説明

射出成形方法及び射出成形装置

【課題】 キャビティの末端部での製品の変形が少ない射出成形方法を提供する。
【解決手段】 キャビティの末端部に到達する溶融樹脂の温度が固化しない範囲で出来るだけ低くなるように、射出開始時のスクリューフィーダによる射出率(cm/sec)が最も大きく、射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率(cm/sec)が小さくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のテールゲートや、バンパーなどの樹脂成形部品を成形する射出成形方法及び射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用樹脂部品の多くは射出成形によって製造されており、複雑形状製品、大型製品などでは金型キャビティの末端部まで樹脂が廻り込まないなどの問題があるため、種々の提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、固定ダイプレートと略平行に延在する受入ランナー部と、供出ランナー部と、加熱手段とを有するホットランナー部と、金型に設けられ供出ランナー部が出入可能な溝部と、ホットランナー部を駆動する駆動手段とから構成したホットランナー装置において、成形時には出口開口がスプルー口に当接するように駆動され、段替え時にはその逆方向へ駆動されて供出ランナー部が溝部を通過することで、金型とホットランナー部とが分離可能とすることで、複数の金型に対してホットランナー装置を共用する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、射出成形装置の成形型内のキャビティに溶融した樹脂材を射出する複数の射出ノズルと、各射出ノズルに各射出ノズルから射出される樹脂材の射出率を指令する制御手段とを備え、前記制御手段として射出ノズル毎に、射出開始からの経過時間に対応した射出率を記憶している記憶装置を備え、前記記憶装置に記憶されている射出率は、各射出ノズルの射出圧力を等しくする関係に設定する記載がある。
【0005】
特許文献3には、超音波振動子を備えた金型全体を超音波によって波長の1/2の倍数で共振させるか、または可動側金型内に振動によって共振する共振体を設け、これを超音波によって共振させると共に、高速で樹脂材料を充填することによってスキン層が低減し、成形品を成形する際に発生する不良現象を防止する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−127203号公報
【特許文献2】特開2005−297384号公報
【特許文献3】特開平9−99458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
射出成形においては射出圧力の低圧化が、バリ処理などの後加工の省略、大型部品の成形、複数取り、無人化、コスト低減などを推進する上で必須の条件になっている。
【0008】
しかしながら、低圧成形においては、保圧時の圧力を低下させると、冷却固化時の収縮力が保圧力に勝ってしまい、圧力補填や流動補填が効きにくいキャビティ末端部では外観不良が発生する。これを防止するため一般に30MPa以上の保圧を行っている。
【0009】
図1は本発明者らが行った実験で用いた樹脂の状態(温度)と比容積との関係を示すグラフであり、このグラフからキャビティ内に充填された樹脂の温度が高いと収縮率(比容積)も大きくなること、更には溶融状態にある樹脂が冷却される過程で、比容積の勾配がきつくなる第1の変曲点T1と、比容積の勾配が緩くなる第2の変曲点T2が存在することが確認された。
【0010】
特許文献1には、ホットランナー装置と金型を分離することで複数の金型に対しホットランナー装置を共用しているが、ホットランナー装置のノズルが金型に当接する位置は常に同一位置となるので、製品形状が異なっても樹脂受入口は同一位置に設けなければならない。よって、製品形状に応じてゲートを設定すると樹脂受入口からゲートまでの距離が長くなってしまう場合が考えられ、必ずしも製品形状に適した樹脂受入口位置とはならない。
【0011】
特許文献2には、分岐ランナーを流れる樹脂材の流量は、射出ノズルの射出圧力が等しくなる場合の射出率に相当すべく計算され、該射出率で樹脂材を射出すると、射出ノズルの射出圧力が等しくなり、キャビティ内の圧力を低くすることが出来ると記載されている。しかし、温度管理については何も記載が無く、大型成形品を射出成形する場合のヒケ量の低減は見込めない。
【0012】
特許文献3には、1kHz〜10kHzの振動周波数を発生させる超音波振動子を使い、150cm/秒以上の射出率で射出する場合に樹脂材料の流動性を改善すると記載されている。しかし、大型部品の金型装置全体を超音波振動子を使い1kHz〜10kHzで駆動する装置は大掛かりで、例えば車の大型部品を射出成形するには不向きである。
【0013】
更に、上記したように射出成形方法には低圧化の要求がある。しかしながら、保圧時の圧力を低下させると製品に変形が生じる。保圧時の圧力を低下させても製品の変形を少なくすることに関しては、特許文献1〜3のいずれも解決策を見出せていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、キャビティに充填された樹脂の温度を低くすれば収縮量が小さくなるが、最初から低温度樹脂を射出すると末端部まで充填できない点を解消して、例えば保圧時の圧力が30MPa以下の低圧成形を可能とした。
【0015】
即ち本発明は、金型のキャビティ内にスクリューフィーダを備えたノズルによって溶融樹脂を送り込む射出成形方法において、前記キャビティの末端部に到達する溶融樹脂の温度が固化しない範囲で出来るだけ低くなるように、前記スクリューフィーダによる射出開始時の射出率(cm/sec)が最も大きく、射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率(cm/sec)が小さくなるようにした。
射出開始時の射出率を大きく、射出終了に近づくに従って射出率を小さくすると、キャビティの溶融樹脂の流速がノズル近傍で速く末端部近傍において低くなり、その結果時間をかけて末端部に樹脂が充填されるため末端部における溶融樹脂温度が低下する。
【0016】
本願の射出成形方法を実施する射出成形装置が複数のノズルを有する場合は、各ノズルが上記の条件を満足するのが好ましく、全てのノズルのスクリューフィーダによる射出開始時の射出率(cm/sec)が満足され、射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率(cm/sec)が小さくなるようにすればよい。
【0017】
例えば、スクリューフィーダによる射出の行程を数種の領域に分け、以下の1)乃至4)からなる工程を実施する。
1)前記スクリューフィーダが射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率を変化させる射出が、所望に変化するようにそれぞれの前記領域毎の通過温度データを仮設定させ、該データを実質的に入力させ、電子計算機で構成されたシステム内でプログラムであるプログラム実行部により、該データを電子記憶媒体に記憶させる。
2)通過温度データを利用できる射出成形装置にて、射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率を、通過温度データを利用して所望に変化させて、成形品を成形する。
3)前記成形品の成形後に、成形品がある基準を満たしていない場合に、前記領域毎の射出率を変更させ、該射出率を前記プログラム実行部により実質的に入力させる。
4)前記1)に戻って、1)乃至3)を繰り返し、前記スクリューフィーダが射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率を変化させる射出が、所望に変化するようにそれぞれの前記領域毎の通過温度データを設定させ、該データを実質的に入力させる前記プログラム実行部により、該データを電子記憶媒体に記憶させるか、または利用可能なように記録媒体に物理的に記録する。
【0018】
また上記通過温度データを利用する射出成形装置としては、材料を射出する射出機と、射出された材料が充填されるキャビティを構成した型と、前記通過温度データを記憶する記憶手段と、各流動行程位置領域の入り側と出側とに該当するキャビティの位置に備えられた温度センサと、前記温度センサにより温度状況と射出機とをモニタリングして射出状況を把握し、前記記憶手段のデータ通りに射出機を制御する制御手段と、射出状況により異常と判定する判定部とを備えた構成が考えられる。
【0019】
尚、キャビティの末端部に到達する溶融樹脂の温度が固化しない範囲で出来るだけ低くなるような射出条件算出は例えば以下のようにして求める。
【0020】
(算出例1)
スクリューフィーダストローク分割工程
スクリューフィーダの進行ストロークを、高速の高流動行程位置領域(射出率が大)および低速の減流動行程位置領域(射出率が小)の2つの位置領域に分ける。
第1算出工程
前記高流動の高速行程位置領域において、キャビティ形状および材質条件を含むキャビティ条件と、樹脂材の流動条件および樹脂材の凝固条件を含む材料条件のデータをインターフェース手段、或いは外部記憶手段から入力し、更に入り側(ノズル)の樹脂材の温度および射出圧力を入力すると、キャビティに充填される樹脂材の先端流動速度と、通過温度を算出するルーチンを実行し、樹脂材の先端流動速度と通過温度を算出する。
第2算出工程
前記低速の減流動行程位置領域において、キャビティ形状および材質条件を含むキャビティ条件と、樹脂材の流動条件および樹脂材の凝固条件を含む材料条件のデータをインターフェース手段、或いは外部記憶手段から入力し、更に入り側の樹脂材の温度および流動速度が入力されると、キャビティに充填される樹脂材の通過流動速度と、通過温度を算出するルーチンを実行し、樹脂材が最終充填部に達するまでの通過減速度と、到達温度を算出する。
【0021】
(算出例2)
スクリューフィーダストローク分割工程
スクリューフィーダの進行ストロークを、高速の高流動行程位置領域(射出率が大)、中速の中流動行程位置領域(射出率が中)および低速の減流動行程位置領域(射出率が小)の3つの位置領域に分ける。
第1算出工程〜第3算出工程
前記第1算出工程で、高速の高流動行程位置領域(射出率が大)における樹脂材の通過流動速度と、通過温度を算出する。
前記第2算出工程で、中速の中流動行程位置領域(射出率が中)において、キャビティ形状および材質条件を含むキャビティ条件と、樹脂材の流動条件および樹脂材の凝固条件を含む材料条件のデータをインターフェース手段、或いは外部記憶手段から入力し、更に入り側の末端材料の通過流動速度および経過温度を入力すると、キャビティに充填される樹脂材の通過流動速度と、通過温度を算出するルーチンを実行し、樹脂材の通過流動速度と、通過温度を算出する。
第3算出工程で、前記低速の減流動行程位置領域(射出率が小)における樹脂材の通過流動速度と、通過温度を算出する。
【0022】
上記の射出条件算出方法においては、例えば樹脂材が溶融状態であって、冷却して行くと比容積の勾配がきつくなる第1の変曲点T1以上の温度で樹脂を射出し、更に冷却して行くと比容積の勾配が緩くなる第2の変曲点T2以下の温度であって、キャビティの末端部に到達する溶融樹脂の温度が、樹脂の固化しない温度範囲で出来るだけ低い温度とするように算出する。
【0023】
樹脂材の種類で異なるが、前記変曲点T1の温度としては190℃〜200℃の範囲、前記変曲点T2の温度としては110℃〜130℃の範囲が挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の射出成形方法によれば、充填完了時点でのキャビティ末端部での樹脂温度が固化しない範囲で出来るだけ低く管理したので、キャビティ内の圧力を低くすることが可能となり、射出成形機の小型化、成形最大寸法の拡大、多数個取りが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。 図2は、本発明方法を実施する射出成形装置の概略構造図である。射出成形機1は、油圧式の型締め機構2によって充填時に十分な圧力がかかる構造になっている。
【0026】
前記型締め機構2には、金型の開閉動作の案内となり、型締め力を受ける支柱であるタイバー3が4本使われ、ノズル4が可動側金型5に取り付けられた状態で、前記タイバー3によって可動側金型5が固定側金型6に締め付けられる。
【0027】
一方、射出装置10にはバンドヒータ7が巻き付けられた加熱筒8が設けられ、この加熱筒8内部にはスクリューフィーダ9が配置され、スクリューフィーダを回転させることにより、樹脂の移送、圧縮、混練、溶融、計量動作などの可塑化動作を行っている。前記スクリューフィーダ9の部分に樹脂を送り込むのは射出シリンダ11によって行われ、油圧または、電動作用を利用して駆動するモータ12(以下、電動モータ12)によりスクリューフィーダ9を回転させる。
【0028】
樹脂は、ホッパ13に投入されると、スクリューフィーダ9によって、加熱筒8中を搬送される間にバンドヒータ7の熱によって加熱溶解されながらノズル4方向に移動して、前記ノズル4から固定側金型6に注入される。
【0029】
一方、中央制御手段14には可動側金型5に組み込まれた温度/圧力センサ15、バンドヒータ7に接続された温度制御手段16、射出シリンダ11に接続された射出制御手段17、電動モータ12に接続された回転制御手段18および記憶装置19が接続されている。
中央制御手段14はインターフェース20と接続されているので、前記記憶装置19だけでなく外部からのデータ取り込みも可能な構成になっている。
【0030】
図3は、本発明に係る射出成形方法の射出成形条件を算出する算出フローチャートである。これは、いわゆる電子計算機上で実行されるプログラムであり、このプログラム30は、例えばPROMとして中央制御手段14に内蔵するだけでなく、前記インターフェース20を介してネットワークなどから前記中央制御手段14のプログラム格納手段に格納することもできるが、いずれにしてもデバッグやメンテナンスを考慮したいわゆる電子計算機で構成されたシステムSを使うことが好ましい。以下に、この図2を使った第1実施例と第2実施例について説明する。
【0031】
(第1実施例)
図3のステップ21でプログラムが開始されると、ステップ22で圧力データが設定される。具体的には、電子データを記憶できる外部記憶手段19から圧力データをプログラム実行部40に入力し、プログラム実行部40が格納する。この場合の圧力設定値としては、使う樹脂材料と成形部品の大きさによって過去の類似データ等が利用できない場合の目の子計算によるデータでの設定する際は、前記システムSは、具体的には、実行される前記プログラム30を内部に記憶し実行し、前記システムS内に構成されたプログラム実行部40は、前記システムSを操作するオペレータの、五感に訴える図示しない報知・表示手段や、或いはインターフェース手段50によりオペレータに、前記類似データ等が利用できない旨を報知する。次に前記プログラム実行部40は、圧力データの入力を催促し、次にオペレータは、自己の経験や予測により概算で圧力データを作成してシステムSのインターフェース手段50により入力して、ステップ22において、圧力データの設定が完了する。
【0032】
ステップ23では、射出機構のスクリューフィーダ9の進行ストローク(送り速度)を、少なくとも高速の高流動行程位置領域および低速の減流動行程位置領域の2つの位置領域に分けるスクリューフィーダストローク分割工程を実行する。前記低速の減流動行程位置領域は、例えば、樹脂材を冷却して行くと比容積の勾配がきつくなる変曲点T1以下の温度で溶融材料の最終充填部に到達し、更に好適には、比容積の勾配が緩くなる変曲点T2以下で、且つキャビティの末端部(最終充填部)に到達する溶融樹脂(溶融材料)の温度が樹脂の固化しない温度範囲になるような、進行ストロークを、前記システムSを操作するオペレータが設定する。具体的には、前記低速の減流動行程位置領域の始点を決める訳だが、例えば単純にその位置を、スクリューフィーダの全進行ストロークの略中央にしても、初めはかまわない。
【0033】
その残りの部分が、前記高速の高流動行程位置領域と他の行程位置領域となる訳である。その残り部分のうち、前記高速の高流動行程位置領域の終点を前記オペレータが決める。スクリューフィーダの全進行ストロークを、2つだけの位置領域で分けた場合は、自ずと先ほど決定した前記低速の減流動行程位置領域の始点が、前記高速の高流動行程位置領域の終点となる。スクリューフィーダの全進行ストロークを、3つ以上で分けた場合は、前記高速の高流動行程位置領域の終点を決めた後は、順次、その位置領域の終点を前記オペレータが決める。また、位置領域の数は2以上の任意の自然数であればよく、また、前記低速の減流動行程位置領域の始点や、前記高速の高流動行程位置領域の終点、その他の行程位置領域の終点は、それらの点が等間隔になるように、前記システムSが機械的に求めて決定してもよいし、前述のようにそれぞれを前記オペレータが任意に決めてもかまわない。当該点が決まれば都度システムSのインターフェース手段50により入力して、ステップ23において、スクリューフィーダの進行ストロークの位置領域による分割が完了する。
【0034】
上記において、例えばバンパーを成形する場合に一般的に使われる樹脂の温度設定例としては、前記変曲点T1の温度を190℃〜200℃の範囲とし、前記変曲点T2の温度を110℃〜130℃の範囲とすることが考えられる。
【0035】
ステップ24では、前記高速の高流動行程位置領域における計算を、プログラム実行部40が実施する。ここでは、少なくともキャビティの形状およびキャビティの材質条件を含むキャビティ条件と、少なくとも樹脂材の流動条件および樹脂材の凝固条件を含む材料条件とを記述するデータを用いて、該データをインターフェース手段50、或いは外部記憶手段19からプログラム実行部40に入力し、プログラム実行部40が格納する。既に前記22ステップで、プログラム実行部40に入力された圧力データ、すなわち入り側(ノズル)の樹脂材の射出圧力があって、その他に更に、入り側(ノズル)の樹脂材の温度を、前記システムSを操作するオペレータがインターフェース手段50により入力する。その際には前記プログラム実行部40は、該温度の入力を催促する。すると、キャビティに充填される樹脂材が、前記高速の高流動行程位置領域の終点を通過する際、その樹脂材の先端の通過流動速度と、通過温度を算出するルーチンを、プログラム実行部40が実行する。
【0036】
入り側の該温度は、上記において、例えば、バンパーを成形する場合に一般的に使われる樹脂の温度、すなわち、前記変曲点T1の温度190℃から200℃の範囲以上の温度を入力する。しかしながら、次のステップ25の低速の減流動行程位置領域における計算で、キャビティの末端部(最終充填部)に到達する溶融樹脂(溶融材料)の温度が、比容積の勾配が緩くなる変曲点T2以下で、且つ樹脂の固化しない温度範囲になる程度に、前記高速の高流動行程位置領域の始点の、最初の入り側(ノズル)の該温度は、なるべく低くてかまわない。場合によっては、前記変曲点T1の温度190℃から200℃の範囲以下の温度でもよい。この場合の温度設定値としては、使う樹脂材料と成形部品の大きさによって過去の類似のデータあるいは前記類似のデータが利用できる場合には、具体的には、外部記憶手段19から温度データ、すなわち入り側(ノズル)の樹脂材の温度をプログラム実行部40に、プログラム実行部40が格納する。
【0037】
ステップ24‘、ステップ24’‘(算出例2)では、中速の中流動行程位置領域における計算をする。ここでは、少なくとも、前記スクリューフィーダの進行ストロークの位置領域毎の、キャビティの形状およびキャビティの材質条件を含む進行ストロークの位置領域毎のキャビティ条件と、少なくとも樹脂材の流動条件および樹脂材の凝固条件を含む材料条件とを記述するデータを用いて、該データをインターフェース手段50、或いは外部記憶手段19からプログラム実行部40に、プログラム実行部40が格納する。既に前記24ステップで、キャビティに充填される樹脂材が前記高速の高流動行程位置領域の終点を通過する際のその樹脂材の先端の通過流動速度と、通過温度を算出するルーチンにより算出されている。算出された樹脂材の先端の通過流動速度および通過温度が、プログラム実行部40によりプログラム実行部40に格納される。プログラム実行部40に格納された樹脂材の先端の通過流動速度および通過温度、すなわち入り側(中速の中流動行程)の樹脂材の流動速度および温度が入力されると、キャビティに充填される樹脂材が、今計算中の中速の中流動行程位置領域の終点を通過する際、その樹脂材の先端の通過流動速度と、通過温度を算出するルーチンを、プログラム実行部40が実行する。詳細は後述の(第2実施例)で示す。
【0038】
ステップ25では、低速の減流動行程位置領域における計算をする。ここでは、ひとつ前の進行ストロークの位置領域で算出されたその位置領域の終点を通過する際のその樹脂材の先端の通過流動速度と、通過温度とから、減速度と、キャビティの末端部(最終充填部)に到達する溶融樹脂(溶融材料)の温度とを算出する。
【0039】
具体的には、少なくとも前記スクリューフィーダの進行ストロークの位置領域毎の、キャビティの形状およびキャビティの材質条件を含む進行ストロークの位置領域毎のキャビティ条件と、少なくともキャビティの形状およびキャビティの材質条件を含むキャビティ条件と、少なくとも樹脂材の流動条件および樹脂材の凝固条件を含む材料条件とを記述するデータを用いて、該データをインターフェース手段50、或いは外部記憶手段19からプログラム実行部40に入力し、プログラム実行部40が格納する。既にひとつ前のステップで、その前の進行ストロークの位置領域の終点において、その終点をキャビティに充填される樹脂材が通過する際のその樹脂材の先端の通過流動速度と、通過温度を算出するルーチンにより算出されている。算出された樹脂材の先端の通過流動速度および通過温度が、プログラム実行部40によりプログラム実行部40に格納される。該ステップ25では更に、必要経過時間データが設定される。
【0040】
具体的には、外部記憶手段19から必要経過データをプログラム実行部40に入力し、プログラム実行部40が格納する。必要経過時間データ、すなわち必要経過時間とは、低速の減流動行程位置領域におけるあるストロークを、前述の外部欠陥がない程度に減速しながら進行して、樹脂材の先端の流動速度が0(m/sec)になるまでに必要な経過時間である。この必要経過時間は、経験上、ストロークと樹脂材料と成形部品の平均断面積とから、概ね決められたものである。この場合の必要経過時間の設定値としては、使う樹脂材料と成形部品の大きさによって過去の類似データあるいは前記類似データが利用できない場合には目の子計算によるデータで設定することが考えられる。
【0041】
前記類似データ等が利用できない場合の目の子計算によるデータでの設定する際は、前記システムSが、具体的には、プログラム実行部40が、前記システムSを操作するオペレータの、五感に訴える図示しない報知・表示手段や、或いはインターフェース手段50によりオペレータに、前記類似データ等が利用できない旨を報知する。次に前記プログラム実行部40は、必要経過時間データの入力を催促し、次にオペレータは、自己の経験や予測により概算で必要経過時間データを作成してシステムSのインターフェース手段50により入力して、ステップ25において、必要経過時間データの設定が完了する。
【0042】
既に前記25ステップの前半で、プログラム実行部40に入力された必要経過時間データ、すなわち出側(キャビティの末端部)の低速の減流動行程位置領域において、前述の外部欠陥がないために必要な経過時間があって、その他に、入り側(ノズル)の樹脂材の流動速度や温度、すなわち既にその前の進行ストロークの位置領域の終点における、キャビティに充填される樹脂材が通過する際のその樹脂材の先端の通過流動速度と、通過温度が、プログラム実行部40によりプログラム実行部40に格納されている。プログラム実行部40に格納された樹脂材の先端の通過流動速度および通過温度、すなわち入り側(中速の中流動行程)の樹脂材の流動速度および温度が入力されると、キャビティに充填される樹脂材が、今計算中の低速の減流動行程位置領域の溶融樹脂(溶融材料)が、キャビティの末端部(最終充填部)に到達するまでのスクリューフィーダの進行の減速度と、キャビティの末端部(最終充填部)に到達する溶融樹脂(溶融材料)の温度とを算出するルーチンを、プログラム実行部40が実行する。求められる減速度は、ストロークと必要経過時間とから理論上求められる一定の値でもかまわないし、その理論上求められた減速度程度を発揮する図示しないブレーキ手段によりスクリューフィーダの進行を減速した場合の成り行きの速度変化の値でもかまわない。
【0043】
キャビティの末端部の該温度は、上記において、例えば、バンパーを成形する場合に一般的に使われる樹脂の温度、すなわち、前記変曲点T2の温度110℃から130℃の範囲以下の温度であればよい。更に好適には、当該ステップ25の低速の減流動行程位置領域における計算で、キャビティの末端部(最終充填部)に到達する溶融樹脂(溶融材料)の温度が、比容積の勾配が緩くなる変曲点T2以下で、且つ樹脂の固化しない温度範囲になればよい。
【0044】
ステップ26では、ステップ24とステップ25の計算で、樹脂が金型に充填された充填完了時に、ゲート付近で190〜200℃、末端付近で110〜130℃になるような仮成形条件を設定する。
【0045】
ステップ27では、前記の仮成形条件を使って射出成形機を実機テストする。具体的には、スクリューフィーダの進行位置領域に対応するキャビティの位置、すなわち、スクリューフィーダがある進行位置領域の終点まで進行して、そのスクリューフィーダがキャビティに射出して充填された体積の樹脂材料の先端が到達している位置に、温度センサと、圧力センサを設置し、主には所望の温度で通過しているかを、スクリューフィーダの進行位置領域毎に確認する。温度に差が生じていて、実機テストの温度が高い場合は、スクリューフィーダの進行位置領域毎のスクリューフィーダの射出圧力を下げ、すなわちスクリューフィーダの進行位置領域毎の流速を下げる。また、実機テストの温度が低い場合は、スクリューフィーダの進行位置領域毎のスクリューフィーダの射出圧力を上げ、すなわちスクリューフィーダの進行位置領域毎の流速を上げる。この実機テストにより、設定したパラメータの正規化が可能となり、ここで得た経験値をステップ22、24、25の計算にフィードバックすることにより学習効果でトータルの計算時間を短縮することが出来る。
【0046】
ステップ28では前記の実機テストの評価を行なう。ここで実機テストの結果が基準を満たさない場合にはステップ22に戻り、圧力パラメータを変更してステップ23〜ステップ28を繰り返す。
【0047】
具体的には、目の子計算によるデータで設定することが考えられる。その際は、前記システムSは、具体的には、プログラム実行部40は、前記システムSを操作するオペレータの、五感に訴える図示しない報知・表示手段や、或いはインターフェース手段50によりオペレータに、圧力パラメータが利用できない旨を報知する。次に前記プログラム実行部40は、圧力パラメータの入力を催促し、次にオペレータは、自己の経験や予測により概算で圧力パラメータ(データ)を作成してシステムSのインターフェース手段50により入力して、ステップ22において、圧力データの設定が完了する。
【0048】
違う入力モードも選択でき、こちらの方が通常である。通常は、プログラム実行部40は、実機テストの温度が高い場合は、スクリューフィーダの進行位置領域毎のスクリューフィーダの射出圧力(パラメータ)を、規定値毎に下げ、実機テストの温度が低い場合は、スクリューフィーダの進行位置領域毎のスクリューフィーダの射出圧力(パラメータ)を、規定値毎に上げ、その規定値の範囲を段階的に小さくして、射出圧力のパラメータ設定値からくる実機テストと、所望の状態との差を収束させていく。例えば、割合的に100上げたら、今度は70下げて、次は、50上げるといった具合に、その規定値の範囲を段階的に小さくする。
【0049】
設定されるべき通過温度データを含む種々のデータは、利用可能なように電子記憶媒体に記憶させるか、または別の記録媒体に物理的に記録する。具体的には、数値データを2次元や1次元バーコードに紙で出力することや、数値データを孔を開けるパンチカードや、パンチテープで出力することや、磁気的テープや、CD−ROM等に、データを記録することも考えられる。すると保管、過搬性がよく製作現場に都合がよい。
また、具体的な射出条件を求める方法として、先ず任意の射出開始時の射出率を決めておき、任意の射出率の低減率K(但し,0<K<1)を、その都度あるいは、一定の任意の低減率Kconst(但し,0<Kconst<1)を決めて、射出条件を算出してもよい。それぞれの射出条件時の射出解析および、実機テストを実施しておき、最終的に製品を射出により成形すればよい。
【0050】
(第2実施例)
図3の別実施例としては、ステップ21でプログラムが開始されると、ステップ22で圧力データが設定される。
【0051】
ステップ23では、射出機構のスクリューフィーダ9の進行ストロークは、前記高速の高流動行程位置領域は極端に速い圧縮工程であり、低速の減流動行程位置領域は極端に遅い減速工程となり、これらの遷移領域を緩和領域として設定することにより圧縮、緩和、減速工程の3領域に分割する。例えば、ストローク70mmのスクリューフィーダを使う場合においては、70〜50mmを圧縮工程領域、50〜25mmを緩和工程領域、25〜0mmを減速工程領域として分割することが考えられる。
【0052】
ステップ24では、前記高速の高流動位置領域における計算をし、ステップ24’、ステップ24’’では前述の中速の中流動位置領域(緩和工程)における計算をし、ステップ25では、前記同様、低速の減流動行程位置領域における計算をする訳であるが、樹脂の温度の考え方は、2通りあると本発明者らは考える。樹脂の流れと温度の分布は図6に示した通りのようになっている。また、樹脂の温度と溶融、固化の関係は図7に示した通りのようになっている。すなわち、樹脂の温度は、固化した部分を除く溶融層の温度と、固化した部分の温度を含んだ、溶融層と固化層との肉厚方向の平均温度との、2通り考え方がある。金型温度を測定して、該金型温度からその肉厚方向の平均温度が測温擬制できるので、今回の樹脂温度は、固化した部分の温度を含んだ、溶融層と固化層との肉厚方向の平均温度と規定する。
ステップ26では、ステップ24とステップ25の計算で、樹脂が金型に充填された充填完了時に、ゲート付近で該肉厚方向の平均温度190〜200℃、末端付近で肉厚方向の平均温度110〜130℃になるような仮成形条件を設定する。
【0053】
ステップ27では、前記の仮成形条件を使って射出成形機を実機テストする。具体的には、スクリューフィーダの進行位置領域に対応するキャビティの位置、すなわち、スクリューフィーダがある進行位置領域の終点まで進行して、そのスクリューフィーダがキャビティに射出して充填された体積の樹脂材料の先端が到達している位置に、温度センサと、圧力センサを設置し、主には所望の温度で通過しているかを、スクリューフィーダの進行位置領域毎に確認する。
この実機テストにより、設定したパラメータの正規化が可能となり、ここで得た経験値をステップ22、24、25の計算にフィードバックすることにより学習効果でトータルの計算時間を短縮することが出来る。
【0054】
ステップ28では前記の実機テストの評価を行なう。ここで実機テストの結果が基準を満たさない場合にはステップ22に戻り、圧力パラメータを変更してステップ23〜ステップ28を繰り返す。
【0055】
上記において、末端材料が最終充填部に近づくほど、末端材料の通過速度が連続的かつ徐々に、あるいは段階的に遅くなるように設定することも考えられる。
【0056】
また、樹脂材が溶融状態であって、冷却して行くと比容積の勾配がきつくなる変曲点T1以上の温度で射出し、更に冷却して行くと比容積の勾配が緩くなる変曲点T2以下で、流動可能な温度が、到達温度とすることも考えられ、望ましい温度の例としては、前記T1の温度が肉厚方向の平均温度190℃〜200℃の範囲である。すると、固化した部分を除く溶融層の温度を140℃近くまで下げて成形し、結果、前記T2の温度が肉厚方向の平均温度110℃〜130℃の範囲となり、温度を下げることができるというものである。
キャビティの末端部に樹脂材料が到達する際、比容積の勾配が緩くなる変曲点以下で且つ流動可能な温度であれば、単位温度当たりの縮体積変化が少なければ、体積変化に起因する外観不良が減少する。
【0057】
更に、前記記憶手段19に記憶するデータとしては、前記以外に、求められた末端材料の通過流動速度と、通過温度のデータを記憶手段に記憶することが考えられる。この場合、射出成形装置としては、射出機と、キャビティと、前記通過温度のデータを記憶する記憶手段、高速の高流動行程位置領域1および低速の減流動行程位置領域2のふたつの位置領域の入り側と出側に温度センサを備えた金型と、温度センサにより温度状況と射出機とをモニタリングして射出状況を把握して前記記憶手段のデータ通りに射出機を制御する制御手段と、射出状況により異常と判定する判定部を備えた射出成形装置とすることが考えられる。
【0058】
図4(a)〜(c)には、図4の金型を使った射出成形において製造された成形品の(a)粗さデータと、その(b)1次微分と更に(c)2次微分が図示されている。
【0059】
図4(a)は、通常の射出成形プロセスで作った成形品の表面粗さデータから前記表面粗さの平均値(図中の直線)から減算した値を金型幅31のサンプリング位置別にプロットしたグラフである。平均値との差の平均値は入り側(図の右側)ではプラス、末端側(図の左側)ではマイナス傾向となっている。
【0060】
図4(b)は、通常の射出成形プロセスで作った成形品の表面粗さの1回微分値をグラフ化したものである。このグラフによって、表面凹凸がどの様に傾いているかが分かる。入り側(図の右側)ではマイナス、末端側(図の左側)ではプラス傾向となっている。
【0061】
図4(c)は、通常の射出成形プロセスで作った成形品の表面粗さの2回微分値をグラフ化したものである。図中において、斜線部の面積はうねりの回数頻度を示し、ピーク値はうねりの強さを示している。この図から、入り側ではうねりが強い部分もあるが頻度は低く、末端側ではうねりの強度は比較的低いが回数が増加していることが分かる。つまり、末端部では固化状態で変化した際の収縮量が大きいことが推測できる。
【0062】
図5(a)は樹脂射出の注入速度の違いとリブヒケ値の比較を示している。また、表1は、その際の設定値と実測値とを示している。
【0063】
【表1】

【0064】
ここで、右側の定高速射出は速度が400mm/秒で、保圧圧力は40MPaの設定とし、表1から、末端圧力24.3MPa、うねり(最下)14.7の実測値であった。中央の定低速射出は、図5(a)と表1より、速度が120mm/秒で、保圧圧力は、40MPa、50MPaの設定とし、末端圧力はそれぞれ、20.6MPa、28.7MPaで、うねり(最下)は、それぞれ23.3,13.3の実測値であった。
左側の多段射出は、速度が500mm/秒→100mm/秒→10mm/秒で、保圧圧力は40MPaの設定とし、表1から、末端圧力17.7MPa、うねり(最下)11.4の実測値であった。
【0065】
図5(b)は上記の射出条件で定高速(△)、定低速(□)、多段成形(○)による成形品の表面粗さを計測し、その2回微分値の面積と最大値でプロットしたものである。このグラフからも明らかなように、多段成形(○)による成形品は表面粗さ2回微分の面積が1260単位、その最大値が13.3単位となっていて最も平坦な仕上がりとなっていることが分かる。つまり、型内流動を変化させることが低圧面張りに作用していることが分かる。この品質を確保しつつ、通常成形では2562トンあった型締め最大圧力を、前記多段成形によって1676トンまで下げられ、35%の低圧化が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の射出成形条件算出方法を使った射出成形装置の採用によって既存成形機の成形可能範囲を広げることができるようになったので、成形加工のサイクルを高めることが出来、更に品質改善によりバリ処理が不要になるので無人化によるコストダウン、また将来的には大型部品への対応も可能となり射出成形を利用する全ての産業で作業効率改善を実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】樹脂の状態(温度)と比容積との関係を示すグラフ
【図2】本発明に係る射出成形方法の実施に用いる射出生計装置の概略図
【図3】本発明に係る射出成形方法の射出成形条件を算出するフローチャート
【図4】(a)は粗さデータ、(b)は1回微分、(c)は2回微分を示すグラフ
【図5】(a)は射出速度の違いとリブヒケ値の比較、(b)は表面粗さ2回微分面積と最大値を示すグラフ
【図6】樹脂の流れと温度分布の関係を示すグラフ
【図7】樹脂の温度と樹脂の状態(溶融と固化)との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0068】
1…射出成形装置、2…型締め機構、3…タイバー、4…ノズル、5…可動側金型、6…固定側金型、7…バンドヒータ、8…加熱筒、9…スクリューフィーダ、10…射出装置、11…射出シリンダ、12…油圧モータ、13…ホッパ、14…中央制御装置、15…温度/圧力センサ、16…温度制御手段、17…射出制御手段、18…回転制御手段、19…記憶手段、20…インターフェース、21…プログラム開始、22…圧力設定、23…領域分割、24…高流動の高速行程位置領域ルーチン、25…低速の減流動行程位置領域ルーチン、26…仮設定、27…実機確認工程、28…評価工程、29…パラメータ設定工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティ内にスクリューフィーダを備えたノズルによって溶融樹脂を送り込む射出成形方法において、前記キャビティの末端部に到達する溶融樹脂の温度が固化しない範囲で出来るだけ低くなるように、前記スクリューフィーダによる射出開始時の射出率(cm/sec)が最も大きく、射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率(cm/sec)が小さくなるようにしたことを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形方法において、前記ノズルは複数設けられ、このうちの少なくとも1つのノズルのスクリューフィーダによる射出開始時の射出率(cm/sec)が最も大きく、射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率(cm/sec)が小さくなるようにしたことを特徴とする射出成形方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の射出成形方法において、前記ノズルを介してキャビティ内に充填された溶融樹脂に加えられる圧力は30MPa以下としたことを特徴とする射出成形方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の射出成形方法において、射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率が変化するものであって、前記スクリューフィーダによる射出の行程を数種の領域に分け、以下の1)乃至4)からなる工程を実施する射出成形方法。
1)前記スクリューフィーダが射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率を変化させる射出が、所望に変化するようにそれぞれの前記領域毎の通過温度データを仮設定させ、該データを実質的に入力させ、電子計算機で構成されたシステム内でプログラムであるプログラム実行部により、該データを電子記憶媒体に記憶させる。
2)通過温度データを利用できる射出成形装置にて、射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率を、通過温度データを利用して所望に変化させて、成形品を成形する。
3)前記成形品の成形後に、成形品がある基準を満たしていない場合に、前記領域毎の射出率を変更させ、該射出率を前記プログラム実行部により実質的に入力させる。
4)前記1)に戻って、1)乃至3)を繰り返し、前記スクリューフィーダが射出終了に向かって段階的にまたは連続的に射出率を変化させる射出が、所望に変化するようにそれぞれの前記領域毎の通過温度データを設定させ、該データを実質的に入力させる前記プログラム実行部により、該データを電子記憶媒体に記憶させるか、または利用可能なように記録媒体に物理的に記録する。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3に記載の射出成形方法において、射出開始時の射出率(cm/sec)をVと決め、以下の1)乃至7)からなる工程を実施する射出成形方法。
・ i=(n=1)のときの任意の係数を、K(但し,0<K<1)とする。
・ 2番目の射出率を、V=K・V(但しn=1)とし求める。
・ 前回nに1を加える。
・ i=(n+1)のときの任意の係数を、K(但し,0<K<1)とする。
・ 次に射出率を、V(i+1)=K・Vとし求める。
・ 前記キャビティの末端部に到達する樹脂温度が、固化した部分の温度を含んだ、目標である溶融層と固化層との肉厚方向の平均温度に達するまで、前記3)に戻って、3)乃至5)を繰り返す。
・ 前記キャビティの末端部に到達する樹脂温度が、固化した部分の温度を含んだ、目標である溶融層と固化層との肉厚方向の平均温度に達すると、前記スクリューフィーダの射出終了に向かって段階的にまたは連続的に変化させる射出率の変更を終了する。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記憶された通過温度データを利用する射出成形装置において、材料を射出する射出機と、射出された材料が充填されるキャビティを構成した型と、前記通過温度データを記憶する記憶手段と、各流動行程位置領域の入り側と出側とに該当するキャビティの位置に備えられた温度センサと、前記温度センサにより温度状況と射出機とをモニタリングして射出状況を把握し、前記記憶手段のデータ通りに射出機を制御する制御手段と、射出状況により異常と判定する判定部とを備えたことを特徴とする射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−149632(P2008−149632A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341713(P2006−341713)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】