説明

封止用樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】耐半田性、耐燃性及び連続成形性のバランスに優れた封止用樹脂組成物、ならびに、その硬化物により素子を封止してなる信頼性に優れた電子部品装置を提供する。
【解決手段】封止用樹脂組成物は、下記一般式(1):


で表される構造を有する1以上の重合体からなり、上記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物及び電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、高性能化への要求はとどまることが無く、素子(以下、「チップ」ともいう。)の高集積化、高密度化は年々進行し、さらには電子部品装置(以下、「パッケージ」ともいう。)の実装方式にも、表面実装技術が登場し、普及しつつある。このような電子部品装置の周辺技術の進歩によって、素子を封止する樹脂組成物への要求も厳しいものとなってきている。たとえば、表面実装工程では、吸湿した電子部品装置が半田処理時に高温にさらされ、急速に気化した水蒸気の爆発的応力によってクラックや内部剥離が発生し、電子部品装置の動作信頼性を著しく低下させる。さらには、鉛の使用撤廃の機運から、従来よりも融点の高い無鉛半田へ切り替えられ、実装温度が従来に比べ約20℃高くなり、上述の半田処理時の応力はより深刻となる。このように表面実装技術の普及と無鉛半田への切り替えによって、封止用樹脂組成物にとって、耐半田性は重要な技術課題のひとつとなっている。
【0003】
また、近年の環境問題を背景に、従来用いられてきたブロム化エポキシ樹脂や酸化アンチモン等の難燃剤の使用を撤廃する社会的要請が高まりを見せており、これらの難燃剤を使用せずに、従来と同等の難燃性を付与する技術が必要となってきている。そのような代替難燃化技術として、例えば低粘度の結晶性エポキシ樹脂を適用し、より多くの無機充填剤を配合する手法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、これらの手法も、耐半田性と難燃性を十分満たしているとはいいがたい。
【0004】
上記のような状況から、難燃性付与剤を添加しなくても良好な難燃性が得られる封止用樹脂組成物として、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型硬化剤を用いた樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。これらの樹脂組成物は、低吸水性、熱時低弾性率、高接着性で、難燃性に優れ、信頼性の高い電子部品装置を得ることができるという利点を有するものの、硬化後の成形物は軟らかく、かつ親油性が高いために、電子部品装置の封止工程で連続成形性に不具合が生じ、生産性が低下する場合がある。
【0005】
このような問題に対して、硬化剤の分子量分布を調整する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、上述の分子量分布の調整には、例えばフェノール樹脂を合成した後に、蒸留や分別カラムなどを用いた分子量分級、又は合成に先立ち、予めモノマー原料を精製する工程が必要となり、工業化にあたっては大規模な精製設備及び溶剤処理設備を必要とする上、回収ロスなどによっても、生産コストが上昇するという課題がある。
【0006】
以上のように、封止用樹脂組成物において、耐半田性、難燃性及び連続成形性のバランスに優れることが重要課題となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−130919号公報
【特許文献2】特開平8−20673号公報
【特許文献3】特開平11−140277号公報
【特許文献4】特許第3627736号公報
【特許文献5】国際公開第05/087833号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐半田性、難燃性及び連続成形性のバランスに優れた封止用樹脂組成物、ならびに、その硬化物により素子を封止してなる信頼性に優れた電子部品装置を経済的に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の封止用樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、下記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含むことを特徴とする。
【0010】
【化1】

(上記一般式(1)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基であり、構造式の両末端は水素原子である。cは1〜20の整数であり、dは1〜20の整数である。置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位と、置換もしくは無置換のビフェニレン基であるc個の繰り返し単位とは、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず置換もしくは無置換のメチレン基である−C(R3)(R4)−を有する。)
【0011】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)が、前記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体として、下記一般式(2)で表される構造を有する1以上の重合体(A−1)、及び/又は、下記一般式(3)で表される構造を有する1以上の重合体(A−2)、を含むものとすることができる。
【0012】
【化2】

(上記一般式(2)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基である。eは1〜20の整数、fは1〜18の整数である。)
【0013】
【化3】

(上記一般式(3)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基である。gは1〜19の整数、hは1〜9の整数である。)
【0014】
本発明の封止用樹脂組成物は、電界脱離質量分析による測定で、前記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体の相対強度の合計が、前記エポキシ樹脂(A)全体の相対強度の合計に対して5%以上、80%以下であるものとすることができる。
【0015】
本発明の封止用樹脂組成物は、電界脱離質量分析による測定で、前記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体の相対強度の合計が、前記エポキシ樹脂(A)全体の相対強度の合計に対して10%以上、60%以下であるものとすることができる。
【0016】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記無機充填剤(C)の含有量が全樹脂組成物に対して80質量%以上、93質量%以下であるものとすることができる。
【0017】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が220g/eq以上、300g/eq以下であるものとすることができる。
【0018】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)の配合量が全樹脂組成物に対して0.5質量%以上、10質量%以下であるものとすることができる。
【0019】
本発明の封止用樹脂組成物は、硬化促進剤(D)をさらに含むものとすることができる。
【0020】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化促進剤を含むものとすることができる。
【0021】
本発明の封止用樹脂組成物は、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)をさらに含むものとすることができる。
【0022】
本発明の封止用樹脂組成物は、カップリング剤(F)をさらに含むものとすることができる。
【0023】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記カップリング剤(F)が2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含むものとすることができる。
【0024】
本発明の封止用樹脂組成物は、無機難燃剤(G)をさらに含むものとすることができる。
【0025】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記無機難燃剤(G)が金属水酸化物、又は複合金属水
酸化物を含むものとすることができる。
【0026】
本発明の電子部品装置は、上述の封止用樹脂組成物を硬化させた硬化物で素子を封止して得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に従うと、耐半田性、難燃性及び連続成形性のバランスに優れた封止用樹脂組成物ならびに、その硬化物により素子を封止してなる信頼性に優れた電子部品装置を経済的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る封止用樹脂組成物を用いた電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図2】本発明に係る封止用樹脂組成物を用いた片面封止型の電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図3】実施例で用いたエポキシ樹脂1のFD−MSチャートである。
【図4】実施例で用いたエポキシ樹脂2のFD−MSチャートである。
【図5】実施例で用いたエポキシ樹脂3のFD−MSチャートである。
【図6】実施例で用いたエポキシ樹脂4のFD−MSチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の封止用樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、下記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含むことを特徴とする。これにより、耐半田性、難燃性及び連続成形性のバランスに優れる封止用樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の電子部品装置は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物で素子を封止して得られることを特徴とする。これにより、信頼性に優れた電子部品装置を経済的に得ることができる。以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書における「〜」で表される数値範囲は、その上限値下限値のいずれをも含むものである。
【0030】
先ず、本発明の封止用樹脂組成物の各成分について、詳細に説明する。
【0031】
[エポキシ樹脂(A)]
エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、下記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含む。
【化1】

(上記一般式(1)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基であり、構造式の両末端は水素原子である。cは1〜20の整数であり、dは1〜20の整数である。置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位と、置換もしくは無置換のビフェニレン基であるc個の繰り返し単位とは、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必
ず置換もしくは無置換のメチレン基である−C(R3)(R4)−を有する。)
【0032】
なお、本発明では、下記一般式(X)のように、ビフェニレン構造式の結合の一部を点線で表記する場合があるが、これは結合位置が下記一般式(X−1)又は下記一般式(X−2)のいずれかであることを意味する。
【化50】

【0033】
一般式(1)において、(d−1)/c=1に相当する重合体としては、置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位と、置換もしくは無置換のビフェニレン基であるc個の繰り返し単位とが、置換もしくは無置換のメチレン基である−C(R3)(R4)−を介して交互に並んだ構造となる、ビフェニレン基を有するフェノールアラルキル型の重合体を挙げることができ、樹脂組成物の耐燃性、低吸水率、耐半田性などの特性に優れる。
【0034】
一般式(1)において、(d−1)/c>1に相当する重合体は、ビフェニレン基を有するフェノールアラルキル型の重合体と比較して、重合体中のエポキシ基の密度が局所的に高まることから、金属リードフレームとの密着性を向上させ、さらには硬化剤成分との硬化性を向上させることができ、結果として樹脂組成物の連続成形性の向上や耐半田性の向上などの効果を得ることができる。
【0035】
一般式(1)において、(d−1)/c<1に相当する重合体は、ビフェニレン基を有するフェノールアラルキル型の重合体と比較して、重合体中のビフェニレン基の量が相対的に高まることから、結果として樹脂組成物の耐燃性の向上、吸水率の低減、耐半田性の向上などの効果を得ることができる。また、連続成形を行った際の金型表面の汚れやエアベント部(空気抜き)の樹脂詰まりが軽減し、連続成形性を向上させる効果も得られる。その理由について詳細は不明ながら、分子内に親油性であるビフェニルユニットが局所的に多くなることで、離型剤成分に対する界面活性効果が生じていることが推測される。エポキシ樹脂(A)は、上記の3成分を含むことにより、耐半田性、難燃性及び連続成形性のバランスに優れる封止用樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなるエポキシ樹脂(A)のうち、(d−1)/c=1とは異なる重合体として、下記一般式(2)で表される構造を有する1以上の重合体(A−1)、及び/又は、下記一般式(3)で表される構造を有する1以上の重合体(A−2)を含むことができる。下記一般式(2)で表される構造を有する1以上の重合体(A−1)は、一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなるエポキシ樹脂(A)中の(d−1)/c=(e+f)/e>1の重合体に、下記一
般式(3)で表される構造を有する1以上の重合体(A−2)は、一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなるエポキシ樹脂(A)中の(d−1)/c=g/(g+h)<1に相当する重合体である。これらの重合体を含むエポキシ樹脂(A)は、後述の合成法によって得ることができる。
【0037】
【化2】

(上記一般式(2)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基である。eは1〜20の整数、fは1〜18の整数である。)
【0038】
【化3】

(上記一般式(3)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基である。gは1〜19の整数、hは1〜9の整数である。)
【0039】
エポキシ樹脂(A)は、電界脱離質量分析(Field Desorption Mass Spectrometry;FD−MS)による測定で、一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体の相対強度の合計が、エポキシ樹脂(A)全体の相対強度の合計に対して5%以上、80%以下であることが好ましく、10%以上、60%以下であることがより好ましく、20%以上、40%以下であることが特に好ましい。(d−1)/c=1とは異なる重合体の相対強度の合計が、上記範囲にあることにより、耐燃性、連続成形性及び耐半田性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。ここで、(d−1)/c>1に該当する重合体の相対強度の合計が上記上限値より大きい場合、耐燃性及び耐半田性が低下する恐れがある。(d−1)/c<1に該当する重合体の相対強度の合計が上記上限値より大きい場合、連続成形性が低下する恐れがある。また、(d−1)/c=1とは異なる重合体の相対強度の合計割合が上記下限値より小さい場合、得られる樹脂組成物の耐半田性及び連続成形性、あるいは、耐半田性及び耐燃性が低下する恐れがある。なお、FD−MS測定は、検出質量(m/z)範囲50〜2000にて測定し、検出された各ピークについて、検出質量(m/z)から分子量、及び繰り返し数c、d及びe〜hの値を得ることができる。
【0040】
次に、エポキシ樹脂(A)の合成方法の一例について説明する。
エポキシ樹脂(A)は、後述する「前駆体フェノール樹脂(P)」を過剰のエピハロヒドリン類に溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で50〜150℃、好ましくは60〜120℃で1〜10時間反応させる方法等が挙げられる。反応終了後、過剰のエピハロヒドリン類を留去し、残留物をトルエン、メチ
ルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより、エポキシ樹脂(A)を得ることができる。本発明のエポキシ樹脂(A)の合成に用いられるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピヨードヒドリンを挙げることができる。
【0041】
前駆体フェノール樹脂(P)としては、下記一般式(4)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、下記一般式(4)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含む前駆体フェノール樹脂であれば、特に限定されるものではない。
【化4】

(上記一般式(4)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基であり、構造式の両末端は水素原子である。cは1〜20の整数であり、dは1〜20の整数である。置換もしくは無置換のヒドロキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位と置換もしくは無置換のビフェニレン基であるc個の繰り返し単位は、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず置換もしくは無置換のメチレン基である−C(R3)(R4)−を有する。)
【0042】
一般式(4)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂(P)に含まれる(d−1)/c=1とは異なる重合体として、下記一般式(5)で表される構造を有する1以上の重合体(P−1)、及び/又は、下記一般式(6)で表される構造を有する1以上の重合体(P−2)を含むことができる。下記一般式(5)で表される構造を有する1以上の重合体(P−1)は、一般式(4)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂(P)の(d−1)/c=(e+f)/e>1に相当する重合体であり、下記一般式(6)で表される構造を有する1以上の重合体(P−2)は、一般式(4)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂(P)の(d−1)/c=g/(g+h)<1に相当する重合体である。
【0043】
【化5】

(上記一般式(5)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。eは1〜20の整数、fは1〜18の整数である。)
【0044】
【化6】

(上記一般式(6)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。gは0〜19の整数、hは1〜9の整数である。)
【0045】
一般式(4)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂(P)の製法としては、例えば、
(1)下記一般式(7)で表されるビフェニル化合物と下記一般式(8)で表されるアルデヒド類とを強酸触媒下で反応させて反応中間体(B−F)を得た後、これに下記一般式(9)で表されるフェノール化合物を加えて反応することにより得る方法(以下、「第1の製法」ともいう。)、
(2)下記一般式(8)で表されるアルデヒド類、下記一般式(9)で表されるフェノール化合物、下記一般式(10)で表される2官能型ビフェニル化合物とを酸性触媒下で共縮重合することにより得る方法(以下、「第2の製法」ともいう。)、
(3)下記一般式(9)で表されるフェノール化合物、下記一般式(10)で表される2官能型ビフェニル化合物、及び下記一般式(11)で表される1官能型ビフェニル化合物とを酸性触媒下で共縮重合することにより得る方法(以下、「第3の製法」ともいう。)、
などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの製法の1種類を単独で用いて合成しても、2種類以上を組み合わせて合成してもよい。
【0046】
上記の合成法を2種以上組み合わせる方法としては、特に制限は無いが、例えば、後述する第1の製法で得られたビフェニル−ホルムアルデヒド反応中間体(B−F)を、第2又は第3の製法の反応系に添加する方法、あるいは、一般式(11)で表される1官能型ビフェニル化合物を第2の製法の反応系に原料として添加する方法などを挙げることができる。このほかにも、異なる製法で得られた2種以上の前駆体フェノール樹脂同士を混合して前駆体フェノール樹脂(P)とし、エポキシ化してエポキシ樹脂(A)を得ても良い。あるいは、異なる製法で得た前駆体フェノール樹脂(P)を、個別にエポキシ化したものを、2種以上混合してエポキシ樹脂(A)を得てもよい。
【0047】
【化7】

(上記一般式(7)において、R2は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは0〜3の整数である。)
【0048】
【化8】

(上記一般式(8)において、R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。)
【0049】
【化9】

(上記一般式(9)において、R1は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。)
【0050】
【化10】

(上記一般式(10)において、R2は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。R5及びR6は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素であり、R5とR6が結合して環状構造となっていてもよい。Xは、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。)
【0051】
【化11】

(上記一般式(11)において、R2は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。R5及びR6は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素であり、R5とR6が結合して環状構造となっていてもよい。Xは、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。)
【0052】
前駆体フェノール樹脂(P)の原料に用いられるビフェニル化合物としては、一般式(7)で表される化学構造であれば特に限定されない。例えば、ビフェニル、1,1’−ジ
メチルビフェニル、2,2’−ジメチルビフェニル、3,3’−ジメチルビフェニル、4、4’−ジメチルビフェニル、1,1’−ジエチルビフェニル、2,2’−ジエチルビフェニル、3,3’−ジエチルビフェニル、4、4’−ジエチルビフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、比較的安価で、低温での合成が可能であるという観点からはビフェニルが好ましい。
【0053】
前駆体フェノール樹脂(P)の製造に用いられるアルデヒド類としては、一般式(8)で表される化学構造であれば特に限定されない。例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、サリチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも樹脂組成物の硬化性、原料コストの観点からホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0054】
前駆体フェノール樹脂(P)の製造に用いられるフェノール化合物としては、一般式(9)で表される化学構造であれば特に限定されない。例えば、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、フェニルフェノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、ノニルフェノール、メシトール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、フェノール、o−クレゾールが好ましく、さらに、エポキシ樹脂との反応性という観点から、フェノールがより好ましい。前駆体フェノール樹脂(P)の製造において、これらのフェノール化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
前駆体フェノール樹脂(P)の製造に用いられる一般式(10)及び(11)で表されるビフェニレン化合物中の=C(R5)(R6)(アルキリデン基)としては、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、n−ブチリデン基、イソブチリデン基、t−ブチリデン基、n−ペンチリデン基、2−メチルブチリデン基、3−メチルブチリデン基、t−ペンチリデン基、n−ヘキシリデン基、1−メチルペンチリデン基、2−メチルペンチリデン基、3−メチルペンチリデン基、4−メチルペンチリデン基、2,2−ジメチルブチリデン基、2,3−ジメチルブチリデン基、2,4−ジメチルブチリデン基、3,3−ジメチルブチリデン基、3,4−ジメチルブチリデン基、4,4−ジメチルブチリデン基、2−エチルブチリデン基、1−エチルブチリデン基、及びシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0056】
前駆体フェノール樹脂(P)の製造に用いられる一般式(10)及び(11)で表される化合物中のXにおいて、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、t−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基、1−メチルペントキシ基、2−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、4−メチルペントキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、2,4−ジメチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、3,4−ジメチルブトキシ基、4,4−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、及び1−エチルブトキシ基等が挙げられる。
【0057】
前駆体フェノール樹脂(P)の製造に用いられる2官能型ビフェニル化合物としては、一般式(10)で表される化学構造であれば特に限定されない。例えば4,4’−ビスク
ロロメチルビフェニル、3,5−ビスクロロメチルビフェニル、4,4’−ビスブロモメチルビフェニル、3,5−ビスブロモメチルビフェニル、4,4’−ビスヨードメチルビフェニル、3,5−ビスヨードメチルビフェニル、4,4’−ビスヒドロキシメチルビフェニル、3,5−ビスヒドロキシメチルビフェニル、4,4’−ビスメトキシメチルビフェニル、3,5−ビスメトキシメチルビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビスクロロメチルビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビスブロモメチルビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビスヨードメチルビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビスヒドロキシメチルビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビスメトキシメチルビフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、比較的低温で合成が可能であり、反応副生成物の留去や取り扱いが容易であるという観点からは4,4’−ビスメトキシメチルビフェニルが好ましく、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として利用することができるという点で4,4’−ビスクロロメチルビフェニルが好ましい。
【0058】
前駆体フェノール樹脂(P)の製造に用いられる1官能型ビフェニル化合物としては、一般式(11)で表される化学構造であれば特に限定されない。例えば4−クロロメチルビフェニル、3−クロロメチルビフェニル、2−クロロメチルビフェニル、4−ブロモメチルビフェニル、4−ヨードメチルビフェニル、4−ヒドロキシメチルビフェニル、4−メトキシメチルビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4−クロロメチルビフェニル、3,3’−ジメチル−4−クロロメチルビフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、比較的低温で合成が可能であり、反応副生成物の留去や取り扱いが容易であるという観点からは4−メトキシメチルビフェニルが好ましく、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として利用することができるという点で4−クロロメチルビフェニルが好ましい。
【0059】
前駆体フェノール樹脂(P)の合成に用いる酸性触媒は特に限定されないが、第1の製法に用いる強酸性触媒には、シュウ酸、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などを、第2及び第3の製法に用いる酸性触媒には、蟻酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、ルイス酸などを挙げることができる。なお、第2、第3の製法において、一般式(10)あるいは一般式(11)のいずれかのXがハロゲン原子である場合には、反応時に副生するハロゲン化水素が酸性触媒として作用することから、反応系中に酸性触媒を添加する必要は無く、少量の水を添加することで速やかに反応を開始することができる。
【0060】
前駆体フェノール樹脂(P)の合成方法のうち、第1の製法の場合には、一般式(7)で表されるビフェニル化合物1モルに対して、アルデヒド類を1〜2.5モル、触媒としてパラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、硫酸などの強酸を0.1〜2.5モル加えて、100〜150℃の温度で、0.5〜5時間反応してビフェニル−ホルムアルデヒド反応中間体(B−F)を得る。次いで、フェノール化合物1〜20モル、アルデヒド類を0〜2.5モル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、ルイス酸などの酸性触媒0.005〜0.05モルを加えて50〜200℃の温度にて窒素フローにより発生ガスを系外へ排出しながら、2〜20時間共縮合反応させ、反応終了後に残留するモノマー及び水分を減圧蒸留、水蒸気蒸留などの方法で留去することによって得ることができる。
【0061】
第1の製法により得られる前駆体フェノール樹脂(以下、「前駆体フェノール樹脂(P−0)」ともいう。)は、下記一般式(12)で表される構造を有する1以上の重合体か
らなり、下記一般式(12)においてj/i=1とは異なる重合体をも含む含ものである。なお、下記一般式(12)におけるi、jと、一般式(4)におけるc、dとの関係は、i=c、j=d−1であり、下記一般式(12)におけるj/i=1の重合体とは、一般式(4)における(d−1)/c=1の重合体に相当するものである。
【化12】

(ただし、上記一般式(12)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。iは1〜20の整数であり、jは0〜20の整数である。置換もしくは無置換のヒドロキシフェニレン基を有するj個の繰り返し単位と、ビフェニレン基を有するi個
の繰り返し単位とは、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよい。)
【0062】
一般式(12)中のR1及びR2における炭素数1〜9の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,4−ジメチルブチル基、4,4−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、ノニル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基等が挙げられる。これらは、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0063】
また、一般式(12)中のR3及びR4における炭素数1〜6の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,4−ジメチルブチル基、4,4−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基等が挙げられる。これらは、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0064】
第1の製法により得られ、一般式(12)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂(P−0)におけるi及びjの値を平均値で記載すると、iの平均値は好ましくは0.25〜8、より好ましくは0.5〜4、さらに好ましくは0.8〜2であり、jの平均値は好ましくは0.4〜12、より好ましくは0.6〜6、さらに好ましくは0.8〜3である。i+jの平均値は好ましくは0.8〜20、より好ましくは1.7〜10である。上記好ましい範囲を、一般式(1)におけるc、dの平均値で記載し直すと、cの平均値は好ましくは0.25〜8、より好ましくは0.5〜4、さらに好ましくは0.8〜2であり、dの平均値は好ましくは1.4〜13、より好ましくは1.6〜7、さらに好ましくは1.8〜4である。c+dの平均値は好ましくは1.8〜21、より好ましくは2.7〜11である。iの平均値が上記下限値より小さい場合、前駆体フェノール樹脂P−0のエポキシ化後に調製して得られる樹脂組成物の耐燃性及び耐半
田性が低下する恐れがある。iの平均値が上記上限値より大きい場合、前駆体フェノール樹脂P−0のエポキシ化後に調製して得られる樹脂組成物の流動性が低下する恐れがある。また、jの平均値が上記下限値より小さい場合、前駆体フェノール樹脂P−0のエポキシ化後に調製して得られる樹脂組成物の連続成形性及び耐半田クラック性が低下する恐れがある。jの平均値が上記上限値より大きい場合、前駆体フェノール樹脂1のエポキシ化後に調製して得られる樹脂組成物の流動性が低下する恐れがある。また、i+jの平均値が上記下限値より小さい場合、硬化性や強度が低下する恐れがある。i+jの平均値が上記上限値より大きい場合、前駆体フェノール樹脂1のエポキシ化後に調製して得られる樹脂組成物の流動性が低下する恐れがある。なお、i及びjの値は、H−NMR又はC−NMR測定によって骨格中に含まれる水酸基中の水素原子又は水素原子が結合した炭素原子に由来するシグナル、ベンゼン環に直接結合している水素原子又はベンゼン環を構成する炭素原子由来のシグナル、及び−C(R3)(R4)−に含まれる水素原子又は炭素原子由来のシグナルの強度比によって算出することができる。また、一般式(12)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂P−0をエポキシ化して得られたエポキシ樹脂におけるi及びjに相当する値についても、同様にH−NMR又はC−NMR測定によってシグナルの強度比によって算出することができる。
【0065】
ここで、第1の製法でjの平均値を調整する方法としては、
(i)一般式(7)で表されるビフェニル化合物とアルデヒド類との反応において、ゲル化が生じない程度にアルデヒド類の配合量を上げる、反応温度を上げる、触媒量を増量する、
(ii)一般式(7)で表されるビフェニル化合物とアルデヒド類との反応で得られた反応中間体(B−F)とフェノール化合物との反応において、アルデヒド類の配合量を上げる、
などの方法で、jの平均値を高めることができる。
また、第1の製法でiの平均値を調整する方法としては、
(iii)一般式(7)で表されるビフェニル化合物とアルデヒド類との反応で得られた中間体(B−F)とフェノール化合物との反応において、フェノール化合物/反応中間体(B−F)の配合比を下げる、反応温度を上げる、触媒量を増やすなどの方法で、iの平
均値を高めることができる。
i+jの平均値を調整する方法としては、上述(i)〜(iii)の方法を適宜組み合わせることで調整することができる。
【0066】
第1の製法で得られる前駆体フェノール樹脂P−0中には、一般式(12)で表される構造を有する1以上の重合体のうち、i=0に相当する重合体であるフェノールノボラック成分が含まれることがある。これらの含有割合について、電界脱離質量分析(FD−MS)による測定により求められるフェノールノボラック成分の相対強度の合計が、前駆体フェノール樹脂P−0全体の相対強度の合計に対して50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下である。フェノールノボラック(一般式(12)のi=0に相当する)成分の含有量が上記上限値より大きい場合、エポキシ化後に調製して得られる樹脂組成物の耐半田性、耐燃性が低下する恐れがある。上述のフェノールノボラック(一般式(12)のi=0に相当する)成分の含有割合を調整する方法としては、一般式(7)で表されるビフェニル化合物とアルデヒド類との反応で得た中間体(B−F)を強酸条件下で水蒸気蒸留することにより、ホルムアルデヒド成分を脱離、除去した後に、フェノール化合物と反応することで、フェノールノボラック(一般式(12)のi=0に相当する)成分を低減することができる。
【0067】
また、前駆体フェノール樹脂(P)の合成方法のうち、第2の製法の場合には、一般式(8)で表されるアルデヒド類と一般式(10)で表される2官能型ビフェニル化合物とを合計1モルに対して、一般式(9)で表されるフェノール化合物3〜5モル、蟻酸、シ
ュウ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、ルイス酸、などの酸性触媒0.005〜0.05モルを50〜200℃の温度で、窒素フローにより発生ガス及び水分を系外へ排出しながら、2〜20時間反応させ、反応終了後に残留するモノマーを減圧蒸留、水蒸気蒸留などの方法で留去することによって得ることができる。
【0068】
第2の製法により得られる前駆体フェノール樹脂(P)は、一般式(4)で表される構造を有する1以上の重合体のうちで(d−1)/c=(e+f)/e≧1に相当する重合体であって、下記一般式(5)で表される構造を有する1以上の重合体を含むものである(以下、前駆体フェノール樹脂(P−1’)ともいう)。なお、前駆体フェノール樹脂(P−1’)全体におけるe、fの平均値の比率は、使用した一般式(10)で表される2官能型ビフェニル化合物とアルデヒド類の比率をほぼ反映し、その配合比率の好ましい範囲としては、モル比でアルデヒド類:2官能型ビフェニル化合物=5:95〜70:30、より好ましくは10:90〜50:50を挙げることができる。また、反応の際、上記のように原料を一括で仕込んで反応させる方法のほか、予めフェノール類と2官能型ビフェニル化合物とを仕込んで反応を開始した後にアルデヒド類を逐次添加する、あるいは、予めフェノール化合物とアルデヒド類とを仕込んで反応を開始した後に、2官能型ビフェニル化合物を逐次添加する、などの添加の順序を前後させることもできる。
【0069】
【化5】

(上記一般式(5)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。eは1〜20の整数、fは1〜18の整数である。)
【0070】
第2の製法で得られる前駆体フェノール樹脂(P−1’)中に、副生成分としてフェノールノボラック(一般式(5)のe=0に相当する成分)が含まれる場合がある。これらの含有割合について、前駆体フェノール樹脂(P)及びエポキシ化したエポキシ樹脂(A)の相対強度を100%とした場合、50%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下である。一般式(5)のe=0に相当する成分が上記上限値より大きい場合、耐半田性、耐燃性が低下する恐れがある。これらを低減する方法としては、第二の製法の際に、一括反応、あるいは、予めフェノール類と2官能型ビフェニル化合物とを反応させた後にアルデヒド類を逐次添加することにより、フェノールノボラック(一般式(5)のe=0に相当する)成分のうち、とくに一般式(5)のe=0、f≧3に相当する成分の生成を抑制することができる。また、得られた前駆体フェ
ノール樹脂(P−1’)を水蒸気蒸留あるいは減圧蒸留を行う際、減圧度を高める、あるいは蒸留処理時間を長くするなどにより、フェノールノボラック(一般式(5)のe=0に相当する成分)成分のうち、とくに一般式(5)のe=0、f≦2に相当する成分を低
減することができる。あるいは、前駆体フェノール樹脂(P−1)にカラムを用いた分級を行うことで一般式(5)のe=0、f≦2に相当する成分を除去することもできる。
【0071】
前駆体フェノール樹脂(P)の合成方法のうち、第3の製法の場合には、一般式(10)で表される2官能型ビフェニル化合物と一般式(11)で表される1官能型ビフェニル化合物とを合計1モルに対して、一般式(9)で表されるフェノール化合物3〜5モル、
蟻酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、ルイス酸、などの酸性触媒0.005〜0.05モルを50〜200℃の温度で、窒素フローにより発生ガス及び水分を系外へ排出しながら、2〜20時間反応させ、反応終了後に残留するモノマーを減圧蒸留、水蒸気蒸留などの方法で留去することによって得ることができる。
【0072】
第3の製法により得られる前駆体フェノール樹脂(P)は、一般式(4)で表される構造を有する1以上の重合体のうちで(d−1)/c=g/(g+h)≦1に相当する成分であって、下記一般式(6)で表される構造を有する1以上の重合体を含むものである(以下、前駆体フェノール樹脂(P−2’)ともいう)。なお、前駆体フェノール樹脂(P−2’)全体におけるg、hの平均値の比率は、使用した一般式(10)で表される2官能型ビフェニル化合物と一般式(11)で表される1官能型ビフェニル化合物との比率をほぼ反映し、その配合比率の好ましい範囲としては、モル比で1官能型ビフェニル化合物:2官能型ビフェニル化合物=5:95〜70:30を挙げることができ、より好ましくは10:90〜50:50である。
【0073】
【化6】

(上記一般式(6)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。gは0〜19の整数、hは1〜9の整数である。)
【0074】
ここで、より低粘度の前駆体フェノール樹脂(P)を得るためには、フェノール化合物の配合量を増やす、酸触媒の配合量を減らす、ハロゲン化水素ガスが発生する場合にはこれを窒素気流などで速やかに系外に排出する、反応温度を下げる、などの手法によって高分子量成分の生成を低減させる方法が使用できる。この場合、反応の進行は、アルデヒド類とフェノールとの反応で副生成する水、一般式(10)又は一般式(11)とフェノールとの反応で副生成するハロゲン化水素、アルコールのガスの発生状況や、あるいは反応途中の生成物をサンプリングしてゲルパーミエーションクロマトグラフ法により分子量で確認することもできる。
【0075】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)の前駆体フェノール樹脂(P)は、一般式(4)で表される構造を有する1以上の重合体であって、具体的には、一般式(12)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂(P−0)、一般式(5)で表される構造を有する1以上の重合体を含む前駆体フェノール樹脂(P−1’)、一般式(6)で表される構造を有する1以上の重合体を含む前駆体フェノール樹脂(P−2’)を得ることができ、第1の製法、第2の製法においては、フェノールノボラック型樹脂の成分を含むことができる。
【0076】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量の下限値は、特に制限は無いが、220g/eq以上が好ましく、より好ましくは230g/eq以上、さらに好ましくは240g/eq以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐燃性と耐半田性を有する。エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量の上限値は、300g/eq以下が好ましく、より好ましくは290g/eq以下、さらに好ましくは280g/eq以下である。
上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性と成形性を有する。
【0077】
上述の複数の構造の重合体を含む前駆体フェノール樹脂(P)をエポキシ化したエポキシ樹脂(A)により、耐半田性、難燃性及び連続成形性のバランスに優れる封止用樹脂組成物を得ることができる。
【0078】
本発明の封止用樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(A)の配合量の下限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の配合量の上限値は、封止樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性と硬化性を有する。
【0079】
本発明の封止用樹脂組成物では、エポキシ樹脂(A)を用いることによる効果が損なわれない範囲で、他のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0080】
併用可能な他のエポキシ樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセンジオール型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレン及び/又はジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレン又はジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸触媒下において反応させて得られるノボラック型ナフトール樹脂をエポキシ化して得られる樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;メトキシナフタレン骨格を有する変性ノボラック型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、得られる封止用樹脂組成物の耐湿信頼性の観点から、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンを極力含まないことが好ましい。また、樹脂組成物の硬化性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq以上、500g/eq以下であることが好ましい。
【0081】
さらにその中でも、流動性の観点ではビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂等が好ましく、耐半田性の観点ではフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン骨格を有する変性ノボラック型エポキシ樹脂等が好ましい。また、片面封止型の電子部品装置における低反り性の観点ではトリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ノボラック型ナフトール樹脂をエポキシ化して得られる樹脂、ジヒドロアントラセンジオール型エポキシ樹脂等が好ましい。
【0082】
このような他のエポキシを併用する場合において、エポキシ樹脂(A)の配合割合の下限値としては、全エポキシ樹脂に対して、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、樹脂組成物の耐半田性、難燃性および連続成形性のバランスを
向上させる効果を得ることができる。
【0083】
なお、後述する硬化剤としてのフェノール樹脂と、エポキシ樹脂とは、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。
【0084】
[フェノール樹脂系硬化剤(B)]
次に、フェノール樹脂系硬化剤(B)について説明する。フェノール樹脂系硬化剤(B)は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物、アルキル置換ベンゼンとホルムアルデヒドとを重合して得られる樹脂をフェノール類及びパラキシリレン化合物で変性して得られるフェノール変性アルキル置換芳香族炭化水素樹脂、等が挙げられる。また、上述の前駆体フェノール樹脂(P)を硬化剤として用いることができる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂系硬化剤(B)により、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスが良好となる。特に、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0085】
本発明においては、さらに他の硬化剤を併用することができる。併用できる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を挙げることができる。
【0086】
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0087】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0088】
縮合型の硬化剤としては、例えば、メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0089】
このような他の硬化剤を併用する場合において、フェノール樹脂系硬化剤(B)の配合割合の下限値としては、全硬化剤に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、耐燃性、耐半田性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。
【0090】
硬化剤全体の配合割合の下限値については、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に、0.8質量%以上であることが好ましく1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値についても、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性を得ることができる。
【0091】
[無機充填剤(C)]
本発明の封止用樹脂組成物に用いられる無機充填剤(C)としては、当該分野で一般的に用いられる無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機充填剤(C)の粒径は、金型キャビティへの充填性の観点から、0.01μm以上、150μm以下であることが望ましい。
【0092】
封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の量の下限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは78質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは86質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下が低減でき、したがって良好な耐半田クラック性を有する硬化物を得ることができる。また、連続成形時の金型ゲート側の樹脂詰まりに起因する成形不良を引き起こす恐れが少ない。また、封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の量の上限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは93質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。
【0093】
なお、後述する、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤を用いる場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機充填剤の合計量を上記範囲内とすることが望ましい。
【0094】
[その他の成分]
本発明の止用樹脂組成物は、硬化促進剤(D)を含んでもよい。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール樹脂系硬化剤(B)の水酸基との反応を促進するものであればよく、一般に使用される硬化促進剤を用いることができる。
【0095】
硬化促進剤(D)の具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有化合物が挙げられる。これらのうち、硬化性の観点からはリン原子含有化合物が好ましく、流動性と硬化性のバランスの観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有する触媒がより好ましい。流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また耐半田性の観点では、ホスホ
ベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を考慮すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。また、連続成形性の観点では、テトラ置換ホスホニウム化合物が好ましい。
【0096】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0097】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(13)で表される化合物等が挙げられる。
【0098】
【化13】

(ただし、上記一般式(13)において、Pはリン原子を表す。R7、R8、R9及びR10は芳香族基又はアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。)
【0099】
一般式(13)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(13)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(13)で表される化合物において、リン原子に結合するR7、R8、R9及びR10がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
【0100】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(14)で表される化合物等が挙げられる。
【化14】

(ただし、上記一般式(14)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。kは0〜5の整数であり、lは0〜3の整数である。)
【0101】
一般式(14)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0102】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(15)で表される化合物等が挙げられる。
【化15】

(ただし、上記一般式(15)において、Pはリン原子を表す。R11、R12及びR13は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R14、R15及びR16は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R14とR15が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0103】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0104】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0105】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0106】
一般式(15)で表される化合物において、リン原子に結合するR11、R12及びR13がフェニル基であり、かつR14、R15及びR16が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が封止用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0107】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(16)で表される化合物等が挙げられる。
【化16】

(ただし、上記一般式(16)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R17、R18、R19及びR20は、それぞれ、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。式中X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である
。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0108】
一般式(16)において、R17、R18、R19及びR20としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0109】
また、一般式(16)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(16)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0110】
また、一般式(16)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0111】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0112】
本発明の封止用樹脂組成物に用いることができる硬化促進剤(D)の配合割合は、全樹脂組成物中0.1質量%以上、1質量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤(D)の配合割合が上記範囲内であると、充分な硬化性を得ることができる。また、硬化促進
剤(D)の配合割合が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。
【0113】
本発明では、さらに芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)を用いることができる。芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)(以下、「化合物(E)」とも称する。)は、これを用いることにより、一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との架橋反応を促進させる硬化促進剤として、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いた場合であっても、樹脂組成物の溶融混練中での反応を抑えることができ、安定して封止用樹脂組成物を得ることができる。また、化合物(E)は、封止用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる効果も有するものである。化合物(E)としては、下記一般式(17)で表される単環式化合物又は下記一般式(18)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0114】
【化17】

(ただし、上記一般式(17)において、R21、R25はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R22、R23及びR24は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0115】
【化18】

(ただし、上記一般式(18)において、R26、R32はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R27、R28、R29、R30及びR31は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0116】
一般式(17)で表される単環式化合物の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(18)で表される多環式化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(E)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(E)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0117】
かかる化合物(E)の配合割合は、全封止用樹脂組成物中に0.01質量%以上、1質
量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、0.8質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上、0.5質量%以下である。化合物(E)の配合割合の下限値が上記範囲内であると、封止用樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(E)の配合割合の上限値が上記範囲内であると、封止用樹脂組成物の硬化性の低下や硬化物物性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0118】
本発明の封止用樹脂組成物においては、エポキシ樹脂(A)と無機充填剤(C)との密着性を向上させるため、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)を添加することができる。その例としては特に限定されるものではないが、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられ、また、2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含んでもよい。エポキシ樹脂(A)と無機充填剤(C)との間で反応し、エポキシ樹脂(A)と無機充填剤(C)の界面強度を向上させるものであればよい。また、シランカップリング剤は、前述の化合物(E)と併用することで、樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(E)の効果を高めることもできるものである。
【0119】
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン等が挙げられる。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0120】
本発明の場合、耐半田性と連続成形性のバランスという観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、アミノシランが好ましく、シリコンチップ表面のポリイミドや基板表面のソルダーレジストなどの有機部材への密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0121】
本発明の封止用樹脂組成物に用いることができるシランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合の下限値としては、全樹脂組成物中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂(A)と無機充填剤(C)との界面強度が低下することがなく、電子部品装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合の上限値としては、全樹脂組成物中1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。シラ
ンカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂(A)と無機充填剤(C)との界面強度が低下することがなく、装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合が上記範囲内であれば、樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、電子部品装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0122】
本発明の封止用樹脂組成物においては、難燃性を向上させるために無機難燃剤(G)を添加することができる。なかでも燃焼時に脱水、吸熱することによって燃焼反応を阻害する金属水酸化物、又は複合金属水酸化物が燃焼時間の短縮することができる点で好ましい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニアを挙げることができる。複合金属水酸化物としては、2種以上の金属元素を含むハイドロタルサイト化合物であって、少なくとも一つの金属元素がマグネシウムであり、かつ、その他の金属元素がカルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、又は亜鉛から選ばれる金属元素であればよく、そのような複合金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が市販品で入手が容易である。なかでも、耐半田性と連続成形性のバランスの観点からは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が好ましい。無機難燃剤(G)は、単独で用いても、2種以上用いてもよい。また、連続成形性への影響を低減する目的から、シランカップリング剤などの珪素化合物やワックスなどの脂肪族系化合物などで表面処理を行って用いてもよい。
【0123】
本発明の封止用樹脂組成物では、前述した成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力添加剤を適宜配合してもよい。
【0124】
本発明の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂系硬化剤(B)及び無機充填剤(C)、ならびに上述のその他の添加剤等を、例えば、ミキサー等を用いて常温で均一に混合し、その後、必要に応じて、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて溶融混練し、続いて必要に応じて冷却、粉砕することにより、所望の分散度や流動性等に調整することができる。
【0125】
[電子部品装置]
次に、本発明の電子部品装置について説明する。本発明の封止用樹脂組成物を用いて電子部品装置を製造する方法としては、例えば、素子を搭載したリードフレーム又は回路基板等を金型キャビティ内に設置した後、封止用樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形、硬化させることにより、この素子を封止する方法が挙げられる。
【0126】
封止される素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
リードフレームの材料は、特に限定されず、銅、銅合金、42アロイ(Fe−42%Ni合金)等用いることができる。リードフレームの表面は、例えば、純銅のストライクメッキ、銀メッキ(主にインナーリード先端のワイヤ接合部)、又はニッケル/パラジウム/金多層メッキ(PPF(Palladium Pre−Plated Frame))等のメッキが施されていてもよい。その結果、密着性が問題となる部分のリードフレーム表面には、銅、銅合金、金又は42アロイが存在することとなる。
【0128】
得られる電子部品装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、マトリクス・アレイ・パッケージ・ボール・グリッド・アレイ(MAPBGA)、チップ・スタックド・チップ・サイズ・パッケージ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
また、封止用樹脂組成物のエポキシ樹脂(A)は、一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも有するため、成形時において充分なエアベント、ゲート部の硬化物硬度、あるいは強度を有し、連続成形性を良好にすることができる。そのため、BGAなどの有機基板を用いた場合の連続成形性も同様に向上できるようになる。
【0130】
封止用樹脂組成物のトランスファーモールドなどの成形方法により素子が封止された電子部品装置は、そのまま、或いは80℃〜200℃程度の温度で、10分〜10時間程度の時間をかけてこの樹脂組成物を完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0131】
図1は、本発明に係る封止用樹脂組成物を用いた電子部品装置の一例である半導体装置について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間はワイヤ4によって接続されている。半導体素子1は、半導体封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0132】
図2は、本発明に係る封止用樹脂組成物を用いた電子部品装置の一例である片面封止型の半導体装置について、断面構造を示した図である。基板8上にソルダーレジスト7及びダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドと基板8上の電極パッドとの間はワイヤ4によって接続されている。本発明に係る半導体封止用樹脂組成物の硬化体6によって、基板8の半導体素子1が搭載された片面側のみが封止されている。基板8上の電極パッドは基板8上の非封止面側の半田ボール9と内部で接合されている。かかる半導体装置は、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物により半導体素子1が封止されているため、信頼性に優れ、また生産性が良好となるため、経済的に得られる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0134】
後述する実施例及び比較例で得られた封止用樹脂組成物に用いられる各成分について説明する。なお、特に記載しない限り、各成分の配合量は、質量部とする。
なお、各種エポキシ樹脂及びフェノール樹脂系硬化剤の150℃におけるICI粘度は、エム.エス.ティー.エンジニアリング(株)製、高温用ICI型コーンプレート型回転粘度計(プレート温度150℃設定、5Pコーンを使用)により測定した。
【0135】
(前駆体フェノール樹脂1の合成)
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、ビフェニル(和光純薬工業製特級試薬、ビフェニル、沸点70℃、分子量154、純度98.4%
)150質量部、ホルムアルデヒド37%水溶液(和光純薬工業製ホルマリン37%)155質量部、硫酸(濃度98%)43質量部、を秤量した後、窒素置換しながら加熱を開始した。系内の温度が90〜100℃の温度範囲を維持しながら8時間攪拌し、室温まで冷却した後、トルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによって粘性のあるビフェニル−ホルムアルデヒド反応中間体(B−F)を得た。次に、セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、上述の反応中間体(B−F)を70質量部、ホルムアルデヒド37%水溶液2質量部、あらかじめ粒状に砕いた4,4’−ビスクロロメチルビフェニル(和光純薬工業(株)製、純度95%、分子量251)147質量部、フェノール(関東化学(株)製特級試薬、フェノール、融点40.9℃、分子量94、純度99.3%)400質量部を加え、窒素置換及び攪拌を行いながら加熱し、系内温度を110〜120℃の範囲に維持しながら5時間反応させた。上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。反応終了後、150℃2mmHgの減圧条件で未反応成分と水分を留去した。ついでトルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分などの揮発成分を留去し、下記式(19)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂1(水酸基当量186、軟化点60℃、構造式の両末端は水素原子)を得た。
【0136】
【化19】

【0137】
(エポキシ樹脂1の合成)
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、上述の前駆体フェノール樹脂1を300質量部、エピクロルヒドリン900質量部、ジメチルスルホキシド180質量部を加えた。45℃に加熱して溶解させた後、水酸化ナトリウム(固形細粒状、純度99%試薬)65質量部を2時間かけて添加し、50℃に昇温して2時間、さらに70℃に昇温して2時間反応させた。反応後、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃2mmHgの減圧条件でエピクロルヒドリン及びジメチルスルホキシドを留去した。得られた固形物にメチルイソブチルケトン750質量部を加えて溶解し、70℃に加熱し、30質量%水酸化ナトリウム水溶液21質量部を1時間かけて添加し、さらに1時間反応した後、静置し、水層を棄却した。油層に蒸留水150質量部を加えて水洗操作を行い、洗浄水が中性になるまで同様の水洗操作を繰り返し行った後、加熱減圧によってメチルイソブチルケトンを留去し、一般式(20)で表される構造を有する1以上の重合体からなるエポキシ樹脂1(エポキシ当量265、軟化点55℃、150℃におけるICI粘度1.0dPa・s。構造式の両末端は水素原子)を得た。
【0138】
【化20】

【0139】
エポキシ樹脂1のFD−MSチャートを図3に示す。たとえば、図3のFD−MS分析のm/z=478は、式(20)においてi=1、j=1である重合体(一般式(1)においてc=1、d=2に相当する重合体)であり、一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(20)においてj/i=1である重合体)である。また、m/z=644は、一般式(20)においてi=2、j=1である重合体(一般式(1)においてc=2、d=2に相当する重合体)であり、一般式(1)において(d−1)/c<1に相当する重合体(式(20)においてj/i<1である重合体)であり、m/z=640は、一般式(20)においてi=1、j=2である重合体(一般式(1)においてc=1、d=3に相当する重合体)であり、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(20)においてj/i>1である重合体)である。すなわち、エポキシ樹脂1は、一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)に該当するエポキシ樹脂であることが確認できた。
【0140】
また、FD−MS分析の相対強度比で、エポキシ樹脂1中に占める一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(一般式(20)においてj/i=1である重合体)の合計量は70.0%、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(20)においてj/i>1である重合体)の合計量は10.6%、一般式(1)において(d−1)/c<1に相当する重合体(式(20)においてj/i<1である重合体)の合計量は14.1%、副生成分として含まれる一般式(1)においてc=0に相当する重合体(式(20)においてi=0である重合体、フェノールノボラック型エポキシ樹脂にあたる重合体)の合計量は5.3%であった。また、FD−MS分析の相対強度比を質量比とみなして算術計算することにより得られる一般式(1)におけるc、dの平均値はそれぞれ1.1、2.0、式(20)におけるi、jの平均値はそれぞれ1.1、1.0であった。なお、副生成分である一般式(1)においてc=0に相当する重合体(式(20)においてi=0である重合体、フェノールノボラック型エポキシ樹脂にあたる重合体)を除く成分中における、一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(一般式(20)においてj/i=1である重合体)、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(20)においてj/i>1である重合体)、一般式(1)において(d−1)/c<1に相当する重合体(式(20)においてj/i<1である重合体)の合計量は、それぞれ、73.9%、11.2%、14.9%であり、この場合の一般式(1)におけるc、dの平均値はそれぞれ1.2、2.0、式(20)におけるi、jの平均値はそれぞれ1.2、1.0と算出される。ここで、エポキシ樹脂1のFD−MS測定は次の条件で行なった。エポキシ樹脂1の試料10mgに溶剤ジメチルスルホキシド(DMSO)1gを加えて十分溶解したのち、FDエミッターに塗布の後、測定に供した。FD−MSシステムは、イオン化部に日本電子(株)製のMS−FD15Aを、検出器に日本電子(株)製のMS−700機種名二重収束型質量分析装置とを接続して用い、検出質量範囲(m/z)50〜2000にて測定した。
【0141】
(前駆体フェノール樹脂2の合成)
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、フェノール400質量部、あらかじめ粒状に砕いた4,4’−ビスクロロメチルビフェニル211
質量部を、セパラブルフラスコに秤量し、窒素置換しながら加熱し、フェノールの溶融の開始に併せて攪拌を開始した。系内の温度が95℃に到達した時点から、ホルムアルデヒド37%水溶液12質量部を3時間かけて徐々に系内に添加し、さらに3時間反応させた。なお、反応の間、系内は95℃から105℃の温度範囲を維持し、反応によって系内に発生する塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。反応終了後、反応終了後、160℃2mmHgの減圧条件で未反応成分などを留去し、ついでトルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分などの揮発成分を留去し、下記式(21)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂2(水酸基当量189、軟化点63℃)を得た。
【0142】
【化21】

(エポキシ樹脂2の合成)
エポキシ樹脂1の合成において、前駆体フェノール樹脂1のかわりに、前駆体フェノール樹脂2を300質量部に変更した以外は、エポキシ樹脂1と同様の合成操作を行い、式(22)で表される構造を有する1以上の重合体からなるエポキシ樹脂2(エポキシ当量270、軟化点59℃、150℃におけるICI粘度1.2dPa・s。)を得た。
【0143】
【化22】

【0144】
エポキシ樹脂2のFD−MSチャートを図4に示す。たとえば、図4のFD−MS分析のm/z=478は、式(22)においてe=1、f=0である重合体(一般式(1)においてc=1、d=2に相当する重合体)であり、一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e=1である重合体)である。また、m/z=640は、式(22)においてe=1、f=1である重合体(一般式(1)においてc=1、d=3に相当する重合体)、m/z=968は、式(22)においてe=2、f=1である重合体(一般式(1)においてc=2、d=4に相当する重合体)であり、いずれも、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e>1である重合体)であり、一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(A−1)に相当する重合体である。すなわち、エポキシ樹脂2は、一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)に該当するエポキシ樹脂であることが確認できた。
【0145】
また、FD−MS分析の相対強度比で、エポキシ樹脂2中に占める一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e=1である重合体)の合計量は77.8%、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重
合体(式(22)において(e+f)/e>1である重合体)の合計量は19.5%で、副生成分として含まれる一般式(1)においてc=0に相当する重合体(式(22)においてe=0である重合体、フェノールノボラック型エポキシ樹脂にあたる重合体)の合計量は2.7%であった。また、FD−MS分析の相対強度比を質量比とみなして算術計算することにより得られる一般式(1)におけるc、dの平均値はそれぞれ1.4、2.6であり、式(22)におけるe、fの平均値はそれぞれ1.4、0.2であった。なお、副生成分である一般式(1)においてc=0に相当する重合体(式(22)においてe=0である重合体、フェノールノボラック型エポキシ樹脂にあたる重合体)を除く成分中における、一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e=1である重合体)、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e>1である重合体)の合計量は、それぞれ、80.0%、20.0%であり、この場合のFD−MS分析の相対強度比を質量比とみなして算術計算することにより得られる一般式(1)におけるc、dの平均値はそれぞれ1.4、2.6であり、式(22)におけるe、fの平均値はそれぞれ1.4、0.2と算出される。
【0146】
(前駆体フェノール樹脂3の合成)
前駆体フェノール樹脂2の合成において、4,4’−ビスクロロメチルビフェニルを162質量部に、ホルムアルデヒド37%水溶液を28質量部に変更した以外は、前駆体フェノール樹脂2と同様の合成操作を行い、式(21)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂2A(水酸基当量172、軟化点59℃)を得た。
【0147】
(エポキシ樹脂3の合成)
エポキシ樹脂1の合成において、前駆体フェノール樹脂1の代わりに、前駆体フェノール樹脂3を300質量部に、エピクロルヒドリンを968質量部に、ジメチルスルホキシドを192質量部に変更した以外は、エポキシ樹脂1と同様の合成操作を行い、式(22)で表される構造を有する1以上の重合体からなるエポキシ樹脂2(エポキシ当量243、軟化点53℃、150℃におけるICI粘度1.0dPa・s。)を得た。
【0148】
エポキシ樹脂3のFD−MSチャートを図5に示す。たとえば、図5のFD−MS分析のm/z=478は、式(22)においてe=1、f=0である重合体(一般式(1)においてc=1、d=2に相当する重合体)であり、一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e=1である重合体)である。また、m/z=640は、式(22)においてe=1、f=1である重合体(一般式(1)においてc=1、d=3に相当する重合体)、m/z=968は、式(22)においてe=2、f=1である重合体(一般式(1)においてc=2、d=4に相当する重合体)であり、いずれも、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e>1である重合体)であり、一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(A−1)に相当する重合体である。すなわち、エポキシ樹脂3は、一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)に該当するエポキシ樹脂であることが確認できた。
【0149】
また、FD−MS分析の相対強度比で、エポキシ樹脂3中に占める一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e=1である重合体)の合計量は46.1%、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e>1である重合体)の合計量は45.6%で、副生成分として含まれる一般式(1)においてc=0に相当する重合体(式(22)においてe=0である重合体、フェノールノボラック型エポキシ樹脂にあたる重合体)の合計量は8.3%であった。また、FD−MS分析の相対強度比を質量比とみなして算術計算
することにより得られる一般式(1)におけるc、dの平均値それぞれは1.2、2.8であり、一般式(22)におけるe、fの平均値はそれぞれ1.2、0.6であった。なお、副生成分である一般式(1)においてc=0に相当する重合体(式(22)においてe=0である重合体、フェノールノボラック型エポキシ樹脂にあたる重合体)を除く成分中における、一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e=1である重合体)、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(22)において(e+f)/e>1である重合体)の合計量は、それぞれ、50.3%、49.7%であり、この場合、一般式(1)におけるc、dの平均値それぞれは1.3、2.8であり、一般式(22)におけるe、fの平均値はそれぞれ1.3、0.5と算出される。
【0150】
(前駆体フェノール樹脂4の合成)
前駆体フェノール樹脂2の合成において、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル211質量部を配合する代わりに、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル186.5質量部と4−フェニルベンジルクロリド(和光純薬工業(株)製、純度96%、分子量202.5)50質量部を配合し、ホルムアルデヒド37%水溶液を0質量部に変更した以外は、前駆体フェノール樹脂1と同様の合成操作を行い、下記式(23)で表される構造を有する1以上の重合体からなる前駆体フェノール樹脂4(水酸基当量214、軟化点64℃)を得た。
【0151】
【化23】

【0152】
(エポキシ樹脂4の合成)
エポキシ樹脂1の合成において、前駆体フェノール樹脂1の配合量300質量部を、前駆体フェノール樹脂2の配合量600質量部、前駆体フェノール樹脂3の配合量90質量部、及び前駆体フェノール樹脂4の配合量150質量部として、エポキシ樹脂1と同様の合成操作を行い、一般式(20)で表される構造を有する1以上の重合体、一般式(22)で表される構造を有する1以上の重合体及び一般式(24)で表される構造を有する1以上の重合体の混合物であるエポキシ樹脂4(エポキシ当量272、軟化点56℃、150℃におけるICI粘度1.1dPa・s。)を得た。
【0153】
【化24】

【0154】
エポキシ樹脂4のFD−MSチャートを図6に示す。たとえば、図6のFD−MS分析のm/z=478は、式(20)においてi=1、j=1である重合体、式(22)においてe=1、f=0である重合体又は式(24)においてg=1、h=0である重合体(一般式(1)においてc=1、d=2に相当する重合体)であり、一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(20)においてj/i=1である重合体、式
(22)において(e+f)/e=1である重合体又は式(24)においてg/(g+h)=1である重合体)である。また、m/z=640は、一般式(20)においてi=1、j=2である重合体又は式(22)においてe=1、f=1である重合体(一般式(1)においてc=1、d=3に相当する重合体)であり、これは一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(20)においてj/i>1である重合体又は式(22)において(e+f)/e>1である重合体)であり、一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(A−1)に相当する重合体である。また、m/z=644は、一般式(20)においてi=2、j=1である重合体又は式(24)においてg=1、h=1である重合体(一般式(1)においてc=2、d=2に相当する重合体)であり、これは一般式(1)において(d−1)/c<1に相当する重合体(式(20)においてj/i<1である重合体又は式(24)においてg/(g+h)<1である重合体)であり、一般式(3)で表されるエポキシ樹脂(A−2)に相当する重合体である。すなわち、エポキシ樹脂4は、一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)に該当するエポキシ樹脂であることが確認できた。
【0155】
また、FD−MS分析の相対強度比で、エポキシ樹脂4中に占める一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(式(20)においてj/i=1である重合体、式(22)において(e+f)/e=1である重合体又は式(24)においてg/(g+h)=1である重合体)の合計量は60.9%、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(20)においてj/i>1である重合体又は式(22)において(e+f)/e>1である重合体)の合計量は26.3%、一般式(1)において(d−1)/c<1に相当する重合体(式(20)においてj/i<1である重合体又は式(24)においてg/(g+h)<1である重合体)の合計量は9.6%で、副生成分として含まれる一般式(1)においてc=0に相当する重合体(フェノールノボラック型エポキシ樹脂にあたる重合体)の合計量は3.2%であった。また、FD−MS分析の相対強度比を質量比とみなして算術計算することにより得られる一般式(1)におけるc、dの平均値はそれぞれ1.4、2.5であった。なお、副生成分である一般式(1)においてc=0に相当する重合体(式(20)においてi=0である重合体又は式(22)においてe=0である重合体、フェノールノボラック型エポキシ樹脂にあたる重合体)を除く成分中における、一般式(1)において(d−1)/c=1に相当する重合体(一般式(20)においてj/i=1である重合体、式(22)において(e+f)/e=1である重合体又は式(24)においてg/(g+h)=1である重合体)、一般式(1)において(d−1)/c>1に相当する重合体(式(20)においてj/i>1である重合体又は式(22)において(e+f)/e>1である重合体)、一般式(1)において(d−1)/c<1に相当する重合体(式(20)においてj/i<1である重合体又は式(24)においてg/(g+h)<1である重合体)の合計量は、それぞれ、62.9%、27.2%、9.9%であり、この場合のFD−MS分析の相対強度比を質量比とみなして算術計算することにより得られる一般式(1)におけるc、dの平均値はそれぞれ1.5、2.5、と算出される。
【0156】
(その他のエポキシ樹脂)
エポキシ樹脂5:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)、YX4000K。エポキシ当量185、融点107℃、150℃におけるICI粘度0.1dPa・s。)
【0157】
エポキシ樹脂6:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)、YL6810。エポキシ当量172、融点45℃、150℃におけるICI粘度0.03dPa・s。)
【0158】
エポキシ樹脂7:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YSLV−80XY。エポキシ当量190、融点80℃、150℃におけるICI粘度0.03dPa
・s。)
【0159】
エポキシ樹脂8:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製、N−660。エポキシ当量210、軟化点62℃、150℃におけるICI粘度2.3dPa・s。)
【0160】
エポキシ樹脂9:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC3000。エポキシ当量276、軟化点58℃、150℃におけるICI粘度1.1dPa・s。)
【0161】
(硬化剤)
硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851SS。水酸基当量203、軟化点67℃、150℃におけるICI粘度1.1dPa・s。)
【0162】
硬化剤2: セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着
し、ホルムアルデヒド37%水溶液(和光純薬工業製、ホルマリン37%)116.3質量部、硫酸37.7質量部、m−キシレン(関東化学製、特級試薬、m−キシレン、沸点139℃、分子量106、純度99.4%)100質量部を秤量した後、窒素置換しながら加熱を開始した。系内の温度が90〜100℃の温度範囲を維持しながら6時間攪拌し、室温まで冷却した後、20質量%水酸化ナトリウム150重量部を徐々に添加することにより系内を中和した。この反応系に、フェノール839質量部、α,α'−ジクロロ−
p−キシレン338質量部を加え、窒素置換及び攪拌を行いながら加熱し、系内温度を110〜120℃の範囲に維持しながら5時間反応させた。上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。反応終了後、150℃2mmHgの減圧条件で未反応成分と水分を留去した。ついでトルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃2mmHgの減圧条件でトルエン、残留未反応成分などの揮発成分を留去し、下記式(25)で表される構造を有する1以上の重合体からなるフェノール樹脂硬化剤3(水酸基当量180、軟化点67℃、150℃におけるICI粘度0.6dPa・s。式(25)におけるpが0〜20の整数、qが0〜20の整数、rが0〜20の整数である重合体の混合物であって、p、q、rの平均値は、それぞれ1.8、0.3、0.6である。また、式(25)において、分子の左末端は水素原子、右末端はフェノール構造又はキシレン構造である。)を得た。
【0163】
【化25】

【0164】
硬化剤3:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH−7800SS。水酸基当量170、軟化点65℃、150℃におけるICI粘度0.9dPa・s。)
【0165】
硬化剤4:フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製、PR−HF−3。水酸基当量104、軟化点80℃、150℃におけるICI粘度0.7dPa・s。)
【0166】
硬化剤5:フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂(東都化成(株)製、SN−170L。水酸基当量182、軟化点70℃、150℃におけるICI粘度0.8dPa・s。)
【0167】
(無機充填剤)
無機充填剤1:電気化学工業(株)製、溶融球状シリカFB560(平均粒径30μm)100質量部、(株)アドマテックス製、合成球状シリカSO−C2(平均粒径0.5μm)6.5質量部、(株)アドマテックス製、合成球状シリカSO−C5(平均粒径1.5μm)7.5質量部の混合物
【0168】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:下記式(26)で表される硬化促進剤
【0169】
【化26】

【0170】
硬化促進剤2:下記式(27)で表される硬化促進剤
【0171】
【化27】

【0172】
硬化促進剤3:下記式(28)で表される硬化促進剤
【0173】
【化28】

【0174】
硬化促進剤4:下記式(29)で表される硬化促進剤
【化29】

【0175】
硬化促進剤5:トリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製、TPP)
【0176】
(芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E))
化合物E1:下記式(30)で表される化合物(東京化成工業(株)製、2,3−ナフタレンジオール、純度98%)
【0177】
【化30】

【0178】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−803)
シランカップリング剤2:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403)
シランカップリング剤3:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−573)。
【0179】
(無機難燃剤)
無機難燃剤1:水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、CL310)
無機難燃剤2:水酸化マグネシウム・水酸化亜鉛固溶体複合金属水酸化物(タテホ化学工業(株)製、エコーマグZ−10)
【0180】
(着色剤)
着色剤1:三菱化学(株)製のカーボンブラック(MA600)
【0181】
(離型剤)
離型剤1:日興リカ(株)製のカルナバワックス(ニッコウカルナバ、融点83℃)
【0182】
後述する実施例及び比較例で得られた封止用樹脂組成物について、次のような測定及び評価を行った。
(評価項目)
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
【0183】
耐燃性:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入時間15秒、硬化時間120秒、注入圧力9.8MPaの条件で、樹脂組成物を注入成形して、3.2mm厚の耐燃試験片を作製した。得られた試験片について、UL94垂直法の規格に則り耐燃試験を行った。表には、ΣF、Fmax及び判定後の耐燃ランク(クラス)を示した。
【0184】
連続成形性:得られた樹脂組成物を粉末成型プレス機(玉川マシナリー(株)製、S−
20−A)にて、重量15g、サイズφ18mm×高さ約30mmとなるよう調整し、打錠圧力600Paにて打錠してタブレットを得た。得られたタブレットを装填したタブレット供給マガジンを成形装置内部にセットした。成形には、成形装置として低圧トランスファー自動成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物によりシリコンチップ等を封止して80ピンQFP(Cu製リードフレーム、パッケージ外寸:14mm×20mm×2.0mm厚、パッドサイズ:8.0mm×8.0mm、チップサイズ7.0mm×7.0mm×0.35mm厚)を得る成形を、連続で450ショットまで行った。この際、25ショット毎に金型表面の汚れ状態とパッケージの成形状態(未充填の有無)とを確認し、最初に金型の汚れが確認できたショット数、また金型汚れが発生しなかった場合には○印を表の「金型汚れ」の項に、最初に未充填が確認できたショット数、また未充填が発生しなかった場合には○印を表の「充填不良」の項に、それぞれ記載した。なお、金型の表面汚れは、成形した半導体装置の表面に汚れが転写してしまう、あるいは未充填の前兆である恐れが有り、400ショット未満で金型汚れが発生するのは好ましくない。また、金型汚れが400ショット以上で発生する場合は、連続生産性への影響はなく良好と判断する。また、使用するタブレットは、実際に成形で使用されるまでの間、成形装置のマガジン内に待機状態にあり、表面温度約30℃で、最大13個垂直に積み上げた状態にあった。成形装置内でのタブレットの供給搬送は、マガジンの最下部より突き上げピンが上昇することで、最上段のタブレットがマガジン上部から押し出され、機械式アームにて持ち上げられて、トランスファー成形用ポットへと搬送される。このとき、マガジン内で待機中にタブレットが上下で固着すると搬送不良が発生する。表の「搬送不良」の項には、最初に搬送不良が確認できたショット数、また搬送不良が発生しなかった場合には○印を記載した。
【0185】
耐半田性試験1:低圧トランスファー成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、金型温度180℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間120秒間の条件で、樹脂組成物を注入して半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を封止成形し、80ピンQFP(表面にCuストライクメッキを施したCu製リードフレーム、サイズは14×20mm×厚さ2.00mm、半導体素子は7×7mm×厚さ0.35mm、半導体素子とリードフレームのインナーリード部とは25μm径の金線でボンディングされている。)なる半導体装置を6個作製した。ポストキュアとして175℃で4時間加熱処理した半導体装置6個を、85℃、相対湿度85%で120時間加湿処理した後、IRリフロー処理(260℃条件)を行った。これらの半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope10)で観察し、剥離又はクラックのいずれか一方でも発生したものを不良とした。不良半導体装置の個数がn個であるとき、n/6と表示した。実施例1で得られた樹脂組成物は0/6と良好な信頼性を示した。
【0186】
耐半田性試験2:上述の耐半田性試験1で、Cu製リードフレームに代わりニッケル/パラジウム/金メッキ処理を施した銅製リードフレームを用い、加湿処理条件を60℃、相対湿度60%、96時間としたほかは、耐半田性試験1と同様に試験を実施した。実施例1で得られた樹脂組成物は0/6と良好な信頼性を示した。
【0187】
実施例及び比較例について、表1、表2及び表3に示す配合量に従い各成分をミキサーを用いて、常温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練し、その後冷却し、次いで粉砕して、封止用樹脂組成物を得た。得られた封止用樹脂組成物を用いて、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1、表2及び表3に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
【表2】

【0190】
【表3】

【0191】
実施例1〜18は、一般式(1)で表される構造を有する1以上の重合体からなり、一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含む封止用樹脂組成物であり、実施例1〜18のいずれにおいても、流動性(スパイラルフロー)、耐燃性、連続成形性(金型汚れ、充填性、搬送性)、耐半田性のバランスに優れた結果が得られた。一方、エポキシ樹脂(A)の代わりにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂7を用いた比較例1では、流動性、耐燃性、耐半田性が劣る結果となった。また、エポキシ樹脂(A)の代わりにビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポ
キシ樹脂であるエポキシ樹脂8を用いた比較例2では、連続成形性が劣る結果となった。また、エポキシ樹脂(A)の代わりにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂7とビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂8を併用した比較例3では、耐燃性が劣り、連続成形性も低下する結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明に従うと、耐半田性、耐燃性及び連続成形性のバランスに優れた封止用樹脂組成物、ならびに、その硬化物により素子を封止してなる信頼性に優れた電子部品装置を経済的に得ることができるため、工業的な樹脂封止型電子部品装置、特に表面実装用の樹脂封止型電子部品装置の製造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0193】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 ワイヤ
5 リードフレーム
6 封止用樹脂組成物の硬化体
7 ソルダーレジスト
8 基板
9 半田ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(上記一般式(1)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基であり、構造式の両末端は水素原子である。cは1〜20の整数であり、dは1〜20の整数である。置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位と、置換もしくは無置換のビフェニレン基であるc個の繰り返し単位とは、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず置換もしくは無置換のメチレン基である−C(R3)(R4)−を有する。)
で表される構造を有する1以上の重合体からなり、上記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体をも含むエポキシ樹脂(A)と、
フェノール樹脂系硬化剤(B)と、
無機充填剤(C)と、
を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の封止用樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(A)が、前記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体として、
下記一般式(2):
【化2】

(上記一般式(2)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基である。eは1〜20の整数、fは1〜18の整数である。)
で表される構造を有する1以上の重合体(A−1)、及び/又は、
下記一般式(3):
【化3】

(上記一般式(3)において、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜9の炭化水素基であり、a、bは0〜3の整数である。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のグリシドキシフェニル基である
。gは1〜19の整数、hは1〜9の整数である。)で表される構造を有する1以上の重合体(A−2)、
を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の封止用樹脂組成物において、電界脱離質量分析による測定で、前記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体の相対強度の合計が、前記エポキシ樹脂(A)全体の相対強度の合計に対して5%以上、80%以下であることを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物において、電界脱離質量分析による測定で、前記一般式(1)において(d−1)/c=1とは異なる重合体の相対強度の合計が、前記エポキシ樹脂(A)全体の相対強度の合計に対して10%以上、60%以下であることを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物において、前記無機充填剤(C)の含有量が全樹脂組成物に対して80質量%以上、93質量%以下であることを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が220g/eq以上、300g/eq以下であることを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(A)の配合量が全樹脂組成物に対して0.5質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物において、硬化促進剤(D)をさらに含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の封止用樹脂組成物において、前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物において、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)をさらに含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物において、カップリング剤(F)をさらに含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の封止用樹脂組成物において、前記カップリング剤(F)が2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物において、無機難燃剤(G)をさらに含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の封止用樹脂組成物において、前記無機難燃剤(G)が金属水酸化物、又は複合金属水酸化物を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を硬化させた硬化物で素子を封止して得られることを特徴とする電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−236367(P2011−236367A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110395(P2010−110395)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】