説明

封止用エポキシ樹脂組成物

【解決手段】 (A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)1分子中に2個以上の水酸基を有するフェノール樹脂、(C)無機質充填材、(D)硬化促進剤からなるエポキシ樹脂組成物において、無機質充填材として直径が5〜25μm、繊維長が0.4〜20mmであるガラス繊維を、(A)〜(D)成分の樹脂組成物全体に対して5〜80重量%添加することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物。
【効果】 本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は優れた流動特性、機械特性を有し、本発明の組成物で封止された半導体部品・電子部品は、優れた温度サイクル性、耐落下性を示し、ICカード 等のカード 型の半導体装置・電子部品の作製に用いられるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード、メモリーカード 、マルチメディアカード 等のカード 型の半導体装置の作製に適した封止用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品や半導体素子を物理的、化学的に保護するための封止材料として、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等の硬化剤、シリカ等の無機充填材、硬化促進剤を構成材料とする封止用エポキシ樹脂組成物 が接着性・電気特性に優れるために用いられている。上記した封止用エポキシ樹脂組成物 は、基板に半導体素子や電子部品を搭載した後に、半導体素子全体と基板の一部を、封止して電子機器・半導体装置を得ることができる。このような電子機器・半導体装置は、各種用途に利用されている。
【0003】
近年、自動車、パソコン、デジタルカメラ、などの電子機器領域、及びその応用分野において、これら電子機器・応用分野から取り外して持ち運びできる記録媒体としてICカード 等のカード 型の半導体装置が多用されている。
【0004】
上記ICカード 等のカード 型の半導体装置・電子部品は、電子機器から取り外して持ち運ぶため、使用時に間違って落下する恐れがある。かかる問題の防止のための手法が開示されているが(例えば特許文献1、特許文献2)、使用条件は厳しくなってきており、更に耐衝撃性に優れ、落下の際にクラック、カケ等の損傷が発生しない封止用エポキシ樹脂組成物 が求められている。
【0005】
また、熱硬化性樹脂成形材料において機械的強度を向上させるための方法として、無機充填剤としてガラス繊維を添加する方法が提案されており、例えば特許文献3、特許文献4で提案されているが、これらはフェノール樹脂組成物に関するものであり、その利用分野、樹脂組成は本発明の目的とするところとは異なるものである。
【0006】
またエポキシ樹脂成形材料にガラス繊維を添加した組成物として、例えば特許文献5において、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂に繊維長200μm以下のガラス繊維を50〜80重量%含有することを特徴とするエポキシ樹脂成形材料が提案されている。しかしその利用分野は自動車・産業機器の機構部品であり本発明とは異なるものであり本発明における利用分野での提案はなされていない。
【0007】
【特許文献1】特開2005−105184号公報
【特許文献2】特開2005−097411号公報
【特許文献3】特開2002−284891号公報
【特許文献4】特開2003−26901号公報
【特許文献5】特開2004−250480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、耐衝撃性に優れ、落下させた際にもクラックや欠けが発生しないという耐落下性に優れたカード 型の半導体装置の作製に適した封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、特に下記一般式(C)無機質充填剤、(D)硬化促進剤からなるエポキシ樹脂組成物において、無機質充填材の一部としてガラス繊維を樹脂組成物全体に対して5〜80重量%添加することが有効であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の封止用樹脂組成物を提供する。
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)1分子中に2個以上の水酸基を有するフェノール樹脂、(C)無機質充填材、(D)硬化促進剤からなるエポキシ樹脂組成物において、無機質充填材として直径が5〜25μm、繊維長が0.4〜20mmであるガラス繊維を樹脂組成物全体に対して5〜80重量%添加することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物である。
【0011】
特には(A)成分であるエポキシ樹脂が下記一般式(1)又は(2)で表されるエポキシ樹脂、又はその併用物である。
【0012】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、aは0〜4、bは0〜3の整数、Qは0〜10の数である。)
【0013】
【化2】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Grはグリシジル基である。)
【0014】
また、(B)成分であるフェノール樹脂が下記一般式(3)又は(4)で表されるフェノール樹脂、又はその併用物である。
【0015】
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、aは0〜4、bは0〜3の整数、r=0〜10の数である。)
【0016】
【化4】


(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0017】
さらに、(C)成分として使用されるガラス繊維の直径が5〜25μm、繊維長が0.4〜20mmであるガラス繊維を樹脂組成物全体に対して5〜80重量%添加することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は優れた流動特性、機械特性を有し、本発明の組成物で封止された半導体部品・電子部品は、優れた温度サイクル性、耐落下性を示し、ICカード 等のカード 型の半導体装置・電子部品の作製に用いられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物 について、説明する。
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
上記の封止用樹脂組成物のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば使用できるが、特には下記式(1)及び(2)で示されるものが使用される。
【0020】
【化5】

式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。aは0〜4、bは0〜3の整数、Qは0〜10の数である。
【0021】
【化6】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。Grはグリシジル基である。
【0022】
上記式(1)で表されるエポキシ樹脂の具体例としては、以下のものが例示される。
【0023】
【化7】

(式中、pは0.5〜1.5である。)
【0024】
上記式(1)で示されるエポキシ樹脂は、可とう性に優れ、弾性率が低いために耐衝撃性に強いという特徴を有する。
【0025】
また、上記式(2)で示される樹脂としては、
【0026】
【化8】

が例示される。
上記式(2)で示されるエポキシ樹脂は粘度が低いためにフィラーの高充填化を可能とする。エポキシ樹脂(1)と(2)は単独あるいは併用で使用される。
【0027】
その他のエポキシ樹脂
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて他のエポキシ樹脂を併用することができる。併用するエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ化合物等が挙げられ、これらのうち1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。またこれらの中では溶融時に低粘度であるビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ化合物等が好ましい。
【0028】
なお、他のエポキシ樹脂を併用する場合、上記式(1),(2)のエポキシ樹脂量は、エポキシ樹脂全量(式(1),(2)のエポキシ樹脂と上記他のエポキシ樹脂との総和)の50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100質量%である。
【0029】
(B)1分子中に2個以上の水酸基を有するフェノール樹脂
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物中の(B)成分は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂硬化剤であり、特には下記一般式(3)、(4)で表されるフェノール樹脂を用いる。
【0030】
【化9】

式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、又はフェニル基であり、中でもメチル基、フェニル基が好ましい。aは0〜4、bは0〜3の整数、Qは0〜10の数である。
【0031】
【化10】


式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基である。
【0032】
上記式(3)で表されるフェノール樹脂も、本発明のエポキシ樹脂(1)同様、ビフェニルアラルキル骨格を有する樹脂であり、耐熱性・耐クラック性に優れる。上記式(3)で表されるフェノール樹脂の具体例としては、以下のものが例示される。
【0033】
【化11】

(式中、mは平均0.5〜1.5である。)
【0034】
上記式(4)で示されるトリフェノール型アルカン樹脂は耐熱性に優れ、低粘度であるために、ガラス転移温度を上げたり、フィラーの高充填化を可能にする。例えば
下記のものが使用される。
【0035】
【化12】

【0036】
その他のフェノール樹脂
なお、上記式(3)、(4)で表されるフェノール樹脂は、他のフェノール樹脂硬化剤、例えば、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂等と併用して用いることもでき、上記式(3)、(4)で表されるフェノール樹脂硬化剤量は、フェノール樹脂硬化剤全量(式(3)、(4)のフェノール樹脂と上記他のフェノール樹脂硬化剤との総和)の50〜100質量%とすることが好ましく、更に好ましくは70〜100質量%である。
【0037】
上記(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂硬化剤の配合割合は特に制限されないが、(A)エポキシ樹脂の合計1モルに対し、(B)フェノール樹脂硬化剤に含まれるフェノール性水酸基の合計のモル比が0.5〜1.5、特に0.8〜1.2であることが好ましい。フェノール性水酸基のモル比が0.5未満であると成型時の硬化性が悪くなる場合があり、1.5を超えると硬化物の吸水量が増大する場合がある。
【0038】
(C)無機充填剤
(C−1)ガラス繊維
本発明でカード部品の落下クラック性の向上のために無機質充填剤の一部として用いられるガラス繊維(C−1)は、溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定直径の細い繊維状としたものであり、単繊維同志を集束剤で集束させたストランドを均一に引き揃えて束にしたロービング、およびガラス繊維 の粉砕物等を意味しており、通常Eガラスからなるチョップドストランドが用いられる。ガラス繊維の直径は5〜25μm、好ましくは8〜15μm程度のものが使用される。径が細いと機械的強度が十分に向上しないことがあり、また太過ぎると組成物の製造時に作業性が低下することがある。また添加するガラス繊維の繊維長は、樹脂組成物中に残るガラス繊維の長さに影響する要素の一つとして重要である。本発明では0.4〜20mmのチョップドストランドが使用される。添加するガラス繊維は樹脂組成物の製造時に混練力で切断され、樹脂組成物中では、成形時に影響を与えず、また機械強度を維持する長さとして存在する。添加時に使用される繊維長が短すぎると、樹脂組成物製造後の繊維長が短くなりすぎ、機械強度が低下してしまうことがある。また添加時の繊維長が長すぎると組成物の製造時に作業性が低下することがある。
【0039】
ガラス繊維(C−1)の配合量は樹脂組成物全体に対して5〜80重量%添加、好ましくは10〜50重量%が好ましい、それより配合量が少ないと目的とする耐落下性が充分に向上せず、また配合量が多いと流動性が低下し成形性が悪くなるため好ましくない。
【0040】
(C−2)その他の無機充填剤
また(C−2)その他の無機充填剤としては、本発明のガラス繊維のほか、通常、樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。具体的には、例えば、球状の溶融シリカ、破砕状の溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、ムライト、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、特には球状の溶融シリカが望ましく、その平均粒径が5〜30μmで、湿式篩い法で測定した75μmを超える粒径が0.2質量%以下であるものが、成形性、流動性の面からより望ましい。
【0041】
(C)全無機充填剤中にしめる(C−1)ガラス繊維の割合は、3〜90質量%、好ましくは、4〜70質量%である。(C−1)ガラス繊維の割合が3質量%以下では目的とする耐落下性が充分に向上せず、90質量%以上では流動性が低下し成形性が悪くなるため好ましくない。
【0042】
(C)成分である全無機質充填剤の配合量としては、(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂の合計量100質量部に対し、500〜1,100質量部とすることが好ましい。700質量部未満では樹脂の割合が高く、線膨張係数が大きくなり、カード部品に反りが発生することがある。また1,100質量部を超える量では粘度が高くなるために成形できなくなるおそれがある。
【0043】
なお、無機質充填剤は、樹脂と無機質充填剤表面との結合強度を強くするため、予めアミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤などで表面処理したものを配合することが好ましい。ここで、表面処理に用いるカップリング剤量及び表面処理方法については特に制限されない。
【0044】
(D)硬化促進剤
本発明の組成物における(D)成分である硬化促進剤としては特に制限はなく、例えば、リン系触媒、アミン系触媒等が例示される。ここで、リン系触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスホニウムトリフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート及びこれらの化合物がアクリル樹脂等でマイクロカプセル化された化合物等が用いられる。
【0045】
またアミン系触媒としては、ジシアンジアミド、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、及びこれらの化合物がアクリル樹脂等でマイクロカプセル化された化合物等が用いられる。
【0046】
その他の成分
また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、無機質充填剤及び硬化促進剤以外に、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。 例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、カルナバワックス等のワックス類等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、ハロゲン化樹脂、アンチモン酸化物、モリブデン酸塩等の難燃剤、ハロゲントラップ剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0047】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、無機質充填剤、硬化促進剤、及び必要に応じてその他の添加物を所定の組成比で配合し、これをヘンシェルミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。
本発明のシール剤組成物は、撹拌、混合及び分散させる際に、組成物のなじみを良くするために、従来公知の各種シランカップリング剤を添加することができる。
【0048】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。これらの中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましく、耐湿信頼性に優れ、吸湿劣化後の接着強度の低下が少ない液晶表示素子用シール剤組成物を得ることができる。
【0049】
上記カップリング剤を用いる場合、その使用量は、上記(A)〜(D)成分100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部であり、好ましくは0.3〜3.0質量部である。
【0050】
このようにして得られる本発明の封止用樹脂組成物は、ICカードなどの各種のカードの封止用として有効に利用でき、この場合、封止の最も一般的な方法としては低圧トランスファー成形法が挙げられる。
【0051】
なお、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の成形温度は160〜185℃で30〜180秒、好ましくは40〜90秒、後硬化は150〜185℃で2〜20時間行うことが望ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示す。
【0053】
[実施例1〜11、比較例1〜7]
表1に示す組成からなり、表2に示す硬化物特性を有する半導体封止用樹脂組成物で、電子部品を封止し、半導体部品を得た。半導体部品の評価結果を表3に示した。組成物の特性及び半導体部品の評価は下記方法で実施した。
なお、表1に示した組成物の成分は、これを連続混練機で100℃の条件で溶融混合し、半導体封止用組成物を得た。
【0054】
《スパイラルフロー》
EMMI規格に準じた金型を使用して、温度175℃、圧力6.9N/mm、成形時間90秒の条件で測定した。
【0055】
《線膨張係数》
温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間120秒の条件で5×5×15mmの硬化物を成形し、180℃で4時間ポストキュアした。その後、理学(株)製TMA8140Cで−55℃〜50℃、及び150〜200℃の線膨張係数を測定した。昇温スピード5℃/min。
【0056】
《ゲル化時間》
175℃に加熱された熱板上に組成物を薄く広げ、スパチュラで樹脂を掻き取り、熱板面から樹脂が剥がれる点をゲル化時間とした。
【0057】
《溶融粘度》
(株)島津製作所製の高化式フローテスターを用い、1mmφ×10mmのダイスを用いて、175℃で10kgfの荷重をかけて測定した時の最低溶融粘度を求めた。
【0058】
《曲げ強度》
JIS−K6911に準じ、温度175℃、圧力6.9N/mm、成形時間90秒の条件で成形し、180℃で4時間後硬化した硬化物を用い測定した。
【0059】
《アイゾット強度》
JIS−K6911に準じ、温度175℃、圧力6.9N/mm、成形時間90秒の条件で成形し、180℃で4時間後硬化した硬化物を用い測定した。
【0060】
《接着性》
10×10mmの大きさで、SiNパッシベーションで保護されたSiチップを、上記樹脂組成物で温度175℃、圧力6.9N/mm、成形時間60秒の条件で成形し、接着用テストピースを作製した。これを180℃、4時間で後硬化した後、室温での接着力を測定した。なお、テストピースのフレームと樹脂の接着面積は10mmである。
【0061】
《パッケージ反り量》
0.40mm厚のBT樹脂基板を用いパッケージサイズが32x32mmで厚みが1.2mm、10x10x0.3mmのシリコンチップを搭載し175℃、6.9N/mm、キュア時間2分のトランスファー条件で成型し、その後175℃で5時間、ポストキュアを行ったものをレ−ザ−三次元測定機を用いてパッケージの対角線方向に高さの変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。
【0062】
《耐温度サイクル試験》
エポキシレジストがコートされたBTレジンに12×12x0.3mmの低誘電膜形成素子をマウントし、温度175℃、圧力6.9N/mm、成形時間60秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアし、35x35mmの片面成形パッケージを得た。このパッケージそれぞれ10個を260℃の半田浴/30秒及び−196℃/60秒の冷熱衝撃を100サイクル行い、樹脂クラックが発生したものを調べた。
【0063】
《耐落下試験》
金型温度180℃、圧力6.9N/mm、硬化時間90秒の条件で、ICカード:サイズ25mm×30mm×厚さ1.0mmを一体封止成形した。得られたカード システムの成形品を1.0mの高さから1サンプルにつき50回落下させ、樹脂クラックや欠け等の発生を実体顕微鏡にて確認した。外観検査にてクラックや欠けの発生したものを不良とした。試験はn=10個にて実施し不良0を合格とした。
【0064】
使用した原材料を下記に示す。
(A)エポキシ樹脂
下記式で表されるエポキシ樹脂(イ)(NC3000P:日本化薬(株)製、エポキシ当量272)
【0065】
【化13】

【0066】
下記式で表されるエポキシ樹脂(ロ)(YX4000HK:油化シェル(株)製、エポキシ当量190)
【0067】
【化14】

但し、Meはメチル基、Grはグリシジル基である。
【0068】
エポキシ樹脂(ハ) 多官能型エポキシ樹脂(EPPN501:日本化薬(株)製、エポキシ当量165)
エポキシ樹脂(二) オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN−1020−80:日本化薬(株)製、エポキシ当量200)
【0069】
(B)フェノール樹脂
下記式で表されるフェノール樹脂(ホ)(MEH7851L、明和化成(株)製、フェノール性水酸基当量199)
【0070】
【化15】

【0071】
下記式で表されるフェノール樹脂(へ) トリフェノールアルカン型フェノール樹脂(MEH7500:明和化成(株)製、フェノール当量 97 )
【0072】
【化16】

【0073】
フェノール樹脂(ト) フェノールアラルキル樹脂(MEH7800SS:明和化成(株)製、フェノール性水酸基当量175、150℃におけるICI溶融粘度100mPa・s)
フェノール樹脂(チ) ノボラック型フェノール樹脂(TD−2131:大日本イン(株)製、フェノール当量 110)
【0074】
(C)無機充填剤
(C−1)ガラス繊維
ガラス繊維(A):繊維径14μm、繊維長14mm(ユニチカファイバーグラス(株)製)
ガラス繊維(B):繊維径11μm、繊維長3mm(日本板硝子(株)製)
ガラス繊維(C):繊維径12μm、繊維長0.13mm(日東紡績(株)製)
【0075】
(C−2)その他無機質充填剤
無機質充填剤(a):平均粒径10μm、粒径75μmを超える粗粒が0.1質量%である球状溶融シリカ
無機質充填剤(b):平均粒径0.5μm、粒径10μmを超える粗粒が0.1質量%である球状溶融シリカ
(D)硬化促進剤
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(北興化学(株)製)
(E)その他の成分
低応力化剤:アミノ変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、アミン当量500〜5000の範囲内のもの)
着色剤:カーボンブラック、電化ブラック(電気化学工業(株)製)
イオントラップ剤:DHT−4A2(協和化学工業(株)製)
離型剤:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ(株)製)
シランカップリング剤:エポキシ基含有トリメトキシシラン、KBM403(信越化学工業(株)製)
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

上表の結果より、本発明の樹脂組成物は優れた流動特性、機械特性を有し、本発明の組成物で封止された半導体部品・電子部品は、優れた温度サイクル性、耐落下性を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)1分子中に2個以上の水酸基を有するフェノール樹脂、(C)無機質充填材、(D)硬化促進剤からなるエポキシ樹脂組成物において、無機質充填材として直径が5〜25μm、繊維長が0.4〜20mmであるガラス繊維を、(A)〜(D)成分の樹脂組成物全体に対して5〜80重量%添加することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分であるエポキシ樹脂が下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、aは0〜4、bは0〜3の整数、Qは0〜10の数である。)
【化2】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Grはグリシジル基である。)
【請求項3】
(B)成分であるフェノール樹脂が下記一般式(3)及び/又は(4)で表されるフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、aは0〜4、bは0〜3の整数、r=0〜10の数である。)
【化4】


(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【請求項4】
(C)成分として使用される無機充填剤が、ガラス繊維(C−1)成分及びガラス繊維以外の無機充填剤(C−2)成分からなり、(C)成分中にしめる(C−1)成分の割合が、3〜90質量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−77179(P2007−77179A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263045(P2005−263045)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】