したり、直接結合したり、間接的に結合したりした複数の芳香族環を保持する芳香族置換基を意味する(その結果、異なる芳香族環は、メチレンまたはエチレン部分といった一般基に結合される)。好ましくは、アリール基は5〜20個の炭素原子および1個の芳香族環または2〜4個の融合もしくは結合した芳香族環(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニルなど)のいずれかを包含し、より好ましいアリール基は、1〜3個の芳香族環を保持し、そして特に好ましいアリール基は、1または2個の芳香族環および5〜14個の炭素原子を保持するものである。「置換アリール」は、1以上の置換基で置換されたアリール部分を意味し、そして用語「ヘテロ原子含有アリール」および「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアリールを意味する。他に明記されない限り、用語「芳香族」、「アリール」および「アリーレン」は、ヘテロ芳香族化学種、置換芳香族化学種、および置換へテロ芳香族化学種を包含する。
【0026】
本明細書中で使用される、用語「アリールオキシ」は、単結合の末端エーテル結合を介して結合したアリール基を意味する。ここで、「アリール」は、上記で定義されたものと同様である。「アリールオキシ」基は、−O−アリールと同様に示され得、アリールは、上記で定義されたものと同様である。好ましいアリールオキシ基は、5〜20個の炭素原子を保持し、そして特に好ましいアリールオキシ基は、5〜14個の炭素原子を保持する。アリールオキシ基の実施例は、限定されないが、フェノキシ,o−ハロ−フェノキシ、m−ハロ−フェノキシ、p−ハロ−フェノキシ、o−メトキシ−フェノキシ、m−メトキシ−フェノキシ、p−メトキシ−フェノキシ、2,4−ジメトキシ−フェノキシ、3,4,5−トリメトキシ−フェノキシなどを包含する。
【0027】
用語「アルカアリール」は、アルキル置換基を持つアリール基を意味し、そして、用語「アラルキル」は、アリール置換基を持つアルキル基を意味し、ここで、および「アリール」および「アルキル」は、上と同様に定義される。一般的には、アルカアリールおよびアラルキル基が、6〜30個の炭素原子を保持しており、好ましくは6〜24個の炭素原子そして特に好ましくは、アルカアリールおよびアラルキル基が、6〜16個の炭素原子を保持する。アラルキル基の実施例は、限定されないが、ベンジル、2−フェニル−エチル、3−フェニル−プロピル、4−フェニル−ブチル、5−フェニル−ペンチル、4−フェニルシクロヘキシル、4−ベンジルシクロヘキシル、4−フェニルシクロヘキシルメチル、4−ベンジルシクロヘキシルメチルなどを包含する。例えば、アルカアリール基は、p−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル、2,7−ジメチルナフチル、7−シクロオクチルナフチル、3−エチル−シクロペンタ−1,4−ジエンなどを包含する。
【0028】
用語「アルカアリーレン」および「アラルキレン」は、先ほど定義した「アルカアリール」および「アラルキル」と同様であるが、これらは、一官能性ではなく二官能性である。すなわち、「アルカアリーレン」部分は、アルキル基で置換したアリーレン結合を意味し、一方で、「アラルキレン」部分は、アリール基で置換したアルキレン結合を意味する。
【0029】
用語「ハロ」、「ハライド」および「ハロゲン」は、クロロ、ブロモ、フルオロ、またはヨード置換基を意味するように、慣習的な意味で使用される。用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルキニル」(または、「ハロゲン化アルキル」、「ハロゲン化アルケニル」および「ハロゲン化アルキニル」)は、アルキル、アルケニル、または、アルキニル基をそれぞれ意味し、基内の少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換されている。
【0030】
「ヒドロカルビル」は、1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約20個の炭素原子、より好ましくは1〜約12個の炭素原子を持つ、一価のヒドロカルビルラジカルを意味し、そしてこのラジカルは、直鎖状、分枝鎖状、環状、飽和および不飽和化学種(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基など)を包含する。用語「低級ヒドロカルビル」は、1〜6個の炭素原子のヒドロカルビル基を意図し、そして用語「ヒドロカルビレン」は、1〜30個の炭素原子、好ましくは1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子を持つ二価のヒドロカルビル部分を意図し、そしてこのヒドロカルビル部分は、直鎖状、分枝鎖状、環状、飽和および不飽和化学種を包含する。用語「低級ヒドロカルビレン」は、1〜6個の炭素原子を持つヒドロカルビレン基を意図している。他に指示が無い限り、用語「ヒドロカルビル」および「ヒドロカルビレン」は、置換および/あるいはヘテロ原子含有ヒドロカルビルおよびヒドロカルビレン部分をそれぞれ包含すると解釈されるべきである。
【0031】
「ヘテロ原子含有アルキル基」(「ヘテロアルキル」基とも呼ばれる)または「ヘテロ原子含有アリール基」(「ヘテロアリール」基とも呼ばれる)として用いられる、用語「ヘテロ原子含有」は、1個または2個以上の炭素原子が炭素原子と異なる原子(例えば、窒素、酸素、硫黄、リン、またはケイ素(代表的には、窒素、酸素または硫黄))で置換されている分子、結合または置換基を意味する。同様に、用語「ヘテロアルキル」は、ヘテロ原子含有アルキル置換基を意味し、用語「ヘテロ環式」は、ヘテロ原子含有環状置換基を意味し、用語「ヘテロアリール」および「ヘテロ芳香族」は、それぞれ、ヘテロ原子含有の「アリール」および「芳香族」置換基などを意味する。ヘテロアルキル基の例は、アルコキシアリール、アルキルスルファニル−置換アルキル、N−アルキル化アミノアルキルなどを包含する。ヘテロアリール置換基の例は、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、ピリミジニル、イミダゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリルなどを包含し、そしてヘテロ原子含有脂環基の例は、ピロリジノ、モルフォリノ、ピペラジノ、ピペリジノなどである。「ヘテロ環式」基または化合物は、芳香族を含み得るかまたは芳香族を含み得ず、さらに、用語「アリール」に関して上で定義したように、「ヘテロ環式」は単環式、二環式または多環式であり得る。
【0032】
上記で定義したことが暗示するように、「置換ヒドロカルビル」、「置換アルキル」、「置換アリール」などで用いられる、「置換」は、ヒドロカルビル、アルキル、アリールまたは別の部分において、炭素原子(または別の原子)と結合している少なくとも1個の水素原子が、水素原子ではない置換基で置換されていることを意味する。このような置換基の例は、限定されないが、以下を含む:官能基(例えば、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C6〜C20アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、モノ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、ジ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、C2〜C20アルキルアミド、C6〜C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、およびアリールイミノ)、;ならびに、ヒドロカルビル部分(例えば、C1〜C20アルキル(好ましくはC1〜C18アルキル、より好ましくはC1〜C12アルキル、最も好ましくはC1〜C6アルキル)、C2〜C20アルケニル(好ましくはC2〜C18アルケニル、より好ましくはC2〜C12アルケニル、最も好ましくはC2〜C6アルケニル)、C2〜C20アルキニル(好ましくはC2〜C18アルキニル、より好ましくはC2〜C12アルキニル、最も好ましくはC2〜C6アルキニル)、C5〜C20アリール(好ましくはC5〜C14アリール)、C6〜C24アルカアリール(好ましくはC6〜C18アルカアリール)、およびC6〜C24アラルキル(好ましくはC6〜C18アラルキル))。
【0033】
さらに、特定の基が可能である場合、前述した官能基はさらに、1以上のさらなる官能基か、または上で特に列挙されたような、1以上のヒドロカルビル部分で置換され得る。同様に、上で述べたヒドロカルビル部分は、1以上の官能基、または特に列挙されたような、さらなるヒドロカルビル部分で置換され得る。
【0034】
用語「置換」は、置換される可能性がある基のリストの前に見られ、この用語は、その群の全てのメンバーに適用することが意図される。すなわち、「置換アルキル、置換アルケニル、および置換アルキニル」という句は、「置換アルキル、置換アルケニル、および置換アルキニル」と同様であると解釈できる。同様に、用語「必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、およびアルキニル」は「必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアルケニル、および必要に応じて置換されたアルキニル」と同様であると解釈でき、そして「架橋された二環式または多環式オレフィンモノマー」は、「架橋された二環式オレフィンモノマー」または「架橋された多環式オレフィンモノマー」と同様であると解釈できる。
【0035】
用語「立体規則性ポリマー」は、モノマーユニット間の「結合性」が規則的な配置を持っているポリマーを意味して使用される。
【0036】
「任意の」または「必要に応じて」は、引き続いて記載される状況が起こり得るまたは、状況が起こり得ないことを意味し、これにより、この記述は状況が起こる例および起こらない例を包含する。例えば、「必要に応じて置換された」という句は、非水素置換基が、所定の原子上に存在し得る、または存在し得ないことを意味し、そしてこのような記述は、非水素置換基が存在する構造、および非水素置換基が存在しない構造を包含する。
【0037】
本明細書中における分子構造中では、IUPAC協会に従い、太字および点線を利用して基の特定の配置を示している。破線で示された結合は、問題の基が、描かれた分子の紙面より下にあることを示しており、(「α」配座)そして、太線で示された結合は、問題の位置の基が、描かれた分子の紙面より上にあることを意味してている(「β」配座)。
【0038】
(触媒)
本発明の触媒は遷移金属錯体であり、この錯体は以下で構成される:(i)挿入重合反応のそれぞれの工程の間、官能基化オレフィンモノマーが結合する活性部位として機能する、遷移金属原子、および(ii)上で述べたそれぞれの工程の間、官能基と非共有結合を形成する安定化基で置換される配位子。官能基がルイス塩基置換基(例えば、極性の電子供与性基)である場合に、安定化基がルイス酸置換基の構造であるか、または官能基がルイス酸である場合に、安定化基がルイス酸置換構造であるので、安定化基は、特定の官能基と水素結合を形成し得る。別の実施例では、安定化基は、オレフィンモノマーの官能基とイオン結合を形成するように選択され得、この場合、安定化基および官能基の一つがカチオン性であり、他方はアニオン性である。好ましい遷移金属錯体は、単一の遷移金属原子を持っており、その結果、この錯体は単一部位遷移金属触媒である。単一部位の触媒は、その触媒が、調製されるポリオレフィンの分子量、分子量分布、および微細構造の正確な制御を可能にし、立体規則的なポリマーを生じうる限りにおいて、非常に有利である。
【0039】
1実施形態において、触媒として利用される遷移金属錯体は式(I)の構造
【0040】
【化8】
を有する。
【0041】
構造(I)中には、以下のような様々な置換基がある。
【0042】
M1は酸化状態wを有する遷移金属であり、一般的には、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、V(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Ti(IV)、Ru(II)、Rh(II)、Os(II)、Ir(II)、およびPt(II)から選択され、xおよびyは0〜wの範囲の整数であり、そしてxとyの合計はwであり、この時、M1は電気的に中性の形態である。好ましい実施形態では、wが2であり、M1がPd(II)、Fe(II)、Co(II)またはNi(II)であり、xが1、yが1である。
【0043】
X1およびX2は、M1に配位するヘテロ原子であり、好ましくはNまたはP、最も好ましくは、Nである。
【0044】
R1は、ヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカアリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、置換ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20アルキレン、置換C2〜C20アルケニレン、置換C2〜C20アルキニレン、置換C5〜C20アリーレン、置換C6〜C24アルカアリーレン、または置換C6〜C24アラルキレン)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリーレン)、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリーレン)である。R1は、結合部位Q中に含まれる原子とも結合し得る。好ましいR1基は、C5〜C14アリーレン、置換C5〜C14アリーレン、C5〜C14ヘテロアリーレン、および置換C5〜C14ヘテロアリーレンを包含するが、これらに限定されず、より好ましいR1基は、C5〜C14アリーレンおよび置換C5〜C14アリーレンから選択される。最も好ましいR1基は、フェニレンおよびモノ−、ジ−、およびトリ(低級アルキル)−置換フェニレンである。R1が結合Q中の原子に結合する時、得られた環状基はN−ヘテロ環状基であると理解される。このような事例での、好ましい環状基は5員環および6員環、代表的にはピリジンおよび置換ピリジン基のような芳香族環である。
【0045】
S*は安定化基であり、多くの場合、オレフィンモノマー上に存在する、極性の電子供与性基の安定化を提供するためのルイス酸置換基である。適したルイス酸置換基は、当業者には明らかであり、一例として、−OBE2、−OAlE2、−OPE2、−OSnE3、−OSiE3、および−OZnEを包含し、ここでEは、ハロゲン化物、ヒドロキシル、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C5〜C14アリール、C5〜C14オキシアリールなどから選択され、好ましくはハロゲン化物、低級アルキル、および低級アルコキシである。前述したルイス酸置換基のうち、より一般的な置換基は、−OBE2、−OAlE2、−OSnE3、および−OZnEであり、ここでEは、クロロ、ブロモ、アルコキシ、または低級アルキル、またはフェニルである。ルイス酸置換基の特定の好ましい実施例としては、−OBcatであるが、これに限定されず、
【0046】
【化9】
ここで「cat」はカテコール、−OAlCl2、−OAl(CH3)2、−OSn(CH3)3、および−OZnOPh(ここで、Phはフェニルを意味する)を表す。いくつかの例では、水素原子それ自体で、現文脈上でのルイス酸安定化基のように作用し得る。ルイス酸置換基は、極性、電子供与性基(例えば、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C6〜C20オキシアリールカルボニル、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、モノ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、ジ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、C2〜C20アルキルアミド、C6〜C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、およびアリールイミノ置換基)に、重合しているオレフィンモノマー上で非共有結合する。
【0047】
R2は、ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、またはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)であり、これはR1に結合する安定化基と同じであり得るか、または安定化基と同じであり得ない、安定化基S*で置換され得る。R2は、結合Qに含まれる原子に結合し得る。好ましいR2基としては、C5〜C14アリール、置換C5〜C14アリール、C5〜C14ヘテロアリール、および置換C5〜C14ヘテロアリールを包含し、より好ましいR2基は、C5〜C14アリールおよび置換C5〜C14アリールから選択されるが、これらに限定されない。R2は、結合部位Qに含まれる原子と結合する場合、得られた環状基はN−ヘテロ環状基であると理解される。このような状況での、好ましい環状基は5員環および6員環、代表的には芳香族環である。
【0048】
最も好ましい実施形態では、R1はフェニルまたは低級アルキル−置換フェニルであり、R2は、ピリジン環を形成するための、結合Qに含まれる隣接する炭素原子に結合する。
【0049】
Qはヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカアリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、置換ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカアリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリーレン)、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリーレン)リンカーであり、さらにここで、Qに含まれる隣接する原子上の2以上の置換基は、環状基を形成するように結合し得、またはここで、Qに含まれる1以上の原子は、R1および/またはR2に結合する。好ましいQ結合としては、C2〜C12アルケニレン、置換C2〜C12アルケニレン、C2〜C12ヘテロアルケニレン、および置換C2〜C12ヘテロアルケニレンが挙げられるが、これらに限定されず、より好ましいQ結合は、C2〜C6アルケニレンおよび置換C2〜C6アルケニレンより選択される。
【0050】
Q1およびQ2は、それぞれ一価のラジカルであり、好ましくは独立して水素、ハロゲン化物、C1〜C20アルコキシ、アミド、および置換/非置換C1〜C30ヒドロカルビルから選択され;置換される場合、必然性はないが、置換基は、代表的に、電子吸引基(例えば、ハロゲン化物、アルコキシ、4族元素など)である。あるいは、Q1およびQ2はアルキリデンオレフィン(すなわち、=CR2であり、ここでRは、水素またはヒドロカルビル、代表的には低級アルキル)、アセチレン、または5員環または6員環のヒドロカルビル基を一緒になって形成し得る。好ましいQ1およびQ2部分は、水素、ハロゲン化物、C1〜C12アルキル、および1以上のハロゲンおよび/あるいはアルコキシ基で置換されたC1〜C12アルキルであり、代表的には1〜6個のそのような基、および4族元素で置換されたC1〜C12アルキルである。特に、好ましいQ1およびQ2部分は、水素、塩素、ヨウ素、臭素、メチルである。
【0051】
特定の式(I)の錯体は、塩の形態、すなわち、正に荷電し、それに負に荷電した対イオンと会合する。前者の事例では、正の電荷は金属上にあり、このような場合はxとyの合計はwより小く、そして錯体は、遊離したアニオン(例えば弱く配位したアニオン)を会合する。好ましいアニオンは、好ましくは立体的にかさが高く、その結果、イオンにより保有される負の電荷は非局在化する。弱く配位したかさ高いアニオンは、当業者に公知であり、例として、限定されないが、フルオロヒドロカルビルボレートイオン、トリフルオロメタンスルホネート、BF4−、Ph4B−(Ph=フェニル)、p−トルエンスルホネート、SbF6−、およびPF6−を包含する。特に好ましいアニオンは、フルオロヒドロカルビルボレートイオン、(例えば,テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(BAF−)、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、H+(OCH2CH3)2[(ビス−3、5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、およびトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート)である。
【0052】
別の式(I)の錯体は、双性イオンであり、一般的には、正電荷は金属中心上に存在し(これは、再び、xおよびyの合計はw以下であることを意味する)、負電荷は、錯体中に、代表的には配位子上のペンダント基の原子上に存在する。双性イオンは、ジアルキルアルミニウムハロゲン化合物のようなルイス塩基(例えば、塩化ジメチルアルミニウム)と、イオン化可能酸性基(例えば、ヒドロキシル、スルフヒドリル、またはカルボキシル基)を有する電気的に中性な錯体との反応によって形成され得る。錯体は、塩または双性イオン形態中の重合触媒として使用され得るが、より代表的に、錯体は、電気的に中性な形態で使用され、そしてインサイチュでの適切な試薬との混合により、イオン性または双性を付与させる。ある好ましい実施形態中で、Qは式(II)の構造
【0053】
【化10】
を有し、これにより、遷移金属錯体は式(III)の構造
【0054】
【化11】
を有する。
【0055】
式(II)および式(III)中で:R1、R2、M1、X1、X2、Q1、Q2、S*、xおよびyは、式(I)の錯体を定義したものと同様であり;zは0または1であり;R3およびR4は水素、ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、および置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)から選択され、そして好ましくは水素、またはC1〜C12ヒドロカルビルであり、より好ましくは、水素、または低級アルキルであり、最も好ましくは、水素、またはメチルであり;そしてR5およびR6は、上のように、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、およびヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルから選択され、そして好ましくは、水素、または低級アルキルであり、最も好ましくは水素である。
【0056】
さらに、R2、R3、R4、R5、およびR6のいずれかは、ルイス酸安定化基S*で置換され得、これはR1と結合しているS*と同様であり得るか、または同様であり得ず、そしてさらに、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6のいずれか2つ以上は、一緒になって環状基を形成し得る。最適なのは、(a)R1およびR3および/または、(b)R2およびR4が一緒になって環状基を形成する。(a)R1およびR3および/または、(b)R2およびR4が結合する場合、そのように形成される環状構造は脂環、芳香族環であり得、例えば、フラニル、ピロリル、チオフェニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサチオリル、ピリジニル、メチルピリジニル、エチルピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルフォリニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、1,4−ジオキサニルなどを包含する。R3およびR4が結合する場合、得られた構造は、脂環であり、ヘテロ原子を含み得るか、または含み得ず;このような部分は、例えば、シクロペンテン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、1,4−ジオキサン、1,2−ジチオール、1,3−ジチオール、ピペラジン、モルフォリンなどを包含しうる。
【0057】
より好ましい触媒は、式(III)に包含され、ここで、zは0であり、qは二重結合として存在し、xおよびyは1であり、X1およびX2はNであり、S*はルイス酸置換基であり、R1はフェニレンまたはモノ−、ジ−、またはトリ−(低級アルキル)−置換フェニレンであり、R3は水素またはメチルであり、好ましくはメチルであり、そして(a)R2はフェニレンまたはモノ−、ジ−、またはトリ−(低級アルキル)−置換フェニルであり、かつR4はR3と同一であるか、または(b)R2およびR4は一緒になり、S*または別の置換基で置換され得、または置換され得ないピリジン環を形成するかのいずれかであるが、好ましくは非置換型であり、R3は水素である。さらに、例示的な触媒は、M1がPd(II)、Fe(II)、Co(II)、またはNi(II)である。これらのより好ましい触媒の例は、式(IV)および(V):
【0058】
【化12】
によって示される。
【0059】
構造(IV)および(V)の中で、M1、Q1、およびQ2は、上で定義したものと同様であり、そしてLAはルイス酸置換基である。
【0060】
式(IV)の錯体は、代表的には、「DAD」(ジアザブタ−1,3−ジエン)前駆体配位子Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arから合成され、ここで、Meはメチル、Arは2,4,6−トリメチル3−PrおよびPrはルイス酸置換基LAへの前駆体である。Pr部分は、所望のLA置換基配位を与えるための、適切な試薬との反応により、所望のルイス酸置換基で置換され、次いで、メタレーションされ得る。例えば、ヒドロキシル部分は、Prとして機能し得、この場合、配位子前駆体は所望の配位子に変換され得、このことは、脱プロトン試薬(例えば、ヘキサメチルジシルアジドカリウム)を用いて脱プロトン化することによって起こり、一致するフェノキシドを生じ、続いて、MEC−Lgとの反応によりルイス酸置換基−LAを生じ、またこの場合、これは置換基OMECである。Mは通常は、B、Al、P、Sn、Si、またはZnであり、好ましくはB、Al、またはSnであり、Eは前述のものであり、cはMに独立して1、2、または3であり、およびLgはハロゲン化物、特に塩素のような脱離基である。代表的なこのような合成は、本明細書中の実施例1および6に述べている。
【0061】
あるいは、前駆体配位子(再び、Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar、ここで、Arは2,4,6−トリメチル3−PrおよびPrはルイス酸置換基LAの前駆体)は、メタレーションされ、そして反応混合物中への適切な触媒活性化剤(すなわち、前述した弱く配位したアニオンおよび/またはMEC−Lg試薬の塩または酸)の取り込みにより、触媒のLA置換形態へとインサイチュで変換される。触媒活性化剤はまた、錯体の金属部位を変換し、電気的に中性な構造である場合、カチオンに変換し、そしてこれにより錯体はカチオン性または双性となる。実施例2、3、4、および10〜15を参照のこと。
【0062】
式(V)の錯体は、「ピリム」(ピリジルイミン)前駆体配位子Ar−N=C(H)−2−ピリジン(Ar=2,4,6−トリメチル3−ヒドロオキシフェニル)から同様の方法で合成され、これは実施例5、7、8および9に述べられている。
【0063】
式(IV)の錯体に対応する塩および双性イオン形態の触媒は、それぞれ、以下の構造(IVA)および(IVB):
【0064】
【化13】
で示される。
【0065】
ここで、An−は、負に荷電した対イオン(たとえば、本明細書中で他に述べたような弱く配位したアニオン)であり、一方で式(V)の錯体に対応する塩および双性イオン形態の触媒は、それぞれ、以下の構造(VA)および(VB):
【0066】
【化14】
で示される。
【0067】
別の実施形態では、本明細書中でオレフィン重合触媒として使用されている遷移金属錯体は、SPI International(Menlo Park,CA)に譲渡されたTaggeらに対する米国特許第6,355,746号に述べられている。ある実施形態では、錯体は式L1[M2Q1Q2]L2であり、M2は中間遷移金属、Q1およびQ2は上で定義した一価のラジカルであり、そしてL1およびL2は、窒素性配位子であり、このうちの少なくとも1つは、上で定義した安定化基S*で置換される。L1およびL2のそれぞれは、C=N基および第2の配位原子中に窒素原子を包含しており、この配位原子は第2の窒素原子(必要に応じて第2のC=N基として存在)、もしくは酸素原子、硫黄原子、もしくはリン原子のいずれかである。
【0068】
関連した実施形態中では、米国特許第6,355,746号でTaggeらも述べたように、触媒は式(VI)の構造:
【0069】
【化15】
を有する遷移金属であり、
ここで:
M2は、代表的には、Mb、Ta、Mo、W、Mn、およびReから選択される中間遷移金属であり、そしてQ1、Q2、R3、R4、R5、R6、q、およびzは上で定義されたものと同様であり;
nは0または1であり;
R1a、R2a、およびR7は、上でR2で定義されたものと同様であり、ここでさらに、R1a、R2a、R3、R4、R5、R6、およびR7の任意の2つ以上は一緒になり、式(III)の錯体として定義されたものと同様の環状基を形成し得;
LAおよびLBは同一または異なる配位子であり得、そしてこれらは、窒素含有ヘテロ環状基、硫黄含有ヘテロ環状基、および酸素含有ヘテロ環状基、第三級アミンおよび第三級ホスフィンからなる群より選択され、またはLAおよびLBは一緒になり、上のような単一の二座配位子L2を形成し得るか、このL2は、L1と同一であり得、または同一であり得ず;そして
ここで、R1a、R2a、R5、R6、およびR7の少なくとも1つ、好ましくは、R1a、R2a、および/またはR7の少なくとも1つは安定化基S*で置換される。
【0070】
LAおよびLBは一般的には、以下から選択される:窒素−含有ヘテロ環(例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、ピロール、2H−ピロール、3H−ピロール、ピラゾール、2H−イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、
インドール、3H−インドール、1H−イソインドール、シクロペンタ(b)ピリジン、
インダゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピラゾリジン、キヌクリジン、およびイミダゾーリジン);硫黄含有ヘテロ環(例えば、チオフェン、1,2−ジチオール、1,3−ジチオール、チエピン、ベンゾ(b)チオフェン、およびベンゾ(c)チオフェン);酸素含有ヘテロ環(例えば、2H−ピラン、4H−ピラン、2−ピロン、4−ピロン、1,2−ジオキシン、1,3−ジオキシン、オキセピン、フラン、2H−1−ベンゾピラン、クマリン、クロマン−4−オン、イソクロメン−1−オン、イソクロメン−3−オン、キサンテン、テトラヒドロフラン、および1,4−ジオキサン);混合ヘテロ環(例えば、イソキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール、3H−1,2,3−ジオキサゾール、3H−1,2−オキサチオール、1,3−オキサチオール、4H−1,2−オキサジン、2H−1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2,5−オキサチアジン、o−イソオキサジン、ピラノ[3,4−B]ピロール、インドキサジン、ベンゾキサゾール、アンスラニル、およびモルフォリン);第3級アミン、特にトリアルキルアミン、および好ましくは、トリ(低級アルキル)アミン(例えば、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリメチルアミン、メチルジイソプロピルアミンなど);ホスフィン、特にトリアルキルホスフィン、そして好ましくは、トリ(低級アルキル)ホスフィン(例えば、トリエチルホスフィン、メチルジエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メチルジイソプロピルホスフィンなど)。しかしながら、特に好ましい実施形態では、LAおよびLBはまた一緒になり単一の二座配位子L2を形成し得、ここで、L2は上で定義したものと同一であり、最適なものとしては、L1と同一である。
【0071】
Taggeらに対する米国特許第6,355,746号で述べられるように、模範的な化合物は、式(VII)の構造:
【0072】
【化16】
を有し、
ここで:
iおよびjは独立して0、1、2、および3であり;そして
R1bおよびR2bは独立して、水素またはC1〜C10ヒドロカルビルであり、R8およびR9は独立して、C1〜C10ヒドロカルビル、または置換C1〜C10ヒドロカルビルであり、ここで、R1b、R2b、R8、およびR9の少なくとも1つは、安定化基S*で置換される。iまたはjがそれぞれに2より大きい場合、任意の2以上のオルトR8部分またはオルトR9部分は一緒になり、さらなる環(例えば、ベンゼン環)を形成し得る。
【0073】
関連した実施形態では、遷移金属錯体は式(VIII)の構造:
【0074】
【化17】
を有し、
ここで:
M2、Q1、およびQ2は前に定義されたもの同様であり;
R10は、ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、ヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)であるか、R10およびR11一緒になり、環を形成する;
(R10)’はR10と同様に定義され、そして(R11)’はR11と同様に定義され、または(R10)’および(R11)’は一緒になって、環を形成し;
R12’はR10と同様に定義され、そしてR13’はR11と同様に定義され、またはR12’およびR13’は一緒になって、環を形成し;
(R12)’はR12と同様に定義され、そして(R13)’はR13と同様に定義され、または(R12)’および(R13)’は一緒になって、環を形成し;
R14、(R14)’、R15、および(R15)’は、上述のように、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、および置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルから独立して選択され、そして好ましくは水素または低級アルキルであり、最も好ましくは水素であり;そして
mおよびm’は、独立して0または1であり、
ここで、R10、(R10)’、R11、(R11)’、R12、(R12)’、R13、(R13)’、R14、(R14)’、R15、および(R15)’のうちの少なくとも1つが、好ましくは、R10、(R10)’、R11、(R11)’、R12、(R12)’、R13、および(R13)’のうちの少なくとも1つが、前に定義したような安定化基S*で置換される。
式(VI)、(VII)および(VIII)の錯体は、米国特許第6,355,746号に記載された方法論を用いて、合成され得る。一般的には、ジイミン型の配位子(すなわち、「DAD」配位子)は、第一級アミンの付加による、1,2−ジケトンから合成される。例えば、米国特許第5,866,663号、同第5,880,241号、および同第6,355,746号、および国際特許公開番号WO 98/30612および WO 98/49208を参照のこと。1つ以上のC=N基を含む別の配位子は、選択されたアルデヒドまたはケトンと、適切な第一級アミンとの反応により、同様の方法で合成され得る。例えば、非対称の配位子:
【0075】
【化18】
は、実施例5で述べられるように、3−アミノ−2,4,6−トリメチルフェノール、およびピリジンカルボキシアルデヒドから、容易に合成され得る。Weidenbruchら、Organometallic Chemistry 454:35(1993),およびPatai編,The Chemistry of the Carbon−Nitrogen Double Bond(New York:John Wiley&Sons,February 1970)は、イミンの調製において使用され得る多様な合成方法の情報を提供する。
錯体(VI)では、LAおよびLBは一緒になって、式−Cp(R)i−B−T−を有する結合を形成し得、結果としてM2を含む環状基を形成し得、その結果、遷移金属錯体は式(IX)の構造:
【0076】
【化19】
を有し、ここで、M2、Q1、Q2、R1a、R2a、R3、R4、R5、R6、R7、n、q、およびzは式(VI)の錯体で定義されたものと同様であり、ただし、R1a、R2a、およびR7のうちの少なくとも1つは、安定化基S*で置換され,そしてさらにここで、R1a、R2a、R3、R4、R5、R6、およびR7の任意の2つ以上は一緒になり、上で定義された環状基を形成し得,iは0、1、2、3、または4であり、そしてR、T、およびBは以下の通りである:
Rはハロゲン化物、ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)であり、または、iが2、そして2つのRが互いに対してオルトである場合、2つのRは結合し、さらなる環状部分を形成し得る。好ましい錯体は、iが0でない場合、R部分は、ハロゲン化物またはC1〜C12アルキルであり、またはシクロペンタジエニル環上の互いにオルトである、2つのR置換基は一緒になり、5員環または6員環状構造を形成し得る。この環状構造は、非置換または置換され得、好ましくは上記で述べたようなハロゲン化物またはヒドロカルビル基によって置換される。特に好ましいR基は、ハロゲン化物および低級アルキルであり;2つのR置換基が互いにオルトであり、結合して、シクロペンタジエニル環(従って、インデニル部分も)を形成し、必要に応じて低級アルキル基により置換される錯体が特に好ましい。
【0077】
Tはシクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、インドリル、またはアミノボレートベンジルであり、非置換または上記の様に定義されたR基で置換され、またはTはJ(RT)rであり得、ここで、Jは窒素、リン、酸素、または硫黄であり、RTはそれぞれ、水素、ヒドロカルビル、ハロゲン化物−置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、またはアルコキシであり、そしてrはJから2を減じた配位数である。好ましいT置換基は式J(RT)rを有しており、ここでJは窒素またはリンであり、rは1であり、RTはC1〜C12アルキルであり、これは必要に応じて1以上の、代表的には1〜6個のハロゲン原子で置換される。特に好ましいT基はNRT部分であり、ここで、RTは低級アルキルまたはフェニルである。
【0078】
Bは非金属性結合部分であり、例えばヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、置換ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20アルキレン、C2〜C20アルケニレン、C2〜C20アルキニレン、C5〜C20アリーレン、C6〜C24アルカリーレン、またはC6〜C24アラルキレン)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカリーレン)、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキレン、C5〜C20ヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキレン、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカリーレン)である。好ましいB結合は、置換された、または非置換のC1〜C12アルキレンおよびC5〜C14アリーレンである。
【0079】
別の実施形態中では、遷移金属錯体は式(VIII)の構造
【0080】
【化20】
を有し、
ここで:
hは1または2であり;
iは0、1、2、または3であり;
M3は3族元素、4族元素、5族元素、ランタニド、またはアクチニドであり、2つの1価の配位子、またはiが1の場合には2価の配位子で置換され;そして
R、T、およびBは、式(IX)の錯体と同様に定義され、
ここで、R置換基およびTの少なくとも1つは、上で定義された安定化基S*で置換される。
【0081】
なお別の実施形態では、遷移金属錯体は式(XI)の構造
【0082】
【化21】
を有し、
ここで:
Ar1は、シクロペンタジエニル基を含む少なくとも1つの芳香族環を有する1〜3個の芳香族環を含む芳香族部分であり、ここで、Ar1は必要に応じてC1〜C2アルキルまたはC5〜C14アリール置換基で置換され、そしてさらに、Ar1が2または3個の芳香族環を有する場合、環は好ましくは融合し;
M4は3族、4族、5族、6族、ランタニド、またはアクチニド金属であり;
Q1およびQ2は上で定義したものと同様であり、そして好ましくは、ハロゲン化物、低級アルコキシ、低級アルキルおよびアミドから独立して選択され;
R16はヒドロカルビル(例えば、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、C5〜C20アリール、C6〜C24アルカアリール、またはC6〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、ヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)、またはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビル(例えば、置換C1〜C20ヘテロアルキル、C5〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C6〜C24アラルキル、またはヘテロ原子含有C6〜C24アルカアリール)であり、好ましくはC1〜C12ヒドロカルビルであり;
R17、R18、R19、およびR20は、水素、C1〜C12アルキル、およびC5〜C14アリールから独立して選択され、そして好ましくは、水素、低級アルキル、フェニル、およびベンジルから選択され、そしてここで、R19およびR20は、一緒になってカルボニル基を形成し得;
R21は、水素、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり;
eは0または1であり、fはeが1の場合、配位結合であり、そしてfはeが0の場合、共有結合であり、但し、R21が水素の場合、eは0およびfは共有結合であり;
Spは−CR222−、−CR222−CR222−、−O−、−S−、−NR22−、−BR22−、−C(O)−、およびそれらの組み合わせから選択され、ここでR22は、水素、低級アルキルまたはC5〜C14アリールであり、但し、Spは隣接する炭素原子の間に2原子より多く導入せず;そして
gは0または1であり、
ここでR17、R18、R19、R20、およびR21の少なくとも1つは、好ましくは少なくともR21が安定化基S*で置換される。
【0083】
好ましいこのような錯体において:Ar1はシクロペンタジエニル、1、2、3、または4個の低級アルキル置換基で置換されたシクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、およびインドリルであり;M4は4族であり;R16は、C1〜C12アルキルまたはC2〜C12アルケニルである。
【0084】
特に好ましいこのような錯体において:Ar1はシクロペンタジエニル、1、2、3、または4個の低級アルキル置換基で置換されたシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル、またはフルオレニルであり;M4は、Ti、Zr、およびHfから選択され;そしてR16は低級アルキルまたは低級アルケニルである。
【0085】
式(XI)の構造を有する触媒の合成は、Wilson Jr.らに対する米国特許第6,048,992号および第6,369,253号(両方ともSRI International(Menlo Park,CA)に譲渡された)で述べられた方法論を使用して生じ得る。
【0086】
(オレフィンモノマー)
前述の節で説明のあった遷移金属錯体は、官能基化オレフィンモノマーおよび、必要に応じて官能基化され得るか、またはされ得ないオレフィンコモノマーが関与する挿入重合反応を介したオレフィンの重合の触媒として有益である。官能基化オレフィンモノマーは、構造R23R24C=CR25(−[Ln]s−Fn)を有し、ここで、R23、R24、およびR25は、水素またはヒドロカルビルであり、好ましくは水素または低級ヒドロカルビルである。好ましくは、R23およびR24が水素、そしてR25が低級アルキルであり、そして最も好ましくは、R23、R24、およびR25が全て水素である。Fnは以下で述べる官能基であり、Lnは1原子〜6原子の結合であり、好ましくはC1〜C4ヒドロカルビルまたはC1〜C4ヘテロ原子含有ヒドロカルビルであり、sは0または1であり、その結果、結合は任意である。
【0087】
官能基Fnは、例えば、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換カルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換C6〜C20アリールカルバモイル、モノ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、ジ−(C1〜C20アルキル)−置換アミノ、モノ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、ジ−(C5〜C20アリール)−置換アミノ、C2〜C20アルキルアミド、C6〜C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、またはアリールイミノであり得る。好ましい官能基は、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、およびC6〜C20アリールカルボニルオキシを包含する。例示的な官能基化オレフィンモノマーは、酢酸ビニルおよび低級アルキルビニルエーテル(例えば、ブチルビニルエーテル)を包含する。
【0088】
官能基化オレフィンモノマーは、環状基でもあり得、この場合、官能基は、(a)オレフィン炭素原子への結合部分Ln介して、または(b)直接的に、または環状構造に含まれる非オレフィン炭素原子への結合部分Lnを介して、モノマーに結合する。
【0089】
オレフィンコモノマーは、官能基化オレフィンと共重合し得、以下を包含する:直鎖状、または分枝鎖状オレフィン(例えば、エチレン、ポリプロピレン、1−ブテン、3−メチル1−ブテン、1,3−ブタジエン、1−ペンテン、4−メチル1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル1−ヘキセン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1−オクテン、1,6−オクタジエン、1−ノネン、1−デセン、1,4−ドデカジエン、
1−ヘキサデセン、および1−オクタデセン)。シクロオレフィンおよびジオレフィンもまた、使用され得;このような化合物は、例えば、シクロペンテン、3−ビニルシクロヘキセン、ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−ビニルベンゾシクロブタン、テトラシクロドデセン、ジメタノ−オクタヒドロナフタレン、および7−オクテニル−9−ボラビシクロ−(3,3,1)ノナンを包含する。新規のメタロセンを使用して重合され得る芳香族モノマーは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−フルオロスチレン、インデン、4−ビニルビフェニル、アセナフタレン、ビニルフルオレン、ビニルアントラセン、ビニルフェナントレン、ビニルピレン、およびビニルクリセンを包含する。
(触媒系の調製)
本発明の重合反応を行う上で、本明細書中で重合触媒として述べられる遷移金属錯体は、必ずではないが、好ましくは、錯体の電気的に中性な金属中心を、カチオンに変換する触媒活性化剤と組合わせて使用され、これにより錯体がカチオンまたは双性イオンとなる。このように、重合の前、または重合中、重合触媒として選択された遷移金属錯体は、そのような活性化剤を含む触媒系に組み込まれることが好ましい。適切な触媒活性化剤は、代表的には、イオン性共触媒といわれるものがあり;このような化合物は、例えば、フルオロヒドロカルビルボロン化合物(例えば、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレートナトリウム、H+(OCH2CH3)2[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)−フェニル]ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリフルオロメタンスルホネート)、およびBF4−、Ph4B−(Ph=フェニル)、p−トルエンスルホネート、SbF6−、およびPF6−の塩または酸を包含する。活性化剤の混合物が、所望ならば、使用し得る。
【0090】
液状重合またはスラリー重合のために、触媒および活性化剤は、一般的には、これらが溶解している不活性な希釈剤(例えば、脂肪族または芳香族炭化水素(例えば、液化されたエタン、プロパン、ブタン、イソブタン、n−ブタン、n−ヘキサン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロへプタン、メチルシクロへプタン、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、ケロセン、Isopar(登録商標) M、Isopar(登録商標) E、および、これの混合物))の存在下で混合される。重合過程でモノマーまたはコモノマーとして機能する、液体オレフィンなどは、希釈剤としても機能し得;このようなオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、1−ヘキセンなどを包含する。希釈剤中の触媒量は、一般的には、添加される活性化剤により、約0.01〜1.0mmole/リットルの範囲であり、触媒の活性化剤に対する比は、モル換算で、約10:1〜1:2000の範囲であり、好ましくは、約1:1〜約1:200の範囲である。
【0091】
触媒/活性化剤/希釈剤混合物の調製は、通常は、無水条件下、無酸素で、約−90℃〜約300℃の範囲の温度で、好ましくは、約−10℃〜約200℃の範囲で行う。
【0092】
触媒、活性化剤および希釈剤は、適切な反応容器内に添加され、任意の順序で、しかし上に記述したように、通常は、触媒および活性化剤を希釈剤中で混合し、このように調製される混合物が反応容器に添加される。
(重合)
本発明に沿った重合は、単数および複数のモノマー、触媒、および任意の触媒活性化剤の、適切な温度、減圧、加圧または大気圧下で、不活性大気中で、所望のポリマー組成物を生成するのに有効な時間接触させることにより行われる。触媒は、適切な支持体として使用され得るか、または支持体上に支持されて使用され得る。ある実施形態では、遷移金属錯体は、均質な触媒(すなわち、ガス相または液相中の重合工程における非支持触媒)として使用される。溶媒は、所望ならば、使用され得る。反応は、液状またはスラリー条件下、過フッ化炭化水素または同様の液体を用いた懸濁物中で、ガス相で、または固相粉末重合で実施され得る。
【0093】
液相重合は、一般的には、重合希釈剤中のモノマーと触媒/活性化剤混合物との接触を包含しており、重合条件下、すなわち、所望のポリマー生成物を生成するのに十分な時間および温度で反応させる。重合は、窒素、アルゴンなどのような不活性な雰囲気下、または減圧下で行われ得る。好ましくは、重合は、反応しているモノマーの部分圧が最大になる雰囲気下で行われる。液相重合は、減圧、加圧、大気圧下で行われ得る。添加溶媒が無い、すなわち、オレフィンモノマーが希釈剤としても機能する場合、加圧下が好ましい。代表的には、溶媒が無い状態での高圧重合は、0℃〜300℃の範囲の温度で行われ、好ましくは、50℃〜200℃の範囲、そして圧力はおよそ1〜5000気圧のオーダー、代表的には約10〜500気圧の範囲である。溶媒が加えられる場合は、重合は、一般的には、約0℃〜200℃の範囲の温度で行われ、好ましくは約50℃〜約100℃の範囲、圧力は10〜500気圧のオーダーである。
【0094】
重合は、ガス相(例えば、流動層または撹拌層リアクター内)で、およそ60℃〜120℃の範囲の温度、および、圧力はおよそ10〜1000気圧の範囲で行われ得る。
【0095】
ガス相重合およびスラリー重合では、触媒は、不均質の工程、すなわち、不活性無機基材上で支持されて、使用される。従来の材料は支持として使用され、そして代表的には、微粒子で、多孔性の材料であり;例としては、ケイ素およびアルミニウムの酸化物、またはマグネシウムおよびアルミニウムのハロゲン化物である。商業的観点から特に好ましい支持体は、二酸化ケイ素および二塩化マグネシウムである。
【0096】
前述した反応から得られたポリオレフィンは、濾過または別の適切な技術により、回収され得る。所望するならば、添加物および補助薬は、重合の前、最中、または後に、ポリマー組成物中に組み込まれ得;このような化合物は、例えば、色素、酸化防止剤、潤滑剤、および可塑剤を含み得る。
【0097】
本発明は、好ましい特定の実施形態と組合わせて記載されてきたが、前述の説明ならびに例としての以降の例は、説明を意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。本発明の範囲内の他の局面、利点および改変は、、本発明が関する当業者に対して明らかである。
【実施例】
【0098】
(実験)
全ての無機反応および有機反応を、標準のSchlenkおよびドライボックス技術を使用して実行した。アルゴンを、BASF R3−11触媒および4−Å分子ふるいのカラムを通すことによって精製した。窒素を、4−Å分子ふるいを通すことによって精製した。NMRスペクトルを、Varian Gemini300分光計を用いて記録した。
【0099】
他に特定されない限り、全ての試薬を業者から購入し、そしてさらなる精製をせずに使用した。エチレンを、BASF R3−11触媒および4−Å分子ふるいのカラムを通すことによって精製した。トルエンおよびヘプタンを、BASF R3−11触媒および4−Å分子ふるいのカラムを通すことによって精製した。クロロベンゼンを、窒素下、P2O5から蒸留した。ジエチルエーテル、ブチルビニルエーテル、およびベンゼン−d6を、ナトリウム/ベンゾフェノンで乾燥させ、そして減圧下に移した。塩化メチレン−d2を、CaH2で乾燥させ、減圧下に移した。(1,5−COD)PdMeCl(1,5−COD=1,5−シクロオクタジエン、Me=メチル)を、文献の手順に従って調製した。Rulkeら(1993)Inorg.Chem.32:5769。代表的な錯体を調製する手順を、以下に記載する。
【0100】
以下の実施例において、次の慣習を使用して、配位子および触媒を命名する。N,N−ジアリール置換ジイミン配位子ジアザブタ−1,3−ジエンを、「DAD」といい、一方、N−アリール置換ピリジルイミン配位子を、「pyim」という。以下の「DAD」は、ジイミン構造の2つの炭素原子上の基の識別子であり、それに続くジイミン窒素原子の各々に結合した芳香族基上の置換である。従って、DAD(Me)(m−OH)は、構造Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arを有する配位子をいい、ここで、各Ar基は、ヒドロキシ基によってメタ−置換される。配位子が金属錯体に組み込まれるとき、DAD(Me)(m−OH)PdCl2の場合には、用語は、配位子の後に、金属、次いでアニオンが続く。pyim配位子および錯体を参照するために、類似の技術を使用する。
【0101】
(実施例1)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、ルイス酸置換基OSn(CH3)3で置換されたアリ−ル基を有する、N,N−ジアリール置換ジイミン配位子を含有するパラジウム(II)触媒の合成を記載する。この合成を、図1に記載する。
【0102】
((a)配位子前駆体m−アミノメシトールの調製)
250mLの丸底フラスコに、2,4,6−トリメチルアニリン(メシジン(mesidine)、11.88mL、84.62mmol)およびピリジン(50mL)を充填した。この混合物に、ピリジン(50mL)中、p−塩化トルエンスルホニル(16.13g、84.62mmol)の溶液を添加し、この反応混合物を、17時間にわたって室温にて攪拌した。この反応混合物を、37% HCl(125ml)を含む酸性の氷水(800mL)に注いだ。この混合物を、3時間、0℃に冷却し、黄色固体を沈殿させた。この黄色固体を、濾過によって回収し、そして5% NaOH(18L)に溶解した。この混合物のpHが5に達するまで、この溶液に、37% HCl(1850mL)を添加した。得られた白色沈殿物を、回収し、水(800mL)で洗浄し、次いで真空中で乾燥させ、N−(p−トルエンスルホニル)−2,4,6−トリメチルアニリン(N−(p−トルエンスルホニル)メシジン)(21.73g、89%)を得た。1H NMR(300MHz、CDCl3):δ7.6(d,2H),7.2(d,2H),6.8(s,2H),5.9(s,1H),2.4(s,3H),2.3(s,3H)2.0(s,3H)。
【0103】
500mLの丸底フラスコに、上で調製したようなN−(p−トルエンスルホニル)メシジン(19.7g、67.9mmol)、酢酸(30mL)、およびCHCl3(400mL)を充填した。混合物を、5分間攪拌し、N−(p−トルエンスルホニル)メシジンを溶解した。この溶液に、Pb(OAc)4(32g、68.4mmol)を添加し、この反応混合物を、24時間にわたって室温で攪拌した。得られた褐色混合物を、水(1L)に注いで、激しく振盪させ、次いでセライトに通して濾過し、黄色濾液を得た。この濾液を、5% NaOH(水溶液、3×150mL)で洗浄し、乾固するまでエバポレートし、黄色固体を得た。400mLの熱EtOHからの再結晶化により、3−アセトキシ−N−p−トルエンスルホニルメシジン(9.89g、42%)の黄色針状物を得た。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ7.8(d,2H),7.4(d,2H),6.8(s,1H),5.9(s,1H),2.4(s,3H),2.1(s,3H),1.85(s,3H),1.80(s,3H)、および1.64(s,3H)。
【0104】
250mLの丸底フラスコに、濃H2SO4(50mL)を充填し、−20℃まで冷却した。3−アセトキシ−N−p−トルエンスルホニルメシジン(9.89g、28.5mmol)を、このフラスコに1時間にわたってゆっくりと添加し、茶色溶液を得た。この溶液を、0℃で8時間攪拌し、そして−25℃で16時間保存した。この溶液を、約100mLの氷に注ぎ、得られた茶色−白色混合物を、室温で3時間攪拌した。茶色濾液を、ガラスフリットに通して濾過することによって回収し、28%水酸化アンモニウム(約120mL)でpH7に中和した。次いで、この混合物を、16時間にわたって10℃まで冷却した。灰色沈殿物を回収し、真空中で乾燥させ、次いで200mLのCHCl3で抽出した。茶色抽出物をエバポレートして、淡茶色固体として、m−アミノメシトール(1.62g、38%)を得た。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ7.6(s,1H),6.5(s,1H),4.2(s,1H),2.0(s,3H),1.95(s,3H)、および1.94(s,3H)。
【0105】
((b)Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arの合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(Me)(m−OH)」;化合物1))
100mLのSchlenkフラスコに、m−アミノメシトール(700mg、4.63mmol)、メタノール(50mL)、および88%蟻酸(0.24mL)を充填した。この混合物に、2,3−ブタジオン(0.20mL、2.3mmol)を、シリンジによって添加し、次いでこの反応混合液を、6時間還流して攪拌し、乾固するまでエバポレートしてオレンジ色固体1を得た。この固体を、乾燥ペンタン(50mL)で洗浄し、真空中で乾燥させた(0.61g、75%)。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ8.0(s,2H),6.8(s,2H),2.1(s,6H),1.9(s,6H)、および1.8(s,6H)。1H NMR(300MHz、CD2Cl2):δ6.8(s,2H),4.7(br,2H),2.2(s,6H),2.0(s,6H)、および1.9(s,6H)。
【0106】
((c)Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arの合成、Ar=カリウム2,4,6−トリメチル−3−フェノキシド(「DAD(Me)(m−O−)(K+)」;化合物2))
1の赤色溶液(299mg、0.848mmol)に、KN(SiMe3)2溶液を滴下し、不均質の黄色/茶色混合物を得た。この混合物を、室温で17時間にわたって攪拌した。黄色/茶色固体を、濾過によって回収し、そしてTHF(3×3mL)で洗浄し、次いで真空中で乾燥させた。収量は、405mgであり、生成物2は、0.6当量のTHFを含んだ。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ6.4(s,2H),3.4(m,0.6当量のTHF),1.9,1.7、および1.6(重複 s、合計24H)、1.8(m,0.6当量のTHF)。
【0107】
((d)Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Arの合成、Ar=(2,4,6−トリメチル−3−フェノキシ)トリメチルスズ(「DAD(Me)(m−OSnMe3)」;化合物3))
Et2O(5mL)中、塩化トリメチルスズ(74mg、0.371mmol)の溶液を、Et2O(5mL)中、2(80mg、0.186mmol)の溶液に滴下し、そして混合物を、室温で3日間攪拌した。3時間以内に、黄色溶液は、不均質な黄色混合物になった。黄色/白色固体3を、濾過によって回収し、真空中で乾燥させた(42mg、33%)。1H NMR(300MHz、CD2Cl2):δ6.8(s,2H),2.1,1.96,1.9および1.8(重複s,合計24H),0.46(s,18)。
【0108】
((e)[Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar]PdMeClの合成、Ar=(2,4,6−トリメチル−3−フェノキシ)トリメチルスズ(「DAD(Me)(m−OSnMe3)PdMeCl」;化合物4))
5mLのCH2Cl2中、冷却した(−30℃)3(20mg、0.03mmol)の溶液に、5mLのCH2Cl2中、(1,5−COD)PdMeCl(8mg、0.03mmol)の冷却した溶液を滴下した。この反応混合物を、室温で17時間攪拌した。この混合物を、乾固するまでエバポレートして、オレンジ色固体4を得た(30mg)。1H NMR(300MHz、CD2Cl2):δ6.92および6.88(s,2H),5.6および2.4(CODなし),2.15,2.07,2.01,1.96,1.93(重複 s、合計24H),0.5(s,18H),0.27(s,3H)。
【0109】
(実施例2)
(代表的な触媒合成)
([Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar]PdCl2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(Me)(m−OH)PdCl2」;化合物5))
参照した錯体を、以下のように図2に記載した反応スキームを使用して合成した。20mLのバイアルに、1、(1,5−COD)PdCl2(78mg、0.28mmol)、および5mLのTHFを充填し、そして得られたオレンジ色スラリーを、室温で16時間にわたって攪拌した。このオレンジ色固体をフリットで回収し、次いでCH2Cl2(10mL)に懸濁した。このスラリーを、1時間攪拌し、次いでオレンジ色粉末をフリットに回収し、そして真空中で乾燥させ、生成物5を得た(0.090g、61%)。1H NMR(300MHz、THF−d8):δ7.27(s,2H),6.81(s,2H),2.19,2.16,2.15(重複 一重項,合計18H),2.06(s,6H)。
【0110】
(実施例3)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、図3に示されるような、本明細書中で触媒または触媒前駆体として適切な、別のパラジウム(II)錯体の合成を記載する。
【0111】
((a)Ar−N=C(H)−C(H)=N−Arの合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(H)(m−OH)」;化合物6))
MeOH(5mL)中、グリオキサール(40重量%水溶液、70mg、0.482mmol)溶液に、MeOH(10mL)中、m−アミノメシトール(146mg、0.968mmol)の溶液を添加した。得られた均質なオレンジ色/黄色混合物を、室温で17時間にわたって攪拌した。この反応混合物を、エバポレートし、60℃で乾燥させて、黄色固体を得た。ジエチルエーテルからの再結晶化により、黄色針状物(6mg)として所望の生成物6を得た。この黄色濾液を乾固するまでエバポレートして黄色粉末(118mg)を得た。これらの生成物を合わせて、総収量124mg(78%)を得た。1H NMR(300MHz、CDCl3):δ8.0(s,2),6.9(s,2,H),4.7(s,2),2.2,2.07、および2.06(全てs、合計18H)。
【0112】
((b)[Ar−N=C(H)−C(H)=N−Ar]PdCl2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(H)(m−OH)PdCl2」;化合物7))
20mLのバイアルに、6(95mg、0.286mmol)、(1,5−COD)PdCl2(81mg、0.284mmol)、および10mLのCH2Cl2を充填した。室温で3日間攪拌した後、この混合物は、黄色溶液から茶色スラリーに変化した。この茶色固体を、ガラスフリットに回収し、CH2Cl2で洗浄し、次いで真空中で乾燥させ、茶色粉末(104mg、73%)を得た。1H NMR(300MHz、DMSO):δ8.33(s,2H),8.17(s,2H),6.82(s,2H),2.18(s,6H),2.17(s,6H),2.14(s,6H)。
【0113】
(実施例4)
(代表的な触媒合成)
([Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar]NiBr2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「DAD(Me)(m−OH)NiBr2」;化合物8))
参照した錯体を、下記のとおり、図4に記載した反応スキームを用いて合成した。20mLのバイアルに、1(50mg、0.14mmol)、(DME)NiBr2(DME=1,2−ジメトキシエタン)(42mg,0.14mmol)、および5mLのTHFを充填し、そして茶色スラリーを、16時間にわたって室温で攪拌した。この茶色固体を、フリットに回収し、CH2Cl2(10mL)で洗浄して、次いで真空中で乾燥させて8(0.038g、48%)を得た。
【0114】
(実施例5)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、図5に記載するようなピリジルイミン(「pyim」)配位子を含有する遷移金属錯体の合成を記載する。
【0115】
((a)Ar−N=C(H)−2−ピリジンの合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「pyim(m−OH)」;化合物9))
250mLの丸底フラスコに、3−アミノ−2,4,6−トリメチルフェノール(0.96g、6.3mmol)、ピリジンカルボキシアルデヒド(0.68g、6.3mmol)、およびメタノール(75mL)を充填した。この混合物を、16時間攪拌した。黄色溶液を、乾固するまでエバポレートした。この固体を、トルエン(2×10mL)で洗浄し、そして真空中で乾燥させて、黄色粉末9(1.4g、91%)を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ8.69(d,1H),8.27(d,1H),8.24(s,1H),7.85(t,1H),7.41(dd,1H),6.84(s,1H),4.92(br,1H),2.21(s,3H),2.04(s,3H),2.03(s,3H)。
【0116】
((b)Ar−N=C(H)−2−ピリジンの合成、Ar=カリウム2,4,6−トリメチル−3−フェノキシド(「pyim(m−O−)(K+)」;化合物10))
バイアルに、9(0.25g、1.03mmol)およびジエチルエーテル(5mL)を充填した。ジエチルエーテル(5mL)中、ヘキサメチルジシラジドカリウム(0.206g、1.03mmol)を添加すると、この混合物はオレンジ色スラリーになった。この溶液を、2時間攪拌し、次いで−30℃に冷却した。オレンジ色固体を、ガラスフリットに回収し、真空中で乾燥させた(0.254g、88%)。1H NMR(300MHz、DMSO):δ8.65(d,1H),8.16(d,1H),8.08(s,1H),7.91(t,1H),7.45(m,1H),6.41(s,1H),1.90(s,3H)1.87(s,3H),1.78(s,3H)。
【0117】
((c)Ar−N=C(H)−2−ピリジンの合成、Ar=B−(2,4,6−トリメチル−3−フェノキシ)カテコールボラン(「pyim(m−OBcat)」;化合物11))
バイアルに、10(0.131g、0.47mmol)およびCH2Cl2(5mL)を充填し、そして−30℃に冷却した。CH2Cl2(5mL)中、B−クロロカテコールボラン(0.072g、0.47mmol)の冷却した(−30℃)溶液を添加すると、この混合物は、赤−オレンジ色スラリーから黄褐色溶液に変化した。この混合物を、室温まで温め、1時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートして、黄色固体を得た。この溶液を、CH2Cl2で抽出し、セライトに通して濾過し、次いで乾固するまでエバポレートして、黄−緑色粉末11(これは、熱感受性に起因して−30℃で保存した)(0.138g、82%)を得た。1H NMR(300MHz、CD2Cl2):δ8.74(d,1H),8.50(s,1H),8.37(d,1H),7.98(t,1H),7.52(t,1H),7.13(m,2H),7.06(m,2H),7.00(s,1H),2.22(s,3H),2.15(s,3H),2.06,(s,3H)。
【0118】
((d)11のメタレーション)
先の節で調製した配位子11は、任意の適切なメタレーション試薬および本明細書中に記載される手順を用いてメタレーションされ得る。好ましいパラジウム試薬としては、(1,5−COD)PdMeCl、(1,5−COD)PdCl2、(1,5−COD)PdMe2、および(1,5−COD)Pd(CH2SiMe3)2が挙げられるが、一方、好ましいニッケル試薬は、(DME)NiBr2であり、そして好ましい亜鉛試薬は、アリールエチル亜鉛化合物(例えば、フェノキシエチル亜鉛(EtZnOPh)である。(1,5−COD)PdMeCl、(1,5−COD)PdCl2、および(DME)NiBr2は、業者から得られ得、そして(1,5−COD)Pd(CH2SiMe3)2の合成を、以下の実施例8に記載する。他のメタレーション試薬を以下のとおり合成した:
(1,5−COD)PdMe2:100mLのSchlenkフラスコに、(1,5−COD)PdMeCl(263mg、0.996mmol)およびジエチルエーテル(30mL)を充填し、次いで−78℃に冷却した。臭化メチルマグネシウム(0.8mLの1.5Mトルエン/THF溶液、1.2mmol)を滴下し、反応混合液を、−78℃で3時間にわたって攪拌した。この溶媒を、−30℃で取り除き、灰色固体を得た。この固体を、冷却したペンタン(−30℃、3×30mL)で抽出し、この抽出物を、セライトに通して濾過し、無色液体を得た。この液体を、−30℃でエバポレートし、灰色粉末(73mg、30%)を得た。
【0119】
EtZnOPh:ドライボックスにおいて、100mLのSchlenkフラスコに、Et2O(30mL)を充填し、そして−78℃に冷却した。ジエチル亜鉛(9.0mLの1.0Mヘキサン溶液、9.0mmol)をシリンジによって添加した。フェノール(Et2O(10mL)中、0.847gのフェノール)溶液を、このSchlenkフラスコに添加し、そして無色反応混合物を、−78℃で1時間攪拌した。この混合物をエバポレートして、白色固体(1.593g、94%)を得た。1H NMR(300MHz、DMSO−d6):δ7.1,6.6(m,5H),1.2(t,3H),0.1(m,2H)。
【0120】
(実施例6)
(代表的な触媒合成)
([Ar−N=C(Me)−C(Me)=N−Ar]PdMeClの合成、Ar=2,4,6−(トリメチル−3−カテコールボラン)(「DAD(Me)(m−O−Bcat)PdMeCl」;化合物13))
参照した錯体を、以下のとおり、図6に記載した反応スキームを用いて合成した。実施例5の(c)部に記載したように、B−クロロカテコールボランとの反応によって、化合物1から触媒を調製し、ボラン−置換配位子12(Ar−N=C(Me)−C(Me)−N−Ar、Ar=2,4,6−(トリメチル−3−カテコールボラン)(「DAD(Me)(O−Bcat)」)を得た。この生成物を、先の実施例に記載するように単離し、次いで実施例1の(e)部に記載したように(1,5−COD)PdMeClを用いてメタレーションし、所望の生成物13を得た。
【0121】
(実施例7)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、図7に記載するような、ピリジルイミン(「pyim」)配位子を含有する別の遷移金属錯体の合成を記載する。
【0122】
((a)Ar−N=C(H)−2−ピリジンの合成、Ar=2−ヒドロキシフェニル(「pyim(o−OH)」;化合物14))
250mLの丸底フラスコに、2−アミノフェノール(3.15g、28.9mmol)、2−ピリジンカルボキシアルデヒド(3.14g、29.3mmol)、およびメタノール(75mL)を充填した。この混合物を、15時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートして、黄褐色固体(5.20g、91%)として14を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ8.84(s,1H),8.70(br,1H),8.18(d,1H),7.80(t,1H),7.62(br,1H),7.39(m,2H),7.25(t,1H),7.04(d,1H),6.95(t,1H)。
【0123】
((b)[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]PdCl2、Ar=2−ヒドロキシフェニル(「pyim(o−OH)PdCl2」;化合物15))
ドライボックスにおいて、20mLのバイアルに、14(0.20g、1.0mmol)、(1,5−COD)PdCl2(0.29g、1.0mmol)およびCH2Cl2(10mL)を充填した。この混合物を、24時間攪拌し、そしてこの溶液を、黄褐色沈殿物からデカントした。この固体を、トルエン(2×5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させ、黄褐色粉末(0.30g、79%)として15を得た。1H NMR(DMSO−d6):δ10.05(br,1H),9.05(d,1H),8.73(s,1H),8.39(t,1H),8.20(d,1H),7.97(t,1H),7.19(m,2H),6.92(d,1H),6.83(t,1H)。
【0124】
(実施例8)
(代表的な触媒合成)
本実施例は、図8に記載するような、ピリジルイミン(「pyim」)配位子を含有する別の遷移金属錯体の合成を記載する。
【0125】
(メタレーション試薬(1,5−COD)Pd(CH2SiMe3)2の合成(化合物16))
100mLのSchlenkフラスコに、(1,5−COD)PdCl2(200mg、0.701mmol)および30mLのEt2Oを充填し、そして−78℃に冷却した。トリメチルシリルメチルリチウム(1.4mLの1Mペンタン溶液、1.4mmol)を、Et2O(10mL)で希釈した。得られた溶液を、カニューレによってSchlenkフラスコに添加し、そしてこの反応混合物を、−78℃にて1.5時間攪拌した。次いでこの溶媒を、−30℃で取り除き、茶色固体(74mg、27%)として16を得た。1H NMR(300MHz、C6D6):δ5.1(m,4H),1.9(m,8H),0.8(s,4H),0.3(s,18H)。
【0126】
((b)[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH2SiMe3)2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル)(「pyim(m−OH)Pd(CH2SiMe3)2」;化合物17))
ドライボックスにおいて、100mLの丸底フラスコに、16(0.30g、0.77mmol)およびジエチルエーテル(15mL)を充填した。この混合物を、−30℃に冷却し、次いで、実施例5の(a)部に記載したように合成した、配位子9(0.19g、0.77mmol)を、ジエチルエーテル溶液(5mL)として滴下した。この混合物を、室温まで温めると、次いで暗赤色に変化した。この混合物を、2時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートして、赤色油状固体を得た。この固体を、ヘプタン(10mL)に溶解し、そしてセライトに通して濾過し、次いで乾固するまでエバポレートした。この固体を、ヘプタンから再結晶化して、赤色結晶(多重フラクション、0.98g,25%)を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ8.82(d,1H),8.32(s,1H),8.04(t,1H),7.70(m,2H),6.91(s,1H),4.80(br,1H),2.25(s,3H),2.16(s,6H),0.19(s,2H),−0.03(s,9H),−0.22(s,9H),−0.30(s,2H)。
【0127】
(実施例9)
(代表的な触媒合成)
([Ar−N=C(H)−2−ピリジン]PdCl2の合成、Ar=2,4,6−トリメチル−3−ヒドロキシフェニル(「pyim(m−OH)PdCl2」化合物18))
以下のとおり、図9に記載した反応スキームを使用して、参照錯体を合成した。ドライボックスにおいて、20mLのバイアルに、実施例5の(a)部に記載したように合成した、配位子9、(0.200g、0.825mmol)、(1,5−COD)PdCl2(0.235g、0.823mmol)、およびCH2Cl2(10mL)を充填した。この混合物は、オレンジ色沈殿物をともなってオレンジ色になった。このスラリーを16時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートし、黄色粉末を得た。この粉末を、トルエン(2×10mL)およびCH2Cl2(10mL)で洗浄した。この粉末を、ガラスフリットに回収し、そして真空中で乾燥させて、18(0.277g、80%)を得た。1H NMR(DMSO−d6):δ9.06(d,1H),8.59(s,1H),8.42(t,1H),8.32(s,1H),8.16(d,1H),7.99(t,1H),6.82(s,1H),2.14(s,6H),2.12(s,3H)。
【0128】
(実施例10)
(本発明のPd/Sn触媒を使用する重合)
以下の一般的な手順を、図10に記載したように、重合触媒としてDAD(Me)(m−OSnMe3)Pd−BAF 19を使用するオレフィンモノマーの重合に用いた:塩化メチレン(150mL)を、300mLガラス反応器に入れ、次いでフラッシュし、15psigの圧力までエチレンを充填した。この溶液を、室温で15分間平衡化し、次いで、実施例1に記載したとおりに合成した、触媒4(約0.01mmol)の溶液、およびCH2Cl2(10mL)中の極性モノマーを添加した。CH2Cl2(10mL)中、NaBAF(1等量)の溶液を、アルゴン過剰圧力で反応器に注入してインサイチュで活性触媒19を形成し、重合を開始した。所望の期間後、アリコートを除去し、乾固するまでエバポレートした。サンプルを秤量し、1H NMRによって分析した。選択されたモノマーが、エチレンおよびBVEであった場合、NMRスペクトルは、生成物中のポリエチレンの存在を確認し、そしてこの触媒が、現在のBrookhart触媒(DAD(Me)Pd−BAF)で観察されるのと比べて、相対的に低い濃度のBVEで驚くべき耐性を有することが見出された。エチレンおよび酢酸ビニルをモノマー反応物として選択した場合に、同様のことが観察された。
【0129】
(実施例11)
(本発明の双性イオンPd/Al触媒を用いる重合)
以下の一般的な手順を、重合触媒としてDAD(Me)(m−OAlMe2)Pd−zwit 20を使用するオレフィンモノマーの重合に用いた:ドライボックスにおいて、20mLのバイアルに、1−ヘキセン(0.7g)、実施例2に記載したように合成した触媒5(0.004g)、およびトルエン(2mL)を充填した。このスラリーを攪拌し、AlM2Cl(15mL、2当量)を、シリンジによって添加し、インサイチュで触媒20を形成した。この混合物は、黄色で、不均質になった。極性モノマー(0.2g)を添加し、そして混合物を、16時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートした。得られたポリマーを、秤量し、1H NMRによって分析した。いくつかの場合において、このポリマーを、トルエンに再溶解し、そしてNMR分析の前にアセトンで沈殿させた。
【0130】
選択されたモノマーが、1−ヘキセンおよびBVEであった場合、NMRスペクトルは、生成物中のポリへキセンおよびポリ(BVE)の存在を確認した。
【0131】
(実施例12)
(本発明のカチオン性Pd/Al触媒を使用する重合)
以下の一般的な手順を、図12に記載したように、重合触媒としてDAD(Me)(m−OAlMe2)Pd−BAF 21を使用するオレフィンモノマーの重合に用いた:ドライボックスにおいて、20mLのバイアルに、1−ヘキセン(0.7g)、化合物5(0.004g)、およびトルエン(2mL)を充填した。スラリーを攪拌し、そしてAlMe2Cl(15μL、2当量)を、シリンジによって添加した。この混合物は、黄色で、均質になった。5分後、HBAF(0.008g、1当量)を添加すると、この混合物は、赤−茶色に変わり、インサイチュで触媒21を形成した。さらに5分後、極性モノマー(0.2g)を添加し、そしてこの混合物を16時間攪拌し、次いで乾固するまでエバポレートした。得られたポリマーを、秤量し、1H NMRによって分析した。NMRスペクトルは、実施例11の重合反応において使用された双性イオンPd/Al触媒の場合と同じように、生成物中のポリへキセンおよびポリ(BVE)の存在を確認した。
【0132】
(実施例13)
(本発明の双性イオンNi/Al触媒を使用する重合)
図13に記載するように、重合触媒としてDAD(Me)(m−OAlMe2)Ni−zwit 22を用いて、実施例11の手順を繰り返した:本実施例において、触媒8を、触媒5の代わりに使用した。反応器へのAlMe2Clの添加の際、活性触媒22がインサイチュで形成されることが理解される。得られた重合生成物を秤量し、1H NMRによって分析した。NMRスペクトルは、実施例11の重合反応において使用された双性イオンPd/Al触媒の場合と同じように、生成物中のポリへキセンおよびポリ(BVE)の存在を確認した。
【0133】
(実施例14)
(本発明のカチオン性Ni/Al触媒を使用する重合)
図14に記載するように、重合触媒としてDAD(Me)(m−OAlMe2)Ni−BAF 23を用いて、実施例12の手順を繰り返した:本実施例において、触媒8を、触媒5の代わりに使用した。反応器へのAlMe2ClおよびHBAFの添加の際、活性触媒23がインサイチュで形成されることが理解される。1H NMRスペクトルは、生成物中のポリへキセンおよびポリ(BVE)の存在を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、本発明の代表的なPd(II)触媒の合成を模式的に示しており、ここで、α−ジイミン配位子は、実施例1に記載されるように−OSn(CH3)3安定化基で置換されている。
【図2】図2は、実施例2で述べた、本発明の別のPd(II)触媒の合成をを模式的に示している。
【図3】図3は、本発明の類似Pd(II)触媒の合成を模式的に示しており、ここで、α−ジイミン配位子の隣接する炭素原子は、実施例3に記載されるように、メチル基で置換され以外は非置換である。
【図4】図4は、本発明の代表的なNi(II)触媒の合成を模式的に示しており、ここで、α−ジイミン配位子は、実施例4に記載されるように、ヒドロキシル基で置換される。
【図5】図5は、本発明の別の代表的な触媒の合成を模式的に示しており、ここで、ピリジルイミン配位子は、実施例5に記載されるように、−O−カテコールボラン安定化基で置換される。
【図6】図6は、Pd(II)触媒の合成を模式的に示しており、これは、実施例6に記載されるように、α−ジイミン配位子が、−O−カテコールボラン安定化基で置換される。
【図7】図7は、実施例7に記載されるように、ヒドロキシル置換ピリジルイミン配位子を持つ、本発明のPd(II)触媒の合成を模式的に示している。
【図8】図8は、実施例8に記載されるように、本発明の類似のPd(II)触媒の合成を模式的に示すが、一価の配位子が−CH2−Si(CH3)3基である。
【図9】図9は、本発明の類似Pd(II)触媒の合成を模式的に示すが、実施例9に記載されるように、それぞれの一価の配位子が塩素原子である。
【図10】図10は、実施例10のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、カチオン性Pd(II)/Sn錯体は、重合触媒として使用されている。
【図11】図11は、実施例11のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、双イオン性Pd(II)/Al錯体は、重合触媒として使用されている。
【図12】図12は、実施例12のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、カチオン性Pd(II)/Al錯体は、重合触媒として使用されている。
【図13】図13は、実施例13のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、双イオン性Ni(II)/Al錯体は、重合触媒として使用されている。
【図14】図14は、実施例14のオレフィン重合反応を模式的に示しており、ここで、カチオン性Ni(II)/Al錯体は、重合触媒として使用されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンダント官能基により置換されたポリオレフィンを調製する方法であって、該方法は、重合条件下で、(a)極性および電子供与性官能基を保持するオレフィンの炭素原子上で置換したオレフィンを構成する、官能基化オレフィンモノマーと、(b)オレフィンモノマーの連続的な挿入反応によって、段階的なポリマー合成を促進する触媒有効量の遷移金属錯体とを接触させる工程を包含し、該錯体は、式(I)の構造:
【化1】
を有し、
ここで、M1は酸化状態wを有する遷移金属であり;
xおよびyは、0からwの範囲の整数であり、xとyの合計はwであり;
X1およびX2は、M1に配位するヘテロ原子であり;
R1は、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンであり;
S*は、該官能基と非共有結合を形成し、それによって該連続的な反応のそれぞれの間、遷移金属錯体に対して、官能基オレフィンモノマーを単一の立体化学構造に維持するルイス酸安定化基であり、それによってそれぞれの連続的な反応の間、該遷移金属錯体に対して、官能基化オレフィンの転移を防ぎ;
R2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルもしくは−R1−S*であり;
Qは、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンリンカーであり、さらにここで、Qにおける隣接する原子上の2つ以上の置換基は、結合されて、環状基を形成し得;そして
Q1およびQ2は、1価のラジカルである、方法。
【請求項2】
前記オレフィン炭素原子は、直接、前記官能基により置換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2のオレフィンモノマーと前記遷移金属錯体とを同時に接触させて、それにより前記ポリオレフィンがコポリマーになる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ここで、前記第2のオレフィンモノマーは官能基により置換されない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、ここで:
前記官能基は、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C6〜C20アリールオキシカルボニル、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、モノ(C1〜C20アルキル)置換カルバモイル、ジ(C1〜C20アルキル)置換カルバモイル、モノ(C1〜C20アルキル)置換C6〜C20アリールカルバモイル、ジ(C1〜C20アルキル)置換C6〜C20アリールカルバモイル、モノ(C1〜C20アルキル)置換アミノ、ジ(C1〜C20アルキル)置換アミノ、モノ(C5〜C20アリール)置換アミノ、ジ(C5〜C20アリール)置換アミノ、C2〜C20アルキルアミド、C6〜C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、およびアリールイミノから選択され;そして
S*は、−OBE2、−OAlE2、−OPE2、−OSnE3、−OSiE3、および−OZnEから選択され、ここで、Eは、ハロゲン化物、ヒドロキシル、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C5〜C14アリール、およびC5〜C14アリールオキシより選択される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、ここで:
前記官能基は、ヒドロキシル,C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、およびC6〜C20アリールオキシカルボニルから選択され;そして前記安定化基は、−OAlCl2、−OAl(CH3)2、−OSn(CH3)3、および−OZnO−フェニルから選択される、方法。
【請求項7】
M1は、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、V(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Ti(IV)、Ru(II)、Rh(II)、Os(II)、Ir(II)、およびPt(II)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
wが2、M1が、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、またはNi(II)であり、xが1、そしてyが1の請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、ここで、Qは前記式(II)の構造
【化2】
を有し、それにより、前記遷移金属錯体は式(III)の構造
【化3】
を有し、
ここで:
R3、R4、R5およびR6は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、およびヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルから、独立して選択され、ここで、存在する任意の置換基は、S*と同じであり得るか、あるいは、同じであり得ないルイス酸安定化部分を包含し得、そしてさらにここで、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のいずれか2つ以上は、一緒になって、環状基を形成し得;そして
zは、0または1である、方法。
【請求項10】
X1およびX2がNである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
zが0である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
R1はアリーレンまたは置換アリーレンであり、R2はアリールまたは置換アリール、R3およびR4は水素またはメチルであり、M1はPd(II)またはNi(II)であり、xは1であり、yは1であり、そしてQ1およびQ2はCl、BrおよびCH3から独立して選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記錯体は、式[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]PdCl2、[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]Pd(CH3)Cl、[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]Pd(CH3)2、もしくは[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]NiBr2であり、ここで、Arは、ヒドロキシルまたはS*によって3位の位置で置換された2,4,6−トリメチルフェニルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
R1がアリーレンもしくは置換アリーレン、R2およびR4は一緒になってピリジン環を形成し、R3は水素であり、M1はPd(II)もしくはNi(II)であり、xは1であり、yは1であり、Q1およびQ2はCl、BrおよびCH3から独立して選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記錯体は、式[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]PdCl2、[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH3)Cl、[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH3)2、もしくは[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]NiBr2であり、Arは、ヒドロキシルまたはS*によって3位の位置で置換された2,4,6−トリメチルフェニルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記官能基化オレフィンモノマーと前記遷移金属錯体とを該錯体をカチオン性錯体または双性イオン錯体に変換するのに有効な触媒活性化剤と接触させる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒活性剤が塩または弱配位アニオンの酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記弱配位アニオンの酸は、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル」ボレート、四(ペンタフルオロフェニル)ボレート、H+(OCH2CH3)2[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラフェニルボレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、SbF6−、およびPF6−より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記調製されたポリオレフィンに立体規則性がある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記官能基化オレフィンモノマーが酢酸ビニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記官能基化オレフィンモノマーがビニルエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ビニルエーテルが低級アルキルビニルエーテルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記官能基化オレフィンモノマーが酢酸ビニルであり、前記第2のオレフィンモノマーがエチレンであり、前記ポリオレフィンがポリ(エチレン酢酸ビニル)である、請求項4に記載の方法。
【請求項24】
遷移金属錯体であって、該錯体は、式(I)の構造:
【化4】
を有し、
ここで、M1は酸化状態wを有する遷移金属であり;
xおよびyは、0からwの範囲の整数であり、xとyの合計はwであり;
X1およびX2は、M1に配位するヘテロ原子であり;
R1は、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンであり;
S*は、ルイス酸安定化基であり、;
R2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルもしくは−R1−S*であり;
Qは、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンリンカーであり、さらにここで、Qにおける隣接する原子上の2つ以上の置換基は、結合されて、環状基を形成し得;そして
Q1およびQ2は、1価のラジカルである、遷移金属錯体。
【請求項25】
M1は、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、V(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Ti(IV)、Ru(II)、Rh(II)、Os(II)、Ir(II)、およびPt(II)から選択される、請求項24に記載の錯体。
【請求項26】
wが2であり、M1が、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、またはNi(II)であり、xが1であり、そしてyが1である、請求項25に記載の錯体。
【請求項27】
請求項26に記載の錯体であって、Qは式(II)の構造
【化5】
を有し、それにより該遷移金属錯体は式(III)の構造
【化6】
を有し、ここで:
R3、R4、R5およびR6は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、およびヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルより、独立して選択され、ここで、存在する任意置換基は、S*と同じであり得るか、あるいは、同じであり得ないルイス酸安定化部分を包含し得、そしてさらにここで、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のいずれか2つ以上は、一緒になって、環状基を形成し得;そして
zは、0または1である、錯体。
【請求項28】
X1およびX2がNである、請求項27に記載の錯体。
【請求項29】
zが0である、請求項28に記載の錯体。
【請求項30】
R1はアリーレンまたは置換アリーレンであり、R2はアリールまたは置換アリールであり、R3およびR4は水素またはメチルであり、M1はPd(II)またはNi(II)であり、xは1であり、yは1であり、そしてQ1およびQ2はCl、BrおよびCH3から独立して選択される、請求項29に記載の錯体。
【請求項31】
ここで、前記錯体は、前記構造[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]PdCl2、[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]Pd(CH3)Cl、[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]Pd(CH3)2、もしくは[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]NiBr2であり、ここで、Arは、ヒドロキシルまたはS*によって3位の位置で置換された2,4,6−トリメチルフェニルである、請求項30に記載の錯体。
【請求項32】
ここで、R1がアリーレンもしくは置換アリーレン、R2およびR4は一緒になってピリジン環を形成し、R3は水素、M1はPd(II)もしくはNi(II)、xは1、yは1、Q1およびQ2はCl、BrおよびCH3より独立して選択する、請求項31に記載の錯体。
【請求項33】
前記錯体は、式[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]PdCl2、[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH3)Cl、[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH3)2、もしくは[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]NiBr2であり、ここで、Arは、ヒドロキシルまたはS*によって3位の位置で置換された2,4,6−トリメチルフェニルである、請求項29に記載の錯体。
【請求項34】
請求項24に記載の遷移金属錯体および該錯体をカチオン性錯体または双性イオン錯体に変換するのに有効な触媒活性化剤を含む、触媒系。
【請求項35】
前記触媒活性剤が塩または弱配位アニオン酸である、請求項34に記載の触媒系。
【請求項36】
前記弱配位アニオンは、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、H+(OCH2CH3)2[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラフェニルボレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、SbF6−、およびPF6−から選択される、請求項35に記載の触媒系。
【請求項37】
不活性な重合希釈剤をさらに含む、請求項36に記載の触媒系。
【請求項38】
前記希釈剤が揮発性の炭化水素溶媒である、請求項37に記載の触媒系。
【請求項1】
ペンダント官能基により置換されたポリオレフィンを調製する方法であって、該方法は、重合条件下で、(a)極性および電子供与性官能基を保持するオレフィンの炭素原子上で置換したオレフィンを構成する、官能基化オレフィンモノマーと、(b)オレフィンモノマーの連続的な挿入反応によって、段階的なポリマー合成を促進する触媒有効量の遷移金属錯体とを接触させる工程を包含し、該錯体は、式(I)の構造:
【化1】
を有し、
ここで、M1は酸化状態wを有する遷移金属であり;
xおよびyは、0からwの範囲の整数であり、xとyの合計はwであり;
X1およびX2は、M1に配位するヘテロ原子であり;
R1は、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンであり;
S*は、該官能基と非共有結合を形成し、それによって該連続的な反応のそれぞれの間、遷移金属錯体に対して、官能基オレフィンモノマーを単一の立体化学構造に維持するルイス酸安定化基であり、それによってそれぞれの連続的な反応の間、該遷移金属錯体に対して、官能基化オレフィンの転移を防ぎ;
R2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルもしくは−R1−S*であり;
Qは、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンリンカーであり、さらにここで、Qにおける隣接する原子上の2つ以上の置換基は、結合されて、環状基を形成し得;そして
Q1およびQ2は、1価のラジカルである、方法。
【請求項2】
前記オレフィン炭素原子は、直接、前記官能基により置換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2のオレフィンモノマーと前記遷移金属錯体とを同時に接触させて、それにより前記ポリオレフィンがコポリマーになる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ここで、前記第2のオレフィンモノマーは官能基により置換されない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、ここで:
前記官能基は、ヒドロキシル、C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、C6〜C20アリールオキシカルボニル、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、モノ(C1〜C20アルキル)置換カルバモイル、ジ(C1〜C20アルキル)置換カルバモイル、モノ(C1〜C20アルキル)置換C6〜C20アリールカルバモイル、ジ(C1〜C20アルキル)置換C6〜C20アリールカルバモイル、モノ(C1〜C20アルキル)置換アミノ、ジ(C1〜C20アルキル)置換アミノ、モノ(C5〜C20アリール)置換アミノ、ジ(C5〜C20アリール)置換アミノ、C2〜C20アルキルアミド、C6〜C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、およびアリールイミノから選択され;そして
S*は、−OBE2、−OAlE2、−OPE2、−OSnE3、−OSiE3、および−OZnEから選択され、ここで、Eは、ハロゲン化物、ヒドロキシル、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C5〜C14アリール、およびC5〜C14アリールオキシより選択される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、ここで:
前記官能基は、ヒドロキシル,C1〜C20アルコキシ、C2〜C20アルケニルオキシ、C2〜C20アルキニルオキシ、C5〜C20アリールオキシ、C2〜C20アルキルカルボニル、C6〜C20アリールカルボニル、C2〜C20アルキルカルボニルオキシ、C6〜C20アリールカルボニルオキシ、C2〜C20アルコキシカルボニル、およびC6〜C20アリールオキシカルボニルから選択され;そして前記安定化基は、−OAlCl2、−OAl(CH3)2、−OSn(CH3)3、および−OZnO−フェニルから選択される、方法。
【請求項7】
M1は、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、V(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Ti(IV)、Ru(II)、Rh(II)、Os(II)、Ir(II)、およびPt(II)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
wが2、M1が、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、またはNi(II)であり、xが1、そしてyが1の請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、ここで、Qは前記式(II)の構造
【化2】
を有し、それにより、前記遷移金属錯体は式(III)の構造
【化3】
を有し、
ここで:
R3、R4、R5およびR6は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、およびヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルから、独立して選択され、ここで、存在する任意の置換基は、S*と同じであり得るか、あるいは、同じであり得ないルイス酸安定化部分を包含し得、そしてさらにここで、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のいずれか2つ以上は、一緒になって、環状基を形成し得;そして
zは、0または1である、方法。
【請求項10】
X1およびX2がNである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
zが0である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
R1はアリーレンまたは置換アリーレンであり、R2はアリールまたは置換アリール、R3およびR4は水素またはメチルであり、M1はPd(II)またはNi(II)であり、xは1であり、yは1であり、そしてQ1およびQ2はCl、BrおよびCH3から独立して選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記錯体は、式[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]PdCl2、[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]Pd(CH3)Cl、[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]Pd(CH3)2、もしくは[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]NiBr2であり、ここで、Arは、ヒドロキシルまたはS*によって3位の位置で置換された2,4,6−トリメチルフェニルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
R1がアリーレンもしくは置換アリーレン、R2およびR4は一緒になってピリジン環を形成し、R3は水素であり、M1はPd(II)もしくはNi(II)であり、xは1であり、yは1であり、Q1およびQ2はCl、BrおよびCH3から独立して選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記錯体は、式[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]PdCl2、[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH3)Cl、[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH3)2、もしくは[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]NiBr2であり、Arは、ヒドロキシルまたはS*によって3位の位置で置換された2,4,6−トリメチルフェニルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記官能基化オレフィンモノマーと前記遷移金属錯体とを該錯体をカチオン性錯体または双性イオン錯体に変換するのに有効な触媒活性化剤と接触させる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒活性剤が塩または弱配位アニオンの酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記弱配位アニオンの酸は、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル」ボレート、四(ペンタフルオロフェニル)ボレート、H+(OCH2CH3)2[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラフェニルボレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、SbF6−、およびPF6−より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記調製されたポリオレフィンに立体規則性がある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記官能基化オレフィンモノマーが酢酸ビニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記官能基化オレフィンモノマーがビニルエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ビニルエーテルが低級アルキルビニルエーテルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記官能基化オレフィンモノマーが酢酸ビニルであり、前記第2のオレフィンモノマーがエチレンであり、前記ポリオレフィンがポリ(エチレン酢酸ビニル)である、請求項4に記載の方法。
【請求項24】
遷移金属錯体であって、該錯体は、式(I)の構造:
【化4】
を有し、
ここで、M1は酸化状態wを有する遷移金属であり;
xおよびyは、0からwの範囲の整数であり、xとyの合計はwであり;
X1およびX2は、M1に配位するヘテロ原子であり;
R1は、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンであり;
S*は、ルイス酸安定化基であり、;
R2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルもしくは−R1−S*であり;
Qは、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、もしくはヘテロ原子含有置換ヒドロカルビレンリンカーであり、さらにここで、Qにおける隣接する原子上の2つ以上の置換基は、結合されて、環状基を形成し得;そして
Q1およびQ2は、1価のラジカルである、遷移金属錯体。
【請求項25】
M1は、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、V(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Ti(IV)、Ru(II)、Rh(II)、Os(II)、Ir(II)、およびPt(II)から選択される、請求項24に記載の錯体。
【請求項26】
wが2であり、M1が、Pd(II)、Fe(II)、Co(II)、またはNi(II)であり、xが1であり、そしてyが1である、請求項25に記載の錯体。
【請求項27】
請求項26に記載の錯体であって、Qは式(II)の構造
【化5】
を有し、それにより該遷移金属錯体は式(III)の構造
【化6】
を有し、ここで:
R3、R4、R5およびR6は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、およびヘテロ原子含有置換ヒドロカルビルより、独立して選択され、ここで、存在する任意置換基は、S*と同じであり得るか、あるいは、同じであり得ないルイス酸安定化部分を包含し得、そしてさらにここで、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のいずれか2つ以上は、一緒になって、環状基を形成し得;そして
zは、0または1である、錯体。
【請求項28】
X1およびX2がNである、請求項27に記載の錯体。
【請求項29】
zが0である、請求項28に記載の錯体。
【請求項30】
R1はアリーレンまたは置換アリーレンであり、R2はアリールまたは置換アリールであり、R3およびR4は水素またはメチルであり、M1はPd(II)またはNi(II)であり、xは1であり、yは1であり、そしてQ1およびQ2はCl、BrおよびCH3から独立して選択される、請求項29に記載の錯体。
【請求項31】
ここで、前記錯体は、前記構造[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]PdCl2、[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]Pd(CH3)Cl、[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]Pd(CH3)2、もしくは[Ar−N=C(CH3)−C(CH3)=N−Ar]NiBr2であり、ここで、Arは、ヒドロキシルまたはS*によって3位の位置で置換された2,4,6−トリメチルフェニルである、請求項30に記載の錯体。
【請求項32】
ここで、R1がアリーレンもしくは置換アリーレン、R2およびR4は一緒になってピリジン環を形成し、R3は水素、M1はPd(II)もしくはNi(II)、xは1、yは1、Q1およびQ2はCl、BrおよびCH3より独立して選択する、請求項31に記載の錯体。
【請求項33】
前記錯体は、式[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]PdCl2、[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH3)Cl、[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]Pd(CH3)2、もしくは[Ar−N=C(H)−2−ピリジン]NiBr2であり、ここで、Arは、ヒドロキシルまたはS*によって3位の位置で置換された2,4,6−トリメチルフェニルである、請求項29に記載の錯体。
【請求項34】
請求項24に記載の遷移金属錯体および該錯体をカチオン性錯体または双性イオン錯体に変換するのに有効な触媒活性化剤を含む、触媒系。
【請求項35】
前記触媒活性剤が塩または弱配位アニオン酸である、請求項34に記載の触媒系。
【請求項36】
前記弱配位アニオンは、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、H+(OCH2CH3)2[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラフェニルボレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、SbF6−、およびPF6−から選択される、請求項35に記載の触媒系。
【請求項37】
不活性な重合希釈剤をさらに含む、請求項36に記載の触媒系。
【請求項38】
前記希釈剤が揮発性の炭化水素溶媒である、請求項37に記載の触媒系。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2006−519271(P2006−519271A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500777(P2006−500777)
【出願日】平成16年1月5日(2004.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/000065
【国際公開番号】WO2004/063229
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月5日(2004.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/000065
【国際公開番号】WO2004/063229
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】
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