説明

密封容器の製造方法

【課題】本発明の目的は、密封容器の製造方法において、レーザー溶接する際に蓋に非接触のまま密封性良く蓋を溶接することで、レーザー溶接の品質を高くすることである。このとき、蓋に非接触にもかかわらず容器胴体と蓋との密封性を確保することで機械的蓋固定手段を装置から取り除き、省スペース化することを目的とする。
【解決手段】開口部59を有する容器胴体61と開口部59を密封する蓋62とをレーザー溶接法によって溶接して気密状態とした密封容器の製造方法であって、容器胴体61に蓋62を装着する蓋装着工程S3と、蓋62に気体81を噴射し続け、かつ、容器胴体61と蓋62との溶接予定箇所66を密着状態としたままで溶接予定箇所66にレーザー光65aを照射して溶接を開始する蓋溶接工程S4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー溶接法において、レーザー光の照射前に容器胴体の開口部と開口部を密閉する蓋との溶接予定箇所を密着させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
密封容器、例えば飲料用容器には、壜、缶、プラスチック容器等の各種容器が知られている。近年、その良ハンドリング性等の利便性の観点から缶やプラスチック容器が広く用いられるようになってきている。
【0003】
プラスチック容器に関しては、巻締工程を実施することが困難であり、飲料用金属缶容器のように巻き締めをして密封するプラスチック容器は流通していない。プラスチック容器において、最も流通している容器はPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルである。近年、金属製で、PETボトルと同じようなボトル形状の缶容器も流通している。
【0004】
ところで、容器胴体に装着したプラスチック製のキャップに加熱ガスジェットを噴射してキャップの熱収縮により容器を密封する技術が開示されている(例えば特許文献1を参照。)。
【0005】
また、熱溶接、超音波振動、高周波熱伝導でシール部材を容器胴体に溶接させて密封する技術が開示されている(例えば特許文献2又は3を参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−151692号公報
【特許文献2】特開平4−72193号公報
【特許文献3】特開2004−57803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1をはじめとする加熱ガスジェットで容器を密封する方法では、熱収縮する材料以外で形成されたキャップを用いると密封することができない。また、上記の方法では、加熱ガスジェットを噴射する装置が必要となり、コストアップの要因となる。
【0008】
特許文献2又は3をはじめとする熱溶接、超音波振動、高周波熱伝導で容器を密閉する方法では、熱発生部材、超音波発生部材又は高周波発生部材等の機械的蓋固定手段でシール部材に接触する必要がある。そのため、コンベア等の容器搬送手段で高速搬送されている容器胴体とシール部材とを正確に密着させる装置が必要になり、コストアップにつながる。
【0009】
レーザー溶接では、シール部材、キャップ等の蓋に接触することなく容器胴体と蓋とを溶接することができる。さらに、レーザー溶接では機械的蓋固定手段が不要になり、省スペース化できる。しかし、レーザー溶接において、蓋を棒等の機械的蓋固定手段で押さえつけて容器胴体の開口部に装着する前工程が広く行われている。上記の前工程があると、レーザー光の照射が終了するまでの間、容器搬送手段で高速搬送されている容器胴体と蓋とを正確に保持する装置が必要になり、コストアップと省スペース化の妨げにつながる。
【0010】
また、飲料用又は食品用の容器をレーザー溶接する場合、密封時の周辺環境の液体(例えば装置へのかけ水)や充填される液体が溶接予定箇所に挟まった状態で溶接する必要がある場合が多い。これらの液体が、一定の熱量を溶接予定箇所から奪ってしまうため、溶接の品質が低下する。
【0011】
本発明の目的は、密封容器の製造装置又は密封容器の製造方法において、レーザー溶接する際に蓋に非接触のまま密封性良く蓋を溶接することで、レーザー溶接の品質を高くすることである。このとき、蓋に非接触にもかかわらず容器胴体と蓋との密封性を確保することで機械的蓋固定手段を装置から取り除き、省スペース化することを目的とする。さらに、従来のガスパージ装置を転用することを目的とする。このとき、従来のガスパージ装置を転用することでガスパージと気体の噴射とを兼用し、レーザー溶接システムを安値にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意開発した結果、レーザー溶接法において、気体を蓋に噴射し続け、かつ、溶接予定箇所を密着状態としたままレーザー光を照射することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明に係る密封容器の製造方法は、開口部を有する容器胴体と前記開口部を密封する蓋とをレーザー溶接法によって溶接して気密状態とした密封容器の製造方法において、前記容器胴体に前記蓋を装着する蓋装着工程と、前記蓋に気体を噴射し続け、かつ、前記容器胴体と前記蓋との溶接予定箇所を密着状態としたままで前記溶接予定箇所にレーザー光を照射して溶接を開始する蓋溶接工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記蓋溶接工程において、前記気体の噴射を受けた前記蓋が前記容器胴体に40000Pa以上の圧力を加えることが好ましい。前記蓋が前記容器胴体に40000Pa以上の圧力を加えることで、レーザー溶接の品質がより高くなる。
【0014】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記蓋溶接工程において、前記蓋の外壁面のうち前記溶接予定箇所の法線に対して0°以上、かつ、30°以下となる角度で前記気体を前記蓋に噴射することが好ましい。上記の角度で前記気体を噴射することで、前記気体の噴射量を抑えて前記蓋を押さえることができ、よりランニングコストが安値になる。
【0015】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記蓋溶接工程において、前記蓋の前記外壁面を覆って前記容器胴体に密着するカバーによって密閉された内部空間を形成し、前記内部空間の中に前記気体を噴射して前記内部空間が加圧状態となってから前記溶接予定箇所に前記レーザー光を照射して溶接を開始することが好ましい。前記内部空間が加圧状態となってからレーザー溶接を開始することで、前記蓋にかかる圧力が安定し、レーザー溶接の品質がより高くなる。また、前記気体を噴射し続けなくとも前記内部空間の加圧状態を維持でき、よりランニングコストが安値になる。
【0016】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記蓋溶接工程において、少なくとも前記蓋の前記外壁面をカバーで覆い、前記カバーの内部空間を外部空間と連通させた状態とし、前記蓋に前記気体を噴射し続けて前記内部空間を加圧状態としたままで前記溶接予定箇所に前記レーザー光を照射して溶接を開始することが好ましい。前記内部空間が加圧状態となってからレーザー溶接を開始することで、前記蓋にかかる圧力が安定し、レーザー溶接の品質がより高くなる。前記内部空間の内部が前記気体で置換されることで、前記内部空間の内部で発生したガスをすみやかに排出できる。
【0017】
本発明に係る密封容器の製造方法では、前記蓋溶接工程の前に前記容器胴体に飲料用又は食品用の液体を充填する充填工程を有し、前記蓋溶接工程において、レーザー溶接する際に発生する、前記飲料用又は食品用の液体或いは前記液体を充填する際に用いる洗浄水に由来するガスを、前記溶接予定箇所に照射される前記レーザー光の光路以外の場所に移動させるように前記気体を前記蓋に噴射し続け、そのまま前記溶接予定箇所に前記レーザー光を照射して溶接を開始すること好ましい。前記光路以外に前記ガスを移動させつつレーザー溶接を開始めることができるので、前記レーザー光の損失が少なく、レーザー溶接の品質がより高くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、密封容器の製造装置又は密封容器の製造方法において、レーザー溶接する際に蓋に非接触のまま密封性良く蓋を溶接することで、レーザー溶接の品質を高くすることができる。このとき、蓋に非接触にもかかわらず容器胴体と蓋との密封性を確保することで機械的蓋固定手段を装置から取り除き、省スペース化できる。さらに、従来のガスパージ装置を転用することができる。このとき、従来のガスパージ装置を転用することでガスパージと気体の噴射とを兼用し、レーザー溶接システムを安値にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。なお、同一部材・同一部位には同一符号を付した。
【0020】
本実施形態に係る密封容器の製造方法について説明する。図1に本実施形態に係る密封容器の製造方法の一形態を示す工程図を示した。本実施形態に係る密封容器の製造方法は、開口部59を有する容器胴体61と開口部59を密封する蓋62とをレーザー溶接法によって溶接して気密状態とした密封容器の製造方法において、容器胴体61に蓋62を装着する蓋装着工程S3と、蓋62に気体81を噴射し続け、かつ、容器胴体61と蓋62との溶接予定箇所66を密着状態としたままで溶接予定箇所66にレーザー光65aを照射して溶接を開始する蓋溶接工程S4と、を備える。図1では、さらに蓋装着工程S3の前に、容器胴体61に液体を充填する充填工程S1、蓋62を容器胴体61に供給する蓋供給工程S2が示されている。図1では、さらに蓋溶接工程S4の後に、蓋62で密封された容器胴体61を排出する容器排出工程S5、溶接不良を検査する不良品検査工程S6が示されている。なお、充填工程S1の前に容器胴体61の内部や蓋62を洗浄する洗浄工程を設けても良い。また、蓋溶接工程S4を経た密封容器にラベルを付すラベリング工程を設けても良い。
【0021】
まず、充填工程S1において、飲料用又は食品用の液体58を容器胴体61に充填する。
【0022】
次に、液体58を充填した容器胴体61を容器搬送手段57により蓋搬送手段63bまで搬送する。このとき、液体58が発泡している場合には泡切りを行なう。
【0023】
次に、蓋供給工程S2において、蓋供給手段63aによって蓋62が蓋搬送手段63bに供給される。蓋搬送手段63bは、蓋62を1つの容器胴体61につき一個、開口部59まで搬送する。
【0024】
ここで、本実施形態に係る密封容器について説明する。図2(a)に本実施形態に係る第1形態の密封容器の一部縦断面概略図を示した。密封容器100は、開口部9を有する容器胴体1が、開口部9を密封する蓋3によって密封された密封容器であって、容器胴体1と蓋3との溶接予定箇所4を有する。
【0025】
図2(b)に本実施形態に係る第2形態の密封容器の一部縦断面概略図を示した。密封容器200は、開口部19を有する容器胴体11が、開口部19を密封する蓋13によって密封された密封容器であって、容器胴体11と蓋13との溶接予定箇所14を有する。密封容器100は開封時にストローが挿しやすい形状であり、密封容器200はボトル形状である。また、密封容器100は溶接予定箇所4の面積を大きく取れるので耐圧強度を大きくすることができる。
【0026】
図2(c)に本実施形態に係る第3形態の密封容器の一部縦断面概略図を示した。密封容器300は、蓋23の端部に開蓋のためのつまみ27を設け、容器胴体21と蓋23との溶接予定箇所24を有する。容器胴体21から開口部29に至るまで、截頭円錐状とすることで、飲みやすい飲み口としている。また、蓋23を小型化でき、蓋材料の使用量を低減できる。
【0027】
図2(d)に本実施形態に係る第4形態の密封容器の一部縦断面概略図を示した。密封容器400は、容器胴体31の側面に、容器胴体31と蓋33との溶接予定箇所34を有する。そのため、レーザー溶接後に溶接予定箇所34は溶接箇所になるが、この溶接箇所には、内圧によって、当該側面の面方向であって蓋33の開封方向(図2(d)の矢印A方向)の剪断応力が加わる。密封容器400では溶接予定箇所34を容器胴体31の側面に設けたため、溶接面積を大きくできるので、蓋33と容器胴体31との単位面積あたりの溶接力が弱くても、高い剪断強度が得られる。そのため、比較的弱い溶接による容易な開蓋性と高い耐圧性を兼ね備えることができる。なお、溶接予定箇所34は、開口部39に向かってわずかに先細りのテーパー状であっても良く又はわずかな突起部を設けても良い(不図示)。溶接予定箇所34をこのような形状にすることで、容器胴体31と蓋33との溶接時の密着性を確保しやすくなる。
【0028】
容器胴体1,11,21,31及び蓋3,13,23,33は、レーザー溶接が可能である素材であればいかなる素材から形成されていても良いが、容器胴体に充填される液体によっても制限を受ける。例えば飲料用容器であれば、液体の品質保持の観点から、容器胴体に充填される液体に対して不活性であることが必要である。さらに酸素等のガスバリア性を備えていることが好ましい。また炭酸飲料を充填する場合には耐圧性を有する素材から形成されていることが必要である。このような観点から容器胴体1,11,21,31及び蓋3,13,23,33は、アルミニウム又はスチール等の金属材料或いはプラスチック材料から形成されていることが好ましい。また、容器胴体1,11,21,31及び蓋3,13,23,33は、リサイクル性の観点から同一素材で形成することが好ましい。特にプラスチック材料から形成することが好ましく、高温まで加熱しなくてもレーザー溶接が可能である。プラスチック材料製の密封容器とすれば、従来のPETボトルと比較して、充填速度と輸送効率が向上すると共に容器のリサイクル性が向上する。このとき、プラスチック容器は透光性を有するため、金属缶と異なって容器胴体に充填される液体を目視することができる。さらに、缶構造と比較すると巻締できない形状であっても密封化でき、巻締する場合よりも小さな蓋を用いて密封化できる。
【0029】
例えば、容器胴体1,11,21,31と蓋3,13,23,33との材料の組み合わせとしては、プラスチック材料製の容器胴体とプラスチック材料製の蓋、金属材料製の容器胴体とプラスチック材料製の蓋又は金属材料製の容器胴体と金属材料製の蓋であって容器胴体と蓋との間にプラスチック樹脂シート(不図示)を挟み込んだものがある。なお、プラスチック樹脂シートを挟み込む前記いずれの場合においても、その代わりにプラスチック樹脂を含有したシール剤(不図示)を塗布しても良い。シール剤を用いると、プラスチック材料製の容器胴体とプラスチック材料製の蓋とを溶着させた場合より溶着強度が低下することが多いが、その一方で容易な開蓋性を得ることができる。
【0030】
本発明のプラスチック容器を成形する際に使用する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマ樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。なお、容器胴体1,11,21,31及び蓋3,13,23,33をプラスチック材料製とする場合、その内表面若しくは外表面或いはその両面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜、Si含有DLC膜、ポリマーライクカーボン膜、SiOx膜、金属薄膜等のガスバリア性薄膜をコーティングしたものを用いても良い。飲料用プラスチック容器の場合、ガスバリア性が高いほうが好ましいからである。さらに、ガスバリア性薄膜がレーザー光を吸収する場合にはレーザー光の受光部が発熱する。したがって、レーザー光を吸収しない透明樹脂で容器を形成したとしても、ガスバリア性薄膜を成膜することで、別途、吸収部を設けなくても溶接効率が良い。
【0031】
金属材料製の容器胴体1,11,21,31と金属材料製の蓋3,13,23,33とであれば、金属材料製の容器胴体1,11,21,31と金属材料製の蓋3,13,23,33との溶接予定箇所4,14,24,34にプラスチック樹脂シートを挟みこんでも良い。溶接予定箇所4,14,24,34において、プラスチック樹脂シートが溶融されて固化することで、容器胴体1,11,21,31と蓋3,13,23,33とが接合される。溶接予定箇所4,14,24,34に使用するプラスチック樹脂は、溶接方法によって適宜選択されるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマ樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂である。この中で、PETが金属と密着性が良いので特に好ましい。
【0032】
次に、図1の蓋装着工程S3において、蓋装着手段64が、容器胴体61に蓋62を装着する。蓋62が容器胴体61に装着された際、容器胴体61と蓋62との溶接予定箇所66の一部又は全部が密着しあっても良いし、溶接予定箇所66が密着しあっていなくても良い。レーザー光65aを照射するときには、気体81を噴射することで蓋62を容器胴体61に押さえつけるからである。なお、蓋供給工程S2と蓋装着工程S3とを、略同時に行っても良い。
【0033】
次に、蓋溶接工程S4において、蓋62が装着された容器胴体61をターンテーブル69に載せる。ターンテーブル69上の各容器胴体61及びその蓋62は、容器を軸中心に自転させる自転テーブル68によって自転させる。その後、気体噴射手段71が蓋62に気体81を噴射し続け、かつ、溶接予定箇所66を密着状態としたままで、レーザー発生手段65により溶接予定箇所66にレーザー光65aの照射を開始する。
【0034】
気体噴射手段71は、空気、アルゴンガス、窒素ガスその他の気体81を噴射できればよく、従来のガスパージ装置を転用することが好ましい。気体81の噴射でガスパージを兼ねることができ、気体噴射手段71としての新たな装置が必要とならず、レーザー溶接システムが安値になる。
【0035】
レーザー発生手段65によって、溶接予定箇所66にレーザー光65aを照射する。レーザー光65aはスポット状、線状、領域状若しくはリング状に照射することが例示される。レーザー発生手段65と溶接予定箇所66との位置関係によって適宜、レーザー照射形状が選択される。このとき、レーザー強度はレーザー出力をモニタリングすることによって監視することが好ましい。また、レーザー光65aのレーザー照射位置は、CCDカメラ等の画像センサー、光感受センサー若しくは赤外線センサー等の温度センサーによって、画像、発光若しくは発熱をモニタリングして監視することが好ましい。プラスチックの溶接は、光感受センサー若しくは温度センサーによって発光若しくは発熱をモニタリングすることによって監視することが好ましい。
【0036】
レーザー発生手段65に組み込まれるレーザー発振素子は、半導体レーザー、炭酸ガスレーザー等のガスレーザー、YAGレーザーが、例示され、レーザー溶接を行なう容器胴体及び蓋分の材質、レーザー照射移動速度、照射スポット形状等の各種パラメーターによって適宜選択する。プラスチック容器をレーザー溶接する場合には、レーザー光65aの出力を1mmあたり17〜26Jとすることが好ましい。また、プラスチック樹脂シートを溶融させてレーザー溶接する場合には、レーザー光65aの出力を1mmあたり0.5〜2.1Jとすることが好ましい。
【0037】
レーザー光65aの照射を開始する前に、溶接予定箇所66に対応する容器胴体61又は蓋62の表面に、或いは溶接予定箇所66に対応するプラスチック樹脂シートの表面又は内部に、レーザー光65aの吸収部を設けることが好ましい。また、液体を容器胴体61に充填する前に吸収部を印刷しておいても良い。ここで、吸収部はレーザー光65aの波長を吸収する金属材料、セラミック、或いは有機顔料や無機顔料等の吸収物質(塗料)を溶接予定箇所66に付着させて着色させるなどいかなる方法で形成しても良い。塗料は、PETの溶融温度で影響を受けない塗料を使用することが好ましい。吸収部を設けることで、レーザー光65aの吸収率が高くなり、小さなエネルギーでレーザー溶接することが可能となる。レーザー光65aに対する吸収部の吸収程度によって、レーザー光65aの波長、レーザーパワー、レーザー走査速度を調整することが好ましい。吸収部を設ける工程は、レーザー光65aの照射を開始する前であればいつでも良く、充填工程S1以前、充填工程S1、蓋供給工程S2、蓋装着工程S3又は蓋溶接工程S4のいずれかの間に設けても良い。
【0038】
レーザー光の照射の開始とは、レーザー発生手段65が溶接予定箇所66を溶接する為に照射したレーザー光65aが容器胴体61又は蓋62の外壁面に到達したときである。
【0039】
容器胴体61及び蓋62を自転テーブル68によって自転させても良い。固定されたレーザー光の照射部分から照射されたレーザー光65aの光路上に溶接予定箇所14が通過するように容器胴体61及び蓋62を自転させ、自転テーブル68が1周を終えることによってレーザー光65aの照射が終了する。溶接速度は接合しようとする形状や材質などによるが、例えば、8〜100cm/秒である。このとき、レーザー溶接によって溶接箇所を正確にコントロールできる。
【0040】
レーザー光65aの照射部分がレーザー発生器回転手段(不図示)によって、容器胴体61及び蓋62を中心として回転しても良い。レーザー光65aの照射部分が溶接予定箇所66に沿って移動し、レーザー光65aの照射部分がレーザー発生器回転手段によって1周を終えると、レーザー光65aの照射を終了する。溶接速度は接合しようとする形状や材質などによるが、例えば、8〜100cm/秒である。このとき、レーザー溶接によって溶接箇所を正確にコントロールできる。
【0041】
溶接予定箇所66に2周以上レーザー光を照射しても良い。このとき、容器胴体61及び蓋62を自転テーブル68によって自転させて又はレーザー光65aの照射部分がレーザー発生器回転手段により移動されて規定の周を終えると、レーザー光65aの照射を終了する。さらに2個以上のレーザー光65aの照射部分を設置し、それぞれを1周させることにより、2以上の循環線状のレーザー溶接を行なっても良い。
【0042】
レーザー発生手段65が発生させたレーザー光65aを光分岐器(不図示)で分岐させ、2以上のレーザー光65aの照射部分を溶接予定箇所66に沿って配置しても良い。全ての溶接予定箇所66に対して同時又は略同時にレーザー光65aの照射を開始し、溶接予定箇所66の溶接が終了するとレーザー光65aの照射を終了する。このとき、溶接予定箇所66は溶接箇所となる。
【0043】
蓋装着工程S3において、蓋62を押さえつけなければ、溶接予定箇所66の一部が密着することもあり、また、密着しないこともある。しかし、気体81を蓋62に噴射し続け、かつ、溶接予定箇所66を密着状態にしたまま、溶接予定箇所66にレーザー光65aを照射して溶接を開始すると、蓋62に機械的蓋固定手段を接触させず非接触で溶接予定箇所66を正確に溶接できる。すると、レーザー光65aの照射が終了するまでの間、搬送手段で高速搬送されている容器胴体61と蓋62とを正確に保持する装置を必要とせず、レーザー溶接システムが安値となり、また、省スペース化できる。
【0044】
容器胴体61や蓋62の洗浄水、装置へのかけ水或いは容器胴体61に充填された飲料用又は食品用の液体等の残留液体が溶接予定箇所66に存在していることがある。この状態でレーザー光65aを溶接予定箇所66に照射しても、残留液体が気化する際に一定の熱量を溶接予定箇所66から奪ってしまうため、レーザー溶接の品質が低下する。気体81を蓋62に噴射し続け、かつ、溶接予定箇所66を密着状態にしたまま、溶接予定箇所66にレーザー光65aを照射してレーザー溶接を開始すると、溶接予定箇所66に存在した残留液体が押し出されて溶接予定箇所66に残留液体が残留しにくくなる。よって、レーザー光65aの熱量が奪われにくくなり、レーザー溶接の品質が高くなる。
【0045】
蓋溶接工程S4において、気体81の噴射を受けた蓋62が容器胴体61に40000Pa以上の圧力を加えることが好ましい。気体81の噴射を受けた蓋62が容器胴体61に加える圧力が40000Pa未満であると、溶接予定箇所66に残留液体が存在するとそれらが残留しやすくなる。上記のように、溶接予定箇所66に残留した残留液体は、レーザー溶接の品質を低下させる原因となる。そこで、レーザー溶接する際、気体81の噴射を受けた蓋62が容器胴体61に40000Pa以上の圧力を加えることで、溶接予定箇所66に存在する残留液体を排除し、レーザー溶接の品質がより高くなる。さらに、気体81の噴射量を抑えて蓋62を押さえることができ、よりランニングコストが安値になる。しかし、PET製の容器胴体61の場合、気体81の噴射を受けた蓋62が容器胴体61に加える圧力の上限は、1.8MPa以下が好ましい。1.8MPaを超えると容器胴体61の変形が顕著になる場合がある。
【0046】
蓋溶接工程S4において、蓋62の外壁面のうち溶接予定箇所66の法線に対して0°以上、かつ、30°以下となる角度で気体81を蓋62に噴射することが好ましい。図3に密封容器200の溶接予定箇所14の拡大概略図を示した。図3において、蓋13の外壁面のうち溶接予定箇所14となる面13aに対する法線82を示した。また、気体噴射手段(不図示)が噴射した気体81の噴射方向と法線82との角度を角度θとして示した。
【0047】
角度θが30°を超えると、気体81が蓋13を加圧しにくくなり、蓋13が容器胴体11の開口部(不図示)からずれやすくなる。また、レーザー溶接する際、角度θが0°であると、気体81が蓋13を最も効率よく加圧することができる。よって、溶接予定箇所14における容器胴体11と蓋13との密着力をより向上させ、溶接予定箇所14に残留液体がより残留しにくくなる。この状態でレーザー溶接すると、レーザー溶接の品質がより高くなる。
【0048】
蓋溶接工程S4において、気体81を噴射する他の形態がある。図4にカバー86を用いた気体噴射装置の一形態の一部縦断面図を示した。図4において、カバー86で蓋13の外壁面を覆い、カバー86の外縁部86aを容器胴体11の肩部18に密着させ、内部空間89を形成する。カバー86の天面であって溶接予定箇所14と対向するように気体噴射手段71が装着される。気体81は気体噴射手段71が噴射したものである。レーザー光84はレーザー発生手段の照射部分87が照射したものである。また、カバー86の天面であってレーザー光84が通過する箇所にはレンズ88が装着される。或いは、光ファイバー(不図示)により、照射部分87を内部空間89の内部に配置してもよい。カバー86は、耐圧性と剛性とを兼ね備えた材料で形成されていることが好ましい。例えば、カバー86をプラスチック材料製や金属材料製としても良い。カバー86を用いると、気体噴射手段71と容器胴体11との位置関係が固定されるため、気体噴射手段71の気体81の噴射圧力が高い場合でも、気体81の噴射により容器胴体11及び蓋13の全体が移動しまうことがなくなり、容器胴体11の搬送不良や溶接不良を発生させるおそれが少ない。また、カバー86を用いると、溶接予定箇所14以外にレーザー光84の照射範囲があっても不要な範囲はカバー86で遮ることができるため、レーザー光84の照射による容器胴体11及び蓋13の変質及び損傷が少なくなる。特に、容器胴体11又は蓋13の外壁面にレーザー光84に対して吸収性を有する印字又は印刷がされている場合に有効である。カバー86の外縁部86aは、カバー86の密閉性を高めるため、O−リング等のシール材が配置されていることが好ましい。外縁部86aにシール材を配置することで、図3における気体81の噴射方向と法線82との角度θを30°以上にしても、蓋13に容器胴体11を押し付ける力が働くので、角度θに関係なく容器胴体11と蓋13との密着力をより向上させることができる。
【0049】
なお、ターンテーブル(不図示)がスターホイール等の容器保持部分(不図示)を有する場合に、容器保持部分とターンテーブルとの外側にガイド(不図示)を設けることで、気体81の噴射により容器胴体11及び蓋13の全体が移動される事態を防止できる。また、図3における気体81の噴射方向と法線82との角度θ並びに蓋13の形状及び重量を適切に設計することで、気体81の噴射により蓋13が移動されてしまう事態を回避することができる。
【0050】
図4に示すように、本実施形態では、蓋13の外壁面を覆って容器胴体11に密着するカバー86により密閉された内部空間89を形成し、内部空間89の中に気体81を噴射して内部空間89が加圧状態となってから溶接予定箇所14にレーザー光84を照射して溶接を開始することが好ましい。気体噴射手段71が気体81を噴射すると、内部空間89を加圧状態とすることができる。内部空間89が加圧状態となると、蓋13が容器胴体11により強く押し付けられ、溶接予定箇所14における容器胴体11と蓋13との密着力をより向上させ、溶接予定箇所14に残留液体が存在してもそれらが残留しにくくなる。この状態でレーザー溶接すると、レーザー溶接の品質がより高くなる。さらに、内部空間89が密閉されていることで、気体噴射手段71が気体81を噴射し続けなくとも加圧状態を維持することができ、気体81の噴射量を節約することができ、よりランニングコストが安値になる。
【0051】
蓋溶接工程S4において、気体81を噴射する他の形態がある。図5にカバー86を用いた気体噴射装置の第2形態の一部縦断面図を示した。図5において、カバー86で蓋13の外壁面を覆い容器胴体11の肩部18とカバー86の外縁部86aとの間にすきまを設けることで、内部空間89を外部空間90に連通させても良い。また、カバー86を容器胴体11の肩部18に密着させ、カバー86の側面に通気口(不図示)を設けて、内部空間89を外部空間90に連通させても良い。カバー86の天面であって溶接予定箇所14と対向するように気体噴射手段71が装着される。気体81は気体噴射手段71から噴射したものである。レーザー光84はレーザー発生手段(不図示)の照射部分87が照射したものである。また、カバー86の天面であってレーザー光84が通過する箇所にはレンズ88が装着される。或いは、光ファイバー(不図示)により、照射部分87を内部空間89の内部に配置してもよい。カバー86は、内部空間89と外部空間90との連通手段であるすきまや通気口を設ける以外は図4に示したカバーと同様である。
【0052】
図5に示すように、本実施形態では、少なくとも蓋13の外壁面をカバー86で覆い、カバー86の内部空間89を外部空間90に連通させた状態とし、蓋13に気体81を噴射し続けて内部空間89を加圧状態としたままで溶接予定箇所14にレーザー光84を照射して溶接を開始することが好ましい。気体噴射手段71が気体81を噴射し続けると、内部空間89を加圧状態とすることができる。内部空間89が加圧状態となると、蓋13が容器胴体11により強く押し付けられ、溶接予定箇所14における容器胴体11と蓋13との密着力をより向上させ、溶接予定箇所14に残留液体が存在してもそれらが残留しにくくなる。この状態でレーザー溶接すると、レーザー溶接の品質がより高くなる。
【0053】
図4のように、内部空間89を密閉状態にすると気体81の噴射量を節約することができる利点がある。一方、図5のように、内部空間89を外部空間90に連通させると、気流85が内部空間89からレーザー光84の照射により内部空間89に充満したガスとともに外部空間90に流れる。すなわち、レーザー光84の照射によりガスが発生しても、レーザー光84が散乱しにくくなり、レーザー溶接の品質が低下しにくくなる利点がある。
【0054】
蓋溶接工程S4において、気体噴射後のガスの流れの制御を次のようにすることが好ましい。本実施形態では、蓋溶接工程S4の前に容器胴体11に飲料用又は食品用の液体を充填する充填工程S1を有し、蓋溶接工程S4において、レーザー溶接する際に発生する、飲料用又は食品用の液体或いは液体を充填する際に用いる洗浄水に由来するガスを、溶接予定箇所14に照射されるレーザー光84の光路以外の場所に移動させるように気体81を蓋13に噴射し続け、そのまま溶接予定箇所14にレーザー光84を照射して溶接を開始することが好ましい。図6に気体噴射後のガスの流れの様子を示す概念図を示した。図6において、容器胴体11には飲料用又は食品用の液体が予め充填されている。カバー86の天面であって溶接予定箇所14と対向するように気体噴射手段71aが装着される。レーザー光84はレーザー発生手段(不図示)が照射したものである。また、カバー86の天面であってレーザー光84が通過する箇所にはレンズ88が装着される。カバー86の天面であってレンズ88を挟むように気体噴射手段71bが装着される。或いは、光ファイバー(不図示)により、照射部分(不図示)を内部空間89の内部に配置してもよい。気体81a及び81bを噴射する速度や噴射する角度又は気体噴射手段71a及び71bの設置角度等を調整し、レーザー光84の光路以外の場所に発生ガス91や水蒸気92等の残留液体に由来するガスを移動させることが好ましい。例えば、発生ガス91は溶接予定箇所14に残留していた液体が気化したものであり、水蒸気92は蓋13の天面に付着していたかけ水や洗浄水が蒸発したものである。なお、カバー86を備えなくとも良い。
【0055】
気体噴射手段71aが気体81aを蓋13に噴射し続け、かつ、気体噴射手段71bが気体81bを蓋13に噴射し続けると、発生ガス91又は水蒸気92をレーザー光84の光路以外の場所に移動させることができる。例えば、蓋13に噴射された気体81aは、発生ガス91とともにレーザー光84の光路から離れるようにして移動する。また、蓋13に噴射された気体81bは、水蒸気92とともにレーザー光84の光路から離れるようにして移動する。この状態でレーザー溶接すると、レーザー光84の光路以外に発生ガス91又は水蒸気92が移動されて、レーザー光84が散乱しにくくなり、レーザー溶接の品質が低下しにくくなる利点がある。
【0056】
次に、容器排出工程S5において、レーザー溶接を終えて密封された密封容器は、ターンテーブル69から降ろされる。
【0057】
次に、不良品検査工程S6において、不良容器排除手段70によって、溶接不良の容器が排除される。溶接不良の判断は、上記モニタリングの結果と共に画像検査機(不図示)の外観検査結果を基に行なうことが好ましい。
【実施例】
【0058】
[密封容器の作製]
蓋から容器胴体にかかる加圧力と溶接不良との関係を調べるために、図5に示す方法で、各条件10個の容器をレーザー溶接した。表1には、PET又はスチールといった容器胴体の種類、荷重を加圧時に蓋と重なる容器胴体の開口部の天面の面積(有効面積)で除した加圧力及び溶接不良数/全体数を示した。表1において、容器胴体がPET製の場合は、耐圧丸型の500mlPETボトルを用い(サンプルNo.1〜6。有効面積0.75cm。)、スチール製の場合は、市販の200ml缶を用いた(サンプルNo.7〜12。有効面積1.00cm。)。また、蓋は容器胴体の開口部に適合するように専用に成形したPET製の蓋を用いた。なお、いずれの容器胴体も、図2(d)に示した密封容器のように、容器胴体の側面の溶接予定箇所で容器胴体と蓋とを溶接した。荷重を有効面積で除し、一定の加圧力が溶接予定箇所の面にかかるように設定した。ここで、PETボトルとPET製の蓋とをレーザー溶接する場合、蓋とボトル胴体との溶接予定箇所の蓋側に、市販の808nmの吸光度が約60%の黒色インクを塗布した。容器胴体の容量にあわせて飲料水を充填した。室温は15℃であった。容器胴体の開口部に蓋を装着し、蓋の天面に略垂直となる方向から気体を狭い範囲に噴射し、加わった荷重をロードセルで測定した。蓋の天面から蓋全体にわたって波長が808nmのレーザー光を0.8J/mmのエネルギー供給となるように照射した。
【0059】
[密封性試験]
作製した密封容器の底に孔を設け、内容物を取り出し、その孔から0.15MPaの圧縮空気を注入し、蓋のシール性が維持されるか否かで密封性の有無を評価した。シール性が維持されなかった場合を溶接不良とした。
【0060】
【表1】

【0061】
表1の結果から次のことがわかる。加圧力が20000Pa以下では溶接不良の割合が高くなる。一方、加圧力を40000Pa以上にすると、溶接不良の割合は低くなる。表1の範囲外となる70000Paを超えるように加圧力を上げていった場合、いずれかの段階で強いガス流れにより容器を一定位置に留めることや作業雰囲気を良好に保つことが困難になる。また、1.8MPaを超える加圧力にすることは、PETボトルの場合、容器胴体の変形が顕著となるため実効性がない。
【0062】
[試験用シートの作製]
次に、溶接不良の割合が低くなる加圧力と溶接箇所の剪断強度との関係を調べるため、図5に示す方法で各条件10個ずつ、試験用シートをレーザー溶接し、レーザー溶接された試験用シートの引っ張り試験を実施した。表2には、PET又はスチールといった試験用シートの種類、荷重を試験用シートの面積で除した加圧力及び平均剪断強度を示した。図2(d)に示したような密封容器では、内圧によって、溶接箇所に、容器側面の面方向であって蓋の開封方向(図2(d)の矢印A方向)の剪断応力が加わるため、溶接箇所の剪断強度が高い場合に密封性が高いと考えられる。従って、溶接不良の割合が低くなる加圧力と溶接箇所の剪断強度との関係から、密封容器における溶接不良の割合が低くなる加圧力と密封性との関係を判断できる。
【0063】
PETボトル及びPET製の蓋に見立てた試験用シートを、2枚のPETシートで作製した(サンプルNo.13〜15。)。以後の説明において、PETシートIがPET製の蓋に相当し、PETシートIIがPETボトルに相当する。
【0064】
開口部の直径が25mmのPETボトル胴体の開口部に、直径27mm厚さ1mmのPET板を、開口部の端部とPET板の表面が重なるように置いた。次に、そのPET板の上に、PETシートIとPETシートIIの順で表面が重なるように置いた。この際に、PETシートIのPETシートIIと接する面には、黒色インクを幅1mm長さ10mmで直線状に塗布し、また、PETシートIとPETシートIIの重なる部分の面積が1cmになるように配置した。次に、PETボトル胴体、PET板、PETシートI及びPETシートIIを、黒色インクを塗布した場所には及ばないように、粘着テープや筒等で固定した後、PETシートIとPETシートIIの重なる部分にできるだけ限定して圧力がかかるように表面に略垂直となる方向から気体を狭い範囲に噴射し、加わった荷重をロードセルで測定した。次に、PETボトルの上方からのPET板全体を包含する領域に向けた0.8J/mmのレーザー照射によって溶接を行い、試験用シートを作製した。ここで、黒色インクを塗布した場所が溶接箇所となった。
【0065】
スチール製の缶及びPET製の蓋に見立てた試験用シートを、スチール製の缶片とPETシートとで作製した(サンプルNo.16〜18。)。
【0066】
PETシートIをスチール缶とし、黒色インクをシール材とした以外は、上記と同様の気体の噴射条件及びレーザー光の照射条件で溶接を行い、試験用シートを作製した。ここで、シール材を塗布した場所が溶接箇所となった。
【0067】
[引っ張り試験]
作製した試験用シートについて、島津製作所製オートグラフAG−10kNDで引っ張り試験を行った。試験用シートの一方であるPETシートIと他方であるPETシートII又はスチール缶片を、シートの主面上で、黒色インク又はシール剤を塗布した直線ラインに対して垂直方向に互いに反対方向に引っ張り、剪断強度を測定した。
【0068】
【表2】

【0069】
表2の結果から次のことがわかる。加圧力が40000Pa以上、かつ、70000Pa以下の間では、加圧力を変化させてもほぼ一定範囲の剪断強度が得られる。これ程の剪断強度を備えるのであれば、本発明に係る密封容器は、十分な気封性(耐圧力0.2MPa程度)を有する。表2の範囲外となる70000Paを超えるように加圧力を上げていった場合、いずれかの段階で強いガス流れにより試験用シートを一定位置に留めることや作業雰囲気を良好に保つことが困難になる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態に係る密封容器の各製造工程を示す概略工程図である。
【図2】本実施形態に係る密封容器の概略図であり、(a)は第1形態の密封容器の一部縦断面概略図であり、(b)は第2形態の密封容器の一部縦断面概略図であり、(c)は第3形態の密封容器の一部縦断面概略図であり、(d)第4形態の密封容器の一部縦断面概略図である。
【図3】本実施形態に係る密封容器の溶接予定箇所の拡大概略図である。
【図4】カバーを用いた気体噴射装置の一形態の一部縦断面図である。
【図5】カバーを用いた気体噴射装置の第2形態の一部縦断面図である。
【図6】気体噴射後のガスの流れの様子を示す概念図である。
【符号の説明】
【0071】
1,11,21,31,61 容器胴体
3,13,23,33,62 蓋
4,14,24,34,66 溶接予定箇所
9,19,29,39,59 開口部
13a 面
18 肩部
27 つまみ
57 容器搬送手段
58 液体
63a 蓋供給手段
63b 蓋搬送手段
64 蓋装着手段
65 レーザー発生手段
65a,84 レーザー光
68 自転テーブル
69 ターンテーブル
70 不良容器排除手段
71,71a,71b 気体噴射手段
81,81a,81b 気体
82 法線
85 気流
86a カバー
86 外縁部
87 照射部分
88 レンズ
89 内部空間
90 外部空間
91 発生ガス
92 水蒸気
100,200,300,400 密封容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器胴体と前記開口部を密封する蓋とをレーザー溶接法によって溶接して気密状態とした密封容器の製造方法において、
前記容器胴体に前記蓋を装着する蓋装着工程と、前記蓋に気体を噴射し続け、かつ、前記容器胴体と前記蓋との溶接予定箇所を密着状態としたままで前記溶接予定箇所にレーザー光を照射して溶接を開始する蓋溶接工程と、を備えることを特徴とする密封容器の製造方法。
【請求項2】
前記蓋溶接工程において、前記気体の噴射を受けた前記蓋が前記容器胴体に40000Pa以上の圧力を加えることを特徴とする請求項1に記載の密封容器の製造方法。
【請求項3】
前記蓋溶接工程において、前記蓋の外壁面のうち前記溶接予定箇所の法線に対して0°以上、かつ、30°以下となる角度で前記気体を前記蓋に噴射することを特徴とする請求項1又は2に記載の密封容器の製造方法。
【請求項4】
前記蓋溶接工程において、前記蓋の前記外壁面を覆って前記容器胴体に密着するカバーによって密閉された内部空間を形成し、前記内部空間の中に前記気体を噴射して前記内部空間が加圧状態となってから前記溶接予定箇所に前記レーザー光を照射して溶接を開始すること特徴とする請求項1、2又は3に記載の密封容器の製造方法。
【請求項5】
前記蓋溶接工程において、少なくとも前記蓋の前記外壁面をカバーで覆い、前記カバーの内部空間を外部空間と連通させた状態とし、前記蓋に前記気体を噴射し続けて前記内部空間を加圧状態としたままで前記溶接予定箇所に前記レーザー光を照射して溶接を開始すること特徴とする請求項1、2又は3に記載の密封容器の製造方法。
【請求項6】
前記蓋溶接工程の前に前記容器胴体に飲料用又は食品用の液体を充填する充填工程を有し、前記蓋溶接工程において、レーザー溶接する際に発生する、前記飲料用又は食品用の液体或いは前記液体を充填する際に用いる洗浄水に由来するガスを、前記溶接予定箇所に照射される前記レーザー光の光路以外の場所に移動させるように前記気体を前記蓋に噴射し続け、そのまま前記溶接予定箇所に前記レーザー光を照射して溶接を開始すること特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の密封容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−261667(P2007−261667A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92206(P2006−92206)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】